JP2023539542A - Covid-19疾患を処置する新規組成物および方法 - Google Patents

Covid-19疾患を処置する新規組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を患者に投与するステップを含むCOVID-19を処置する方法に使用するための新規組成物に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、COVID-19疾患の処置のための新規組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、特にCOVID-19の中期~重篤期の患者において当該疾患の処置に使用するためのケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の使用に関する。
コロナウイルスは、動物に重篤な呼吸系疾患および消化管系疾患を引き起こすことが知られている。コロナウイルス株でのヒトの感染症は、気道感染症、すなわち一般的なかぜ様疾患に関連すると長年説明されてきた。たとえば、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス:Severe Acute Respiratory Syndrome-Corona Virus)は、著しく侵襲性のヒトへの作用物質であり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)をもたらし、多くの場合致死的なアウトカムとなる。このウイルスは、コウモリからジャコウネコおよびヒトへと種の壁を越えた後に2003年に流行病として出現し、ヒトにおいて高い罹患率および死亡率を引き起こすコロナウイルスの可能性を示した。HCoV-NL63およびHCoV-HKU1の株が、それぞれ2004年および2005年に発見された。
2019年12月31日に、世界保健機関(WHO)の中国局は、中国湖北省武漢市において検出された未知の病因の肺炎の症例を通知した。2019年12月31日から2020年1月3日までに、未知の病因の肺炎を伴う合計44名の患者が、中国の国内当局によりWHOに報告された。この報告期間の間、病因は同定されなかった。2020年3月1日までに、中国において44672名の患者にて感染症が確認されたと報告されており、このうち20歳未満は2.1%であった。報告された最も一般的な症状は、発熱、乾性咳嗽、および息切れを含んでおり、大部分の患者(80%)は、軽症の疾病を経験していた。約14%が重篤な疾患を経験しており、5%が瀕死状態であった。早期の報告に、疾病の重症度が年齢(60歳超)および併存疾患(co-morbid disease)に関連することが示唆されていた。2020年4月29日に、世界中で3,152,556の症例が確認され、このうち218,491名がCOVID-19により死亡したと報告された。
SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome-coronavirus 2)は、WHOにより「世界的な公衆衛生の脅威」として新たに宣言されたパンデミックであるCOVID-19の原因である新たに出現したウイルスとして同定されている。大部分の場合、COVID-19の臨床的特徴は、良性にとどまる。しかしながら、COVID-19の病態は、より重篤な場合があり、患者の16~20%にて病院にて酸素の支援を必要とし得る。これは、患者の5~10%において急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こし得、集中治療室(ICU)への入院および侵襲的な人工呼吸を必要とし得る。長期間ICUに留まることは、ヘルスケア資源の医療崩壊に関わる。ARDSは、ICUへの入院およびCOVID-19関連死の99%の原因である。ARDSは、肺胞・毛細管関門の浮腫に続発するガス交換障害により引き起こされる呼吸器の悪化を特徴とする。この肺外傷は、ウイルスによる肺上皮の侵襲に対する強力な炎症性応答の調節不全からもたらされる。
SARS-Cov-2は、2019年以来数億人に感染し、強力な抗ウイルス処置の開発を必要とする世界的な健康上の緊急事態を表している。
継続的な研究にも関わらず、大部分の有害かつ危険なウイルス性感染症に対する抗ウイルス薬は開発されておらず、既存の医薬品は、多くの場合ヒトに対し毒性であるかまたは効力が不十分である。これまでのところ、これらパンデミックを予防するために、ワクチンのみが開発されている。大部分の既存の薬物または開発中の薬物は、特定のウイルスタンパク質との特異的な相互作用を介して作用し、このような薬物は、限定されたスペクトラムの活性を有し、耐性ウイルスバリアントの迅速な出現を促進している。
よって、本開示の主題は、中度~重篤な症例の生存率の改善に特に有効であると予測される、SARS-Cov-2により引き起こされるCOVID-19の処置のための新規組成物および方法を提供することである。驚くべきことに、ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量が、COVID-19に感染した患者に重要な支援および健康改善を提供することが見出された。
本出願は、特にはCOVID-19などのSARS-Cov-2ウイルスにより引き起こされる呼吸器ウイルス疾患を処置する方法であって、ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を患者に投与するステップを含み、前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤がヒドロキシクロロキンと異なる、方法に使用するための組成物および処置する方法に関する。
本発明に係る組成物および処置方法は、SARS-Cov-2ウイルスにより引き起こされる呼吸器ウイルス感染症の中度~重篤な症例で起こる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を罹患した患者の生存率の改善に特に有効である。よって、上記組成物および処置方法は、中度~重篤なCOVID-19の症例の処置および/または共存症もしくは複数の共存症の症例に有用である。
図1は、プロトコルの最後の5週間の間1mg/kgのプレリキサホルの毎日の皮下注射の後にFEV0.05/FVCにより測定したマウスの肺機能を示すグラフである。試験したマウスは、ポリIC滴下でのタバコ煙への曝露、およびPBS注射(灰色の四角)または1mg/kgのプレリキサホル注射(黒色の四角)のいずれかにより誘導される肺外傷を呈した。*:P<0.05 図2A~Bは、RV/(LV+S)として計算されるFulton指数により定量化した心臓のリモデリングを示すグラフである(LV:左心室、RV:右心室、S:中隔)。(A)Fulton指数。対照のマウス(黒色の丸)およびポリIC滴下でのタバコ煙への曝露により誘導される肺外傷を伴うマウス(灰色の四角)。(B)Fulton指数。試験したマウスは、ポリIC滴下でのタバコ煙への曝露、およびPBS注射(灰色の四角)または1mg/kgのプレリキサホル注射(黒色の四角)のいずれかにより誘導される肺外傷を呈した。*:P<0.05、**:P<0.01 図3A~Bは、SARS-CoV-2に感染したK18-hACE2マウスに及ぼすプレリキサホルの効果を示すグラフである。(A)は、SARS-CoV-2に感染してから4日後および5日後のビヒクルで処置したマウスおよびプレリキサホルで処置したマウスの体重減少の個々のパーセンテージを示す。(B)は、SARS-CoV-2に感染した後のビヒクルで処置したマウスおよびプレリキサホルで処置したマウスの生存率のパーセンテージを示す。 図4は、非感染のマウス、プレリキサホル(3mg/kg/日)での処置を伴うかまたは伴わない感染したマウスの血漿におけるシトルリン化ヒストンH3レベルの定量化を示すグラフである。平均値±SEM;n=5(または非感染のビヒクルグループでは2)。 図5A~Cは、好中球の遊走に及ぼす重篤な患者由来の10%のCOVID-19血清の効果を示すグラフである。好中球は、安定したCOPDを有する患者(n=6)から単離し、重篤なCOVID-19を有する患者由来の10%の血清を伴う(黒色の四角の記号)かまたは伴わずに(黒色の丸の記号)インキュベートした。図5A-Cは、重篤なCOVID-19を有する患者由来の血清に応答した(A)DAPICD16、(B)DAPICD16CXCR4、および(C)DAPICD16CXCR4の細胞の遊走の比較を示す。結果は、個々の対象の値を示す記号で表される。*P<0.05、ウィルコクソンの符号順位検定。 図6A~Cは、25μg/mLのプレリキサホル(黒色の四角の記号)またはビヒクル(黒色の丸の記号)の存在下での重篤なCOVID-19を有する患者由来の10%の血清に応答した安定したCOPDを有する患者(n=6)から単離した好中球の遊走に及ぼすプレリキサホルの効果を示すグラフである。図6A-Cは、重篤なCOVID-19を有する患者由来の血清に応答した(A)DAPICD16、(B)DAPICD16CXCR4、および(C)DAPICD16CXCR4の細胞の遊走の比較を示す。結果は、個々の対象の値を示す記号で表される。*P<0.05、ウィルコクソンの符号順位検定。
よって本発明は、SARS-CoV2により引き起こされるコロナウイルス感染症を処置するための、化合物、組成物、医薬組成物、およびケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤である特定の化合物の使用方法を提供する。本発明に係るケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤は、ヒドロキシクロロキンと異なる。
また本発明は、COVID-19を処置するための、化合物、組成物、医薬組成物、およびケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を患者に投与するステップを含むケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤である特定の化合物の使用方法を提供する。具体的に本発明は、ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を患者に投与するステップを含む、複数の共存症を伴うかまたは伴わないCOVID-19を処置する方法に使用するための組成物、およびCOVID-19を処置する方法を提供する。
さらに本発明は、ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を患者に投与するステップを含む、SARS-Cov-2に感染した患者のネトーシスを減少させ、かつ/または肺炎、急性呼吸不全、およびARDSを軽減する化合物、組成物、医薬組成物、および方法に関する。ただし上記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤は、好ましくはヒドロキシクロロキンとは異なる。
本明細書中使用される場合、用語「処置」または「~を処置する」は、疾患に罹患するリスクがあるかまたは疾患に罹患した疑いのある患者、および疾病状態にあるかまたは疾患もしくは病態を罹患していると診断された患者の処置を含む、治療法または疾患を改変する処置を表し、臨床的な再発の抑制を含む。障害もしくは再発した障害の1つ以上の症状を治癒、当該症状の発症を遅延、当該症状の重症度を低減、もしくは当該症状を寛解するため、または当該処置の非存在下で予測されるものを超えて対象の生存率を長期化するために、処置が、医学的障害を有するかまたは最終的に障害を獲得し得る対象に行われ得る。
急性呼吸不全または重症急性呼吸器症候群(SARS)は、全ての年齢の人々に罹り得、ファーストレスポンダー、たとえば看護師、医師などでは可能性がより高い。初期症状として、発熱、悪寒、筋肉痛、咳だけでなく、息切れおよび/または頻呼吸が挙げられる。しかしながら、SARS-Cov-2に感染した患者の2/3は、ARDSなどの合併症を発症した。
本発明では、ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤は、インドール系化合物、N置換インドール化合物、ビサイクラム化合物、サイクラムミメティック化合物、パラ-キシリル-エンジアミン系化合物、グアニジン系アンタゴニスト化合物、テトラヒドロキノリン系化合物、または1,4-フェニレンビス(メチレン)化合物から選択され得る。本発明に係るケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤は、ヒドロキシクロロキンとは異なるか、かつ/またはヒドロキシクロロキンを含まない。
好ましいケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤は、プレリキサホル(AMD3100)、ブリキサホル(Burixafor)(TG-0054)、JM1657、AMD3329、AMD3465、AMD070、MSX-122、CTCE-9908、WZ811、またはBKT-140から選択される。最も好ましい本発明に係るケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤は、プレリキサホルである。
プレリキサホルは、よく知られている薬物のCXCR4アンタゴニストであり、本来抗HIV薬として開発されている。また、プレリキサホルおよび顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の併用が、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫を有する患者での回収およびその後の自家移植のため造血幹細胞(HSC)を末梢血へ動員するために、アメリカ食品医薬品局により2008年に承認された。よって、プレリキサホルは、いくつかの臨床試験を介して検証されていた。よって、毒性、薬物動態、および全ての潜在的な有害なイベントが完全に知られており、これによりCOVID-19病態への登録の実行可能な迅速な追跡を可能にしている。
本出願人らは、以下の実施例において、5週間の間、たとえばプレリキサホル(1mg/kg)などのCXCR4アンタゴニストの治療有効量の投与が、ウイルス感染症を模倣するポリIC滴下でのタバコ煙への曝露、およびPBS注射により誘導される肺外傷を有するマウスの肺機能を改善したことを示した(図1および2)。
また本出願人らは、プレリキサホルが中期または重篤期の患者における呼吸器病態、およびCOVID-19の肺疾患の発展を有意に改善し得ることを示した。特に、ネトーシスが、プレリキサホルなどのCXCR4アンタゴニストの有効量での処置後にRNAウイルスに感染したマウスにおいて有意に低減したことが示された(図4)。これらは、明らかにブレイクスルーとなる結果である。実際に、好中球による好中球細胞外トラップ(NET)の放出は、侵襲している病原性微生物に対する生理的な防御機構であることが知られているが、好中球およびNETはまた、COVID-19などの呼吸器ウイルス感染症に続発する病理的炎症およびARDSの発症に寄与すると同定されている。実際に、ネトーシス、すなわち肺胞腔でのNETの形成は、肺に対する局所的な炎症およびウイルス負荷であり、感染した患者に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)をもたらす。患者へのCXCR4アンタゴニストの投与は、COVID-19患者における好中球の遊走の有意な阻害をもたらすと予想される。
さらに、本出願人らは、重篤なCOVID-19を模倣するためにK18-hACE2トランスジェニックマウスおよび致死用量のSARS-CoV-2を使用した重篤なCOVID-19のマウスモデルにおいて、プレリキサホルが、ビヒクルで処置したマウスと比較してマウスの体重減少の動態を低減し(図3A)、プレリキサホルで処置したマウスの44.44%において20%生存率が改善した(図3B)ことを示した。
プラットフォーム preprints.org(doi:10.20944/preprints202002.0438.v1)でHosseini FSらにより公開された2020年2月24日の論文でプレリキサホルが不適格となったため、このことは特に驚くべきことである。この論文で、著者は、SARS-CoV-2のプロテアーゼの結合ポケットの中での分子のドッキングのシミュレーションおよび予想される結合エネルギーに基づき、SARS-CoV-2プロテアーゼの阻害性の見込みを呈するFDAにより承認された小分子を同定するための仮想スクリーニングを行った。著者は、プレリキサホルによる骨髄の既知の副作用と、患者の病態の悪化をもたらすと予測される強力な免疫系の抑制とを考慮して、COVID-19患者でのプレリキサホルの臨床的な調査を明白に却下した。
本発明に係る組成物および方法は、疾患の中期~進行期または重篤期のCOVID-19患者を処置するために特に効率的である。
中度のCOVID-19の症例は、肺の下部での炎症を伴う症例である(ここで咳のような肺の症状がより顕著である)。肺は、大きな気道(気管支)、小さな気道(細気管支)、および末端の小さな気嚢(肺胞)からなり、ここで酸素は空気から抽出される。これらは、肺の伸縮性およびコンプライアンスを保ち、気嚢の開口を保つことを支援するサーファクタントと呼ばれる流体を含む。中度のCOVID-19を有する患者は、細気管支へと炎症が下部へ移動し得る。これらは、特に移動する場合に、より息がしづらく心拍数が増大する傾向がある。
COVID-19患者の大部分は良性または軽度または中度の疾病を有するが、罹患した患者の16~20%は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす重篤なCOVID-19の病態を発症する。重篤なCOVID-19患者は、非常に息苦しく(かつ、わずかに移動した後または休息時であっても快適な速度で呼吸できない場合があり)、座り続けている場合であっても通常より呼吸が速くなる。彼らは余分な呼吸をしなければ1つのセンテンスを終えることができない。彼らはさらには発話を回避する場合がある。彼らの酸素レベルが低下している場合があり、よって呼吸を早くしたい衝動が強い。通常、医師は、この病態を評価する際に呼吸速度を測定する。正常な成年は、これについて考えていない場合、1分あたり約12~18回の呼吸で呼吸する。肺炎ではこの速度は上昇し、場合により著しく上昇する。
COVID-19患者で保存される肺のコンプライアンスは、SARS-CoV-2に対する肺上皮の応答が疾患の単一の構成要素ではないことを示唆している。さらに、COVID-19関連のARDS患者で示される超炎症状態もまた、炎症性応答に続く内皮の活性化を示唆している。
COVID-19は、肺の脈管構造を損傷すると思われる。特にこれは、個々の細胞のネクローシスを引き起こし得る毛細血管内皮細胞/微小血管の機能不全を誘導し得る。COVID-19の重篤な疾患症例の病理組織学的な根拠が分析されており、全ての症例で、フィブリンの沈着に加え、血小板の凝集および血小板を多く含む血餅の形成を伴う巨核球の活性化に関連するびまん性の肺胞損傷を示した。
通常、COVID-19患者は、臨床歴の一致、疫学的接触、および陽性のSARS-CoV-2試験により検出される。具体的には、SARS-CoV-2感染症は、特異的なPCR試験を使用して鼻咽頭分泌物中のウイルスRNAの陽性検出により確認され得る。
また、Berlin 2012 ARDSの診断基準では、COVID-19 ARDSは、COVID-19患者が(1)急性低酸素性呼吸不全、(2)1週間以内での呼吸症状の悪化、(3)浸出液、肺葉または肺の崩壊、または小結節により完全に説明されない胸部x線、コンピュータ断層撮影、または超音波での両側性気腔疾患、および(4)急性低酸素性呼吸不全の主因ではない心不全を呈する場合、診断される。これはまた、息切れ(呼吸困難としても知られている)が、重篤な症例およびICUへ入ることを必要とする患者に有意に関連している唯一のCOVID-19の症状であることを見出した。COVID-19 ARDSは、数日にわたり予測可能な時間経過をたどり、ここでの挿管までの時間の中央値は、症状が発生してから8.5日後である。よって、COVID-19が進行する際にARDSの発症に関して患者をモニタリングすることが重要である。呼吸速度およびSpOは、患者の臨床状態を判断するためおよびARDSの早期認識を可能にするための2つの重要なパラメータである。以下の病態のいずれか1つに当てはまる患者は、重篤な疾患を有し得、さらなる評価を必要とする/呼吸速度≧30回の呼吸/分、SpO≦92%;PaO/FiO≦300mmHg。
本発明では、処置する方法および上記方法に使用するための組成物は、抗IL6モノクローナル抗体または抗IL6受容体モノクローナル抗体をさらに投与するステップを含み得る。少なくともケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤と併用して、感染した患者、好ましくはCOVID-19患者に投与され得る抗IL6モノクローナル抗体または抗IL6受容体モノクローナル抗体の例として、本発明者らは、シルツキシマブ(キャッスルマン病を処置するための抗IL6キメラモノクローナル抗体、商標名Sylvant(登録商標)の下販売)、オロキズマブ(olokizumab)(関節リウマチを処置するためにR-Pharmの企業により開発中である抗IL6ヒト化モノクローナル抗体、CDP6038またはOKZとも呼ばれる)、シルクマブ(関節リウマチを処置するためCentocorの企業により開発中である抗IL6ヒトモノクローナル抗体、CNTO136とも呼ばれる)、トシリズマブ(関節リウマチを処置するため商標名Actemra(登録商標)の下Genentechにより販売されている抗IL6ヒトモノクローナル抗体)、エルシリモマブ(elsilimomab)(Immunogenにより現在開発されている抗ヒトIL6治療用抗体)、クラザキズマブ(clazakizumab)(関節リウマチを処置するためBMSにより開発された抗IL6;以前はBMS-945429またはALD518と呼ばれていた)、levilimab(BCD-089)、CPSI-2364、ALX-0061を引用し得る。
本発明に係る処置方法および方法に使用するための組成物は、薬学的に許容されるビヒクル、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗生剤、PPI阻害剤、キノリン化合物、亜鉛化合物、γグロブリン、造血細胞、間葉系細胞、抗炎症薬、ワクチン、低分子干渉RNAおよびマイクロRNA、免疫調節薬、または回復期患者由来の血漿を投与するステップをさらに含み得る。好ましくは、本発明に係る方法および使用のための組成物は、上記COVID-19患者へのいずれのヒドロキシクロロキンまたはクロロキンのさらなる投与をも含まない。
抗ウイルス薬は、以下の薬物:ヌクレオチド類縁体、ヌクレオシド類縁体、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非-ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、ノイラミニダーゼ阻害剤、エンドヌクレアーゼ阻害剤、アダマンタン、プロテアーゼ阻害剤(PI)、インテグラーゼ阻害剤(INSTI)、融合阻害剤(FI)、ケモカイン受容体アンタゴニスト(CCR5アンタゴニスト)、またはsiRNAから選択され得る。
上述のケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤と併用してCOVID-19患者に投与され得る抗ウイルス薬の例として、本発明者らは、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、ampligen、アンプレナビル(Agenerase(商標))、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、balavir、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(商標))、ビクタルビ、ボセプレビル(Victrelis(商標))、シドホビル、コビシスタット(Tybost(商標))、コンビビル、ダクラタスビル(Daklinza(商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(商標))、エコリエベル(ecoliever)、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(商標))、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ファビピラビル、triazavirin、ガンシクロビル(Cytovene(商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インターフェロンI型、インターフェロンII型、インターフェロンIII型、ラミブジン、レテルモビル(Prevymis(商標))、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、nexavir、ニタゾキサニド、ノービア、オセルタミビル(Tamiflu(商標))、ペグインターフェロンα-2a、ペグインターフェロンα-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、pyramidine、ラルテグラビル、レムデシビル、リバビリン、リルピビリン(Edurant(商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(商標))、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(Valtrex(商標))、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(商標))、ジドブジンを引用し得る。
上述の組成物および方法は、非経口経路、経口経路、経鼻経路、眼性経路、経粘膜経路、または経皮経路を介して投与され得る。最も好ましい投与経路は、静脈内経路、筋肉内経路、または皮下経路である。
COVID-19患者に投与される特定の治療上用量は、治療上および/または防止的効果を得るために必要な用量である。この用量は、患者の病態、体重、年齢および性別、投与される化合物、投与経路などに応じて医師により決定され得る。用量は、単回用量、分割された1日用量、または複数の1日用量によるものであり得る。あるいは、連続した投与、たとえば制御された(たとえばゆっくりとした)放出剤形を介して連続した投与が、毎日または1度に1日超の間、行われ得る。
上述の好ましい実施形態では、プレリキサホルが、ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤として選択され得る。よってこれは、約10~40μg/kg bid(20~80μg/kg/日)の用量での皮下経路および約10~120μg/kg/時間の用量での連続した静脈内経路を介して投与される。最も好ましい実施形態では、プレリキサホルは、30μg/kg/日の用量で静脈内灌流経路を介してCOVID患者に投与される。
本発明では、方法および組成物は、健康上の病態または共存症、たとえば高血圧、肥満、および/または糖尿病を有する最も不安定な患者の処置に特に有用である。しかしながら、心筋梗塞の病歴を有する患者およびがん患者は除外され、よって本発明に係る組成物および方法で処置されない。さらに、上述の組成物および方法は、心臓に保護作用を有すると予測される。これは、本出願人らが、たとえばプレリキサホルの投与がFulton指数により定量化される心臓のリモデリングを改善することを示しているためである。
上記患者として、末期腎不全(ESRD)患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者、AIDS患者、糖尿病患者、肥満患者、高血圧患者、新生児、移植患者、免疫抑制療法中の患者、免疫系機能不全を有する患者、自己免疫疾患患者、長期介護施設にいる高齢患者、免疫抑制療法中の自己免疫疾患を有する患者、熱傷患者、および短期医療下にある患者からなる群から選択される患者が挙げられる。
本発明に係る使用に適したCXCR4アンタゴニストは、単独で投与され得るが、ヒトの治療では、全般的に、意図した投与経路および標準的な薬学的実務に関して選択される適切な薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤、希釈剤、または担体と混合して投与される。このような薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤は、0.1重量%から100重量%未満の量で存在し得る。薬物-賦形剤の比率を最適化することは、当業者の範囲内にあり、たとえば本組成物中の薬物/賦形剤の望ましい重量比は、適切な媒体における薬物/賦形剤の溶解度の比率以下であり得る。
本発明の医薬組成物は、非経口的、たとえば静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、皮下的に投与され得るか、または灌流もしくはニードルフリー技術により投与され得る。
このような非経口投与では、これらは、他の物質、たとえば血液と等張な溶液を作製するために十分な塩またはグルコースを含み得る無菌性水溶液の形態で最良に使用される。水溶液は、必要に応じて適切に(好ましくは約3~9のpHに)緩衝される。無菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準的な薬学的技術により容易に達成される。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象のCOVID-19疾患を処置する方法であって、i)RT-PCRまたは他の同等の技術により前記対象から得たサンプルにおけるウイルス量を決定するステップと、ii)ステップi)で決定したウイルス量を所定の参照値と比較するステップと、iii)上述のケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を前記対象に投与するステップとを含む方法に使用するための組成物、および処置する方法を対象とする。この実施形態では、サンプルは、好ましくは血液サンプルまたは粘液サンプルである。
本出願を通して、様々な参照文献が参照されており、これら刊行物全体の開示は、本発明が関与する最新技術をより完全に説明するために、本出願に参照により組み込まれている。
実施例1:肺機能に及ぼすCXCR4アンタゴニストの効果
ポリIC滴下でのタバコ煙への曝露により誘導される肺外傷を呈したマウスに、5週間の間、PBSまたは1mg/kgのプレリキサホルを毎日皮下注射した。次に、肺機能を、FEV0.05/FVC比を測定することにより評価した。図1は、PBS注射と比較した1mg/kgのプレリキサホル注射での処置の後のマウスの肺機能の統計上有意な改善を示した。
実施例2:心機能に及ぼすCXCR4アンタゴニストの効果
実施例1と同じく、ポリIC滴下でのタバコ煙への曝露により誘導される肺外傷を呈したマウスに、5週間の間、PBSまたは1mg/kgのプレリキサホルを毎日皮下注射した。次に、心機能およびリモデリングを、Fulton指数により定量化し、RV/(LV+S)として計算した(LV:左心室、RV:右心室、S:中隔)。図2は、PBS注射と比較した1mg/kgのプレリキサホル注射での処置の後のマウスの心機能の統計上有意な改善を示した。
実施例3:SARS-CoV-2に感染したK18-hACE2マウスに及ぼすCXCR4アンタゴニストの効果
ヒトACE2受容体を発現するトランスジェニックC57BL/6マウス(K18-hACE2マウス)の2つのグループをこの試験に割り当てた。5×10のTCID50の臨床SARS-CoV-2単離物SARS-CoV-2を用いた感染を、鼻腔内(IN)投与により0日目に15匹のマウスで行った。同日、感染したマウスを、6匹のマウスで注射した水(グループ1M)または9匹のマウスで10mg/kg/日のプレリキサホル(グループ2M)を用いて終了まで1日2回処置した。試験の間、死亡率および罹患率の観察ならびに体重の測定を行った。マウスを、20%超の体重減少を達成した際に、倫理上の理由のため安楽死させた。
実施例3.1:体重減少
マウスの体重を、終了まで毎日経過観察した。
図6Aに示されるように、プレリキサホルで処置したマウスは、ビヒクルのマウスと比較して有意な体重減少動態の低減を示した(p<0.0011)。実際に、5日目に、プレリキサホルで処置したマウスは、平均して自身の体重の17.6%±1.28%を喪失し、対してビヒクルで処置したマウスは平均して自身の体重の20.43%±2.88%を喪失した。
実施例3.2:マウスの生存率
20%を超える体重減少に達したマウスは安楽死させ、死亡時間を正確に記録した。
図6Bに示されるように、ビヒクルグループ由来のマウスは、5日目の午前中までに全て安楽死させた。プレリキサホルで処置したマウスは、5日目(2匹のマウスは午前中および2匹のマウスは午後)、および6日目(4匹のマウスを午前中)に安楽死させた。死亡時間の有意差が、ビヒクルで処置したマウスとプレリキサホルで処置したマウスとの間で観察された(Wilcoxon検定 p<0.05)。
実施例4:臨床試験1「LEONARDO」
cOvid-19に関連した急性呼吸窮迫症候群におけるプレリキサホル(フェーズIIb)
実施例4.1:設計
並行グループを用いた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験
実施例4.2:主目的
プレリキサホルが集中治療室(ICU)に入った重篤なCOVID-19患者における侵襲的な人工呼吸の比率を減少できることを示すこと。
実施例4.3:主要評価項目
D1~D28までの、生存しており、侵襲的な人工呼吸を必要としなかった患者のパーセンテージ(どれが最初に起こるかにかかわらず、死亡率および/または侵襲的な人工呼吸を必要とするまでの時間を含む複合的なプライマリーエンドポイント)。
実施例4.4:副次評価項目
1.死亡率(時間枠:D1~D90)
2.人工呼吸器離脱期間(時間枠:D1~D28)
3.人工呼吸の期間(時間枠:D1~D90)
4.ICU滞在期間(時間枠:D1~D90)
5.1秒間努力呼気容量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、動脈血酸素分圧(PaO)、および一酸化炭素肺伝達能(TLCO)を含む呼吸機能(時間枠:D90)
6.臨床的な改善(時間枠:D1、D8、D14、D28、D90)
7.CRP、フィブリノーゲン、およびD-ダイマーのレベル(時間枠:D1、D3、D8、D14、D28]
8.安全性(AE、心臓のモニタリング、バイタルサイン、lab試験)に関してプラセボと比較したプレリキサホルの安全性および認容性の評価
に関してプラセボと比較したプレリキサホルの効力を評価すること。
実施例4.5:診査のアウトカム
1.血中CXCR4陽性好中球の計数、CXCR4陽性線維細胞の計数、CXCL12、IL-6、IL-8、TNFαの濃度(時間枠:D1、D3、D8、D28)
2.血中CD34+細胞の計数(時間枠:D1、D3、D8、D28)
3.血中ネトーシス(時間枠:D1、D3、D8、D28)
4.血中CD4+細胞、CD8+細胞、制御性T細胞、NK細胞(時間枠:D1、D3、D8、D28)に関してプレリキサホルの効果を評価すること。
実施例4.6:選択基準
臨床試験参加者の避妊方法に関する地方条例と一致する避妊薬を使用する、18歳以上の男性または女性(セクション10.4を参照)。
記入済みのインフォームドコンセントを提供する意志があり、提出できること(または存在する場合は法的に認められた代理人により提出)、
COVID-19関連の呼吸不全のため、最近(48時間以内に)ICUに入った患者。ICUまたは国の特性に準じた同等の医療構造、たとえば
連続IV注入、
連続的な心臓テレメトリー、呼吸速度、経皮的酸素飽和度のモニタリング
高流量経鼻酸素(high flow nasal oxygen)
を提供し得る場合の、急性呼吸器ケアユニット、高度依存症ケアユニット。
研究者の判断による火急の(24~36時間以内の)侵襲的な人工呼吸を必要としないこと。
無作為化前の2週間以内に行われる、(上咽頭または咽頭サンプルにおける)RT-PCRによるかまたはいずれかの検体における他の市販のまたは公的な健康アッセイにより決定される研究室で確認したSARS-CoV-2感染症
を伴うSARS-CoV-2による肺炎の確認
94%超の経皮的酸素飽和度を達成するために酸素の支援(≧5L/分)を必要とする急性呼吸不全、
CKD-EPI(Chronic Kidney Disease-Epidemiology Collaboration)式による推定糸球体濾過量(eGFR)>50mL/分/1.73m(計算はセクション10.8に提供されている)。
またCOVID-19ワクチン接種を行った患者もこの試験に含まれ得る。
実施例4.7:除外基準
妊娠または授乳中
入院時の挿管禁止指示
72時間以内に試験場所ではない別の病院への転院が予想されること。
包含時に侵襲的な人工呼吸を必要とすること
SARS-Cov-2以外の細菌性肺疾患または活動性感染症のエビデンス(研究室での確認)、
原始肺動脈性高血圧症、
心血管系共存症
血管虚血性イベント(心筋梗塞もしくは脳卒中)またはうっ血性心不全または末梢性動脈疾患の病歴、
以前または現在の顕著な心調律異常(たとえば心室頻拍)
証明されている症候性***性低血圧の既知の病歴
急性白血病および慢性白血病を含む進化するがんの病歴
好中球絶対数(ANC)<1.0×10/L、
ヘモグロビン<9.0g/dL(90g/L)、
血小板<100×10/L、
により定義される不適切な血液機能、
カリウム血<3.5mmol/Lおよび/またはカルシウム血<2.2mmol/L、
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>3倍の正常値上限(ULN)および/または総ビリルビン>2×ULNにより定義される不適切な肝機能
プレリキサホルまたはその賦形剤に対する既知のアレルギーを有する患者
実施例4.8.投与スケジュール
プレリキサホル 7日間の連続的な静脈内注入にて30μg/kg/時間またはプラセボ 注入に関して同様の形式
実施例4.9:選択される患者の数
サンプルの大きさは、以下の前提に基づく:
1.人工呼吸を必要とする臨界期のCOVID-19を有するICUの患者の比率の現在の推定値(Bichat and Bordeaux CHUでは50%)、
2.プレリキサホルが、50%から27%まで、重篤なCOVID-19を有する患者での侵襲的な人工呼吸の比率を低減する(すなわちプラセボと比較して46%の減少)との推定、
3.両側分析、α=0.05
上述の前提では、プレリキサホルのグループで100名の患者およびプラセボグループで50名の患者が、80%の検出力にて侵襲的な人工呼吸を必要する患者の比率の有意な減少を検出するために必要とされる。
実施例5:臨床試験1「LEONARDO-1」
cOvid-19に関連する急性呼吸窮迫症候群におけるプレリキサホル(フェーズIIb)
実施例5.1:設計
並行グループを用いた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験
実施例5.2:主目的
最良の利用可能な処置に加えCXCR4アンタゴニストのプレリキサホルが、COVID-19に関連する急性呼吸窮迫症候群患者の人工呼吸器離脱期間を増やすことができることを例証すること。
実施例5.3:主要評価項目
28日での人工呼吸器離脱期間(VFD)は、治療および介入の効果を定量化するためのいくつかの臓器不全フリーのアウトカムの測定のうちの1つである。VFDは、通常、以下のように定義される:
a.対象が28日間の人工呼吸以内に死亡する場合、VFD=0
b.開始後x日間人工呼吸からの離脱に成功した場合、VFD=28-x
c.対象が28日超の間機械的に人工呼吸する場合、VFD=0
実施例5.4:副次評価項目
1.28日目での死亡率(時間枠:無作為化から28日後)、無作為から28日後に評価した死亡率
2.90日目での死亡率(時間枠:無作為化から90日後)、無作為から90日後に評価した死亡率
3.28日以内での侵襲的な人工呼吸を必要としない患者のパーセンテージ(時間枠:28日目)
4.28日以内でのICU離脱期間の数(時間枠:28日目)
5.6カ月目での肺線維症のCTスキャンの存在(時間枠:6カ月目)
6.1、7、14、28日目での安全性(肺塞栓症、心筋梗塞、不整脈、動脈性低血圧、貧血、血小板減少症、白血球増加症、推定GFR、タンパク尿)
7.1日目、3日目および7日目および28日目でのCRP、フェリチン、D-ダイマーの血中レベル
実施例5.5:下位試験における他の副次評価項目
1.1日目、3日目、および7日目での血中好中球および線維細胞の計数
2.1日目、3日目、および7日目での血中CXCR4陽性好中球、CXCR4陽性線維細胞、CD34細胞の計数
3.1日目、3日目、および7日目での血中CXCL12濃度
4.1日目、3日目、および7日目での血中ネトーシス
a.MPOおよびシトルリン化H3
b.DNase
実施例5.6:選択基準
18歳以上の男性または女性
記入済みのインフォームドコンセントを提供する意志があり提出できること(または代理人により提供)
研究室により確認されたCOVID-19感染症で現在入院していること
48時間未満の侵襲的な人工呼吸を必要とすること
試験の開始時にFDA-EMAにより推奨される標準治療
ベルリン基準によるARDSの診断を伴うこと
実施例5.7:除外基準
蘇生拒否指示(DNR指示)を有する患者
妊娠または授乳中
既知の細菌性肺炎
現在の心筋梗塞
過去5年の間の既知のがん(固形または血液)
原始肺性高血圧、肺線維症
プレリキサホルに対する過敏症
全ての時間にて好中球濃度>50000/mm
実施例4.8:投与スケジュール
プレリキサホル 14日間、10~40μg/kg bid(20~80μg/kg/日)にて皮下投与
HIV臨床試験では、プレリキサホル(AMD3100)を、10日間、2.5から160μg/kg/hへの非盲検の用量増加試験での連続的な静脈内注入により投与した。
WHIM症候群では、プレリキサホルは、皮下注射により6カ月間(6カ月間10~20μg/kg bidにて)投与した。
用量は、クレアチニンクリアランス<50ml/分の場合に調節しなければならない。
実施例5.9:選択される患者の数
近年提出された試験に基づき、トシリズマブにより処置したARDS患者は、28日目にVFD=14.86+/-5.36を有していた。
仮説は、本明細書中上述される最良の利用可能な処置と組み合わせたプレリキサホルは処置が、2日間VFDを増大するということである。4グループの患者(プラセボ、pleri 10、pleri 20、pleri 40μg/kg bid)が計画されている。5%のαリスクで90%の検出力を得るために、本発明者らは、アームあたり132名の患者を包含する必要がある。
実施例6:臨床試験2「PLANET」
中度のCOVID-19におけるプレリキサホル(フェーズIIb)
実施例6.1:設計
並行グループを用いた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験
実施例6.2:主目的
選択1および2の間の選択は、中度から重度の形態のCOVID-19へ移行した患者のパーセンテージに基づく(データは近日、DISCOVERY/CORIMMUNO試験)。
選択1:
最良の利用可能な処置に加えCXCR4アンタゴニストのプレリキサホルが中度のCOVID-19に達するまでの時間を減少し得ることを例証すること。
選択2:
最良の利用可能な処置に加えCXCR4アンタゴニストのプレリキサホルが、14日目に死亡しているかまたは人工呼吸(機械的もしくは非侵襲的)を必要とする中度のCOVID-19患者のパーセンテージを減少できることを例証すること。
実施例6.3:主要評価項目
選択1:
人工呼吸器の支援を必要としないことにより定義される(WHOの基準)、中度のCOVID-19に達するまでの時間。
選択2:
14日目に人工呼吸(機械的もしくは非侵襲的)を必要とするかまたは死亡した患者のパーセンテージ。
実施例6.4:副次評価項目
1.14日目での中度のCOVID-19を有する患者のパーセンテージ
2.最初のCTスキャン(診断)と3カ月のCTスキャン(無作為化の後)との間の差異(時間枠:3カ月目)
3.最初のTDIと最後のTDIとの間の差異(時間枠:14日目)
4.14日目での周囲大気で行った6分間の歩行試験の距離(m)
5.周囲大気で行った6分間の歩行試験の間SpO2<90%である患者のパーセンテージ
6.28日目での死亡率(時間枠:無作為化から28日後)
無作為化から28日後に評価した死亡率。
7.28日以内でのICU離脱期間の数(時間枠:28日目)
8.28日以内の最大酸素比率(時間枠:28日目)
9.28日以内にて病院の外で生存する日数(時間枠:28日目)
10.28日以内の酸素療法で生存する日数(時間枠:28日目)
11.1、7、14、28日目での安全性(肺塞栓症、心筋梗塞、不整脈、動脈性低血圧、貧血、血小板減少症、白血球増加症、推定GFR、タンパク尿)
12.1日目、3日目、および7日目、および28日目でのCRP、フェリチン、D-ダイマーの血中レベル
実施例6.5:下位試験における他の副次評価項目
13.1日目、3日目、および7日目での血中好中球および線維細胞の計数
14.1日目、3日目、および7日目での血中CXCR4陽性好中球、CXCR4陽性線維細胞、CD34細胞の計数
15.1日目、3日目、および7日目での血中CXCL12濃度
16.1日目、3日目、および7日目での血中ネトーシス
c.MPOおよびシトルリン化H3
d.DNase
実施例6.6:選択基準
18歳以上の男性または女性
記入済みのインフォームドコンセントを提供する意志があり提出できること(または代理人により提供)
研究室により確認されたCOVID-19感染症で現在入院していること
侵襲的な人工呼吸を必要とせず、97%超の経皮的酸素飽和度および呼吸速度<25回の呼吸/分を得るために3~5L/分の酸素療法を必要とすることにより定義される、中度のCOVID-19を有すること
試験の開始時にFDA-EMAにより推奨される標準治療
実施例6.7:除外基準
ICUに入院した患者
侵襲的な人工呼吸を必要とする患者
妊娠または授乳中
既知の細菌性肺炎
現在の心筋梗塞
現在の肺塞栓症
過去五年の間の既知のがん(固形または血液)
原始肺性高血圧、肺線維症
プレリキサホルに対する過敏症
全ての時間にて好中球濃度>50000/mm
実施例6.8:投与スケジュール
プレリキサホル 14日間10~40μg/kg bid(20~80μg/kg/日)にて皮下投与
HIV臨床試験では、プレリキサホル(AMD3100)を、10日間、2.5から160μg/kg/hへの非盲検の用量増加試験での連続的な静脈内注入により投与した。
WHIM症候群では、プレリキサホルは、皮下注射により6カ月間(6カ月間10~20μg/kg bidにて)投与した。
用量は、クレアチニンクリアランス<50ml/分の場合に調節しなければならない。
実施例7:プレリキサホルは、RNAウイルス性感染症誘導性ネトーシスを阻害する。
この試験のため、5つのグループのC57Bl/6マウスを割り当てた。0日目に、10匹のマウスに、50PFU(プラーク形成単位)を含むPBSの鼻腔内(IN)投与によりRNAウイルスでの感染を行った。
2匹のマウスは、50μlのPBSで鼻腔内処置した(グループ1M-非感染)。
1日目に、感染したマウスを、注射用水にて毎日2回(グループ2Mおよび4M)または3mg/kg/日のプレリキサホル(グループ3Mおよび5M)で処置した。試験の間、死亡率および罹患率の観察ならびに体重測定を行った。
7日目に、グループ1M、2M、および3M由来のマウスを安楽死させ、血漿にてネトーシス分析するため、血液を回収した(シトルリン化ヒストンH3およびDNA)。
この試験は、試験設計に関する表1および試験の予定表に関する表2にしたがい行った。
Figure 2023539542000002
Figure 2023539542000003
7日目に、グループ1M、2M、および3M由来のマウスを安楽死させた。胸腔を開いた後に心穿刺により血液を回収した。
実施例7.1:血液サンプルの調製
血液サンプルを、血漿分離のため4℃で1500gにて15分間遠心分離した。血漿を収集し、すぐに清潔な1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、発送のため-70℃またはドライアイスの中に保存した。
実施例7.2:血漿でのネトーシス分析
ネトーシス分析のため血漿サンプルをBordeaux Hospital U1034ユニットの外部の研究室に送付した。ネトーシスは、血漿中のシトルリン化ヒストンH3およびDNAを用量決定(dosing)することにより評価した。シトルリン化ヒストンH3の用量決定では、この技術は、Cell death detection kit (Roche)を部分的に使用したThalinらにより記載された方法(Validation of an enzyme-linked immunosorbent assay for the quantification of citrullinated histone H3 as a marker for neutrophil cellular traps in human plasma. Immunol Res. 2017; 65: 706-712)から出典されている。
ウェルを、抗ヒストンH11-4抗体を用いて、+4℃で一晩コーティングした。洗浄バッファーで3回洗浄した後、40μlの血漿+60μlのインキュベーションバッファーを、撹拌しながら90分間インキュベートした。3回洗浄した後、インキュベーションバッファーで1:2000に希釈した100μlのヒストンH3に対するウサギポリクローナル(シトルリンR2+R8+R17)抗体を、各ウェルに撹拌しながら室温にて90分間適用した。3回洗浄した後、インキュベーションバッファーで1:6000に希釈したヤギ抗ウサギHRP抗体100μlを添加した。プレートを、撹拌しながら室温で60分間インキュベートした。3回洗浄した後、100μlのTMBを5~10分間添加し、反応を100μlのH2SO4(0.25M)で停止させた。
吸光度は、450nm(参照620nm)で読み取った。
7日目の終わりに、グループ1M、2M、および3Mのマウスの血液を回収した(グループ2Mおよび3Mではグループあたり5匹のマウス、グループ1Mでは2匹のマウス)。血漿サンプルを収集し、ネトーシスのパラメータを、シトルリン化ヒストンH3および血漿中DNA濃度を用量決定することにより評価した。
実施例7.3:シトルリン化ヒストンH3のレベルの評価
好中球の細胞トラップのバイオマーカーであるシトルリン化ヒストンH3のレベルを、血漿において評価した。個体およびグループの平均シトルリン化ヒストンH3のレベルを、表3および図3に提示する。
非感染のマウスの血漿におけるシトルリン化ヒストンH3のレベルは、低濃度で検出された。RNAウイルス感染は、このマーカーのレベルを増大させた(RNAウイルスに感染したグループでは2.124±0.563vs非感染のグループでは0.113±0.008)。3mg/kg/日でのプレリキサホル処置は、シトルリン化ヒストンH3のレベルをわずかに減少させた(RNAウイルス感染+プレリキサホル3mg/kg/日のグループでは1.428±0.799vsRNAウイルスに感染したグループでは2.124±0.563)。
Figure 2023539542000004
実施例8:プレリキサホルは、COVID-19患者の血清により誘導される好中球の遊走を阻害する。
好中球は、6名の患者のCOBRAコホート(COPDおよび喘息の患者のコホート)から単離した。5×10個の好中球を、プレリキサホル(25μg/mL)で37℃にて15分間またはHBSSビヒクルで前処置した。次に細胞を、0.5%のHSA培地を含む0.2mLのHBSSでの遊走アッセイのため改変されたBoydenチャンバーの上部の区画に載置した。HBSS、0.5%のHSAまたはHBSS、0.5%のHSA+重篤なCOVID-19患者由来の血清(10%希釈)を、各ウェルの下部の区画に添加した。遊走アッセイを3時間続け、この後、下部の区画の細胞を回収し、DAPI、抗CD16抗体および抗CXCR4抗体で染色した。細胞の同一性および計数を、FACS法により分析した。
実施例8.1:全血からのヒト好中球の単離
好中球は、Hartlらにより記載される方法(Infiltrated neutrophils acquire novel chemokine receptor expression and chemokine responsiveness in chronic inflammatory lung diseases. J. Immunol. Baltim. Md 1950. 181:8053-8067)により単離される。等張性Percoll密度勾配を通して、好中球を、COPD患者の血液から新鮮な状態で単離した。好中球を回収し、20mMのHEPESおよび0.1(w/v)%のBSAを含むHBSSで2回洗浄し、HBSS、20mMのHEPESおよび0.1(w/v)%のBSAにて、0.2mL中5×10の細胞濃度で再懸濁した。
実施例8.2:好中球の遊走に及ぼすCOVID-19血清の作用
好中球の遊走を、Boydenチャンバーアッセイを使用し、トランズウェルインサート(孔径8μm)を使用して評価した。0.5%のHSAを含む0.2mLのHBSS中合計5×10個の好中球細胞を、各ウェルの上部の区画に添加した。指示される場合、好中球を、CXCR4のアンタゴニストのプレリキサホル(25μg/mL)にて、37℃で15分間前処置した。HBSS、0.5%のHSA、および重篤なCOVID-19患者由来の血清(10%希釈)を、各ウェルの下部の区画に添加した。3時間後に、下部の区画の中身を、1mLで洗浄し、下部のチャンバーの細胞含有物を、FACSチューブにて回収し(FACSチューブあたり1つの下部のチャンバーの細胞含有物)、DAPI染色のためのプロセスを行い、死亡しつつある細胞を除外した。
下部のチャンバーから好中球を回収した後、FACSチューブを、4℃、500gにて5分間遠心分離した。細胞の固定化および透過処理を以下のように行った:0.3mLのCytofix/Cytopermを15分間添加した(チューブは、光から保護される)。次に、400μLの透過処理バッファーを添加し、4℃、400g、5分間での遠心分離で細胞を処理した。上清を廃棄し、抗体染色で細胞を処理した。細胞を、全ての好中球を考慮するための抗CD16、CXCR4を発現する好中球を特異的に考慮する抗CXCR4と4℃で40分間インキュベートした。次に、400μLの透過処理バッファーを添加し、細胞を、4℃、400gで5分間遠心分離した。上清を廃棄した後、細胞を、適切な二次抗体と4℃で40分間インキュベートした。最後に、細胞を、DAPIと4℃でインキュベートした。DAPIインキュベート(を行いFACS計数から死亡しつつある細胞を除外した)後、400μLの1×PBSを添加し、細胞を4℃、400gで5分間遠心分離した。細胞を、300μLの1×PBSに再懸濁した。遊走細胞の絶対値を得るために、各条件でのフローサイトメトリーによる計数を、一定の所定期間(1分間)の間に得た。
Figure 2023539542000005
各条件の処置は二連で行った。
患者由来のCOVID-19血清の作用を評価し、図4に示した。
25μg/mLのプレリキサホル(赤色の丸の記号)またはビヒクル(黒色の丸の記号)の存在下での重篤なCOVIDを有する患者由来の10%の血清に応答した安定したCOPDを有する患者(n=6)由来の好中球の遊走。重篤なCOVIDを有する患者由来の血清に応答したDAPICD16(図4A)、DAPICD16CXCR4(図4B)、およびDAPICD16CXCR4(図4C)の細胞の遊走の比較。結果は、個々の対象の値を表す記号で表した。*P<0.5、ウィルコクソンの符号順位検定。
FACS分析は、総DAPI-CD16+におけるCXCR4+好中球の割合が、10%の血清の存在下で約1%(表5)であることを確立した。これは、非炎症性状態または非COVID状態では、未成熟のCXCR4+好中球は、骨髄のみに存在し、血流への放出は最小限であるという事実と一致している。
Figure 2023539542000006
DAPI-CD16+、DAPI-CD16+CXCR4-、およびDAPI-CD16+CXCR4+の細胞の遊走性の応答を評価した。重篤なCOVID-19血清は、好中球からの遊走性応答を誘導した。実際に、好中球は、COVID-19血清へ曝露した後より有意に多く遊走する(P<0.05)。CXCR4+好中球は、0%の血清条件と比較してCOVID-19血清に応答して2倍(Sg87)~1345倍(Sg89)多く遊走する(表6)(FACS計数の生データおよび各患者の別々の生データは、添付書類により提供される)。
Figure 2023539542000007
実施例8.3:好中球の遊走に及ぼすプレリキサホルの効果
次に、プレリキサホル(25μg/mL)の効果を、3つの好中球の集団、すなわちDAPI-CD16+、DAPI-CD16+CXCR4-、およびDAPI-CD16+CXCR4+で評価した。
図5に示されるように、25μg/mLのプレリキサホル(赤色の丸の記号)またはビヒクル(黒色の丸の記号)の存在下での重篤なCOVIDを有する患者由来の10%の血清に応答して、安定したCOPDを有する患者(n=6)由来の好中球の遊走。重篤なCOVIDを有する患者由来の血清に応答したDAPICD16(図5A)、DAPICD16CXCR4(図5B)、およびDAPICD16CXCR4(図5C)の細胞遊走の比較。結果は、個々の対象の値を表す記号で表される。*P<0.5、ウィルコクソンの符号順位検定。
CXCR4アンタゴニストのプレリキサホルは、好中球の総集団の血清誘導性の動員を有意に低減しなかった(図5A)。驚くことではないが、プレリキサホルは、CXCR4陰性好中球の遊走に有意な効果を有さなかった(図5B)。これは、DAPI-CD16+CXCR4+が表す小さなパーセンテージ(約1%)と一致する。対照的に、プレリキサホルは、CXCR4陽性好中球の遊走を強くかつ高い再現性で減少させた(図5C)。プレリキサホルは、CXCR4+好中球を75.8%±5.9%減少させた(表7)。
Figure 2023539542000008

Claims (15)

  1. ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を患者に投与するステップを含むCOVID-19を処置する方法に使用するための組成物であって、前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤が、ヒドロキシクロロキンと異なる、組成物。
  2. 前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤が、インドール系化合物、N置換インドール化合物、ビサイクラム化合物、サイクラムミメティック化合物、パラ-キシリル-エンジアミン系化合物、グアニジン系アンタゴニスト化合物、テトラヒドロキノリン系化合物、または1,4-フェニレンビス(メチレン)化合物である、請求項1に記載の方法に使用するための組成物。
  3. 前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤が、プレリキサホル(AMD3100)、ブリキサホル(burixafor)(TG-0054)、JM1657、AMD3329、AMD3465、AMD070、MSX-122、CTCE-9908、WZ811、またはBKT-140から選択される、請求項1または2に記載の方法に使用するための組成物。
  4. 前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤が、非経口経路、経口経路、経鼻経路、眼性経路、経粘膜経路、または経皮経路から選択される経路を介して投与される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法に使用するための組成物。
  5. 前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤が、静脈内経路、筋肉内経路、または皮下経路を介して投与される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法に使用するための組成物。
  6. 前記ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストまたは阻害剤が、プレリキサホルであり、プレリキサホルが、約5~80μg/kg bid(20~80μg/kg/日)の用量での皮下経路および約10~120μg/kg/時間の用量での連続した静脈内経路を介して投与される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法に使用するための組成物。
  7. 前記対象が、中期~進行期のCOVID-19感染症にある、先行する請求項のいずれかに記載の方法に使用するための組成物。
  8. 前記患者の共存症または複数の共存症を処置するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法に使用するための組成物。
  9. 前記共存症または複数の共存症を有する患者が、肥満患者、高血圧を有する患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者、末期腎不全(ESRD)患者、AIDS患者、糖尿病患者、新生児、移植患者、免疫抑制療法中の患者、免疫系機能不全を有する患者、自己免疫疾患患者、長期介護施設にいる高齢患者、免疫抑制療法中の自己免疫疾患を有する患者、熱傷患者、または短期医療下にある患者を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法に使用するための組成物。
  10. 薬学的に許容されるビヒクルを投与するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法に使用するための組成物。
  11. 前記COVID-19患者に、抗IL6モノクローナル抗体または抗IL6受容体モノクローナル抗体、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗生剤、PPI阻害剤、キノリン化合物、亜鉛化合物、γグロブリン、造血細胞、間葉系細胞、抗炎症薬、ワクチン、低分子干渉RNAおよびマイクロRNA、免疫調節薬、または回復期血漿を投与するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法に使用するための組成物。
  12. 前記抗IL6モノクローナル抗体または抗IL6受容体モノクローナル抗体が、シルツキシマブ、オロキズマブ(olokizumab)、シルクマブ、トシリズマブ、エルシリモマブ(elsilimomab)、クラザキズマブ(clazakizumab)、levilimab、CPSI-2364、またはALX-0061から選択される、請求項11に記載の方法に使用するための組成物。
  13. 前記抗ウイルス薬が、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、ampligen、アンプレナビル(Agenerase(商標))、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、balavir、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(商標))、ビクタルビ、ボセプレビル(Victrelis(商標))、シドホビル、コビシスタット(Tybost(商標))、コンビビル、ダクラタスビル(Daklinza(商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(商標))、エコリエベル(ecoliever)、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(商標))、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ファビピラビル、triazavirin、ガンシクロビル(Cytovene(商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インターフェロンI型、インターフェロンII型、インターフェロンIII型、ラミブジン、レテルモビル(Prevymis(商標))、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、nexavir、ニタゾキサニド、ノービア、オセルタミビル(Tamiflu(商標))、ペグインターフェロンα-2a、ペグインターフェロンα-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、pyramidine、ラルテグラビル、レムデシビル、リバビリン、リルピビリン(Edurant(商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(商標))、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(Valtrex(商標))、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(商標))、ジドブジンから選択される、請求項11に記載の方法に使用するための組成物。
  14. それを必要とする患者のCOVID-19を処置する方法であって、
    i)RT-PCRまたは他の同等の技術により前記対象から得たサンプルにおけるウイルス量を決定するステップと、
    ii)ステップi)で決定したウイルス量を所定の参照値と比較するステップと、
    iii)ケモカイン受容体CXCR4の少なくとも1つのアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を前記対象に投与するステップと
    を含む方法に使用するための組成物。
  15. 前記サンプルが、血液サンプルまたは粘液サンプルである、請求項14に記載の方法に使用するための組成物。
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