JP2023175674A - 熱交換装置 - Google Patents

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和樹 曽根
Kazuki Sone
靖 市川
Yasushi Ichikawa
仁 伊藤
Hitoshi Ito
允宣 内村
Masanobu Uchimura
亜美 青梅
Ami Ome
護 宮原
Mamoru Miyahara
洋知 西原
Hirotomo Nishihara
和也 金丸
Kazuya Kanamaru
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Abstract

【課題】小型化およびエネルギーの消費効率の向上が可能であり、吸発熱量および吸発熱出力が高く、媒体を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置を提供する。【解決手段】弾性を有し、収縮して媒体を脱離可能であり、かつ、膨張して前記媒体を吸着可能である、ナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、前記ナノ多孔質体に応力を印加して前記ナノ多孔質体を収縮させる動作と、印加された前記応力を解放して前記ナノ多孔質体を膨張させる動作とを行う応力付与部と、前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記媒体を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない多孔質部と、前記ナノ多孔質体および前記多孔質部を収容する収容部と、を有する、熱交換装置である。【選択図】図2

Description

本発明は、熱交換装置に関する。
従来から、熱を移動させることで対象(空間や物体)の加熱や冷却を行う熱交換装置が広く用いられている。例えば、下記特許文献1には、媒体としての水を気化させる高熱源と、気化させた水分を凝縮する低熱源とを与えるヒートポンプと、水分を集めるデシカント(乾燥材)とを用いた吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)が開示されている。このような吸着式ヒートポンプでは、一般に、デシカントに用いる吸着材としてシリカゲル、ゼオライトなどの多孔質体が採用されている。
特開平10-197011号公報
しかしながら、従来の吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)では、多孔質体中の媒体である冷媒分子の移動速度が小さい。このため、冷媒分子が蒸発する(すなわち、吸熱する)際に、冷媒分子の蒸発速度が小さく、単位時間内に十分な吸熱量を得ることが難しい。冷媒分子の蒸発を促すために、多孔質体の温度を上昇させる方法が考えられるが、この方法では入熱用のヒータが必要となるため装置の大型化を招く。また、ヒータを稼働させるためのエネルギーが必要となるため、エネルギーの消費効率が低下する。
また、特に設置スペースの限られているカーエアコンなどに適用するために、吸発熱量および吸発熱出力がより高い熱交換装置が求められている。さらに、媒体を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、小型化およびエネルギーの消費効率の向上が可能であり、吸発熱量および吸発熱出力が高く、媒体を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その過程で、応力を印加および解放することによって、機械的に変形して、媒体を脱離および吸着可能なナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体を熱交換装置の吸着剤として用い、脱離または吸着により発生した潜熱を冷熱または温熱に直接的に利用した。この際、上記ナノ多孔質体を、媒体を透過させるがナノ多孔質材料の粒子を透過させない多孔質部で覆うことで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の一形態は、弾性を有し、収縮して媒体を脱離可能であり、かつ、膨張して前記媒体を吸着可能である、ナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、前記ナノ多孔質体に応力を印加して前記ナノ多孔質体を収縮させる動作と、印加された前記応力を解放して前記ナノ多孔質体を膨張させる動作とを行う応力付与部と、前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記媒体を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない多孔質部と、前記ナノ多孔質体および前記多孔質部を収容する収容部と、を有する、熱交換装置である。
本発明によれば、小型化およびエネルギーの消費効率の向上が可能であり、吸発熱量および吸発熱出力が高く、媒体を繰り返し吸着および脱離させた場合であっても熱交換性能の低下が生じにくい熱交換装置が得られうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱交換装置の構成例を示す断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る熱交換装置の収容部の内部を立体的に示す図である。 図3Aは、実施例および比較例で作製したナノ多孔質体を含む試料の構成を示す模式図である。 図3Bは、吸熱量の評価のための装置の構成を模式的に示す図である。 図4は、実施例および比較例で作製したナノ多孔質体を含む試料の吸熱時(応力印加時)の質量あたりの温度変化をプロットしたグラフである。 図5Aは、本発明の一実施形態による熱交換装置の概略図である。 図5Bは、本発明の他の実施形態による熱交換装置の概略図である。 図5Cは、多孔質部の細孔を表すモデル図である。 図5Dは、本発明の他の実施形態による熱交換装置の概略図である。 図5Eは、本発明の一実施形態による熱交換装置における応力付与部の概略図である。 図5Fは、本発明の他の実施形態による熱交換装置の概略図である。 図6(a)は、実施例3において、GMSに吸着させたメタノールを応力印加により脱着させたときの温度変化、およびメタノールの吸脱着等温線を測定するための装置の概略図である。図6(b)は、比較例3において、メタノールの吸脱着等温線を測定するための装置の概略図である。 図7は、実施例3で作製した試料について、吸着させたメタノールを応力印加により脱着させたときの温度変化を表すグラフである。 図8は、(a)実施例3および(b)比較例3で作製した試料を用いて測定したメタノールの吸脱着等温線である。
本発明の一形態は、弾性を有し、収縮して媒体を脱離可能であり、かつ、膨張して前記媒体を吸着可能である、ナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、前記ナノ多孔質体に応力を印加して前記ナノ多孔質体を収縮させる動作と、印加された前記応力を解放して前記ナノ多孔質体を膨張させる動作とを行う応力付与部と、前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記媒体を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない多孔質部と、前記ナノ多孔質体および前記多孔質部を収容する収容部と、を有する、熱交換装置である。
従来の吸着式ヒートポンプ(デシカント空調器)では、多孔質体中の媒体である冷媒分子の移動速度が小さい。このため、冷媒分子が蒸発する(すなわち、吸熱する)際に、冷媒分子の蒸発速度が小さく、単位時間内に十分な吸熱量を得ることが難しい。冷媒分子の蒸発を促すために、多孔質体の温度を上昇させる方法が考えられるが、この方法では入熱用のヒータが必要となるため装置の大型化を招く。また、ヒータを稼働させるためのエネルギーが必要となるため、エネルギーの消費効率が低下する。
これに対して、本発明による熱交換装置では、応力を印加および解放することによって細孔径を変化させ、ゲスト分子として取り込まれる媒体を可逆的に気液相転移させることができるナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体を吸着剤に用いる。これにより、本発明による熱交換装置は、ゲスト分子の相変化によって吸熱または発熱するナノ多孔質体を熱源として、収容部外に存在する物質(例えば、空気)と熱交換することができる。この熱交換装置では、ヒータによる入熱ではなく、応力付与部によるプレスが入力エネルギーとなる。このため、前記熱交換装置は、エネルギーの消費効率(COP:Coefficient Of Performance)を向上させることができる。また、上記熱交換装置は、入熱用のヒータは不要であるため、小型化が可能である。
本発明の熱交換装置は、ナノ多孔質体の表面に隣接して、媒体を透過可能であり、ナノ多孔質材料を透過させない多孔質部が配置されていることを特徴とする。多孔質部を配置することにより、機械的に応力を印加した際にナノ多孔質体が型崩れを起こしたり、不純物が混入することを防ぐことができる。そのため、ナノ多孔質体に荷重を均一に印加できるため吸発熱量が向上しうる。また、ナノ多孔質体の型崩れによる吸脱着量の低下が生じにくいため、吸発熱量が維持されうる。
さらに、本発明者らは、上記多孔質部の細孔径を制御することで、ゲスト分子の吸脱着量が改善されることを見出した。多孔質部の細孔径がゲスト分子の分子径に対して小さすぎると、ゲスト分子の拡散が阻害されてゲスト分子が十分に吸脱着しない。そのため、良好な熱交換性能が得られない。一方で、多孔質部の細孔径がナノ多孔質体を構成するナノ多孔質材料の二次粒子径に対して大きすぎると、ナノ多孔質材料が多孔質部を透過して多孔質部の外に漏れ出してしまい、ゲスト分子の吸脱着量が低下してしまう。
これに対して、多孔質部の細孔径を、媒体を透過可能であり、ナノ多孔質材料を透過させないように制御することにより、ナノ多孔質材料が多孔質部の外部に漏れ出すことを抑制することができる。また、それと同時に、ゲスト分子を選択的に透過させ、ゲスト分子の拡散を妨げない構造とすることができる。このような構造とすることにより、ゲスト分子の拡散を阻害しないため吸脱着量が向上しうる。また、ナノ多孔質材料が多孔質部を透過して多孔質部の外に漏れ出すことによる吸脱着量の低下が生じにくい。その結果、吸発熱量が向上しうる。また、応力の印加および解放を繰り返しても吸発熱量の低下がより生じにくい。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<熱交換装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る熱交換装置100の構成例を示す断面図である。図2は、熱交換装置100の収容部32A、32Bの内部を立体的に示す図である。図1および図2に示す熱交換装置100は、例えば、自動車の室内(内気)を冷却するカーエアコン(冷房)に適用することができる装置である。
熱交換装置100は、ナノ多孔質体20に応力を印加および解放することにより、ナノ多孔質体20を機械的に変形させて、ナノ多孔質体20からの媒体の脱離およびナノ多孔質体20への媒体の吸着を行う。例えば、熱交換装置100は、媒体の脱離時に発生する蒸発潜熱から得た冷熱を利用して対象(例えば、空気)を冷却する。また、熱交換装置100は、媒体の吸着時に発生する凝縮潜熱から得た排熱を利用して、空気を加熱することも可能である。熱交換装置100は、冷却した空気と加熱した空気とを混合して、空気を所望の温度に調整することも可能である。なお、ナノ多孔質体20から脱離または吸着する媒体を、冷媒と言い換えてもよい。また、気化した媒体を、媒体蒸気、冷媒蒸気、または、ゲスト分子と言い換えてもよい。
図1に示すように、熱交換装置100は、第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bと、装置全体の動作を制御する制御部40と、を備える。制御部40は、第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bのうち一方の動作モードが脱離モードである間は他方の動作モードが吸着モードになるようにスイング運転する。これにより、脱離モードの第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bにおいて連続的に冷熱を生成することが可能となる。ここで、「脱離モード」とは、媒体をナノ多孔質体20から脱離させる動作モードである。また、「吸着モード」とは、媒体をナノ多孔質体20に吸着させる動作モードである。
熱交換装置100は、第1収容部32Aと第2収容部32Bとの間を媒体蒸気(ゲスト分子)27が移動可能に連通する配管50と、配管50の連通状態と遮断状態とを切り替えるバルブ51と、を有する。バルブ51を開くと配管50は連通状態となり、バルブ51を閉じると配管50は遮断状態となる。
(熱交換部)
図1に示すように、第1熱交換部30Aは、第1ナノ多孔質体20Aと、第1多孔質部25Aと、第1応力付与部31Aと、第1収容部32Aと、第1空気調節部33Aと、を有する。同様に、第2熱交換部30Bは、第2ナノ多孔質体20Bと、第2多孔質部25Bと、第2応力付与部31Bと、第2収容部32Bと、第2空気調節部33Bと、を有する。
第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bは、同様の構成を有する。以下の説明では、第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bを総称して「熱交換部30A、30B」と称する。同様に、第1応力付与部31Aおよび第2応力付与部31Bを総称して「応力付与部31A、31B」と称する。また、第1収容部32Aおよび第2収容部32Bを総称して「収容部32A、32B」と称する。また、第1空気調節部33Aおよび第2空気調節部33Bを総称して「空気調節部33A、33B」と称する。さらに、第1ナノ多孔質体20Aおよび第2ナノ多孔質体20Bを総称して「ナノ多孔質体20」と称する。また、第1多孔質部25Aおよび第2多孔質部25Bを総称して「多孔質部25」と称する。
(ナノ多孔質体)
ナノ多孔質体20は、弾性を有し、収縮して媒体を脱離可能で、かつ、膨張して媒体を吸着可能なナノ多孔質の材料(ナノ多孔質材料)を含む構造体である。例えば、ナノ多孔質体20は、複数の粒子と、複数の粒子同士を結合するバインダとを含み、複数の粒子の各々がナノ多孔質材料である(すなわち、複数のナノレベルの細孔を有する)構造体であってもよい。また、例えば、ナノ多孔質体20は、バインダを含まず、ナノ多孔質材料のみから構成される構造体でありうる。図2に示すように、ナノ多孔質体20は、応力付与部31A、31Bから応力を印加されて収縮して媒体を脱離し、応力を解放すると自由膨張して媒体を吸着する。
ここで、「弾性」とは、応力付与部31A、31Bによって外部から応力が印加されて収縮しても、応力が解放されることによって、可逆的に大きく変形してほぼ元の形状に回復する性質を意味する。ナノ多孔質体20の弾性限度は、媒体を脱離するために必要な応力印加よりも大きくなるように設計されている。ナノ多孔質体20の弾性限度は、熱交換装置100の適用対象の冷却規模等に応じて適宜設計することが好ましい。
また、「ナノ多孔質」とは、複数のナノレベルの細孔を有することを意味する。ナノレベルの細孔とは、好ましくは直径0.5~100nmであり、より好ましくは直径0.7~50nmであり、さらに好ましくは直径0.7~6nmのミクロ孔またはメソ孔である。なお、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)では、直径2nm以下の細孔をミクロ孔(micropore)、直径2~50nmの細孔をメソ孔(mesopore)、直径50nm以上の細孔をマクロ孔(macropore)と定義している。
一般的に、固体表面はファンデルワールス力によるポテンシャルエネルギーが高く、媒体の分子を凝縮させる作用がある。ナノ多孔質体に吸着された媒体は、ナノレベルの小さな細孔壁に囲まれているため、固体表面のファンデルワールス力(物理吸着力)によるポテンシャルエネルギーが著しく高い。このとき、気体の媒体は、ナノ多孔質体の細孔壁に液体の密度で吸着される。すなわち、ナノ多孔質体への吸着は気体から液体への相変化と同質の現象であり、吸着熱は凝縮潜熱にほぼ等しい。
媒体は、ナノ多孔質体20に吸着すると気体から液体へ相変化し、脱離すると液体から気体へ相変化する。ナノ多孔質体20の細孔壁に吸着された細孔内部の液体密度の媒体は、飽和蒸気圧よりも低い圧力の蒸気と平衡状態となっている。すなわち、ナノ多孔質体20の細孔壁に吸着された気体は、飽和蒸気圧よりも低い圧力で液体の状態となっている。
図2に示すように、ナノ多孔質材料19および任意でバインダ(図示せず)を含むナノ多孔質体20に応力が印加されると、ナノ多孔質体20の細孔が収縮し、細孔壁に吸着していた媒体は脱離する。このとき、液体の密度で吸着された媒体は、気体としてナノ多孔質体20の外部に放出される。熱交換装置100は、この脱離の際の蒸発潜熱を冷熱として利用することによって、対象(例えば、空気)を冷却することができる。
また、ナノ多孔質体20に印加された応力が解放されると、ナノ多孔質体20は自由膨張して細孔が元の大きさに戻り、媒体を再び吸着させる。上述したように、媒体は、ナノ多孔質体20へ吸着される際に、気体から液体へ相変化して、凝縮潜熱を発生する。熱交換装置100は、この吸着の際の凝縮潜熱を温熱として利用することができる。
ナノ多孔質体を構成するナノ多孔質材料としては、弾性を有し、収縮して流体媒体を脱離可能で、かつ、膨張して流体媒体を吸着可能な材料であれば特に限定されない。
ナノ多孔質材料は、炭素を主成分とすることが好ましい。ここで、「炭素を主成分とする」とは、炭素のみからなる、実質的に炭素からなる、の双方を含む概念であり、炭素以外の元素が含まれていてもよい。「実質的に炭素からなる」とは、全体の90質量%以上、好ましくは全体の95質量%以上、全体の98質量%以上、または全体の99質量%以上(上限:100質量%)が炭素から構成されることを意味する。
そのような材料としては、単層グラフェン骨格を含み、媒体の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有する炭素材料が挙げられる。
具体的には、例えば、ゼオライトテンプレートカーボン(ZTC;Zeorite Templated Carbon)、グラフェンメソスポンジ(GMS;Graphene MesoSponge)、炭素メソスポンジ(CMS;Carbon MesoSponge)等が挙げられる。ゼオライトテンプレートカーボン(以下、「ZTC」と称する。)、グラフェンメソスポンジ(以下、「GMS」と称する。)、および炭素メソスポンジ(以下、「CMS」と称する)は、いずれも単層グラフェン骨格からなり、流体媒体の脱離および吸着に必要な多孔性および弾性特性を有している。
ZTCは、単層のグラフェンシートにより構成される。また、均一な細孔(直径約1.2nm)が三次元的に規則配列し、相互に連結しており、極めて高いBET比表面積と細孔容積を有する(最大でBET比表面積が4100m/g、細孔容積が1.8cc/g)ことが知られている。ZTCの製造方法については、Nishihara,H.et al.,Chemistry-European Journal 15, 5355(2009)等に記載されている。
GMSは、細孔壁の大部分が単層グラフェンから構成され、約6nm程度の微小な細孔を有するスポンジ状のメソ多孔体であり、活性炭に匹敵する極めて高いBET比表面積(約2000m/g)を有している。その一方で、活性炭やカーボンブラックとは異なり腐食の原因となるグラフェンの端部をほとんど含んでいないことから、優れた耐食性(酸化耐性)も備えている。また、柔軟かつ強靭であるというグラフェンの性質に起因して、GMSは柔軟性および弾性に優れ、細孔の直径が約5.8nmから約0.7nmになるまで可逆的に弾性変形することができる。GMSの製造方法については、Nishihara,H.et al.,Advanced Functional Materials,Vol.26,2016,6418-6427.に記載されている。
CMSは、上記GMSの前駆体として得ることができ、上記GMSと同様に球状のメソ孔を有する。
ナノ多孔質材料のBET比表面積は、特に制限されないが、例えば、800~4200m/gの範囲である。これにより、媒体の吸着量を増加させることができる。
前記ナノ多孔質材料は粉末状でありうる。前記ナノ多孔質材料の粉末の大きさは、多孔質部を透過しない大きさであれば特に限定されないが、例えば、平均二次粒子径が0.5~1000μmであり、好ましくは5~500μmであり、さらに好ましくは10~100μmである。ナノ多孔質材料の平均二次粒子径の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。また、「粒子径」とは、観察される粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
ナノ多孔質体がバインダを含む場合、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
2種類以上のバインダを組み合わせて用いてもよい。特に、バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレン-ブタジエンゴム(SBR)とを組み合わせて用いることが好ましい。この際、CMCとSBRとの混合比は特に制限されないが、例えば、SBRに対するCMCの質量比(CMC/SBR)が、固形分換算で、0.5~2であることが好ましく、1.1~1.6であることがより好ましい。
ナノ多孔質材料をバインダを用いて結合させてナノ多孔質体を構成する場合、ナノ多孔質体におけるバインダの含有量は、特に制限されないが、ナノ多孔質体の総質量に対して、固形分換算で、5~30質量%であることが好ましい。バインダの含有量が5質量%以上であれば、ナノ多孔質体の保持力が高まるため、より耐久性の高いナノ多孔質体が得られうる。一方、バインダの含有量が30質量%以下であれば、バインダがナノ多孔質材料内に入り込んで吸着質の吸着量が低下することを抑制することができる。さらにバインダの質量比が15~25質量%であると、より耐久性が向上すると共に吸着量の低下を抑制できるため好ましい。2種類以上のバインダを組み合わせて用いる場合はその合計量が上記範囲であることが好ましい。
本発明の一実施形態において、ナノ多孔質体は、バインダを含まないことが好ましい。具体的には、バインダの含有量は、ナノ多孔質体の総質量に対して、固形分換算で、例えば1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。バインダを用いないことで、応力をかけたときにバインダが変形して変位を吸収することがないため、ナノ多孔質材料に荷重を均一にかけることができる。また、バインダが変形してナノ多孔質体の細孔を潰してしまうことを防止することができる。その結果、冷媒蒸気の拡散が阻害されず、脱着が促進されるため、吸熱出力および吸熱量が増加しうる。さらに、バインダを含まないことでナノ多孔質体の質量あたりの吸熱量が増加しうる。また、同様の理由で、ナノ多孔質体は、ナノ多孔質材料のみから構成されることが好ましい。具体的には、ナノ多孔質材料の含有量は、ナノ多孔質体の総質量に対して、固形分換算で、例えば98質量%以上であり、好ましくは99質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。本発明の好ましい実施形態において、ナノ多孔質体は、バインダを含まず、ナノ多孔質材料のみから構成される。
(ナノ多孔質体の調製方法)
ナノ多孔質材料を作製する方法は特に制限されない。例えば、ナノ多孔質材料をバインダを用いて結合させてナノ多孔質体を作製する場合は、ナノ多孔質材料およびバインダを適当な溶媒に溶解または分散させてスラリーを作製し、これを基材に塗布して乾燥させることで、ナノ多孔質体を得ることができる。
溶媒としては特に限定されず、バインダを溶解または分散させることができるものであればよい。例えば、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリルなどの水に溶解/分散するバインダを用いる場合は、水(純水、超純水、蒸留水、イオン交換水、地下水、井戸水、上水(水道水)など)、水とアルコール(例えばエチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)との混合溶媒などを用いることができる。有機溶媒に溶解/分散するバインダを用いる場合は、公知の有機溶媒が適宜選択されうる。
なお、スラリーを作製する際、ナノ多孔質材料、バインダ、溶媒を混合する際の順序は特に制限されない。例えば、ナノ多孔質材料およびバインダを同時に溶媒に加えて混合してもよく、順次添加して混合してもよい。2種類以上のバインダを用いる際の混合順序も特に制限されない。また、ナノ多孔質材料またはバインダの少なくとも1種を、あらかじめ溶媒に溶解または分散させてから、得られた溶液または分散液を混合してもよい。例えば、バインダとしてCMCおよびSBRを用いる場合、あらかじめCMCの水溶液を作製し、これにナノ多孔質材料を添加して混合した後、別途調製したSBR水溶液をさらに添加して混合して、スラリーを得ることが好ましい。
基材としては特に制限されないが、アルミニウム(Al)または銅(Cu)が用いられうる。このような基材であれば、熱伝導体として作用するため熱交換を効率よく行うことができる。スラリーを基材上に塗工する方法としては、例えば、バーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法、ディップコート法等の塗工方法などを適用することができる。
塗工後の乾燥時の乾燥温度も特に制限されないが、例えば、0~100℃の範囲が好ましい。乾燥時間も特に制限されず、例えば、0.1~5時間の範囲である。乾燥後の膜厚も特に制限されないが、例えば、10~1000μmであり、好ましくは100~500μmである。
バインダを用いず、ナノ多孔質材料のみからナノ多孔質体を作製する場合の調製方法も特に制限されない。例えば、ナノ多孔質材料の粉末を多孔質部に封入することで、多孔質部に包装された形態のナノ多孔質体を得ることができる。
または、ナノ多孔質材料を熱処理する、好ましくはホットプレスすることによってナノ多孔質体を調製することができる。熱処理の条件は特に制限されない。例えば、減圧条件下において、140~160℃程度の温度で、200~400MPaの圧力印加を10分間~1時間程度施す。これにより、ナノ多孔質材料同士が強く結着し、耐久性に優れるナノ多孔質体が得られうる。加熱温度が140℃以上であれば高い結着性が得られ、160℃以下であれば試料作製時にナノ多孔質材料の劣化が生じにくい。なお、ホットプレスを行う前に、室温で加圧を行ってもよい。この際の圧力は、ホットプレスの際の加圧条件よりも低い圧力であることが好ましく、例えば、100~300MPaである。加圧時間も特に制限されないが、例えば10秒~1分である。このように、段階的に加熱、加圧を行うことで、より強い結合力が実現できる。同様の理由で、ホットプレスの工程を、段階的に徐々に加熱、加圧していくように、異なる加熱、加圧条件の2段階以上の工程で行ってもよい。
本形態の熱交換装置においては、バインダを用いずにナノ多孔質材料のみからナノ多孔質体を作製する場合、ナノ多孔質材料の粉末を熱処理せず、プレス処理せずに用いることが好ましい。
なお、バインダを用いず、ナノ多孔質材料のみからナノ多孔質体を作製する場合の膜厚も特に制限されないが、例えば、10~1000μmであり、好ましくは100~500μmである。
(多孔質部)
多孔質部25は、媒体であるゲスト分子27が透過しうる細孔を有し、ナノ多孔質体20の表面に隣接して配置される。好ましくは、ナノ多孔質体20の表面の少なくとも一部に接するように配置される。例えば、多孔質部25は、応力付与部31A、31Bとナノ多孔質体20との間、ナノ多孔質体20を挟んで応力付与部31A、31Bの反対側、および、ナノ多孔質体20の側面のうち、1か所以上に配置されている。好ましくは、多孔質部25は、応力付与部31A、31Bとナノ多孔質体20との間に配置される。より好ましくは、多孔質部25は、応力付与部31A、31Bとナノ多孔質体20との間およびナノ多孔質体20を挟んで応力付与部31A、31Bの反対側に配置される。特に好ましくは、多孔質部25は、ナノ多孔質体20の全体を覆うように配置されている。これにより、本発明の効果がより顕著に得られうる。
多孔質部25の細孔径は、ゲスト分子を透過させ、かつ、ナノ多孔質体20を構成するナノ多孔質材料を透過させない大きさであればよいが、ナノ多孔質材料の平均二次粒子径よりも小さく、ゲスト分子のサイズよりも大きいことが好ましい。
また、多孔質部25は、弾性を有し、かつ、ナノ多孔質体20よりも固いことが好ましい。これにより、応力付与部31A、31Bは、多孔質部25を介して、ナノ多孔質体20に応力を付与することが可能である。
多孔質部25は、ナノ多孔質体20の表面に隣接して配置されることによりナノ多孔質体20を支えることができるので、ナノ多孔質体20の型崩れを抑制することができる。これにより、応力を印加したときにナノ多孔質体20に荷重を均一にかけることができる。そのため、ゲスト分子27の拡散が阻害されず、脱着が促進されるため好ましい。また、ナノ多孔質体20の変形によりナノ多孔質体20の細孔が潰されることを回避できるため、吸熱出力および吸熱量が増加しうる。
前記多孔質部の細孔径は、下記式(1)で表される接触半径a(mm)に対して、2a(mm)以下であることが好ましい。
上記式(1)中、Pは、応力(N)であり、νおよびνは、それぞれナノ多孔質材料および多孔質部のポアソン比であり、EおよびEは、それぞれナノ多孔質材料および多孔質部の縦弾性係数(MPa)であり、RおよびRは、それぞれナノ多孔質材料および多孔質部の曲率半径(mm)である。
上記式(1)(ヘルツの公式)は、プレス荷重がナノ多孔質材料にかかったときのナノ多孔質材料の接触半径を表し、荷重に対してナノ多孔質材料がどのくらい変形するかを表す。多孔質部の細孔径が2a以下であれば、ナノ多孔質材料に応力をかけたときにナノ多孔質材料と多孔質部の表面の開口部以外の部分とが接触する領域が十分に大きくなる。ナノ多孔質体に応力をかけると、この接触する領域に荷重がかかるため、当該構成であるとナノ多孔質体により均一に荷重をかけることができ、冷媒蒸気の脱着がより促進されうる。そのため、冷媒蒸気の脱着量、応答性がより向上し、吸熱出力および吸熱量がより増加しうる。
また、多孔質部25の細孔径は、ナノ多孔質材料の平均二次粒子径の65%以下であることが好ましい。ナノ多孔質材料に荷重がかかった場合、ナノ多孔質材料が変形しうる。多孔質部の細孔径がナノ多孔質材料の平均二次粒子径の65%以下であれば、前記細孔径はナノ多孔質材料に応力をかけたときの多孔質部との接触面の直径以下の大きさになりうる。そのため、ナノ多孔質材料と多孔質部の表面の開口部以外の部分とが接触する領域が十分に大きくなる。ナノ多孔質体に応力をかけると、この接触する領域に荷重がかかるため、当該構成であるとナノ多孔質体により均一に荷重をかけることができ、冷媒蒸気の脱着がより促進されうる。その結果、吸熱出力および吸熱量がより向上しうる。この観点から、多孔質部の細孔径は130μm以下であることが好ましい。
多孔質部の細孔径の下限値は、媒体を透過させることができるものであれば特に制限されない。多孔質部の細孔径は、媒体の気体分子の平均自由工程をλとすると、0.1λ以上であることが好ましい。例えば媒体がメタノール(分子径0.38nm)であると、メタノール供給時の圧力(25℃でのメタノールの飽和蒸気圧である16937Pa)での平均自由工程λは0.378μmと算出される。媒体がエタノールであると、λは0.81μmと算出される。したがって、多孔質部の細孔径は、好ましくは0.04μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.06μm以上である。上記範囲であると、細孔内のガス拡散がクヌーセン拡散と分子拡散の両者が寄与する領域であることから、媒体分子の吸脱着とこれに伴う気液相転移がより効果的に進行しうる。特に媒体がエタノールである場合、上記範囲であると、本発明の効果がより一層顕著に得られうる。同様に、多孔質部の細孔径が10λ以下であると、細孔内のガス拡散がクヌーセン拡散と分子拡散の両者が寄与する領域であることから、媒体分子の吸脱着とこれに伴う気液相転移がより効果的に進行しうる。この観点から、細孔径は、例えば、8μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。媒体がエタノールである場合、細孔径は、好ましくは3μm以下である。
本発明の好ましい実施形態によれば、多孔質部の細孔径は、例えば20μm以下であり、例えば20μm未満であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは8μm以下であり、さらにより好ましくは5μm以下であり、さらにより好ましくは3μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以下であり、さらにより好ましくは0.5μm以下であり、さらにより好ましくは0.2μm以下である。また、多孔質部の細孔径は、好ましくは0.04μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.06μm以上である。
ここで、多孔質部の細孔径は、細孔の内接円の短軸直径をいう。多孔質部の細孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用いて測定することができる。多孔質部が大きさや形状の異なる細孔を有する場合は、その平均値として算出される値を採用するものとする。
一実施形態において、多孔質部25は、特に制限されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等の樹脂で構成されていることが好ましい。このような樹脂であれば低温にて熱融着が可能であり、製造工程の簡易化を図ることができる。そのため、コストを削減することができ、製造工程を高効率化できる。なかでも、ポリプロピレンは融点が約160℃であり、熱融着に適するため、上記の効果がより顕著に得られうるため好ましい。
多孔質部は、特に制限されないが、フィルムの形状であることが好ましい。多孔質部の厚さは特に制限されないが、例えば、5~100μmであり、好ましくは10~50μmである。多孔質部の空孔率も特に制限されないが、例えば、30~70%であり、好ましくは40~60%である。なお、多孔質部としては、市販の多孔質フィルムであって所定の細孔径を有するものを用いてもよい。
なお、多孔質部が糸状の樹脂で構成されている場合や、糸状の樹脂が二重織、朱子織、綾織されて濾布状に構成されたものである場合は、媒体のみならずナノ多孔質材料も透過させてしまうことから、本発明の効果は得られない。
本発明の他の好ましい実施形態において、多孔質部は、応力付与部とナノ多孔質体との間に存在し、印加応力以上のヤング率を有する多孔質材により構成される。これにより、多孔質部がプレス時に変形しないため、プレス荷重をナノ多孔質体の全体に均一に伝えることができる。具体的には、図5A(a)のように、応力付与部31により矢印の方向に応力を付与したときに、応力付与部31に接していない領域も含めて、多孔質部25の全体に荷重をかけることができる。そのため、本発明の効果がより顕著に得られうる。また、多孔質部の表面の一部に荷重を加えることで表面全体に均一に荷重が伝わることから、図5A(b)のように応力付与時に応力付与部31と多孔質部25とが接する面(プレス面)の面積を小さくすることができる。その結果、冷媒分子は図5A(b)の矢印に示すように、プレス方向に垂直な方向(X方向およびY方向)だけでなくプレス方向(Z方向)にも拡散しうる。例えば、ナノ多孔質体20の応力を加えない状態での厚さが10~1000μmと、XY面内方向の大きさに比較して小さい場合、X方向およびY方向への拡散に加えてZ方向への拡散が可能になることで吸発熱量が大幅に向上しうる。これらのことから、熱交換装置において吸発熱量がより一層向上する効果が得られうる。
ここで、多孔質材のヤング率は、印加応力よりも大きいことが好ましく、印加応力の10倍以上であることがより好ましく、印加応力の100倍以上であることがさらに好ましく、印加応力の1000倍以上であることがさらにより好ましい。また、特に制限されないが、多孔質材のヤング率は印加応力の10000倍以下であることが好ましい。
このような多孔質部を構成する多孔質材のヤング率は特に制限されないが、例えば、10MPa以上であり、好ましくは80MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは1GPa以上であり、さらにより好ましくは2GPa以上であり、さらにより好ましくは10GPa以上であり、さらにより好ましくは50GPa以上であり、さらにより好ましくは100GPa以上である。当該多孔質材のヤング率の上限値は特に制限されないが、例えば1000GPa以下であり、好ましくは300GPa以下であり、より好ましくは250GPa以下である。なお、多孔質材のヤング率は、JIS Z 2280の引張試験において、使用材料と同組成の40×50×1mmの試験片を用いて、298Kにおける測定によって算出される。
上記多孔質材の材質としては、金属を用いることが好ましく、例えば、ステンレス鋼(SUS)、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。また、上記多孔質材は、金属不織布、金属発泡体、金属焼結体であることが好ましい。本実施形態において、SUS焼結体を用いることが好ましい。
なお、このような多孔質材の細孔径および空孔率の具体的な形態は上述したものと同様である。特には、材質として金属を用いた場合の多孔質部の細孔径は、1~15μmであることが好ましい。
本形態の熱交換装置においては、図5Bに示すように、多孔質部25における応力印加方向に垂直な面25aの面積Sは、応力印加時に応力付与部31と多孔質部25とが接する面(プレス面)31aの面積Aよりも大きいことが好ましい。これにより、冷媒蒸気のプレス方向への拡散が可能になる。したがって、冷熱出力および冷熱量が向上しうる。
ここで、多孔質部25における応力印加方向に垂直な面25aの面積Sは、特に制限されないが、例えば、応力印加時に応力付与部31と多孔質部25とが接する面31aの面積Aの1.1倍以上1000倍以下である。
本形態の熱交換装置において、応力印加時に応力付与部31と多孔質部25とが接する面31aの面積(受圧面積)A(m)が、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい:
(X・d・ν)/(E・r)<A (2)
式(2)中、Xはプレス荷重(N)であり、dは、多孔質材の細孔間隔(m)であり、νは多孔質材のポアソン比であり、Eは多孔質材のヤング率(Pa)であり、rは多孔質材の細孔径(m)である。上記式(2)を満たす範囲であれば、荷重により多孔質材の細孔がつぶれないことから、冷媒蒸気のプレス方向への拡散が可能になる。したがって、冷熱出力および冷熱量がより向上しうる。
例えば、ヤング率Eの多孔質材の表面に垂直な方向(縦方向)から応力Xを面積Aに対して荷重σとして加えたとき、多孔質部25は、図5Cに示すように細孔径rの柱状の細孔を細孔間隔dで有すると仮定すると、細孔の横歪みε”および縦歪みεは、それぞれ、ε”=Δd/d、ε=σ/Eで表される。ここでΔdは荷重を加えたときの細孔間隔dの変位である。この際、(Δd/2)×2<rであれば、細孔が完全に潰れない。すなわち、ε”<r/dが細孔が潰れない横歪みの範囲になる。これをポアソン比ν=ε”/εに当てはめると、細孔が潰れない荷重σの範囲は、σ<(E・r)/(d・ν)となり、σ=(X/A)から上記式(2)の関係となる。
本発明の好ましい実施形態によれば、応力付与部31は、図5Dに示すように、多孔質部25に応力を印加する第1プレス部311と、多孔質部25およびナノ多孔質体20を挟んで第1プレス部311と対向して配置される第2プレス部312と、を有し、多孔質部25は、第1プレス部311とナノ多孔質体20との間、および第2プレス部312とナノ多孔質体20との間に存在し、第1プレス部311と多孔質部25とが接する面(第1プレス部のプレス面)311aの面積A1(m)および第2プレス部312と多孔質部25とが接する面(第2プレス部のプレス面)312aの面積A2がそれぞれ下記式を満たす:
(X・d・ν)/(E・r)<A1
(X・d・ν)/(E・r)<A2
式中、Xはプレス荷重(N)であり、dは、多孔質材の細孔間隔(m)であり、νは多孔質材のポアソン比であり、Eは多孔質材のヤング率(Pa)であり、rは多孔質材の細孔径(m)である。このような構成にすることで、応力を印加する面に対して上下方向に冷媒蒸気を拡散させることが可能になる。そのため、冷熱出力および冷熱量がより一層増加しうる。
ここで、第1プレス部311と多孔質部25とが接する面311aと、第2プレス部312と多孔質部25とが接する面312aは、相対するように配置されることが好ましい。この際、第1プレス部とナノ多孔質体との間に配置される多孔質部と、第2プレス部とナノ多孔質体との間に配置される多孔質部とは、それぞれ、同一の多孔質材から構成されていてもよく、異なる多孔質材から構成されていてもよい。異なる多孔質材から構成される場合、上記式中、d、ν、E、rはそれぞれ対応する多孔質材についての値を用いる。上記A1およびA2の算出において、Xの値は共通である。
本発明の好ましい実施形態において、応力付与部31は、図5Eに示すように、軸部31bと、多孔質部25に接するプレス板31cと、から構成され、プレス板31cと多孔質部25とが接する面の面積A(m)が上記式(2)を満たし、軸部31bの応力印加方向に垂直な面の断面積が、前記面積A(m)よりも小さい。この際、軸部31bは、収容部32の外側に突き出していてもよい。このようにすることで、応力付与部31の重量を減少させることができ、これに伴って熱容量が減少しうる。その結果、吸発熱量および吸発熱出力がより一層向上しうる。
応力付与部31は、軸部31bと、プレス板31cとが一体化しているものであることが好ましい。プレス板31cの形状は特に限定されない。図5Eでは、プレス板31cが四角形の板状である場合を示しているが、これに制限されず、五角形、六角形などの多角形、円形、十字形、星形五角形、星形六角形などの星形多角形などの板状の形状でありうる。十字形、星形多角形の板状であるとより撓みにくいため好ましい。
好ましい実施形態において、プレス板31cは、収容部32の内壁32aと接するように構成される(図5F)。このようにすることで、プレス時の冷熱の伝達が促進される。そのため、冷熱出力および冷熱量がさらに増加しうる。プレス板31cの形状や配置もプレス板の一部が収容部32の内壁32aと接する形態であれば特に制限されない。
(熱伝導部)
本実施形態の熱交換装置は、ナノ多孔質体および多孔質部に加えて、任意で銅やアルミニウムなどの熱伝導体からなる熱伝導部(図示せず)を設けてもよい。熱伝導部は、例えば、ナノ多孔質体の多孔質部が配置されていない側の表面に設けられていてもよい。また、ナノ多孔質体と熱伝導体との積層体が多孔質部に包まれている形態であってもよい。熱伝導部を設けることで、ナノ多孔質体中でゲスト分子を輸送し易くなるので、熱交換性能をさらに高めることが可能である。
熱伝導部の形状も特に制限されず、銅やアルミニウムなどの金属箔であってもよく、メッシュ状であってもよい。上記金属箔の膜厚も特に制限されないが、例えば、1~1000μmである。
なお、複数のナノ多孔質体20をそれぞれ多孔質部25で包装した包装体を応力印加方向に積層することで積層構造体(図示せず)とすることができる。このようにすることで、ナノ多孔質体20へゲスト分子を輸送し易くなるので、熱交換性能をさらに高めることが可能である。積層数としては、特に制限されないが、例えば、2~400である。多孔質部25を上記のような樹脂で構成し、熱融着によりナノ多孔質体20を包含することにより、前記積層構造体を容易に作製することができる。
さらに、上記の積層構造体の配置例として、上記積層構造体の積層方向をZ方向として、複数の上記積層構造体をX方向およびY方向にそれぞれ並んで配置させて用いることもできる。X軸方向およびY軸方向において、上記積層構造体は互いに接していてもよいし、離れていてもよい。このようにすることで、ナノ多孔質体へゲスト分子をより輸送し易くなるので、熱交換性能をさらに高めることができる。
(媒体)
媒体としては、例えば、水またはアルコールが挙げられる。アルコールの一例として、メタノールまたはエタノールが挙げられる。流体とは、液体または気体、もしくは液体と気体とが混合したものを意味する。なかでも、媒体としてメタノールを用いることが好ましい。メタノールは、炭素との相互作用が強く、吸着しやすい。また、圧縮前後での吸着量の差(脱着量)が、特に低温時に大きい。そのため、特にナノ多孔質材料に炭素材料を用いた場合に、応力印加時の脱着量が大きくなり、冷熱量がより増加しうる。
(応力付与部)
応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質体20に応力を印加して収縮させる動作と、印加した応力を解放してナノ多孔質体20を自由膨張させる動作とを行う。これにより、応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質体20の細孔径を外部からの応力で制御することができる。ナノ多孔質体20は、応力が印加または解放されることによって細孔径が変化し、細孔にゲスト分子27として取り込まれる媒体を可逆的に気液相転移させる。
応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質体20に対して接近離反する方向に往復運動してナノ多孔質体20に応力を印加および解放することができる限りにおいてその構成は特に限定されない。応力付与部31A、31Bとしては、例えば、モーターの回転運動を利用した機械式プレス機や油圧等の流体圧を利用した液圧式プレス機などを使用することができる。応力付与部31A、31Bは、ナノ多孔質体20に対して、例えば、10~200MPa、好ましくは10~100MPaの応力を印加しうる。
(収容部)
収容部32A、32Bは、内部にナノ多孔質体20および多孔質部25を収容する空間を有する容器である。収容部32A、32Bの内部は、真空または真空に近い低圧に保たれている。このため、媒体は、比較的低い温度において液体から気体へ相変化することができる。
収容部32A、32Bは、熱伝導性に優れた材料で構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム(Al)または銅(Cu)等の金属で構成されていることが好ましい。これにより、熱交換装置100は、収容部32A、32Bを介して、対象(例えば、空気)と効率よく熱交換することができる。
(空気調節部)
空気調節部33A、33Bは、収容部32A、32Bと接する空気の流量を調節することによって、冷熱または排熱を熱交換部30A、30Bから取り出す。例えば、収容部32Aは、第1ナノ多孔質体20Aが膨張して排熱状態にある。収容部32Bは、第2ナノ多孔質体20Bが収縮して冷却状態にある。空気調節部33A、33Bは、排熱状態にある収容部32Aと接する空気の室内への流量を減らすとともに、冷却状態にある収容部32Bと接する空気の室内への流量を増やすことによって、室内に低温の空気を供給することができる。
(制御部)
制御部40は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)および記録媒体等から構成されている。記録媒体に記録されたプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行する。これにより、制御部40は、第1熱交換部30Aおよび第2熱交換部30Bのうち一方の動作モードを脱離モードとし、他方の動作モードを吸着モードとするような、スイング運転を行う。
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載の熱交換装置;請求項3の特徴を有する請求項1または2に記載の熱交換装置;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載の熱交換装置;請求項5の特徴を有する請求項1~4のいずれかに記載の熱交換装置;請求項6の特徴を有する請求項1~5のいずれかに記載の熱交換装置;請求項7の特徴を有する請求項1~6のいずれかに記載の熱交換装置;請求項8の特徴を有する請求項1~7のいずれかに記載の熱交換装置;請求項9の特徴を有する請求項8に記載の熱交換装置;請求項10の特徴を有する請求項8または9に記載の熱交換装置;請求項11の特徴を有する請求項8~10のいずれかに記載の熱交換装置;請求項12の特徴を有する請求項8~11のいずれかに記載の熱交換装置;請求項13の特徴を有する請求項8~12のいずれかに記載の熱交換装置。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
(GMSの調製)
GMSは、単層グラフェン骨格を有し、大きな空孔率および弾性を有する。GMSの合成法はAdvanced Functional Materials,Vol.26,2016,6418-6427.を引用した。
アルミナナノ粒子(Sasol,SBa200)を電気炉に設置し、窒素気流中1173Kまで昇温させた。1173Kに到達したら、窒素ガスを20vol%メタン、80vol%窒素に切り替え、2時間のCVDによりアルミナナノ粒子の表面に炭素を析出させた。その後、窒素のみのフローに切り替え、室温まで冷却した。得られたカーボン被覆アルミナナノ粒子をフッ酸(47wt%,Wako pure chemical industries)に浸漬し、アルミナナノ粒子を取り除いた。得られたメソポーラスカーボンは、アルゴン気流中(10Pa)2073Kで焼成し、GMSを得た。
GMSは、主に単層グラフェンからなり、大きな弾性を持ち合わせている。特開2019-138620号公報に記載される手法に準じて、GMSは、応力印加により可逆的に形状が変形することを確認した。また、特開2019-138620号公報に記載される手法に準じて、GMSの応力無印加時(303K)と80MPaの応力印加時(288K、293K、298K、303K)におけるメタノールの脱離/吸着曲線を測定し、GMSに応力を印加/解放することによってメタノールの脱離/吸着および液体/気体の相変化が可逆的に起こることを確認した。
また、得られたGMSの粉末を用いて、GMSの平均二次粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したところ、20μmであった。
[実施例1]
(ナノ多孔質体の薄膜試料の調製)
はじめに、1.1質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を調製した。この水溶液に、上記のGMSの粉末を添加し、乳鉢で混合してスラリーを作製した。このスラリーに、40質量%のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)の水溶液を滴下して混合し、ナノ多孔質体用スラリーを得た。次いで、上記ナノ多孔質体用スラリーをAl箔(φ16mm、厚さ200μm)にバーコーターを用いて塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ナノ多孔質体の薄膜を得た。乾燥後の薄膜の厚さは200μmであり、得られたナノ多孔質体中、GMS、CMS、SBRの含有量は、それぞれ、3.38mg、0.56mg、および0.39mgであり、GMS:CMS:SBR=78:13:9(質量比)であった。
(積層体試料の作製)
多孔質部として、ポリプロピレン(PP)フィルム(細孔径0.064μm、空孔率55%、厚さ25μm、セルガード社製)を準備した。このポリプロピレンフィルムを、上記で作製したナノ多孔質体の薄膜試料の上(Al箔と反対側の表面)に配置して、Al箔/ナノ多孔質体の薄膜/PPフィルムの順に積層された積層体試料を得た。
[実施例2]
多孔質部として、ポリプロピレンフィルム(細孔径0.064μm、空孔率55%、厚さ25μm、セルガード社製)を準備した。このポリプロピレンフィルムを折り曲げ、二辺をヒートシーラーで熱溶着して袋状にし、空いた一辺から上記のGMS粉末13mgを入れた。その後、空いた一辺を熱溶着し、パック(包装体試料)を作製した。
[比較例1]
上記実施例1において、ナノ多孔質体の薄膜試料に多孔質部を積層せず、そのまま試料として用いた。上記以外は実施例1と同様の手順で行った。
[比較例2]
上記実施例1において、多孔質部をポリプロピレン製の濾布(中尾フィルター工業株式会社製、細孔径20μm超、厚さ320μm)に変更したことを除いては、実施例1と同様の手順で積層体試料を作製した。
[吸熱量の測定]
各実施例および比較例で得られた積層体試料、包装体試料またはナノ多孔質体の薄膜試料について吸熱量の測定を行った。なお、各実施例および比較例で作製した試料の構成を図3Aに模式的に示す。
はじめに、各実施例および比較例で調製した積層体試料、包装体試料またはナノ多孔質体の薄膜試料をメタノールに1時間浸漬した。その後、試料表面のメタノールを除去し、図3Bに示す実験装置300のステージ306上に、治具307を用いて試料200をセットした。そして、試料200の上部からピストン308を用いて図3A、図3Bの矢印の方向に80MPaでプレスした。その際の温度変化をIRカメラ(図示せず)を用いて測定した。試料200の4mm×4mm×20mmの体積中の質量を用いて、ナノ多孔質体の質量あたりの温度変化を算出した。熱容量は、上記体積中のナノ多孔質体および多孔質部、ステージ(ポリイミド成形体)の熱容量から算出した。上記温度変化と熱容量から、吸熱量を求めた。結果を図4および下記表1に示す。ここで、質量あたりの温度変化は、ナノ多孔質材料およびバインダを含むナノ多孔質体の単位質量に対する温度変化である。所定の選択性を有する多孔質部を有する実施例1、2では、多孔質部を有さない比較例1や、ナノ多孔質材料を透過させる濾布を用いた比較例2に比べて吸熱時の温度変化が大きくなっていることが確認された。また、バインダを含まない実施例2では温度変化がより大きく、吸熱量がより増加することがわかった。さらに、実施例2では、多孔質部でナノ多孔質体の全体を包含した構造をとる。これらの構成により、熱伝導性のよいAl箔がない状態であっても、より高い性能が得られることがわかった。
なお、各実施例および比較例で用いた材料の熱容量は下記の通りである:
実施例1:GMS:7.0×10-4J/K、バインダ:2.0×10-4J/K、PPフィルム:4.8×10-7J/K、Al箔:7×10-4J/K、ステージ:0.4704J/K;
実施例2:GMS:2.4×10-3J/K、PPフィルム:4.8×10-7J/K、ステージ:0.4704J/K;
比較例1:GMS:5.0×10-4J/K、バインダ:2.0×10-4J/K、Al箔:7×10-4J/K、ステージ:0.4704J/K;
比較例2:GMS:7.0×10-4J/K、バインダ:2.0×10-4J/K、濾布:1.1×10-2J/K、Al箔:7×10-4J/K、ステージ:0.4704J/K。
図4は、吸熱時(応力印加時)の質量あたりの温度変化をプロットしたグラフである。図4の横軸はメタノール分子の脱離を開始してからの経過時間(s)を示し、縦軸は経過時間0(s)からの質量あたりの温度変化(K/mg)を示している。図4において、15s付近からプレスを開始しており、これ以降の時間で温度が低下していることがわかる。表1に示す温度変化ΔTは、この際の最大の温度変化幅ΔTを用いた。例えば、実施例2では、15~28sの間の最大の温度変化幅をΔTとした。図4に示すように、所定の多孔質部を有する実施例1、2では、吸熱時の温度変化が大きく、吸熱効果が持続しうる。
なお、上述した実施例2に関して、下記式(1)を用いて、GMS(平均二次粒子径20μm)に80MPaのプレス荷重をかけたときの接触半径aを求め、接触面の直径2a=0.13mmを得た。この際、ポアソン比ν、νは材料に固有の値であり、ナノ多孔質材料(GMS)のポアソン比νは0.29であり、多孔質部(ポリプロピレン)のポアソン比νは0.4であった。ポアソン比ν、νは、プローブで圧縮する様子をSEMで観察し、その変位から算出した。また、縦弾性係数E、Eは材料に固有の値であり、ナノ多孔質材料の縦弾性係数Eは1100MPaであり、多孔質部の縦弾性係数Eは1300MPaであった。縦弾性係数E、Eは応力-ひずみ曲線を測定し、かけた圧力に対するひずみから算出した。ナノ多孔質材料の曲率半径Rは粒子の半径である0.01mmとし、粒子と平面とのプレスであるため、R=∞とした。
実施例1、2で用いた多孔質部の細孔径0.064μmは、上記2aよりも小さい。また、GMSの平均二次粒子径の65%に相当する13μmよりも小さい。したがって、荷重がかかったときであってもGMSが多孔質部の細孔を透過しにくく、吸熱量が向上したものと考えられる。
[実施例3]
多孔質部として、以下のSUS焼結体を準備した:
材質:SUS304
細孔径:10μm
ポアソン比:0.29
ヤング率:193GPa
直径:0.0065m(6.5mm)
厚さ:0.004m(4mm)。
図6(a)に、本実施例で作製した熱交換装置の概略を示す。蒸気通気可能な穴を一部有するSUS容器中に、上記のSUS焼結体が穴部分に接するように設置し、その上に上記で調製したGMS粉末(平均二次粒子径:20μm)65.8mgを入れた。なお、GMSのヤング率は220MPaであった。その後、上記GMS粉末の上部にもSUS焼結体を設置し、さらにプレス機を設置して複合体とした。この複合体を観察容器中に設置し、脱気した後、メタノール蒸気を供給し、GMS粉末にメタノールを吸着させた。その後、脱気によりGMS粉末からメタノールをSUS容器上の穴を通じて脱着させ、その際のGMS温度変化をIRカメラにて観測した。(脱気のみ)。
蒸気通気可能な穴を一部有するSUS容器中に上記のSUS焼結体が穴部分に接するように設置し、その上に上記で調製したGMS粉末65.8mgを入れた。その後、上記GMS粉末の上部にもSUS焼結体を設置し、さらにプレス機を設置して複合体とした。この複合体を観察容器中に設置し、脱気した後、メタノール蒸気を供給し、GMS粉末にメタノールを吸着させた。100MPaのプレスによりGMS粉末からメタノールをSUS容器上の穴を通じて脱着させ、その際の温度変化をIRカメラにて観測した(プレス+脱気)。結果を図7に示す。
なお、上記複合体において、SUS焼結体のプレス方向に垂直な面の面積は33.2mmであり、プレス機のプレス面の面積は33.2mmであった。
図7に示すように、実施例3で作製した試料では、プレス処理により脱気のみに比べて-2℃のさらなる温度変化を確認することができた。
使用した多孔質部を構成する多孔質材の物性値、プレス荷重を下記表2にまとめる。
上記表2から明らかなように、本実施例に用いた多孔質部(SUS焼結体)は、応力付与部とナノ多孔質体(GMS)との間に存在し、そのヤング率193GPaは、印加応力100MPaよりも大きい。そのため、応力印加による媒体の脱着を効率的に行うことができる。
上記表2から明らかなように、本実施例においては、上記式(2)の(X・d・ν)/(E・r)で表される最大荷重面積が、4.98×10-8(0.0498mm)であり、応力付与部と多孔質部とが接する面の面積A(プレス機のプレス面の面積)3.32×10-5(33.2mm)よりも小さい。そのため、応力印加による媒体の脱着を効率的に行うことができる。
なお、本実施例においては、多孔質部における応力印加方向に垂直な面の面積(SUS焼結体のプレス方向に垂直な面の面積)Sと、応力印加時に応力付与部と多孔質部とが接する面の面積(プレス機のプレス面の面積)Aとが等しい。しかしながら、SUS容器の一部に穴を有しており、下側のSUS焼結体が穴部分に接している。本実施例では脱着したメタノールがGMSの下側のSUS焼結体を通して穴部分から拡散しうることから、ナノ多孔質体の下方向に媒体が拡散しているといえる。
(メタノール吸着量の測定)
0MPaでのメタノール吸着量の測定
図6(a)に示すように、蒸気通気可能な穴を一部有するSUS容器中に、上記のSUS焼結体が穴部分に接するように設置し、その上に上記で調製したGMS粉末65.8mgを入れた。その後、上記GMS粉末の上部にもSUS焼結体を設置し、直線導入機付きセルに入れた。この直線導入機付きセルをメタノール吸着量測定装置に接続し、一晩観察容器を脱気した後、機械的な応力を印加しない状態(0MPa)でメタノール吸着量の測定を行った。
この際、SUS焼結体のプレス方向に垂直な面の面積は33.2mmであり、プレス面の面積は33.2mmであった。
100MPaでのメタノール吸着量の測定
図6(a)に示すように、蒸気通気可能な穴を一部有するSUS容器中に、上記のSUS焼結体が穴部分に接するように設置し、その上に上記で調製したGMS粉末65.8mgを入れた。その後、上記GMS粉末の上部にもSUS焼結体を設置し、直線導入機付きセルに入れた。この直線導入機付きセルをメタノール吸着量測定装置に接続し、その後、直線導入機で100MPaの機械的な応力を印加した状態のまま、メタノール吸着量の測定を行った。
[比較例3]
図6(b)に示すように、SUS焼結体に代えて、直径0.0065mのSUS板を用いたことを除いては実施例3と同様にしてメタノール吸着量の測定を行った。この際、SUS板のプレス方向に垂直な面をプレス面とし、その面積は33.2mmであった。図6(b)に示す装置では、SUS容器における穴はSUS板によって覆われており、SUS容器上の穴を通じたメタノールの吸脱着は行われない。
図8(a)および図8(b)に、実施例3および比較例3で作製した試料を用いて測定したメタノールの吸着等温線をそれぞれ示す。図8(a)および図8(b)において、〇が脱着を表し、●が吸着を表す。図8(a)に示す実施例3の試料のほうが、図8(b)に示す比較例3の試料よりもプレス時のメタノール吸着量が多くなっていることがわかった。実施例3では、印加応力以上のヤング率を有するSUS焼結体を用いることで、GMSの上下にSUS焼結体を配置した複合体において、GMSに上方向からプレス荷重を均一にかけることができる。また、GMSの下方向にメタノールの拡散経路を設けることができることから、メタノールの拡散が促進されうる。一方、比較例3の試料では、GMSの下方向にメタノールの拡散経路がないことから、メタノールが拡散されにくく、吸着平衡に達するのに時間がかかってしまう。そのため、吸着平衡に到達しないまま計測が進行してしまうことから吸着量が低くなっているものと考えられる。
19 ナノ多孔質材料、
20A (第1)ナノ多孔質体、
20B (第2)ナノ多孔質体、
25A (第1)多孔質部、
25B (第2)多孔質部、
25a 応力印加方向に垂直な面
27 媒体蒸気(ゲスト分子)、
30A (第1)熱交換部、
30B (第2)熱交換部、
31A (第1)応力付与部、
31B (第2)応力付与部、
31a プレス面、
31b 軸部、
31c プレス板、
32A (第1)収容部、
32B (第2)収容部、
32a 収容部の内壁、
33A (第1)空気調節部、
33B (第2)空気調節部、
40 制御部、
50 配管、
51 バルブ、
100 熱交換装置、
200 試料、
300 吸熱量の測定装置、
306 ステージ、
307 治具、
308 ピストン、
311 第1プレス部、
311a 第1プレス部のプレス面、
312 第2プレス部、
312a 第2プレス部のプレス面、
d 細孔間隔、
r 細孔径。

Claims (13)

  1. 弾性を有し、収縮して媒体を脱離可能であり、かつ、膨張して前記媒体を吸着可能である、ナノ多孔質材料を含むナノ多孔質体と、
    前記ナノ多孔質体に応力を印加して前記ナノ多孔質体を収縮させる動作と、印加された前記応力を解放して前記ナノ多孔質体を膨張させる動作とを行う応力付与部と、
    前記ナノ多孔質体の表面に隣接して配置され、前記媒体を透過可能であり、前記ナノ多孔質材料を透過させない多孔質部と、
    前記ナノ多孔質体および前記多孔質部を収容する収容部と、
    を有する、熱交換装置。
  2. 前記多孔質部は、前記ナノ多孔質体の全体を覆っている、請求項1に記載の熱交換装置。
  3. 前記多孔質部の細孔径は、下記式(1)で表される接触半径a(mm)に対して、2a(mm)以下である、請求項1または2に記載の熱交換装置。

    上記式(1)中、Pは、応力(N)であり、νおよびνは、それぞれナノ多孔質材料および多孔質部のポアソン比であり、EおよびEは、それぞれナノ多孔質材料および多孔質部の縦弾性係数(MPa)であり、RおよびRは、それぞれナノ多孔質材料および多孔質部の曲率半径(mm)である。
  4. 前記多孔質部の細孔径は、前記ナノ多孔質材料の平均二次粒子径の65%以下である、請求項1または2に記載の熱交換装置。
  5. 前記多孔質部は、ポリプロピレンから構成される、請求項1または2に記載の熱交換装置。
  6. 前記ナノ多孔質体は、前記ナノ多孔質材料のみから構成される、請求項1または2に記載の熱交換装置。
  7. 前記媒体は、メタノールである、請求項1または2に記載の熱交換装置。
  8. 前記多孔質部は、前記応力付与部と前記ナノ多孔質体との間に存在し、印加応力以上のヤング率を有する多孔質材により構成される、請求項1に記載の熱交換装置。
  9. 前記多孔質部における応力印加方向に垂直な面の面積Sは、応力印加時に前記応力付与部と前記多孔質部とが接する面の面積Aよりも大きい、請求項8に記載の熱交換装置。
  10. 応力印加時に前記応力付与部と前記多孔質部とが接する面の面積A(m)が、下記式(2)の関係を満たす、請求項8に記載の熱交換装置:
    (X・d・ν)/(E・r)<A (2)
    式(2)中、Xはプレス荷重(N)であり、dは、多孔質材の細孔間隔(m)であり、νは多孔質材のポアソン比であり、Eは多孔質材のヤング率(Pa)であり、rは多孔質材の細孔径(m)である。
  11. 前記応力付与部は、前記多孔質部に応力を印加する第1プレス部と、前記多孔質部および前記ナノ多孔質体を挟んで前記第1プレス部と対向して配置される第2プレス部と、を有し、
    前記多孔質部は、前記第1プレス部と前記ナノ多孔質体との間、および前記第2プレス部と前記ナノ多孔質体との間に存在し、
    前記第1プレス部と前記多孔質部とが接する面の面積A1(m)および前記第2プレス部と前記多孔質部とが接する面の面積A2がそれぞれ下記式を満たす、請求項8に記載の熱交換装置:
    (X・d・ν)/(E・r)<A1
    (X・d・ν)/(E・r)<A2
    式中、Xはプレス荷重(N)であり、dは、多孔質材の細孔間隔(m)であり、νは多孔質材のポアソン比であり、Eは多孔質材のヤング率(Pa)であり、rは多孔質材の細孔径(m)である。
  12. 前記応力付与部は、軸部と、前記多孔質部に接するプレス板と、から構成され、
    前記プレス板と前記多孔質部とが接する面の面積A(m)が上記式(2)を満たし、
    前記軸部の応力印加方向に垂直な面の断面積が、前記面積A(m)よりも小さい、請求項10に記載の熱交換装置。
  13. 前記プレス板が前記収容部の内壁と接する、請求項12に記載の熱交換装置。
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