JP2023173358A - せん断端面の遅れ破壊特性評価方法及びプログラム - Google Patents

せん断端面の遅れ破壊特性評価方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

Figure 2023173358000001
【課題】せん断端面での遅れ破壊特性をより精度良く評価可能とする。
【解決手段】金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験と、上記試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力である限界負荷応力を求め、求めた限界負荷応力に基づき、上記金属板のせん断端面の遅れ破壊の発生に対する応力的余裕度を設定する工程と、を備え、上記求めた応力的余裕度を、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性の評価の指標とする。
【選択図】 図8

Description

本発明は、プレス成形における、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性の評価に関する技術である。
ここで、本明細書では、金属板にせん断加工を施した端面をせん断端面と呼ぶ。本発明は、特に引張強度980MPa以上の高強度鋼板(高張力鋼板)に好適な技術である。また、本明細書では、高強度鋼板のうち、引張強度1470MPa以上の鋼板を超高強度鋼板と呼ぶ。
現在、自動車には軽量化による燃費向上と衝突安全性の向上が求められている。そして、車体の軽量化と衝突時の搭乗者保護の両立を目的として、車体に高強度鋼板が使用されており、特に近年では引張強度980MPa以上の高強度鋼板が、車体に適用され始めている。高強度鋼板の車体適用時における課題の一つに遅れ破壊がある。特に引張強度980MPa以上の高強度鋼板では、せん断加工後の端面であるせん断端面から発生する遅れ破壊が重要な課題となっている。この課題は、高強度鋼板のうち、引張強度1470MPa以上の超高強度鋼板で特に問題となる。
ここで、せん断端面は大きな引張応力が残留することが知られており、これにより、金属板での遅れ破壊の発生が懸念されている。
せん断端面での遅れ破壊をあらかじめ予測するためには、評価用の試験片を作製し、その試験片を水素侵入環境下に設置する必要がある。更に、せん断端面については、せん断加工時の塑性変形により端面の性質が変化し、一般的には、端面での遅れ破壊の危険が高まる。そのため、例えば特許文献1では、圧延による板厚方向への圧縮加工をせん断端面に付加した後に、水素侵入環境下に設置して遅れ破壊の発生を評価している。
一方で、せん断したままの状態のせん断端面を、無負荷で水素侵入環境下に設置して遅れ破壊が生じない場合でも、外部から応力を負荷して試験を行えば、遅れ破壊が発生する場合がある。これは、せん断端面に残留した大きな引張応力に対し、更に外部からの負荷応力が上乗せされるためである。このため、例えば特許文献2では、せん断端面を含む評価試料に引張による定荷重を負荷し拘束状態で水素侵入環境下に設置し、遅れ破壊特性を評価している。また、特許文献3では、より簡便な方法として、曲げによる荷重を負荷した状態で水素環境下に設置し、遅れ破壊特性を評価している。但し、特許文献3においては、せん断端面が対象ではなく、試験片表面における遅れ破壊特性の評価を主眼としている。このため、特許文献3では、評価試料のせん断端面表面は樹脂塗膜によりシールし、評価の対象から外している。
しかし、発明者らが検討したところ、実際の自動車部品に対して、これらの遅れ破壊評価手法を基に、遅れ破壊の発生を予測、あるいは予防することについて、更なる課題があるとの知見を得た。
すなわち、例えば特許文献1のような圧延によるひずみ導入は、自動車部品に用いられるプレス成形によって導入される成形ひずみでの変形状態と乖離しているという課題がある。プレス成形においては、せん断端面に対しては単軸的な引張と圧縮、そしてそれらの組み合わせによる曲げ変形が導入されるため、特許文献1のような評価手法として十分ではない。また、特許文献2、3では、せん断端面のせん断加工後の塑性変形による遅れ破壊特性の変化を考慮しておらず、せん断端面に様々な成形ひずみが発生するプレス成形品における遅れ破壊評価としては不十分である。
そして、特許文献1~3のいずれにおいても、実験室的な個別の水素侵入条件・応力条件における遅れ破壊発生の有無や時間を評価するのみであった。
特開2020-41837号公報 特許第5196926号公報 特許第5971058号公報
従来、実際の自動車部品における水素侵入環境や応力と比較し、遅れ破壊の発生について、水素侵入環境や応力の条件にどれだけ余裕度があるか、という観点での評価が行われていなかった。
そして、発明者らは、実際の自動車部品においては、加工される金属板には、せん断端面の形成箇所によって異なる成形ひずみが導入され、その成形ひずみによって、塑性変形による遅れ破壊特性に変化が生じるとの知見を得た。更に、せん断端面においては、せん断による残留応力に加えて、プレス成形後の成形残留応力が上乗せされることで、遅れ破壊が生じやすくなる。
また、発明者らは、ある水素侵入環境下において、成形ひずみが導入されたせん断端面に対して、成形残留応力が負荷された場合に、プレス成形品のせん断端面が遅れ破壊発生に対して、どれほどの余裕度を持っているか評価することが、自動車部品におけるせん断端面での遅れ破壊を回避する上で非常に重要であるとの知見を得た。
以上のように、自動車部品におけるプレス成形により、せん断端面性質は塑性変形により変化する。一方で、実際の自動車部品において発生する応力と比較して遅れ破壊の発生を予測できる指標が存在せず、応力的な余裕度という観点から遅れ破壊評価できる手法が存在しなかった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、せん断端面での遅れ破壊特性をより精度良く評価可能とすることを目的としている。
課題解決のために、本発明の一態様は、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験と、上記試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力である限界負荷応力を求め、求めた限界負荷応力に基づき、上記金属板のせん断端面の遅れ破壊の発生に対する応力的余裕度を設定する工程と、を備え、上記求めた応力的余裕度を、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性の評価の指標とする、ことを要旨とするせん断端面の遅れ破壊特性評価方法である。
上記試験は、上記拘束する工程の前に、上記金属板のせん断面に、せん断面の延在方向に沿った成形ひずみを与える工程を備え、上記応力的余裕度を、成形ひずみを変数とした値とする、ことが好ましい。
本発明の態様によれば、せん断端面に生じる遅れ破壊をより精度良く評価するための指標を適用可能となる。
このとき、その指標(応力的余裕度)は、応力を単位としており、応力による余裕度という観点から評価することが可能である。このため、例えば、自動車のパネル部品、構造・骨格部品等の各種部品に高強度鋼板を適用する際に、遅れ破壊の発生を応力の次元を有する余裕度を含めて予測することが可能となる。
そして、例えば、超高強度鋼板の適用範囲を拡大することで、自動車車体の軽量化も可能とするができる。
試験片を用いたひずみ量に応じた応力的余裕度の評価手順の例を示す図である。 成形ひずみを変数とした応力的余裕度の例を示す図である。 せん断端面の遅れ破壊と応力的余裕度との関係を示す概念図である。 曲げ成形で残留応力が残る場合のせん断端面の遅れ破壊と応力的余裕度との関係を示す概念図である。 曲げによる負荷応力負荷の方法の例を示す説明図である。 応力的余裕度のひずみ量に対する関数の例を表す図である。 応力的余裕度を用いた遅れ破壊判定の一例を表す図である。 本手法の評価で用いることの可能なプログラムのフローの一例を表す図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(構成)
本実施形態は、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法である。本発明は、特に、金属板が高強度鋼板の場合により効果を奏する。
その遅れ破壊特性評価方法のための評価指標として、本開示で新たに設定した指標である「応力的余裕度」を求める。
本開示における「応力的余裕度」とは、せん断端面が有する、遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量である。
以下に示す実施形態では、応力的余裕度を、試験条件の一つのパラメータである、成形ひずみを変数とした値とした。成形ひずみは、外的負荷応力を負荷する前に付与するひずみである。応力的余裕度は、成形ひずみを変数とした場合に限定されない。ただし、応力的余裕度は、成形ひずみやせん断時のクリアランスや摩耗条件(せん断加工条件)などの、金属板に外的な負荷応力を負荷する前の金属板の製造条件のパラメータを変数とすることが、適用範囲が広くなり好ましい。せん断加工条件は、評価の対象とする材料の加工条件の一つである。
応力的余裕度は、外的負荷を負荷して拘束する工程(第3の工程12)以外の試験条件を変数(パラメータ)とした値で表現してもよい。
ここで、外的負荷を負荷して拘束する工程以外の試験条件としては、例えば材料の種類(鋼種や板厚)、せん断条件(クリアランスや摩耗条件)、浸漬する水素環境下の条件(浸漬する時間)などがある。拘束する工程の試験条件を外しているのは、このパラメータを変更することで、限界応力負荷を求めるためである。
なお、応力的余裕度は、限界応力負荷に所定の安全係数を乗算した値でも良い。
ここで、上記の外的な負荷応力は、目的とする製品形状にプレス成形する際や、その製品を組み付けた時の拘束に発生する負荷応力である。
本実施形態では、評価対象とする金属板に対する、応力的余裕度を求めるための処理として、実際の実験を有する試験の工程と、応力的余裕度を設定する工程とを備える。具体的には、図1に示すように、第1の工程10~第5の工程14を備える。
図1中、第1の工程10~第4の工程13が、試験の工程に対応し、第5の工程14が、応力的余裕度を設定する工程を求める工程に該当する。
<第1の工程10>
第1の工程10は、評価対象とする金属板と同じ条件の金属板から、試験片を作製する工程である。第1の工程10は、評価対象の金属板と同じ材料や厚さからなる金属板に対し、せん断加工を施して、応力的余裕度を求めるための、せん断端面を有する試験片を作成する。
<第2の工程11>
第2の工程11は、試験片のせん断端面の少なくとも一部に、成形ひずみを付与する工程である。付与する成形ひずみは、せん断端面の延在方向に沿ったひずみとする。
付与する成形ひずみは、例えば、0.1%以上とする。
成形ひずみの付与は、例えば、試験片に対し、単軸引張又は単軸圧縮を行うことより実行する。また、成形ひずみの付与は、例えば、試験片に対し、板厚方向への曲げにより実行する。
<第3の工程12>
第3の工程12は、試験片のせん断端面に対し、予め設定した外的な負荷応力を負荷し、その負荷状態で拘束する工程である。応力負荷の方法は、例えば、引張応力負荷又は曲げ応力負荷により行う。この場合、治具を用いた曲げ応力負荷による方法が、簡便性の観点から特に望ましい。
<第4の工程13>
第3の工程12で外的な負荷応力を負荷し拘束した試験片を、予め設定した水素侵入環境に対し予め設定した時間設置し、その状態での当該試験片で、亀裂の発生状況を評価する工程である。
このとき、水素侵入環境と設置時間は、評価の対象となる材料が実際に使用される環境下で侵入すると推定される水素量と同等の、水素侵入量が得られる条件にすることが好ましい。
試験片の水素侵入環境下への設置は、例えば、塩酸やNHSCN水溶液などの酸液を収容した浴槽内に試験片を浸漬することで行う。酸液の濃度や浸漬時間は、許容上限として予め設定した水素量が試験片に侵入する条件となるように設定する。
第1の工程10で作成した各試験片について、上記の第2の工程11~第4の工程13を、付与する成形ひずみや負荷する負荷応力の条件を変えて実行する。
<第5の工程14>
第5の工程14は、上記試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力である限界負荷応力を評価し、その限界負荷応力に基づき、上記金属板のせん断端面の遅れ破壊の発生に対する応力的余裕度を求める。具体的には、限界負荷応力を、その試験条件での応力的余裕度とする。
例えば、各試験片の試験条件(成形ひずみと外的な負荷応力)と、せん断端面での割れ発生の有無の評価結果に基づき、同一の成形ひずみに対する割れ発生が発生する外的な負荷応力と、割れが発生しない外的な負荷応力との境界値(割れが発生しない外的な負荷応力の最大値など)である限界応力負荷の値を求める。
これを、複数の成形ひずみについて整理して、(成形ひずみ、限界応力負荷)のデータを複数取得し、図2のグラフで表されるような、成形ひずみを変数とした限界応力負荷の値(関数)を、応力的余裕度のデータとして求める。すなわち、応力的余裕度を、例えば、引張-圧縮による成形ひずみの関数として記述する。
ここで、上記説明では、成形ひずみを変更して試験を行う場合を例示したが、これに限定されない。成形ひずみを一定(例えばゼロ)に限定して試験を実行してもよい。この場合、成形ひずみがゼロ、つまり第2の工程11を実行しない場合も含む。この場合には、特定の成形ひずみに対する応力的余裕度が求まることになる。
また、例えば、せん断条件(クリアランスなど)を変更し、成形ひずみの変数と共に又は成形ひずみを変数とせずに、せん断条件を変数とした応力的余裕度を求めても良い。
なお、図2では、成形ひずみによりせん断端面の残留応力が減少して、成形ひずみの絶対値が大きいほど、遅れ破壊の応力的余裕度が増加する場合を例示している。ただし、材料やせん断端面の状態によっては、付与する成形ひずみによりせん断端面に亀裂や損傷が生じることで、成形ひずみにより逆に遅れ破壊の応力的余裕度が減少する場合も想定される。
そして、本実施形態では、上記のようにして求めた応力的余裕度と比較することで、応力的余裕度の評価に用いなかったせん断端面を有する試験片についても、金属板に負荷予定の外的負荷(負荷応力)に対する、遅れ破壊の可能性を、試験を行うことなく、評価することが可能となる。
例えば、次のようにして評価する。
まず、評価対象の金属板について、遅れ破壊の発生を評価したいせん断端面に対して、CAEによる成形解析や初等力学的な計算方法により、引張-圧縮によるひずみ量とせん断端面への負荷応力を計算する。
次に、せん断端面の引張-圧縮によるひずみ量に応じて応力的余裕度を対応させ、せん断端面への負荷応力が応力的余裕度を超過するか否かを判定し、超過する場合は遅れ破壊の可能性があると判断する。このとき、応力的余裕度は安全率を考えて、実際に測定された値よりも小さくとることも可能である。
上記の応力的余裕度と比較してのせん断端面の遅れ破壊評価は、後述のようなプログラムによって行うことで、より効率的に実施することもできる。
以上の説明では、応力的余裕度に対して安全率を設けない場合を示したが、応力的余裕度を低めにとることで、応力的余裕度に対して安全率を設けることも可能である。
また、上記説明では、試験における第2の工程11にて、試験片に実際に成形ひずみを付与して、応力的余裕度を成形ひずみを変数として値として説明したが、これに限定されない。
例えば、拘束する工程の前の金属板のせん断端面に曲げ加工を行うことによって、せん断端面に生じる成形残留応力と、せん断端面に生じる成形ひずみを求める工程(第6の工程と呼ぶ)を別途備える。この第6の工程は、別に実行する実験で求めても良いし。CAE解析などの構造解析によって求めても良い。そして、第2の工程11を行わない上記試験で求めた、限界負荷応力(応力的余裕度)に、第6の工程で求めた成形残留応力を足した値を、成形ひずみを変数とした応力的余裕度としても良い。
(開示の詳細について)
本開示について、更に詳細に説明する。
発明者らは、せん断端面の遅れ破壊を評価する中で、次の(1)~(3)の知見を見出した。
(1)せん断端面に定荷重による負荷応力(外部的な負荷応力)を負荷し拘束した状態で、水素侵入環境下に所定時間設置すると、負荷応力について、せん断端面に遅れ破壊が発生する限界の負荷応力(限界負荷応力とも呼ぶ)が存在する。これは、せん断端面での、せん断加工による残留応力と外部からの負荷応力との合計が、せん断端面の遅れ破壊発生の閾値に達した場合に、遅れ破壊が発生するためである。
(2)上記遅れ破壊が発生する限界負荷応力は、せん断端面では、せん断後に付加される成形ひずみの引張と圧縮のひずみ量によって変化する。これは、せん断端面の残留応力が、成形ひずみによって変化するためである。
(3)従って、各せん断端面の限界負荷応力は、そのせん断端面に対し付与された成形ひずみ量と、負荷応力(外部的な負荷応力)とによって変化する。そして、所定の水素侵入環境下に予め設定した所定の設置時間、設置した際に、せん断端面に遅れ破壊が発生する限界の負荷応力は、成形ひずみ量と、負荷応力(外部的な負荷応力)とを考慮した「応力的余裕度」という指標として整理することができる。
ここで、本開示では、せん断端面が有する、遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量を、「応力的余裕度」と定義した。
図3に、上記(1)(2)(3)を説明する概念図を示す。図3(a)は、端部をせん断してせん断端面を形成した金属板について、成形ひずみを付与しない場合における限界の負荷応力の状態を例示したものである。一方、図3(b)は、せん断端面を形成した後に、成形ひずみを付与した場合における、限界の負荷応力の状態を例示したものである。この図3は、金属板をプレス成形する前に、金属板に対し、成形ひずみを付与することで、残留応力が低下する場合を例示している。
ここで、せん断による残留応力と外部からの負荷応力の合計が、遅れ破壊発生の閾値に達すると遅れ破壊が発生する。従って、成形ひずみによってせん断端面の残留応力が変化すると、遅れ破壊が発生する限界負荷応力も変化する。その限界負荷応力は、せん断端面の残留応力と、遅れ破壊発生の閾値の差であり、そのせん断端面が遅れ破壊を起こさない限界の外的負荷応力である。
このような事に鑑み、本開示では、せん断端面において、付与される成形ひずみを考慮した、遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量を、「応力的余裕度」と定義した。本実施形態では、外的負荷応力の許容量を、成形ひずみを変数とした応力的余裕度という指標で規定した。
ここで、せん断によるせん断端面での残留応力は、せん断端面表面から100μm程度のごく表層の微小な領域にのみ存在する。このため、その残留応力変化は、通常のシェル要素を用いたCAEなどでは計算が困難である。微細な領域の応力は、X線応力測定などで測定できるが、測定範囲によって測定値が変化する場合のあることや、測定深さが材料最表層に限られるという問題がある。従って、必ずしも測定値の大小が遅れ破壊の危険度と対応しない場合がある。
一方で、本開示のように、成形ひずみを変数とした上記「応力的余裕度」を、応力負荷状態での遅れ破壊試験により実験的に求める手法を用いれば、このような計算や測定に関する問題を生じずに、直接的に遅れ破壊の危険度を評価する指標を得ることが可能である。
この応力的余裕度は、自動車部品が実際に晒される水素侵入環境下の条件で評価すれば、それ自体を、自動車部品のせん断端面における遅れ破壊発生までの余裕度とみなすことができる。
しかも、この応力的余裕度は、応力を単位としており、応力により表現されるから、部品の成形による残留応力に加えて、組み立てや使用の際などに部品に付与される外的負荷応力が上乗せされた場合でも、この応力的余裕度を超えない限りは、遅れ破壊が発生しないことが推測可能である。
従って、この応力的余裕度という指標は、簡便であり、なおかつ応力の次元を有する余裕度としての評価も可能な、優れた遅れ破壊の評価指標である。
逆に、応力負荷の値を一定値として、水素侵入環境の方を変化させる手法も考えうる。しかし、これは前述した部品の成形による残留応力と、組み立てや使用の際に部品が変形されること等による外的負荷応力の上乗せに対して、応力を尺度として比較し余裕度の評価ができないという点において有用性が低い。
なお、上記の成形ひずみはせん断面に延在方向のひずみである。
更に、実際的な評価の方法については、発明者らは、次の(4)~(7)の知見を見出した。
(4)せん断端面に対する引張及び圧縮の成形ひずみを評価試験片に導入する方法としては、単軸による引張変形や圧縮変形が望ましい。これは、単軸による成形では、成形後にスプリングバックすることでせん断端面以外の部分の成形後の残留応力がほぼ0となり、その影響が無視できるためである。従って、成形ひずみの付与が単軸による引張や圧縮の場合、追加工後のせん断端面における遅れ破壊が発生する限界の外的負荷応力が、そのまま「応力的余裕度」として評価が可能であり、最も簡便である。
(5)実際のプレス成形品に導入される曲げ変形については、板の表面から裏面にかけて(板の厚さ方向で)、それぞれ上記(4)の方法で単軸引張・圧縮後のせん断端面で得られた「応力的余裕度」を、ひずみ量とそのひずみの符合とに応じて、適用することが可能である。
(6)せん断端面に成形ひずみを与える方法として曲げ変形を用いて、応力的余裕度を評価することも可能である。その場合は、曲げ変形によりせん断端面を含めた試験片全体に曲げによる残留応力が発生する可能性がある。このため、その場合、曲げによる成形の残留応力を、遅れ破壊が発生する限界の外的負荷応力に足し合わせたものを「応力的余裕度」とする必要がある。なお、曲げ変形による残留応力は、CAE等によるコンピュータ解析や初等力学的な計算などにより、評価することが可能である。
図4は、(6)を説明する概念図である。なお、図4では、曲げによる残留応力が正の場合を示しているが、板の表裏で曲げによる残留応力の符合は反転する。従って曲げによる残留応力が負の部分については、曲げ成形による残留応力の分、せん断による残留応力を差し引く(負の値を足す)必要がある。
(7)評価試験片に対して外的負荷応力を与える方法としては、定荷重での引張による方法と曲げによる方法とがある。曲げによる方法は、より小さい荷重で且つより小さい治具を用いて行えるため簡便である。外的負荷応力は、試験片に与える荷重や変形量を調整することにより制御することができる。試験片のせん断端面に対する荷重はCAEや初等解析によって計算できる。
図5は、(7)における曲げによる応力負荷の方法の例を示す図である。図5では、四点曲げによる応力負荷の方法を例示している。図5中、符号1が試験片を、符号2が曲げを負荷する支点を、符号3が曲げ量を調整するネジを示している。
ここで、応力的余裕度を評価する試験片については、実験室的にせん断したものを用いても良いし、プレス成形後のプレス成形品のせん断端面の一部を切り出してきても良い。
更に、このようにして得た「応力的余裕度」を用いて、せん断端面の遅れ破壊の発生を評価、予測する方法として、次のような手法を発明者らは考案した。その例を以下の第一~第三に示す。
(第一)
第一に、試験片を用いて上記(4)~(7)の方法で実験室的に引張-圧縮によるひずみ量に応じて応力的余裕度を測定する。
ここで、水素侵入環境とその環境への設置時間は、実際の自動車部品において、許容上限として予め設定した侵入する水素量と、試験片に侵入する水素量が同等になるような条件に設定することが好ましい。
せん断端面に与える成形ひずみのひずみ量としては、遅れ破壊特性に十分な影響を与える量を考慮すると、ひずみ量を0.1%以上とすることが好ましい。より影響の度合いが大きいひずみ量としてはひずみ量が0.5%以上で、塑性ひずみが導入されるような場合、特に本発明による遅れ破壊評価が有効である。このため、成形ひずみの代わりに、せん断端面への塑性ひずみ量を評価指標とすることも可能である。試験片への負荷応力については、第一主応力やミーゼス応力など、応力に関するパラメータであれば、本開示に用いることが可能である。
(第二)
第二に、遅れ破壊の可能性を評価したいせん断端面を有する試験片に対し、CAEによる成形解析や初等力学的な方法により、引張-圧縮による成形ひずみ量とせん断端面への負荷応力を計算する。
(第三)
第三に、遅れ破壊の可能性を評価したいせん断端面を有する試験片での成形ひずみ量と成形後の残留応力を、引張-圧縮によるひずみ量に応じた応力的余裕度と比較し、応力的余裕度を超過する箇所については、遅れ破壊の可能性があると判定する。ただし、応力的余裕度は安全率を考えて、実際に測定された値よりも小さくとることも可能である。
(プログラム)
以上の評価方法に使用される、プログラムの例を示す。
第1の例のプログラムは、上記のような遅れ破壊特性評価方法で求めた、応力的余裕度と成形ひずみとの関係を記憶部に記憶しておき、コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度と成形ひずみとの関係を参照して、入力された成形ひずみのひずみ量に対応する応力的余裕度を決定する処理を実行させるためのプログラムである。
別例のプログラムは、上記のような遅れ破壊特性評価方法で求めた、応力的余裕度と成形ひずみ及び外的負荷応力との関係を記憶部に記憶しておき、コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度と成形ひずみ及び外的負荷応力との関係を参照して、入力された成形ひずみのひずみ量及び外的負荷応力に対する、遅れ破壊の可能性を評価する処理を実行させるためのプログラムである。
次に、上述したような、応力的余裕度を用いた評価方法のプログラムによる処理例を、図8を参照して、説明する。図8のような処理で評価を行えば、より効率的な遅れ破壊の評価が可能となる。
図8に示す例は、応力的余裕度算出部20、評価本体部30、及び記憶部40を備えている。そして、応力的余裕度算出部20、及び評価本体部30の処理を行うプログラムは、コンピュータのRAMやROMなどの記憶部40に記憶され、コンピュータで実行される。
<記憶部40>
記憶部40は、データベースなどの記録媒体からなる。
記憶部40には、金属板の材料条件、水素環境の条件、せん断条件、成形ひずみ量を、種々変更しつつ、上記第1の工程10~第5の工程14の試験を繰り返すことで、金属板の材料条件、水素環境の条件、せん断条件毎に、試験条件を変数として、成形ひずみに対し求めた応力的余裕度dのデータを記憶しておく。
<応力的余裕度算出部20>
応力的余裕度算出部20では、まず、ステップS10にて、評価の基礎条件として、材料の種類(鋼種や厚さ)の条件と、遅れ破壊の条件である水素環境の条件(酸度や設置時間)の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
次に、ステップS20にて、せん断条件の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
次に、ステップS30では、ステップS10及びステップ20で入力された条件に合致した、各ひずみ量に対する応力的余裕度のデータ群((ひずみ量、応力的余裕度)のデータの集まり)を、記憶部40から取得する。
又は、試験によって求めた各ひずみ量に対する応力的余裕度のデータ群の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力情報を取得する。取得したデータは、記憶部40に記憶する。
次に、ステップS40では、ステップS30が取得した、ひずみ量に対する応力的余裕度のデータ群を参照し、公知の処理方式によって、応力的余裕度dを、ひずみ量xを変数とした関数f(x)として求める演算処理を実行する。
次に、ステップS50では、ステップS40で求めた応力的余裕度dの関数を、下記式のような、安全率s(:0<s≦1)を考慮した式に変更する。
d =s・f(x)
そして、求めた、応力的余裕度dの関数の情報は、試験条件をキーとして記憶部40に記憶する。
<評価本体部30>
評価本体部30では、まず、ステップS100にて、評価の対象の、材料の種類(鋼種や厚さ)の条件と、遅れ破壊の条件である水素環境の条件(酸度や設置時間)の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
次に、ステップS110では、加工時に予定されるひずみ量xと負荷応力gの入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
ステップS120では、ステップS100で入力した条件に合致した応力的余裕度dの関数「s・f(x)」の情報を記憶部40から取得し、ステップS110で入力したひずみ量xに応じた応力的余裕度dと、ステップS110で入力した負荷応力gとを比較して、遅れ破壊のリスクがあるか否かの判定を行う。
ここで、図8のステップS120では、遅れ破壊のリスクがあるか否かの判定を行っているが、遅れ破壊の余裕度(=d-g)を併せて出力するようにしてもよい。
また、応力的余裕度算出部20について、別途計算処理を実行して、ステップS10~S20での入力値を条件とした応力的余裕度dの関数を求め、その求めた関数をステップS10~S20での入力値をキーとしたデータとして記憶部40に入力しても良い。
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験と、上記試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力である限界負荷応力を求め、求めた限界負荷応力に基づき、上記金属板のせん断端面の遅れ破壊の発生に対する応力的余裕度を設定する工程と、を備え、上記求めた応力的余裕度を、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性の評価の指標とする。
(2)上記拘束する工程以外の試験条件から選択した1又は2以上の試験条件である選択条件を変更して上記試験を実行して、各選択条件での上記限界負荷応力を上記応力的余裕度として求め、上記応力的余裕度を、上記選択条件を変数とする値として表現する。
ここで、上記拘束する工程以外の試験条件としては、せん断条件(クリアランスなど)、成形ひずみを付与する場合の成形ひずみ、水素侵入環境下への設置時間などがある。
(3)上記試験は、上記拘束する工程の前に、上記金属板のせん断面に、せん断面の延在方向に沿った成形ひずみを与える工程を備え、上記応力的余裕度を、上記成形ひずみを変数とした値とする。
(4)上記成形ひずみを与える工程で付与する成形ひずみは、0.1%以上とする。
(5)上記成形ひずみを与える工程では、単軸引張または単軸圧縮により成形ひずみを付与する。
(6)上記成形ひずみを与える工程では、曲げにより成形ひずみを付与する。
(7)上記拘束する工程の前の金属板のせん断端面に曲げ加工を行うことによって、せん断端面に生じる成形残留応力を求める工程を備え、上記応力的余裕度を設定する工程は、上記求めた限界負荷応力に、上記成形残留応力が求める工程が求めた上記曲げ加工での成形残留応力を足した値を、上記応力的余裕度とする。
(8)上記成形残留応力を求める工程では、曲げ加工による、せん断端面に生じる成形ひずみと成形残留応力との関係を求め、上記応力的余裕度を、成形ひずみを変数とした値とする。
(9)上記試験で用いた金属板と同条件の金属板である評価対象の金属板のせん断端面での遅れ破壊の可能性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、本開示の遅れ破壊特性評価方法で求めた上記応力的余裕度に基づき、上記評価対象の金属板の端面に付与する成形ひずみと負荷応力で、当該上記評価対象の金属板の端面での遅れ破壊の可能性を評価する。
(10)上記金属板は、引張強度が980MPa以上の鋼板である。
(11)本開示の遅れ破壊特性評価方法で求めた、応力的余裕度と成形ひずみとの関係を記憶部に記憶しておき、コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度と成形ひずみとの関係を参照して、入力された成形ひずみのひずみ量に対応する応力的余裕度を決定する処理を実行させるためのプログラム。
(12)本開示の遅れ破壊特性評価方法で求めた、応力的余裕度と成形ひずみ及び外的負荷応力との関係を記憶部に記憶しておき、コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度と成形ひずみ及び外的負荷応力との関係を参照して、入力された成形ひずみのひずみ量及び外的負荷応力に対する、遅れ破壊の可能性を評価する処理を実行させるためのプログラム。
本実施形態の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、引張強度1470MPa級鋼板で厚さが1.0mmの金属板からなる供試材Xを、評価対象の金属板として説明する。
なお、本発明は、この供試材の金属板に限定されるものではなく、せん断端面に遅れ破壊が発生するような引張強度が980MPa以上の高強度鋼板をはじめとした金属材料に対して適用が可能である。
初めに、供試材Xをせん断加工によりせん断して、長さ100mmの直線状のせん断端面を有する試験片を作製した。せん断する際の試験片の幅は30mmとして、試験片を100mm×30mmの短冊形状とした。せん断加工時のクリアランスは、板厚に対して12%に設定した。なお、上記実施形態での説明では、せん断条件が単一の場合を例に説明したが、せん断加工時のクリアランスなどのせん断条件が変化した場合にも、それに対応した評価が可能である。すなわち、そのせん断条件での応力的余裕度を求めれば良い。
次に、試験片のせん断端面に対し、せん断端面の延在方向に沿って引張又は圧縮による成形ひずみを与えた。本例では、成形ひずみは、試験片の両端をクランプした状態で単軸荷重試験機によって与えた。なお、本例では、成形ひずみを引張又は圧縮の場合について説明したが、成形ひずみが曲げによる変形の場合でも、同様の結果が得られることを確認している。また、成形ひずみを与えずにせん断加工のままの試験片も用意した。
次に、各試験片について、治具を用いた四点曲げにより外部的な拘束を与え、試験片のせん断端面の中央部に応力を負荷した。但し、せん断時のバリ側を曲げの外側とし、引張応力が負荷されるようにした。
ここで負荷応力の大きさは、試験片の幅中央部かつ頂点部の第一主応力-第一主ひずみ関係をCAEによって求め、実際に試験片を曲げた際のひずみ量を測定し、対応づけることによって測定した。
本例では、応力負荷の方法として、四点曲げの場合について説明した。その他の曲げ荷重方法や、単軸引張などの荷重方法でも同様の傾向の結果が得られる。また、本例では、応力負荷の際には、せん断時のバリ側を曲げの外側とし、引張応力を負荷したが、同様にバリ側と反対側の面についても評価を行うことが可能である。
本例では、各試験片に負荷する負荷応力を、表に記載のように100MPa刻みで変更して、各成形ひずみの条件毎に、複数の試験片を用意した。
そして、負荷応力を負荷した試験片を、pH6のチオシアン酸溶液の浴槽に96時間、浸漬し、96時間後の遅れ破壊による亀裂発生の有無により遅れ破壊特性の評価を行った。
上記条件及び評価結果を、表1~表11に示す。
各表は、成形ひずみのひずみ量毎に纏めたものである。
Figure 2023173358000002
Figure 2023173358000003
Figure 2023173358000004
Figure 2023173358000005
Figure 2023173358000006
Figure 2023173358000007
Figure 2023173358000008
Figure 2023173358000009
Figure 2023173358000010
Figure 2023173358000011
Figure 2023173358000012
各表は、引張を正、圧縮を負としたときの、ひずみ量によって異なる負荷応力毎の遅れ破壊の発生の有無を表している。
表1~表11から分かるように、成形ひずみのひずみ量の絶対値が大きいほど、限界負荷応力が大きくなることが分かる。本例では、この成形ひずみを変数とした限界負荷応力が応力的余裕度となる。
図6は、遅れ破壊が発生しなかった限界の負荷応力から応力的余裕度を求め、応力的余裕度をひずみの関数として記述したものである。
このように、せん断後の成形ひずみに応じた応力的余裕度を記述することが出来ることが分かる。なお、本例では、せん断後の成形ひずみによって応力的余裕度が増加する場合を示したが、逆にせん断後の成形ひずみによって応力的余裕度が減少する場合でも同様の評価が可能である。
(実施例2)
次に、実施例1で求めた、せん断後の成形ひずみに応じた応力的余裕度を用いた遅れ破壊判定の一例を説明する。
実施例2では、供試材Xに対し、実施例1と同様の工程により作製した試験片であって、成形ひずみ量と負荷応力の異なる、A、B、C、D、E、F、G、Hからなる試験片を作製した。
その各試験片について、pH6のチオシアン酸溶液の浴槽に96時間浸漬し、96時間後の遅れ破壊による亀裂発生の有無により遅れ破壊の評価を行った。
各試験片の成形ひずみ量、負荷応力、遅れ破壊の評価結果を表12に示す。
Figure 2023173358000013
次に、実施例1で求めた応力的余裕度(図6参照)に、各試験片A~Gの結果をプロットして比較してみた。その比較結果が図7である。
図7から分かるように、応力的余裕度の線を超過するか否かで、実際の部品におけるせん断端面の遅れ破壊の発生の有無を予測することができることが分かった。
したがって、本開示の応力的余裕度を用いれば、せん断端面における、遅れ破壊が危険な箇所を判定することが可能となった。
なお、応力的余裕度の変数を成形ひずみとしているが、せん断加工のクリアランスなどのせん断条件を変数として、応力的余裕度を表しても良い。
10 第1の工程(せん断の工程)
11 第2の工程(成形ひずみを与える工程)
12 第3の工程(負荷した状態で拘束する工程)
13 第4の工程(水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程)
14 第5の工程(応力的余裕度を設定する工程)
20 応力的余裕度算出部
30 評価本体部
40 記憶部
d 応力的余裕度

Claims (12)

  1. 金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
    上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験と、
    上記試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力である限界負荷応力を求め、求めた限界負荷応力に基づき、上記金属板のせん断端面の遅れ破壊の発生に対する応力的余裕度を設定する工程と、を備え、
    上記求めた応力的余裕度を、金属板のせん断端面の遅れ破壊特性の評価の指標とする、
    ことを特徴とするせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  2. 上記拘束する工程以外の試験条件から選択した1又は2以上の試験条件である選択条件を変更して上記試験を実行して、各選択条件での上記限界負荷応力を上記応力的余裕度として求め、
    上記応力的余裕度を、上記選択条件を変数とする値として表現する、
    ことを特徴とする請求項1に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  3. 上記試験は、上記拘束する工程の前に、上記金属板のせん断面に、せん断面の延在方向に沿った成形ひずみを与える工程を備え、
    上記応力的余裕度を、上記成形ひずみを変数とした値とする、
    ことを特徴とする請求項1に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  4. 上記成形ひずみを与える工程で付与する成形ひずみは、0.1%以上とする、
    ことを特徴とする請求項3に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  5. 上記成形ひずみを与える工程では、単軸引張又は単軸圧縮により成形ひずみを付与することを特徴とする請求項3に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  6. 上記成形ひずみを与える工程では、曲げにより成形ひずみを付与することを特徴とする請求項3に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  7. 上記拘束する工程の前の金属板のせん断端面に曲げ加工を行うことによって、せん断端面に生じる成形残留応力を求める工程を備え、
    上記応力的余裕度を設定する工程は、上記求めた限界負荷応力に、上記成形残留応力が求める工程が求めた上記曲げ加工での成形残留応力を足した値を、上記応力的余裕度とする、
    ことを特徴とする請求項1に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  8. 上記成形残留応力を求める工程では、曲げ加工による、せん断端面に生じる成形ひずみと成形残留応力との関係を求め、
    上記応力的余裕度を、成形ひずみを変数とした値とする、
    ことを特徴とする請求項7に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  9. 上記試験で用いた金属板と同条件の金属板である評価対象の金属板のせん断端面での遅れ破壊の可能性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
    請求項3~請求項6のいずれか1項に記載のせん断端面の遅れ破壊特性評価方法で求めた上記応力的余裕度に基づき、上記評価対象の金属板の端面に付与する成形ひずみと負荷応力で、当該上記評価対象の金属板の端面での遅れ破壊の可能性を評価することを特徴とするせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  10. 上記金属板は、引張強度が980MPa以上の鋼板である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載したせん断端面の遅れ破壊特性評価方法。
  11. 請求項3~請求項6のいずれか1項に記載のせん断端面の遅れ破壊特性評価方法で求めた、応力的余裕度と成形ひずみとの関係を記憶部に記憶しておき、
    コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度と成形ひずみとの関係を参照して、入力された成形ひずみのひずみ量に対応する応力的余裕度を決定する処理を実行させるためのプログラム。
  12. 請求項3~請求項6のいずれか1項に記載のせん断端面の遅れ破壊特性評価方法で求めた、応力的余裕度と成形ひずみ及び外的負荷応力との関係を記憶部に記憶しておき、
    コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度と成形ひずみ及び外的負荷応力との関係を参照して、入力された成形ひずみのひずみ量及び外的負荷応力に対する、遅れ破壊の可能性を評価する処理を実行させるためのプログラム。
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