JP2023158917A - ダイカスト用離型剤 - Google Patents

ダイカスト用離型剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2023158917A
JP2023158917A JP2022068976A JP2022068976A JP2023158917A JP 2023158917 A JP2023158917 A JP 2023158917A JP 2022068976 A JP2022068976 A JP 2022068976A JP 2022068976 A JP2022068976 A JP 2022068976A JP 2023158917 A JP2023158917 A JP 2023158917A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mold release
release agent
mold
mass
die casting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022068976A
Other languages
English (en)
Inventor
勝 松本
Masaru Matsumoto
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Moresco Corp
Original Assignee
Moresco Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Moresco Corp filed Critical Moresco Corp
Priority to JP2022068976A priority Critical patent/JP2023158917A/ja
Publication of JP2023158917A publication Critical patent/JP2023158917A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Mold Materials And Core Materials (AREA)

Abstract

【課題】安定性が高く、金型への付着性および離型性を向上し、安全性の高いダイカスト用離型剤を提供すること。【解決手段】基油20~90質量%と、シロキサン結合で形成される分子骨格を有するシリコーン化合物1~50質量%と、塩基性ナトリウムスルホネート3~20質量%と、水1~30質量%と、を含有するW/O型エマルションで構成される、ダイカスト用離型剤である。【選択図】図3

Description

本発明はダイカスト用離型剤に関する。さらに詳細には、本発明は、ダイカスト鋳造において、鋳造を実施する際に金型の成形キャビティの成形型面に塗布される離型剤に関する。
ダイカスト製品は寸法精度が非常に高く、鋳肌の平滑性に優れる。アルミニウム合金、マグネシウム合金、亜鉛合金等を用いたダイカスト製品が大量に生産されている。ダイカスト製品を製造する工程の中で、金型とダイカスト製品との離型性を向上させるために、離型剤が使用されている。離型剤は分散媒中に離型成分を含む液体組成物であって、加熱された金型に対して噴霧される。金型が有する熱によって分散媒が蒸発し、離型成分の被膜が金型表面に形成されることで、離型性が発揮される。
ダイカスト用離型剤として、シリコーン化合物、植物油、鉱物油、ワックス類、油脂類、合成油等の非水溶性の離型成分を、乳化剤を用いて水中に乳化分散せしめたO/W型(水中油型)エマルションの離型剤が一般的に使用されている。O/W型エマルションの離型剤は、水性ダイカスト用離型剤とも称される。従来のダイカスト鋳造においては、水性ダイカスト用離型剤を水で50~200倍に希釈し、その希釈液を通常100~400℃の金型に噴霧していた。希釈液に含有される離型成分の割合は、1%未満であることも多かった。
金型の温度が300℃以上の高温になっている場合、いわゆるライデンフロスト現象が起こり易くなる。ライデンフロスト現象とは、高温の金型上で水が爆発的に蒸発するために離型剤と金型との間に水蒸気の層ができ、離型剤と金型とが接触し難くなるために離型成分が金型に付着しにくくなる現象である。この現象への対策として、離型成分が付着し易い200℃以下の温度まで金型を冷却する目的で、水性ダイカスト用離型剤の希釈液が冷却水としても利用されていた。このため、離型剤としての必要量よりも過剰量の離型剤希釈液が金型に噴霧され、噴霧された離型剤希釈液の大部分が廃液となっていた。
また、水性ダイカスト用離型剤希釈液を用いる場合も最終的にはエアブローによって金型から水分が除去されるが、金型に水分が残留した場合には鋳物に鋳巣が発生し、ダイカスト不良が生じる。特許文献1には、水性ダイカスト用離型剤に分散剤を加えて、乾燥性を向上させることが記載されている。しかしながら、従来通り多量の離型剤を噴霧するため、金型上の水の残留を抑制する改善が求められていた。
また、ダイカスト用離型剤を使用する際、金型への離型成分の付着量が不足している場合は離型性に劣る。一方、付着量が過剰な場合には過剰の離型成分が熱によって分解し、ダイカスト製品中に分解ガスとして混入するといった不良品が増える原因となる。水性ダイカスト用離型剤の希釈液を大過剰に噴霧する従来の方法では、離型成分の付着量を増やすことができる一方で、鋳造サイクルにおける金型の温度変化が大きく、金型に付着する離型成分の量をコントロールすることが難しいといった問題があった。また、大幅な温度変化の繰り返しから生じる金属疲労が、金型の短命化の要因となる懸念があった。
一方、非エマルション型のダイカスト用離型剤も知られている。特許文献2には、非水溶性の離型成分を溶剤等に溶解させた油性ダイカスト用離型剤が開示されている。しかしながら、油性ダイカスト用離型剤は引火点を有しているため、火災の発生の恐れがあり、幅広く使用されるには至っていない。
特開2006-212691号公報 特許第4095102号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、安定性が高く、金型への付着性および離型性を向上し、安全性の高いダイカスト用離型剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく研究を重ねた結果、特定の組成を有するW/O型(油中水型)エマルションの離型剤を、希釈することなくミストノズルを用いて金型に噴霧することによって、驚くべきことに前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明にかかるダイカスト用離型剤は、基油、シロキサン結合で形成される分子骨格を有するシリコーン化合物、塩基性ナトリウムスルホネートおよび水を特定範囲の割合で含む。これら以外の添加剤が含まれていてもよい。ダイカスト用離型剤中の基油とシリコーン化合物の合計含有量は、水の含有量よりも多い。本発明にかかるダイカスト用離型剤は、油の中に水滴が存在するW/O型エマルションで構成される離型剤である。
本発明によれば、離型成分を高い割合で含有する離型剤を少量噴霧して使用することができる。本発明によれば、ライデンフロスト現象の発生が抑制され、金型に対して離型成分を効率良く付着させることが可能になる。本発明によれば、ダイカストを繰り返し実施する際の金型の温度変化(冷却幅)が小さく、金型の乾燥も容易になる。しかも、従来の水性ダイカスト用離型剤と比較して使用量を大幅に削減することができるため廃液が少なくなり、水質汚染等の環境汚染の問題を改善することが可能となる。
また、本発明のダイカスト用離型剤によれば、油性の離型剤で課題となる火災の危険性を回避するとともに、蒸発した溶媒成分のミストが発生することを抑制するなど、工場内の環境の改善にも繋がる。
図1は、付着性評価試験の結果を示すグラフである。 図2は、付着性評価試験の結果を示す図像である。 図3は、堆積性評価試験の結果を示すグラフである。
[実施形態の概要]
本発明にかかる離型剤は、油の中に水滴が存在するW/O型エマルションで構成される。油中水型エマルションは、逆エマルションとも称される。本発明にかかる離型剤は、離型剤としての有効成分(離型成分)を、離型剤中に70~90質量%程度含有することができる。このため、従来の水性エマルションタイプの離型剤と比較して有効成分濃度が非常に高い。また、引火点を有さず安全性が高い。
本発明にかかる離型剤は、概要的に、基油と、シリコーン化合物と、塩基性ナトリウムスルホネートと、水とを含有する。基油およびシリコーン化合物は油性成分であり、離型成分として機能すると考えられている。塩基性ナトリウムスルホネートは乳化剤成分であり、油性成分中に水を分散させる機能を有すると考えられている。水は、離型剤の引火性を無くすとともに、離型剤の動粘度を下げる機能を奏していると考えられている。また、水は、離型剤の使用時には、金型を冷却する機能を果たす。
本発明にかかる離型剤は、基油を20~90質量%含有する。基油としては、具体的には例えば、タービン油、マシン油、シリンダー油、パラフィン油、ギヤ油等の鉱物油、ポリブテン・ポリブタジエン、ポリエステル等の合成油、有機溶媒等の溶剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
基油として有機溶媒を用いる場合、具体的には例えば、石油系炭化水素溶媒が挙げられる。石油系炭化水素溶媒としては、例えば、パラフィン系炭化水素溶媒、オレフィン系炭化水素溶媒、ナフテン系炭化水素溶媒、芳香族系炭化水素溶媒、鉱物系炭化水素溶媒などが挙げられる。これらの石油系炭化水素溶媒の中では、作業者の健康上の問題、化学的な安定性などの観点から、パラフィン系炭化水素溶媒などを用いることが好ましい。なお、石油系炭化水素溶媒としては、上記のような溶媒を単独で用いてもよいし、複数用いてもよい。また、石油系炭化水素溶媒には、本発明の趣旨に反しない範囲で、添加物や不純物等が含まれていてもよい。
基油の物性は、本発明の効果を奏する限り制限されないが、例えば、引火点が70~170℃である石油系炭化水素溶媒を用いることができる。引火点が70℃以上である基油を用いると、速乾性が高く、金型表面に形成される離型成分の被膜の厚さが均一になる。また、金型の焼き付きや、離型成分の堆積に由来する鋳物の寸法のばらつきが抑制される。また、範囲の上限としては、適度な揮発性を有する観点から、引火点は170℃以下であることが好ましい。離型剤の乾燥性(揮発性)が低く、離型剤が金型に残ってしまうと、金型からの離型剤のたれ落ち、鋳物の鋳巣などが発生する原因になりうる。
本発明にかかる離型剤は、シロキサン結合で形成される分子骨格を有するシリコーン化合物を1~50質量%含有する。シリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン、α-オレフィン変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、α-メチルスチレン変性シリコーン等のアラルキル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルキル・アラルキル共変性シリコーン、アルキル・エステル共変性シリコーン等の各種変性シリコーン等が挙げられる。
シリコーン化合物の動粘度は、本発明の効果を奏する限り制限されないが、25℃における動粘度は下限が好ましくは100mm/s以上、より好ましくは500mm/s以上であり、上限が好ましくは5000mm/s以下、より好ましくは3000mm/s以下である。シリコーン化合物の動粘度が500mm/sより低い場合は、焼き付き不良が発生し易くなる。シリコーン化合物の動粘度が3000mm/sより高い場合は、安定なW/O型エマルションを形成することが難しくなる。
塩基性ナトリウムスルホネートは、本発明にかかる離型剤中に3~20質量%含有される。本発明では、乳化剤として、アニオン界面活性剤である塩基性ナトリウムスルホネートを使用することによって、基油およびシリコーン化合物で構成される油相中に水を均一に分散することができ、かつ、低粘度の離型剤が得られることを見出している。塩基性ナトリウムスルホネートの含有量が3質量%未満の場合は、安定なW/O型エマルションを生成しにくく、また20質量%を超える場合にはエマルションの粘度が上昇したり、貯蔵安定性が低下したりするため好ましくない。エマルションの安定性の観点から、塩基性ナトリウムスルホネートの含有量は4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。塩基性ナトリウムスルホネートの含有量は、17質量%以下であることが好ましく、13質量%以下がさらに好ましい。塩基性ナトリウムスルホネートは、基油等に溶解されているものを用いてもよい。
塩基性ナトリウムスルホネートとしては、JIS K-2501に従う塩基価が100mgKOH/g以上のものが使用される。100mgKOH/g以上の塩基価を有する塩基性ナトリウムスルホネートは、高塩基性ナトリウムスルホネートあるいは過塩基性ナトリウムスルホネートとも称される。塩基価が100mgKOH/g未満の場合は、安定なエマルションを生成しにくくなる。また安定的な離型性能を維持するためには、塩基価は200~600mgKOH/g、特に300~500mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。塩基価が上記範囲を超える場合は基油に対する溶解性に劣る場合がある。
本発明にかかる離型剤は、水を1~30質量%含有する。水の含有割合は、5~25質量%であれば好ましい。本発明にかかる離型剤において、水は、連続相である基油およびシリコーン化合物の中に、微粒子として分散されている。水が1質量%未満であると、離型剤が引火点を有し、高温環境における引火の懸念がある。水の含有割合が30質量%を超えると、原液の貯蔵安定性が不良となるおそれ、離型剤の粘度が上昇するおそれがある。
なお、離型剤の貯蔵安定性の向上を図るため、塩基性ナトリウムスルホネートに、離型成分の乳化に適した公知の乳化剤を混合して使用してもよい。乳化剤としては例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、高級アミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物等のノニオン系界面活性剤等を使用できる。乳化剤の使用量は、離型成分の種類により適宜選択することができるが、増粘等を抑制するためには、塩基性ナトリウムスルホネートの配合量よりも少なく、乳化および安定に必要な最小量とすることが好ましい。本発明にかかる離型剤はノニオン系界面活性剤を用いない、もしくは少量の使用にとどめることができるため、曇点効果による、高低温での離型剤の安定性の影響を受けない。さらに、水素結合による離型剤の粘度の上昇も起こらず、ミストノズルの詰まり抑制、吐出不良の問題発生も低減できる。
さらに、本発明にかかる離型剤には、ダイカスト用離型剤に従来から添加されているその他の薬剤を、付着効率や離型性を損なわない程度に併用することもできる。このようなその他の薬剤としては例えば、高分子化合物、ワックス類、消泡剤、腐食防止剤、増粘剤、防錆剤、防腐剤等が挙げられる。
離型剤の粘度が低いと鋳造時にミストが発生することがあるため、これを抑制するために高分子化合物を添加してもよい。このような高分子化合物としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレン、オレフィン共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体)等が使用され、その数平均分子量が2,000~300,000、特に2,000~150,000のものが好ましく用いられる。高分子化合物は、本発明の離型剤中に、0.05~20質量%配合される。高分子化合物を配合する場合、配合量を0.05質量%以上とすることで、ミストの発生を十分抑制することができ、20質量%以下とすることで粘度上昇によるミストノズルの詰まりなどを防止することができる。このような点から、配合量は、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。
本発明にかかる離型剤は、離型成分であるシリコーン化合物を、離型剤中に1~50質量%の割合で含有する。また、離型成分として機能しうる基油を離型剤中に20~90質量%の割合で含有する。さらに、本発明にかかる離型剤は希釈の必要が無く、この濃度のままで金型に噴霧して使用できる。このため、従来の水性エマルションタイプの離型剤と比較して、ダイカストにおいて離型剤を噴霧する際の離型剤中の有効成分濃度を、100倍以上(具体的には140~180倍程度)にまで高めることができる。
本発明にかかる離型剤の動粘度は、JIS K 2283動粘度試験に準拠して測定することができる。この試験にて測定した時、本発明にかかるW/O型エマルションの動粘度は、1~40mm/s(40℃)であることが好ましい。離型剤はノズルを備える噴霧装置を用いて金型に吹き付けられるところ、離型剤の粘度が高いとノズルの詰まりの原因となる可能性がある。また、ダイカスト工程の汎用性を考慮すると、離型剤の粘度は、従来使用されている水性ダイカスト用離型剤と大きく異ならないことが好ましい。一般的にW/O型エマルションは高粘度となりやすく、とりわけ高濃度のW/Oエマルションは高粘度となるため、ノズル噴霧には向かないと考えられていた。これに対して本発明にかかる離型剤は、特定の組成を有するW/Oエマルションで構成され、高濃度の離型成分を含有しながらもノズル噴霧が可能な粘度範囲を実現している。
[実施例]
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1~4および比較例1~9)
[サンプルの作製]
表1および表2に示す組成のダイカスト用離型剤を準備した。
実施例1~4および比較例1~7は、W/O型エマルションで構成される離型剤である。比較例8はO/W型エマルションで構成される離型剤である。比較例9は非エマルションの油性離型剤である。
Figure 2023158917000002
Figure 2023158917000003
(使用成分の詳細)
上表に示す各サンプルでは、次の材料を使用した。
・シリコーン化合物A:アルキル・アラルキル変性シリコーン(アルキルユニット80.8%、アラルキルユニット19.2%)、アルキル側鎖C=12、分子量21,000
・シリコーン化合物B:アルキル・アラルキル変性シリコーン(アルキルユニット45.5%、アラルキルユニット54.5%)、アルキル側鎖C=6、分子量16,000
・パラフィン系溶剤(基油):イソパラフィン系炭化水素、密度(15℃)0.82、動粘度(37.8℃)12.7mm/s
・防錆・防食剤:二塩基酸系防錆防食剤
・界面活性剤1:塩基性ナトリウムスルホネート(高塩基性合成ナトリウムスルホネート、有効成分65%、塩基価450mgKOH/g)、LUBRIZOL社製、品番LZ5318B
・界面活性剤2:高塩基性合成カルシウムスルホネート(有効成分55%、塩基価400mgKOH/g)、LUBRIZOL社製、品番LZ5347LC
・界面活性剤2:天然型ナトリウムスルホネート(中性)、株式会社MORESCO製、スルホールS-465、分子量465
・界面活性剤3:天然型カルシウムスルホネート(中性)、株式会社MORESCO製、スルホールCA-45N
・界面活性剤4:ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、第一工業製薬株式会社製、DKS NL-Dash400
・界面活性剤5:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、第一工業製薬株式会社製、ノイゲンXL
・界面活性剤6:ポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテル、第一工業製薬株式会社製、ノイゲンET-89
・界面活性剤7:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、三洋化成工業株式会社製、イオネットS-80
実施例1~4、比較例1~7のW/O型離型剤は、次の手順で作製した。温度条件はいずれも室温とした。
1.パラフィン系溶剤をビーカーに規定量添加した。
2.ビーカーをRIKO社製マグネチックスターラー(MAGNETIC STIRRER MSR-10S)にセットし、攪拌子にて全体が均一に混ざるように攪拌した。
3.シリコーン化合物A、Bを規定量添加し、マグネチックスターラーにて約20分間攪拌した。
4.各種界面活性剤を規定量添加し、マグネチックスターラーにて約20分間攪拌した。
5.防錆・防食剤を規定量添加し、マグネチックスターラーにて約20分攪拌した。
6.系内が均一になったことを目視にて確認した後、純水を緩やかに規定量滴下しながら、マグネチックスターラーにて約20分間攪拌した。
7.さらに、系内を安定化するために、マグネチックスターラーにて約1時間攪拌した。
比較例8のO/W型離型剤は、次の手順で作製した。
1.シリコーン化合物A,B及び各種界面活性剤をビーカーに規定量添加した。
2.ビーカーをプライミクス社製ホモジナイザー(HOMOMIXER MARK II Model2.5)にセットし、4000rpm、常温の条件にて約30分間攪拌した。
3.純水をビーカーに緩やかに添加し、著しく系内が増粘したところで、乳化粒子径が設計値内に入るまで、4000rpm、常温の条件にてホモジナイザーで攪拌した。攪拌時間は、約30分~1時間とした。
4.乳化粒子径の設計値は0.17μmに制御しており、測定はHORIBA製Partica LA-960V2にて測定した。
5.乳化粒子径が設計値内に入ったことを確認後、残りの純水を全量添加し、1000rpm、常温の条件にてホモジナイザーで約30分間攪拌した。
6.防錆・防食剤を規定量添加し、1000rpm、常温の条件にてホモジナイザーで約30分間攪拌した。
7.さらに、系内を安定化するため、1000rpm、常温の条件にてホモジナイザーで約1時間攪拌した。
比較例9は、油性離型剤として、青木科学株式会社製ルブローレンWFR-7Rを用いた。
[評価:引火性、動粘度、安定性]
実施例1~4、比較例1~9の離型剤について、1.引火の危険性、2.動粘度を評価し、3.安定性試験を実施した。
(評価1:引火の危険性)
引火の危険性について、◎:不燃性、○:難燃性、×:引火性として評価した。なお、不燃性/難燃性/引火性の基準は、引火点の判定基準(JIS K 2265)、高圧スプレー試験(Fed.6052/MIL F-7100)、及びホットマニホールド試験(Fed.6053/MIL F-7100)の結果より、総合的に判断した。
(評価2:動粘度)
JIS K 2283動粘度試験に準拠し、各サンプルの40℃における動粘度(mm/s)を測定した。
(評価3:安定性)
以下の条件で各サンプルの安定性を評価した。
・評価量:100mL
・容器:ガラス製沈殿管
・冷却-加熱条件:4℃×72時間-40℃×72時間を1サイクルとした。
・測定:ガラス製沈殿管に収容した各サンプルについて、1,2,3サイクルの冷却-加熱を行った。その後、各サンプルの液の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりとした。
〇:液が均一に混合し安定
×:液が2層に分離
××:液が2層に分離し、析出物が発生
引火の危険性、動粘度および安定性の評価結果を[表3]、[表4]にまとめて示す。
Figure 2023158917000004
Figure 2023158917000005
動粘度に関して、乳化剤としてノニオン系界面活性剤を添加した比較例4~7は、動粘度が40mm/sを超える高い値となった。ノニオン系界面活性剤と水との水素結合により粘度が上昇したものと考えられた。動粘度が高い場合、ダイカスト鋳造において離型剤を噴霧するためのミストノズルが詰まったり、ノズルからの吐出が不安定になったりする問題が生じる可能性が高くなる。実施例1~4は、動粘度が油性離型剤(比較例9)よりも低く、O/W型エマルション離型剤(比較例8)に近い値となり、良好な性質を示した。
安定性に関して、乳化剤として高塩基性ナトリウムスルホネートを含む実施例1~4は、安定性が認められた。実施例1~4の離型剤は、ノニオン系界面活性剤を添加しなくても、アニオン系界面活性剤である高塩基性合成ナトリウムスルホネート(塩基価450mgKOH/g)を用いて、エマルションを安定化することができた。なお、高塩基性ナトリウムスルホネートの配合量が2.6wt%以下の例(比較例1、2)、26wt%である例(比較例3)では安定性が不充分であった。
安定性に関して、表1には示していないが、高塩基性ナトリウムスルホネートに代えて塩基性カルシウムスルホネート(有効成分55%、塩基価400mgKOH/g)を使用し、他の界面活性剤を添加しなかった離型剤は、エマルションの安定性が不充分であった。塩基性ナトリウムスルホネートよりも極性が低いことにより、系内の水分を捕捉することができなかったことが要因と考えられた。そこで、比較例4では、塩基性カルシウムスルホネートに加えてノニオン系界面活性剤を配合したが、安定性の改善は見られず、分離および析出物が発生した。
また、表2には示していないが、アニオン界面活性剤として天然型ナトリウムスルホネート(中性)または天然型カルシウムスルホネート(中性)を単独で使用したW/O型エマルションのダイカスト用離型剤は、エマルションの安定化が図れなかった。そのため、比較例5および比較例6として、天然型ナトリウムスルホネート(中性)あるいは天然型カルシウムスルホネート(中性)とノニオン系界面活性剤とを併用したが、加熱-冷却のサイクルに対する安定性が得られず、分離および析出物が発生した。また、動粘度が47.2mm/s以上の高い値となった。ノニオン系界面活性剤による水素結合の影響を受けたものと考えられた。
比較例7のW/O型ダイカスト用離型剤は、ノニオン系界面活性剤のみを数種類併用することによって、エマルションの安定性が改良された。しかしながら、動粘度が62.7mm/sと高い値となり、ミストノズルの詰まり、吐出の安定性に関する問題が懸念された。また、ノニオン系界面活性剤の曇点効果による高低温域での安定性の影響を受けるため、加熱-冷却のサイクルに対する安定性が得られず、分離および析出物が発生した。
比較例8は水中油型(O/W型)エマルション離型剤の原液を用いた。比較例8は、離型剤のうち90%が水であり、ノニオン系界面活性剤の含有量も1wt%程度であるため、動粘度が3.5mm/sと低い値であった。このため、ノズルからの噴霧には問題ないと考えられた。しかしながら、比較例8の離型剤は金型に噴霧する際には通常原液を10~100倍程度に希釈して用いられるため、離型成分の濃度は1%未満となり、大量に噴霧する必要がある。また、長期間、高温域で使用しているとミストノズル先端付近にシリコーン化合物の凝集による析出が確認され、これがミストノズルの詰まり、安定供給に悪影響を及ぼす。比較例8はホモジナイザー等を用い、乳化粒子径を0.17μmに制御しているため、高低温域においても優れた乳化安定性を有しているが、長期間、高温域で使用しているとミストノズル先端付近にシリコーン化合物の凝集による析出が確認され、これがミストノズルの詰まり、安定供給に悪影響を及ぼす。
比較例9は、シリコーンオイルおよび溶剤を主成分とした油性離型剤であるため、安定性評価試験においては分離および析出物の発生はなかった。しかしながら、引火の危険性があるため、作業性が劣り、作業環境が制約された。
[評価:付着性および堆積性]
実施例2および比較例8の離型剤について、4.鋼板に対する付着性、5.鋼板に対する堆積性の評価試験を実施した。鋼板は、金型を模擬したものである。
(評価4:付着性)
実施例2および比較例8の離型剤を、150℃、250℃、350℃の各温度に加熱した鋼板(縦100mm×横100mm×厚さ10mm、材質:SUS304)に下記のスプレー装置・試験条件にて噴霧し、離型成分の付着量を測定した。良好な離型性を発揮するためには付着量が多い方がよい。なお、実施例2、比較例8の離型剤は希釈を行わず、原液のまま噴霧を行った。
・噴霧条件
使用ノズル ATOMAXノズル AM45B-OST(株式会社アトマックス製、二流体ノズル)
エアー圧 0.4MPa
液圧 0.1MPa
スプレー時間 0.5sec
スプレー量 0.3g
スプレー距離 200mm
付着性試験の結果を[表5]に示す。また、[図1]にグラフを、[図2]に付着性試験結果の図像をそれぞれ示す。
Figure 2023158917000006
[表5]、[図1]に示すとおり、比較例8の離型剤は、150℃および250℃では付着量が少なく、350℃ではスプレー中に蒸発し、鋼板にはほとんど付着しなかった。これに対して、実施例2の離型剤は150℃では充分に多い付着量となり、350℃でも鋼板への付着が認められた。
なお、油性離型剤である比較例9の離型剤は、150℃、250℃、350℃において付着量の変化が小さく、安定して鋼板に付着した。しかしながら、引火の危険性があり、防火設備を備えた適切な環境下でスプレー作業をする必要があった。
[図2]に示すとおり、実施例2においては、150℃の鋼板では、鋼板全面に離型剤が付着していることが確認できた。また、250℃、350℃の高温領域においても、鋼板上に離型剤がしっかり付着し、拡がっていることが確認できた。一方、比較例8では、いずれの温度領域においても、実施例2のような鋼板上での離型剤の付着、拡がり性は確認できなかった。
(評価5:洗浄性)
離型剤は、金型の表面に一定量の被膜を形成した後、付着、洗浄、脱着を繰り返して使用される。より具体的には、最初にスプレーした際に、粗い金属面に強固に吸着被膜が形成され、その後、水圧洗浄によって剥離され、再度スプレーにより離型剤が吹き付けられる。これらの作業により、離脱と付着が繰り返されるため、離型剤には皮膜が過剰に堆積せずに、一定した膜厚の皮膜が維持されることが求められる。
鋼板温度以外は付着性の評価と同じ条件で、実施例2、比較例8、比較例9の離型剤を、250℃に加熱した鋼板(縦100mm×横100mm×厚さ10mm、材質:SUS304)に対して1分間隔で5回スプレーし、離型成分の付着量から堆積率を評価した。
堆積率は、以下の計算式より算出した。堆積率が小さい方が良好な洗浄性を示す。
堆積率(%)=(5回スプレー後の付着量)/(1回スプレー後の付着量)×100
なお、試験はn=2で実施し、平均値を採用した。
堆積性試験の結果を[表6]に示す。また、[図3]にグラフを示す。
Figure 2023158917000007
[表6]に示すとおり、実施例2は、比較例9とほぼ同等の良好な洗浄性を示した。実施例2の離型剤によれば、良好な洗浄性と作業性の両立と、ミストノズルの詰まりの不具合を低減することができた。一方、比較例8はシリコーン化合物の凝集、析出が見られ、堆積率が高かった。比較例8の離型剤は、堆積率が過大であり作業性が劣り、ミストノズルの詰まりの懸念も考えられる。本発明にかかる離型剤によれば、良好な離型性および洗浄性を示し、かつ安定したW/O型離型剤組成物を実現することが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (3)

  1. 基油20~90質量%と、
    シロキサン結合で形成される分子骨格を有するシリコーン化合物1~50質量%と、
    塩基性ナトリウムスルホネート3~20質量%と、
    水1~30質量%と、
    を含有するW/O型エマルションで構成される、ダイカスト用離型剤。
  2. 前記塩基性ナトリウムスルホネートの塩基価は、100mgKOH/g以上である、請求項1に記載のダイカスト用離型剤。
  3. JIS K 2283に基づいて測定される動粘度(40℃)が、1~40mm/sである、請求項1または請求項2に記載のダイカスト用離型剤。
JP2022068976A 2022-04-19 2022-04-19 ダイカスト用離型剤 Pending JP2023158917A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022068976A JP2023158917A (ja) 2022-04-19 2022-04-19 ダイカスト用離型剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022068976A JP2023158917A (ja) 2022-04-19 2022-04-19 ダイカスト用離型剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023158917A true JP2023158917A (ja) 2023-10-31

Family

ID=88513934

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022068976A Pending JP2023158917A (ja) 2022-04-19 2022-04-19 ダイカスト用離型剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023158917A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2018032853A1 (zh) 一种微乳切削液及其制备工艺
WO2015137002A1 (ja) 高温耐熱性油性離型剤、高温耐熱性静電塗布型油性離型剤及びその塗布方法
JP2004263087A (ja) アルミニウム板用熱間圧延油用潤滑油
AU2001239249B2 (en) Water-soluble aluminium and aluminium alloys hot rolling composition
JPS62192496A (ja) アルミ用冷間圧延油組成物
JP4764927B2 (ja) 鋳造用油性離型剤、塗布方法及び静電塗布装置
JP2023158917A (ja) ダイカスト用離型剤
JPH1121577A (ja) 金型潤滑剤
JP6273521B2 (ja) 冷間圧延油組成物及び冷間圧延方法
JP2011067837A (ja) 水性ダイカスト用離型剤及びそれを用いたダイカスト製品の製造方法
JP2011167739A (ja) 非鉄金属のダイカスト用離型剤
JPWO2019234947A1 (ja) 離型剤組成物およびダイカスト方法
JP2003253290A (ja) 非鉄金属塑性加工用水系潤滑剤組成物
JPS58224179A (ja) 水性エマルジヨン系防錆剤
US2864726A (en) Protective coating for ferrous type metal
JP2005054090A (ja) 水中油型変性シリコーンエマルジョン組成物
WO2012144457A1 (ja) ダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤
US2392102A (en) Rust preventive composition
JPH1177233A (ja) 金型鋳造用離型剤
JPS63277298A (ja) 塑性加工用水溶性潤滑剤
JP6516803B2 (ja) ダイカスト用離型剤組成物及びその製造方法
JP7407591B2 (ja) 無機材料の加工に用いる油剤組成物及び加工液
JP5948272B2 (ja) 油性潤滑油及び潤滑油の塗布方法
JP7407191B2 (ja) 水性金属加工流体およびその使用方法
CN116441790A (zh) 一种焊接用防飞溅剂及其制备方法和应用