JP2023152774A - 車両用駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1回転電機を効率的に利用できる車両用駆動装置を提供する。【解決手段】車両が停止状態から最高速度まで加速する間に、第1回転電機MG1は、第1ロータが正回転しつつ負トルクを発生させる発電状態から、第1ロータが負回転しつつ負トルクを発生させる力行状態まで変化し、車両を最大加速度で加速させた場合に、出力部材Oの出力が最大値Pmaxに到達する車両の速度域である最大出力到達域A1で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値Pとなり、車両の最高速度V3を含む速度域である最高速域A2で、第1回転電機MG1の力行出力が最大値Pとなるように、分配用差動歯車機構のギヤ比、第1ロータから分配用差動歯車機構の第1回転要素までの変速比、入力部材から分配用差動歯車機構の第2回転要素までの変速比、分配用差動歯車機構の第3回転要素から出力部材Oまでの変速比、及び第2ロータから出力部材Oまでの変速比が設定されている。【選択図】図4
Description
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第1回転電機と、第2回転電機と、分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置に関する。
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
特許文献1の車両用駆動装置(16)では、分配用差動歯車機構(40)は、サンギヤ(S)、キャリヤ(CA)、及びリングギヤ(R)を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。サンギヤ(S)は、第1回転電機(MG1)のロータに駆動連結されている。そして、キャリヤ(CA)は、入力部材(20)を介して内燃機関(12)に駆動連結されている。また、リングギヤ(R)は、第2回転電機(MG2)のロータ、及び出力部材(32a)に駆動連結されている。
特許文献1の車両用駆動装置(16)は、車輪(14)の駆動力源として機能する、内燃機関(12)、第1回転電機(MG1)、及び第2回転電機(MG2)のうち、少なくとも内燃機関(12)の駆動力により車両を走行させる動作モードを備えている。この動作モードでは、内燃機関(EG)のトルクが、分配用差動歯車機構(40)により、第1回転電機(MG1)の側と、出力部材(32a)及び第2回転電機(MG2)の側とに分配される。第1回転電機(MG1)は、正回転しつつ負トルクを発生させて発電を行う。また、第1回転電機(MG1)のトルクを反力として、内燃機関(EG)のトルクに対して減衰したトルクが、出力部材(32a)及び第2回転電機(MG2)の側に伝達される。
上記の動作モードでは、第1回転電機(MG1)が常に発電状態となる。そのため、特許文献1の車両用駆動装置(16)では、第1回転電機(MG1)を効率的に利用できていなかった。
そこで、第1回転電機を効率的に利用できる車両用駆動装置の実現が望まれる。
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車両が備えた車輪に駆動連結される出力部材と、
第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ロータを備えた第2回転電機と、
第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を備え、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1回転要素が、前記第1ロータに駆動連結され、
前記第2回転要素が、前記入力部材に駆動連結され、
前記第3回転要素が、前記出力部材及び前記第2ロータに駆動連結され、
前記車両が停止状態から最高速度まで加速する間に、前記第1回転電機は、前記第1ロータが正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態から、前記第1ロータが負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態まで変化し、
前記車両を最大加速度で加速させた場合に、前記出力部材の出力が最大値に到達する前記車両の速度域である最大出力到達域で、前記第1回転電機の発電出力が最大となり、前記車両の最高速度を含む速度域である最高速域で、前記第1回転電機の力行出力が最大となるように、前記分配用差動歯車機構のギヤ比である分配ギヤ比、前記第1ロータから前記第1回転要素までの変速比である第1変速比、前記入力部材から前記第2回転要素までの変速比である第2変速比、前記第3回転要素から前記出力部材までの変速比である第3変速比、及び前記第2ロータから前記出力部材までの変速比である第4変速比が設定されている点にある。
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車両が備えた車輪に駆動連結される出力部材と、
第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ロータを備えた第2回転電機と、
第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を備え、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1回転要素が、前記第1ロータに駆動連結され、
前記第2回転要素が、前記入力部材に駆動連結され、
前記第3回転要素が、前記出力部材及び前記第2ロータに駆動連結され、
前記車両が停止状態から最高速度まで加速する間に、前記第1回転電機は、前記第1ロータが正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態から、前記第1ロータが負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態まで変化し、
前記車両を最大加速度で加速させた場合に、前記出力部材の出力が最大値に到達する前記車両の速度域である最大出力到達域で、前記第1回転電機の発電出力が最大となり、前記車両の最高速度を含む速度域である最高速域で、前記第1回転電機の力行出力が最大となるように、前記分配用差動歯車機構のギヤ比である分配ギヤ比、前記第1ロータから前記第1回転要素までの変速比である第1変速比、前記入力部材から前記第2回転要素までの変速比である第2変速比、前記第3回転要素から前記出力部材までの変速比である第3変速比、及び前記第2ロータから前記出力部材までの変速比である第4変速比が設定されている点にある。
この特徴構成によれば、車両を最大加速度で加速させる場合に、第1回転電機が発電状態と力行状態との双方で最大出力を発生させるように、分配ギヤ比、第1変速比、第2変速比、第3変速比、及び第4変速比が設定されている。つまり、第1回転電機を発電状態と力行状態との双方で最大限利用できるような動力伝達系の設定となっている。したがって、本特徴構成によれば、第1回転電機を効率的に利用可能な車両用駆動装置を実現できる。
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるように構成されている。
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるように構成されている。
図1に示すように、車両用駆動装置100は、入力部材Iと、出力部材Oと、第1回転電機MG1と、第2回転電機MG2と、分配用差動歯車機構SPと、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1減速機RD1と、出力用差動歯車機構DFと、を更に備えている。
本実施形態では、入力部材Iと第1回転電機MG1と第2回転電機MG2と分配用差動歯車機構SPとが同軸上に配置されている。
第1回転電機MG1は、第1ステータST1と、第1ロータRT1と、を備えている。第1ステータST1は、非回転部材NRに固定されている(図示を省略)。第1ロータRT1は、第1ステータST1に対して回転自在に支持されている。なお、本実施形態では、非回転部材NRは、第1回転電機MG1等を収容するケースである。
第2回転電機MG2は、第2ステータST2と、第2ロータRT2と、を備えている。第2ステータST2は、非回転部材NRに固定されている(図示を省略)。第2ロータRT2は、第2ステータST2に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、第2ロータRT2は、ロータギヤ2と一体的に回転するように連結されている。
第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2のそれぞれは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2のそれぞれは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置BTとの間で電力の授受を行うように、当該蓄電装置BTと電気的に接続されている。第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2のそれぞれは、車輪Wの駆動力源として機能する。
以下の説明では、第1ロータRT1の回転軸心に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、第1ロータRT1の回転軸心を含む複数の回転軸心のそれぞれに直交する方向を、各回転軸心を基準とした「径方向R」とする。なお、どの回転軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの回転軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
入力部材Iは、内燃機関EGに駆動連結されている。本実施形態では、入力部材Iは、軸方向Lに沿って延在するように形成された入力軸1である。内燃機関EGは、車輪Wの駆動力源として機能する。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、遊星歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、遊星歯車機構における複数の回転要素が、互いに他の回転要素を介することなく連結されている状態を指すものとする。
分配用差動歯車機構SPは、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備えている。そして、分配用差動歯車機構SPは、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成されている。
ここで、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、差動歯車機構の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、差動歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、各回転要素の回転速度の順は、各回転要素の速度線図(図3等参照)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は差動歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。
第1回転要素E1は、第1ロータRT1に駆動連結されている。第2回転要素E2は、入力部材Iに駆動連結されている。第3回転要素E3は、出力部材O及び第2ロータRT2に駆動連結されている。
分配用差動歯車機構SPは、第1サンギヤS1と、第2サンギヤS2と、第1キャリヤC1と、を備えた遊星歯車機構である。
第1キャリヤC1は、第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持している。第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2は、互いに一体的に回転するように連結されている。第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1に噛み合っている。第2ピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2に噛み合っている。第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2のそれぞれは、自己の軸心回りに回転(自転)すると共に、第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2の軸心(つまり、第1キャリヤC1の回転軸心)を中心として回転(公転)する。第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2は、それらの公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
本実施形態では、第1ピニオンギヤP1は、第2ピニオンギヤP2よりも軸方向第1側L1に配置されている。そして、第1ピニオンギヤP1は、第2ピニオンギヤP2よりも小径に形成されている。
第1サンギヤS1は、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の一方である。そして、第1キャリヤC1は、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の他方である。第2サンギヤS2は、第3回転要素E3である。本実施形態では、第1サンギヤS1が第2回転要素E2であり、第1キャリヤC1が第1回転要素E1である。本実施形態では、第1サンギヤS1は、入力軸1と一体的に回転するように連結されている。そして、第2サンギヤS2は、ロータギヤ2と一体的に回転するように連結されている。また、第1キャリヤC1は、第1ロータRT1と一体的に回転するように連結されている。本例では、第1キャリヤC1は、第1ロータRT1に対して径方向Rの内側に配置されている。
このように、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第1サンギヤS1と、第2サンギヤS2と、互いに一体的に回転するように連結された第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持する第1キャリヤC1と、を備えた遊星歯車機構であり、
第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1に噛み合い、
第2ピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2に噛み合い、
第1サンギヤS1が、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の一方であり、
第1キャリヤC1が、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の他方であり、
第2サンギヤS2が、第3回転要素E3である。
第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1に噛み合い、
第2ピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2に噛み合い、
第1サンギヤS1が、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の一方であり、
第1キャリヤC1が、第1回転要素E1及び第2回転要素E2の他方であり、
第2サンギヤS2が、第3回転要素E3である。
この構成によれば、分配用差動歯車機構SPが遊星歯車機構を用いて構成されている場合において、当該遊星歯車機構が内歯のリングギヤを備えていないため、分配用差動歯車機構SPの径方向Rの寸法を小さく抑え易い。その結果、車両用駆動装置100の低コスト化を図り易い。
また、本構成によれば、第1ピニオンギヤP1と第2ピニオンギヤP2とが一体的に回転するように連結されているため、それらのピニオンギヤP1,P2を支持する軸受の数を少なく抑えることができる。その結果、車両用駆動装置100の低コスト化を図り易い。
また、本構成によれば、第1ピニオンギヤP1と第2ピニオンギヤP2とが一体的に回転するように連結されているため、それらのピニオンギヤP1,P2を支持する軸受の数を少なく抑えることができる。その結果、車両用駆動装置100の低コスト化を図り易い。
本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第1ロータRT1に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第1ロータRT1と重複する位置に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
この構成によれば、第1ロータRT1に対して径方向Rの内側の空間を利用して分配用差動歯車機構SPを配置することができる。したがって、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑え易い。
第1減速機RD1は、第3回転要素E3及び第2ロータRT2の回転を減速して出力部材Oの側に伝達するように構成されている。本実施形態では、第1減速機RD1は、カウンタ入力ギヤ31及びカウンタ出力ギヤ32を備えたカウンタギヤ機構により構成されている。
カウンタ入力ギヤ31とカウンタ出力ギヤ32とは、互いに一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、カウンタ入力ギヤ31は、ロータギヤ2に噛み合う第1アイドラギヤ4に噛み合っている。つまり、本実施形態では、カウンタ入力ギヤ31とロータギヤ2とが、第1アイドラギヤ4の周方向の互いに異なる位置において、第1アイドラギヤ4に噛み合っている。また、本実施形態では、カウンタ出力ギヤ32は、出力用差動歯車機構DFの入力要素である差動入力ギヤ5に噛み合っている。
本実施形態では、カウンタ入力ギヤ31は、ロータギヤ2よりも大径に形成されている。また、カウンタ出力ギヤ32は、差動入力ギヤ5よりも小径に形成されている。そのため、本実施形態では、ロータギヤ2の回転は、第1アイドラギヤ4を介したロータギヤ2とカウンタ入力ギヤ31との間で減速されて、カウンタ出力ギヤ32に伝達される。そして、カウンタ出力ギヤ32の回転は、カウンタ出力ギヤ32と差動入力ギヤ5との間で減速される。なお、本例では、カウンタ入力ギヤ31は、カウンタ出力ギヤ32よりも大径に形成されている。
出力用差動歯車機構DFは、出力部材Oの回転を一対の車輪Wに分配するように構成されている。本実施形態では、出力用差動歯車機構DFは、傘歯車式の差動歯車機構である。
出力部材Oは、車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、差動入力ギヤ5が出力部材Oとして機能する。
図2に示すように、車両用駆動装置100は、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2を制御する制御装置10を備えている。本実施形態では、制御装置10は、主制御部11と、内燃機関EGを制御する内燃機関制御部12と、第1回転電機MG1を制御する第1回転電機制御部13と、第2回転電機MG2を制御する第2回転電機制御部14と、を備えている。
主制御部11は、内燃機関制御部12、第1回転電機制御部13、及び第2回転電機制御部14のそれぞれに対して、各制御部が担当する装置を制御する指令を出力する。内燃機関制御部12は、内燃機関EGが、主制御部11から指令された指令トルクを出力するように、或いは、主制御部11から指令された指令回転速度となるように内燃機関EGを制御する。第1回転電機制御部13は、第1回転電機MG1が、主制御部11から指令された指令トルクを出力するように、或いは、主制御部11から指令された指令回転速度となるように第1回転電機MG1を制御する。第2回転電機制御部14は、第2回転電機MG2が、主制御部11から指令された指令トルクを出力するように、或いは、主制御部11から指令された指令回転速度となるように第2回転電機MG2を制御する。
また、主制御部11は、車両用駆動装置100が搭載される車両の各部の情報を取得するために、当該車両の各部に設けられたセンサからの情報を取得可能に構成されている。本実施形態では、主制御部11は、SOCセンサSe1、及び車速センサSe2からの情報を取得可能に構成されている。
SOCセンサSe1は、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2と電気的に接続された蓄電装置BTの状態を検出するためのセンサである。SOCセンサSe1は、例えば、電圧センサや電流センサ等を含んで構成されている。主制御部11は、SOCセンサSe1から出力される電圧値や電流値等の情報に基づいて、蓄電装置BTの充電量(SOC:State of Charge)を算出する。
車速センサSe2は、車両用駆動装置100を搭載した車両の走行速度(車速)を検出するためのセンサである。本実施形態では、車速センサSe2は、出力部材Oの回転速度を検出するためのセンサである。主制御部11は、車速センサSe2の検出信号に基づいて、出力部材Oの回転速度(角速度)を算出する。出力部材Oの回転速度は車速に比例するため、主制御部11は、車速センサSe2の検出信号に基づいて車速を算出することができる。
図3に示すように、第1回転電機MG1は、車両用駆動装置100を搭載した車両が停止状態から最高速度であるV3まで加速する間に、第1ロータRT1が正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態から、第1ロータRT1が負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態まで変化する。本実施形態では、車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度(V3)まで加速させる場合に、第1回転電機MG1が上記のように発電状態から力行状態まで変化するように第1回転電機制御部13により制御されると共に、第1回転電機MG1が発電状態である場合には第2回転電機MG2がその電力を用いて力行し、第1回転電機MG1が力行状態である場合には第2回転電機MG2がそのための電力を発電するように第2回転電機制御部14により制御される。これにより、蓄電装置BTに蓄電された電力の変動を少なく抑えることができる。
車両用駆動装置100においては、当該車両用駆動装置100を搭載した車両を最大加速度で加速させた場合に、出力部材Oの出力が最大値であるPmaxに到達する車両の速度域である最大出力到達域A1で、第1回転電機MG1の発電出力が最大となり、当該車両の最高速度であるV3を含む速度域である最高速域A2で、第1回転電機MG1の力行出力が最大となるように、分配ギヤ比λ、第1変速比、第2変速比、第3変速比、及び第4変速比が設定されている。
ここで、分配ギヤ比λは、分配用差動歯車機構SPのギヤ比である。本実施形態では、分配ギヤ比λは、第2回転要素E2を停止させて第1回転要素E1及び第3回転要素E3を回転させた場合における、第1回転要素E1の回転速度に対する第3回転要素E3の回転速度の比である。なお、例えば、分配用差動歯車機構SPがシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている場合には、分配ギヤ比λは、リングギヤの歯数に対するサンギヤの歯数の比、つまり、サンギヤの歯数をリングギヤの歯数で除算した値である。
第1変速比は、第1ロータRT1から第1回転要素E1までの変速比である。本実施形態では、第1変速比は、第1ロータRT1から第1回転要素E1としての第1キャリヤC1までの変速比である。上述したように、本実施形態では、第1ロータRT1は、第1キャリヤC1と一体的に回転するように連結されている。そのため、本実施形態では、第1変速比は1である。仮に、第1ロータRT1の回転が減速又は増速して第1回転要素E1に伝達される構成である場合には、当該減速比又は増速比が第1変速比である。
第2変速比は、入力部材Iから第2回転要素E2までの変速比である。本実施形態では、第2変速比は、入力部材Iとしての入力軸1から第2回転要素E2としての第1サンギヤS1までの変速比である。上述したように、本実施形態では、入力軸1は、第1サンギヤS1と一体的に回転するように連結されている。そのため、本実施形態では、第2変速比は1である。仮に、入力軸1の回転が減速又は増速して第2回転要素E2に伝達される構成である場合には、当該減速比又は増速比が第2変速比である。
第3変速比は、第3回転要素E3から出力部材Oまでの変速比である。本実施形態では、第3変速比は、第3回転要素E3としての第2サンギヤS2から出力部材Oとしての差動入力ギヤ5までの変速比である。上述したように、本実施形態では、第3回転要素E3から出力部材O(差動入力ギヤ5)までの動力伝達経路には、第2サンギヤS2と一体的に回転するロータギヤ2と、第1アイドラギヤ4と、カウンタギヤ機構を構成するギヤ31,32とが設けられている。したがって、本実施形態では、第3変速比は、ギヤ31,32により減速された差動入力ギヤ5の回転速度に対するロータギヤ2の回転速度の比、つまり、ロータギヤ2の回転速度を差動入力ギヤ5の回転速度で除算した値である。
第4変速比は、第2ロータRT2から出力部材Oまでの変速比である。本実施形態では、第4変速比は、第2ロータRT2から出力部材Oとしての差動入力ギヤ5までの変速比である。上述したように、本実施形態では、第2ロータRT2は第3回転要素E3としての第2サンギヤS2と一体的に回転するように連結されている。したがって、本実施形態では、第4変速比は第3変速比と同じである。
最大出力到達域A1は、出力部材Oの出力が最大値であるPmaxに到達する車両の速度を含む、一定幅の速度範囲である。例えば、最大出力到達域A1は、出力部材Oの出力が最大値であるPmaxに到達する車速の±20%の速度範囲である。また、最高速域A2は、車両の最高速度であるV3を含む、一定幅の速度範囲である。例えば、最高速域A2は、車両用駆動装置100を搭載した車両の最高速度であるV3の±20%の速度範囲である。
図3に、本実施形態の車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度(V3)まで加速させる場合における、分配用差動歯車機構SPの速度線図を示す。本例では、分配ギヤ比λは1である。なお、図3の速度線図において、縦線上の位置は、分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度に対応している。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれは、分配用差動歯車機構SPの各回転要素に対応している。また、図3の速度線図において、複数本の縦線の上方に示された符号は、分配用差動歯車機構SPの回転要素の符号である。そして、複数本の縦線の下方に示された符号は、上方に示された符号に対応する回転要素に駆動連結された要素の符号である。
また、図4に、本実施形態の車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度(V3)まで最大加速度で加速させる場合における、車速に対する第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、及び出力部材Oのそれぞれの出力を表したグラフを示す。この図は、蓄電装置BTの電力を消費せず、第2回転電機MG2が力行する状態ではその電力を第1回転電機MG1が発電し、第1回転電機MG1が力行する状態ではその電力を第2回転電機MG2が発電する理想的な状態を示している。
図3の速度線図における破線Laは、内燃機関EGが回転しており、車速がゼロである場合における分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度を示している。この場合、第3回転要素E3としての第2サンギヤS2の回転速度はゼロ、第1回転要素E1としての第1キャリヤC1の回転速度はN11となっている。N11は、正数である(N11>0)。したがって、このとき、第1キャリヤC1と一体的に回転するように連結された第1ロータRT1は、正回転する。車両が停止している状態、つまり、車速がゼロに維持されている状態では、第1回転電機MG1はトルクを発生させずに空転するように制御される(ゼロトルク制御)。また、第2回転電機MG2もトルクを発生させず回転もしない停止状態とされる。そこから車両を発進させる場合、つまり、車速を上昇させる場合に、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態となる。また、第2回転電機MG2は第2ロータRT2が正回転しつつ正トルクを発生させて力行する状態となる。
図3の速度線図における実線Lbは、破線Laの状態から車速(出力部材Oの回転速度)が上昇し、車速がV1(図4参照)である場合における分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度を示している。この場合、第3回転要素E3としての第2サンギヤS2の回転速度はN31、第1回転要素E1としての第1キャリヤC1の回転速度はN12となっている。N12は、正数である(N12>0)。このとき、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態となる。また、第2回転電機MG2は、第2ロータRT2が正回転しつつ正トルクを発生させて力行する状態となる。なお、図示の例では、N31とN12とは同値である(N31=N12)。
図3の速度線図における破線Lcは、実線Lbの状態から更に車速(出力部材Oの回転速度)が上昇し、車速がV2(図4参照)である場合における分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度を示している。この場合、第3回転要素E3としての第2サンギヤS2の回転速度はN32、第1回転要素E1としての第1キャリヤC1の回転速度はゼロとなっている。このとき、第1キャリヤC1と一体的に回転するように連結された第1ロータRT1は回転しないため、第1回転電機MG1の出力はゼロとなる(図4参照)。ただし、内燃機関EGのトルクを出力部材Oに伝達するための反力を発生させる必要があるため、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1の回転速度がゼロである場合にも負トルクを発生させている。また、第2回転電機MG2は第2ロータRT2が正回転しつつ正トルクを発生させて力行する状態となる。
図3の速度線図における実線Ldは、破線Lcの状態から更に車速(出力部材Oの回転速度)が上昇し、車速が最高速度のV3(図4参照)である場合における分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度を示している。この場合、第3回転要素E3としての第2サンギヤS2の回転速度はN33、第1回転要素E1としての第1キャリヤC1の回転速度はN13となっている。N13は、負数である(N13<0)。このとき、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態となる。また、第2回転電機MG2は、第2ロータRT2が正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態となる。
図4に示すように、車速がゼロからV2までの間、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が正回転しつつ(図3の速度線図における破線La及び実線Lb参照)、負トルクを発生させて発電する状態となる。ここでは、車速がV1よりも低いV0となった時点で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値であるPとなる。そして、第2回転電機MG2は、第1回転電機MG1が発電した電力により力行する。そのため、本例では、車速がV0となった時点で、第2回転電機MG2の力行出力が最大値Pとなっている。なお、発電出力は、発電状態の回転電機の出力の絶対値である。発電状態の回転電機の出力は負数となるため、図4においては、第1回転電機MG1の発電出力の最大値を「-P」と表している。一方、力行出力は、力行状態の回転電機の出力の絶対値である。力行状態の回転電機の出力は正数となるため、図4においては、第1回転電機MG1の発電出力が最大値Pである場合の第2回転電機MG2の力行出力(最大出力)を「+P」と表している。
車速がV0からV1までの間、第1回転電機MG1の発電出力は最大値Pを維持する。車速がV1を超えると、第1回転電機MG1の発電出力は次第に減少し、車速がV2となった時点で、第1回転電機MG1の発電出力がゼロとなる。
本例では、車速がV1よりも僅かに大きくなった時点で、出力部材Oの出力、つまり、車両用駆動装置100の総出力が最大値であるPmaxとなる。このように、出力部材Oの出力が最大値であるPmaxに到達する車両の速度域である最大出力到達域A1で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値P(「-P」と図示)となっている。
車速がV2を超えると、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が負回転しつつ(図3の速度線図における実線Ld参照)、負トルクを発生させて力行する状態に変化する。そして、車速がV3となった時点で、第1回転電機MG1の力行出力が最大値P(「+P」と図示)となる。このとき、第2回転電機MG2は発電状態となっており、第2回転電機MG2が発電した電力により第1回転電機MG1が力行する。
このように、車速がV3を含む速度域である最高速域A2で、第1回転電機MG1の力行出力が最大値P(「+P」と図示)となっている。なお、本例では、V1は、V3の1/3である。つまり、本例では、車速が最高速度(V3)の1/3となったときに、出力部材Oの出力が概ね最大となるように設定されている。
以上のように、車両用駆動装置100は、
内燃機関EGに駆動連結される入力部材Iと、
車両が備えた車輪Wに駆動連結される出力部材Oと、
第1ロータRT1を備えた第1回転電機MG1と、
第2ロータRT2を備えた第2回転電機MG2と、
第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備え、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成された分配用差動歯車機構SPと、を備えた車両用駆動装置100であって、
第1回転要素E1が、第1ロータRT1に駆動連結され、
第2回転要素E2が、入力部材Iに駆動連結され、
第3回転要素E3が、出力部材O及び第2ロータRT2に駆動連結され、
車両が停止状態から最高速度まで加速する間に、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態から、第1ロータRT1が負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態まで変化し、
車両を最大加速度で加速させた場合に、出力部材Oの出力が最大値であるPmaxに到達する車両の速度域である最大出力到達域A1で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値であるPとなり、車両の最高速度であるV3を含む速度域である最高速域A2で、第1回転電機MG1の力行出力が最大値であるPとなるように、分配用差動歯車機構SPのギヤ比である分配ギヤ比λ、第1ロータRT1から第1回転要素E1までの変速比である第1変速比、入力部材Iから第2回転要素E2までの変速比である第2変速比、第3回転要素E3から出力部材Oまでの変速比である第3変速比、及び第2ロータRT2から出力部材Oまでの変速比である第4変速比が設定されている。
内燃機関EGに駆動連結される入力部材Iと、
車両が備えた車輪Wに駆動連結される出力部材Oと、
第1ロータRT1を備えた第1回転電機MG1と、
第2ロータRT2を備えた第2回転電機MG2と、
第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備え、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成された分配用差動歯車機構SPと、を備えた車両用駆動装置100であって、
第1回転要素E1が、第1ロータRT1に駆動連結され、
第2回転要素E2が、入力部材Iに駆動連結され、
第3回転要素E3が、出力部材O及び第2ロータRT2に駆動連結され、
車両が停止状態から最高速度まで加速する間に、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態から、第1ロータRT1が負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態まで変化し、
車両を最大加速度で加速させた場合に、出力部材Oの出力が最大値であるPmaxに到達する車両の速度域である最大出力到達域A1で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値であるPとなり、車両の最高速度であるV3を含む速度域である最高速域A2で、第1回転電機MG1の力行出力が最大値であるPとなるように、分配用差動歯車機構SPのギヤ比である分配ギヤ比λ、第1ロータRT1から第1回転要素E1までの変速比である第1変速比、入力部材Iから第2回転要素E2までの変速比である第2変速比、第3回転要素E3から出力部材Oまでの変速比である第3変速比、及び第2ロータRT2から出力部材Oまでの変速比である第4変速比が設定されている。
この構成によれば、車両を最大加速度で加速させる場合に、第1回転電機MG1が発電状態と力行状態との双方で最大出力を発生させるように、分配ギヤ比λ、第1変速比、第2変速比、第3変速比、及び第4変速比が設定されている。つまり、第1回転電機MG1を発電状態と力行状態との双方で最大限利用できるような動力伝達系の設定となっている。したがって、本構成によれば、第1回転電機MG1を効率的に利用可能な車両用駆動装置100を実現できる。
本実施形態では、分配ギヤ比λは、0.8から1.2の間に設定されている。上記の通り、本例では、分配ギヤ比λは1である。
この構成によれば、第1回転電機MG1が、最大出力到達域A1で正回転側の最高回転速度となり、最高速域A2で負回転側の最高回転速度となるようにし易い。これにより、第1回転電機MG1の使用される回転速度域を正回転側と負回転側との双方に広げることができる。したがって、第1回転電機MG1を効率的に利用することができる。
また、本実施形態では、最大出力到達域A1で第1回転電機MG1の発電出力が最大となるとき(図3の速度線図における実線Lb参照)の第1ロータRT1の回転速度であるN12の絶対値と、最高速域A2で第1回転電機MG1の力行出力が最大となるとき(図3の速度線図における実線Ld参照)の第1ロータRT1の回転速度であるN13の絶対値とが同等である。本例では、正数であるN12の絶対値と、負数であるN13の絶対値とが同値である。
なお、2つの数値に関して、「同等である」とは、これらの数値が完全に同一であることに加えて、これらの数値が同一であると見なしても良い範囲として、各数値の特性に応じて予め設定された範囲(例えば基準の値に対して±10%以内の範囲)内であることも含む概念である。
このように、本実施形態では、最大出力到達域A1で第1回転電機MG1の発電出力が最大となるときの第1ロータRT1の回転速度の絶対値と、最高速域A2で第1回転電機MG1の力行出力が最大となるときの第1ロータRT1の回転速度の絶対値とが同等となるように、分配ギヤ比λ、第1変速比、第2変速比、第3変速比、及び第4変速比が設定されている。
この構成によれば、第1回転電機MG1を発電状態と力行状態との双方で最大限利用できるような動力伝達系を実現し易い。
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図5を参照して説明する。本実施形態では、分配用差動歯車機構SPの構成が、上記第1の実施形態に係る車両用駆動装置100のものとは異なっている。また、本実施形態は、第2回転電機MG2が、入力部材I、第1回転電機MG1、及び分配用差動歯車機構SPとは別軸上に配置されている点で、上記第1の実施形態とは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図5を参照して説明する。本実施形態では、分配用差動歯車機構SPの構成が、上記第1の実施形態に係る車両用駆動装置100のものとは異なっている。また、本実施形態は、第2回転電機MG2が、入力部材I、第1回転電機MG1、及び分配用差動歯車機構SPとは別軸上に配置されている点で、上記第1の実施形態とは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
図5に示すように、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第3サンギヤS3、第3キャリヤC3、及び第3リングギヤR3を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
第3キャリヤC3は、ピニオンギヤP3を回転自在に支持している。ピニオンギヤP3は、第3サンギヤS3と第3リングギヤR3とに噛み合っている。ピニオンギヤP3は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第3サンギヤS3の軸心を中心として回転(公転)する。ピニオンギヤP3は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。本実施形態では、第3キャリヤC3が、第2回転要素E2である。
本実施形態では、第3サンギヤS3が、第1回転要素E1である。本実施形態では、第3サンギヤS3は、第1ロータRT1と一体的に回転するように連結されている。
また、本実施形態では、第3リングギヤR3が、第3回転要素E3である。本実施形態では、第3リングギヤR3は、カウンタ入力ギヤ31に噛み合う分配出力ギヤ6と一体的に回転するように連結されている。分配出力ギヤ6は、第3リングギヤR3に対して径方向Rの外側に配置されている。本実施形態では、分配出力ギヤ6とロータギヤ2とが、カウンタ入力ギヤ31の周方向の互いに異なる位置において、カウンタ入力ギヤ31に噛み合っている。
本実施形態では、車両用駆動装置100は、入力部材Iの回転を減速して第2回転要素E2に伝達する第2減速機RD2を更に備えている。
この構成によれば、入力部材Iから第2回転要素E2までの減速比を大きくできるため、最大出力到達域A1及び最高速域A2の双方での第3回転要素E3の回転速度を相対的に低くし易い。これにより、第3回転要素E3から出力部材Oまでの変速比(減速比)を小さくし易い。したがって、第3回転要素E3と出力部材Oとの間の動力伝達経路の構成を小型化し易いため、車両用駆動装置100の車両への搭載性を高め易い。
また、本構成によれば、第1回転電機MG1の正回転側及び負回転側の最高回転速度を維持しつつ、分配ギヤ比λを小さくし易い。
また、本構成によれば、第1回転電機MG1の正回転側及び負回転側の最高回転速度を維持しつつ、分配ギヤ比λを小さくし易い。
本実施形態では、第2減速機RD2は、第4サンギヤS4、第4キャリヤC4、及び第4リングギヤR4を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
第4キャリヤC4は、分配用差動歯車機構SPの第2回転要素E2としての第3キャリヤC3と一体的に回転するように連結されている。第4キャリヤC4は、第4ピニオンギヤP4を回転自在に支持している。第4ピニオンギヤP4は、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とに噛み合っている。第4ピニオンギヤP4は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第4サンギヤS4の軸心を中心として回転(公転)する。第4ピニオンギヤP4は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
第4サンギヤS4は、入力部材Iと一体的に回転するように連結されている。第4リングギヤR4は、非回転部材NR(例えば、第2減速機RD2等を収容するケース)に固定されている。
本実施形態では、分配ギヤ比λは、0.2から0.4の間に設定されている。そして、上記の通り、本実施形態では、入力部材Iの回転が第2減速機RD2により減速されて第2回転要素E2に伝達される。このように、分配ギヤ比λを1から下げるに従って、最高車速に対する第2回転要素E2の回転速度を低く設定している。本実施形態のように、分配ギヤ比λが0.2から0.4の間である場合、分配用差動歯車機構SPとして、上記のシングルピニオン型の遊星歯車機構のような従来のスプリット型のハイブリッド車両用の駆動装置に用いられる遊星歯車機構を用いることが容易となる。
3.第3の実施形態
以下では、第3の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図6を参照して説明する。本実施形態では、第2減速機RD2の構成が、上記第2の実施形態に係る車両用駆動装置100のものとは異なっている。以下では、上記第2の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第2の実施形態と同様とする。
以下では、第3の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図6を参照して説明する。本実施形態では、第2減速機RD2の構成が、上記第2の実施形態に係る車両用駆動装置100のものとは異なっている。以下では、上記第2の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第2の実施形態と同様とする。
図6に示すように、本実施形態では、第2減速機RD2は、上記のような遊星歯車式の減速機ではなく、平行軸歯車式の減速機である。具体的には、本実施形態では、第2減速機RD2は、互いに噛み合う第1減速ギヤ71と第2減速ギヤ72とを備えている。
第1減速ギヤ71は、入力部材Iとしての入力軸1と一体的に回転するように連結されている。第2減速ギヤ72は、分配用差動歯車機構SPの第2回転要素E2としての第3キャリヤC3と一体的に回転するように連結されている。そして、第2減速ギヤ72は、第1減速ギヤ71よりも大径に形成されている。そのため、入力軸1の回転は、第1減速ギヤ71と第2減速ギヤ72との間で減速されて、第3キャリヤC3に伝達される。
4.第4の実施形態
以下では、第4の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図7を参照して説明する。本実施形態は、車両用駆動装置100がFR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載されるように構成されている点で、上記第1の実施形態とは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
以下では、第4の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図7を参照して説明する。本実施形態は、車両用駆動装置100がFR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載されるように構成されている点で、上記第1の実施形態とは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
図7に示すように、本実施形態では、入力部材Iと第1回転電機MG1と第2回転電機MG2と分配用差動歯車機構SPと第1減速機RD1とが同軸上に配置されている。
本実施形態では、第1減速機RD1は、第5サンギヤS5、第5キャリヤC5、及び第5リングギヤR5を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
第5キャリヤC5は、第5ピニオンギヤP5を回転自在に支持している。第5ピニオンギヤP5は、第5サンギヤS5と第5リングギヤR5とに噛み合っている。第5ピニオンギヤP5は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第5サンギヤS5の軸心を中心として回転(公転)する。第5ピニオンギヤP5は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
第5リングギヤR5は、非回転部材NR(例えば、第1減速機RD1等を収容するケース)に固定されている。第5サンギヤS5は、第2ロータRT2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1回転電機MG1及び分配用差動歯車機構SPと、第1減速機RD1との軸方向Lの間に、第2回転電機MG2が配置されている。そして、第2回転電機MG2の第2ロータRT2が、分配用差動歯車機構SPの第2サンギヤS2、及び第1減速機RD1の第5サンギヤS5と一体的に回転するように連結されている。
本実施形態では、第5キャリヤC5は、軸方向Lに沿って延在するプロペラシャフト8を介して、駆動ピニオンギヤ9と一体的に回転するように連結されている。駆動ピニオンギヤ9は、差動入力ギヤ5に噛み合っている。本実施形態では、駆動ピニオンギヤ9は、その回転軸心が軸方向Lに沿うように配置されている。そして、差動入力ギヤ5は、その回転軸心が駆動ピニオンギヤ9の回転軸心に直交するように配置されている。
本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、分配ギヤ比λは、0.8から1.2の間に設定されている。
5.第5の実施形態
以下では、第5の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図8を参照して説明する。本実施形態では、車両用駆動装置100の動力伝達経路上における第1減速機RD1の位置が、上記第4の実施形態のものとは異なっている。また、本実施形態は、車両用駆動装置100が第2減速機RD2を備えている点で、上記第4の実施形態とは異なっている。以下では、上記第4の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第4の実施形態と同様とする。
以下では、第5の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図8を参照して説明する。本実施形態では、車両用駆動装置100の動力伝達経路上における第1減速機RD1の位置が、上記第4の実施形態のものとは異なっている。また、本実施形態は、車両用駆動装置100が第2減速機RD2を備えている点で、上記第4の実施形態とは異なっている。以下では、上記第4の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第4の実施形態と同様とする。
図8に示すように、本実施形態では、第1回転電機MG1及び分配用差動歯車機構SPと、第2回転電機MG2との軸方向Lの間に、第1減速機RD1が配置されている。そして、分配用差動歯車機構SPの第2サンギヤS2が、第2ロータRT2と一体的に回転するように連結されておらず、第1減速機RD1の第5キャリヤC5と一体的に回転するように連結されている。
本実施形態では、第2減速機RD2は、第4キャリヤC4が分配用差動歯車機構SPの第1サンギヤS1と一体的に回転するように連結されている以外は、上記第2の実施形態のものと同様に構成されている。
本実施形態では、上記第2の実施形態と同様に、分配ギヤ比λは、0.2から0.4の間に設定されている。
6.第6の実施形態
以下では、第6の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図9を参照して説明する。本実施形態では、車両用駆動装置100は、変速機TMを更に備えている。本実施形態は、車両用駆動装置100が変速機TMを備える点で、上記第1の実施形態とは異なっている。また、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPの構成が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
以下では、第6の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図9を参照して説明する。本実施形態では、車両用駆動装置100は、変速機TMを更に備えている。本実施形態は、車両用駆動装置100が変速機TMを備える点で、上記第1の実施形態とは異なっている。また、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPの構成が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
図9に示すように、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第1サンギヤS1と、第2サンギヤS2と、第1キャリヤC1と、を備えた遊星歯車機構である。
本実施形態では、第1キャリヤC1は、第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2に加えて、第3ピニオンギヤP21を回転自在に支持している。第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1に噛み合っている。第2ピニオンギヤP2は、第3ピニオンギヤP21に噛み合っている。第3ピニオンギヤP21は、第2サンギヤS2に噛み合っている。本実施形態では、第1ピニオンギヤP1は、第2ピニオンギヤP2よりも大径に形成されている。
本実施形態では、第1サンギヤS1は、第1回転要素E1である。そして、第1キャリヤC1は、第2回転要素E2である。また、第2サンギヤS2は、第3回転要素E3である。
このように、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、第1サンギヤS1と、第2サンギヤS2と、互いに一体的に回転するように連結された第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2、並びに第3ピニオンギヤP21を回転自在に支持する第1キャリヤC1と、を備えた遊星歯車機構であり、
第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1に噛み合い、
第2ピニオンギヤP2は、第3ピニオンギヤP21に噛み合い、
第3ピニオンギヤP21は、第2サンギヤS2に噛み合い、
第1サンギヤS1が、第1回転要素E1であり、
第1キャリヤC1が、第2回転要素E2であり、
第2サンギヤS2が、第3回転要素E3である。
第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1に噛み合い、
第2ピニオンギヤP2は、第3ピニオンギヤP21に噛み合い、
第3ピニオンギヤP21は、第2サンギヤS2に噛み合い、
第1サンギヤS1が、第1回転要素E1であり、
第1キャリヤC1が、第2回転要素E2であり、
第2サンギヤS2が、第3回転要素E3である。
この構成によれば、第1回転要素E1及び第3回転要素E3に比べて、車両走行中の最高回転速度が低くなり易い第2回転要素E2が第1キャリヤC1であるため、第1キャリヤC1に作用する遠心力の影響を少なく抑え易い。したがって、第1キャリヤC1の強度確保のために分配用差動歯車機構SPが大型化することを回避し易い。
本実施形態では、入力軸1は、ワンウェイクラッチOWCを介して、内燃機関EGの出力軸に連結されている。ワンウェイクラッチOWCは、入力軸1の回転方向に応じて、入力軸1と内燃機関EGの出力軸との相対回転を規制又は許容する。
変速機TMは、第1変速段、及び当該第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段を形成可能に構成されている。そして、変速機TMは、分配用差動歯車機構SPの第3回転要素E3の側から伝達される回転を、第1変速段又は第2変速段に応じた変速比で変速して出力部材Oの側へ伝達する。
本実施形態では、第1減速機RD1は、カウンタ入力ギヤ31及びカウンタ出力ギヤ32の代わりに、減速ギヤ33を備えている。減速ギヤ33は、ロータギヤ2に噛み合う第1アイドラギヤ4に噛み合っている。減速ギヤ33は、ロータギヤ2よりも大径に形成されている。そのため、分配用差動歯車機構SPの第3回転要素E3(ここでは、第2サンギヤS2)及び第2ロータRT2の回転は、ロータギヤ2と減速ギヤ33との間で減速されて、変速機TMに伝達される。
本実施形態では、変速機TMは、変速用遊星歯車機構PGと、ブレーキBRと、クラッチCLと、を備えている。
本実施形態では、変速用遊星歯車機構PGは、第6サンギヤS6、第6キャリヤC6、及び第6リングギヤR6を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
第6キャリヤC6は、第6ピニオンギヤP6を回転自在に支持している。第6ピニオンギヤP6は、第6サンギヤS6と第6リングギヤR6とに噛み合っている。第6ピニオンギヤP6は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第6サンギヤS6の軸心を中心として回転(公転)する。第6ピニオンギヤP6は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
本実施形態では、第6キャリヤC6は、変速出力ギヤ60と一体的に回転するように連結されている。変速出力ギヤ60は、差動入力ギヤ5に噛み合っている。また、本実施形態では、第6サンギヤS6は、減速ギヤ33と一体的に回転するように連結されている。
本実施形態では、ブレーキBRは、第6リングギヤR6を非回転部材NRに選択的に固定する係合装置である。また、クラッチCLは、第6サンギヤS6と第6リングギヤR6との間の動力伝達を断接する係合装置である。本例では、ブレーキBR及びクラッチCLのそれぞれは、摩擦係合式の係合装置である。
ブレーキBRが係合状態となると、第6リングギヤR6が非回転部材NRに対して相対回転不能に固定される。一方、ブレーキBRが解放状態となると、第6リングギヤR6が非回転部材NRに対して相対回転自在となる。また、クラッチCLが係合状態となると、第6サンギヤS6と第6キャリヤC6と第6リングギヤR6とが互いに一体的に回転するように連結される。一方、クラッチCLが解放状態となると、第6サンギヤS6と第6キャリヤC6と第6リングギヤR6とが互いに相対回転自在となる。
本実施形態では、変速機TMは、ブレーキBR及びクラッチCLのいずれか一方が係合状態となり、他方が解放状態となるように構成されている。本実施形態では、ブレーキBRが係合状態、かつ、クラッチCLが解放状態の場合に、比較的変速比が大きい第1変速段が形成される。そして、ブレーキBRが解放状態、かつ、クラッチCLが係合状態の場合に、比較的変速比が小さい第2変速段が形成される。本実施形態では、ブレーキBRが解放状態、かつ、クラッチCLが係合状態の場合、第6サンギヤS6と第6キャリヤC6と第6リングギヤR6とが互いに一体的に回転するのに伴い、分配用差動歯車機構SPの第3回転要素E3の側から伝達される回転は、そのまま出力部材Oの側へ伝達される。つまり、本実施形態では、第2変速段に応じた変速比は、「1」である。
図10に、本実施形態の車両用駆動装置100を搭載した車両を、第1変速段又は第2変速段が形成された状態で、停止状態から各変速段における最高速度まで最大加速度で加速させる場合における、車速に対する第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、及び出力部材Oのそれぞれの出力を表したグラフを示す。この図は、蓄電装置BTの電力を消費せず、第2回転電機MG2が力行する状態ではその電力を第1回転電機MG1が発電し、第1回転電機MG1が力行する状態ではその電力を第2回転電機MG2が発電する理想的な状態を示している。
図10では、変速機TMが第1変速段を形成した状態における、車速に対する第1回転電機MG1の出力を線幅の細い1点鎖線で、車速に対する第2回転電機MG2の出力を線幅の細い2点鎖線で、車速に対する出力部材Oの出力を線幅の細い実線で示している。また、変速機TMが第2変速段を形成した状態における、車速に対する第1回転電機MG1の出力を線幅の太い1点鎖線で、車速に対する第2回転電機MG2の出力を線幅の太い2点鎖線で、車速に対する出力部材Oの出力を線幅の太い実線で示している。これは、図11においても同様とする。
図10に示すように、変速機TMが第1変速段を形成した状態における、最高車速はV13である。変速機TMが第1変速段を形成した状態で、第1回転電機MG1は、車速がゼロからV12までの間、第1ロータRT1が正回転しつつ、負トルクを発生させて発電する状態となる。
ここでは、車速がV11となった時点で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値であるP(「-P」と図示)となる。そして、第2回転電機MG2は、第1回転電機MG1が発電した電力により力行する。そのため、車速がV11となった時点で、第2回転電機MG2の力行出力が最大値P(「+P」と図示)となっている。また、車速がV11となった時点で、出力部材Oの出力、つまり、車両用駆動装置100の総出力が最大値であるPmaxとなる。
車速がV11を超えると、第1回転電機MG1の発電出力は次第に減少し、車速がV12となった時点で、第1回転電機MG1の発電出力がゼロとなる。そして、車速がV12を超えると、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が負回転しつつ、負トルクを発生させて力行する状態に変化する。そして、車速がV13となった時点で、第1回転電機MG1の力行出力が最大値P(「+P」と図示)となる。このとき、第2回転電機MG2は発電状態となっており、第2回転電機MG2が発電した電力により第1回転電機MG1が力行する。
また、変速機TMが第2変速段を形成した状態における、最高車速はV15である。変速機TMが第2変速段を形成した状態で、第1回転電機MG1は、車速がゼロからV14までの間、第1ロータRT1が正回転しつつ、負トルクを発生させて発電する状態となる。
ここでは、車速がV13となった時点で、第1回転電機MG1の発電出力が最大値であるP(「-P」と図示)となる。そして、第2回転電機MG2は、第1回転電機MG1が発電した電力により力行する。そのため、車速がV13となった時点で、第2回転電機MG2の力行出力が最大値P(「+P」と図示)となっている。また、車速がV13となった時点で、出力部材Oの出力、つまり、車両用駆動装置100の総出力が最大値であるPmaxとなる。
車速がV13を超えると、第1回転電機MG1の発電出力は次第に減少し、車速がV14となった時点で、第1回転電機MG1の発電出力がゼロとなる。そして、車速がV14を超えると、第1回転電機MG1は、第1ロータRT1が負回転しつつ、負トルクを発生させて力行する状態に変化する。このとき、第2回転電機MG2は発電状態となっており、第2回転電機MG2が発電した電力により第1回転電機MG1が力行する。
図11に、本実施形態の車両用駆動装置100を搭載した車両を、第1変速段又は第2変速段が形成された状態で、停止状態から各変速段における最高速度まで最大加速度で加速させる場合における、車速に対する第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、及び出力部材Oのそれぞれの出力を表したグラフを示す。この図は、蓄電装置BTの電力を消費し、第2回転電機MG2が力行状態を維持して走行する状態を示している。
図11に示すように、変速機TMが第1変速段を形成した状態で、第2回転電機MG2は、車速がV11からV13までの間、力行出力の最大値P(「+P」と図示)を維持する。これに伴い、車速がV11を超えても、出力部材Oの出力、つまり、車両用駆動装置100の総出力がPAから次第に増加し、車速がV13となった時点で最大値であるPmaxとなる。なお、図11に示す例における「PA」は、図10に示す例における「Pmax」に等しい。また、図11に示す例における「Pmax」は、「PA」に、蓄電装置BTの出力を加えたものである。
また、変速機TMが第2変速段を形成した状態で、第2回転電機MG2は、車速がV13からV15までの間、力行出力の最大値P(「+P」と図示)を維持する。これに伴い、車速がV13を超えても、出力部材Oの出力、つまり、車両用駆動装置100の総出力がPAから次第に増加し、車速がV15となった時点で最大値であるPmaxとなる。
図11に示すように、本実施形態では、第2変速段における最高車速であるV15に近い車速であるV14で第1回転電機MG1の出力がゼロになるように、第2変速段の変速比が設定されている。
以上のように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1変速段、及び当該第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段を形成可能であり、第3回転要素E3の側から伝達される回転を、第1変速段又は第2変速段に応じた変速比で変速して出力部材Oの側へ伝達する変速機TMを更に備えている。
この構成によれば、高車速で走行する場合に、第2変速段が形成された状態とすることにより、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の出力を小さく抑えることが可能となる。したがって、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の定格出力を小さく抑え易く、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の小型化、及びそれらの冷却構造の簡素化を図り易い。
また、上述したように第2変速段における最高車速以下の車速(以下、「対象車速」と記す)で第1回転電機MG1の出力がゼロになるように、第2変速段の変速比を設定した場合、当該対象車速で巡行する場合に第1回転電機MG1が出力を出す必要がないため、その発熱を少なく抑えやすい。図10及び図11に示す例では、対象車速であるV14は、第1変速段における最高車速であるV13よりも高く、第2変速段における最高車速であるV15よりも低い車速(例えば、スピードリミッタ機能で制限される最高車速)とされているが、対象車速を、第2変速段における最高車速とすることもできる。また、電力循環(第1回転電機MG1が力行状態、第2回転電機MG2が回生状態で、第1回転電機MG1の力行トルクの一部が回生に用いられること)を生じる車速域をより高車速側にすることができるので、通常走行中のエネルギ効率の低下を少なく抑えやすい。
また、上述したように第2変速段における最高車速以下の車速(以下、「対象車速」と記す)で第1回転電機MG1の出力がゼロになるように、第2変速段の変速比を設定した場合、当該対象車速で巡行する場合に第1回転電機MG1が出力を出す必要がないため、その発熱を少なく抑えやすい。図10及び図11に示す例では、対象車速であるV14は、第1変速段における最高車速であるV13よりも高く、第2変速段における最高車速であるV15よりも低い車速(例えば、スピードリミッタ機能で制限される最高車速)とされているが、対象車速を、第2変速段における最高車速とすることもできる。また、電力循環(第1回転電機MG1が力行状態、第2回転電機MG2が回生状態で、第1回転電機MG1の力行トルクの一部が回生に用いられること)を生じる車速域をより高車速側にすることができるので、通常走行中のエネルギ効率の低下を少なく抑えやすい。
7.第7の実施形態
以下では、第7の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図12を参照して説明する。本実施形態は、車両用駆動装置100が四輪駆動の車両に搭載されるように構成されている点で、上記第6の実施形態とは異なっている。以下では、上記第6の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第6の実施形態と同様とする。
以下では、第7の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図12を参照して説明する。本実施形態は、車両用駆動装置100が四輪駆動の車両に搭載されるように構成されている点で、上記第6の実施形態とは異なっている。以下では、上記第6の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第6の実施形態と同様とする。
図12に示すように、本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、上記第4の実施形態のもの(図7参照)と同様に構成されている。
本実施形態では、車両用駆動装置100は、トランスファTRを更に備えている。また、本実施形態では、車両用駆動装置100は、出力用差動歯車機構DFの代わりに、第1出力用差動歯車機構DF1及び第2出力用差動歯車機構DF2を備えている。
トランスファTRは、出力部材Oの駆動力を前輪側と後輪側とに分配するように構成されている。本実施形態では、トランスファTRは、第7サンギヤS7、第7キャリヤC7、及び第7リングギヤR7を備えたダブルピニオン型の遊星歯車機構を備えている。
第7キャリヤC7は、内側ピニオンギヤP71及び外側ピニオンギヤP72を回転自在に支持している。内側ピニオンギヤP71と外側ピニオンギヤP72とは、互いに噛み合っている。内側ピニオンギヤP71は、外側ピニオンギヤP72に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、内側ピニオンギヤP71は、第7サンギヤS7に噛み合っている。外側ピニオンギヤP72は、第7リングギヤR7に噛み合っている。内側ピニオンギヤP71及び外側ピニオンギヤP72のそれぞれは、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第7サンギヤS7の軸心を中心として回転(公転)する。内側ピニオンギヤP71及び外側ピニオンギヤP72のそれぞれは、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
本実施形態では、第7リングギヤR7は、入力ギヤ70と一体的に回転するように連結されている。入力ギヤ70は、変速出力ギヤ60に噛み合う第2アイドラギヤ41に噛み合っている。つまり、入力ギヤ70と変速出力ギヤ60とが、第2アイドラギヤ41の周方向の互いに異なる位置において、第2アイドラギヤ41に噛み合っている。本実施形態では、入力ギヤ70は、第7リングギヤR7に対して径方向Rの外側に配置されている。
また、本実施形態では、第7サンギヤS7は、軸方向Lに沿って延在する第1プロペラシャフト81を介して、第1駆動ピニオンギヤ91と一体的に回転するように連結されている。第1駆動ピニオンギヤ91は、第1出力用差動歯車機構DF1の入力要素である第1差動入力ギヤ51に噛み合っている。本実施形態では、第1駆動ピニオンギヤ91は、その回転軸心が軸方向Lに沿うように配置されている。そして、第1差動入力ギヤ51は、その回転軸心が第1駆動ピニオンギヤ91の回転軸心に直交するように配置されている。
また、本実施形態では、第7キャリヤC7は、軸方向Lに沿って延在する第2プロペラシャフト82を介して、第2駆動ピニオンギヤ92と一体的に回転するように連結されている。第2駆動ピニオンギヤ92は、第2出力用差動歯車機構DF2の入力要素である第2差動入力ギヤ52に噛み合っている。本実施形態では、第2駆動ピニオンギヤ92は、その回転軸心が軸方向Lに沿うように配置されている。そして、第2差動入力ギヤ52は、その回転軸心が第2駆動ピニオンギヤ92の回転軸心に直交するように配置されている。
第1出力用差動歯車機構DF1は、第1差動入力ギヤ51に伝達された回転を一対の車輪W(ここでは、一対の前輪)に分配するように構成されている。また、第2出力用差動歯車機構DF2は、第2差動入力ギヤ52に伝達された回転を一対の車輪W(ここでは、一対の後輪)に分配するように構成されている。本実施形態では、第1出力用差動歯車機構DF1及び第2出力用差動歯車機構DF2のそれぞれは、傘歯車式の差動歯車機構である。
8.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、蓄電装置BTに蓄電された電力の変動を少なく抑えるように、車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度まで加速させる場合に、第1回転電機MG1が発電状態である場合には第2回転電機MG2がその電力を用いて力行し、第1回転電機MG1が力行状態である場合には第2回転電機MG2がそのための電力を発電するように制御される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度まで加速させる場合において、蓄電装置BTの電力を消費して、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とが同時に力行状態となるように制御しても良い。また、蓄電装置BTの電力が低下している場合等には、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とが同時に発電状態となるように制御しても良い。
(1)上記の実施形態では、蓄電装置BTに蓄電された電力の変動を少なく抑えるように、車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度まで加速させる場合に、第1回転電機MG1が発電状態である場合には第2回転電機MG2がその電力を用いて力行し、第1回転電機MG1が力行状態である場合には第2回転電機MG2がそのための電力を発電するように制御される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両用駆動装置100を搭載した車両を、停止状態から最高速度まで加速させる場合において、蓄電装置BTの電力を消費して、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とが同時に力行状態となるように制御しても良い。また、蓄電装置BTの電力が低下している場合等には、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とが同時に発電状態となるように制御しても良い。
(2)上記第6及び第7の実施形態では、変速機TMが、2つの変速段(第1変速段、第2変速段)を形成可能である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、変速機TMが3つ以上の変速段を形成可能であっても良い。
(3)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第1回転電機と、第2回転電機と、分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
100:車両用駆動装置、I:入力部材、O:出力部材、MG1:第1回転電機、ST1:第1ステータ、RT1:第1ロータ、MG2:第2回転電機、ST2:第2ステータ、RT2:第2ロータ、SP:分配用遊星歯車機構、E1:第1回転要素、E2:第2回転要素、E3:第3回転要素、EG:内燃機関、W:車輪、A1:最大出力到達域、A2:最高速域
Claims (8)
- 内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車両が備えた車輪に駆動連結される出力部材と、
第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ロータを備えた第2回転電機と、
第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を備え、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素の回転速度の順が記載の順となるように構成された分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第1回転要素が、前記第1ロータに駆動連結され、
前記第2回転要素が、前記入力部材に駆動連結され、
前記第3回転要素が、前記出力部材及び前記第2ロータに駆動連結され、
前記車両が停止状態から最高速度まで加速する間に、前記第1回転電機は、前記第1ロータが正回転しつつ負トルクを発生させて発電する状態から、前記第1ロータが負回転しつつ負トルクを発生させて力行する状態まで変化し、
前記車両を最大加速度で加速させた場合に、前記出力部材の出力が最大値に到達する前記車両の速度域である最大出力到達域で、前記第1回転電機の発電出力が最大となり、前記車両の最高速度を含む速度域である最高速域で、前記第1回転電機の力行出力が最大となるように、前記分配用差動歯車機構のギヤ比である分配ギヤ比、前記第1ロータから前記第1回転要素までの変速比である第1変速比、前記入力部材から前記第2回転要素までの変速比である第2変速比、前記第3回転要素から前記出力部材までの変速比である第3変速比、及び前記第2ロータから前記出力部材までの変速比である第4変速比が設定されている、車両用駆動装置。 - 前記第2回転要素を停止させて前記第1回転要素及び前記第3回転要素を回転させた場合における、前記第1回転要素の回転速度に対する前記第3回転要素の回転速度の比を、前記分配ギヤ比として、
前記分配ギヤ比が、0.8から1.2の間に設定されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。 - 前記入力部材の回転を減速して前記第2回転要素に伝達する減速機を更に備えている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
- 前記分配用差動歯車機構は、第1サンギヤと、第2サンギヤと、互いに一体的に回転するように連結された第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構であり、
前記第1ピニオンギヤは、前記第1サンギヤに噛み合い、
前記第2ピニオンギヤは、前記第2サンギヤに噛み合い、
前記第1サンギヤが、前記第1回転要素及び前記第2回転要素の一方であり、
前記キャリヤが、前記第1回転要素及び前記第2回転要素の他方であり、
前記第2サンギヤが、前記第3回転要素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。 - 前記分配用差動歯車機構は、第1サンギヤと、第2サンギヤと、互いに一体的に回転するように連結された第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤ、並びに第3ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構であり、
前記第1ピニオンギヤは、前記第1サンギヤに噛み合い、
前記第2ピニオンギヤは、前記第3ピニオンギヤに噛み合い、
前記第3ピニオンギヤは、前記第2サンギヤに噛み合い、
前記第1サンギヤが、前記第1回転要素であり、
前記キャリヤが、前記第2回転要素であり、
前記第2サンギヤが、前記第3回転要素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。 - 前記第1ロータの回転軸心に直交する方向を径方向として、
前記分配用差動歯車機構は、前記第1ロータに対して前記径方向の内側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記第1ロータと重複する位置に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。 - 第1変速段、及び前記第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段を形成可能であり、前記第3回転要素の側から伝達される回転を、前記第1変速段又は前記第2変速段に応じた変速比で変速して前記出力部材の側へ伝達する変速機を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
- 前記最大出力到達域で前記第1回転電機の発電出力が最大となるときの前記第1ロータの回転速度の絶対値と、前記最高速域で前記第1回転電機の力行出力が最大となるときの前記第1ロータの回転速度の絶対値とが同等となるように、前記分配ギヤ比、前記第1変速比、前記第2変速比、前記第3変速比、及び前記第4変速比が設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
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