JP2023144674A - 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品 - Google Patents

冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品 Download PDF

Info

Publication number
JP2023144674A
JP2023144674A JP2022051771A JP2022051771A JP2023144674A JP 2023144674 A JP2023144674 A JP 2023144674A JP 2022051771 A JP2022051771 A JP 2022051771A JP 2022051771 A JP2022051771 A JP 2022051771A JP 2023144674 A JP2023144674 A JP 2023144674A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hardness
nitriding
steel
cold
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022051771A
Other languages
English (en)
Inventor
貴弘 井手口
Takahiro Ideguchi
典正 常陰
Norimasa Tokokage
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanyo Special Steel Co Ltd
Original Assignee
Sanyo Special Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sanyo Special Steel Co Ltd filed Critical Sanyo Special Steel Co Ltd
Priority to JP2022051771A priority Critical patent/JP2023144674A/ja
Publication of JP2023144674A publication Critical patent/JP2023144674A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

【課題】 冷鍛性と芯部硬さを両立し窒化特性に優れた窒化用鋼【解決手段】 質量%で、C:0.20~0.45%、Si:0.1~0.4%、Mn:0.2~1.0%、Cr:1.50~2.80%、Mo:0.03~0.30%、Al:0.005~0.300%、N:0.004~0.030%、V:0.08~0.30%を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、P(不可避不純物として):0.030%以下、S(不可避不純物として):0.030%以下、軟化熱処理として730~760℃で4~8時間保持してから空冷された状態であって、硬さがロックウェル硬さで87HRB以下である窒化用鋼。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた冷間鍛造性と窒化後硬さが必要な機械構造部品に適した窒化鋼部材に関する。詳しくは、冷間鍛造性に優れるとともに、冷間鍛造と窒化処理を施された部品(以下、冷鍛窒化部品)に高い深部硬さ、表面硬さ、加えて深い硬化層深さを具備させることが可能であって、冷鍛窒化部品の素材として用いるのに好適な窒化用鋼材、およびそれを用いた冷鍛窒化部品に関する。
歯車、ベルト式無段変速機(CVT)用プーリ等の自動車トランスミッションなどに使用される機械構造用鋼は、曲げ疲労強度向上、ピッチング強度向上等を狙って、表面硬化処理が施されている。代表的な表面硬化処理として、浸炭焼入れ、高周波焼入れ、窒化などが挙げられる。
これらの表面硬化処理のうち、浸炭焼入れは、炭素が0.2%程度の低炭素鋼に用いられ、A3点以上のオーステナイト域でCを拡散させたのち、焼き入れを実施する表面硬化処理である。浸炭焼き入れは、表面硬さと硬化層深さに優れているが、処理に焼入れを伴うため、熱処理変形が大きいという問題がある。加えて、製造時におけるCO2排出量も多くカーボンニュートラルの潮流にはそぐわない。
高周波焼入れは、A3点以上の高温オーステナイト域に急速加熱、冷却して焼入れする処理である。高周波焼入れは、有効硬化層深さの調整が容易であるが、大型品や複雑な形状には適応し難い。
対して、窒化処理はA1点以下の400~600℃程度までの温度でNを拡散させて、高い表面硬さと必要な硬化層深さを得る処理である。浸炭焼入れや高周波焼入れと比較して、処理温度が低く熱処理変形が小さいという長所がある。処理温度が低いことは、CO2排出量が少ないことにつながるため、温室効果ガスの削減という点でも有効な表面硬化処理である。
しかしながら、窒化は焼入れを伴わない処理であるため、マルテンサイト変態による強化を活用できず、芯部硬さを確保するために合金成分を添加した場合、冷感鍛造性が悪化につながる可能性がある。
よって、窒化に供される鋼材は、加工時には柔らかく、窒化後は加工後の硬さを維持し、芯部まで硬いことが理想的である。
たとえば、窒化に関しては、冷間鍛造用の窒化用鋼として、これまでにも、たとえば、質量%で、C:0.01~0.15%、Si<0.10%、Mn:0.10~0.50%、P≦0.030%、S≦0.050%、Cr:0.80~2.0%、V:0.03%以上0.10%未満、Al:0.01~0.10%、N≦0.0080%及びO≦0.0030%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、〔399×C+26×Si+123×Mn+30×Cr+32×Mo+19×V≦160〕、〔20≦(669.3×logeC-1959.6×logeN-6983.3)×(0.067×Mo+0.147×V)≦80〕及び〔140×Cr+125×Al+235×V≧160〕である化学組成を有する冷鍛窒化用鋼が提案されている(特許文献1参照。)。
この提案は、CrとVが含有されることで冷間鍛造性が低下するため、他の成分を制限して対応しようとしており、Siの含有量が多すぎると硬くなるので冷間鍛造性が低下するとして、Siの含有量を低減することで、冷間鍛造性を確保している。
また、窒化鋼からなる部品として、質量%でC:0.05~0.20%、Si:0.30%未満、Mn:1.00%以下、Cr:0.50~1.50%、Al:0.040%以下、N:0.0100%以下、Ti:0.50~1.50%を含有し、かつTi-4×C-3.4N≧0.20を満足し、残部がFe及び不純物元素からなり、焼入処理した後の窒化処理後における組織が焼もどしマルテンサイト組織からなり、かつ表面硬さがHv650以上、内部硬さがHv150以上であることを特徴とする短時間の窒化処理で高い表面硬さと深い硬化深さの得られる窒化鋼部品が提案されている(特許文献2参照)。
もっとも、この提案では、窒化処理後に深い硬化深さを得るためにTiを大量に必要としている。また、Crは表面硬さを向上させるものの、含有により窒素の拡散速度が低下するから、硬化深さを得ることが難しくなるとして、Crの量を低減している。
特開2013-185186号公報 特開2004-300472号公報
上述の特許文献1、2の提案では、窒化処理の際に表面硬さの向上に資する合金成分の添加量を低減することによって、冷鍛加工性を高めている。もっとも、このような鋼で芯部硬さを発現させようとするには、さらに冷鍛条件や時効硬化を適切に制御する必要が生じるであろうことが推察されるところであるから、冷間鍛造性を確保すると、他方で窒化後の芯部硬さの低減を抑制することは容易ではないこととなる。
また、特許文献2では、析出処理が高温であるなど、製造条件を適切に制御するためには生産コストの増大が懸念される。
特許文献1、特許文献2はともに析出物等の制御に加えて、CやCrなどの合金添加量を低減することで冷鍛性を高めている。CやCrは芯部硬さに関わる成分であるため、これら成分を低減するのであれば、芯部硬さを十分に発現させるための工夫が必要と思われるが、記載からは明らかではなく、冷鍛条件や時効硬化などの制御の工夫について特段の示唆もみあたらない。
近年のカーボンニュートラルの潮流に沿いつつも、高負荷の部品へ適応できる窒化層であるものが要請されるとなると、これまで以上に芯部硬さに優れた窒化鋼が求められる。もっとも、芯部硬さを確保するために合金元素を増量していくとなれば、こんどは冷鍛性が阻害されることにもなりかねない。
たとえば、CrやAlといった合金元素の増量は、窒化特性を向上させる場合があるが、増量しすぎれば冷鍛性が阻害される。
そこで、これらの点を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、冷間鍛造時の加工性に優れながら、冷間鍛造により適切に硬化し、窒化後の芯部硬さの低減を抑制でき、窒化後の表面硬さ、有効硬化層深さに優れた、冷間鍛造時の加工性と窒化特性のバランスに優れた冷鍛窒化用鋼材を提供することである。
もっとも、窒化処理の場合にはオーステナイト域からの焼入れ処理を行わないため、マルテンサイト変態による強化を活用することができない。このため、窒化部品に所望の芯部硬さを確保させるためには多量の合金元素を含有させる必要があるが、他方で冷間鍛造性が悪化することとなる。
また、多量の合金成分を含んだ材料を冷間鍛造するためには、長時間の熱処理が必要となり、製造性が阻害されることとなる。冷鍛性を確保するために、C等の硬さに寄与する合金成分の含有量を下げた場合には、窒化時に形成される窒化物の量が不足してしまい、表面硬さや硬化層の深さが不足する恐れもある。さらに、冷間鍛造後の窒化処理において再結晶が起こりうることから、冷間鍛造によって得られた加工硬化も失われやすい。
そこで、発明者らは鋭意検討の結果、鋼の成分の最適化と、冷間鍛造前の軟化熱処理を組み合わせることで、窒化後の芯部硬さを十分に確保できる合金成分であっても、短時間かつ比較的低温度の熱処理で材料中の炭化物の球状化を適切に促進でき、冷間鍛造に供せるレベルまで材料の硬さを低減することができることを見いだした。
具体的には、高Cr成分とすることにより、オーステナイト化温度直下において、フェライト粒内の固溶CはM73型(M=FeおよびCrの混合成分)の炭化物として安定析出する。つまり、パーライト粒(フェライトとラメラーセメンタイトで構成される組織)及びベイナイト粒(フェライトとセメンタイトで構成される組織)と、フェライト粒(M73炭化物が安定)との間でC拡散挙動の差が大きくなる。その結果、パーライト粒及びベイナイト粒からフェライト粒へのC拡散が十分に促進される。その結果、フェライト粒内に球状炭化物が均一分散した組織となり、優れた冷鍛性、軟化熱処理時間の短縮化、優れた窒化後の表面硬さと芯部硬さを同時に達成できる優れた鋼が得られることを見出した。
そこで、本願発明の課題を解決するための第1の手段は、質量%で、C:0.20~0.45%、Si:0.1~0.4%、Mn:0.2~1.0%、P(不可避不純物として):0.030%以下、S(不可避不純物として):0.030%以下、Cr:1.50~2.80%、Mo:0.03~0.30%、Al:0.005~0.300%、N:0.004~0.030%、V:0.08~0.30%を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、軟化熱処理として730~760℃で4~8時間保持してから空冷された状態であって、硬さがロックウェル硬さで87HRB以下である窒化用鋼である。
その第2の手段は、第1の手段に記載の化学成分に加えて、質量%で、Nb:0.10%以下、Ti:0.020~0.200%、B:0.0030%以下のいずれか1種類または2種類以上を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、軟化熱処理として730~760℃で4~8時間保持してから空冷された状態であって、硬さがロックウェル硬さで87HRB以下である窒化用鋼である。
その第3の手段は、50%以上の圧縮率で冷間鍛造したときの硬さがビッカース硬さで270Hv以上となることを特徴とする、第1の手段まに記載の窒化用鋼である。
その第4の手段は、50%以上の圧縮率で冷間鍛造したときの硬さがビッカース硬さで270Hv以上となることを特徴とする、第2の手段まに記載の窒化用鋼である。
その第5の手段は、第1又は第2の手段に記載の窒化用鋼を用いて冷間鍛造されており、ビッカース硬さで表面硬さ680Hv以上かつ芯部硬さ220Hv以上、有効硬化層深さ0.25mm以上である窒化処理された状態であることを特徴とする、冷鍛窒化部品である。
その他の手段として、第1又は第2のいずれか1の手段に記載の鋼を用いて冷間鍛造された、ビッカース硬さで270Hv以上の窒化用の冷間鍛造部品素材である。
機械構造用鋼などに適応される部品は、加工時は硬さが低く加工しやすいが、加工および表面処理に供された部品は硬さが高く強度に優れることが求められており、加工前の加工性と加工後の硬さを両立することが望まれている。
そこで本発明の手段によると、窒化用鋼は冷間鍛造性に優れるため加工しやすく、さらにこの窒化用鋼を用いて冷間鍛造して窒化処理を施した部品には、高い芯部硬さ、高い表面硬さおよび優れた有効硬化層深さを具備させることができる。
このため、冷間鍛造時の加工性と窒化特性のバランスに優れており、加工が容易でありながら加工後の特性に優れている。そこで、本発明の窒化用鋼は、冷鍛窒化部品の素材として用いるのに好適である。
そして、本発明の冷鍛窒化部品は、歯車、CVT用プーリ等の、自動車のトランスミッションなどに使用される機械構造用部品として好適である。
本発明の手段によると、中炭素かつ1.5~2.8%のCrを含有していながら、軟化熱処理後にはフェライト粒内に球状炭化物が均一に分散した組織となり、硬さが87HRB以下となるので、冷間鍛造性に優れた加工しやすい窒化用鋼となる。
軟化熱処理後の冷鍛性に優れた窒化用鋼であるから、これを圧縮率50%以上に冷間鍛造すると、冷間鍛造後の硬さが270Hv以上に硬化する。
さらに、冷間鍛造後に窒化処理を実施すると、最表面の硬さが680Hv以上となり有効硬化層深さが0.25mm以上となり、窒化後の芯部硬さも220Hv以上の鋼となる。すなわち、冷間鍛造の加工硬化による硬さが窒化処理で低減することが抑制されている。
よって、本願の発明の窒化用鋼を用いた冷間鍛造品は窒化されることで表面硬さと芯部硬さに優れた冷鍛窒化部品となる。
実施例に示した、有効硬化層深さの導出方法についての模式図である。窒化後の鋼材を長手方向に対して垂直に切断し、最表面から芯部にかけて硬さを測定し、有効硬化層深さを導出する。
本発明を実施するための形態の説明に先立って、本願の手段における鋼の化学成分を規定する理由、および該鋼の熱処理温度を規定する理由、冷鍛後の硬さを規定する理由、窒化後の表面硬さ、有効硬化層深さ、芯部硬さを規定する理由について説明する。なお、以下の化学成分における%は質量%である。
C:0.20~0.45%
Cは素材硬さを上昇させる成分である。Cが0.20%未満であると、窒化後の芯部硬さが低下し、強度不足を招くこととなる。Cが0.45%を上回ると、素材硬さが上昇しすぎて、加工性(被削性、冷間加工性)が低下してしまう。また、Cが過多になると、窒素の拡散が阻害されるので、硬化層深さが低減してしまう。そこで、Cは、0.20~0.45%とする。
C:0.20~0.45%
Cは、浸炭後の鋼部品の芯部硬さを維持して強度を付与するために必要な元素である。しかし、Cが0.20%より少ないと、冷鍛条件によっては、部品の芯部硬さが不足するので、強度不足を招く。一方、Cが0.45%より多いと、素材硬さが必要以上に上昇し、被削性や冷間加工性が低下する。そこで、Cは0.20~0.45%とする。好ましくは、Cは0.23~0.43%である。
Si:0.1~0.4%
Siは、鋼の製鋼時の脱酸に有効な元素である。しかし、Siが0.1%より少ないと、製鋼時の脱酸不足を招き易く、介在物品位が低下する。一方、Siが0.4%より多いと、素材硬さが上昇して加工性が低下する。そこで、Siは0.1~0.4%とする。
Mn:0.2~1.0%
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させる元素であるが、0.2%より少ないと焼入れ性が不足する。一方、1.0%より多いと、加工性が低下する。そこで、Mn0.2~1.0%とする。
Cr:1.50~2.50%
Crは、窒化の際にNと結合して窒化物を生成し、窒化での表面硬さを向上させ、冷鍛
窒化部品の曲げ疲労強度と耐摩耗性を確保する効果がある。しかしながら、Crの含有量
が1.50%未満では前記の効果が少ない。また、CrはM73型炭化物を安定化させる元素である。Crが1.50%未満であると、M73型炭化物が析出しないことから、球状化焼なまし中のパーライト粒からフェライト粒へのC流入量が不足することとなり、球状化炭化物の分布が不均一となることから、冷間鍛造性が低下することとなる。他方、Crが2.50%を超えると、素材硬さが上昇し過ぎて、加工性が低下することとなる。そこで、Crは、1.50~2.50%とする。好ましくは、Crは1.60~2.40%である。
Mo:0.03~0.30%
Moは、炭化物生成元素であり、時効硬化により芯部硬さを向上させる作用を有する。しかし、Moが0.1%未満であると、浸炭後の芯部硬さが低下するので、強度不足を招く。他方、Moが0.3%以上であると、素材硬さが上昇しすぎて、加工性が低下するので、被削性や冷間加工性が悪くなる。そこで、Moは0.1~0.3%とする。
Al:0.005~0.300%
Alは、鋼の脱酸に有効な元素であり、窒化時にNと反応してAlNを形成し表面硬さを向上させる作用がある。しかし、Alが0.005%より少ないと、上記の効果が得られないばかりか、製造時の脱酸不足を招き易くなり、その結果、介在物品位が低下する。一方、Alが0.300%より多いと、硬質で粗大なAl2O3を形成して冷間鍛造性が低下するばかりか、窒化での有効硬化層が浅くなり曲げ疲労強度およびピッチング強度が低下する問題が生じる。そこで、Alは0.005~0.300%とする。
N:0.004~0.030%
Nは鋼中でAlN等の窒化物となって結晶粒を微細化する効果があり、Vと結合することで芯部硬さ向上にも寄与する。したがって0.0040%以上の含有が必要である。他方、Nが、Cとともに、Vなどの元素と結合して、炭窒化物を形成し、必要以上に硬さが高くなると、冷間鍛造性が低下する。また、窒化温度での時効硬化による芯部硬さの向上効果も十分に得られなくなる。そのため、Nの含有量は制限する必要があり、0.0030%以下とする。そこで、Nは0.004~0.030%とする。
V:0.08~0.30%
Nは、窒化の際にCまたは/およびNと結合して、炭化物、窒化物および炭窒化物を形成し、表面硬さを向上する効果を有する。また、窒化温度において炭化物を形成することにより、芯部硬さを向上させる。このような硬化を得いるためにはVを0.08%以上含有させる必要がある。しかしVが必要以上に添加されると、冷鍛性が低下する恐れがある。そのためVの上限を0.30%とする。そこで、Vは0.08~0.30%とする。
本発明で規定される化学成分の残部はFeおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物のうち、PとSについては、以下のとおり上限を規定している。
P:0.030%以下
Pは不可避的不純物である。Pは、粒界偏析を助長することから、靱性を低下させる。そこで、不可避的不純物のPは、0.030%以下とする。
S:0.030%以下
Sは不可避的不純物である。Sが0.030%を超えると、粗大なMnSが多量に形成されることとなり、靱性や疲労強度が低下することとなる。そこで、不可避的不純物のSは、0.030%以下とする。
また、本発明においては、さらに、以下のNb、Ti、Bのいずれか1種または2種以上を選択的に付加してもよい。
Nb:0.10%以下
Nbは、結晶粒微細化に有効な成分である。もっとも、Nbが0.10%より多く含有されると、硬さが上昇し、冷間鍛造性が低下する。そこで、Nbを添加する場合には0.10%以下とする。
Ti:0.020~0.200%
Tiは、Cまたは/およびNと結合して、微細な炭化物、窒化物および炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度を向上させる作用を有する。そこで、これらの効果を得るためにTiを0.020%以上含有させてもよい。もっとも、Tiの含有量が多い場合には、粗大なTiNが生成するので、却って曲げ疲労強度が低下する。そのため、含有させる場合のTiの量に上限を設け、0.200%以下とする。含有させる場合のTiの量は、0.100%以下であることが好ましい。
B:0.0030%以下
Bは、焼入れ性に寄与する元素であることから、任意に添加しうる成分である。しかし、0.0030%より多く含有されると、必要以上に素材硬さが上昇し加工性の低下をもたらす。そこで、Bは0.0030%以下とする。
軟化熱処理:730~760℃で4~8時間保持してから空冷されること
本発明では高Cr成分とすることにより、オーステナイト化温度直下において、フェライト粒内の固溶CはM73型(M=FeおよびCrの混合成分)の炭化物として安定析出し、フェライト粒内に球状炭化物が均一分散した組織となり、優れた冷鍛性を有する。
処理温度または処理時間が過大となると、炭化物の球状化が必要以上に促進され、冷鍛性には優れるが窒化後の芯部硬さが不足する恐れがある。
一方、処理温度または処理時間が過少となると炭化物の球状化が適切に促進されず、冷鍛性を損なう恐れがある。
そこで、軟化熱処理は730~760℃で4~8時間保持した後、空冷する。
冷間鍛造後硬さ:270Hv以上
窒化後の芯部硬さを十分に確保するためには、冷間鍛造により、十分に硬化する必要がある。そこで、50%以上の圧縮率の冷間鍛造後の硬さを270Hv以上とする。
窒化後硬さ:表面硬さ680Hv以上、芯部硬さ220Hv以上、有効硬化層深さ:0.25mm以上、
窒化用鋼を冷鍛加工により歯車等の部品として使用するためには、十分なピッチング疲労強度と曲げ疲労強度が求められる。そこで、冷鍛加工した後に窒化処理を施すことが有用であるから、十分な窒化特性を備えたものとなること、すなわち、窒化後の表面硬さと有効硬化層深さ、芯部硬さを確保できること必要がある。そこで、冷鍛窒化部品の窒化後の窒化特性を表面硬さ:680Hv以上、有効硬化層深さ:0.25mm以上、芯部硬さ:220Hv以上とする。
次いで、本発明を実施するための形態について記載する。
まず、表1に示す本発明鋼No.1~17および比較鋼No.18~23の各化学成分と、残部Feおよび不可避不純物との合計で100%の化学成分となる各鋼のそれぞれを、100kg真空誘導溶解炉(VIM)で溶製した。
Figure 2023144674000001
次いで、これらの各鋼の供試材を熱間鍛造により径40mmの棒鋼に作製し、軟化熱処理として730~760℃の温度で4~8時間保持した後、空冷した。なお、軟化熱処理はカンタル炉を用い、以下の手順で実施した。
カンタル炉での軟化熱処理の手順は、上記の保持温度に設定した炉内に、上記供試材を投入し、供試材の昇温時間を30分確保し、その後、任意の時間保持してから、空冷もしくは水冷をする。本実施例ではいずれも空冷した。
なお、軟化熱処理の保持時間の選定については炉に装入する鋼材の量や寸法を考慮するものとする。
軟化熱処理した鋼の特性については、硬さについて以下の確認をした。また軟化熱処理後に、圧縮率50%以上の冷間鍛造を実施、その後窒化試験行い、断面硬さ、芯部硬さの確認を行った。それらの結果を表2に示した。
(軟化熱処理後の硬さについて)
冷鍛加工性の評価のため、表1の本発明鋼No.1~17および比較鋼No.18~23の各鋼の軟化熱処理後冷間鍛造前の硬さについて、ロックウエル硬さ試験機により測定して硬さ(HRB)を求めた。上記の焼なまし後の供試材を、圧延方向に対して垂直に切断し、切断面を平面研削した後、中周部の位置でロックウエル硬さ試験を実施した。87HRB以下である場合を、冷鍛加工性に優れるものと評価した。
(冷間鍛造後の硬さ及び窒化特性の評価について)
次に、軟化熱処理をした鋼に、圧縮率50%以上の冷間鍛造を実施した後、400~600℃で2時間~32時間の窒化を施した。冷間鍛造後の硬さを測定し、またこれらの鋼が窒化された場合に所定の窒化特性と芯部硬さが発現されているか否かを、硬さ測定にて確認した。
窒化処理の前後の硬さについて、直径10mmの丸棒試験片を横断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、前記面が鏡面仕上げになるように研磨し、ビッカース硬さ試験機を使用して、冷間鍛造後の硬さ及び芯部硬さを測定した。また、窒化後の試験片について、マイクロビッカース硬さ測定機を使用して、表面硬さおよび有効硬化層深さを測定した。表2に調査の各試験結果をまとめて示す。
具体的な測定手順は、以下のとおりである。まず、JIS(日本産業規格) Z2244(2009)に準拠して、鏡面仕上した試験片の中心部1点とR/2部4点の計5点のHVを、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、5点の算術平均値を「芯部硬さ」とした。冷間鍛造後の硬さが270HV以上である場合を、冷間鍛造により適切に硬化するものとして評価した。また、芯部硬さが220HV以上である場合を窒化後の芯部硬さの低減が抑制できているものとして評価した。
同じ埋め込み試料を用いて、上記の場合と同様にJIS Z2244(2009)に準拠して、マイクロビッカース硬さ測定機によって、試験力を0.98Nとして試験片の表面から0.05mmの深さ位置における任意の10点のHVを測定し、その値を算術平均して「表面硬さ」とした。680HV以上の場合を窒化後の表面硬さに優れるものとして評価した。
さらに、同じ埋め込み試料を用いて、JIS Z2244(2009)に準拠して、マイクロビッカース硬さ測定機によって、試験力を1.96Nとして鏡面仕上げした試験片の表面から順次ビッカース硬さを測定し、硬さの分布図を作成した。そして400Hvとなる位置までの表面からの距離を「有効硬化層深さ」とした(図1)。有効硬化層深さが0.25mm以上である場合を有効硬化深さに優れるものとして評価した。
Figure 2023144674000002
発明鋼成分である鋼種No.1~17の鋼は、いずれも発明の規定する成分を満たし、所定の処理温度で軟化熱処理を実施していることから、軟化熱処理後の硬さが87HRB以下で冷鍛性に優れたものが得られている。冷間鍛造後の硬さは270HV以上であり、窒化後の芯部硬さが220HV以上であることが確認された。窒化後の表面硬さは680Hv以上、有効硬化層深さ0.25mm以上であり窒化特性に優れていることも確認された。以上のような特性を備えていることから、本発明の窒化用鋼は、冷間鍛造時の加工性と窒化特性のバランスに優れており、冷間鍛造して窒化した冷鍛窒化部品として適用することに好適で優れた特性を備えていることが確認された。
他方、比較鋼成分の鋼種18~23についてみると、本発明の規定範囲を外れると、以下のとおり、窒化特性の低下や、冷間加工性の低下、芯部硬さの不足などが認められた。
鋼種18はCおよびMnが軟化熱処理後の硬さが90HRBと冷間鍛造性が低下している。
鋼種19はVが過少であるため、窒化後の有効硬化層深さが低下している。
鋼種20はCrが過少であるため、窒化後の表面硬さが低下している。
鋼種21はCが過少で窒化後の芯部硬さが低下している。
鋼種22は軟化熱処理の温度が過少であるため、硬さが十分に下がっていない。
鋼種23は軟化熱処理の温度と時間が過大であるため、窒化後の芯部硬さが低下している。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.20~0.45%、Si:0.1~0.4%、Mn:0.2~1.0%、Cr:1.50~2.80%、Mo:0.03~0.30%、Al:0.005~0.300%、N:0.004~0.030%、V:0.08~0.30%を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、P(不可避不純物として):0.030%以下、S(不可避不純物として):0.030%以下、軟化熱処理として730~760℃で4~8時間保持してから空冷された状態であって、硬さがロックウェル硬さで87HRB以下である窒化用鋼。
  2. 請求項1に記載の化学成分に加えて、質量%で、Nb:0.10%以下、Ti:0.020~0.200%、B:0.0030%以下のいずれか1種類または2種類以上を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼であり、軟化熱処理として730~760℃で4~8時間保持してから空冷された状態であって、硬さがロックウェル硬さで87HRB以下である窒化用鋼。
  3. 50%以上の圧縮率で冷間鍛造したときの硬さがビッカース硬さで270Hv以上となることを特徴とする、請求項1に記載の窒化用鋼。
  4. 50%以上の圧縮率で冷間鍛造したときの硬さがビッカース硬さで270Hv以上となることを特徴とする、請求項2に記載の窒化用鋼。
  5. 請求項1又は2に記載の窒化用鋼を用いて冷間鍛造されており、ビッカース硬さで表面硬さ680Hv以上かつ芯部硬さ220Hv以上、有効硬化層深さ0.25mm以上である窒化処理された状態であることを特徴とする、冷鍛窒化部品。
JP2022051771A 2022-03-28 2022-03-28 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品 Pending JP2023144674A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022051771A JP2023144674A (ja) 2022-03-28 2022-03-28 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022051771A JP2023144674A (ja) 2022-03-28 2022-03-28 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023144674A true JP2023144674A (ja) 2023-10-11

Family

ID=88253184

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022051771A Pending JP2023144674A (ja) 2022-03-28 2022-03-28 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023144674A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2012073485A1 (ja) 冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼およびその製造方法
JP4581966B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼材
JP2006348321A (ja) 窒化処理用鋼
JPH10306343A (ja) 冷間鍛造性及び耐ピッチング性に優れた軟窒化用鋼
WO2018180342A1 (ja) シャフト部材
JP7013833B2 (ja) 浸炭部品
JP4488228B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼材
JP2006307270A (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた肌焼用鋼およびその製法
JP4757831B2 (ja) 高周波焼入れ部品およびその製造方法
JPH10226817A (ja) 軟窒化用鋼材の製造方法及びその鋼材を用いた軟窒化部品
JP6447064B2 (ja) 鋼部品
JPH0570925A (ja) 歪の小さい高強度歯車の浸炭窒化熱処理方法
JP2006265703A (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた肌焼用鋼およびその製法
JP7263796B2 (ja) 自動車変速機用リングギアおよびその製造方法
WO2016158375A1 (ja) 浸炭窒化用鋼材および浸炭窒化部品
JP7063070B2 (ja) 浸炭部品
JPH10226818A (ja) 軟窒化用鋼材の製造方法及びその鋼材を用いた軟窒化部品
JP2023144674A (ja) 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品
JP5821512B2 (ja) 窒化部品およびその製造方法
JP2023144640A (ja) 冷鍛性に優れる窒化用鋼および冷鍛窒化部品
JPH0570924A (ja) 歪の小さい高強度歯車の浸炭熱処理方法およびその歯車
JPH09279296A (ja) 冷間鍛造性に優れた軟窒化用鋼
US20200370159A1 (en) Steel material for cvt sheave, cvt sheave, and method for manufacturing cvt sheave
JP7196707B2 (ja) 窒化用鍛造部材及びその製造方法、並びに表面硬化鍛造部材及びその製造方法
JP6881496B2 (ja) 部品およびその製造方法