JP2023142853A - 筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定方法およびそれに用いるマーカー遺伝子 - Google Patents

筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定方法およびそれに用いるマーカー遺伝子 Download PDF

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Shinya Watanabe
順一 今井
Junichi Imai
恵美奈 斑目
Emina Madarame
総一郎 小川
Soichiro Ogawa
彰史 小名木
Akifumi Konaki
祥敬 小島
Yoshitaka Kojima
玲子 富樫
Reiko Togashi
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Abstract

【課題】 本発明は、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを予測することが可能なマーカーの提供およびそれを用いた筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定する方法の提供を課題とする。【解決手段】 筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定を補助する方法であって、被検者由来の被検試料におけるEIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む、判定を補助する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定方法およびそれに用いるマーカー遺伝子に関する。
筋層非浸潤性膀胱癌(Non-Muscle Invasive Bladder Cancer :NMIBC)は初発膀胱癌の75%を占め(非特許文献1)、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)によって診断される。標準治療はアントラサイクリン系の抗癌剤やBacillus-Calmette-Guerin(BCG)の膀胱注入療法であるが(非特許文献2、3)、一部の筋層非浸潤性膀胱癌は治療抵抗性となり再発を繰り返して筋層浸潤性膀胱癌(Muscle Invasive Bladder Cancer :MIBC)に進展する(非特許文献4)。また、筋層非浸潤性膀胱癌患者のうち26~55%が再発し、5年間で2.4~19%が筋層浸潤性膀胱癌に進展する(非特許文献4)。筋層浸潤性膀胱癌に進展した場合は侵襲性の高い膀胱全摘除術が標準治療であるが、全体の5年生存率は13~64%にとどまる(非特許文献5)。しかし、経尿道的膀胱腫瘍切除術(Transurethral Resection of Bladder Tumor:TURBT)の段階でアントラサイクリン系の抗癌剤やBCGの膀胱注入療法の感受性、予後を分子生物学的に簡便に予測する方法がなく、個々の筋層非浸潤性膀胱癌患者に対して筋層浸潤性膀胱癌へ進展しないよう治療戦略を立てることが困難であるのが現状である。
Burger, M., et al., Epidemiology and risk factors of urothelial bladder cancer. Eur Urol, 2013. 63(2): p. 234-41. Sylvester, R.J., M.A. van der, and D.L. Lamm, Intravesical bacillus Calmette-Guerin reduces the risk of progression in patients with superficial bladder cancer: a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol, 2002. 168(5): p. 1964-70. Bohle, A. and P.R. Bock, Intravesical bacille Calmette-Guerin versus mitomycin C in superficial bladder cancer: formal meta-analysis of comparative studies on tumor progression. Urology, 2004. 63(4): p. 682-6; discussion 686-7. Cambier, S., et al., EORTC Nomograms and Risk Groups for Predicting Recurrence, Progression, and Disease-specific and Overall Survival in Non-Muscle-invasive Stage Ta-T1 Urothelial Bladder Cancer Patients Treated with 1-3 Years of Maintenance Bacillus Calmette-Guerin. Eur Urol, 2016. 69(1): p. 60-9. van den Bosch, S. and J. Alfred Witjes, Long-term cancer-specific survival in patients with high-risk, non-muscle-invasive bladder cancer and tumour progression: a systematic review. Eur Urol, 2011. 60(3): p. 493-500.
本発明は、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定可能なマーカーの提供を課題とする。また本発明は当該マーカーを用いた筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、経尿道的膀胱腫瘍切除術によって採取した膀胱癌粘膜について、DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現プロファイルを取得し、再発・進展などの項目で二群間比較して発現レベルに有意差のある遺伝子群を見出した。そして本発明者らは、当該遺伝子群が筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展リスク予測マーカーとして使用できることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下の態様を含む:
すなわち、本発明は一態様において、
〔1〕筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定する方法であって、
被検者由来の被検試料におけるEIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む、判定方法に関する。
また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載の判定方法であって、
前記測定工程が、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、KRT5遺伝子、CASP1遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、TPM4遺伝子、および、SUM遺伝子の発現レベルを測定する工程であることを特徴とする。
また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の判定方法であって、
前記測定工程において得られた遺伝子の発現レベルと、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来試料における対応する遺伝子の発現レベルとを比較する工程
をさらに含むことを特徴とする。
また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の判定方法であって、
前記測定工程において得られた遺伝子の発現レベルと、膀胱がん再発患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、膀胱がん非再発患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、膀胱がん再発・進展患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、膀胱がん再発・非進展患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、、または、健常者由来試料における対応する遺伝子の発現レベルとをクラスタ分析により比較する工程
をさらに含むことを特徴とする。
また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の判定方法であって、
前記測定工程において得られた前記被検試料における遺伝子の発現レベルを所定の閾値と比較する工程
をさらに含むことを特徴とする。
また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の判定方法であって、
前記被検試料が膀胱がん粘膜由来の細胞であることを特徴とする。
また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の判定方法であって、
前記測定工程において、前記遺伝子の発現レベルの測定が前記遺伝子のmRNAの発現量の測定であることを特徴とする。

また本発明の判定方法は一実施の形態において、
〔8〕上記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の判定方法であって、
前記比較工程により得られた結果に基づき膀胱がんの治療方針を決定する工程を含むことを特徴とする。
また本発明は別の態様において、
〔9〕筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定するためのマーカー遺伝子セットであって、
EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子を含む、マーカー遺伝子セットに関する。
また本発明は別の態様において、
〔10〕筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定するためのキットであって、
EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現を測定する測定手段を含む、キットに関する。
ここで本発明のキットは一実施の形態において、
〔11〕上記〔10〕に記載のキットであって、
前記遺伝子の発現を測定する測定手段が、前記遺伝子に対するプライマー、プローブ、または、それらの標識物からなる群より選択される少なくとも一つの手段であることを特徴とする。
本発明によれば、筋層非浸潤性膀胱がんの再発および/または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを予測することが可能となる。すなわち、膀胱がん患者の膀胱温存を目指して経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の初期治療段階で膀胱がんの再発・進展リスクを判定することができる。当該判定は、例えば、個々の筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)患者に対して筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)へ進展しないようにより早い段階で有効な治療戦略を提供することを可能とする。
図1は、膀胱がん非再発群および膀胱がん再発群に属する患者由来の被検試料における遺伝子セット(21遺伝子)の発現レベルを示すヒートマップ図を示す。各被検試料はクラスタ分析により並び替えている。ヒートマップの各行は上からEIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、KRT5遺伝子の遺伝子発現レベルを示す。 図2は、膀胱がん非再発群および膀胱がん再発群に属する患者由来の被検試料における遺伝子セット(21遺伝子)の発現レベルを測定し、検体スコアの順に並べた各検体における遺伝子セットの発現レベルを示すヒートマップ(上段)およびその検体スコアのグラフ(下段)を示す。 図3は、膀胱がん非再発群および膀胱がん再発群における21種の遺伝子マーカーの遺伝子発現スコアから算出した検体スコアの群散布図を示す。また膀胱がん非再発群における検体スコア、および、膀胱がん再発群における検体スコアに基づくROC曲線および感度・特異度曲線を示す。 図4は、膀胱がん非再発群および膀胱がん再発群に属する患者由来の被検試料における遺伝子セット(10遺伝子)の発現レベルを示すヒートマップ図を示す。各被検試料はクラスタ分析により並び替えている。ヒートマップの各行は上からEIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、KRT5遺伝子、CASP1遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、および、TPM4遺伝子の遺伝子発現レベルを示す。 図5は、膀胱がん非再発群および膀胱がん再発群に属する患者由来の被検試料における遺伝子セット(10遺伝子)の発現レベルを測定し、検体スコアの順に並べた各検体における遺伝子セットの発現レベルを示すヒートマップ(上段)およびその検体スコアのグラフ(下段)を示す。 図6は、膀胱がん非再発群および膀胱がん再発群における10種の遺伝子マーカーの遺伝子発現スコアから算出した検体スコアの群散布図を示す。また膀胱がん非再発群における検体スコア、および、膀胱がん再発群における検体スコアに基づくROC曲線および感度・特異度曲線を示す。
1.筋層非浸潤性膀胱がんの再発および/または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定する方法
1-1.概要
本発明の第1の態様は、マーカー遺伝子セットに含まれる遺伝子の発現レベルを指標として、筋層非浸潤性膀胱がんと診断された患者において、再発または進展のリスクを判定することが可能な方法である。本発明のマーカー遺伝子セットは、21種の遺伝子群から選択される遺伝子より構成され、被検者(例えば、筋層非浸潤性膀胱がんを患う対象)の試料中における当該遺伝子群のうちの特定の遺伝子の発現レベルを測定することで、当該被検者が将来的に再発するリスクまたは進展のリスクを判定または予測できる(あるいは、その判定または予測を補助できる)。
1-2.定義
本明細書において「膀胱がん」とは膀胱にできる悪性腫瘍を意味し、膀胱の内部をおおう尿路上皮にできる尿路上皮がんに加え、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどを含む。好ましい実施の形態において、膀胱がんは尿路上皮がんである。尿路上皮がんは、がんが膀胱壁にどのくらい深くまで及んでいるか(深達度)により、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類される。「筋層非浸潤性がん」とは、膀胱がんのうち膀胱壁の筋層内へ腫瘍が浸潤していない状態にある膀胱がんをいう。また「筋層浸潤性がん」とは膀胱がんのうち膀胱壁の筋層内に腫瘍が浸潤している状態にある膀胱がんをいう。膀胱がんの筋層浸潤の有無は、以下の方法に限定されないが、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)もしくは膀胱全摘除術標本により判定することができる。
「筋層非浸潤性膀胱がんの再発」とは、手術により取り除かれた腫瘍や薬物治療により縮小した腫瘍等が再び現れる、もしくは、大きくなることを含み、また、別の場所に同じ腫瘍が出現したりすることをいう。本発明に係る判定方法の好ましい実施の形態において「膀胱がんの再発」とは、筋層非浸潤性がんを経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)により切除した後に、筋層非浸潤性がんが再び現れる、もしくは、大きくなる、または、別の場所に同じ腫瘍が出現することを意味する。
「膀胱がんの進展」とは、筋層非浸潤性がんからの筋層浸潤性がんへの進展や、がんの原発巣(発生部位)と直結したリンパ路をもつ近傍のリンパ節への転移(所属リンパ節転移)、もしくは、原発巣とは離れた部位への遠隔転移を含む。特に本明細書において「筋層非浸潤性膀胱がんの進展」というとき、筋層非浸潤性がんから筋層浸潤性がんへ進展することを意味する。
本明細書において「薬物治療」とは、薬剤を用いた膀胱がんの治療を意味し、公知の薬物療法を含む。好ましい実施の形態において、薬物治療は抗がん剤やBCG、またはそれらの組み合わせの投薬による治療法を意味する。抗がん剤の種類やBCGの株、および、投与方法(投与量、投与間隔、投与回数など)は限定されず、公知の薬剤および投与方法を含む。抗がん剤やBCGを用いた好ましい治療方法は膀胱内注入療法である。「抗がん剤」としては以下に限定されないが、マイトマイシンC(MMC)、アントラサイクリン系抗癌剤などを挙げることができる。
本明細書において「マーカー遺伝子」は、筋層非浸潤性膀胱がんと診断された患者において、膀胱がんの再発または進展のリスクを判定することのできるバイオマーカーとして利用可能な遺伝子をいう。本発明においてマーカー遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現レベルは、転写産物(mRNA)、そのcDNAまたは各遺伝子がコードするタンパク質の発現の情報に関する。
本明細書において「マーカー遺伝子セット」とは、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる21のマーカー遺伝子を含む。表1に「マーカー遺伝子セット」に含まれる各遺伝子の遺伝子名(Gene Name)、遺伝子ID(Gene ID;アクセッション番号)、遺伝子シンボル(Gene Symbol)を記載する。
本明細書において、「マーカー遺伝子セット」に含まれる遺伝子には、同一アミノ酸配列をコードする縮重コドンを含む塩基配列からなる遺伝子、各遺伝子の各種変異体(バリアント)や点突然変異遺伝子等の変異遺伝子、及びチンパンジー等の他種生物のオルソログ遺伝子なども含まれる。このような遺伝子としては、上記表に記載のGenBankアクセッション番号により特定される遺伝子転写産物の塩基配列と70%以上(好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上)の塩基同一性を有する塩基配列からなる転写産物を有する遺伝子であって、かつ、対象遺伝子の機能を保持する遺伝子を含む。
例えば、一実施の形態において、本発明に用いられるEIF3F遺伝子はGenBankデータベースにおいてアクセッション番号NM_003754により特定される塩基配列からなる転写産物を有する遺伝子として特定することができ、このときEIF3F遺伝子には配列番号1に示される塩基配列と70%以上(好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上)の塩基同一性を有する塩基配列からなる転写産物を有する遺伝子であって、EIF3F遺伝子の機能を保持する遺伝子を含む。なお、本明細書において「塩基同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両塩基配列の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの、遺伝子の全塩基数に対する比較するヌクレオチドの塩基配列中の同一塩基数の割合(%)をいう。
本明細書において、「遺伝子発現スコア」とは、「マーカー遺伝子セット」に含まれる各遺伝子または複数の遺伝子の発現レベルにより定まるスコアである。スコアの種類や算定方法は特に制限されない。一実施の形態において遺伝子発現スコアは、マーカー遺伝子のうちの15遺伝子(EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、KRT5遺伝子)について発現レベルに-1を乗じたものを「遺伝子発現スコア」とし、残り6遺伝子について、それぞれの発現レベルをそのまま「遺伝子発現スコア」として扱うことができる。また別の実施形態においては、遺伝子ごとに発現レベルのカットオフ値を設定し、当該カットオフ値との比較により定まるスコアとする(例えば、発現レベルがカットオフ値以上であれば遺伝子発現スコアを「1」とし、カットオフ値未満であれば遺伝子発現スコアを「-1」とする)こともできる。
本明細書において、「検体スコア」とは被検試料ごとに与えられるマーカー遺伝子の発現レベルにより求められるスコアである。スコアの種類や算定方法は特に制限されないが、例えば、「検体スコア」は各被検試料におけるマーカー遺伝子の遺伝子発現スコアの総和として扱うことができる。
本明細書において「測定値」とは、遺伝子発現レベルの測定方法によって得られた値である。測定値は、試料中のmRNA量等をng(ナノグラム)やμg(マイクログラム)等の重量で表した絶対値であってもよいし、また対照値に対する吸光度や標識分子による蛍光強度等で表した相対値であってもよい。
なお、各遺伝子の発現レベルの測定値は測定方法にもよるが、例えば、共通のサンプル(以下「共通リファレンス」という。)に対する相対比(発現比)として算出することができる。発現比を算出する際の共通リファレンスは、比較する試料間の測定条件において同じであればどのようなものでも構わない。例えば、特定の細胞株でもよく、複数の細胞株を混合したものでもよい。または、市販のユニバーサルリファレンスや、公知のハウスキーピング遺伝子またはそれらの組み合わせを共通リファレンスとして用いることもできる。
本明細書において「遺伝子の発現レベル」とは、マーカー遺伝子の転写産物量、翻訳産物量、発現強度又は発現頻度をいう。ここでいう遺伝子の発現レベルは、マーカー遺伝子の野生型遺伝子の発現レベルに限らず、点突然変異遺伝子等の変異遺伝子の発現レベルも含み得る。また、マーカー遺伝子の発現を示す転写産物には、スプライスバリアントのような異型転写産物(バリアント)及びそれらの断片も含み得る。変異遺伝子、転写産物、又はその断片に基づく情報であっても本発明におけるマーカー遺伝子の発現レベルとして扱うことが可能である。
遺伝子の発現レベルは、マーカー遺伝子セットを構成する遺伝子群の転写産物、すなわちmRNA量等の測定により得られる測定値として得ることができる。
1-3.測定方法
本発明の筋層非浸潤性膀胱がんの再発または進展のリスクを判定する方法は、マーカー遺伝子セットに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定する工程を必須の工程として含む。より具体的には、筋層非浸潤性膀胱がん患者由来の被検試料におけるEIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む。
本発明の検出方法の一実施の形態は、筋層非浸潤性膀胱がん患者由来の被検試料において再発または進展のリスクを判定する方法であって、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定することにより筋層非浸潤性膀胱がん患者の再発または進展のリスクを判定する方法である。
以下、測定方法について具体的に説明をする。
「測定工程」とは、被検試料においてマーカー遺伝子の発現レベルを測定してその測定値を得る工程である。マーカー遺伝子の発現レベルの測定は、各マーカー遺伝子における単位量あたりの発現レベルを測定することが好ましい。
測定するマーカー遺伝子は、上記マーカー遺伝子セットに含まれる21の遺伝子から少なくとも1つ以上を選択することができる。選択する遺伝子の数は、2~21のいずれの組み合わせの数でもよい。測定する遺伝子の数が増えた場合、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスク判定の精度が向上する点において好ましい。二以上の遺伝子を選択する場合、遺伝子の組み合わせも限定されない。
二以上の遺伝子を選択して測定する場合、好ましい一実施の形態において当該遺伝子の組み合わせは、健常者または膀胱がん非再発群と膀胱がん再発群との発現レベルのp値が0.05以下、より好ましくは0.01以下となるように選択することができる。また別の実施の形態において当該遺伝子の組み合わせは、膀胱がん非再発群と膀胱がん再発群においてROC曲線を描いた際に、感度および特異度が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上となるカットオフ値を設定可能なように選択することができる。
本明細書において「被検試料」とは、被検者より採取された試料である。「被検者」は特に制限されないが、膀胱がんの罹患に疑いのある個体、または、膀胱がんに罹患歴のある個体であってもよい。ここでいう「膀胱がんに罹患歴のある個体」とは、現在膀胱がんに罹患している患者、及び過去膀胱がんに罹患した膀胱がん既往歴者を含む。また本明細書において「被検者」は、試料を提供し、検査に供されるヒト個体である。本発明の方法の対象となる被検者としてより好ましくは、膀胱がんと診断された個体であり、さらに好ましくは筋層非浸潤性膀胱がんと診断された個体である。一実施の形態において、本発明はまた筋層非浸潤性膀胱がんの罹患に疑いのある個体、または、筋層非浸潤性膀胱がんに罹患歴のある個体に対して筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定することができる。
本態様で用いる「被検者」は、性別、年齢、身長、体重等の身体的条件や、人数は特に制限はされない。また本発明の判定方法は、「被検者」の喫煙の有無;上部尿路上皮癌(UTUC)既往歴の有無;尿細胞診の陽性もしくは陰性;膀胱がんの深達度、核異型度、メイン腫瘍部位に影響を受けることなく、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定することができる。
本明細書において「試料」とは、前記被検者から採取され、本態様の判定方法に供されるものであって、例えば、組織、細胞または体液が該当する。ここでいう「組織」及び「細胞」は、被検者のいずれの部位由来でもよいが、好ましくは生検により採取された、又は手術により切除された検体、より具体的には膀胱組織又は膀胱の細胞である。特に好ましくは生検により採取された膀胱がん組織若しくは膀胱がん由来の細胞又は膀胱がん罹患の疑いのある膀胱がん組織若しくは細胞(例えば、膀胱がん粘膜または膀胱がん粘膜由来の細胞)である。なお、これらの組織又は細胞は、ホルマリン固定後パラフィンに包埋されたもの(FFPE:Formalin-Fixed Paraffin Embedded)でもよい。また、ここでいう「体液」とは、被検者から採取された液体状の生体試料をいう。例えば、血液(血清、血漿及び間質液を含む)、髄液(脳脊髄液)、尿、リンパ液、消化液、腹水、胸水、神経根周囲液、各組織若しくは細胞の抽出液等が挙げられる。好ましくは血液である。
試料の採取は、組織又は細胞であれば、生検又は手術による外科的摘出により入手すればよい。また、体液であれば、当該分野の公知の採取方法に基づいて行なえばよい。例えば、血液やリンパ液であれば公知の採血方法に従えばよい。本態様の検出方法において必要となる試料の量は、特に限定するものではない。組織又は細胞であれば少なくとも10μg、好ましくは少なくとも0.1mgあれば望ましい。また生検材料でも構わない。血液、又はリンパ液のような体液であれば、少なくとも0.1mL、好ましくは少なくとも1mL、より好ましくは少なくとも10mLの容量があればよい。試料は、マーカー遺伝子の発現レベルの測定が可能なように、必要に応じて調製、処理することができる。例えば、試料が組織又は細胞であれば、ホモジナイズ処理や細胞溶解処理、遠心や濾過による夾雑物除去、プロテアーゼインヒビターの添加等が挙げられる。これらの処理の詳細についてはGreen & Sambrook, Molecular Cloning, 2012, Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Pressに詳しく記載されており、参考にすることができる。
本明細書において「単位量」とは、任意に定められる試料の量をいう。例えば、容量(μL、mLで表される)や重量(μg、mg、gで表される)が該当する。単位量は特に特定しないが、一連の検出方法で測定される単位量は一定とすることが好ましい。例えば、健常者または膀胱がん非再発患者由来の試料と膀胱がん再発患者由来の試料等とを比較する場合、単位量を一定とすることでより正確な検出が可能となる。特に、マーカー遺伝子の発現レベルを絶対値として測定する際には、単位量を一定にする必要がある。
以下、遺伝子の転写産物の測定方法について具体的に説明をする。なお、遺伝子の転写産物の測定方法は公知である。以下では、特開2016-13081号公報の遺伝子の転写産物又は翻訳産物の測定方法に関する記載を参照または引用して記載する。なお、以下では代表的な遺伝子の転写産物又は翻訳産物の測定方法を説明するが、これらの方法に限定されず、公知の測定方法を用いることができる。
マーカー遺伝子の転写産物の測定は、mRNA量の測定とすることができ、またmRNAから逆転写されて得られたcDNA量の測定であってもよい。一般に遺伝子の転写産物の測定には、上記の遺伝子の塩基配列の全部又は一部を含むヌクレオチドをプライマー又はプローブに用いて、遺伝子の発現レベルを絶対値又は相対値として測定する方法が採用される。
本態様のプライマー又はプローブは、通常、DNA、RNA等の天然核酸で構成される。安定性が高く、合成が容易で低廉なDNAは特に好ましい。また、必要に応じて天然核酸と化学修飾核酸や擬似核酸を組み合わせることもできる。化学修飾核酸や擬似核酸には、例えば、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid;登録商標)、メチルホスホネート型DNA、ホスホロチオエート型DNA、2'-O-メチル型RNA等が挙げられる。また、プライマー及びプローブは、蛍光物質及び/又はクエンチャー物質、又は放射性同位元素(例えば、32P、33P、35S)等の標識物質、あるいはビオチン若しくは(ストレプト)アビジン、又は磁気ビーズ等の修飾物質を用いて標識又は修飾してもよい。標識物質は、限定されず、市販のものを用いることができる。例えば、蛍光物質であればFITC、Texas、Cy3、Cy5、Cy7、Cyanine3、Cyanine5、Cyanine7、FAM、HEX、VIC、フルオレサミン及びその誘導体、及びローダミン及びその誘導体等を用いることができる。クエンチャー物質であれば、AMRA、DABCYL、BHQ-1、BHQ-2、又はBHQ-3等を用いることができる。プライマー及びプローブにおける標識物質の標識位置は、その修飾物質の特性や、使用目的に応じて適宜定めればよい。一般的には、5’又は3’末端部に修飾されることが多い。また、一つのプライマー及びプローブ分子が一以上の標識物質で標識されていても構わない。これらの物質のヌクレオチドへの標識は公知の方法で行うことができる。
プライマー又はプローブとして用いるヌクレオチドは、上記マーカー遺伝子を構成する各遺伝子のセンス鎖、又はアンチセンス鎖からなるヌクレオチドのいずれであってもよい。
プライマー又はプローブの塩基長は特に限定しない。プローブの場合、後述するハイブリダイゼーション法に使用するのであれば、少なくとも10塩基長以上から遺伝子全長、好ましくは15塩基長以上から遺伝子全長、より好ましくは30塩基長以上から遺伝子全長、さらに好ましくは50塩基長以上から遺伝子全長であり、マイクロアレイに使用するのであれば、10~200塩基長、好ましくは20~150塩基長、より好ましくは30~100塩基長である。一般にプローブは長いほどハイブリダイゼーション効率が上昇し、感度は高くなる。一方、プローブは短いほど感度は低くなるが、逆に特異性が上昇する。一方、プライマーの場合、フォワードプライマー及びリバースプライマーのそれぞれが10~50bp、好ましくは15~30bpあればよい。
上記したプライマー又はプローブの調製は当業者に既知であり、例えば、前述のGreen & Sambrook, Molecular Cloning(2012)に記載された方法に準じて調製することができる。また、核酸合成受託メーカーに配列情報を提供し、委託製造することも可能である。
マーカー遺伝子の転写産物の測定は、公知の核酸検出・定量方法であればよく、特に限定はしない。例えば、ハイブリダイゼーション法、核酸増幅法又はRNAシーケンシング(RNA-Seq)解析法が挙げられる。
「ハイブリダイゼーション法」とは、検出すべき標的核酸の塩基配列の全部又は一部に相補的な塩基配列を有する核酸断片をプローブとして用い、その核酸と該プローブ間の塩基対合を利用して、標的核酸若しくはその断片を検出、定量する方法である。本態様で標的核酸は、マーカー遺伝子を構成する各遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はその断片が該当する。一般にハイブリダイゼーション法は、非特異的にハイブリダイズする目的外の核酸を排除するためストリンジェントな条件で行うことが好ましい。低塩濃度かつ高温下の高ストリンジェントな条件はより好ましい。ハイブリダイゼーション法には、検出手段の異なるいくつかの方法が知られているが、例えば、ノザンブロット法(ノザンハイブリダイゼーション法)、マイクロアレイ法、表面プラズモン共鳴法又は水晶振動子マイクロバランス法が好適である。
「ノザンブロット法」は、遺伝子の発現を解析する方法の1つで、試料より調製した全RNA又はmRNAを変性条件下でアガロースゲル若しくはポリアクリルアミドゲル等による電気泳動によって分離し、フィルターに転写(ブロッティング)した後に、標的RNAに特異的な塩基配列を有するプローブを用いて、標的核酸を検出する方法である。プローブを蛍光色素や放射性同位元素のような適当なマーカーで標識することで、例えば、ケミルミ(化学発光)撮影解析装置(例えば、ライトキャプチャー;アトー社)、シンチレーションカウンター、イメージングアナライザー(例えば、FUJIFILM社:BASシリーズ)等の測定装置を用いて標的核酸を定量することも可能である。ノザンブロット法は、当該分野において周知著名な技術であり、例えば、前述のGreen, M.R. and Sambrook, J.(2012)を参照すればよい。
「マイクロアレイ法」は、基板上に標的核酸の塩基配列の全部若しくは一部に相補的な核酸断片をプローブとして小スポット状に高密度で配置、固相化したマイクロアレイ又はマイクロチップに標的核酸を含む試料を反応させて、基盤スポットにハイブリダイズした核酸を蛍光等によって検出する方法である。標的核酸は、mRNAのようなRNA、又はcDNAのようなDNAのいずれであってもよい。検出、定量には、標的核酸等のハイブリダイゼーションに基づく蛍光等をマイクロプレートリーダーやスキャナにより検出、測定することによって達成できる。測定した蛍光強度により、mRNA量若しくはcDNA量又はレファレンスmRNA(参照mRNA)に対するそれらの存在比を決定することができる。マイクロアレイ法も当該分野において周知の技術である。例えば、DNAマイクロアレイ法(DNAマイクロアレイと最新PCR法(2000年)村松正明、那波宏之監修、秀潤社)等を参照すればよい。
「表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)法」とは、金属薄膜へ照射したレーザー光の入射角度を変化させると特定の入射角度(共鳴角)において反射光強度が著しく減衰するという表面プラズモン共鳴現象を利用して、金属薄膜表面上の吸着物を極めて高感度に検出、定量する方法である。本発明においては、例えば、金属薄膜表面に標的核酸の塩基配列に相補的な配列を有するプローブを固定化し、その他の金属薄膜表面部分をブロッキング処理した後、被検体から採取された試料を金属薄膜表面に流通させることによって標的核酸とプローブの塩基対合を形成させて、サンプル流通前後の測定値の差異から標的核酸を検出、定量することができる。表面プラズモン共鳴法による検出、定量は、例えば、Biacore社で市販されるSPRセンサを利用して行なうことができる。本技術は、当該分野において周知である。例えば、永田和弘、及び半田宏, 生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法, シュプリンガー・フェアラーク東京, 東京, 2000を参照すればよい。
「水晶振動子マイクロバランス(QCM: Quarts Crystal Microbalance)法」とは、水晶振動子に取り付けた電極表面に物質が吸着するとその質量に応じて水晶振動子の共振周波数が減少する現象を利用して、共振周波数の変化量によって極微量な吸着物を定量的に捕らえる質量測定法である。本方法による検出、定量も、SPR法と同様に市販のQCMセンサを利用して、例えば、電極表面に固定した標的核酸の塩基配列に相補的な配列を有するプローブと被検体から採取された試料中の標的核酸との塩基対合によって標的核酸を検出、定量することができる。本技術は、当該分野において周知であり、例えば、Christopher J. et al., 2005, Self-Assembled Monolayers of a Form of Nanotechnology, Chemical Review,105:1103-1169や森泉豊榮,中本高道,(1997) センサ工学,昭晃堂を参照すればよい。
「核酸増幅法」とは、フォワード/リバースプライマーを用いて、標的核酸の特定の領域を核酸ポリメラーゼによって増幅させる方法をいう。例えば、PCR法(RT-PCR法を含む)、NASBA法、ICAN法、LAMP(登録商標)法(RT-LAMP法を含む)が挙げられる。好ましくはPCR法である。核酸増幅法を用いた遺伝子の転写産物の測定方法には、リアルタイムRT-PCR法のような定量的核酸増幅法が使用される。リアルタイムRT-PCR法には、さらに、SYBR(登録商標)Green等を用いるインターカレーター法、Taqman(登録商標)プローブ法、デジタルPCR法、及びサイクリングプローブ法が知られているが、いずれの方法であってもよい。これらはいずれも公知の方法であり、当該技術分野における適当なプロトコルにも記載されているので、それらを参照すればよい。
「RNAシーケンシング(RNA-Seq)解析法」とは、RNAをcDNAに逆転写反応により変換し、それらを次世代シーケンサー(例えば、HiSeqシリーズ(illumina社)やIon Protonシステム(Thermo Fisher社)が存在するが、これに限らない。)を用いてリード数をカウントすることで遺伝子の発現量を測定する方法をいう。これらはいずれも公知の方法であり、当該技術分野における適当なプロトコルにも記載されているので、それらを参照すればよい。
リアルタイムRT-PCR法で遺伝子の転写産物を定量する方法について、以下で一例を挙げて簡単に説明をする。リアルタイムRT-PCR法は、試料中のmRNAから逆転写反応によって調製されたcDNAを鋳型として、PCRの増幅産物が特異的に蛍光標識される反応系で、増幅産物に由来する蛍光強度を検出する機能の備わった温度サイクラー装置を用いてPCRを行う核酸定量方法である。反応中の標的核酸の増幅産物量をリアルタイムでモニタリングして、その結果をコンピュータで回帰分析する。増幅産物を標識する方法としては、蛍光標識したプローブを用いる方法(例えば、TaqMan(登録商標)PCR法)と、2本鎖DNAに特異的に結合する試薬を用いるインターカレーター方法とがある。TaqMan(登録商標)PCR法は、5’末端部がクエンチャー物質で、また3’末端部が蛍光色素で修飾されたプローブを用いる。通常は、5’末端部のクエンチャー物質が3’末端部の蛍光色素を抑制しているが、PCRが行われるとTaqポリメラーゼのもつ5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により当該プローブが分解され、それによってクエンチャー物質の抑制が解除されるため蛍光を発するようになる。その蛍光量は、増幅産物の量を反映する。増幅産物が検出限界に到達するときのサイクル数(CT)と初期鋳型量とは逆相関の関係にあることから、リアルタイム測定法ではCTを測定することによって初期鋳型量を定量している。数段階の既知量の鋳型を用いてCTを測定し、検量線を作製すれば、未知試料の初期鋳型量の絶対値を算出することができる。RT-PCRで使用する逆転写酵素は、例えば、M-MLV RTase、ExScript RTase(TaKaRa社)、Super Script II RT(Thermo Fisher Scientific社)等を使用することができる。
リアルタイムPCRの反応条件は、一般に、公知のPCR法を基礎として、増幅する核酸断片の塩基長及び鋳型用核酸の量、並びに使用するプライマーの塩基長及びTm値、使用する核酸ポリメラーゼの至適反応温度及び至適pH等により変動するため、これらの条件に応じて適宜定めればよい。一例として、通常、変性反応を94~95℃で5秒~5分間、アニーリング反応を50~70℃で10秒~1分間、伸長反応を68~72℃で30秒~3分間行い、これを1サイクルとして15~40サイクルほど繰り返して伸長反応を行うことができる。前記メーカー市販のキットを使用する場合には、原則としてキットに添付のプロトコルに従って行えばよい。
リアルタイムPCRで用いられる核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、特に熱耐性DNAポリメラーゼである。このような核酸ポリメラーゼは、様々な種類のものが市販されており、それらを利用することもできる。例えば、前記Applied Biosystems TaqMan MicroRNA Assays Kit(Thermo Fisher Scientific社)に添付のTaq DNAポリメラーゼが挙げられる。特にこのような市販のキットには、添付のDNAポリメラーゼの活性に最適化されたバッファ等が添付されているので有用である。
1-4.判定方法
本発明の筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展リスクを判定する方法は、上記のようにして測定したマーカー遺伝子の発現レベルをもとに、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または進展のリスクを判定する。
ここで、本発明の検出方法の一実施の形態は、測定工程において測定されたマーカー遺伝子の発現レベルと、筋層非浸潤性膀胱がんに罹患した患者であって、(i)筋層非浸潤性膀胱がんを再発した患者(膀胱がん再発患者:筋層浸潤性膀胱がんへの進展の有無を問わない)、(ii)筋層非浸潤性膀胱がんの再発が認められていない患者(膀胱がん非再発患者)、(iii)筋層非浸潤性膀胱がんを再発し、かつ、筋層浸潤性膀胱がんへの進展が認めれた患者(膀胱がん再発・進展患者)、(iv)筋層非浸潤性膀胱がんを再発したが筋層浸潤性膀胱がんへの進展が認めれていない患者(膀胱がん再発・非進展患者)、または、健常者由来の試料における対応するマーカー遺伝子の発現レベルとを比較する工程を含み、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展リスクを判定する。筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定は同時に行ってもよいし、別々に行うこともできる。ここで、マーカー遺伝子の発現レベルの比較は、単独のマーカー遺伝子の発現レベル同士の比較に加え、二以上のマーカー遺伝子の発現レベルより得られる発現プロファイル同士の比較も含まれる。
被検試料に対して比較対象となる、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料のマーカー遺伝子の発現レベルまたはマーカー遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現プロファイルは、予め測定したものを用いてもよいし、または、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料についてマーカー遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現レベルを測定したものを用いても良い。
よって、本発明の検出方法は、一実施の形態において、健常者、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者由来の試料において、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または進展リスクを判定するためのマーカー遺伝子セットに含まれる少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定する工程をさらに含む。この工程により得られた発現レベルまたは発現プロファイル(以下、「発現レベル等)という)と被検試料の発現レベル等とを比較することができる。検出対象である膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料は、1個体由来の試料でもよいし、2個体以上の試料を含んでいてもよい。由来する個体の数が多いほど、試料の個体差を平均化でき、検出の精度が高まるので好ましい。
ここで、測定工程において得られたマーカー遺伝子の発現レベル等と、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料における対応するマーカー遺伝子の発現レベル等とを比較する工程は、例えば、被検試料が、筋層非浸潤性膀胱がん患者の中で再発または進展が認められた患者由来の試料における対応するマーカー遺伝子の発現レベル等と同等の発現レベル等を有する場合に再発または進展リスクが高いと評価するか、または、再発または進展が認められた患者由来の試料における対応するマーカー遺伝子の発現レベル等と異なる遺伝子の発現レベル等を有する場合に再発または進展のリスクが低いと評価することができる。また例えば、本発明の判定方法により筋層非浸潤性膀胱がんの再発のリスクが高いと判定された患者において、さらに本発明の判定方法を用いて筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを別途判定することもできる。この場合、膀胱がん再発・進展患者由来の試料における対応するマーカー遺伝子の発現レベル等と比較することが好ましい。
ここで、「同等の遺伝子の発現レベル等を有する」とは、マーカー遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現レベル等が同じであるかまたは類似していることをいう。また、「異なる遺伝子の発現レベル等を有する」とは、遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現プロファイルが類似していないことをいう。
遺伝子セットにおける各遺伝子の発現レベル等が同等であるか異なっているかについて判断する具体的な手法は、公知の方法を採用することができる。以下に限定されないが、例えば、(i)階層的クラスタリング分析に基づいて被検試料を再発または進展のリスクが高い群および再発または進展のリスクが低い群膀胱がん再発群へ分類する方法、(ii)遺伝子の発現レベル等の比較により評価する方法、(iii)閾値の設定により被検試料が再発または進展のリスクが高いか再発または進展のリスクが低いかを評価する方法などを挙げることができる。
(i)階層的クラスタリング分析
本発明の検出方法は一実施の形態において、被検試料におけるマーカー遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現レベル等をクラスタ分析することにより被検試料の分類が可能となる。クラスタ分析に用いるデータは、マーカー遺伝子セットに含まれる複数の遺伝子に関する発現プロファイルであることが好ましい。
より具体的には、被検試料において測定したマーカー遺伝子セットの発現プロファイルを、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料における対応するマーカー遺伝子セットの発現プロファイルと比較して階層的クラスタ分析を行うことができる。階層的クラスタリング分析により被検試料を提供する被検者が再発または進展のリスクが高いまたは再発または進展のリスクが低いかを判定する際には、階層的クラスタを作成できるように、(a)被検試料におけるマーカー遺伝子セットの発現プロファイル、および、(b)膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料における遺伝子セットの発現プロファイルが必要となる。
階層的クラスタ分析の手法は公知の手法を採用することができる。特に本発明における好ましい実施形態においては、ユークリッド距離による群平均法によるクラスタ分析である。クラスタ分析には公知のソフトウェアを用いることができ、以下に限定されないが、例えば、市販のソフトウェアとしてExpressionView Pro software(MicroDiagnostic, Tokyo, Japan)を用いることができる。
階層的クラスタ分析を行うことで、例えば、筋層非浸潤性膀胱がんの中で再発または進展のリスクが高い患者由来に属するクラスタと、再発および進展のリスクが低い患者由来に属するクラスタとからなる階層構造(樹形図)を描くことができる。また別の実施の形態としては、筋層非浸潤性膀胱がんの中で再発および進展のリスクが高い患者由来に属するクラスタと、再発のリスクは高いが進展のリスクは低い患者由来に属するクラスタと、再発および進展のリスクが低い患者由来に属するクラスタとからなる階層構造(樹形図)を描くことができる。これにより、被検試料を提供する被検者が、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定することができる。
(ii)遺伝子の発現レベルの比較により評価する方法
また、一実施の形態においては、被検試料におけるマーカー遺伝子セットに含まれる遺伝子の発現レベル等の合計値と、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料における対応する遺伝子の発現レベル等とを比較することにより、被検者の筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定することができる。
以下に限定されないが、一形態を挙げて説明すると、複数のマーカー遺伝子を対象として発現レベルを測定し、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者におけるマーカー遺伝子セットに含まれる遺伝子の発現レベルの合計値をそれぞれ群散布図として作図して、被検試料におけるマーカー遺伝子セットの遺伝子の発現レベルの合計値がどこにプロットされるかを確認する。プロットされた位置により、被検試料を提供する被検者が筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの可能性が高いか否かを評価することができる。一実施の形態において、プロットした値が、比較対象の発現レベル(もしくは発現レベルの合計値)またはそれらの群散布図における平均値に対して有意差を有しないときに「同等の遺伝子の発現レベル等を有する」と判断することができ、有意差を有するときに「異なる遺伝子の発現レベル等を有する」と判断することができる。
なお、遺伝子の発現レベルの合計値を用いる際、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、KRT5遺伝子については得られた発現レベルの値を反転して用いる。例えば、遺伝子の発現レベルについてマイクロアレイ等の方法により得られた各遺伝子の発現レベルの合計値を利用する際には、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、KRT5遺伝子の発現レベル(例えば、共通リファレンスに対するLog2比)に対して-1を乗じて反転した値を求め、反転した値と他の遺伝子の発現レベルとの合計値を算出する。
(iii)閾値の設定により判定又は分類する方法
一実施の形態においては、被検試料におけるマーカー遺伝子セットの発現レベル等を、所定の閾値と比較することにより再発または進展のリスクが高いまたは低いことを判定することができる。
ここで、「所定の閾値」とは、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料におけるマーカー遺伝子の発現レベル等に基づく所定のカットオフ値をいう。カットオフ値の設定は、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来の試料についてマーカー遺伝子セットに含まれる遺伝子の発現レベルを測定し、各試料について遺伝子の発現レベルを算出する。次いで、得られた遺伝子の発現レベルの値からROC曲線を作成することにより所定のカットオフ値を導くことができる。ROC曲線は例えば、膀胱がん非再発患者における発現レベルと膀胱がん再発患者における発現レベルとに基づいて、健常者における発現レベルと膀胱がん再発患者における発現レベルとに基づいて、または、膀胱がん再発・非進展患者における発現レベルと膀胱がん再発・進展患者における発現レベルとに基づいて作成することができる。カットオフ値を設定することにより、被検試料より得られたマーカー遺伝子セットの発現レベル等が当該カットオフ値を超えるか否かで、筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスク判定することができる。
「ROC曲線(Receiver Operatting Characteristic curve、受信者動作特性曲線)」は、縦軸を真陽性率(TPF: True Position Fraction)、すなわち感度、横軸を偽陽性率(FPF: False Position Fraction)、すなわち(1-特異度)とし、検査結果のどの値を所見ありと判断するかの閾値、つまりカットオフポイント(cutoff point)を媒介変数として変化させてプロットしていくことで作成される。特異度とは、陰性者を正確に陰性と判断する率である。
作成したROC曲線からカットオフ値を設定する方法は、基本的に感度、特異度をともに高める(1に近づくようする)ように設定することができる。そのためには、カットオフ値がROC曲線上で点(0,1)に最も近い点を与える値に設定すればよい。最も好ましい実施の形態においては、膀胱がん非再発患者由来の試料と、膀胱がん再発患者由来の試料とを明確に区別可能なカットオフ値とすることである。
1-5.効果
本態様の筋層非浸潤性膀胱がんの再発または進展リスクを判定する方法によれば、被検者から採取した試料中のマーカー遺伝子の発現レベルを調べることで、その被検者が再発または進展のリスクが高いか否かを判定することができる。正診率の高い本態様の検出方法によって、膀胱がん患者について、薬物治療の方針や膀胱全摘術実施の判断を考慮し、対応できる利点がある。
例えば、再発または進展のリスクが高いと判定された被検者は抗がん剤やBCGを用いた薬物治療や膀胱全摘術実施の方針を決定することができる。
2.筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定するためのキット
2-1.概要
本発明の別の態様は、筋層非浸潤性膀胱がん患者の再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定するための試薬(判定用試薬)である。本態様判定用試薬は、例えば筋層非浸潤性膀胱がんと診断された被検者由来の試料に適用することで、その被検者が再発または進展のリスクが高いか否かを判定することができる。
2-2.構成
本態様の検出キットは、マーカー遺伝子セットを構成するマーカー遺伝子群の発現レベルを測定するための測定手段を含む。遺伝子の発現レベルの測定が転写産物、すなわちmRNA又はcDNAの測定である場合、検出手段はプローブ又はプライマーセットを含む。これらの具体的な構成については、測定工程の欄に記載している。また例えば、マーカー遺伝子セットを構成する4種のマーカー遺伝子群の転写産物を検出する場合、判定用キットは、対応する遺伝子の転写産物を検出可能な4種のプローブ群を含むことができる。
本態様の測定手段が上記のようなプローブの場合、当該測定手段は、各プローブを基板上に固定したDNAマイクロアレイ又はDNAマイクロチップの状態で提供することもできる。各プローブを固定する基板の素材は、限定はしないが、ガラス板、石英板、シリコンウェハー等が通常使用される。基板の大きさは、例えば、3.5mm×5.5mm、18mm×18mm、22mm×75mmなどが挙げられるが、これはプローブのスポット数やそのスポットの大きさなどに応じて様々に設定することができる。プローブは、1スポットあたり通常0.1μg~0.5μgのヌクレオチドが用いられる。ヌクレオチドの固定化方法には、ヌクレオチドの荷電を利用してポリリジン、ポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミン等のポリ陽イオンで表面処理した固相担体に静電結合させる方法や、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などの官能基を導入した固相表面に、アミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入したヌクレオチドを共有結合により結合させる方法が挙げられる。
マーカー遺伝子セットに対するプローブ又はマーカーは、マーカー遺伝子の発現レベルの測定に用いることができれば限定されず、当業者であれば適宜設計することができる。プローブの具体例としては、以下に限定されないが、例えば下記表2に記載のプローブを用いることができる。
2-3.効果
本態様の判定用キットを用いて、被検者に適用することで、当該被検者が筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクが高いか否かを判定することができる。
本発明の検出キットは、マーカー遺伝子の検出に必要な他の試薬、例えば、バッファや二次抗体、検出及び結果判定に用いる説明書を含んでいてもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明者らは、発現レベルが筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性進展のリスクと相関する21種のマーカー遺伝子セットを同定した。以下の実施例では、当該マーカー遺伝子を用いて筋層非浸潤性膀胱がん患者の再発または進展のリスクを判定した。
(実施例1.RNA 調製)
生体より採取した筋層非浸潤性膀胱がんを含む組織からRNAを調製した。具体的には、採取した組織からISOGEN(Nippon Gene Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いてtotal RNAを抽出した。
ヒト共通リファレンスRNAは、Human Universal Reference RNA Type II(MicroDiagnostic)を使用した。
(実施例2.網羅的遺伝子発現解析)
遺伝子発現プロファイル取得のためのDNAマイクロアレイは、ヒト由来の転写産物に対応する14,400種類の合成DNA(80 mers)(MicroDiagnostic)をカスタムアレイヤーでスライドガラス上にアレイ化したものを用いた。
検体由来の5 μgのtotal RNAからSuperScript II(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)およびCyanine 5-dUTP(Perkin-Elmer Inc.)を用いて標識cDNAを合成した。同様に、ヒト共通リファレンスRNAは5 μgのtotal RNAからSuperScript IIおよびCyanine 3-dUTP(Perkin-Elmer Inc.)を用いて標識cDNAを合成した。
DNAマイクロアレイとのハイブリダイゼーションは、Labeling and Hybridization kit(MicroDiagonostic)を用いて行なった。
DNAマイクロアレイとのハイブリダイゼーション後の蛍光強度は、GenePix 4000B Scanner(Axon Instruments, Inc., Union city, CA, USA)を用いて測定した。また、検体由来Cyanine-5標識cDNAの蛍光強度をヒト共通リファレンスRNA由来Cyanine-3標識cDNAの蛍光強度で除することにより発現比(検体由来Cyanine-5標識cDNAの蛍光強度/ヒト共通リファレンスRNA由来Cyanine-3標識cDNAの蛍光強度)を算出した。さらに、GenePix Pro 3.0 software(Axon Instruments, Inc.)を用いて、算出した発現比にノーマライゼーションファクターを乗じてノーマライズを行なった。次に発現比をLog2に変換し、変換した値を発現レベル値と名付けた。なお、発現比の変換はExcel software(Microsoft, Bellevue, WA, USA)およびMDI gene expression analysis software package(MicroDiagnostic)を用いて行なった。
(実施例3.筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクをモニタリングするための有用なマーカー)
筋層非浸潤性膀胱がん患者に対して行った経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)から採取した組織サンプル(99検体)から14,400遺伝子の遺伝子発現プロファイルを取得した。当該組織サンプルを採取した各筋層非浸潤性膀胱がん患者は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)後の膀胱がんの再発の有無により2つのグループに分けた。99検体のうち69検体は再発が認められていない患者群由来であり、30検体は再発が認められた患者群由来であった。筋層非浸潤性膀胱がん患者については、それぞれ喫煙歴、UTUC既往歴または併発、尿細胞診断、手術前MRIでの筋層浸潤観察、病理診断、深達度、核異型度、grade評価、メイン腫瘍部位、EORTCリスク分類の情報を有していた。grade評価(異型なし、低異型度(low grade)、または、高異型度(high grade)の鑑別)は、構造異型(表層細胞の有無、核の極性、核の分布密度、上皮細胞の成熟傾向、上皮成分の厚さ)および細胞異型(N/C比、核腫大、核の長径/短径比減少、核溝、核縁不整、核クロマチンの増量、核クロマチンパターン、核***像、異型核***像、アポトーシス、胞体の濃染傾向)の観察により評価を行い、特に、中層細胞の各極性が乱れ、細胞異型(核腫大、核の円形化、核クロマチンの増量)がみられたものを高異型と判断した。
次に、再発が認められていない患者群(69検体)のうち7検体以上または再発が認められた群(30検体)のうち3検体以上で発現レベルが検出限界未満でデータ取得ができていない遺伝子を削除した。また、再発が認められていない患者群および再発が認められた群ごとに各遺伝子の発現レベル値の平均値を算出し、両者の差の絶対値が0.5以上となる遺伝子を抽出した。さらに、再発が認められていない群と再発が認められた群の間でスチューデントのt検定による二群比較を行いp値が0.05未満の遺伝子(21遺伝子)(以下「遺伝子セット」という。)を抽出した。
(実施例4.遺伝子セットを用いたクラスタ分析1)
実施例3において得られた21種の遺伝子を含む遺伝子セットの遺伝子発現レベルの測定結果を用いてクラスタ分析を行った。クラスタ分析はExpressionView Pro software(MicroDiagnostic)を用い、ユークリッド距離による群平均法にて行なった。クラスタ分析の結果を図1に記載する。図1に示すように、抽出した21遺伝子の発現プロファイルに基づいて階層的クラスタ分析を行ったところ、主として再発が認められなかった患者が含まれるクラスタ(図1中のヒートマップ図左側のクラスタ)と主として再発が認められた患者が含まれるクラスタ(図1中のヒートマップ図右側のクラスタ)に分類することができた。再発が認められなかった患者群のクラスタには39検体が含まれ、そのうち24検体は再発が認められなかった患者由来の検体であった。特に、再発が認められなかった患者群のクラスタには、筋層浸潤性膀胱がんに進展した例が39検体中1例のみしか含まれておらず、癌死した患者は含まれていなかった。一方で、再発が認められた群および再発が認められなかった群に含まれる各患者におけるMRIでの筋層浸潤観察、膀胱がんの深達度、grade、EORTCリスク分類などの評価は膀胱がんの再発や進展と高い相関を示すものではなかった。
(実施例5.遺伝子セットのスコア化による筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定1)
最初に、遺伝子セットに含まれる各遺伝子の遺伝子発現スコアを下記のように算出した。実施例4において測定した21遺伝子の遺伝子セットに含まれる各遺伝子の発現レベル値について、再発が認められた群の発現レベル値の平均値と再発が認められなかった群の発現レベル値の平均値を比較した場合に、再発が認められた群の平均値よりも再発が認められなかった群の発現レベル値の平均値の方が小さい遺伝子(合計15遺伝子(EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、KRT5遺伝子))については、発現レベル値に-1を乗じたものを「遺伝子発現スコア」とし、残りの6遺伝子についてはそれぞれの発現レベル値を「遺伝子発現スコア」とした。さらに検体ごとに、21遺伝子の遺伝子発現スコア値の総和を「検体スコア値(遺伝子セット)」として算出した。
検体スコア値(遺伝子セット)の大きい順に検体を並べなおしたところ、適切な閾値を設定することで再発または進展が認められなかった患者と再発または進展が認められた患者を区別することができることが判明した(図2)。図2では、例として感度=特異度となるカットオフ値(5.3388)を設定することができた。
さらに再発が認められなかった群の検体スコア値と再発が認められた群の検体スコア値を用いて群散布図を作成し比較した。その結果、再発が認められなかった群の検体スコア値の平均値と、再発が認められた群の検体スコア値の平均値との間でのp値が2.1785E-10と有意差があることが判明した(図3)。さらに二群間のROC曲線を作成したところAUCが0.8681、感度=特異度となるカットオフ値が5.3388、このときの感度および特異度は81.2%であった(図3)。
(実施例6.遺伝子セットを用いたクラスタ分析2)
実施例4では実施例3において抽出した21遺伝子の全てを用いて膀胱がん検体のクラスタ分析を行った。本実施例では、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、KRT5遺伝子、CASP1遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、および、TPM4遺伝子の10遺伝子を用いて膀胱がん検体のクラスタ分析を行った。
用いた遺伝子マーカー以外は実施例4と同様に、実施例3において得られた遺伝子発現レベルの測定結果を用いてクラスタ分析を行った。クラスタ分析はExpressionView Pro software(MicroDiagnostic)を用い、ユークリッド距離による群平均法にて行なった。
クラスタ分析の結果を図4に記載する。図4に示すように、抽出した10遺伝子の発現プロファイルに基づいて階層的クラスタ分析を行ったところ、主として再発が認められなかった患者が含まれるクラスタ(図4中のヒートマップ図の中央から右側に位置するクラスタ(一番右の検体を除く))と主として再発が認められた患者が含まれるクラスタ(図4中のヒートマップ図左側のクラスタ)に分類することができた。再発が認められなかった患者群のクラスタには36検体が含まれ、そのうち34検体は膀胱がん非再発患者由来の検体であった。特に、再発が認められなかった患者群のクラスタには、筋層浸潤性膀胱がんに進展した例が1例も含まれておらず、癌死した患者は含まれていなかった。
アを算出した。
(実施例7.遺伝子セットのスコア化による筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定2)
実施例5では実施例3において抽出した21遺伝子の全てを用いて膀胱がんの再発または進展を判定した。本実施例では、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、KRT5遺伝子、CASP1遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、および、TPM4遺伝子の10遺伝子を用いて膀胱がん検体の治療感受性を判定した。用いた遺伝子マーカー以外は、実施例5と同様にして遺伝子発現スコアおよび検体スコアを算出した。
検体スコア値(遺伝子セット)の大きい順に検体を並べなおしたところ、適切な閾値を設定することで再発が認められなかった患者群と再発が認められた患者群を区別することができることが判明した(図5)。
さらに投薬感受性群の検体スコア値と投薬抵抗性群の検体スコア値を用いて群散布図を作成し比較した。その結果、再発が認められた群の検体スコア値の平均値と、再発が認められなかった群の検体スコア値の平均値との間でのp値が1.088E-09と有意差があることが判明した(図6)。さらに二群間のROC曲線を作成したところAUCが0.8227、感度=特異度となるカットオフ値が3.3022、このときの感度および特異度は75.4%であった(図6)。

Claims (11)

  1. 筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクの判定を補助する方法であって、
    被検者由来の被検試料におけるEIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む、判定を補助する方法。
  2. 請求項1に記載の判定を補助する方法であって、
    前記測定工程が、EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、KRT5遺伝子、CASP1遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、TPM4遺伝子、および、SUM遺伝子の発現レベルを測定する工程である、判定を補助する方法。
  3. 請求項1または2に記載の判定を補助する方法であって、
    前記測定工程において得られた遺伝子の発現レベルと、膀胱がん再発患者、膀胱がん非再発患者、膀胱がん再発・進展患者、膀胱がん再発・非進展患者、または、健常者由来試料における対応する遺伝子の発現レベルとを比較する工程
    をさらに含む、判定を補助する方法。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の判定を補助する方法であって、
    前記測定工程において得られた遺伝子の発現レベルと、膀胱がん再発患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、膀胱がん非再発患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、膀胱がん再発・進展患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、膀胱がん再発・非進展患者由来試料における対応する遺伝子の発現レベル、または、健常者由来試料における対応する遺伝子の発現レベルとをクラスタ分析により比較する工程
    をさらに含む、判定を補助する方法。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の判定を補助する方法であって、
    前記測定工程において得られた前記被検試料における遺伝子の発現レベルを所定の閾値と比較する工程
    をさらに含む、判定を補助する方法。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の判定を補助する方法であって、
    前記被検試料が膀胱がん粘膜由来の細胞である、判定を補助する方法。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の判定を補助する方法であって、
    前記測定工程において、前記遺伝子の発現レベルの測定が前記遺伝子のmRNAの発現量の測定である、判定を補助する方法。
  8. 請求項3~5のいずれか一項に記載の判定を補助する方法であって、
    前記比較工程により得られた結果に基づき膀胱がんの治療方針を決定する工程を含む、判定を補助する方法。
  9. 筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定するためのマーカー遺伝子セットであって、
    EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子を含む、マーカー遺伝子セット。
  10. 筋層非浸潤性膀胱がんの再発または筋層浸潤性膀胱がんへの進展のリスクを判定するためのキットであって、
    EIF3F遺伝子、RPS2遺伝子、RPL27A遺伝子、MTAP遺伝子、ALDH7A1遺伝子、UBE2E2遺伝子、IFI30遺伝子、CLU遺伝子、DYRK2遺伝子、SLC35E3遺伝子、TPM4遺伝子、TUFT1遺伝子、GABRE遺伝子、CASP1遺伝子、CTSD遺伝子、FAT2遺伝子、ADGRF1遺伝子、SAA1遺伝子、IFI6遺伝子、IFI27遺伝子、および、KRT5遺伝子からなる群における少なくとも1つの遺伝子の発現を測定する測定手段を含む、キット。
  11. 請求項10に記載のキットであって、
    前記遺伝子の発現を測定する測定手段が、前記遺伝子に対するプライマー、プローブ、または、それらの標識物からなる群より選択される少なくとも一つの手段である、キット。


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