JP2023140163A - 抗菌性を有する金属酸化物粒子及びその製造方法、抗菌材及びその製造方法、塗料、成形体、繊維、並びに抗菌方法 - Google Patents

抗菌性を有する金属酸化物粒子及びその製造方法、抗菌材及びその製造方法、塗料、成形体、繊維、並びに抗菌方法 Download PDF

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Abstract

【課題】他の抗菌性物質を用いることなく、優れた抗菌効果を発揮できる抗菌性を有する金属酸化物粒子、前記金属酸化物粒子の製造方法及び抗菌方法を提供する。【解決手段】アニオンを含む抗菌性を有する金属酸化物粒子であって、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が1.0atom%以上である、抗菌性を有する金属酸化物粒子。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性を有する金属酸化物粒子及びその製造方法、抗菌材及びその製造方法、塗料、成形体、繊維、並びに抗菌方法に関する。
抗生物質、合成抗菌剤等の抗菌性物質は、人や家畜の疾病治療、農畜水産物の生産性の向上、食品の保存等の目的で、医薬品、動物用医薬品、農薬、飼料添加物、食品添加物等として用いられている。
近年、抗菌性物質、抗ウイルス剤等の薬剤に対して抵抗性を有し、薬剤が効かない又は効きにくくなった薬剤耐性菌、薬剤耐性ウイルス等の薬剤耐性微生物の出現が問題になっている。そのため、微生物の増殖の抑制等を目的とした薬剤の使用が制限される傾向にある。
薬剤を用いることなく抗菌効果を発揮できる材料としては、例えば、銀や銅といった金属微粒子や、酸化チタン等の光触媒、ナノレベルの微小突起を有する構造体が挙げられる。
銀や銅は金属の中でも強い抗菌性を有することが知られており、最も多く利用されている抗菌材料の一つであるが、一方で、高栄養環境下においては十分な効果が発揮できないことがある。
酸化チタン等の光触媒は、抗菌スペクトルの幅が広く、抗菌のほかにも消臭等の有用な機能も有しているが、周囲の有機系材料の劣化を招くことがあり、また暗部では抗菌、消臭等の効果を発揮できない。
微小突起を有する構造体は、近年、インプリント法やインクジェット法等、構造形成方法が広く使用されてきており、様々な材料に抗菌性を付与できるようになってきたが、樹脂の種類、隣接する微小突起間の平均距離、菌の種類等によっては、抗菌効果が発揮されない場合がある。
特許文献1には、カオリンに種々の金属化合物を添加することにより、それらの相乗効果で抗菌性を発現することが記載されている。
特許文献2には、薬剤を使用することなく優れた抗菌性を発現する材料が記載されている。
国際公開第2018/144739号 国際公開第2020/067500号
特許文献1に記載の抗菌方法は、複数種の物質を混合する操作が必要であるため、その他の材料等と混合して使用する際に、分散性や密度等の違いから十分に抗菌効果を発揮できない恐れがある。
特許文献2に記載の抗菌方法は、抗菌性を付与したい材料そのものを陽極酸化処理しなければならないことから、使用可能な用途が限定されてしまう。
本発明は、他の抗菌性物質を用いることなく、優れた抗菌効果を発揮できる抗菌性を有する金属酸化物粒子、前記金属酸化物粒子の製造方法及び抗菌方法等を提供する。
[1] アニオンを含む抗菌性を有する金属酸化物粒子であって、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が1.0atom%以上である、抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[2] 体積平均粒子径が1μmよりも大きく1000μm以下である、[1]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[3] 前記アニオンが、SO 2-、PO 3-、C 2-、C 2-、C 2-及びC 3-のうちの少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[4] 前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が3.0atom%以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[5] 前記金属酸化物粒子に含まれる金属が、バルブ金属である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[6] 前記バルブ金属がアルミニウムである、[5]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[7] 前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記バルブ金属の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が10atom%以上であり、かつ、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が1.0atom%以下である、[5]又は[6]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[8] 前記非バルブ金属が、銀、銅、及びゲルマニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ハロゲン原子がヨウ素原子である、[7]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[9] 前記アニオンに由来する原子がイオウ原子であり、かつ、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、酸素原子の存在比率をX線光電子分光法で測定した値が45atom%以上である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[10] [1]~[9]のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子を製造する方法であって、95質量%以上のバルブ金属を含む金属体を、濃度0.04M以上の多塩基酸を用いて陽極酸化し、前記金属体の表面に金属酸化物層を生成する工程を含む、抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
[11] 前記多塩基酸の濃度が0.3M以上である、[10]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
[12] 前記バルブ金属がアルミニウムであり、前記多塩基酸が濃度3M以上の硫酸である、[10]又は[11]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
[13] 前記硫酸の濃度が6M以上である、[12]に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
[14] 前記金属酸化物粒子の表面には複数の細孔が形成されており、隣接する細孔間の平均間隔が、20~400nmである、[1]~[9]のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
[15] [1]~[9],[14]のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子を含む、抗菌材。
[16] [15]に記載の抗菌材を含有する、塗料。
[17] [15]に記載の抗菌材を含有する、成形体。
[18] [15]に記載の抗菌材を含有する、繊維。
[19] 菌の増殖を抑えたい箇所に、[15]に記載の抗菌材を含有させる、抗菌方法。
[20] [15]に記載の抗菌材を製造する方法であって、金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜を前記金属基材から剥離する工程と、剥離した前記酸化皮膜を粉砕する工程を含む、抗菌材の製造方法。
本発明によれば、他の抗菌性物質を用いることなく、優れた抗菌効果を発揮できる抗菌性を有する金属酸化物粒子、前記金属酸化物粒子の製造方法及び抗菌方法等を提供できる。
本発明の抗菌性を有する金属酸化物粒子の一例を示す概略断面図である。 本発明の抗菌性を有する金属酸化物粒子の一例を示す概略断面図である。 本発明の抗菌性を有する金属酸化物粒子を製造する過程の一例で得られる、2層の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板の概略断面図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
次の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
「菌」とは、細菌、菌類等を意味する。細菌としては、黄色ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、緑膿菌、レンサ球菌等が挙げられる。菌類としては、糸状菌(カビ、キノコ)、酵母等が挙げられる。酵母としては、サッカロマイセス、シゾサッカロマイセス、クリプトコッカス、カンジタ等が挙げられる。
≪抗菌性を有する金属酸化物粒子≫
本発明の第一態様は、アニオンを含む抗菌性を有する金属酸化物粒子である。前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が1.0atom%以上である。
前記抗菌性を有する金属酸化物粒子(以下、単に「抗菌粒子」と称することがある。)は、その表面又は全体に、アニオンを含む金属酸化物部を有する。抗菌粒子に含まれる前記金属酸化物部は、抗菌粒子の内部と表面の全体を構成していてもよいし、抗菌粒子の表面の少なくとも一部又は表面の全体を構成していてもよいし、抗菌粒子の表面の少なくとも一部を覆う金属酸化物層を形成していてもよい(図1参照)。また、抗菌粒子の内部は金属酸化物以外の任意の物質(例えば金属)がコア(粒子本体)を形成し、そのコアを覆うシェル(外殻)に前記金属酸化物部が含まれていてもよい。前記シェルは、その全体が前記金属酸化物部によって形成された単層構造であってもよいし、2層以上の複層構造であってもよい。複層構造のシェルとしては、例えばコア側の第一層が任意の金属層であり、コアと反対の外側の第二層が前記金属酸化物層であるものが挙げられる(図2参照)。前記金属酸化物層は、例えば任意の金属層の陽極酸化処理によって得ることができる。
前記抗菌粒子が含む金属酸化物を構成する金属としては、陽極酸化によって酸化皮膜を形成することが可能な金属、すなわちバルブ金属が好ましい。具体的なバルブ金属としては、例えば、アルミニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、これら金属の2種以上からなる合金、これら金属の1種以上と他の金属との合金等が挙げられる。これらの金属のうち、加工性に優れ、安全性が高く、安価であることから、アルミニウム又はその合金が好ましい。
前記金属酸化物を構成する金属は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
前記抗菌粒子の体積平均粒子径は、1μmよりも大きく1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましい。
体積平均粒子径が前記範囲内であれば、塗料や成形体、繊維に含有させるにあたって良好に分散する。
前記体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 Partica LA-950V2(HORIBA社)を用い、本装置のバッチ式セルユニットに純水15mLと前記抗菌粒子を入れて測定された値である。
前記抗菌粒子の表面をSEM等の任意の拡大観察手段で観察した場合、その表面には複数の細孔が形成されていることが好ましい。細孔が形成されていると抗菌効果が高まる。
隣接する細孔間の平均間隔は、20~400nmが好ましく、25~350nmがより好ましく、30~300nmが更に好ましい。隣接する細孔間の平均間隔が前記範囲の下限値以上であれば、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成しやすい。隣接する細孔間の平均間隔が前記範囲の上限値以下であれば、抗菌効果がより一層高まる。
前記隣接する細孔間の平均間隔は、次の方法で測定された値である。すなわち、前記抗菌粒子が単数又は複数写されたSEM画像から、隣接する5個の細孔の組み合わせを無作為に3組選択し、各組の細孔間の離間距離(最も近接する端同士の距離)を測定し、これら測定値の算術平均として求められる。
前記金属酸化物部に含まれる前記アニオンは、イオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子を有する。前記アニオンは、硫酸イオン(SO 2-)、リン酸イオン(PO 3-)、シュウ酸イオン(C 2-)、マロン酸イオン(C 2-)、リンゴ酸イオン(C 2-)及びクエン酸イオン(C 3-)からなる群から選択される1種以上が好ましい。中でも、強い抗菌性を発揮できる観点から、硫酸イオン又はシュウ酸イオンがより好ましく、硫酸イオンが特に好ましい。
これらアニオンは、前記金属酸化物部に1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
前記抗菌粒子を試料としてX線光電子分光法(XPS)で原子組成を分析することができる。通常、XPSのX線は試料の深部まで到達しないので、得られた原子組成は試料の表面(深さ数nm以内)の原子組成である。前記抗菌粒子の表面に細孔が存在する場合、細孔内部の表面もX線が照射されうる部位であれば分析できる。したがって、前記抗菌粒子の表面をXPSで測定する場合、その表面が細孔内であるか否かは区別しない。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値は、1.0atom%以上であり、抗菌効果を高める観点から、3.0atom%以上が好ましく、5.0atom%以上がより好ましく、10.0atom%以上がより一層好ましく、15.0atom%以上がさらに好ましく、20.0atom%以上が特に好ましく、25.0atom%以上が最も好ましい。この測定値の上限値は特に制限されないが、目安として60.0atom%以下が挙げられる。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対する、所望の原子の存在比率、例えば前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計は、XPSにより、以下の分析条件によって測定することができる。
X線光電子分光分析装置:KRATOS AXIS SUPRA
X線源:単色化Al-Kα、出力15kV 225W(15mA)
取り出し角:45°
測定領域:300μm×700μm
なお、前記測定領域には単一の抗菌粒子が含まれていてもよいし、複数の抗菌粒子が含まれていてもよいが、測定精度を高める観点から測定領域全体に抗菌粒子が存在することが好ましい。
前記イオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子がアニオンに由来するか否かは、XPSにおけるケミカルシフトで判定できる。
例えば、169.8±1.4eVにピークが出れば、アニオン由来のイオウ原子であると判定できる。また、290±1.3eVにピークが出れば、アニオン由来の炭素原子、132.5±0.4eVにピークが出れば、アニオン由来のリン原子と判定できる。
前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の少なくとも1種の原子としては、抗菌性の観点からイオウ原子が好ましい。つまり、前記アニオンは、イオウ原子を含むことが好ましい。この場合、前記抗菌粒子の表面における全原子に対するイオウ原子の存在比率は、XPSで分析したときに、1.0atom%以上が好ましく、2.5atom%以上がより好ましく、3.0atom%以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、目安として10atom%以下が挙げられる。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対する酸素原子の存在比率は、前述のXPSによる分析方法を適用して測定することができる。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対する酸素原子の存在比率は、XPSで分析したときに、45atom%以上が好ましく、55atom%以上がより好ましい。酸素原子の存在比率が上記であれば、後述の陽極酸化反応が正常に進行し、かつ前記アニオンを高濃度に含むことができる。上限は特に限定されないが、目安として60atom%以下が挙げられる。
前記抗菌粒子は、前記金属酸化物部又はそれ以外の部分にバルブ金属以外の金属(非バルブ金属)の1種以上を含んでいてもよい。
非バルブ金属としては、例えば銀、銅、チタン、ゲルマニウムが挙げられる。
前記抗菌粒子は、抗菌効果を高める観点から、前記金属酸化物部又はそれ以外の部分にハロゲン原子の1種以上を含んでいても良い。
前記ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対するバルブ金属、非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率は、前述のXPSによる分析方法を適用して測定することができる。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対するバルブ金属の存在比率の合計はXPSで分析したときに10atom%以上が好ましく、15atom%以上がより好ましく、20atom%以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、目安として40atom%以下が挙げられる。これらの好ましい範囲であると、前記アニオンをより多く前記金属酸化物部に含有し、抗菌効果を高めることができる。
前記抗菌粒子の表面における全原子に対する非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率の合計はXPSで分析したときに1.0atom%以下が好ましい。下限値は特に限定されないが、非バルブ金属及びハロゲン原子の少なくとも一方が存在する場合、0.0atom%よりも大きい。
本態様の抗菌性を有する金属酸化物粒子は、その最表面に銀、銅、酸化チタン、ヨウ素等の抗菌性材料を備えることのみによって抗菌性を呈するものではなく、前記アニオンを金属酸化物部の表面に有する金属酸化物粒子そのものが抗菌性を呈するものである。
≪抗菌性を有する金属酸化物粒子(抗菌粒子)の製造方法≫
本発明の第二態様は、第一態様の抗菌粒子の製造方法である。本態様の実施形態として例えば次の3つの方法が挙げられる。
(1)金属粒子又は表面に金属層を有する粒子を陽極酸化する方法。
(2)厚さ1000μm以下の金属箔を陽極酸化し、これを粉砕する方法。
(3)金属板を陽極酸化して得た酸化皮膜を、基材金属板から剥離し、これを粉砕する方法。
本態様の好ましい実施形態として、例えば、95質量%以上のバルブ金属を含む金属体を、濃度0.04M以上の多塩基酸を用いて陽極酸化し、前記金属体の表面に金属酸化物層を生成する工程を含む、製造方法が挙げられる。
前記金属体の形態としては、粒子、板、箔、蒸着膜、これら以外の成形品等が挙げられる。粒子以外の形態のものに関しては、陽極酸化によって得られた金属酸化物を粉砕することで、体積平均粒子径が前記範囲の金属酸化物粒子を得ることができる。
金属体が95質量%以上のバルブ金属を含むとは、金属体の総質量に対するバルブ金属の含有量が95質量%以上であることを意味する。金属体のバルブ金属の含有量は、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、99.9質量%以上がさらに好ましく、99.99質量%以上が特に好ましい。バルブ金属の含有量が高いほど、陽極酸化の際に異種金属が脱落し、金属体の表面におけるマクロな欠陥の発生を抑制することができる。
多塩基酸は、2個以上のプロトンを供与可能な酸である。多塩基酸としては、例えば、硫酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。これらの中でも、均質な陽極酸化皮膜を形成できる観点から、硫酸、シュウ酸、リン酸が好ましく、硫酸がより好ましい。
前記陽極酸化に用いる多塩基酸は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
多塩基酸の濃度は、強い抗菌性を有する酸化皮膜を形成する観点から、0.04M(mol/L)以上が好ましく、0.3M以上がより好ましく、3M以上がさらに好ましい。上限値の目安は例えば16M以下である。
陽極酸化を行う回数は、1回でもよいし、2回以上行ってもよい。2回以上行うときは、多塩基酸の種類、濃度を変更してもよい。
上述のように金属体を多塩基酸が含まれる電解液に浸漬して陽極酸化すると少なくとも表面に酸化皮膜が形成され、電解液中のアニオンが酸化皮膜に取り込まれる。このとき、多塩基酸の種類と濃度を調整することで、陽極酸化皮膜におけるアニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の存在比率の合計を調整することができる。具体的には、多塩基酸の濃度が高くなるほど、アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子の存在比率の合計は高くなる傾向にある。アニオンは多塩基酸に由来するものであってもよいし、電解液に含まれる多塩基酸以外のアニオンに由来するものであってもよい。
陽極酸化皮膜が金属粒子の表面に形成されていれば、陽極酸化皮膜を備えた粒子が抗菌粒子となる。陽極酸化皮膜が粒子以外の形態である場合には、これを粒子化することによって抗菌粒子とすることができる。
金属体としてバルブ金属を用いると複数の細孔を備えた陽極酸化皮膜を容易に得ることができる。この際、化成電圧を調整することにより細孔同士の間隔の規則性を高めることができる。以下では、バルブ金属の1種であるアルミニウムを用いる場合を例にとり、抗菌粒子の製造方法をより具体的に説明する。
方法(1):
金属粒子又は表面に金属層を有する粒子を陽極酸化して抗菌粒子とする方法である。
金属粒子又は表面に金属層を有する粒子を陽極酸化するにあたっては、直接電流を流しても良いし、電解液中にて陽極と陰極の間に、金属粒子又は表面に金属層を有する粒子を固定し、バイポーラ-電極として作用させることで間接的に電流を流しても良い。
図1は、金属粒子を陽極酸化して得られる金属酸化物粒子(抗菌粒子)10の概略断面図であり、金属粒子1の表面に、陽極酸化皮膜である金属酸化物層2が形成された様子を示す。
図2は、表面に金属層を有する粒子を陽極酸化して得られる金属酸化物粒子(抗菌粒子)20の概略断面図であり、粒子本体3の表面に、酸化されていない金属層1を有し、さらに金属層1の粒子本体3と反対側の表面に、陽極酸化皮膜である金属酸化物層2が形成された様子を示す。
表面に金属層を有する粒子を用いる場合、粒子本体3の材質は問わず、また金属層1の厚みも問わない。粒子本体3の比重を小さくすることで、抗菌粒子20を樹脂等に混ぜる場合の分散性を向上させることができる。また、粒子本体3が透明であり、金属層1が薄ければ、透明な金属酸化物粒子を得ることができる。ただし、粒子本体3が導電性の物質であるか、金属層1が厚い方が、より安定して陽極酸化反応を進行させることができる。
前記金属がアルミニウムである場合、その純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が高いほど、陽極酸化で得られる細孔の規則性が向上する傾向がある。
アルミニウムにおける通常の陽極酸化皮膜は、複数の六角柱状のセルが集合したものであり、セルの中心には、酸化皮膜の表面からアルミニウム基材に向かってセルの軸方向に延びる細孔が形成されている。
陽極酸化は材料とする粒子を電解液に浸漬して行われる。陽極酸化に用いる電解液の種類は特に限定されず、硫酸、シュウ酸、又はリン酸水溶液等が挙げられる。電解液の酸濃度は、安定的に陽極酸化反応が進行する条件であれば特に限定されない。
硫酸水溶液を電解液として用いる場合:
硫酸水溶液の硫酸濃度は通常0.3M(mol/L)以上が好ましく、3M以上がより好ましく、5M以上が更に好ましく、6M以上が特に好ましい。また、硫酸濃度は通常15M以下が好ましく、12M以下がより好ましい。前記範囲内であれば、硫酸濃度が高いほど、より高い抗菌効果を示す陽極酸化皮膜を形成することができる。また前記範囲内であれば、硫酸濃度が低いほど、陽極酸化の際に安定して金属体に通電することができる。
陽極酸化皮膜に複数の細孔を形成し、隣接する細孔間の間隔の規則性を高める観点から、陽極酸化の際の化成電圧は、25~30Vとすることが好ましい。この電圧範囲であると、前記間隔を例えば60~70nm、好ましくは62~67nmとすることができる。
安定して陽極酸化反応が進行する点から、電解液の温度は30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
シュウ酸水溶液を電解液として用いる場合:
シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度は通常0.3~2.4Mが好ましく、0.7M以下がより好ましい。シュウ酸の濃度が前記範囲内であれば、シュウ酸濃度が低いほど、電流値が高くなりすぎず、定電圧を維持できる傾向がある。
陽極酸化皮膜に複数の細孔を形成し、隣接する細孔間の間隔の規則性を高める観点から、陽極酸化の際の化成電圧は、30~100Vが好ましい。この電圧範囲であると、前記間隔を例えば100~200nmとすることができる。
安定して陽極酸化反応が進行する点から、電解液の温度は60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
リン酸水溶液を電解液として用いる場合:
リン酸の濃度は通常0.3~2.5Mが好ましい。リン酸の濃度が2.5M以下であれば、電流値が高くなりすぎず、細孔が壊れることを抑制できる傾向がある。
陽極酸化皮膜に複数の細孔を形成し、隣接する細孔間の間隔の規則性を高める観点から、陽極酸化の際の化成電圧は160~250Vが好ましい。この電圧範囲であると、前記間隔を例えば400~500nmとすることができる。
安定して陽極酸化反応が進行する点から、電解液の温度は60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
方法(2):
厚さ1000μm以下の金属箔を陽極酸化し、形成された酸化皮膜を含む部位を粉砕して抗菌粒子とする方法である。
厚さ1000μm以下の金属箔を陽極酸化するにあたっては、簡便に酸化皮膜を粒子化することが可能となる点から、箔から柔軟性が失われる程度まで、即ち箔の大部分が酸化皮膜となるまで陽極酸化することが好ましい。
前記金属箔がアルミニウムである場合、その純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が高いほど、陽極酸化で得られる細孔の規則性が向上する傾向がある。
陽極酸化は電解液に金属箔を浸漬して行われる。このときの電解液の種類、濃度、化成電圧、電解液の温度は特に限定されないが、前記方法(1)に記載した条件が好ましい。
得られた酸化皮膜の粉砕方法としては特に限定されないが、例えば、ミキサー、ホモジナイザー等による機械的処理や、すり鉢を用いたすりつぶし、ハサミによる切断等の方法が挙げられる。
方法(3):
金属板を陽極酸化して得た酸化皮膜を、金属板の表面から剥離し、酸化皮膜を粉砕して抗菌粒子とする方法である。この方法を実施するにあたっては、以下の4工程を含むことが好ましい。
工程(a)酸に対する溶解性が比較的低い酸化皮膜Aを形成させるための陽極酸化をする工程。
工程(b)酸に対する溶解性が比較的高い酸化皮膜Bを形成させるための陽極酸化をする工程。
工程(c)工程(b)で形成した酸化皮膜Bを溶解し、工程(a)で形成した酸化皮膜Aを金属板の表面から剥離する工程。本工程において、溶解液に対して酸化皮膜Bの方が酸化皮膜Aよりも優先的に溶解する性質を利用する。
工程(d)剥離した酸化皮膜Aを粉砕する工程。
金属板がアルミニウム板である場合、その純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウム板の純度が高いほど、陽極酸化で得られる細孔の規則性が向上する傾向がある。
図3は、方法(3)にて抗菌性を有する金属酸化物粒子を製造する過程で得られる、2層の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板(積層体30)の概略断面図である。図3はアルミニウム板4の両面に酸化皮膜6(酸化皮膜B)が形成され、さらに各酸化皮膜6のアルミニウム板4と反対側の表面に酸化皮膜5(酸化皮膜A)が形成された様子を示す。以下、図3を参照して各工程について詳細に説明する。
工程(a):
本工程では、アルミニウム板4を電解液に浸漬し、アルミニウム板4の表面に酸化皮膜5を形成する。本工程で得られる図3の「酸に対する溶解性が比較的低い酸化皮膜5」は、抗菌性を有する金属酸化物粒子の本体となる皮膜である。酸に対する溶解性は、皮膜内部に含まれるアニオン量が多いほど高くなる。皮膜内部に含まれるアニオン量は、電解液の種類と濃度に影響されるが、先述した方法(1)に記載した条件で陽極酸化すれば、容易に前記皮膜を得ることができる。
前記皮膜の膜厚は、工程(c)で多少溶解することを考えると厚い方が良く、少なくとも1μm以上あることが好ましい。
工程(b):
本工程では、工程(a)で得た酸化皮膜5を有するアルミニウム板4を電解液に浸漬し、酸化皮膜5とアルミニウム板4の表面の間に酸化皮膜6を形成する。本工程で得られる図3の「酸に対する溶解性が比較的高い酸化皮膜6」は、工程(a)で得た皮膜と基材の金属板との間に形成され、次工程で溶解される層である。そのため、工程(a)で得た皮膜よりも相対的に酸に対する溶解性が高く、より多くのアニオンを皮膜内に含むような条件で陽極酸化する必要がある。
上記理由から、図3の「酸に対する溶解性が比較的高い酸化皮膜6」の形成において、工程(b)で使用する電解液の濃度は、工程(a)で使用する電解液の濃度よりも高いことが好ましく、具体的には、12M以上の硫酸水溶液が好ましく、12~15Mの硫酸水溶液がより好ましく、16M以上の硫酸水溶液が更に好ましい。硫酸水溶液の濃度の上限は反応性を考慮すると17M程度である。硫酸水溶液の濃度が、前記範囲内であれば、工程(a)で得た皮膜よりも溶解性の高い酸化皮膜を得ることができる。
工程(b)における化成電圧は、工程(a)で陽極酸化を実施した際の電圧と同じ電圧とすることが好ましい。この条件であると陽極酸化皮膜に形成される細孔の規則性を高めることができる。
また電解液温度は、基本的には0℃とすることで安定して反応を進めることができる。
このときの通電時間は、特に限定されないが、20~40分が好ましい。通電時間が下限値以上であることで、工程(a)で得た皮膜の剥離性が向上し、上限値以下であることで、次工程での溶解時間を短くすることができる。
工程(c):
本工程では、工程(b)で得た図3に示す積層体30を、金属酸化物の溶解性が高い酸溶解液に浸漬し、酸化皮膜6を溶解し、酸化皮膜5をアルミニウム板4から剥離させ、酸化皮膜5を得る。
酸化皮膜6が十分に溶解されると、酸化皮膜5は自然に剥がれ落ちる。
金属酸化物の溶解性が高い酸溶解液としては、特に限定されないが、例えば、クロムリン酸水溶液、リン酸水溶液等が挙げられる。前記酸溶解液は25~35℃程度に加温することで酸化皮膜6の溶解性が増し、本工程の時間を短縮することができる。前記酸溶解液の温度を35℃よりも高い温度に加温し溶解性を高めすぎると、工程(a)で得た酸化皮膜5の溶解速度も上がり、酸化皮膜5の収率の低下につながる。またリン酸水溶液を用いる場合は、基材の金属板も溶解するためリン酸水溶液温度及び積層体30の浸漬時間に対して注意が必要である。
酸化皮膜6の溶解後に酸化皮膜5がアルミニウム板4から自然に剥がれ落ちない場合には、積層体30を純水で洗浄し、乾かしてから剥離することができる。酸化皮膜5を剥離する方法としては、例えば、粘着テープを貼りつけて剥がす方法が挙げられる。
工程(d):
本工程では、工程(c)で得た酸化皮膜5を粉砕する。前記粉砕を行う方法は特に限定されず、例えば、ミキサー、ホモジナイザー等による機械的処理、すり鉢を用いたすりつぶし、ハサミによる切断が挙げられる。前記粉砕を行うことにより本発明の金属酸化物粒子の一例を得ることができる。
≪抗菌材≫
本発明の第三態様は、第一態様の抗菌性を有する金属酸化物粒子(抗菌粒子)を含む抗菌材である。抗菌材は抗菌粒子のみであってもよいし、抗菌粒子以外の材料を含んでいてもよい。
抗菌粒子以外の材料は、抗菌材の用途に応じて適宜選択される。例えば、抗菌粒子を抗菌材の内部に分散させる分散剤、抗菌粒子を抗菌材の表面又は内部に保持する固定部材等が挙げられる。前記分散剤は液状、ゲル状、固体状のいずれであってもよい。例えば、液状又はゲル状の分散剤に抗菌粒子を含有させることにより、塗料とすることができる。また、例えば、分散剤である合成樹脂に抗菌粒子を練りこみ、所望の成形体を形成することができる。また、固定部材として所望の成形体を用い、その表面又は内部に抗菌粒子を保持、固定若しくは付着させた成形体も挙げられる。また、固定部材として所望の繊維を用い、その表面又は内部に抗菌粒子を保持、固定若しくは付着させた繊維も挙げられる。
[抗菌材の用途]
本発明の抗菌材は、例えば、菌の増殖を抑えたい箇所に設けることができる。
本発明の抗菌材や金属酸化物粒子の用途としては、例えば、塗料、成形体、繊維が挙げられる。それぞれの具体的な内容については、例えば、塗料及び成形体であれば、下記のものが挙げられる。
水処理部材:浄水器、シャワーノズル、配管の内面等。
建材:内装材(壁材、床材、天井材、ドア面材、カウンター等)、水回り、外装材、手すり等。
包装資材:食品包装用フィルム、容器、ボトル等。
家電用部材:タッチパネル、ディスプレイの前面材、加湿器タンク、洗濯機の洗濯槽等。
家具:テーブル、椅子、調理器具等。
車両用部材:内装材、つり革、手すり等。
農業用資材:ビニルハウス、水耕栽培施設、配管等。
医療用部材:人工臓器(デンタルインプラント、人工心臓、人工関節等)、手術器具(メス、ハサミ、鉗子、ピンセット、開創器、カテーテル、ステント、固定用ボルト等)、注射器、聴診器、打診器、検鏡、担架、歯科用器具(デンタルスケーラー、デンタルミラー等)、医療機器(手術台、人工透析器、輸液ポンプ、人工心肺装置、透析液供給装置、成分採血装置、人工呼吸器、X線撮影装置、心電計、超音波診断装置、粒子線治療装置、分析装置、ペースメーカ、補聴器、マッサージ器等)、医療施設(病室、手術室等)等。
また繊維であれば、例えば、下記のものが挙げられる。
衣類:白衣、制服、シャツ、下着、上着、靴下、帽子等。
家庭用品:タオル、靴、鞄、布巾等。
家具:寝具(マットレス、枕、毛布、シーツ、カバー等)、絨毯、カーテン、クッション、ソファ、椅子等。
衛生用品:マスク、オムツ、生理用品、ペットシート等。
本発明の塗料は、塗料に抗菌性を付与できる点から、抗菌材を含有することが好ましい。前記塗料に抗菌剤を含有させる方法としては、例えば、塗料組成物に本発明の金属酸化物粒子を、通常使用される撹拌機で混合する方法を挙げることができる。
本発明の成形体は、成形体に抗菌性を付与できる点から、抗菌材を含有することが好ましい。前記成形体に抗菌剤を含有させる方法としては、例えば、前記成形体の原料となる硬化性組成物に本発明の金属酸化物粒子を、通常使用される撹拌機で混合した後に前記硬化性組成物を硬化させて成形体とすることで、成形体に抗菌剤を含有させる方法を挙げることができる。
本発明の繊維は、繊維に抗菌性を付与できる点から、抗菌材を含有することが好ましい。前記繊維に抗菌剤を含有させる方法としては、例えば、前記繊維を染色するための染料に本発明の金属酸化物粒子を、通常使用される撹拌機で混合した後に前記染料を使用して繊維を染色することで、繊維に抗菌剤を含有させる方法を挙げることができる。
本発明の第三態様の抗菌材の抗菌成分である抗菌粒子は、金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜を金属基材から剥離する工程と、剥離した酸化皮膜を粉砕する工程を含む製造方法によって得られる。具体的には、第二態様で説明した抗菌粒子の製造方法と同様に行うことができる。
≪抗菌方法≫
本発明の第四態様は、菌の増殖を抑えたい箇所に第三態様の抗菌材を含有させる、抗菌方法である。菌の増殖を抑えたい箇所は特に制限されず、菌が存在しうる任意の箇所とすることができる。前記箇所に抗菌材を含有させる方法は特に制限されず、前記箇所の内部に抗菌材を配置してもよいし、前記箇所の表面に抗菌材を配置してもよい。前記箇所に含有させる抗菌材の量は、抗菌材の形態に応じて適宜設定される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらだけに限定されるものではない。なお、特段の断りがない限り、「%」は、「質量%」を表すものとする。
[実施例1]
前記の方法(3)により、金属酸化物粒子(抗菌粒子)を作製した。
材料の金属体として、純度99.99%のアルミニウム板を使用した。
工程(a):
0℃に冷却した12M硫酸水溶液中に、陰極板として直流電源の陰極に接続したアルミニウム板を浸漬した。
続いて陽極酸化する材料として別のアルミニウム板を直流電源の陽極に接続し、陰極板に対向させて浸漬した。
その後、電圧を25V一定で通電し、陽極のアルミニウム板上に酸に対する溶解性が比較的低い皮膜を形成した。得られた皮膜の厚みは約20μmであった。
通電後は陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板を硫酸から引き上げ、イオン交換水で十分に洗浄した。
工程(b):
0℃に冷却した16M硫酸水溶液中に、陰極板として直流電源の陰極に接続したアルミニウム板を浸漬した。
続いて工程(a)で得られた、陽極酸化皮膜を表面に有するアルミニウム板を直流電源の陽極に接続し、陰極板に対向させて浸漬した。
その後、電圧を25V一定で30分間通電し、陽極のアルミニウム板と工程(a)で得られた陽極酸化皮膜との間に、酸に対する溶解性が比較的高い酸化皮膜を形成した。
通電後は2層の陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板(図3の積層体30参照)を硫酸から引き上げ、イオン交換水で十分に洗浄した。
工程(c):
30℃に加温した5%リン酸水溶液中に、工程(b)で得た、2層の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を2分間浸漬することで、酸への溶解性が比較的高い酸化皮膜(図3の酸化皮膜6参照)を溶解した。
その後、イオン交換水で十分に洗浄して室温で風乾させ、はがれてきた陽極酸化皮膜(図3の酸化皮膜5参照)を回収した。
工程(d):
回収した皮膜をボトルに入れて水を添加し、ホモジナイザー(T25 digital ULTRA-TURRAX(IKA社))により粉砕した。
前記工程(a)~工程(d)の操作によって得られた金属酸化物粒子の体積平均粒子径は、約100μmであった。また、金属酸化物粒子の隣接する細孔間の平均間隔は、約65nmであった。
ここで、体積平均粒子径はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 Partica LA-950V2(HORIBA社)を用い、本装置のバッチ式セルユニットに純水15mLと前記抗菌粒子を入れて測定した。
ここで、隣接する細孔間の平均間隔はSEM画像から、隣接する5個の細孔の組み合わせを無作為に3組選択し、各組の細孔間の離間距離(最も近接する端同士の距離)を測定し、これら測定値の算術平均として求めた。
[XPS分析]
実施例1で得られた金属酸化物粒子の表面について、以下の条件で得たワイドスペクトルのピーク強度から、各原子の存在比率を測定した。
X線光電子分光分析装置:KRATOS AXIS SUPRA
X線源:単色化Al-Kα、出力15kV 225W(15mA)
取り出し角:45°
測定領域:300μm×700μm
実施例1で得られた金属酸化物粒子の表面の各原子の存在比率を表1に記載した。表中、前記表面のイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計は、3.5+23.8=27.3atom%である。これらの原子のうちイオウ原子は、ケミカルシフトのピークが168.4eVに確認されたことから、アニオンに由来する原子である。
Figure 2023140163000001
[抗菌性試験]
JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)の内容を一部改変し、PETフィルム、アルミニウム板及び実施例1で得られた金属酸化物粒子について抗菌性試験を行った。具体的には、菌液調製の際、菌体を均一に分散する普通ブイヨン培地の濃度を、JIS規格よりも50倍濃い1/10とした。
また、実施例1で得られた金属酸化物粒子は粉体であるため、本試験の実施にあたっては、以下の手順でPETフィルム上に簡易的に固定した。
まず実施例1で得られた金属酸化物粒子50mgを量り取り、65vol%エタノール0.5mLと混合した後、5cm角のPETフィルム上にまんべんなく塗り広げ、これを風乾させることで金属酸化物粒子を表面に有する試験片を得た。
各々2個の試験片から得られた生菌数の平均値は、表2に示す通り、金属酸化物粒子を表面に有さないPETフィルムが1.1×10CFU/cm、陽極酸化を行っていないアルミニウム板が6.1×10CFU/cm、実施例1で得られた金属酸化物粒子を表面に有する試験片が0.63CFU/cm未満の検出下限以下であり、JIS Z 2801:2010(対応国際規格ISO 22196:2007)よりも細菌が増殖しやすい環境下で行った試験であっても、実施例1で得られた金属酸化物粒子を表面に有する試験片は大腸菌の増殖を強く抑制できた。
Figure 2023140163000002
本発明の抗菌性を有する金属酸化物粒子は、他の抗菌性薬剤を用いることなく優れた抗菌性を発揮できることから、医療用部材、食品包装用資材等の分野において好適に利用でき、産業上極めて重要である。
1 金属粒子(図1)、金属層(図2)
2 金属酸化物層
3 粒子本体
4 アルミニウム板
5 酸に対する溶解性が比較的低い酸化皮膜
6 酸に対する溶解性が比較的高い酸化皮膜

Claims (20)

  1. アニオンを含む抗菌性を有する金属酸化物粒子であって、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が1.0atom%以上である、抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  2. 体積平均粒子径が1μmよりも大きく1000μm以下である、請求項1に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  3. 前記アニオンが、SO 2-、PO 3-、C 2-、C 2-、C 2-及びC 3-のうちの少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  4. 前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記アニオンに由来するイオウ原子、リン原子及び炭素原子のうちの少なくとも1種の原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が3.0atom%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  5. 前記金属酸化物粒子に含まれる金属が、バルブ金属である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  6. 前記バルブ金属がアルミニウムである、請求項5に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  7. 前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、前記バルブ金属の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が10atom%以上であり、かつ、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、非バルブ金属及びハロゲン原子の存在比率の合計をX線光電子分光法で測定した値が1.0atom%以下である、請求項5又は6に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  8. 前記非バルブ金属が、銀、銅、及びゲルマニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ハロゲン原子がヨウ素原子である、請求項7に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  9. 前記アニオンに由来する原子がイオウ原子であり、かつ、前記金属酸化物粒子の表面における全原子に対する、酸素原子の存在比率をX線光電子分光法で測定した値が45atom%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子を製造する方法であって、95質量%以上のバルブ金属を含む金属体を、濃度0.04M以上の多塩基酸を用いて陽極酸化し、前記金属体の表面に金属酸化物層を生成する工程を含む、抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
  11. 前記多塩基酸の濃度が0.3M以上である、請求項10に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
  12. 前記バルブ金属がアルミニウムであり、前記多塩基酸が濃度3M以上の硫酸である、請求項10又は11に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
  13. 前記硫酸の濃度が6M以上である、請求項12に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
  14. 前記金属酸化物粒子の表面には複数の細孔が形成されており、隣接する細孔間の平均間隔が、20~400nmである、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子。
  15. 請求項1~9,14のいずれか1項に記載の抗菌性を有する金属酸化物粒子を含む、抗菌材。
  16. 請求項15に記載の抗菌材を含有する、塗料。
  17. 請求項15に記載の抗菌材を含有する、成形体。
  18. 請求項15に記載の抗菌材を含有する、繊維。
  19. 菌の増殖を抑えたい箇所に、請求項15に記載の抗菌材を含有させる、抗菌方法。
  20. 請求項15に記載の抗菌材を製造する方法であって、金属基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜を前記金属基材から剥離する工程と、剥離した前記酸化皮膜を粉砕する工程を含む、抗菌材の製造方法。
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