JP2023125377A - オイル潤滑装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】混入したエアを効率的に排出しつつ、圧力漏れによる性能低下を招くことのないベーンポンプを提供する。【解決手段】本発明にかかるベーンポンプ100の代表的な構成は、カムリング110の内部空間に回転可能に配置されたロータ120と、複数のベーン140と、ロータの両側面を挟む2枚のサイドプレート200、300と、サイドプレートに形成された吸入口210および吐出口220と、有するベーンポンプであって、ロータには隣り合うベーンの間においてロータの両側面を貫通する1または複数のエア貯留穴124が形成されていて、2枚のサイドプレートには吸込口の下流側にポンプ室とエア貯留穴を連通させるエア導き溝234、334が形成されていて、エア貯留穴は吐出口と連通することを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、各種機械に冷却油または潤滑油を供給するベーンポンプに関する。
ベーンポンプは、車両駆動用のモータへの冷却油の供給、軸受への潤滑油の供給、および減速機やディファレンシャルギヤ等のギヤへの潤滑油の供給などを行う冷却・潤滑システムの油供給源として用いられている。
ベーンポンプは、カムリングと、カムリングの内部に配置され動力源により回転するロータと、ロータの外周面に放射状に形成された複数のスリットに収容され、カムリングの内周面に当接してリングの内側に複数のポンプ室を形成する隣り合うベーンとを有している。
ベーンポンプは、特許文献1に示されているように、吸入口から作動油を吸入したポンプ室が吐出口に連通したとき、ポンプ室内の圧力が急上昇して作動油に混入した気泡が圧潰し、その衝撃により騒音やエロージョンが発生する問題がある。特許文献1では、ポンプ室(ポンプ室)の圧力を背圧室側に逃がすための流路をベーンに形成する構成が提案されている。特許文献1では、これにより圧龍りをなくし、高い衝撃低減効果を得ることができると述べている。
特許文献2には、ベーン室(ポンプ室)が吐出領域から吸込領域へと遷移する遷移領域にて、ベーン室をベーンポンプの外部に連通するベーン室ドレン通路を形成する構成が提案されている。これにより、ベーン室によって作動流体と共に圧縮されたエアが吸込領域へと運ばれることを抑えられ、吸込領域において作動流体の吸込みが円滑に行われ、ベーンポンプの吸込性能が維持されると述べている。
しかしながらベーンポンプが回転すると、作動油の方が気泡よりも重いことから、遠心力によってポンプ室のカムリング側(外側)に作動油が集まり、ポンプ室のロータ側(内側:ロータ外周面)に気泡が集まる。特許文献1の構成では、流路がベーンに設けられていることから、作動油中のエアが多くなった場合にベーンの開口(前面凹部61)よりも内側に溜まったエアを排出しにくいという問題がある。
特許文献2の構成では、吐出領域から吸込領域へと遷移する遷移領域にて気泡混じりの作動油を排出する構成であるから、吐出時の騒音やエロージョンを解消することはできない。またベーン室ドレン通路から排出された油を導くために追加のドレン配管が必要になるうえ、排出された分を隣の吐出工程のポンプ室から供給されることで、圧力漏れにつながり、容積効率の性能低下を招くという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑み、混入したエアを効率的に排出しつつ、圧力漏れによる性能低下を招くことのないベーンポンプを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるベーンポンプの代表的な構成は、カムリングと、カムリングの内部空間に回転可能に配置され、外周面に複数のスリットを形成されたロータと、カムリングの内周面に当接するように、複数のスリットに進退可能に配置されて複数のポンプ室を形成する隣り合うベーンと、ロータの両側面を挟む2枚のサイドプレートと、サイドプレートに形成された吸入口および吐出口と、有するベーンポンプであって、ロータには隣り合うベーンの間においてロータの両側面を貫通する1または複数のエア貯留穴が形成されていて、2枚のサイドプレートには吸込口の下流側にポンプ室とエア貯留穴を連通させるエア導き溝が形成されていて、エア貯留穴は吐出口と連通することを特徴とする。
さらに2枚のサイドプレートには、吸入口の上流側に、ポンプ室とエア貯留穴を連通させる圧解放溝 が形成されていることが好ましい。
吐出口にはエア貯留穴に連通する拡張部が形成されていて、拡張部は、ポンプ室が吐出口と連通した後にエア貯留穴と連通する位置に形成されていることが好ましい。
本発明によれば、混入したエアを効率的に排出しつつ、圧力漏れによる性能低下を招くことのないベーンポンプを提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は本実施形態にかかるベーンポンプ100の構成を説明する分解斜視図である。図1に示すベーンポンプ100は自動車において要冷却部や要潤滑部への油供給源として用いられるものである。ベーンポンプ100は、内部空間を有するカムリング110と、カムリング110の内部空間に回転可能に配置された筒状のロータ120とを有している。
ロータ120の中心にはシャフト130が挿入され、ロータ120がシャフト130と一体的に周方向に回転できるように結合されている。ロータ120の外周面には、径方向に形成された複数のスリット122が周方向に等間隔に配列されている。それぞれのスリット122には、ベーン140が径方向に進退可能に収容されている。ベーン140は突出することによってカムリング110の内周面に当接して摺動する。
カムリング110には側面視で略楕円形の内部空間112が形成されている。内部空間112は、ロータ120の回転方向の180度ごとにロータ120に近接した部分とロータ120から離間した部分とが連続的に形成されている。内部空間112の軸方向両端は、第1サイドプレート200および第2サイドプレート300によって覆われている。このため、ロータ120が回転するとベーン140が遠心力によってカムリング110の内周面に当接し、隣り合う一対のベーン140、ロータ120の外周面、カムリング110の内周面および第1サイドプレート200および第2サイドプレート300で区切られた複数のポンプ室150が形成される。第1サイドプレート200および第2サイドプレート300には、シャフト130が貫通する孔202、302が形成されている。
図2は各構成要素を説明する図であって、図2(a)は第1サイドプレート200の摺動面を示す正面図、(b)はカムリング110およびロータ120の正面図、(c)は第2サイドプレート300の摺動面を示す背面図である。図2(c)はロータ120が摺動する摺動面を示すために表裏反転して図示していることに留意されたい。
図2(a)に示すように、第1サイドプレート200は円板状部材であり、内部空間の楕円の長軸方向を挟むように2つの吸入口210と2つの吐出口220を有する。2つの吸入口210には、図示しないオイルリザーバに接続された油路がそれぞれ接続されている。2つの吐出口220からは、図示しない油路を介して車両駆動用のモータに冷却油を供給したり、車両内の軸受に潤滑油を供給したり、減速機や車輪のディファレンシャルギヤ等のギヤに潤滑油を供給したりする。
図2(b)および図1に示すように、カムリング110には、吸入口210と対応する位置に吸入溝114が形成されている。吸入溝114は第1サイドプレート200および第2サイドプレート300の両側に形成されているので、合計4つ形成されている。
図2(c)に示すように、第2サイドプレート300は円盤状部材である。第1サイドプレート200の吸入口210と対応する位置に切欠き形状の吸入口310を2つ備えている。また図2(c)に示している摺動面には、第1サイドプレート200の吐出口220と対応する位置に凹部320を2つ備えている。すなわち第2サイドプレート300には吐出口はなく、第1サイドプレート200の吐出口220から作動油が吐出される。
ベーンポンプ100の基本的な動作について説明する。ロータ120はベーン140が吸入口210、310から吐出口220に向かうように回転する。換言すれば、ロータ120の回転方向に対して上流側に吸入口210、310があり、下流側に吐出口220がある。ロータ120が回転すると、吸入口210、310の位置でポンプ室150の容積が増大するにしたがって、吸入口210、310から油が導入される。その後、吐出口220の位置でポンプ室150の容積が減少するにしたがって、吐出口220から油が送出される。
ここで、ロータ120には、隣り合うベーン140の間(ポンプ室150)においてロータ120の両側面を貫通する1または複数のエア貯留穴124が形成されている。図では全てのベーン140の間(全てのポンプ室150)にエア貯留穴124を形成するように示しているが、エア貯留穴124の数は適宜とすることができる。例えば全体で1つだけであったり、180度の位置に2つ配置したり、1つおきに配置してもよい。
すなわちエア貯留穴124はロータ120の側面に開口しているが、ロータ120の側面は第1サイドプレート200または第2サイドプレート300と摺動する面であるから、積極的に作動油が流入することはできない。そこで、第1サイドプレート200においては、ポンプ室150とエア貯留穴124を連通させる圧開放溝232、エア導き溝234が形成されている。吸入口210の上流側に圧開放溝232を形成し、吸入口210の下流側にエア導き溝234を形成している。同様に第2サイドプレート300においては、吸入口310の上流側に圧開放溝332を形成し、吸入口310の下流側にエア導き溝334を形成している。
吐出口220においては、吐出口220の下流側端から内径側に突出し、エア貯留穴124と連通する拡張部222を形成している。同様に凹部320においても、凹部320の下流側端から内径側に突出し、エア貯留穴124と連通する拡張部322を形成している。拡張部222、322は対応する位置(向かい合わせの位置)にある。すなわち拡張部222、322は、ポンプ室150が吐出口220と連通した後に、拡張部222、322とエア貯留穴124が連通する位置に形成されている。なお、単に吐出口220、320を内径側に拡幅してエア貯留穴124と連通する(重複する)ようにしてもよい。
図3はエア貯留穴124および圧開放溝232、332、エア導き溝234、334の作用を説明する図である。図3(a)(c)(e)においてエア貯留穴124および圧開放溝232、332、エア導き溝234、334にハッチングを付しているのは、断面を示す意味ではなく、これらを見やすくするためである。図3(b)(d)(f)においてカムリング110、ロータ120、第1サイドプレート200、第2サイドプレート300に付したハッチングは断面であることを示している。
図3(a)は吸入工程を説明する図であり、図3(b)は図3(a)のP-P断面図である。吸入工程とは、ポンプ室150がカムリング110の内部空間112の楕円の短軸方向から長軸方向までの間にあるときの工程である。
まず、エア貯留穴124の内部は、前段の吐出工程の圧力(吐出圧)となっているため、高めの圧力となっている。ロータ120が図示左方向に回転すると、圧開放溝232、332は吸入口の上流側に形成されているので、ポンプ室150が圧開放溝232、332を介してエア貯留穴124と連通し、続いてポンプ室150と吸入口210が連通する。
そしてポンプ室150の容積が増大していくことにより、圧力が低下して(吸入圧:負圧)、吸入口210から作動油を吸い込む。このとき吸入口210から吸い込んだ作動油に気泡が混入することを想定する。吸入圧はエア貯留穴124の内部の圧力(吐出圧)より低いため、図3(b)に示すようにエア貯留穴124の内部の圧力も低下する。ポンプ室150が圧開放溝232、332を通過すると、ポンプ室150とエア貯留穴124の間の連通は失われる。
図3(c)は圧縮行程を説明する図であり、図3(d)は図3(c)のQ-Q断面図である。圧縮行程とは、ポンプ室150がカムリング110の内部空間112の楕円の長軸方向から短軸方向に向かって、吐出口220にさしかかるまでの間にあるときの工程である。
ロータ120の回転に伴ってポンプ室150が内部空間112の長軸方向を過ぎると、ポンプ室150の容積が縮小し、ポンプ室150内の圧力が上昇する(圧縮圧)。このとき遠心力により、ポンプ室150のカムリング110側(外側)に作動油が集まり、ポンプ室150のロータ120側(内側:ロータ外周面)に気泡が集まっている。そしてポンプ室150がエア導き溝234、334にさしかかると、ポンプ室150とエア貯留穴124がエア導き溝234、334を介して連通する。ポンプ室150は高い圧縮圧であり、エア貯留穴124は低い吸入圧であることから、図3(d)に示すようにロータ120の外周面近傍に対流した気泡混じりの作動油がエア貯留穴124へと流入する。エア貯留穴124の内部は圧縮圧となる。
図3(e)は吐出工程を説明する図であり、図3(f)は図3(e)のS-S断面図である。吐出工程とは、ポンプ室150が吐出口220と連通している間の工程である。
吐出圧は圧縮圧より低い関係にあり、ポンプ室150と吐出口220が連通すると、ポンプ室150の中の作動油が吐出口220から吐出される。このときエア貯留穴124の圧力も圧縮圧となっていたことから、エア貯留穴124の内部の気泡混じりの作動油は図3(f)に示すように圧力差と吐出の流れによって吐出口220から排出される。
上記説明したように、吸入口210から作動油に気泡が混入したとしても、エア貯留穴124にいったん貯留して、吐出口220から吐出することができる。エア貯留穴124にはポンプ室150のロータ120側(ロータ120の外周面)から流入することから、特許文献1と比較すると、ロータ120の外周面に気泡が溜まることがない。したがって、エアを効率的に吐出することができる。また特許文献2と比較すると、追加のドレン配管が不要であり、また吐出後にさらに排出する構成ではないから、圧力漏れによる性能低下を招くことがない。したがって、混入したエアを効率的に排出しつつ、圧力漏れによる性能低下を招くことのないベーンポンプを提供することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、各種機械に冷却油または潤滑油を供給するベーンポンプとして利用することができる。
100…ベーンポンプ、110…カムリング、112…内部空間、114…吸入溝、120…ロータ、122…スリット、124…エア貯留穴、130…シャフト、140…ベーン、150…ポンプ室、200…第1サイドプレート、202…孔、210…吸入口、220…吐出口、222…拡張部、232…圧開放溝、234…エア導き溝、300…第2サイドプレート、302…孔、310…吸入口、320…凹部、322…拡張部、332…圧開放溝、334…エア導き溝
Claims (3)
- カムリングと、
前記カムリングの内部空間に回転可能に配置され、外周面に複数のスリットを形成されたロータと、
前記カムリングの内周面に当接するように、前記複数のスリットに進退可能に配置されて複数のポンプ室を形成する隣り合うベーンと、
前記ロータの両側面を挟む2枚のサイドプレートと、
前記サイドプレートに形成された吸入口および吐出口と、
を有するベーンポンプであって、
前記ロータには前記隣り合うベーンの間において該ロータの両側面を貫通する1または複数のエア貯留穴が形成されていて、
前記2枚のサイドプレートには前記吸込口の下流側に前記ポンプ室と前記エア貯留穴を連通させるエア導き溝が形成されていて、
前記エア貯留穴は前記吐出口と連通することを特徴とするベーンポンプ。 - さらに前記2枚のサイドプレートには、前記吸入口の上流側に、前記ポンプ室と前記エア貯留穴を連通させる圧解放溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
- 前記吐出口には前記エア貯留穴に連通する拡張部が形成されていて、
前記拡張部は、前記ポンプ室が前記吐出口と連通した後に前記エア貯留穴と連通する位置に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベーンポンプ。
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