JP2023118656A - 二相ステンレス鋼および二相ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼および二相ステンレス鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間加工性、延性、耐食性および強度に優れるとともに、C方向の延性が高い二相ステンレス鋼を実現する。【解決手段】本発明の一態様に係る二相ステンレス鋼は、質量%で、C:0.080%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Ni:3~8%、Cr:21~28%、Mo:1~4%、Cu:1.0%以下、N:0.08~0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、DF値が50以上64以下であり、PRE値が30以上であり、オーステナイト相の面積率が45%以上であり、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率が36%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト相およびオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼などに関する。
フェライト相およびオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼は、耐食性に優れるとともに、特に高い強度を有することから、建材、構造材料などに使用されている。例えば、特許文献1および特許文献2に、フェライト相およびオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼が開示されている。
特開2012-126992号公報 特開2020-94266号公報
二相ステンレス鋼は、二相組織であるがゆえに、圧延方向(いわゆる、L方向)と、圧延方向に垂直な方向(いわゆる、C方向)とにおいて組織の異方性があり、C方向の延性に劣り、加工性に課題がある。
本発明の一態様は、耐食性および強度に優れるとともに、C方向の延性が高い二相ステンレス鋼などを実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る二相ステンレス鋼は、フェライト相およびオーステナイト相を含む二相ステンレス鋼であって、質量%で、C:0.080%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Ni:3~8%、Cr:21~28%、Mo:1~4%、Cu:1.0%以下、N:0.08~0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1によって定義されるDF値が50以上64以下であり、下記式2によって定義されるPRE値が30以上であり、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面における、前記オーステナイト相の面積率が45%以上であり、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率が36%以下である。
DF値=7.2×(Cr+0.88Mo+0.78Si)-8.9×(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C+21N)-44.9 ・・・(式1)
PRE値=Cr+3.3Mo+16N ・・・(式2)
(式1および式2における元素名は、当該元素の含有質量%を意味する)。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る二相ステンレス鋼の製造方法は、フェライト相およびオーステナイト相を含み、質量%で、C:0.080%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Ni:3~8%、Cr:21~28%、Mo:1~4%、Cu:1.0%以下、N:0.08~0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1によって定義されるDF値が50以上64以下であり、下記式2によって定義されるPRE値が30以上であり、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面における、前記オーステナイト相の面積率が45%以上である二相ステンレス鋼の製造方法であって、熱延率×DF値≦6200を満足するように熱間圧延を行う熱間圧延工程を含む。
DF値=7.2×(Cr+0.88Mo+0.78Si)-8.9×(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C+21N)-44.9 ・・・(式1)
PRE値=Cr+3.3Mo+16N ・・・(式2)
(式1および式2における元素名は、当該元素の含有質量%を意味する)。
本発明の一態様によれば、熱間加工性、延性、耐食性および強度に優れるとともに、C方向の延性が高い二相ステンレス鋼などを実現することができる。
本発明の一実施形態に係る二相ステンレス鋼の製造方法の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態における二相ステンレス鋼は、フェライト相およびオーステナイト相からなるステンレス鋼である。なお、本明細書において、各成分元素の含有量の単位である「%」は、特に言及がない限り「質量%」を意味する。また、本出願において、「A~B」は、A以上B以下であることを示している。
本発明者らは、鋭意研究により、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面におけるアスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率を制御することにより、圧延方向に垂直かつ圧延面に垂直な方向の延性が高くなるという知見を得て本発明を完成させた。以下に、本発明の一実施形態に係る二相ステンレス鋼について詳細に、説明する。
<二相ステンレス鋼の成分組成>
まず、本実施形態における二相ステンレス鋼を構成する必須元素について説明する。
本発明の一実施形態に係る二相ステンレス鋼は、鋼成分組成として、質量%で、C:0.80%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Ni:3~8%、Cr:21~28%、Mo:1~4%、Cu:1.0%以下、N:0.08~0.30%を含有する。
本発明の一実施形態に係る二相ステンレス鋼は、必要に応じて、質量%で、Sn:0.0030~0.1%、V:0.001~0.20%、B:0.0001~0.01%、Ti:0.001~0.10%、Nb:0.001~0.10%、Co:0.001~0.3%、W:0.001~0.1%、Ce:0.0001~0.01%、Mg:0.001~0.1%、Zr:0.001~0.01%、Ca:0.001~0.01%、Al:0.001~0.10%、O:0.0001~0.007%から選択される1種以上を更に含むことができる。
以下、本実施形態における二相ステンレス鋼に含まれる各元素の含有量の意義について説明する。なお、当該二相ステンレス鋼は、以下に示す各成分以外は、鉄(Fe)、または不可避的に混入する少量の不純物(不可避的不純物)からなる。
(C:0.080%以下)
Cは、ステンレス鋼の耐食性を確保するため、0.080%以下の含有量に制限する。Cが0.080%を超えて含有すると、Cr炭化物が過剰に生成して、耐食性が劣化する。Cr炭化物の生成抑制の観点からは、C含有量は、好ましくは0.05%以下である。C含有量の下限は特に限定しないが、好ましくは0.005%以上である。
(Si:1.00%以下)
Siは、脱酸剤および脱硫剤として作用する元素であるが、Si含有量が1.0%を超えるとσ相の析出が促進される。そのため、Si含有量は、1.00%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。また、脱酸剤および脱硫剤としての効果を得るため、Si含有量は、0.01%以上とすることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。
(Mn:2.0%以下)
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、また、脱酸剤として作用する元素であるが、Mn含有量が、2.0%を超えると耐食性が劣化する。そのため、Mn含有量は、2.0%以下とする。Mn含有量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。また、脱酸剤としての効果を得るため、かつ、ステンレス鋼の組織を二相組織にするため、Mn含有量は、0.01%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすることがより好ましく、1.0%以上とすることがさらに好ましい。
(P:0.1%以下)
Pは、ステンレス鋼中に不可避的に含有される元素である。Pは、加工性および溶接性を劣化させ、また、耐酸化性および耐食性をも劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要があり、P含有量を0.1%以下とする。P含有量は、好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.04%以下である。下限は特に限定しないが、コストの観点から、P含有量は、好ましくは0.005%以上である。
(S:0.01%以下)
Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、熱間加工性を低下させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、S含有量は0.01%以下であり、0.0050%以下とすることが好ましい。熱間加工性の点から、S含有量は低いほど好ましいが、過度な低減は原料および精錬のコストの上昇に繋がるため、S含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。製造性の点から、S含有量のより好ましい範囲は0.0001~0.0020%であり、さらに好ましい範囲は0.0002~0.0010%である。
(Ni:3~8%)
Niは、腐食が生じた際の腐食進展を抑制する効果と、ステンレス鋼の組織を二相組織にするためのオーステナイト安定化元素としての効果とを有する元素である。これらの効果を得るために、Ni含有量は3%以上とする。Ni含有量が3%未満であると、十分な耐食性が得られず、さらに組織がフェライト単相となる。Ni含有量は、好ましくは4.0%以上であり、より好ましくは5.0%以上である。一方で、Ni含有量が8%を超えると、腐食抑制効果が飽和するとともに、組織がオーステナイト単相となる。またNiの使用量が増加してステンレス鋼が高価格となる。そのため、Ni含有量は、8%以下とする。Ni含有量は、好ましくは7.5%以下であり、より好ましくは7.2%以下である。
(Cr:21~28%)
Crは、耐食性および耐酸化性を向上させる元素である。そのため、Cr含有量は、21%以上とする。Cr含有量は、好ましくは23%以上であり、より好ましくは24%以上である。一方、Cr含有量が28%を超えると、σ相の析出量が多くなり、耐食性および熱間製造性が劣化する。そのため、Cr含有量は、28%以下とする。Cr含有量は、好ましくは27%以下であり、より好ましくは26%以下である。
(Mo:1~4%)
Moは、耐食性を向上させる元素である。Moによる耐食性向上効果を安定して得るためには、Mo含有量は、1%以上とする。Mo含有量は、好ましくは2.5%以上である。一方、Moが過剰に存在すると熱間加工時にσ相が析出しやすくなる。そのため、Mo含有量は、4%以下とする。Mo含有量は、好ましくは3.5%以下である。
(Cu:1.0%以下)
Cuは、腐食が生じた際の腐食進展を抑制する効果を有するが、Cuが過剰に存在すると、鋳造時に割れが生じる場合がある。そのため、Cu含有量は、1.0%以下であり、好ましくは0.3%以下である。また、Cuによる腐食進展抑制効果を得るために、Cu含有量は0.1%以上であることが好ましく、0.15%以上であることがより好ましい。
(N:0.08~0.30%)
Nは、耐食性を向上させる元素である。また、Nは、オーステナイト安定化元素としての効果を有する。上記効果を得るために、N含有量は0.08%以上であり、好ましくは0.08%以上であり、より好ましくは0.12%以上である。一方で、Nを過剰に含有すると、耐粒界腐食性および加工性が低下するとともに、耐酸化性および耐食性も低下する。そのため、N含有量は、0.30%以下とする。N含有量は、好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.16%以下である。
本実施形態における二相ステンレス鋼では、上述した元素以外の残部は、Feおよび不純物である。しかしながら、上述した各元素以外の他の元素も、本実施形態の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。なお、ここで言う不純物とは、本実施形態における二相ステンレス鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に係る二相ステンレス鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態における二相ステンレス鋼は、上記以外の元素として、Sn、V、B、Ti、Nb、Co、W、Ce、Mg、Zr、Ca、Al、Oのうち少なくとも1種の元素をさらに含有してもよい。
(Sn:0.0030~0.1%)
Snは、微量の含有で耐食性を向上させるのに有用な元素である。Snによる耐食性向上効果を安定して得るためには、Sn含有量は、0.0030%以上であることが好ましい。Sn含有量は、より好ましくは0.01%以上である。一方、Sn含有量が0.1%を超えるとコスト増が顕在化すると共に加工性も低下することがある。そのため、Sn含有量は、0.1%以下であることが好ましく、0.08%以下であることがより好ましい。
(V:0.001~0.20%)
Vは、耐食性、特に耐すき間腐食性を改善する。Vによる耐食性改善効果を安定して得るためには、V含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましい。一方、Vが過剰に存在すると、加工性を低下させることがあり、また、耐食性向上効果も飽和する。そのため、V含有量は、0.20%以下であることが好ましく、0.15%以下であることがより好ましい。
(B:0.0001~0.01%)
Bは、熱間加工性を改善する元素である。Bによる熱間加工性改善効果を安定して得るためには、B含有量は、0.0001%以上であることが好ましい。一方、Bが過剰に存在すると、かえって熱間加工性が低下する。そのため、B含有量は、0.01%以下であることが好ましく、0.003%以下であることがより好ましい。
(Ti:0.001~0.10%)
Tiは、CおよびNを固定してCr炭化物析出による鋭敏化を防ぎ、耐食性を向上させる元素である。そのため、Ti含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.002%以上であることがより好ましい。一方、Tiを過剰に含有させても効果は飽和する。そのため、Ti含有量は、0.10%以下であることが好ましく、0.01%以下であることがより好ましい。
(Nb:0.001~0.10%)
Nbは、CおよびNを固定してCr炭化物析出による鋭敏化を防ぎ、耐食性を向上させる元素である。そのため、Nb含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.005%以上であることがより好ましい。一方、Nbを過剰に含有させても効果は飽和する。そのため、Nb含有量は、0.10%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。
(Co:0.001~0.3%)
Coは、オーステナイト相の生成を促進し、フェライト相の粗大化を抑制する元素である。Coによる上記効果を安定して得るためには、Co含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましい。一方、Coが過剰に存在すると、二相ステンレス鋼が硬質化することがあるため、Co含有量は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。
(W:0.001~0.1%)
Wは、耐食性、特に耐すき間腐食性を改善する元素である。Wによる耐食性改善効果を安定して得るためには、W含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.005%以上であることがより好ましい。一方、Wが過剰に存在すると、加工性を低下させることがあり、また、耐食性向上効果も飽和する。そのため、W含有量は、0.1%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。
(Ce:0.0001~0.01%)
Ceは、耐高温酸化性を向上させる元素である。Ceによる耐高温酸化性の効果を安定して得るためには、Ce含有量は、0.0001%以上であることが好ましく、0.0005%以上であることがより好ましい。一方、Ceが過剰に存在すると、耐高温酸化性の効果が飽和し、さらに熱延の際に表面欠陥が生じ、製造性が低下することがある。そのため、Ce含有量は、0.01%以下であることが好ましく、0.005%以下であることがより好ましい。
(Mg:0.001~0.1%)
Mgは、熱間加工性を改善する元素である。Mgによる熱間加工性改善効果を安定して得るためには、Mg含有量は、0.001%以上であることが好ましい。一方、Mgが過剰に存在すると、かえって熱間加工性が低下する。そのため、Mg含有量は、0.1%以下であることが好ましく、0.01%以下であることがより好ましい。
(Zr:0.001~0.01%)
Zrは、耐食性を向上させる元素である。Zrによる耐食性向上効果を安定して得るためには、Zr含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.0005%以上であることがより好ましい。一方、Zrが過剰に存在すると、加工性が劣化することがある。そのため、Zr含有量は、好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。
(Ca:0.001~0.01%)
Caは、熱間加工性を改善する元素である。Caによる熱間加工性改善効果を安定して得るためには、Ca含有量は、0.001%以上であることが好ましい。一方、Caが過剰に存在すると、かえって熱間加工性が低下する。そのため、Ca含有量は、0.01%以下であることが好ましく、0.005%以下であることがより好ましい。
(Al:0.001~0.10%)
Alは、不可避的不純物であるが、脱酸効果を有する元素である。Alによる脱酸効果を安定して得るためには、Al含有量は、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましい。一方、Alは、多量に存在すると加工性を劣化させる。そのため、Al含有量は、好ましくは0.10%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
(O:0.0001~0.007%)
Oは、非金属介在物の代表である酸化物を構成する重要な元素であり、過剰な含有は靭性や加工性を阻害する。また粗大なクラスター状酸化物が二相ステンレス鋼に生成すると表面疵の原因となる。このため、O含有量は、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.005%以下である。一方、O含有量の一定量以上の低減は、技術的およびコスト的に困難である。このため、O含有量は0.0001%以上である。
<DF値>
本実施形態における二相ステンレス鋼は、下記式1によって定義されるDF値が50以上64以下である。
DF値=7.2×(Cr+0.88Mo+0.78Si)-8.9×(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C+21N)-44.9 ・・・(式1)
(式1における元素名は、当該元素の含有質量%を意味する)。
DF値は、二相ステンレス鋼に含まれるフェライト相の割合を示す指標である。DF値が50未満の場合、二相ステンレス鋼に含まれるフェライト相の割合が小さくなり、熱間加工性を十分に得られない。一方で、DF値が64を超えると、二相ステンレス鋼に含まれるオーステナイト相の割合が低くなる。二相ステンレス鋼に含まれるオーステナイト相の割合が低くなると、加工硬化が大きくなり、延性が低下してしまう。本実施形態における二相ステンレス鋼は、DF値が50以上64以下となっていることにより、熱間加工性および延性に優れたステンレス鋼となっている。
<PRE値>
本実施形態における二相ステンレス鋼は、下記式2によって定義されるPRE値が30以上である。
PRE値=Cr+3.3Mo+16N ・・・(式2)
(式2における元素名は、当該元素の含有質量%を意味する)。
PRE値は、二相ステンレス鋼における耐食性を示す指標である。本実施形態における二相ステンレス鋼は、PRE値が30以上となっていることにより、耐食性が優れたステンレス鋼となっている。
本実施形態における二相ステンレス鋼は、DF値およびPRE値が上記の範囲になっていることにより、耐久性に優れる。具体的には、JIS Z 2241に準拠して測定される0.2%耐力が550MPa以上となっている。
<オーステナイト相の面積率>
本実施形態における二相ステンレス鋼は、オーステナイト相の面積率(すなわち、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面における二次元で観察した際のフェライト相とオーステナイト相との合計面積に対するオーステナイト相の面積の割合)が45%以上となっている。オーステナイト相の面積率が45%未満であると、加工硬化が大きくなり、延性が低下してしまう。本実施形態における二相ステンレス鋼は、オーステナイト相の面積率が45%以上になっていることにより、延性に優れたステンレス鋼となっている。
<アスペクト比>
本実施形態における二相ステンレス鋼は、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率が36%以下となっている。すなわち、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、扁平な形状なオーステナイト結晶粒の面積比率が低く、円形状に近い形状の層の割合が高くなっている。これにより、圧延方向(いわゆる、L方向)に垂直な方向(いわゆる、C方向)の伸び率が高くなっており、C方向の延性が高くなっている。より詳細には、JIS Z 2242に準拠して測定される、C方向における伸び率が24%以上となっている。
以上のように、本実施形態における二相ステンレス鋼は、上記の成分組成を有し、上記の範囲の、DF値、PRE値およびオーステナイト相の面積率となっていることにより。熱間加工性、耐食性および強度に優れたステンレス鋼となっている。さらに、本実施形態における二相ステンレス鋼は、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率が36%以下となっていることにより、C方向の延性が高いステンレス鋼となっている。
<二相ステンレス鋼の製造方法>
本実施形態における二相ステンレス鋼の製造方法について説明する。図1は、本実施形態における二相ステンレス鋼の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態における二相ステンレス鋼の製造方法は、製鋼工程S1、熱間圧延工程S2、熱間圧延後焼鈍工程S3、熱延板酸洗工程S4、冷間圧延工程S5、冷間圧延後焼鈍工程S6、および冷延板酸洗工程S7を含む。熱間圧延工程S2以外の工程については、製造条件は特段制限されず、公知の方法を適用することができる。
本発明者らは、熱間圧延を行う際に、熱延率(熱間圧延率)を制御することにより、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率を制御することができるという知見を得た。具体的には、熱延率が高い場合(特に、フェライト相の割合が高い場合)、フェライト相の層状化が促進され、アスペクト比が低くなってしまい、C方向の伸び率が圧下してしまう。そのため、本実施形態における熱間圧延工程S2では、熱延率×DF値≦6200を満足するように、熱延率を制御して熱間圧延を行う。これにより、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率を36%以下とすることができる。熱延率の制御は、熱延を行う荷重、および熱延回数などを調整することにより行うことができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の実施例について以下に説明する。本発明の一態様に係る二相ステンレス鋼の物性を評価するために、実施例1~10のステンレス鋼、および、比較例1~7のステンレス鋼を作製した。実施例1~10のステンレス鋼、および、比較例1~7のステンレス鋼の成分組成は、下記表2に示すように、下記の表1のいずれかの成分組成とした。表1における成分No.1~10は、本発明の範囲の成分組成である。また、表1における成分No.11~16は、本発明の範囲外の成分組成であり、本発明の範囲外である数値については、下線を施している。表1に示す各成分の数値は、質量%で表されている。また、表1には、DF値およびPRE値も示している。
実施例1~10のステンレス鋼、および、比較例1~7のステンレス鋼は、以下のようにして作製した。まず、表1に示す成分の鋼を、表2に示す厚みのスラブとなるように、扁平鋳型で溶解してスラブを作製した。その後、1250℃で1時間のソーキング後に、表2に示す熱延材厚みとなるように熱間圧延を施した。次に、1130℃で3分の熱延板焼鈍に供した。その後、厚み1.5mmまで冷間圧延を施した後、180℃で均熱30秒の仕上げ焼鈍を施した。次に、酸洗で酸化スケールを除去することにより、実施例1~10のステンレス鋼、および、比較例1~7のステンレス鋼を作製した。作製した各ステンレス鋼について、「熱延率」および「熱延率×DF値」を表2に示す。熱延率は、熱延前の板厚(すなわち、スラブ厚み)をt0、熱延後の板厚(すなわち、熱延材厚み)をtとした場合に、100-(t/t0)×100として算出した。
<オーステナイト相の面積率>
作製した各ステンレス鋼について、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面におけるオーステナイト相の面積率を以下のように測定した。まず、作製したステンレス鋼を圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面(いわゆる、L断面)において切り出し、当該断面を鏡面研磨した。そして、鏡面研磨した断面に対して、EBSD(Electron BackScatter Diffraction、後方散乱電子回折)測定を行った。EBSD測定は、走査電子顕微鏡で測定ソフトTSL OIM Data Collection7を用いて、サンプル板厚中心部において100μ角をステップサイズ0.3μmで測定した。ただし、測定面積およびステップサイズは上記条件に限定されるものではない。上記EBSD測定で得られたデータについて、解析ソフトTSL OIM Analysis7を用いて相比マップを作成し、FCC構造であるオーステナイト相の面積率を算出した。当該面積率を用いて、オーステナイト相の面積率を算出した。算出したオーステナイト相の面積率を「γ量」として表2に示す。表2に示すように、実施例1~10のステンレス鋼、および、比較例1~5のステンレス鋼は、二相ステンレス鋼であったのに対し、比較例6のステンレス鋼は、オーステナイト相単相であり、比較例7のステンレス鋼は、フェライト相単相であった。
<アスペクト比>
作製した各ステンレス鋼について、圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面におけるアスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率を以下のように測定した。なお、ここで言うアスペクト比とは、(オーステナイト結晶粒における板厚方向長さ)/(オーステナイト結晶粒における圧延方向長さ)である。上記EBSD測定で得られたデータについて、解析ソフトTSL OIM Analysis7を用いて全オーステナイト結晶粒に対してアスペクト比マップを作成し、アスペクト比が0.2未満のオーステナイト結晶粒の面積率を、全測定面積に対する割合(百分率)として算出した。算出した面積率を表2に示す。
<0.2%耐力>
作製した各ステンレス鋼について、強度を評価するために、0.2%耐力を以下のように測定した。まず、作製したステンレス鋼から引張試験片の長手方向が圧延方向に対して垂直方向になるようにJIS13号B片を採取した。採取した試験片に対して、JIS Z 2241に準拠して、引張試験を行った。引張試験は、試験片が降伏する応力まで10MPa/秒、降伏後は25mm/分でクロスヘッドを移動させて行った。引張試験において測定した応力-歪み曲線から0.2%耐力を算出した。算出した0.2%耐力を表2に示す。
<C方向の伸び率>
作製した各ステンレス鋼について、上記の引張試験後の破断した試験片からC方向の伸び率を算出した。算出したC方向の伸び率を表2に示す。
<バーリング加工割れ>
作製した各ステンレス鋼について、バーリング加工割れ試験を以下のように行った。まず、作製したステンレス鋼から100mm角の試験片を採取した。採取した試験片に12mmφで打ち抜きを行った後、JIS Z 2256に準拠して、打ち抜き方向と同じ方向に、打ち抜きを行った箇所に対して40mmφの平底ポンチを5mm/分の速度で押し上げて一カ所でも板厚方向に割れが貫通した時点で押し上げを停止した。初期の穴径D0と穴広げ後の穴径Dから、穴拡げ率=D/D0×100として穴拡げ率を算出した。本バーリング加工割れ試験では、穴拡げ率が45%以上であった場合を〇(良好)、穴拡げ率が45%未満であった場合を×(不良)として評価した。バーリング加工割れ試験の評価結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明の範囲内である実施例1~10のステンレス鋼は、熱間加工性、耐食性、強度およびC方向の延性が良好であった。
これに対して、比較例1~3のステンレス鋼は、C方向の延性が低かった。これは、比較例1~3の二相ステンレス鋼は、熱延率×DF値が6200を超えた条件で熱間圧延が行われたため、フェライト相の層状化が促進されたことが原因であると考えられる。
また、比較例4~5のステンレス鋼は、PRE値が低く、耐食性が低かった。また、比較例6のステンレス鋼は、オーステナイト相単相となり、強度が低かった。比較例7のステンレス鋼は、フェライト相単相となり、強度が低かった。

Claims (7)

  1. フェライト相およびオーステナイト相を含む二相ステンレス鋼であって、
    質量%で、C:0.080%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Ni:3~8%、Cr:21~28%、Mo:1~4%、Cu:1.0%以下、N:0.08~0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    下記式1によって定義されるDF値が50以上64以下であり、
    下記式2によって定義されるPRE値が30以上であり、
    圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面における、前記オーステナイト相の面積率が45%以上であり、
    圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面において、アスペクト比が0.2未満であるオーステナイト結晶粒の面積率が36%以下である、二相ステンレス鋼。
    DF値=7.2×(Cr+0.88Mo+0.78Si)-8.9×(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C+21N)-44.9 ・・・(式1)
    PRE値=Cr+3.3Mo+16N ・・・(式2)
    (式1および式2における元素名は、当該元素の含有質量%を意味する)。
  2. 質量%で、Sn:0.0030~0.1%、V:0.001~0.20%、B:0.0001~0.01%、Ti:0.001~0.10%、Nb:0.001~0.10%、Co:0.001~0.3%、W:0.001~0.1%、Ce:0.0001~0.01%、Mg:0.001~0.1%、Zr:0.001~0.01%、Ca:0.001~0.01%、Al:0.001~0.10%、O:0.0001~0.007%から選択される1種以上を更に含む、請求項1に記載の二相ステンレス鋼。
  3. JIS Z 2241に準拠して測定される0.2%耐力が550MPa以上である、請求項1に記載の二相ステンレス鋼。
  4. JIS Z 2241に準拠して測定される0.2%耐力が550MPa以上である、請求項2に記載の二相ステンレス鋼。
  5. JIS Z 2242に準拠して測定される、圧延方向に垂直な方向における伸び率が24%以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の二相ステンレス鋼。
  6. フェライト相およびオーステナイト相を含み、
    質量%で、C:0.080%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Ni:3~8%、Cr:21~28%、Mo:1~4%、Cu:1.0%以下、N:0.08~0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    下記式1によって定義されるDF値が50以上64以下であり、
    下記式2によって定義されるPRE値が30以上であり、
    圧延方向に平行かつ圧延面に垂直な断面における、前記オーステナイト相の面積率が45%以上である二相ステンレス鋼の製造方法であって、
    熱延率×DF値≦6200を満足するように熱間圧延を行う熱間圧延工程を含む、二相ステンレス鋼の製造方法。
    DF値=7.2×(Cr+0.88Mo+0.78Si)-8.9×(Ni+0.03Mn+0.72Cu+22C+21N)-44.9 ・・・(式1)
    PRE値=Cr+3.3Mo+16N ・・・(式2)
    (式1および式2における元素名は、当該元素の含有質量%を意味する)。
  7. 質量%で、Sn:0.0030~0.1%、V:0.001~0.20%、B:0.0001~0.01%、Ti:0.001~0.10%、Nb:0.001~0.10%、Co:0.001~0.3%、W:0.001~0.1%、Ce:0.0001~0.01%、Mg:0.001~0.1%、Zr:0.001~0.01%、Ca:0.001~0.01%、Al:0.001~0.10%、O:0.0001~0.007%から選択される1種以上を更に含む、請求項6に記載の二相ステンレス鋼の製造方法。
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