JP2023117509A - 窒化物系半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】温度特性に優れた窒化物系半導体発光素子を提供する。【解決手段】窒化物系半導体発光素子100は、N型クラッド層102と、N型クラッド層102の上方に配置されるN側ガイド層103と、N側ガイド層103の上方に配置される活性層104と、活性層104の上方に配置される第一P側ガイド層105と、第一P側ガイド層105の上方に配置される電子障壁層106と、電子障壁層106の上方に配置される第二P側ガイド層107と、第二P側ガイド層107の上方に配置されるP型クラッド層108とを備え、第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーより大きく、P型クラッド層108の平均バンドギャップエネルギーは、電子障壁層106の平均バンドギャップエネルギーより小さい。【選択図】図9

Description

本開示は、窒化物系半導体発光素子に関する。
従来、青色光を出射する窒化物系半導体発光素子が知られているが、より短波長の紫外光を出射する高出力の窒化物系半導体発光素子が求められている(例えば、特許文献1など参照)。例えば、窒化物系半導体発光素子によって、ワット級の紫外レーザ光源を実現できれば、露光用光源、加工用光源などに用いることができる。
特開2014-131019号公報
紫外光を出射する窒化物系半導体発光素子の発光層として、例えば、量子井戸構造を有する活性層が用いられる。このような活性層は、一つ以上のウェル層と、複数のバリア層とを含む。紫外光は、可視光より波長が短い(つまり、エネルギーが大きい)ため、紫外光を出射するウェル層のバンドギャップエネルギーは、可視光を出射するウェル層のバンドギャップエネルギーより大きい。このため、バリア層の伝導帯ポテンシャルエネルギーと、電子量子準位エネルギーとの差が小さくなる。この場合、ウェル層からバリア層を超えてP側ガイド層へ電子が漏れやすくなるため、ウェル層における動作キャリア密度(つまり、窒化物系半導体発光素子の動作時におけるキャリア密度)が高くなる。
例えば、窒化物系半導体発光素子が、電流注入領域であるリッジを有するレーザ素子である場合、動作キャリア密度が高くなるにしたがって、ウェル層の電流注入領域における増幅利得が高くなる。一方、ウェル層の電流注入領域における複素屈折率の実部と虚部との関係(クラマース・クローニッヒの関係に対応)から、ウェル層における増幅利得が高くなるにしたがって、ウェル層の屈折率が低下する。さらに、ウェル層の電流注入領域におけるキャリア密度が高くなるにしたがって、プラズマ効果によりウェル層の電流注入領域における屈折率が低下する。したがって、ウェル層の電流注入領域の屈折率は、ウェル層の電流注入領域の外部の屈折率より低くなり得る。この場合、レーザ素子のリッジを含む導波路を伝搬するレーザ光の導波機構は、屈折率反導波型の利得導波機構となる。このため、レーザ光における、ウェル層の電流注入領域の外部を伝搬する部分の割合が大きくなり、ウェル層における吸収損失が増大する。したがって、レーザ素子の発振しきい電流値が増大し、熱飽和レベルが低下する。つまり、レーザ素子の温度特性が低下する。
本開示は、このような課題を解決するものであり、温度特性に優れた窒化物系半導体発光素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示に係る窒化物系半導体発光素子の一態様は、N型クラッド層と、前記N型クラッド層の上方に配置されるN側ガイド層と、前記N側ガイド層の上方に配置される活性層と、前記活性層の上方に配置される第一P側ガイド層と、前記第一P側ガイド層の上方に配置される電子障壁層と、前記電子障壁層の上方に配置される第二P側ガイド層と、前記第二P側ガイド層の上方に配置されるP型クラッド層とを備え、前記第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、前記第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより大きく、前記P型クラッド層の平均バンドギャップエネルギーは、前記電子障壁層の平均バンドギャップエネルギーより小さい。
本開示によれば、温度特性に優れた窒化物系半導体発光素子を提供できる。
図1は、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の全体構成を示す模式的な平面図である。 図2Aは、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の全体構成を示す模式的な断面図である。 図2Bは、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子が備える活性層の構成を示す模式的な断面図である。 図3は、405nm帯の半導体発光素子のウェル層及びバリア層におけるバンドギャップエネルギー及び屈折率の積層方向における分布を示すグラフである。 図4は、375nm帯の半導体発光素子のウェル層及びバリア層におけるバンドギャップエネルギー及び屈折率の積層方向における分布を示すグラフである。 図5は、375nm帯の半導体発光素子の水平方向における実効屈折率及び利得の分布を示すグラフである。 図6は、従来の紫外半導体発光素子の水平方向におけるファーフィールドパターンを示す図である。 図7は、比較例1に係る半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。 図8は、比較例2に係る半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。 図9は、実施の形態1に係る半導体積層体のバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。 図10は、実施例E01~実施例E03、及び比較例C01~比較例C06の主要構成、及び特性計算結果を示す図である。 図11は、実施例E04~実施例E06、及び比較例C11~比較例C16の主要構成、及び特性計算結果を示す図である。 図12は、比較例C02、比較例C12、及び比較例C21~比較例C26の主要構成、及び特性計算結果を示す図である。 図13は、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の積層方向における位置の座標を示すグラフである。 図14は、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の200mA動作時の動作電圧と、第一P側ガイド層の膜厚との関係を示すグラフである。 図15は、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の導波路損失と、第一P側ガイド層の膜厚との関係を示すグラフである。 図16は、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の実効屈折率差ΔNと、第一P側ガイド層の膜厚との関係を示すグラフである。 図17は、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子の光閉じ込め係数と、第一P側ガイド層の膜厚との関係を示すグラフである。 図18は、実施例E02の半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。 図19は、実施例E07の半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。 図20は、AlGa1-x-yInN層におけるバンドギャップエネルギーと、AlGa1-zN層におけるバンドギャップエネルギーとの関係を示すグラフである。 図21は、実施の形態1に係る基板に半導体積層体を積層した場合に生じる基板及び半導体積層体の反りを示す模式的な側面図である。 図22は、実施例E11の半導体積層体の積層方向における位置とバンドギャップエネルギーとの関係を示すグラフである。 図23は、実施例E11の半導体積層体の積層方向における位置と応力との関係を示すグラフである。 図24は、実施例E11の半導体積層体の積層方向における位置と、積分応力との関係を示すグラフである。 図25は、実施例E12の半導体積層体の積層方向における位置とバンドギャップエネルギーとの関係を示すグラフである。 図26は、実施例E12の半導体積層体の積層方向における位置と応力との関係を示すグラフである。 図27は、実施例E12の半導体積層体の積層方向における位置と、積分応力との関係を示すグラフである。 図28は、実施例E13のウェル層に求められる組成を説明するためのグラフである。 図29は、ウェル層のIn組成比と、GaNに対する格子不整との関係を示すグラフである。 図30は、実施例E14の半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布を模式的に示すグラフである。 図31は、実施例E15の半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布を模式的に示すグラフである。 図32は、実施の形態2に係る窒化物系半導体発光素子の全体構成を示す模式的な断面図である。 図33は、実施の形態3に係る窒化物系半導体発光素子の全体構成を示す模式的な断面図である。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、及び、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子について説明する。
[1-1.全体構成]
まず、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子の全体構成について図1、図2A及び図2Bを用いて説明する。図1及び図2Aは、それぞれ本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の全体構成を示す模式的な平面図及び断面図である。図2Aには、図1のII-II線における断面が示されている。図2Bは、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100が備える活性層104の構成を示す模式的な断面図である。なお、各図には、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、右手系の直交座標系である。窒化物系半導体発光素子100の積層方向は、Z軸方向に平行であり、光(レーザ光)の主な出射方向は、Y軸方向に平行である。
窒化物系半導体発光素子100は、図2Aに示されるように、窒化物系半導体層を含む半導体積層体100Sを備え、半導体積層体100Sの積層方向(つまり、Z軸方向)に垂直な方向の端面100F(図1参照)から光を出射する。本実施の形態では、窒化物系半導体発光素子100は、共振器を形成する二つの端面100F及び100Rを有する半導体レーザ素子である。端面100Fは、レーザ光を出射するフロント端面であり、端面100Rは、端面100Fより反射率が高いリア端面である。また、窒化物系半導体発光素子100は、端面100Fと端面100Rとの間に形成された導波路を有する。本実施の形態では、端面100F及び100Rの反射率は、それぞれ、16%及び95%である。本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の共振器長(つまり、端面100Fと端面100Rと間の距離)は1200μm程度である。窒化物系半導体発光素子100は、例えば、375nm帯にピーク波長を有する紫外光を出射する。なお、窒化物系半導体発光素子100は、375nm帯以外にピーク波長を有する紫外光を出射してもよいし、紫外光以外の波長帯域にピーク波長を有する光を出射してもよい。
図2Aに示されるように、窒化物系半導体発光素子100は、基板101と、半導体積層体100Sと、電流ブロック層110と、P側電極111と、N側電極112とを備える。半導体積層体100Sは、N型クラッド層102と、N側ガイド層103と、活性層104と、第一P側ガイド層105と、電子障壁層106と、第二P側ガイド層107と、P型クラッド層108と、コンタクト層109とを有する。
基板101は、窒化物系半導体発光素子100の基台となる板状部材である。本実施の形態では、基板101は、N型クラッド層102の下方に配置され、N型GaNからなる。より具体的には、基板101は、濃度1×1018cm-3のSiがドープされた厚さ8500nmのGaN基板である。
N型クラッド層102は、基板101の上方に配置されるN型の窒化物系半導体層である。N型クラッド層102は、活性層104より屈折率が小さく、かつ、平均バンドギャップエネルギーが大きい層である。本実施の形態では、N型クラッド層102は、Alを含む。また、N型クラッド層102の平均Al組成比は、P型クラッド層108の平均Al組成比以下である。N型クラッド層102には、不純物として濃度5×1017cm-3のSiがドープされている。
ここで、本開示において、ある層の平均バンドギャップエネルギーとは、その層の積層方向のある位置でのバンドギャップエネルギーの大きさを、その層の積層方向の基板側の界面の位置から基板から遠い側の界面の位置まで積層方向に積分し、その層の膜厚(基板側界面と、基板から遠い側の界面間の距離)で割ったバンドギャップエネルギーの値のことである。
ある層の平均屈折率とは、その層の積層方向のある位置での屈折率の大きさを、その層の積層方向の基板側の界面の位置から基板から遠い側の界面の位置まで積層方向に積分し、その層の膜厚(基板側界面と、基板から遠い側の界面間の距離)で割った屈折率の値のことである。
ある層の平均Al組成比とは、その層の積層方向のある位置でのAl組成比の大きさを、その層の積層方向の基板側の界面の位置から基板から遠い側の界面の位置まで積層方向に積分し、その層の膜厚(基板側界面と、基板から遠い側の界面間の距離)で割ったAl組成比の値のことである。
ある層の平均不純物濃度とは、その層の積層方向のある位置での不純物濃度の大きさを、その層の積層方向の基板側の界面の位置から基板から遠い側の界面の位置まで積層方向に積分し、その層の膜厚(基板側界面と、基板から遠い側の界面間の距離)で割った不純物濃度の値のことである。不純物とは、N型半導体層では、N型の導電型を得るためにドーピングした不純物を指し、P型半導体層では、P型の導電型を得るためにドーピングした不純物を指す。
N側ガイド層103は、N型クラッド層102の上方に配置され、窒化物系半導体からなる光ガイド層である。N側ガイド層103は、N型クラッド層102より屈折率が大きく、バンドギャップエネルギーが小さい。本実施の形態では、N側ガイド層103の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーより大きく、第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーより小さい。N側ガイド層103は、Alを含む。また、N側ガイド層103は、アンドープの窒化物系半導体層である。言い換えると、N側ガイド層103の平均N型不純物濃度は、1×1018cm-3未満である。なお、以下では、N側の各層におけるN型不純物濃度、及び、P側の各層におけるP型不純物濃度を、いずれも単に不純物濃度とも称する。
活性層104は、N側ガイド層103の上方に配置され、窒化物系半導体からなる発光層である。本実施の形態では、活性層104は、量子井戸構造を有し、紫外光を出射する。具体的には、図2Bに示されるように、活性層104は、二つのバリア層104a及び104cと、二つのバリア層104a及び104cの間に配置されるウェル層104bとを含む。なお、活性層104の構成は、これに限定されない。例えば、活性層104は、多重量子井戸構造を有してもよい。具体的には、活性層104は、三つ以上のバリア層と、二つ以上のウェル層とを有してもよい。
バリア層104a及び104cの各々は、N側ガイド層103の上方に配置され、量子井戸構造の障壁として機能する窒化物系半導体層である。バリア層104cは、バリア層104aの上方に配置される。本実施の形態では、バリア層104a及び104cの各々のバンドギャップエネルギーは、ウェル層104bのバンドギャップエネルギー、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギー、及び、N側ガイド層103の平均バンドギャップエネルギーより大きく、電子障壁層106の平均バンドギャップエネルギーより小さい。
ウェル層104bは、バリア層104aの上方に配置され、量子井戸構造の井戸として機能する窒化物系半導体層である。
第一P側ガイド層105は、活性層104の上方に配置され、窒化物系半導体からなる光ガイド層である。第一P側ガイド層105は、P型クラッド層108より屈折率が大きく、バンドギャップエネルギーが小さい。本実施の形態では、第一P側ガイド層105は、Alを含む。第一P側ガイド層105は、アンドープの窒化物系半導体層である。言い換えると、第一P側ガイド層105の平均不純物濃度は、1×1018cm-3未満である。第一P側ガイド層105の膜厚は、二つのバリア層104a及び104cの各々の膜厚より厚い。第一P側ガイド層105の膜厚は、第二P側ガイド層107の膜厚より薄い。また、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーは、バリア層104a及び104cのバンドギャップエネルギーより小さい。
電子障壁層106は、第一P側ガイド層105の上方に配置される窒化物系半導体層である。電子障壁層106のバンドギャップエネルギーは、バリア層104cのバンドギャップエネルギーより大きい。これにより、電子が活性層104からP型クラッド層108へ漏れることを抑制できる。本実施の形態では、電子障壁層106のバンドギャップエネルギーは、P型クラッド層108のバンドギャップエネルギーより大きい。
第二P側ガイド層107は、電子障壁層106の上方に配置され、窒化物系半導体からなる光ガイド層である。第二P側ガイド層107は、P型クラッド層108より屈折率が大きく、バンドギャップエネルギーが小さい。また、第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層105のバンドギャップエネルギーより大きい。本実施の形態では、第二P側ガイド層107は、Alを含む。第二P側ガイド層107には、不純物がドープされている。言い換えると、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度は、1×1018cm-3以上である。
P型クラッド層108は、第二P側ガイド層107の上方に配置され、P型の窒化物系半導体からなるクラッド層である。P型クラッド層108は、活性層104より屈折率が小さく、かつ、平均バンドギャップエネルギーが高い層である。P型クラッド層108の平均バンドギャップエネルギーは、電子障壁層106の平均バンドギャップエネルギーより小さい。本実施の形態では、P型クラッド層108は、Alを含む。P型クラッド層108には、不純物としてMgがドープされている。P型クラッド層108の活性層104に近い側の端部における不純物濃度は、活性層104から遠い側の端部における不純物濃度よりも低い。具体的には、P型クラッド層108は、膜厚450nmのAlGaN層であり、活性層104に近い側に配置される濃度2×1018cm-3のMgがドープされた膜厚150nmのP型AlGaN層と、活性層104から遠い側に配置される濃度1×1019cm-3のMgがドープされた膜厚300nmのP型AlGaN層とを有する。
P型クラッド層108には、リッジ108Rが形成されている。また、P型クラッド層108には、リッジ108Rに沿って配置され、Y軸方向に延びる二つの溝108Tが形成されている。本実施の形態では、リッジ幅Wは、30μm程度である。また、図2Aに示されるように、リッジ108Rの下端部(つまり、溝108Tの底部)と活性層104との間の距離をdpとしている。また、リッジ108Rの下端部と、電子障壁層106との間の距離)をdcとしている。
コンタクト層109は、P型クラッド層108の上方に配置され、P側電極111とオーミック接触する窒化物系半導体層である。本実施の形態では、コンタクト層109は、膜厚60nmのP型GaN層である。コンタクト層109には、不純物として濃度1×1020cm-3のMgがドープされている。
電流ブロック層110は、P型クラッド層108の上方に配置され、活性層104からの光に対して透過性を有する絶縁層である。電流ブロック層110は、P型クラッド層108及びコンタクト層109の上面のうち、リッジ108Rの上面以外の領域に配置される。なお、電流ブロック層110は、リッジ108Rの上面の一部の領域にも配置されていてもよい。例えば、電流ブロック層110は、リッジ108Rの上面の端縁領域に配置されていてもよい。本実施の形態では、電流ブロック層110は、SiO層である。
P側電極111は、コンタクト層109の上方に配置される導電層である。本実施の形態では、P側電極111は、コンタクト層109及び電流ブロック層110の上方に配置される。P側電極111は、例えば、Cr、Ti、Ni、Pd、Pt、Ag及びAuの少なくとも一つで形成された単層膜又は多層膜である。
また、コンタクト層109上のP側電極111の少なくとも一部に波長375nm帯の光に対して屈折率の低いAgを用いることで、導波路を伝搬する光のP側電極111へのしみ出しを小さくすることができるため、P側電極111で発生する導波路損失を低減できる。Agは波長325nm以上1500nm以下の範囲で屈折率が0.5以下となり、波長360nmから波長950nmの範囲で屈折率が0.2以下となる。この場合、P型クラッド層108の膜厚が0.4μm以下であってもP側電極111への導波路を伝搬する光のしみ出しを低減することができるため、窒化物系半導体発光素子100の直列抵抗を低減しつつ、導波路損失の増大を抑制することが可能である。この結果、動作電圧と動作電流の低減を行うことができる。
ここで、導波路を伝搬する光を安定してリッジ108R内に閉じ込めるためには、後述するように、リッジ108Rの内側領域の実効屈折率の方が、外側領域の実効屈折率の値より大きくなるように実効屈折率の差(ΔN)を形成する必要がある。具体的には、リッジ108Rの側壁に屈折率がP型クラッド層108よりも低いSiOを形成し、リッジ108Rの外側領域の実効屈折率を小さくする必要がある。この場合、P型クラッド層108の膜厚が薄くなり過ぎるとリッジ108Rの側壁の厚さ方向にSiOが形成される領域が小さくなるために、リッジ108Rの外側領域のリッジ実効屈折率を低減する効果が小さくなってしまう。このため、P型クラッド層108の膜厚は、0.15μm以上必要である。
N側電極112は、基板101の下方に(つまり、基板101のN型クラッド層102などが配置された主面の反対側の主面に)配置される導電層である。N側電極112は、例えば、Cr、Ti、Ni、Pd、Pt及びAuの少なくとも一つで形成された単層膜又は多層膜である。
窒化物系半導体発光素子100は、以上のような構成を有することにより、図2Aに示されるように、リッジ108Rの内側の部分と、リッジ108Rの外側の部分(溝108T部分)との間に実効屈折率差ΔNが生じる。これにより、活性層104のリッジ108Rの下方の部分で発生した光を水平方向(つまり、X軸方向)に閉じ込めることができる。
[1-2.紫外半導体発光素子の課題]
本開示の「発明が解決しようとする課題」において示した紫外半導体発光素子において生じ得る課題について、図3~図6を用いて詳細に説明する。以下では、図3は、紫外光より波長が長い405nm帯の半導体発光素子のウェル層及びバリア層におけるバンドギャップエネルギー(Eg)及び屈折率の積層方向における分布を示すグラフである。図4は、紫外域である375nm帯の半導体発光素子のウェル層及びバリア層におけるバンドギャップエネルギー(Eg)及び屈折率の積層方向における分布を示すグラフである。図5は、375nm帯の半導体発光素子の水平方向(図1~図2BのX軸方向に対応)における実効屈折率及び利得の分布を示すグラフである。図6は、従来の紫外半導体発光素子の水平方向におけるファーフィールドパターンを示す図である。図6の横軸は水平方向における放射角を示し、縦軸は光の強度を示す。
図3に示されるように、405nm帯の半導体発光素子においては、ウェル層のバンドギャップエネルギーが比較的小さいため、バリア層の伝導帯ポテンシャルエネルギーと電子量子準位エネルギーとの差ΔEcを比較的大きい値(198meV)とすることができる。この場合、電子のフェルミエネルギーEfがバリア層の伝導帯ポテンシャルエネルギーよりも十分小さくなるため、電子が、ウェル層から、バリア層を超えて、P側半導体層へ漏れることを抑制できる。
一方、紫外半導体発光素子においては、図4に示されるように、ウェル層のバンドギャップエネルギーが比較的大きいため、バリア層の伝導帯ポテンシャルエネルギーと電子量子準位エネルギーとの差ΔEcが小さい値(67meV)となる。この場合、電子のフェルミエネルギーEfがバリア層の伝導帯ポテンシャルエネルギーよりも大きくなり得るため、電子が、ウェル層から、バリア層を超えて、P側半導体層へ漏れ易くなる。これに伴い、ウェル層における発光に寄与できないキャリアが多くなるため、ウェル層における動作キャリア密度が高くなる。
このようにウェル層における動作キャリア密度が高くなることで、ウェル層における光の増幅利得は高くなる。一方、ウェル層の電流注入領域における複素屈折率の実部と虚部との関係から、ウェル層における増幅利得が高くなるにしたがって、ウェル層の屈折率が低下する。さらに、ウェル層の電流注入領域におけるキャリア密度が高くなるにしたがって、プラズマ効果によりウェル層の電流注入領域における屈折率が低下する。したがって、ウェル層の電流注入領域の屈折率は、ウェル層の電流注入領域の外部の屈折率より低くなり得る。例えば、半導体発光素子がリッジを有するレーザ素子であり、リッジに電流が注入される場合、図5に示されるように、電流注入領域であるリッジにおける実効屈折率が電流注入領域の外部より低下し得る。
これにより、半導体発光素子のリッジに対応する導波路を伝搬するレーザ光の導波機構は、屈折率反導波型の利得導波機構となる。このため、レーザ光のうち、ウェル層における電流注入領域(リッジの下方に位置する領域)の外部を伝搬する部分の割合が高くなり、半導体発光素子のファーフィールドパターンの裾野部に、図6に示されるような、ピークが生じる。この場合、ウェル層における電流注入領域の外部においては、光が吸収されるため、ウェル層における吸収損失が増大する。したがって、半導体発光素子の発振しきい電流値が増大し、熱飽和レベルが低下する。つまり、レーザ素子の温度特性が低下する。また、半導体発光素子の電流-光出力(IL)特性を示すグラフに、非線形に折れ曲がる部分(いわゆるキンク)が生じ得る。つまり、半導体発光素子の光出力の安定性が低下する。
本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100は、このような紫外半導体発光素子の課題を解決するものである。
[1-3.光強度分布]
本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の積層方向における光強度分布について、比較例と比較しながら図7~図9を用いて説明する。図7及び図8は、それぞれ、比較例1及び比較例2に係る半導体積層体の積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。図9は、本実施の形態に係る半導体積層体100Sのバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。図8及び図9には、それぞれ、比較例2及び本実施の形態に係る半導体積層体の積層方向におけるP型不純物濃度分布も併せて示されている。
図7に示される比較例1に係る半導体積層体は、N型クラッド層102と、N側ガイド層103と、活性層104と、P側ガイド層915と、電子障壁層916と、P型クラッド層108とを有する。比較例1に係る半導体積層体は、P側ガイド層915の構成において、本実施の形態に係る半導体積層体100Sと相違する。比較例1に係る半導体積層体では、N側ガイド層103とP側ガイド層915との組成及び膜厚が等しい。また、電子障壁層916は、P側ガイド層915と、P型クラッド層108との間に配置される。
このような比較例1に係る半導体積層体において、N型クラッド層102と、P型クラッド層108とがAlGaNからなり、かつ、Al組成比が等しい場合、P型クラッド層108の方が、N型クラッド層102より屈折率が大きくなる。これは、P型不純物であるMgのイオン化エネルギーがN型不純物であるSiのイオン化エネルギーよりも大きいため、N型不純物濃度よりもP型不純物濃度を高く設定する必要があり、相対的に深いエネルギー準位を形成するP型層の方が光吸収が大きくなり屈折率が高くなるためと考えられる。したがって、図7に示されるように、光強度分布のピーク位置が、活性層104からP型クラッド層108に近づく向きに偏る。この結果、比較例1に係る半導体積層体においては、活性層104への光閉じ込め係数が小さくなり、動作キャリア密度が増大する。このため、ウェル層104bの屈折率が低下する。
また、比較例1に係る半導体積層体においても、図2Aに示される窒化物系半導体発光素子100と同様に、実効屈折率差ΔNは、リッジ108Rの下端部から活性層104までの距離dpに依存する。比較例1に係る半導体積層体は、第二P側ガイド層107を備えないため、活性層104近傍に垂直方向の光強度分布のピーク位置を位置させるためには、P型クラッド層108よりも屈折率の高いP側ガイド層915の膜厚を厚くする必要がある。このため、比較例1に係る半導体積層体における距離dpは、本実施の形態に係る距離dpより厚くなる。したがって、比較例1に係る半導体積層体の実効屈折率差ΔNは、本実施の形態に係る実効屈折率差ΔNより小さくなる。この結果、比較例1に係る半導体積層体では、動作中におけるレーザ光の横モードの安定性が低下する。
図8に示される比較例2に係る半導体積層体は、N型クラッド層102と、N側ガイド層103と、活性層104と、電子障壁層926と、P側ガイド層925と、P型クラッド層108とを有する。比較例2に係る半導体積層体は、電子障壁層926と、P側ガイド層925との配置において、比較例1に係る半導体積層体と相違する。図8に示されるように、比較例2に係る半導体積層体では、電子障壁層926とP側ガイド層925との積層方向における位置が比較例1に係る半導体積層体における電子障壁層916とP側ガイド層915との積層方向における位置から入れ替えられている。
このような比較例2に係る半導体積層体において、比較例1と比較して、電子障壁層926が、活性層104に近づくため、リッジ108Rの下端部から活性層104までの距離dpが比較例1に係る距離dpより小さくなる。したがって、比較例2に係る半導体積層体の実効屈折率差ΔNは、比較例1に係る実効屈折率差ΔNより大きくなる。この結果、比較例2に係る半導体積層体では、動作中におけるレーザ光の横モードの安定性が、比較例1より高められる。しかしながら、比較例2に係る半導体積層体では、P型不純物濃度が高い電子障壁層926が活性層104に隣接するため、電子障壁層926における光強度が高くなる。P型不純物濃度が高い電子障壁層926においては、フリーキャリア損失が大きいため、比較例2に係る半導体積層体では、導波路損失が比較例1より大きくなる。
本実施の形態に係る半導体積層体100Sは、図9に示されるように、活性層104と、電子障壁層106との間に、バンドギャップエネルギーが小さい(つまり、屈折率が大きい)第一P側ガイド層105を備える。さらに、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーは第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーよりも小さく、平均屈折率は第一P側ガイド層105のほうが、第二P側ガイド層107よりも大きくなる。これにより、本実施の形態に係る半導体積層体100Sでは、比較例1及び比較例2に係る半導体積層体より、光強度分布のピーク位置を活性層104に近づけることができる。また、第一P側ガイド層105の平均不純物濃度が1×1018cm-3未満、具体的には7×1017cm-3の窒化物系半導体層であるため(図9参照)、第一P側ガイド層105におけるフリーキャリア損失を低減できる。したがって、本実施の形態では、積層方向における光強度分布において、活性層104近傍のアンドープ領域と低不純物濃度である第一P側ガイド層105に存在する光分布の割合が大きくなるためフリーキャリア損失が小さくなり、導波路損失を低減できる。これにより、発振しきい電流値、及び熱飽和レベルを低減できる。つまり、温度特性に優れ、スロープ効率が高い窒化物系半導体発光素子100を実現できる。これにより、窒化物系半導体発光素子100において、高温高出力動作が可能となる。図9には、第一P側ガイド層105の不純物濃度が積層方向に対して一定である場合を示しているが、活性層104から積層方向に離れるに従って、不純物濃度が単調増加しても良い。この場合、第一P側ガイド層105において、光強度が大きい活性層104に近い領域の不純物濃度を、活性層104から遠い領域の不純物濃度に対して相対的に低くできるため、窒化物系半導体発光素子100の直列抵抗の増大を抑制しつつ、フリーキャリア損失を低減することができる。
なお、本実施の形態に係る半導体積層体100Sの第二P側ガイド層107には、不純物がドープされている。これにより、半導体積層体100Sの電気抵抗を低減できるため、窒化物系半導体発光素子100の動作電圧を低減できる。また、第二P側ガイド層107は、第一P側ガイド層105より、活性層104から離れているため、垂直方向の光分布強度が小さくなり、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を第一P側ガイド層105の平均不純物濃度より高めても、第二P側ガイド層107におけるフリーキャリア損失を抑制できる。
また、本実施の形態では、第一P側ガイド層105の膜厚を、第二P側ガイド層107の膜厚より薄くすることで、距離dpを低減している。したがって、本実施の形態では、実効屈折率差ΔNを増大させることができる。したがって、窒化物系半導体発光素子100の導波路への光閉じ込め係数を増大できる。これにより、窒化物系半導体発光素子100においては、レーザ光の水平横モードを導波路へ安定的に閉じ込めることができるため、電流-光出力特性におけるキンクの発生を抑制できる。さらに、本実施の形態では、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107との合計膜厚は、N側ガイド層103の膜厚以上である。これにより、距離dcをさらに増大させることが可能となるため、実効屈折率差ΔN及び光閉じ込め係数をより一層増大させることが可能となる。
また、本実施の形態では、第二P側ガイド層107の平均Al組成比を、第一P側ガイド層105の平均Al組成比より大きくすることで、第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーを第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーより大きくしている。これにより、平均屈折率は第一P側ガイド層105の方が、第二P側ガイド層107よりも大きくできることから、光強度分布のピーク位置を活性層104により一層近づけることができる。したがって、本実施の形態では、窒化物系半導体発光素子100の導波路損失を低減できる。
[1-4.実施例]
本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の実施例について、図10~図13などを用いて、比較例と比較しながら説明する。図10は、実施例E01~実施例E03、及び比較例C01~比較例C06の主要構成、及び特性計算結果を示す図である。図11は、実施例E04~実施例E06、及び比較例C11~比較例C16の主要構成、及び特性計算結果を示す図である。図12は、比較例C02、比較例C12、及び比較例C21~比較例C26の主要構成、及び特性計算結果を示す図である。なお、図10~図12には、パラメータと特性との対比を容易化するために、同一の比較例のデータが複数個所に記載されている(例えば、比較例C02など)。図13は、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の積層方向における位置の座標を示すグラフである。図13に示されるように、活性層104のウェル層104bのN側の端面、つまり、ウェル層104bのN側ガイド層103に近い方の端面の積層方向における位置の座標をゼロとし、下方(N側ガイド層103に向かう向き)を座標の負の向きとし、上方(第一P側ガイド層105に向かう向き)を座標の正の向きとする。
[1-4-1.実施例E01]
実施例E01について説明する。実施例E01の窒化物系半導体発光素子100は以下のような構成を有する(図10参照)。N型クラッド層102は、濃度5×1017cm-3のSiがドープされた膜厚800nmのN型Al0.065Ga0.935N層である。N側ガイド層103は、膜厚180nmのアンドープAl0.03Ga0.97N層である。バリア層104a及び104cの各々は、膜厚10nmのアンドープAl0.04Ga0.96N層である。ウェル層104bは、膜厚17.5nmのアンドープIn0.01Ga0.99N層である。第一P側ガイド層105は、膜厚56nmのアンドープAl0.02Ga0.98N層である。電子障壁層106は、濃度1×1019cm-3のMgがドープされた膜厚5nmのP型Al0.36Ga0.64N層である。第二P側ガイド層107は、濃度1×1018cm-3のMgがドープされた膜厚124nmのP型Al0.04Ga0.96N層である。P型クラッド層108は、膜厚450nmのP型Al0.065Ga0.935N層である。P型クラッド層108は、P型Al0.04Ga0.96N層である。P型クラッド層108は、活性層104に近い側に配置される濃度2×1018cm-3のMgがドープされた膜厚150nmのP型Al0.065Ga0.935N層と、活性層104から遠い側に配置される濃度1×1019cm-3のMgがドープされた膜厚300nmのP型Al0.065Ga0.935N層とを有する。コンタクト層109は、濃度1×1020cm-3のMgがドープされた膜厚100nmのP型GaN層である。
なお、比較例C01~C06の構成のうち図10に示されていない構成は、実施例E01の構成と同じである。例えば、比較例C02及び比較例C06の窒化物系半導体発光素子は、第一P側ガイド層のAl組成比(Xpg1)、及び、第二P側ガイド層のAl組成比(Xpg2)において実施例E01と相違し、その他の構成において一致する。比較例C02においては、第一P側ガイド層と第二P側ガイド層との組成が同じであることから、第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーと等しい。また、比較例C06の窒化物系半導体発光素子においては、第二P側ガイド層のAl組成比が第一P側ガイド層のAl組成比より小さいことから、第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより小さい。
一方、実施例E01に係る窒化物系半導体発光素子100においては、第二P側ガイド層107のAl組成比が第一P側ガイド層105のAl組成比より大きいことから、第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより大きい。図10に示される実施例E01と比較例C02及び比較例C06との特性計算結果を比較すると、実施例E01では、第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーが、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーより大きいことにより(つまり、第一P側ガイド層105の屈折率が第二P側ガイド層107の屈折率より高いことにより)、積層方向における光分布において、活性層104近傍のアンドープ領域と低不純物濃度の第一P側ガイド層105とに存在する光の割合が大きくなるため、光閉じ込め係数を増大し、かつ、導波路損失を低減できることが分かる。
次に、第一P側ガイド層105の膜厚(Tpg1)、及び、第二P側ガイド層107における不純物濃度(Ppg2)について、図14~図17を用いて説明する。図14及び図15は、それぞれ、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の200mA動作時の動作電圧、及び、導波路損失と、第一P側ガイド層105の膜厚との関係を示すグラフである。図14及び図15においては、比較例C01に係る窒化物系半導体発光素子100の第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の合計膜厚を140nmとし、第一P側ガイド層105の膜厚を変化させた場合の動作電圧及び導波路損失が、それぞれ示されている。また、図14及び図15には、それぞれ、第二P側ガイド層107における平均不純物濃度(平均Mg濃度)を1×1017cm-3から5×1018cm-3まで変化させた場合の動作電圧及び導波路損失が示されている。図16及び図17は、それぞれ、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子100の実効屈折率差ΔN及び光閉じ込め係数と、第一P側ガイド層105の膜厚との関係を示すグラフである。
図14に示されるように、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を5×1017cm-3以上とすることで、動作電圧を低減できる。図15に示されるように、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を2×1018cm-3以下とすることで、導波路損失を低減できる。したがって、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を5×1017cm-3以上2×1018cm-3以下とすることで、動作電圧及び導波路損失の両方を低減できる。さらに、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を1×1018cm-3以下とすることで、導波路損失をより一層低減できる。
図14及び図17に示されるように、第一P側ガイド層105の膜厚を厚くするにしたがって、動作電圧が低減され、かつ、光閉じ込め係数が増大する。一方、図16に示されるように、第一P側ガイド層105の膜厚を薄くする(つまり、第二P側ガイド層107の膜厚(Tpg2)を厚くする)にしたがって、実効屈折率差ΔNが増大する。しかしながら、第一P側ガイド層105の膜厚を薄くするとAl組成が高く屈折率の低い電子障壁層106が活性層104に近づくために光閉じ込め係数が低下する。
そこで、実施例E01に示すように、第一P側ガイド層105のAl組成比を第二P側ガイド層107のAl組成比よりも低く設定すること、すなわち、第一P側ガイド層105の屈折率を第二P側ガイド層107に対して相対的高くすることで、光閉じ込め係数を高めることが可能となる。この様な構成を採用することで、比較例C01の構造では、光閉じ込め係数が4.86%であったところ、実施例E01構造では、光閉じ込め係数を5.65%まで高めることができる。
また、実施例E01の構造においても、図14に示されるように、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を5×1017cm-3以上とすることで、動作電圧を低減できる。さらに、図15に示されるように、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を2×1018cm-3以下とすることで、導波路損失を低減できる。したがって、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を5×1017cm-3以上2×1018cm-3以下とすることで、動作電圧及び導波路損失の両方を低減する効果を得ることができる。さらに、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を1×1018cm-3以下とすることで、導波路損失が4.91cm-1と、より一層低減できる。
以上のことから、実施例E01のように、第二P側ガイド層107の膜厚を、第一P側ガイド層105の膜厚より厚くし、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度を5×1017cm-3以上2×1018cm-3以下とすることで、実効屈折率差ΔNの増大、動作電圧の低減、及び、導波路損失の低減を実現できる。
実施例E01に係る構造では、17.67×10-3という1×10-2以上の高い実効屈折率差ΔNを実現できる。これにより、動作キャリア密度増大に伴うウェル層の屈折率低下から屈折率反導波型の利得導波機構が発生し易いという従来の紫外線半導体レーザ素子の課題を合わせて解決できる。電流注入の無い状態における、導波路構造で決まるΔNが1×10-2以上あると、レーザ発振動作中におけるウェル層の動作キャリア密度増大に伴うウェル層屈折率低下により、レーザ発振動作中の実効屈折率差ΔNの低下が生じても、実効屈折率差ΔNが負になることはなく、安定した屈折率導波機構を維持できる。このような1×10-2以上の高い実効屈折率差ΔNが得られるのは、本実施の形態に係る半導体積層体100Sにおいて第一P側ガイド層105と第二P側ガイド層107の間に電子障壁層106を形成した結果、電子障壁層106と活性層104の間の距離dpを低減することができるためである。
[1-4-2.実施例E02]
実施例E02について説明する。実施例E02の窒化物系半導体発光素子100は、N側ガイド層103、第一P側ガイド層105、及び第二P側ガイド層107の膜厚において実施例E01の窒化物系半導体発光素子100と相違する(図10参照)。具体的には、実施例E02のN側ガイド層103の膜厚(Tng)は、140nmであり、第一P側ガイド層105の膜厚(Tpg1)は72nmであり、第二P側ガイド層107の膜厚(Tpg2)は148nmである。このように、実施例E02においては、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の合計膜厚は、N側ガイド層103の膜厚よりも厚い。この構成による効果について、比較例C01~比較例C03を用いて説明する。図10に示されるように比較例C01の窒化物系半導体発光素子においては、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚(Tng)よりも薄い。比較例C02の窒化物系半導体発光素子においては、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚と等しい。比較例C03の窒化物系半導体発光素子においては、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚よりも厚い。図10に示される比較例C01~比較例C03の特性計算結果からわかるように、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚がN側ガイド層の膜厚と比較して厚くなるにしたがって、実効屈折率差ΔNが大きくなる。比較例C03と同様に、実施例E02の窒化物系半導体発光素子100においても、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の合計膜厚は、N側ガイド層103の膜厚より厚いため、実効屈折率差ΔNを増大することができる。
ここで、実施例E02の窒化物系半導体発光素子100の積層方向におけるP型不純物(Mg)濃度の分布例について、図18を用いて説明する。図18は、実施例E02の半導体積層体100Sの積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。図18には、実施例E02の半導体積層体100Sの積層方向におけるP型不純物濃度分布例も併せて示されている。
上述したとおり、第一P側ガイド層105の平均不純物(Mg)濃度は、1.0×1018cm-3未満である。これにより、窒化物系半導体発光素子100の導波路損失の増大を抑制し、かつ、動作電圧を低減できる。また、図18に示されるP型不純物濃度分布例のように、第一P側ガイド層105の不純物濃度は、活性層104から遠ざかるにしたがって増大してもよい。これにより、第一P側ガイド層105における活性層104に近い領域、つまり、光強度の大きい領域において、不純物濃度を低減でき、かつ、第一P側ガイド層105における活性層104から遠い領域、つまり、光強度の小さい領域において、不純物濃度を増大できる。したがって、窒化物系半導体発光素子100の導波路損失の低減と、動作電圧の低減とを両立できる。なお、この場合、第一P側ガイド層105の平均不純物濃度は、1.0×1017cm-3以上1.0×1018cm-3未満であってもよい。
また、上述したとおり、第二P側ガイド層107の平均不純物濃度は、1.0×1018cm-3以上である。これにより、窒化物系半導体発光素子100の動作電圧を低減できる。また、第二P側ガイド層107の不純物濃度は、活性層104から遠ざかるにしたがって増大してもよい。これにより、第二P側ガイド層107における活性層104に近い領域、つまり、光強度の大きい領域において、不純物濃度を低減でき、かつ、第二P側ガイド層107における活性層104から遠い領域、つまり、光強度の小さい領域において、不純物濃度を増大できる。したがって、窒化物系半導体発光素子100の導波路損失の低減と、動作電圧の低減とを両立できる。より具体的には、第二P側ガイド層107における活性層104に近い領域、つまり、第二P側ガイド層107のうち、活性層104に近い側の界面から積層方向の中央までの領域における平均不純物濃度は、1.0×1018cm-3以上3.0×1018cm-3以下であり、第二P側ガイド層107のうち、積層方向の中央から、活性層104から遠い側の界面までの領域における平均不純物濃度は、1.0×1019cm-3以上1.0×1020cm-3以下であってもよい。
また、Al組成比が大きい電子障壁層106においては、不純物であるMgの活性化率が低いため、電子障壁層106における電気抵抗を低減するためには、不純物濃度を高める必要がある。このような電子障壁層106への高濃度Mgドープに伴い、第二P側ガイド層107へMgが拡散するため、図18に示されるように、第二P側ガイド層107と電子障壁層106との界面において、不純物濃度が高くなり、当該界面から不純物濃度が最小となる位置(Px1又はPx2)に近づくにしたがって、不純物濃度が低くなる。
そこで、第二P側ガイド層107及びP型クラッド層108における不純物濃度について、図18に示されるP型不純物濃度分布例(実線及び破線)のように、電子障壁層106からP型クラッド層108に向かって(つまり上方に向かって)積層方向に0.2μm以内の距離で、不純物濃度が最小となる位置(Px1又はPx2)があり、この位置から上方に向かって不純物濃度が単調に増加してもよい。これにより、第二P側ガイド層107及びP型クラッド層108のうち、活性層104に近い領域における不純物濃度を低減できるため、導波路損失の増大を抑制できる。なお、不純物濃度が最小となる位置は、第二P側ガイド層107に位置してもよいし、P型クラッド層108に位置してもよい。
波長375nm帯の紫外域においては、Al組成比が6%以下のAlGaN層におけるAl組成比が小さくなるほど、P型不純物として使用するMgの不純物準位と伝導帯との間の光吸収損失の影響が増大する。このため、Al組成比が6%以下のAlGaN層でのMg濃度をできるだけ低くすることで、フリーキャリア損失、及び、Mgの不純物準位を介した光吸収損失の影響を低減できる。
したがって、第二P側ガイド層107は、活性層104から遠ざかるにしたがってMg濃度が減少する領域を有するとよい。これにより、Mgドープに伴うフリーキャリア損失、及び、Mgの不純物準位を介した光吸収損失の影響を低減できる。
[1-4-3.実施例E03]
実施例E03について説明する。実施例E03の窒化物系半導体発光素子100は、N型クラッド層102のAl組成比(Xnc)において、実施例E02の窒化物系半導体発光素子100と相違する(図10参照)。具体的には、実施例E03のN型クラッド層102のAl組成比は、4.5%である。このように、実施例E03においては、N型クラッド層102の平均Al組成比は、P型クラッド層108の平均Al組成比より小さい。
この構成による効果について、比較例C04、比較例C02、及び比較例C05を用いて説明する。図10に示されるように比較例C04の窒化物系半導体発光素子においては、N型クラッド層の平均Al組成比は、P型クラッド層の平均Al組成比より小さい。比較例C02の窒化物系半導体発光素子においては、N型クラッド層の平均Al組成比は、P型クラッド層の平均Al組成比と等しい。比較例C05の窒化物系半導体発光素子においては、N型クラッド層の平均Al組成比は、P型クラッド層の平均Al組成比より大きい。
N型クラッド層の平均Al組成比が、P型クラッド層の平均Al組成比と比べて小さくなるにしたがって、N型クラッド層の平均屈折率を増大することができる。したがって、窒化物系半導体発光素子の積層方向における光強度分布のピーク位置(つまり、図10に示される垂直光分布ピーク位置)が、活性層からP型クラッド層へ向かう向きに偏り過ぎることを抑制できる。これにより、図10の比較例C04、比較例C02、及び比較例C05の特性計算結果に示されるように、N型クラッド層の平均Al組成比が、P型クラッド層の平均Al組成比と比べて小さくなるにしたがって、導波路損失を低減できる。
比較例C04と同様に、実施例E03の窒化物系半導体発光素子100においても、N型クラッド層102の平均Al組成比が、P型クラッド層108の平均Al組成比より小さいため、導波路損失を低減できる。
[1-4-4.実施例E04]
実施例E04について説明する。実施例E04の窒化物系半導体発光素子100は、各層のAl組成比において、実施例E01と相違し、その他の構成において一致する。具体的には、図11に示されるように、実施例E04のN型クラッド層102、N側ガイド層103、各バリア層、第一P側ガイド層105、第二P側ガイド層107、及びP型クラッド層108のAl組成比は、それぞれ、10%、5%、7%、4%、6%、及び10%である。
なお、比較例C11~C16の構成のうち図11に示されていない構成は、実施例E04の構成と同じである。比較例C12及び比較例C16の窒化物系半導体発光素子は、第一P側ガイド層のAl組成比、及び、第二P側ガイド層のAl組成比において実施例E04と相違し、その他の構成において一致する。比較例C12においては、第一P側ガイド層と第二P側ガイド層との組成が同じであることから、第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーと等しい。また、比較例C16の窒化物系半導体発光素子においては、第二P側ガイド層のAl組成比が第一P側ガイド層のAl組成比より小さいことから、第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより小さい。
一方、実施例E04に係る窒化物系半導体発光素子100においては、第二P側ガイド層107のAl組成比が第一P側ガイド層105のAl組成比より大きいことから、第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより大きい。図11に示される実施例E04と比較例C12及び比較例C16との特性計算結果を比較すると、実施例E04では、第二P側ガイド層107の平均バンドギャップエネルギーが、第一P側ガイド層105の平均バンドギャップエネルギーより大きいことにより(つまり、第一P側ガイド層105の屈折率が第二P側ガイド層107の屈折率より高いことにより)、積層方向における光分布において、活性層104近傍のアンドープ領域と低不純物濃度の第一P側ガイド層105に存在する光の割合が大きくなるため、光閉じ込め係数を増大し、かつ、導波路損失を低減できることが分かる。
ここで、各層のAl組成比の関係について、図12を用いて説明する。図12に示される比較例C21~比較例C23の窒化物系半導体発光素子は、各ガイド層のAl組成比(Xng、Xpg1、及びXpg2)において比較例C02と相違し、その他の構成において一致する。比較例C21、比較例C22、及び比較例C23においては、各ガイド層のAl組成比は、それぞれ、2%、4%、及び5%である。図12に示される比較例C24~比較例C26の窒化物系半導体発光素子は、各ガイド層のAl組成比(Xng、Xpg1、及びXpg2)において比較例C12と相違し、その他の構成において一致する。比較例C24、比較例C25、及び比較例C26においては、各ガイド層のAl組成比は、それぞれ、4%、6%、及び7%である。
図12の比較例C21~比較例C23及び比較例C02の特性計算結果に示されるように、各クラッド層のAl組成比が6.5%であって、各ガイド層のAl組成比が4%以上である場合、垂直光分布ピーク位置の活性層からP型クラッド層へ向かう向きへの偏りが大きくなるため、導波路損失が増大する。また、図12の比較例C24~比較例C26及び比較例C12の特性計算結果に示されるように、各クラッド層のAl組成比が10%であって、各ガイド層のAl組成比が6%以上である場合、垂直光分布ピーク位置の活性層からP型クラッド層へ向かう向きへの偏りが大きくなるため、導波路損失が増大する。
したがって、窒化物系半導体発光素子100において、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成比は、P型クラッド層108の平均Al組成比の60%以下であってもよい。これにより、垂直光分布ピーク位置を活性層104の積層方向中央に近づけることができるため、導波路損失を低減できる。さらに、各ガイド層の平均Al組成比は、P型クラッド層108の平均Al組成比の50%以下であってもよい。これにより、より一層導波路損失を低減できる。ただし、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成比をあまりに小さくするとレーザ発振動作中における上記3層における電子のフェルミエネルギーと伝導帯電位との差が小さくなり、電子濃度が増大し、フリーキャリア損失が増大してしまう。これを抑制するためには、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成は、それぞれ1.5%以上あればよい。
また、図12に示される各比較例では、各ガイド層のAl組成比を同一の値としているが、Xpg1<Xng<Xpg2を満たすように各ガイド層のAl組成比を定めることで、垂直光分布ピーク位置を活性層の積層方向中央に、より一層近づけることができる。したがって、より一層導波路損失を低減できる。このように、窒化物系半導体発光素子100において、各ガイド層のAl組成比が互いに異なる場合、N側ガイド層103、第一P側ガイド層105、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成比の平均値(つまり、Xng、Xpg1、及びXpg2の平均値)は、P型クラッド層108の平均Al組成比の60%以下又は50%以下であってもよい。これにより、さらに導波路損失を低減できる。ただし、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成比をあまりに小さくするとレーザ発振動作中における上記3層における電子のフェルミエネルギーと伝導帯電位との差が小さくなり、電子濃度が増大し、フリーキャリア損失が増大してしまう。これを抑制するためには、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成は、それぞれ1.5%以上あればよい。
また、窒化物系半導体発光素子100において、N型クラッド層102及びP型クラッド層108の平均Al組成比が互いに異なる場合、N側ガイド層103、第一P側ガイド層105、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成比の平均値(つまり、Xng、Xpg1、及びXpg2の平均値)は、N型クラッド層102及びP型クラッド層108の平均Al組成比の平均値(つまり、Xnc及びXpcの平均値)の60%以下又は50%以下であってもよい。ただし、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成比をあまりに小さくするとレーザ発振動作中における上記3層における電子のフェルミエネルギーと伝導帯電位との差が小さくなり、電子濃度が増大し、フリーキャリア損失が増大してしまう。これを抑制するためには、N側ガイド層103の平均Al組成比、第一P側ガイド層105の平均Al組成比、及び第二P側ガイド層107の平均Al組成は、それぞれ1.5%以上あればよい。
[1-4-5.実施例E05]
実施例E05について説明する。実施例E05の窒化物系半導体発光素子100は、N側ガイド層103、第一P側ガイド層105、及び第二P側ガイド層107の膜厚において実施例E04の窒化物系半導体発光素子100と相違する(図11参照)。具体的には、実施例E05のN側ガイド層103の膜厚は、140nmであり、第一P側ガイド層105の膜厚は72nmであり、第二P側ガイド層107の膜厚は148nmである。このように、実施例E05においては、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚よりも厚い。この構成による効果について、比較例C11~比較例C13を用いて説明する。図11に示されるように比較例C11の窒化物系半導体発光素子においては、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚よりも薄い。比較例C12の窒化物系半導体発光素子においては、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚と等しい。比較例C13の窒化物系半導体発光素子においては、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚は、N側ガイド層の膜厚よりも厚い。図11に示される比較例C11~比較例C13の特性計算結果からわかるように、第一P側ガイド層及び第二P側ガイド層の合計膜厚がN側ガイド層の膜厚と比較して厚くなるにしたがって、実効屈折率差ΔNが大きくなる。比較例C13と同様に、実施例E05の窒化物系半導体発光素子100においても、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の合計膜厚は、N側ガイド層103の膜厚より厚いため、実効屈折率差ΔNを増大することができる。
[1-4-6.実施例E06]
実施例E06について説明する。実施例E06の窒化物系半導体発光素子100は、N型クラッド層102のAl組成比において、実施例E05の窒化物系半導体発光素子100と相違する(図11参照)。具体的には、実施例E06のN型クラッド層102のAl組成比は、8%である。このように、実施例E06においては、N型クラッド層102の平均Al組成比は、P型クラッド層108の平均Al組成比より小さい。
この構成による効果について、比較例C14、比較例C12、及び比較例C15を用いて説明する。図11に示されるように比較例C14の窒化物系半導体発光素子においては、N型クラッド層の平均Al組成比は、P型クラッド層の平均Al組成比より小さい。比較例C12の窒化物系半導体発光素子においては、N型クラッド層の平均Al組成比は、P型クラッド層の平均Al組成比と等しい。比較例C15の窒化物系半導体発光素子においては、N型クラッド層の平均Al組成比は、P型クラッド層の平均Al組成比より大きい。
N型クラッド層の平均Al組成比が、P型クラッド層の平均Al組成比と比べて小さくなるにしたがって、N型クラッド層の平均屈折率を増大することができる。したがって、窒化物系半導体発光素子の積層方向における光強度分布のピーク位置(垂直光分布ピーク位置)が、活性層からP型クラッド層へ向かう向きに偏り過ぎることを抑制できる。これにより、図11の比較例C14、比較例C12、及び比較例C15の特性計算結果に示されるように、N型クラッド層の平均Al組成比が、P型クラッド層の平均Al組成比と比べて小さくなるにしたがって、導波路損失を低減できる。
比較例C14と同様に、実施例E06の窒化物系半導体発光素子100においても、N型クラッド層102の平均Al組成比が、P型クラッド層108の平均Al組成比より小さいため、導波路損失を低減できる。
[1-4-7.実施例E07]
実施例E07について図19を用いて説明する。図19は、実施例E07の半導体積層体100Sの積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布と、光強度分布とを模式的に示すグラフである。図19に示されるように、実施例E07は、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107のAl組成比が活性層104から遠ざかるにしたがって単調に増加する領域を含む点において、実施例E01と相違し、その他の構成において一致する。言い換えると、実施例E07においては、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107は、活性層104から遠ざかるにしたがってバンドギャップエネルギーが増大するバンドギャップ傾斜領域を含む。ここで、Al組成比が単調に増加する構成には、積層方向においてAl組成比が一定である領域が存在する構成も含まれる。例えば、Al組成比がステップ状に増加する構成も含まれる。実施例E07においては、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107のAl組成比は、それぞれ、Xpg1及びXpg2で表される。例えば、第一P側ガイド層105の活性層104から近い方の界面付近、及び、遠い方の界面付近におけるAl組成比Xpg1は、それぞれ、1.5%、及び2.5%である。第二P側ガイド層107の活性層104から近い方の界面付近、及び、遠い方の界面付近におけるAl組成比Xpg2は、それぞれ、3.5%、及び4.5%である。
このように、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107において、活性層104から遠ざかるにしたがってAl組成比を単調に増加させることで、各層の屈折率を活性層104に近づくにしたがって増大させることができる。したがって、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107における活性層104に近い領域の屈折率を高めることができるため、積層方向における光強度分布のピーク位置が活性層104からP型クラッド層108へ向かう向きに偏り過ぎることを抑制できる。これにより、導波路損失を低減できる。
実施例E07によれば、光閉じ込め係数が5.52%であり、実効屈折率差ΔNが20.9×10-3であり、導波路損失が4.71cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が15.1nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
[1-4-8.実施例E08]
実施例E08について説明する。実施例E08は、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107のAl組成比が活性層104から遠ざかるにしたがって単調に増加する領域を含む点において、実施例E04と相違し、その他の構成において一致する。言い換えると、実施例E08においては、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107は、活性層104から遠ざかるにしたがってバンドギャップエネルギーが増大するバンドギャップ傾斜領域を含む。実施例E08においても、実施例E07と同様に、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107のAl組成比は、それぞれ、Xpg1及びXpg2で表される。例えば、第一P側ガイド層105の活性層104から近い方の界面付近、及び、遠い方の界面付近におけるAl組成比Xpg1は、それぞれ、3.5%、及び4.5%である。第二P側ガイド層107の活性層104から近い方の界面付近、及び、遠い方の界面付近におけるAl組成比Xpg2は、それぞれ、5.5%、及び6.5%である。
このように、実施例E08においても、実施例E07と同様に、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107において、活性層104から遠ざかるにしたがってAl組成比を単調に増加させることで、積層方向における光強度分布のピーク位置が活性層104からP型クラッド層108へ向かう向きに偏り過ぎることを抑制できる。これにより、導波路損失を低減できる。
なお、実施例E07及び実施例E08においては、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の両方が、バンドギャップ傾斜領域を含んだが、第一P側ガイド層105及び第二P側ガイド層107の少なくとも一方がバンドギャップ傾斜領域を含んでもよい。このような構成においても、同様の効果が奏される。
実施例E08によれば、光閉じ込め係数が6.06%であり、実効屈折率差ΔNが22.1×10-3であり、導波路損失が4.37cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が13.2nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
[1-4-9.実施例E09]
実施例E09について説明する。実施例E09においては、第一P側ガイド層105が、Al、及びInを含む点において、実施例E02と相違し、その他の構成において一致する。実施例E09においては、第一P側ガイド層105の組成は、Al0.04Ga0.9516In0.0084Nである。このように、第一P側ガイド層105がAl、及びInを含むことで、第一P側ガイド層105のバンドギャップエネルギーと、格子定数とを独立に制御することが可能となる。
ここで、AlGa1-x-yInN層におけるバンドギャップエネルギーと、AlGa1-zN層(0≦z<1)におけるバンドギャップエネルギーとの関係について図20を用いて説明する。図20は、AlGa1-x-yInN層におけるバンドギャップエネルギーと、AlGa1-zN層におけるバンドギャップエネルギーとの関係を示すグラフである。図20において、横軸は、AlGa1-x-yInN層におけるIn組成比yを示し、縦軸は、AlGa1-x-yInN層におけるAl組成比xを示す。図20には、AlGa1-x-yInN層において、AlGa1-zN層と同一のバンドギャップエネルギーを得るためのIn組成比yとAl組成比xとの関係が示されている。なお、図20においては、AlGa1-zN層のAl組成比zが0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、及び0.40である場合の各々の関係が示されている。また、図20には、AlGa1-x-yInN層の格子定数と、GaN層の格子定数とを等しくするためのIn組成比yとAl組成比xとの関係が破線で示されている。したがって、図20のグラフにおける破線より上(又は左)の領域は、AlGa1-x-yInN層の格子定数が、GaN層の格子定数より小さい組成を示し、破線より下(又は右)の領域は、AlGa1-x-yInN層の格子定数が、GaN層の格子定数より大きい組成を示す。なお、格子定数の計算においては、AlN、GaN、及びInNの格子定数として、それぞれ、0.311nm、0.3182nm、及び0.354nmを用いている。
AlGa1-x-yInN層においてAlGa1-zN層と同一のバンドギャップエネルギーを得るためには、図20に示されるように、以下の式(1)が成り立つ必要がある。
x=(-0.1727z+2.595)y+z (1)
このように、上記各実施例のAlGaN層からなる第一P側ガイド層105を、バンドギャップエネルギーを変えることなく、AlGaInN層からなる第一P側ガイド層105に置き換えることができる。
また、例えば、実施例E02の半導体積層体100Sでは、基板101に対する引っ張り性の歪が比較的大きくなるため、窒化物系半導体発光素子100において反りが生じ得る。ここで、窒化物系半導体発光素子100における反りについて、図21を用いて説明する。図21は、本実施の形態に係る基板101に半導体積層体100Sを積層した場合に生じる基板101及び半導体積層体100Sの反りを示す模式的な側面図である。
図21に示されるように、基板101に半導体積層体100Sを積層する(つまり、結晶成長させる)と、半導体積層体100S内のAlGaN層によって生じる基板101に対する引っ張り性の歪により、基板101及び半導体積層体100Sに反りが生じる。例えば、実施例E02では、AlGaN層によって生じる基板101に対する引っ張り性の歪により、半導体積層体100Sの上面が凹状となる向きの反りが生じる。ここで、半導体積層体100Sの上面が凹状になる場合の反り量(つまり、図21において矢印で示される凹部の深さΔR)は、負の数値で表される。一方、半導体積層体100Sの上面が凸状になる場合の反り量(つまり、凸部の高さ)は、正の数値で表される。
実施例E09では、第一P側ガイド層105のIn組成比y及びAl組成比xを調整することで、第一P側ガイド層105の格子定数をバンドギャップエネルギーと独立に調整できるため、第一P側ガイド層105の基板101に対する引っ張り性の歪を低減することができる。したがって、窒化物系半導体発光素子100の反りを低減できる。これにより、基板101の母材となるGaNウェハに半導体積層体100Sを積層し、加工する際に、ウェハの割れ、及び、ウェハにおけるクラックの発生を抑制できる。
実施例E09によれば、光閉じ込め係数が5.62%であり、実効屈折率差ΔNが19.6×10-3であり、導波路損失が4.90cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が14.3nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
なお、実施例E09では、第一P側ガイド層105だけがAl、及びInを含んだが、N側ガイド層103、第二P側ガイド層107、及びP型クラッド層108もAl、及びInを含んでもよい。このような構成においても、実施例E01などと同様に、N側ガイド層103のバンドギャップエネルギーEngと、第一P側ガイド層105のバンドギャップエネルギーEpg1と、第二P側ガイド層107のバンドギャップエネルギーEpg2と、P型クラッド層108のバンドギャップエネルギーEpcとの間に以下の式(2)及び式(3)の関係を成立させることができる。
Epg1<Epg2<Epc (2)
Epg1<Eng<Epg2 (3)
このことについて、以下で式(1)を用いて説明する。式(1)変形すると以下の式(4)が得られる。
z=(x-2.595y)/(1.0-0.1727y) (4)
ここで、AlGa1-zN層においてAl組成比zが大きくなるにしたがって、バンドギャップエネルギーが大きくなるため、以下の式(5)が成り立つ場合に、AlGa1-zN層のバンドギャップエネルギーが、AlGa1-x-yInN層のバンドギャップエネルギーよりも大きくなる。
z>(x-2.595y)/(1.0-0.1727y) (5)
このことから、第一P側ガイド層105がAlXpg1Ga1-Xpg1-Ypg1InYpg1Nからなり、第二P側ガイド層107がAlXpg2Ga1-Xpg2-Ypg2InYpg2Nからなる場合、以下の式(6)を満たすことで、第一P側ガイド層105のバンドギャップエネルギーEpg1を第二P側ガイド層107のバンドギャップエネルギーEpg2より小さくすることができる。
(Xpg1-2.595Ypg1)/(1.0-0.1727Ypg1)
<(Xpg2-2.595Ypg2)/(1.0-0.1727Ypg2)
(6)
さらに、P型クラッド層108がAlXpcGa1-Xpc-YpcInYpcNからなる場合、以下の式(7)を満たすことで、式(2)が成り立つ。
(Xpg1-2.595Ypg1)/(1.0-0.1727Ypg1)
<(Xpg2-2.595Ypg2)/(1.0-0.1727Ypg2)
<(Xpc-2.595Ypc)/(1.0-0.1727Ypc)
(7)
これにより、第一P側ガイド層105、第二P側ガイド層107、及びP型クラッド層108のうち、第一P側ガイド層105の屈折率を最も大きくすることができるため、垂直光分布ピーク位置を活性層104の積層方向中央に近づけることができる。
また、N側ガイド層103がAlXngGa1-Xng-YngInYngNからなる場合、以下の式(8)を満たすことで、式(3)が成り立つ。
(Xpg1-2.595Ypg1)/(1.0-0.1727Ypg1)
<(Xng-2.595Yng)/(1.0-0.1727Yng)
<(Xpg2-2.595Ypg2)/(1.0-0.1727Ypg2)
(8)
これにより、第一P側ガイド層105の屈折率を、N側ガイド層103及び第二P側ガイド層107の各屈折率より大きくすることができる垂直光分布ピーク位置をより一層活性層104の積層方向中央に近づけることができる。
[1-4-10.実施例E10]
実施例E10について説明する。実施例E10においては、第一P側ガイド層105が、Al、及びInを含む点において、実施例E05と相違し、その他の構成において一致する。実施例E10においては、第一P側ガイド層105の組成は、Al0.04Ga0.9516In0.0084Nである。このように、第一P側ガイド層105がAl、及びInを含むことで、実施例E10においても、実施例E09と同様の効果が奏される。
実施例E10によれば、光閉じ込め係数が6.12%であり、実効屈折率差ΔNが22.3×10-3であり、導波路損失が4.02cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が14.0nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
[1-4-11.実施例E11]
実施例E11について説明する。実施例E11においては、N型クラッド層102が、Al、及びInを含む点において、実施例E02と相違し、その他の構成において一致する。実施例E11においては、N型クラッド層102の組成は、Al0.065Ga0.925In0.01Nである。このように、N型クラッド層102がAl、及びInを含むことによる効果について、図22~図24を用いて説明する。図22は、実施例E11の半導体積層体100Sの積層方向における位置とバンドギャップエネルギーとの関係を示すグラフである。図23は、実施例E11の半導体積層体100Sの積層方向における位置と応力との関係を示すグラフである。図23に示される応力は、基板101に対する応力であり、応力の値が正であることは、応力が圧縮性であることを意味し、応力の値が負であることは、応力が引っ張り性であることを意味する。なお、図23には、N型クラッド層102が、実施例E02と同様にAl0.065Ga0.935Nからなる場合の応力が点線で併せて示されている。図24は、実施例E11の半導体積層体100Sの積層方向における位置と、積分応力との関係を示すグラフである。ここで、積分応力は、半導体積層体100SにおけるN型クラッド層102と基板101との界面から積層方向の上方に向かって半導体積層体100Sの積層方向の各位置における応力を積分した値を意味する。言い換えると、積分応力は、図23に示される応力を位置ゼロから積層方向の各位置まで積分した値を意味する。なお、図24には、N型クラッド層102が、実施例E02と同様にAl0.065Ga0.935Nからなる場合の積分応力が点線で併せて示されている。
図22に示されるように、実施例E11では、実施例E02より、N型クラッド層102のバンドギャップエネルギーを低減できる。つまり、実施例E11では、実施例E02より、N型クラッド層102の屈折率を増大できる。したがって、積層方向における光強度分布のピーク位置が、活性層104からP型クラッド層108に向かう向きに偏り過ぎることを抑制できる。
また、図23及び図24に示されるように、実施例E11では、実施例E02より、N型クラッド層102における引っ張り性の応力(歪)を低減できる。例えば、実施例E02の半導体積層体100Sを、大きさが5cm角で厚さが85μmのGaN基板上に積層した場合、積分応力は、-725.8Pa・mとなり、ウェハの反り(図21参照)は、553.6μmとなる。一方、実施例E11の半導体積層体100Sを、大きさが5cm角で厚さが85μmのGaN基板上に積層した場合、積分応力は、-436.4Pa・mとなり、ウェハの反りは、335.0μmとなる。このように実施例E11によれば、ウェハの反りを低減できるため、ウェハの割れ、及び、ウェハにおけるクラックの発生を抑制できる。
実施例E11によれば、光閉じ込め係数が4.95%であり、実効屈折率差ΔNが9.29×10-3であり、導波路損失が4.23cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が8.2nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
[1-4-12.実施例E12]
実施例E12について説明する。実施例E12においては、N型クラッド層102が、Al、及びInを含む点において、実施例E05と相違し、その他の構成において一致する。実施例E12においては、N型クラッド層102の組成は、Al0.10Ga0.89In0.01Nである。このように、N型クラッド層102がAl、及びInを含むことによる効果について、図25~図27を用いて説明する。図25は、実施例E12の半導体積層体100Sの積層方向における位置とバンドギャップエネルギーとの関係を示すグラフである。図26は、実施例E12の半導体積層体100Sの積層方向における位置と応力との関係を示すグラフである。なお、図26には、N型クラッド層102が、実施例E05と同様にAl0.10Ga0.90Nからなる場合の応力が点線で併せて示されている。図27は、実施例E12の半導体積層体100Sの積層方向における位置と、積分応力との関係を示すグラフである。なお、図27には、N型クラッド層102が、実施例E05と同様にAl0.10Ga0.90Nからなる場合の積分応力が点線で併せて示されている。
実施例E12の半導体積層体100Sを、大きさが5cm角で厚さが85μmのGaN基板上に積層した場合、積分応力は、-835.5Pa・mとなり、ウェハの反り(図21参照)は、639.4μmとなる。一方、N型クラッド層102が、実施例E05と同様にAl0.10Ga0.90Nからなる場合の半導体積層体100Sを、大きさが5cm角で厚さが85μmのGaN基板上に積層した場合、積分応力は、-1126.4Pa・mとなり、ウェハの反りは、858.9μmとなる。図25~図27に示されるように、N型クラッド層102がAl、及びInを含むことで、実施例E12においても、実施例E11と同様の効果が奏される。
実施例E12によれば、光閉じ込め係数が5.87%であり、実効屈折率差ΔNが10.9×10-3であり、導波路損失が3.5cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が11.0nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
[1-4-13.実施例E13]
実施例E13について説明する。実施例E13においては、ウェル層104bが、Al、及びInを含む点において、実施例E02と相違し、その他の構成において一致する。実施例E13においては、ウェル層104bの組成は、Al0.071Ga0.889In0.04Nである。
窒化物系半導体発光素子100において、375nm以上380nm以下の光を出射するためには、In0.01Ga0.99Nのバンドギャップエネルギー以上であって、GaNのバンドギャップエネルギー以下のバンドギャップエネルギーを有するウェル層104bを用いる必要がある。以下、ウェル層104bの組成について、図28を用いて説明する。図28は、実施例E13のウェル層104bに求められる組成を説明するためのグラフである。図28の横軸は、In組成比yを示し、縦軸は、Al組成比xを示す。
ウェル層104bの組成をAlGa1-x-yInNとする場合、ウェル層104bのバンドギャップエネルギーをIn0.01Ga0.99Nのバンドギャップエネルギー以上、GaNのバンドギャップエネルギー以下とするためには、以下の式(9)を満たせばよい。
2.34y≧x≧2.34y-0.234 (9)
つまり、ウェル層104bのAl組成比x及びIn組成比yは、図28に示される実線と破線とで挟まれる領域に対応する値であれば、375nm以上380nm以下の光を出射し得る。
ここで、ウェル層104bのGaNに対する格子不整について、図29を用いて説明する。図29は、ウェル層104bのIn組成比と、GaNに対する格子不整との関係を示すグラフである。
例えば、In0.01Ga0.99Nは、GaNに対して、0.11%の圧縮性の格子不整を有するため、ウェル層104bの組成をIn0.01Ga0.99Nとする場合にウェル層104bに生じる圧縮性の格子不整は、高々0.11%である。これに対して、ウェル層104bの組成を、式(9)を満たすAl組成比x及びIn組成比yを有するAlGa1-x-yInNとする場合について説明する。この場合、例えば、In組成比yを0.04とすると、図29に示されるように、ウェル層104bに生じる圧縮性の格子不整は、0.23%以上0.28%以下となる。このように、ウェル層104bがAl、及びInを含むことで、ウェル層104bに生じる圧縮性の格子不整を増大させることができる。したがって、活性層104及びその周辺の領域における引っ張り性の歪を低減できる。ウェル層104bにおけるIn組成比を例えば、0.06とすると、図29に示されるように、ウェル層104bの圧縮性の格子不整を0.34%以上0.38%以下まで増大させることができるため、活性層104及びその周辺の領域における引っ張り性の歪をより一層低減できる。
また、ウェル層104bの圧縮性の歪を増大することで、ウェル層104bに形成されるヘビーホールとライトホールとの基底準位のエネルギー差が増大する。この結果、窒化物系半導体発光素子100に電流を供給することで動作させる場合、基底準位のヘビーホール数を増大させることができるため、発振しきい電流値を低減できる。したがって、動作キャリア密度を低減できるため、ウェル層104bにおける電流注入領域の屈折率変化、及び、プラズマ効果による屈折率低下を抑制できる。このことから、実効屈折率差ΔNの低下を抑制できるため、レーザ光の水平横モードを安定化させることができる。
実施例E13によれば、光閉じ込め係数が5.69%であり、実効屈折率差ΔNが18.79×10-3であり、導波路損失が4.96cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が12.84nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
[1-4-14.実施例E14]
実施例E14について説明する。実施例E14は、N側ガイド層103の構成において実施例E01と相違し、その他の構成において一致する。以下、実施例E14の半導体積層体100Sの構成について、図30を用いて説明する。図30は、実施例E14の半導体積層体100Sの積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布を模式的に示すグラフである。
図30に示されるように、実施例14のN側ガイド層103は、第一N側ガイド層103aと、第一N側ガイド層103aの上方に配置される第二N側ガイド層103bとを有する。第一N側ガイド層103aのバンドギャップエネルギーは、第二N側ガイド層103bのバンドギャップエネルギーより大きい。また、第一N側ガイド層103aのAl組成比Xng1は、第二N側ガイド層103bのAl組成比Xngより大きい。具体的には、第一N側ガイド層103aは、膜厚90nmのアンドープAl0.04Ga0.96N層である。つまり、第一N側ガイド層103aのAl組成比Xng1は、4.0%である。一方、第二N側ガイド層103bは、膜厚90nmのアンドープAl0.02Ga0.98N層である。つまり、第二N側ガイド層103bのAl組成比Xng2は、2.0%である。
実施例E14においては、N側ガイド層103の平均Al組成比Xngは、3.0%であり、Xpg1<Xng<Xpg2を満たす。
N側ガイド層103の平均Al組成比とは、第一N側ガイド層103a及び第二N側ガイド層103bの二層におけるAl組成比分布を考慮した平均Al組成比である。より詳しく説明すると、N側ガイド層103の平均Al組成比とは、第一N側ガイド層103a及び第二N側ガイド層103bの二層を含むある位置でのAl組成比の大きさを、第一N側ガイド層103aの基板101側の界面の位置から第二N側ガイド層103bの活性層104側の界面の位置まで積層方向に積分し、第一N側ガイド層103a及び第二N側ガイド層103bの合計膜厚で割ったAl組成比の値のことである。
N側ガイド層103の平均Al組成比に関して上記不等式を満たすことにより、第一P側ガイド層105の平均屈折率は、N側ガイド層103の平均屈折率より大きく、かつ、N側ガイド層103の平均屈折率は、第二P側ガイド層107の平均屈折率より大きくなる。
ここで、N側ガイド層103の平均屈折率とは、第一N側ガイド層103aと第二N側ガイド層103bの二層における屈折率分布を考慮した平均屈折率を意味する。より詳しく説明するとは、N側ガイド層103の平均屈折率とは、第一N側ガイド層103a及び第二N側ガイド層103bの二層を含むある位置での屈折率の大きさを、第一N側ガイド層103aの基板101側の界面の位置から第二N側ガイド層103bの活性層104側の界面の位置まで積層方向に積分し、第一N側ガイド層103a及び第二N側ガイド層103bの合計膜厚で割った屈折率の値のことである。
実施例E14による効果について説明するために、比較例C30の半導体積層体と比較しながら説明する。比較例C30の半導体積層体100Sは、実施の形態1に係る半導体積層体100Sの一例であり、第一N側ガイド層103aのバンドギャップエネルギーが、第二N側ガイド層103bのバンドギャップエネルギーより小さい点において、実施例E14と相違し、その他の構成において一致する。比較例C30の第一N側ガイド層103aは、膜厚90nmのアンドープAl0.02Ga0.98N層であり、第二N側ガイド層103bは、膜厚90nmのアンドープAl0.04Ga0.96N層である。このように比較例C30では、N側ガイド層103の平均Al組成は、実施例E01及び実施例E14と同一であり、N側ガイド層103の活性層104から遠い領域である第一N側ガイド層103aのAl組成は2%であり、N側ガイド層103の活性層104に近い領域である第二N側ガイド層103bのAl組成比は4%である。
比較例C30の半導体積層体を備える窒化物系半導体発光素子では、光閉じ込め係数が5.1%であり、実効屈折率差ΔNが16.8×10-3であり、導波路損失が6.1cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が11.6nmである。このように、比較例C30の半導体積層体を備える窒化物系半導体発光素子では、各特性が、実施例E01ほど良くない。
一方、実施例E14のように、N側ガイド層103の活性層104に近い領域のAl組成比(Xng2)を小さくすると、N側ガイド層103の活性層104に近い領域の屈折率が、N側ガイド層103の活性層104から遠い領域の屈折率よりも高くなる。このため、活性層104近傍の、アンドープの第一N側ガイド層103a、第二N側ガイド層103b、及び、第一P側ガイド層105に位置する光の割合が増大する。したがって、実施例E14の半導体積層体100Sを備える窒化物系半導体発光素子100では、実施例E01の半導体積層体100Sを備える窒化物系半導体発光素子100に対して、導波路損失がさらに低減され、かつ、活性層104への光閉じ込め係数がさらに増大する。
具体的には、実施例E14によれば、光閉じ込め係数が6.2%であり、実効屈折率差ΔNが17.4×10-3であり、導波路損失が3.6cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が5.6nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
このように、実施例E14によれば、垂直光分布ピーク位置を活性層104のウェル層104b領域に位置させたまま、10×10-3以上の実効屈折率差ΔNを実現でき、かつ、導波路損失の低減、及び、光閉じ込め係数の増大を図ることができる。
[1-4-15.実施例E15]
実施例E15について説明する。実施例E15においては、N側ガイド層103の構成において実施例E01と相違し、その他の構成において一致する。以下、実施例E15の半導体積層体100Sの構成について、図31を用いて説明する。図31は、実施例E15の半導体積層体100Sの積層方向におけるバンドギャップエネルギー分布を模式的に示すグラフである。
図31に示されるように、実施例E15のN側ガイド層103は、Al組成比が活性層104から遠ざかるにしたがって単調に増加する領域を含む点において、実施例E01のN側ガイド層103と相違する。言い換えると、実施例E15においては、N側ガイド層103は、活性層104から遠ざかるにしたがってバンドギャップエネルギーが増大するバンドギャップ傾斜領域を含む。N側ガイド層103の活性層104から近い方の界面付近、及び、遠い方の界面付近におけるAl組成比Xngは、それぞれ、2.0%、及び4.0%である。
実施例E15においては、N側ガイド層103の平均Al組成比Xngは、3.0%であり、Xpg1<Xng<Xpg2を満たす。
N側ガイド層103の平均Al組成比に関して上記不等式を満たすことにより、第一P側ガイド層105の平均屈折率は、N側ガイド層103の平均屈折率より大きく、かつ、N側ガイド層103の平均屈折率は、第二P側ガイド層107の平均屈折率より大きくなる。
以上のように、N側ガイド層103の活性層104に近い領域のAl組成比を小さくすると、N側ガイド層103の活性層104に近い領域の屈折率が、N側ガイド層103の活性層104から遠い領域の屈折率よりも高くなる。このため、活性層104近傍の、アンドープのN側ガイド層103及び第一P側ガイド層105に位置する光の割合が増大する。したがって、実施例E15の半導体積層体100Sを備える窒化物系半導体発光素子100では、実施例E01の半導体積層体100Sを備える窒化物系半導体発光素子100に対して、導波路損失がさらに低減され、かつ、活性層104への光閉じ込め係数がさらに増大する。
具体的には、実施例E15によれば、光閉じ込め係数が5.9%であり、実効屈折率差ΔNが17.4×10-3であり、導波路損失が4.1cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が6.5nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
このように、実施例E15によれば、垂直光分布ピーク位置を活性層104のウェル層104b領域に位置させたまま、10×10-3以上の実効屈折率差ΔNを実現でき、かつ、導波路損失の低減、及び、光閉じ込め係数の増大を図ることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る窒化物系半導体発光素子について説明する。本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子は、バッファ層を備える点において、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子100と相違する。以下、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子について、実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子100との相違点を中心に、図32を用いて説明する。図32は、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子200の全体構成を示す模式的な断面図である。
図32に示されるように、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子200は、基板101と、半導体積層体200Sと、電流ブロック層110と、P側電極111と、N側電極112とを備える。本実施の形態に係る半導体積層体200Sは、バッファ層221を備える点において、実施の形態1に係る半導体積層体100Sと相違し、その他の点において一致する。
バッファ層221は、基板101と、N型クラッド層102との間に配置され、InGaNからなる第一バッファ層の一例である。本実施の形態では、バッファ層221は、濃度5×1017cm-3のSiがドープされた膜厚150nmのN型In0.05Ga0.95N層である。
本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子200は、バッファ層221を備えるため、半導体積層体200Sに圧縮性の歪を加えることができる。これにより、半導体積層体200Sの引っ張り性の歪を低減できるため、GaNウェハに半導体積層体200Sを積層し、加工する際に、ウェハの割れ、及び、ウェハにおけるクラックの発生を抑制できる。例えば、半導体積層体200Sを、大きさが5cm角で厚さが85μmのGaN基板上に積層した場合、積分応力は、-173.4Pa・mとなり、ウェハの反りは、138.1μmとなる。
また、基板101としてGaN基板を用いる場合、光が基板101に到達すると、導波モードに対する半導体積層体200Sの実効屈折率より基板101の屈折率の方が高いため、光が基板101全体に拡散する。この場合、導波モードの活性層104への光閉じ込め係数が低下し、導波路損失が増大するため、発振しきい電流値が増大する。この結果、ウェル層104bでの動作キャリア密度が増大し、ウェル層104bにおける電流注入領域の屈折率の低下により、実効屈折率差ΔNが小さくなり、リッジ108Rを含む導波路を伝搬する光の導波機構は、屈折率反導波型の導波機構となる。このため、水平横モードが不安定化し、電流-光出力特性にキンクが生じ易くなる。
一方、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子200のように、紫外光に相当するエネルギーより小さいバンドギャップエネルギーを有するInGaNからなるバッファ層221を備えることで、バッファ層221において光が吸収されるため、基板101に光が到達することを抑制できる。
本実施の形態によれば、光閉じ込め係数が5.69%であり、実効屈折率差ΔNが18.79×10-3であり、導波路損失が4.96cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が12.84nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る窒化物系半導体発光素子について説明する。本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子は、二層のバッファ層を備える点において、実施の形態2に係る窒化物系半導体発光素子200と相違する。以下、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子について、実施の形態2に係る窒化物系半導体発光素子200との相違点を中心に、図33を用いて説明する。図33は、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子300の全体構成を示す模式的な断面図である。
図33に示されるように、本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子300は、基板101と、半導体積層体300Sと、電流ブロック層110と、P側電極111と、N側電極112とを備える。本実施の形態に係る半導体積層体300Sは、バッファ層321を備える点において、実施の形態2に係る半導体積層体200Sと相違し、その他の点において一致する。
バッファ層321は、基板101と、N型クラッド層102との間に配置され、AlGaNからなる第二バッファ層の一例である。本実施の形態では、バッファ層321は、基板101と、バッファ層221との間に配置される。バッファ層321は、濃度5×1017cm-3のSiがドープされた膜厚1000nmのN型Al0.007Ga0.993N層である。
本実施の形態に係る窒化物系半導体発光素子300によっても、実施の形態2に係る窒化物系半導体発光素子200と同様の効果が奏される。例えば、半導体積層体300Sを、大きさが5cm角で厚さが85μmのGaN基板上に積層した場合、積分応力は、-227.5Pa・mとなり、ウェハの反りは、173.8μmとなる。
本実施の形態によれば、光閉じ込め係数が5.69%であり、実効屈折率差ΔNが18.79×10-3であり、導波路損失が4.96cm-1であり、垂直光分布ピーク位置が12.84nmである窒化物系半導体発光素子100を実現できる。
(変形例など)
以上、本開示に係る窒化物系半導体発光素子について、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施の形態においては、窒化物系半導体発光素子が半導体レーザ素子である例を示したが、窒化物系半導体発光素子は、半導体レーザ素子に限定されない。例えば、窒化物系半導体発光素子は、スーパールミネッセントダイオードであってもよい。この場合、窒化物系半導体発光素子が備える半導体積層体の端面の半導体積層体からの出射光に対する反射率は、0.1%以下であってもよい。このような反射率は、例えば、端面に、誘電体多層膜などからなる反射防止膜を形成することによって実現できる。又は、導波路となるリッジがフロント端面の法線方向から5°以上傾いてフロント端面と交わる傾斜ストライプ構造とすれば、フロント端面で反射した導波光が再び導波路と結合し導波光となる成分の割合を0.1%以下の小さい値とすることができる。
また、P型クラッド層108は、Al組成比が均一な層であったが、P型クラッド層108の構成はこれに限定されない。例えば、P型クラッド層108は、複数のAlGaN層の各々と、複数のGaN層の各々とが交互に積層された超格子構造を有してもよい。
また、上記各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
例えば、実施の形態2及び実施の形態3に係る各バッファ層を実施の形態1に係る窒化物系半導体発光素子100の各実施例に適用してもよい。
本開示の窒化物系半導体発光素子は、例えば、高出力かつ高効率な光源として露光装置及び加工機用の光源などに適用できる。
100、200、300 窒化物系半導体発光素子
100F、100R 端面
100S、200S、300S 半導体積層体
101 基板
102 N型クラッド層
103 N側ガイド層
103a 第一N側ガイド層
103b 第二N側ガイド層
104 活性層
104a、104c バリア層
104b ウェル層
105 第一P側ガイド層
106、916、926 電子障壁層
107 第二P側ガイド層
108 P型クラッド層
108R リッジ
108T 溝
109 コンタクト層
110 電流ブロック層
111 P側電極
112 N側電極
221、321 バッファ層
915、925 P側ガイド層

Claims (18)

  1. N型クラッド層と、
    前記N型クラッド層の上方に配置されるN側ガイド層と、
    前記N側ガイド層の上方に配置される活性層と、
    前記活性層の上方に配置される第一P側ガイド層と、
    前記第一P側ガイド層の上方に配置される電子障壁層と、
    前記電子障壁層の上方に配置される第二P側ガイド層と、
    前記第二P側ガイド層の上方に配置されるP型クラッド層とを備え、
    前記第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、前記第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより大きく、
    前記P型クラッド層の平均バンドギャップエネルギーは、前記電子障壁層の平均バンドギャップエネルギーより小さい
    窒化物系半導体発光素子。
  2. 前記活性層は、
    二つのバリア層と、
    前記二つのバリア層の間に配置されるウェル層とを含む
    請求項1に記載の窒化物系半導体発光素子。
  3. 前記二つのバリア層の各々のバンドギャップエネルギーは、前記第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギー、及び、前記N側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより大きく、前記電子障壁層のバンドギャップエネルギーより小さい
    請求項2に記載の窒化物系半導体発光素子。
  4. 前記ウェル層は、Al、及びInを含む
    請求項2又は3に記載の窒化物系半導体発光素子。
  5. 前記第一P側ガイド層の膜厚は、前記二つのバリア層の各々の膜厚より厚い
    請求項2~4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  6. 前記N側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、前記第一P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより大きい
    請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  7. 前記第一P側ガイド層、及び前記第二P側ガイド層の少なくとも一方は、前記活性層から遠ざかるにしたがってバンドギャップエネルギーが増大するバンドギャップ傾斜領域を含む
    請求項6に記載の窒化物系半導体発光素子。
  8. 前記N側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーは、前記第二P側ガイド層の平均バンドギャップエネルギーより小さい
    請求項6又は7に記載の窒化物系半導体発光素子。
  9. 前記第一P側ガイド層及び前記第二P側ガイド層の合計膜厚は、前記N側ガイド層の膜厚よりも厚い
    請求項6~8のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  10. 前記第一P側ガイド層の平均不純物濃度は、1×1018cm-3未満である
    請求項1~9のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  11. 前記第二P側ガイド層の平均不純物濃度は、1×1018cm-3以上である
    請求項1~10のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  12. 前記N型クラッド層及び前記P型クラッド層は、Alを含み、
    前記N型クラッド層の平均Al組成比は、前記P型クラッド層の平均Al組成比以下である
    請求項1~11のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  13. 前記N側ガイド層、前記第一P側ガイド層、及び前記第二P側ガイド層は、Alを含み、
    前記N側ガイド層の平均Al組成比、前記第一P側ガイド層の平均Al組成比、及び前記第二P側ガイド層の平均Al組成比は、前記P型クラッド層の平均Al組成比の60%以下である
    請求項12に記載の窒化物系半導体発光素子。
  14. 前記N型クラッド層は、Al、及びInを含む
    請求項1~13のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  15. 前記第一P側ガイド層は、Al、及びInを含む
    請求項1~14のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  16. 前記第二P側ガイド層の膜厚は、前記第一P側ガイド層の膜厚より厚い
    請求項1~15のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  17. 前記N型クラッド層の下方に配置され、GaNからなる基板と、
    前記基板と、前記N型クラッド層との間に配置され、InGaNからなるバッファ層とをさらに備える
    請求項1~16のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
  18. 前記活性層は、紫外光を出射する
    請求項1~17のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
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