JP2023114103A - 表面処理剤、コーティング液、物品及び物品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】潤滑性及び耐摩擦性に優れた表面層を形成できる表面処理剤、コーティング液、物品及び物品の製造方法の提供。【解決手段】本発明の表面処理剤は、(OCF2)で表される単位及び(OCF2CF2)で表される単位を含むフルオロポリエーテル鎖と反応性シリル基とを有する含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤であり、含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、Y>-0.0062X2+0.1343X+0.1123を満たし、Xは{(a1+a2+a3)/2}/{(b1+b2)/4}を意味し、Yは(a3)/(a1+a2+a3)を意味し、a1~a3、b1~b2は所定の化学シフトにおいて観測されるピークの積分値である。【選択図】なし

Description

本発明は、表面処理剤、コーティング液、物品及び物品の製造方法に関する。
基材の表面に撥水撥油性、防汚性等を付与するために、フルオロポリエーテル鎖と、反応性シリル基と、を有する含フッ素エーテル化合物を用いた表面処理によって、基材の表面に含フッ素エーテル化合物の縮合物からなる表面層を形成することが知られている(特許文献1)。
特許第5761305号
近年、含フッ素エーテル化合物を用いて形成された表面層に対する要求性能が高くなっている。例えば、表面層が指で触れる面を構成する部材に適用される場合には、潤滑性(指で触った際の滑らかさ)に優れ、かつ、耐摩擦性に優れる表面層が求められる。
本発明者らが、特許文献1に記載されているような含フッ素エーテル化合物を用いて形成された表面層を評価したところ、表面層の潤滑性及び耐摩擦性の少なくとも一方について、改良の余地があることを見出した。
そこで、本発明は、潤滑性及び耐摩擦性に優れた表面層を形成できる表面処理剤、コーティング液、物品及び物品の製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、(OCF)で表される単位及び(OCFCF)で表される単位を含むフルオロポリエーテル鎖と、反応性シリル基と、を有する含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤において、含フッ素エーテル化合物を19F-NMRによって測定して得られる、フルオロポリエーテル鎖を構成する単位中のフッ素原子に対応するピークの積分値が後述する式(A-1)を満たす場合、その表面処理剤が潤滑性及び耐摩擦性に優れる表面層を形成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1] (OCF)で表される単位及び(OCFCF)で表される単位を含むフルオロポリエーテル鎖と、反応性シリル基と、を有する含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤であって、
上記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、下式(A-1)を満たすことを特徴とする、表面処理剤。
Y>-0.0062X+0.1343X+0.1123 ・・・(A-1)
ただし、X及びYは、内部標準として1,4-ビストリフルロメチルベンゼンを用いて、上記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートに基づいて求められる値であり、
化学シフト -50.5~-51.2ppmに観測されるピークの積分値をa1、
化学シフト -52.0~-52.8ppmに観測されるピークの積分値をa2、
化学シフト -53.8~-54.5ppmに観測されるピークの積分値をa3、
化学シフト -87.0~-88.5ppmに観測されるピークの積分値をb1、
化学シフト -88.8~-90.2ppmに観測されるピークの積分値をb2とした場合、
Xは、{(a1+a2+a3)/2}/{(b1+b2)/4}を意味し、
Yは、(a3)/(a1+a2+a3)を意味する。
[2] 上記式(A-1)中のXが2~8である、[1]に記載の表面処理剤。
[3] 上記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、下式(A-2)を満たす、[1]又は[2]に記載の表面処理剤。
Y>-0.0056X+0.1231X+0.2119 ・・・(A-2)
ただし、式(A-2)のX及びYは、上記式(A-1)のX及びYと同じである。
[4] 上記[1]~[3]のいずれかに記載の表面処理剤と、液状媒体と、を含むことを特徴とする、コーティング液。
[5] 上記[1]~[3]のいずれかに記載の表面処理剤又は上記[4]に記載のコーティング液から形成された表面層を基材上に有することを特徴とする、物品。
[6] 上記物品がタッチパネルであり、上記タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に上記表面層を有する、[5]に記載の物品。
[7] 上記[1]~[3]のいずれかに記載の表面処理剤又は上記[4]に記載のコーティング液を用いて、ドライコーティング法又はウェットコーティング法により、基材上に表面層を形成することを特徴とする、物品の製造方法。
本発明によれば、潤滑性及び耐摩擦性に優れた表面層を形成できる表面処理剤、コーティング液、物品及び物品の製造方法を提供できる。
横軸を式(A-1)のXの値、縦軸を式(A-1)のYの値とする直交座標系において、実施例欄で用いた各含フッ素エーテル化合物のX及びYの値から与えられる点をプロットしたグラフである。 実施例欄の例14で使用した含フッ素エーテル化合物の混合物5-1を用いて19F-NMR測定した際に得られたチャートである。
本明細書において、式(g1)で表される基を、基(g1)と記すことがある。また、式(G1)で表される構造を、構造(G1)と記すことがある。また、式(1-1)で表される化合物を、化合物(1-1)と記すことがある。他の式で表される化合物等もこれらに準ずる。
フルオロアルキル基とは、ペルフルオロアルキル基とパーシャルフルオロアルキル基とを合わせた総称である。ペルフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換された基を意味する。またパーシャルフルオロアルキル基とは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換され、かつ、水素原子を1個以上有するアルキル基である。すなわちフルオロアルキル基は1個以上のフッ素原子を有するアルキル基である。
「反応性シリル基」とは、加水分解性シリル基及びシラノール基(Si-OH)の総称であり、「加水分解性シリル基」とは、加水分解反応してシラノール基を形成し得る基を意味する。
「有機基」とは、置換基を有していてもよく、炭素鎖中にヘテロ原子又は他の結合を有してもよい炭化水素基を意味する。
「炭化水素基」とは、炭素原子と水素原子からなる基であり、脂肪族炭化水素基(例えば、2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖アルキレン基、分岐を有するアルキレン基、シクロアルキレン基等)、芳香族炭化水素基(例えば、2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基等)及びこれらの組み合わせからなる基である。
「表面層」とは、基材上に形成される層を意味する。
フルオロポリエーテル鎖の「分子量」は、H-NMR及び19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシフルオロアルキレン単位の数(平均値)を求めて算出される数平均分子量である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本明細書においては、OCFCH-Oのような、2つの酸素原子で挟まれたフッ素原子を含むアルキレン構造においては、2つの酸素原子で挟まれた部分構造と酸素原子とからなる繰り返し単位(上記の場合、「OCFCH」)があると解釈する。
[表面処理剤]
本発明の表面処理剤(以下、「本表面処理剤」ともいう。)は、(OCF)で表される単位及び(OCFCF)で表される単位を含むフルオロポリエーテル鎖と、反応性シリル基と、を有する含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤であって、上記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、後述する式(A-1)を満たす。
本表面処理剤を用いれば、潤滑性及び耐摩擦性に優れた表面層を形成できる。
本表面処理剤は、2種以上の含フッ素エーテル化合物を含んでいてもよい。この場合、含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られる上記チャートは、2種以上の含フッ素エーテル化合物の混合物を測定して得られるチャートを意味する。
<式(A-1)>
Y>-0.0062X+0.1343X+0.1123 ・・・(A-1)
式(A-1)中、X及びYは、内部標準として1,4-ビストリフルロメチルベンゼンを用いて、本表面処理剤に含まれる含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートに基づいて求められる値であり、
化学シフト-50.5~-51.2ppmに観測されるピークの積分値をa1、
化学シフト-52.0~-52.8ppmに観測されるピークの積分値をa2、
化学シフト-53.8~-54.5ppmに観測されるピークの積分値をa3、
化学シフト-87.0~-88.5ppmに観測されるピークの積分値をb1、
化学シフト-88.8~-90.2ppmに観測されるピークの積分値をb2とした場合、
Xは、{(a1+a2+a3)/2}/{(b1+b2)/4}を意味し、
Yは、(a3)/(a1+a2+a3)を意味する。
上記a1、a2、a3、b1及びb2のそれぞれに対応するピークの意味は、次の通りである。
a1に対応するピーク:含フッ素エーテル化合物におけるフルオロポリエーテル鎖を構成する各単位の配列において、-(OCFCF)-(OCF)-(OCFCF)-で表される配列の中央に位置する(OCF)中のフッ素原子に対応するピーク
a2に対応するピーク:フルオロポリエーテル鎖を構成する各単位の配列において、-(OCF)-(OCF)-(OCFCF)-で表される配列の中央に位置する(OCF)中のフッ素原子に対応するピーク
a3に対応するピーク:フルオロポリエーテル鎖を構成する各単位の配列において、-(OCF)-(OCF)-(OCF)-で表される配列の中央に位置する(OCF)中のフッ素原子に対応するピーク
b1及びb2に対応するピーク:(OCFCF)中のフッ素原子に対応するピーク
Xは、{(a1+a2+a3)/2}/{(b1+b2)/4}を意味し、具体的には、フルオロポリエーテル鎖における(OCFCF)で表される単位に対する(OCF)で表される単位の割合を示す数値である。つまり、Xが大きい場合、フルオロポリエーテル鎖中における(OCF)で表される単位の存在割合が高いことを意味する。
ここで、(a1+a2+a3)に1/2を乗じており、(b1+b2)に1/4を乗じているのは、a1、a2及びa3が(OCF)における2つのフッ素原子に対応する積分値であり、b1及びb2が(OCFCF)における4つのフッ素原子に対応する積分値であるためである。
Yは、(a3)/(a1+a2+a3)を意味し、具体的には、フルオロポリエーテル鎖中の(OCF)を含む配列において、(OCF)が3つ以上連続して配列する構造の割合を示す数値である。つまり、Yが大きい場合、フルオロポリエーテル鎖中において(OCF)が連続して配列している部分が多いことを意味する。
ここで、Yが大きい含フッ素エーテル化合物を得る方法としては、例えば、含フッ素エーテル化合物の製造時において、(OCFCF)で表される単位に対する(OCF)で表される単位の割合が高い化合物M11と、(OCFCF)で表される単位を有する化合物M12と、を反応させて得られた原料M13を用いる方法が挙げられる。化合物M11は、(OCF)の割合が高いので、(OCF)が連続して配列している傾向にある。そのため、化合物M11を用いると、Yの値を高くすることが可能となる。
一方で、Yが小さい含フッ素エーテル化合物を得る方法としては、例えば、含フッ素エーテル化合物の製造時において、(OCFCF)で表される単位に対する(OCF)で表される単位の割合が低い化合物M21を用いる方法が挙げられる。化合物M21は、(OCF)の割合が低いので、(OCF)が連続して配列しにくい傾向にある。そのため、化合物M21を用いると、Yの値を低くすることが可能となる。
19F-NMRスペクトルにおけるピークの積分値を求める際には、19F-NMRスペクトルにおいて該当するピークを挟むように優位なシグナルが無い2点を決定し、この2点を結ぶ直線をベースラインとして各積分値を算出する。
ここで、図1は、横軸を上記X(すなわち、{(a1+a2+a3)/2}/{(b1+b2)/4})の値、縦軸を上記Y(すなわち、(a3)/(a1+a2+a3))の値とする直交座標系に、後述の実施例欄で用いた各含フッ素エーテル化合物のX及びYの値から与えられる点をプロットしたグラフである。
図1にプロットした点のうち、点Aの群、及び、点Bの群は、耐摩擦性及び潤滑性に優れた表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物を示し、点Cの群は、耐摩耗性及び潤滑性の少なくとも一方が不十分である表面層を形成する含フッ素エーテル化合物を示す。また、点Aの群、及び、点Bの群を比較した場合、点Aの群の含フッ素エーテル化合物を用いた方が、耐摩擦性及び潤滑性により優れた表面層を形成できる。
図1における曲線A-1は、グラフ上にプロットした点Bの群と点Cの群とに基づいて得られた曲線である。曲線A-1は、上記式(A-1)に対応し、Y=-0.0062X+0.1343X+0.1123の二次関数で表される。
曲線A-1よりも縦軸の正側に存在する点(図1においては、点Aの群及び点Bの群)が、上記式(A-1)を満たす含フッ素エーテル化合物であり、曲線A-1上、及び、曲線A-1よりも縦軸の負側に存在する点(図1においては、点Cの群)が、上記式(A-1)を満たさない含フッ素エーテル化合物である。
なお、図1における曲線A-2については後述する。
本発明者らは、XとYというパラメータに着目して、本発明の効果との関連性を調べたところ、「曲線A-1」を境にして所定の効果が得られることを知見した。
ここで、Xは、簡潔にいえば(OCF)で表される単位の量を表しており、Yは、簡潔いえば両端が(OCF)で挟まれた(OCF)の量を表している。本発明者らは、Xの値が変化すると、これに連動して所定の効果が発現するYの値が変化することに着目し、XとYのパラメータが密接な関連性があることを見出し、上記曲線A-1を導き出した。
式(A-1)におけるXは、表面層の耐摩擦性及び潤滑性の少なくとも一方がより優れる点から、0.9~8が好ましく、2~8がより好ましく、3~6が更に好ましい。
式(A-1)におけるYは、1.0未満であり、表面層の耐摩擦性及び潤滑性の少なくとも一方がより優れる点から、0.10~0.90が好ましく、0.46~0.85がより好ましく、0.50~0.85が更に好ましい。
<式(A-2)>
本表面処理剤に含まれる含フッ素エーテル化合物は、19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、下式(A-2)を満たすことが好ましい。これにより、表面層の耐摩擦性及び潤滑性の少なくとも一方がより優れる。
Y>-0.0056X+0.1231X+0.2119 ・・・(A-2)
式(A-2)のX及びYは、上記式(A-1)のX及びYと同じである。
ここで、図1における曲線A-2は、グラフ上にプロットした点Aの群と点Bの群とに基づいて得られた曲線である。式(A-2)は、図1における曲線A-2に対応し、曲線A-2は、Y=-0.0056X+0.1231X+0.2119の二次関数で表される。
曲線A-2よりも縦軸の正側に存在する点(図1においては、点Aの群)が、上記式(A-2)を満たす含フッ素エーテル化合物であり、曲線A-2上、及び、曲線A-2よりも縦軸の負側に存在する点(図1においては、点Bの群)が、上記式(A-2)を満たさない含フッ素エーテル化合物である。
本発明者らは、XとYというパラメータに着目して、本発明の効果との関連性を調べたところ、「曲線A-2」を境にして、本発明の効果がより向上することを見出した。
<式(A-3)>
本表面処理剤に含まれる含フッ素エーテル化合物は、19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、上記式(A-1)を満たし、かつ、下式(A-3)を満たすことが好ましく、上記式(A-2)を満たし、かつ、下式(A-3)を満たすことがより好ましい。これにより、表面層の耐摩擦性及び潤滑性の少なくとも一方が特に優れる。
Y<-0.0045X+0.098X+0.4645 ・・・(A-3)
式(A-3)のX及びYは、上記式(A-1)のX及びYと同じである。
式(A-3)は、図1における曲線A-3に対応し、曲線A-3は、Y=-0.0045X+0.098X+0.4645の二次関数で表される。
<含フッ素エーテル化合物>
本表面処理剤に含まれる含フッ素エーテル化合物は、(OCF)で表される単位及び(OCFCF)で表される単位を含むフルオロポリエーテル鎖と、反応性シリル基と、を有する。
含フッ素エーテル化合物はフルオロポリエーテル鎖を有するため、含フッ素エーテル化合物を用いて得られる表面層は、撥水撥油性、指紋汚れ除去性に優れる。
含フッ素エーテル化合物は反応性シリル基を有する。当該反応性シリル基は基材と強固に化学結合するため得られる表面層は摩擦耐久性に優れる。
フルオロポリエーテル鎖は、下記構造(G1)を有することが好ましい。
(OCFm11・(OCFCFm12 ・・・(G1)
ただし、
m11は、含フッ素エーテル化合物における(OCF)の平均個数を意味し、2以上の正数であり、
m12は、含フッ素エーテル化合物における(OCFCF)の平均個数を意味し、2以上の正数である。
式(G1)において、(OCF)と(OCFCF)の結合順序は任意である。例えば、式(G1)において(OCF)と(OCFCF)が交互に配置されてもよく、(OCF)と(OCFCF)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。
m11は、2以上の正数であり、2~100の正数が好ましく、3~80の正数がより好ましく、4~60の正数が更に好ましい。
m12は、2以上の正数であり、2~100の正数が好ましく、3~80の正数がより好ましく、4~60の正数が更に好ましい。
m11/m12の値は、0.8~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7が更に好ましい。
含フッ素エーテル化合物における(OCF)の平均個数及び(OCFCF)の平均個数は、19F-NMRによって測定される。
含フッ素エーテル化合物におけるフルオロポリエーテル鎖は、(OCF)及び(OCFCF)以外のオキシフルオロアルキレン単位(以下、「他のオキシフルオロアルキレン単位」ともいう。)を含んでいてもよい。
他のオキシフルオロアルキレン単位の具体例としては、(OGf1m1、(OGf2m2、(OGf3m3、(OGf4m4、(OGf5m5、(OGf6m6が挙げられる。
ただし、Gf1は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり(ただし、Gf1が-CF-である場合を除く。)、
f2は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり(ただし、Gf2が-CFCF-である場合を除く。)、
f3は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
f4は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
f5は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
f6は、炭素数6のフルオロアルキレン基であり、
m1、m2、m3、m4、m5、m6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表す。
なお、フルオロポリエーテル鎖が(OGf1)~(OGf6)から選択される少なくとも一種の単位を有する場合、(OGf1)~(OGf6)の結合順序は任意である。m1~m6は、それぞれ、(OGf1)~(OGf6)の平均個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(OGf5m5は、(OGf5)の平均個数がm5個であることを表し、(OGf5m5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(OGf1)~(OGf6)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
また上記炭素数3~6のフルオロアルキレン基は、直鎖フルオロアルキレン基であってもよく、分岐、又は環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
f1の具体例としては、-CHF-が挙げられる。
f2の具体例としては、-CHFCF-、-CHFCHF-、-CHCF-、-CHCHF-等が挙げられる。
f3の具体例としては、-CFCFCF-、-CFCHFCF-、-CFCHCF-、-CHFCFCF-、-CHFCHFCF-、-CHFCHFCHF-、-CHFCHCF-、-CHCFCF-、-CHCHFCF-、-CHCHCF-、-CHCFCHF-、-CHCHFCHF-、-CHCHCHF-、-CF(CF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CH)-CF-、-CF(CF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CH)-CHF-、-CF(CF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CH)-CH-、-CH(CF)-CF-、-CH(CHF)-CF-、-CH(CHF)-CF-、-CH(CH)-CF-、-CH(CF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CH)-CHF-、-CH(CF)-CH-、-CH(CHF)-CH-、-CH(CHF)-CH-等が挙げられる。
f4の具体例としては、-CFCFCFCF-、-CHFCFCFCF-、-CHCFCFCF-、-CFCHFCFCF-、-CHFCHFCFCF-、-CHCHFCFCF-、-CFCHCFCF-、-CHFCHCFCF-、-CHCHCFCF-、-CHFCFCHFCF-、-CHCFCHFCF-、-CFCHFCHFCF-、-CHFCHFCHFCF-、-CHCHFCHFCF-、-CFCHCHFCF-、-CHFCHCHFCF-、-CHCHCHFCF-、-CFCHCHCF-、-CHFCHCHCF-、-CHCHCHCF-、-CHFCHCHCHF-、-CHCHCHCHF-、-cycloC-等が挙げられる。
f5の具体例としては、-CFCFCFCFCF-、-CHFCFCFCFCF-、-CHCHFCFCFCF-、-CFCHFCFCFCF-、-CHFCHFCFCFCF-、-CFCHCFCFCF-、-CHFCHCFCFCF-、-CHCHCFCFCF-、-CFCFCHFCFCF-、-CHFCFCHFCFCF-、-CHCFCHFCFCF-、-CHCFCFCFCH-、-cycloC-等が挙げられる。
f6の具体例としては、-CFCFCFCFCFCF-、-CFCFCHFCHFCFCF-、-CHFCFCFCFCFCF-、-CHFCHFCHFCHFCHFCHF-、-CHFCFCFCFCFCH-、-CHCFCFCFCFCH-、-cycloC10-等が挙げられる。
ここで、-cycloC-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基、ペルフルオロシクロブタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
フルオロポリエーテル鎖中のフッ素原子の割合[{フッ素原子数/(フッ素原子数+水素原子数)}×100(%)]は、撥水撥油性及び指紋除去性に優れる点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
また、フルオロポリエーテル鎖部分の分子量は、耐摩擦性の点から、2,000~20,000が好ましく、2,500~15,000がより好ましく、3,000~10,000が更に好ましい。
フルオロポリエーテル鎖を構成する全単位の合計個数に対して、他のオキシフルオロアルキレン単位の合計個数の割合は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
反応性シリル基は、基(g1)が好ましい。
-SiRa1 z1a2 3-z1 ・・・(g1)
ただし、
a1は水酸基又は加水分解性基であって、Ra1が複数ある場合、複数あるRa1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
a2は非加水分解性基であり、Ra2が複数ある場合、複数あるRa2は互いに同一であっても異なっていてもよく、
z1は1~3の整数である。
a1が水酸基の場合、Si原子と共にシラノール(Si-OH)基を構成する。また、加水分解性基は加水分解反応によって水酸基(すなわちシラノール基)となる基である。シラノール基は、更に分子間で反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材(又は下地層)の表面の水酸基(基材(又は下地層)-OH)と脱水縮合反応して、化学結合(基材(又は下地層)-O-Si)を形成する。含フッ素エーテル化合物は、基(g1)を1以上有することにより、表面層形成後の耐摩擦性に優れる。
a1の加水分解性基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イソシアナート基(-NCO)等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。アシル基としては、炭素数1~6のアシル基が好ましい。アシルオキシ基としては、炭素数1~6のアシルオキシ基が好ましい。
a1は、含フッ素エーテル化合物の製造のしやすさの点から、中でも、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子が好ましい。Ra1におけるアルコキシ基は、含フッ素エーテル化合物の保存安定性に優れ、反応時のアウトガスが抑制される点から、中でも、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、長期の保存安定性の点からはエトキシ基がより好ましく、加水分解反応委時間を短時間にする点からはメトキシ基がより好ましい。ハロゲン原子としては、中でも塩素原子が好ましい。
a2の非加水分解性基としては、水素原子又は1価の炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリル基等が挙げられ、製造の容易性等の点から、アルキル基が好ましい。また、製造の容易性等の点から、炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
z1は1~3の整数であればよく、基材(又は下地層)との密着性の点から、2又は3が好ましく、3がより好ましい。
基(g1)の具体例としては、-Si(OCH、-SiCH(OCH、-Si(OCHCH、-SiCl、-Si(OCOCH、-Si(NCO)等が挙げられる。製造における取扱いやすさの点から、-Si(OCHが好ましい。
なお、1分子中に基(g1)が複数ある場合、当該複数ある基(g1)は同一であっても異なっていてもよい。
含フッ素エーテル化合物は、上記フルオロポリエーテル鎖と、上記基(g1)が直接又は連結基を介して結合している。当該連結基としては2価以上の有機基が挙げられる。
含フッ素エーテル化合物1分子中のフルオロポリエーテル鎖の数は1個であっても2個以上であってもよい。合成の容易性等の点から、1分子中のフルオロポリエーテル鎖の数は1~20個が好ましく、1~10個がより好ましく、1~4個が更に好ましい。
また、含フッ素エーテル化合物1分子中の基(g1)の数は1個であっても2個以上であってもよい。耐摩擦性と撥水撥油性等を両立する点から、基(g1)の数は1~32個が好ましく、1~18個がより好ましく、2~12個が更に好ましい。
なお、フルオロポリエーテル鎖が複数ある場合、複数あるフルオロポリエーテル鎖は同一であっても異なっていてもよい。また、基(g1)が複数ある場合、複数ある基(g1)は同一であっても異なっていてもよい。
含フッ素エーテル化合物の含有量は、本表面処理剤の全質量に対して、0.01~100質量%が好ましく、0.10~99.99質量%がより好ましく、1.00~99.00質量%が更に好ましい。含フッ素エーテル化合物の含有量が上記範囲にあれば、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、外観により優れる。
含フッ素エーテル化合物は、上記の構成を満たすものであればよい。合成の容易性、化合物の取り扱いの容易性等の点からは、中でも下式(1-1)、下式(1-2)又は下式(1-3)で表される化合物であることが好ましい。
[Rf1-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-(R11-T11x1 ・・・(1-1)
(T31-R31x3-L-R-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-(R21-T21x2 ・・・(1-2)
[-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-(R41-T41x4r1 ・・・(1-3)
ただし、
f1は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、Rf1が複数ある場合、複数あるRf1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
(OCFm11・(OCFCFm12は、上述の通りであり、
は、アルキレン基又はフルオロアルキレン基であり、Rが複数ある場合、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく(ただし、Rがフルオロアルキレン基である場合、Rは-CF-及び-CFCF-以外のフルオロアルキレン基である。)、
は、単結合又は、N、O、S、Siを有していてもよく、分岐点を有していてもよいj+x1価の有機基であって、R及びR11に結合する原子は、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子であり、
11は、Lに結合する原子がエーテル性酸素原子でもよく、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよいアルキレン基であり、
11は、-SiRa11 z11a12 3-z11であり、
a11は水酸基又は加水分解性基であって、Ra11が複数ある場合、複数あるRa11は互いに同一であっても異なっていてもよく、
a12は非加水分解性基であり、Ra12が複数ある場合、複数あるRa12は互いに同一であっても異なっていてもよく、
jは1以上の整数であり、
z11は1~3の整数であり、
x1は1以上の整数であり、
及びRは、各々独立に、アルキレン基又はフルオロアルキレン基であり(ただし、Rがフルオロアルキレン基である場合、Rは-CF-及び-CFCF-以外のフルオロアルキレン基である。)、
は、単結合又は、N、O、S、Siを有していてもよく、分岐点を有していてもよい1+x2価の有機基であって、R及びR21に結合する原子は、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子であり、
21は、Lに隣接する原子がエーテル性酸素原子でもよく、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよいアルキレン基であり、
は、単結合又は、N、O、S、Siを有していてもよく、分岐点を有していてもよい1+x3価の有機基であって、R及びR31に結合する原子は、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子であり、
31は、Lに隣接する原子がエーテル性酸素原子でもよく、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよいアルキレン基であり、
21及びT31は、各々独立に、-SiRa21 z21a22 3-z21であり、
a21は水酸基又は加水分解性基であって、Ra21が複数ある場合、複数あるRa21は互いに同一であっても異なっていてもよく、
a22は非加水分解性基であり、Ra22が複数ある場合、複数あるRa22は互いに同一であっても異なっていてもよく、
z21は1~3の整数であり、
x2及びx3は各々独立に1以上の整数であり、
は分岐点を有するr1価の基であり、
は、各々独立に、アルキレン基又はフルオロアルキレン基であり(ただし、Rがフルオロアルキレン基である場合、Rは-CF-及び-CFCF-以外のフルオロアルキレン基である。)、
は、単結合又は、N、O、S、Siを有していてもよく、分岐点を有していてもよい1+x4価の有機基であって、R及びR41に結合する原子は、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子であり、
41は、Lに隣接する原子がエーテル性酸素原子でもよく、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよいアルキレン基であり、
41は、-SiRa41 z41a42 3-z41であり、
a41は水酸基又は加水分解性基であって、Ra41が複数ある場合、複数あるRa41は互いに同一であっても異なっていてもよく、
a42は非加水分解性基であり、Ra42が複数ある場合、複数あるRa42は互いに同一であっても異なっていてもよく、
z41は1~3の整数であり、
x4は1以上の整数であり、
r1は3又は4である。
以下、各化合物の構成について説明するが、同様の構造を有する符号についてはそのことを示し、適宜読み替えて参照できるものとする。
(化合物(1-1))
化合物(1-1)は、下記式(1-1)で表される構造を有する。
[Rf1-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-(R11-T11x1 ・・・(1-1)
ただし、式(1-1)中の各符号は上述の通りである。
f1は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。当該フルオロアルキル基は、直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造を有していてもよい。耐摩擦性の点から直鎖フルオロアルキル基が好ましく、合成の容易性等の点から、フルオロアルキル基の炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
(OCFm11・(OCFCFm12は、上述の通りである。
は、アルキレン基又はフルオロアルキレン基である。ただし、Rがフルオロアルキレン基である場合、Rは-CF-及び-CFCF-以外のフルオロアルキレン基である。
におけるアルキレン基及びフルオロアルキレン基は直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造を有していてもよい。合成の容易性等の点から直鎖又は分岐を有するアルキレン基又はフルオロアルキレン基が好ましく、直鎖もしくは分岐としてメチル基又はフルオロメチル基を有するアルキレン基又はフルオロアルキレン基がより好ましい。Rにおける炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。なお、Rは、Lが単結合の場合、R11に結合する。この場合、R中のR11に結合する炭素原子が少なくとも1個のフッ素原子又はフルオロアルキル基と結合しているものとする。
jは1分子中の[Rf1-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R]の数を表し、1以上の整数であればよく、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4が更に好ましい。
11は、Lに結合する原子がエーテル性酸素原子でもよく、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよいアルキレン基である。
11におけるアルキレン基は、直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造を有していてもよい。本表面処理剤が表面層を形成する際に密に配置されやすい点からは、直鎖又は分岐としてメチル基を有するアルキレン基が好ましく、直鎖アルキレン基がより好ましい。
11は、具体的には下式(g2)で表すことができる。
*-(O)a1-(Rg2O)a2-Rg2-** ・・・(g2)
ただし、
g2は、炭素数1以上のアルキレン基であり、複数あるRg2は互いに同一であっても異なっていてもよく、
a1は0又は1であり、
a2は0以上の整数であり、
*はLに結合する結合手であり、
**はT11に結合する結合手である。
a1が0の場合は結合手*を有する原子が炭素原子となり、a1が1の場合は結合手*を有する原子が酸素原子となる。化合物(1-1)においてa1は0又は1のいずれでもよく、合成等の点から適宜選択すればよい。
a2はRg2Oの繰り返し数であり、表面層としての耐久性等の点から、0~6が好ましく、0~3がより好ましく、0~1が更に好ましい。
11は、表面層として撥水撥油性、指紋汚れ除去性により優れ、耐摩擦性等の耐久性にも優れる点から、下式(g3)で表される基であることが更に好ましい。
*-(O)a1-Rg3-** ・・・(g3)
ただし、
g3はアルキレン基であり、
a1、*及び**は式(g2)と同様である。
g3におけるアルキレン基は、直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造を有していてもよい。化合物(1-1)が表面層を形成する際に密に配置されやすい点からは直鎖アルキレン基が好ましい。
11は-SiRa11 z11a12 3-z11であり、Ra11、Ra12、z11は、それぞれ上記基(g1)を構成するRa1、Ra2、z1と同様であり、好ましい態様も同様である。
x1は1分子中の-R11-T11の数を表し、1以上の整数であればよく、1~32が好ましく、1~18がより好ましく、2~12が更に好ましい。
は、単結合又は、N、O、S、Siを有していてもよく、分岐点を有していてもよいj+x1価の基であって、R及びR11に結合する原子は、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子である。なおR及びR11に結合する原子は同一原子であってもよく、異なる原子であってもよい。
が単結合の場合、式(1-1)のRとR11は直接結合し、化合物(1-1)は下式(1-1’)で表される。
f1-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-R11-T11 ・・・(1-1’)
ただし、式(1-1’)中の各符号は、式(1-1)と同様である。
が3価以上の基の場合、LはC、N、Si、環構造及び(j+x1)価のオルガノポリシロキサン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の分岐点(以下、「分岐点P」ともいう。)を有する。
Nが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば*-N(-**)又は(*-)N-**で表される。ただし、*はR側の結合手であり、**はR11側の結合手である。
Cが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば*-C(-**)、(*-)C(-**)、(*-)C-**、*-CR29(-**)、又は(*-)CR29-**で表される。ただし、*はR側の結合手であり、**はR11側の結合手であり、R29は1価の基であり、例えば、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
Siが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば*-Si(-**)、(*-)Si(-**)、(*-)Si-**、*-SiR29(-**)、又は(*-)SiR29-**で表される。ただし、*はR側の結合手であり、**はR11側の結合手であり、R29は1価の基であり、例えば、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
分岐点Pを構成する環構造としては、化合物(1-1)を製造しやすい点、及び表面層の耐摩擦性、耐光性及び耐薬品性が更に優れる点から、3~8員環の脂肪族環、3~8員環の芳香族環、3~8員環のヘテロ環、及びこれらの環のうちの2つ以上からなる縮合環からなる群から選ばれる1種が好ましく、下式に挙げられる環構造がより好ましい。環構造は、ハロゲン原子、アルキル基(炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)、シクロアルキル基、アルケニル基、アリル基、アルコキシ基、オキソ基(=O)等の置換基を有してもよい。
分岐点Pを構成するオルガノポリシロキサン残基としては、例えば、下記の基が挙げられる。ただし、下式におけるR25は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はフェニル基である。R25のアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1~10が好ましく、1がより好ましい。
2価以上のLは、-C(O)N(R26)-、-N(R26)C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-O-、-N(R26)-、-S-、-OC(O)O-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-、-NHC(O)N(R26)-、-SON(R26)-、-N(R26)SO-、-Si(R26-、-OSi(R26-、-Si(CH-Ph-Si(CH-及び2価のオルガノポリシロキサン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合(以下、「結合B」ともいう。)を有していてもよい。
ただし、R26は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、Phは、フェニレン基である。R26のアルキル基の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
2価のオルガノポリシロキサン残基としては、例えば、下式の基が挙げられる。ただし、下式におけるR27は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はフェニル基である。R27のアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1~10が好ましく、1がより好ましい。
結合Bとしては、化合物(1-1)を製造しやすい点から、-C(O)NR26-、-N(R26)C(O)-、-C(O)-、及び-NR26-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合が好ましく、表面層の耐光性及び耐薬品性が更に優れる点から、-C(O)NR26-、-N(R26)C(O)-又は-C(O)-がより好ましい。
2価のLとしては、R及びR11に結合する原子が、各々独立に、N、O、S、Si又はオキソ基(=O)を有する炭素原子である。すなわち、R及びR11に隣接する原子が各々結合Bの構成元素である。2価のLの具体例としては、単結合、1個以上の結合B(例えば、*-B-**、*-B-R28-B-**)等が挙げられる。ただし、R28は単結合又は2価の有機基であり、*はR側の結合手であり、**はR11側の結合手である。
3価以上のLは、R及びR11に結合する原子が、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子である。すなわち、R及びR11に隣接する原子が各々結合B又は分岐点Pの構成元素である。3価以上のLの具体例としては、1個以上の分岐点P(例えば{(*-)(-**)x1}、{(*-)-R28-P(-**)x1}等)、1個以上の分岐点Pと1個以上の結合Bとの組み合わせ(例えば、{*-B-R28-P(-**)x1}、{*-B-R28-P(-R28-B-**)x1}等が挙げられる。ただし、R28は単結合又は2価の有機基であり、*はR側の結合手であり、**はR11側の結合手である。
上記R28における2価の有機基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(アルキレン基、シクロアルキレン基等)、2価の芳香族炭化水素基(フェニレン基等)等の炭化水素基が挙げられ、当該炭化水素基の炭素-炭素原子間に結合Bを有していてもよい。2価の有機基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。
上記Lとしては、化合物(1-1)を製造しやすい点から、下式(L1)~(L7)のいずれかで表される基が好ましい。
(-A-)d5C(Re24-d5―d6(-Q22-)d6 ・・・(L2)
(-A-)d7N(-Q23-)3-d7 ・・・(L3)
(-A-)d8(-Q24-)d9 ・・・(L4)
(-A-)d10Si(Re34-d10-d11(-Q25-)d11 ・・・(L5)
-A-Q26- ・・・(L6)
-A-CH(-Q22-)-Si(Re33-d12(-Q25-)d12 ・・・(L7)
ただし、式(L1)~式(L7)においては、A、A又はA側が式(1-1)のRと接続し、Q22、Q23、Q24、Q25又はQ26側がR11に接続する。
ここで、Aは、単結合、-B-、-B-R30-、又は-B-R30-B-であって、R30はアルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-C(O)NRe6-、-C(O)-、-NRe6-又は-O-を有する基であり、Bは、-C(O)NRe6-、-C(O)-、-NRe6-又は-O-であり、Bは-C(O)NRe6-、-C(O)-、又は-NRe6-であり、
は、単結合又は-B-R30-であり、
は、Aが結合するZにおける原子が炭素原子の場合はAであり、Aが結合するZにおける原子が窒素原子の場合はAであり、
11は、単結合、-O-、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-C(O)NRe6-、-C(O)-、-NRe6-又は-O-を有する基であり、
22は、単結合、-B-、-R30-B-又は-B-R30-B-であり、
23は、単結合又は-R30-B-であり、
24は、Q24が結合するZにおける原子が炭素原子の場合、Q22であり、Q24が結合するZにおける原子が窒素原子の場合、Q23であり、
25は、単結合又は-R30-B-であり、
26は、単結合又は-R30-B-であり、
は、Aが直接結合する炭素原子又は窒素原子を有しかつQ24が直接結合する炭素原子又は窒素原子を有する(d8+d9)価の環構造を有する基であり、
e1は、水素原子又はアルキル基であり、
e2は、水素原子、水酸基、アルキル基又はアシルオキシ基であり、
e3は、アルキル基であり、
e6は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、
d1は0~3の整数であり、d2は0~3の整数であって、d1+d2は1~3の整数であり、
d3は0~3の整数であり、d4は0~3の整数であって、d3+d4は1~3の整数であり、
d1+d3は1~5の整数であり、
d2+d4は1~5の整数であり、
d5は1~3の整数であり、d6は1~3の整数であって、d5+d6は2~4の整数であり、
d7は1又は2であり、
d8は1以上の整数であり、
d9は1以上の整数であり、
d10は1~3の整数であり、d11は1~3の整数であって、d10+d11は2~4の整数であり、
d12は1~3の整数である。
なお、Aが複数ある場合、当該複数あるAは互いに同一であっても異なっていてもよい。A、A、Q22、Q23、Q24、Q25、Re1、Re2、Re3についても同様である。
また、d1+d3、d5、d7、d8、d10がjであり、d2+d4、d6、3-d7、d9、d11、1+d12がx1である。
30のアルキレン基の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点、及び表面層の耐摩擦性、耐光性及び耐薬品性が更に優れる点から、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。ただし、炭素-炭素原子間に特定の結合を有する場合のアルキレン基の炭素数の下限値は2である。
における環構造としては、上述した環構造が挙げられ、好ましい形態も同様である。
e1、Re2又はRe3のアルキル基の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
e2のアシルオキシ基のアルキル基部分の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
d9は、化合物(1-1)を製造しやすい点、及び表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性が更に優れる点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2又は3が更に好ましい。
上記Lの他の形態としては、下式(L11)~(L17)のいずれかで表される基が挙げられる。
(-A-)d5C(Re24-d5―d6(-Q22-G)d6 ・・・(L12)
(-A-)d7N(-Q23-G)3-d7 ・・・(L13)
(-A-)d8(-Q24-G)d9 ・・・(L14)
(-A-)d10Si(Re34-d10-d11(-Q25-G)d11 ・・・(L15)
-A-Q26-G ・・・(L16)
-A-CH(-Q22-)-Si(Re33-d12(-Q25-G)d12 ・・・(L17)
ただし、式(L11)~式(L17)において、A、A又はA側が式(1-1)のRと接続し、Q22、Q23、Q24、Q25又はQ26側がR11に接続する。Gは、下記の基(G21)であり、Lが有する2以上のGは同一であっても異なっていてもよい。G以外の符号は、式(L1)~式(L7)における符号と同じである。
-Si(R213-k(-Q-) ・・・(G21)
ただし、式(G21)において、Si側がQ22、Q23、Q24、Q25又はQ26に接続し、Q側がR11に接続する。R21は、アルキル基である。Qは、単結合、又は-R31-B-であって、R31は、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-C(O)NR32-、-C(O)-、-NR32-又は-O-を有する基、又は-(OSi(R22p11-O-であり、2以上のQは同一であっても異なっていてもよい。kは、2又は3である。R32は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基である。R22は、アルキル基、フェニル基又はアルコキシ基であり、2個のR22は同一であっても異なっていてもよい。p11は、0~5の整数であり、p11が2以上の場合、2以上の(OSi(R22)は同一であっても異なっていてもよい。
のアルキレン基の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点、及び表面層の耐摩擦性、耐光性及び耐薬品性が更に優れる点から、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。ただし、炭素-炭素原子間に特定の結合を有する場合のアルキレン基の炭素数の下限値は2である。
21のアルキル基の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
22のアルキル基の炭素数は、化合物(1-1)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
22のアルコキシ基の炭素数は、化合物(1-1)の保存安定性に優れる点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
p11は、0又は1が好ましい。
化合物(1-1)としては、例えば、下記のものが挙げられる。ただしRは[Rf1-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R]である。
Figure 2023114103000014
(化合物(1-2))
化合物(1-2)は、下記式(1-2)で表される構造を有する。
(T31-R31x3-L-R-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-(R21-T21x2 ・・・(1-2)
ただし、式(1-2)中の各符号は上述の通りである。
(OCFm11・(OCFCFm12は、上述の通りである。
及びRは各々独立に上記Rと同様であり、好ましい態様も同様である。
21及びR31は上記R11と同様であり、好ましい態様も同様である。ただし、「Lに結合する」は、R21の場合は「Lに結合する」に読み替え、R31の場合は「Lに結合する」と読み替えるものとする。また、「T11に結合する」は、R21の場合は「T21に結合する」に読み替え、R31の場合は「T31に結合する」と読み替えるものとする。なお、Lが単結合の場合、R21はRに直接結合する。また、Lが単結合の場合、R31はRに直接結合する。
21及びT31は各々独立に-SiRa21 z21a22 3-z21であり、Ra21、Ra22、z21は、それぞれ上記基(g1)を構成するRa1、Ra2、z1と同様であり、好ましい態様も同様である。
x2及びx3は各々独立にx1と同様であり、好ましい態様も同様である。
及びLは各々独立に上記Lのうちjが1の場合と同様である。
例えばL及びLが単結合の場合は、化合物(1-2)は、下式(1-2’)で表される。
31-R31-R-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-R21-T21 ・・・(1-2’)
ただし、式(1-2’)中の各符号は、式(1-2)と同様である。
又はLが3価以上の基の場合、当該L又はLはC、N、Si、環構造及び(1+x2)価又は(1+x3)価のオルガノポリシロキサン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の分岐点(以下、「分岐点P」ともいう。)を有する。
Nが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば*-N(-**)で表される。ただし、*はR又はR側の結合手であり、**はR21又はR31側の結合手である。
Cが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば*-C(-**)、又は*-CR29(-**)で表される。ただし、*はR又はR側の結合手であり、**はR21又はR31側の結合手であり、R29は1価の基であり、例えば、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
Siが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば*-Si(-**)、又は*-SiR29(-**)で表される。ただし、*はR又はR側の結合手であり、**はR21又はR31側の結合手であり、R29は1価の基であり、例えば、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
分岐点Pを構成する環構造、オルガノポリシロキサン残基は、上記分岐点Pと同様であり好ましい態様も同様である。
また、2価以上のL又はLは各々独立に上記結合Bを有していてもよい。結合Bの態様は前述の通りであり、好ましい態様も同様である。
2価のL又はLは、R及びR21、もしくは、R及びR31に結合する原子が、各々独立に、N、O、S、Si又はオキソ基(=O)を有する炭素原子である。すなわち、R及びR21、もしくは、R及びR31に隣接する原子が各々結合Bの構成元素である。2価のL又はLの具体例としては、単結合、1個以上の結合B(例えば、*-B-**、*-B-R28-B-**)等が挙げられる。ただし、R28は単結合又は2価の有機基であり、*はR又はR側の結合手であり、**はR21又はR31側の結合手である。
3価以上のL又はLは、R及びR21、もしくは、R及びR31に結合する原子が、各々独立に、N、O、S、Si、分岐点を構成する炭素原子、又はオキソ基(=O)を有する炭素原子である。すなわち、R及びR21、もしくは、R及びR31に隣接する原子が各々結合B又は分岐点Pの構成元素である。3価以上のL又はLの具体例としては、1個以上の分岐点P(例えば{*-P(-**)}、{*-P-R28-P-**x1等)、1個以上の分岐点Pと1個以上の結合Bとの組み合わせ(例えば、{*-B-R28-P(-**)}、{*-B-R28-P(-R28-B-**)}等が挙げられる。ただし、xは、Lの場合はx2であり、Lの場合はx3である。R28は単結合又は2価の有機基であり、*はR又はR側の結合手であり、**はR21又はR31側の結合手である。
上記R28の態様は前述の通りであり、好ましい態様も同様である。
上記L又はLとしては、化合物(1-2)を製造しやすい点から、各々独立に下式(L21)~(L27)のいずれかで表される基が好ましい。
-A-C(Re24-d6(-Q22-)d6 ・・・(L22)
-A-N(-Q23-) ・・・(L23)
-A-Z(-Q24-)d9 ・・・(L24)
-A-Si(Re34-d11(-Q25-)d11 ・・・(L25)
-A-Q26- ・・・(L26)
-A-CH(-Q22-)-Si(Re33-d12(-Q25-)d12 ・・・(L27)
ただし、式(L21)~式(L27)においては、A、A又はA側が式R又はRと接続し、Q22、Q23、Q24、Q25又はQ26側がR21又はR31に接続する。
ここで、A、A、A、Q11、Q22、Q23、Q24、Q25、Q26、Re1、Re2、Re3、Re6は上記Lで説明したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
は、Aが直接結合する炭素原子又は窒素原子を有しかつQ24が直接結合する炭素原子又は窒素原子を有する(1+d9)価の環構造を有する基であり、
d2は0~3の整数であり、d4は0~3の整数であって、d2+d4は1~5の整数であり、
d6は1~3の整数あり、
d9は1以上の整数であり、
d11は1~3の整数であり
d12は1~3の整数である。
なお、d2+d4、d6、d9、d11、1+d12がx2又はx3である。
d9は、化合物(1-2)を製造しやすい点、及び表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性が更に優れる点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2又は3が更に好ましい。
上記L又はLの他の形態としては、下式(L31)~(L37)のいずれかで表される基が挙げられる。
-A-C(Re24-d6(-Q22-G)d6 ・・・(L32)
-A-N(-Q23-G) ・・・(L33)
-A-Z(-Q24-G)d9 ・・・(L34)
-A-Si(Re34-d11(-Q25-G)d11 ・・・(L35)
-A-Q26-G ・・・(L36)
-A-CH(-Q22-)-Si(Re33-d12(-Q25-G)d12 ・・・(L37)
ただし、式(L31)~式(L37)において、A、A又はA側が式のR又はRと接続し、Q22、Q23、Q24、Q25又はQ26側がR21又はR31に接続する。Gは、上記基(G21)であり、好ましい態様も同様である。G以外の符号は、式(L21)~式(L27)における符号と同じであり、好ましい態様も同様である。
化合物(1-2)としては、例えば、下記のものが挙げられる。ただしQは-R-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-である。
Figure 2023114103000024
Figure 2023114103000028
(化合物(1-3))
化合物(1-3)は、下記式(1-3)で表される構造を有する。
[-(OCFm11・(OCFCFm12-O-R-L-(R41-T41x4r1 ・・・(1-3)
ただし、式(1-3)中の各符号は上述の通りである。
(OCFm11・(OCFCFm12は、上述の通りである。
は上記Rと同様であり、好ましい態様も同様である。
41は上記R11と同様であり、好ましい態様も同様である。ただし、「Lに結合する」は、「Lに結合する」と読み替えるものとする。また、「T11に結合する」は、「T41に結合する」と読み替えるものとする。なお、Lが単結合の場合、R41はRに直接結合する。
41は、-SiRa41 z41a42 3-z41であり、Ra41、Ra42、z41は、それぞれ上記基(g1)を構成するRa1、Ra2、z1と同様であり、好ましい態様も同様である。
x4はx1と同様であり、好ましい態様も同様である。
は、L又はLと同様であり、好ましい態様も同様である。
は分岐点を有するr1価の基であり、r1は3又は4である。
を構成する分岐点Pとしては、N、C、Si又は環構造が挙げられる。分岐点Pは1個であってもよく、2個以上有していてもよい。
Nが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えば、N(-*)、NR29(-*)で表される。
Cが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えばC(-*)、CR29(-*)、C(R29(-*)等が挙げられる。
Siが分岐点Pとなる場合、分岐点Pは、例えばSi(-*)、SiR29(-*)、Si(R29(-*)等が挙げられる。
ただし、*は(OCFm11・(OCFCFm12側の結合手であり、R29は1価の基である。R29としては、例えば、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、フルオロアルキル基、R41-T41を有しないフルオロポリエーテル鎖等が挙げられる。
分岐点Pを構成する環構造としては、分岐点Pと同様のものが挙げられ、環構造の置換基として、上述の置換基のほか、更にフッ素原子、フルオロアルキル基、R41-T41を有しないフルオロポリエーテル鎖を有していてもよい。
上記Qとしては、化合物(1-3)を製造しやすい点から、下式(Q1)~(Q8)のいずれかで表される基が好ましい。
C(-A11-)d23(Re124-d23 ・・・(Q2)
N(-A12-) ・・・(Q3)
(-A13-)d24 ・・・(Q4)
Si(-A12-)d25(Re134-d25 ・・・(Q5)
CH(-A11-)-Si(Re133-d26(-A11-)d26 ・・・(Q6)
ただし、式(Q1)~式(Q8)においては、A11、A12又はA13が(OCFm11・(OCFCFm12と接続する。
ここで、A11は、単結合、-R40-、-B13-R40-であって、R40はアルキレン基、フルオロアルキレン基、もしくは炭素数2以上のアルキレン基又はフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間に-C(O)NRe17-、-C(O)-、-NRe17-又は-O-を有する基であり、B13は、-C(O)NRe6-、-C(O)-、-NRe6-又は-O-であり、
12は、単結合、又は-R40-であり、
13は、A13が結合するZにおける原子が炭素原子の場合はA11であり、A13が結合するZにおける原子が窒素原子の場合はA12であり、
は、A13が直接結合する炭素原子又は窒素原子を有するr1価の環構造を有する基であり、
52は、単結合、-O-、アルキレン基、フルオロアルキレン基、もしくは炭素数2以上のアルキレン基又はフルオロアルキレン基の炭素-炭素原子間に-C(O)NRe17-、-C(O)-、-NRe17-又は-O-を有する基であり、
e11は、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、R41-T41を有しないフルオロポリエーテル鎖、又はr1が3~4となる範囲で-Q52-C(Re113-d21(-A11-)d21の繰り返し構造を有する基であり、
e12は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、フルオロアルキル基、又はR41-T41を有しないフルオロポリエーテル鎖であり、
e13は、アルキル基又はフルオロアルキル基であり、
e14、Re15、及び、Re16はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又はフルオロアルキル基であり、
e17は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、フルオロアルキル基又はフッ素置換されていてもよいフェニル基であり、
d21は0~3の整数であり、d22は0~3の整数であって、d21+d22は3~4の整数であり、
d23は3又は4であり、
d24は3又は4であり、
d25は3又は4であり、
d26は1又は2であり、
d27は1~3の整数であり、
d28は1又は2であり、
d29は1~3の整数であり、
d30は1~3の整数であり、
d31は1又は2であり、
d32は1又は2であり、
d33は1~3の整数である。
なお、A11が複数ある場合、当該複数あるAは互いに同一であっても異なっていてもよい。A12、A13、Re11、Re12、Re13についても同様である。
40のアルキレン基又はフルオロアルキレン基の炭素数は、化合物(1-3)を製造しやすい点、及び表面層の耐摩擦性、耐光性及び耐薬品性が更に優れる点から、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。ただし、炭素-炭素原子間に特定の結合を有する場合のアルキレン基の炭素数の下限値は2である。
における環構造としては、上述した環構造が挙げられ、好ましい形態も同様である。
e11、Re12、Re13、Re14、Re15及びRe16において、アルキル基又はフルオロアルキレン基の炭素数は、化合物(1-3)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
化合物(1-3)としては、例えば、下記のものが挙げられる。ただしRf3は(OCFm11・(OCFCFm12-O-Rである。
<その他の成分>
本表面処理剤は、上記含フッ素エーテル化合物以外の含フッ素化合物、及び、下記不純物の少なくとも一方を含んでいてもよい。不純物としては、上記含フッ素エーテル化合物及び他の含フッ素化合物の製造上不可避の化合物等が挙げられる。なお、本表面処理剤は、後述する液状媒体を含まない。
他の含フッ素化合物としては、上記含フッ素エーテル化合物の製造過程で副生する含フッ素化合物(以下、「副生含フッ素化合物」ともいう。)、上記含フッ素エーテル化合物と同様の用途に用いられる公知の含フッ素化合物等が挙げられる。
他の含フッ素化合物としては、上記含フッ素エーテル化合物の特性を低下させるおそれが少ない化合物が好ましい。
副生含フッ素化合物としては、上記含フッ素エーテル化合物の合成時における未反応の含フッ素化合物等が挙げられる。本表面処理剤が副生含フッ素化合物を含む場合、該副生含フッ素化合物を除去、もしくは該副生含フッ素化合物量を低減させるための精製工程を簡略化することができる。
公知の含フッ素化合物としては、例えば、下記の文献に記載の化合物が挙げられる。
日本特開平11-029585号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、
日本特許第2874715号公報に記載のケイ素含有有機含フッ素ポリマー、
日本特開2000-144097号公報に記載の有機ケイ素化合物、
日本特開2000-327772号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、
日本特表2002-506887号公報に記載のフッ素化シロキサン、
日本特表2008-534696号公報に記載の有機シリコーン化合物、
日本特許第4138936号公報に記載のフッ素化変性水素含有重合体、
米国特許出願公開第2010/0129672号明細書、国際公開第2014/126064号、日本特開2014-070163号公報に記載の化合物、
国際公開第2011/060047号、国際公開第2011/059430号に記載のオルガノシリコン化合物、
国際公開第2012/064649号に記載の含フッ素オルガノシラン化合物、
日本特開2012-72272号公報に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー、
国際公開第2013/042732号、国際公開第2013/121984号、国際公開第2013/121985号、国際公開第2013/121986号、国際公開第2014/163004号、日本特開2014-080473号公報、国際公開第2015/087902号、国際公開第2017/038830号、国際公開第2017/038832号、国際公開第2017/187775号に記載の含フッ素エーテル化合物、
日本特開2014-218639号公報、国際公開第2017/022437号、国際公開第2018/079743号、国際公開第2018/143433号に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル含有シラン化合物、
日本特開2015-199906号公報、日本特開2016-204656号公報、日本特開2016-210854号公報、日本特開2016-222859号公報に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン
国際公開第2018/216630号、国際公開第2019/039226号、国際公開第2019/039341号、国際公開第2019/039186号、国際公開第2019/044479号、日本特開2019-44158号公報、国際公開第2019/044479号、国際公開第2019/163282号に記載の含フッ素エーテル化合物。
また、含フッ素化合物の市販品としては、信越化学工業社製のKY-100シリーズ(KY-178、KY-185、KY-195等)、AGC社製のSURECO(登録商標) 2101S等のSURECO AFシリーズ、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509等が挙げられる。
本表面処理剤が上述の他の含フッ素化合物を含む場合、他の含フッ素化合物の含有量は、本表面処理剤の全質量に対して、上記含フッ素エーテル化合物の特性を充分に発揮できる点から、50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましい。
[コーティング液]
本発明のコーティング液(以下、「本コーティング液」ともいう。)は、本表面処理剤と液状媒体とを含む。本コーティング液は、液状であればよく、溶液であってもよく、分散液であってもよい。
本コーティング液は、本表面処理剤を含んでいればよく、含フッ素エーテル化合物の製造工程で生成した副生物等の不純物を含んでもよい。
本表面処理剤の含有量は、本コーティング液の全質量に対して、0.001~40質量%が好ましく、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
液状媒体としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であってもよく、非フッ素系有機溶媒であってもよく、両溶媒を含んでもよい。
フッ素系有機溶媒の具体例としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコールが挙げられる。
フッ素化アルカンの具体例としては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、C13H(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C13(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、CCHFCHFCF(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物の具体例としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、CFCHOCFCFH(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、COCH(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、COC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、CCF(OCH)C(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンの具体例としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
フルオロアルコールの具体例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子及び炭素原子のみからなる化合物、水素原子、炭素原子及び酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒が挙げられる。
本コーティング液は、液状媒体を60~99.999質量%含むことが好ましく、85~99.99質量%含むことが好ましく、90~99.9質量%含むことがより好ましい。
本コーティング液は、本表面処理剤と液状媒体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、それら以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、加水分解性シリル基の加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の公知の添加剤が挙げられる。
本コーティング液における、他の成分の含有量は、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
本表面処理剤と他の成分の合計の濃度(以下、「固形分濃度」ともいう。)は、0.001~40質量%が好ましく、0.01~20質量%がより好ましく、0.01~10質量%が更に好ましく、0.01~1質量%が特に好ましい。コーティング液の固形分濃度は、加熱前のコーティング液の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間加熱した後の質量とから算出する値である。
[物品]
本発明の物品(以下、「本物品」ともいう。)は、基材と、基材上に配置された表面層と、を有し、基材と表面層との間に下地層を有することが好ましい。
表面層は、本表面処理剤又は本コーティング液から形成される層であり、上記含フッ素エーテル化合物の縮合体を含む。
基材の材質及び形状は、本物品の用途等に応じて適宜選択すればよい。基材の材質としては、ガラス、樹脂、サファイア、金属、セラミック、石、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。特に、撥水撥油性が求められる基材として、タッチパネル用基材、ディスプレイ用基材、電子機器の筐体を構成する基材等が挙げられる。タッチパネル用基材、ディスプレイ用基材は、透光性を有する。「透光性を有する」とは、JIS R3106:1998(ISO 9050:1990)に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上であることを意味する。タッチパネル用基材の材料としては、ガラス又は透明樹脂が好ましい。
基材は、下地層が設けられる面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、プラズマグラフト重合処理等の表面処理を施したものであってもよい。表面処理を施した表面は、基材と下地層の接着性が更に優れ、その結果、表面層の耐摩擦性が更に向上する。表面処理としては、表面層の耐摩擦性が更に優れる点から、コロナ放電処理又はプラズマ処理が好ましい。
下地層はケイ素を含む酸化物(好ましくは、酸化ケイ素)を含む層が好ましく、更に他の元素を有していてもよい。下地層が酸化ケイ素を含むことで、上記含フッ素エーテル化合物の反応性シリル基が脱水縮合し、下地層との間でSi-O-Si結合が形成され耐摩擦性に優れた表面層が形成される。
下地層中の酸化ケイ素の含有量は、65質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。酸化ケイ素の含有量が下限値以上であれば、下地層においてSi-O-Si結合が充分に形成され、下地層の機械特性が充分に確保される。酸化ケイ素の含有量は、他の元素の合計の含有量(酸化物の場合は酸化物換算した量)の合計を下地層の質量から除いた残部である。
表面層の耐久性の点から、下地層中の酸化物は、更に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、白金族元素、ホウ素、アルミニウム、リン、チタン、ジルコニウム、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、及びタングステンより選択される1種以上の元素を含むことが好ましい。これらの元素を含むことで、下地層と含フッ素エーテル化合物との結合が強くなり耐摩擦性が向上する。
下地層の厚さは、1~200nmが好ましく、2~20nmがより好ましい。下地層の厚さが下限値以上であれば、下地層による接着性の向上効果が充分に得られやすい。下地層の厚さが上限値以下であれば、下地層自体の耐摩擦性が高くなる。下地層の厚さを測定する方法としては、電子顕微鏡(SEM、TEM等)による下地層の断面観察による方法や、光干渉膜厚計、分光エリプソメータ、段差計等を用いる方法が挙げられる。
下地層の形成方法は、例えば、基材の表面に、所望の下地層の組成を有する蒸着材料を蒸着する方法等が挙げられる。
蒸着法は一例として、真空蒸着法が挙げられる。真空蒸着法は、蒸着材料を真空槽内で蒸発させ、基材の表面に付着させる方法である。
蒸着時の温度(例えば、真空蒸着装置を用いる際には、蒸着材料を設置するボートの温度)は、100~3000℃が好ましく、250~3000℃がより好ましい。
蒸着時の圧力(例えば、真空蒸着装置を用いる際には、蒸着材料を設置する槽内の絶対圧は、1Pa以下が好ましく、0.1Pa以下がより好ましい。
蒸着材料を用いて下地層を形成する場合、1つの蒸着材料を用いてもよいし、異なる元素を含む2つ以上の蒸着材料を用いてもよい。
蒸着材料の蒸発方法としては、高融点金属製の抵抗加熱用ボート上で蒸着材料を溶融し、蒸発させる抵抗加熱法、電子ビームを蒸着材料に照射し、蒸着材料を直接加熱して表面を溶融し、蒸発させる電子銃法等が挙げられる。蒸着材料の蒸発方法としては、局所的に加熱できるため高融点物質も蒸発できる点、電子ビームが当たっていないところは低温であるため容器との反応や不純物の混入のおそれがない点から、電子銃法が好ましい。電子銃法に用いる蒸着材料としては、気流が生じても飛散しにくい点から、溶融粒状体又は焼結体が好ましい。
表面層は、上記含フッ素エーテル化合物の縮合体を含む。含フッ素エーテル化合物の縮合体は、含フッ素エーテル化合物中の加水分解性シリル基が加水分解反応することによってシラノール基(Si-OH)が形成され、シラノール基が分子間で縮合反応してSi-O-Si結合が形成された構造、及び、含フッ素エーテル化合物中のシラノール基が基材又は下地層の表面のシラノール基又はSi-OM基(ただし、Mはアルカリ金属元素である。)と縮合反応してSi-O-Si結合が形成された構造を含む。また、表面層は含フッ素エーテル化合物以外の含フッ素化合物の縮合体を含んでいてもよい。すなわち、表面層は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を、含フッ素化合物の反応性シリル基の一部又は全部が縮合反応した状態で含む。
表面層の厚さは、1~100nmが好ましく、1~50nmがより好ましい。表面層の厚さが下限値以上であれば、表面層による効果が充分に得られる。表面層の厚さが上限値以下であれば、利用効率が高い。
表面層の厚さは、薄膜解析用X線回折計で得られた厚さである。表面層の厚さは、薄膜解析用X線回折計を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、干渉パターンの振動周期から算出できる。
本物品はタッチパネルであることが好ましい。この場合、表面層はタッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に形成されていることが好ましい。
[物品の製造方法]
本物品の製造方法は、本表面処理剤又は本コーティング液を用いて、ドライコーティング法又はウェットコーティング法により、基材上に表面層を形成する方法である。
本表面処理剤は、ドライコーティング法にそのまま用いることができる。本表面処理剤は、ドライコーティング法によって密着性に優れた表面層を形成するのに好適である。ドライコーティング法としては、真空蒸着、CVD、スパッタリング等の手法が挙げられる。含フッ素エーテル化合物の分解を抑える点、及び装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適に利用できる。
真空蒸着には、鉄や鋼等の金属材料からなる金属多孔体に本表面処理剤を担持させたペレット状物質を使用してもよい。本表面処理剤を担持させたペレット状物質は、金属多孔体に本表面処理剤の溶液を含浸し、乾燥して液状媒体を除去することにより製造できる。本表面処理剤の溶液としては、本コーティング液を用いることができる。
本コーティング液は、ウェットコーティング法に好適に用いることができる。ウェットコーティング法としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法等が挙げられる。
表面層の耐摩擦性を向上させるために、必要に応じて、含フッ素エーテル化合物と基材(又は下地層)との反応を促進するための操作を行ってもよい。該操作としては、加熱、加湿、光照射等が挙げられる。例えば、水分を有する大気中で表面層が形成された基材を加熱して、加水分解性基の加水分解反応、基材の表面の水酸基等とシラノール基との反応、シラノール基の縮合反応によるシロキサン結合の生成、等の反応を促進できる。
表面処理後、表面層中の化合物であって他の化合物や基材と化学結合していない化合物は、必要に応じて除去してもよい。具体的な方法としては、表面層に溶媒をかけ流す方法、溶媒をしみ込ませた布でふき取る方法等が挙げられる。
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。例2、3、5、6、8、9、11、12、14、15、17、18は実施例であり、例1、4、7、10、13、16は比較例である。ただし本発明はこれらの例に限定されない。
[含フッ素エーテル化合物X1-1の合成]
<化合物a-2の合成>
500mLの3つ口フラスコに、20%のKOH水溶液の2.9g、tert-ブチルアルコールの33g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの110g、化合物a-1を220g、パーフルオロプロピルビニルエーテルの14.6gを加えた。次いで、窒素雰囲気下、40℃で20時間攪拌した。攪拌後、希塩酸水溶液で1回洗浄し、有機層をエバポレータで濃縮することによって、粗生成物の233gを得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィに展開して分離精製を行い、化合物a-2の100gを得た。
HO-CHCF{(OCF(OCFCF}-OCFCH-OH ・・・(a-1)
m≒14、n≒13
CFCFCFOCHFCFOCHCF{(OCF(OCFCF}-OCFCH-OH ・・・(a-2)
m≒14、n≒13
<化合物a-3の合成>
100mLのナスフラスコに、化合物a-2の30.0g、フッ化ナトリウム粉末の0.9g、ジクロロペンタフルオロプロパン(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AK-225)の30gを取り入れ、CFCFCFOCF(CF)COFの3.5gを加えた。次いで、窒素雰囲気下、50℃で24時間撹拌した。加圧ろ過器でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、減圧留去した。得られた粗生成物をAC-2000(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)で希釈し、シリカゲルカラムに通し、回収した溶液をエバポレータで濃縮し、化合物a-3の31.8gを得た。
CFCFCFOCHFCFOCHCF{(OCF(OCFCF}OCFCHOC(=O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(a-3)
m≒14、n≒13
<化合物a-4の合成>
オートクレーブ(ニッケル製、内容積1L)を用意し、オートクレーブのガス出口に、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、及び0℃に保持した冷却器を直列に設置した。また、0℃に保持した冷却器から凝集した液をオートクレーブに戻す液体返送ラインを設置した。
オートクレーブにClCFCFClCFOCFCFCl(以下、「CFE-419」ともいう。)の750gを投入し、25℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを25℃で1時間吹き込んだ後、20%フッ素ガスを、25℃、流速2.0L/時間で1時間吹き込んだ。次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブに、化合物a-3の31.0gをCFE-419の124gに溶解した溶液を、4.3時間かけて注入した。
次いで、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、オートクレーブの内圧を0.15MPa(ゲージ圧)まで加圧した。オートクレーブ内に、CFE-419中に0.05g/mLのベンゼンを含むベンゼン溶液の4mLを、25℃から40℃にまで加熱しながら注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉めた。15分撹拌した後、再びベンゼン溶液の4mLを、40℃を保持しながら注入し、注入口を閉めた。同様の操作をさらに3回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.17gであった。
さらに、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、1時間撹拌を続けた。次いで、オートクレーブ内の圧力を大気圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブの内容物をエバポレータで濃縮し、化合物a-4の31.1gを得た。
CFCFCFOCFCFOCFCFO{(CFO)(CFCFO)}CFCFOC(=O)CF(CF)OCFCFCF ・・・(a-4)
m≒14、n≒13
<化合物a-5の合成>
PFA製丸底フラスコに、化合物a-4の30.0g及びAK-225の60gを入れた。氷浴で冷却しながら撹拌し、窒素雰囲気下、メタノールの2.0gを滴下漏斗からゆっくり滴下した。窒素でバブリングしながら12時間撹拌した。反応混合物をエバポレータで濃縮し、化合物a-5の27.6gを得た。
CFCFCFOCFCFOCFCF{(OCF(OCFCF}OCFC(=O)OCH ・・・(a-5)
m≒14、n≒13
<化合物a-6の合成>
100mLの3つ口ナスフラスコ中にて、塩化リチウムの0.18gをエタノールの18.3gに溶解させた。これに、化合物a-5の25.0gを加えて氷浴で冷却しながら、水素化ホウ素ナトリウムの0.75gをエタノールの22.5gに溶解した溶液をゆっくり滴下した。その後、氷浴を取り外し、室温(23℃)までゆっくり昇温しながら撹拌を続けた。室温(23℃)で12時間撹拌後、液性が酸性になるまで塩酸水溶液を滴下した。塩酸水溶液を滴下した溶液に、AC-2000の20mLを添加し、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をエバポレータで濃縮して、カラム精製を行い、化合物a-6の24.6gを得た。
CFCFCFOCFCFOCFCF{(OCF(OCFCF}OCFCHOH ・・・(a-6)
m≒14、n≒13
<化合物a-7の合成>
100mLの2つ口ナスフラスコ内に、化合物a-6の20.0g、硫酸水素テトラブチルアンモニウムの0.21g、臭化アリルの1.76g、及び30%水酸化ナトリウム水溶液の2.6gを加え、60℃で8時間撹拌した。反応終了後、AC-2000の20gを加え、希塩酸水溶液で1回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相をシリカゲルカラムに通し、回収した溶液をエバポレータで濃縮し、化合物a-7の19.8gを得た。
CFCFCFOCFCFOCFCF{(OCF(OCFCF}OCFCH-OCHCH=CH ・・・(a-7)
m≒14、n≒13
<化合物a-8の合成>
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた30mLの4つ口フラスコに化合物a-7の6g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの6g、トリアセトキシメチルシランの0.018g及びトリクロロシランの0.41gを仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液(0.028ml)を加えた後、60℃まで昇温させ、この温度にて5時間撹拌した。その後、揮発分を留去してカラム精製を行い、化合物a-8の5.7gを得た。
CFCFCFOCFCFOCFCF{(OCF(OCFCF}OCFCH-OCHCHCHSiCl ・・・(a-8)
m≒14、n≒13
<化合物a-9の合成>
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた30mlの4つ口フラスコに化合物a-8の5g、及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの5gを仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、アリルマグネシウムブロマイドを0.9mol/L含むジエチルエーテル溶液(6.91ml)を加えた後、室温(23℃)まで昇温させ、この温度にて10時間撹拌した。その後、5℃まで冷却し、メタノール(2ml)を加えた後、室温(23℃)まで昇温させて不溶物をろ過した。続いて、揮発分を留去した後、不揮発分をパーフルオロヘキサンで希釈し、分液ロートでメタノールによる洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、化合物a-9の5gを得た。
CFCFCFOCFCFOCFCF{(OCF(OCFCF}OCFCH-OCHCHCHSi(CHCH=CH ・・・(a-9)
m≒14、n≒13
<化合物X1-1の合成>
化合物a-9の5.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:2質量%)の0.03g、トリメトキシシランの0.36g、アニリンの0.01g及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの2.0gを入れ、室温(23℃)で8時間撹拌した。溶媒等を減圧留去し、孔径0.5μmのメンブランフィルタでろ過し、化合物X1-1の5.2gを得た。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH ・・・(X1-1)
m11の平均個数:13.9、m12の平均個数:15.4
化合物X1-1における(OCF)及び(OCFCF)の平均個数は、19F-NMRによって求めた。また、後述の各フッ素エーテル化合物の(OCF)及び(OCFCF)の平均個数についても、化合物X1-1と同様にして求めた。
[含フッ素エーテル化合物X1-2の合成]
<化合物b-1の合成>
100mlの4つ口フラスコにエチレングリコールの5g、48%KOH水溶液の7.5g、水の6g、tert-ブチルアルコールを混合し、滴下ロートからパーフルオロプロピルビニルエーテルの5gを滴下した。次いで、窒素雰囲気下、40℃で20時間攪拌した。攪拌後、希塩酸水溶液で1回洗浄し有機層をエバポレータで濃縮した後、カラム精製を行い、化合物b-1の22gを得た。
CFCFCFOCHFCFOCHCHOH ・・・(b-1)
<化合物b-2の合成>
100mlの4つ口フラスコに化合物b-1の20g、トリエチルアミンの10g、AC-2000の200gを加えた混合液に、トシルクロライドの15gを加えた。40℃で8時間混合を行い、濾過、濃縮、カラム精製を行い、化合物b-2の18gを得た。
CFCFCFOCHFCFOCHCHO-Ts ・・・(b-2)
<化合物b-4の合成>
100mlの4つ口フラスコに下記化合物b-3の23g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの23g、炭酸セシウムの2g、b-2の3gを加えた。窒素雰囲気下、70℃で20時間攪拌した。希塩酸水溶液で洗浄、水で3回洗浄して濃縮、カラム精製を行い、化合物b-4の24gを得た。
HO-CHCF{(OCF(OCFCF}-OCFCH-OH ・・・b-3
m≒14、n≒12
CFCFCFOCHFCFOCHCHO-CHCF{(OCF(OCFCF}-OCFCH-OH ・・・(b-4)
m≒14、n≒12
<含フッ素エーテル化合物X1-2の合成>
化合物a-2の代わりに化合物b-4を用いる以外は、含フッ素エーテル化合物X1-1の合成と同様にして含フッ素エーテル化合物X1-2を合成した。
なお、含フッ素エーテル化合物X1-2は、(OCF)及び(OCFCF)の配列が含フッ素エーテル化合物X1-1と異なっている。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X1-2)
m11の平均個数:13.9、m12の平均個数:15.4
[含フッ素エーテル化合物X2-1の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-1の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X2-1を得た。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X2-1)
m11の平均個数:22.3、m12の平均個数:10.6
[含フッ素エーテル化合物X2-2の合成]
化合物b-1の合成においてエチレングリコールの代わりにジエチレングリコールを用いて得られた化合物を用いた以外は、含フッ素エーテル化合物X1-2の合成と同様にして、含フッ素エーテル化合物X2-2を得た。
なお、含フッ素エーテル化合物X2-2は、(OCF)及び(OCFCF)の配列が含フッ素エーテル化合物X2-1と異なっている。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X2-2)
m11の平均個数:22.3、m12の平均個数:10.6
[含フッ素エーテル化合物X3-1の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-1の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X3-1を得た。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X3-1)
m11の平均個数:25.9、m12の平均個数:8.6
[含フッ素エーテル化合物X3-2の合成]
化合物b-1の合成においてエチレングリコールの代わりにジエチレングリコールを用いて得られた化合物を用いた以外は、含フッ素エーテル化合物X1-2の合成と同様にして、含フッ素エーテル化合物X3-2を得た。
なお、含フッ素エーテル化合物X3-2は、(OCF)及び(OCFCF)の配列が含フッ素エーテル化合物X3-1と異なっている。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X3-2)
m11の平均個数:25.9、m12の平均個数:8.6
[含フッ素エーテル化合物X4-1の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-1の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X4-1を得た。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X4-1)
m11の平均個数:28.5、m12の平均個数:7.1
[含フッ素エーテル化合物X4-2の合成]
化合物b-1の合成においてエチレングリコールの代わりにジエチレングリコールを用いて得られた化合物を用いた以外は、含フッ素エーテル化合物X1-2の合成と同様にして、含フッ素エーテル化合物X4-2を得た。
なお、含フッ素エーテル化合物X4-2は、(OCF)及び(OCFCF)の配列が含フッ素エーテル化合物X4-1と異なっている。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X4-2)
m11の平均個数:28.5、m12の平均個数:7.1
[含フッ素エーテル化合物X5-1の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-1の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X5-1を得た。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X5-1)
m11の平均個数:31.6、m12の平均個数:5.4
[含フッ素エーテル化合物X5-2の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-2の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X5-2を得た。
なお、含フッ素エーテル化合物X5-2は、(OCF)及び(OCFCF)の配列が含フッ素エーテル化合物X5-1と異なっている。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X5-2)
m11の平均個数:31.6、m12の平均個数:5.4
[含フッ素エーテル化合物X6-1の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-1の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X6-1を得た。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X6-1)
m11の平均個数:33.6、m12の平均個数:4.2
[含フッ素エーテル化合物X6-2の合成]
含フッ素エーテル化合物X1-2の合成を参考にして、含フッ素エーテル化合物X6-2を得た。
なお、含フッ素エーテル化合物X6-2は、(OCF)及び(OCFCF)の配列が含フッ素エーテル化合物X6-1と異なっている。
CFCFCF-{(OCFm11(OCFCFm12}-OCFCH-OCHCHCHSi(CHCHCHSi(OCH (X6-2)
m11の平均個数:33.6、m12の平均個数:4.2
[混合物の調製]
表1に記載の含フッ素エーテル化合物を混合して、混合物1-1、1-2、2-1、2-2、3-1、3-2、4-1、4-2、5-1、5-2、6-1、6-2を得た。なお、各混合物の調製にあたって、式(A-1)におけるYの値が表1の値になるような割合で各含フッ素エーテル化合物を混合した。
[式(A-1)のX及びYの値]
得られた含フッ素エーテル化合物又は混合物を用いて、400MHzの19F-NMR測定によって得られるチャートに基づいて、式(A-1)のX及びYの値を算出した。また、X及びYの値に基づいて、式(A-1)及び式(A-2)の充足性を判定し、式を満たす場合を「○」、満たさない場合を「×」とした。結果を表1に示す。
19F-NMR測定は、以下の測定条件で実施した。
測定装置:JEOL社製「JNM-ECZ 400」
内部標準:1,4-ビストリフルロメチルベンゼン
19F-NMR測定によって得られた代表的なチャートを図2に示す。
図2は、混合物5-1を用いて、400MHzの19F-NMR測定によって得られたチャートである。
図2に示すように、化学シフト-50.5~-51.2ppm、-52.0~-52.8ppm、-53.8~-54.5ppm、-87.0~-88.5ppm、-88.8~-90.2ppmのそれぞれにピークが観測された。なお、図2における化学シフト-63.5ppmのピークは、1,4-ビストリフルロメチルベンゼンに対応するピークである。
なお、チャートは示していないが、他の含フッ素エーテル化合物及び混合物についても、上記化学シフトの範囲にピークが観測された。
[例1~例18]
真空蒸着装置内に、基材(無アルカリガラス(イーグルXG:製品名、コーニング社製、50mm×50mm、厚さ0.5mm))を配置し、真空蒸着装置内を5×10-3Pa以下の圧力になるまで排気した。基材の一方の主面に対向するように距離1000mmの位置に、表1に記載の各例の各含フッ素エーテル化合物又は混合物を収容した蒸着用容器を抵抗加熱によって300℃に加熱し、含フッ素エーテル化合物又は混合物を真空蒸着させて、基材上の含フッ素エーテル化合物又は混合物の厚さが10nmとなった時点で製膜を終了した。その後、含フッ素エーテル化合物又は混合物が堆積した基材を、温度200℃で30分間加熱(後処理)して、表面層付き基材(物品)を得た。
[評価試験]
例1~18の表面層付き基材を用いて、以下の評価試験を実施した。
<耐摩擦性(スチールウール)>
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウールボンスター(♯0000)を圧力:98.07kPa、速度:320cm/分で往復させて、水接触角が100度未満になる往復回数を測定した。往復回数が多いほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。評価基準は下記の通りである。
A(優良):往復回数が7001回以上
B(良):往復回数が6001回以上7000回以下
C(可):往復回数が4001回以上6000回以下
D(不可):往復回数が4000回以下
(水接触角の測定方法)
表面層の表面に置いた約2μLの蒸留水の接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定を行い、その平均値を算出して、水接触角とした。接触角の算出には2θ法を用いた。
<潤滑性>
人工皮膚(出光テクノファイン社製、PBZ13001)に対する表面層の動摩擦係数を、荷重変動型摩擦摩耗試験システム(新東科学社製、HHS2000)を用い、接触面積:3cm×3cm、荷重:0.98Nの条件で測定した。動摩擦係数が小さいほど潤滑性に優れる。評価基準は下記の通りである。
A(優良):動摩擦係数が0.02未満
B(良):動摩擦係数が0.02以上0.03未満
C(可):動摩擦係数が0.03以上0.04未満
D(不可):動摩擦係数が0.04以上
表1に示す通り、式(A-1)を満たす含フッ素エーテル化合物を用いれば、潤滑性及び耐摩擦性に優れた表面層を形成できるのが確認された(例2、3、5、6、8、9、11、12、14、15、17、18)。
また、表1に示す通り、式(A-2)を満たす含フッ素エーテル化合物を用いれば、潤滑性及び耐摩擦性の少なくとも一方がより優れた表面層を形成できるのが確認された(例3、6、9、12、15、18)。

Claims (7)

  1. (OCF)で表される単位及び(OCFCF)で表される単位を含むフルオロポリエーテル鎖と、反応性シリル基と、を有する含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤であって、
    前記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、下式(A-1)を満たすことを特徴とする、表面処理剤。
    Y>-0.0062X+0.1343X+0.1123 ・・・(A-1)
    ただし、X及びYは、内部標準として1,4-ビストリフルロメチルベンゼンを用いて、前記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートに基づいて求められる値であり、
    化学シフト -50.5~-51.2ppmに観測されるピークの積分値をa1、
    化学シフト -52.0~-52.8ppmに観測されるピークの積分値をa2、
    化学シフト -53.8~-54.5ppmに観測されるピークの積分値をa3、
    化学シフト -87.0~-88.5ppmに観測されるピークの積分値をb1、
    化学シフト -88.8~-90.2ppmに観測されるピークの積分値をb2とした場合、
    Xは、{(a1+a2+a3)/2}/{(b1+b2)/4}を意味し、
    Yは、(a3)/(a1+a2+a3)を意味する。
  2. 前記式(A-1)中のXが2~8である、請求項1に記載の表面処理剤。
  3. 前記含フッ素エーテル化合物の19F-NMR測定によって得られるチャートにおいて、下式(A-2)を満たす、請求項1又は2に記載の表面処理剤。
    Y>-0.0056X+0.1231X+0.2119 ・・・(A-2)
    ただし、式(A-2)のX及びYは、前記式(A-1)のX及びYと同じである。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤と、液状媒体と、を含むことを特徴とする、コーティング液。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤又は請求項4に記載のコーティング液から形成された表面層を基材上に有することを特徴とする、物品。
  6. 前記物品がタッチパネルであり、前記タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に前記表面層を有する、請求項5に記載の物品。
  7. 請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤又は請求項4に記載のコーティング液を用いて、ドライコーティング法又はウェットコーティング法により、基材上に表面層を形成することを特徴とする、物品の製造方法。
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