JP2023112677A - 触媒、およびそれを用いた気相酸化反応による化合物の製造方法 - Google Patents

触媒、およびそれを用いた気相酸化反応による化合物の製造方法 Download PDF

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誠一郎 福永
Seiichiro Fukunaga
孝紀 中野
Takanori Nakano
寛人 三輪
Hiroto Miwa
将吾 保田
Shogo YASUDA
成喜 奥村
Shigeki Okumura
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Abstract

【課題】本発明の触媒は、気相接触酸化反応、又は気相接触酸化脱水素反応において、収率向上に非常に有効である。特にはプロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する場合に有用である。【解決手段】モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含有し、熱重量示唆熱測定において得られる重量変化率を用いて下記式(1)で表現されるL1が-1.500≦L1≦-0.010であることを特徴とする触媒。L1=Log{(M-N)+0.050}・・・(1)M=400~510℃までの重量変化率(%)N=150~400℃までの重量変化率(%)【選択図】なし

Description

本発明は、触媒およびそれを用いた気相酸化反応、特に不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸又は共役ジエンの製造方法に関する。
プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法や、ブテン類から1,3-ブタジエンを製造する気相接触酸化方法は工業的に広く実施されている。特に、プロピレンを原料にして対応するアクロレインやアクリル酸を製造する方法に関しては、その収率を向上する手段として多くの報告がなされている(例えば特許文献1、2等)。
触媒の熱的重量変化に関し、幾つか報告がなされている。例えば特許文献3は110℃±5℃で2時間加熱した際の重量変化率を一定以下とすることで、オレフィンの気相接触酸化反応による不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の収率向上効果を実現できることが開示されている。これは触媒中に含まれる水分量を低く抑えることで触媒の性能を向上できるという技術思想である。
また、特許文献4では、室温~110℃の範囲における質量減量率と、110~500℃における質量減量率との関係を特定の範囲とすることで、触媒の機械的強度を向上できることが開示されている。この特許文献4でも水分を主成分とする液相を低減することを技術思想としている。
さらに触媒の焼成条件、特に焼成時の雰囲気の検討に関し、幾つか報告がなされている。例えば特許文献5では触媒成形体あるいは担持体中の前駆体質量Wと焼成炉内に導入される酸素ガス流量Vの比、V/Wが0.02~0.20の範囲にして得られた触媒の彩度等を規定することで、不飽和アルデヒドを高収率で生成できると記載されている。
また特許文献6では、規定された比率の成形助剤を添加した成形体を、酸素濃度0.10~18体積%の雰囲気下で本焼成して得られる、任意の組成比を有する触媒を用いることで不飽和アルデヒドを高収率で生成できると記載されている。
さらに特許文献7では、前駆体を酸素ガス雰囲気下に焼成した後、水素、アンモニア、一酸化炭素、炭素数1~6の炭化水素、炭素数1~6のアルコール、炭素数1~6のアルデヒド及びアミンから選ばれる還元性物質を含むガスを流通させて還元処理を行う触媒を用いることで、不飽和アルデヒドを高収率で生成できると記載されている。
国際公開第2016/136882号 日本国特許第6205044号公報 日本国特許第4424180号公報 日本国特許第5542557号公報 日本国特許第5582708号公報 日本国特許第6302318号公報 日本国特許第4720431号公報
Xinying Wu, Guangren Yu, Xiaochun Chen, Yahui Wang, Changjiang Liu, Thermochimica Acta, 486 (2009) 20-26
上記のような手段をもって改良をはかっても、プロピレン、イソブチレン等のアルケンやt-ブチルアルコールの部分酸化反応による対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造において、さらなる収率の改善が求められている。例えば、目的生成物の収率は、製造に要するプロピレン、イソブチレン等のアルケン、t-ブチルアルコールの使用量を左右し製造コストに多大な影響を与える。また、低い収率で運転を継続することによって副生成物を大量に生成するため精製工程に大きな負荷を与え、精製工程にかかる時間および運転コストが上がってしまうことが懸念される。さらには副生成物の種類によっては、それらは触媒表面や触媒付近のガス流路に堆積する場合もある。これらは触媒表面の必要な反応活性点を被覆してしまうことで触媒の活性を低下させるため、強制的に活性を上げる必要が生じ反応浴温度を上げざるを得なくなる。すると、触媒が熱的ストレスを受けることとなり、寿命の低下やさらなる選択率の低下を引き起こし、収率の低下を招くことにもなる。また、系内に堆積した副生成物により系内圧力の上昇を引き起こすことでも選択率が低下し、収率低下につながることも考えられ、場合によっては内部圧力の急上昇によって温度異常をきたし反応が暴走することも考えられる。そうなると長期にわたり運転を停止し、系内清掃や触媒交換が必要になることも想定される。さらに、上述の焼成時の雰囲気を制御した先行文献では、制御因子にあいまいな部分があり、より高度な制御因子を明確にする必要があった。すなわち、焼成時の雰囲気の制御において、より高度な制御因子を明確化し、それにより高収率に不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を得ることができ、副生成物の生成量を低下することで精製コストを低減および/または安定な運転を可能とする触媒が、求められていた。
そこで、本願発明は不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸又は共役ジエンを安全、安価に製造でき目的生成物の収率が高い触媒を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、以下1)~11)に関する。
1)
モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含有し、熱重量示唆熱測定において得られる重量変化率を用いて下記式(1)で表現されるL1が-1.500≦L1≦-0.010であることを特徴とする触媒。

L1=Log{(M-N)+0.050}・・・(1)

M=400~510℃までの重量変化率(%)
N=150~400℃までの重量変化率(%)
2)
前記L1が-1.350≦L1≦-0.350であることを特徴とする上記1)に記載の触媒。
3)
モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含有し、熱重量示唆熱測定において得られる重量変化率を用いて、下記式(2)で表現されるL2が-1.500≦L2≦7.934であることを特徴とする触媒。

L2=Log{(M÷N)}・・・(2)

M=400~510℃までの重量変化率(%)
N=150~400℃までの重量変化率(%)

4)
前記L2が-0.400≦L2≦3.600であることを特徴とする上記3)に記載の触媒。
5)
触媒組成が下記式(3)で表される上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の触媒。
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(3)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
6)
不活性担体に担持された上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の触媒。
7)
前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである上記6)に記載の触媒。
8)
触媒が不飽和アルデヒド化合物、及び/又は不飽和カルボン酸化合物、及び/又は共役ジエンの製造用である上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の触媒。
9)
(a)金属をそれぞれ又は複数含む化合物を水に分散し、これらの化合物の水溶液又は水分散体(スラリー液)を調製する工程、
(b)工程(a)で得られたスラリー液を乾燥してスラリー乾燥体を得る工程、
(c)工程(b)で得られたスラリー乾燥体を成型する工程、
(d)工程(c)で得られた被覆成型物を制御された酸素濃度雰囲気下で焼成する工程を有する上記1)乃至8)のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
10)
上記1)乃至8)のいずれか一項に記載の触媒を用いた不飽和アルデヒド化合物、及び/又は不飽和カルボン酸化合物、及び/又は共役ジエンの製造方法。
11)
不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸であり、共役ジエンが1,3-ブタジエンである上記1)乃至10)のいずれか一項に記載の製造方法。
本発明の触媒は、気相接触酸化反応、又は気相接触酸化脱水素反応において、収率向上に非常に有効である。特にはプロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する場合に有用である。
実施例1の触媒(触媒1)の重量変化率(測定サンプルの重量変化量/測定サンプルの仕込み重量)の測定温度に対する関係を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中、上記気相接触酸化反応、及び気相接触酸化脱水素反応を併せて、単に酸化反応と表現する場合もある。
[L1について]
本発明の触媒は、下記式(1)で表現されるL1が、-1.500以上-0.010以下であることを特徴とする。
L1=Log{(M-N)+0.050}・・・(1)
ここで、Mは400℃~510℃までの重量変化率の差であり、Nは150℃~400℃までの重量変化率の差との関係から導出される数値であり、Logは常用対数であり、重量変化率とは下記式(A)で表現され、後述するように熱重量示唆熱測定法(TG-DTA)によって測定することが可能である。なお本明細書において「~」は前後の数値を含むものとする。
重量変化率(%)=規定した温度範囲における重量減少(g)÷サンプル仕込み重量(g)×100・・・(A)
上述したL1と触媒の収率に関係がみられる原因について、本発明者にもその詳細な理由は定かではないが、非特許文献1を参考にパラメーターMは四価のMo(モリブデン)から六価のMoへの酸化反応に伴うバルク内への酸素補充よる触媒の重量変化及び触媒表面上への格子酸素の発生による触媒の重量変化に関連している。一方でパラメーターNは0価のBi(ビスマス)及び二価のFe(鉄)が、三価のBi及び三価のFeへ酸化する反応に伴うバルク内への酸素補充による触媒の重量変化に関連している。ここで焼成工程における酸素濃度を制御して得られた触媒は、表面上及びバルク内の格子酸素を用いてMo、Bi、Feが還元されたと考えられる。すなわち(M-N)が高いということは、上記気相接触酸化反応において重要な元素であるMoが、補助的に作用するFeやBiよりも相対的に多く再酸化され、酸化触媒としてより効率的に酸化還元サイクルを回せることを意味しており、逆に(M-N)が低いということは、酸化還元サイクルを効率的に回せず、触媒の性能も期待できないことを意味する。この(M-N)の量的関係は、L1および後述するL2でも同様である。
本発明者はこれらの格子酸素が不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸などの目的生成物への酸化反応に寄与するとともに、過剰な酸化反応による目的生成物の減少にも寄与することに着目し、全格子酸素のなかで、触媒表面の格子酸素と多く存在するMoバルク格子酸素を一定の量抑制することが触媒の収率の向上につながると考え、L1を導出するに至った。
L1の下限としてより好ましくは、-1.480であり、さらに好ましい順に-1.460、-1.440、-1.420、-1.400、-1.380であり、特に好ましくは-1.350である。また上限としてより好ましくは-0.040であり、さらに好ましい順に-0.070、-0.100、-0.130、-0.160、-0.190、-0.220、-0.250、-0.280、-0.310、-0.330であり、特に好ましくは-0.350である。すなわちL1の値としてより好ましい範囲は、上記上下限によって設定され、例えば-1.480以上-0.040以下であり、最も好ましくは-1.350以上-0.350以下である。
なお、熱重量示唆熱測定法(TG-DTA)による測定は、公知の方法で行うことができ、例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製STA200を使用して、アルミニウム製のオープン型試料容器に標準物質としてα-アルミナを仕込み重量10mgから25mgの範囲で載せ、一方で同じ材質のオープン型試料容器に測定サンプルを仕込み重量100mgから200mgの範囲で載せて、空気を100mL/分流通させた雰囲気下にて昇温速度5℃/分の条件で、550℃まで昇温させる熱重量(TG)の測定を行うことで得られる。
[L2について]
本発明の触媒は、下記式(2)で表現されるL2が、-1.500以上7.934以下であることを特徴とする。
L2=Log{(M÷N)}・・・(2)
L2と触媒の収率に関係がみられる想定要因も、上述のL1と同様の内容が考えられる。
L2の下限としてより好ましくは、-1.400であり、さらに好ましい順に-1.300、-1.200、-1.100、-1.000、-0.900、-0.800、-0.700、-0.600、-0.500であり、特に好ましくは-0.400である。また上限としてより好ましくは7.900であり、さらに好ましい順に7.400、6.900、6.400、5.900、5.400、4.900、4.400、3.900、3.800、3.700であり、特に好ましくは3.600である。すなわちL2の値としてより好ましい範囲は、上記上下限によって設定され、例えば-1.400以上7.900以下であり、最も好ましくは-0.400以上3.600以下である。
[触媒組成について]
本発明の触媒に含まれる触媒活性成分は、下記式(3)で表される組成を有する場合が好ましい。
[化1]
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(3)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味し、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
上記式(3)において、a1=12とした場合の、b1~i1の好ましい範囲は以下の通りである。
b1の下限は望ましい順に、0.2、0.3、0.4、0.5であり、最も望ましくは0.6であり、b1の上限は望ましい順に、5、3、2、1.6、1.3、1.1であり、最も望ましくは0.8である。すなわちb1の最も好ましい範囲は、0.6≦b1≦0.8である。
c1の下限は望ましい順に、1、1.3、1.6、1.9、2.2であり、最も望ましくは2.3であり、c1の上限は望ましい順に、5、4、3.4、3.1、2.8であり、最も望ましくは2.5である。すなわちc1の最も好ましい範囲は、2.3≦c1≦2.5である。
d1の下限は望ましい順に、3、4、5、5.5、5.8、6.1であり、最も望ましくは6.4であり、d1の上限は望ましい順に、9、8、7.5、7.2、6.9であり、最も望ましくは6.6である。すなわちd1の最も好ましい範囲は、6.4≦d1≦6.6である。
e1の下限は望ましい順に、0.5、1、1.5、1.8であり、最も望ましくは2.1であり、e1の上限は望ましい順に、4、3、2.9、2.7、2.5であり、最も望ましくは2.3である。すなわちe1の最も好ましい範囲は、2.1≦e1≦2.3である。
f1の上限は望ましい順に、1.8、1.5、1.3、1.0である。すなわちf1の最も好ましい範囲は、0.0≦f1≦1.0である。
g1の下限は望ましい順に、0、0.01、0.02であり、最も望ましくは0.03であり、g1の上限は望ましい順に、1.5、1、0.5、0.2、0.15、0.10であり、最も望ましくは0.05である。すなわちg1の最も好ましい範囲は、0.03≦g1≦0.05である。
h1の上限は望ましい順に、5、4、3である。すなわちh1の最も好ましい範囲は、0≦h1≦3である。
なお、Xはタングステン、ケイ素、アルミニウム、セリウムを含まない方がより好ましい態様である。また、Yは2種以下含有される場合が好ましく、1種類である場合が特に好ましい態様である。また、f1とh1は0である場合が特に好ましい態様である。
[担持について]
触媒活性成分の調製後に予備焼成を行った予備焼成粉体を不活性担体に担持させた触媒は、本発明の触媒として特に効果の優れたものである。
不活性担体の材質としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、炭化ケイ素、炭化物、ステアタイトおよびこれらの混合物など公知の物を使用でき、さらにその粒径、吸水率、機械的強度、各結晶相の結晶化度や混合割合なども特に制限はなく、最終的な触媒の性能、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。担体と予備焼成粉体の混合の割合は、各原料の仕込み質量により、下記式より担持率として算出される。
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100
上記担持率としての好ましい上限は、80質量%であり、さらに好ましくは60質量%である。
また好ましい下限は、20質量%であり、さらに好ましくは30質量%である。すなわち担持率として最も好ましい範囲は、30質量%以上60質量%以下である。
なお不活性担体としては、シリカ及び/又はアルミナが好ましく、シリカとアルミナの混合物が特に好ましい。
なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成形性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉末100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は10~30質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉末は成形機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。
[本発明の触媒の製造方法]
本発明の触媒の製造方法は、(a)上記金属をそれぞれ又は複数含む化合物を水に分散し、これらの化合物の水溶液又は水分散体(以下、両者を含めてスラリー液という)を調製する工程、(b)工程(a)で得られたスラリー液を乾燥してスラリー乾燥体を得る工程、(c)工程(b)で得られたスラリー乾燥体を成型する工程、(d)工程(c)で得られた被覆成型物を焼成する工程を有するが、これらに限定されるものではない。
<(a)工程>
(a)工程において、各元素の出発原料としては特に制限されるものではないが、例えばモリブデン成分の原料としては三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、パラモリブデン酸アンモニウム、メタモリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸またはその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸またはその塩などを用いることができる。
ビスマス成分の原料としては硝酸ビスマス、炭酸ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマスのようなビスマス塩、三酸化ビスマス、金属ビスマスなどを用いることができる。これらの原料は固体のままあるいは水溶液や硝酸溶液、それらの水溶液から生じるビスマス化合物のスラリーとして用いることができるが、硝酸塩、あるいはその溶液、またはその溶液から生じるスラリーを用いることが好ましい。
その他の成分元素の出発原料としては、一般にこの種の触媒に使用される金属元素のアンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、次炭酸塩、酢酸塩、塩化物、無機酸、無機酸の塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の塩、硫酸塩、水酸化物、有機酸塩、酸化物またはこれらの混合物を組み合わせて用いればよいが、アンモニウム塩および硝酸塩が好適に用いられる。
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。スラリー液は、各活性成分含有化合物と水とを均一に混合して得ることができる。スラリー液における水の使用量は、用いる化合物の全量を完全に溶解できるか、または均一に混合できる量であれば特に制限はない。乾燥方法や乾燥条件を勘案して、水の使用量を適宜決定すれば良い。通常水の使用量は、スラリー調製用化合物の合計質量100質量部に対して、100質量部以上2000質量部以下である。水の量は多くてもよいが、多過ぎると乾燥工程のエネルギーコストが高くなり、また完全に乾燥できない場合も生ずるなどデメリットが多い。
上記各成分元素の供給源化合物のスラリー液は上記の各供給源化合物を、(イ)一括して混合する方法、(ロ)一括して混合後、熟成処理する方法、(ハ)段階的に混合する方法、(ニ)段階的に混合・熟成処理を繰り返す方法、および(イ)~(ニ)を組み合わせた方法により調製することが好ましい。ここで、上記熟成とは、「工業原料もしくは半製品を、一定時間、一定温度などの特定条件のもとに処理して、必要とする物理性、化学性の取得、上昇あるいは所定反応の進行などをはかる操作」のことをいう。なお、本発明において、上記の一定時間とは、5分以上24時間以下の範囲をいい、上記の一定温度とは室温以上の水溶液ないし水分散液の沸点以下の範囲をいう。このうち最終的に得られる触媒の活性及び収率の面で好ましいのは(ハ)段階的に混合する方法であり、更に好ましいのは段階的に母液に混合する各原料は全溶した溶液とする方法であり、最も好ましいのはモリブデン原料を調合液またはスラリーとした母液に、アルカリ金属溶液、硝酸塩の各種混合液を混合する方法である。ただし、この工程で必ずしもすべての触媒構成元素を混合する必要はなく、その一部の元素または一部の量を以降の工程で添加してもよい。
本発明において、必須活性成分を混合する際に用いられる攪拌機の攪拌翼の形状は特に制約はなく、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、スクリュー翼、アンカー翼、リボン翼、大型格子翼などの任意の攪拌翼を1段あるいは上下方向に同一翼または異種翼を2段以上で使用することができる。また、反応槽内には必要に応じてバッフル(邪魔板)を設置しても良い。
<(b)工程>
(b)工程では、(a)工程で得られたスラリー液を乾燥する。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の出口における温度が70℃以上150℃以下である。
<(c)工程>
工程(c)では工程(b)で得られたスラリー乾燥体を成型する。なお、必須ではないが成形前に焼成を行っても良い。本明細書において、成形前の焼成を予備焼成と表現する。
成形は、シリカ等の担体に担持する担持成形と、担体を使用しない非担持成形のいずれの成形方法も採用できる。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。成形品の形状としては、例えば、円柱状、リング状、球状等が運転条件を考慮して適宜選択可能であるが、球状担体、特にシリカやアルミナ等の不活性担体に触媒活性成分を担持した、平均粒径3.0mm以上10.0mm以下、好ましくは平均粒径3.0mm以上8.0mm以下の担持触媒であるとよい。担持方法としては転動造粒法、遠心流動コーティング装置を用いる方法、ウォッシュコート方法等が広く知られており、予備焼成粉末が担体に均一に担持できる方法で有れば特に限定されないが、触媒の製造効率等を考慮した場合、転動造粒法が好ましい。具体的には、固定円筒容器の底部に、平らな、あるいは凹凸のある円盤を有する装置で、円盤を高速で回転させることにより、容器内にチャージされた担体を、担体自体の自転運動と公転運動の繰り返しにより激しく撹拌させ、ここに予備焼成粉体を添加することにより粉体成分を担体に担持させる方法である。なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等がより好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液がさらに好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成形性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉末100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は15~50質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉末は成形機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。また、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。なお、成形において添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
<(d)工程>
工程(d)では工程(c)で得られた成型された被覆触媒又は工程(b)の乾燥体(本焼成前前駆体)を、還元性物質が含まれずに酸素濃度21容量%以下となるように混合された希釈ガスと空気の混合ガス流量を制御した雰囲気下で焼成する。なお本明細書では、工程(d)を本焼成と表現する。
還元性物質としては、例えば、水素、アンモニア、一酸化炭素、炭化水素、アルコール、アルデヒド、アミン等が挙げられる。
制御した雰囲気下とは、本焼成前前駆体の仕込み重量と焼成炉内を流れる分子状酸素としてのガス線速、焼成均熱時間からなる下記式(4)のパラメーターSを用いて表された雰囲気を指す。具体的には-1.000≦S≦0.600を満たす範囲が好ましい。
S =Log{(酸素ガス線速:cm/秒)/(本焼成前前駆体の仕込み重量:g)×(焼成均熱時間:秒)+0.050 } ・・・(4)

酸素ガス線速とは、焼成炉内を流通するガスのうち分子状酸素(酸素ガス)として流れる空筒線速であり、酸素ガスの流量を、酸素ガスが流れる方向と垂直な炉内断面積で割ったものであり、焼成炉にファンやブロワーなどがなく炉内雰囲気の流れがない場合は、酸素ガス線速はゼロとする。本焼成前前駆体の仕込み重量は、工程(c)で得られた本焼成前前駆体を焼成炉に仕込んだ際の重量であり、仕込みが2以上に分割されている際は、これらの総仕込み重量であるものとする。焼成均熱時間は、本焼成における最高到達温度の保持時間である。
Sのより好ましい下限として-0.720、好ましい上限として0.450、すなわち-0.720以上0.450以下が最も好ましい。
また、工程(d)におけるガスは、酸素濃度15.0容量%以下であればよいが、酸素ガス源と希釈ガス源の混合によって作製され、たとえば酸素ガス源として空気、圧縮空気、純酸素ガスが挙げられ、希釈ガス源として窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等、還元性物質を除いたガスが挙げられる。酸素濃度の好ましい範囲は0.3容量%以上15.0容量%以下であり、好ましい下限として0.4容量%、好ましい上限として5.0容量%、すなわち0.4容量%以上5.0容量%以下が最も好ましい。
さらに、工程(d)における最高到達温度は515℃以上545℃以下、好ましくは540℃以上545℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下で行う。また最高到達温度に至るまでの昇温速度は250℃/時間以下で行う。
予備焼成方法や予備焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。予備焼成は、通常、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下で行う。また、本焼成工程(工程(d))は前述の予備焼成工程よりも後に実施されるものとし、本焼成工程における最高到達温度(本焼温度)は、前述の予備焼成工程における最高到達温度(予備焼成温度)よりも高いものとする。焼成の手法は流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。
本発明の触媒は、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物を製造する為の触媒として使用される場合が好ましく、より好ましくは不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用いることが更に好ましく、プロピレンからアクロレインを製造する為の触媒として用いることが特に好ましい。不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物を製造するような発熱反応のプロセスでは、実プラントにおいては反応により生じる発熱で触媒自身が劣化するのを防ぐ目的で、反応管入口側から反応管出口側に向けて活性が高くなるよう異なる触媒種を多層で充填することが当業者にとっては公知である。本発明の触媒は、反応管入り口側および反応管出口側、およびその中間の触媒層のいずれでも使用できるが、たとえば反応管の最も出口側、すなわち反応管内の全触媒層の中で最も高活性な触媒に用いることが最も好ましい。なお、多層充填においては、2層又は3層充填が特に好ましい態様である。また、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物を製造する為の触媒として使用される触媒は、炭素原子数4以上のモノオレフィン原料から酸化脱水素反応により共役ジオレフィン、具体的にはn-ブテン原料から酸化脱水素反応によりブタジエンを製造する触媒にも適用されることは当業者にとって公知であり、そのような使用方法も可能である。
[M、N、L1、L2の調整方法]
上記、M,N、L1、L2の値は、(d)工程における上記パラメーターSの調整によって制御することが可能であるが、その他に例えば、(I)触媒組成を変更する方法、(II)焼成条件を変更する方法、(III)焼成後の降温条件を変更する方法、(IV)触媒製造の全工程において、触媒およびその前駆体に機械的強度を加えないよう制御する方法、(V)純度の高い原料を使用する方法、他の(VI)~(VIII)の方法、および(I)から(VIII)を組み合わせる方法をパラメーターSの調整に加えて制御可能である。
<方法(I)>
方法(I)に関しては、上記組成式(3)において、e1/b1の上限は望ましい順に4.00、3.70、3.40、3.30であり、e1/b1の下限は望ましい順に、2.00、2.20、2.40、2.60、2.70であり、d1/b1の上限として望ましい順に、12.0、11.0、10.0であり、d1/b1の下限として望ましい順に、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5であり、c1/e1の上限として望ましい順に、1.7、1.5、1.3であり、c1/e1の下限として望ましい順に、0.4、0.6、0.8であり、c1/d1の上限として望ましい順に、0.5、0.4であり、c1/d1の下限として望ましい順に、0.2、0.3であり、g1/d1の上限として望ましい順に、0.015、0.010であり、g1/d1の下限として、0.005であり、g1/c1の上限として望ましい順に、0.023、0.020であり、g1/c1の下限として望ましい順に、0.012、0.015となる。
<方法(II)>
方法(II)に関しては、予備焼成および本焼成、およびそれらの両方において、200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下、より好ましくは515℃以上550℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下、より好ましくは2時間以上15時間以下、最も好ましくは2時間以上9時間以下となり、その雰囲気としては酸素濃度が10容量%以上40容量%以下、好ましくは15容量%以上30容量%以下、最も好ましくは空気雰囲気となる。特に本焼成温度は、515℃以上が好ましく、上記パラメーターS、組成の組み合わせによって所望のM、N、L1、L2を実現できる。
<方法(III)>
方法(III)に関しては、予備焼成および本焼成、およびそれらの両方において、焼成工程中の最高到達温度(予備焼成温度もしくは本焼温度)から、室温に低下するまでの触媒表面の温度の低下速度(降温速度)が、1℃/分以上200℃/分以下、好ましくは5℃/分以上150℃/分以下、より好ましくは10℃/分以上120℃/分以下、最も好ましくは50℃/分以上100℃/分以下、となる。上述した降温速度範囲を達成するために一般に工業的に取られる降温手法、たとえば焼成炉から取り出した触媒を不活性雰囲気や不活性な溶媒によるミストに暴露する手法や、あらかじめ十分に冷却された室内に触媒を急速に移動させる手法はすべて、本実施の範疇となる。
<方法(IV)>
方法(IV)に関しては、触媒前駆体および/または各工程で形成された顆粒に対して、機械的な衝撃およびせん断応力等を加えないよう制御する手法であり、この機械的な衝撃およびせん断応力等の好ましい範囲としては、100kgf以下、好ましくは50kgf以下、より好ましくは20kgf以下、さらに好ましくは10kgf以下、最も好ましくは5kgf以下に制御することとなる。
<方法(V)>
方法(V)に関しては、試薬級の高純度な原料を使用する方法であればその詳細を問わないが、たとえば硫黄およびその化合物、リチウム、ハロゲンおよびその化合物、鉛の含有量が10000重量ppm以下、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは100重量ppm、最も好ましくは10重量ppm以下であることとなる。
<方法(VI)>
方法(VI)に関しては、触媒前駆体をいったん顆粒として得て、これを成形する方法が挙げられる。触媒前駆体を顆粒として得ることで、触媒の各成分をより均一に製造することができる。
<方法(VII)>
方法(VII)に関しては、触媒の調合工程において、コバルト原料とニッケル原料が調合釜の中で混合、反応、スラリー化、滞留する時間をなるべく短くなるよう制御する方法であり、より具体的にはモリブデンやアルカリ金属を除いた金属塩原料が調合釜中になく、コバルト原料とニッケル原料が存在する状況での上記滞留時間を短くする方法、あるいは調合釜中のpHが特定の範囲を取る際に、コバルト原料とニッケル原料が存在する状況での上記滞留時間を短くする方法である。上記滞留時間としては、24時間が好ましく、1時間がさらに好ましく、30分がさらに好ましく、10分が最も好ましい。上記pHの範囲としては1以上14以下、好ましくは2以上10以下、より好ましくは2以上8以下、最も好ましくは3以上7以下となる。鉄原料とビスマス原料、モリブデン原料とビスマス原料に関しても同様となる。
<方法(VIII)>
方法(VIII)に関しては、後述する触媒の調合工程において、各原料を調合工程の中で分割せず一括で投入する方法、あるいは調合液中の硝酸濃度を下げる方法が挙げられる。上記の一括で投入する方法とは、各原料の必要量を全て投入したのちに次の原料を投入することを意味する。また上記の調合液中の硝酸濃度に関しては、調合完了し次工程に進む際の調合液において、その硝酸イオンとしての質量%での濃度が、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは25質量%以下、となる。
<第二段目触媒について>
本発明の触媒を、第一段目の触媒、すなわち不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用いた場合、第二段目の酸化反応を行い、不飽和カルボン酸化合物を得ることができる。
この場合、第二段目の触媒としては、本発明の触媒も用いることもできるが、好ましくは下記式(5)で表される触媒活性成分を含む触媒である。
[化2]
Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(5)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Z2はニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ示す。またa2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
上記式(5)で表される触媒活性成分を含む触媒の製造にあたっては、この種の触媒、例えば酸化物触媒、ヘテロポリ酸又はその塩構造を有する触媒を調製する方法として一般に知られている方法が採用できる。触媒を製造する際に使用できる原料は特に限定されず、種々のものが使用できる。例えば、三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸又はその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸又はその塩などを用いることができる、アンチモン成分原料としては特に制限はないが、三酸化アンチモンもしくは酢酸アンチモンが好ましい。バナジウム、タングステン、銅等、その他の元素の原料としてはそれぞれの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、金属等が使用できる。
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
次いで前記で得られたスラリー液を乾燥し、触媒活性成分固体とする。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられ、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の出口における温度が70~150℃である。また、この際得られるスラリー液乾燥体の平均粒径が10~700μmとなるように乾燥するのが好ましい。
前記のようにして得られた第二段目の触媒活性成分固体は、そのまま被覆用混合物に供することができるが、焼成すると成形性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~350℃、好ましくは150~300℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。このようにして得られた焼成後の固体は成形前に粉砕されることが好ましい。粉砕方法として特に制限はないが、ボールミルを用いると良い。
また、前記第二段目のスラリーを調製する際の活性成分を含有する化合物は、必ずしも全ての活性成分を含んでいる必要はなく、一部の成分を下記成形工程前に使用してもよい。
前記第二段目の触媒の形状は特に制約はなく、酸化反応において反応ガスの圧力損失を小さくするために、柱状物、錠剤、リング状、球状等に成形し使用する。このうち選択性の向上や反応熱の除去が期待できることから、不活性担体に触媒活性成分固体を担持し、担持触媒とするのが特に好ましい。この担持は以下に述べる転動造粒法が好ましい。この方法は、例えば固定容器内の底部に、平らなあるいは凹凸のある円盤を有する装置中で、円盤を高速で回転することにより、容器内の担体を自転運動と公転運動の繰返しにより激しく攪拌させ、ここにバインダーと触媒活性成分固体並びに、必要により、これらに他の添加剤例えば成形助剤、強度向上剤を添加した担持用混合物を担体に担持する方法である。バインダーの添加方法は、1)前記担持用混合物に予め混合しておく、2)担持用混合物を固定容器内に添加するのと同時に添加、3)担持用混合物を固定容器内に添加した後に添加、4)担持用混合物を固定容器内に添加する前に添加、5)担持用混合物とバインダーをそれぞれ分割し、2)~4)を適宜組み合わせて全量添加する等の方法が任意に採用しうる。このうち5)においては、例えば担持用混合物の固定容器壁への付着、担持用混合物同士の凝集がなく担体上に所定量が担持されるようオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい。バインダーは、水やエタノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、セルロース類及びエチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、特にグリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。い。これらバインダーの使用量は、担持用混合物100質量部に対して通常2~60質量部、好ましくは10~50質量部である。
上記担持における担体の具体例としては、炭化珪素、アルミナ、シリカアルミナ、ムライト、アランダム等の直径1~15mm、好ましくは2.5~10mmの球形担体等が挙げられる。これら担体は通常は10~70%の空孔率を有するものが用いられる。担体と担持用混合物の割合は通常、担持用混合物/(担持用混合物+担体)=10~75質量%、好ましくは15~60質量%となる量を使用する。担持用混合物の割合が大きい場合、担持触媒の反応活性は大きくなるが、機械的強度が小さくなる傾向にある。逆に、担持用混合物の割合が小さい場合、機械的強度は大きいが、反応活性は小さくなる傾向がある。なお、前記において、必要により使用する成形助剤としては、シリカゲル、珪藻土、アルミナ粉末等が挙げられる。成形助剤の使用量は、触媒活性成分固体100質量部に対して通常1~60質量部である。また、更に必要により触媒活性成分固体及び反応ガスに対して不活性な無機繊維(例えば、セラミックス繊維又はウィスカー等)を強度向上剤として用いることは、触媒の機械的強度の向上に有用であり、ガラス繊維が好ましい。これら繊維の使用量は、触媒活性成分固体100質量部に対して通常1~30質量部である。なお、第一段目の触媒の成形においては、添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
前記のようにして得られた担持触媒はそのまま触媒として気相接触酸化反応に供することができるが、焼成すると触媒活性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~450℃、好ましくは270~420℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。
本発明の触媒を、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する反応、特にプロピレンを分子状酸素又は分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化してアクロレイン、アクリル酸を製造する反応に使用する場合において、触媒活性の向上、および収率の向上をすることができ、公知の方法と比較して製品の価格競争力の向上に非常に有効である。また、ホットスポット温度の低減のような発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性にも向上効果が期待できる。更に、本発明の触媒は、環境や最終製品の品質に悪影響の生じる副生成物、たとえば一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO)、アセトアルデヒドや酢酸、ホルムアルデヒドの低減にも有効である。
こうして得られた本発明の触媒は、例えばプロピレンを、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化して、アクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する際に使用できる。本発明の製造方法において原料ガスの流通方法は、通常の単流通法でもあるいはリサイクル法でもよく、一般に用いられている条件下で実施することができ特に限定されない。たとえば出発原料物質としてのプロピレンが常温で1~10容量%、好ましくは4~9容量%、分子状酸素が3~20容量%、好ましくは4~18容量%、水蒸気が0~60容量%、好ましくは4~50容量%、二酸化炭素、窒素等の不活性ガスが20~80容量%、好ましくは30~60容量%からなる混合ガスを反応管中に充填した本発明の触媒上に250~450℃で、常圧~10気圧の圧力下で、空間速度300~5000h-1で導入し反応を行う。
本発明において触媒活性の向上とは、特に断りがない限り同じ反応浴温度で触媒反応を行って比較をしたときに原料転化率が高いことを指す。
本発明において収率が高いとは、特に断りがない限り、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして酸化反応を行った場合には、対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の合計収率が高いことを指す。また、特に断りがない限り、収率とは後述する有効収率を指す。
本発明において触媒活性成分の構成元素とは、特に断りがない限り、上記触媒製造工程において使用するすべての元素を指すが、本焼工程の最高温度以下にて消失、昇華、揮発、燃焼する原料およびその構成元素は、触媒の活性成分の構成元素に含めないものとする。また、成形工程における成形助剤や担体に含まれるケイ素およびその他の無機材料を構成する元素も、触媒の活性成分の構成元素として含まれないものとする。
本発明においてホットスポット温度とは、多管式反応管内の長軸方向に熱電対を設置し、測定される触媒充填層内の温度分布の最高温度であり、反応浴温度とは反応管の発熱を冷却する目的で使用される熱媒の設定温度である。上記温度分布の測定の点数には特に制限はないが、例えば触媒充填長を均等に10から1000に分割する。
本発明において不飽和アルデヒドおよび不飽和アルデヒド化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのアルデヒドを有する有機化合物であり、たとえばアクロレイン、メタクロレインである。本発明において不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのカルボキシ基、またはそのエステル基を有する有機化合物であり、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチルである。本発明において共役ジエンとは、1つの単結合によって二重結合が隔てられ化学的に共役したジエンであり、たとえば1,3-ブタジエンである。
本発明の触媒の製造方法は従来の触媒と比較してより簡便に製造でき、したがって製造コストが低いにもかかわらず高性能な触媒を得ることを可能とするものである。また、本発明の触媒は触媒活性が高くない領域においても収率向上に有効なほか、たとえばΔT(ホットスポット温度と反応浴温度の差)低減のような発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性にも向上効果が見られる。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例において、原料転化率、有効収率、有効選択率、担持率は以下の式に従って算出した。
原料転化率(%)=(反応したプロピレンのモル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
有効収率(%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸の合算モル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
有効選択率(%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸の合算モル数)/(反応したプロピレンのモル数)×100
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100
[実施例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.17質量部を純水1.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄41質量部、硝酸コバルト89質量部及び硝酸ニッケル33質量部を60℃に加温した純水85質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス16質量部を60℃に加温した純水17質量部に硝酸(60質量%)4.1質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.2:6.5:2.4:0.04)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品130gを、540℃、4時間、かつ酸素ガス線速0.014cm/秒の条件で本焼成を行い、触媒1を得た。得られた触媒1を用いて熱重量示唆熱測定を行い、その結果得られたパラメーターL1、L2を表1および表2に示す。
[実施例2、比較例1~2]
実施例1において、焼成工程における焼成温度、成型品量、酸素ガス線速、焼成均熱時間を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして触媒2~4を得た。これらの触媒を用いて熱重量示唆熱測定を行い、得られたパラメーターL1、L2を表2に示す。
[実施例3]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.37質量部を純水3.5質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄31質量部、硝酸コバルト81質量部及び硝酸ニッケル44質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス23質量部を60℃に加温した純水24質量部に硝酸(60質量%)5.8質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.0:1.6:5.9:3.2:0.08)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が60質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.1mmの球状成形品130gを、545℃、4時間、かつ酸素ガス線速0.014cm/秒の条件で本焼を行い、触媒5を得た。得られた触媒5を用いて熱重量示唆熱測定を行い、その結果得られたパラメーターL1、L2を表1および表2に示す。
[実施例4]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.42質量部を純水3.8質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄38質量部、硝酸コバルト82質量部及び硝酸ニッケル40質量部を60℃に加温した純水85質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス17質量部を60℃に加温した純水18質量部に硝酸(60質量%)4.4質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:2.0:6.0:2.9:0.09)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品130gを、530℃、4時間、かつ酸素ガス線速0.014cm/秒の条件で本焼成を行い、触媒6を得た。得られた触媒6を用いて熱重量示唆熱測定を行い、その結果得られたパラメーターL1、L2を表1および表2に示す。
[実施例5]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸セシウム0.37質量部を純水3.3質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄38質量部、硝酸コバルト85質量部及び硝酸ニッケル27質量部を60℃に加温した純水80質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス18質量部を60℃に加温した純水19質量部に硝酸(60質量%)4.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.8:2.0:6.2:2.0:0.04)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が60質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.1mmの球状成形品130gを、515℃、4時間、かつ酸素ガス線速0.014cm/秒の条件で本焼成を行い、触媒7を得た。得られた触媒7を用いて熱重量示唆熱測定を行い、その結果得られたパラメーターL1、L2を表1および表3に示す。
[参考例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.45質量部を純水45質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄38質量部、硝酸コバルト71質量部及び硝酸ニッケル38質量部を60℃に加温した純水76質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス36質量部を60℃に加温した純水41質量部に硝酸(60質量%)9.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.6:2.0:5.2:2.8:0.10)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、530℃、4時間の条件で本焼成を行い、上層用触媒として共通で使用する触媒8を得た。
触媒1から触媒6を用いて、以下の方法によりプロピレンの酸化反応を実施し、原料転化率および有効収率を求めた。内径28.4mmステンレス鋼反応管のガス入り口側に触媒8、ガス出口側に触媒1から触媒6の各々を充填し、ガス体積比率がプロピレン:酸素:水蒸気:窒素=1.00:1.65:1.27:9.53の混合ガスを反応管内の全触媒に対するプロピレン空間速度100hr-1で導入し、プロピレンの酸化反応を実施した。反応浴温度315℃にて反応開始から300時間以上のエージング処理後、反応管出口ガスの分析より、有効収率が最大となるプロピレン転化率(実施例1~3、比較例1、2では97.0%、実施例4では98.0%)となるように反応浴温度を調整し、表2に示す有効収率を求めた。
Figure 2023112677000001
Figure 2023112677000002
表2より、L1およびL2が本発明の範囲内にある触媒1、2、5および6は、優位に高い有効収率を示すことがわかる。さらに、L1に対する有効収率の関係は上に凸な曲線で表され、有効収率の観点からL1に望ましい範囲があることが、発明者らによって明らかにされた。
触媒7を用いて、以下の方法によりプロピレンの酸化反応を実施し、原料転化率および有効収率を求めた。内径22.0mmステンレス鋼反応管に触媒7を充填し、ガス体積比率がプロピレン:酸素:水蒸気:窒素=1.00:1.70:1.00:8.80の混合ガスを反応管内の全触媒に対するプロピレン空間速度100hr-1で導入し、プロピレンの酸化反応を実施した。反応浴温度315℃にて反応開始から300時間以上のエージング処理後、反応管出口ガスの分析より、プロピレンの転化率が=71.0%となる反応浴温度を調整し、表3に示す有効収率を求めた。
Figure 2023112677000003
実施例5は、触媒7のみを充填した1層の触媒層からなる実施態様である。この為、2層の触媒層を有する実施例1~4、比較例1、2よりは有効収率において劣る結果である。しかし69.2%という値は、同様の方法(1層系)で使用される他の触媒と比較しても優位に高い有効収率を示していると言える。
本発明を使用することにより、気相酸化反応に用いる場合、特に不飽和アルデヒド化合物、または不飽和カルボン酸化合物を、部分酸化反応により製造する場合に、高い収率を得ることが可能である。

Claims (11)

  1. モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含有し、熱重量示唆熱測定において得られる重量変化率を用いて下記式(1)で表現されるL1が-1.500≦L1≦-0.010であることを特徴とする触媒。

    L1=Log{(M-N)+0.050}・・・(1)

    M=400~510℃までの重量変化率(%)
    N=150~400℃までの重量変化率(%)
  2. 前記L1が-1.350≦L1≦-0.350であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
  3. モリブデン、ビスマス、およびコバルトを必須成分として含有し、熱重量示唆熱測定において得られる重量変化率を用いて、下記式(2)で表現されるL2が-1.500≦L2≦7.934であることを特徴とする触媒。

    L2=Log{(M÷N)}・・・(2)

    M=400~510℃までの重量変化率(%)
    N=150~400℃までの重量変化率(%)
  4. 前記L2が-0.400≦L2≦3.600であることを特徴とする請求項3に記載の触媒。
  5. 触媒組成が下記式(3)で表される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の触媒。
    Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(3)
    (式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
  6. 不活性担体に担持された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の触媒。
  7. 前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである請求項6に記載の触媒。
  8. 触媒が不飽和アルデヒド化合物、及び/又は不飽和カルボン酸化合物、及び/又は共役ジエンの製造用である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒。
  9. (a)金属をそれぞれ又は複数含む化合物を水に分散し、これらの化合物の水溶液又は水分散体(スラリー液)を調製する工程、
    (b)工程(a)で得られたスラリー液を乾燥してスラリー乾燥体を得る工程、
    (c)工程(b)で得られたスラリー乾燥体を成型する工程、
    (d)工程(c)で得られた被覆成型物を制御された酸素濃度雰囲気下で焼成する工程を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
  10. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の触媒を用いた不飽和アルデヒド化合物、及び/又は不飽和カルボン酸化合物、及び/又は共役ジエンの製造方法。
  11. 不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸であり、共役ジエンが1,3-ブタジエンである請求項10に記載の製造方法。

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