以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態(参考例)として、クラッチレリーズ機構の給脂装置を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(第1実施形態)
第1実施形態の給脂装置は、マニュアルトランスミッション車両が冠水・渡河走行した後、MTクラッチハウジング内フォークグリス潤滑部からのグリス流出、異物混入により生じる摺動不良(例えば、摩擦増、異音等伴う摺動不良)に対し、低コスト、短時間で点検、グリス射出メンテナンスを行うために用いられる。
図1は、第1実施形態のクラッチレリーズ機構を模式的に示す図である。図1に示すように、クラッチ装置1は、動力の断続作用を行うクラッチ本体10と、クラッチ本体10を操作するためのクラッチレリーズ機構20と、クラッチ本体10を内部に収容するクラッチハウジング30とを含んで構成される。例えば、クラッチ装置1はマニュアルトランスミッション車に搭載されて、エンジンと変速機(トランスミッション)との間に配置される。
なお、図1に示すX方向は中心軸線に沿った軸方向、Z方向は中心軸線に対して直交する方向(径方向や高さ方向という場合がある)を表す。Z方向を高さ方向とした場合、上側を先端側、下側を基端側と記載する場合がある。さらに、後述するY方向はX方向およびZ方向と直交する方向を表す。Y方向を幅方向と記載する場合がある。
クラッチ本体10は、クラッチディスク11と、クラッチカバー12と、プレッシャプレート13と、ダイヤフラムスプリング14と、レリーズベアリング15と、を備える。
クラッチディスク11は、プレッシャプレート13とフライホイール16との間に挟まれた摩擦面(クラッチフェーシング)を有し、変速機の入力軸3とスプライン嵌合している。クラッチディスク11の摩擦面とフライホイール16との間の摩擦力によってフライホイール16の回転を入力軸3に伝達する。エンジンのクランクシャフト2にはフライホイール16がボルト締結されており、フライホイール16とクランクシャフト2とは一体回転する。
クラッチカバー12は、クラッチディスク11の外周側を覆うように設けられ、プレッシャプレート13およびダイヤフラムスプリング14と一体回転する。プレッシャプレート13は、クラッチディスク11の摩擦面とダイヤフラムスプリング14との間に設けられている。ダイヤフラムスプリング14は、プレッシャプレート13を介してクラッチディスク11の摩擦面をフライホイール16に向けて押し付けるための部材であり、プレッシャプレート13に対してクラッチディスク11の摩擦面の反対側に設けられている。ダイヤフラムスプリング14の周縁部はプレッシャプレート13に接続され、ダイヤフラムスプリング14の中央部はレリーズベアリング15に接続されている。これによりダイヤフラムスプリング14はプレッシャプレート13を押圧することが可能である。
クラッチ本体10の係合時、プレッシャプレート13はダイヤフラムスプリング14の弾性力によってクラッチディスク11の摩擦面をフライホイール16側に向けて押し付ける。これにより、クラッチディスク11の摩擦面とフライホイール16との間の摩擦力が発生し、フライホイール16の回転がクラッチディスク11に伝達される接続状態となる。
クラッチ本体10の開放時、レリーズベアリング15がダイヤフラムスプリング14の中央部を押すことによってダイヤフラムスプリング14の周縁部がフライホイール16から離れる方向に変位する。このとき、プレッシャプレート13がダイヤフラムスプリング14とともにフライホイール16から離れる方向に引き寄せられる。これにより、クラッチディスク11の摩擦面とフライホイール16との間の摩擦力が解消され、フライホイール16の回転がクラッチディスク11に伝達されない切断状態となる。
クラッチレリーズ機構20は、クラッチレリーズフォーク21と、レリーズフォークサポート22と、レリーズシリンダ23と、を備える。
クラッチレリーズフォーク21は、レリーズベアリング15を軸方向に移動させるための部材であり、レリーズフォークサポート22によって支持された状態で揺動可能に構成されている。このクラッチレリーズフォーク21は金属製の細長い部材であり、先端側が二股に分かれた構造を有する。
図1に示すように、クラッチレリーズフォーク21の一端側は、レリーズベアリング15を軸方向に押圧する押圧部21aにより構成される。押圧部21aは、クラッチハウジング30の内部で入力軸3を挟むように先端側が二股に分かれた二股構造に構成されている。押圧部21aのうち軸方向でレリーズベアリング15と対向する部分(当接部分)がレリーズベアリング15に接触する。クラッチレリーズフォーク21の他端側は、クラッチハウジング30の貫通孔31を介してクラッチハウジング30の外側に突出し、レリーズシリンダ23に接続された接続部21bにより構成されている。また、クラッチレリーズフォーク21の他端側はクラッチハウジング30の外側に延出した位置でフォークブーツ32により覆われている。フォークブーツ32は貫通孔31に取り付けられている。フォークブーツ32には、クラッチ本体10を半係合状態にした際に生じる摩擦熱をクラッチハウジング30の外部へ逃がすための孔(クーリング孔)が設けられてもよい。
さらに、クラッチレリーズフォーク21は、押圧部21aと接続部21bとの間に、レリーズフォークサポート22により支持される支点部21cを有する。レリーズフォークサポート22は、クラッチハウジング30の隔壁に固定された本体部と、本体部の先端側に球面を有するピボット部(図示せず)とにより構成される。クラッチハウジング30の隔壁は、入力軸3を支持する軸受(図示せず)が取り付けられるリテーナにより構成される。リテーナはクラッチハウジング30に固定される部材である。リテーナにはレリーズフォークサポート22の根元側がボルト締結されている。また、クラッチハウジング30の内部ではリテーナのボス部30aが入力軸3に沿って延びている。ボス部30aの内側には入力軸3が挿通されている。
レリーズベアリング15は、ボス部30aの外周上にスリーブを介して支持された状態で、ボス部30aに対して軸方向に移動可能に構成されている。レリーズベアリング15はダイヤフラムスプリング14の中央部を接触するように配置されている。このレリーズベアリング15は、ボス部30a上でスリーブに支持された外輪と、ダイヤフラムスプリング14の中央部に接触する内輪とを有する。レリーズベアリング15では、ダイヤフラムスプリング14に接触する内輪は回転し、クラッチレリーズフォーク21に接触する外輪は回転しない。
そして、運転者がクラッチペダル(図示せず)を踏み込むとレリーズシリンダ23が作動する。レリーズシリンダ23によって接続部21bが操作されると、クラッチレリーズフォーク21は支点部21cを支点にして揺動する。この揺動によって、押圧部21aはレリーズベアリング15を押圧し、レリーズベアリング15が軸方向に移動してダイヤフラムスプリング14の中央部をフライホイール16側に押す状態となり、クラッチ本体10が開放状態となる。クラッチ本体10が開放状態になると、フライホイール16とクラッチディスク11との間が動力伝達不能に切断される。レリーズシリンダ23からの操作力が解除されると、押圧部21aからレリーズベアリング15に作用する押圧力がなくなり、クラッチ本体10は係合状態となる。クラッチ本体10が係合状態になると、フライホイール16とクラッチディスク11との間が動力伝達可能に接続される。このように、クラッチレリーズフォーク21の揺動によって、エンジン側のクランクシャフト2と変速機側の入力軸3との間の動力伝達経路の接続および切断が行われる。
次に、第1実施形態の給脂装置100について説明する。給脂装置100は、クラッチレリーズフォーク21の押圧部21aとレリーズベアリング15との接触部分にグリスを供給する装置である。給脂装置100は、クラッチハウジング30に後述のように固定された第1治具110のガイド用貫通孔(第1孔113、第2孔114)に、第2治具120(挿入部121)を挿入し、当該第2治具120に設けられた給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となるまで、当該第2治具120(挿入部121)を該当部Cに向けて差し込むように構成されている。該当部Cとは、図1に示すように、給脂必要箇所(給脂パイプ130の先端部131からグリスの供給が必要な箇所)であるクラッチレリーズフォーク21(押圧部21a)とレリーズベアリング15との接触部分をいう。図1に示すように、該当部Cは、クラッチハウジング30(本発明のカバー部材の一例)が取り囲む内部空間に配置されている。クラッチハウジング30には、この内部空間に連通する治具固定用貫通孔(貫通孔31)が形成されている。
クラッチ装置1を搭載した車両が砂や泥水等の存在する環境下で使用された場合には、上述したフォークブーツ32のクーリング孔やクラッチハウジング30に設けられたクーリング孔または水抜き用の開口部(いずれも図示せず)からクラッチハウジング30内に異物が侵入することがある。そのため、クラッチレリーズ機構20をメンテナンスして、クラッチレリーズフォーク21とレリーズベアリング15との接触部分にグリスを追加供給する給脂メンテナスを行うことが望まれる。そこで、給脂装置100では、車両からのクラッチハウジング30(又はこれを含むマニュアルトランスミッションユニット)の脱着不要で給脂メンテナスの作用が可能になるように構成されている。この給脂装置100は、クラッチハウジング30の貫通孔31を介してクラッチハウジング30の外側から、給脂パイプ130(図2等に示す)を用いて、給脂必要箇所であるクラッチレリーズフォーク21とレリーズベアリング15との接触部分にグリスを供給する。
図2に示すように、給脂装置100は、第1治具110と、第2治具120と、給脂パイプ130と、可撓性管140と、給脂器150とを含んで構成される。第1治具110および第2治具120は、給脂パイプ130を位置決めするための部材である。第1治具110は、クラッチハウジング30の貫通孔31に取り付けられる部材である。第2治具120は、第1治具110の挿入孔に挿通される部材である。
第1治具110は、給脂パイプ130(グリス射出パイプ)の方向(差し込み方向)を規制するガイド治具で、基部111と、突出部112と、位置決め用の孔である第1孔113および第2孔114とを有する。この第1治具110は金属製の一体成形品である。基部111は、平板状に形成され、貫通孔31の開口部を一部覆うことができる形状を有する。基部111の幅(後述するY方向の長さ)は貫通孔31の開口幅よりも大きい。突出部112は、基部111から突出している部分であり、貫通孔31に挿入される部分である。この突出部112は貫通孔31の内面31aに当接するとともにクラッチレリーズフォーク21の平面21dに当接することによって第1治具110を位置決めする位置決め部として機能する。
第1孔113および第2孔114は、給脂パイプ130および第2治具120の挿入部121が挿入される挿入孔であり、給脂パイプ130を位置決めする位置決め孔である。第1孔113と第2孔114とは、第1治具110の幅方向に並んで形成され、いずれも基端側の基部111から先端側の突出部112に向けて貫通する貫通孔である。なお、この説明では、第1孔113と第2孔114とを特に区別しない場合には「挿入孔」と記載する。
第2治具120は、第1治具110の第1孔113および第2孔114に挿入される角柱形状の挿入部121と、第1治具110の表面111aに当接するストッパ部122とを有する。この第2治具120は金属製の一体成形品である。また、第2治具120には給脂パイプ130が一体化されている。第2治具120は、基端側から先端側に挿入部121に沿って直線状に延びる二つの貫通孔123,124を有する。一方の貫通孔123は給脂パイプ用の孔である。他方の貫通孔124が内視鏡用の孔である。貫通孔123には給脂パイプ130が挿通された状態で固定されている。貫通孔124には内視鏡160が挿通された状態で固定されている(図3参照)。また、ストッパ部122は第1治具110の表面111aに当接するストッパ面122a(図3に示す)を有する。
給脂パイプ130は、クラッチハウジング30の内部でクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aとレリーズベアリング15との接触部分にグリスを供給するためのパイプである。給脂パイプ130は、グリス(本発明の流体の一例)が射出される先端部131を含む長尺の射出部である。この給脂パイプ130は金属製である。給脂パイプ130の先端部131にはグリスを射出する開口部131a(以下、射出口131aとも呼ぶ)が設けられている。給脂パイプ130の基端側には可撓性管140が接続されている。給脂パイプ130は可撓性管140を介して給脂器150と接続されている。
図3に示すように、給脂装置100は、撮影手段としての内視鏡160を備える。内視鏡160は、給脂パイプ130の先端部及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像を撮像する撮像部を先端部160aに含む長尺の撮像装置である。内視鏡160が本発明の撮像装置の一例である。内視鏡160は第2治具120に一体化されており、挿入部121の先端側から突出している。内視鏡160の先端側はクラッチハウジング30の内部に挿入される部分であり、この先端部161aにはレンズが設けられている。内視鏡160の基端側はケーブル161を介して操作部162に接続されている。操作部162を操作することによって内視鏡160によるクラッチハウジング30の内部構造の撮影が可能である。内視鏡160により撮影した画像(例えば、給脂パイプ130の先端部及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像)は、操作部162に取り付けられた表示部163に表示することができる。
給脂器150は、シリンダ151と押し棒152(ピストン)とにより構成される(図3参照)。給脂器150のシリンダ151には可撓性管140が接続されている。グリスをシリンダ151内に充填した状態で押し棒152を押すことによって、給脂器150からグリスを給脂パイプ130に供給できる。例えば、予め給脂パイプ130内および可撓性管140内にグリスを充填した状態で、給脂パイプ130を貫通孔31からクラッチハウジング30の内部に挿入し、給脂器150を操作することによる給脂をスムースに行うことも可能である。
給脂パイプ130の先端部131は、縮径した形状を有し、グリスを射出する開口部131aを備える。例えば、給脂パイプ130の開口部131aは、図4Aに示すように、円形状の開口部131aであってもよい。あるいは、図4Bに示すように、扁平上の開口部131aであってもよい。給脂パイプ130の先端部131が縮径形状を有することによって、クラッチハウジング30内の幅狭空間を通って給脂必要箇所への給脂が可能になる。
ここで、図5,図6A~6Cを参照して、第1治具110を詳細に説明する。図5は、第1治具110の基端側の平面図である。図6Aは、図5のA矢視を示す図である。図6Bは、第1治具110を背面側から見た斜視図である。図6Cは、図5のB-B線断面を示す図である。
図5に示すように、第1治具110は、基部111の表面111a側に第1孔113および第2孔114の長方形状の開口部を有する。第1孔113の内面は、挿入部121が当接して給脂パイプ130を位置決めするためのガイド面と機能する面であり、第1面113aと第2面113bと第3面113cと第4面113dとを有する。第1面113aと第2面113bとはY方向に対向する面であり、長方形状の短辺部分となる。第3面113cと第4面113dとはX方向に対向する面であり、長方形状の長辺部分となる。第2孔114の内面は、給脂パイプ130を位置決めするためのガイド面と機能する面であり、第1面114aと第2面114bと第3面114cと第4面114dとを有する。第1面114aと第2面114bとはY方向に対向する面であり、長方形状の短辺部分となる。第3面114cと第4面114dとはX方向に対向する面であり、長方形状の長辺部分となる。
さらに、第1治具110は、クラッチレリーズフォーク21の平面21dに当接する当接面115を有する。当接面115は位置決め面であり、クラッチレリーズフォーク21の平面21dに当接することによって第1治具110のX方向の位置を定めることができる。図6Aに示すように、当接面115は基部111の幅方向(Y方向)に所定幅を有し、かつ突出部112の高さ方向(Z方向)に沿って延びている。
図6Bに示すように、第1治具110の背面111b側には、キー部116が設けられている。キー部116は突出部112が貫通孔31に挿入された際にクラッチハウジング30に引っ掛かる部分である。このキー部116は第1治具110を貫通孔31に保持する部位として機能する。また、突出部112に開口する第1孔113および第2孔114の開口部も基端側と同様に長方形状である。図6Cに示すように、第1孔113は突出部112の内部を直線状に延びている。
次に、図7~図9を参照して、給脂装置100による給脂方法に説明する。図7は、クラッチハウジング30の貫通孔31に第1治具110を取り付けた状態を示す図である。図8は、第1治具110の挿入孔に第2治具120を挿入した状態で給脂パイプ130がクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aに向けて延びている状態を示す図である。図9は、給脂パイプ130の先端部131の高さ位置を説明するための図である。なお、図9に示すZ方向は高さ方向を表す。以下の各工程を実施する前に、フォークブーツ32を取り外す。これにより、給脂パイプ130等を挿入するための、クラッチハウジング30の貫通孔31(図2、図9等参照)が露出する。
第1工程として、第1治具110をクラッチハウジング30(本発明の固定相手の一例)の貫通孔31に固定する。
図11は、図9から抜き出した第1治具110及び第2治具120を表す図である。
図11に示すように、第1治具110は、クラッチハウジング30に対してX方向、Y方向及びZ方向に関し位置決めされた状態で、クラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)に固定される。
具体的には、まず、第1治具110の突出部112とクラッチハウジング30の貫通孔31とを互いに対向させ(図2参照)、かつ、第1治具110の当接面115とクラッチレリーズフォーク21(平面21d)とを互いに対向(接触)させる(図7参照)。
次に、第1治具110の突出部112が貫通孔31に挿入され、かつ、第1治具110の基部111がクラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分に当接するまで、第1治具110を、クラッチレリーズフォーク21(平面21d)に沿って貫通孔31に近づく方向(図2中の矢印AR1参照)にスライド移動させる。
第1治具110の突出部112が貫通孔31に挿入され、当該突出部112の側面112a,112bと貫通孔31の内面31a,31bとが対向(当接)することにより、第1治具110は、クラッチハウジング30に対してY方向に関し位置決めされる。
また、第1治具110の基部111がクラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分に当接することにより、第1治具110は、クラッチハウジング30に対してZ方向に関し位置決めされる。
次に、以上のようにクラッチハウジング30に対してY方向及びZ方向に関し位置決めされた状態の第1治具110を矢印AR2方向(図7、図11参照)に押し込む。
具体的には、クラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分が第1治具110の基部111とキー部116との間のスペースに挿入(圧入)され(図11参照)、かつ、当該貫通孔31の周囲部分が第1治具110の基部111とキー部116との間の底部117に突き当たるまで、上記のようにクラッチハウジング30に対してY方向及びZ方向に関し位置決めされた状態の第1治具110を矢印AR2方向(図7、図11参照)に押し込む。
第1治具110の基部111とキー部116との間の距離A1(図11参照)とクラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分の厚みB1(図11参照)とは、A1<B1の関係となるように設定されている。そのため、以上のようにクラッチハウジング30に対してY方向及びZ方向に関し位置決めされた状態の第1治具110を矢印AR2方向(図7、図11参照)に押し込むと、クラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分が、第1治具110の基部111とキー部116との間のスペースに挿入(圧入)される。これにより、第1治具110は、クラッチハウジング30に固定される。
また、クラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分が、第1治具110の基部111とキー部116との間の底部117に突き当たることにより、第1治具110は、クラッチハウジング30に対してX方向に関し位置決めされる。
以上のようにして第1治具110は、クラッチハウジング30(本発明の固定相手の一例)に対してX方向、Y方向及びZ方向に関し位置決めされた状態でクラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)に固定される。別言すると、第1治具110は、クラッチハウジング30に対してX方向、Y方向及びZ方向に関し位置決めされた状態でクラッチハウジング30のうち貫通孔31の周囲部分に係合する。第1治具110の基部111とキー部116が本発明の係合部の一例である。
このように第1治具110がクラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)に固定された状態で第1治具110の第1孔113は、該当部C(一方の押圧部21a)に向かって延びている(図9参照)。同様に、第1治具110の第2孔114は、該当部C(他方の押圧部21a)に向かって延びている。なお、第1治具110は、以上と逆の手順を踏むことで、クラッチハウジング30から取り外すことができる。
第1工程の次工程として、給脂パイプ130および第2治具120を、以上のようにクラッチハウジング30に固定された第1治具110の挿入孔(第1孔113、第2孔114)に挿入する工程(挿入工程)を行う。この挿入工程では、第2治具120を第1治具110の挿入孔(第1孔113、第2孔114)に挿入する際、二段階に挿入する工程を行う。第2治具120の挿入部121の側面121a,121bには、先端側から所定距離の位置に第2実施形態で後述するケガキ線が付されている。挿入部121は、外周形状が長方形状に形成されている。側面121a,121bは長方形の短辺部分となる。また、側面121aはY方向で一方の面、側面121bはY方向で他方の面となる。さらに、挿入部121の長方形は、第1孔113の開口部の長方形および第2孔114の開口部の長方形よりも小さい。
図8に示すように、第1治具110の第1孔113に第2治具120の挿入部121が挿入されることによって、給脂パイプ130が、給脂必要箇所であるクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aに向けて延びている。押圧部21aは二股構造を有するため、第1孔113に挿入された給脂パイプ130は一方の押圧部21aに向けて延びていることになる。給脂パイプ130がクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aの近傍に至るまでには、クラッチハウジング30の内部で障害物を避けることが必要になる場合がある。例えば、障害物としては、レリーズベアリング15の構成部品であるクリップが挙げられる。クリップはクラッチレリーズフォーク21の二股構造の近くに設けられているため、押圧部21aに至るまでに給脂パイプ130が当たらないようにすることが望ましい。
そこで、第2工程(挿入工程の前半工程)として、ケガキ線の位置まで第2治具120の挿入部121を第1治具110の挿入孔に挿入する。この第2工程の挿入状態において、給脂パイプ130および内視鏡160がクラッチハウジング30内の障害物を避けることができるように、挿入孔内で第1治具110に対する第2治具120の位置を変位させるように動作することができる。すなわち、第3工程として、クラッチハウジング30の内部構造を避けるように第2治具120を動作する工程(回避動作工程)を行う。以下の工程においては、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130の先端部及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像)を注視しつつ、給脂パイプ130の先端部131が該当部C(図9参照)に到達するように、他方の手(例えば、左手)で把持した第2治具120(挿入部121)を該当部Cに向けて矢印AR3方向(図9、図11参照)に差し込む操作を行う。
第3工程について、挿入部121を第1孔113に挿入した状態において、挿入部121の側面121a,121bと第1孔113の内面(内壁)との間にはクリアランス(0.5mm程度)が設けられている。同様に、挿入部121を第2孔114に挿入した状態において、挿入部121の側面121a,121bと第2孔114の内面(内壁)との間にはクリアランス(0.5mm程度)が設けられている。そのため、第2治具120がケガキ線の位置まで挿入孔に挿入された状態であれば、給脂パイプ130がレリーズベアリング15のクリップに接触しない高さ位置で、クリップなどの内部構造を避ける位置に、給脂パイプ130を位置決めすることができる。この場合、ストッパ部122側を手に持ち、挿入部121の先端側をY方向に振るように動作させることが可能である。
図9に示すように、給脂パイプ130の先端部131の高さ位置は、高さh1において、レリーズベアリング15のクリップに避けることが可能な高さとなる。この場合に、給脂パイプ130の挿入を停止して、レリーズベアリング15のクリップを避けるように先端部131の位置をコントロールする。この高さh1は挿入量(ストローク量)を表すことにもなる。
例えば、第3工程では、第1孔113の第1面113aに挿入部121の側面121bを当てた状態から、給脂パイプ130がクラッチハウジング30内の障害物を避ける動作として、非接触状態にあった第1孔113の第2面113bに挿入部121の側面121aを接触させる。この際、第1孔113の第3面113c上を挿入部121がスライドして第2面113bに側面112aが接触するまで、第2治具120を動かす。このスライドにはY方向に平行移動する動作、および先端部131側を左右に振る揺動が含まれる。これにより、給脂パイプ130がクリップに接触しない位置となる。
このように、クラッチハウジング30内の障害物を回避する位置に給脂パイプ130の位置が定まった状態となってから、再度、給脂パイプ130の先端部131を給脂必要箇所に向けてアプローチする。すなわち、第2治具120の挿入工程を再開し、第2治具120のストッパ部122が第1治具110の基部111に当接する位置まで挿入部121を貫通孔31に挿入する。第2治具120のストッパ部122が第1治具110に接触する状態では、給脂パイプ130の先端部131がクラッチハウジング30内で所定の目標位置まで挿入されていることになる。つまり、第4工程(挿入工程の後半工程)として、ケガキ線の位置よりも深く挿入部121を挿入し、給脂必要箇所まで給脂パイプ130の先端部131を挿入する。
図9に示すように、第4工程では、給脂パイプ130の先端部131は、二股構造の一方の押圧部21aが位置する高さh2に到達することになる。このように、給脂パイプ130の先端部131がクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aの近傍位置に定まることが可能である。この高さh2は高さh1よりも大きい挿入量となる。
そして、第5工程として、給脂パイプ130の開口部131aからグリスを供給する工程が行われる。第5工程においては、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130の先端部及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像)を注視しつつ、他方の手(例えば、左手)で給脂器150を把持しこれを操作する(例えば、図3に示す押し棒152をその軸方向に押す)ことにより給脂パイプ130の開口部131aからグリスを該当部C(図9参照)に供給する。第5工程では、給脂パイプ130に接続された給脂器150からグリスを適量だけ供給すると、給脂パイプ130の先端部131から適量のグリスが射出され、押圧部21aにグリスを塗布する。この場合、予め給脂パイプ130内には給脂器150からのグリスが充填された状態となっている。そのため、給脂パイプ130の先端部131が所望の位置に定まると給脂器150を操作することによる給脂がスムースに行われる。
そして、第5工程の給脂が完了すると、第6工程として、給脂パイプ130の抜き取り工程を行う。第6工程では、第1治具110を貫通孔31に取り付けた状態のまま、給脂パイプ130の先端部131のグリス切りを行う。その後、第2治具120を貫通孔31から抜き取るとともに、給脂パイプ130の先端部131も貫通孔31からクラッチハウジング30の外側に抜き取る。
例えば、第2治具120を第1治具110の挿入孔から抜き取る。第2治具120を第1治具110の挿入孔から抜き取る際、挿入孔と挿入部121との間のクリアランスによって左右に振ることが可能である。これにより、給脂必要箇所以外の部位や部品にグリスが付着することを回避できる。
上述した第1工程から第5工程に至る工程が第1孔113に対する工程である場合には、第1治具110の取り付け状態を維持したまま、第2孔114を対象とする第2工程から第5工程に至る工程を行う。これにより、二股構造の押圧部21aの両方に対して給脂を行うことができる。
なお、クラッチハウジング30の内部で給脂必要箇所に至るまでに障害物がない場合には、上述した第2工程と第3工程とを省略してよい。この場合、第2治具120のケガキ線は不要であり、第1工程に続いて第4工程を行い、第1治具110の挿入孔に第2治具120の挿入部121を挿入してストッパ部122が第1治具110に当接するまで継続して挿入してよい。
以上説明した通り、第1実施形態の給脂装置100によれば、クラッチハウジング30(又はこれを含むマニュアルトランスミッションユニット)を車両から取り外さなくてもクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aに給脂を行うことが可能になる。これにより、給脂メンテナンス作業が容易になり、作業性が向上する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態(参考例)の差し込み量把握装置100Aについて説明する。
図12A~図12Cは、第2実施形態の差し込み量把握装置の概略図である。図12A~図12Cは、この順に、第1治具110に対し第2治具120を差し込んでいる様子を表す。
差し込み量把握装置100Aは、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)、又は、該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)に到達するまでの、第1治具110に対する第2治具120の必要差し込み量(以下、必要差し込み量とも呼ぶ)をクラッチハウジング30の外部から目視で把握するための装置である。
差し込み量把握装置100Aは、第1実施形態の給脂装置100と同様の構成であるが、第1実施形態の給脂装置100と比べ、第2治具120の挿入部121に第1ケガキ線L1、第2ケガキ線L2が付されている点が相違する。
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。以下の説明においては、第1治具110は、上記第1実施形態で説明したように、クラッチハウジング30に対してX方向、Y方向及びZ方向に関し位置決めされた状態でクラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)に固定されているものする。
第1治具110及び第2治具120は、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
図12Aに示すように、第2治具120は、挿入部121が第1治具110に形成された第1孔113(又は第2孔114)に挿入され、作業者が把持した状態で該当部C(図9参照)に向けて矢印AR4方向に差し込まれる。この第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い、やがて、給脂パイプ130の先端部131は、該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達する。
このように給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達するまでの、第1治具110に対する第2治具120の必要差し込み量を、目視で把握するため、図12Aに示すように、第2治具120の挿入部121に第1ケガキ線L1、第2ケガキ線L2が付されている。なお、ケガキ線L1、L2に代えて、マジックやシールで引いたライン等の目印を第2治具120の挿入部121に付してもよい。
第1ケガキ線L1は、給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)に到達した場合に(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となった場合に)、当該第1ケガキ線L1が第1治具110(例えば、第1治具110に設けられたガイドフランジF)に到達する(例えば、ガイドフランジFに重なる)位置に設けられている(図12B参照)。
したがって、作業者は、第1ケガキ線L1と第1治具110(例えば、第1治具110に設けられたガイドフランジF)との位置関係をクラッチハウジング30の外部から目視で確認することにより、給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)に到達するまでの、第1治具110に対する第2治具120の必要差し込み量を把握することができる。
第2ケガキ線L2は、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合に(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となった場合に)、当該第2ケガキ線L2が第1治具110(例えば、第1治具110に設けられたガイドフランジF)に到達する(例えば、ガイドフランジFに重なる)位置に設けられている(図12C参照)。
したがって、作業者は、第2ケガキ線L2と第1治具110(例えば、第1治具110に設けられたガイドフランジF)との位置関係をクラッチハウジング30の外部から目視で確認することにより、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達するまでの、第1治具110に対する第2治具120の必要差し込み量を把握することができる。
なお、ケガキ線L1は省略してもよい。
以上説明したように、第2実施形態によれば、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)、又は、該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)に到達するまでの、第1治具110に対する第2治具120の必要差し込み量をクラッチハウジング30の外部から目視で把握することができる。
また、第2実施形態によれば、次の利点がある。すなわち、車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍に到達するまでの必要差し込み量(ストローク)が異なる場合がある。この場合、必要差し込み量が異なる車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍に到達した場合に、第1治具110(例えば、第1治具110に設けられたガイドフランジF)に到達する目印(例えば、ケガキ線、マジックやシールで引いたライン)を第2治具120の挿入部121に付しておく。これにより、必要差し込み量が異なる複数車種(複数マニュアルトランスミッションユニット)に対して、一つの第1治具110を用いて給脂することができる。すなわち、車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)第1治具110を用意する必要が無くなるため、第1治具110の種類が増加すること、それに伴い投資(コスト)が増加すること、を抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態(参考例)の差し込み量把握装置100Bについて説明する。
図13A~図13Bは、第3実施形態の差し込み量把握装置の概略図である。図13A~図13Bは、この順に、第1治具110に対し第2治具120を差し込んでいる様子を表す。
差し込み量把握装置100Bは、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となったこと)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握するための装置である。
差し込み量把握装置100Bは、第1実施形態の給脂装置100と同様の構成であるが、第1実施形態の給脂装置100と比べ、第2治具120の挿入部121に第1突起部p1a、p1bが設けられている点が相違する。
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。以下の説明においては、第1治具110は、上記第1実施形態で説明したように、クラッチハウジング30に対してX方向、Y方向及びZ方向に関し位置決めされた状態でクラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)に固定されているものする。
第1治具110及び第2治具120のうち少なくとも一方は、樹脂製である。一方が樹脂製である場合、他方は、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
図13Aに示すように、第2治具120は、挿入部121が第1治具110に形成された第1孔113(又は第2孔114)に挿入され、作業者が把持した状態で該当部C(図9参照)に向けて矢印AR5方向に差し込まれる。この第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い、やがて、給脂パイプ130の先端部131は、該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達する。
このように給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となったこと)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握するため、第2治具120の挿入部121に第1突起部p1a、p1bが設けられている。
第1突起部p1a、p1bは、例えば、半球形状の突起部である。なお、第1突起部p1a、p1bは、半球形状に限らず、他の形状の突起部であってもよい。
第1突起部p1a、p1bは、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合に、第1孔113(又は第2孔114)に挿入され(図13B参照)、当該第1孔113(又は第2孔114)との間に摩擦(摩擦力)を生じさせる位置に設けられている。
この摩擦を生じさせるため、図13Aに示すように、第1孔113(及び第2孔114)の径A2(設計寸法)と第1突起部p1a、p1bを含む第2治具120の挿入部121の厚みB2(設計寸法)とは、A2<B2の関係となるように設定されている。
したがって、作業者は、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(上記摩擦)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握することができる。
以上説明したように、第3実施形態によれば、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となったこと)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握することができる。
これは、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合に(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となった場合に)、第1孔113(又は第2孔114)に挿入され(図13B参照)、当該第1孔113(又は第2孔114)との間に摩擦(摩擦力)を生じさせる第1突起部p1a、p1bを備えていることによるものである。
そのため、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130の先端部及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像)を注視しつつ、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達するように、他方の手(例えば、左手)で把持した第2治具120(挿入部121)を該当部Cに向けて矢印AR5方向に差し込む操作に集中することができる。
また、第2実施形態によれば、次の利点がある。すなわち、以上のように、第1突起部p1a、p1bが、第1孔113(又は第2孔114)に挿入された場合、当該第1突起部p1a、p1bと第1孔113(又は第2孔114)の内壁との間に生じる摩擦により、第2治具120は、第1治具110に固定された状態となる。また、第1孔113(又は第2孔114)に挿入された第2治具120の挿入部121と第1孔113(又は第2孔114)の内壁との間の隙間(クリアランス)は0.5mm程度である。
そのため、上記摩擦が生じた場合、作業者が第2治具120を把持する手を離しても、給脂パイプ130の先端部131の、該当部Cに対する位置は変動しない(殆ど変動しない)。
そのため、上記摩擦が生じた場合、すなわち、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合、それまで第2治具120を把持していた他方の手(例えば、左手)を離し、その空いた他方の手(例えば、左手)で給脂器150を新たに把持しこれを操作する(例えば、図3に示す押し棒152をその軸方向に押す)ことにより給脂パイプ130の開口部131aからグリスを該当部Cに供給することができる。すなわち、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作、これに続き、給脂パイプ130の開口部131aからグリスを該当部Cに供給する操作を一人の作業者が行うことができる。これにより、作業効率が改善される。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態(参考例)の差し込み量把握装置100Cについて説明する。
図14A~図14Cは、第4実施形態の差し込み量把握装置の概略図である。図14A~図14Cは、この順に、第1治具110に対し第2治具120を差し込んでいる様子を表す。
差し込み量把握装置100Cは、該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、又は、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となったこと)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握するための装置である。
差し込み量把握装置100Cは、第1実施形態の差し込み量把握装置100と同様の構成であるが、第1実施形態の差し込み量把握装置100と比べ、第2治具120の挿入部121に第1突起部p1a、p1bが設けられている点及び第1治具110に形成された第1孔113(及び第2孔114)の内壁に第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)が設けられている点が相違する。
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。以下の説明においては、第1治具110は、上記第1実施形態で説明したように、クラッチハウジング30に対してX方向、Y方向及びZ方向に関し位置決めされた状態でクラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)に固定されているものする。
第1治具110及び第2治具120のうち少なくとも一方は、樹脂製である。一方が樹脂製である場合、他方は、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
図14Aに示すように、第2治具120は、挿入部121が第1治具110に形成された第1孔113(又は第2孔114)に挿入され、作業者が把持した状態で該当部C(図9参照)に向けて矢印AR6方向に差し込まれる。この第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い、やがて、給脂パイプ130の先端部131は、該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達する。
このように給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となったこと)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握するため、第2治具120の挿入部121に第1突起部p1a、p1bが設けられている。また、第1治具110に形成された第1孔113(及び第2孔114)の内壁に第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)が設けられている。
第1突起部p1a、p1b、第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)は、例えば、半球形状の突起部である。なお、第1突起部p1a、p1b、第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)は、半球形状に限らず、他の形状の突起部であってもよい。
第1突起部p1a、p1bは、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合に、第1孔113(又は第2孔114)に挿入される位置に設けられている(図14B、図14C参照)。
第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)は、第2治具120の差し込み方向(図14中の矢印AR6参照)に沿って一列に配置されている。
第1突起部p1a、p1bは、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い各々の第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)との間に摩擦を生じさせつつ各々の第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を通過する。
この摩擦を生じさせるため、図14Aに示すように、第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を含む第1孔113(及び第2孔114)の径A3(設計寸法)と第1突起部p1a、p1bを含む第2治具120の挿入部121の厚みB3(設計寸法)とは、A3<B3の関係となるように設定されている。
したがって、作業者は、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(上記摩擦)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握することができる。例えば、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い第1突起部p1a、p1bが第2突起部p2a1、p2b1に当接(又は圧接)しつつ当該第2突起部p2a1、p2b1を通過した場合、作業者は、給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)に到達したこと(上記摩擦)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握することができる。また、上記第2治具120を該当部Cに向けてさらに差し込む操作に伴い第1突起部p1a、p1bが第2突起部p2a2、p2b2に当接(又は圧接)しつつ当該第2突起部p2a2、p2b2を通過した場合、作業者は、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(上記摩擦)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握することができる。
以上説明したように、第4実施形態によれば、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達したこと(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となったこと)を、目視ではなく手感(第2治具120を把持した手の感覚)で把握することができる。
これは、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作に伴い給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合に(給脂パイプ130の先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となった場合に)、摩擦(摩擦力)を生じさせる第1突起部p1a、p1b及び第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を備えていることによるものである。
そのため、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130の先端部及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像)を注視しつつ、給脂パイプ130の先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P2(図9参照)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達するように、他方の手(例えば、左手)で把持した第2治具120(挿入部121)を該当部Cに向けて矢印AR6方向に差し込む操作に集中することができる。
また、第4実施形態によれば、次の利点がある。すなわち、以上のように、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達し、第1突起部p1a、p1bが、第1孔113(又は第2孔114)に挿入された場合(図14C参照)、第2治具120は、第1治具110に固定された状態となる。また、第1孔113(又は第2孔114)に挿入された第2治具120の挿入部121と第1孔113(又は第2孔114)の内壁との間の隙間(クリアランス)は0.5mm程度である。
そのため、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達し、第1突起部p1a、p1bが、第1孔113(又は第2孔114)に挿入された場合(図14C参照)、作業者が第2治具120を把持する手を離しても、給脂パイプ130の先端部131の、該当部Cに対する位置は変動しない(殆ど変動しない)。
そのため、給脂パイプ130の先端部131が給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P1(図9参照)に到達した場合、それまで第2治具120を把持していた他方の手(例えば、左手)を離し、その空いた他方の手(例えば、左手)で給脂器150を新たに把持しこれを操作する(例えば、図3に示す押し棒152をその軸方向に押す)ことにより給脂パイプ130の開口部131aからグリスを該当部Cに供給することができる。すなわち、上記第2治具120を該当部Cに向けて差し込む操作、これに続き、給脂パイプ130の開口部131aからグリスを該当部Cに供給する操作を一人の作業者が行うことができる。これにより、作業効率が改善される。
また、第4実施形態によれば、次の利点がある。すなわち、車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍に到達するまでの必要差し込み量(ストローク)が異なる場合がある。この場合、必要差し込み量が異なる車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍に到達した場合に、摩擦(摩擦力)が生じるように、第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を配置しておく。これにより、必要差し込み量が異なる複数車種(複数マニュアルトランスミッションユニット)に対して、一つの第1治具110を用いて給脂することができる。すなわち、車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)第1治具110を用意する必要が無くなるため、第1治具110の種類が増加すること、それに伴い投資(コスト)が増加すること、を抑制することができる。
次に、変形例について説明する
図15は、第4実施形態の差し込み量把握装置(変形例)の概略図である。
第4実施形態では、図14Aに示すように、第2治具120の挿入部121に第1突起部pa1、pb1を設け、第1治具110に形成された第1孔113(及び第2孔114)の内壁に第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を設けた例について説明したが、これに限らない。
例えば、図15に示すように、逆に、第2治具120の挿入部121に第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を設け、第1治具110に形成された第1孔113(及び第2孔114)の内壁に第1突起部pa1、pb1を設けてもよい。
また、第4実施形態では、片側3つの第2突起部p2a(p2a1、p2a2、p2a3)、p2b(p2b1、p2b2、p2b3)を用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、片側4つ以上の第2突起部p2a、p2bを用いてもよい。
次に、上記第1~第4実施形態の変形例について説明する。
上記第1~第4実施形態では、流体としてグリスを用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、流体として、フルードを用いてもよい。この場合、該当部Cは、フルードの供給が必要な箇所である。また、流体として、グリス、フルード以外の流体を用いてもよい。
また、上記第3、第4実施形態では、第1突起部p1a、p1bを第2治具120の挿入部121に設ける例について説明したが、これに限らない。例えば、第2治具120を省略する場合、第1突起部p1a、p1bを給脂パイプ130に設けてもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、第2治具120に給脂パイプ130を設ける例について説明したが、これに限らない。例えば、給脂パイプ130は省略してもよい。このようにすれば、内視鏡160により狭所点検を行うことができる。この場合、該当部Cは、狭所点検が必要な箇所である。また、上記第1~第4実施形態では、第2治具120に内視鏡160を設ける例について説明したが、これに限らない。例えば、内視鏡160は省略してもよい。
また、上記第1~第4実施形態では、本発明の差し込み量把握装置を車両分野(クラッチレリーズ機構のグリス射出メンテナンス)に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、車両分野以外の医療分野等の様々な分野に本発明の差し込み量把握装置を適用してもよい。例えば、上記第1~第4実施形態では、固定相手として、クラッチハウジング30(貫通孔31の周囲部分)を用いた例について説明したが、これに限らない。すなわち、固定相手として、本発明の差し込み量把握装置を適用する分野に応じた固定相手を用いてよい。同様に、上記第1~第4実施形態では、カバー部材として、クラッチハウジング30を用いた例について説明したが、これに限らない。すなわち、カバー部材として、本発明の差し込み量把握装置を適用する分野に応じたカバー部材を用いてよい。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態(参考例)の射出装置について説明する。
図16は、射出装置100Aの構成図である。
第5実施形態の射出装置100Aは、上記第1実施形態と比べ、主に、第1治具110、第2治具120を備えていない点、保持部材170を備えている点が相違する。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に説明し、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
第5実施形態の射出装置100Aは、上記第1実施形態と同様、作業者が把持した状態で狭所内の該当部Cに向けて差し込まれる挿入部180(図16参照)を備えている。挿入部180は、給脂パイプ130A、内視鏡160A、保持部材170を備えている。以下、上記第1実施形態と同様、狭所が給脂必要箇所(給脂パイプ130Aの先端部131からグリスの供給が必要な箇所)であるクラッチレリーズフォーク21(押圧部21a)とレリーズベアリング15との間である場合を例にして説明する。なお、クラッチレリーズフォーク21の一端側は、レリーズベアリング15を軸方向に押圧する押圧部21aにより構成される(図22参照)。押圧部21aは、クラッチハウジング30の内部で入力軸3を挟むように先端側が二股に分かれた二股構造に構成されている。なお、図22においては、手前側の該当部Cが図示されているが、奥側の該当部Cはレリーズベアリング15の背後に配置されており図示されていない。
給脂パイプ130Aは、上記第1実施形態の給脂パイプ130と同様、グリス(本発明の流体の一例)が射出される先端部131を含む長尺の射出部である。この給脂パイプ130Aは金属製である。給脂必要箇所であるクラッチレリーズフォーク21(押圧部21a)とレリーズベアリング15との間に給脂パイプ130の先端部131を差し込みやすくするため、給脂パイプ130Aの先端部131は、断面が横長矩形の角柱形状とされている(図16参照)。給脂パイプ130Aは、先端部131以外が円筒形状である。なお、給脂パイプ130Aは、先端部131も含め円筒形状であってもよい。
車種ごとに(マニュアルトランスミッションユニットごとに)クラッチハウジング30の内部構造のレイアウトが異なる場合がある。クラッチハウジング30の内部構造のレイアウトによっては、クラッチハウジング30の貫通孔31から該当部Cに向けて挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を差し込む経路が直線状となる場合もあるし、当該差し込む経路が途中に1又は複数の折れ曲がり部を含む場合もある。
後者の場合、給脂パイプ130Aが上記第1実施形態の給脂パイプ130のように直線状に延びていると、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)がクラッチハウジング30の内部の障害物に干渉するため、当該挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を該当部Cに向けて差し込むのが難しい。
そこで、第5実施形態では、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を差し込む経路が途中に折れ曲がり部を含む場合を想定して、基端部と先端部との間の箇所C1が折り曲げられている。これにより、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を差し込む経路の途中に折れ曲がり部がある場合であっても、比較的容易に挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を該当部Cに向けて差し込むことができる。なお、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を差し込む経路によっては、給脂パイプ130Aは、基端部と先端部との間の複数箇所が折り曲げられる場合がある。
給脂パイプ130Aの先端部131(先端面)には、円筒形状のパイプ部分を介して供給されるグリスを射出する射出口131aが設けられている。給脂パイプ130Aの基端側には可撓性管140が接続されている。給脂パイプ130は可撓性管140を介して給脂器150と接続されている。
内視鏡160Aは、給脂パイプ130Aの先端部131及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像を撮像する撮像部を先端部160aに含む長尺の撮像装置である。内視鏡160Aは、給脂パイプ130Aより大径の円筒形状であり、基端部と先端部との間の箇所C2が給脂パイプ130Aと同角度、折り曲げられている。なお、給脂パイプ130Aと同様、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を差し込む経路によっては、内視鏡160Aは、基端部と先端部との間の複数箇所が折り曲げられる場合がある。
内視鏡160Aの基端側はケーブル161を介して操作部162に接続されている。操作部162を操作することによって内視鏡160Aによるクラッチハウジング30の内部構造の撮影が可能である。内視鏡160Aにより撮影した画像(例えば、給脂パイプ130Aの先端部131及びその周囲環境(例えば、該当部C)を含む画像)は、操作部162に取り付けられた表示部163に表示することができる。
次に、保持部材170について説明する。
図16に示すように、保持部材170は、給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを並列に隣接配置された状態で保持する。
図17は図11のA-A断面図、図18は保持部材170の斜視図である。
図17、図18に示すように、保持部材170は、給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される射出部挿入部171、内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される撮像部挿入部172、射出部挿入部171と撮像部挿入部172とを連結する第1連結部173を含む。
射出部挿入部171は、給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される第1半円筒状部である。撮像部挿入部172は、内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される第2半円筒状部である。第1連結部173は、第1半円筒状部(射出部挿入部171)の一方の端部と第2半円筒状部(撮像部挿入部172)の一方の端部とを連結する平坦部である。以下、第1連結部173を平坦部173とも呼ぶ。この平坦部(第1連結部173)は、第1半円筒状部(射出部挿入部171)及び第2半円筒状部(撮像部挿入部172)の接線方向に延びている(図17参照)。
第1半円筒状部(射出部挿入部171)は、プレートの一方の端部が半円筒状に折り返された状態で形成されている。同様に、第2半円筒状部(撮像部挿入部172)は、プレートの他方の端部が半円筒状に折り返された状態で形成されている。第1連結部173は、第1半円筒状部(射出部挿入部171)と第2半円筒状部(撮像部挿入部172)との間のプレート部分である。
保持部材170(プレート)は、合成樹脂製又はばね鋼製である。すなわち、保持部材170は、合成樹脂を射出成形することにより成形してもよいし、プレート状のばね鋼を曲げ加工又はプレス加工することにより成形してもよい。
保持部材170の軸方向長さL(図18参照)は、給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを互いに固定するのに適した長さ(例えば、L=40mm)とされている。
射出部挿入部171の径は、給脂パイプ130Aの径より若干大きい。そのため、射出部挿入部171は、給脂パイプ130Aが挿入されると弾性変形し、その復元力により給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)の外周面に密着した状態で当該給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)に固定される。
同様に、撮像部挿入部172の径は、内視鏡160Aの径より若干大きい。そのため、撮像部挿入部172は、内視鏡160Aが挿入されると弾性変形し、その復元力により内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)の外周面に密着した状態で当該内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)に固定される。
図19は、給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)の斜視図である。
図19に示すように、給脂パイプ130Aの外周面には、軸方向に延びる第1ケガキ線L1、第2ケガキ線L2が付されている。ケガキ線L1、L2は、内視鏡160Aを給脂パイプ130Aに対して適切な角度位置に配置するために用いられる。これについては後述する。ケガキ線L1、L2が本発明の射出部側目印の一例である。なお、射出部側目印は、ケガキ線L1、L2に限らず、給脂パイプ130Aの外周面に付されたマジックやシールで引いたライン等の他の目印であってもよい。
次に、図20~図22を参照して、射出装置100Aによる給脂方法について説明する。図20、図21は、手前側の該当部Cにグリスを供給するため、クラッチハウジング30の貫通孔31に挿入部180を挿入した状態を示す図である。なお、図20は、図22中矢印AR4と逆方向から貫通孔31を見た図である。図22は、クラッチハウジング30の貫通孔31に挿入部180を挿入した状態で給脂パイプ130Aが手前側の該当部Cに向けて延びている状態を示す図である。
以下の各工程を実施する前に、フォークブーツ32を取り外す。これにより、挿入部180を挿入するための、クラッチハウジング30の貫通孔31(図21等参照)が露出する。
以下、図22中、手前側の該当部C、奥側の該当部Cの順に給脂する例について説明する。なお、図22中、奥側の該当部Cはレリーズベアリング15の背後に配置されており図示されていない。
まず、第1工程として、手前側の該当部Cに向けて差し込む挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)がクラッチハウジング30の内部の障害物に干渉するのを回避するため(また、内視鏡160Aの視野を確保するため)、作業者は、クラッチハウジング30の内部構造のレイアウトに応じて、内視鏡160Aを給脂パイプ130Aに対して適切な角度位置に配置する。
これは、給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを保持した状態の保持部材170を給脂パイプ130Aに対して回転させ(図20中の矢印AR5参照)、保持部材170の射出部挿入部171側の巻き終わり端部174を、給脂パイプ130Aの外周面に付された第1ケガキ線L1(図19参照)に一致させる(図20参照)ことにより実現される。
第1ケガキ線L1は、内視鏡160Aが給脂パイプ130A(基準線AX)に対して角度θ1(図20参照)の位置に配置された場合に、射出部挿入部171側の巻き終わり端部174が当該第1ケガキ線L1に一致する位置に設けられている。図20の場合、角度θ1は例えば75°である。射出部挿入部171側の巻き終わり端部174が本発明の保持部材側目印の一例である。なお、保持部材側目印は、射出部挿入部171側の巻き終わり端部174に限らず、保持部材170に付されたマジックやシールで引いたライン等の他の目印であってもよい。なお、基準線AXは、例えば、給脂パイプ130Aの角柱形状の先端部131の上面(図16参照)に対して平行の方向に延びている(図16参照)。
したがって、作業者は、保持部材170の射出部挿入部171側の巻き終わり端部174と第1ケガキ線L1との位置関係を目視で確認することにより、内視鏡160Aが給脂パイプ130A(基準線AX)に対して角度θ1(図20参照)の位置に配置されたことを把握することができる。
次に、第2工程として、作業者は、上記角度θ1の位置に内視鏡160Aが配置された挿入部180を、クラッチハウジング30の貫通孔31を介して差し込む。クラッチハウジング30の貫通孔31が本発明の「作業者と該当部との間の隔壁に形成された開口又は切欠部」の一例である。その際、図20に示すように、保持部材170の撮像部挿入部172をクラッチハウジング30の貫通孔31のうち手前側の該当部Cに対応する角部(図20中、右側の角部)に接触させながら、すなわち、挿入部180の差し込み方向を手前側の該当部Cに向けてガイドしながら差し込む。このように、第5実施形態では、クラッチハウジング30の貫通孔31の角部及び保持部材170の撮像部挿入部172により、ガイド機能を実現している。
なお、次のようにしてガイド機能を実現してもよい。図23は、手前側の該当部Cにグリスを供給するため、クラッチハウジング30の貫通孔31に挿入部180を挿入した状態を示す図(変形例)である。すなわち、図23に示すように、保持部材170の撮像部挿入部172だけでなく、平坦部173もクラッチハウジング30の貫通孔31のうち手前側の該当部Cに対応する角部(図23中、右側の角部)等に接触させながら挿入部180を差し込んでもよい。これは、クラッチハウジング30の貫通孔31の角部、保持部材170の撮像部挿入部172及び平坦部173により、ガイド機能を実現する例である。なお、図23の場合、角度θ1は例えば100°である。
以下の工程においては、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130Aの先端部及びその周囲環境(例えば、手前側の該当部C)を含む画像)を注視しつつ、給脂パイプ130Aの先端部131が手前側の該当部Cに到達するように、他方の手(例えば、左手)で把持した挿入部180を手前側の該当部Cに向けて矢印AR4方向(図21、図22参照)に差し込む操作を行う。
挿入部180を手前側の該当部Cに向けて差し込む操作に伴い、やがて、給脂パイプ130Aの先端部131は、手前側の該当部Cから所定距離手前の位置P4(図22参照)に到達し、次いで、手前側の該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達する。
このように給脂パイプ130Aの先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P4、該当部C近傍の位置P3に到達するまでの必要差し込み量を目視で把握するため、図16に示すように、保持部材170に第3ケガキ線L3、第4ケガキ線L4が付されている。なお、ケガキ線L3、L4に代えて、マジックやシールで引いたライン等の目印を保持部材170に付してもよい。
第3ケガキ線L3は、給脂パイプ130Aの先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P4(図22参照)に到達した場合に(給脂パイプ130Aの先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となった場合に)、当該第3ケガキ線L3がクラッチハウジング30の貫通孔31に一致する位置に設けられている。
したがって、作業者は、第3ケガキ線L3とクラッチハウジング30の貫通孔31との位置関係を目視で確認することにより、給脂パイプ130Aの先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P4(図22参照)に到達するまでの必要差し込み量を把握することができる。また、給脂パイプ130Aの先端部131が該当部Cから所定距離手前の位置P4(図22参照)に到達したことを把握することができる。
第4ケガキ線L4は、給脂パイプ130Aの先端部131が該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達した場合に(給脂パイプ130Aの先端部131と該当部Cとが所定の位置関係となった場合に)、当該第4ケガキ線L4がクラッチハウジング30の貫通孔31に一致する位置に設けられている。
したがって、作業者は、第4ケガキ線L4とクラッチハウジング30の貫通孔31との位置関係を目視で確認することにより、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達するまでの必要差し込み量を把握することができる。また、給脂パイプ130の先端部131が該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達したことを把握することができる。
なお、第3ケガキ線L3は省略してもよい。
次に、第4ケガキ線L4がクラッチハウジング30の貫通孔31に一致した場合、すなわち、給脂パイプ130Aの先端部131が手前側の該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達した場合、第3工程として、作業者は、クラッチレリーズフォーク21(押圧部21a)とレリーズベアリング15との間に給脂パイプ130の先端部131を差し込み(図22参照)、手前側の該当部Cに給脂パイプ130Aの射出口131aからグリスを供給する。具体的には、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130Aの先端部及びその周囲環境(例えば、手前側の該当部C)を含む画像)を注視しつつ、他方の手(例えば、左手)で給脂器150を把持しこれを操作する(例えば、図16に示す押し棒152をその軸方向に押す)ことにより給脂パイプ130Aの射出口131aからグリスを手前側の該当部C(図22参照)に供給する。
次に、手前側の該当部Cに対するグリスの供給が完了した場合、第4工程として、作業者は、給脂パイプ130Aをクラッチハウジング30の貫通孔31から抜き取る。
次に、第5工程として、奥側の該当部Cに向けて差し込む挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)がクラッチハウジング30の内部の障害物に干渉するのを回避するため(また、内視鏡160Aの視野を確保するため)、作業者は、クラッチハウジング30の内部構造のレイアウトに応じて、内視鏡160Aを給脂パイプ130Aに対して適切な角度位置に配置する。
これは、給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを保持した状態の保持部材170を給脂パイプ130Aに対して回転させ(図24中の矢印AR2参照)、保持部材170の射出部挿入部171側の巻き終わり端部174を、給脂パイプ130Aの外周面に付された第2ケガキ線L2(図19参照)に一致させる(図24参照)ことにより実現される。図24は、奥側の該当部Cにグリスを供給するため、クラッチハウジング30の貫通孔31に挿入部180を挿入した状態を示す図である。なお、図24は、図22中矢印AR4と逆方向から貫通孔31を見た図である。
第2ケガキ線L2は、内視鏡160Aが給脂パイプ130A(基準線AX)に対して角度θ2(図24参照)の位置に配置された場合に、保持部材170の射出部挿入部171側の巻き終わり端部174が当該第2ケガキ線L2に一致する位置に設けられている。図24の場合、角度θ2は例えば75°である。
したがって、作業者は、保持部材170の射出部挿入部171側の巻き終わり端部174と第2ケガキ線L2との位置関係を目視で確認することにより、内視鏡160Aが給脂パイプ130A(基準線AX)に対して角度θ2(図24参照)の位置に配置されたことを把握することができる。
次に、第6工程として、作業者は、上記角度θ2の位置に内視鏡160Aが配置された挿入部180を、クラッチハウジング30の貫通孔31を介して差し込む。その際、図24に示すように、保持部材170の撮像部挿入部172をクラッチハウジング30の貫通孔31のうち奥側の該当部Cに対応する角部(図24中、左側の角部)に接触させながら、すなわち、挿入部180の差し込み方向を奥側の該当部Cに向けてガイドしながら差し込む。このように、第5実施形態では、クラッチハウジング30の貫通孔31の角部及び保持部材170の撮像部挿入部172により、ガイド機能を実現している。
なお、次のようにしてガイド機能を実現してもよい。図25は、奥側の該当部Cにグリスを供給するため、クラッチハウジング30の貫通孔31に挿入部180を挿入した状態を示す図(変形例)である。すなわち、図25に示すように、図20に示す保持部材170を左右反転させた保持部材170の撮像部挿入部172をクラッチハウジング30の貫通孔31のうち奥側の該当部Cに対応する角部(図25中、左側の角部)に接触させながら差し込んでもよい。これは、上記第4工程と第5工程との間において、保持部材170から給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを抜き取り、保持部材170を左右反転させ、この左右反転させた保持部材170により再度給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを保持する工程を実施することにより実現される。
また、次のようにしてガイド機能を実現してもよい。図26は奥側の該当部Cにグリスを供給するため、クラッチハウジング30の貫通孔31に挿入部180を挿入した状態を示す図(変形例)である。すなわち、図26に示すように、保持部材170の撮像部挿入部172だけでなく、平坦部173もクラッチハウジング30の貫通孔31のうち手前側の該当部Cに対応する角部(図26中、左側の角部)等に接触させながら挿入部180を差し込んでもよい。これは、クラッチハウジング30の貫通孔31の角部、保持部材170の撮像部挿入部172及び平坦部173により、ガイド機能を実現する例である。なお、図26の場合、角度θ2は例えば100°である。
以下の工程においては、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130Aの先端部及びその周囲環境(例えば、奥側の該当部C)を含む画像)を注視しつつ、給脂パイプ130Aの先端部131が奥側の該当部Cに到達するように、他方の手(例えば、左手)で把持した挿入部180を奥側の該当部Cに向けて差し込む操作を行う。
挿入部180を奥側の該当部Cに向けて差し込む操作に伴い、やがて、給脂パイプ130Aの先端部131は、奥側の該当部Cから所定距離手前の位置P4(図22参照)に到達し、次いで、奥側の該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達する。
次に、第4ケガキ線L4がクラッチハウジング30の貫通孔31に一致した場合、すなわち、給脂パイプ130Aの先端部131が奥側の該当部C近傍の位置P3(図22参照)に到達した場合、第7工程として、作業者は、クラッチレリーズフォーク21(押圧部21a)とレリーズベアリング15との間に給脂パイプ130の先端部131を差し込み、奥側の該当部Cに給脂パイプ130Aの射出口131aからグリスを供給する。具体的には、作業者は、一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(給脂パイプ130Aの先端部及びその周囲環境(例えば、奥側の該当部C)を含む画像)を注視しつつ、他方の手(例えば、左手)で給脂器150を把持しこれを操作する(例えば、図16に示す押し棒152をその軸方向に押す)ことにより給脂パイプ130Aの射出口131aからグリスを奥側の該当部Cに供給する。
次に、奥側の該当部Cに対するグリスの供給が完了した場合、第8工程として、作業者は、給脂パイプ130Aをクラッチハウジング30の貫通孔31から抜き取る。
以上の各工程を実施することにより、手前側の該当部C、奥側の該当部Cに対する給脂が完了する。
以上説明したように、第5実施形態によれば、ガイド治具を用いることなく、挿入部180を該当部Cに向けて差し込むことができる。
これは、クラッチハウジング30の貫通孔31(角部等)及び保持部材170(撮像部挿入部172、平坦部173)により、ガイド機能を実現したことによるものである。
また、第5実施形態によれば、内視鏡160Aを給脂パイプ130Aに対して適切な角度位置に配置することができる。
これは、給脂パイプ130A及び内視鏡160Aを並列に隣接配置された状態で保持する保持部材170を備え、かつ、給脂パイプ130Aに保持部材170の保持部材側目印(例えば、保持部材170の射出部挿入部171側の巻き終わり端部174)を一致させる射出部側目印(例えば、ケガキ線L1、L2)を設けたことによるものである。
また、第5実施形態によれば、クラッチハウジング30(又はこれを含むマニュアルトランスミッションユニット)を車両から取り外さなくてもクラッチレリーズフォーク21の押圧部21aに給脂を行うことが可能になる。これにより、給脂メンテナンス作業が容易になり、作業性が向上する。
次に、上記第5実施形態の保持部材170の第1変形例について説明する。
図27は第1変形例である保持部材170Aの斜視図、図28は図27のB-B断面図である。
図27、図28に示すように、保持部材170Aは、給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される射出部挿入部である第3半円筒状部175、内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される撮像部挿入部である第4半円筒状部176、第5半円筒状部177、第3半円筒状部175と第4半円筒状部176とを連結する第2連結部178、第3半円筒状部175と第5半円筒状部177とを連結する第3連結部179を含む。
第2連結部178は、第3半円筒状部175の一方の端部と第4半円筒状部176の一方の端部とを連結する平坦部である。この平坦部(第2連結部178)は、第3半円筒状部175及び第4半円筒状部176の接線方向に延びている(図28参照)。
第3連結部179は、第3半円筒状部175の他方の端部と第5半円筒状部177の一方の端部とを連結する平坦部である。この平坦部(第3連結部179)は、第3半円筒状部175及び第5半円筒状部177の接線方向に延びている(図28参照)。
第4半円筒状部176は、プレートの一方の端部が半円筒状に折り返された状態で形成されている。同様に、第5半円筒状部177は、プレートの他方の端部が半円筒状に折り返された状態で形成されている。
第3半円筒状部175は、第4半円筒状部176と第5半円筒状部177との間のプレート部分に形成されている。
第2連結部178は、第3半円筒状部175と第4半円筒状部176との間のプレート部分である。第3連結部179は、第3半円筒状部175と第5半円筒状部177との間のプレート部分である。
プレートの一方の端部(自由端部)は、第5半円筒状部177に挿入された内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)を当該第5半円筒状部177に対して付勢する第1付勢部190、第3半円筒状部175に挿入された給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)を当該第3半円筒状部175に対して付勢する第2付勢部191を含む。
第3半円筒状部175は、当該第3半円筒状部175に挿入された給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)に固定されている。この固定は、接着剤、溶接等の公知の手段により行うことができる。
保持部材170A(プレート)は、合成樹脂製又はばね鋼製である。すなわち、保持部材170Aは、合成樹脂を射出成形することにより成形してもよいし、プレート状のばね鋼を曲げ加工又はプレス加工することにより成形してもよい。
以上説明したように、第1変形例によれば、作業者は、クラッチハウジング30の内部構造のレイアウトに応じて、内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)を第4半円筒状部176又は第5半円筒状部177に圧入することにより、内視鏡160Aを給脂パイプ130Aに対して適切な角度位置に配置することができる。これにより、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を該当部Cに向けて差し込む際に、当該挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)がクラッチハウジング30の内部の障害物に干渉するのを回避することができる。
また、第1変形例によれば、第2連結部178及び第3連結部179が平坦部であるため、第2連結部178及び第3連結部179に相当する第4連結部178B及び第5連結部179Bが湾曲部である後述の第2変形例と比べ、保持部材170Aの製造コスト(第2連結部178及び第3連結部179を湾曲させるための加工費等)を抑えることができる。
また、第1変形例によれば、上記第5実施形態で説明した第1工程~第8工程と同様の工程を実施することにより、上記第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、上記第5実施形態の第2変形例について説明する。
図29は第2変形例である保持部材170Bの斜視図、図30は図29のC-C断面図である。
保持部材170Bは、第1変形例である保持部材170Aの平坦部である第2連結部178を湾曲部である第4連結部178Bに置き換え、かつ、第1変形例である保持部材170Aの平坦部である第3連結部179を湾曲部である第5連結部179Bに置き換えたものに相当する。また、第3半円筒状部175は、当該第3半円筒状部175に挿入された給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)に固定されていない。それ以外、第1変形例である保持部材170Aと同様である。以下、第1変形例である保持部材170Aとの相違点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
図29、図30に示すように、保持部材170Bは、給脂パイプ130A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される射出部挿入部である第3半円筒状部175、内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)が圧入される撮像部挿入部である第4半円筒状部176、第5半円筒状部177、第3半円筒状部175と第4半円筒状部176とを連結する第4連結部178B、第3半円筒状部175と第5半円筒状部177とを連結する第5連結部179Bを含む。
第4連結部178Bは、第3半円筒状部175の一方の端部と第4半円筒状部176の一方の端部とを連結する湾曲部である。
第5連結部179Bは、第3半円筒状部175の他方の端部と第5半円筒状部177の一方の端部とを連結する湾曲部である。
第4連結部178Bは、第3半円筒状部175と第4半円筒状部176との間のプレート部分である。第5連結部179Bは、第3半円筒状部175と第5半円筒状部177との間のプレート部分である。
保持部材170B(プレート)は、合成樹脂製又はばね鋼製である。すなわち、保持部材170Bは、合成樹脂を射出成形することにより成形してもよいし、プレート状のばね鋼を曲げ加工又はプレス加工することにより成形してもよい。
以上説明したように、第2変形例によれば、作業者は、クラッチハウジング30の内部構造のレイアウトに応じて、内視鏡160A(基端部側の円筒形状部分)を第4半円筒状部176又は第5半円筒状部177に圧入することにより、内視鏡160Aを給脂パイプ130Aに対して適切な角度位置に配置することができる。これにより、挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)を該当部Cに向けて差し込む際に、当該挿入部180(給脂パイプ130A及び内視鏡160A)がクラッチハウジング30の内部の障害物に干渉するのを回避することができる。
また、第2変形例によれば、上記第5実施形態で説明した第1工程~第8工程と同様の工程を実施することにより、上記第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
上記第5実施形態では、流体としてグリスを用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、流体として、フルードを用いてもよい。この場合、該当部Cは、フルードの供給が必要な箇所である。また、流体として、グリス、フルード以外の流体を用いてもよい。
また、上記第5実施形態では、本発明の射出装置及び差し込み方向ガイド方法を車両分野(クラッチレリーズ機構のグリス射出メンテナンス)に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、車両分野以外の医療分野、半導体分野等の様々な分野に本発明の射出装置及び差し込み方向ガイド方法を適用してもよい。例えば、上記第5実施形態では、作業者と該当部との間の隔壁がクラッチハウジング30である例について説明したが、これに限らない。すなわち、作業者と該当部との間の隔壁は、本発明の射出装置及び差し込み方向ガイド方法を適用する分野に応じた隔壁であってよい。また、上記第5実施形態では、作業者と該当部との間の隔壁(例えば、クラッチハウジング30)に形成された開口(例えば、貫通孔31)の角部に接触させながら(すなわち、挿入部180の差し込み方向を該当部に向けてガイドしながら)挿入部180を該当部Cに向けて差し込む例について説明したが、これに限らない。例えば、作業者と該当部との間の隔壁に切欠部(図示せず)が形成されている場合、当該切欠部の角部に接触させながら(すなわち、挿入部180の差し込み方向を該当部に向けてガイドしながら)挿入部180を該当部Cに向けて差し込んでもよい。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態として、該当部Cに付着した異物を除去する構成例について説明する。この構成例は、上記第1~第5実施形態に適用することができる。また、この構成例は、該当部Cに付着した異物を除去する場合だけでなく、該当部C近傍等に付着した異物を除去する場合にも適用することができる。
図31、図32は、該当部Cに付着した異物を除去する構成例の斜視図である。
図31に示すように、該当部Cに付着した異物を除去する構成例は、作業者が把持した状態で狭所内の該当部Cに向けて差し込まれる挿入部200を備えている。
挿入部200は、射出部201を備えている。射出部201は、内管路202と外管路203とを含む二重管路である。内管路202は、当該内管路202内に供給されるグリス(本発明の第1流体、塗布用流体の一例)が射出される第1流体射出口202aが先端部に設けられた管路で、例えば、第1~第4実施形態の給脂パイプ130、第5実施形態の給脂パイプ130Aである。内管路202には、給脂器205が可撓性管206を介して接続されている。給脂器205は、例えば、第1~第5実施形態の給脂器150である。給脂器205から可撓性管206を介して供給されるグリスは、内管路202を介して第1流体射出口202aに供給され当該第1流体射出口202aから射出される。第1流体射出口202aから射出されるグリスは、該当部Cに供給(塗布)される。
外管路203は、当該外管路203(内周面)と内管路202(外周面)との間に環状管路204を形成する管路である。すなわち、外管路203を設けることにより、内管路202周囲のスペースを環状管路204として活用している。これにより、後述する図34の場合と比べ、省スペース化が実現できる。環状管路204は、例えば、内管路202(外周面)と外管路203(内周面)との間にスペーサ(図示せず)を設けることにより形成することができる。このスペーサは、例えば、外管路203(外周面)の一部を塑性変形することにより形成した凸部(複数)、その他のスペーサであってもよい。
内管路202及び外管路203は、丸パイプであってもよいし、矩形パイプであってもよいし、その他の形状のパイプであってもよい。
環状管路204は、当該環状管路204内に供給されるエア(本発明の第2流体、異物除去用流体の一例)が射出(噴射)される第2流体射出口204aが先端部に設けられた管路である。環状管路204には、エア源207が接続されている。例えば、図32に示すように、エア源207は、外管路203の基端部側に形成された、環状管路204に連通する貫通穴203aに接続された可撓性管208を介して接続されている。エア源207は、例えば、作業者の操作によりエアの供給と停止を切り替えることができる電動式のエアポンプである。エア源207から可撓性管208を介して供給されるエアは、環状管路204を介して第2流体射出口204aに供給され当該第2流体射出口204aから射出(噴射)される。第2流体射出口204aから射出されるエアは、該当部Cに向けて吹き付けられる。これにより、当該該当部Cに付着した異物(例えば、泥、塵、埃、粉末)が除去(クリーニング)される。
また、挿入部200は、撮像部220を備えている。撮像部220は、例えば、第1~第4実施形態の内視鏡160、第5実施形態の内視鏡160Aである。なお、撮像部220は、グリス付着防止等の観点から、射出部201の先端部(第1流体射出口202a、第2流体射出口204a)から一定距離離れた位置に配置するのが望ましい。
次に、該当部Cに付着した異物を除去する方法について説明する。
まず、第1工程として、作業者は、挿入部200を、クラッチハウジング30の貫通孔31を介して差し込む。
以下の各工程は、作業者が一方の手(例えば、右手)で把持した操作部162に取り付けられた表示部163に表示される画面(内管路202の先端部、環状管路204の先端部及びこれらの周囲環境(例えば、該当部Cに付着した異物)を含む画像)を注視しつつ実施する。
次に、第2工程として、作業者は、第2流体射出口204aが、異物が付着した該当部C近傍に到達するまで、他方の手(例えば、左手)で把持した挿入部200を該当部Cに向けて差し込む操作を行う。
次に、第3工程として、作業者は、エア源207を操作して第2流体射出口204aからエアを射出(噴射)し、当該エアを該当部Cに向けて吹き付ける。以上の各工程を実施することにより、該当部Cに付着した異物を当該該当部Cから除去(クリーニング)することができる。なお、上記第2工程において、第2流体射出口204aからエアを射出(噴射)しつつ、挿入部200を該当部Cに向けて差し込む操作を行い、該当部Cにグリスを供給(塗布)する段階で、エア源207を操作して第2流体射出口204aからのエアの射出(噴射)を停止してもよい。
以上説明したように、第6実施形態によれば、第2流体射出口204aから射出(噴射)されるエアを該当部Cに向けて吹き付けることにより、狭所内の該当部Cに付着した異物を除去(クリーニング)することができる。
次に、変形例について説明する。
図33は、該当部Cに付着した異物を除去する構成例(変形例1)の斜視図である。
図33に示すように、内管路202の先端部は、外管路203の先端部より突出していてもよい。このようにすれば、第2流体射出口204aにグリスが詰まるのを抑制することができる。
図34は、該当部Cに付着した異物を除去する構成例(変形例1)の斜視図である。
上記第6実施形態では、射出部201として、内管路202と外管路203とを含む二重管路である射出部を用いた例について説明したが、これに限らない。
例えば、図34に示すように、射出部201として、互いに並列に配置された第1管路210と第2管路211とを含む射出部を用いてもよい。
第1管路210は、当該第1管路210内に供給されるグリスが射出される第1流体射出口210aが先端部に設けられた管路である。一方、第2管路211は、当該第2管路211内に供給されるエアが射出(噴射)される第2流体射出口211aが先端部に設けられた管路である。
本変形例によっても上記第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
上記第6実施形態では、第1流体としてグリスを用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、第1流体として、フルードを用いてもよい。この場合、該当部Cは、フルードの供給が必要な箇所である。また、第1流体として、グリス、フルード以外の流体、例えば、はんだ(例えば、溶融されたはんだ)を用いてもよい。この場合、該当部Cは、はんだの供給が必要な箇所である。
また、上記第6実施形態では、第2流体としてエア(例えば、常温のエア)等の気体を用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、第2流体として洗浄液等の液体を用いてもよい。また、例えば、該当部Cを乾燥させる場合、第2流体として高温のエア(温風)を用いてもよい。また、該当部Cを冷却させる場合、第2流体として低温のエア(冷風)を用いてもよい。
また、上記第6実施形態では、本発明の射出装置を車両分野(クラッチレリーズ機構のグリス射出メンテナンス)に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、車両分野以外の医療分野、半導体分野等の様々な分野に本発明の射出装置を適用してもよい。
また、上記第6実施形態では、挿入部200が撮像部220を備える例について説明したが、これに限らない。例えば、撮像部220は省略してもよい。
上記各実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。