JP2023110156A - 生分解性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】物性を大きく変化させることなく、生分解が遅延するように生分解速度が調節された生分解性樹脂組成物を提供する。【解決手段】生分解性樹脂100質量部に対してホウ酸塩水和物1.0~5.3質量部を含む生分解性樹脂組成物により課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、生分解性樹脂組成物に関するものである。
近年、プラスチック製品の海洋廃棄等による、生態系や環境汚染の懸念が顕在化している。世界各国において、環境汚染防止の観点などから様々な規制が制定されつつある。例えば、欧州では、小売業における使い捨てプラスチック製レジ袋や使い捨てプラスチック容器のカップや皿の使用を禁じる規制や法律が制定されつつある。この法律の使用禁止措置の対象外とするためには、ここで定められたバイオマス必要最低含有量以上のバイオマスを原料とし、かつ一般家庭でも堆肥にすることが可能な製品(ホームコンポスト可能な製品)であることが必要となる。また、最近では海洋に流出したプラスチック製品が海中でも分解する、海洋生分解可能なプラスチック製品も希求されてきている。
従来から、生分解性を有するプラスチック(生分解性樹脂)として、例えばポリブチレンテレフタレート/アジペート(以下、PBATと略する)、ポリ乳酸(以下、PLAと略記する)、ポリブチレンサクシネート(以下、PBSと略記する)やポリブチレンサクシネート/アジペート(以下、PBSAと略記する)等の脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略記する)などが知られている。さらにPHAには、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(以下、PHBと略する)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシバレレート)(以下、PHBVと略する)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、PHBHと略する)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/4-ヒドロキシブチレート)などがある。
これらの樹脂は、樹脂単独での生分解の速度や分解率が異なるだけでなく、引張破断伸びや曲げ弾性率などの機械的特性なども異なるため、一般的には、使用する用途や場所などに合わせて、それぞれの樹脂を組み合わせたり、他の副資材や添加剤と混合したりして使用されている。
生分解性樹脂製品は、自然界や堆肥製造装置の中で完全に生分解されるものであるが、その一方で、使用する間は使用に耐える機能(例えば機械強度)を保持する必要がある。そのため、使用する場所、期間、用途等に応じて、生分解速度をコントロールする技術が求められている。
特に、野外で使用される農業、漁業、土木用資材等においては、使用環境が多岐にわたるため、これらの用途においては、使用環境によっては、生分解樹脂の生分解が速く進んでしまい、使用用途の目的を完全に果たすことができないことがあった。そのため、従来の生分解性樹脂が有する生分解速度よりも生分解速度を遅延させる技術が必要とされてきた。
特許文献1には、シート全体が生分解性プラスチックにより形成された生分解性農業用プラスチックシートであって、シート中央部よりシートの幅方向両側端部の生分解速度が遅く形成されている生分解性農業用プラスチックシートが開示されており、特許文献2には、部分的に厚く成形する、部分的に非生分解性樹脂又は生分解速度の遅い樹脂を塗布する、部分的に非生分解性樹脂又は生分解速度の遅い樹脂を接着、融着、二色成形又は共押出成形する、部分的に殺菌剤や防黴剤を塗布又は添加する等の方法により、生分解速度が遅い部分を設けた農業用フィルムが開示されている。
また、特許文献3には、脂肪族ポリエステル、澱粉、及び脂肪族芳香族ポリエステルを含む、分解速度が調節された生分解性樹脂組成物が開示されており、特許文献4には、無
機抗菌剤を含有することにより生分解速度が調節された生分解性樹脂組成物が開示されている。
特開平9-107808号公報 特開2001-17008号公報 特開2008-13602号公報 特開平5-117507号公報
部分的に成形体を厚く成形する従来技術(特許文献1、2)によると、一定期間必要な強度を維持することができるが、元の厚さの成形体と比べて柔軟性などの物性が変化するとともに、重量も増えるため、元の性能を維持できなかったり、コストが増えたりする懸念があった。
特許文献3のように、生分解が遅い樹脂と組み合わせる技術によれば、元の生分解性樹脂と比べて生分解を遅らせることができるが、柔軟性等の物性が異なる樹脂と組み合わせるため、機械物性が大きく変動してしまう恐れがあった。
また、特許文献4のように、殺菌剤や抗菌剤を配合する技術によれば、物性をあまり変化させることなく生分解速度を調節することができるが、これらの殺菌剤や抗菌剤には、自然界に元来存在しない化合物や、重金属を環境中に放出することになるため、生分解樹脂が生分解された後も、それらのみが土中や土壌に残り、生態系に悪影響を与えるおそれがあった。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、生分解性樹脂そのものが有する機械物性や柔軟性など物性を大きく変化させることなく、且つ、生分解が遅延するように生分解速度を調節し、最終的に完全に生分解する生分解性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、生分解性樹脂にホウ酸塩水和物を特定量配合することにより、生分解が遅延するように生分解速度を調節できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、下記の[1]~[5]に存する。
[1]生分解性樹脂100質量部に対してホウ酸塩水和物1.0~5.3質量部を含む、生分解性樹脂組成物。
[2]前記ホウ酸塩水和物が、四ホウ酸ナトリウム水和物である、[1]に記載の生分解性樹脂組成物。
[3]前記四ホウ酸ナトリウム水和物の水和数が5~10である、[2]に記載の生分解性樹脂組成物。但し、水和数は四ホウ酸ナトリウム水和物の組成式をNa・nHOの形で表したときのnの値である。
[4]前記生分解性樹脂が脂肪族ポリエステル系樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
[5]前記脂肪族ポリエステル系樹脂が、脂肪族ジオールに由来する構成単位及び脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を主構成成分として含むポリエステルである、[4]に記載の生分解性樹脂組成物。
本発明によれば、生分解性樹脂そのものが持つ物性を大きく変化させることなく、生分解が遅延するように生分解速度を調節することができ、且つ最終的に生分解する生分解性樹脂組成物が提供される。
本発明の実施例1及び比較例1、2の生分解性試験における、経過日数と重量保持率の関係を示すグラフ。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[ホウ酸塩水和物]
本発明の生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂に対して一定量のホウ酸塩水和物を含有することを特徴とする。
ホウ酸及びその塩は自然界の土壌や海洋などに元来広く分布している物質である(例えば『環境保健クライテリア No.204 ホウ素』を参照)。また、ホウ酸塩は植物の必須微量要素でもあり、農林水産省の定める肥料の公定規格においては「ほう素質肥料」として規定されている。したがって、本発明の生分解性樹脂組成物からホウ酸塩成分が少量ずつ環境中に放出されても、環境への悪影響は極めて小さいと考えられる。
ホウ酸塩を構成する陰イオンは、脱水縮合して三ホウ酸イオン、四ホウ酸イオン、五ホウ酸イオン等の、多様なポリホウ酸イオンを形成する。これらのポリホウ酸とホウ酸の塩を総称して、一般にホウ酸塩と呼称される。ホウ酸やポリホウ酸の塩は、水中で加水分解してテトラヒドロキシホウ酸イオン[B(OH) ]やホウ酸[B(OH)]との平衡状態となる。したがって、本発明の生分解性樹脂組成物に含まれるホウ酸塩水和物は、本質的にはホウ酸イオン又はポリホウ酸イオンからなる塩であれば、特に限定されない。
ホウ酸塩を構成する陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。中でも、安価で、環境毒性が低く、ホウ酸塩が水に溶けやすいという点から、ナトリウム塩が好ましい。
ナトリウムのホウ酸塩として、四ホウ酸ナトリウム水和物が好ましい。中でも、四ホウ酸ナトリウム十水和物[Na・10HO](ホウ砂)が最も好ましい。
本発明の生分解性樹脂組成物に含まれるホウ酸塩は、水和水を有することを特徴とする。水和水を有するホウ酸塩は、生分解性樹脂と溶融混練する際に結晶水を放出して結晶粒が崩壊するとともに、水が溶媒や可塑剤として働くことにより、生分解樹脂組成物中に均一に微分散することができる。そのため、特にフィルムや繊維に成形した際にも、良好な機械物性、外観、手触りの成形体を得ることができる。
例えば、四ホウ酸ナトリウムの組成式をNa・nHOで表したときの水和数nが10の場合(十水和物)は62℃以上で結晶水を放出して融解し、nが5~10の範囲であれば200℃未満で結晶水を放出する。一方、n=0の場合(無水物)の融点は742℃であり、溶融混練しても結晶粒が元の形状のまま残るため、良好な成形体を得る
ことができない。従って、nの値は5~10であることが好ましい。
本発明の生分解性樹脂組成物に含まれるホウ酸塩水和物の配合量は、生分解性樹脂100質量部に対して1.0~5.3質量部である。ホウ酸塩水和物の配合量が1.0質量部以上であれば、生分解遅延効果を得ることができる。一方、5.3質量部を超えると、放出される水分による発泡や、混練及び成形時に加水分解による分子量低下が起こり、良好な物性や外観の成形体が得られない場合がある。配合量をこの範囲で調整することにより、成形体の使用目的や使用場所に応じて生分解速度を調節することができる。
[生分解性樹脂]
生分解性樹脂組成物に含まれる生分解性樹脂としては、生分解性を有するプラスチックであり、生分解性プラスチックとして従来から知られているものを使用することができる。
生分解性樹脂としては、ジオールに由来する構成単位及びジカルボン酸に由来する構成単位を主構成成分として含むポリエステルであってよく、また脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)であってもよい。「主構成単位」とは、通常、その構成単位が当該ポリエステル系樹脂中に80質量%以上含まれる構成単位のことであり、90質量%以上であってよく、主構成単位以外の構成単位が全く含まれない場合、即ち100質量%でもあり得る。
ジオールに由来する構成単位及びジカルボン酸に由来する構成単位を主構成成分として含むポリエステルとしては、特に制限はないが、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)が挙げられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)のうちの2種以上を混合して用いてもよい。
以下に各生分解性樹脂について説明する。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)は、それぞれ繰返し単位を有する重合体であるが、それぞれの繰返し単位は、それぞれの繰返し単位の由来となる化合物に対する化合物単位とも呼ぶ。例えば、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位を「脂肪族ジオール単位」、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「脂肪族ジカルボン酸単位」、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「芳香族ジカルボン酸単位」とも呼ぶ。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)としては、脂肪族ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、コハク酸単位を有することが好ましく、全ジカルボン酸単位中のコハク酸単位の割合が5モル%以上100モル%以下であることがより好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、コハク酸単位の量が異なる脂肪族ポリエステル系樹脂の混合物であってもよく、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含まない(脂肪族ジカルボン酸単位としてコハク酸単位のみを含む)脂肪族ポリエステル系樹脂と、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂とをブレンドして、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)におけるコハク酸単位量を上記好適範囲内に調整して使用することも可能である。
より具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単位、および下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含むポリエステル系樹脂である。
-O-R-O- (1)
-OC-R-CO- (2)
式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。また、上記式(2)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。上記式(1)、(2)で表される脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合物由来であってもかまわないが、植物原料から誘導された化合物由来であることが望ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が共重合体である場合には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中に2種以上の式(1)で表される脂肪族ジオール単位が含まれていてもよく、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中に2種以上の式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていてもよい。
前述の通り、式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸単位が、全ジカルボン酸単位に対して5モル%以上100モル%以下含まれることが好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)におけるコハク酸構成単位量を上記所定範囲内とすることで、成形性が向上するとともに耐熱性、分解性にも優れた生分解性樹脂組成物を得ることが可能となる。同様の理由から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のコハク酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは64モル%以上、特に好ましくは68モル%以上である。
以下、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中の全ジカルボン酸単位に対するコハク酸単位の割合を「コハク酸単位量」と称す場合がある。
また、式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸の他に1種類以上の脂肪族ジカルボン酸単位が、全ジカルボン酸単位に対して5モル%以上50モル%以下含まれていることがより好ましい。コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を上記所定範囲内で共重合することで、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の結晶化度を下げることができ、生分解速度を速くすることが可能である。同様の理由から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のコハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上45モル%以下であり、より好ましくは15モル%以上40モル%以下である。
式(1)で表されるジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールが特に好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4-ブタンジオールが特に好ましい。尚、上記脂肪族ジオールは、2種類以上を用いることもできる。
式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が好ましく、炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が特に好ましい。コハク酸以外の炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が挙げられ、中でもアジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。尚、上記脂肪族ジカルボン酸成分は、2種類以上を用いることもでき、この場合、コハク酸とアジピン酸との組み合わせが好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位(
脂肪族オキシカルボン酸単位)を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、成形性の観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であり、最も好ましくは0モル%(含まない)である。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、成形性、機械強度や成形品外観の観点からリンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、より具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)がこのような3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、その含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。通常、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高める方法が採用される。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が目的とする組成を有するようにジオール成分およびジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量で反応するが、ジオール成分は、エステル化反応中に留出することから、通常はジカルボン酸成分よりも1~20モル%過剰に用いられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。このとき、上記の任意成分を反応系に導入する時期および方法に制限はなく、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造できる限り任意である。
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期および方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、(1)予め触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時に触媒を反応系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよく、或いは、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知のポリエステル系樹脂の製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、また、通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり得られるポリマーに著しい着色を生じたり、耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を導入する場合は、原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、又は脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特に、重合速度が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応および/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。更に、反応圧力は、通常、常圧~10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応および/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下で行うことが望ましい。また、この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。更に、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成で不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する全構成単位を100モル%とした場合の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のカーボネート結合やウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中にウレタン結合やカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、カーボネート結合は1モル%未満、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合は0.55モル%以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以下とするのがよい。この量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部あたりに換算すると、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。特に、ウレタン結合量が上記上限値を上回ると、成膜工程等において、ウレタン結合の分解のため、ダイス出口からの溶融膜からの発煙や臭気が問題となる場合があり、また、溶融膜中に発泡による膜切れが起こって安定的に成形できないことがある。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のカーボネート結合量やウレタン結合量は、H-NMRや13C-NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
上記鎖延長剤としてのカーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシ
ルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物も使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合体、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステル系樹脂についても従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量の鎖延長剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステル系樹脂を製造することができる。ここで、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンによる換算値として求められる。
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネート化合物を用いて、ポリエステル系樹脂を更に高分子量化する場合には、重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーを用いることが好ましい。重量平均分子量が20,000未満であると、高分子量化するためのジイソシアネート化合物の使用量が多くなり耐熱性が低下する場合がある。このようなプレポリマーを用いてジイソシアネート化合物に由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリエステル系樹脂が製造される。
鎖延長時の圧力は、通常0.01MPa以上1MPa以下、好ましくは0.05MPa以上0.5MPa以下、より好ましくは0.07MPa以上0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、最も好ましくは15分以下である。鎖延長を行う時間が短すぎる場合には、鎖延長剤の添加効果が発現しない傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは40g/10分以下である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の融点は70℃以上が好ましく、より好ましくは75℃以上であり、170℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは130℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の弾性率は180~1000MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形加工性に問題が起こり易く、一方、弾性率が1000MPaを超えると耐衝撃強度が悪くなる傾向にある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、それぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A)をブレンドして用いることができる。
<脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)>
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、上述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の繰り返し単位の少なくとも一部が、芳香族化合物単位に置き換えられたもの、好ましくは、上述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の脂肪族ジカルボン酸単位の一部が芳香族ジカルボン酸単位に置き換えられた、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位とを主構成単位として含むポリエステル系樹脂が例示される。
芳香族化合物単位としては、例えば、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を有する芳香族ジオール単位、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を有する芳香族ジカルボン酸単位、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を有する芳香族ジカルボン酸単位、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を有する芳香族オキシカルボン酸単位等が挙げられる。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、単環でもよいし、複数の環が互いに結合、又は縮合したものでもよい。芳香族炭化水素基の具体例としては、1,2-フ
ェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、ジナフチレン基、ジフェニレン基等が挙げられる。芳香族複素環基の具体例としては2,5-フランジイル基等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸等が挙げられる。中でも、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物の誘導体でもよい。例えば、上記に例示した芳香族ジカルボン酸成分の誘導体が好ましく、中でも、炭素数1以上4以下である低級アルキルエステルや、酸無水物等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸化合物の誘導体の具体例としては、上記例示した芳香族ジカルボン酸成分のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の低級アルキルエステル;無水コハク酸等の上記例示した芳香族ジカルボン酸成分の環状酸無水物;等が挙げられる。中でも、ジメチルテレフタレートが好ましい。
芳香族ジオール単位を与える芳香族ジオール成分の具体例としては、例えば、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等が挙げられる。芳香族ジオール成分としては、芳香族ジオール化合物の誘導体でもよい。また、複数の脂肪族ジオール化合物及び/又は芳香族ジオール化合物が互いに脱水縮合した構造を有する化合物であってもよい。
芳香族オキシカルボン酸単位を与える芳香族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸成分としては、芳香族オキシカルボン酸化合物の誘導体でもよい。また、複数の脂肪族オキシカルボン酸化合物及び/又は芳香族オキシカルボン酸化合物が互いに脱水縮合した構造を有する化合物(オリゴマー)であってもよい。即ち、原料物質としてオリゴマーを用いてもよい。
これら芳香族化合物単位を与える芳香族化合物成分に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、及びラセミ体のいずれを用いてもよい。また、芳香族化合物成分としては、芳香族化合物単位を与えることができれば、上記の例に限定されるものではない。更に、芳香族化合物成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で併用してもよい。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、芳香族化合物単位を与える成分として芳香族ジカルボン酸成分を用いることが好ましく、この場合の芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、10モル%以上80モル%以下であることが好ましい。また、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸又は2,5-フランジカルボン酸を用いることが好ましく、その場合、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネート系樹脂であることが好ましい。また、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、ポリブチレン-2,5-フランジカルボキシレート系樹脂も好ましい。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)は、原料に少なくとも芳香族化合物成分を用いて、前述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を同様に製造することができる。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは30,000以上800,000以下、より好ましくは50,000以上600,000以下である。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、JIS
K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の融点は通常60℃以上であり、70℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上であり、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の弾性率は180~1000MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形加工性に問題が起こり易く、一方、弾性率が1000MPaを超えると耐衝撃強度が悪くなる傾向にある。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、芳香族ジカルボン酸成分以外の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、それぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂(B)をブレンドして用いることができる。
<脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)>
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を主構成単位とするものであり、その脂肪族オキシカルボン酸単位は、下記式(3)で表されることが好ましい。
-O-R-CO- (3)
(上記式(3)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表す。)
式(3)の脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体のいずれでもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又は6-ヒドロキシカプロン酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸成分は、2種類以上を混合して用いることもできる。
また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)にはウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)の製造方法は、特に限定されるものではなく、オキシカルボン酸の直接重合法、あるいは環状体の開環重合法等公知の方法で製造することができる。
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは40g/10分以下である。脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)の融点は50℃以上が好ましく、より好ましくは55℃以上であり、200℃以下であることが好ましく、より好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)の弾性率は180~4000MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形加工性に問題が起こり易く、一方、弾性率が4000MPaを超えると耐衝撃強度が悪くなる傾向にある。
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、脂肪族オキシカルボン酸以外の共重合成分の種類を選択したり、それぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)としては、以下に説明するポリヒドロキシアルカノエート(D)も好ましく用いることができる。
ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称することがある)(D)は、一般式:[-CHR-CH-CO-O-](式中、Rは炭素数1~15のアルキル基である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであり、3-ヒドロキシブチレート単位を主たる構成単位として含む共重合体である。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)は、成形性、熱安定性の観点から、構成成分として3-ヒドロキシブチレート単位を80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。また、微生物によって生産されたものが好ましい。ポリヒドロキシアルカノエート(D)の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂等が挙げられる。
特に、成形加工性および得られる成形体の物性の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、即ちPHBHが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)において、3-ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合している3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3
HHと称する場合がある)等のコモノマーとの構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、成形加工性および成形体品質等の観点から、3-ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3~80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95/5~85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。このコモノマー比率が3モル%未満であると、成形加工温度と熱分解温度が近接するため成形加工し難い場合がある。コモノマー比率が20モル%を超えると、ポリヒドロキシアルカノエート(D)の結晶化が遅くなるため生産性が悪化する場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。
乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(質量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求められる。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)の重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)は、前記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常200,000以上2,500,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは250,000以上2,000,000以下、より好ましくは300,000以上1,000,000以下である。重量平均分子量が200,000未満で
は、機械物性等が劣る場合があり、2,500,000超えると、成形加工が困難となる場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、好ましくは1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、より好ましくは80g/10分以下、特に好ましくは50g/10分以下である。ポリヒドロキシアルカノエート(D)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)の融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上であり、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは160℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)は、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP-6038(原寄託FERM P-15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生される。
ポリヒドロキシアルカノエート(D)としては、市販品を用いることもでき、3-ヒドロキシブチレート単位及び3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含むポリヒドロキシアルカノエート(D)の市販品としては、カネカ社製「PHBH X331
N」、「PHBH X131A」、「PHBH X151A」等を用いることができる。
本実施形態では、上記ポリヒドロキシアルカノエート(D)を含め、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)をブレンドして用いることができる。
<その他の成分>
生分解性樹脂組成物には、上述のホウ酸塩水和物以外に、フィラー(充填剤)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、熱安定剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリップ剤等の各種添加剤の1種又は2種以上が「その他の成分」として含まれていてもよい。
生分解性樹脂組成物にはまた、機能性添加剤として、鮮度保持剤、抗菌剤等が含有されていてもよい。
これらのその他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
生分解性樹脂組成物におけるこれらのその他の成分の含有量は、通常、生分解性樹脂組成物の物性を損なわないために、その他の成分の総量は、本発明の生分解性樹脂組成物の総量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
<生分解性樹脂組成物の製造方法>
生分解性樹脂組成物は、上述の生分解性樹脂とホウ酸塩水和物とを混練機内で混練し、該ホウ酸塩水和物を生分解性樹脂中に分散させることにより製造される。また、ホウ酸塩水和物及び生分解性樹脂と共に、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を混練機内で混合してもよい。
この混合工程は、ホウ酸塩水和物及び生分解性樹脂と、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を、所定の割合で同時に、又は任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合し、好ましくはさらに溶融混錬することにより行われる。
混合工程で使用される混練機は溶融混練機であってもよい。また、押出機は二軸押出機、単軸押出機のいずれでもよいが、二軸押出機がより好ましい。
溶融混練時の温度は140~220℃が好ましい。この温度範囲であれば、溶融反応に要する時間の短縮が可能になり、樹脂の劣化を防止することができ、また、耐衝撃性や耐湿熱性などの実用面での物理特性をより向上させることができる。同様の観点から、溶融混練温度は150~210℃であることがより好ましい。
また溶融混練時間については、上記と同様に樹脂劣化等をより確実に回避するという観点から無用な長時間化は回避されるべきであり、20秒以上20分以下が好ましく、より好ましくは30秒以上15分以下である。従って、この溶融混練条件を満たすような溶融混練温度や時間の条件設定を行うことが好ましい。
ホウ酸塩水和物は、生分解性樹脂と混合する前に予め粉末状にしておくことが望ましい。こうすることで、生分解性樹脂組成物中にホウ酸塩水和物が均一に分散し、生分解性とともに機械物性や外観に優れた成形体を得ることができる。
粉末状のホウ酸塩水和物を得る方法としては、例えば、石臼、カッターミル、ジェットミル、クラッシュミル等の粉砕機により粉砕する方法がある。粉末状のホウ酸塩水和物の粒度としては、生分解性樹脂と短時間で均一に混ざりやすいという観点から、通常、粒径2mm以下、好ましくは1.7mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。ホウ酸塩水和物の粒径の測定には、篩によって分別するなどの種々の公知の方法を用いることができる。
ホウ酸塩水和物は風解や吸湿により水和数が変化する場合があるため、溶融混練する直前まで密閉保管することが好ましい。水和数は、水溶液から再結晶する、湿潤空気や乾燥空気に晒す、所定の温度で乾燥させる等の方法で、適宜調節することができる。
水和数は以下のように測定できる。例えば四ホウ酸ナトリウム水和物の場合、350℃以上に加熱すると無水物になるため、この温度で恒量になるまで乾燥させたときの重量減少量が、含まれていた水和水の量と考えられる。この水和水量をモル比に換算することで、元の水和数を求めることができる。
[成形体]
生分解性樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形することができる。その成形法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、熱プレス成形、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。中でも、射出成形、押出成形、圧縮成形、又は熱プレス成形、特に押出成形又は射出成形が好適に適用される。具体的な形状としては、シート、フィルム、繊維への適用が好ましい。
また、生分解性樹脂組成物を成形してなる生分解性樹脂成形体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/摩耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種の二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
[用途]
生分解性樹脂成形体は、屋外や土中、水中、湿潤環境下で使用する、農林業用資材、漁業用資材、土木用資材等に特に好適に用いられる。具体的には、押出成形品(例えば、農業用マルチフィルム、きのこ栽培用フィルム、樹木の保護フィルムなどのフィルム製品、保水シートなどのシート製品、釣り糸、漁網、養殖ネット、植生ネット、ロープなどの繊維製品)、射出成形品(杭、育苗ポット、菌床栽培容器)などが挙げられる。そのほか、家庭や事業所などで一定期間保管することが想定される、コンポスト袋やごみ袋にも好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[生分解性樹脂]
生分解性樹脂として、下記の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を用いた。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A):ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)
PTTMCCBiochem社製「BioPBS FD92PM」
[ホウ酸塩水和物及び無水物]
ホウ酸塩として、以下の材料を使用した。
四ホウ酸ナトリウム十水和物:U.S.Borax社製「Borax」 組成式:Na・10H
四ホウ酸ナトリウム五水和物:U.S.Borax社製「Neobor」 組成式:Na・5H
四ホウ酸ナトリウム無水物:U.S.Borax社製「Dehybor」 組成式:Na
[実施例1~3、比較例1~6]
生分解性樹脂とホウ酸塩(水和物又は無水物)を、表1に示す割合でブレンドし、小型二軸混練機(DSM社製「Xplore Micro 15cc Twin Screw
Compounder」)を使用して、窒素雰囲気下、170℃にて4分間溶融混練を行った。その後、得られた樹脂組成物を溶融したストランドとして取り出して、放冷した。このときの混練状態について、以下の評価を行い、結果を表1に記載した。
<混練性評価>
ストランド取り出し時の外観を、以下の基準で評価した。
良:問題無く混練できた。
不良:著しく発泡した。
評価が良であれば、成形加工に適した気泡の無い樹脂組成物を安定して製造することができる。
上記で得られたストランド状の樹脂組成物をペレット状に細断し、以下の評価を行い、結果を表1に記載した。
<固有粘度評価>
樹脂組成物の固有粘度(IV)(dl/g)を、ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、樹脂組成物試料を110℃で溶解させて濃度0.5g/dLの溶液を作成した。次いで、30℃における試料溶液及び溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、以下の式より求めた。
IV=((1+4Kηsp0.5-1)/(2KC)
ここで、ηsp=η/η-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。
本実施例に用いた脂肪族ポリエステル系樹脂(A)においては、IVが1.5以上であれば、分子量の低下が小さく機械強度に優れた成形体が得られる。
上記で得られたペレットを、170℃に設定した熱プレス成形機で厚さ約120μmのシート状に成形した。得られたシート中のホウ酸塩の分散状態について、以下の評価を行い、結果を表1に記載した。
<分散性評価>
シートを透過光で観察し、以下の基準で評価した。
良:半透明で、ホウ酸塩の粒子がほとんど視認できない。
不良:粒状のホウ酸塩が明瞭に視認できる。
評価が良であれば、外観や手触りが良好で、機械強度が良好な成形体が得られる。
上記で得られたシートの生分解性について、以下の評価を行い、結果を図1に示した。<生分解性試験>
シート状に成形した樹脂組成物を50mm×30mmの長方形に切り抜き、ポリエチレン製タッパー容器に入れた水分量20%RHの園芸用土(アイリスオーヤマ株式会社製「花と野菜の培養土」)とコンポスト(八幡物産株式会社製、生分解試験用植種源)の質量比1:1の混合物中に埋設し、蓋を閉めて28℃の恒温槽中に静置した。各試験片を定期的に取り出して重量変化を測定し、重量保持率(試験開始前の重量に対する、所定日数経過後の重量の割合)を求めた。
Figure 2023110156000002
表1より、ホウ酸塩水和物の水和数が5~10の範囲で、生分解性樹脂100質量部に対するホウ酸塩水和物の含有量が5.3質量部以下であれば、混練性が良く、強度の低下が少なく、分散性の良い組成物が得られることが分かる。
図1より、生分解性樹脂100質量部に対するホウ酸塩水和物の含有量が1.0質量部以上であれば、生分解を遅延させる効果が得られることが分かる。

Claims (5)

  1. 生分解性樹脂100質量部に対してホウ酸塩水和物1.0~5.3質量部を含む、生分解性樹脂組成物。
  2. 前記ホウ酸塩水和物が、四ホウ酸ナトリウム水和物である、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
  3. 前記四ホウ酸ナトリウム水和物の水和数が5~10である、請求項2に記載の生分解性樹脂組成物。但し、水和数は四ホウ酸ナトリウム水和物の組成式をNa・nHOの形で表したときのnの値である。
  4. 前記生分解性樹脂が脂肪族ポリエステル系樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
  5. 前記脂肪族ポリエステル系樹脂が、脂肪族ジオールに由来する構成単位及び脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を主構成成分として含むポリエステルである、請求項4に記載の生分解性樹脂組成物。
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