JP2023108919A - 接着性樹脂組成物及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】単層または多層のラミネート成形において高速成形性およびロングラン性に優れ、かつ金属や樹脂との接着性が良好な接着性樹脂組成物を提供する。【解決手段】下記の成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び(D)を含む接着性樹脂組成物。成分(A):メルトフローレート(MFR)が0.1~200g/10分である変性プロピレン系重合体成分(B-1):融点が120℃以上であるプロピレン系重合体成分(B-2):融点が120℃未満であり、プロピレン単位の含有率が70~93mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位の含有率が30~7mol%であるプロピレン系重合体成分(C):エチレン単位の含有率が60~95mol%、エチレン以外のα-オレフィン単位の含有率が40~5mol%であるエチレン・α-オレフィン共重合体成分(D):低密度ポリエチレン【選択図】なし

Description

本発明は、ラミネート成形において高速成形性およびロングラン性に優れ、かつ金属や樹脂との接着性が良好な接着性樹脂組成物および該接着性樹脂組成物を用いた積層体に関する。
食料品や医薬品の包装材、二次電池の外包材や絶縁性フィルム、化粧フィルム等、内容物の保護や品質の保持が重要視される用途や意匠性が求められる分野の外装材として、ラミネート成形した積層体が幅広く用いられている。このような積層体は、一般的に基材層と樹脂層が異種の材料で構成されており、各層間の接着力が乏しいため、層と層との間に接着性樹脂層を介在させ、接着性樹脂層による接着力で積層一体化される。
基材層/接着性樹脂層/樹脂層というような多層の積層には、押出ラミネート成形、熱ラミネート成形、ドライラミネート成形、ウェットラミネート成形、共押出法等が用いられるが、中でも押出ラミネート成形は、環境負荷の高い有機溶剤を使用せず、また生産速度が速く、広範囲に塗膜積層ができ、かつ膜厚が均一であるといった利点から、好適に用いられている。
しかしながら、押出ラミネート成形では、既に固化した基材層の表面に接着性樹脂層を含む溶融物を高速でラミネートするため、基材層と接着樹脂層との接着強度は必ずしも高くならない。ここで、接着性樹脂層を含む溶融物は、例えば接着性樹脂組成物の単層や接着性樹脂組成物とその他の樹脂との複層である。この結果、得られた積層体は、基材層と接着性樹脂層との界面で剥離を生じる等の問題が発生していた。これに対して、基材層と接着性樹脂層との接着性を向上させるために、押出ラミネート成形時の押出速度を低速にすると、押出ラミネート成形の特徴である高速成形性が大幅に損なわれることになる。
このような問題を解決する接着性脂組成物として、特許文献1には、基材層との接着性が良好で、高速押出ラミネート成形が可能な接着樹脂組成物として、変性プロピレン系重合体(A)、ある特定の条件(230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分であり、且つDSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下)を満たすプロピレン系重合体(B)、低密度ポリエチレン(C)を特定の割合で配合し、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%以上である接着性樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、高速押出ラミネート成形性に優れ、積層体における接着層として用いた場合に、基材層との接着性が良好であり、しかも、高温や高湿の環境下においても基材層との接着性を良好に維持し得る接着性樹脂組成物として、下記成分(A)~(D)を特定の割合で含む変性ポリプロピレン組成物が記載されている。
成分(A): 下記成分(a)を含有するポリプロピレン系樹脂
成分(a):ポリプロピレン系樹脂を不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性
ポリプロピレン
成分(B): プロピレンに基づく単量体単位の含有量が80~95重量%、エチレン及
び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量が20~5重量%
であるプロピレン系共重合体(但し、プロピレンに基づく単量体単位の含有量とエチレン
及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を10
0重量%とする。)
成分(C): エチレンに基づく単量体単位の含有量が76~90重量%、α-オレフィ
ンに基づく単量体単位の含有量が24~10重量%であるエチレン・α-オレフィン共重
合体(但し、エチレンに基づく単量体単位の含有量とα-オレフィンに基づく単量体単位
の含有量との合計を100重量%とする。)
成分(D): ポリエチレン系樹脂
特開2018-135488号公報 特開2012-188662号公報
接着性樹脂組成物の金属や樹脂等への接着性を高めるために、高い温度で溶融成形すると、樹脂が劣化し、ヤケ(接着性樹脂組成物が熱着色したものや炭化したもの)やブツ(接着性樹脂組成物が架橋したもの)等が発生し、得られた積層体の外観を著しく損なうという問題が生じる。また、高温状態では、熱安定性が低下し、押出機や押出機に連結されるTダイと呼ばれる溶融樹脂膜の出口のリップにヤケが付着して、長期間にわたり連続して高温溶融成形が行えない、いわゆるロングラン性が低下する問題がある。
Tダイを用いた押出ラミネート成形では、Tダイから押し出された接着性樹脂層を含む溶融物が、Tダイ出口から冷却ロールまでのエアギャップで引き延ばされる際に、溶融物の幅が狭くなるネックイン現象を生じる。そのため、溶融物の端部の厚みは、その中央部に比べて大きくなる。これにより、溶融物に含まれる接着性樹脂組成物のネックインが大きい場合、均一な厚みの積層体が得られないだけでなく、積層体の巻き取り時に、巻きずれや皺が起こる原因となる。さらに、トリミングされる積層体の量が多くなり、歩留まりが悪くなり、耳折れ、耳切れなどの加工トラブルが多くなる。
ネックインを改善するために、しばしば接着性樹脂組成物の溶融弾性を向上する手法が取られる。しかしながら、溶融弾性を高めると溶融物が延伸切れを起こす問題が生じることがある。溶融物が延伸切れを起こす限界の引き取り速度はドローダウンと呼ばれており、ドローダウンの小さい接着性樹脂組成物、すなわち、ドローダウン性が不良な接着性樹脂組成物は、生産性が悪い。従って、接着性樹脂組成物のネックインとドローダウン性の両立、すなわち良好な高速成形性が求められる。
このような要求特性に対して、特許文献1に記載の樹脂組成物は、高速成形により得られた積層体において、基材層との接着性に優れるものであるが、ロングラン性に劣る場合がある。また、特許文献2に記載の樹脂組成物は、高速成形により得られた積層体において、基材層との接着性に優れ、高速成形時のネックインは小さいが、ドローダウン性に劣り、いずれも改善の余地がある。
本発明は、単層または多層のラミネート成形において高速成形性およびロングラン性に優れ、かつ金属や樹脂との接着性が良好な接着性樹脂組成物および該接着性樹脂組成物を用いた積層体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、成分(A):メルトフローレート(MFR;JIS K7210,180℃、2.16kg荷重)が0.1~200g/10分である変性プロピレン系重合体、成分(B-1):DSCで測定した融点が120℃以上であるプロピレン系重合体、成分(B-2):DSCで測定した融点が120℃未満であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有率が70~93mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が30~7mol%であるプロピレン系重合体、成分(C):エチレンに基づく単量体単位の含有率が60~95mol%、エチレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が40~5mol%であるエチレン・α-オレフィン共重合体、成分(D):低密度ポリエチレンを含有する接着性樹脂組成物とすることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下を要旨とする。
[1] 下記の成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び(D)を含む接着性樹脂組成物。
成分(A):メルトフローレート(MFR;JIS K7210,180℃、2.16kg荷重)が0.1~200g/10分である変性プロピレン系重合体
成分(B-1):DSCで測定した融点が120℃以上であるプロピレン系重合体
成分(B-2):DSCで測定した融点が120℃未満であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有率が70~93mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が30~7mol%であるプロピレン系重合体
成分(C):エチレンに基づく単量体単位の含有率が60~95mol%、エチレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が40~5mol%であるエチレン・α-オレフィン共重合体
成分(D):低密度ポリエチレン
[2] 前記成分(A)が下記の条件1と2を満足する変性プロピレン系重合体である、[1]に記載の接着性樹脂組成物。
条件1:不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で変性した変性プロピレン系重合体であって、その変性率が0.1~2.0質量%
条件2:DSCで測定した融点が60~170℃
[3] 成分(B-1)、(B-2)及び(C)の合計100質量%中に対し、成分(B-1)を15~49質量%、成分(B-2)を15~49質量%、成分(C)を15~49質量%含む、[1]又は[2]に記載の接着性樹脂組成物。
[4] 成分(A)の含有率が、成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び(D)の合計100質量%に対して、10~60質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[5] 成分(B-1)のプロピレン系重合体のMFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重)が0.5~50g/10分である、[1]~[4]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[6] 成分(B-2)のプロピレン系重合体のMFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重)が0.5~50g/10分である、[1]~[5]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[7] 成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重)が0.5~50g/10分であり、密度(JIS K7112)が0.90g/cm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[8] 成分(D)が高圧法低密度ポリエチレンである、[1]~[7]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[9] 前記成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して、成分(D)を1~30質量%含む、[1]~[8]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[10] 基材層と[1]~[9]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物からなる層と樹脂層とを有する積層体。
[11] 前記基材層、前記接着性樹脂組成物層、及び前記樹脂層がこの順で積層されている、[10]の積層体。
[12] 前記基材層がフィルム状の金属または樹脂である、[10]又は[11]に記載の積層体。
[13] 前記基材層がフィルム状の金属であり、該金属がアルミニウム、ニッケル又は銅、或いはそれらの合金である、[12]に記載の積層体。
[14] 前記樹脂層がプロピレン系重合体層である、[10]~[13]のいずれかに記載の積層体。
本発明によれば、単層または多層のラミネート成形において高速成形性およびロングラン性に優れ、かつ金属や樹脂との接着性が良好な接着性樹脂組成物および該接着性樹脂組成物を用いた積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、この接着性樹脂組成物を用いて、信頼性に優れると共に、生産性と品質安定性にも優れた積層体が提供される。
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明において、樹脂のメルトフローレート(MFR)、融点、密度は、以下のようにして測定された値である。
<MFR>
後述の成分(A)の変性プロピレン系重合体のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度180℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。成分(B-1)のプロピレン系重合体、成分(B-2)のプロピレン系重合体のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体、成分(D)の低密度ポリエチレンのMFRは、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
また、本発明の接着性樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
<融点>
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて昇温して測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点(℃)とした。単位は℃である。
<密度>
JIS K7112に準拠して、水中置換法で測定される。JISに統一しました。
また、共重合体を構成する各単量体単位の含有率、例えば後述の成分(B-2)のプロピレン系共重合体や成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体のプロピレン単位や他の共重合成分の各構成単位の含有率は、核磁気共鳴分光法や赤外分光法により求めることができる。
ここで、「単量体単位」とは共重合体の原料単量体に由来して共重合体に導入される繰り返し単位をさす。
[接着性樹脂組成物]
本発明の接着性樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)は、樹脂成分として少なくとも下記の成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び(D)を含むことを特徴とする。
本発明において、「樹脂成分」とは、下記成分(A)~(D)と、必要に応じて用いられる後述のその他の成分としての成分(A)~(D)以外の樹脂を指す。
成分(A):メルトフローレート(MFR;JIS K7210,180℃、2.16kg荷重)が0.1~200g/10分である変性プロピレン系重合体
成分(B-1):DSCで測定した融点が120℃以上であるプロピレン系重合体
成分(B-2):DSCで測定した融点が120℃未満であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有率が70~93mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が30~7mol%であるプロピレン系重合体
成分(C):エチレンに基づく単量体単位の含有率が60~95mol%、エチレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が40~5mol%であるエチレン・α-オレフィン共重合体
成分(D):低密度ポリエチレン
<メカニズム>
本発明の接着性樹脂組成物は、成分(A)の変性プロピレン系重合体を含むことで、基材層との接着性を十分なものとすることができる。
成分(B-2)のプロピレン系重合体及び成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体が基材層との濡れ性及び親和性に優れ、高速成形時や熱量の低い条件においても接着性を高める方向に作用する。
成分(B-1)のプロピレン系重合体は、冷却固化後の接着性樹脂組成物層の凝集力を高め、耐久接着強度を更に高める。
成分(D)の低密度ポリエチレンは、接着性樹脂組成物の溶融弾性を高め、成分(D)を含むことで、高速押出ラミネート成形時のネックインを減少させ、安定した膜厚の積層体を得ることができる。
また、成分(A)の変性プロピレン系重合体が特定のメルトフローレートを持つことで、高速押出成形性に優れるとともに、成分(B-1)と成分(B-2)から構成されるマトリックス中における成分(A)の分散性を高める方向に作用する。
更に、成分(B-2)が所定割合の共重合モノマーとして、エチレン単位もしくは、プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を有することにより、成分(B-1)と成分(C)の相溶性を向上させ、成分(C)が所定割合の共重合モノマーとしてエチレン単位以外のα-オレフィン単位を有することにより、成分(B-2)と成分(D)の相溶性を向上させる。これにより、接着性樹脂組成物に含まれる成分(A)~(D)の相溶性が向上し、目ヤニの発生を抑制できるので、ロングラン性に優れ、かつ、安定した接着性が得られる。
<成分(A)>
成分(A)は、メルトフローレート(MFR;JIS K7210,180℃、2.16kg荷重)が0.1~200g/10分である変性プロピレン系重合体である。成分(A)の変性プロピレン系重合体としては、ポリプロピレン(プロピレン系重合体)に、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレンが好適である。
成分(A)のMFRの下限は、基材層への濡れ性即ち接着性の観点から0.5g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましい。
成分(A)のMFRの上限は、成分(B-1)及び(B-2)から構成されるマトリックスへの分散性の観点から190g/10分以下であることが好ましく、180g/10分以下であることがより好ましい。
成分(A)の変性プロピレン系重合体のMFRは、後掲の原料として用いるプロピレン系重合体を用い、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト変性する際に、ラジカル発生剤の濃度や反応温度、反応時間を調整することで、上記範囲に制御することができる。
成分(A)の原料として用いるプロピレン系重合体(以下、「原料プロピレン系重合体」と称す場合がある。)は、プロピレン単位の含有率が50mol%を超える、即ちプロピレン以外の単量体単位の含有率が50mol%未満のものであれば限定されない。好ましくはプロピレン以外の単量体単位の含有率が40mol%以下、より好ましくは30mol%以下、更に好ましくは20mol%以下である。
原料プロピレン系重合体は、上記に該当するものであれば特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等のプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体であるプロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレンとその他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。本明細書において、プロピレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンはエチレンを含む広義の意味である。プロピレン以外のα-オレフィンは限定されないが、通常、エチレンと炭素数4~20、好ましくは4~10の二重結合を有する炭化水素が挙げられる。また、「その他のビニルモノマー」も限定されないが、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、スチレン誘導体が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」を意味する。
原料プロピレン系重合体は、上記の樹脂の1種であってもよく2種以上の混合物であってもよい。
なお、前記の各共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
これらの中でも、原料プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、これらのブレンド物が好ましい。
また、原料プロピレン系重合体の密度は、成分(A)の機械強度を優れたものとするために、0.870~0.910g/cmであることが好ましく、0.885~0.905g/cmあることがより好ましい。原料プロピレン系重合体の密度を上記数値範囲とすることで、成分(A)の機械強度を優れたものとすることで、接着性が高まる。
原料プロピレン系重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、通常0.01~50g/10分であり、好ましくは0.1~30g/10分であり、より好ましくは0.5~15g/10分である。MFRを上記下限値以上とすることで、単独での凝集力が強くなることをおさえ、他の成分との均一混合がしやすくなり、また、本発明の接着性樹脂組成物を製造する際のエネルギー負荷の増大を抑制することができる。また、MFRを上記上限値以下とすることで、本発明の接着性樹脂組成物の流動性を所望の範囲に制御でき、優れた高速成形性と接着性を維持できる。
原料プロピレン系重合体のDSCで測定した融点は耐熱性の観点から40℃以上であることが好ましく、55℃位以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましい。また、接着性の観点から170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましい。
原料プロピレン系重合体のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステルが例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミド等の誘導体であってもよい。これらの誘導体の中では、酸無水物が好ましい。
これらの中では、特にマレイン酸及び/又はその無水物が好適である。また、これらの化合物を複数併用してもよい。更には、ビニルトリメトキシシラン等のいわゆるビニルシラン類等を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とともに併用することもできる。
成分(A)の変性プロピレン系重合体を得るためのグラフト変性は公知の如何なる方法を用いてもよく、熱のみの反応でも得ることができるが、反応の際にラジカルを発生させる公知の有機過酸化物等をラジカル発生剤として添加してもよい。また、反応させる手法としては、例えば、溶媒中で反応させる溶液変性法や溶媒を使用しない溶融変性法が挙げられ、更には、懸濁分散反応法等その他の方法を用いてもよい。
溶融変性法としては、原料プロピレン系重合体と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、必要により後述するラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練して反応させる方法や、混練機中で溶融した原料プロピレン系重合体に、ラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用される。溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
溶液変性法としては、原料プロピレン系重合体を有機溶媒等に溶解して、これに後述するラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とを添加してグラフト共重合させる方法を使用することができる。有機溶媒としては特に限定されるものではなく、例えばアルキル基置換芳香族炭化水素やハロゲン化炭化水素を使用することができる。
グラフト変性する際の原料プロピレン系重合体と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との配合割合は限定されないが、原料プロピレン系重合体100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を通常0.01~30質量部、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部の割合で配合することが望ましい。
ラジカル発生剤としては公知のものが使用でき、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、ヒドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類等が挙げられる。これらのうちで、ジアルキルパーオキサイド類としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンやジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
これらのラジカル発生剤は、原料プロピレン系重合体の種類やMFR、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の種類及び反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。
ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、原料プロピレン系重合体100質量部に対し、通常0.001~20質量部、好ましくは0.005~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部、更に好ましくは0.01~3質量部である。
成分(A)の変性プロピレン系重合体における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性率(グラフト率)は限定されないが、通常0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、一方、通常2.0質量%以下、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは質量1.6%以下である。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性率が上記下限値以上であれば、本発明の接着性樹脂組成物における基材層への接着性が良好となる。また、変性率が上記上限値以下であれば熱安定性の低下、他の成分との相溶性の低下を抑制することができる。
ここで変性率(グラフト率)とは、予め核磁気共鳴測定法により標準サンプルとして変性ポリオレフィン中における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体成分の定量を行い、その定量値から作成された検量線を用いて、赤外分光測定装置で測定した際の、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体成分の含有率を意味する。例えば、厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中のカルボン酸及び/又はその誘導体特有の吸収、具体的には1900~1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。なお、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性は、100%が反応に供されずに、原料プロピレン系重合体と反応していない不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体も変性ポリプロピレン中に残留している場合があるが、本発明における変性率(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。
また、成分(A)の変性プロピレン系重合体は、未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を除く処理を行うことができる。この処理方法は限定されないが、具体的な例としては、装置下部より気体が吹き込める構造を有する貯蔵タンクに変性プロピレン系重合体を入れて、ヒーターあるいは熱媒油で装置を100℃程度に加熱し、装置下部より窒素等の不活性気体あるいは空気を吹き込み、6~24時間処理する方法がある。
成分(A)の変性プロピレン系重合体のDSCで測定した融点は耐熱性の観点から60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましい。また、接着性の観点から170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましい。
これら成分(A)の変性プロピレン系重合体は1種のみを用いてもよく、原料プロピレン系重合体の共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<成分(B-1)>
成分(B-1)のプロピレン系重合体は、DSCで測定した融点が120℃以上であるプロピレン系重合体である。ここで、成分(B-1)の融点が120℃以上であることにより、結晶性や機械強度が高くなり、冷却固化後の接着性樹脂組成物層の凝集力を高め、高い耐久接着強度を得ることができる。成分(B-1)のプロピレン系重合体の融点は、好ましくは125℃以上である。ただし、融点が過度に高いと、他の成分との均一混合性が低下するため、成分(B-1)のプロピレン系重合体の融点は175℃以下が好ましい。
成分(B-1)のプロピレン系重合体は、エチレン、1-ブテン等のα-オレフィン、α-オレフィン以外のその他の単量体単位を含有していてもよく、その他の単量体としては具体的には、前記成分(A)の原料プロピレン系重合体における「その他のビニルモノマー」が挙げられる。これらの中でも、成分(B)のプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、これらのブレンド物が好適に用いられる。
成分(B-1)のプロピレン系重合体が、プロピレン・α-オレフィン共重合体の場合、前記の融点を達成可能な材料として、結晶性が高い材料、具体的には当該共重合体におけるプロピレン単位の含有率がα-オレフィン含有率に比べて高いものが挙げられる。当該共重合体におけるプロピレンとα-オレフィンとの共重合比率は、プロピレン単位の含有率とα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率との合計を100mol%として、好ましくはプロピレン単位の含有率が60mol%以上、より好ましくは75mol%以上、更に好ましくは90mol%以上である。プロピレン単位の含有率が上記下限以上であれば、高い機械強度を持ち、接着性を維持できる。一方、プロピレン単位の含有率の上限については特に限定されないが、通常100mol%未満である。
成分(B-1)のプロピレン系重合体の密度は限定されないが、通常0.880g/cm以上であることが望ましい。プロピレン系重合体の密度が上記下限以上であれば、高温時の基材層に対する接着性、即ち耐熱性の低下を抑制できる。成分(B)のプロピレン系重合体の密度の上限は限定されないが、通常0.910g/cm以下である。
成分(B-1)のプロピレン系重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は、0.5~50g/10分が好ましい。成分(B-1)のプロピレン系重合体のMFRを上記上限以下とすることで、成分(B-1)の溶融弾性を保持でき、接着性樹脂組成物としたときに優れた成形性が得られる。一方、MFRを上記下限以上とすることで、他の成分との相溶性が良好となる。成分(B)のMFRはより好ましくは0.5~35g/10分である。
成分(B-1)は市販品として入手することができる。市販品としては、例えば、日本ポリプロ社製「Novatec(登録商標)」、「Wintec(登録商標)」、バゼル社製「Moplen(登録商標)」、「Metocene(登録商標)」、「Adflex(登録商標)」、三井化学社製「Tafmer(登録商標)」シリーズから該当するものを適宜選択してもよい。
これら成分(B-1)のプロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<成分(B-2)>
成分(B-2)のプロピレン系重合体は、DSCで測定した融点が120℃未満であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有率が70~93mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が30~7mol%であるプロピレン系共重合体である。成分(B-2)として融点が120℃未満のものを用いることで、高速成形時や熱量の低い条件においても接着性を高めやすくなる。
成分(B-2)のプロピレン系重合体の融点は、好ましくは100℃以下である。ただし、融点が過度に低いと、成分(B-1)との相溶性が低下するだけでなく、凝集力が低下するため、接着性樹脂組成物の接着性が低くなる。成分(B-2)のプロピレン系重合体の融点は40℃以上が好ましい。
成分(B-2)のプロピレン系重合体におけるプロピレンとエチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合比率は、プロピレンに基づく単量体単位の含有率とエチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体の含有率との合計を100mol%として、好ましくはプロピレン75~92mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン25~8mol%、より好ましくはプロピレン80~90mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン20~10mol%である。プロピレンに基づく単量体単位の割合が前記上限以下であれば、成分(B-2)の基材層との濡れ性及び親和性が高まり、即ち接着性樹脂組成物の接着性が高い。さらに、成分(C)との相溶性が高くなり、高い高速成形性やロングラン性が得られる。プロピレンに基づく単量体単位の割合が前記下限以上であれば、成分(B-1)との相溶性が高くなり、高い高速成形性やロングラン性が得られる。
成分(B-2)のプロピレン系重合体の原料として用いることができるプロピレン及びエチレン以外のα-オレフィンは限定されないが、例えば、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素数4~10程度のα-オレフィンが挙げられる。なお、成分(B-2)のプロピレン系重合体は、α-オレフィン以外のその他の単量体単位を含有していてもよく、その他の単量体としては具体的には、前記成分(A)の原料プロピレン系重合体における「その他のビニルモノマー」が挙げられる。
成分(B-2)のプロピレン系重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は、0.5~50g/10分が好ましい。成分(B-2)のプロピレン系重合体のMFRを上記上限以下とすることで、成分(B-2)の溶融弾性を保持でき、接着性樹脂組成物としたときに優れた成形性が得られる。一方、MFRを上記下限以上とすることで、他の成分との相溶性が良好となる。成分(B-2)のMFRはより好ましくは0.5~35g/10分である。
成分(B-2)のプロピレン系重合体の密度は限定されないが、通常0.895g/cm以下であることが望ましい。プロピレン系重合体の密度が上記下限以下であれば、基材層に対する接着性を高めることができる。成分(B-2)のプロピレン系重合体の密度の下限は限定されないが、通常0.860g/cm以下である。
成分(B-2)は市販品として入手することができる。市販品としては、例えば、ダウ社製「Versyfy(登録商標))」、エクソンモービル社製「Vistamaxx(登録商標)」から該当するものを適宜選択しても良い。
これら成分(B-2)のプロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<成分(C)>
成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンに基づく単量体単位の含有率が60~95mol%、エチレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が40~5mol%である。
成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体におけるエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合比率は、エチレンに基づく単量体単位の含有率とエチレン以外のα-オレフィンに基づく単量体の含有率との合計を100mol%として、好ましくはエチレン65~90mol%、エチレン以外のα-オレフィン35~10mol%である。エチレンに基づく単量体単位の割合が前記上限以下であれば、成分(C)の基材層との濡れ性及び親和性が高まり、即ち接着性樹脂組成物の接着性が高い。さらに、成分(B-2)との相溶性が高くなり、高い高速成形性やロングラン性が得られる。エチレンに基づく単量体単位の割合が前記下限以上であれば、成分(D)との相溶性が高くなり、高い高速成形性やロングラン性が得られる。
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の原料として用いることができるエチレン以外のα-オレフィンは限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素数3~10程度のα-オレフィンが挙げられる。なお、成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、α-オレフィン以外のその他の単量体単位を含有していてもよく、その他の単量体としては具体的には、前記成分(A)の原料プロピレン系重合体における「その他のビニルモノマー」が挙げられる。
成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は限定されないが、好ましくは0.90g/cm以下であり、0.890g/cm以下であることがより好ましい。成分(C)の密度が上記下限以下であれば、基材層に対する接着性を高めることができる。成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度の下限は限定されないが、通常0.855g/cm以上である。
成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFR(190℃、荷重2.16kg)は、0.5~50g/10分であることが好ましい。成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFRを上記上限以下とすることで、成分(C)の溶融弾性を保持でき、接着性樹脂組成物としたときに優れた成形性が得られる。一方、MFRを上記下限以上とすることで、他の成分との相溶性が良好となる。成分(C)のMFRはより好ましくは0.5~35g/10分である。
成分(C)は市販品として入手することができる。市販品としては、例えば、三井化学社製「Tafmer(登録商標)」シリーズ、DOW社製「Engage(登録商標)」シリーズ、LG化学社製「LUCENE(登録商標)」シリーズ、SK化学社製「SOLUMER(登録商標)」の中から該当するものを適宜選択しても良い。
これら成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
[成分(D)]
成分(D)の低密度ポリエチレンは、本発明の成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)と併用することで、接着性樹脂組成物に優れたネックイン性を付与する成分である。
成分(D)の低密度ポリエチレンとしては、接着性と強度のバランスに優れた高圧法低密度ポリエチレンが好ましく、その密度は、0.860~0.930g/cm、特に0.910~0.930g/cmであることが好ましい。
また、成分(D)の低密度ポリエチレンの物性については特に制限は無いが、MFR(190℃、荷重2.16kg)は、通常1g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、また、通常30g/10分以下、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下である。低密度ポリエチレンのMFRが前記下限値以上であれば、樹脂組成物中での分散性が良好となり、前記上限値以下であれば、加工特性の改良特性が得られ、何れの場合も高速成形性に優れる傾向にある。
成分(D)は市販品として入手することができる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製「Novatec(登録商標)」シリーズの中から該当するものを適宜選択して用いることができる。
これら成分(D)の低密度ポリエチレンは、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<成分(A)、成分(B-1)、成分(B-2)、成分(C)及び成分(D)の含有割合>
本発明の接着性樹脂組成物は、前記成分(B-1)、(B-2)及び(C)の合計100質量%中に対し、成分(B-1)を15~49質量%、成分(B-2)を15~49質量%、成分(C)を15~49質量%含むことが好ましい。
成分(B-1)の含有率を上記下限値以上とすることで、接着性樹脂組成物の結晶性や機械強度が高くなり、冷却固化後の接着性樹脂組成物層の凝集力を高め、高い耐久接着強度が発現される。成分(B-1)の含有率を上記上限値以下とすることで、高速成形時や熱量が低い条件での接着性が低下することを抑制することができる。
成分(B-2)及び成分(C)の含有率を上記下限値以上とすることで、基材層との濡れ性及び親和性に優れ、高速成形時や熱量の低い条件においても高い接着性が発現される。成分(B-2)及び成分(C)の含有率を上記上限値以下とすることで、凝集力の低下を抑制し、高い機械強度を保持することができる。
また、成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び成分(D)の合計100質量%中の成分(A)の含有率は、10~60質量%であることが好ましい。
成分(A)の含有率は、グラフト変性に用いた酸量の程度が反映されるが、上記上限値以下とすることで、吸湿により、水分と官能基が反応し、接着性が低下したり、吸湿した水分により発泡しやすくなる等の副作用を抑えやすい。成分(A)の含有率を上記下限値以上とすることで、官能基濃度を基材層との接着性を発揮するのに十分な範囲に制御しやすい。成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び成分(D)の合計100質量%中の成分(A)の含有率は、より好ましくは10~50質量%である。
さらに、前記成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して、成分(D)を1~30質量%含むことが好ましい。成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び成分(D)の合計100質量%中の成分(D)の含有率は、より好ましくは5~20質量%である。
成分(D)の含有率を上記下限値以上とすることで、ネックインに優れ、高速成形性性を維持しやすい傾向にある。また、成分(D)の含有率を上記上限値以下とすることで、他の成分の必要量を確保して、接着性、ロングラン性を高めることができる。
<接着性樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分の含有率>
本発明の接着性樹脂組成物は、樹脂成分の合計100質量%中に、不飽和カルボン酸成分を0.01質量%以上含むことが好ましい。
接着性樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分の含有率は、前述の成分(A)の変性プロピレン系重合体の変性率と同様に求めることができる。或いは、成分(A)の変性プロピレン系重合体の変性率(グラフト率)と接着性樹脂組成物中の成分(A)の含有割合とから算出することができる。
本発明の接着性樹脂組成物の上記不飽和カルボン酸成分の含有率を上記下限値以上とすることで、基材層への接着性を十分に得やすい。ただし、不飽和カルボン酸成分の含有率が多過ぎると、接着性樹脂組成物としての相溶性が低下するので、接着性と相溶性の両立の観点で、樹脂成分100質量%中の不飽和カルボン酸成分の含有率は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1.2質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
<その他の成分>
本発明の接着性樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)~(D)以外に添加剤や樹脂等(以下、その他の成分という場合がある)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
本発明の接着性樹脂組成物に使用可能な添加剤は限定されないが、具体的には、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等)、難燃剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、充填剤(無機及び/又は有機フィラー等)、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、相溶化剤、触媒残渣の中和剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料等)が挙げられる。これら添加剤を用いる場合のその含有率は限定されないが、接着性樹脂組成物に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下であることが望ましい。
本発明の接着性樹脂組成物には、その他の成分として粘着付与剤を用いることもできる。ここで粘着付与剤とは、常温で固体の非晶性樹脂が挙げられ、例えば、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂又はそれらの水素添加物が挙げられる。しかしながら、樹脂組成物中に粘着付与剤を多量に含有すると、成形時に発煙を生じたり、耐熱性を低下させる場合がある。このため粘着付与剤を用いる場合も、樹脂組成物中に30質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。本発明の接着性樹脂組成物は、粘着付与剤を用いない場合においても、低温加工性に優れ、積層体における接着層として用いた場合に基材層との接着性が良好であり、しかも高温や高湿の環境下においても基材層との接着性を良好に維持することができる。
前記石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、又はそれらの共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。石油樹脂の骨格としては、C5樹脂、C9樹脂、C5/C9共重合樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ビニル置換芳香族系化合物の重合体、オレフィン/ビニル置換芳香族化合物の共重合体、シクロペンタジエン系化合物/ビニル置換芳香族系化合物の共重合体、あるいはこれらの水素添加物等が挙げられる。
前記ロジン樹脂とはアビエチン酸を主成分とする天然樹脂であり、例えば、天然ロジン、天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジン、天然ロジンエステル、変性ロジンエステル、重合ロジンエステルが挙げられる。
前記テルペン樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の芳香族テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びそれらの水素添加物が挙げられる。
その他の成分として用いる樹脂は限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂を挙げることができる。
ただし、本発明の接着性樹脂組成物が前述の成分(A)~(D)を含むことによる本発明の効果を有効に得る上で、本発明の接着性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量%に含まれる成分(A)~(D)以外の樹脂の含有率は50質量%以下が好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
<接着性樹脂組成物の製造方法>
本発明の接着性樹脂組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。
混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分散した組成物を得る。
より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合することが好ましく、例えば、本発明の樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合してもよいし、各原料成分等の混合物をペレット化したり目的成形品を製造する際の成形時に溶融混合してもよい。
本発明の接着性樹脂組成物は、所定量の上記原料成分を種々公知の手法、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、混合後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する手法により調製することができる。溶融混練時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150~300℃の範囲で行う。
本発明の接着性樹脂組成物は、少なくとも前記の成分(A)~(D)を含有していれば、これを独立した原料として用いなくともよい。すなわち、既にこれら成分のうち2つ以上の成分を含有する樹脂組成物を原料とする場合や、既に樹脂組成物からなる成形品となったものを破砕して原料とすることもできる。また、予め樹脂組成物となっている原料が本発明を構成する全ての成分を有していない場合には、足りない成分のみを原料として補えばよい。
<接着性樹脂組成物の物性>
本発明の接着性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR;JIS K7210,230℃、2.16kg荷重)は、成形性の観点から0.1g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1g/10分以上であることが更に好ましい。一方、機械強度の観点から200g/10分以下であることが好ましく、100g/10分以下であることがより好ましく、50g/10分以下であることが更に好ましい。
また、本発明の接着性樹脂組成物の融点は、耐熱性の観点から、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。一方、接着性の観点から、通常、本発明の接着性樹脂組成物の融点は170℃以下である。
<接着性樹脂組成物の成形品>
本発明の接着性樹脂組成物から得られる成形品には限定は無く、種々の押出成形品や射出成形品とすることができる。また、本発明の接着性樹脂組成物を単独で使用し、単層シート等の成形品とすることもできるが、本発明の接着性樹脂組成物は、後述する種々の金属や樹脂との接着性に優れているので、これらを基材とした積層体の接着層として好適に使用される。
[積層体]
本発明の接着性樹脂組成物を用いた積層体としては、上述した本発明の接着性樹脂組成物からなる層と基材層とを少なくとも有し、本発明の接着性樹脂層の片面又は両面に基材層を接するように有するものが挙げられる。更に樹脂層が積層された積層体とすることができる。
また、基材層、接着性樹脂層、樹脂層の順で積層された積層体とすることもできる。この積層体は基材層、接着性樹脂層、樹脂層の順で積層されていれば、これら3層以外の層構成を含む3層以上の積層体であってもよい。積層体としては、積層シート、積層フィルム等が挙げられる。ここで、「シート」と「フィルム」は何れも面状の成形体を意味し、同義である。
本発明の積層体の基材層を構成する材料は限定されないが、具体的には、金属や樹脂のフィルム又はシートが挙げられる。また、本発明の接着性樹脂組成物からなる層と基材層との層構成は限定されないが、これらの層が隣接している場合が好ましい。
基材層が金属フィルム又はシートである場合、該金属フィルム又はシートを構成する金属は限定されないが、具体的には、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼、コバルト、鉄、亜鉛、鉛、チタン、炭素鋼又はそれらの合金である。中でもアルミニウム、ニッケル、銅又はそれらの合金が好適に用いられる。
基材層が樹脂フィルム又はシートである場合、該樹脂フィルム又はシートを構成する樹脂は限定されないが、具体的には、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含むオレフィン系ポリマーやオレフィン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6・66、ポリアミド12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂やポリエステル系エラストマー、スチレン系樹脂やスチレン系エラストマー、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
これらの基材層は、2種以上が積層されていてもよい。
基材層の形態は、フィルムやシートに限定されず、織布、不織布のような形状であってもよい。また、基材層は、単層構造であっても複層構造であってもよい。複層構造の基材の作成方法としては、特に限定されるものではなく、共押フィルム法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法等が挙げられる。
樹脂層を構成する樹脂は限定されず、具体的には、本発明における成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)、(D)や、前記した本発明の樹脂組成物におけるその他の成分として挙げた樹脂が挙げられるが、本発明の樹脂組成物との共押出性に優れる観点からオレフィン系重合体であることが好ましく、とりわけ、プロピレン単位を主成分とするプロピレン系重合体が好ましい。ここでプロピレン単位を主成分とするプロピレン系重合体とは、プロピレン系重合体を構成する単量体のうちで、質量基準で、プロピレン単位を最も多く含有することを意味する。
本発明の積層体には、本発明の接着性樹脂組成物からなる層、基材層、樹脂からなる層以外に、任意の層を設けることができる。
本発明の積層体を製造する方法としては、公知の種々の方法を採用することができるが、特に、ラミネート成形が好適である。ラミネート加工は、予め製造した基材の表面上に、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する押出ラミネート方法と、予めTダイにより製膜・固化した膜を熱圧着する熱ラミネート方法がある。通常、基材の片側表面にラミネート加工するが、必要に応じて、両側にラミネートすることもできる。
ラミネート成形は、1種の基材層を予めフィルムとして用いるだけでなく、2種以上のフィルムを用いてもよい。その場合、同時貼り合せによって成形してもよいが、予め、一方の基材を用いてラミネート成形しておき、これに他方の基材を貼り合せてもよい。また、ラミネートする樹脂は、1種のみを用いる場合に限らず、2種以上を共押出してもよい。
本発明の積層体を延伸して得る場合、上記の通り延伸した後には、熱固定を行ってもよいし、熱固定をせずに製品としてもよい。熱固定を行わない場合は、その後に積層体を加熱することによって応力が開放され、収縮する性質を持つためシュリンクフィルムとして用いることができる。
このようにして製造された積層体には、更に、金属蒸着加工、コロナ放電処理加工、印刷加工等の各種フィルム加工処理を施すことができる。
本発明の積層体において、本発明の接着性樹脂組成物からなる層の厚みに特に制限はなく、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、通常0.1~200μmであり、0.3~100μmであることが好ましく、0.5~50μmであることがより好ましい。
本発明の接着性樹脂組成物は、優れた高速成形性とロングラン性、金属や樹脂等に対して高い接着性を示すため、これを用いた本発明の積層体は、自動車、航空機などの輸送機器、家電機器、エレクトロニクス分野、ロボット分野のボディ素材、フレーム素材、筒体素材、包装体素材等において、好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[測定・評価方法]
以下の実施例及び比較例で用いた原材料、得られた接着性樹脂組成物及び積層体の測定・評価方法は以下の通りである。
(1)グラフト率
変性プロピレン系重合体または接着性樹脂組成物のペレットをプレス成形(230℃)により、厚さ100μmのフィルム状に成形したサンプルを使用し、FT-IR装置(JASCO FT/IR610、日本分光株式会社製)にて、前述の方法で赤外吸収スペクトル法によるグラフト率を算出した。接着性樹脂組成物のグラフト率とは、接着性樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分の含有率に相当する。
(2)密度、MFR、融点
密度、MFR、融点は、前述の方法で測定した。また、接着性樹脂組成物及び比較例において複数の樹脂や複数の変性プロピレン系重合体を含有する場合は、それらの複合物の融点又はMFRを測定した。
以下の(3)~(6)の評価では、各例で得られた接着性樹脂組成物のペレットを用いて、下記押出ラミネート成形して得られた積層フィルムを用いた。
<押出ラミネート成形>
2台の口径40mmφの押出機A,Bが装着されたTダイスを有する押出ラミネート装置(住友重機械モダン社製)を用い、得られた接着性樹脂組成物を押出機Aに、プロピレン系重合体(サンアロマー社製 PH943B)を押出機Bにそれぞれ供給し、基材層として設けた後述の金属アルミフィルム側に押出機Aから接着性樹脂組成物の層が配されるよう、分配ブロックをセットし、2層で押出される樹脂の温度が共に255~270℃になるように設定し、エアギャップ120mm、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅360mm、ダイリップ開度0.7mm、引き取り加工速度50m/min.で、接着性樹脂組成物の層の被覆厚みが20μm、プロピレン系重合体の層の被覆厚みが20μmとなるように、押出量を調整して押出し製膜し、基材層、接着性樹脂組成物の層、プロプレン系重合体の層がこの順で積層された積層フィルムを得た。また、同押出量で引き取り加工速度100m/min.に設定し、接着性樹脂組成物の層の被覆厚みが10μm、プロピレン系重合体の層の被覆厚みが10μmとなるように製膜し、基材層、接着性樹脂組成物の層、プロプレン系重合体の層がこの順で積層された積層フィルムを得た。
基材層としては、金属アルミフィルムとして、アルペット12-50(パナック社製 厚み:62μm)(以下「金属(アルミ)」という)を、アルミ面が上記接着性樹脂組成物の層と接触するように用いた。
(3)金属アルミとの接着強度
上記で得られた積層フィルムを押出方向(MD方向)に幅15mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃の恒温雰囲気下にて、速度300mm/min.でTピール剥離試験を行い、接着強度を測定した。ここで、接着強度は、金属(アルミ)と接着性樹脂組成物の層との界面における接着強度である。接着強度が高いものが良好であるが、2N/min.以上を実用に足る強度とした。
(4)高速成形性(ネックイン)
上記押出ラミネート成形の条件において、得られた基材層/接着性樹脂組成物の層/プロプレン系重合体の積層フィルムのうち、接着性樹脂組成物の層/プロプレン系重合体を含む樹脂層の幅を測定し、ダイス幅(有効幅;360mm)と樹脂層の幅との差、即ち有効幅から樹脂層の幅を差し引いた数値をネックインの数値とした。ネックインは小さいものが良好であり、150mm以下のものを合格とした。
(5)高速成形性(ドローダウン性)
上記押出ラミネート成形の条件において、引き取り加工速度を50m/min.から上昇させ、溶融樹脂膜の延伸切れ又は樹脂膜の端部が不安定に流動する状態が発生する限界の速度を確認した。限界速度が高いものが良好で、100m/min.以上のものを合格とした。
(6)ロングラン性
上記押出ラミネート成形の条件に対し、2層で押出される樹脂の温度が共に295~305℃、押出機A/Bのスクリュー回転数を共に150rpmになるように設定し、ダイス幅360mm、ダイリップ開度0.7mmで、接着性樹脂組成物の層とプロピレン系重合体の層を構成する樹脂の溶融物を30分間連続的に押出した後、接着性樹脂組成物の層側のダイリップを観察した。30分後にダイリップ表面に目ヤニ及びヤケ等の付着物が発生しているものを×、発生しなかったものを〇とした。
[原材料]
以下の実施例及び比較例において、接着性樹脂組成物の製造に用いた原材料は以下の通りである。
<成分(A):変性プロピレン系重合体>
・(A)-1
変性プロピレン系重合体(A)-1として、市販のプロピレン・エチレン重合体[密度:0.87g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):2.0g/10分、融点:59℃、プロピレン単位含有率:84mol%、エチレン単位含有率:16mol%]を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系重合体[変性率(グラフト率):1.1質量%、MFR(180℃、荷重2.16kg):11g/10分、融点:66℃]を用いた。
・(A)-2
変性プロピレン系重合体(A)-2として、市販のプロピレン・エチレン共重合体[密度:0.89g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):6.0g/10分)、融点:128℃、プロピレン単位含有率:93mol%、エチレン単位含有率:7mol%]を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系重合体[変性率(グラフト率):0.9質量%、MFR(180℃、荷重2.16kg):160.0g/10分)、融点:128℃]を用いた。
・(A)-3
変性プロピレン系重合体(A)-3として、市販のプロピレン単独重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):0.6g/10分)、融点:161℃]を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系重合体[変性率(グラフト率):1.3質量%、MFR(180℃、荷重2.16kg):192.0g/10分)、融点:157℃]を用いた。
・(A)’-4
比較の変性プロピレン系重合体(A)’-4として、市販のプロピレン単独重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):10.0g/10分)、融点:165℃]を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系重合体[変性率(グラフト率):2.2質量%、MFR(180℃、荷重2.16kg):283.0g/10分)、融点:164℃]を用いた。
・(A)’-5
比較の変性プロピレン系重合体(A)’-5として、市販のプロピレン単独重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):10.0g/10分)、融点:165℃]を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系重合体[変性率(グラフト率):2.5質量%、MFR(180℃、荷重2.16kg):450.0g/10分)、融点:153℃]を用いた。
<成分(B-1):融点120℃以上のプロピレン系重合体>
・(B-1)-1
プロピレン系重合体(B-1)-1として、プロピレン・エチレンランダム共重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):30.0g/10分、融点:142℃]を用いた。
・(B-1)-2
プロピレン系重合体(B-1)-2として、プロピレン・エチレンランダム共重合体[バゼル社製:Adflex(登録商標) V109F、密度:0.88g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):12.0g/10分、融点:143℃]を用いた。
・(B-1)-3
プロピレン系重合体(B-1)-3として、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体[三井化学社製:Tafmer(登録商標) PN2070、密度:0.87g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):7.0g/10分、融点:160℃]を用いた。
・(B-1)-4
プロピレン系重合体(B-1)-4として、プロピレン・エチレンランダム共重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):7.0g/10分、融点:135℃]を用いた。
・(B-1)-5
プロピレン系重合体B-1-5として、プロピレン・エチレンブロック共重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):3.5g/10分、融点:165℃]を用いた。
・(B-1)-6
プロピレン系重合体(B-1)-6として、プロピレン単独重合体[日本ポリプロ社製:Novatec(登録商標) MA3Q、密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):10.0g/10分、融点:160℃]を用いた。
<成分(B-2):融点120℃未満のプロピレン系重合体>
・(B-2)-1
プロピレン系重合体(B-2)-1として、プロピレン・エチレンランダム共重合体[密度:0.87g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):8.0g/10分、融点:59℃、プロピレン単位含有率:84mol%、エチレン単位含有率:16mol%]を用いた。
・(B-2)-2
プロピレン系重合体(B-2)-2として、プロピレン・エチレンランダム共重合体[密度:0.87g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):2.0g/10分、融点:67℃、プロピレン単位含有率:84mol%、エチレン単位含有率:16mol%]を用いた。
・(B-2)’-3
比較のプロピレン系重合体(B-2)’-3として、プロピレン・エチレンランダム共重合体[密度:0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):2.0g/10分、融点:125℃、プロピレン単位含有率:96mol%、エチレン単位含有率:4mol%]を用いた。
<成分(C):エチレン・α-オレフィン共重合体>
・(C)-1
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)-1として、エチレン・オクテンランダム共重合体[密度:0.88g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):18.0g/10分、融点:76℃、エチレン単位含有率:89mol%、オクテン単位含有率:11mol%]を用いた。
・(C)-2
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)-2として、エチレン・1-ブテンランダム共重合体[密度:0.89g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):2.0g/10分、融点:76℃、エチレン単位含有率:82mol%、1-ブテン単位含有率:18mol%]を用いた。
・(C)-3
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)-3として、エチレン・1-ブテンランダム共重合体[三井化学社製:Tafmer(登録商標) A4085S、密度:0.88g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):3.6g/10分、融点:67℃、エチレン単位含有率:90mol%、1-ブテン単位含有率:10mol%]を用いた。
・(C)’-4
比較のエチレン・α-オレフィン共重合体(C)’-4として、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体[密度:0.92g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):2.0g/10分、融点:124℃、エチレン単位含有率:99mol%、1-ヘキセン単位含有率:1mol%]を用いた。
<成分(D):低密度ポリエチレン>
・(D)-1
低密度ポリエチレンとして、高圧法低密度エチレン単独共重合体[密度:0.92g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg):4.0g/10分、融点:105℃、]を用いた。
<添加剤>
・(X)-1:BASF社製 リン系酸化防止剤「IRGAFOS(登録商標)168」
・(X)-2:BASF社製 フェノール系酸化防止剤「IRGANOX(登録商標)1010」
・(Y)-1:協和化学工業社製 ハイドロタルサイト類化合物「DHT4A」
[実施例1]
<接着性樹脂組成物の製造>
表1に示す様に(A)-1を30質量部、(B-1)-1を20質量部、(B-2)-1を20質量部、(C)-1を20質量部、(D)-1を10質量部、(X)-1を0.1質量部、(X)-2を0.1質量部、(Y)-1を0.15質量部の配合量にてドライブレンドして混合し、単軸押出機(IKG社製、PSM50-32(1V)、D=50mmφ、L/D=32)を用い、設定温度180~210℃、スクリュー回転数40~70rpm、押出量15~40kg/hで溶融混練し、ストランドカットにより、接着性樹脂組成物のペレットを得た。得られた接着性樹脂組成物のペレットを用いて、前記(1)~6)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
[比較例1、2]
表1に示す配合にした以外は実施例1と同様にして接着性樹脂組成物のペレットを得、。実施例1と同様に、前記(1)~(6)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
[実施例2~8、比較例3~12]
表2~4に示す配合にした以外は実施例1と同様にして接着性樹脂組成物のペレットを得、実施例1と同様に、前記(1)~(6)の評価を行った。それらの評価結果を表2~4に示す。
Figure 2023108919000001
Figure 2023108919000002
Figure 2023108919000003
Figure 2023108919000004
[評価結果]
表1~4より、本発明の接着性樹脂組成物の具体例である実施例1~8を用いて得られた接着性樹脂組成物の層を含む積層フィルムは、高速成形性およびロングラン性に優れ、かつアルミとの接着性にも優れることが分かる。これに対して、本発明の要件を満たさない比較例1-12の接着性樹脂組成物は、高速成形性、ロングラン性、アルミとの接着性のいずれかが劣る。

Claims (14)

  1. 下記の成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び(D)を含む接着性樹脂組成物。
    成分(A):メルトフローレート(MFR;JIS K7210,180℃、2.16kg荷重)が0.1~200g/10分である変性プロピレン系重合体
    成分(B-1):DSCで測定した融点が120℃以上であるプロピレン系重合体
    成分(B-2):DSCで測定した融点が120℃未満であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有率が70~93mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が30~7mol%であるプロピレン系重合体
    成分(C):エチレンに基づく単量体単位の含有率が60~95mol%、エチレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有率が40~5mol%であるエチレン・α-オレフィン共重合体
    成分(D):低密度ポリエチレン
  2. 前記成分(A)が下記の条件1と2を満足する変性プロピレン系重合体である、請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
    条件1:不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で変性した変性プロピレン系重合体であって、その変性率が0.1~2.0質量%
    条件2:DSCで測定した融点が60~170℃
  3. 成分(B-1)、(B-2)及び(C)の合計100質量%中に対し、成分(B-1)を15~49質量%、成分(B-2)を15~49質量%、成分(C)を15~49質量%含む、請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物。
  4. 成分(A)の含有率が、成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び(D)の合計100質量%に対して、10~60質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物。
  5. 成分(B-1)のプロピレン系重合体のMFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重)が0.5~50g/10分である、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物。
  6. 成分(B-2)のプロピレン系重合体のMFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重)が0.5~50g/10分である、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物。
  7. 成分(C)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重)が0.5~50g/10分であり、密度(JIS K7112)が0.90g/cm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物。
  8. 成分(D)が高圧法低密度ポリエチレンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物。
  9. 前記成分(A)、(B-1)、(B-2)、(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して、成分(D)を1~30質量%含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物。
  10. 基材層と請求項1~9のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物からなる層と樹脂層とを有する積層体。
  11. 前記基材層、前記接着性樹脂組成物層、及び前記樹脂層がこの順で積層されている、請求項10の積層体。
  12. 前記基材層がフィルム状の金属または樹脂である、請求項10又は11に記載の積層体。
  13. 前記基材層がフィルム状の金属であり、該金属がアルミニウム、ニッケル又は銅、或いはそれらの合金である、請求項12に記載の積層体。
  14. 前記樹脂層がプロピレン系重合体層である、請求項10~13のいずれか一項に記載の積層体。
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WO2024116962A1 (ja) * 2022-11-28 2024-06-06 株式会社プライムポリマー 樹脂組成物、積層体、および包装材料

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