JP2023079117A - 積層フィルム、コートフィルム及び粘着ラベル - Google Patents

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康弘 野田
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Abstract

【課題】二酸化炭素ガスの排出量が少なく、高い白色度を有し、かつ剥離の際に被着体に残る粘着剤が少ない粘着ラベルと、これに用いる積層フィルム及びコートフィルムを提供する。【解決手段】積層フィルムは、基材層と、当該基材層の一方の面上に第1表面層とを備える。この積層フィルムは、オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する多孔質延伸フィルムを含む。オレフィン系樹脂は、プロピレン系樹脂を含み、当該プロピレン系樹脂が、バイオマス由来のプロピレン系樹脂を含む。また第1表面層は40%以下の空孔率を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、積層フィルム、コートフィルム及び粘着ラベルに関する。
従来、ラベル、包装紙、ポスター、カレンダー、カタログ、又は広告等の印刷用紙として、樹脂フィルムが幅広く利用されている。特に、樹脂フィルムは、耐水性に優れることから、屋外でも使用可能なラベルとしての需要が高い。
ラベルは、通常、情報性又は意匠性等のために、樹脂フィルムの一方の面上に印刷層が設けられる。さらに樹脂フィルムの他方の面に粘着剤層が設けられ、被着体に貼り付けられる粘着ラベルとして使用されることもある。特許文献1には、このような粘着ラベルの基材として使用可能な樹脂フィルムが開示されている。
一方で、地球温暖化対策のため、石油依存から脱却し、二酸化炭素ガスの排出量が少ない環境が求められている。特許文献2には、石油由来のポリオレフィンにバイオマス由来のポリオレフィンを併用した樹脂フィルムが提案されている。
特開平6-102826号公報 特開2012-251006号公報
粘着ラベルを被着体から剥がしたとき、粘着剤が被着体に残ってしまうと、汚れの原因となりやすい。また粘着ラベルは、印刷内容をより明瞭に表示できるように高い白色度が求められている。粘着ラベルに用いられる樹脂フィルムについて、製造過程における二酸化炭素ガスの排出量を、使用する材料又はフィルム構造の改良によってさらに減らせる余地がある。
本発明は、二酸化炭素ガスの排出量が少なく、高い白色度を有し、かつ剥離の際に被着体に残る粘着剤が少ない粘着ラベルと、これに用いる積層フィルム及びコートフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、バイオマス由来の樹脂成分を含有する多孔質延伸フィルムを用い、かつ表層の空孔率を比較的小さく調整すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]基材層と、前記基材層の一方の面上に第1表面層とを備える積層フィルムであって、
オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する多孔質延伸フィルムを含み、
前記オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂を含み、
前記プロピレン系樹脂が、バイオマス由来のプロピレン系樹脂を含み、
前記第1表面層が、40%以下の空孔率を有する
積層フィルム。
[2]前記プロピレン系樹脂が、石油由来のプロピレン系樹脂をさらに含む
上記[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記オレフィン系樹脂が、エチレン系樹脂をさらに含む
上記[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記エチレン系樹脂が、バイオマス由来のエチレン系樹脂を含む
上記[3]に記載の積層フィルム。
[5]前記エチレン系樹脂が、石油由来のエチレン系樹脂を含む
上記[3]又は[4]に記載の積層フィルム。
[6]前記第1表面層の空孔率が、0.1~30%である
上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]前記基材層の他方の面上に第2表面層を備え、
前記第2表面層が、30~55%の空孔率を有する
上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルムと、
前記積層フィルムの少なくとも一方の面上にコート層と、を備え、
前記コート層が、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む
コートフィルム。
[9]上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルムと、
前記積層フィルムの一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備える
粘着ラベル。
本発明によれば、二酸化炭素ガスの排出量が少なく、高い白色度を有し、かつ剥離の際に被着体に残る粘着剤が少ない粘着ラベルと、これに用いる積層フィルム及びコートフィルムを提供することができる。
本発明の粘着ラベルの一例を示す断面図である。
以下、本発明の積層フィルム、コートフィルム及び粘着ラベルについて詳細に説明する。以下の説明は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
(積層フィルム)
本発明の積層フィルムは、基材層と、当該基材層の一方の面上に第1表面層とを備える。本発明の積層フィルムは、オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する樹脂フィルムの延伸によって、多孔質化された延伸フィルムを含む。多孔質延伸フィルムは、少なくとも1軸方向に延伸されているが、フィルムの空孔率及び機械的強度を高める観点から、2軸方向に延伸された延伸フィルムであることがより好ましい。
多孔質延伸フィルムでは、無機フィラーを核として形成された多数の空孔により積層フィルムの白色度が高まっている。よって、印刷内容の明瞭に表示可能な積層フィルムを提供できる。また多孔質化により、積層フィルム中の樹脂成分が、二酸化炭素排出係数がゼロの空気又は樹脂よりも二酸化炭素排出係数が小さい無機フィラーに置き換えられるため、空孔がない樹脂フィルムと比べて単位体積あたりの樹脂成分の使用量が少ない。樹脂成分はその製造過程において少なからず二酸化炭素ガスが排出されるが、使用量を削減することによって二酸化炭素ガスの排出量も減らすことが可能である。
また本発明の積層フィルムにおいて、上記オレフィン系樹脂はプロピレン系樹脂を含む。プロピレン系樹脂は、エチレン系樹脂等に比べて硬質であり、延伸成形によってより多くの空孔を形成しやすい特徴を有する。このような特徴を有するプロピレン系樹脂により延伸フィルムの空孔率を高めて、二酸化炭素ガスの排出量を減らしやすくすることが可能となる。
さらに、上記プロピレン系樹脂はバイオマス由来のプロピレン系樹脂を含む。本発明においてバイオマスとは、バイオマス由来の資源を意味する。バイオマスは、原料である植物そのものから、同植物を原料として得られる油及び糖まで含み得る。原料として使用される植物は育成段階で二酸化炭素ガスを吸収しているため、そのような二酸化炭素ガスの吸収がない石油由来のプロピレン系樹脂と比べて、バイオマス由来のプロピレン系樹脂の製造過程における二酸化炭素ガス排出係数は小さい。よって、積層フィルムの単位体積あたりの二酸化炭素ガスの排出量を減らすことができ、環境負荷をさらに低減できる。
このように、本発明によれば、製造過程において二酸化炭素ガスが排出される樹脂成分の使用量が削減されており、当該樹脂成分のなかでも二酸化炭素ガスの排出係数が比較的高い石油由来の樹脂成分の使用量が少ない。二酸化炭素ガスの排出量を効果的に減らすことができ、環境負荷が低い積層フィルムを提供することができる。
また、本発明の積層フィルムにおいて、第1表面層の空孔率は40%以下である。このような第1表面層上に粘着剤層を形成し、本発明の積層フィルムを粘着ラベルの基材として用いたとき、第1表面層と粘着剤層との密着性が向上する。粘着ラベルを被着体に貼り付けた後、剥がしても、粘着剤層が第1表面層と密着した状態が維持されやすく、被着体に残る粘着剤層を減らすことができる。よって、剥がしやすく、剥がした後が汚れにくい粘着ラベルを提供できる。
なお、積層フィルムは、上述したバイオマス由来のプロピレン系樹脂とフィラーとを含有する多孔質延伸フィルムを1層以上含むことができる。環境負荷の削減の観点からは、そのような多孔質延伸フィルムである層が多い方が好ましく、全層がそのよう多孔質延伸フィルムであることがより好ましい。
以下、各層について説明する。
(基材層)
基材層は、積層フィルムにコシ又は剛度を付与し、印刷時の搬送性等を向上させることができる。白色度の観点から、基材層は、オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する多孔質延伸フィルムであることが好ましく、環境負荷の低減の観点から、オレフィン系樹脂としてバイオマス由来のプロピレン系樹脂を含有することが好ましい。。
<オレフィン系樹脂>
オレフィン系樹脂としては、例えばプロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、又はポリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。なかでも、プロピレン系樹脂は機械的強度に優れるため、オレフィン系樹脂はプロピレン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。本明細書において、主成分とは層中の含有量が50質量%以上の成分をいう。
<プロピレン系樹脂>
プロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンを単独重合させたアイソタクティックホモポリプロピレン樹脂、シンジオタクティックホモポリプロピレン樹脂等のプロピレン単独重合体;プロピレンを主体とし、エチレンと共重合したプロピレン・エチレン共重合体;プロピレンを主体とし、炭素数4以上のアルキレンである1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン等を共重合させたプロピレン・α-オレフィン共重合体等;プロピレンを主体としたプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。プロピレン共重合体は、2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもリアクターブレンド共重合体でもよい。具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン・3-メチル-1-ペンテン共重合体、又はプロピレン・エチレン・3-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられる。これらのなかでも、フィルムの延伸成形性の観点から、プロピレンを単独重合させた結晶性のホモポリプロピレン樹脂が好ましく、アイソタクティックホモポリプロピレン樹脂がより好ましい。
またプロピレン系樹脂としては、その製法の違いにより、チーグラー・ナッタ系重合触媒によるポリプロピレン、メタロセン系重合触媒(シングルサイト重合触媒)によるポリプロピレン、リアクターTPOとも呼ばれるオレフィン系熱可塑性エラストマー、又は高溶融張力ポリプロピレン等が挙げられる。
プロピレン系樹脂のJIS K7210:2014(温度230℃、2.16kg荷重)に準拠するメルトフローレート(MFR)は、多孔質延伸フィルムの機械的強度を向上させる観点から、0.2~20g/10分であることが好ましく、1~10g/10分であることがより好ましく、2~6g/10分であることがさらに好ましい。
<<バイオマス由来のプロピレン系樹脂>>
本発明において、多孔質延伸フィルムには、上記プロピレン系樹脂の1種以上を用いることができるが、その一部又は全部がバイオマス由来のプロピレン系樹脂である。
バイオマス由来のプロピレン系樹脂は、原料がバイオマス由来であるプロピレンをモノマーとして用いたプロピレン重合体である。モノマーとして使用されるプロピレンの一部又は全部がバイオマス由来であってもよいし、コモノマーとして使用されるエチレン又はα-オレフィンの一部又は全部がバイオマス由来であってもよい。
バイオマス度向上の観点からは、バイオマス由来のプロピレン系樹脂は、バイオマス由来のプロピレンを含むプロピレン単独重合体を含むことが好ましく、バイオマス由来のプロピレンからなる単独重合体を含むことがより好ましい。
プロピレン系樹脂の原料となるバイオマス由来のプロピレンは、バイオマス由来のエチレンと、同当量のブテンから、メタセシス反応によって、製造することができる。
原料となるバイオマス由来のプロピレンは、例えばバイオマスの発酵により生成した糖から、解糖系のプロセスを含む発酵プロセスによってイソプロパノールを生成し、次いで同イソプロパノールを脱水反応することによって、製造することができる。発酵により生成した糖としては、例えばマルトース、スクロース、グルコース及びフルクトースが挙げられる。発酵プロセスでは、これら糖にクロストリジウム属細菌又はクロストリジウム属細菌由来の遺伝子を導入した大腸菌や酵母等が作用する。
バイオマスとしては、例えば菜種、大豆、油ヤシの果実、油ヤシの種子、ひまわりの種子、綿実(綿の種子)、落花生、オリーブの果実、トウモロコシの胚芽、ココナツの胚乳、胡麻、荏胡麻、亜麻仁、ひまし、米ぬか、紅花の種子、又はぶどうの種子等の植物又は植物から搾油して得られる植物油等が挙げられる。
バイオマス由来のプロピレン系樹脂の市販品としては、例えばボレアリス社製のHC101BF(MFR:3.2g/10分)、HC110BF(MFR:3.2g/10分)、Bormed HE125MO(MFR:12g/10分)、HF840MO(MFR:19g/10分)、HG430MO(MFR:25g/10分)、HJ325MO(MFR:50g/10分)、又はロンデルバセル社製のCirculen HP456J(MFR:3.4g/10分)、Circulen HP483R(MFR:27g/10分)、Circulen HP500N(MFR:12g/10分)、Circulen HP501H(MFR:2.1g/10分)、Circulen EP310M HP(MFR:7.5g/10分)、Circulen EP540P(MFR:15g/10分)等が使用可能である。
<<石油由来のプロピレン系樹脂>>
上記バイオマス由来のプロピレン系樹脂とともに、石油由来のプロピレン系樹脂を使用することもできる。石油由来のプロピレン系樹脂は、原料が石油であるプロピレンをモノマーとして用いて得られたプロピレン重合体である。石油由来のプロピレン系樹脂は、安価で入手が容易である。またこれらは重合条件を調整して溶融粘度を高めたものや化学的修飾を施したもの等があり、品種が豊富である。よって、これらをバイオマス由来のプロピレン系樹脂と併用すると、多孔質延伸フィルムの成形性及び品質を調整しやすい。
<<バイオマス由来のプロピレン系樹脂と石油由来のプロピレン系樹脂の質量比>>
バイオマス由来のプロピレン系樹脂と石油由来のプロピレン系樹脂の質量比(バイオマス由来のプロピレン系樹脂:石油由来のプロピレン系樹脂)は、1:99~99:1であることが好ましい。バイオマス度を増加させて二酸化炭素ガスの排出量を減らす観点からは、バイオマス由来のプロピレン系樹脂の含有割合が多い方が好ましい。一方、バイオマス由来は石油由来に比べて高価であるため、製造コスト削減の観点からは石油由来のプロピレン系樹脂の含有割合が多い方が好ましい。したがって、上記質量比は、より好ましくは5:95~70:30であり、さらに好ましくは10:90~40:60である。
<エチレン系樹脂>
多孔質延伸フィルムに使用するオレフィン系樹脂は、さらにエチレン系樹脂を含むことが好ましい。プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂の併用により、フィルムの延伸成形性を向上させて、延伸ムラが少なく外観が良好なフィルムが得られやすい。また、プロピレン系樹脂よりも溶融しやすいエチレン系樹脂を併用することにより、溶融状態で延伸しやすくなる。フィブリル状の空孔の形成が容易になり、空孔形成性を向上させて、多孔質延伸フィルムの製造コストの低減が可能である。
エチレン系樹脂を併用する場合、多孔質延伸フィルムの総樹脂量におけるプロピレン系樹脂量を過半量とすると、プロピレン系樹脂を海、エチレン系樹脂を島とする海島構造が形成されやすい。樹脂組成物の延伸時に加わる応力が、樹脂と無機フィラーとの界面でのせん断に加えて、海島構造の界面でのせん断を生じさせることで、より弱い力で多数の空孔を形成することが可能となる。
エチレン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂及び線状低密度ポリエチレン樹脂等が挙げられる。これらのなかでもフィルム成形性の観点から、密度が0.950~0.965g/cmの高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
プロピレン系樹脂にエチレン系樹脂を併用する場合、均一混練を容易にする観点、又は溶融混練時に緻密な相分離構造を形成しやすい観点から、プロピレン系樹脂とメルトフローレートが近いエチレン系樹脂が選択されることが好ましい。そのようなエチレン系樹脂のJIS K7210:2014(温度190℃、2.16kg荷重)に準拠するメルトフローレート(MFR)は、0.2~20g/10分であることが好ましく、1~10g/10分であることが好ましく、2~8g/10分であることがより好ましい。
<<バイオマス由来のエチレン系樹脂>>
本発明において多孔質延伸フィルムに含まれるエチレン系樹脂は、石油由来及びバイオマス由来のいずれであってもよいが、環境負荷をさらに減らす観点からはバイオマス由来のエチレン系樹脂を含むことが好ましい。バイオマス由来のエチレン系樹脂は、原料がバイオマス由来であるエチレンをモノマーとして用いたエチレン重合体である。
バイオマス由来のエチレンは、例えば上述したバイオマスの発酵により生成したエタノールの脱水により製造することができる。バイオマス由来のエチレン系樹脂のコモノマーとして使用されるα-オレフィンは、バイオマス由来のα-オレフィンでもよく、石油由来のα-オレフィンでもよい。
バイオマス由来の高密度ポリエチレン樹脂としては、例えばBraskem(ブラスケム)社製のSHC7260(MFR;7.2g/10分、密度;0.959g/cm)、SHD7255LSL(MFR;4.5g/10分、密度;0.954g/cm)、SGE7252(MFR;2.2g/10分、密度;0.953g/cm)等の市販品も使用できる。上記Braskem社の製品のMFRは、JIS K7210:2014に準拠する測定値であり、密度はASTM D1505/D 792に準拠する測定値である。
<<石油由来のエチレン系樹脂>>
石油由来のエチレン系樹脂は、原料が石油であるエチレンをモノマーとして用いたエチレン重合体である。石油由来のエチレン系樹脂は入手が容易であり、品種が豊富であることから、多孔質延伸フィルムの成形性及び品質を調整しやすく、好ましい。
石油由来及びバイオマス由来のエチレン系樹脂は、原料として石油を用いるかバイオマスを用いるかが異なること以外は同様にして製造することができる。製造には、一般的に重合反応の触媒としてチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等が用いられる。
<<プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂の量比>>
多孔質延伸フィルムを構成する樹脂成分におけるプロピレン系樹脂とエチレン系樹脂の質量比(バイオマス由来及び石油由来のプロピレン系樹脂の総量:バイオマス由来及び石油由来のエチレン系樹脂の総量)は、空孔の形成性の観点から、1:99~99:1であることが好ましく、10:90~97:3であることがより好ましく、65:35~95:5であることがさらに好ましい。
<<バイオマス由来の樹脂成分と石油由来の樹脂成分の量比>>
上述のように、バイオマス由来のプロピレン系樹脂には、石油由来のプロピレン系樹脂、バイオマス由来及び石油由来のエチレン系樹脂が併用され得るが、これらのうちバイオマス由来のプロピレン系樹脂及びエチレン系樹脂を合わせた樹脂成分の合計量と、石油由来のプロピレン系樹脂及びエチレン系樹脂を合わせた樹脂成分の合計量との質量比が、1:99~99:1であることが好ましい。同質量比におけるバイオマス由来の樹脂成分の含有割合の下限値は、5:95であることがより好ましく、同質量比におけるバイオマス由来の樹脂成分の含有割合の上限値は45:55であることがより好ましい。この範囲内であれば、バイオマス由来の樹脂成分の質量比を増やして、バイオマス度を高め、二酸化炭素ガスの排出量を効果的に減らすことができる。
バイオマス度とコストの両立の観点からは、多孔質延伸フィルムに使用するオレフィン系樹脂は、バイオマス由来のプロピレン系樹脂5~90質量部、石油由来のプロピレン系樹脂40~90質量部、バイオマス由来のエチレン系樹脂0~20質量部及び石油由来のエチレン系樹脂0~20質量部を含むことが好ましい。
なお、多孔質延伸フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上述したプロピレン系樹脂及びエチレン系樹脂以外のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂等を含有してもよい。
<無機フィラー>
多孔質延伸フィルムに使用できる無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、焼成クレイ、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、又は珪藻土等の無機粒子が挙げられる。無機フィラーの配合により、延伸による多孔質化が容易になる。なかでも、炭酸カルシウムの微細粉末、クレイ又は珪藻土は、空孔の成形性が良好で、安価なために好ましい。特に炭酸カルシウムの微細粉末は、品種が豊富であることから空孔率の調整が容易であり、また多孔質延伸フィルムの白色度を調整しやすいことから好ましい。
無機フィラーの平均粒径は、空孔形成の容易性の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。多孔質延伸フィルムの強度を高める観点からは、無機フィラーの平均粒径は、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。よって、無機フィラーの平均粒径は、0.01~10μmが好ましく、0.05~8μmがより好ましい。
上記無機フィラーの平均粒径は、レーザー回折による粒度分布計で測定した体積平均粒径である。
多孔質延伸フィルム中の総樹脂成分100質量部に対する無機フィラーの含有量は、3~233質量部であることが好ましい。
<他の添加剤>
多孔質延伸フィルムは、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤等の添加剤を含有することができる。多孔質延伸フィルムが、熱安定剤を含有する場合、通常0.001~1質量%の熱安定剤を含有する。熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、又はアミン系等の安定剤等が挙げられる。多孔質延伸フィルムが光安定剤を使用する場合、通常0.001~1質量%の光安定剤を含有する。光安定剤としては、例えば立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾフェノン系の光安定剤等が挙げられる。分散剤又は滑剤は、例えば無機フィラーを分散させる目的で使用することができる。多孔質延伸フィルム中の分散剤又は滑剤の使用量は、通常0.01~4質量%の範囲内である。分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又は、それらの塩等が挙げられる。
<空孔率>
多孔質延伸フィルムの空孔率が大きいほど、積層フィルムに白色度を付与できるとともに、多孔質延伸フィルム中の樹脂成分の割合を減らし、二酸化炭素ガスの排出量の削減を図ることができる。したがって、基材層を構成する多孔質延伸フィルムの空孔率は、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。引裂き耐性等の機械的強度を付与する観点からは、上記空孔率は、55%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、42%以下がさらに好ましい。
上記空孔率は、フィラーの平均粒子径、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂の質量比のようなフィルムの組成、延伸温度又は延伸倍率等の延伸条件等によって調整することができる。
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率から求めることができる。具体的には、測定対象のフィルムの任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させる。ミクロトームを用いて、測定対象のフィルムをフィルムの面方向に対して垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付ける。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)でフィルム中の空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込む。得られた画像データに対して画像解析装置にて画像処理を施し、フィルムの一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とする。この場合、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、空孔率とすることができる。
(第1表面層)
第1表面層は、積層フィルムの強度を向上させて、引き裂き耐性等を高めることができる。また積層フィルムを粘着ラベルとして用いたときに、第1表面層によって粘着剤層と積層フィルムとの密着性を調整することが容易となる。
第1表面層は、空孔形成性又は環境負荷の低減の観点から、基材層と同様に、オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する多孔質延伸フィルムであり、当該オレフィン系樹脂としてバイオマス由来のプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。第1表面層と基材層に使用する材料及びその配合量は同じであっても異なっていてもよい。
第1表面層に使用できるオレフィン系樹脂としては、上述した基材層と同様のオレフィン系樹脂が挙げられ、そのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。第1表面層は、粘着層との密着性等の観点から、メルトフローレートの異なるプロピレン系樹脂を2種以上含むことが好ましい。例えば、第1表面層は、0.1g/10分以上5.0g/10分未満のメルトフローレートを有する第1プロピレン系樹脂と、5.0g/10分以上20g/10分以下のメルトフローレートを有する第2プロピレン系樹脂を含むことができる。機械的強度を向上させる観点からは、第1表面層に使用するプロピレン系樹脂としては、融点(DSC曲線のピーク温度)が130~210℃のプロピレン系樹脂が好ましい。なかでも、融点(DSC曲線のピーク温度)が155~174℃であり、JIS K7210:2014に準拠するメルトフローレート(MFR)が0.5~20g/10分であり、結晶化度が45~70%であるプロピレン単独重合体がより好ましい。
第1表面層に使用できる無機フィラーとしては、基材層と同様の無機フィラーが挙げられる他、沈降性炭酸カルシウム等が挙げられる。
粘着剤層との密着性向上の観点から、第1表面層に使用する無機フィラーの平均粒径は、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。空孔形成性の観点からは、上記平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.07μm以上がさらに好ましい。
第1表面層中の無機フィラーの含有量は、粘着剤層との密着性向上の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下がよりさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。空孔率を高めて二酸化炭素ガスの排出量の削減を図る観点から、同含有量は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
<空孔率>
上述のように、第1表面層の空孔率は40%以下である。粘着剤層との密着性向上の観点からは、上記空孔率は、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。環境負荷の低減等の観点からは、上記空孔率は、0.1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
上記空孔率は、フィラーの平均粒径、フィルムの組成又は延伸条件等によって調整することができる。
<厚み>
フィルム強度向上の観点から、第1表面層の厚さは、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。また、取り扱い性の向上の観点から、同厚さは、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
(第2表面層)
本発明の積層フィルムは、第1表面層と反対側の表面上に第2表面層を備えることができる。第2表面層により積層フィルムの強度をより向上させて、引き裂き耐性等をさらに高めることができる。また印刷により積層フィルムにインクからなる印刷層が設けられる場合、第2表面層によってインクとの密着性を高めることが容易となる。
第2表面層は、第1表面層と同様に構成することができる。空孔形成性又は環境負荷の低減の観点から、第2表面層は、オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する多孔質延伸フィルムであり、当該オレフィン系樹脂としてバイオマス由来のプロピレン系樹脂を含有することが好ましい。第2表面層に使用できるオレフィン系樹脂及び無機フィラーとしては、第1表面層と同様の材料が挙げられ、好ましい材料も第1表面層と同様である。第1表面層と第2表面層に使用する材料は同じであっても異なっていてもよい。
第2表面層中の無機フィラーの含有量は、印刷層の耐擦過性向上の観点から、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がよりさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。空孔率を高めて二酸化炭素ガスの排出量の削減を図る観点から、同含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
<空孔率>
投錨効果によってインクとの密着性を高める観点からは、第2表面層の空孔率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上(又は、30%超)がさらに好ましく、35%以上がよりさらに好ましく、40%以上が特に好ましい。引き裂き耐性向上の観点からは、第2表面層の空孔率は、55%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
上記空孔率は、フィラーの平均粒径、フィルムの組成又は延伸条件等によって調整することができる。
<厚み>
印刷における画像鮮明性の観点から、第2表面層の厚さは、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。また、取り扱い性の向上の観点から、同厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
(他の層)
本発明の積層フィルムは、用途又は機能に応じて、上述した第1表面層及び第2表面層以外の他の層を有することができる。例えば、より白色度を高める観点から、基材層と第1表面層又は第2表面層との間に、無機フィラーを8~55質量%含むプロピレン系樹脂フィルムを中間層として設けることができる。
(バイオマス度)
積層フィルムにおけるバイオマス度は、1~97%であることが好ましい。バイオマス度が高いほど積層フィルムの製造過程における二酸化炭素ガスの排出量が少なく、環境負荷が小さくなる。そのため、上記バイオマス度は、10%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。一方、バイオマス由来の原料は石油由来に比べて高価であるため、製造コスト削減の観点からは、上記バイオマス度は、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましく、60%以下が特に好ましく、50%未満が最も好ましい。
上記バイオマス度は、積層フィルムにおけるバイオマス由来の原料の含有率から算出される。具体的には、積層フィルム全体においてバイオマス由来のオレフィン系樹脂が占める質量割合であり、バイオマス由来のオレフィン系樹脂の含有量から算出される。
石油由来のプロピレン系樹脂又はエチレン系樹脂は、質量数14の放射性炭素(14C)を含まないのに対し、バイオマス由来のプロピレン系樹脂又はエチレン系樹脂は一定の割合で14Cを含むことから、両者の区別が可能である。積層フィルムの樹脂成分中におけるバイオマス由来の原料の割合は、測定される14Cの含有量に基づいて算出することができる。
(白色度)
本発明の積層フィルムは、95%以上の白色度を有することが好ましい。このような積層フィルムは、印刷された文字や図等の見栄えが良く、優れた外観の印刷物を提供することができる。
上記白色度は、JIS L1015:1999に準拠して測定することができる。
(用途)
本発明の積層フィルムは、印刷用紙又は筆記用紙として使用することができる。つまり、積層フィルムの第1表面層又は第2表面層は印刷又は筆記が可能である。使用できる印刷方法としては、紫外線硬化型オフセット印刷、溶剤型オフセット印刷、電子写真方式、昇華熱転写方式、溶融熱転写方式、ダイレクトサーマル方式の他、凸版印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷等が挙げられる。シート状でもロール状の輪転方式でも印刷が可能である。なかでも、第2表面層は紫外線硬化型インクとの密着性が高いことから、紫外線硬化型オフセット印刷が好ましい。
また本発明の積層フィルムは、粘着ラベルの基材としても使用することができる。第1表面は粘着剤層との密着性が高いことから、積層フィルムの第1表面層上に粘着剤層が設けられることが好ましい。
(積層フィルムの製造方法)
本発明の積層フィルムの製造方法は特に限定されず、各層のフィルムを成形し、積層することにより製造することができる。多孔質延伸フィルムは、オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する樹脂組成物からフィルムを成形し、延伸することにより形成することができる。
<フィルム成形>
単層のフィルム成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続されたTダイ、Iダイ等により、溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、又はインフレーション成形等が挙げられる。
多層のフィルム成形方法としては、共押出法、押出ラミネーション法、又は塗工法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。共押出法は、別々の押出機において溶融混練された各層の樹脂組成物をフィードブロック又はマルチマニホールド内で積層して押し出し、フィルム成形と積層を並行に行う。押出ラミネーション法は、予め形成されたフィルム上に樹脂組成物を押出成形して別のフィルムを積層する。塗工法は、樹脂の溶液、エマルジョン又はディスパージョンをフィルム上に塗工して乾燥することにより、別のフィルムを形成及び積層する。
<延伸>
フィルムの延伸は、積層前であってもよいし、積層後であってもよい。第1表面層又は第2表面層は比較的薄いため、単層での延伸ではなく、基材層に積層後、延伸することが好ましい。上述のように、多孔質延伸フィルムが2軸延伸層であると、空孔率が高まり、二酸化炭素ガスの排出量をさらに減らせるとともに、機械的強度を高くすることができ、好ましい。また、多孔質延伸フィルムが1軸延伸フィルムであると、フィブリル状の表面を形成しやすく、インクの浸透性を向上させることができ、好ましい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次2軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時2軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時2軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
延伸を実施するときの延伸温度は、非晶性樹脂を使用する場合、当該非晶性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、結晶性樹脂を使用する場合の延伸温度は、当該結晶性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該結晶性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、当該融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155~167℃)の場合は100~164℃の延伸温度が好ましく、高密度ポリエチレン樹脂(融点121~134℃)の場合は70~133℃の延伸温度が好ましい。
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
延伸倍率についても、使用する樹脂成分の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレン単独重合体又はプロピレン共重合体を使用する場合、一方向に延伸する場合の延伸倍率は、下限が通常は1.1倍以上、好ましくは2倍以上であり、上限が通常は10倍以下、好ましくは9倍以下である。一方、2軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常は75倍以下、好ましくは50倍以下である。その他の熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、上限が通常は10倍以下、好ましくは5倍以下である。2軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常は20倍以下、好ましくは12倍以下である。上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率及び坪量が得られやすく、不透明性が向上しやすい。また、フィルムの破断が起きにくく、延伸成形が安定化しやすい。
<表面処理>
第1表面層又は第2表面層は、表面処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。これにより、第1表面層又は第2表面層と各層の隣接層との密着性を高めることができる。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である一方、好ましくは12,000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上である一方、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
(コートフィルム)
本発明のコートフィルムは、上記積層フィルムと、上記積層フィルムの少なくとも一方の面上にコート層と、を備える。積層フィルムだけでも印刷用紙として使用することができるが、コートフィルムは、コート層とインクとの密着性が高いため、より印刷適性が向上する。また積層フィルムを基材として用い、その上に粘着剤層を設けることで粘着ラベルとして使用することができるが、本発明におけるコート層はこのような粘着剤との密着性も高い。よって、コートフィルムを粘着ラベルの基材として用いることにより、コート層を介して積層フィルムと粘着剤層との密着性が高まり、粘着ラベルを被着体から剥がしたときにも粘着剤が被着体に残りにくくなるため、好ましい。
<コート層>
コート層は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸系樹脂により、コート層と粘着剤層又はインクとの密着性が向上する。そのようなコート層は、アクリル酸エステル系樹脂を含有するコート層形成用の塗工液を調製し、当該塗工液を積層フィルムの表面に塗工することにより形成することができる。
粘着剤層又はインクとの密着性向上の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂はカチオン性を有することが好ましく、アミノ基、第4級アンモニウム塩構造又はホスホニウム塩構造を有することがより好ましく、アミノ基又は第4級アンモニウム塩構造を有することがさらに好ましい。
コート層中の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量は、粘着剤との密着性向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。上記含有量の上限は特に制限されないが、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であり得る。
コート層は、さらにエチレンイミン系重合体を含有することが好ましい。エチレンイミン系重合体は、各種の印刷インク、特に紫外線硬化型インクとの親和性が強いことから、印刷適性が向上しやすい。
エチレンイミン系重合体としては、例えばポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらの変性体又は水酸化物等が挙げられる。変性体としては、例えばアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール(aryl)変性体、アリル(allyl)変性体、アラルキル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、環状脂肪族炭化水素変性体、グリシドール変性体等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エチレンイミン系重合体としては、日本触媒社製のエポミン(商品名);BASF社製のポリミンSK(商品名);三菱化学社製のサフトマーAC-72、AC-2000(商品名)等の市販品も使用することができる。
またコート層は、インクとの密着性向上の観点から、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ(土類)金属塩、又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体等の樹脂粒子を含有することもできる。樹脂粒子はエマルジョン由来であることができる。エマルジョンは、上記共重合体を水性分散媒中に微粒子として分散させ、乳化させた液体である。このような樹脂粒子はインクとの親和性が高い。
コート層は、必要に応じて、帯電防止剤、架橋促進剤、アンチブロッキング剤、pH調整剤、消泡剤等のその他の助剤成分を含むことができる。
粘着剤層又はインクとの密着性の観点から、コート層の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。コート層の凝集破壊を抑制する観点から、コート層の厚さは、7μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
(粘着ラベル)
本発明の粘着ラベルは、上記積層フィルムと、上記積層フィルムの一方の面上に粘着剤層とを備える。本発明の粘着ラベルにおいて、積層フィルム上にコート層が設けられることが好ましい。すなわち、本発明の粘着ラベルは、上記コートフィルムと、上記コートフィルムのコート層上に粘着剤層とを備えることもできる。粘着剤層は、第1表面層側のコート層上に設けられることが好ましい。上述のとおり、粘着剤層とコート層の密着性が高いだけでなく、コート層と第1表面層との密着性も高いため、粘着ラベルを被着体から剥がすときに被着体に残る粘着剤が少ない粘着ラベルを提供することができる。
図1は、粘着ラベルの一例を示す。
図1に例示するように、粘着ラベル30は、コートフィルム20を基材としてその一方の面に粘着剤層31を備える。粘着ラベル30の他方の面には、印刷によって印刷層40が設けられ得る。コートフィルム20は、積層フィルム10の両面にコート層21を有する。積層フィルム10は、基材層11とその両面に第1表面層12及び第2表面層13とを備える。粘着ラベル30において、積層フィルム10の第1表面層12が粘着剤層31側に、第2表面層13が印刷層40側に配置される。
<粘着剤層>
粘着剤層に用いる粘着剤としては、例えばゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤等が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、例えばポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物、又はこれらに粘着付与剤が配合されたゴム系粘着剤等が挙げられる。粘着付与剤としては、例えばアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、又はテルペン・インデン共重合体等が挙げられる。
アクリル系粘着剤としては、例えば2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、又は2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が-20℃以下の化合物が挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、例えば白金化合物等を触媒とする付加硬化型粘着剤、過酸化ベンゾイル等によって硬化させる過酸化物硬化型粘着剤等が挙げられる。
粘着剤の形態は特に限定されず、溶液型、エマルジョン型、又はホットメルト型等の各種形態の粘着剤を使用できる。
粘着剤層は、粘着剤をコートフィルムの表面に直接塗工して形成してもよいし、後述する剥離シートの表面に粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後、これをコートフィルムの表面に貼り合わせるようにしてもよい。
粘着剤の塗工装置としては、バーコーター、ブレードコーター、コンマコーター、ダイコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リップコーター、リバースコーター、ロールコーター、又はスプレーコーター等が挙げられる。これらの塗工装置によって塗工された粘着剤の塗膜を、必要に応じてスムージングし、乾燥することで粘着剤層が形成される。
<塗工量>
粘着剤の塗工量は、特に限定されないが、乾燥後の固形分量で3~60g/mであることが好ましく、10~40g/mであることがより好ましい。
<剥離シート>
粘着剤層上には、粘着剤層表面を保護する目的で必要に応じて、剥離シートが設けられていてもよい。
剥離シートとしては、例えば上質紙やクラフト紙、これらにカレンダー処理、樹脂コート又はフィルムラミネートが施されたシート、グラシン紙、コート紙、あるいは樹脂フィルム等にシリコーン処理が施されたシート等を使用することができる。このうち、粘着剤層との剥離性が良好であることから、粘着剤層に接触する面にシリコーン処理が施されたシートを用いることが好ましい。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
表1は、実施例及び比較例に用いた材料の一覧である。
Figure 2023079117000002
表2は、各樹脂組成物における材料の配合比率の一覧である。
Figure 2023079117000003
表3は、コート層形成用塗工液に用いた材料の配合比率の一覧である。
Figure 2023079117000004
(コート層形成用塗工液(a)の調製)
表3に示すように、コート剤として、アクリル酸エステル系樹脂(商品名:サフトマーST3200、三菱ケミカル社製)を50質量部(固形分換算)と、ポリエチレンイミン樹脂(商品名:サフトマーAC72、三菱ケミカル社製)を50質量部(固形分換算)と、を含む水溶液を、コート層形成用塗工液(a)として調製した。
(コート層形成用塗工液(b)の調製)
コート剤として、アクリル酸エステル系樹脂(商品名:サフトマーST3200)を10質量部(固形分換算)と、ポリエチレンイミン樹脂(商品名:サフトマーAC72)を10質量部(固形分換算)と、エチレンメタクリル酸共重合体(商品名:アクアテックスAC3100、ジャパンコーティングレジン社製)を80質量部(固形分換算)と、を含む水溶液を、コート層形成用塗工液(b)として調製した。
(コート層形成用塗工液(c)の調製)
コート剤として、ポリエチレンイミン樹脂(商品名:サフトマーAC72)を100質量部(固形分換算)含む水溶液を、コート層形成用塗工液(c)として調製した。
(実施例1)
<積層フィルムの製造>
植物油を原料として製造されたプロピレン単独重合体(商品名:HC101BF、ボレアリス社製、MFR:3.2g/10分)41質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6、日本ポリプロ社製、MFR:2.4g/10分(JIS K7210)、密度:0.90g/cm)41質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製、MFR:11g/10分(JIS K7210)、密度:0.90g/cm)14質量部と、石油由来のマレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001、三洋化成工業社製、酸価 26mgKOH/g、密度:0.90g/cm)1質量部と、石油由来の高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製、MFR:12g/10分(JIS K7210)、密度:0.96g/cm)13質量部と、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製、平均粒子径:1.25μm、密度:2.72g/cm)20質量部と、を混合して、樹脂組成物Bを調製した。これを、シリンダー温度を230℃に設定した押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後にカットして、樹脂組成物Bのペレットを得た。
これとは別に、上記バイオマス由来のプロピレン単独重合体(商品名:HC101BF)9質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6)85質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3)16質量部と、石油由来のマレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001)1質量部と、石油由来の高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ580N)13質量部と、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800)6質量部とを混合して、樹脂組成物Aを調製した。これを、シリンダー温度を230℃に設定した押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後にカットして、樹脂組成物Aのペレットを得た。
また、植物油を原料として製造されたプロピレン単独重合体(商品名:HE125MO、ボレアリス社製、MFR:10g/10分)10質量部と、上記石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6)20質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3)30質量部と、石油由来のマレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001)1質量部と、石油由来の高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ580N)13質量部と、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800)58質量部と、を混合して、樹脂組成物Cを調製した。これを、シリンダー温度を230℃に設定した押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後にカットして、樹脂組成物Cのペレットを得た。
上記樹脂組成物Bを250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給してシート状に押し出した。押し出したシートを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD方向)に4.8倍延伸し、基材層のシートを形成した。
次いで、樹脂組成物A及びCを250℃に設定した2台の押出機によりそれぞれ溶融混練した後、上記基材層のシートの両面に溶融押出しした。これにより、樹脂組成物Bからなる基材層の一方の面に樹脂組成物Aからなる第1表面層が積層され、他方の面に樹脂組成物Cからなる第2表面層が積層された3層シートが得られた。
上記3層シートを冷却装置により60℃まで冷却した後、150℃まで再加熱し、テンターを用いてシート幅方向(TD方向)に9倍延伸して、165℃でアニーリング処理した。再び60℃まで冷却した後、耳部をスリットして、実施例1の積層フィルムを得た。実施例1の積層フィルムは、3層構造(1軸延伸/2軸延伸/1軸延伸)を有し、全厚が80μm、樹脂組成物A/B/Cの各層厚さが18μm/36μm/26μmであった。
<コートフィルムの製造>
実施例1の積層フィルムの両面に、30W・分/mの条件でコロナ放電処理を施した。次いで、乾燥後の厚みが0.03μmとなるように、コート層形成用塗工液(a)をロールコーターにより塗工した。60℃のオーブンにおいて塗工膜を乾燥してコート層を形成し、コートフィルムを得た。
(実施例2~5及び7)
樹脂組成物Aの各材料の配合量を表2に示すように変更した以外は、樹脂組成物Aと同様に樹脂組成物D~Gのペレットを作製した。
また、サトウキビを原料として製造されたプロピレンを、定法に従い、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合することにより得られたバイオマス由来のプロピレン単独重合体(MFR:約11g/10分(JIS K7210))9質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6)73質量部と、石油由来のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3)14質量部と、石油由来のマレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001)1質量部と、石油由来の高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ580N)13質量部と、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800)20質量部とを混合して、樹脂組成物Jを調製した。次いで、樹脂組成物Aと同様にして樹脂組成物Jのペレットを作製した。
樹脂組成物Aを各樹脂組成物D~G及びJに変更して第1表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして各実施例2~5及び7の積層フィルム及びコートフィルムを製造した。実施例2~5及び7の積層フィルムの層構成は、表4に示す。
(実施例6)
樹脂組成物Aの各材料の配合量を表2に示すように変更した以外は、樹脂組成物Aと同様にして樹脂組成物Hのペレットを作製した。
また、上記バイオマス由来のプロピレン単独重合体(商品名:HC101BF)32質量部と、バイオマス由来のプロピレン単独重合体(商品名:HE125MO)65質量部と、石油由来のマレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001)1質量部と、石油由来の高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ580N)3質量部と、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800)29質量部とを混合して、樹脂組成物Iを調製した。これを、シリンダー温度を230℃に設定した押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後にカットして、樹脂組成物Iのペレットを得た。
樹脂組成物Aを樹脂組成物Hに変更して第1表面層を形成し、樹脂組成物Cを樹脂組成物Iに変更して第2表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例6の積層フィルム及びコートフィルムを製造した。実施例6の積層フィルムの層構成は、表4に示す。
(実施例8)
<積層フィルムの製造>
樹脂組成物Cの各材料の配合量を表2に示すように変更した以外は、樹脂組成物Cと同様に各樹脂組成物K、N及びLのペレットを作製した。
樹脂組成物K、N及びLのペレットを、250℃に設定した3台の押出機でそれぞれ溶融混練した。これらを1台の共押出ダイに供給し、ダイ内部でK/N/Lの3層構造となるように積層して、ダイよりシート状に押し出した。
押出したシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃にまで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD方向)に2倍延伸して、縦延伸樹脂フィルムを得た。次いで縦延伸樹脂フィルムを60℃まで冷却した後、150℃まで再加熱し、テンターを用いてシート幅方向(TD方向)に2倍延伸し、165℃でアニーリング処理した。その後、再び60℃まで冷却した後、耳部をスリットして、実施例8の積層フィルムを得た。実施例8の積層フィルムは、3層構造(2軸延伸/2軸延伸/2軸延伸)を有し、全厚が80μm、樹脂組成物K/N/Lの各層厚さが18μm/36μm/26μmであった。
<コートフィルムの製造>
上記積層フィルム上に実施例1と同様にコート層を形成し、実施例8のコートフィルムを製造した。
(実施例9)
<積層フィルムの製造>
上記樹脂組成物A、B及びCのペレットを、250℃に設定した3台の押出機でそれぞれ溶融混練した。これらを1台の共押出ダイに供給し、ダイ内部でA/B/Cの3層構造となるように積層して、ダイよりシート状に押し出した。
押出したシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃まで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD方向)に4.8倍延伸して、縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムを60℃まで冷却した後、150℃まで再加熱し、テンターを用いてシート幅方向(TD方向)に9倍延伸し、165℃でアニーリング処理した。再び60℃まで冷却した後、耳部をスリットして、実施例9の積層フィルムを得た。実施例9の積層フィルムは、3層構造(2軸延伸/2軸延伸/2軸延伸)を有し、全厚が80μm、樹脂組成物A/B/Cの各層厚さが18μm/36μm/26μmであった。
<コートフィルムの製造>
上記積層フィルム上に実施例1と同様にコート層を形成し、実施例9のコートフィルムを製造した。
(実施例10及び11)
コート層形成用塗工液(a)を各コート層形成用塗工液(b)及び(c)に変更してコート層を形成した以外は、実施例2と同様にして各実施例10及び11のコートフィルムを製造した。
(実施例12)
上記バイオマス由来のプロピレン単独重合体(商品名:HC101BF)82質量部と、バイオマス由来のプロピレン単独重合体(商品名:HE125MO)14質量部と、石油由来のマレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:ユーメックス1001)1質量部と、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(商品名:HDPE SHC7260、ブラスケム社製、MFR;7.2g/10分、密度;0.959g/cm)6.5質量部と、石油由来の高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ580N)6.5質量部と、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800)20質量部と、を混合して、樹脂組成物Mを調製した。これを、シリンダー温度を230℃に設定した押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後にカットして、樹脂組成物Mのペレットを得た。
樹脂組成物Bを樹脂組成物Mに変更して基材層を形成し、樹脂組成物Cを樹脂組成物Iに変更して第2表面層を形成した以外は、実施例2と同様にして実施例12の積層フィルム及びコートフィルムを製造した。
(実施例13)
樹脂組成物Cを樹脂組成物Aに変更して第2表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例13の積層フィルム及びコートフィルムを製造した。
(実施例14)
樹脂組成物Aを樹脂組成物Eに変更して第1表面層を形成し、樹脂組成物Cを樹脂組成物Nに変更して第2表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例14の積層フィルム及びコートフィルムを製造した。
(比較例1)
樹脂組成物Aを樹脂組成物Cに変更して第1表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例1の積層フィルム及びコートフィルムを製造した。
(比較例2)
樹脂組成物Mを250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給してシート状に押し出した。押し出したシートを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD方向)に4.8倍延伸し、基材層のシートを形成した。
上記基材層のシートを冷却装置により60℃まで冷却した後、150℃まで再加熱し、テンターを用いてシート幅方向(TD方向)に9倍延伸して、165℃でアニーリング処理した。再び60℃まで冷却した後、耳部をスリットして、比較例2の積層フィルムを得た。比較例2の積層フィルムは、単層構造を有する2軸延伸フィルムであり、全厚が80μmであった。
(物性の測定)
各実施例及び比較例の積層フィルム及びコートフィルムの物性を、次のように測定した。
<全体厚さ>
積層フィルムの全体厚さ(μm)は、JIS K7130:1999年「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に基づき、定圧厚さ測定器(機器名:PG-01J、テクロック社製)を用いて測定した。
<各層厚さ>
多層構造における各層の厚さ(μm)は、次のようにして測定した。
積層フィルムを液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(商品名:プロラインブレード、シック・ジャパン社製)を直角に当てて切断し、断面測定用の試料を作製した。得られた試料の断面を走査型電子顕微鏡(機器名:JSM-6490、日本電子社製)により観察し、組成により異なる外観から各層の境界線を判別して、積層フィルム中の各層の厚さ比率を求めた。上記測定した全体厚さに各層の厚さ比率を乗算して、各層の厚さを求めた。
<空孔率>
測定対象の積層フィルムの任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて測定対象の積層フィルムの面方向に対して垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付けた。観察面には金又は金-パラジウム等を蒸着し、走査型電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)で積層フィルムの切断面を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んだ。画像解析装置により画像データを画像処理し、積層フィルムの各層の一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めた。任意の10箇所以上において求めた面積率(%)の平均値を、各層の空孔率(%)とした。
(評価)
各実施例及び比較例の積層フィルム及びコートフィルムについて、下記評価を行った。
<バイオマス度>
積層フィルムを構成する全原料の合計質量に対するバイオマス由来ポリプロピレン及びバイオマス由来ポリエチレンの合計質量の割合(%)を、バイオマス度(%)として算出した。
<白色度>
積層フィルムの白色度(%)を、JIS L1015:1999に規定される方法に準拠し、カラーメーターを用いて測定した。カラーメーターとして、スガ試験機社製のタッチパネル式カラーコンピューター SM-Tを用いた。測定された白色度を、下記基準に従って評価した。白色度が高いほど印刷内容が明瞭となり、白色度が95%以上であるとパルプ紙と同等の明瞭な表示が可能である。
〇:白色度が95%以上である。
×:白色度が95%未満である。
<UVインクの耐水擦過性>
コートフィルムをA2版(420mm×594mm)に断裁し、第2表面層側のコート層上に図柄をオフセット印刷した。印刷には、オフセット印刷機(商品名:SM102、ハイデルベルグ社製)とUV硬化型枚葉プロセスインク(商品名:UV BC161(墨、藍、紅、黄)、T&K TOKA社製)を用いた。図柄は墨、藍、紅及び黄の4色により印刷され、各色の濃度は100%であった。具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、6000枚/時間の速度でUVオフセット4色印刷を施し、2灯のメタルハライド灯(アイグラフィック社製、100W/cm)の下を通過させて印刷面のインクを乾燥させた。1000枚連続して印刷を行い、オフセット印刷物を得た。
得られたオフセット印刷物を70mm×110mmのサイズに打抜き、これを23℃のイオン交換水中に24時間浸漬した後、印刷物を水中より取り出した。取り出した印刷物を学振形染色摩擦堅ろう度試験機(商品名:摩擦試験機II形、スガ試験機社製)にセットして、摩擦試験を行った。摩擦試験では、JIS L0849:2004(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に準拠し、白綿布(金巾3号)にて荷重215gを加えて印刷面を100回擦った。
試験前後のインク部分を画像解析装置(型式ルーゼックスIID、ニレコ社製)により画像処理し、インク部分の面積の残存率を算出して以下の基準で判定した。
◎:インクの95%以上が記録用紙上に残存し、優秀なレベル
〇:インクの90%以上、95%未満が記録用紙上に残存し、良好なレベル
△:インクの70%以上、90%未満が記録用紙上に残存し、実用可のレベル
×:インクの70%未満が記録用紙上に残存し、実用不可のレベル
<粘着剤残存率>
次のようにしてコートフィルム上に粘着剤層を形成し、粘着ラベルを製造した。
シリコーン処理を施したグラシン紙(G7B、王子タック株式会社製)を剥離シートとして用いた。このグラシン紙のシリコーン処理面に、乾燥後の坪量が25g/mとなるようにコンマコーターで粘着剤を塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した。粘着剤は、溶剤系アクリル系粘着剤(オリバインBPS1109、トーヨーケム株式会社製)と、イソシアネート系架橋剤(オリバインBHS8515、トーヨーケム株式会社製)と、トルエンとを100:3:45の割合で混合して調製した。粘着剤層に第1表面層側のコート層側が接するようにコートフィルムを積層し、圧着ロールで加圧接着して、コート層上に粘着剤層を形成した。
粘着ラベルの剥離シートを剥がし、透明で高平滑なガラス板に粘着剤層側の面を貼り付けて、指で3回擦って十分に密着させた。このガラス板に対し、温度40℃の環境下で24時間の熱処理を行った後、23℃の水中に24時間浸漬した。水中からガラス板を取り出して水分をウエスで軽く拭き取った5分後に、ガラス板から粘着ラベルを180度方向に速度300m/minで手で剥離した。粘着ラベルを剥がした後のガラス板の部分のヘイズをJIS K7136:2000に準拠して測定した。測定には、ヘイズ計(日本電色工業社製、型式名:NDH2000)を用いた。
剥離後に測定したヘイズと粘着ラベルを貼り付ける前のガラス板のヘイズとの差から、粘着剤残存率を以下の基準で判定した。ヘイズ差が小さいほど、粘着剤の残存率が少ないと評価できる。
◎:ヘイズ差が3%未満であり、優秀なレベル
〇:ヘイズ差が3%以上5%未満であり、良好なレベル
△:ヘイズ差が5%以上10%未満であり、実用可のレベル
×:ヘイズ差が10%以上であり、実用不可のレベル
表4は、評価結果を示す。
Figure 2023079117000005
表4に示すように、実施例1~14は、バイオマス度が10以上であるため、環境負荷が低い。また、第1表面層の空孔率が40%以下である実施例1~14は、粘着剤残存率が低く、被着体に粘着剤が残りにくい粘着フィルムを提供できていることが分かる。一方、第1表面層の空孔率が40%を超える比較例1は、コート層が設けられても粘着剤が残りやすい結果となっている。第1表面層がない比較例2は、バイオマス度が高いものの粘着剤の残存率が高い。
また、実施例1~9と実施例10又は11とを比較すると、コート層がアクリル酸エステル系樹脂を含むことにより、被着体に残る粘着剤をより効果的に減らすことができることが分かる。コート層によってUVインクとの密着性も向上しており、耐水擦過性に優れている。
10 積層フィルム
11 基材層
12 第1表面層
13 第2表面層
20 コートフィルム
21 コート層
30 粘着ラベル
31 粘着剤層
40 印刷層

Claims (9)

  1. 基材層と、前記基材層の一方の面上に第1表面層とを備える積層フィルムであって、
    オレフィン系樹脂と無機フィラーを含有する多孔質延伸フィルムを含み、
    前記オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂を含み、
    前記プロピレン系樹脂が、バイオマス由来のプロピレン系樹脂を含み、
    前記第1表面層が、40%以下の空孔率を有する
    積層フィルム。
  2. 前記プロピレン系樹脂が、石油由来のプロピレン系樹脂をさらに含む
    請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記オレフィン系樹脂が、エチレン系樹脂をさらに含む
    請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記エチレン系樹脂が、バイオマス由来のエチレン系樹脂を含む
    請求項3に記載の積層フィルム。
  5. 前記エチレン系樹脂が、石油由来のエチレン系樹脂を含む
    請求項3又は4に記載の積層フィルム。
  6. 前記第1表面層の空孔率が、0.1~30%である
    請求項1~5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
  7. 前記基材層の他方の面上に第2表面層を備え、
    前記第2表面層が、30~55%の空孔率を有する
    請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルム。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルムと、
    前記積層フィルムの少なくとも一方の面上にコート層と、を備え、
    前記コート層が、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む
    コートフィルム。
  9. 請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルムと、
    前記積層フィルムの一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備える
    粘着ラベル。

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