JP2023067125A - エタノール系顔料分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】顔料の分散粒径が小さく、かつ、常温での保存安定性及び高温での保存安定性に優れるエタノール系顔料分散体、並びに、インクジェット記録方式に用いる際に吐出性及びデキャップ特性に優れるエタノール系インクを提供する。【解決手段】アルミニウムレーキ顔料(A)、及び顔料分散剤(B)を含有するエタノール系顔料分散体であって、顔料分散剤(B)が、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位と、オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位とを含むポリマーである、エタノール系顔料分散体、及び該エタノール系顔料分散体を含有するインクジェット記録用エタノール系インクである。【選択図】なし

Description

本発明は、エタノール系顔料分散体、及び該エタノール系顔料分散体を含有するインクジェット記録用エタノール系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像が記録された印刷物を得る記録方式であり、従来の記録方式と異なり版を使用しない記録方式であることから、少量多品種に対応できるオンデマンド印刷として広範囲にわたる利用分野で期待されている。最近では、インクジェット記録方式を医薬品や食品に適用する検討がなされている。
例えば、特許文献1には、レーキ顔料の分散安定性(保存安定性)等に優れた顔料組成物、インクジェット用水性インク組成物等の提供を目的として、レーキ顔料、顔料分散剤、及び分散安定剤を少なくとも含む可食性の顔料組成物が記載されている。
特開2019-127589号公報
ここで、アルミニウムレーキ顔料は、ポリカチオン化した水酸化アルミニウムゲルの凝集作用により、カルボキシ基やスルホン酸基を備え、本来はエタノール可溶性である食用染料を水酸化アルミニウムゲル表面に吸着させて形成された顔料である。そのため、アルミニウムレーキ顔料は、一般的にエタノール中に分散させることが困難な顔料であり、エタノール中に分散させようとするとエタノールを取り込んだ状態でゲル化することが多い。
また、例えば、アニオン性官能基を備えた顔料分散剤で一時的に分散できたとしても、アルミニウムレーキ顔料から溶出したアルミニウムイオンは顔料分散剤のアニオン性官能基で形成された電気二重層を縮退させるため、顔料粒子のブラウン運動による衝突に伴う凝集を抑制できず、顔料粒子の粒径が増大し、顔料粒子の沈降が発生してしまう。
特許文献1の実施例では、顔料分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム、分散媒として水が用いられている。ポリアクリル酸ナトリウムはポリカチオンである水酸化アルミニウムゲルにカルボキシ基が配向するため、アルミニウムレーキ顔料の表面に安定して吸着することが期待されるものの、インクジェット記録方式におけるインクの吐出が可能な程度の粒径まで顔料を微細化することができず、常温(25℃)での保存安定性及び高温での保存安定性が十分でないことが判明した。さらに、アルミニウムレーキ顔料を用いるエタノール系インクのインクジェット記録方式への適用においては、吐出性の向上も求められており、印刷後にインクノズル面を保護することなく放置し、再度印刷を開始する場合にカスレが生じ難いデキャップ特性に優れることも求められている。
本発明は、顔料の分散粒径が小さく、かつ、常温での保存安定性及び高温での保存安定性に優れるエタノール系顔料分散体、並びに、インクジェット記録方式に用いる際に吐出性及びデキャップ特性に優れるエタノール系インクを提供することを課題とする。
本発明者は、アルミニウムレーキ顔料、及び顔料分散剤を含有するエタノール系顔料分散体であって、該顔料分散剤が特定のモノマー由来の構成単位を含むポリマーであることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]アルミニウムレーキ顔料(A)、及び顔料分散剤(B)を含有するエタノール系顔料分散体であって、
顔料分散剤(B)が、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位と、オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位とを含むポリマーである、エタノール系顔料分散体。
[2]前記[1]に記載のエタノール系顔料分散体と、エタノール溶解性有機溶媒(C)とを含有する、インクジェット記録用エタノール系インク。
本発明によれば、顔料の分散粒径が小さく、かつ、常温での保存安定性及び高温での保存安定性に優れるエタノール系顔料分散体、並びに、インクジェット記録方式に用いる際に吐出性及びデキャップ特性に優れるエタノール系インクを提供することができる。
[エタノール系顔料分散体]
本発明のエタノール系顔料分散体(以下、単に「顔料分散体」ともいう)は、アルミニウムレーキ顔料(A)、及び顔料分散剤(B)を含有するエタノール系顔料分散体であって、顔料分散剤(B)が、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位と、オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位とを含むポリマーである。
なお、本発明において、「エタノール系」とは、顔料分散体又はインクの構成成分である液体媒体において、エタノールが質量で最大割合を占めていることを意味する。
本発明のエタノール系顔料分散体又はエタノール系インクの液体媒体においてエタノール以外の構成成分としては、水、エタノール以外のアルコール等が挙げられる。
本発明は、顔料の分散粒径が小さく、かつ、常温での保存安定性(以下、「常温保存安定性」ともいう)及び高温での保存安定性(以下、「高温保存安定性」ともいう)に優れるエタノール系顔料分散体を提供することができ、さらに、インクジェット記録方式に用いる際に吐出性及びデキャップ特性に優れるエタノール系インクを提供できるという格別の効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明の顔料分散体は、アルミニウムレーキ顔料を含有するが、顔料分散剤がアニオン性基含有モノマー由来の構成単位と、オキシアルキレン基を有する親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位とを含むポリマーである。
ここで、前記アニオン性基含有モノマーによりポリマーに導入されているアニオン性基がアルミニウムレーキ顔料の水酸化アルミニウムゲルの表面に配向して吸着し、電気的反発力により、顔料粒子の凝集及び沈降を抑制し、分散粒径の低減化に寄与すると考えられる。そして、前記親水性ノニオン性モノマーによりポリマーに導入されているオキシアルキレン基により、液体媒体として含まれるエタノールに対するアルミニウムレーキ顔料の表面近傍の親和性が高くなり、アルミニウムレーキ顔料の表面がエタノール分子層で覆われるため、該エタノール分子層により立体的な斥力が生じて顔料粒子間の接触を妨げることができ、顔料粒子の凝集も妨げられ、顔料粒子の粒径の増大を抑制することができると考えられる。
その結果、顔料分散体の顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させることができ、さらに、インクジェット記録方式のインクに用いる際には狭隘なインクジェットノズル内での顔料粒子の凝集を防いでノズルの閉塞を抑制することができるため、吐出性及びデキャップ特性を向上させることができると考えられる。
<アルミニウムレーキ顔料(A)>
本発明の顔料分散体は、アルミニウムレーキ顔料(A)を含有する。
アルミニウムレーキ顔料(A)は、着色力を発現する染料成分(α)と、染料を吸着させる水酸化アルミニウムゲル(β)とからなる。
染料成分(α)は、タール色素の無毒化の観点から、好ましくは分子中の芳香族環にスルホン酸基、カルボキシ基等の親水性官能基を導入されてなり、これにより高いエタノール可溶性を有するものである。このような化学構造を有する染料成分をエタノール不溶性の顔料とする観点から、アルミニウムレーキ顔料(A)は、重合アルミニウムイオン[Aln+2(OH)3n6+の形でn=10以上の形で存在する水酸化アルミニウムゲル(β)担体上に染料成分(α)が結合されてなるものが好ましい。
アルミニウムレーキ顔料(A)は、特に制限はないが、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに吐出性及びデキャップ特性を向上させる観点から、好ましくは、染料成分(α)として、黄色4号、黄色5号、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104-(1)号、緑色3号、青色1号、及び青色2号から選ばれる少なくとも1種を用いた顔料であり、より好ましくは黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウムレーキ、及び赤色104号-(1)号アルミニウムレーキから選ばれる1種以上である。
<顔料分散剤(B)>
本発明の顔料分散体は、顔料分散剤(B)(以下、単に「分散剤(B)」ともいう)を含有する。
分散剤(B)は、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位と、オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(以下、単に「親水性ノニオン性モノマー」ともいう)(b-2)由来の構成単位とを含むポリマーである。
分散剤(B)は、アニオン性基含有モノマー(b-1)及び親水性ノニオン性モノマー(b-2)を含む原料モノマーを共重合させてなる。
(アニオン性基含有モノマー(b-1))
本発明に係る分散剤(B)は、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位を含む。アニオン性基含有モノマー(b-1)により分散剤(B)であるポリマー中に導入されたアニオン性基が、アルミニウムレーキ顔料(A)の水酸化アルミニウムゲル(β)部分に配向することで、分散剤(B)をアルミニウムレーキ顔料(A)に吸着させることができ、これにより、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させ、さらに、吐出性及びデキャップ特性を向上させることができると考えられる。
アニオン性基としては、特に制限はないが、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を及び高温保存安定性向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくはカルボキシ基である。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、2-エチルアクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、β-メチルアクリル酸(クロトン酸)、α-フェニルアクリル酸、β-アクリロイルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、β-スチリルアクリル酸(1-カルボキシ-4-フェニルブタジエン-1,3)等のモノカルボン酸系モノマー;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のジカルボン酸系モノマー;アコニット酸、トリカルボキシエチレン等のトリカルボン酸系モノマーなどが挙げられる。
これらの中でも、アニオン性基含有モノマー(b-1)は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくはカルボキシ基含有モノマーであり、より好ましくはモノカルボン酸系モノマーであり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸であり、顔料の分散性を向上させ、顔料分散体の粘度を低減させる観点からは、より更に好ましくはアクリル酸を含み、より更に好ましくはアクリル酸である。
アニオン性基含有モノマー(b-1)がアクリル酸を含む場合、該カルボキシ基含有モノマー中のアクリル酸の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)アクリル酸」も同義である。
(オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(b-2))
本発明に係る分散剤(B)は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位を含む。
本発明において、モノマーの「親水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g以上であることをいう。
親水性ノニオン性モノマー(b-2)としては、分子内にオキシアルキレン基と重合性基を有するものであれば特に制限はない。
前記オキシアルキレン基は、好ましくは炭素数2以上4以下である。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられるが、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる1種以上であり、より好ましくはオキシエチレン基である。
前記重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基であり、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基から選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、好ましくは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基である。
親水性ノニオン性モノマー(b-2)としては、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、親水性ノニオン性モノマー(b-2)は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくはポリアルキレングリコール鎖を有するものである。
前記ポリアルキレングリコール鎖のアルキレンオキシドの平均付加モル数は、前記と同様の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは9以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは120以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは45以下、より更に好ましくは35以下である。平均付加モル数が、前記の範囲であれば、更に高温での保存安定性(以下、「高温保存安定性」ともいう)を長期に維持することができる。
前記ポリアルキレングリコール鎖は、エチレンオキシド由来の単位とプロピレンオキシド由来の単位とを含んでもよい。エチレンオキシド由来の単位(EO)とプロピレンオキシド由来の単位(PO)とのモル比[EO/PO]は、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上であり、そして、好ましくは9以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下である。
親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは下記式(1)で表されるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の構成単位である。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)アクリレート」も同義である。
Figure 2023067125000001

(式(1)中、R11は水素原子又はメチル基を示し、R12は水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基を示し、OAは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、2以上120以下の数である。)
前記式(1)において、オキシアルキレン基であるOAの炭素数は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは2以上3以下、より好ましくは2である。すなわち、オキシアルキレン基であるOAは、前記と同様の観点から、好ましくはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる1種以上であり、より好ましくはオキシエチレン基である。
前記式(1)において、R11は、分散安定性の観点から、好ましくはメチル基である。
前記式(1)において、R12は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは水素原子又は炭素数1以上8以下のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。該アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
前記式(1)において、平均付加モル数であるnは、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは4以上、より好ましくは9以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは90以下、より好ましくは45以下、更に好ましくは35以下の数である。
但し、n個のオキシアルキレン基は、互いに同一でも異なっていてもよい。また、オキシアルキレン基が互いに異なる場合は、ブロック付加、ランダム付加、及び交互付加のいずれでもよい。
前記式(1)で表される構成単位を構成するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、好ましくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びアルコキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートは、好ましくはメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びプロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。
以上のとおり、親水性ノニオン性モノマー(b-2)は、好ましくはアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートであり、より好ましくはメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びプロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。
商業的に入手しうる親水性ノニオン性モノマー(b-2)の具体例としては、NKエステルM-20G、同M-40G、同M-90G、同M-230G、同M-450G、同M-900G(以上、新中村化学工業株式会社製);ブレンマーPME-1000、同PME-4000、同50POEP-800B(以上、日油株式会社製);ライトエステル041MA(共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
(アルキル基を有する疎水性モノマー(b-3))
本発明に係る分散剤(B)は、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位及び親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位に加えて、アルキル基を有する疎水性モノマー(b-3)(以下、単に「疎水性モノマー」ともいう)由来の構成単位を更に含むポリマーであることが好ましい。
本発明において「疎水性モノマー」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。
分散剤(B)が疎水性モノマー(b-3)により導入されるアルキル基を有することにより、インクノズル表面において、液体媒体として含まれるエタノールが揮発することでアルキル基同士が寄り集まり、分散剤(B)がポリマー膜となって成膜し、エタノールの過剰な揮発を抑制し、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制することができる。また、メンテナンスにより新たなインクがインクジェットヘッド内に供給される際には、分散剤(B)に導入されているアルキル基部分のエタノールへの親和性によって、インクノズル表面で成膜された分散剤(B)のポリマー膜が溶解し、良好な吐出状態の回復が容易となる。その結果、インクの吐出性が向上し、カスレが生じ難いデキャップ特性をより向上させることができると考えられる。
疎水性モノマー(b-3)は、分子内にアルキル基と重合性基を有する。
疎水性モノマー(b-3)に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下、より更に好ましくは4以下である。疎水性モノマー(b-3)のアルキル基の炭素数が前記の範囲であれば、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制することができ、また、メンテナンスにより新たなインクがインクジェットヘッド内に供給される際には、インクノズル表面の分散剤(B)のポリマー膜の溶解が促進され、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去が容易となり、吐出性及びデキャップ特性を向上させることができる。
疎水性モノマー(b-3)のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖、又は脂環式のアルキル基が挙げられる。
直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
脂環式のアルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。
これらの中でも、疎水性モノマー(b-3)のアルキル基は、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制し、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去を容易にし、吐出性及びデキャップ特性をより向上させる観点から、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、及びn-ヘキシル基から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル基、エチル基、及びn-ブチル基から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル基及びエチル基から選ばれる1種以上である。
前記重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基であり、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基から選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、好ましくは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基であり、より好ましくはアクリロイル基又はメタクリロイル基、更に好ましくはメタクリロイル基である。
疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位は、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制し、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去を容易にし、吐出性及びデキャップ特性をより向上させる観点から、好ましくは下記式(2)で表される脂肪族アルコール由来のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位である。
Figure 2023067125000002

(式(2)中、R21は水素原子又はメチル基を示し、R22は水素原子又は炭素数1以上22以下のアルキル基を示す。)
前記式(2)において、アルキル基であるR22の炭素数は、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制し、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去を容易にし、吐出性及びデキャップ特性をより向上させる観点から、好ましくは1以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下、より更に好ましくは4以下である。
アルキル基であるR22は、直鎖、分岐鎖、又は脂環式の脂肪族アルコール由来のアルキル基である。中でも、アルキル基であるR22は、前記と同様の観点から、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、及びn-ヘキシル基から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル基、エチル基、及びn-ブチル基から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル基及びエチル基から選ばれる1種以上である。
疎水性モノマー(b-3)は、好ましくは炭素数1以上10以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、及びアクリル酸n-ヘキシルから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチルから選ばれる1種以上の炭素数1以上4以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、より更に好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸n-ブチルから選ばれる1種以上の炭素数1以上4以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、より更に好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、及びアクリル酸エチルから選ばれる1種以上を含み、より更に好ましくはメタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルから選ばれる1種以上を含み、より更に好ましくはメタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルから選ばれる1種以上である。
疎水性モノマー(b-3)中の炭素数1以上4以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ノズル表面でのインクの乾燥を抑制し、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去を容易にし、吐出性及びデキャップ特性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
疎水性モノマー(b-3)中のメタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルの合計含有量は、ノズル表面でのインクの乾燥を抑制し、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去を容易にし、吐出性及びデキャップ特性をより向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
商業的に入手しうる疎水性モノマー(b-3)の具体例としては、ライトエステルE(メタクリル酸エチル)、ライトエステルNB(メタクリル酸n-ブチル)、ライトエステルIB(メタクリル酸イソブチル)、ライトエステルTB(メタクリル酸tert-ブチル)(以上、共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
分散剤(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位、親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位、及び疎水性モノマー(b-3)以外の他のモノマー由来の構成単位を有してもよい。他のモノマーとしては、親水性ノニオン性モノマー(b-2)以外の親水性ノニオン性モノマー;疎水性モノマー(b-3)以外の疎水性モノマーが挙げられる。
親水性ノニオン性モノマー(b-2)以外の親水性ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;N-ビニル-2-ピロリドン;N-アルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
疎水性モノマー(b-3)以外の疎水性モノマーとしては、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
芳香族基含有モノマーは、好ましくは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より好ましくは、スチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。芳香族基含有モノマーの分子量は、500未満が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-ビニルトルエン(4-メチルスチレン)、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分散剤(B)の全構成単位中のアニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位の含有量は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは13質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
分散剤(B)の全構成単位中の親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位の含有量は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
分散剤(B)が疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位を含む場合、分散剤(B)の全構成単位中の疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位の含有量は、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制し、より少ないメンテナンス回数でのポリマー膜の除去を容易にし、吐出性及びデキャップ特性をより向上させる観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは9質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。
分散剤(B)が親水性ノニオン性モノマー(b-2)以外の親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位を含む場合、親水性ノニオン性モノマー(b-2)以外の親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位の含有量は、エタノール系媒体中での分散剤のアルミニウムレーキ顔料に対する吸着性を向上させ、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
分散剤(B)が疎水性モノマー(b-3)以外の疎水性モノマー由来の構成単位を含む場合、疎水性モノマー(b-3)以外の疎水性モノマー由来の構成単位の含有量は、エタノール系媒体中での分散剤のアルミニウムレーキ顔料に対する吸着性を向上させ、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
分散剤(B)は、前述のとおり、本発明の効果を損なわない範囲で、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位、親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位以外の他の構成単位を有してもよいが、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位、親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位、及び疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位の合計含有量は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性及び高温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは97質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、より更に好ましくはアニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位及び親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位のみからなる。
分散剤(B)は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性基含有モノマー(b-1)として(メタ)アクリル酸由来の構成単位と、親水性ノニオン性モノマー(b-2)としてアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート由来の構成単位と、疎水性モノマー(b-3)として炭素数1以上10以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むポリマーであり、より好ましくはアニオン性基含有モノマー(b-1)として(メタ)アクリル酸由来の構成単位と、親水性ノニオン性モノマー(b-2)としてメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート由来の構成単位と、アルキル基を有する疎水性モノマー(b-3)として炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含有する。
分散剤Bは、公知の重合法で合成したものを用いてよく、市販品を用いてもよい。
本発明におけるインクノズル表面におけるエタノールの揮発に伴う分散剤(B)のポリマー膜の成膜過程において、エタノールの揮発に伴いアルキル基同士が疎水性相互作用で寄り集まり、このアルキル基が寄り集まった箇所が成膜の起点となってポリマー膜が成膜され、インクノズル表面でのインクの乾燥を抑制することができると考えられる。さらに、メンテナンスにおいては、分散剤(B)に導入されているアルキル基部分のエタノールへの親和性に起因して、供給された新たなインク中のエタノールによりポリマー膜に含まれるアルキル基が寄り集まった箇所(核)が溶解し、ポリマー膜は破れ易く、良好な吐出状態の回復を容易にすることができると考えれる。このように、分散剤(B)が疎水性モノマー(b-3)により導入されるアルキル基を有することにより、インク乾燥におけるエタノールの過剰な揮発を抑制する性質と、メンテナンスにおけるアルキル基部分のエタノールへの親和性に起因する破れ易い性質とを有するポリマー膜を形成することができるため、インクの吐出性がより向上し、カスレが生じ難いデキャップ特性をより向上させることができると考えられる。このような効果を発現するポリマー膜の形成は、分散剤(B)に導入されるアルキル基の種類と数に依存すると考えられる。当該観点から、分散剤(B)が、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位、親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位を含む場合、分散剤(B)に導入されるアルキル基の種類と数の指標として、分散剤(B)のアルキルエステル基のモル濃度は、吐出性及びデキャップ性をより向上させる観点から、分散剤(B)の全構成単位を100モル%として、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは0.7モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、より更に好ましくは3モル%以上、より更に好ましくは4.5モル%以上、より更に好ましくは5モル%以上、より更に好ましくは5.5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、より更に好ましくは8モル%以下である。分散剤(B)のアルキルエステル基のモル濃度は、分散剤(B)のモノマー組成と各モノマーの分子量から算出できる。
分散剤(B)を得る方法は、分子量を制御する観点から、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒は、特に制限はなく、水;炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール類;炭素数3以上8以下のケトン類;酢酸エチル等のエステル類、及びこれらの1種以上と水との混合溶媒などが好ましく挙げられるが、重合温度以上の沸点を有する観点、及び重合後の除去容易性の観点から、好ましくはイソプロパノールである。
重合の際には、重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤は、通常の溶液重合に用いられるものであればいずれも用いることができる。例えば、ジラウロイルパーオキサイド、ピバロイルtert-ブチルペルオキシド、tert-ブチル=ペルオキシネオデカノアート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、好ましくはジラウロイルパーオキサイドである。
重合開始剤の使用量は、分散剤(B)の原料モノマーの総量100質量部に対して、分散剤(B)の分子量分布の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
連鎖移動剤は、必要に応じて用いてもよい。連鎖移動剤を用いる場合には、該連鎖移動剤としては、好ましくはイソプロパノール、チオール化合物が挙げられる。
連鎖移動剤としてイソプロパノールを用いる場合は、溶液重合における溶媒と兼用することができる。
連鎖移動剤は、分子量を制御する観点、及び溶媒との兼用の観点から、イソプロパノールが好ましい。
連鎖移動剤としてチオール化合物を用いる場合には、チオール化合物の使用量は、分散剤(B)の原料モノマーの総量100質量部に対して、分散剤(B)の分子量分布の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
連鎖移動剤と溶媒との兼用としてイソプロパノールを用いる場合には、イソプロパノールの使用量は、分散剤(B)の原料モノマーの総量100質量部に対して、分散剤(B)の分子量分布の観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である。
好ましい重合条件は重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は好ましくは50℃以上90℃以下、重合時間は好ましくは1時間以上20時間以下である。
重合開始剤として有機過酸化物を用いる場合の重合温度は、反応性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上であり、そして、分散剤(B)の分子量分布の観点から、好ましくは85℃以下、より好ましくは83℃以下である。
重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した分散剤(B)を単離することができる。また、分散剤(B)は、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
分散剤(B)は、顔料分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶媒は除去せずに、そのまま分散剤(B)の溶液として用いてもよい。
分散剤(B)の酸価は、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは25mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは50mgKOH/g以上、より更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは400mgKOH/g以下、より好ましくは350mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下、より更に好ましくは250mgKOH/g以下、より更に好ましくは200mgKOH/g以下、より更に好ましくは150mgKOH/g以下、より更に好ましくは130mgKOH/g以下である。酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
分散剤(B)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、分散安定性を向上させ、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは20,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、そして、顔料の分散粒径を低減する観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下、更に好ましくは250,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは150,000以下、より更に好ましくは100,000以下である。重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
分散剤(B)は、アニオン性基の少なくとも一部を中和することによってイオン化されていてもよい。これにより、分散剤(B)中にランダムに電気的反発力を付与することができ、分散剤(B)のアニオン性基がエタノール系媒体中でエタノールに溶媒和することにより、分子内での水素結合の形成を抑制し、エタノール系媒体中で分散剤(B)のポリマー鎖が収縮することなく十分に広がった状態となるため、分散剤(B)のアニオン性基がより効率的にアルミレーキ顔料(A)のアルミニウムとの間のイオン性結合を形成することができ、顔料の分散粒径がより低減され、常温保存安定性及び高温保存安定性をより向上させ、さらに、吐出性及びデキャップ性をより向上させることができると考えられる。当該観点から、分散剤(B)の中和度は、好ましくは0モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上、より更に好ましくは8モル%以上、より更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、より更に好ましくは40モル%以下、より更に好ましくは37モル%以下、より更に好ましくは27モル%以下、より更に好ましくは22モル%以下、より更に好ましくは17モル%以下である。
中和に用いる中和剤としては、アンモニア;エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性をより向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性をより向上させる観点から、好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
中和剤は、中和剤のエタノール溶液又は中和剤の水溶液として用いてもよく、中和剤のエタノール溶液を用いることが好ましい。
(エタノール系顔料分散体の製造)
本発明の顔料分散体の製造方法としては、特に制限はないが、顔料の分散粒径を低減し、常温保存安定性を向上させる観点、更に高温保存安定性を向上させる観点、並びに、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、アルミニウムレーキ顔料(A)、分散剤(B)、エタノール、及び必要に応じて添加剤を含む顔料混合物を分散機で分散処理する方法が好ましい。また、分散処理においては、更に必要に応じて中和剤を加える操作を行って、分散剤(B)のアニオン性基の少なくとも一部を中和し、イオン化させてもよい。
前記顔料混合物の分散処理は、一度の分散で行ってもよく、均一な顔料分散体を得る観点から、予備分散した後、更に分散機で本分散して行ってもよい。
前記分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー等の混練混合装置;アトライター、ボールミル、ガラスビーズやジルコニアビーズ等を使用したサンドミル、ペイントシェーカー等のメディア式分散機;コロイドミル等が挙げられる。
分散処理の温度は、顔料分散体の低粘度化の観点から、好ましくは10℃以上35℃以下、より好ましくは15℃以上30℃以下、更に好ましくは18℃以上27℃以下に保持することが好ましい。
分散処理の時間は、顔料を十分に微細化する観点から、好ましくは2時間以上200時間以下、より好ましくは3時間以上50時間以下である。
本発明の顔料分散体中のアルミニウムレーキ顔料(A)の含有量は、顔料分散体の常温保存安定性及び高温保存安定性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
本発明の顔料分散体中の分散剤(B)の含有量は、顔料分散体の常温保存安定性及び高温保存安定性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
本発明の顔料分散体中のアルミニウムレーキ顔料(A)及び顔料分散剤(B)の合計含有量に対するアルミニウムレーキ顔料(A)の含有量の質量比[アルミニウムレーキ顔料(A)/〔アルミニウムレーキ顔料(A)+顔料分散剤(B)〕]は、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上、より更に好ましくは0.30以上、より更に好ましくは0.35以上、より更に好ましくは0.40以上、より更に好ましくは0.45以上であり、そして、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.75以下、より更に好ましくは0.70以下、より更に好ましくは0.65以下、より更に好ましくは0.60以下、より更に好ましくは0.55以下である。
本発明の顔料分散体中のエタノールの含有量は、顔料分散体の分散安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
(エタノール系顔料分散体の物性)
本発明の顔料分散体中で分散されてなるアルミニウムレーキ顔料(A)の体積平均粒径は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは170nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは140nm以下、より更に好ましくは135nm以下、より更に好ましくは130nm以下であり、そして、顔料分散体の生産性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは90nm以上、より更に好ましくは110nm以上である。前記体積平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の顔料分散体の20℃における粘度は、エタノール系インクへの配合性を容易なものとし、該エタノール系インクの吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2mPa・s以上、より更に好ましくは2.5mPa・s以上、より更に好ましくは3mPa・s以上、より更に好ましくは3.5mPa・s以上、より更に好ましくは4mPa・s以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは20mPa・s以下、より好ましくは15mPa・s以下、更に好ましくは13mPa・s以下、より更に好ましくは10mPa・s以下である。20℃における粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の顔料分散体の20℃におけるpHは、顔料分散体の分散安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは4.5以上、更に好ましくは5以上であり、そして、吐出性の観点から、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7.5以下、より更に好ましくは7以下である。20℃におけるpHは、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の顔料分散体は、安全性の高いアルミニウムレーキ顔料(A)を用いているため、食品分野、医療分野、化粧分野等で用いることが好ましい。中でも、本発明の顔料分散体は、化粧分野で用いることが好ましい。
本発明の顔料分散体を化粧分野で用いる場合には、該顔料分散体は、化粧組成物として毛髪、皮膚(***を含む)、爪に適用するエタノール系インクに用いることが好ましく、毛髪に適用するエタノール系インクに用いることがより好ましい。
前記化粧組成物としては、毛髪用化粧組成物、皮膚用化粧組成物、爪用化粧組成物等が挙げられ、中でも、毛髪用化粧組成物として用いることが好ましい。
毛髪用化粧組成物としては、ヘアマスカラ、ヘアカラー等の染毛剤;ヘアワックス、ヘアスプレー、ヘアムース、ヘアフォーム等のスタイリング剤;育毛剤などに適用することが好ましい。
皮膚用化粧組成物としては、化粧下地化粧料、ファンデーション、コンシーラー等のベースメイクアップ化粧料;ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のポイントメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料;洗顔料、クレンジング化粧料等の皮膚洗浄化粧料;美容液、パック、マッサージ化粧料等の基礎化粧料などに適用することが好ましい。
爪用化粧組成物としては、ネイルエナメル、ネイルグロス等の美爪用化粧料に適用することが好ましい。
また、本発明の顔料分散体を化粧分野で用いる場合には、該顔料分散体は、化粧料を収容する包装容器の表面を装飾するための印刷に用いるエタノール系インクに用いることができる。該包装容器としては、例えば、ファンデーション、アイシャドウ、チーク、アイブロウ等の粉末化粧料を収容する各種コンパクトケースが挙げられる。
本発明の顔料分散体は、顔料の分散粒径が低減され、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れ、さらに、インクジェット記録方式に用いる際に吐出性及びデキャップ性を向上させることができるため、インクジェット記録用として用いることが好ましい。
[インクジェット記録用エタノール系インク]
本発明のインクジェット記録用エタノール系インク(以下、単に「エタノール系インク」ともいう)は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは前記エタノール系顔料分散体と、エタノール溶解性有機溶媒(C)とを含有する。
本発明において、「エタノール溶解性有機溶媒(C)」とは、エタノールと任意の比率で混和する有機溶媒である。
<エタノール溶解性有機溶媒(C)>
エタノール溶解性有機溶媒(C)(以下、単に「有機溶媒(C)」ともいう)は、顔料分散剤による粘度増加を抑制し、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは沸点80℃以上のエタノール溶解性有機溶媒を少なくとも1種含有する。
有機溶媒(C)の沸点は、インクジェットノズル内でのインクの乾燥を抑制し、吐出性及びデキャップ特性を向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上、より更に好ましくは230℃以上、より更に好ましくは250℃以上、より更に好ましくは280℃以上であり、そして、好ましくは400℃以下、より好ましくは370℃以下、更に好ましくは350℃以下、より更に好ましくは330℃以下である。
有機溶媒(C)として2種以上のエタノール溶解性有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒(C)の沸点は、各エタノール溶解性有機溶媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
有機溶媒(C)としては、エタノール以外の1価アルコール、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。
なお、多価アルコールは多価アルコールの概念に含まれる複数を混合して用いることができ、多価アルコールアルキルエーテルも同様に複数を混合して用いることが好ましい。
1価アルコールとしては、1-プロパノール(沸点97℃)、イソプロパノール(沸点83℃)、1-ブタノール(沸点118℃)、2-ブタノール(沸点99℃)、tert-ブタノール(沸点82℃)等が挙げられる。1価アルコールは、エタノールの揮発に伴いインクノズル表面で成膜される分散剤Bのポリマー膜のメンテナンスによる溶解を促進させ、良好な吐出状態の回復が容易となり、デキャップ特性を向上させる効果が得られると考えられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール(沸点197℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(沸点188℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール(沸点210℃)、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,4-ブタンジオール(沸点230℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点203℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点242℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点250℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点196℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点178℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点190℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点175℃)、ペトリオール(沸点216℃)等が挙げられる。また、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、グリセリン(沸点290℃)等の沸点が250℃以上の化合物を沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いることが好ましい。
また、多価アルコールとしては、該多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を用いてもよい。多価アルコールのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、グリセリン変性エチレンオキシド付加物が好ましく挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点122℃)、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点160℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点158℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点227℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点90℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点100℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点276℃)等の沸点が250℃以上の化合物を沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いることが好ましい。
含窒素複素環化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(沸点202℃)、2-ピロリドン(沸点245℃)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(沸点220℃)、ε-カプロラクタム(沸点136℃)等が挙げられる。
アミドとしては、例えば、ホルムアミド(沸点210℃)、N-メチルホルムアミド(沸点199℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)等が挙げられる。
アミンとしては、例えば、モノエタノ-ルアミン(沸点170℃)、ジエタノールアミン(沸点217℃)、トリエタノールアミン(沸点208℃)、トリエチルアミン(沸点90℃)等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)等が挙げられる。また、スルホラン(沸点285℃)及びチオジグリコール(沸点282℃)等の沸点が250℃以上の化合物を沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いることが好ましい。
これらの中でも、インクジェットノズル内でのインクの乾燥を抑制し、吐出性及びデキャップ特性を向上させる観点からは、好ましくは多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくは多価アルコール及び多価アルコール変性アルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはグリセリン、1,2-ヘキサンジオール、及びグリセリン変性エチレンオキシド付加物から選ばれる1種以上である。
(その他の成分)
本発明のエタノール系インクには、アルミニウムレーキ顔料(A)、分散剤(B)、及びエタノール溶解性有機溶媒(C)の他に、界面活性剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤(B)以外の分散剤、エタノール溶解性有機溶媒(C)以外の溶媒、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
また、本発明のエタノール系インクは、インクの粘度を調整し、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、前記エタノール系顔料分散体及びエタノール溶解性有機溶媒(C)に加えて、エタノール溶解性有機溶媒(C)以外の溶媒としてエタノールを添加してもよい。
本発明のエタノール系インクは、印刷品質の観点から、界面活性剤を更に含有してもよい。界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、界面活性剤は、印刷品質の観点から、好ましくはノニオン性界面活性剤である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、(1)炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の高級アルコール、多価アルコール、又は芳香族アルコールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを付加したポリオキシアルキレンのアルキルエーテル、アルケニルエーテル、アルキニルエーテル又はアリールエーテル、(2)炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する高級アルコールと多価脂肪酸とのエステル、(3)炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖の、アルキル基又はアルケニル基を有する、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、(4)炭素数8以上22以下の高級脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物又は該多価アルコールとのエステル化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを付加した化合物、(5)シリコーン系界面活性剤、(6)アセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。
これらの中でも、ノニオン性界面活性剤は、好ましくはシリコーン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤から選ばれる1種以上であり、より好ましくはシリコーン系界面活性剤である。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。これらの中でも、印刷品質の観点から、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンは、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものである。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基又はプロパン-1,2-ジイルオキシ基)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基等が好ましく挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、PEG-3ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。これらの中でも、PEG-11メチルエーテルジメチコンが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及びこれらのエチレンオキシド付加物から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、及びこれらのエチレンオキシド付加物から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、及びそのエチレンオキシド付加物から選ばれる1種以上である。
ノニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社のKFシリーズ;日信化学工業株式会社及びAir Products & Chemicals社製のサーフィノールシリーズ;川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールシリーズ;花王株式会社製の「エマルゲン120(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)」等が挙げられる。
(インクジェット記録用エタノール系インクの製造)
本発明のエタノール系インクの製造方法としては、前記エタノール系顔料分散体、エタノール溶解性有機溶媒(C)、必要に応じてエタノール及び各種添加剤を混合することによって得る方法が好ましい。また、更にフィルター等によるろ過を行ってもよい。
本発明のエタノール系インク中における各成分の含有量及びインク物性は、以下のとおりである。
(アルミニウムレーキ顔料(A)の含有量)
本発明のエタノール系インク中のアルミニウムレーキ顔料(A)の含有量は、着色度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
(顔料分散剤(B)の含有量)
本発明のエタノール系インク中の分散剤(B)の含有量は、エタノール系インクの分散安定性を向上させ、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは4.5質量%以下である。
本発明のエタノール系インク中のアルミニウムレーキ顔料(A)及び顔料分散剤(B)の合計含有量に対するアルミニウムレーキ顔料(A)の含有量の質量比[アルミニウムレーキ顔料(A)/〔アルミニウムレーキ顔料(A)+顔料分散剤(B)〕]は、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上、より更に好ましくは0.30以上、より更に好ましくは0.35以上、より更に好ましくは0.40以上、より更に好ましくは0.45以上であり、そして、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.75以下、より更に好ましくは0.70以下、より更に好ましくは0.65以下、より更に好ましくは0.60以下、より更に好ましくは0.55以下である。
(エタノール溶解性有機溶媒(C)の含有量)
本発明のエタノール系インク中のエタノール溶解性有機溶媒(C)の含有量は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
(エタノールの含有量)
本発明のエタノール系インク中のエタノールの含有量は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
(グリセリンの含有量)
本発明のエタノール系インクがエタノール溶解性有機溶媒(C)としてグリセリンを含有する場合、該エタノール系インク中のグリセリンの含有量は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。
(界面活性剤の含有量)
本発明のエタノール系インクが界面活性剤を含有する場合、該界面活性剤のエタノール系インク中の含有量は、ドット径を調整して印刷品質を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.7質量%以下である。
(水の含有量)
なお、前記エタノール系顔料分散体の製造において、アニオン性基を中和する際に、中和剤水溶液を用いる場合には、得られる前記エタノール系顔料分散体に水が含まれる場合がある。そのため、本発明のエタノール系インクは、前記エタノール系顔料分散体からの持ち込み分の水を含んでもよい。
本発明のエタノール系インクが水を含有する場合、該水のエタノール系インク中の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.7質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下である。
(エタノール系インク物性)
本発明のエタノール系インク中で分散されてなるアルミニウムレーキ顔料(A)の体積平均粒径は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは170nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは140nm以下、より更に好ましくは135nm以下、より更に好ましくは130nm以下であり、そして、エタノール系インクの生産性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは90nm以上、より更に好ましくは110nm以上である。前記体積平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のエタノール系インクの20℃における粘度は、吐出性及びデキャップ性を向上させる観点から、好ましくは1.0mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2.0mPa・s以上、より更に好ましくは2.5mPa・s以上、より更に好ましくは3.0mPa・s以上、より更に好ましくは3.5mPa・s以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは7.0mPa・s以下、より更に好ましくは5.5mPa・s以下、より更に好ましくは4.5mPa・s以下である。エタノール系インクの20℃における粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のエタノール系インクの20℃におけるpHは、エタノール系インクの分散安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは4.5以上、更に好ましくは5以上であり、そして、吐出性の観点から、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7.5以下、より更に好ましくは7以下である。エタノール系インクの20℃におけるpHは、実施例に記載の顔料分散体のpHと同様の方法により測定される。
(インクジェット記録方法)
本発明のエタノール系インクを用いるインクジェット記録方法は、好ましくはインクジェット記録装置を用いて、該エタノール系インクを記録媒体に吐出して記録する方法である。
本発明に係るアルミニウムレーキ顔料(A)は比較的比重が小さい顔料であるため、分散手段を有しないインクジェット記録装置を用いてもよいが、前記エタノール系インク中のアルミニウムレーキ顔料(A)を分散する分散手段を有するインクジェット記録装置を用いることが好ましい。分散手段は、機械力によりアルミニウムレーキ顔料(A)を前記エタノール系インクのエタノール系媒体中に分散させる手段であれば特に制限はない。
前記インクジェット記録装置が分散手段を有する場合には、前記インクジェット記録方法は、前記エタノール系インクを分散手段により再分散する工程1と、該工程1で再分散したエタノール系インクを吐出して記録媒体に記録する工程2を含むことが好ましい。
前記インクジェット記録方法において前記エタノール系インクを用いることにより、印刷中又は印刷休止後に前記エタノール系インク中に分散していたアルミニウムレーキ顔料(A)が沈降又は凝集した場合であっても、前記インクジェット記録装置の分散手段により、アルミニウムレーキ顔料(A)を容易に再分散させて、吐出性及びデキャップ特性を向上させることができる。当該観点から、前記インクジェット記録装置は、好ましくは、少なくともインク吐出手段、前記エタノール系インクを充填する容器(インク充填容器)、インク流路、及び前記エタノール系インクに含まれるアルミニウムレーキ顔料(A)を分散する分散手段を有し、該インク充填容器は、インク予備充填容器を更に有していてもよい。
インク吐出手段としては、サーマル方式又はピエゾ方式のインクジェット吐出ヘッドを用いてインクを吐出する方法がある。吐出方式としては、吐出性及びデキャップ特性の観点から、サーマル方式が好ましい。すなわち、本発明のインクジェット記録方法においては、前記エタノール系インクをサーマル方式用として用い、該エタノール系インクを充填した容器を、インクジェット記録装置に装着し、サーマル方式の吐出ヘッドを用いて該エタノール系インクを吐出して記録媒体に記録する方法が好ましい。
記録媒体としては、特に制限はないが、食品分野、医療分野、化粧分野等の印刷で用いられる記録媒体が挙げられる。例えば、普通紙、上質紙等の高吸水性記録媒体;アート紙、コート紙、合成樹脂フィルム等の低吸水性記録媒体;金属等が挙げられる。
また、本発明のエタノール系インクを化粧組成物として用いる場合には、毛髪、皮膚(***を含む)、爪を記録媒体として適用することもできる。用いることができる化粧組成物の好ましい態様は、前述の顔料分散体で例示したとおりである。
さらに、本発明のエタノール系インクは、化粧料を収容する包装容器の表面を装飾するための印刷に用いるエタノール系インクとして用いる場合には、前述のとおり、例えば、ファンデーション、アイシャドウ、チーク、アイブロウ等の粉末化粧料を収容する各種コンパクトケースの各種包装容器が挙げられる。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
なお、各種物性は下記の方法により測定した。
(1)顔料分散剤(B)の酸価の測定
JIS K 0070の電位差滴定法に準拠して測定した。
(2)顔料分散剤(B)の重量平均分子量の測定
溶離液として0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(体積比)の溶液を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(PW+G4000PW+G2500PW)、流速:1.0mL/min、温度:40℃〕により、標準物質として、予め重量平均分子量が単分散で特定されているポリエチレングリコールを用いて測定した。
(3)固形分濃度の測定
30mLのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度(%)とした。
(4)エタノール系顔料分散体又はエタノール系インクの体積平均粒径の測定
エタノール系顔料分散体又はエタノール系インクの体積平均粒径は、ゼータ電位・粒径測定システム「ELS-8000」(大塚電子株式会社製)を用いて、濃度が約5×10-3%になるように水で希釈した分散液を測定用セルに入れ、温度25℃、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、測定した。
(5)エタノール系顔料分散体又はエタノール系インクの粘度
E型粘度計「TV-25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、20℃にて粘度を測定した。
(6)エタノール系顔料分散体のpH
pH電極「6337-10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F-71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、20℃におけるエタノール系顔料分散体のpHを測定した。
製造例1(顔料分散剤(B-1)の溶液の製造)
2つの滴下ロート1及び2を備えた内容積2Lのガラス製反応容器に、イソプロパノール233gを仕込み、窒素ガス置換を行った。
一方、モノマー(b-1)としてアクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光特級)15g、及びモノマー(b-2)としてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド(EO)平均付加モル数n=23、日油株式会社製、商品名「ブレンマー PME-1000」)85gのモノマー溶液を調製し、滴下ロート1の中に入れて、窒素ガス置換を行った。別途、重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーロイルL」)1.0gをイソプロパノール10.0gと混合した重合開始剤溶液を調製し、滴下ロート2の中に入れて、窒素ガス置換を行った。
次いで、窒素雰囲気下、反応容器内のイソプロパノールを撹拌しながら80℃に維持し、滴下ロート1内の前記モノマー溶液及び滴下ロート2内の前記重合開始剤溶液を各々同時に6時間かけて徐々に反応容器内に滴下しつつ重合を行い、重合反応溶液を得た。
次いで、反応容器内の圧力を50kPa、反応容器内の温度を60℃に調整し、得られた重合反応溶液から、イソプロパノールを留去し、固形分濃度90%となるまで重合反応溶液を濃縮した。
次いで、反応容器内の圧力を常圧、反応容器内の温度を60℃に調整し、窒素雰囲気下で重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド(パーロイルL)0.7gをイソプロパノール10.0gと混合した重合開始剤溶液を加えて1時間撹拌した。
次いで、反応容器内の圧力を2kPa、反応容器内の温度を60℃に調整し、イソプロパノールを留去し、固形分濃度99%以上になるまで重合反応溶液を濃縮した。
次いで、反応容器内の圧力を2kPaを維持したまま、反応容器内の温度を65℃まで昇温した後65℃に維持したまま、46時間加熱熟成を行った。
その後、反応容器内の温度を40℃まで冷却し、1級エタノールを200g添加及び撹拌し、反応容器内のポリマーを再溶解させた。
次いで、反応容器に濃度48%の水酸化ナトリウム水溶液1.74g(水酸化ナトリウムの量 834mg)を加えてポリマーを中和し、更に固形分濃度が20%となるように1級エタノールを加えて、顔料分散剤(B-1)のエタノール溶液を得た。
製造例2~13、C1(顔料分散剤(B-2)~(B-13)、(B-C1)の溶液の製造)
製造例1において、表1に示すモノマー組成及び添加する水酸化ナトリウムの量に変更した以外は同様にして、顔料分散剤(B-2)~(B-13)及び(B-C1)のエタノール溶液を得た。
なお、表1中のモノマーの詳細は下記のとおりである。
アクリル酸:富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光特級
メタクリル酸:富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光特級
MPEGMAA(n=23):メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(EO平均付加モル数=23、日油株式会社製「ブレンマー PME-1000」)
メタクリル酸エチル:富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光特級
メタクリル酸n-ブチル:富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光一級
アクリル酸メチル:富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光特級
アクリル酸n-ブチル:富士フイルム和光純薬株式会社製試薬 和光特級
アクリル酸n-ヘキシル:ポリサイエンス社製試薬 純度98%以上
Figure 2023067125000003
実施例1-1(エタノール系顔料分散体P-1)
250mLのポリプロピレン瓶に、製造例1で得られた顔料分散剤(B-1)の溶液(固形分濃度20%)50部(顔料分散剤(B-1) 有効分10部)、アルミニウムレーキ顔料A-1〔「BC黄色4号AL」(黄色4号アルミニウムレーキ、癸巳化成株式会社製)〕10部、及びエタノール40部を加えて、直径50μmのジルコニアビーズ200gを添加して、ペイントシェーカーにて25℃で15時間分散を行った。目開き75μmメッシュを用いてジルコニアビーズを除去し、固形分濃度を調整して顔料分散体P-1(固形分濃度20%)を得た。
実施例1-2~1-13及び比較例1-1(エタノール系顔料分散体P-2~P-13及びP-C1)
実施例1-1において、表2に示す顔料分散剤(B)の溶液に変更した以外は同様にして、エタノール系顔料分散体P-2~P-13及びP-C1(固形分濃度20%)を得た。得られたエタノール系顔料分散体を用いて、以下の評価を行った。
[評価]
<顔料の分散粒径の低減効果>
〔体積平均粒径〕
実施例1-1~1-13及び比較例1-1の顔料分散体の体積平均粒径を測定した。結果を表2に示す。体積平均粒径が小さいほど、顔料の分散粒径の低減効果が高く、体積平均粒径が200nm以下であれば顔料の分散粒径の低減効果に優れる。
〔粘度〕
実施例1-1~1-13及び比較例1-1の顔料分散体の粘度を測定した。結果を表2に示す。
実施例の顔料分散体P-1~P-13の粘度はいずれも20mPa・s以下であり、顔料分散体を細孔径5μmのセルロースアセテート製シリンジフィルターを用いてろ過した際に、圧力損失によるろ過速度の低下が発生しなかった。この点においても、顔料の分散粒径が低減されていることが分かる。
一方、比較例の顔料分散体P-C1は粘度が高く、上記と同様の方法のろ過を行おうとしたところ、圧力損失により通液が困難となった。
<常温保存安定性の評価>
実施例1-1~1-13及び比較例1-1の顔料分散体を常温(25℃)で静置し、沈降物の有無を目視により確認して、常温保存安定性を下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
A:常温で1週間静置した後においても沈降物が発生していなかった。
B:常温での静置開始24時間後に沈降物の発生が確認されたが、常温で1週間静置した後には透明の上澄み層が発生していることは確認されなかった。
C:常温での静置開始24時間後に沈降物の発生が確認され、常温で1週間静置した後には透明の上澄み層が発生していることが確認された。
<高温保存安定性の評価>
実施例1-1~1-13及び比較例1-1の顔料分散体をガラス製のスクリュー管に密閉し、60℃の恒温槽で4週間静置した後に体積平均粒径及び粘度の測定を行い、下記式により粒径維持率(%)及び粘度維持率(%)を求めた。結果を表2に示す。粒径維持率(%)及び粘度維持率(%)は、いずれも100%に近いほど高温保存安定性に優れる。
粒径維持率(%)=〔保存後の体積平均粒径(nm)/保存前の体積平均粒径(nm)〕×100
粘度維持率(%)=〔保存後の粘度(mPa・s)/保存前の粘度(mPa・s)〕×100
さらに、保存後の顔料分散体の流動性を目視により確認したところ、実施例の顔料分散体P-1~P-13は保存後においても流動性を維持できていることが確認された。
一方、比較例の顔料分散体P-C1は保存後に流動性を維持することができず、ゲル化していた。
Figure 2023067125000004
表2から、実施例の顔料分散体は、比較例と比べて、顔料の分散粒径の低減効果が高く、また、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れることが分かる。
また、実施例の顔料分散体は、高温保存安定性の評価において、粒径維持率が110%以下であり、かつ、粘度維持率が110%以下であるから、固形分濃度20%の高濃度の顔料分散体であっても、高温かつ長期に保存できることが分かる。
実施例2-1(エタノール系インクI-1)
実施例1-1で得られた顔料分散体P-1(固形分濃度20%)を用いて、エタノール系インク中のアルミニウムレーキ顔料(A)の含有量が4%に、顔料分散剤(B)の含有量が4%になるように以下の組成にて混合し、得られた混合液を細孔径1.2μmのセルロースアセテートフィルター(外径2.5cm、ザルトリウス株式会社製)を取り付けた容量20mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することによりエタノール系インクI-1を得た。エタノール系インクI-1の20℃における粘度は4.1mPa・sであった。
<組成>
エタノール系顔料分散体P-1(アルミニウムレーキ顔料A-1を4部、顔料分散剤B-1を4部含む) 40部
グリセリン(沸点290℃) 10部
Liponic EG-1(Lipo Chemicals社製の商品名、グリセリン変性EO付加物(EO平均付加モル数:26)、沸点381℃) 3部
1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃) 3部
KF-6011(信越化学工業製の商品名、ポリエーテル変性シリコーン) 0.5部
エタノール 43.5部
実施例2-2~2-13及び比較例2-1(エタノール系インクI-2~I-13及びI-C1)
実施例2-1において、顔料分散体P-1に代えて、表3に示す顔料分散体をそれぞれ用い、20℃における粘度が4.0~4.4mPa・sの間になるようにグリセリンを表3に示す量に調整し、残部のエタノール量を調整した以外は同様にして、各エタノール系インクを得た。ただし、比較例2-1はグリセリンだけでは粘度が下がりきらなかったため、Liponic EG-1及び1,2-ヘキサンジオールも併せて減量したが、粘度は8.9mPa・sとなった。
<吐出性の評価>
実施例2-1~2-13及び比較例2-1の各エタノール系インクを、予め内部をイオン交換水で十分洗浄して乾燥させたインクジェットカートリッジ「HP62」(HP社製)に充填し、モバイルインクジェットプリンター「HP OfficeJet 200 Mobile」(HP社製、印刷方式:サーマル方式)を用い、記録媒体として普通紙に100%Dutyで高さ12.8mm×幅30mmのベタ画像の印刷を行った。
実施例のエタノール系インクI-1~I-13は全て問題なく吐出可能であった。
一方、比較例のエタノール系インクI-C1は、用いた顔料分散体P-C1の粘度が高く、インク中のグリセリンの含有量を0%まで減らしても所望の粘度にならず、カートリッジ内部のインクヘッド流路に充填がなされず、吐出性の評価を行うことができなかった。このことは、顔料分散体P-C1で用いた顔料分散剤が、親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位を有さないため、該顔料分散体の粘度が十分に低減化されていないことに起因すると考えられる。表3には以下の表記で結果を示す。
A:問題なくインクを吐出することができ、ベタ画像を印刷することができた。
B:インクを吐出することができず、ベタ画像を印刷することができなかった。
<デキャップ特性の評価>
実施例2-1~2-13及び比較例2-1の各エタノール系インクを充填したインクカートリッジを用い、100%Dutyで高さ12.8mm×幅30mmのベタ画像の印刷を行った後、ノズルチェックパターンを印刷し、全ノズルが印刷できていることを確認した。次いでインクカートリッジをプリンター内に入れたまま、温度25℃、湿度50%の無風環境下で30分間静置した。次いで、ヘッドクリーニング操作を1回行い、再度ノズルチェックを行い、吐出できているノズル数の割合(回復率)を確認した。吐出できているノズル数の割合が90%以上である場合、メンテナンスが完了しているとみなして吐出できているノズル数の割合を記録した。吐出できているノズル数の割合が90%未満であった場合、再度メンテナンス操作とノズルチェックを繰り返した。ただし、比較例のインクは6回メンテナンスを行ったがノズル数は90%未満であったため、メンテナンス6回後の吐出したノズル数の割合を記録した。吐出できたノズル数の割合は24%であった。
メンテナンスが必要となる回数が少ないほど、デキャップ特性に優れる。また回復率が高いほど、印刷品質が向上する。結果を表3に示す。
Figure 2023067125000005
表3から、実施例のエタノール系インクは、比較例と比べて、吐出性及びデキャップ特性に優れることが分かる。
実施例3-1~3-4(エタノール系顔料分散体P-14~P-17)
実施例1-1において、表4に示すアルミニウムレーキ顔料(A)の配合量及び顔料分散剤(B)の溶液の種類と固形分としての配合量に変更した以外は同様にして、エタノール系顔料分散体P-14~P-17(固形分濃度20%)を得た。
[評価]
<顔料の分散粒径の低減効果>
〔体積平均粒径〕
実施例3-1~3-4の各エタノール系顔料分散体の体積平均粒径を測定した。結果を表4に示す。
〔粘度〕
実施例3-1~3-4の各エタノール系顔料分散体の粘度を測定した。結果を表4に示す。
エタノール系顔料分散体P-14~P-17の粘度はいずれも20mPa・s以下となり、エタノール系顔料分散体を細孔径5μmのセルロースアセテート製シリンジフィルターを用いてろ過した際に、圧力損失によるろ過速度の低下が発生しなかった。この点においても、顔料の分散粒径が低減されていることが分かる。
<常温保存安定性の評価>
実施例3-1~3-4の顔料分散体を常温で静置し、沈降物の有無を目視により確認し、常温保存安定性を前述の評価基準により評価した。結果を表4に示す。
<高温保存安定性の評価>
実施例3-1~3-4の各エタノール系顔料分散体をガラス製のスクリュー管に密閉し、60℃の恒温槽で4週間静置した後に体積平均粒径及び粘度の測定を行い、前記式により粒径維持率(%)及び粘度維持率(%)を求めた。結果を表4に示す。
さらに、保存後のエタノール系顔料分散体の流動性を目視により確認したところ、エタノール系顔料分散体P-14~P-17は保存後、流動性を維持することが確認できた。
Figure 2023067125000006
表4から、実施例の顔料分散体は、顔料の分散粒径の低減効果が高く、また、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れることが分かる。
実施例4-1~4-4(エタノール系インクI-14~I-17)
実施例2-1において、エタノール系顔料分散体P-1に代えて、表5に示すエタノール系顔料分散体をそれぞれ用い、20℃における粘度が4.0~4.4mPa・sの間になるようにグリセリンを表5に示す量に調整し、残部のエタノールの量を調整した以外は同様にして、各エタノール系インクを得た。得られた各エタノール系インクを用いて、前述の吐出性とデキャップ特性の評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 2023067125000007
表5から、実施例のエタノール系インクは、吐出性及びデキャップ特性に優れることが分かる。
製造例14~21(顔料分散剤B-14~B-21の製造)
製造例1において、表6に示すモノマー組成及び中和に使用する水酸化ナトリウムの量を変更した以外は同様にして、顔料分散剤B-14~B-21の溶液を得た。
Figure 2023067125000008
実施例5-1~5-8(エタノール系顔料分散体P-18~P-25)
実施例1-1において、表7に示す顔料分散剤(B)の溶液に変更した以外は同様にして、表7に示すエタノール系顔料分散体P-18~P-25(固形分濃度20%)を得た。
[評価]
<顔料の分散粒径の低減効果の評価>
〔体積平均粒径〕
実施例5-1~5-8の各エタノール系顔料分散体の体積平均粒径を測定した。結果を表7に示す。
〔粘度〕
実施例5-1~5-8の各エタノール系顔料分散体の粘度を測定した。結果を表7に示す。
エタノール系顔料分散体P-18~P-25の粘度はいずれも20mPa・s以下となり、エタノール系顔料分散体を細孔径5μmのセルロースアセテート製シリンジフィルターを用いてろ過した際に、圧力損失によるろ過速度の低下が発生しなかった。この点においても、顔料の分散粒径が低減されていることが分かる。
<常温保存安定性の評価>
実施例5-1~5-8の顔料分散体を常温で静置し、沈降物の有無を目視により確認し、常温保存安定性を前述の評価基準により評価した。結果を表7に示す。
<高温保存安定性の評価>
実施例5-1~5-8の各エタノール系顔料分散体をガラス製のスクリュー管に密閉し、60℃の恒温槽で4週間静置した後に体積平均粒径及び粘度の測定を行い、前記式により粒径維持率(%)及び粘度維持率(%)を求めた。結果を表7に示す。
さらに、保存後のエタノール系顔料分散体の流動性を目視により確認したところ、エタノール系顔料分散体P-18~P-25は保存後、流動性を維持することが確認できた。
Figure 2023067125000009
表7から、実施例の顔料分散体は、顔料の分散粒径の低減効果が高く、また、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れることが分かる。
また、実施例の顔料分散体は、高温保存安定性の評価において、粒径維持率が110%以下であり、かつ、粘度維持率が110%以下であるから、固形分濃度20%の高濃度の顔料分散体であっても、高温かつ長期に保存できることが分かる。
実施例6-1~6-8(エタノール系インクI-18~I-25)
実施例2-1において、エタノール系顔料分散体P-1に代えて、表8に示す顔料分散体をそれぞれ用い、20℃における粘度が4.0~4.4mPa・sの間になるようにグリセリンの量を表8に示す量に調整し、残部のエタノールの量を調整した以外は同様にして、各エタノール系インクを得た。得られた各エタノール系インクを用いて、前述の吐出性とデキャップ特性の評価を行った。結果を表8に示す。
Figure 2023067125000010
表8から、実施例のエタノール系インクは、吐出性及びデキャップ特性に優れることが分かる。
実施例7-1~7-3(エタノール系顔料分散体P-26~P-28)
実施例1-1において、アルミニウムレーキ顔料A-1に代えて下記のアルミニウムレーキ顔料A-2~A-4を用い、顔料分散剤の種類をB-1に代えて表9に示す顔料分散剤に変更した以外は同様にして、エタノール系顔料分散体P-26~P-28(固形分濃度20%)を得た。
・A-2:「SunCROMA FD&C Yellow 6 AL Lake」(黄色5号アルミニウムレーキ、Sun Chemical製)
・A-3:「SunCROMA FD&C Blue 1 AL Lake」(青色1号アルミニウムレーキ、Sun Chemical製)
・A-4:「SunCROMA FD&C Red 28 AL Lake」(赤色104号-1アルミニウムレーキ、Sun Chemical)
[評価]
<顔料の分散粒径の低減効果の評価>
〔体積平均粒径〕
実施例7-1~7-3の各エタノール系顔料分散体の体積平均粒径を測定した。結果を表9に示す。
〔粘度〕
実施例7-1~7-3の各エタノール系顔料分散体の粘度を測定した。結果を表9に示す。
エタノール系顔料分散体P-26~P-28の粘度はいずれも20mPa・s以下となり、エタノール系顔料分散体を細孔径5μmのセルロースアセテート製シリンジフィルターを用いてろ過した際に、圧力損失によるろ過速度の低下が発生しなかった。この点においても、顔料の分散粒径が低減されていることが分かる。
<常温保存安定性の評価>
実施例7-1~7-3の顔料分散体を常温で静置し、沈降物の有無を目視により確認し、常温保存安定性を前述の評価基準により評価した。結果を表9に示す。
<高温保存安定性の評価>
実施例7-1~7-3の各エタノール系顔料分散体をガラス製のスクリュー管に密閉し、60℃の恒温槽で4週間静置した後に体積平均粒径及び粘度の測定を行い、前記式により粒径維持率(%)及び粘度維持率(%)を求めた。結果を表9に示す。
さらに、保存後のエタノール系顔料分散体の流動性を目視により確認したところ、エタノール系顔料分散体P-26~P-28は保存後、流動性を維持することが確認できた。
Figure 2023067125000011
表9より、実施例の顔料分散体は、顔料の分散粒径の低減効果が高く、また、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れることが分かる。
また、実施例の顔料分散体は、高温保存安定性の評価において、粒径維持率が110%以下であり、かつ、粘度維持率が110%以下であるから、固形分濃度20%の高濃度の顔料分散体であっても、高温かつ長期に保存できることが分かる。
実施例8-1~8-3(エタノール系インクI-26~I-28)
実施例2-1において、エタノール系顔料分散体P-1に代えて、表10に示す顔料分散体を用い、20℃における粘度が4.0~4.4mPa・sの間になるようにグリセリンの量を表10に示す量に調整し、残部のエタノールの量を調整した以外はと同様にして、各エタノール系インクを得た。得られた各エタノール系インクを用いて、前述の吐出性とデキャップ特性の評価を行った。結果を表10に示す。
Figure 2023067125000012
表10から、実施例のエタノール系インクは、吐出性及びデキャップ特性に優れることが分かる。
製造例22~26(顔料分散剤B-22~B-26の製造)
製造例1において、表11に示すモノマー組成及び中和に使用する水酸化ナトリウムの量を変更した以外は同様にして、顔料分散剤B-22~B-26の溶液を得た。
Figure 2023067125000013
実施例9-1~9-5(エタノール系顔料分散体P-29~P-33)
実施例1-1において、表12に示す顔料分散剤(B)の溶液に変更した以外は同様にして、表12に示すエタノール系顔料分散体P-29~P-33(固形分濃度20%)を得た。
[評価]
<顔料の分散粒径の低減効果の評価>
〔体積平均粒径〕
実施例9-1~9-5の各エタノール系顔料分散体の体積平均粒径を測定した。結果を表12に示す。
〔粘度〕
実施例9-1~9-5の各エタノール系顔料分散体の粘度を測定した。結果を表12に示す。
エタノール系顔料分散体P-29~P-33の粘度はいずれも20mPa・s以下となり、エタノール系顔料分散体を細孔径5μmのセルロースアセテート製シリンジフィルターを用いてろ過した際に、圧力損失によるろ過速度の低下が発生しなかった。この点においても、顔料の分散粒径が低減されていることが分かる。
<常温保存安定性の評価>
実施例9-1~9-5の顔料分散体を常温で静置し、沈降物の有無を目視により確認し、常温保存安定性を前述の評価基準により評価した。結果を表12に示す。
<高温保存安定性の評価>
実施例9-1~9-5の各エタノール系顔料分散体をガラス製のスクリュー管に密閉し、60℃の恒温槽で4週間静置した後に体積平均粒径及び粘度の測定を行い、前記式により粒径維持率(%)及び粘度維持率(%)を求めた。結果を表12に示す。
さらに、保存後のエタノール系顔料分散体の流動性を目視により確認したところ、エタノール系顔料分散体P-29~P-33は保存後、流動性を維持することが確認できた。
Figure 2023067125000014
表12から、実施例の顔料分散体は、顔料の分散粒径の低減効果が高く、また、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れることが分かる。
また、実施例の顔料分散体は、高温保存安定性の評価において、粒径維持率が110%以下であり、かつ、粘度維持率が110%以下であるから、固形分濃度20%の高濃度の顔料分散体であっても、高温かつ長期に保存できることが分かる。
実施例10-1~10-5(エタノール系インクI-29~I-33)
実施例2-1において、エタノール系顔料分散体P-1に代えて、表13に示す顔料分散体をそれぞれ用い、20℃における粘度が4.0~4.4mPa・sの間になるようにグリセリンの量を表13に示す量に調整し、残部のエタノールの量を調整した以外は同様にして、各エタノール系インクを得た。得られた各エタノール系インクを用いて、前述の吐出性とデキャップ特性の評価を行った。結果を表13に示す。
Figure 2023067125000015
表13から、実施例のエタノール系インクは、吐出性及びデキャップ特性に優れることが分かる。
本発明によれば、顔料の分散粒径が小さく、かつ、常温保存安定性及び高温保存安定性に優れるエタノール系顔料分散体を提供することができ、該エタノール系顔料分散体を含有するエタノール系インクは、吐出性及びデキャップ特性に優れるため、インクジェット記録用のエタノール系インクとして好適である。本発明のエタノール系顔料分散体は、安全性の高いアルミニウムレーキ顔料(A)を用いるため、食品分野;医療分野;皮膚、毛髪、爪等の化粧分野などで用いることができる。

Claims (14)

  1. アルミニウムレーキ顔料(A)、及び顔料分散剤(B)を含有するエタノール系顔料分散体であって、
    顔料分散剤(B)が、アニオン性基含有モノマー(b-1)由来の構成単位と、オキシアルキレン基を含む親水性ノニオン性モノマー(b-2)由来の構成単位とを含むポリマーである、エタノール系顔料分散体。
  2. 前記顔料分散剤(B)が、アルキル基を有する疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位を更に含むポリマーである、請求項1に記載のエタノール系顔料分散体。
  3. 前記顔料分散剤(B)の全構成単位中の前記疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位の含有量が0.2質量%以上15質量%以下である、請求項2に記載のエタノール系顔料分散体。
  4. 前記疎水性モノマー(b-3)に含まれるアルキル基の炭素数が1以上6以下である、請求項2又は3に記載のエタノール系顔料分散体。
  5. 前記アルミニウムレーキ顔料(A)が、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウムレーキ、及び赤色104号-(1)アルミニウムレーキから選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体。
  6. 前記親水性ノニオン性モノマー(b-2)が、ポリアルキレングリコール鎖を有し、該ポリアルキレングリコール鎖のアルキレンオキシドの平均付加モル数が2以上120以下である、請求項1~5のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体。
  7. 前記親水性ノニオン性モノマー(b-2)が、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである、請求項1~6のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体。
  8. 前記アルミニウムレーキ顔料(A)及び前記顔料分散剤(B)の合計含有量に対する該アルミニウムレーキ顔料(A)の含有量の質量比[アルミニウムレーキ顔料(A)/〔アルミニウムレーキ顔料(A)+顔料分散剤(B)〕]が0.30以上0.70以下である、請求項1~7のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体。
  9. 前記顔料分散剤(B)の酸価が25mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である、請求項1~8のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体。
  10. 前記顔料分散剤(B)のアニオン性基の中和度が0モル%以上50モル%以下である、請求項1~9のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載のエタノール系顔料分散体と、エタノール溶解性有機溶媒(C)とを含有する、インクジェット記録用エタノール系インク。
  12. シリコーン系界面活性剤を更に含有する、請求項11に記載のインクジェット記録用エタノール系インク。
  13. インク吐出方式がサーマル方式であるインクジェット記録に用いる、請求項11又は12に記載のインクジェット記録用エタノール系インク。
  14. インク中の前記アルミニウムレーキ顔料(A)の含有量が2質量%以上である、請求項11~13のいずれかに記載のインクジェット記録用エタノール系インク。
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