JP2023066394A - 構造物保護シート及び補強された構造物の製造方法 - Google Patents

構造物保護シート及び補強された構造物の製造方法 Download PDF

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Toshikatsu Furunaga
正夫 足利
Masao Ashikaga
辰範 北里
Tatsunori Kitazato
有希 松野
Yuki Matsuno
知 谷
Satoru Tani
宏介 保野
Kosuke Yasuno
晃史 寺本
Koji Teramoto
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Abstract

【課題】工期を大幅に削減できるとともに、凹凸を有するような構造物であっても長期にわたって保護することができ、強度にも優れ、構造物に貼り付ける際にシワが発生したり破れたり永久変形したりすることのない構造物保護シートを提供する。【解決手段】構造物側に設けられるポリマーセメント硬化層と、該ポリマーセメント硬化層上に設けられた樹脂層とを備える構造物保護シートであって、前記ポリマーセメント硬化層中又は前記ポリマーセメント硬化層に接する位置に不織布層を有し、伸度1%における引っ張り弾性率が100~300MPaであり、幅10mm、長さ60mmの試験片に切り出し、前記試験片の一方の端から10mmまでを固定台に固定し、他方の端を自由端として前記固定台の縁から垂れ下がらせたときに、前記自由端である他方の端から前記固定台までの距離が30mm以下であることを特徴とする構造物保護シート。【選択図】図1

Description

本発明は、構造物保護シート及び補強された構造物の製造方法に関する。さらに詳しくは、コンクリート等の構造物の表面に保護層を設ける際の工期を大幅に削減できるとともに、凹凸を有するような構造物であっても長期にわたって保護することができ、構造物へ貼り付ける際に破れや永久変形を防止できる構造物保護シート、及びその構造物保護シートを用いた補強された構造物の製造方法に関する。
道路橋、トンネル、水門等河川管理施設、下水道管渠、港湾岸壁等の土木構造物は、その老朽化に伴い、補修工事や補強工事が行われる。補修工事は、欠損部分や脆弱部分を補修した後に塗装材を複数回重ね塗りして行われる。一方、補強工事は、補強すべき部分は全体に補強用塗装材を複数回重ね塗りして行われる。
こうした補修工事や補強工事で施工する重ね塗りは、例えば、コンクリート上に、下塗り、中塗り、上塗りを順に行うが、通常は、中塗りやそれぞれの塗り工程は、塗装を乾燥させるために連続して行うことができず、例えば下塗り、中塗り1回目、中塗り2回目、上塗り1回目、上塗り2回目の計5層の塗装を行う場合は、少なくとも5日間の工期がかかる。しかも、屋外での塗装なので、天候に左右され、雨天では十分な乾燥ができなかったり、塗装工事自体ができないこともある。そのため、工期の短縮が難しく、その分の労務費がかかり、工事、塗工膜の品質(膜厚、表面粗さ、含水量等)が、塗り工程時の外部環境(湿度、温度等)によって影響を受ける結果安定したものとなりにくい。
また、塗装はこて塗りやスプレー塗り等で行われるが、均一な塗工による安定した補修や補強は、職人の技量によるところが大きい。したがって、職人の技量によっても塗工膜の品質はばらつくことになる。さらに、建設従事者の高齢化及び人口の減少に伴い、コンクリートの補修作業や補強作業の従事者が減少している昨今、熟練した職人でなくとも行うことができるより簡易な補修工法が求められている。
こうした課題を解決する技術として、例えば特許文献1では、簡便で、低費用で、工期が短くなり、確実にコンクリートの劣化を防ぐシート及び方法が提案されている。この技術は、樹脂フィルムを有する中間層とその両面に接着樹脂を介して積層された布帛材料からなる表面層とを備えたコンクリート補修用シートを、補修すべきコンクリート面に施工用接着剤で貼付し、その後、貼付したコンクリート補修用シートのコンクリート面とは反対側の表面層に塗料を塗布する、コンクリートの補修方法である。
なお、塗装材についての改良も行われている。例えば特許文献2には、アルカリ骨材反応を防止し、コンクリート構造物のひび割れに対しても優れた追従性を有し、塗膜形成後の温度上昇によっても塗膜のふくれを発生させず、コンクリートの剥落を防止することを可能にする塗工材料を用いたコンクリート構造物の保護方法が提案されている。この技術は、コンクリート構造物の表面に、下地調整材塗膜を形成させ、その塗膜表面に塗膜を形成させる方法である。下地調整材塗膜は、カチオン系(メタ)アクリル重合体エマルション及び無機質水硬性物質を含有する組成物から形成される。下地調整材塗膜表面に形成される塗膜は、アルキル(メタ)アクリレート系エマルション及び無機質水硬性物質を含有する組成物から形成された塗膜であり、20℃における伸び率が50~2000%であり、遮塩性が10-2~10-4mg/cm.dayであり、水蒸気透過性が5g/m・day以上であり、膜厚が100~5000μmである。
特開2010-144360号公報 特開2000-16886号公報
特許文献1等の従来のコンクリート補修シートは、基材と他の層(例えば接着剤層や補強部材)との接着力の違い、基材、接着剤層及び補強部材等の伸びの違い、接着剤層とコンクリートとの接着強度の問題等、解決すべき課題がある。具体的には、基材と補強部材とは接着剤層で貼り合わされているが、コンクリート補修シートの施工時や施工後のコンクリート補修シートに応力が加わった場合、基材、接着剤層及び補強部材等の伸びの違いは、基材と接着剤層との接着力と接着剤層と補強部材との接着力との相違に基づいた層界面の剥離の原因になり得る。
また、コンクリート補修シートに設けられた接着剤層は加熱等で軟化されてコンクリートに貼り合わされるが、十分な接着強度が得られない場合は、コンクリートの表面からコンクリート補修シートが剥がれて補修シートとして機能しないおそれがある。また、コンクリート補修シートを施工した後のコンクリートは、時が経つと膨れる現象が生じることがあったが、この現象は、コンクリート内部の水蒸気が水蒸気透過性の低い補修シートの存在によって逃げ場を失ったためであると考えられる。
更に、コンクリート補修シートをコンクリートに貼り付ける際には、一旦構造物にコンクリート補修シートを貼り付けて位置合わせした後、引っ張ってシワを防ぎつつ所望の形状及び位置に貼り付けられた状態にする必要がある。
しかしながら、従来のコンクリート補修シートでは印加応力に対する伸びが非常に大きく破れたり永久変形したりする問題があった。
また、現場で塗工によって塗膜を形成する方法は、上記背景技術の欄で説明したように、1層塗工する毎に1日かかり、下塗りから上塗り層まで例えば、6層の塗工膜を形成する場合には6日もかかり、しかも膜厚がばらつき、表面粗さや含水量等の品質や特性も安定しにくいという課題がある。
更に、コンクリート補修シートの補修対象は、通常、道路橋、トンネル、水門等河川管理施設、下水道管渠、港湾岸壁等の土木構造物等の大型コンクリート部材であるため、コンクリート補修シート自体にも十分な強度(引張強度、曲げ強度、硬度、表面強度、打ち抜き強度靱性等をいい、本明細書において以下同様とする。)が求められるが、従来のコンクリート補修シートでは十分な強度を備えているとは言い難いという課題がある。
一方、従来のコンクリート補修シートにメッシュ等を積層して十分な強度を付与する方法も検討されているが、コンクリート補修シートが剛直に過ぎて曲げ難くなり補修対象の表面形状への追従性が劣るという問題があった。表面追従性を考慮してメッシュを薄くするといった方法も考えられるが、メッシュを薄くすると構造物等への貼り付け時に変形してシワや外観不良となる問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コンクリート等の構造物の表面に保護層を設ける際の工期を大幅に削減できるとともに、凹凸を有するような構造物であっても長期にわたって保護することができ、強度にも優れ、構造物に貼り付ける際にシワが発生したり破れたり永久変形したりすることのない構造物保護シート、及び、その構造物保護シートを用いた補強された構造物の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、コンクリートの表面に塗工手段で層を形成する施工方法によらないで、凹凸を有するような構造物であっても隙間やシワを生じることなく長期にわたって保護することができる構造物保護シートについて研究した。その結果、コンクリート保護シートに、コンクリートの特性に応じた性能を付与すること、具体的には、コンクリートに生じたひび割れや膨張に追従できる追従性、コンクリート内に水や塩化物イオン等の劣化因子を浸透させない防水性、遮塩性、中性化阻止性、及び、コンクリート中の水分を水蒸気として排出できる水蒸気透過性、等をさらに備えるとともに、コンクリート保護シート自身が適度な引っ張り弾性率と曲げ弾性とを有することを実現し、本発明を完成させた。そして、この技術思想は、コンクリート用でない他の構造物に対しても構造物保護シートとして応用可能である。
(1)本発明に係る構造物保護シートは、構造物側に設けられるポリマーセメント硬化層と、該ポリマーセメント硬化層上に設けられた樹脂層とを備える構造物保護シートであって、上記ポリマーセメント硬化層中又は上記ポリマーセメント硬化層に接する位置に不織布層を有し、伸度1%における引っ張り弾性率が100~300MPaであり、幅10mm、長さ60mmの試験片に切り出し、上記試験片の一方の端から10mmまでを固定台に固定し、他方の端を自由端として上記固定台の縁から垂れ下がらせたときに、上記自由端である他方の端から前記固定台までの距離が30mm以下であることを特徴とする。
この発明によれば、構造物側に設けられるポリマーセメント硬化層は、構造物との密着性等に優れ、適度な引っ張り弾性と適度な曲げ弾性とを有するため、凹凸を有するような構造物であっても長期にわたって保護することができ、強度にも優れ、構造物に貼り付ける際にシワの発生を防ぎ破れたり永久変形したりすることがない。
また、構造物保護シートは工場の生産ラインでの塗工工程と乾燥工程により量産できるので、低コスト化、現場での作業工期の大幅削減、構造物の長期保護を実現することができる。
(2)本発明において、上記不織布層は、無機繊維、有機繊維、及び、無機と有機の混合繊維から選ばれた繊維を織らずにシート状に形成した構造である上記(1)に記載の構造物保護シートであることが好ましい。
この発明によれば、本発明に係る構造物保護シートに適度な引っ張り弾性率と曲げ弾性とを実現できる。
(3)本発明において、上記ポリマーセメント硬化層は、セメント成分及び樹脂を含有する層であって、樹脂が10重量%以上、40重量%以下含有されている上記(1)又は(2)に記載の構造物保護シートであることが好ましい。さらに好ましくは樹脂が20重量%以上、30重量%以下である。
この発明によれば、セメント成分と樹脂成分との比率を制御することでポリマーセメント硬化層を形成しやすくなると共に、ポリマーセメント硬化層は追従性に優れた相溶性のよい層となりやすいので、層自体の密着性が改善される傾向となる。さらに、構造物側のポリマーセメント硬化層が含有するセメント成分はコンクリート等の構造物との密着性を高めるように作用する。
(4)本発明に係る補強された構造物の製造方法は、上記(1)、(2)又は(3)に記載の本発明に係る構造物保護シートを使用した補強された構造物の製造方法であって、構造物上に接着剤を塗布した後に上記構造物保護シートを貼り合わせる、ことを特徴とする。
(5)本発明に係る補強された構造物の製造方法は、上記(1)、(2)又は(3)に記載の本発明に係る構造物保護シートを使用した補強された構造物の製造方法であって、上記構造物保護シートのポリマーセメント硬化層が露出している面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、上記粘着剤層が構造物の表面に接するように上記構造物保護シートを貼り合わせる、ことも特徴とする。
この発明によれば、基材や補強部材を含まない層だけで構成された構造物保護シートを使用するので、凹凸を有する構造物の表面に容易に貼り合わせることができる。その結果、熟練した作業者でなくても構造物の表面に強度に優れた構造物保護シートを安定して設けることができ、工期を大幅に削減できるとともに、構造物を長期にわたって保護することができ、更に位置決め後の引っ張りにおいてシワの発生や破れや永久変形を防止できる。
(6)本発明は、上記構造物と上記接着剤との間に下塗り層を設ける、(4)に記載の補強された構造物の製造方法であることが好ましい。
この発明によれば、構造物と接着剤との間に設ける下塗り層は、相互の密着を高めるように作用するので、構造物保護シートは、長期間安定して構造物を保護することができる。
本発明によれば、コンクリート等の構造物を長期にわたって保護することができるとともに凹凸を有する構造物への貼り付けの際にシワの発生や破れや永久変形を防止できる構造物保護シート、及びその構造物保護シートを用いた補強された構造物の製造方法を提供することができる。特に、構造物保護シートに構造物の特性に応じた性能を付与し、構造物に生じたひび割れや膨張に追従させること、構造物に水や塩化物イオン等の劣化因子を浸透させないようにすること、構造物中の水分や劣化因子を排出できる透過性を持たせること、強度及び曲げ弾性を向上させること等を実現した構造物保護シートを提供することができる。さらに、これまで手塗りで形成されてきた層と比較して品質の安定性、均一性を改善できる利点を有する。
本発明に係る構造物保護シートの一例を示す断面構成図である。 構造物保護シートの施工方法の説明図である。 現場打ち工法に構造物保護シートを適用した例を示す説明図である。 本発明に係る構造物保護シートの曲げ弾性の測定方法の説明図である。
以下、本発明に係る構造物保護シート及びそれを用いた施工方法について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有する限り各種の変形が可能であり、以下の説明及び図面の形態に限定されない。
[構造物保護シート]
本発明に係る構造物保護シート1は、図1又は図2(C)に示すように、構造物21側に設けられたポリマーセメント硬化層3と、ポリマーセメント硬化層3上に設けられた樹脂層2とを備えている。このポリマーセメント硬化層3と樹脂層2の両層は、それぞれ、単層で形成されてもよいし積層として形成されてもよい。また、求められる性能によっては、ポリマーセメント硬化層3と樹脂層2との間に別の層を設けてもよい。
本発明に係る構造物保護シート1は、伸度1%における引っ張り弾性率が100~300MPaである。引っ張り弾性率が100MPa未満であると本発明に係る構造物保護シート1を構造物21に貼り付ける際、位置決め後シワを伸ばす目的等で引っ張ったときに破れたり永久変形したりする。引っ張り弾性率が300MPaを超えると本発明に係る構造物保護シート1が強直に過ぎ、本発明に係る構造物保護シート1を構造物21に貼り付ける際、位置決め後に十分に引っ張りができない。本発明に係る構造物保護シート1の引っ張り弾性率の好ましい下限は100MPa、好ましい上限は200MPaである。
なお、引張伸度1%未満では試料と保持するチャックで生じる滑りにより誤差を生じやい。また、引張伸度1%から5%の間では任意で良いが、5%を超えると降伏点が生じる試料があるため、本発明では構造物に対する貼り合わせ作業を想定して引張伸度1%での応力を用いた。
上記引っ張り弾性率は、例えば、公知の引張試験機を用いて測定することができ、引張伸度0%と1%の2点での、それぞれの応力を用い最小二乗法で算出する方法を用いた(Regression法)。
また、本発明に係る構造物保護シート1は、図4(a)に示したように幅10mm、長さ60mmの試験片40に切り出し、該試験片40の一方の端から10mmまでを固定台41に固定し、他方の端を自由端として固定台41の縁から垂れ下がらせたときに、自由端である他方の端から固定台41までの距離が30mm以下である。
具体的には、試験片40を固定台41の縁から50mm突出するように固定し、突出した方の端部を自由端とすると試験片40の自重により突出部分が垂れ下がる。このとき、試験片40の曲げ弾性が小さいと図4(b)のように試験片40は曲がりやすく固定台41と試験片40の自由端側の端部までの距離Dが短くなり、試験片40の曲げ弾性が大きいと図4(c)のように試験片40は曲がり難く固定台41と試験片40の自由端側の端部までの距離Dが長くなる。
本発明に係る構造物保護シートは、上記距離Dが30mm以下である。距離Dが30mmを超えると、凹凸の角における曲げ加工性が劣り凹凸を有する構造物の表面へ貼り付ける際に隙間が生じてしまう。
このような引っ張り弾性率及び曲げ弾性は、本発明に係る構造物保護シート1を構成する層の材料選択を適宜行うことできるが、特に後述する不織布層の材料及び物性等を適宜制御することで達成できる。
このような本発明に係る構造物保護シート1は、本発明に係る構造物保護シート1を構造物21に貼り付ける際の位置決め後の引っ張り時に弾性変形でき、引っ張りによる破れや永久変形を防止できる。
本発明に係る構造物保護シート1は、厚さ分布が±100μm以内であることが好ましい。この構造物保護シート1は、厚さ分布が上記範囲内であることで、熟練した作業者でなくても厚さバラツキの小さい層を構造物21の表面に安定して設けることができる。また、厚さ分布を上記範囲内に制御することによって、構造物の補強を均一に行いやすくなる。
構造物21側に設けられたポリマーセメント硬化層3は、構造物21との密着性等に優れると共に、不織布層5を有しているので、強度の確保という性質も付与できる。また、ポリマーセメント硬化層3上に設けられた樹脂層2は、防水性、遮塩性、中性化阻止性等の性質を付与できる。
また、構造物保護シート1は工場の生産ラインでの塗工工程と乾燥工程により量産できるので低コスト化、現場での作業工期の大幅削減、構造物の長期保護を実現することができる。その結果、構造物21の表面に貼り合わせる際の工期を大幅に削減できるとともに構造物21を長期にわたって保護することができる。
以下、各構成要素の具体例について詳しく説明する。
(構造物)
構造物21は、本発明に係る構造物保護シート1が適用される相手部材である。
構造物21としては、コンクリートからなる構造物を挙げることができる。
上記コンクリートは、一般的には、セメント系無機物質と骨材と混和剤と水とを少なくとも含有するセメント組成物を打設し、養生して得られる。こうしたコンクリートは、道路橋、トンネル、水門等河川管理施設、下水道管渠、港湾岸壁等の土木構造物として広く使用される。本発明では、コンクリートからなる構造物21に構造物保護シート1を適用することで、コンクリートに生じたひび割れや膨張に追従でき、コンクリート内に水や塩化物イオン等の劣化因子を浸透させず、コンクリート中の水分を水蒸気として排出できる、という格別の利点がある。
構造物21は、表面に凹凸が形成されていてもよく、本発明に係る構造物保護シート1は、上述した引張弾性率及び曲げ弾性を満たすので、凹凸を有する構造物の表面であっても長期にわたって保護することができ、強度にも優れ、構造物に貼り付ける際にシワが発生したり破れたり永久変形したりすることがない。
(ポリマーセメント硬化層)
ポリマーセメント硬化層3は、図2(C)に示すように、構造物側に配置される層である。このポリマーセメント硬化層3は、単層であっても積層であってもよいが、単層とするか積層とするかは、全体厚さ、付与機能(追従性、構造物への接着性等)、工場の製造ライン、生産コスト等を考慮して任意に設定され、例えば製造ラインが短くて単層では所定の厚さにならない場合は、2層以上重ね塗りして形成することができる。なお、例えば2層の重ね塗りは、1層目の層を乾燥した後に2層目の層を形成する。
また、ポリマーセメント硬化層3は、性質の異なるもの同士が積層された構成であってもよい。例えば、樹脂層2側に樹脂成分の割合をより高めた層とすることで、樹脂成分の高い層が樹脂層と接着し、セメント成分の高い層がコンクリート構造物と接着することとなり両者に対する接着性が極めて優れたものとなる。
ポリマーセメント硬化層3は、セメント成分を含有する樹脂(樹脂成分)を塗料状にした、この塗料を塗工して得られる。
上記セメント成分としては、各種のセメント、酸化カルシウムからなる成分を含む石灰石類、二酸化ケイ素を含む粘土類等を挙げることができる。なかでもセメントが好ましく、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強セメント、フライアッシュセメント等を挙げることができる。いずれのセメントを選択するかは、ポリマーセメント硬化層3が備えるべき特性に応じて選択され、例えば、コンクリートからなる構造物21への追従性の程度を考慮して選択される。特に、JIS R5210に規定されるポルトランドセメントを好ましく挙げることができる。
上記樹脂成分としては、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂系、ポリブタジエンゴム系、ゴム特性を示すアクリル系樹脂(例えばアクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴム)等を挙げることができる。こうした樹脂成分は、後述の樹脂層2を構成する樹脂の成分と同じものであることが、ポリマーセメント硬化層3と樹脂層2との密着性を高める観点から好ましい。
また、上記樹脂成分は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれを使用してもよい。ポリマーセメント硬化層3の「硬化」の文言は、樹脂成分を熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等、硬化して重合する樹脂に限定されるという意味ではなく、最終的な層となった場合に硬化するような材料を用いればよいという意味で用いている。
上記樹脂成分の含有量としては、使用する材料等に応じて適宜調整されるが、好ましくはセメント成分と樹脂成分との合計量に対して10重量%以上、40重量%以下とする。10重量%未満であると、樹脂層2に対する接着性の低下やポリマーセメント硬化層3を層として維持することが難しくなる傾向となることがあり、40重量%を超えると、コンクリートからなる構造物21に対する接着性が不十分となることがある。上記観点から上記樹脂成分の含有量のより好ましい範囲は15重量%以上、35重量%以下であるが、さらに好ましくは20重量%以上、30重量%以下である。
ポリマーセメント硬化層3を形成するための塗料は、セメント成分と樹脂成分とを溶媒で混合した塗工液である。樹脂成分については、エマルションであることが好ましい。例えば、アクリル系エマルションは、アクリル酸エステル等のモノマーを乳化剤を使用して乳化重合したポリマー微粒子であり、一例としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一種以上を含有する単量体又は単量体混合物を、界面活性剤を配合した水中で重合してなるアクリル酸系重合物エマルジョンを好ましく挙げることができる。
上記アクリル系エマルションを構成するアクリル酸エステル等の含有量は特に限定されないが、20~100質量%の範囲内から選択される。また、界面活性剤も必要に応じた量が配合され量も特に限定されないが、エマルションとなる程度の界面活性剤が配合される。
ポリマーセメント硬化層3は、その塗工液を離型シート上に塗布し、その後に溶媒(好ましくは水)を乾燥除去することで形成される。例えば、セメント成分とアクリル系エマルジョンとの混合組成物を塗工液として使用し、ポリマーセメント硬化層3を形成する。なお、上記離型シート上には、ポリマーセメント硬化層3を形成した後に樹脂層2を形成してもよいが、離型シート上に樹脂層2を形成した後にポリマーセメント硬化層3を形成してもよい。
具体的には、例えば、離型シートとしての工程紙上に樹脂層をコーティングし、乾燥後ポリマーセメント用の塗工液を塗工、乾燥前のウエットの状態で不織布層を貼り合わせた後乾燥させる。
しかる後不織布層を貼り合わせた面に更にポリマーセメント用の塗工液を塗工し、乾燥させることで本発明に係るポリマーセメント硬化層3に不織布層が存在する構造物保護シート1を得ることができる。
また、離型シートとしての工程紙上に樹脂層をコーティングし、乾燥後ポリマーセメント用の塗工液を塗工、乾燥前のウエットの状態で不織布層を貼り合わせた後、乾燥させるステップを経ずに不織布層を貼り合わせた面に更にポリマーセメント用の塗工液を塗工し、しかる後全体を乾燥させることで本発明に係るポリマーセメント硬化層に不織布層が存在する構造物保護シート1を得ることも可能である。
ポリマーセメント硬化層3の厚さは特に限定されず、構造物21の使用形態(道路橋、トンネル、水門等河川施設、下水道管渠、港湾岸壁等の土木構造物等)、経年度合い、形状等によって任意に設定される。具体的なポリマーセメント硬化層3の厚さとしては、例えば、0.5mm~1.5mmの範囲とすることができる。一例として1mmの厚さとした場合は、その厚さバラツキは、±100μm以内となることが好ましい。こうした精度の厚さは、現場での塗工では到底実現できないものであり、工場の製造ラインで安定して塗工されることにより実現することができる。なお、1mmより厚い場合でも、厚さバラツキを±100μm以内とすることができる。また、1mmよりも薄い場合は、厚さバラツキをさらに小さくすることができる。
このポリマーセメント硬化層3は、セメント成分の存在により、後述の樹脂層2に比べて水蒸気が容易に透過する。このときの水蒸気透過率は、例えば20~60g/m.day程度である。さらに、セメント成分は、例えばコンクリートを構成するセメント成分との相溶性がよく、コンクリート表面との密着性に優れたものとすることができる。また、図2に示すように、構造物21の表面に下塗り層22と接着剤23が順に設けられている場合にも、セメント成分を含有するポリマーセメント硬化層3が接着剤23に密着性よく接着する。また、このポリマーセメント硬化層3は、延伸性があるので、構造物21にひび割れや膨張が生じた場合であっても、コンクリートの変化に追従することができる。
(不織布層)
不織布層5は、図1に示したようにポリマーセメント硬化層3中に存在していてもよいし、ポリマーセメント硬化層3の表面(ポリマーセメント硬化層3と樹脂層2とが接する面又はその反対側の面)に配設されていてもよい。なかでも、不織布層5はポリマーセメント硬化層3の内部に埋設されていることが好ましい。不織布層5がポリマーセメント硬化層3の内部に埋設されていることで、不織布層5とポリマーセメント硬化層3との接触面積が増大し、両者の接着強度が優れたものとしやすくなり、ポリマーセメント硬化層3全体の強度も確保しやすくなる。
一方、不織布層5は、ポリマーセメント硬化層3に接した状態で設けられることが本発明に係る構造物保護シート1の曲げ弾性や引っ張り弾性率を容易に上述した範囲に調整することができるため好ましい。
本発明において、不織布層5にポリマーセメント硬化層3を構成する材料(例えばセメント成分又は樹脂成分)が含侵されていることが好ましい。
不織布層5にポリマーセメント硬化層3を構成する材料が含侵されている状態とは、不織布層5を構成する繊維等の材料間にポリマーセメント硬化層3を構成する材料が充填された状態にあることを意味し、このような含侵状態にあることで、不織布層5とポリマーセメント硬化層3との接着強度が極めて優れたものとしやすくなる。また、不織布層5とポリマーセメント硬化層3の材料との相互作用がより強固となりやすく、構造物保護シート1の強度をより良好にしやすくなる。
不織布層5を構成する不織布としては、繊維を織らずにシート状に形成した不織布であれば特に限定されるものではない。
また、不織布を構成する繊維としては、無機材料、有機材料、及び、無機と有機の混合した混合材料であることが好ましく、繊維を織らずにシート状に形成した不織布であれば特に限定されるものではない。
なかでも、軽さと、調達の経済性から、より好ましくは不織布を構成する繊維の材料は天然繊維、化学繊維及び再生繊維等を用いることができる。
上記天然繊維としては、例えば、木綿、麻、ケナフ等が挙げられる。
上記化学繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂からなる繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維及びこれら樹脂の共重合物、変性物及びこれらの組み合わせからなる合成繊維等を挙げることができる。
上記再生繊維としては、例えば、レーヨンやキュプラ等が挙げられる。
これらの中でも耐水性、耐熱性、寸法安定性、耐候性等に優れるポリエステル繊維、レーヨンが好ましい。
また、不織布層5は、上述した繊維を構成する材料の中に粒子や、帯電防止剤、紫外線安定剤などの添加剤を加えてもよく、本発明の目的を維持できる範囲であれば、リサイクルや、生物由来の材料を用いてもよい。
上記不織布層5は、一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布であっても用いることができる。
上記不織布の目付量としては、上述した引っ張り弾性率及び曲げ弾性を満たすことができる範囲であれば特に限定されないが、例えば、5g/m以上100g/m以下が好ましく、10g/m以上50g/m以下がより好ましい。不織布の目付量が上記範囲未満の場合、不織布が薄くなって上述した引っ張り弾性率の範囲を満たさないことがあり、逆に、不織布の目付量が上記範囲を超える場合、上述した曲げ弾性を満たさなかったり本発明に係る構造物保護シート1の通気性が低下したりするおそれがある。
不織布層5は、ポリマーセメント硬化層3の上面側から見たときに、ポリマーセメント硬化層3の全面をカバーする大きさであってもよく、ポリマーセメント硬化層3よりも小さくてもよい。すなわち、不織布層5の平面視したときの面積は、ポリマーセメント硬化層3の平面視したときの面積と同じであってもよく、小さくてもよいが、不織布層5の平面視面積は、ポリマーセメント硬化層3の平面視面積に対し60%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。60%未満であると本発明に係る構造物保護シートの強度が不十分となることがあり、また、強度のバラツキが生じることもある。なお、上記不織布層5等の平面視面積は、公知の方法で測定できる。
また、不織布層5は、均一な層であってもよく、例えば、碁盤目状、千鳥状、縞状、島状、又は、不規則に圧着部分を設けた層であってもよい。上記圧着部分を設けると、積層加工工程中に不織布層5の繊維の集合体が解けることを防止できる。また、積層加工工程と平行する方向と、直交する方向の、曲げ弾性の差を調整することが出来るので好ましい。
上記不織布層5の圧着や接着には、樹脂製の接着剤を含んでもよい。接着剤で固定されると、積層加工工程中で繊維の集合体が解けることを防止できる。
(樹脂層)
樹脂層2は、図2(C)に示すように、構造物21とは反対側に配置されて、表面に現れる層である。この樹脂層2は、例えば、図1(A)に示すように単層であってもよいし、図1(B)に示すように少なくとも2層からなる積層であってもよい。単層とするか多層とするかは、全体厚さ、付与機能(防水性、遮塩性、中性化阻止性、水蒸気透過性等)、工場の製造ラインの長さ、生産コスト等を考慮に設定され、例えば製造ラインが短くて単層では所定の厚さにならない場合は、2層以上重ね塗りして形成することができる。なお、重ね塗りは、1層目の層を乾燥した後に2層目の層を塗工する。2層目の層は、その後乾燥される。
樹脂層2は、柔軟性を有し、コンクリートに発生したひび割れや亀裂に追従できるとともに防水性、遮塩性、中性化阻止性及び水蒸気透過性に優れた樹脂層を形成できる塗料を塗工して得られる。樹脂層2を構成する樹脂としては、ゴム特性を示すアクリル系樹脂(例えばアクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴム)、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂、ポリブタジエンゴム等を挙げることができる。この樹脂材料は、前記したポリマーセメント硬化層3を構成する樹脂成分と同じものであること好ましい。特にゴム等の弾性膜形成成分を含有する樹脂であることが好ましい。
これらのうち、ゴム特性を示すアクリル系樹脂は、安全性と塗工性に優れている点で、アクリルゴム系共重合体の水性エマルションからなることが好ましい。なお、エマルション中のアクリルゴム系共重合体の割合は例えば30~70質量%である。アクリルゴム系共重合体エマルションは、例えば界面活性剤の存在下で単量体を乳化重合することにより得られる。界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系のいずれもが使用できる。
樹脂層2を形成するための塗料は、樹脂組成物と溶媒との混合塗工液を作製し、その塗工液を離型シート上に塗布し、その後に溶媒を乾燥除去することで、樹脂層2を形成する。溶媒は、水又は水系溶媒であってもよいし、キシレン・ミネラルスピリット等の有機系溶媒であってもよい。後述の実施例では、水系溶媒を用いており、アクリル系ゴム組成物で樹脂層2を作製している。なお、離型シート上に形成される層の順番は制限されず、例えば、上記のとおり樹脂層2、ポリマーセメント硬化層3の順番であってもよいし、ポリマーセメント硬化層3、樹脂層2の順番であってもよい。もっとも、後述の実施例に示すように、離型シート上に樹脂層2を形成し、その後にポリマーセメント硬化層3を形成することが好ましい。
樹脂層2の厚さは、構造物21の使用形態(道路橋、トンネル、水門等河川管理施設、下水道管渠、港湾岸壁等の土木構造物等)、経年度合い、形状等によって任意に設定される。一例としては、50~150μmの範囲内のいずれかの厚さとし、その厚さバラツキは、±50μm以内とすることが好ましい。こうした精度の厚さは、現場での塗工ではとうてい実現できないものであり、工場の製造ラインで安定して実現することができる。
この樹脂層2は、高い防水性、遮塩性、中性化阻止性を有するが、水蒸気は透過することが好ましい。このときの水蒸気透過率としては、例えば、10~50g/m.day程度とすることが望ましい。こうすることにより、構造物保護シート1に高い防水性、遮塩性、中性化阻止性と所定の水蒸気透過性を持たせることができる。さらに、ポリマーセメント硬化層3と同種の樹脂成分で構成されることにより、ポリマーセメント硬化層3との相溶性がよく、密着性に優れたものとすることができる。水蒸気透過性は、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」に準拠して測定した。
また、樹脂層2は、本発明に係る構造物保護シート1のカラーバリエーションを豊富にできる観点から顔料を含有していてもよい。
また、樹脂層2は、無機物を含有していてもよい。無機物を含有することで樹脂層2に耐擦傷性を付与することができる。上記無機物としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物粒子等従来公知の材料が挙げられる。
更に、樹脂層2は、公知の防汚剤を含有していてもよい。本発明に係る構造物保護シートは、通常屋外に設置されるコンクリート構造物の補修に用いられるため、樹脂層2は汚染されることが多いが、防汚剤を含有することで本発明に係る構造物保護シートが汚染されることを好適に防止できる。上記防汚剤としては特に限定されず従来公知の材料が挙げられる。
また、樹脂層2は様々な機能を付与できる添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、セルロールナノファイバー等が挙げられる。
(その他の構成)
作製された構造物保護シート1は、ポリマーセメント硬化層3と樹脂層2との一方の面に離型シートを備えてもよい。離型シートは、例えば、施工現場への際に構造物保護シート1の表面を保護することができ、施工現場では、対象となる構造物21の上(又は下塗り層22又は接着剤23を介して)離型シートを貼り付けたままの構造物保護シート1を接着し、その後離型シートを容易に剥がすことで、施工現場での作業性が大きく改善される。なお、離型シートは、構造物保護シート1の生産工程で利用する工程紙であることが好ましい。
離型シートとして使用される工程紙は、製造工程で使用される従来公知のものであれば、その材質等は特に限定されない。例えば、公知の工程紙と同様、ポリロピレンやポリエチレン等のオレフィン樹脂層やシリコンを含有する層を有するラミネート紙等を好ましく挙げることができる。その厚さも特に限定されないが、製造上及び施工上、取り扱いを阻害する厚さでなければ例えば50~500μm程度の任意の厚さとすることができる。
以上説明した構造物保護シート1は、コンクリート等の構造物21を長期にわたって保護することができる。特に、構造物保護シート1に構造物21の特性に応じた性能を付与し、構造物21に生じたひび割れや膨張に追従させること、構造物21に水や塩化物イオン等の劣化因子を浸透させないようにすること、構造物中の水分や劣化因子を排出できる透過性を持たせることができ、更に凹凸を有する構造物への貼り付け時に好適に引っ張ることができるのでシワの発生や破れや永久変形を防止できる。そして、こうした構造物保護シート1は、工場で製造できるので、特性の安定した高品質のものを量産することができる。その結果、職人の技術に寄らずに施工でき、工期の短縮と労務費の削減を実現できる。
[構造物保護シートを用いた補強された構造物の製造方法]
本発明に係る構造物保護シートを用いた補強された構造物の製造方法は、図2に示すように、上記本発明に係る構造物保護シート1を使用した施工方法であって、構造物21上に接着剤23を塗布した後に構造物保護シート1を貼り合わせる、ことを特徴とする。この施工方法は、構造物21の表面に構造物保護シート1を容易に貼り合わせることができる。その結果、熟練した作業者でなくとも厚さのバラツキの小さい層で構成された構造物保護シート1を、構造物21に設けることができ、工期を大幅に削減できるとともに、構造物21を長期にわたって保護することができる。
図2は、構造物保護シート1の施工方法(補強された構造物の製造方法)の説明図である。施工は、図2(A)に示すように、構造物21の表面に下塗り層22を形成する。下塗り層22は、エポキシ樹脂等の樹脂と溶媒とを混合した塗工液を、構造物21に塗工し、その後、塗工液中の溶媒を揮発乾燥させて形成することができる。このときの溶媒も上記同様の水等を挙げることができる。下塗り層22の厚さは特に限定されないが、例えば100~150μmの範囲内とすることができる。構造物21と接着剤23との間に設ける下塗り層22は、相互の密着を高めるように作用するので、構造物保護シート1は、長期間安定して構造物21を保護することができる。なお、構造物21にひび割れや欠損が生じている場合には、それを補修した後に下塗り層22を設けることが好ましい。また、補修は特に限定されないが、通常セメントモルタルやエポキシ樹脂等が使われる。
下塗り層22を形成した後、図2(B)に示すように、接着剤23が塗布される。塗布された接着剤23は、乾燥させることなく、図2(C)に示すように、その上に構造物保護シート1を貼り合わせる。接着剤23としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム特性を示すアクリル系樹脂(例えばアクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴム)を用いた接着剤等を挙げることができる。なかでも、構造物保護シート1のポリマーセメント硬化層3を構成する樹脂成分と同種の樹脂成分からなる接着剤23は、ポリマーセメント硬化層3との接着強度が高くなるのでより好ましい。接着剤23の厚さは特に限定されない。接着剤23は、通常、コンクリートに刷毛塗り又はスプレー塗り等の手段で塗布した後に時間経過によって自然乾燥させて硬化する。
本発明に係る構造物保護シートを用いた補強された構造物の製造方法は、上記本発明に係る構造物保護シートを使用した施工方法であって、上記構造物保護シートのポリマーセメント硬化層が露出している面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、上記粘着剤層が構造物の表面に接するように上記構造物保護シートを貼り合わせる、ことも特徴とする。この施工方法は、構造物の表面に構造物保護シートを容易に貼り合わせることができる。その結果、熟練した作業者でなくとも厚さのバラツキの小さい層で構成された構造物保護シートを、構造物に設けることができ、工期を大幅に削減できるとともに、構造物を長期にわたって保護することができる。
上記構造物保護シートのポリマーセメント硬化層が露出している面に塗布する粘着剤としては特に限定されず、コンクリート等の構造物の表面に塗布可能で樹脂フィルムを粘着可能な公知のものを使用でき、例えば、アクリル系粘着剤等が好適に用いられる。
上記粘着剤の塗布量としては、例えば、20g/m以上100g/m以下が好ましく、かつ、形成する粘着剤層の粘着力としては30N/25mm以上60N/25mm以下が好ましい。このように、上記粘着剤がアクリル系粘着剤であり、上記粘着剤の塗布量及び粘着剤層の粘着力が上記範囲内であることによって、本発明に係る構造物保護シートをコンクリート構造物等の構造物の壁面に確実に固定することができる。
また、上記粘着剤の塗布量が上記範囲内であることによって、コンクリート構造物等の壁面に微細な凹み等が存在する場合でもこの凹みに粘着層を埋め込んで、当該構造物保護シートのコンクリート構造物等の構造物に対する密着性を高めることができる。
図3は、現場打ち工法に構造物保護シート1を適用した例を示す説明図である。現場打ち工法とは、作業現場で型枠24を形成し、その型枠24内にコンクリート組成物21’を流し込み、放置して硬化させてコンクリートからなる構造物21を得る工法である。この現場打ち工法において、硬化したコンクリートからなる構造物21を形成した後、その表面に構造物保護シート1を貼り合わせることで、劣化が生じにくい構造物21とすることができる。貼り合せに当たっては、コンクリートからなる構造物21の表面に下塗り層22を塗工・乾燥し、その上に接着剤23を塗工した後、構造物保護シート1を貼り合せる。その後、通常、自然放放置して接着剤23を乾燥硬化して、構造物保護シート1を接着する。
一方、既にひび割れ等が生じた構造物21に対しては、欠損部分を補修した後に、上記同様の施工方法により構造物保護シート1を貼り合わせる。こうしてコンクリートからなる構造物21の寿命を延ばすことができる。
実施例と比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
PPラミネート紙からなる厚さ130μmの離型シートを用いた。この離型シート上に樹脂層を以下の方法で形成した。
まず、アクリルシリコーン樹脂60質量部と、二酸化チタン25質量部と、酸化第二鉄10質量部と、カーボンブラック5質量部とを含有する水溶性アクリル系エマルジョンを準備した。この水溶性アクリル系エマルジョンを上記離型シート上に塗布した後、加熱処理をしてこれを硬化させて、樹脂層を形成した。樹脂層の乾燥後の厚さは0.1mmとなるようにした。
次に、樹脂層の上にポリマーセメント硬化層を形成した。
具体的には、セメント混合物を45質量部含む水系のアクリルエマルジョンをポリマーセメント層形成用組成物として準備した。ここで、セメント混合物は、ポルトランドセメント70±5質量部、二酸化ケイ素10±5質量部、酸化アルミニウム2±1質量部、酸化チタン1~2質量部を少なくとも含むものであり、アクリルエマルジョンは、アクリル酸エステルモノマーを乳化剤として使用して乳化重合したアクリル酸系重合物53±2質量部、水43±2質量部を少なくとも含むものである。これらを混合したポリマーセメント層形成用組成物を塗布乾燥して得られたポリマーセメント硬化層は、ポルトランドセメントをアクリル樹脂中に50質量%含有する複合層である。
上記ポリマーセメント硬化層形成用組成物を、樹脂層の上に乾燥後の厚さが0.3mmとなるように塗工し、乾燥する前に、目付量が35g/mのPET系スパンデックスからなる不織布層を配設した。ポリマーセメント硬化層3の中に不織布が沈みこんだ状態で乾燥した。
こうして合計厚さ0.6mmの構造物保護シートを作製した。なお、この構造物保護シートは、約25℃に管理された工場内で連続生産され、離型シートを含んだ態様でロール状に巻き取った。
[引っ張り弾性率の測定]
実施例1で得られた構造物保護シート1の引っ張り弾性率を、引張試験機(株式会社島津製作所製、AGX-V)を用いて測定した。
実施例1の引っ張り弾性率は131MPaであった。
[曲げ弾性の測定]
実施例1で得られた構造物保護シート1から図4に示した試験片40(幅10mm、長さ60mm)を作製し、試験片40の一方の端から10mmまでを固定台41に固定し、他方の端を自由端として固定台41の縁から垂れ下がらせ、自由端である他方の端から固定台41までの距離Dを測定したところ22mmであった。
[加工適性]
実施例1で得られた構造物保護シートを、縦方向に300mm、横方向に300mm切り出し、ポリマーセメント硬化層が露出している面に、アプリケーターを用いて粘着剤(DIC社製SP-1090NT)を塗布し、80℃の熱風オーブンで10分乾燥し、厚さ100μmの粘着剤層を形成し試料を作製した。
得られた試料を段差5mmのコンクリート試験体に、粘着剤層がコンクリート試験体に接する向きで、試料の縦方向150mmの位置でコンクリート段差に接するように貼り付けた。その際、段差の下側を先に貼り、試料を手で上側に引っ張りながら、段差に押し込みながら実施した。
構造物保護シートからなる試料を手で引っ張ったときに、延びずに変形しなかった場合を「〇」、伸びて平面性が変形した場合を「×」と評価した。
また、段差に押し込んだ部分を24時間後に観察し、段差で構造物保護シートからなる試料を目視で観察し、浮き上がりが無かった場合を「〇」、浮き上がりが生じたり、剥がれが生じたりした場合を「×」と評価した。
[総合判定]
加工適正の評価で、両方とも〇であった場合を「〇」、いずれか一方でも×の場合を「×」と総合判定した。
実施例1に係る構造物保護シート1は引っ張り弾性率及び曲げ弾性に優れ構造物に貼り付ける際に適切な弾性を保つため施工作業の都合がよく、シワの発生や破れたり永久変形したりすることがないものであった。
(実施例2、3、比較例1~5)
樹脂層の厚みと不織布層の種類及び目付量を表1に示した通りに変更した以外は実施例1と同様にして構造物保護シートを作製し、実施例1と同様にして引っ張り弾性率及び曲げ弾性を測定した。
Figure 2023066394000002
1 構造物保護シート
2 樹脂層
3 ポリマーセメント硬化層
5 不織布層
21 構造物
21’コンクリート組成物(構造物形成組成物)
22 下塗り層
23 接着剤
24 型枠

Claims (6)

  1. 構造物側に設けられるポリマーセメント硬化層と、該ポリマーセメント硬化層上に設けられた樹脂層とを備える構造物保護シートであって、
    前記ポリマーセメント硬化層中又は前記ポリマーセメント硬化層に接する位置に不織布層を有し、
    伸度1%における引っ張り弾性率が100~300MPaであり、
    幅10mm、長さ60mmの試験片に切り出し、前記試験片の一方の端から10mmまでを固定台に固定し、他方の端を自由端として前記固定台の縁から垂れ下がらせたときに、前記自由端である他方の端から前記固定台までの距離が30mm以下である
    ことを特徴とする構造物保護シート。
  2. 前記不織布層は、無機繊維、有機繊維、及び、無機と有機の混合繊維から選ばれた繊維を織らずにシート状に形成した構造である請求項1記載の構造物保護シート。
  3. 前記ポリマーセメント硬化層は、セメント成分及び樹脂を含有する層であって、前記樹脂が10重量%以上、40重量%以下含有されている請求項1又は2記載の構造物保護シート。
  4. 請求項1又は2記載の構造物保護シートを使用した補強された構造物の製造方法であって、構造物上に接着剤を塗布した後に前記構造物保護シートを貼り合わせることを特徴とする補強された構造物の製造方法。
  5. 前記構造物と前記接着剤との間に下塗り層を設ける、請求項4記載の補強された構造物の製造方法。
  6. 請求項1又は2記載の構造物保護シートを使用した補強された構造物の製造方法であって、前記構造物保護シートのポリマーセメント硬化層が露出している面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、前記粘着剤層が構造物の表面に接するように前記構造物保護シートを貼り合わせることを特徴とする補強された構造物の製造方法。

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