JP2023054990A - 面発光レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】出射効率が高く、低閾値電流密度で動作し、高出力のフォトニック結晶面発光レーザを提供する。【解決手段】基板12上に設けられた第1の半導体層と、第1の半導体層上に設けられた活性層15と、活性層上に設けられ第1の半導体層とは反対導電型の第2の半導体層と、第1の半導体層に含まれ活性層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を備える空孔層14Pと、第2の半導体層上に設けられ反射面を有する反射層20Bを備えている。基板の裏面に光出射面12Rを有し、空孔層は空孔層内に定在する光を空孔層と直交する方向へ対称な電界振幅で回折する際の対称中心面である回折面を有し、回折面から光出射面側に回折された第1の回折光Ldと、回折面から反射層側に回折され反射面で反射された第2の回折光Lrとの合成光の光強度が、第1の回折光の光強度より大きくなるように回折面と反射面との離間距離が設けられている。【選択図】図1A
Description
本発明は、面発光レーザ素子、特にフォトニック結晶を有する面発光レーザ素子に関する。
近年、フォトニック結晶(PC:Photonic Crystal)を用いた、フォトニック結晶面発光レーザ(Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser)の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、単一格子のフォトニック結晶を有し、高い回折効果を有するフォトニック結晶面発光レーザが開示されている。
また、特許文献2には、多重格子フォトニック結晶層を有し、活性層の平坦性及び結晶性が高く、かつ光取り出し効率が高く、低閾値電流密度及び高量子効率で発振動作することができるフォトニック結晶面発光レーザについて開示されている。
Y. Liang et al.: Phys.Rev. B vol.84, 195119 (2011)
しかしながら、さらに出射効率が高く、低閾値電流密度及び高量子効率で動作するなど、フォトニック結晶面発光レーザの高性能化が求められている。
本願の発明者は、フォトニック結晶内の回折面(波源位置)に着目し、回折光と反射ミラーによる反射回折光との干渉条件を特定することにより、出射効率が高く、高性能なフォトニック結晶面発光レーザを実現することができるという知見を得た。
本願発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、出射効率が高く、低閾値電流密度で動作し、高出力のフォトニック結晶面発光レーザを提供することを目的としている。
本発明の1実施態様による面発光レーザ素子は、
透光性の基板と、
前記基板上に設けられた第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられ、前記第1の半導体層とは反対導電型の第2の半導体層と、
前記第1の半導体層に含まれ、前記活性層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を備えるフォトニック結晶層である空孔層と、
前記第2の半導体層上に設けられ、反射面を有する反射層と、を備え、
前記基板の裏面に光出射面を有し、
前記空孔層は、前記空孔層内に定在する光を前記空孔層と直交する方向へ対称な電界振幅で回折する際の対称中心面である回折面を有し、
前記回折面から前記光出射面側に回折された第1の回折光と、前記回折面から前記反射層側に回折され前記反射面で反射された第2の回折光との合成光の光強度が、前記第1の回折光の光強度より大きくなるように前記回折面と前記反射面との離間距離が設けられている。
透光性の基板と、
前記基板上に設けられた第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられ、前記第1の半導体層とは反対導電型の第2の半導体層と、
前記第1の半導体層に含まれ、前記活性層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を備えるフォトニック結晶層である空孔層と、
前記第2の半導体層上に設けられ、反射面を有する反射層と、を備え、
前記基板の裏面に光出射面を有し、
前記空孔層は、前記空孔層内に定在する光を前記空孔層と直交する方向へ対称な電界振幅で回折する際の対称中心面である回折面を有し、
前記回折面から前記光出射面側に回折された第1の回折光と、前記回折面から前記反射層側に回折され前記反射面で反射された第2の回折光との合成光の光強度が、前記第1の回折光の光強度より大きくなるように前記回折面と前記反射面との離間距離が設けられている。
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
1.フォトニック結晶面発光レーザの構造
フォトニック結晶面発光レーザ(以下、PCSELとも称する。)は、発光素子を構成する半導体発光構造層(n側ガイド層、発光層、p側ガイド層)と平行方向に共振器層を有し、当該共振器層に直交する方向にコヒーレントな光を放射する素子である。
1.フォトニック結晶面発光レーザの構造
フォトニック結晶面発光レーザ(以下、PCSELとも称する。)は、発光素子を構成する半導体発光構造層(n側ガイド層、発光層、p側ガイド層)と平行方向に共振器層を有し、当該共振器層に直交する方向にコヒーレントな光を放射する素子である。
一方、半導体発光構造層を挟む一対の共振器ミラー(ブラッグ反射鏡)を有する分布ブラッグ反射型(Distributed Bragg Reflector:DBR )レーザが知られているが、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)は、以下の点でDBRレーザとは異なっている。すなわち、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)では、フォトニック結晶層に平行な面内を伝搬する光波はフォトニック結晶の回折効果により回折され2次元的な共振モードを形成するとともに、当該平行面に垂直な方向にも回折される。すなわち、共振方向(フォトニック結晶層に平行な面内)に対して、光取り出し方向が垂直方向である。
図1Aは、本発明の第1の実施形態によるフォトニック結晶面発光レーザ素子(PCSEL素子)10の構造の一例を模式的に示す断面図である。図1Aに示すように、半導体構造層11が透光性の基板12上に形成されている。また、半導体構造層11は、六方晶系の窒化物半導体からなる。半導体構造層11は、例えば、GaN系半導体からなる。
より詳細には、基板12上に複数の半導体層からなる半導体構造層11、すなわちn-クラッド層(第1導電型の第1のクラッド層)13、n側に設けられたガイド層であるn側ガイド層(第1のガイド層)14、光分布調整層23、活性層15、p側に設けられたガイド層であるp側ガイド層(第2のガイド層)16、電子障壁層(EBL:Electron Blocking Layer)17、p-クラッド層(第2導電型の第2のクラッド層)18、p-コンタクト層19がこの順で形成されている。なお、第1導電型がn型、第1導電型の反対導電型である第2導電型がp型の場合について説明するが、第1導電型及び第2導電型がそれぞれp型、n型であってもよい。
n側ガイド層14は、下ガイド層14A、フォトニック結晶層(PC層)である空孔層14P及び埋込層14Bからなる。なお、埋込層14Bは、第1の埋込層14B1及び第2の埋込層14B2からなる。
なお、本明細書において、「n側」、「p側」は、必ずしもn型、p型を有することを意味するものではない。例えば、n側ガイド層は活性層よりもn側に設けられたガイド層を意味し、アンドープ層(又はi層)であってもよい。
また、n-クラッド層13は単一層ではなく複数の層から構成されていてもよく、その場合、全ての層がn層(nドープ層)である必要はなく、アンドープ層(i層)を含んでいてもよい。ガイド層16、p-クラッド層18についても同様である。また、上記した全ての半導体層を設ける必要はなく、n型半導体層、p型半導体層、及びこれらの層に挟まれた活性層(発光層)を有する構成であればよい。
また、基板12の裏面にはn電極(カソード)20A(第1極性の電極)が形成され、p-コンタクト層19上(上面)にはp電極(アノード)20B(第2極性の電極)が形成されている。半導体構造層11の側面及び基板12の上部の側面は、SiO2などの絶縁膜21で被覆されている。また、p電極20Bの上面の縁部を覆うように、p電極20Bの側面及びpコンタクト層19の表面には絶縁膜21が被覆されている。また、p電極20B(反射層)の表面は反射面として機能し、基板12の裏面上には反射防止膜27が設けられている。
活性層15の放射光は空孔層(PC層)14Pによって回折される。空孔層14Pによって回折され、空孔層14Pから直接放出された光(直接回折光Ld:第1の回折光)と、空孔層14Pの回折によって放出され、p電極20Bによって反射された光(反射回折光Lr:第2の回折光)とが基板12の裏面(出射面)12Rの光出射領域20Lから外部に出射される。
図1Bは、図1Aの空孔層14P(フォトニック結晶層)及び空孔層14P中に配列された空孔(air hole)14Kを模式的に示す拡大断面図である。空孔14Kは、結晶成長面(半導体層成長面)、すなわちn側ガイド層14に平行な面において、例えば正方格子状に周期PCを有して、空孔14Kがそれぞれ正方格子点位置に2次元配列されてn側ガイド層14内に埋め込まれて形成されている。
図2Aは、PCSEL素子10の上面を模式的に示す平面図、図2Bは、空孔層14Pのn側ガイド層14に平行な面における断面を模式的に示す断面図、図2Cは、PCSEL素子10の下面を模式的に示す平面図である。
図2Bに示すように、空孔層14Pにおいて空孔14Kは、例えば矩形の空孔形成領域14R内に周期的に配列されて設けられている。図2Cに示すように、n電極(カソード)20Aは、空孔層14Pに対して垂直方向から見たときに空孔形成領域14Rに重ならないように空孔形成領域14Rの外側に環状の電極として設けられている。n電極20Aの内側の領域が光出射領域20Lである。また、n電極20Aに電気的に接続され、外部からの給電用のワイヤを接続するボンディングパッド20Cを備えている。
2.PCSEL素子10の作製工程
以下に、本発明の第1の実施形態であるPCSEL素子10の作製工程について詳細に説明する。結晶成長方法としてMOVPE(Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法を用い、常圧(大気圧)成長により成長基板12上に半導体構造層11を成長した。なお、以下に説明する工程でSnはステップnを意味する。
以下に、本発明の第1の実施形態であるPCSEL素子10の作製工程について詳細に説明する。結晶成長方法としてMOVPE(Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法を用い、常圧(大気圧)成長により成長基板12上に半導体構造層11を成長した。なお、以下に説明する工程でSnはステップnを意味する。
また、下記に示す層厚、キャリア濃度、3族(III族)及び5族(V族)原料等、温度等は、特に指定しない限り、例示に過ぎない。
(S1)基板準備工程
主面が、Ga原子が最表面に配列した{0001}面である+c面のGaN単結晶を用意した。主面はジャストでも、例えば、m軸方向に1°程度までオフセットした基板でも良い。例えば、m軸方向に1°程度までオフセットした基板は、広範な成長条件下にて鏡面成長を得ることができる。
主面が、Ga原子が最表面に配列した{0001}面である+c面のGaN単結晶を用意した。主面はジャストでも、例えば、m軸方向に1°程度までオフセットした基板でも良い。例えば、m軸方向に1°程度までオフセットした基板は、広範な成長条件下にて鏡面成長を得ることができる。
主面と対向する光出射領域20Lが設けられた基板面(裏面)は、N原子が最表面に配列した(000-1)面である「-c」面である。-c面は酸化等に対して耐性があるので光取り出し面として適している。
本実施例では、GaN基板12として、n型GaN単結晶を用いた。n型GaN基板12nは、電極とのコンタクト層の機能を有している。
(S2)n-クラッド層形成工程
+c面GaN基板12上に、n-クラッド層13としてAl組成が4%のn型Al0.04Ga0.96N層を2μmの層厚で成長した。また、Siドープを行い、室温でのキャリア濃度は凡そ4×1017 cm-3であった。
+c面GaN基板12上に、n-クラッド層13としてAl組成が4%のn型Al0.04Ga0.96N層を2μmの層厚で成長した。また、Siドープを行い、室温でのキャリア濃度は凡そ4×1017 cm-3であった。
(S3a)下ガイド層+空孔準備層の形成工程
続いて、n側ガイド層14としてn型GaNを360nmの層厚で成長した。Siドープを行い、キャリア濃度は凡そ4×1017cm-3であった。この成長層は、下ガイド層14Aと、空孔層14Pを形成するための準備層である。
続いて、n側ガイド層14としてn型GaNを360nmの層厚で成長した。Siドープを行い、キャリア濃度は凡そ4×1017cm-3であった。この成長層は、下ガイド層14Aと、空孔層14Pを形成するための準備層である。
なお、以下においては、説明の簡便さ及び理解の容易さのため、このような成長層が形成された基板12(成長層付き基板)を、単に基板と称する場合がある。
(S3b)ホール形成工程
上記準備層を形成後、基板をMOVPE装置のチャンバより取り出し、成長層表面に微細な孔部(ホール)を形成した。洗浄により清浄表面を得た後、シリコン窒化膜(SiNx)をプラズマCVDを用いて成膜した。この上に電子線描画用レジストをスピンコートで塗布し、電子描画装置に入れて2次元周期構造のパターニングを行った。
上記準備層を形成後、基板をMOVPE装置のチャンバより取り出し、成長層表面に微細な孔部(ホール)を形成した。洗浄により清浄表面を得た後、シリコン窒化膜(SiNx)をプラズマCVDを用いて成膜した。この上に電子線描画用レジストをスピンコートで塗布し、電子描画装置に入れて2次元周期構造のパターニングを行った。
以下においては、空孔層14Pが二重格子フォトニック結晶層である場合を例にその形成方法について説明するが、単一格子フォトニック結晶層においても同様に形成することができる。なお、本発明の第1の実施形態においては、空孔層14Pは単一格子フォトニック結晶層であり、第2の実施形態においては、二重格子フォトニック結晶である。
図3は、レジストの主開口K1及び副開口K2、及び、エッチング後のホール14H1,14H2を模式的に示す平面図である。図3に示すように、長円形状の主開口K1及び主開口K1よりも小なる副開口K2からなる開口対を周期PCで正方格子状にレジストの面内で2次元配列したパターニングを行った。なお、図面の明確さのため、開口部にハッチングを施して示している。
より詳細には、主開口K1は、その重心CD1が互いに直交する2方向(x方向及びy方向)に周期PCで正方格子状に配列されている。副開口K2も同様に、その重心CD2がx方向及びy方向に周期PCで正方格子状に配列されている。
主開口K1及び副開口K2の長軸は結晶方位の<11-20>方向に平行であり、主開口K1及び副開口K2の短軸は<1-100>方向に平行である。なお、第1の実施形態において、開口K1は長径が83.4nm及び短径が77.6nmであり、長径/短径比は1.1であった。
また、副開口K2の重心CD2は、主開口K1の重心CD1に対してΔx及びΔyだけ離間している。ここでは、Δx=Δyとした。すなわち、副開口K2の重心CD2は、主開口K1の重心CD1から<1-100>方向に離間している。
パターニングしたレジストを現像後、ICP-RIE(Inductive Coupled Plasma - Reactive Ion Etching)装置によってSiNx膜を選択的にドライエッチングした。これにより周期PCで正方格子状に配列された主開口K1及び副開口K2がSiNx膜を貫通するように形成された。
なお、周期(空孔間隔)PCは、発光波長(λ)を435nm、GaNの屈折率(n)を2.46とし、PC=λ/n=176nmとして算出した。
続いて、レジストを除去し、パターニングしたSiNx膜をハードマスクとしてGaN表面部に孔部(ホール)を形成した。ICP-RIE装置にて塩素系ガス及びアルゴンガスを用いてGaNを深さ方向にドライエッチングすることにより、GaN表面に垂直に掘られた長円柱状の空孔である孔部(ホール)14H1,14H2を形成した。
なお、ホールの形状は長円柱状に限らず、円柱状、多角形状などであってもよい。また、ホール14H1,14H2を特に区別しない場合には、ホール14Hと称する場合がある。
また、本工程において、当該エッチングによりGaN表面部に掘られたホールを空孔層14Pにおける空孔(air hole)と区別するため、単にホールと称する。
なお、直接回折光Ldと反射回折光Lrの干渉位相がスロープ効率に与える影響を確認するため、周期PCが173,174,175,176,177,178,179nmの7種類のフォトニック結晶を作製した。ここで、周期PCは、発光波長をλとし、GaNの屈折率(n)を2.46とし、PC=λ/nとして算出した。
前述のように、第1の実施形態においては、空孔層14Pは単一格子フォトニック結晶層である。すなわち、ホール形成工程(S3b)において、周期PCで正方格子位置に配列された1つのホール14H1を形成した。
(S3c)洗浄工程
ホール14H1を形成した基板は、脱脂洗浄を行った後、バッファードフッ酸(HF)にてSiNx膜を除去した。SiNx膜を除去した後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を1%程度含む半導体洗浄液(フルウチ化学:SemicoClean23)に10min浸漬し、その後水洗した。
ホール14H1を形成した基板は、脱脂洗浄を行った後、バッファードフッ酸(HF)にてSiNx膜を除去した。SiNx膜を除去した後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を1%程度含む半導体洗浄液(フルウチ化学:SemicoClean23)に10min浸漬し、その後水洗した。
(S3d)埋込層形成工程
この基板を、再度MOVPE装置のリアクタ内に導入し、アンモニア(NH3)、トリメチルガリウム(TMG)及びNH3を供給してホール14H1の開口を閉塞し、第1の埋込層14B1を形成した。
この基板を、再度MOVPE装置のリアクタ内に導入し、アンモニア(NH3)、トリメチルガリウム(TMG)及びNH3を供給してホール14H1の開口を閉塞し、第1の埋込層14B1を形成した。
この第1の温度領域では、成長基板の最表面にはN原子が付着しているため、N極性面が選択的に成長される。したがって、表面には{1-101}ファセットが選択的に成長される。対向する{1-101}ファセットがそれぞれぶつかることで、ホール14H1は閉塞され埋め込まれる。これにより第1の埋込層14B1が形成される。
続いて、主ホール14H1及び副ホール14H2を閉塞した後、厚さが100nmの第2の埋込層14B2を成長した。第2の埋込層14B2の成長は、基板温度を820℃(第2の埋込温度)まで降温後、トリエチルガリウム(TEG)及びトリメチルインジウム(TMI)、NH3を供給することで行った。なお、第2の埋込温度は、第1の埋込温度よりも低温であった。
また、本実施例における第2の埋込層14B2のIn組成は3%(すなわち、Ga0.97In0.03N層)であった。第2の埋込層14B2は、光と空孔層14Pとの結合効率(光フィールド)を調整するための光分布調整層としても機能する。
以上の埋込工程により、主空孔14K1及び副空孔14K2からなる空孔対14Kが正方格子点の各々に配置された二重格子構造の空孔層14Pが形成された。形成された空孔層14Pの層厚は60nmであり、埋込層14Bの層厚は100nmであった。
また、埋込層14B上に光分布調整層23を成長した。光分布調整層23は、アンドープのIn0.03Ga0.97N層であり、層厚は50nmであった。
図4は、形成された空孔層14Pの、結晶層に垂直な断面を模式的に示す図である。3族窒化物においてホールを埋め込む際には、マストランスポートによってホール14H1、14H2の形状が熱的に安定な面で構成される形状へと変形し空孔15K1、15K2が形成される。すなわち、+c面基板においては、空孔の内側面は(1-100)面(すなわち、m面)へと形状変化する。すなわち、長円柱状の形状から側面がm面で構成される長六角柱状へと形状変化する。
なお、前述のように、第1の実施形態においては、埋込工程により、図4に示す空孔14K1が正方格子点の各々に配置された単一格子構造の空孔層14Pが形成された。本明細書において、第1の実施形態の単一格子構造における空孔を空孔14Kとして説明する。
図5は、第1の実施形態における埋め込まれた空孔14Kの形状を確認するため、断面SEM(Scanning Electron Microscope)観察を行った。当該断面SEM像を図5に示す。
空孔14Kの長径(長軸の長さ)LKは57.6nm、短径WK(短軸の長さ)は50.1nm(長径/短径=1.15)であり、深さDKは60nmであった。すなわち、正六角柱状の空孔14Kが、周期PC=173、174、175、176、177、178、179nmで正方格子点の各々に配された空孔層14Pが形成されていることが確認された。
また、空孔14Kの空孔充填率FFは約7.1%であった。なお、空孔層14Pの平面と直交した方向から見た空孔面積を空孔の周期PCの2乗で割った値の百分率を空孔充填率FF(フィリングファクタ)という。
また、空孔14Kの長軸は結晶の<11-20>軸(すなわち、a軸)に平行になるように配置されていた。
(S4)発光層形成工程
続いて発光層である活性層15として、2つの量子井戸層を有する多重量子井戸(MQW)層を成長した。MQWのバリア層及び量子井戸層はそれぞれGaN(層厚6.0nm)及びInGaN(層厚3.0nm)であった。本実施形態における活性層からのPL(Photoluminescence)発光の中心波長は435nmであった。
続いて発光層である活性層15として、2つの量子井戸層を有する多重量子井戸(MQW)層を成長した。MQWのバリア層及び量子井戸層はそれぞれGaN(層厚6.0nm)及びInGaN(層厚3.0nm)であった。本実施形態における活性層からのPL(Photoluminescence)発光の中心波長は435nmであった。
活性層15は空孔層14Pの空孔から180nm以内に配置し、空孔層14Pによる共振効果が十分に得られる距離とした。
(S5)p側ガイド層形成工程
活性層15の成長後、p側ガイド層(1)16AとしてアンドープIn0.02Ga0.98N層(層厚70nm)を成長し、その上にp側ガイド層(2)16BとしてアンドープGaN層(層厚180nm)を成長した。p側ガイド層16はp側ガイド層(1)16A及びp側ガイド層(2)16Bからなる。
活性層15の成長後、p側ガイド層(1)16AとしてアンドープIn0.02Ga0.98N層(層厚70nm)を成長し、その上にp側ガイド層(2)16BとしてアンドープGaN層(層厚180nm)を成長した。p側ガイド層16はp側ガイド層(1)16A及びp側ガイド層(2)16Bからなる。
p側ガイド層16は、ドーパント(Mg:マグネシウム等)による光吸収を考慮してアンドープ層としたが、良好な電気伝導性を得るためにドープしても良い。また、発振動作モードの電界分布を調整するため、p側ガイド層(1)16AのIn組成及び層厚は適宜選択することができる。
(S6)電子障壁層形成工程
p側ガイド層16の成長後、電子障壁層(EBL)17を成長した。電子障壁層17はAl0.2Ga0.8N層(層厚15nm)であり、Cp2Mgを用いてMgドープを行った。
p側ガイド層16の成長後、電子障壁層(EBL)17を成長した。電子障壁層17はAl0.2Ga0.8N層(層厚15nm)であり、Cp2Mgを用いてMgドープを行った。
(S7)p-クラッド層形成工程
電子障壁層(EBL)17の成長後、p-クラッド層18としてMgドープのp-Al0.06Ga0.94N層(層厚595nm)を成長した。
電子障壁層(EBL)17の成長後、p-クラッド層18としてMgドープのp-Al0.06Ga0.94N層(層厚595nm)を成長した。
なお、成長後のN2雰囲気中で850℃、10分間のアクチベーションをしたときの、p-クラッド層18のキャリア濃度は2×1017cm-3であった。
また、p-クラッド層18のAl組成比は、p側ガイド層16の屈折率より小さくなるようにした。
(S8)p-コンタクト層形成工程
p-クラッド層18を成長後、Mgドープのp-GaN層(層厚25nm)を成長し、p-コンタクト層19を形成した。
p-クラッド層18を成長後、Mgドープのp-GaN層(層厚25nm)を成長し、p-コンタクト層19を形成した。
(S9)電極形成工程
エピタキシャル成長層の形成が完了した成長層付き基板のp-コンタクト層19の面を支持基板に貼り付け、基板12を研磨装置で所定の厚さまで薄くする。
エピタキシャル成長層の形成が完了した成長層付き基板のp-コンタクト層19の面を支持基板に貼り付け、基板12を研磨装置で所定の厚さまで薄くする。
その後、p-コンタクト層19側に素子分離溝以外が覆われたマスクを形成し、n-クラッド層13又は基板12が露出するまでエッチングした。その後、マスクを除去し、支持基板を取り外して素子分離溝を形成した。
(S10)電極形成工程
(アノード電極形成)
エピタキシャル成長基板12の表面にp電極20B(アノード電極)としてパラジウム(Pd)膜及び金(Au)膜を電子ビーム蒸着法によりこの順に成膜した。成膜した電極金属膜をフォトリソグラフィを用いて200×200μm2にパターニングし、p電極20Bを形成した。
(アノード電極形成)
エピタキシャル成長基板12の表面にp電極20B(アノード電極)としてパラジウム(Pd)膜及び金(Au)膜を電子ビーム蒸着法によりこの順に成膜した。成膜した電極金属膜をフォトリソグラフィを用いて200×200μm2にパターニングし、p電極20Bを形成した。
p電極20Bは活性層15の発光を反射する材料が好ましく、Pd/Au以外にPd/Ag/Pt/Au、Pd/Ag/Pd/Au、Pd/Pt/Au、Ni/Pd/Au、Ni/Pt/Au、Ni/Rh/Au、Ni/Ag/Pd/Au、Ni/Ag/Pt/Au、Pt/Auなどを選択できる。
また、p電極20Bのサイズは、空孔層14Pに対して垂直方向から見たとき(上面視ともいう。)に空孔形成領域14R内に含まれ、空孔形成領域14Rより小さいことが好ましい。これは、空孔形成領域14Rに注入電流を狭窄して集中させるためである。また、p電極20Bの電極材料として金属以外のITOなどの導電性を有する誘電体膜を選択してもよい。
(カソード電極形成)
続いて、基板12の裏面にTi、Auを順に電子ビーム蒸着法により成膜してn電極20A(カソード電極)を形成した。n電極20Aは、Ti/Au以外にTi/Al、Ti/Rh、Ti/Al/Pt/Au、Ti/Pt/Auなどを選択できる。また、給電用のワイヤを接続するボンディングパッド20Cを備えている。
続いて、基板12の裏面にTi、Auを順に電子ビーム蒸着法により成膜してn電極20A(カソード電極)を形成した。n電極20Aは、Ti/Au以外にTi/Al、Ti/Rh、Ti/Al/Pt/Au、Ti/Pt/Auなどを選択できる。また、給電用のワイヤを接続するボンディングパッド20Cを備えている。
(S11)保護膜形成工程
電極形成を終了した基板下面を支持基板に貼り付け、アノード電極を覆うマスクを形成する。その後、スパッタリングにて素子の上面と側面に保護膜21であるSiO2膜を形成した。
電極形成を終了した基板下面を支持基板に貼り付け、アノード電極を覆うマスクを形成する。その後、スパッタリングにて素子の上面と側面に保護膜21であるSiO2膜を形成した。
保護膜21は、PCSEL素子10を構成するアルミニウム(Al)を含む結晶層を腐食性ガス等から保護する。また、付着物による短絡等からも保護する。
(S12)個片化工程
最後に、基板分離溝の中央線に沿ってレーザースクライブして、個片化したPCSEL素子10を得た。
最後に、基板分離溝の中央線に沿ってレーザースクライブして、個片化したPCSEL素子10を得た。
[第2の実施形態]
1.フォトニック結晶面発光レーザの構造
図6Aは、本発明の第2の実施形態によるPCSEL素子30の構造の一例を模式的に示す断面図である。図6Bは、図6Aの空孔層14P及び空孔層14P中に配列された、主空孔14K1及び副空孔14K2からなる空孔対14Kを模式的に示す拡大断面図である。また、図6Cは、空孔層14Pに平行な面における空孔層14Pの断面を模式的に示す断面図である。
1.フォトニック結晶面発光レーザの構造
図6Aは、本発明の第2の実施形態によるPCSEL素子30の構造の一例を模式的に示す断面図である。図6Bは、図6Aの空孔層14P及び空孔層14P中に配列された、主空孔14K1及び副空孔14K2からなる空孔対14Kを模式的に示す拡大断面図である。また、図6Cは、空孔層14Pに平行な面における空孔層14Pの断面を模式的に示す断面図である。
図6Cに示すように、空孔対14Kは、空孔層14Pに平行な面において、例えば正方格子状に周期PCを有している。空孔層14Pは、空孔対14Kがそれぞれ正方格子点位置に2次元配列されてn側ガイド層14内に埋め込まれて形成されている。
また、第1の実施形態のPCSEL素子10と同様(図2Cを参照)、PCSEL素子30においても、空孔層(PC層)14Pから直接放出された光(直接回折光Ld)と、空孔層14Pから放出されp電極20Bによって反射された光(反射回折光Lr)とが基板12の裏面(出射面)12Rの光出射領域20Lから外部に出射される。
第2の実施形態によるPCSEL素子30は、以下の点において第1の実施形態によるPCSEL素子10と異なっている。
(1) PCSEL素子30においては、p-コンタクト層19とp電極20Bとの間に、金属酸化物、具体的には厚さが145nmのITO(インジウムスズ酸化物)からなる透明導電体膜25(透光性導電体膜)が設けられている。透明導電体膜25は、第2のp-クラッド層としても機能する。
また、p電極20Bとして、厚さ50nmのAg膜、厚さ300nmのAu膜を電子ビーム蒸着法により順に成膜した。成膜した電極膜をフォトリソグラフィにより直径300μmの円状にパターニングしてp電極20Bを形成した。第2の実施形態において、反射面SRは透明導電体膜25(ITO膜)とp電極20BのAg膜との界面に位置する。
(2) PCSEL素子30においては、空孔層14Pが二重格子フォトニック結晶層である。また、空孔層14Pの空孔14K1の深さ(すなわち、層厚)が90nmであり、第1の実施形態のPCSEL素子10の60nmよりも厚い。
(3) PCSEL素子30においては、埋込層14Bの層厚が90nmであり、第1の実施形態のPCSEL素子10においては100nmである。また、p-クラッド層18の層厚が290nmであり、第1の実施形態のPCSEL素子10においては595nmである。
2.第2の実施形態における主空孔及び副空孔
第2の実施形態における埋め込まれた空孔の形状を確認するため、空孔層の空孔が露出するまで積層構造を表面から収束イオンビーム(FIB)により加工し、その後SEM観察を行った。このときの主空孔14K1及び主空孔14K1より小なるサイズの副空孔14K2の空孔形状を図7Aの上面SEM像に示す。また、図7Bは、図7Aの線A-Aに沿った断面を示すSEM像である。なお、副空孔14K2は、主空孔14K1よりも、少なくとも空孔径及び深さのいずれかが小さければよい。
第2の実施形態における埋め込まれた空孔の形状を確認するため、空孔層の空孔が露出するまで積層構造を表面から収束イオンビーム(FIB)により加工し、その後SEM観察を行った。このときの主空孔14K1及び主空孔14K1より小なるサイズの副空孔14K2の空孔形状を図7Aの上面SEM像に示す。また、図7Bは、図7Aの線A-Aに沿った断面を示すSEM像である。なお、副空孔14K2は、主空孔14K1よりも、少なくとも空孔径及び深さのいずれかが小さければよい。
なお、第1の実施形態の場合と同様に、反射回折光Lr及び直接回折光Ldの干渉の効果を確認するため、周期PCが173,174,175nmの3種類の二重格子空孔層を作製した。図7A及び図7Bは、PC=175nmの空孔層のSEM像である。
図7Aに示すように、長六角形状の主空孔14K1の長径(LK1)は82.5nm、短径Wは45.8nm(長径/短径=1.80)であった。副空孔14K2は、長径(LK2)42.5nm、短径は37.1nm(長径/短径=1.15)であり、正六角形状を有していた。
図7Bに示すように、主空孔14K1の深さDK1は91.4nm、副空孔14K2の深さDK2は64.6nmであった。また、副空孔14K2の上端は主空孔14K1の上端よりも7.6nm深い位置にあり、副空孔14K2の下端は主空孔14K1の下端よりも19.3nm浅い位置にあった。
主空孔14K1及び副空孔14K2の空孔充填率FF1、FF2はそれぞれ10.1%、3.8%であった。なお、二重格子フォトニック結晶における空孔充填率は単位面積あたりの各空孔が占める面積の割合であり、主空孔14K1及び副空孔14K2の面積をそれぞれS1、S2とすると、主空孔14K1及び副空孔14K2の空孔充填率FF1、FF2は次の式で与えられる。
FF1=S1/PC2,FF2=S2/PC2 ・・・(1)
また、主空孔14K1の重心CD1と副空孔K2の重心CD2の、x軸及びy軸方向の距離Δx及びΔy(Δx=Δy)は0.45×PCであり埋め込み前から変化していなかった。また、主空孔14K1及び副空孔14K2の長軸は<11-20>軸(すなわちa軸)に平行になるように配置されていた。主空孔14K1の重心CD1と副空孔K2の重心CD2の重心間距離をΔx=Δyとし、副空孔K2の重心CD2は、主空孔14K1の重心CD1に対して<1-100>方向に離間している。
<理論解析及び考察:フォトニック結晶における光の回折>
(1)出射効率及び光の回折
(1.1)PCSEL素子におけるレーザ光の出射方向
実施形態1及び2のPCSEL素子においてフォトニック結晶層である空孔層は図8に示すようなフォトニックバンド構造を有している。バンド構造の群速度がゼロになるバンド端の周波数(波長)で共振作用が得られる。このようなフォトニックバンドのバンド端においては面内波数kがゼロである。
(1)出射効率及び光の回折
(1.1)PCSEL素子におけるレーザ光の出射方向
実施形態1及び2のPCSEL素子においてフォトニック結晶層である空孔層は図8に示すようなフォトニックバンド構造を有している。バンド構造の群速度がゼロになるバンド端の周波数(波長)で共振作用が得られる。このようなフォトニックバンドのバンド端においては面内波数kがゼロである。
したがって、空孔層(フォトニック結晶層)がxy平面上にある場合、空孔層を伝搬する光はxy平面内に定在波を形成し、その一部がフォトニック結晶によりxy平面に直交するz軸方向へ回折されレーザ光として出射される。
すなわち、上記実施形態において、反射面SRは空孔層14Pと平行なxy平面上にあるため、空孔層14Pによって回折されたレーザ光と反射面SRとは直交する。
(1.2)反射面の反射を考慮した出射効率
(1.2.1)PCSEL素子のスロープ効率
PCSEL素子における共振器損失は、空孔層14Pと同一面(xy平面)内方向(平行方向)の損失成分αpと、回折により出射された方向(直交方向:z軸方向)の損失成分αnとに分けられる。
(1.2.1)PCSEL素子のスロープ効率
PCSEL素子における共振器損失は、空孔層14Pと同一面(xy平面)内方向(平行方向)の損失成分αpと、回折により出射された方向(直交方向:z軸方向)の損失成分αnとに分けられる。
このうち、レーザ出射に寄与するのは垂直方向の成分αnであるが、反射面SRが存在する場合には、SRでの吸収および反射を考慮して出射効率を考える必要がある。
回折によって垂直方向に放射されるレーザ光の電界振幅をE0eikz(エネルギー強度は|E0eikz|2)とすると、+z及び-z方向に均等に回折が発生するとすれば、+z及び-z方向に放射されるレーザ光は(1/21/2)E0eikzである。反射面SRでの振幅反射率をr(エネルギー反射率R=r2)とすると、+z方向(上方方向:反射面SRの方向)に放射されたレーザ光のうち反射面SRで吸収される成分及び反射される成分は、それぞれ以下の式で表される。
なお、本明細書において、垂直方向の損失αn、面内方向の損失αp、垂直方向の損失αnのうち出射面から出射されレーザ出射に寄与する成分αn_down、反射面SRにおいて吸収され、レーザ出射に寄与しない成分αn_up、スロープ効率ηSEをそれぞれ次のようにも表記する。
波源位置における直接回折光Ldと反射回折光Lrの位相差をθとすると、出射面から出射されるレーザ光(LdとLrの和)は、以下の式で表される。
電界成分の絶対値の2乗がエネルギーとなることを考えると、垂直方向の損失αnのうち、出射面12R(基板12の裏面)から出射されレーザ出射に寄与する成分αn_downは、以下の式で表される。
一方、反射面SRにおいて吸収され、レーザ出射に寄与しない成分αn_upは、以下の式で表される。
以上より、PCSEL素子における反射面SRを考慮したときのスロープ効率ηSE(出射効率)を求めると、スロープ効率ηSEは、以下の式で表される。
なお、上式においてηiはレーザ発振動作時の注入効率である。また、上式においては共振器損失以外に、材料吸収による損失(内部損失)αiを考慮した。
(1.2.2)出射効率を高める直接回折光Ldと反射回折光Lrの位相差θの範囲
内部損失αi =0のとき、(2-4)式は以下の式で表される。すなわち、αn/αpが大きいほどスロープ効率ηSEを高めることができる。
内部損失αi =0のとき、(2-4)式は以下の式で表される。すなわち、αn/αpが大きいほどスロープ効率ηSEを高めることができる。
そして、ηi=1、反射率R=1、θ=0の理想的な場合においては、αn/αpに対するスロープ効率ηSEを図9に示す。αn/αpが20程度になるとスロープ効率ηSEは飽和する。スロープ効率ηSEを高めるという観点から考えるとαnはαpの20倍程度以上であることが好ましいと言える。
αn/αp=20のとき、反射電極材料に一般的にGaN系デバイスのp電極材料として用いられるPd(パラジウム)(反射率Rは約0.45)、又はITO/Ag(反射率Rは約0.85)を反射面SRとした場合に、反射面SRで反射がない場合のスロープ効率で規格化したスロープ効率の位相差θの依存性を図10に示す。
図10に示すように、反射がない場合に比べてスロープ効率(出射効率)を高めるためには、各電極材料において位相差θは次の範囲にする必要がある。
・Pdの場合: 0°≦θ<129.8°、又は、230.2°<θ<360°
・ITO/Agの場合:0°≦θ<152.7°又は、208.5°<θ<360°
位相差θが上記の範囲にあるときの波源(回折面)WSから反射面SRまでの距離(離間距離)drを求める。反射回折光Lrがdrを往復したときの位相が上記のようになれば良い。換言すると、位相差θが反射面SRで反射がない場合のスロープ効率で規格化したスロープ効率の1.0を超過する範囲である場合、直接回折光Ldと反射回折光Lrとが互いに強め合い、合成光のスロープ効率ηSE及び光強度(光出力)が改善される。出射光の波長λ に対する波源WSから反射面SRまでを構成する材料の平均屈折率をnaveとすれば、Pdを反射面SRとする場合には離間距離drは次の条件を満たす。
・Pdの場合: 0°≦θ<129.8°、又は、230.2°<θ<360°
・ITO/Agの場合:0°≦θ<152.7°又は、208.5°<θ<360°
位相差θが上記の範囲にあるときの波源(回折面)WSから反射面SRまでの距離(離間距離)drを求める。反射回折光Lrがdrを往復したときの位相が上記のようになれば良い。換言すると、位相差θが反射面SRで反射がない場合のスロープ効率で規格化したスロープ効率の1.0を超過する範囲である場合、直接回折光Ldと反射回折光Lrとが互いに強め合い、合成光のスロープ効率ηSE及び光強度(光出力)が改善される。出射光の波長λ に対する波源WSから反射面SRまでを構成する材料の平均屈折率をnaveとすれば、Pdを反射面SRとする場合には離間距離drは次の条件を満たす。
なお、波源WSの集合であり、空孔層14Pに平行な面(xy面)が回折面WSであり、理解の容易さ及び説明の簡易さのため、同一の符号WSを用いて説明する。
同様にITO/Agを反射面SRとする場合には離間距離drは次の条件を満たす。
(1.3)波源(回折面)位置
(1.3.1)空孔層における回折の理論解析
非特許文献1から、結合波理論において空孔層をx軸方向に伝搬する光と、回折され垂直方向に放射される光との関係は、以下の式で表される。
(1.3.1)空孔層における回折の理論解析
非特許文献1から、結合波理論において空孔層をx軸方向に伝搬する光と、回折され垂直方向に放射される光との関係は、以下の式で表される。
上式において、k0は波数、n0(z)はPCSEL素子のz軸のある点における平均屈折率である。上式を次の式を満たすGreen関数G(z,z’)を用いて解く。
式(3-2)を満たすG(z,z’)は、以下の式で表される。
このG(z,z’)を用いると式(3-1)を満たすEyradは、以下の式で表される。
式(3-4)において、以下の式は、空孔層内のxy平面をx軸方向に伝搬する光が垂直方向へ回折される光の相対強度をあらわす。
式(3-4)により、PCSEL素子の垂直方向に放射されるレーザ光の電界振幅Eyradは、空孔層の深さ方向(z軸方向)の各面で回折される光を重ね合わせることで表現することができる。ここで、式(3-4-1)におけるΘ0(z’)はPCSEL素子のz軸方向の基本モードの電界プロファイルを表す。
なお、式(3-4-1)における下記のξは、それぞれ空孔層14P内を+x方向および-x方向に伝搬する光のうち、空孔によって垂直方向に回折される成分(以下、垂直方向回折成分ξともいう。)を表す。また、Rx及びSxは、それぞれ+x方向及び-x方向の伝搬波強度を表す。
(2)波源位置、回折面の構造依存性
(2.1)単一格子構造(シングルホール)の場合
(2.1.1)第1の実施形態のPCSEL素子の構造、回折面
第1の実施形態のPCSEL素子10において垂直方向に放射される放射波を算出した。より詳細には、第1の実施形態(図1A,図1Bを参照))に示した構造と同様なPCSEL素子について空孔層14Pを伝搬する光の結合状態を2次元結合波理論を用いて計算した後、式(3-4)より空孔層14Pに対し垂直方向の放射波を算出した。
(2.1)単一格子構造(シングルホール)の場合
(2.1.1)第1の実施形態のPCSEL素子の構造、回折面
第1の実施形態のPCSEL素子10において垂直方向に放射される放射波を算出した。より詳細には、第1の実施形態(図1A,図1Bを参照))に示した構造と同様なPCSEL素子について空孔層14Pを伝搬する光の結合状態を2次元結合波理論を用いて計算した後、式(3-4)より空孔層14Pに対し垂直方向の放射波を算出した。
なお、計算に用いたPCSEL素子の構造は、以下の相違点を除いて第1の実施形態のPCSEL素子と同一である。具体的には、計算に用いたPCSEL素子においては、空孔層14Pの層厚は90nmであり、埋込層14Bの層厚は90nmであった。また、p-クラッド層18の層厚は600nmであった。
当該計算において、空孔充填率FFは10%とした。また、窒化物材料系においては、+C面基板上に成長した層中に空孔を埋め込む場合には埋め込み成長中に発生するマストランスポートにより、空孔は側面がm面の六角柱構造になることが知られている(例えば、特許文献1)。したがって、ここでは空孔層14Pの空孔14Kは、z軸方向に伸びる中心軸を有する六角柱構造であるとみなして計算した。また、空孔周期PCは176nmとした。
空孔層14P内をx軸方向に伝搬する光が、空孔により回折され垂直方向(z軸方向)に放射されるときの放射波の電界振幅を図11に示す。空孔層14Pによって回折された光は、放射光として空孔層14P内のある点(z軸上の点)を起点として+z軸方向及び-z軸方向に対称に放射されていく様子が分かる。
空孔層14P内のこの起点(z=zws)から放射波が放射されているとみなすことができるため、この点がデバイスにおける回折面(波源)WSである。そして、z=zwsを満たす面であって、空孔層14Pに平行な面が回折面であり、波源として機能する。以下においては、理解の容易さ及び説明の簡便さのため、同一符号を用い、かかる面を回折面WSとして説明する。 換言すれば、空孔層14P内に定在する光を空孔層14Pと直交する方向へ対称な電界振幅で回折する際の対称中心面が回折面WSである。
図11に示すように、回折面WSは空孔層14Pの中心よりもわずかに+z軸方向、すなわち活性層15に近い位置に存在する。空孔層14P内の回折面(xy平面に平行)において回折され、z軸方向に放射される光の振幅は、式(3-4-1)により決まる。
したがって、垂直方向回折成分ξは、空孔充填率、面内の回転対称性などの空孔形状によって決まり、空孔充填率FFが大きいほど、また面内回転対称性が低いほど大きくなる。
一般に半導体レーザおいては、光閉じ込めの観点から基本モードの電界は活性層にピークを持つようなプロファイルとなる。したがって、電界プロファイルΘ0(z’)はz軸上で活性層に近い点ほど大きくなる。
3族窒化物系(+c面、wurzite)のPCSEL素子においては、前述の通り空孔はc軸方向(z軸方向)に伸びる六角柱構造となる。すなわち、単一格子構造の空孔層のPCSEL素子の場合、垂直方向の回折成分ξは空孔層内においてはz軸のどの点においても等しくなる。
一方、電界プロファイルΘ0(z’) は活性層に近い点ほど大きくなるため、回折面WSは空孔層のz軸方向の中心よりも、わずかに活性層に偏った位置に存在することになる。なお、仮に、電界プロファイルΘ0(z’)が空孔層内で均一であるとすると、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心位置に存在することになる
(2.1.2)回折面位置の空孔層厚依存性
空孔層14Pの厚さdPC(図1Bを参照)に対する回折面WSの位置を図12Aに示す。空孔層14Pの厚さdPCを30nmから180nmで変化させ、空孔充填率FFを10%で一定として計算した。
空孔層14Pの厚さdPC(図1Bを参照)に対する回折面WSの位置を図12Aに示す。空孔層14Pの厚さdPCを30nmから180nmで変化させ、空孔充填率FFを10%で一定として計算した。
なお、本明細書において、空孔層14Pの厚さdPCは空孔14Kの高さ、すなわち空孔14Kの上端及び下端間の距離であり、空孔層及び空孔の中心とは空孔14Kの上端及び下端間の中心位置である。
空孔層14Pが薄くなるほど回折面位置は空孔の中心に漸近し、空孔層14Pが厚くなるほど中心よりも活性層15側(+z軸方向)にシフトしていく。これは空孔層14Pが厚くなるほど、空孔上端と下端でのΘ0(z’)の差が大きくなり、z軸方向に回折される光の電界振幅は空孔層14Pの中心よりも活性層15側においてより大きくなるためである。
なお、空孔層14P(フォトニック結晶層)の厚さdPCは光路長が1波長未満となる厚さとすること、すなわちn×dPC<λ(nは空孔層14Pの実効屈折率)が好ましい。
これは、空孔層14Pの厚さが伝搬する光の光路長よりも厚い場合には、空孔層14P内でz軸方向への放射波どうしの消失性干渉が発生するためである。例えば、n×dPC=λの場合には、空孔層14Pのz軸中心で放射された光は空孔上端及び下端の位置でちょうど位相がπずれるため、消失性の干渉を起こしてしまう。従って、空孔層14Pに対して直交する方向へレーザ光を効率的に出射させることが難しい。GaN層の屈折率が2.46程度であることを考えると、青色光を出射するPCSEL素子においては空孔層14Pの厚さは180nm程度以下であることが好ましい。よって、図12Aより、青色光を出射するPCSEL素子の回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心から活性層15側に0~51nm離れた位置に存在する。
(2.1.3)回折面位置のFF依存性
空孔充填率FFを4%から16%の範囲で変化させたときの回折面WSの位置を図12Bに示す。FFが大きくなるほど、回折面WSは活性層側にシフトするが、FFを4%から16%まで変化させても、空孔層(PC層)14Pの中心から活性層15側へのシフト量は3nmから6nmへ変化する程度である。
空孔充填率FFを4%から16%の範囲で変化させたときの回折面WSの位置を図12Bに示す。FFが大きくなるほど、回折面WSは活性層側にシフトするが、FFを4%から16%まで変化させても、空孔層(PC層)14Pの中心から活性層15側へのシフト量は3nmから6nmへ変化する程度である。
これは、基本モードの電界プロファイルΘ0(z’)は、大まかにはコア層(活性層及びガイド層)とクラッド層の関係により決まるためである。ただしFFが大きくなると空孔層14Pの平均屈折率は低下するため、電界プロファイルは若干活性層側に寄り、空孔の下端のΘ0(z’) が小さくなるためFFが増大するとともに回折面WSは活性層15側にシフトした。
(2.1.4)回折面位置の埋込層厚依存性
埋込層14Bの厚さdEMB(図1Bを参照)を20nmから150nmの範囲で変化させたときの回折面WSの位置を図12Cに示す。
埋込層14Bの厚さdEMB(図1Bを参照)を20nmから150nmの範囲で変化させたときの回折面WSの位置を図12Cに示す。
埋込層14Bが厚くなるにしたがって回折面WSは活性層15側にシフトするが、空孔層14Pの中心から活性層15側へのシフト量は4nmから5nmへ変化する程度でほとんど変化しない。
これは、前述の通り、基本モードの電界プロファイルΘ0(z’)は、大まかにはコア層(活性層及びガイド層)とクラッド層との関係により決まるためである。埋込層14Bの厚さが薄くなると、n側のガイド層が薄くなるため僅かに基本モードの電界プロファイルがp側へシフトし、この結果、埋込層14Bを厚くすると空孔の下端の電界プロファイルΘ0(z’)が小さくなるため、厚さdEMBが増大するとわずかに回折面WSは活性層15側にシフトする。
以上から、回折面WSの位置は、空孔充填率FFの変化や埋込層14Bの厚さdEMBの変化に比べて、空孔層14Pの厚さdPCの変化が相対的に強く依存していることがわかる。
(2.2)二重格子構造(ダブルホール)の場合
3族窒化物系(+c面、Wurzite)のPCSEL素子においては、前述の通り空孔はc軸方向(z軸方向)に伸びる六角柱構造となるため、単一格子構造の空孔層のPCSEL素子の場合、垂直方向の回折成分ξは空孔層内においてはz軸のどの点においても等しくなる。すなわち、式(3-4)より、単一格子構造では回折面WSは基本モードの電界プロファイルΘ0(z’)の変化に伴い空孔層14P内でシフトする。
3族窒化物系(+c面、Wurzite)のPCSEL素子においては、前述の通り空孔はc軸方向(z軸方向)に伸びる六角柱構造となるため、単一格子構造の空孔層のPCSEL素子の場合、垂直方向の回折成分ξは空孔層内においてはz軸のどの点においても等しくなる。すなわち、式(3-4)より、単一格子構造では回折面WSは基本モードの電界プロファイルΘ0(z’)の変化に伴い空孔層14P内でシフトする。
一方、二重格子構造では、主空孔14K1及び副空孔14K2の空間的な位置関係が変化すると、垂直方向への回折強度も空孔層内のz軸方向で変化する、すなわちξが変化する。換言すれば、二重格子構造の回折面WSの位置の変化は、式(3-4)の電界プロファイルΘ0(z’)のみならず、ξにも依存する。ここでは、主空孔14K1及び副空孔14K2の空間的な位置関係が変化するときに、回折面WSが空孔層14Pのz軸方向でどのように変化するのかを明らかにする。
(2.2.1)第2の実施形態のPCSEL素子の構造、回折面
空孔層14Pが二重格子構造を有する第2の実施形態のPCSEL素子30(図6A,図6Bを参照)について、第1の実施形態のPCSEL素子10(単一格子構造)の場合と同様に、垂直方向に放射される放射波を算出した。
空孔層14Pが二重格子構造を有する第2の実施形態のPCSEL素子30(図6A,図6Bを参照)について、第1の実施形態のPCSEL素子10(単一格子構造)の場合と同様に、垂直方向に放射される放射波を算出した。
第1の実施形態の場合と同様に、空孔周期PCを176nmとして計算を行った。また、主空孔14K1は空孔充填率FF1が10.1%、長径/短径比が1.74の長六角柱とした。副空孔14K2は空孔充填率FF2が3.8%、長径/短径比が1.15の正六角柱とした。また、主空孔14K1と副空孔14K2の重心間距離はx軸方向(=Δx)、y軸方向(=Δy)ともに0.45PCだけ離れている。
また、ここでは主空孔14K1及び副空孔14K2の空孔深さは異なるものとした。主空孔14K1及び副空孔14K2の深さ方向における配置を模式的に示す断面図を図13に示す。主空孔14K1の下端は副空孔14K2の下端よりも深い、すなわち-z方向に位置する。主空孔14K1の深さhK1(=dPC)は90nm、副空孔14K2の深さhK2は45nmとした。また、副空孔14K2の上端は主空孔14K1の上端よりも深く、その差hUPは5nm、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWNは40nmとして計算した。
このときの空孔層14P内をx軸方向に伝搬する光が、空孔対14Kで回折され垂直方向(z軸方向)に放射される放射波の電界振幅を図14に示す。空孔層14Pを二重格子構造とした場合においても、空孔層14P内のある点を起点として、すなわち回折面(波源)WSを起点(対称中心面)として+z方向及び-z方向に対称的に放射されていく様子が分かる。
図14Aにおいて、回折面WSは空孔層14Pの中心よりも8nm程度+z軸方向、すなわち活性層15に近い位置に存在する。回折面WSは単一格子構造においては図11に示すように空孔層14Pのz方向中心よりも凡そ4.5nm程度+z軸方向の位置にあったのに対し、二重格子構造の場合はそれよりもより+z軸方向に存在する。これは、主空孔14K1及び副空孔14K2の大きさ、深さ、空孔形状等の構造的要因によるものである。
空孔層14P内を伝搬する光の主空孔14K1及び副空孔14K2の周囲のxy面内の電界分布を図14Bに示す。重心間距離をx軸及びy軸方向に0.45PCだけシフトさせたことにより、伝搬光の面内分布の節は、主空孔14K1及び副空孔14K2ともに空孔の重心位置CD1,CD2からわずかにずれた位置に存在する。したがって、主空孔14K1における対象的な回折点a1,b1における伝搬光の電界強度は異なり、それぞれの点で回折された光は完全に打ち消し合うことなくz軸方向に放射される。
図13に示すように、深さ方向(-z方向)において主空孔14K1だけが存在する領域(hUP及びhDOWNの領域)と、主空孔14K1及び副空孔14K2のどちらも存在する領域(hK2の領域)があるが、垂直方向に回折される伝搬光成分ξ(式(3-4-2)を参照)は主空孔14K1及び副空孔14K2のどちらも存在する領域が空孔層14Pの中心CPCよりも+z方向に偏っている。
すなわち、深さ方向(-z方向)における副空孔14K2の中心CPC(=CK2)が主空孔14K1の中心CK1位置よりも活性層15側に位置している。
回折される伝搬光成分ξは、主空孔14K1及び副空孔14K2のどちらも存在する領域の方が大きい。従って、回折面WSも空孔層14Pの中心CPCよりもより+z方向にずれた位置に存在すると考えられる。
(2.2.2)回折面位置のhK2依存性
主空孔14K1及び副空孔14K2の上端の差hUPを一定としたときの、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWN(図13を参照)に対する回折面WSの位置を図20Aに示す。主空孔14K1の深さhK1は90nm、主空孔14K1及び副空孔14K2の上端の差hUPは5nmで一定とし、hDOWNを1nmから85nmまで変化させて計算した。すなわち、副空孔14K2の深さhK2を84nmから0nmまで変化させて計算した。
主空孔14K1及び副空孔14K2の上端の差hUPを一定としたときの、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWN(図13を参照)に対する回折面WSの位置を図20Aに示す。主空孔14K1の深さhK1は90nm、主空孔14K1及び副空孔14K2の上端の差hUPは5nmで一定とし、hDOWNを1nmから85nmまで変化させて計算した。すなわち、副空孔14K2の深さhK2を84nmから0nmまで変化させて計算した。
hDOWNが大きくなるほど回折面WSの位置は、空孔層14Pのz軸方向の中心CPCから+z軸方向にシフトし、hDOWNが60nmのときに最も+z軸方向、すなわち活性層側にシフトしていく。これは、主空孔14K1と副空孔14K2のどちらも存在する領域(hK2の領域)が+z軸方向に偏るためである。
しかし、hDOWNが60nm以上になると回折面WSはCPCに近づくようにシフトしていく。hDOWNが大きくなる、すなわち副空孔14K2の深さhK2が小さくなると、二重格子構造の効果が得られなくなり単一格子構造の特性に近づくためである。したがって、hK2が0nmとなるhDOWNが85nmのときには、回折面WSは単一格子構造と同様の、空孔層14Pの中心CPCから+z軸方向へ4.5nmシフトした位置に存在する。
(2.2.3)回折面位置のhDOWN依存性
副空孔14K2の深さhK2を一定としたときの、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWN(図13を参照)に対する回折面WSの位置を図20Bに示す。主空孔14K1の深さhK1は90nm、副空孔14K2の深さhK2は50nmで一定として、hDOWNを1nmから39nmまで変化させて計算した。このとき、主空孔14K2及び副空孔14K2の上端の差hUPはhDOWNの変化に伴って39nmから1nmまで変化する。
副空孔14K2の深さhK2を一定としたときの、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWN(図13を参照)に対する回折面WSの位置を図20Bに示す。主空孔14K1の深さhK1は90nm、副空孔14K2の深さhK2は50nmで一定として、hDOWNを1nmから39nmまで変化させて計算した。このとき、主空孔14K2及び副空孔14K2の上端の差hUPはhDOWNの変化に伴って39nmから1nmまで変化する。
hDOWNが1nmのとき、すなわち主空孔14K2及び副空孔14K2の下端の位置がほとんど揃っている場合においては、回折面WSはほとんど空孔層14Pのz軸方向の中心CPCに存在している。hDOWNが大きくなるにつれ、回折面WSの位置は+z軸方向、すなわち活性層側にほぼ線形に移動する。これは、主空孔14K1と副空孔14K2のどちらも存在する領域が、+z軸方向に偏るためである。ここでは、副空孔14K2の深さhK2を一定としているため、hDOWNに対して回折面WSの位置は単調に+z軸方向にシフトする。図20Bより、図13においてFF1>FF2の関係の場合には、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心から活性層15側に0~10nm離れた位置に存在する。
続いて、主空孔14K1の空孔充填率FF1を3.8%、副空孔14K2の空孔充填率FF2を10.1%の場合、すなわちFF1<FF2の場合について計算をした。副空孔14K2の深さhK2を一定としたときの、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWN(図13を参照)に対する回折面WSの位置を図20Cに示す。
hDOWNが大きくなるにつれて回折面WSの位置は+z軸方向に単調にシフトしていくことはFF1>FF2の場合と変わらないが、回折面WSのシフト量は図20Bに比べて大きくなる。hDOWNが15nm以下の場合においては、回折面WSの位置は空孔層14Pのz軸方向の中心CPCよりも-z軸方向にシフトする。図14Bに示すように、空孔充填率が大きい場合の方が空孔層14P内を伝搬する光の電界が分布する領域面積が大きくなる。すなわち、空孔充填率が大きい場合の方が強く回折に寄与することになり、式(3-4)中のξが大きくなる。したがって、FF1<FF2の場合においては、空孔層14P内の主空孔14K1と副空孔14K2のどちらも存在する領域の偏り(すなわちhDOWNの変化)に対して、回折面WSの位置はより大きく変化するようになる。図20Cより、図13においてFF1<FF2の関係の場合には、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心から活性層15側に-10~15nm離れた位置に存在する
(2.2.4)回折面位置の主空孔と副空孔の重心間距離依存性
主空孔14K1と副空孔14K2のx軸及びy軸方向の重心間距離Δx、Δyを、Δx=Δyとして、0.25PCから0.5PCまで変化させた場合の回折面WSの位置を図20Dに示す。主空孔14K1の深さhK1は90nm、主空孔14K1及び副空孔14K2の上端の差hUPは5nmで一定とし、hDOWNを1nmから85nmまで変化させて計算した。すなわち、副空孔14K2の深さhK2を84nmから0nmまで変化させて計算した。
主空孔14K1と副空孔14K2のx軸及びy軸方向の重心間距離Δx、Δyを、Δx=Δyとして、0.25PCから0.5PCまで変化させた場合の回折面WSの位置を図20Dに示す。主空孔14K1の深さhK1は90nm、主空孔14K1及び副空孔14K2の上端の差hUPは5nmで一定とし、hDOWNを1nmから85nmまで変化させて計算した。すなわち、副空孔14K2の深さhK2を84nmから0nmまで変化させて計算した。
重心間距離Δx、Δyが0.25PCから0.49PCの範囲においては、回折面WSの位置は変化せず空孔層14Pのz軸方向の中心CPCから+z軸方向に8nm偏った位置に存在している。Δx、Δyが0.50PCの場合においては回折面WSは殆どCPCと同じ位置にある。これは重心間距離Δx、Δyが0.5PCの場合には、フォトニック結晶の構造の回転対称性が高くなるため、空孔層14Pを伝搬する光が空孔で回折される効果は単一格子構造の場合と同じ効果になるためである。
以上から、二重格子構造の場合においては、回折面の位置は、主空孔14K1及び副空孔14K2の下端の差hDOWN、すなわち、空孔層14Pにおいて空孔層14P内の主空孔14K1と副空孔14K2のどちらも存在する領域のz軸方向での偏りの変化に強く依存していることがわかる。また、図13において、空孔充填率FF1が副空孔14K2の空孔充填率FF2よりも小さくなる場合(FF1<FF2)、空孔層14Pにおいて空孔層14P内の主空孔14K1と副空孔14K2のどちらも存在する領域が空孔層のz軸方向の中心CPCよりも-z軸方向に偏っている場合においては、回折面WSはCPCよりも-z軸方向にシフトした位置に存在することがわかる。
(3)窒化物系PCSEL素子の回折面位置
(3.1)単一格子構造の場合
3族窒化物系PCSEL素子においては、埋め込み成長時のマストランスポートによる表面再構成により、空孔は側面がm面で構成された六角柱構造をとる。すなわち、z軸方向において空孔充填率FFが殆ど変化しない構造をとる。
(3.1)単一格子構造の場合
3族窒化物系PCSEL素子においては、埋め込み成長時のマストランスポートによる表面再構成により、空孔は側面がm面で構成された六角柱構造をとる。すなわち、z軸方向において空孔充填率FFが殆ど変化しない構造をとる。
このため、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心CPC(すなわち、空孔の深さ方向の中心)から、+z軸方向へ偏った位置に存在することになる。+z軸方向への偏りは空孔層厚が厚くなると顕著に偏りが大きくなるが、出射効率の観点から空孔層14Pの厚さは1波長分の長さよりも薄いことが好ましい。したがって、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心CPCから活性層15側に0~51nmの範囲で離れた位置に存在する。なお、使用する波長は青色光以外でもよく、所望の使用する波長によって、空孔層14Pの厚さが調整され、回折面WSの変化は図12Aのように空孔層厚に強く依存する。
なお、第1の実施形態において結合波理論を用いた計算より見積もられる空孔層14P内の回折面WSの位置は空孔層14Pの中心CPCより1.5nmだけ活性層15側(すなわち、+z軸方向)に存在すると見積もられた。この数値と各層を含めた各層の層厚を合算し、反射面Srから回折面WSまでの離間距離drを見積もると1073.5nmであった。
(3.2)二重格子構造の場合
二重格子構造のPCSEL素子においても、回折面WSは基本的には空孔層14Pのz軸方向の中心から活性層15側(+z軸方向)に偏った位置に存在する。ただし、主空孔14K1の空孔充填率FF1が副空孔14K2の空孔充填率FF2よりも小さくなる場合(FF1<FF2)には、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心CPCからクラッド層側(-z軸方向)に偏った位置に存在する。
二重格子構造のPCSEL素子においても、回折面WSは基本的には空孔層14Pのz軸方向の中心から活性層15側(+z軸方向)に偏った位置に存在する。ただし、主空孔14K1の空孔充填率FF1が副空孔14K2の空孔充填率FF2よりも小さくなる場合(FF1<FF2)には、回折面WSは空孔層14Pのz軸方向の中心CPCからクラッド層側(-z軸方向)に偏った位置に存在する。
ただし、窒化物系PCSEL素子において、サイズの異なるホールをドライエッチング法により同時に形成し、当該ホールを埋め込んで空孔14K1,14K2を形成した場合、開口部の大きいホールの方がエッチングレートが速くなり深くなる。したがって、窒化物系PCSEL素子の空孔層14Pにおいては、主ホール14H1が副ホール14H2よりも開口部が大きい場合には、14H1の方が深くなる。
前述の通り、主ホール14H1及び副ホール14H2は、ホール表面に{1-101}を形成することで埋め込まれ、それぞれ主空孔14K1及び副空孔14K2となる。このとき、埋め込まれる各ホールの底面の位置関係に関しては変化しないため、主空孔14K1の下端の方が副空孔14K2の下端よりも-z軸方向に位置する。主空孔14K1の方が副空孔14K2よりも深い位置に形成される。
また、前述の通り、埋め込まれて形成される主空孔14K1及び副空孔14K2の形状は側面がm面の六角柱構造となるため、主空孔14K1及び副空孔14K2の大小関係は埋め込み前のホールの大小関係と同じになる。
以上のことから、空孔層14Pを形成後に活性層15を形成する場合、すなわち活性層15の-z軸方向側に空孔層14Pを設ける場合においては、主空孔14K1の空孔充填率FF1が副空孔14K2の空孔充填率FF2よりも大きい(FF1>FF2)のであれば、必ず主空孔14K1の下端は副空孔14K2の下端よりも-z軸方向側に位置する。すなわち、FF1>FF2の関係であれば空孔層14Pの下端は主空孔14K1の下端と一致する。
すなわち、3族窒化物系PCSEL素子においては二重格子構造の場合においても、必ず波源(回折面)WSは空孔層14Pのz方向の中心CPC(すなわち、主空孔14K1の中心)から活性層15側に、0~10nm程度離れた位置に存在する。FF1<FF2の関係の場合には、空孔層14Pの下端と主空孔14K1の下端は一致しないため(すなわち空孔層14Pの下端と副空孔14K2の下端が一致する)、図20Cのように回折面WSは空孔14Pのz方向の中心CPCよりも活性層15とは逆の方向、すなわち-z方向側に位置することはない。
なお、第2の実施形態において結合波理論を用いた計算より見積もられる空孔層14P内の回折面WSの位置は空孔層14Pの中心CPCより7.3nmだけ活性層15側(すなわち、+z軸方向)に存在すると見積もられた。この数値とITO層を含めた各層の層厚を合算し、反射面Srから回折面WSまでの離間距離drを見積もると920.7nmであった。
なお、第2の実施形態においては、空孔形状が六角柱形状であって深さ方向に断面積が変化しない空孔について説明した。主空孔14K1及び副空孔14K2のいずれかが深さ方向に断面積が変化する形状を有する場合には、副空孔14K2の重心が主空孔14K1の重心よりも活性層15側に位置していることが好ましい。
また、2重格子構造において、空孔層14P内の回折面WSの位置は、主空孔14K1と副空孔14K2のどちらも存在する領域のz軸方向での偏りに強く依存する。すなわち、回折面WSの位置を安定させるためには、主空孔14K1と副空孔14K2の位置関係の制御性を向上させることが好ましい。本発明において、表面に{1-101}ファセット面を成長させることで空孔の埋め込みを行った。この手法は、マストランスポートによる空孔形状の変化を小さくすることができるため、各空孔の位置を制御し易く、回折面WSの位置を安定させるためには適した作製方法である。
(3.3)3族窒化物系のPCSEL素子において空孔層をn側に配置する理由
上記した実施形態1及び2において、空孔層14Pを活性層15よりもn層側に配置した。空孔層14Pをp側に配置しても活性層15との距離が十分に近ければ、フォトニック結晶による共振効果を得ることができレーザ発振は可能である。
上記した実施形態1及び2において、空孔層14Pを活性層15よりもn層側に配置した。空孔層14Pをp側に配置しても活性層15との距離が十分に近ければ、フォトニック結晶による共振効果を得ることができレーザ発振は可能である。
しかしながら、3族窒化物系材料において、p型ドーパントとして一般的にMgが用いられるが、ドーピングされたMgはバンドギャップ中に中間準位を形成し、光吸収を生じさせる。
PCSEL素子においてはフォトニック結晶による高い共振効果を得るためには、導波モードの電界を空孔層14Pにより多く分布させる(閉じ込める)ことが好ましい。しかし、空孔層14Pをp型とした場合には電界を空孔層14Pに多く分布させた場合には、空孔層14Pをn型とした場合に比べて半導体の吸収が増大する。すなわち、式(2-4)における内部損失αiが増大し、出射効率は低下する。
また、空孔層14Pをp側に配置する場合に、空孔層14Pをアンドープ層にすることで空孔層における光吸収を低減させることも考えられる。しかし、空孔層14Pに導波モードの電界を多く分布させる場合には電界分布は空孔層14P側に偏った分布になり、その結果、Mgがドーピングされたp型層にも多くの電界が分布することになる。したがって、空孔層14Pをアンドープ層にしたとしても内部損失αiが増大し、出射効率は低下する。
従って、3族窒化物系のPCSEL素子においてより高い出射効率を得るためには空孔層14Pをn層側に配置することが好ましい。
<結果及び考察>
(1)第1の実施形態の特性
(1.1)出射効率
二次元結合波理論を用いて、第1の実施形態の単一格子構造のPCSEL素子における空孔層14Pの面内方向の共振器損失αp、垂直方向の共振器損失αnを見積もった。また、基本モードの電界強度分布から、Mgドーピングされた層の光閉じ込め係数Γmgを算出し、内部損失αiを見積もった。その結果を下記の表1に示す。
(1)第1の実施形態の特性
(1.1)出射効率
二次元結合波理論を用いて、第1の実施形態の単一格子構造のPCSEL素子における空孔層14Pの面内方向の共振器損失αp、垂直方向の共振器損失αnを見積もった。また、基本モードの電界強度分布から、Mgドーピングされた層の光閉じ込め係数Γmgを算出し、内部損失αiを見積もった。その結果を下記の表1に示す。
第1の実施形態において、p電極としてPdを採用しているため反射面Srの反射率Rは0.45程度である。(2-4)式を用いて、回折面WS(波源)における直接回折光Ldと反射回折光Lrの位相差θ(deg)に対してとりうるスロープ効率ηSEを計算した結果を図15Aに示す。なお、図15Aには比較として、反射面Srがなく反射回折光Lrが出射に寄与しない場合(R=0:破線)についてもプロットした。
このとき、反射面Srを考慮した場合とそうでない場合のスロープ効率ηSEが交差する位相差θをθ1、θ2とすると、反射面Srによりスロープ効率ηSEの改善が見込める位相差θの範囲は、以下のようになる。なお、第1の実施形態においては、θ1=111.1°、θ2=248.9°である。
範囲Q1:0°≦θ<θ1、又は
範囲Q2:θ2<θ≦360°
範囲Q1:0°≦θ<θ1、又は
範囲Q2:θ2<θ≦360°
(1.2)発振波長に対する位相差の関係
第1の実施形態において、空孔14Kの周期PCを173~179nmまで変化させたフォトニック結晶を同一基板上に作製した。すなわち、同一の離間距離dr(回折面WS/反射面SR間の距離)のデバイスにおいて、発振波長λを430から441nm変化させた。直接回折光Ldと反射回折光Lrとの位相差θは出射光の波数をk、光路長をxとすると、
第1の実施形態において、空孔14Kの周期PCを173~179nmまで変化させたフォトニック結晶を同一基板上に作製した。すなわち、同一の離間距離dr(回折面WS/反射面SR間の距離)のデバイスにおいて、発振波長λを430から441nm変化させた。直接回折光Ldと反射回折光Lrとの位相差θは出射光の波数をk、光路長をxとすると、
また、離間距離drは次式で表される。
したがって、第1の実施形態においては、回折面・反射面間距離である離間距離drを一定としながら位相差θを変化させることができ、直接回折光Ldと反射回折光Lrの干渉の効果を確認することができる。式(4-2)より求めた波長λに対する位相差θを図15Bに示す。また、このときの空孔周期PCに対する位相差θを図15Cに示す。
波長λが430nm又は431.5nmのとき、すなわちPC=171、172nmのときに直接回折光Ldと反射回折光Lrとが互いに強め合い、合成光のスロープ効率ηSE及び光強度(光出力)が改善される。
なお、式(2-4)より反射面による反射がない場合のスロープ効率ηSE(0)は次式で与えられる。
反射(反射率R)がある場合において、反射がない場合よりも、スロープ効率を高めるためには、ηSE(R)>ηSE(0) を満たせばよいから次式が得られる。
従って、ηSE(R)>ηSE(0) 満たすため位相差θは次式で与えられる。
(1.3)実験結果
スロープ効率ηSEの改善効果を実験により検証した。図16は、式(4-2)より見積もられた位相差θに対し、実験により得られたスロープ効率ηSEをプロット(丸印)した図である。なお、図15Aに示したスロープ効率ηSEの計算結果(実線)も示している。
スロープ効率ηSEの改善効果を実験により検証した。図16は、式(4-2)より見積もられた位相差θに対し、実験により得られたスロープ効率ηSEをプロット(丸印)した図である。なお、図15Aに示したスロープ効率ηSEの計算結果(実線)も示している。
計算結果とよく一致した実験結果が得られていることが分かる。また、位相差θの範囲Q1及びQ2に関して、スロープ効率ηSEの改善が確認できた。これより、スロープ効率ηSEを高めるためには位相差θが範囲Q1又はQ2内に存在することが重要であり、当該位相差θを満たす離間距離drを有するPCSEL素子がスロープ効率ηSEを高め、高い光出力を得るのに有効であることが確認された。
(2)第2の実施形態の特性
(2.1)出射効率
第1の実施形態の場合と同様に第2の実施形態の二重格子構造のPCSEL素子における空孔層14Pの面内方向の共振器損失αp、垂直方向の共振器損失αnを見積もった。その結果を下記の表2に示す。
(2.1)出射効率
第1の実施形態の場合と同様に第2の実施形態の二重格子構造のPCSEL素子における空孔層14Pの面内方向の共振器損失αp、垂直方向の共振器損失αnを見積もった。その結果を下記の表2に示す。
第2の実施形態において、p電極としてITO/Agを採用しているため反射面Srの反射率Rは第1の実施形態よりも高い0.85程度である。(2-4)式を用いて直接回折光Ldと反射回折光Lrの位相差θ(deg)に対してとりうるスロープ効率ηSEを計算した結果を図17Aに示す。なお、図17Aには比較として、反射面Srがなく反射回折光Lrが出射に寄与しない場合(R=0:破線)についてもプロットした。
このとき、反射面Srを考慮した場合とそうでない場合のスロープ効率ηSEが交差する位相差θをθ1、θ2とすると、反射面Srによりスロープ効率ηSEの改善が見込める位相差θの範囲は、以下のようになる。なお、第2の実施形態においては、θ1=113.2°、θ2=246.8°である。これより、反射面Srの反射率Rが高くなると、許容可能な範囲Q1及び範囲Q2は広くなることが分かる。
(2.2)発振波長に対する位相差の関係
第2の実施形態において、空孔対14Kの周期PCを173~175nmまで変化させたフォトニック結晶を同一基板上に作製した。式(4-2)より求めた波長λに対する位相差θを図17Bに示す。また、このときの空孔周期PCに対する位相差θを図17Cに示す。波長λが430nm又は432nmのとき、すなわちPC=171、172nmのときに直接回折光Ldと反射回折光Lrとが互いに強め合いスロープ効率ηSEが改善されると見積もられる。
第2の実施形態において、空孔対14Kの周期PCを173~175nmまで変化させたフォトニック結晶を同一基板上に作製した。式(4-2)より求めた波長λに対する位相差θを図17Bに示す。また、このときの空孔周期PCに対する位相差θを図17Cに示す。波長λが430nm又は432nmのとき、すなわちPC=171、172nmのときに直接回折光Ldと反射回折光Lrとが互いに強め合いスロープ効率ηSEが改善されると見積もられる。
(2.3)実験結果
スロープ効率ηSEの改善効果を実験により検証した。図18は、式(4-2)より見積もられた位相差θに対し、実験により得られたスロープ効率ηSEをプロット(丸印)した図である。なお、図17Aに示したスロープ効率ηSEの計算結果(実線)も示している。
スロープ効率ηSEの改善効果を実験により検証した。図18は、式(4-2)より見積もられた位相差θに対し、実験により得られたスロープ効率ηSEをプロット(丸印)した図である。なお、図17Aに示したスロープ効率ηSEの計算結果(実線)も示している。
計算結果とよく一致した実験結果が得られていることが分かる。また、位相差θの範囲Q1又はQ2に関して、スロープ効率ηSEの改善が確認できた。これより、スロープ効率ηSEを高めるためには位相差θが前述の範囲Q1又はQ2内に存在することが重要である、すなわち、直接回折光Ldと反射回折光Lrの位相差θを満たす離間距離drを有することにより、これらの合成光のスロープ効率ηSE及び光強度を向上させることができ、高効率で高光出力のPCSEL素子を提供することができることが確認された。
<直接回折光及び反射回折光の単純な干渉との相違>
本発明における位相差θに対するスロープ効率ηSEの変化は、直接回折光Ldと反射回折光Lrとが単純に干渉する場合とは異なる。
本発明における位相差θに対するスロープ効率ηSEの変化は、直接回折光Ldと反射回折光Lrとが単純に干渉する場合とは異なる。
より詳細には、-z方向(出射方向)に出射される直接回折光Ldと、+z方向に出射され、電極で反射されることで-z方向に出射される反射回折光Lrとが干渉することのみを考慮した場合のスロープ効率ηSEは、次式で表される。
図19は、理想的な状態(レーザ発振動作時の注入効率ηi=0,反射率R=0,内部損失αi=0)において上式(6)より求めたスロープ効率ηSEの位相差θ依存性を示している。加えて、図10の電極材料がPd及びITO/Agの場合のスロープ効率ηSEがそれぞれ太い実線及び細い実線で示されている。すなわち、図19には、図10のグラフに重ねて、上式(6)により求まるスロープ効率ηSEの位相差θ依存性のグラフが示されている。
直接回折光Ldと反射回折光Lrとの干渉のみを考慮する場合には電極材料の反射率によらず、0°≦θ<90°,270°<θ≦360°の場合において、反射電極がない場合(R=0)よりも高いスロープ効率となることが分かる。なお、電極材料としてPd(R=0.45:一点鎖線)及びITO/Ag(R=0.85:破線)を示している。
直接回折光Ldと反射回折光Lrとの干渉によって出射光が弱められる場合、放射損失(垂直方向の損失)αnが小さくなることを意味する。すなわち、式(5)においては放射損失αnが一定としているが、放射損失αnに対する干渉の影響を加味してスロープ効率ηSEを求める必要がある。具体的には、PCSEL素子においてスロープ効率ηSEは、式(2-4)式によって与えられる。
図19に示すように、高いスロープ効率が得られる位相差θの範囲は、直接回折光Ldと反射回折光Lrとの干渉のみを考慮する場合よりも広くなり、また裏面反射率(電極材料)に依存する。なお、電極材料がPd及びITO/Agの場合のスロープ効率ηSEをそれぞれ太い実線及び細い実線で示している。
なお、上記した実施形態における数値は例示に過ぎず適宜改変して適用することができる。また、単一格子構造及び二重格子構造のPCSEL素子について例示したが、一般に多重格子構造のPCSEL素子に適用することができる。
また、本発明は、空孔が六角柱形状を有する空孔層について例示したが、空孔が円柱状、矩形状、多角形状、またティアドロップ形状などの不定柱状を有する場合についても適用することができる。
以上、詳細に説明したように、上記した本実施形態によれば、回折光と反射ミラーによる反射回折光との干渉条件を特定することにより、出射効率が高く、低閾値電流密度及び高効率で動作する高性能なフォトニック結晶面発光レーザを提供することができる。
10、30:PCSEL素子、
12:基板
13:第1のクラッド層
14:第1のガイド層
14A:下ガイド層
14B:埋込層
14K:空孔/空孔対
14K1/14K2:主/副空孔
14P:フォトニック結晶層(空孔層)
15:活性層
16:第2のガイド層
17;電子障壁層
18:第2のクラッド層
19:コンタクト層
20A:第1の電極
20B:第2の電極
20L:光出射領域、
23:光分布調整層
25:透明導電体膜
27:反射防止膜
CD1,CD2:重心
dr:離間距離
Ld:直接回折光
Lr:反射回折光
12:基板
13:第1のクラッド層
14:第1のガイド層
14A:下ガイド層
14B:埋込層
14K:空孔/空孔対
14K1/14K2:主/副空孔
14P:フォトニック結晶層(空孔層)
15:活性層
16:第2のガイド層
17;電子障壁層
18:第2のクラッド層
19:コンタクト層
20A:第1の電極
20B:第2の電極
20L:光出射領域、
23:光分布調整層
25:透明導電体膜
27:反射防止膜
CD1,CD2:重心
dr:離間距離
Ld:直接回折光
Lr:反射回折光
Claims (10)
- 透光性の基板と、
前記基板上に設けられた第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられ、前記第1の半導体層とは反対導電型の第2の半導体層と、
前記第1の半導体層に含まれ、前記活性層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を備えるフォトニック結晶層である空孔層と、
前記第2の半導体層上に設けられ、反射面を有する反射層と、を備え、
前記基板の裏面に光出射面を有し、
前記空孔層は、前記空孔層内に定在する光を前記空孔層と直交する方向へ対称な電界振幅で回折する際の対称中心面である回折面を有し、
前記回折面から前記光出射面側に回折された第1の回折光と、前記回折面から前記反射層側に回折され前記反射面で反射された第2の回折光との合成光の光強度が、前記第1の回折光の光強度より大きくなるように前記回折面と前記反射面との離間距離が設けられた面発光レーザ素子。 - 前記回折面は、前記空孔層の深さ方向の中心よりも前記活性層側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
- 前記基板の前記光出射面に反射防止膜を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の面発光レーザ素子。
- 前記第1の半導体層、前記活性層及び前記第2の半導体層は3族窒化物系の半導体層であり、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層はそれぞれn型半導体層及びp型半導体層である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
- 前記第2の半導体層はp型半導体層であり、前記反射面と前記p型半導体層の間に透光性導電体膜が設けられている請求項1乃至5のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
- 前記空孔層は、前記空孔層の光路長が1波長未満の厚さを有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
- 前記空孔層は、主空孔及び前記主空孔よりも空孔径及び深さの小なる副空孔が格子点に配された二重格子構造のフォトニック結晶層であり、深さ方向における前記副空孔の重心位置が前記主空孔の重心位置よりも前記活性層側にある請求項1乃至9のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
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