JP2023050633A - 貼付剤 - Google Patents

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Hiroto Terashima
俊一 薦田
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Abstract

【課題】メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が、アルツハイマー病の治療に必要な皮膚透過量が得られる程度まで向上され、且つ皮膚刺激性が低い貼付剤を提供する。【解決手段】本発明の貼付剤は、支持体と、上記支持体の一面に積層一体化され、メマンチン有機酸塩及び粘着剤を含む粘着層とを含み、上記メマンチン有機酸塩は、少なくとも2個の酸性官能基を有する有機酸(a1)と遊離塩基型メマンチンとの塩であり、上記メマンチン有機酸塩は、上記有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のそれぞれに、上記遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)を含み、上記酸性官能基は、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種であり、上記有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のうち少なくとも1個の酸性官能基が、カルボキシ基であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、薬物としてメマンチン有機酸塩を含む貼付剤に関する。
近年、高齢者の増加に伴ってアルツハイマー型認知症患者が増加している。アルツハイマー型認知症では、グルタミン酸によるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体への過剰な刺激によって、脳の神経機能が低下すると考えられている。このようなアルツハイマー型認知症の改善薬として、メマンチン(1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)が使用されている。メマンチンは、NMDA受容体阻害薬であり、過剰なグルタミン酸の刺激から脳の神経機能を保護することで、認知症の進行を遅らせる作用を有することが報告されている。
メマンチンは、臨床現場において、錠剤や液剤などの経口剤として認知症患者に処方されている。しかしながら、認知症の進行に伴って、認知症患者は、治療薬の飲み忘れや飲み過ぎ等により、医師に処方された通りに治療薬を服用することが困難となることが多くなる。そのため、メマンチンを含有する貼付剤の開発が求められている。貼付剤によれば、メマンチンを服用せずに体内に投与することができる。
しかしながら、メマンチンは皮膚に対する刺激が強いため、メマンチンを含有する貼付剤を長時間に亘って皮膚に貼付すると、皮膚の貼付部位において炎症が起こる場合があった。したがって、メマンチンを含有する貼付剤については皮膚刺激性の低減が必要とされている。
そこで、特許文献1では、メマンチンを含有する貼付剤による皮膚刺激を低減するために、遊離塩基型メマンチン又はその薬学的に許容できる塩の粘着剤層の面積当たりの濃度を、遊離塩基型(フリー体)のメマンチンの濃度として、0.02mg/cm2~2.4mg/cm2と低くすることが開示されている。遊離塩基型メマンチンの薬学的に許容できる塩としては、遊離塩基型メマンチンと有機酸又は無機酸との塩であるメマンチン酸付加塩が用いられている。
特許第5403948号
しかしながら、メマンチン酸付加塩は、皮膚透過性が低く、治療に必要とされる皮膚透過量を達成することが困難であった。そのため、従来の貼付剤では、メマンチン酸付加塩を用いる場合には、予めメマンチン酸付加塩を水酸化ナトリムなどの塩基を用いて解離させて遊離塩基型メマンチンとし、この遊離塩基型メマンチンを粘着層中に含ませる必要があった。しかしながら、遊離塩基型メマンチンを含む貼付剤では、依然として皮膚刺激が強いという問題があった。
そこで、本発明は、メマンチン有機酸塩を含む貼付剤であって、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が、アルツハイマー病の治療に必要な皮膚透過量が得られる程度まで向上されていると共に皮膚刺激性が低い貼付剤を提供する。
本発明の貼付剤は、
支持体と、上記支持体の一面に積層一体化され、メマンチン有機酸塩及び粘着剤を含む粘着層とを含み、
上記メマンチン有機酸塩は、少なくとも2個の酸性官能基を有する有機酸(a1)と遊離塩基型メマンチンとの塩であり、
上記メマンチン有機酸塩は、上記有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のそれぞれに、上記遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)を含み、
上記酸性官能基は、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のうち少なくとも1個の酸性官能基が、カルボキシ基であることを特徴とする。
[粘着層]
本発明の貼付剤は、支持体の一面に積層一体化された粘着層を含む。そして、粘着層は、メマンチン有機酸塩及び粘着剤を含む。
(メマンチン有機酸塩)
本発明では、メマンチン有機酸塩として、少なくとも2個の酸性官能基を有する有機酸(a1)と遊離塩基型メマンチンとの塩を用いる。なお、遊離塩基型メマンチンとは、塩の形態となっていない、メマンチン(1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)そのものを意味する。
有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を少なくとも2個有する。酸性官能基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。このような酸性官能基を有する有機酸(a1)を用いることにより、遊離塩基型メマンチンのアミノ基に、有機酸(a1)が有する酸性官能基が付加して、安定したメマンチン有機酸塩を形成することができる。このようなメマンチン有機酸塩は、粘着層中で、有機酸と遊離塩基型メマンチンとに分解しにくく、塩の形態を安定して維持することができる。粘着層中のメマンチン有機酸塩が解離して遊離塩基型メマンチン(フリー体)となった場合、このような遊離塩基型メマンチンは皮膚透過性が高過ぎて皮膚刺激を招くことがある。一方で、本発明では、上述した有機酸(a1)を用いることにより、メマンチン有機酸塩からの遊離塩基型メマンチンの解離を低減して、フリー体となった遊離塩基型メマンチンによる皮膚刺激を低減することができる。
そして、本発明では、メマンチン有機酸塩として、上述した有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)を用いる。このようなメマンチン有機酸塩(S1)は、皮膚透過性が高いだけでなく、皮膚刺激を低減することも可能である。このような効果が得られるメカニズムとして、以下のメカニズムが推測される。なお、下記メカニズムは、本発明者等の推測によるものであり、したがって、本発明による効果は下記メカニズムに限定されない。
メマンチン有機酸塩(S1)は、水に対する親和性が適度にあり、これによりメマンチン有機酸塩(S1)が脂溶性の高い皮膚表面に留まることが低減され、脂溶性が低く水分の割合が高い皮膚下層へ移行することができる。これによって、メマンチン有機酸塩(S1)が、皮膚表面で留まることなく、塩の形態で皮膚を適度な速度で徐々に透過することが可能となる。ここで、メマンチン有機酸塩が皮膚を透過し難く、皮膚表面で留まってしまうと、皮膚刺激が発生することがある。しかしながら、本発明のメマンチン有機酸塩(S1)によれば、上述した通り、皮膚表面で留まることなく、皮膚を適度な速度で徐々に透過することができる。したがって、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が向上されていると共に皮膚刺激が低い貼付剤を提供することが可能となる。
皮膚を透過したメマンチン有機酸塩は、体内で解離して遊離塩基型メマンチンとなって薬効を発揮する。メマンチン有機酸塩(S1)は、上述した通り、高い皮膚透過性を有している。これにより、本発明の貼付剤は、メマンチン有機酸塩を用いているにも関わらず、十分な量のメマンチン有機酸塩を皮膚透過させることができ、アルツハイマー病の治療に必要な量の遊離塩基型メマンチンを体内へ投与することが可能となる。
(有機酸(a1))
粘着層は、上述した通り、メマンチン有機酸塩を含む。メマンチン有機酸塩として、1分子中に酸性官能基を少なくとも2個有する有機酸(a1)と、遊離塩基型メマンチンとの塩を用いる。
有機酸(a1)が有する酸性官能基としては、カルボキシ基(-COOH)、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基(-SO3H)が挙げられる。これらの酸性官能基は、遊離塩基型メマンチンのアミノ基に容易に付加して、遊離塩基型メマンチンの遊離が生じ難い安定した塩を形成することができる。なお、有機酸(a1)は、一種類のみの酸性官能基を有していてもよく、二種類以上の酸性官能基を有していてよい。
有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のうち、少なくとも1個の酸性官能基が、カルボキシ基である。カルボキシ基を少なくとも1個有する有機酸(a1)を用いることにより、皮膚透過性が高いだけでなく、皮膚刺激が少ないメマンチン有機酸塩(S1)を得ることができる。
なお、フェノール性水酸基としては、有機酸(a1)が有している芳香族環構造を構成する炭素原子に直接結合している水酸基が挙げられる。芳香族環構造は、炭素原子が環状に結合した構造であって芳香族性を有する構造を意味する。すなわち、芳香族環構造とは、(4n+2)個(nは自然数)のπ電子を有するヒュッケル則に従う環構造を意味する。芳香族環構造としては、例えば、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造などが挙げられ、ベンゼン環構造が好ましい。
フェノール性水酸基としては、例えば、下記化学式(1)に示す、ベンゼン環構造を構成する炭素原子に直接結合している水酸基が挙げられる。有機酸(a1)がフェノール性水酸基を有する場合、有機酸(a1)がベンゼン環構造などの芳香族環構造を有しており、この芳香族環構造を構成する炭素原子に直接結合している水酸基を、フェノール性水酸基とすることができる。なお、芳香族環構造を構成する炭素原子において、水酸基が直接結合している炭素原子以外の炭素原子には、カルボキシ基やスルホン酸基など、水酸基以外の他の官能基が結合していてもよい。
Figure 2023050633000001
有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を少なくとも2個有する。有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を2個以上有することが好ましい。また、有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下有する。なかでも、有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を2個有することが特に好ましい。
有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のうち、少なくとも1個の酸性官能基が、カルボキシ基である。有機酸(a1)が有する酸性官能基の全てがカルボキシ基であってもよい。また、有機酸(a1)は、酸性官能基として、カルボキシ基と、カルボキシ基以外の他の酸性官能基とを有していてもよい。例えば、有機酸(a1)は、カルボキシ基と、フェノール性水酸基及びスルホン酸基のうちの少なくとも一方とを有していてもよい。
有機酸(a1)は、酸性官能基として、カルボキシ基と、フェノール性水酸基とを有していることが好ましい。有機酸(a1)がフェノール性水酸基を有している場合、この有機酸(a1)は芳香族環構造を有しており、この芳香族環構造を構成する炭素原子に水酸基(フェノール性水酸基)が直接結合していることが好ましい。さらに、有機酸(a1)が有している芳香族環構造を構成する炭素原子において、水酸基が直接結合している炭素原子以外の炭素原子にカルボキシ基が直接結合していることがより好ましい。
有機酸(a1)としては、例えば、サリチル酸、酒石酸、リンゴ酸、フタル酸、及びクエン酸などが挙げられる。なかでも、サリチル酸、酒石酸、リンゴ酸、フタル酸が好ましく、サリチル酸、及びリンゴ酸がより好ましく、サリチル酸がより好ましい。これらの有機酸(a1)を用いることにより、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が向上されていると共に皮膚刺激が低減された貼付剤を提供することが可能となる。
(メマンチン有機酸塩(S1))
有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を少なくとも2個有する。粘着層は、メマンチン有機酸塩として、上述した有機酸(a1)が有する酸性官能基の少なくとも2個に遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加して形成された塩を少なくとも含む。すなわち、粘着層に含まれるメマンチン有機酸塩は、有機酸(a1)が有する酸性官能基の少なくとも2個のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)含む。
メマンチン有機酸塩(S1)では、有機酸(a1)が有する酸性官能基の少なくとも2個のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加していることが好ましい。メマンチン有機酸塩(S1)において、有機酸(a1)が有する全ての酸性官能基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加していることがより好ましい。このようなメマンチン有機酸塩(S1)によれば、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が高いだけでなく皮膚刺激が低減された貼付剤を提供することが可能となる。
有機酸(a1)は、1分子中に、酸性官能基を2個有することが特に好ましい。1分子中に、酸性官能基を2個有する有機酸(a1)を用いた場合、メマンチン有機酸塩(S1)において、有機酸(a1)が有する2個の酸性官能基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加して塩を形成していることが好ましい。このようなメマンチン有機酸塩(S1)によれば、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が高いだけでなく皮膚刺激が低減された貼付剤を提供することが可能となる。
メマンチン有機酸塩中におけるメマンチン有機酸塩(S1)の含有量は、10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、メマンチン有機酸塩は、メマンチン有機酸塩(S1)のみからなることが特に好ましい。メマンチン有機酸塩(S1)の含有量が10質量%以上であると、貼付剤のメマンチン有機酸塩の皮膚透過性を向上させることができる。
(メマンチン有機酸塩(S2))
粘着層に含まれるメマンチン有機酸塩は、上述した有機酸(a1)が有する酸性官能基の1個のみに遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加して形成されたメマンチン有機酸塩(S2)を含んでいてもよい。すなわち、メマンチン有機酸塩は、上述した有機酸(a1)が有する少なくとも2個の酸性官能基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)と、上述した有機酸(a1)が有する酸性官能基の1個のみに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S2)とを含んでいてもよい。
一方、メマンチン有機酸塩(S2)は、遊離塩基型メマンチンが付加していない酸性官能基による影響が大きく、水に対する親和性が高くなり過ぎて、脂溶性が低くなってしまうため、脂溶性の高い皮膚表面へ移行し難く、結果として、皮膚透過性が低くなる。したがって、メマンチン有機酸塩が、メマンチン有機酸塩(S2)を含む場合には、メマンチン有機酸塩(S2)の含有量を低くすることが好ましい。メマンチン有機酸塩は、メマンチン有機酸塩(S1)のみを含んでいることが特に好ましい。これによりメマンチン有機酸塩の皮膚透過性が向上されていると共に皮膚刺激が低減された貼付剤を提供することができる。
メマンチン有機酸塩がメマンチン有機酸塩(S1)及びメマンチン有機酸塩(S2)を含む場合、メマンチン有機酸塩中におけるメマンチン有機酸塩(S1)の含有量は、80~99質量%が好ましく、90~99質量%がより好ましい。メマンチン有機酸塩(S1)の含有量を上記範囲内とすることにより、メマンチン有機酸塩の高い皮膚透過性を維持することができる。
メマンチン有機酸塩がメマンチン有機酸塩(S1)及びメマンチン有機酸塩(S2)を含む場合、メマンチン有機酸塩中におけるメマンチン有機酸塩(S2)の含有量は、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。メマンチン有機酸塩(S2)の含有量を上記範囲内とすることにより、メマンチン有機酸塩の高い皮膚透過性を維持することができる。
粘着層中におけるメマンチン有機酸塩の含有比率は、メマンチン有機酸塩及び粘着剤の総量100質量部に対して、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましい。また、粘着層中におけるメマンチン有機酸塩の含有比率は、メマンチン有機酸塩及び粘着剤の総量100質量部に対して、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がより好ましい。メマンチン有機酸塩の含有比率が2.5質量部以上であると、治療に必要とされる皮膚透過量でメマンチン有機酸塩を投与することが可能な貼付剤を提供することができる。メマンチン有機酸塩の含有比率を60質量部以下とすることにより、メマンチン有機酸塩による皮膚刺激を低減することができる。
(粘着剤)
粘着層は、上述したメマンチン有機酸塩の他に、粘着剤を含む。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤などが挙げられる。なかでも、ゴム系粘着剤、及びアクリル系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤がより好ましい。なお、粘着剤は、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
(ゴム系粘着剤)
ゴム系粘着剤としては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及びスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体などのスチレン系ブロック共重合体、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、及び天然ゴム等が挙げられる。なかでも、スチレン系ブロック共重合体、ポリイソブチレン、及びポリブタジエンが好ましく、スチレン系ブロック共重合体、及びポリイソブチレンがより好ましい。ゴム系粘着剤は、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
ゴム系粘着剤としてポリイソブチレンを用いる場合、ポリイソブチレンは、重量平均分子量が10000以上、400000以下であるポリイソブチレン(I)と、重量平均分子量が400000超過、4000000以下であるポリイソブチレン(II)とを含んでいることが好ましい。ポリイソブチレン(I)は、貼付剤を皮膚に貼着するときに必要なタックを粘着層に付与することができる。また、ポリイソブチレン(II)は、粘着層の凝集力を適度に向上させることができる。これらのポリイソブチレン(I)及び(II)を組み合わせて用いることにより、適度な凝集力とタックを有し、粘着性に優れる粘着層が得られる。
ポリイソブチレン(I)の重量平均分子量は、10000~400000が好ましく、50000~100000がより好ましい。また、ポリイソブチレン(II)の重量平均分子量は、400000超過、4000000以下が好ましく、700000~2000000がより好ましい。
なお、ポリイソブチレンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算値をいう。例えば、ポリイソブチレンの重量平均分子量は、例えば、カラム(shodex社製 商品名「KF-806L+805L+804L」)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、流速1.0ミリリットル/分、検出器:示差屈折率検出器の条件で測定することができる。
ゴム系粘着剤中におけるポリイソブチレン(I)の含有量は、5~50質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましい。また、ゴム系粘着剤中におけるポリイソブチレン(II)の含有量は、50~95質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましい。
ゴム系粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体を用いる場合、スチレン系ブロック共重合体は、スチレン成分の含有量が20~35質量%であるスチレン系ブロック共重合体(I)と、スチレン成分の含有量が5~19質量%であるスチレン系ブロック共重合体(II)とを含んでいることが好ましい。スチレン系ブロック共重合体(I)は、粘着層の凝集力を適度に向上させることができる。また、スチレン系ブロック共重合体(II)は、貼付剤を皮膚に貼着するときに必要なタックを粘着層に付与することができる。これらのスチレン系ブロック共重合体(I)及び(II)を組み合わせて用いることにより、適度な凝集力とタックを有し、粘着性に優れる粘着層が得られる。
スチレン系ブロック共重合体(I)のスチレン成分の含有量は、20~35質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましい。また、スチレン系ブロック共重合体(II)のスチレン成分の含有量は、5~19質量%が好ましく、10~18質量%がより好ましい。
ゴム系粘着剤中におけるスチレン系ブロック共重合体(I)の含有量は、1~99質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。また、ゴム系粘着剤中におけるスチレン系ブロック共重合体(II)の含有量は、1~99質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤としては、アルキル(メタ)アクリレート成分を含有するアクリル系重合体が好ましく挙げられる。アクリル系重合体によれば、粘着層に適度な凝集力を付与し、粘着層の粘着性を向上させることができる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。アクリル系重合体は、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、好ましくは、-Cn2n+1(式中、nは、正の整数である。)で示される基である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~16が好ましく、1~14がより好ましく、2~12がより好ましく、2~10が特に好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、エチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、エチル(メタ)アクリレート、及びn-オクチル(メタ)アクリレートがより好ましく、エチルアクリレート、及びn-オクチルアクリレートがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体中におけるアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、アクリル系重合体中におけるアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
アクリル系重合体は、アルキル(メタ)アクリレート成分以外にも、他の単量体成分を含んでいてもよい。
他の単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。他の単量体は、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドンが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
(アクリル系重合体(A))
アクリル系重合体としては、アルキル(メタ)アクリレート成分と、N-ビニル-2-ピロリドン成分とを含むアクリル系重合体(A)が好ましく挙げられる。アクリル系重合体(A)は、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートとN-ビニル-2-ピロリドンとの共重合体である。特に、アクリル系重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレート成分及びN-ビニル-2-ピロリドン成分のみからなることが特に好ましい。
アクリル系重合体(A)は、メマンチン有機酸塩が粘着層中から粘着層表面への拡散移行を阻害し難く、メマンチン有機酸塩の皮膚透過量が高い貼付剤を提供することができる。また、アクリル系重合体(A)によれば、メマンチン有機酸塩の保存安定性が高い貼付剤とすることもできる。これにより、夏場など高温環境下に長期間に亘って貼付剤が保管された場合であっても、メマンチン有機酸塩の分解を低減して、貼付剤のメマンチン有機酸塩の皮膚透過量を高く維持することができる。
アクリル系重合体(A)において、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~16が好ましく、2~14がより好ましく、2~10がより好ましく、2~8が特に好ましい。
アクリル系重合体(A)におけるアルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、アクリル系重合体について上述したアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。なかでも、エチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、エチル(メタ)アクリレート、及びn-オクチル(メタ)アクリレートがより好ましく、エチルアクリレート、及びn-オクチルアクリレートがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体(A)中におけるアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましく、85質量%以上が特に好ましい。アクリル系重合体(A)中におけるアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレート成分の含有量を60質量%以上とすることにより、粘着層の凝集力を適度な範囲として、粘着層の粘着力を向上させることができる。アルキル(メタ)アクリレート成分の含有量を95質量%以下とすることにより、アクリル系重合体(A)中にN-ビニル-2-ピロリドン成分を十分な量で含ませることができる。
アクリル系重合体(A)は、上述したアルキル(メタ)アクリレート成分の他に、N-ビニル-2-ピロリドン成分を含む。N-ビニル-2-ピロリドン成分を含むアクリル系重合体(A)によれば、粘着層中にメマンチン有機酸塩を溶解させた状態で含ませることができる。これによりメマンチン有機酸塩の皮膚透過性を向上させることができる。
アクリル系重合体(A)中におけるN-ビニル-2-ピロリドン成分の含有量は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上がより好ましい。アクリル系重合体(A)中におけるN-ビニル-2-ピロリドン成分の含有量は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。N-ビニル-2-ピロリドン成分の含有量を5質量%以上とすることにより、粘着層中に含まれるメマンチン有機酸塩を十分に溶解させた状態とすることができる。一方、N-ビニル-2-ピロリドン成分の含有量を40質量%以下とすることにより、粘着層の凝集力を適度に維持し、粘着層の優れた粘着力を維持することができる。
(アクリル系重合体(B))
アクリル系重合体としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分と、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート成分とを含むアクリル系重合体(B)も好ましく挙げられる。アクリル系重合体(B)は、好ましくは、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体である。特に、アクリル系重合体(B)は、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分以外のアルキル(メタ)アクリレート成分のみからなることが好ましい。アクリル系重合体(B)は、N-ビニル-2-ピロリドン成分を含んでいないことが好ましい。
アクリル系重合体(B)は、メマンチン有機酸塩が粘着層中から粘着層表面への拡散移行を阻害し難く、これによりメマンチン有機酸塩の皮膚透過量が高い貼付剤を提供することができる。また、アクリル系重合体(B)によれば、メマンチン有機酸塩の保存安定性が高い貼付剤とすることもできる。これにより、夏場など高温環境下に長期間に亘って貼付剤が保管された場合であっても、メマンチン有機酸塩の分解を低減して、メマンチン有機酸塩の皮膚透過量を高く維持することができる。
アクリル系重合体(B)は、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分を含んでいる。2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートとしては、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-エチルヘキシルメタクリレートが挙げられる。アクリル系重合体(B)は、2-エチルヘキシルアクリレート成分、及び2-エチルヘキシルメタクリレート成分のうち少なくとも一方を含んでいることが好ましく、2-エチルヘキシルアクリレート成分、及び2-エチルヘキシルメタクリレート成分の双方を含んでいることがより好ましい。
アクリル系重合体(B)中における2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましく、85質量%以上が特に好ましい。アクリル系重合体(B)中における2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分の含有量は、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が特に好ましい。2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分の含有量を60質量%以上とすることにより、粘着層の凝集力を適度な範囲として、粘着層の粘着力を向上させることができる。2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート成分の含有量を95質量%以下とすることにより、粘着層の凝集力を適度な強さにすることができる。
アクリル系重合体(B)は、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート以外の、アルキル(メタ)アクリレート成分を含む。
アクリル系重合体(B)において、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~16が好ましく、1~14がより好ましく、5~14がより好ましい。
アクリル系重合体(B)におけるアルキル(メタ)アクリレートとしては、アクリル系重合体について上述したアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートがより好ましく、ドデシル(メタ)アクリレートがより好ましい。これらは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体(B)における、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上がより好ましい。アクリル系重合体(B)における、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレート成分の含有量を5質量%以上とすることにより、粘着層の凝集力を向上させることができる。一方、アルキル(メタ)アクリレート成分の含有量を40質量%以下とすることにより、粘着層の凝集力を適度な強さにすることができる。
アクリル系重合体(B)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分をさらに含んでいてもよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体(B)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分を含んでいてもよいが、アクリル系重合体(B)中におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は少ない方がメマンチン有機酸塩の保存安定性を向上させることができる。
したがって、アクリル系重合体(B)中におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。また、アクリル系重合体(B)中におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、0.1質量%以上が好ましい。特に、メマンチン有機酸塩の保存安定性を向上させるために、アクリル系重合体(B)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分を含んでいないことが特に好ましい。アクリル系重合体(B)中におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、0質量%であることが特に好ましい。
アクリル系重合体としては、上述したアクリル系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)が用いられる。アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体(A)及びアクリル系重合体(B)の双方を含んでいてもよいが、アクリル系重合体(A)又はアクリル系重合体(B)を含んでいればよい。
アクリル系重合体は、酸性官能基を有していないことが好ましく、又は、アクリル系重合体が酸性官能基を有している場合には、このアクリル系重合体中における酸性官能基を有するモノマー成分の含有量を2質量%以下とすることが好ましい。
アクリル系重合体における酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基、及び下記化学式(2)で示されるリン酸基(H2PO4-)などが挙げられる。これらの酸性官能基をアクリル系重合体が有している場合、酸性官能基によって、メマンチン有機酸塩の分解を促進させて、メマンチン有機酸塩の保存安定性を低下させたり、分解によりフリー体となった遊離塩基型メマンチンによる皮膚刺激を生じさせることがある。
Figure 2023050633000002
酸性官能基を有するモノマーとしては、酸性官能基を有するビニル系モノマーが挙げられる。酸性官能基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、ブチルマレイン酸等のカルボキシ基含有ビニル系モノマー;3-スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アクリル系重合体が酸性官能基を有している場合、このアクリル系重合体中における酸性官能基を有するモノマー成分の含有量は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が特に好ましい。なお、アクリル系重合体が酸性官能基を有している場合、このアクリル系重合体中における酸性官能基を有するモノマー成分の含有量は、0質量%を超える。酸性官能基を含有するモノマー成分の含有量が2質量%以下であれば、アクリル系重合体が酸性官能基を有している場合であっても、酸性官能基によるメマンチン有機酸塩の分解を低減することができる。
アクリル系重合体中において、酸性官能基を有するモノマー成分の含有量を2質量%以下として、アクリル系重合体が酸性官能基を低い割合であれば有していてもよい。しかしながら、本発明では、アクリル系重合体は、酸性官能基を含有していないことが特に好ましい。すなわち、アクリル系重合体中において、酸性官能基を含有するモノマー成分の含有量が0質量%であることが特に好ましい。
アクリル系重合体の重合方法としては、従来公知の方法にて行なえばよい。例えば、重合開始剤の存在下で、上述したモノマーを重合する方法が挙げられる。具体的には、所定量のモノマー、重合開始剤、及び重合溶媒を反応器に供給し、60~80℃の温度で4~48時間に亘って加熱して、モノマーをラジカル重合させる。
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4’-ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジ-tert-ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、シクロヘキサンやトルエンなどが挙げられる。更に、重合反応は、窒素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
アクリル系重合体は、架橋されていてもよい。アクリル系重合体の架橋方法としては、有機過酸化物、架橋助剤や架橋剤などを用いる化学的架橋方法、電離性放射線を照射する物理的架橋方法等が挙げられる。なお、電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線などが挙げられる。
しかしながら、アクリル系重合体が架橋されていると、粘着層の凝集力が過剰に増大して粘着層中におけるメマンチン有機酸塩の拡散移行を抑制してしまうことがあり、これによりメマンチン有機酸塩の皮膚透過性を低下させることがある。したがって、アクリル系重合体は架橋されていないことが好ましい。
粘着層中に含まれているアクリル系重合体が架橋されていない場合、粘着層のゲル分率は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0質量%が特に好ましい。
粘着層のゲル分率は下記の要領で測定された値をいう。粘着層の質量[W0(g)]を測定し、これを120℃のキシレン中に24時間浸漬して不溶解分を200メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を真空乾燥して乾燥残渣の質量[W1(g)]を測定し、下記式により粘着層のゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=(W1/W0)×100
粘着剤中におけるアクリル系重合体の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、粘着剤はアクリル系重合体のみからなることが特に好ましい。アクリル系重合体の含有量を80質量%以上とすることにより、粘着性が優れており、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性が向上された貼付剤を提供することができる。
粘着層中における粘着剤の含有比率は、メマンチン有機酸塩及び粘着剤の総量100質量部に対して、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上がより好ましい。粘着層中における粘着剤の含有比率は、メマンチン有機酸塩及び粘着剤の総量100質量部に対して、97.5質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましい。粘着剤の含有比率が40質量部以上であると、粘着層の皮膚への粘着性を向上させることができる。粘着剤の含有比率を97.5質量部以下とすることにより、必要な量でメマンチン有機酸塩や他の成分を粘着層に添加することができる。
粘着層は、貼付剤の皮膚刺激性に影響を与えない範囲であれば、可塑剤、粘着付与剤、及び充填剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。
(可塑剤)
粘着層は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤によれば、粘着層の粘着性を向上させることができる。可塑剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、アジピン酸イソプロピルなどのエステル類、ミリスチルアルコール、セタノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールなどの1価アルコール類、オクタンジオールなどの2価アルコール類、及び流動パラフィンなどが挙げられる。なかでも、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、及びオクチルドデカノールが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。可塑剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における可塑剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~45質量部がより好ましい。
(粘着付与剤)
粘着付与剤としては、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジングリセリンエステル、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂などが挙げられる。粘着付与剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における粘着付与剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、15~80質量部が好ましく、20~70質量部がより好ましい。
(充填剤)
充填剤は、粘着層の形状保持性を調整するために用いられる。充填剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機充填剤;炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの有機金属塩類;乳糖、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。充填剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における充填剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
粘着層は、メマンチン有機酸塩及び粘着剤を含み、これらの他に可塑剤、粘着付与剤、及び充填剤などの添加剤を含んでいてもよい。粘着層に含まれるメマンチン有機酸塩以外の他の成分は、酸性官能基を有していないことが好ましい。他の成分としては、例えば、粘着剤、可塑剤、粘着付与剤、及び充填剤などが挙げられる。
他の成分が有する酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基、及びリン酸基などが挙げられる。これらの酸性官能基を他の成分が有している場合、酸性官能基によって、メマンチン有機酸塩の分解を促進させて、メマンチン有機酸塩の保存安定性を低下させたり、分解によりフリー体となった遊離塩基型メマンチンによる皮膚刺激を生じさせることがある。
酸性官能基を有する他の成分としては、例えば、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジングリセリンエステルなどのカルボキシ基を有する粘着付与剤、上述した酸性官能基を有するアクリル系重合体などの粘着剤などが挙げられる。
粘着層の厚みは、20~200μmが好ましく、30~150μmがより好ましく、50~120μmが特に好ましい。粘着層の厚みが20μm以上であると、所望する薬効を得るために必要な量のメマンチン有機酸塩を粘着層中に含有させることができる。粘着層の厚みが200μm以下であると、粘着層中の残存溶剤を低減するために製造時に強い乾燥条件を必要としないため、粘着層中のメマンチン有機酸塩の揮散又は分解を抑制することができる。
[支持体]
本発明の貼付剤では、支持体の一面に粘着層が積層一体化される。支持体は、粘着層中の薬物の損失を防ぎ、貼付剤に自己保持性を付与するための強度を有することが求められる。このような支持体としては、樹脂フィルム、不織布、織布、編布、アルミニウムシートなどが挙げられる。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、酢酸セルロース、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。なかでも、揮散性のある薬物であっても粘着層からの薬物の損失を防げることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
不織布を構成する素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、SIS共重合体、SEBS共重合体、レーヨン、綿などが挙げられ、ポリエステルが好ましい。なお、これらの素材は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
支持体は、単層であっても、複数層が積層一体化された積層シートであってもよい。積層シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートと、不織布や柔軟な樹脂フィルムとが積層一体化された積層シートが挙げられる。
支持体の厚みは、特に制限されないが、2~200μmが好ましく、2~100μmがより好ましい。
[剥離ライナー]
本発明の貼付剤では、粘着層の一面に、剥離ライナーが剥離可能に積層一体化されていてもよい。剥離ライナーは、粘着層中の薬物の損失防止や粘着層を保護するために用いられる。
剥離ライナーとしては、例えば、紙及び樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。剥離ライナーの粘着層と対向させる面には離型処理が施されていることが好ましい。
[貼付剤の製造方法]
本発明の貼付剤の製造方法としては、例えば、(1)粘着剤、メマンチン有機酸塩、及び溶媒を含む粘着層溶液を、支持体の一面に塗工した後に乾燥させることにより、支持体の一面に粘着層を積層一体化し、必要に応じて、粘着層に剥離ライナーを、剥離ライナーの離型処理が施された面が粘着層に対向した状態となるように積層する方法、(2)上記粘着層溶液を剥離ライナーの離型処理が施された面上に塗工し、乾燥させることにより、剥離ライナー上に粘着層を形成し、この粘着層に支持体を積層一体化させる方法などが挙げられる。
メマンチン有機酸塩の製造方法としては、特に制限されず、遊離塩基型メマンチン及び有機酸(a1)、並びに必要に応じて溶媒を混合し、遊離塩基型メマンチン及び有機酸(a1)を反応させてメマンチン有機酸塩を得る方法などが挙げられる。
遊離塩基型メマンチン及び有機酸(a1)を混合する際、有機酸(a1)が有する酸性官能基の少なくとも2個のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンが別々に付加して、メマンチン有機酸塩(S1)が得られるように、遊離塩基型メマンチンと有機酸(a1)との混合比を調整することが好ましい。
例えば、サリチル酸、リンゴ酸、及びフタル酸など、1分子中に酸性官能基を2個有する有機酸(a1)を用いる場合、遊離塩基型メマンチンと有機酸(a1)との混合比は、モル比(有機酸(a1)のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で、0.5~0.9が好ましく、0.5~0.8がより好ましく、0.5~0.7がより好ましい。上記モル比を上記範囲内とすることにより、メマンチン有機酸塩(S1)を含むメマンチン有機酸塩を形成することができる。これによりメマンチン有機酸塩の皮膚透過性が向上されていると共に皮膚刺激が低減された貼付剤を提供することができる。上記モル比が0.5を超えると、メマンチン有機酸塩(S1)及びメマンチン有機酸塩(S2)の双方を含むメマンチン有機酸塩を形成することができる。特に、遊離塩基型メマンチンと有機酸(a1)との混合比は、モル比(有機酸(a1)のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で、0.5であるのが好ましい。上記モル比を0.5とすることにより、メマンチン有機酸塩(S1)のみを含むメマンチン有機酸塩を形成することができる。これによりメマンチン有機酸塩の皮膚透過性が向上されていると共に皮膚刺激がより低減された貼付剤を提供することができる。
遊離塩基型メマンチン及び有機酸(a1)を混合する際に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、及びtert-ブチルアルコールなどのプロトン性溶媒;トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、及び酢酸エチルなどの非プロトン性溶媒等が挙げられる。なかでも、プロトン性溶媒が好ましい。プロトン性溶媒によれば遊離塩基型メマンチンと有機酸(a1)とが容易に反応してメマンチン有機酸塩を形成することができる。なお、プロトン性溶媒を用いる場合、プロトン性溶媒は水を含んでいないことが好ましい。プロトン性溶媒が水を含んでいると、遊離塩基型メマンチンと有機酸(a1)とが塩を形成し難くなり、遊離塩基型メマンチンが塩の形態とならずに遊離した状態のまま粘着層に含まれることがある。このような遊離塩基型メマンチンは皮膚刺激の原因となり得る。なお、溶媒は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
粘着層溶液は、粘着剤、メマンチン有機酸塩、及び溶媒を均一に撹拌することにより得られる。粘着層溶液は、必要に応じて、粘着剤、メマンチン有機酸塩、及び溶媒以外の成分(例えば、可塑剤、粘着付与剤、及び充填剤など)を含んでいてもよい。粘着層溶液に含まれるメマンチン有機酸塩以外の他の成分は、酸性官能基を有していないことが好ましい。他の成分としては、例えば、粘着剤、可塑剤、粘着付与剤、及び充填剤などが挙げられる。また、他の成分が有する酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基、及びリン酸基などが挙げられる。粘着層溶液に含まれるメマンチン有機酸塩以外の他の成分が酸性官能基を有している場合、他の成分が有する酸性官能基によって、粘着層溶液に含まれるメマンチン有機酸塩が分解して遊離塩基型メマンチンとなる。このような場合、メマンチン有機酸塩を含む粘着層を形成することができず、特に、塩の形態とならずに遊離した状態の遊離塩基型メマンチンを含む粘着層が形成される。このような粘着層は、遊離塩基型メマンチンによって皮膚刺激などを招くことがある。
粘着層溶液の調製に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、及びtert-ブチルアルコールなどのプロトン性溶媒;トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、及び酢酸エチルなどの非プロトン性溶媒等が挙げられる。なかでも、非プロトン性溶媒が好ましく、トルエン、ノルマルヘキサン、及び酢酸エチルがより好ましい。これらの非プロトン性溶媒によれば、粘着層溶液中でメマンチン有機酸塩から遊離してフリー体となった遊離塩基型メマンチンが形成されるのを低減することができる。溶媒は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
本発明の貼付剤は、有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)を用いることによって、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性がアルツハイマー病の治療に必要な皮膚透過量が得られる程度まで向上されている共に皮膚刺激が低減された貼付剤を提供することができる。したがって、本発明の貼付剤を長時間に亘って皮膚に貼付した場合であっても、皮膚の貼付部位における炎症の発生を高く低減することができる。
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例及び比較例でアクリル系粘着剤として使用したアクリル系重合体は、下記の通りに調製した。
(アクリル系重合体(A1)の調製)
n-オクチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート50質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン10質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド1質量部を酢酸エチル30質量部及びシクロヘキサン20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A1)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A1)溶液を得た。
(アクリル系重合体(B1)の調製)
ドデシルメタクリレート13質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート78質量部、及び2-エチルヘキシルアクリレート9質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を酢酸エチル10質量部とシクロヘキサン10質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(B1)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(B1)溶液を得た。
(アクリル系重合体(B2)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート71重量部、メチルアクリレート24重量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート5重量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50重量部からなる反応液を重合機へ投入し、重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にベンゾイルパーオキサイド0.5重量部をn-ヘキサン10重量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(B2)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(B2)溶液を得た。
また、実施例及び比較例で使用した粘着剤及び粘着付与剤の詳細を以下に記載する。
(ゴム系粘着剤)
・ゴム系粘着剤(1)(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(I)(スチレン成分含有量22質量%、KRATON社製 商品名「クレイトンDX401」)40質量%と、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(II)(スチレン成分含有量17質量%、KRATON社製 商品名「クレイトンD1117」60質量%とを含むゴム系粘着剤)
・ゴム系粘着剤(2)(ポリイソブチレン(I)(重量平均分子量70000、BASF社製 商品名「OPPANOL B12」)33質量%と、ポリイソブチレン(II)(重量平均分子量1050000、BASF社製 商品名「OPPANOL B80」)67質量%とを含むゴム系粘着剤)
(シリコーン系粘着剤)
・シリコーン系粘着剤(1)(ダウ・東レ株式会社製 商品名「MG7-9850 A剤」及び「MG7-9850 B剤」)
(粘着付与剤)
・脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製 商品名「アルコンP90」)
(実施例1~14)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてサリチル酸とを、表1~2に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチンサリチル酸塩を形成した。
なお、モル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)を0.5とした場合、得られたメマンチンサリチル酸塩は、サリチル酸が有するフェノール性水酸基及びカルボキシ基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加して形成されたメマンチンサリチル酸塩(S1)のみを含んでいた。
また、モル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)を0.6とした場合、得られたメマンチンサリチル酸塩は、サリチル酸が有するフェノール性水酸基及びカルボキシ基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加して形成されたメマンチンサリチル酸塩(S1)94質量%、及びサリチル酸が有するフェノール性水酸基には遊離塩基型メマンチンが付加しておらず、且つサリチル酸が有するカルボキシ基のみに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個付加して形成されたメマンチンサリチル酸塩(S2)6質量%を含んでいた。
さらに、モル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)を0.7とした場合、得られたメマンチンサリチル酸塩は、サリチル酸が有するフェノール性水酸基及びカルボキシ基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加して形成されたメマンチンサリチル酸塩(S1)84質量%、及びサリチル酸が有するフェノール性水酸基には遊離塩基型メマンチンが付加しておらず、且つサリチル酸が有するカルボキシ基のみに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個付加して形成されたメマンチンサリチル酸塩(S2)16質量%を含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表1~2となるように、メマンチンサリチル酸塩に、アクリル系重合体(A1)溶液、アクリル系重合体(B1)溶液、アクリル系重合体(B2)溶液、ゴム系粘着剤(1)、ゴム系粘着剤(2)、シリコーン系粘着剤(1)、及び脂環族飽和炭化水素樹脂を添加して混合して混合物を得た。この混合物に固形分の濃度が20~35質量%になるように溶媒として酢酸エチル、シクロヘキサン、又はヘプタンを加えた後、均一になるまで混合して、粘着層溶液を作製した。
シリコーン離型処理が施された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離ライナーとして用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に、上記粘着層溶液を塗布し、60℃で20~30分間乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に厚さ100μmの粘着層が形成された積層体を作製した。そして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用意した。この支持体の一面と、上記積層体の粘着層とが対向するように重ね合わせて、積層体の粘着層を支持体に転写させて積層一体化させることによって貼付剤を製造した。なお、粘着層中における各成分の配合量を表1~2に示した。
(実施例15)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸として酒石酸とを、表2に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチン酒石酸塩を形成した。
メマンチン酒石酸塩は、酒石酸が有する2個の水酸基には遊離塩基型メマンチンが付加しておらず、且つ酒石酸が有する2個のカルボキシ基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加して形成されたメマンチン酒石酸塩(S1)のみを含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表2となるように、メマンチン酒石酸塩に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
(実施例16)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてリンゴ酸とを、表2に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチンリンゴ酸塩を形成した。
メマンチンリンゴ酸塩は、リンゴ酸が有する水酸基には遊離塩基型メマンチンが付加しておらず、且つリンゴ酸が有する2個のカルボキシ基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加して形成されたメマンチンリンゴ酸塩(S1)のみを含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表2となるように、メマンチンリンゴ酸塩に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
(実施例17)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてフタル酸とを、表2に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチンフタル酸塩を形成した。
メマンチンフタル酸塩は、フタル酸が有する2個のカルボキシ基のそれぞれに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個ずつ別々に付加して形成されたメマンチンフタル酸塩(S1)のみを含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表2となるように、メマンチンフタル酸塩に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
(比較例1~2)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてサリチル酸とを、表3に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチンサリチル酸塩を形成した。
メマンチンサリチル酸塩は、サリチル酸が有するフェノール性水酸基には遊離塩基型メマンチンが付加しておらず、且つサリチル酸が有するカルボキシ基のみに、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個付加して形成されたメマンチンサリチル酸塩(S2)のみを含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表3となるように、メマンチンサリチル酸塩に、アクリル系重合体(A1)溶液又はアクリル系重合体(B1)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
(比較例3)
先ず、溶媒の非存在下で、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてミリスチン酸とを、表3に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で混合し、メマンチンミリスチン酸塩を形成した。
メマンチンミリスチン酸塩は、ミリスチン酸が有する1個のカルボキシ基に、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個付加して形成されたメマンチンミリスチン酸塩のみを含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表3となるように、メマンチンミリスチン酸塩に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
(比較例4)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてマンデル酸とを、表3に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチンマンデル酸塩を形成した。
メマンチンマンデル酸塩は、マンデル酸が有する水酸基には遊離塩基型メマンチンが付加しておらず、且つマンデル酸が有する1個のカルボキシ基に、遊離塩基型メマンチンのアミノ基が1個付加して形成されたメマンチンマンデル酸塩のみを含んでいた。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表3となるように、メマンチンマンデル酸塩に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
(比較例5~6)
粘着層溶液を作製する際に、粘着層中における各成分の配合量が表3となるように、遊離塩基型メマンチンに、アクリル系重合体(B2)溶液を混合したこと、粘着層が形成された積層体を作製する際に、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に塗布した粘着層溶液を室温(25℃)で2時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして貼付剤を製造した。
(比較例7)
メマンチン塩酸塩30.0質量部に、水酸化ナトリウムを5.6質量%含む水酸化ナトリウム水溶液11.2質量部を添加して反応液を得、この反応液を撹拌することにより、全てのメマンチン塩酸塩を中和して遊離塩基型メマンチンとした。
次に、粘着層溶液を作製する際に、粘着層中における各成分の配合量が表3となるように、上記反応液に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合したこと、粘着層が形成された積層体を作製する際に、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に塗布した粘着層溶液を室温(25℃)で2時間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして貼付剤を製造した。
なお、比較例7における粘着層は、アクリル系粘着剤64.4質量%及び遊離塩基型メマンチン24.9質量%の他に、水及び塩化ナトリウムを10.7質量%含んでいた。
(比較例8)
先ず、エタノール中に、遊離塩基型メマンチンと、有機酸としてアスコルビン酸とを、表3に示すモル比(有機酸のモル数/遊離塩基型メマンチンのモル数)で投入し、これらを混合して溶解させた後、エタノールのみを揮散させることによりメマンチンアスコルビン酸塩を形成した。
次に、粘着層中における各成分の配合量が表3となるように、メマンチンアスコルビン酸塩に、アクリル系重合体(B2)溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして粘着層溶液を作製し、この粘着層溶液を用いて貼付剤を製造した。
[評価]
[ゲル分率]
実施例及び比較例で製造した貼付剤における粘着層のゲル分率を、上述した要領で測定した。得られた結果を表1~3に示した。
また、実施例及び比較例で製造した貼付剤について、皮膚透過性及び皮膚刺激性を下記の要領で測定した。
[皮膚透過性試験(製造直後)]
製造直後の貼付剤を切断して、面積が3cm2の平面正方形状の試験片を得た。32℃に保持されたFranz型の拡散セルに、ヘアレスマウス(雄、8週齢)の背部から摘出した皮膚を固定した。この皮膚の角質層側に、剥離ライナーを剥離除去した試験片を粘着層によって貼付した。Franz型の拡散セルのレセプター側をレセプター液で満たし、皮膚の真皮側をレセプター液と接触させた。なお、pH7.4に調整した生理食塩水をレセプター液として用いた。試験片を皮膚に貼付してから6時間及び24時間後に、Franz型の拡散セルからレセプター液を採取した。経過時間毎に、下記手順に従って、遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量を算出した。
(内標準溶液の調製)
ガラス製のメスフラスコ(容量200mL)に、内標準物質としてアダマンタン800mgを投入した後、ヘキサンをさらに投入して混合することによりアダマンタンを溶解させ、さらにヘキサンを投入して、200mLの標線まで満たして、内標準溶液とした。
(標準溶液の調製)
ねじ口試験管(容量10mL)に、メマンチン塩酸塩10mgを投入した後、pH7.4に調整した生理食塩水(レセプター液)2mL及び1mol/Lの水酸化ナトリウムを含む水溶液1mLをさらに投入して混合することにより、メマンチン塩酸塩を中和させて遊離塩基型メマンチンとした。次に、試験管に内標準溶液3mLを加えた。この際、水相と油相に相分離する。その後、試験管を振とう機で激しく振とうさせて、遊離塩基型メマンチンを油相に完全に分配させた。そして、内部温度が25℃である遠心機を用いて遠心分離を行って、油相と水相とを完全に相分離させた後、油相(遊離塩基型メマンチン濃度2.770mg/mL)3mLを採取して標準溶液とする。
(試料溶液の調製)
ねじ口試験管(容量10mL)に、Franz型の拡散セルから採取したレセプター液2mL、及び1mol/Lの水酸化ナトリウムを含む水溶液1mLを投入して混合することにより、メマンチン有機酸塩を中和させて遊離塩基型メマンチンとした。次に、試験管に内標準溶液3mLを加えた。この際、水相と油相に相分離する。その後、上述した標準溶液の調製と同様にして、振とう及び遠心分離を行った後、油相3mLを採取して試料溶液とする。
標準溶液及び試料溶液について、ガスクロマトグラフィー測定を行って内部標準法による定量分析を行う。次に、標準溶液のガスクロマトグラムから内標準物質のピーク面積に対する遊離塩基型メマンチンのピーク面積の比(Qs)を求め、試料溶液のガスクロマトグラムから内標準物質のピーク面積に対する遊離塩基型メマンチンのピーク面積の比(Qt)を求めた。そして、次式により、遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量を算出した。
遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量(mg/cm2)
=[標準溶液中の遊離塩基型メマンチン濃度(2.770mg/mL)×(Qt/Qs)
×内標準溶液量(3mL)×Franz型の拡散セル内のレセプター液量(mL)]
/[Franz型の拡散セルから採取したレセプター液量(2mL)×3(cm2)]
上述の通りにして、6時間後及び24時間後の遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量をそれぞれ算出し、これらを合算することにより、24時間後の遊離塩基型メマンチンの累積皮膚透過量を算出した。6時間後の遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量を、表1~3の「皮膚透過性試験(製造直後)」の「6時間後の皮膚透過量」の欄に示した。また、24時間後の遊離塩基型メマンチンの累積皮膚透過量を、表1~3の「皮膚透過性試験(製造直後)」の「24時間後の累積皮膚透過量」の欄に示した。
[皮膚透過性試験(60℃、1ヶ月後)]
貼付剤を60℃の温度雰囲気下で1ヶ月に亘って保存した。保存後の貼付剤について、上述した「皮膚透過性試験(製造直後)」と同様の手順に従って、試験片を皮膚に貼付してから、6時間後の遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量、及び24時間後の遊離塩基型メマンチンの累積皮膚透過量を算出した。得られた結果を表1~3の「皮膚透過性試験(60℃、1ヶ月後)」における「6時間後の皮膚透過量」及び「24時間後の累積皮膚透過量」の欄にそれぞれ示した。
そして、下記式に基づいて24時間皮膚透過量変化率(%)を算出した。算出した値を表1~3の「24時間皮膚透過量変化率(60℃、1ヶ月後)」の欄に示した。
24時間皮膚透過量変化率(%)
=[100×(保存後の貼付剤の24時間後の遊離塩基型メマンチンの累積皮膚透過量)]/(製造直後の貼付剤の24時間後の遊離塩基型メマンチンの累積皮膚透過量)
皮膚透過性試験において、24時間後の遊離塩基型メマンチンの累積皮膚透過量は、0.01mg/cm2以上が好ましい。累積皮膚透過量が0.01mg/cm2以上であれば、アルツハイマー病の治療に必要とされる遊離塩基型メマンチンの皮膚透過量を達成することができる。
なお、比較例4の貼付剤を60℃の温度雰囲気下で1ヶ月に亘って保存したが、保存後の粘着層表面に、メマンチンミリスチン酸塩と思われる液体成分がブリードし、粘着力が不足したため、60℃の温度雰囲気下で1ヶ月に亘って保存した後の貼付剤については皮膚透過量の評価は行わなかった。
[ラット皮膚刺激性]
貼付剤を切断して、面積が3cm2の平面正方形状の試験片を得た。Wistar系ラット(7週齢)の背部を剃毛し、その翌日に、ラットの剃毛した背部の皮膚に、剥離ライナーを剥離除去した試験片を粘着層によって貼付した。貼付から24時間後に試験片を剥がし取った。剥離から1時間後及び24時間後に、ラット背部の皮膚の紅斑状態及び浮腫状態を目視観察し、下記基準に従って点数をつけて評価した。2匹のラットについて上記評価を行い、1時間後及び24時間後の紅斑状態及び浮腫状態についての点数を全て合計し、その相加平均値を算出し、皮膚一次刺激指数(Primary Irritation Index:P.I.I)とした。得られた皮膚一次刺激指数を表1~3の「ラット皮膚刺激性」の欄に示した。
紅斑状態
0・・・紅斑なし
1・・・ごく軽度の紅斑(かろうじて識別できる)
2・・・明らかな紅斑
3・・・中等度から高度紅斑
4・・・重度の紅斑(肉赤色)から紅斑の識別を妨げる痂皮形成
浮腫状態
0・・・浮腫なし
1・・・ごく軽度の浮腫(かろうじて識別できる)
2・・・明らかな浮腫(明確な縁が識別できる)
3・・・中等度浮腫(約1mm膨隆)
4・・・高度浮腫(1mmを超えた膨隆、周囲にも広がる)
なお、上記ラット皮膚刺激性の評価における皮膚一次刺激指数は、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。皮膚一次刺激指数が2.5以下であれば、皮膚刺激性が低く、安全性が高い貼付剤を提供することができる。
[ウサギ皮膚移行量試験]
貼付剤から面積が3cm2の平面正方形状の試験片を5枚打ち抜いた。試験片3枚のそれぞれについて、剥離ライナーを剥離除去した後、下記手順に従って粘着層中の遊離塩基型メマンチン量を測定し、これらの相加平均値を「試験前の遊離塩基型メマンチン量(mg/cm2)」とした。残りの試験片2枚から剥離ライナーを剥離して粘着層を全面的に露出した状態とした後、試験片を背部を剃毛したウサギ日本白色種(雄、3.0~3.49kg)の背部に貼付した。貼付してから6時間又は24時間後に、試験片をウサギ背部から剥離した後、粘着層中の遊離塩基型メマンチン量を下記手順に従って測定し、得られた値を「試験後の遊離塩基型メマンチン量(mg/cm2)」とした。「試験前の遊離塩基型メマンチン量」から「試験後の遊離塩基型メマンチン量」を引いた値を「皮膚移行量(mg/cm2)」とした。そして、貼付してから6時間または24時間後の皮膚移行量(mg/cm2)をそれぞれ表1~3に示した。
(内標準溶液の調製)
ガラス製のメスフラスコ(容量200mL)に、内標準物質としてアダマンタン800mgを投入した後、溶媒として酢酸エチルまたはヘキサンを投入して混合することによりアダマンタンを溶解させ、さらに溶媒として酢酸エチルまたはヘキサンを投入して、200mLの標線まで満たして、内標準溶液とした。
なお、内標準溶液の調製において、試験片中の粘着層がアクリル系粘着剤を含んでいる場合には溶媒として酢酸エチルを用い、試験片中の粘着層がゴム系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を含んでいる場合には溶媒としてヘキサンを用いた。
(標準溶液の調製)
ねじ口試験管(容量10mL)に、メマンチン塩酸塩10mgを投入した後、1mol/Lの水酸化ナトリウムを含む水溶液3mLをさらに投入して混合することにより、メマンチン塩酸塩を中和させて遊離塩基型メマンチンとした。次に、試験管に内標準溶液3mLを加えた。この際、水相と油相に相分離する。その後、試験管を振とう機で激しく振とうさせて、遊離塩基型メマンチンを油相に完全に分配させた。そして、内部温度が25℃である遠心機を用いて遠心分離を行って、油相と水相とを完全に相分離させた後、油相(遊離塩基型メマンチン濃度2.770mg/mL)3mLを採取して標準溶液とする。
(試料溶液の調製)
ねじ口試験管(容量10mL)に、粘着層が露出した試験片及び内標準溶液3mLを投入して混合することにより、粘着層を溶媒に全て溶解させた。次に、試験管に1mol/Lの水酸化ナトリウムを含む水溶液3mLを加えた。この際、水相と油相に相分離する。その後、上述した標準溶液の調製と同様にして、振とう及び遠心分離を行った後、油相3mLを採取して試料溶液とする。
標準溶液及び試料溶液について、ガスクロマトグラフィー測定を行って内部標準法による定量分析を行う。次に、標準溶液のガスクロマトグラムから内標準物質のピーク面積に対する遊離塩基型メマンチンのピーク面積の比(Qs)を求め、試料溶液のガスクロマトグラムから内標準物質のピーク面積に対する遊離塩基型メマンチンのピーク面積の比(Qt)を求めた。そして、次式により、粘着層中の遊離塩基型メマンチン量を算出した。
粘着層中の遊離塩基型メマンチン量(mg/cm2)
=[標準溶液中の遊離塩基型メマンチン濃度(2.770mg/mL)×(Qt/Qs)
×内標準溶液量(3mL)]/3(cm2)
[ウサギ皮膚刺激性]
上記ウサギ皮膚移行量試験において、試験片を24時間に亘って貼付した後に剥離したウサギ背部の貼着部分を目視観察し、剥離から1時間後、24時間後、48時間後に、ウサギ背部の皮膚の紅斑状態及び浮腫状態を、下記基準に従って点数をつけて評価した。1匹のウサギについて上記評価を行い、1時間後及び48時間後の紅斑状態及び浮腫状態についての点数を全て合計し、その相加平均値を算出し、皮膚一次刺激指数(Primary Irritation Index:P.I.I)とした。得られた皮膚一次刺激指数を表1~3の「ウサギ皮膚刺激性」の欄に示した。
紅斑状態
0・・・紅斑なし
1・・・ごく軽度の紅斑(かろうじて識別できる)
2・・・明らかな紅斑
3・・・中等度から高度紅斑
4・・・重度の紅斑(肉赤色)から紅斑の識別を妨げる痂皮形成
浮腫状態
0・・・浮腫なし
1・・・ごく軽度の浮腫(かろうじて識別できる)
2・・・明らかな浮腫(明確な縁が識別できる)
3・・・中等度浮腫(約1mm膨隆)
4・・・高度浮腫(1mmを超えた膨隆、周囲にも広がる)
なお、上記ウサギ皮膚移行量試験における皮膚一次刺激指数は、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。皮膚一次刺激指数が2.5以下であれば、皮膚刺激性が低く、安全性が高い貼付剤を提供することができる。
Figure 2023050633000003

Figure 2023050633000004

Figure 2023050633000005
本発明によれば、メマンチン有機酸塩を含む貼付剤であって、メマンチン有機酸塩の皮膚透過性がアルツハイマー病の治療に必要な皮膚透過量が得られる程度まで向上されていると共に皮膚刺激が低い貼付剤を提供することができる。

Claims (3)

  1. 支持体と、上記支持体の一面に積層一体化され、メマンチン有機酸塩及び粘着剤を含む粘着層とを含み、
    上記メマンチン有機酸塩は、少なくとも2個の酸性官能基を有する有機酸(a1)と遊離塩基型メマンチンとの塩であり、
    上記メマンチン有機酸塩は、上記有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のそれぞれに、上記遊離塩基型メマンチンのアミノ基が付加したメマンチン有機酸塩(S1)を含み、
    上記酸性官能基は、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
    上記有機酸(a1)の少なくとも2個の酸性官能基のうち少なくとも1個の酸性官能基が、カルボキシ基であることを特徴とする貼付剤。
  2. 有機酸(a1)が、サリチル酸、酒石酸、リンゴ酸、及びフタル酸よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  3. 粘着剤が、アクリル系粘着剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
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