JP2023049646A - 引張検知装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンクリート構造物が過去に受けた最大の引張力を事後的に把握することができる圧縮検知装置を提供する。【解決手段】一実施形態に係る引張検知装置は、複数の構造用補強材を備えるコンクリート構造物Sに埋設される引張検知装置1である。コンクリート構造物Sは、複数の構造用補強材の定着部S5が設けられる定着領域Aを有する。引張検知装置1は、コンクリートS4に埋設されており、コンクリートS4に対する引張力に伴って定着領域Aに残された残留歪みを検知する検知装置11と、検知装置11が固定されている芯材12と、を備える。【選択図】図1
Description
本開示には、コンクリート構造物に作用する引張力を検知する引張検知装置に関する。
特許第6145344号公報には、FBGセンサ(Fiber Bragg Grating Sensor)を用いて構造物における衝撃を検知する衝撃検知方法及び検知装置が記載されている。この検知装置は、構造物に貼り付けられるFBGセンサ、光ファイバアンプ、光サーキュレータ及びカプラを備える。カプラには、ひずみ計測用光学フィルタと、温度計測用光学フィルタと、光電変換器とが接続されている。構造物にひずみが生じると、FBGセンサからの反射光が光ファイバアンプ及びカプラを介して光源変換器に入力され、光源変換器によって構造物への衝撃力の印加履歴が取得される。
特許第4187250号公報には、光ファイバによる構造物の診断方法及びシステムが記載されている。このシステムは、構造物の対象部材に光ファイバが取り付けられて、光ファイバによって対象部材の初期歪みが計測される。光ファイバは、対象部材の特定部位の歪み履歴を連続的に監視し、初期歪み及び歪み履歴から構造物の健全度を診断する。
特開2013-250120号公報には、構造物の損傷検出方法が記載されている。損傷検出方法では、一対の橋脚の間に配置された橋桁の下面に損傷検出装置が貼り付けられる。損傷検出装置は、橋桁の被検面に固定される第1の基部及び第2の基部と、第1の基部及び第2の基部の間に配設される検出用部材とを備える。検出用部材として、光学式の歪み検出手段が内蔵された光ファイバが用いられる。
特開2001-59796号公報には、石油タンクの強度予知装置が記載されている。強度予知装置は、石油タンクの側板が立設された基台と、石油タンクの側板に敷設された光ファイバと、歪み計測器と、監視装置とを備える。歪み計測器は、光ファイバを介して石油タンクへの外力に伴う歪みを計測する。監視装置は、歪み計測器によって計測された歪み量に基づいて亀裂の発生有無を監視する。
ところで、コンクリート構造物において、地震等に伴って生じるコンクリート構造物への引張力を事後的に把握するのが難しいという問題がある。例えば、前述したように光ファイバケーブルを用いてコンクリート構造物の歪みを検知する方法は知られている。しかしながら、光ファイバケーブルによって検知される歪みは、パルス光を入射した瞬間における歪みであり、コンクリートが受けた引張力の過去の履歴又は最大応答を把握することはできない。すなわち、地震等によるコンクリート構造物の挙動に対して、過去に受けた最大の引張力を事後的に把握できないという現状がある。
本開示は、コンクリート構造物が過去に受けた最大の引張力を事後的に把握することができる圧縮検知装置を提供することを目的とする。
本開示に係る引張検知装置は、複数の鉄筋や鋼材などによる構造用補強材を備えるコンクリート構造物に埋設される引張検知装置である。コンクリート構造物には、引張力に抵抗できるように鉄筋や鋼材などが配置されると共に、それらの構造用補強材を定着するための定着領域が設けられる。引張検知装置は、コンクリートに埋設されており、コンクリートに対する引張力に伴って定着領域に残った残留歪みを検知する検知装置と、検知装置が固定されている芯材と、を備える。
この引張検知装置では、コンクリート構造物が構造用補強材を有する。コンクリート構造物は、構造用補強材の定着部が設けられた定着領域を有する。引張検知装置は検知装置と芯材とを備え、芯材に固定された検知装置は引張力に伴う残留歪みを検知する。よって、芯材に固定された検知装置が定着領域に残された残留歪みを検知することにより、これまでコンクリートが受けた引張力が所定値以上であったか否かを把握することができる。すなわち、引張力の強さによって定着領域に生じる残留歪みの大きさが変わるので、検知装置が残留歪みを検知することによって、これまでコンクリートが受けた引張力が所定値以上であったか否かを把握することができる。従って、コンクリートが受けた引張力の過去の履歴又は最大応答を事後的に把握することができる。
検知装置は、芯材に固定される光ファイバケーブルであってもよい。この場合、定着領域の残留歪みを光ファイバケーブルによって高精度に検知できる。光ファイバケーブルでは、光ファイバケーブルが接触する箇所に沿って歪みを検知可能であるため、例えば構造用補強材が延びる方向への残留歪みの分布を検知することができる。従って、光ファイバケーブルは、構造用補強材に沿って残留歪みの分布を高精度に検知できるので、過去から受けている引張力の履歴をより高精度に把握できる。
芯材は、構造用補強材よりも降伏強度が高い材料によって構成されていてもよい。この場合、芯材の降伏強度が構造用補強材の降伏強度よりも高いことにより、定着領域における残留歪みの量をより確実に過去に受けた最大の引張力に比例させることができる。従って、引張力の過去の履歴又は最大応答をより高精度に検知することができる。
芯材は、構造用補強材に沿って延びる延在部と、定着領域において延在部から分岐する分岐部とを有し、分岐部は、コンクリートに対する引張力が所定値以上であるときに降伏してもよい。この場合、分岐部の降伏の有無を検知装置が検知することにより、定着領域にまで伝達した引張力が所定値以上であったか否かを容易に把握することができる。
コンクリート構造物は、複数の構造用補強材を備え、芯材は、複数の構造用補強材のうちの一部の構造用補強材であってもよい。この場合、複数の構造用補強材の一部を検知装置が固定される芯材として兼用可能である。従って、引張検知装置を容易に設置することができる。
本開示によれば、コンクリート構造物が過去に受けた最大の引張力を事後的に把握することができる。
以下では、構造用補強材として鉄筋を用いたコンクリート構造物を例として、図面を参照しながら本開示に係る引張検知装置の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
図1(a)は、実施形態に係る引張検知装置1が埋め込まれるコンクリート構造物Sを模式的に示す縦断面図である。図1(a)に示されるように、引張検知装置1は、コンクリート構造物Sに埋設された状態でコンクリート構造物Sに作用する引張力を検知する。一例として、コンクリート構造物Sはフーチングを有する。すなわち、コンクリート構造物Sは、鉛直方向D1に延びる柱部S1と、柱部S1の下端において拡張する拡張部S2とを有する。例えば、コンクリート構造物Sは橋脚である。
コンクリート構造物Sは、複数の構造用鉄筋S3と、コンクリートS4とを有する。複数の構造用鉄筋S3は、構造用補強材の一例である。構造用鉄筋S3は、例えば、コンクリート構造物Sの主鉄筋である。一例として、構造用鉄筋S3は鉛直方向D1に沿って延在している。コンクリート構造物Sは、複数の構造用鉄筋S3の定着部S5が設けられる定着領域Aを有する。定着領域Aは、例えば、コンクリート構造物Sのフーチング(拡張部S2)に設けられる。
引張検知装置1は、例えば、構造用鉄筋S3に沿って配置される。引張検知装置1は、複数の構造用鉄筋S3を備えるコンクリート構造物Sに埋設される。引張検知装置1は、コンクリートS4に埋設される検知装置11と、検知装置11が固定されている芯材12と、検知装置11の端部に設けられる計測器13とを備える。本実施形態では、複数の構造用鉄筋S3の一部が芯材12である例について説明する。
本実施形態において、検知装置11は、光ファイバケーブルである。計測器13は、例えば、検知装置11を用いてレイリー散乱光を用いた計測によって芯材12の変形を歪みとして計測する。しかしながら、計測器13は、検知装置11を用いて、ブリルアン散乱光を用いた計測によって歪みを計測してもよい。計測器13が検知装置11に計測光K1を入力すると、検知装置11において後方散乱光K2が生じる。後方散乱光K2のスペクトル(周波数ごとの強度)は、歪みによって変化する。後方散乱光K2の強度は計測光K1の強度よりも小さい。レイリー散乱光を用いた計測では、後方散乱光K2のスペクトルの変化を計測することによって、検知装置11に生じた歪みを検出する。レイリー散乱光である後方散乱光K2は、ブリルアン散乱光よりも強度が大きいため、精度が高い上に、比較的、光のロスに強いという利点がある。検知装置11では、例えば、1μの歪みといった精度で芯材12の歪みの検知が可能である。
また、計測器13は、前述したブリルアン散乱光を用いた計測又はレイリー散乱光を用いた計測に代えて、光周波数領域リフレクトメトリ法(OFDR法:Optical Frequency Domain Reflectometry)によって芯材12の歪みを計測してもよい。OFDR法では、検知装置11に線形に周波数変調をかけ、検知装置11における光の反射点までの距離の情報を干渉計によるビート信号として計測する。OFDR法では、検知装置11を用いて±1μ以上の高精度で計測間隔0.6mm、空間分解能0.6mmで芯材12に生じる歪みを分布的に詳細に計測できる。
図1(b)は、コンクリート構造物Sに水平地震力Fが作用した場合における挙動を模式的に示す縦断面図である。コンクリート構造物Sに水平地震力Fが作用すると、曲げモーメント分布に応じた引張力がコンクリート構造物Sの構造用鉄筋S3に生じ、構造用鉄筋S3が定着されるフーチングの内部の定着領域Aにも、作用した引張力と構造用鉄筋S3の付着応力に応じて引張力が伝達する。
定着領域Aに伝達した引張力の一部は、構造用鉄筋S3の付着応力により、水平地震力Fが無くなった後(除荷後)にも構造用鉄筋S3の残留歪みとして残存する。引張検知装置1は、残留歪みが生じている範囲、及び残留歪みの程度を計測することによってコンクリート構造物Sに作用した引張力の最大応答を検知する。すなわち、芯材12に引張力が作用すると、作用した引張力に応じて付着切れが発生する。芯材12に引張力が作用すると、作用した引張力に応じて局所的に不可逆的な付着力の低下を伴う、付着切れが発生する。この影響は水平地震力Fが除荷された状態でも残留歪みとして残るため、この残留歪みを引張検知装置1が検知する。
図2(a)は、水平地震力Fを受けたときにおける構造用鉄筋S3への引張力の最大応答を模式的に示す図である。図2(a)に示されるように、コンクリート構造物Sの構造用鉄筋S3では、柱部S1において上方から拡張部S2に向かうに従って引張力は増大し、柱部S1の基部S6で当該引張力が最大となる。そして、基部S6から下方に向かうに従って当該引張力は低下する。
図2(b)は、図2(a)のように引張力がコンクリート構造物Sの構造用鉄筋S3に作用した場合における残留歪みを模式的に示す図である。図2(a)及び図2(b)では、引張力が小さい場合を破線、引張力が大きい場合を一点鎖線、でそれぞれ示している。図2(a)及び図2(b)に示されるように、構造用鉄筋S3に引張力が作用すると、その後、構造用鉄筋S3に残留歪みZ1,Z2が生じる。
引張力が大きい場合、及び引張力が小さい場合のいずれも残留歪みZ1,Z2が生じるが、引張力が大きい場合の残留歪みZ2の方が引張力が小さい場合の残留歪みZ1より大きい。また、引張力が大きい場合の残留歪みZ2の方が引張力が小さい場合の残留歪みZ1よりも鉛直下方に延びており、引張力(水平地震力F)の大きさに応じて付着切れしている先端位置Pが異なる。引張力が大きい場合には、引張力が小さい場合と比較して、先端位置Pが深くなる。本実施形態に係る引張検知装置1では、残留歪みの先端位置P(下端位置)を検知することによってコンクリート構造物Sに作用した引張力の最大応答を把握可能である。
検知装置11が芯材12(構造用鉄筋S3)の残留歪みを検知することによって、過去にコンクリート構造物Sにどの程度の引張力が生じたかを把握することが可能である。すなわち、検知装置11で芯材12の残留歪みの分布を計測することによってコンクリート構造物Sに作用した引張力の最大値を推定することができる。
次に、本実施形態に係る引張検知装置1から得られる作用効果について詳細に説明する。図1(a)、図1(b)、図2(a)及び図2(b)に示されるように、引張検知装置1では、コンクリート構造物Sが複数の構造用鉄筋S3を有する。コンクリート構造物Sは、複数の構造用鉄筋S3の定着部S5が設けられた定着領域Aを有する。引張検知装置1は検知装置11と芯材12とを備え、芯材12に固定された検知装置11は引張力に伴う残留歪みZ1,Z2を検知する。
よって、芯材12に固定された検知装置11が定着領域Aに残された残留歪みZ1,Z2を検知することにより、これまでコンクリートS4が受けた引張力が所定値以上であったか否かを把握することができる。すなわち、引張力の強さによって定着領域Aに生じる残留歪みZ1,Z2の大きさが変わるので、検知装置11が残留歪みZ1,Z2を検知することによって、これまでコンクリートS4が受けた引張力が所定値以上であったか否かを把握することができる。上記の「所定値」は、離散的な測定点の位置に対応した引張力の所定値を示している。
よって、定着領域Aに残された残留歪みZ1,Z2を検知してコンクリートS4が受けた最大引張力を把握できるので、コンクリートS4が過去に受けた最大引張力が所定値以上であったか否かを残留歪みZ1,Z2から事後的に把握することができる。従って、コンクリートS4が受けた引張力の過去の履歴又は最大応答を事後的に把握することができる。
前述したように、検知装置11は、芯材12に固定される光ファイバケーブルであってもよい。この場合、定着領域Aの残留歪みを光ファイバケーブルによって高い分解能で分布を検知できる。従って、引張力の履歴をより高精度に把握できる。光ファイバケーブルでは、光ファイバケーブルが接触する箇所に沿って歪みを検知可能であるため、例えば構造用鉄筋S3が延びる方向への残留歪みの分布を検知することができる。従って、光ファイバケーブルは、構造用鉄筋S3に沿って残留歪みZ1,Z2の分布を高い分解能で検知できるので、引張力の履歴をより高精度に把握できる。
本実施形態において、芯材12は、複数の構造用鉄筋S3のうちの一部の構造用鉄筋S3である。この場合、複数の構造用鉄筋S3の一部を検知装置11が固定される芯材12として兼用可能である。従って、引張検知装置1を容易に設置することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る引張検知装置21について図3及び図4を参照しながら説明する。引張検知装置21の構成の一部は、前述した引張検知装置1の構成の一部と重複する。よって、以下では、引張検知装置1の構成と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
次に、第2実施形態に係る引張検知装置21について図3及び図4を参照しながら説明する。引張検知装置21の構成の一部は、前述した引張検知装置1の構成の一部と重複する。よって、以下では、引張検知装置1の構成と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
引張検知装置21は、検知装置11と、計測器13と、複数の構造用鉄筋S3とは別にコンクリートS4に埋設される芯材22とを備える。芯材22は、構造用鉄筋S3よりも降伏強度が強い材料によって構成されている。この場合、芯材22は、引張力及び最大歪みに対して付着切れ区間を比例させることが可能となり、仮に構造用鉄筋S3が降伏しても引張力の検知を継続できる。
芯材22は、除荷後に負の摩擦を確保可能な材料によって構成されていてもよい。ここで、「負の摩擦」とは、芯材22に作用する引張力が除荷される過程において除荷を妨げるように作用する摩擦を示している。また、芯材22が有する付着切れの性能は、コンクリートS4に対する芯材22の付着によるものであってもよい。また、引張検知装置21が更に芯材22の表面を被覆する被覆材を備え、当該被覆材を介して引張検知装置21がコンクリートS4の付着を評価してもよい。
芯材22は、例えば、撚り線構造を有する。この場合、芯材22の表面に凹凸が形成されているので、コンクリートS4に対する芯材22の付着性能を高めることができる。一例として、芯材22は、炭素繊維ケーブルである。この場合、芯材22は、炭素繊維と熱硬化性樹脂とが複合化されて撚り合わされて成形されたケーブルである。
芯材22の材料は、アラミド繊維又はバサルト繊維を含んでいてもよい。この場合、芯材22の付着性能をより高めることができる。また、芯材22の弾性係数によって引張力に対する付着切れ区間を制御することができる。例えば、弾性係数を高くすることで、引張力が定着領域Aに伝達しやすくなり、付着切れ区間が大きくなり、検知しやすくなる。しかしながら、芯材22は、上記以外の材料によって構成されていてもよく、例えば、PC鋼より線、又は異形PC鋼棒であってもよい。
芯材22は、曲げ特性に影響しないように、細径であることが好ましい。芯材22の直径は、例えば、10mm以上且つ構造用鉄筋S3の直径以下である。芯材22の直径が10mm以上であることにより、芯材22の設置の作業性を良好にできる。芯材22の直径が構造用鉄筋S3の直径以下であることにより、上記の曲げ特性に影響しないようにすることができる。
以上、第2実施形態に係る引張検知装置21からは前述した引張検知装置1と同様の作用効果が得られる。更に、引張検知装置21において、芯材22は、構造用鉄筋S3よりも降伏強度が高い材料によって構成されている。よって、芯材22の降伏強度が構造用鉄筋S3の降伏強度よりも高いことにより、定着領域Aにおける残留歪みの量をより確実に引張力に比例させることができる。従って、引張力の過去の履歴又は最大応答をより高精度に検知することができる。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る引張検知装置31について図5(a)を参照しながら説明する。引張検知装置31は、芯材22とは異なる形状の芯材32を備える点で第2実施形態と異なっている。但し、芯材32の材料は、例えば、芯材22の材料と同一であってもよい。芯材32は、引張力Hが作用する方向Eに延在する延在部33と、延在部33から分岐すると共に方向Eに交差する方向に延在する分岐部34とを有する。例えば、延在部33は構造用鉄筋S3に沿って延びており、分岐部34は定着領域Aにおいて延在部33から分岐している定着棒である。
続いて、第3実施形態に係る引張検知装置31について図5(a)を参照しながら説明する。引張検知装置31は、芯材22とは異なる形状の芯材32を備える点で第2実施形態と異なっている。但し、芯材32の材料は、例えば、芯材22の材料と同一であってもよい。芯材32は、引張力Hが作用する方向Eに延在する延在部33と、延在部33から分岐すると共に方向Eに交差する方向に延在する分岐部34とを有する。例えば、延在部33は構造用鉄筋S3に沿って延びており、分岐部34は定着領域Aにおいて延在部33から分岐している定着棒である。
芯材32は、コンクリートS4に埋設される。芯材32は、例えば、複数の分岐部34を有する。一例として、分岐部34の降伏耐力のばらつきは、コンクリート構造物Sの降伏耐力のばらつきよりも小さい。複数の分岐部34は延在部33から互いに異なる方向(一例として放射状)に分岐していてもよい。
芯材32は、方向Eにおける位置が互いに同一である分岐部34の組Cを有する。組Cにおける分岐部34の数は、一例として2つであるが、1つ又は3つ以上であってもよい。図5(a)では、組Cにおける分岐部34の数が2で、芯材32が3つの組Cを備え、合計6本の分岐部34が設けられる例を示している。
例えば、引張力H1、引張力H1より大きい引張力H2、及び引張力H2より大きい引張力H3のそれぞれが引張検知装置31に作用すると仮定すると、引張力H1が作用したときには計測器13側(上側)に位置する1つの組Cの分岐部34のみが降伏する。引張力H1より大きい引張力H2が作用したときには計測器13側(上側)に位置する2つの組Cの分岐部34が降伏する。
そして、引張力H2より大きい引張力H3が作用したときには全ての組Cの分岐部34が降伏する。従って、分岐部34における降伏の発生有無を検知装置11が検知することにより、過去に生じた引張力Hの最大応答を検知することができる。具体的には、引張検知装置31は、検知装置11を用いて芯材32(分岐部34)に生じた残留歪みを計測し、計測した残留歪みから芯材32に作用した引張力の最大値を推定する。
図5(b)は、分岐部34の材料が延在部33の材料とは異なる例を示している。図5(b)に示されるように、分岐部34の材料及び数は適宜変更可能である。延在部33の材料は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)であり、分岐部34はスタッド状の鋼材である。
延在部33は、例えば、丸棒状を呈する。一例として、分岐部34は、延在部33から延びる一般部34bと、一般部34bの延在部33とは反対側に位置する拡径部34cとを有する。図5(b)では、組Cにおける分岐部34の数が2で、芯材32が4つの組Cを備え、合計8本の分岐部34が設けられる例を示している。
図5(b)、図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示されるように、引張力H1が作用したときには計測器13側に位置する組Cの分岐部34(分岐部34A)のみで残留歪みZ11が生じ、引張力H1より大きい引張力H2が作用したときには計測器13側に位置する2つの組Cの分岐部34(分岐部34A及び分岐部34B)で残留歪みZ12が生じる。そして、引張力H2より大きい引張力H3が作用したときには計測器13側に位置する3つの組Cの分岐部34(分岐部34A、分岐部34B及び分岐部34C)で残留歪みZ13が生じる。
以上、第3実施形態に係る引張検知装置31において、芯材32は、構造用鉄筋S3に沿って延びる延在部33と、定着領域Aにおいて延在部33から分岐する分岐部34とを有し、分岐部34は、コンクリートS4に対する引張力Hが所定値以上であるときに降伏する。よって、分岐部34の降伏の有無を検知装置11が検知することにより、定着領域Aにおける引張力Hが所定値以上であったか否か(例えば、引張力H1以上であったか、引張力H2以上であったか、又は引張力H3以上であったか)を容易に把握することができる。
また、分岐部34の降伏耐力のばらつきは小さいため、作用した引張力H及び最大歪みと、分岐部34が降伏して分岐部34に歪みが残留した区間との相関をとりやすいという利点がある。延在部33がCFRPによって構成されていて、分岐部34がスタッド状の鋼材である場合に、上記の利点がより顕著となる。
以上、本開示に係る引張検知装置の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る引張検知装置は、前述の実施形態又は種々の例に限られず特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、引張検知装置の各部の構成、形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、構造用補強材が構造用鉄筋3である例について説明した。しかしながら、構造用補強材は、鉄筋に限定されない。構造用補強材は、例えば、SC構造、CFRP構造、又は後施工アンカー等であってもよい。また、前述の実施形態では、橋脚の基部に設けられるコンクリート構造物Sに引張検知装置1が埋設される例について説明した。しかしながら、引張検知装置は、橋脚の基部以外のコンクリート構造物に対しても適用可能である。例えば、図7及び図8に示されるように、本開示に係る引張検知装置は、鋼管杭T21の接合構造T2、又はSC杭T31の接合構造T3に適用されてもよい。これらの接合構造は、耐震挙動等において塑性化する可能性があるため、引張検知装置で引張力を検知することが重要である。
接合構造T2は、鋼管杭T21と、鋼管杭T21の鉛直上方に位置するフーチングT22とを備える。接合構造T2は、鋼管杭T21及びフーチングT22の双方に挿入された状態で鉛直方向D1に延在する複数の補強鉄筋T23を備え、複数の補強鉄筋T23の少なくともいずれかに沿うように引張検知装置の検知装置11が取り付けられる。
接合構造T3は、接合構造T2と同様、SC杭T31と、フーチングT32と、SC杭T31及びフーチングT32の双方に挿入された複数の補強鉄筋T33とを備える。接合構造T3でも複数の補強鉄筋T33のいずれかに引張検知装置の検知装置11が取り付けられることにより、引張力を検知することが可能である。以上、引張検知装置が鋼管杭T21又はSC杭T31に適用される例について説明したが、引張検知装置は、鋼管ソイルセメント杭又はPHC杭に適用されるものであってもよい。
図9に示されるように、本開示に係る引張検知装置は、支承T4に適用されてもよい。一例として、支承T4は免震装置であって、この場合、支承T4は、上フランジT41と、下フランジT42と、上フランジT41及び下フランジT42の間に介在する積層ゴムT43とを有する。支承T4は、コンクリートT44に埋設された複数のアンカーバーT45によってコンクリートT44に固定されており、複数のアンカーバーT45の少なくともいずれかに沿うように引張検知装置の検知装置11が取り付けられる。この場合、検知装置11によってコンクリートT44からのアンカーバーT45の抜け出しの挙動を検知することができる。なお、支承T4は、免震装置以外のものであってもよく、例えば、落橋防止装置の取付部として設けられるものであってもよい。
以上、本開示に係る引張検知装置が適用される種々の変形例について説明したが、本開示に係る引張検知装置は更に変形させることが可能である。例えば、前述の実施形態では、光ファイバケーブルである検知装置11について説明した。しかしながら、検知装置は、光ファイバケーブル以外のものであってもよい。例えば、検知装置は、光ファイバケーブルに代えて、複数の歪みゲージを備えたものであってもよい。例えば、芯材に複数の歪みゲージが貼り付けられて、複数の歪みゲージの計測結果から引張力を推定する引張検知装置であってもよい。
1,21,31…引張検知装置、11…検知装置(光ファイバケーブル)、12,22,32…芯材、13…計測器、33…延在部、34,34A,34B,34C…分岐部、34b…一般部、34c…拡径部、A…定着領域、C…組、D1…鉛直方向、E…方向、F…水平地震力、H,H1,H2,H3…引張力、K1…計測光、K2…後方散乱光、P…先端位置、S,T1…コンクリート構造物、S1…柱部、S2…拡張部、S3…構造用鉄筋(構造用補強材)、S4…コンクリート、S5…定着部、S6…基部、T2,T3…接合構造、T4…支承、T21…鋼管杭、T22…フーチング、T23,T33…補強鉄筋、T31…SC杭、T32…フーチング、T41…上フランジ、T42…下フランジ、T43…積層ゴム、T44…コンクリート、T45…アンカーバー、Z1,Z2,Z11,Z12,Z13…残留歪み。
Claims (5)
- 構造用補強材を備えるコンクリート構造物に埋設される引張検知装置であって、
前記コンクリート構造物は、前記構造用補強材の定着部が設けられる定着領域を有し、
前記コンクリートに埋設されており、前記コンクリートに対する引張力に伴って前記定着領域に残った残留歪みを検知する検知装置と、
前記検知装置が固定されている芯材と、
を備える、
引張検知装置。 - 前記検知装置は、前記芯材に固定される光ファイバケーブルである、
請求項1に記載の引張検知装置。 - 前記芯材は、前記構造用補強材よりも降伏強度が高い材料によって構成されている、
請求項1又は2に記載の引張検知装置。 - 前記芯材は、前記構造用補強材に沿って延びる延在部と、前記定着領域において前記延在部から分岐する分岐部とを有し、
前記分岐部は、前記コンクリートに対する引張力が所定値以上であるときに降伏する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の引張検知装置。 - 前記コンクリート構造物は、複数の前記構造用補強材を備え、
前記芯材は、複数の前記構造用補強材のうちの一部の前記構造用補強材である、
請求項1又は2に記載の引張検知装置。
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