JP2023040724A - 記録装置、記録方法およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、記録ヘッドに生じた吐出不良ノズルにおいてコゲの発生を抑制することが可能な技術の提供を目的とする。【解決手段】記録手段30は、電気熱変換素子を有するノズルnを複数備え、電気熱変換素子の発熱によってノズルから所定のインク吐出を行うことにより記録媒体Pへの記録を行う。また、検出手段9Aは、電気熱変換素子の発熱によって所定のインク吐出が行われない吐出不良ノズルを複数のノズルnの中から検出する。制御手段13、HC2は、電気熱変換素子の発熱によって所定のインク吐出が正常に行われる正常ノズルの電気熱変換素子に供給する通常の電力量より前記吐出不良ノズルの電気熱変換素子に供給する電力を減少させる。【選択図】図14

Description

本発明は、電気熱変換素子を用いてインクの吐出を行う記録ヘッドを備える記録装置、記録方法、およびプログラムに関する。
特許文献1には、転写体上の不良領域を特定し、不良領域が含まれないように画像の形成位置の変更をする技術が開示されている。この技術によれば、記録媒体のサイズに対応した転写画像形成領域の内部に不良領域が含まれる場合であっても画像の位置によっては記録動作を継続させることが可能となり、記録効率の低下を抑制することができる。
特開2018-192678号公報
特許文献1に開示の技術は、転写体上に発生した不良領域の影響を低減するための技術であり、記録ヘッドのノズルに吐出不良が発生した際に生じる影響について考慮されていない。サーマルインクジェット方式の記録ヘッドでは、泡等が混入することによってノズルへのインク供給が不十分になり吐出不良が生じることがある。ノズルに吐出不良が発生した状態で画像の形成を継続した場合、画像に欠落が生じると共にノズル内に設けられている電気熱変換素子が発する熱によりコゲと称する異物が発生し、ノズルの吐出性能がさらに低下する可能性がある。ノズル内にコゲが発生した場合、ノズル内のインクを強制的に流動させるメンテナンス処理等を施しても吐出性能が回復せず、交換を余儀なくされる可能性がある。
本発明は、記録ヘッドに生じた吐出不良ノズルにおいてコゲの発生を抑制することが可能な技術の提供を目的とする。
本発明は、電気熱変換素子を有するノズルを複数備え、前記電気熱変換素子の発熱によって前記ノズルから所定のインク吐出を行うことにより記録媒体への記録を行う記録手段と、前記電気熱変換素子の発熱によって前記所定のインク吐出が正常に行われない吐出不良ノズルを前記複数のノズルの中から検出する検出手段と、前記電気熱変換素子の発熱によって前記所定のインク吐出が行われる正常ノズルの前記電気熱変換素子に供給する通常の電力量より前記吐出不良ノズルの電気熱変換素子に供給する電力を減少させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドに生じた吐出不良ノズルにおいてコゲの発生を抑制することが可能になる。
記録システムの概要図である。 記録ユニットの斜視図である。 記録ヘッドのノズルの配列およびドットの配列を示す図である 記録ユニットの変位態様の説明図である。 記録システムの制御系のブロック図である。 面付け処理された画像の例を示す図である。 画像処理の手順を示すフローチャートである。 エンジンコントローラの構成を示すブロック図である。 記録システムの動作例を示す説明図である。 記録システムの動作例を示す説明図である。 記録ヘッドおよび記録物の例を示す図である。 記録物と記録ヘッドの不良領域との位置関係を示す図である。 第1実施形態で実行される全体的な処理の手順を示すフローチャートである。 記録物と記録ヘッドの不良領域との位置関係を示す図である。 不良領域と画像形成領域との重なりを避け得るか否かの判定処理を示すフローチャートである。 第2実施形態における画像形成領域と不良領域と位置関係を示す図である。 第5実施形態におけるシリアル型の記録方式の例を示す図である。 第5実施形態におけるシリア型の記録方式の他の例を示す図である。 第6実施形態を説明するための記録物の例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。各図において、矢印XおよびYは水平方向を示し、互いに直交する。矢印Zは上下方向を示す。
[第1実施形態]
<記録システム>
図1は本発明の一実施形態に係る記録システム1を概略的に示した正面図である。記録システム1は、転写体2を介して記録媒体Pにインク像を転写することで記録物P’を製造する枚葉式のインクジェットプリンタである。記録システム1は、記録装置1Aと、搬送装置1Bとを含む。本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向が、それぞれ、記録システム1の幅方向(全長方向)、奥行き方向、高さ方向を示している。記録媒体PはX方向に搬送される。
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合も含まれる。また、「記録」は人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
インクの成分については、特に限定はないが、本実施形態では、色材である顔料、水、樹脂を含む水性顔料インクを用いる場合を想定する。
<記録装置>
記録装置1Aは、記録ユニット3、転写ユニット4および周辺ユニット5A~5D、および、供給ユニット6を含む。
<記録ユニット>
記録ユニット3は、複数の記録ヘッド(記録手段)30と、キャリッジ31とを含む。図1ないし図3を参照して記録ユニット3を説明する。図2は記録ユニット3の斜視図である。記録ヘッド30は、転写体2に液体インクを吐出し、転写体2上に記録画像のインク像を形成する。
本実施形態における記録装置1Aは、Y方向に延設されたフルラインヘッド(フルマルチヘッド)を記録ヘッド30として備えるフルライン型の記録装置である。記録ヘッド30は、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分をカバーする範囲にノズルnが配列されている。記録ヘッド30は、その下面に、ノズルが開口したインク吐出面を有しており、インク吐出面は、微小隙間(例えば数mm)を介して転写体2の表面と対向している。本実施形態の場合、転写体2は円軌道上を循環的に移動する構成であるため、複数の記録ヘッド30は、放射状に配置されている。
図3(a)は、記録ヘッド30のノズルの配列を示す図である。図3(a)に示すように、記録ヘッド30には、複数の吐出基板301、302、303、304…がY方向に配置されている。各吐出基板にはそれぞれノズル配列方向(Y方向)に延びる8列のノズル横列a~hが配列している。各ノズル横列a~hのY方向におけるノズル間隔は1200dpiである。ここでは、ノズル横列a~hがX方向に、Y方向において1200dpiの1/4の間隔ずつずれた状態で配置されている。
また、図3(a)に示す記録ヘッド30では、隣接する吐出基板(例えば、吐出基板301と吐出基板302)とでY方向において一部重なるように配置されている。この部分におけるノズルの縦方向(X方向)におけるノズル列(ノズル縦列)i~lのそれぞれには、X方向においてノズルが各4つ存在する。また、吐出基板302のうち、隣接する吐出基板301が重なっていない部分(非重なり部分)に位置するノズルの縦列m~pのそれぞれには、ノズルは各2つ存在する。また、図3(b)は記録ヘッドによって記録されるノズルチェックパターンのドット配列を示す図である。
上述の各吐出基板301、302、303、304…に設けられた複数のノズルのそれぞれには、吐出素子が設けられている。吐出素子は、例えば、ノズル内に圧力を発生させてノズル内のインクを吐出させる素子であり、公知のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの技術が適用可能である。本実施形態では、供給された電気エネルギーを熱エネルギーに変換して発熱する電気熱変換素子が吐出素子として用いられている。電気熱変換素子は、高速で高密度の記録を行う記録装置に適している。このため、本実施形態における記録装置1Aには、電気熱変換素子(ヒータ)を搭載したサーマルインクジェット方式の記録ヘッドが備えられている。なお、サーマルインクジェット記録方式の記録ヘッドでは、各ノズルに設けられた吐出素子に対して電気パルスを供給することにより、ヒータの駆動(発熱)を行い、インクの吐出を行う。すなわち、ノズルの電気熱変換素子へ供給される電気パルスは、インクを吐出させるための吐出命令となる。なお、以下の説明では、ノズルに対応する電気熱変換素子への電気パルスの供給を、単にノズルへの電気パルスの供給と記す。
上記のように複数の吐出基板301、302、303、304…を有する記録ヘッド30が、使用する複数種のインクのそれぞれに対応して複数設けられている。複数の記録ヘッド30は、ノズルの配列方向と交差する方向において一定間隔を介して配置されている。複数の記録ヘッド30から異なる複数色のインクを転写体2上に吐出することで、転写体2にカラー画像を形成することができる。本実施形態の場合、記録ヘッド30は、9つ設けられている。各記録ヘッド30は、互いに異なる種類のインクを吐出する。異なる種類のインクとは、例えば、色材が異なるインクであり、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク等のインクである。1つの記録ヘッド30は1種類のインクを吐出するが、1つの記録ヘッド30が複数種類のインクを吐出する構成であってもよい。このように複数の記録ヘッド30を設けた場合、そのうちの一部が色材を含まないインク(例えばクリアインク)を吐出してもよい。さらに、転写体2に付与されたインクが記録用紙に転写し易くする透明な転写液を吐出可能な記録ヘッドを備えることも可能である。
キャリッジ31は、複数の記録ヘッド30を支持する。各記録ヘッド30は、インク吐出面側の端部がキャリッジ31に固定されている。これにより、インク吐出面と転写体2の表面との隙間をより精密に維持することができる。キャリッジ31は、案内部材RLの案内によって、記録ヘッド30を搭載しつつ変位可能に構成されている。本実施形態の場合、案内部材RLは、Y方向に延設されたレール部材であり、X方向に離間して一対設けられている。キャリッジ31のX方向における各側部にはスライド部32が設けられている。スライド部32は案内部材RLと係合し、案内部材RLに沿ってY方向にスライドする。
図4は記録ユニット3の変位態様を示しており、記録システム1の右側面を模式的に示した図である。記録システム1の後部には回復ユニット12が設けられている。回復ユニット12は記録ヘッド30の吐出性能を回復する機構を有する。そのような機構としては、例えば、記録ヘッド30のインク吐出面をキャッピングするキャップ機構、インク吐出面をワイピングするワイパ機構、インク吐出面から記録ヘッド30内のインクを負圧吸引する吸引機構を挙げることができる。
案内部材RLは、転写体2の側方から回復ユニット12に渡って延設されている。記録ユニット3は、案内部材RLの案内により、実線で記録ユニット3を示した吐出位置POS1と、破線で記録ユニット3を示した回復位置POS3との間で変位可能であり、不図示の駆動機構により移動される。
吐出位置POS1は、記録ユニット3が転写体2にインクを吐出する位置であり、記録ヘッド30のインク吐出面が転写体2の表面に対向する位置である。回復位置POS3は、吐出位置POS1から退避した位置であり、記録ユニット3が回復ユニット12上に位置する位置である。
回復ユニット12は記録ユニット3が回復位置POS3に位置した場合に、記録ヘッド30に対する回復処理を実行可能である。本実施形態の場合、記録ユニット3が回復位置POS3に到達する前の移動途中においても回復処理を実行可能である。また、吐出位置POS1と回復位置POS3の間には予備回復位置POS2がある。回復ユニット12は記録ヘッド30が吐出位置POS1から回復位置POS3へ移動している間に、予備回復位置POS2において記録ヘッド30に対する予備的な回復処理を実行可能である。
<転写ユニット>
図1を参照して転写ユニット4について説明する。転写ユニット4は、転写ドラム(転写胴)41と圧胴42とを含む。これらの胴は、Y方向に延在する回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面(表面)を有している。図1において、転写ドラム41および圧胴42内に示した矢印は、これらの回転方向を示しており、転写ドラム41は時計回りに、圧胴42は反時計回りに回転する。
転写ドラム41は、その外周面に転写体2を支持する支持体である。転写体2は、転写ドラム41の外周面上に、周方向に連続的にあるいは間欠的に設けられる。連続的に設けられる場合、転写体2は無端の帯状に形成される。間欠的に設けられる場合、転写体2は、有端の帯状に複数のセグメントに分けて形成され、各セグメントは転写ドラム41の外周面に等ピッチで円弧状に配置することができる。
転写ドラム41の回転により、転写体2は円軌道上を循環的に移動する。転写ドラム41の回転位相により、転写体2の位置は、吐出前処理領域R1、吐出領域R2、吐出後処理領域R3およびR4、転写領域R5、転写後処理領域R6に区別することができる。転写体2はこれらの領域を循環的に通過する。
吐出前処理領域R1は、記録ユニット3によるインクの吐出前に転写体2に対する前処理を行う領域であり、周辺ユニット5Aによる処理が行われる領域である。本実施形態の場合、反応液が付与される。吐出領域R2は記録ユニット3が転写体2にインクを吐出してインク像を形成する形成領域である。吐出後処理領域R3およびR4はインクの吐出後にインク像に対する処理を行う処理領域である。吐出後処理領域R3は周辺ユニット5Bによる処理が行われる領域である。吐出後処理領域R4は周辺ユニット5Cによる処理が行われる領域である。転写領域R5は転写ユニット4により転写体2上のインク像が記録媒体Pに転写される領域である。転写後処理領域R6は、転写後に転写体2に対する後処理を行う領域であり、周辺ユニット5Dによる処理が行われる領域である。
本実施形態の場合、吐出領域R2は、一定の区間を有する領域である。他の領域R1、R3~R6は、吐出領域R2に比べるとその区間は狭い。時計の文字盤に喩えると、吐出前処理領域R1は概ね10時の位置であり、吐出領域R2は概ね11時から1時の範囲であり、吐出後処理領域R3は概ね2時の位置であり、吐出後処理領域R4は概ね4時の位置である。転写領域R5は概ね6時の位置であり、転写後処理領域R6は概ね8時の領域である。
転写体2は、単層から構成してもよいが、複数層の積層体としてもよい。複数層で構成する場合、例えば、表面層、弾性層、圧縮層の三層を含んでもよい。表面層はインク像が形成される画像形成面を有する最外層である。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速記録時においても転写性を維持することができる。弾性層は表面層と圧縮層との間の層である。
表面層の材料としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。表面層には、反応液の濡れ性、画像の転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
圧縮層の材料としては、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。このようなゴム材料の成形時には、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し、多孔質のゴム材料としてもよい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがあるが、いずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料を用いることができる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。また、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で有利である。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも有利である。
表面層と弾性層の間、弾性層と圧縮層の間には、これらを固定するために各種接着剤や両面テープを用いることもできる。また、転写体2は、転写ドラム41に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を含んでもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体2は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
圧胴42は、その外周面が転写体2に圧接される。圧胴42の外周面には、記録媒体Pの先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。グリップ機構は圧胴42の周方向に離間して複数設けてもよい。記録媒体Pは圧胴42の外周面に密接して搬送されつつ、圧胴42と転写体2とのニップ部を通過するときに、転写体2上のインク像が転写される。
転写ドラム41と圧胴42とを駆動するモータ等の駆動源は、これらに共通とし、歯車機構等の伝達機構により、駆動力を分配することができる。
<周辺ユニット>
周辺ユニット5A~5Dは転写ドラム41の周囲に配置されている。本実施形態の場合、周辺ユニット5A~5Dは、順に、付与ユニット、吸収ユニット、加熱ユニット、清掃ユニットである。
付与ユニット5Aは、記録ユニット3によるインクの吐出前に、転写体2上に反応液を付与する機構である。反応液は、インクを高粘度化する成分を含有する液体である。ここで、インクの高粘度化とは、インクを構成している色材や樹脂等がインクを高粘度化する成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインクの粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク全体の粘度上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂等のインクを構成する成分の一部が凝集することにより局所的に粘度の上昇が生じる場合も含まれる。
インクを高粘度化する成分は、金属イオン、高分子凝集剤など、特に制限はないが、インクのpH変化を引き起こして、インク中の色材を凝集させる物質を用いることができ、有機酸を用いることができる。反応液の付与機構としては、例えば、ローラ、記録ヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。転写体2に対するインクの吐出前に反応液を転写体2に付与しておくと、転写体2に達したインクを直ちに定着させることができる。これにより、隣接するインク同士が混ざり合うブリーディングを抑制することができる。
吸収ユニット5Bは、転写前に、転写体2上のインク像から液体成分を吸収する機構である。インク像の液体成分を減少させることで、記録媒体Pに記録される画像のにじみ等を抑制することができる。液体成分の減少を異なる視点で説明すれば、転写体2上のインク像を構成するインクを濃縮すると表現することもできる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
吸収ユニット5Bは、例えば、インク像に接触してインク像の液体成分の量を減少させる液吸収部材を含む。液吸収部材はローラの外周面に形成されてもよいし、液吸収部材が無端のシート状に形成され、循環的に走行されるものでもよい。インク像の保護の点で、液吸収部材の移動速度を転写体2の周速度と同じにして液吸収部材を転写体2と同期して移動させてもよい。
液吸収部材は、インク像に接触する多孔質体を含んでもよい。液吸収部材へのインク固形分付着を抑制するため、インク像に接触する面の多孔質体の孔径は、10μm以下であってもよい。ここで、孔径とは平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。なお、液体成分は、一定の形を有さず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる 。
加熱ユニット5Cは、転写前に、転写体2上のインク像を加熱する機構である。インク像を加熱することで、インク像中の樹脂が溶融し、記録媒体Pへの転写性を向上する。加熱温度は、樹脂の最低造膜温度(MFT)以上とすることができる。MFTは一般的に知られている手法、例えばJIS K 6828-2:2003や、ISO2115:1996に準拠した各装置で測定することが可能である。転写性及び画像の堅牢性の観点から、MFTよりも10℃以上高い温度で加熱してもよく、更に、20℃以上高い温度で加熱してもよい。加熱ユニット5Cは、例えば、赤外線等の各種ランプ、温風ファン等、公知の加熱デバイスを用いることができる。加熱効率の点で、赤外線ヒータを用いることができる。
清掃ユニット5Dは、転写後に転写体2上を清掃する機構である。清掃ユニット5Dは、転写体2上に残留したインクや、転写体2上のごみ等を除去する。清掃ユニット5Dは、例えば、多孔質部材を転写体2に接触させる方式、ブラシで転写体2の表面を擦る方式、ブレードで転写体2の表面をかきとる方式等の公知の方式を適宜用いることができる。また、清掃に用いる清掃部材は、ローラ形状、ウェブ形状等、公知の形状を用いることができる。
以上の通り、本実施形態では、付与ユニット5A、吸収ユニット5B、加熱ユニット5C、清掃ユニット5Dを周辺ユニットとして備えるが、これらの一部のユニットに転写体2の冷却機能を付与するか、あるいは、冷却ユニットを追加してもよい。本実施形態では、加熱ユニット5Cの熱により転写体2の温度が上昇する場合がある。記録ユニット3により転写体2にインクを吐出した後、インク像がインクの主溶剤である水の沸点を超えると、吸収ユニット5Bによる液体成分の吸収性能が低下する場合がある。吐出されたインクが水の沸点未満に維持されるように転写体2を冷却することで、液体成分の吸収性能を維持することができる。
冷却ユニットは、転写体2に送風する送風機構や、転写体2に部材(例えばローラ)を接触させ、この部材を空冷または水冷で冷却する機構であってもよい。また、清掃ユニット5Dの清掃部材を冷却する機構であってもよい。冷却タイミングは、転写後、反応液の付与前までの期間であってもよい。
<供給ユニット>
供給ユニット6は、記録ユニット3の各記録ヘッド30にインクを供給する機構である。供給ユニット6は記録システム1の後部側に設けられていてもよい。供給ユニット6は、インクの種類毎に、インクを貯留する貯留部TKを備える。貯留部TKは、メインタンクとサブタンクとによって構成されてもよい。各貯留部TKと各記録ヘッド30とは流路6aで連通し、貯留部TKから記録ヘッド30へインクが供給される。流路6aは、貯留部TKと記録ヘッド30との間でインクを循環させる流路であってもよく、供給ユニット6はインクを循環させるポンプ等を備えてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インク中の気泡を脱気する脱気機構を設けてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インクの液圧と大気圧との調整を行うバルブを設けてもよい。貯留部TK内のインク液面が、記録ヘッド30のインク吐出面よりも低い位置となるように、貯留部TKと記録ヘッド30のZ方向の高さが設計されてもよい。
<搬送装置>
搬送装置1Bは、記録媒体Pを転写ユニット4へ給送し、インク像が転写された記録物P’を転写ユニット4から排出する装置である。搬送装置1Bは、給送ユニット7、複数の搬送胴8、8a、二つのスプロケット8b、チェーン8cおよび回収ユニット8dを含む。図1において、搬送装置1Bの各構成の内側の矢印はその構成の回転方向を示し、外側の矢印は記録媒体Pまたは記録物P’の搬送経路を示している。記録媒体Pは給送ユニット7から転写ユニット4へ搬送され、記録物P’は転写ユニット4から回収ユニット8dへ搬送される。給送ユニット7側を搬送方向で上流側と呼び、回収ユニット8d側を下流側と呼ぶ場合がある。
給送ユニット7は、複数の記録媒体Pが積載される積載部を含むと共に、積載部から一枚ずつ記録媒体Pを、最上流の搬送胴8に給送する給送機構を含む。各搬送胴8、8aはY方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。各搬送胴8、8aの外周面には、記録媒体P(または記録物P’)の先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。各グリップ機構は、隣接する搬送胴間で記録媒体Pを受け渡されるように、その把持動作および解除動作が制御される。
二つの搬送胴8aは、記録媒体Pの反転用の搬送胴である。記録媒体Pを両面記録する場合、表面への転写後に、圧胴42から下流側に隣接する搬送胴8へ記録媒体Pを渡さずに、搬送胴8aに渡す。記録媒体Pは、二つの搬送胴8aを経由して表裏が反転され、圧胴42の上流側の搬送胴8を経由して再び圧胴42へ渡される。これにより、記録媒体Pの裏面が転写ドラム41に面することになり、裏面にインク像が転写される。
チェーン8cは、二つのスプロケット8b間に巻き回されている。二つのスプロケット8bの一方は駆動スプロケットであり他方は従動スプロケットである。駆動スプロケットの回転によりチェーン8cが循環的に走行する。チェーン8cには、その長手方向に離間して複数のグリップ機構が設けられている。グリップ機構は、記録物P’の端部を把持する。下流端に位置する搬送胴8からチェーン8cのグリップ機構に記録物P’が渡され、グリップ機構に把持された記録物P’はチェーン8cの走行により回収ユニット8dへ搬送され、把持が解除される。これにより記録物P’が回収ユニット8d内に積載される。
<後処理ユニット>
搬送装置1Bには、後処理ユニット10A、10Bが設けられている。後処理ユニット10A、10Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’に対して後処理を行う機構である。後処理ユニット10Aは、記録物P’の表面に対する処理を行い、後処理ユニット10Bは、記録物P’の裏面に対する処理を行う。処理の内容としては、例えば、記録物P’の画像記録面に、画像の保護や艶出し等を目的としたコーティングを挙げることができる。コーティングの内容としては、例えば、液体の塗布、シートの溶着、ラミネート等を挙げることができる。
<検査ユニット>
搬送装置1Bには、検査ユニット9A、9Bが設けられている。検査ユニット9A、9Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’の検査を行う機構である本実施形態における検出手段としての機能を果す。
本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Aは、連続的に行われる記録動作中に、記録画像を撮影する。検査ユニット9Aが撮影した画像に基づいて、記録画像の色味などの経時変化を確認し、画像データあるいは記録データの補正の可否を判断することができる。本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、圧胴42の外周面に撮像範囲が設定されており、転写直後の記録画像を部分的に撮影可能に配置されている。検査ユニット9Aにより全ての記録画像の検査を行ってもよいし、所定数毎に検査を行ってもよい。
本実施形態の場合、検査ユニット9Bも、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Bは、テスト記録動作において記録画像を撮影する。検査ユニット9Bは、記録画像の全体を撮影し、検査ユニット9Bが撮影した画像に基づいて、記録データに関する各種の補正の基本設定を行うことができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’を撮影する位置に配置されている。検査ユニット9Bにより記録画像を撮影する場合、チェーン8cの走行を一時的に停止して、その全体を撮影する。検査ユニット9Bは、記録物P’上を走査するスキャナであってもよい。
<制御系のハードウェア構成>
次に、記録システム1の制御系の構成を説明する。図5は記録システム1の制御系の全体構成を示すブロック図である。記録システム1の制御系は、上位装置HC2と制御ユニット13を含み構成される。制御ユニット13は、上位装置HC2に通信可能に接続され、また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続される。本実施形態において、上位装置HC2は、後述の面付け処理等を行う制御手段としての機能を果す。また制御ユニット13は、記録ヘッド30の吐出動作等をはじめとして記録装置全体を統括的に制御する制御手段としての機能を果す。
図5に示すホスト装置HC1では、記録画像の元になる原稿データが生成、あるいは保存される。ここでの原稿データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この原稿データは、上位装置HC2へ送信される。上位装置HC2は、受信した原稿データを制御ユニット13で利用可能なデータ形式(例えば、RGBで画像を表現するRGBデータ)に変換する処理を行う。この処理をレンダリングと称す。上位装置HC2で処理された後の画像データは、制御ユニット13へと送信され、制御ユニット13は受信した画像データに基づき、記録動作を開始する。なお、本実施形態では画像データの横方向の画素はノズル列の各ノズルに対応し、画像データの横方向の1画素の記録を、図3のノズル列i~pの1列が行う。
ここで、上位装置HC2および制御ユニット13の構成について説明する。上位装置HC2は、レンダリング処理および後述の面付け処理を行うDFE装置(Digital Front End)によって構成される。上位装置HC2は、処理部201、ROM202、RAM203、HDD204、外部I/F205、表示部206、操作部207を有し、それぞれがシステムバス208を介して接続されている。本実施形態において処理部201は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、以下、処理部201をCPU201と記す。マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)形態の中央演算処理部である。CPU201は、プログラムの実行やハードウェアの起動により上位装置HC2の全体の動作を制御する。ROM(Read Only Memory)202は、CPU201が実行するためのプログラムや上位装置HC2の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM(Random Access Memory)203は、CPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時的な格納領域として用いられたりする。また、RAM203は、各種設定データを記憶させたり、画像生成ジョブの管理テーブルや作業用データを格納させたりする。HDD(Hard Disk Drive)204は、外部装置から投入された画像生成ジョブを格納する。また、HDD204は、CPU201が実行するためのプログラム、上位装置HC2の各種動作に必要な設定情報を、内蔵するハードディスクに記憶させたり、読み出したりすることが可能である。なお、HDD404に代えて、他の大容量記憶装置としてもよい。また、外部の記憶装置を利用する形態でもよい。また、本実施形態では、CPU201がROM202に格納されたプログラムをRAM203に展開し、そのプログラムに従って後述の処理を実行する形態について説明する。但し、上位装置HC2は、補助記憶装置、GPU(Graphics Processing Unit)を更に備えるものであってもよく、CPUおよび/またはGPUで演算を行うことにより、本実施形態における処理を実行させることも可能である。
上記のように構成された上位装置HC2は、ホスト装置HC1から送信された原稿データの各々を面付けする面付け処理を行う。面付け処理とは、記録、断裁、製本等の工程を考慮し、ホスト装置HC1から送信された原稿データを各ページに配置する処理である。
図6に、上位装置HC2によって面付け処理され、更に制御ユニット13によってノズルチェックパターン906~909が配置された画像データを1枚の記録媒体Pに記録した記録面901(記録物P’)の例を示す。図中、902~905は、ホスト装置HC1から送信された画像ファイルを展開した画像であり、本例では記録の後工程で断裁され、それぞれが1枚で1ページの成果物となる。また、記録面901には、ノズルの吐出状態をチェックするためのノズルチェックパターン906~909も共に記録される。ノズルチェックパターン906~909は、記録中のノズルの吐出不良をチェックするために使われ、画像とノズル列位置との対応が取れるよう、予め定められた位置に配置され、記録される。上位装置HC2は、画像902I~905Iが図6に示すような配置で形成されるように、画像データの面付け処理を行い、その画像データを制御ユニット13に転送する。更にその後、制御ユニット13がノズルチェックパターン906~909を図の位置に配置する。
なお、本実施形態のような転写式の記録装置では、記録結果は画像データに対して上下あるいは左右に反転して記録される。このため、実際には記録ヘッド30の各ノズルの位置に対して画像データを反転させる処理を行うが、説明を容易にするため、図6では、記録物P’である901などは裏面から透過したような配置で画像を示している。
また、上位装置HC2は、画像データIDを発行する。画像データIDとは、記録物P’に記録する画像データ毎にユニークな番号である。この番号は画像データと同時に制御ユニット13へ送信される。
上位装置HC2は、後工程で必要とされる情報を作成し、後工程140へ伝える。後工程140には、記録物P’の断裁を行う断裁機141等が含まれる。断裁機141は、記録装置1Aによって記録された記録物P’に含まれる画像902I~905Iをそれぞれ1ページの成果物とするために、上位装置HC2から送信される情報に基づき、記録物P’の断裁を行う。上位装置HC2から後工程140に送信される情報は、例えば画像データID、画像形成領域数、記録物P’の左上を原点とした画像形成領域の位置(X[mm],Y[mm])、大きさ(幅[mm]、高さ[mm])がXML形式で記載されたファイル情報である。なお、画像形成領域とは、図6においては、記録媒体Pに形成すべき画像902I~905Iのそれぞれが占有する矩形の領域を意味し、インクが付与されて形成される像(インク像)902Ia~905Iaを包含する領域を指す。つまり、画像形成領域は、インク滴の吐出を指示する記録データとインク滴の非吐出を示す非記録データとからなる画像データに対応する領域を意味し、画像データによってインク像を形成し得る領域を指す。
上記のXML形式のファイル情報は、後工程140に設けられている断裁機141へLAN経由で送信してもよい。また、画像データと同時にXML形式のファイル情報を制御ユニット13へ送り、制御ユニット13からXML形式のファイル情報を断裁機141へ送信してもよい。また、上記の情報をバーコードやQRコード(登録商標)などの2次元コードに入れ、記録媒体Pの余白領域に記録しても良い。すなわち、記録媒体Pに記録されたコードを後工程、あるいは検査ユニット9Aで読み取り、該情報を後工程140が取得するようにすることも可能である。なお、後工程140は断裁機141に限らず、後処理ユニット10A、10Bのようなコーティング処理を行う装置を備える構成を採ることも可能である。
このように、上位装置HC2で作成した情報を、断裁機141に送信することにより、断裁機141では、記録物P’のどの位置を切断すれば良いのかを認識することができ、適正に断裁を行うことができる。また、上記の情報をコーティング装置に提供することにより、成果物から切り取られる不要な部分へのコーティングの実施を避けることが可能になり、無駄なコーティングを削減することができる。なお、面付け、画像データIDの発行は上位装置HC2に限らず、ホスト装置HC1で行っても良い。その際はPDF等など所定のファイル形式にし、HC2へ送信する。
また、図5に示す本実施形態の制御ユニット13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インタフェース)135、バッファ136および通信I/F137を含む。
処理部131は、CPU等のプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。以下、処理部131をCPU131と記す。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスであり、CPU131が実行するプログラムや、データを格納し、また、CPU131にワークエリアを提供する。操作部133は、タッチパネルであり、ユーザの指示を受け付ける。タッチパネルは表示機能も兼ね、機器のエラーや記録物の不良などをユーザに通知する役割も持つ。操作部133は、他にキーボード、マウス等の入力デバイスを備えても良い。
画像処理部134は例えば画像処理プロセッサを有する電子回路あるいはCPUである。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクやSSDである。通信I/F135は上位装置HC2との通信を行い、通信I/F137はエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。図4において破線矢印は、画像データの処理の流れを例示している。上位装置HC2から通信IF135を介して受信された画像データは、バッファ136に蓄積される。画像処理部134はバッファ136から画像データを読み出し、読み出した画像データに所定の画像処理を施して、再びバッファ136に格納する。バッファ136に格納された画像処理後の画像データは、プリントエンジンが用いる記録データとして、通信I/F137からエンジンコントローラ13Bへ送信される。
ここで、本実施形態において実行される画像処理の一部を説明する。図7は本実施形態の画像処理の手順を示すフローチャートである。なお、図7を含め、本明細書において参照するフローチャートの各工程番号に付すSはステップを意味する。本実施形態では、図7に示すS701~S706の処理は、図5に示す画像処理部134で行い、S707の処理は、図8に示す後述の記録制御部15Aで処理を行う。但し、これらの処理は、上位装置HC2など他の場所で行うことも可能である。
S701では、マッピング処理を行う。ここでは、記録装置1A、記録用紙の種類、および使用インクの種類毎に予め作成されたOutput ICC Profile を用いる。本例では上位装置HC2でOutput ICC Profileを用い、公知の方法で原稿データをデバイス依存RGB(dRGB)に変換する。dRGBは各チャンネル16bitの画像データとしてメインコントローラ13Aへ送られる。
S702ではカラーシェーディングを行う。カラーシェーディングは、公知の方法により、吐出基板間(301と302等)の色の差を、予め作成した3次元LUT(Lookup Table)を用いて補正する。補正には、吐出基板と吐出基板との重なり部分の幅を単位としたり、あるいはそれ以下の幅を単位として領域が分けられ、領域毎に3次元LUTが備えられている。ここでは画像データdRGBを入力とし、補正後のdRGB’を作成する。なお、dRGB’は各チャンネル16bitの画像データである。
S703ではインク色分解処理を行う。本実施形態では、dRGB’を、予め用意されたLUTにより、デバイス依存CMYK(dCMYK)に変換する。なお、ここではC、M、Y、Kの4色に応じた色分解処理を行うが、色分解処理は、記録装置で使用するインク色に応じたデータを作成する。例えば、C、M、Y、Kに加え、lC(淡シアン)、lM(淡マゼンタ)、Gy(グレイ)、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)などのインクが記録装置で使用される場合には、それらのインク色に応じたデータを作成する。なお、dCMYKは各チャンネル16bitの画像データである。また、本実施形態ではdCMYKに加えて転写液のデータも生成する。
S704では、ガンマ補正処理を行う。本実施形態では、C、M、Y、K各色に対応子する1次元LUTが予め用意されている。この1次元LUTを用いて、記録媒体Pに付与されるインク量の増減と人間の視覚特性との差を吸収し、dCMYKの信号値の増減が人間の視覚特性に合うように変換処理を行う。このガンマ補正処理では、dCMYKを入力とし、dCMYK’を出力とする。なお、dCMYK’は各チャンネル16bitの画像データである。
S705では、ヘッドシェーディングを行う。ヘッドシェーディングは、公知の方法により、吐出基板間(301と302等)の色の差を、予め作成した1次元LUTを用いて補正する。ここでは各インク色(C、M、Y、K)毎に補正を行ため、S702に述べた3次元LUTの数にインク色数(C、M、Y、Kの4色であれば4)を乗じた数の1次元LUTが備えられている。ヘッドシェーディングでは、dCMYK’を入力とし、dCMYK’’を出力とする。dCMYK’’は各チャンネル16bitの画像データである。なお、転写にむらが生じる場合などは、S705において転写液のシェーディングを行っても良い。これにより、転写不十分な箇所に合わせて記録用紙の一面の転写液の量を一律増やすよりも少ない量で転写が可能となり、使用する転写液の量を抑制することができる。
S706では、ハーフトーン処理が行われる。ハーフトーン処理では、dCMYK’’の各画素データとディザマトリクスとの閾値との比較により、ハーフトーン画像dCMYK’’’を作成する。本実施形態では公知の技術により、多値のハーフトーン処理を行う。dCMYK’’’は各チャンネル16bitの画像データであり、各画素値は吐出するインクの発数に相当する。以上のS702~S706は、画像処理部134で行う。
次に、S707では、2値化処理を行う。この処理は、後述するエンジンコントローラ13Bにおける記録制御部15Aで行う。多値の画像データdCMYK’’’の各画素を、ノズル毎に吐出する(ON:画素値1)、吐出しない(OFF:画素値0)の2値に分ける。ここで、2値化処理についての一例を説明する。
前述のように、図3に示す記録ヘッド30では、吐出基板301と302とでY方向において重なる部分と重ならない部分とがある。重なる部分における各ノズル縦列i~lには4つのノズルが存在し、重ならない部分における各ノズル縦列m~pには、2つのノズルが存在する。
このようにノズルが配置された記録ヘッド30では、インクの発数に相当するdCMYK’’’の各画素値(0~2)に応じて、以下のように吐出が行われる。
まず、隣接する吐出基板が重ならない部分に存在する縦列m~pそれぞれの各2つのノズル(以下、No.0ノズル、No.1ノズルと称す)の吐出について説明する。
・画素値が0の場合、No.0ノズル、No.1ノズルのいずれにおいてもインクの吐出を行わない。
・該画素値が1の場合、No.0ノズル、No.1のうち、1つのノズルを所定の方法により選択し、当該1つのノズルのみからインクを吐出する。
・該画素値が2の場合、No.0ノズル、No.1ノズルのいずれにおいてもインクの吐出を行う。
次に、隣接する吐出基板が重なる部分に存在する縦列i~lの4つのノズル(No.0ノズル~No.3ノズルと称す)の吐出について説明する。
・画素値が0の場合、No.0ノズル~No.3ノズルのいずれにおいても吐出を行わない。
・該画素値が1の場合、No.0ノズル~No.3ノズルのうち、1つのノズルを所定の方法により選択し、当該1つのノズルのみからインクを吐出する。
・画素値が2の場合、4つのノズルのうちの2つのノズルを所定の方法により選択し、当該選択した2つのノズルのみからインクを吐出する。
ここで、所定の方法とは、例えばNo.0→No.1→No.2→No.3→No.1…のように順番を決め、吐出するノズルをその順番に従って選ぶ方法が挙げられる。また、ノズルを選択する他の方法としては、画像のX座標によって吐出するノズルを選ぶ方法や、形成するドットをランダムでノズルに割り振り、確率的に全てのノズルがおよそ同じ吐出数となるようにする方法が挙げられる。
また、隣接する吐出基板、例えば、吐出基板301と吐出基板302との間に吐出量に関して個体差がある場合、記録される画像に濃度差が生じることがある。例えば、吐出基板301のみで記録された画像と、吐出基板301と吐出基板302の重なり部分によって記録された画像と、吐出基板302のみで記録された画像との間で濃度差が生じ、それぞれの画像の境界が目立つことがある。この場合、吐出基板301および吐出基板302の各ノズルでインクを吐出する割合をノズル縦列毎に変更しても良い。例えば、確率的に下記のような割合になるように各ノズルに振り分ける。
Figure 2023040724000002
上記により、チップ間の濃度差が段階的に切り替わり、境界が目立たなくなるという効果がある。
S607の処理を終えると、図7のフローチャートに示す処理は終了する。このようにして、画像データは吐出、非吐出を指示する命令(記録データ)へと変換される。
図8は、図4に示すエンジンコントローラ13Bの構成を示すブロック図である。エンジンコントローラ13Bは、複数の制御部(14、15A~15E)を含み、記録システム1が備えるセンサ群およびアクチュエータ群16の検知結果の取得および駆動制御を行う。これらの各制御部は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェースを含む。なお、制御部の区分けは一例であり、一部の制御を更に細分化した複数の制御部で実行してもよいし、逆に、複数の制御部を統合して、それらの制御内容を一つの制御部で行うように構成してもよい。
エンジン制御部14は、エンジンコントローラ13Bの全体の制御を行う。記録制御部15Aは、メインコントローラ13Aから受信した画像データをラスタデータ等、記録ヘッド30の駆動に適したデータ形式のデータ(記録データ)に変換する。記録制御部15Aは、各記録ヘッド30の吐出制御を行う。
転写制御部15Bは、付与ユニット5Aの制御、吸収ユニット5Bの制御、加熱ユニット5Cの制御、および清掃ユニット5Dの制御を行う。
信頼性制御部15Cは、供給ユニット6の制御、回復ユニット12の制御、および記録ユニット3を吐出位置POS1と回復位置POS3との間で移動させる駆動機構の制御を行う。
搬送制御部15Dは、転写ユニット4の駆動制御や、搬送装置1Bの制御を行う。検査制御部15Eは、検査ユニット9Bの制御、および検査ユニット9Aの制御を行う。
センサ群およびアクチュエータ群16のうち、センサ群には、可動部の位置や速度を検知するセンサ、温度を検知するセンサ、撮像素子等が含まれる。アクチュエータ群にはモータ、電磁ソレノイド、電磁バルブ等が含まれる。
<動作例>
図9は記録動作の例を模式的に示す図である。転写ドラム41および圧胴42が回転されつつ、以下の各工程が循環的に行われる。状態ST1に示すように、始めに転写体2上に付与ユニット5Aから反応液Lが付与される。転写体2上の反応液Lが付与された部位は転写ドラム41の回転に伴って移動していく。反応液Lが付与された部位が記録ヘッド30の下に到達すると、状態ST2に示すように記録ヘッド30から転写体2にインクが吐出される。これによりインク像IMが形成される。その際、吐出されるインクが転写体2上の反応液Lと混ざりあうことで、色材の凝集が促進される。吐出されるインクは、供給ユニット6の貯留部TKから記録ヘッド30に供給される。
転写体2上のインク像IMは転写体2の回転に伴って移動していく。インク像IMが吸収ユニット5Bに到達すると状態ST3に示すように吸収ユニット5Bによりインク像IMから液体成分が吸収される。インク像IMが加熱ユニット5Cに到達すると状態ST4に示すように加熱ユニット5Cによりインク像IMが加熱され、インク像IM中の樹脂が溶融し、インク像IMが造膜される。このようなインク像IMの形成に同期して、搬送装置1Bにより記録媒体Pが搬送される。
状態ST5に示すように、インク像IMと記録媒体Pとが転写体2と圧胴42とのニップ部に到達し、記録媒体Pにインク像IMが転写され、記録物P’が製造される。ニップ部を通過すると、記録物P’に記録された画像が検査ユニット9Aにより撮影され、記録画像が検査される。記録物P’は搬送装置1Bにより回収ユニット8dへ搬送される。
転写体2上のインク像IMが形成されていた部分は、清掃ユニット5Dに到達すると状態ST6に示すように清掃ユニット5Dにより清掃される。清掃後、転写体2は一回転したことになり、同様の手順で記録媒体Pへのインク像の転写が繰り返し行われる。上記の説明では理解を容易にするために、転写体2の一回転で一枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が一回行われるように説明したが、転写体2の一回転で複数枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が連続的に行うことができる。
このような記録動作を継続していくと、各記録ヘッド30のメンテナンスが必要となる。図10は各記録ヘッド30のメンテナンスの際の動作例を示している。状態ST11は、吐出位置POS1に記録ユニット3が位置している状態を示す。状態ST12は、記録ユニット3が予備回復位置POS2を通過している状態を示し、通過中に回復ユニット12により記録ユニット3の各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。その後、状態ST13に示すように、記録ユニット3が回復位置POS3に位置した状態で、回復ユニット12により各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。
<記録画像例>
図11および図12は、本実施形態の記録装置1Aに用いられる記録ヘッド30および当該記録ヘッドによって記録される記録物の例を示す図である。図11(a)は記録ヘッド30の各吐出基板310に設けられているノズルに吐出不良が発生しておらず、全てのノズルから正常にインクが吐出されて記録された画像を示している。図11(b)は記録ヘッド30の吐出不良が発生した際に形成される画像の例を示す図である。また、図12は、図11(b)に示す画像に基づいて行われる再面付け処理を説明するための図であり、図12(a)記録ヘッドの不吐出領域と画像との関係を示す図、図12(b)は再面付け処理を実施した後に形成される画像を示す図である。
図11および図12において、P’は、1枚の記録媒体Pに画像が記録された後の記録物を示している。また、画像902I~905Iのそれぞれは、記録媒体Pに記録された1ページ分の画像(以下、ページ画像と称す)を示している。この1ページ分の画像902I~905Iは、後工程において断裁機141によって断裁され、それぞれが1枚の成果物となる。また前述のように、画像902I~905Iが形成される領域を画像形成領域と称す。なお、後工程で必要なトンボ(図示せず)や2次元コード(図示せず)などがある場合、それらの画像が形成される領域も画像形成領域とする。
また、記録媒体Pの下方部には、図6と同様にノズルの吐出状態をチェックするためのノズルチェックパターン906~909が記録される。このうち、906はシアンインクを吐出するノズル列によって記録されたノズルチェックパターンである。同様に、907はマゼンタインクを吐出するノズル列、908はイエローインクを吐出するノズル列、909はブラックインクを吐出するノズル列のそれぞれによって記録されたノズルチェックパターンである。各ノズルチェックパターンを、検査ユニット9A(図1)で読み取ることにより、各ノズル列が正常にインクを吐出しているか否かをチェックすることができる。なお、各ノズルチェックパターンはそれぞれ、単色のインクで記録される。また、ノズルチェックパターン906~909の記録動作を行うことによって各ノズル内のインクを吐出に適した状態に保つことが可能になる。すなわち、ノズルチェックパターン906~909の記録動作を行うことにより、インクの乾燥、増粘を抑制することが可能になると共に、気泡や塵埃を含んだインクをノズルの外部へと排出してフレッシュなインクに置換することが可能になる。つまり、ノズルチェックパターンの記録動作は、ノズルの吐出性能を維持・回復させるための予備吐出と同様の役割を果す。よって、画像形成領域における使用頻度の少ないノズルについても適正な吐出性能を維持することが可能になる。
なお、予備吐出は、記録媒体P上に限らず、それ以外の部分において実行しても良い。例えば、図4に示す回復ユニット12や予備吐専用の予備吐溝(図示せず)に対して、定期的にインクを吐出させることも可能であり、同様の効果が得られる。予備吐溝にはインクを吸収するスポンジなどを設けても良いし、吐出されたインクをポンプで吸引するようにすることも可能である。
<フローチャート>
ここで、本実施形態において実行される全体的な処理の手順を図13のフローチャートに従って説明する。
S1301では、ホスト装置HC1から送信された原稿データに基づき、上位装置HC2において面付け処理とレンダリング処理とを行い、例えば、図11(a)に示すような画像を記録するための画像データを生成する。但し、この段階において、画像内にノズルチェックパターン906~909は含まれていない。この画像データの生成処理は、処理部であるCPU201によって行われる。生成した画像データは、RAM403に格納されると共に、外部I/F205を介して記録装置1Aのメインコントローラ13Aに送信される。なお、S1301の段階で行われる面付け処理は、後述のノズルの吐出不良を検出する前に行われる面付け処理であり、この面付け処理を以下の説明では、初期面付け処理と称す。また、ノズルの吐出不良を検出した後、その検出結果に基づいて行う面付け処理を再面付け処理と称す。
S1302では、記録装置1Aのメインコントローラ13Aが、上位装置HC2から送信された画像データをI/F135を介して受信した後、一旦、RAM203に格納する。その後、RAM203に格納した画像データに対して画像処理部134において前述の画像処理を施す。そして、処理した画像データ(記録データ)に対しノズルチェックパターン906~909を追加する処理を行い、生成された記録データをエンジンコントローラ13Bに送る。エンジンコントローラ13Bは、受信した記録データに基づいて記録ヘッド30のノズルを駆動し、記録媒体Pに対して画像を記録し、記録物P’を得る。S1303では、図1に示す検査ユニット9Aが記録物P’を光学的に読み取り、読み取り画像データを取得する。
S1304では、S1303で取得した読み取り画像データのうち、図9に示したノズルチェックパターン906~909に相当する箇所を検査することによって、不吐出ノズルの検出を行う。具体的には、画像データ上のノズルチェックパターン906~909の画素値に基づき、読み取り画像データから得られる各画素の画素値あるいは複数画素からなる1ブロックの各画素値の平均値が、予め定めた値の範囲内にあるか否かを検査することによって行う。
例えば読み取り画像データの画素のR,G,B値をRs,Gs,Bsとし、予め定めた理想のR,G,B値、すなわち吐出不良が発生していないノズルによって形成される画素の値をRref,Gref,Brefとした場合、色の差△RGBを以下の式1で求める。
Figure 2023040724000003
この後、式1により求めた色の差△RGBと、予め定めた許容範囲の値Thとを比較し、色の差ΔRGBが大きければノズルに吐出不良が発生していると判定する。なお、画像データの画素のRGB値を公知の手法でCIELabやYCCの値に変換して色の差を求めてもよい。
また、上記の例では、色の差に基づいてノズルの吐出不良の発生を判定したたが、色の差以外の光学特性で判定してもよい。一般的な有色インクの場合、ノズルに吐出不良が発生すると、その吐出不良が発生しているノズル(吐出不良ノズル)に対応する箇所は、記録媒体の色(白)に近づく値となるため輝度が上昇する。従って、理想の値より輝度がどれだけ上昇したかによってノズルに吐出不良が生じているか否かを判定することも可能である。また、輝度以外の光学特性、例えば彩度に基づいて吐出不良の判定を行ってもよい。
なお、本実施形態では、吐出不良ノズルの検出処理をメインコントローラ13Aで行うが、メインコントローラ13Aとは別にコンピュータ(図示せず)等の処理装置を備え、そのコンピュータによって上記の吐出不良ノズル判定処理を行ってもよい。これによれば、記録用の処理と吐出不良ノズルの判定処理とを分散して行うことが可能になり、負荷が分散される利点がある。
また、吐出不良の検出を、画像データを用いずに行うことも可能である。例えば、サーマルインクジェット方式を採る記録ヘッドでは吐出不良の発生時に温度が上昇する現象が発生する。この現象を利用して吐出不良の検出を行うことも可能である。具体的には記録ヘッド30に温度を感知する機能を設け、検出した温度が所定値以上であるか否かによって、吐出不良の発生を検出することも可能である。
記録ヘッドの温度により吐出不良の検出を可能にした技術として、例えば、特開2009-101576号公報に開示の技術がある。同公報に開示の記録ヘッドには、各ノズルに設けられた電気熱変換素子の直下に、絶縁膜を介して薄膜抵抗体で形成される温度検知素子が設けられている。この記録ヘッドでは、複数の電気熱変換素子に選択的に駆動パルスを印加し、駆動された電気熱変換素子の温度情報を温度検出素子から取得することによって高精度な吐出不良検出を行うことが可能になっている。
このような不吐出検出方法を用いる場合、S1303における記録物P’の読み取り処理をスキップすることが可能になる。さらに、この方法によれば、吐出不良が発生しているノズルの位置が把握できるため、後述のS1305の吐出不良ノズルの特定処理もスキップすることができる。また、予め、記録前から吐出不良ノズルの存在が分かっている場合にも、S1301~S1304およびS1305をスキップし、S1306から処理を始めることができる。これによれば、高速に処理を進めることが可能になる。
図11(a)は、ノズルに吐出不良が発生しておらず、正常に画像を記録することができた場合を記録物P’を表しているのに対し、図11(b)は、記録ヘッド30の中のaの位置でマゼンタインクのノズルに吐出不良が発生した場合の記録物P’を表している。図11において、横方向をY方向、縦方向をX方向としたとき、Y方向にノズルが配列され、記録媒体PはX方向に搬送される。図11(b)に示す記録物P’例では、ノズルの吐出不良によりY座標のaの位置において、記録媒体Pの縦方向(X方向)のライン全体にマゼンタインクが吐出されない。このため、903、905、907にはY座標のaの位置に色抜けが発生している。これに対し、ノズルチェックパターン906,908,909のように、マゼンタインクを使わない箇所については適正な色で記録が行われる。
なお、本例では説明を容易にするため1つのノズル列を不吐とした場合を示しているが、ノズル列の内1つのノズルで不具合が発生した場合にも輝度が高く(濃度が薄く)なるため、上記のΔRGBを求める式1によって吐出不良を検出することが可能である。図11(b)に示す例では、S1304の処理により、マゼンタのインクを吐出する記録ヘッド30のノズル列において、Y座標のaの位置に対応するノズルに吐出不良が発生していることを検出することができる。
後述のS1308の処理において記録動作継続の判定がなされ、かつ既知の不良領域が存在する場合には、既知の不良領域のノズル列では吐出不良ノズルの検出処理は行わない。あるいは、吐出不良ノズルを検出したとしてもその検出結果は無視する。これにより、後に、図12を参照して説明する不良領域と画像形成領域の重なりを判定する処理において、既知の不良領域は処理の対象から除外されるため、無駄な処理が行われることがなくなる。
また、S1304において、吐出不良の検出以外の検出を行ってもよい。例えば、レンダリング後の画像データあるいはそれを加工した画像データと読み取り画像データとを比較し、記録物に不具合がないかを判定する。加工した画像データとは、例えば、色分解後の画像データや、画像データから記録プロセスあるいは撮像プロセスにおける色の変化をシミュレーションした画像データなどである。また、記録物の不具合とは、転写不良によって発生する記録物の傷等が挙げられる。不具合が発生した場合は、記録動作を停止し、警告を出すなどの処理を行う。なお、ステップS1308を既に通り、記録動作継続の判定がなされた後であれば、不良領域は画像形成領域外のため、不良領域を検査しなくとも画像形成領域には影響はない。よって、この検査に関しても既知の不良領域の検査を行わない、あるいは不具合を検出したとしても無視する。これにより、記録動作を無駄に停止させることなく、記録動作を続行することが可能となる。
S1304においてノズルの吐出不良が検知されなければ、処理はS1309へ移行し、通常通り後工程140において所定の処理(断裁機141による記録物P’の断裁処理)がなされる。ノズルの吐出不良が検知されれば、処理はS1305へ移行する。
S1305では吐出不良ノズルの特定をメインコントローラ13Aで行う。この吐出不良ノズルの特定には、図11に示すマーカ913を用いる。マーカ913は一定の間隔で記録されており、ノズルの位置と画像の位置との位置関係を特定する際に使用する。
記録媒体の記録面の領域に対応する元画像データに基づいて、Y座標における同一位置のノズルに対して吐出、非吐出の命令(記録データ)が作成されるため、元画像データのY座標位置に対してどのノズル縦列で画素が記録されるかは予め定められている。なお、本例ではマーカ913は三角形であり、その内の1つの頂点を、予め定めたノズル縦列の位置としている。なお、マーカは三角形に限らず、線や渦巻のパターンなど、読み取って画素位置を判断できるものであれば、他の形状をなすものでも構わない。
S1304で検知したY座標におけるaの位置(図11(b)参照)が、何番目のマーカと何番目のマーカの間に位置するかを求める。図11(b)の例では左から6番目と7番目のマーカの間に吐出不良があることを求める。
次に、図9に示す画像データ上の左から6番目および7番目のマーカの画素位置と、S1304で不具合があると判断された画素位置と、6番目および7番目のマーカに対応するノズル位置とから、不具合があるノズル縦列の位置を算出する。なお、不具合があるノズル縦列とは、吐出不良ノズルが含まれるノズル縦列を意味する。
この算出には、例えば、以下の式2を用いればよい。
Ym6:6番目のマーカの画素位置(Y座標)。
Ym7:7番目のマーカの画素位置(Y座標)。
YE:不具合があると判断された画素位置(Y座標)。
N6:6番目のマーカに対応するノズル位置
N7:7番目のマーカに対応するノズル位置
NE:不具合があるノズル列の位置
Figure 2023040724000004
上記式2で算出したNEにより、吐出不良があるノズル縦列を特定する。図3で示したようにノズル列は一定の間隔で並んでいるため容易に特定できる。例えば、予め個々のノズル縦列の位置を記録した表を用い、表のノズル縦列の位置と算出したノズル位置NEが最も近いノズルを吐出不良ノズルとして定めてもよい。
ここで、吐出不良ノズルを特定するための他の方法の例を図3を参照しつつ説明する。図3の1101は記録媒体Pに記録された別のノズルチェックパターンの例を示している。各ノズルが1回ずつインクを吐出し、1002に示す各ドットを形成する。S1304にてこのパターンを読み取り、各ドット1002が所定の場所に存在するか否かを検出する。所定の場所およびそれ以外の場所にドットが存在しない場合にはノズルに不吐出が生じていると判定することができる。また、所定の場所とは異なる場所にドットが存在する場合には、ノズルのインク吐出方向に異常(ヨレ)が生じていると判定することができる。各ドット1002は、ノズルに1対1で紐づいているため、図3(b)に示すノズルチェックパターンに基づき、どのノズルが異常であるかを判定することが可能である。
なお、本実施形態では、吐出不良ノズルの特定処理をメインコントローラ13Aで行うが、メインコントローラ13Aとは別にコンピュータ(図示せず)等の処理装置を備え、そのコンピュータによって吐出不良ノズルの特定処理を行ってもよい。これによれば、記録用の処理と吐出不良ノズルの特定処理とを分散して行うことが可能になり、負荷を分散させることができる。
以上の吐出不良ノズルの特定処理を行った後、メインコントローラ13Aは、S1306において不良領域の特定処理を行う。すなわち、不良領域特定手段としての機能を果す。なお、この不良領域の特定処理についても、メインコントローラ13Aとは別に設けたコンピュータ(図示せず)等の処理装置により行うことが可能である。
S1306では、上述のS1305で求めた吐出不良ノズルを含むノズル列のY座標に位置する縦列の全てを不良領域とする。これは、本実施形態では記録用紙PがX方向に搬送され、同じY座標の位置は同一のノズル縦列で記録されるからである。加えて、本実施形態では不吐ノズルを含むノズル縦列のY座標における前後方向、つまり横方向(Y方向)に不良領域を拡大する。これは、S1303で記録物P’の読み取りを行った際に、読み取りの解像度等によって、吐出不良ノズルを特定する精度が変化するためである。例えば、吐出不良ノズルを特定する精度は、記録速度(記録媒体Pが検査ユニット9Aを通過する速度)、記録媒体の搬送精度、照明、検査ユニット9Aの読み取り方式(ラインセンサ、エリアセンサ、スキャナ)等によって変化する。さらに、上述のマーカの種類や記録解像度、センサの分解能等によっても吐出不良ノズルを特定する精度は変化する。よって、予め読み取りと不吐ノズルを特定する精度を求めておき、吐出不良ノズルを含む幅を持たせた領域を不良領域とする。
なお、吐出領域の特定を、高精度に行うことが可能な装置であれば、吐出不良が発生しているノズルを含む1つのノズル縦列を不良領域としてもよい。特定できる不良領域の幅が狭い程、図12(b)に示すように、不良領域を避けた位置に画像形成領域を設定する再面付け処理(図13の処理)が容易になる。この再面付け処理については、後に詳述する。
図12(a)、(b)に不良領域の一例を示す。図12において破線で囲った領域920が不良領域を示している。図12(a)に例示する不良領域920は、マゼンタのノズルチェックパターン907において色抜けが生じているY座標のa位置の縦の画素列と、当該画素列に対しY方向おける前後に位置する縦の画素列とに対応する領域となっている。
不良領域920を決定すると、制御ユニット13は上位装置HC2に対し、少なくとも画像IDと不良領域の位置を示す情報を送信する。この情報は、LANを介して予め定められた形式で送信される。送信する情報の形式としては、例えば、最初の64bitに画像ID、次に不良領域920のX座標、Y座標、幅[pixel]、高さ[pixel]が各32bit整数型で格納されたバイナリファイルなどでもよい。また、不良領域920が複数ある場合はその後に2番目の不良領域920のX座標、Y座標、幅、高さ、3番目の不良領域920のX座標、Y座標、幅、高さ、と続けばよい。バイナリファイルはサイズを小さくできるという利点がある。
また、送信する情報の形式の他の例としては、XML形式のテキストファイルでもよい。この場合、タグに各要素である記録画像ID、不良領域のY座標と幅を記載する。この情報はテキスト形式のため、バイナリファイルと異なり規定のbitに収まりきらない状態となる、いわゆるオーバーフローが生じないという利点がある。なお、前述のように不良領域は1つとは限らない。同時に複数箇所のノズルに吐出不良が発生した場合には、不良領域920も複数箇所となり得る。
また、制御ユニット13は、記録に不良があったことを操作部133のタッチパネルに表示し、ユーザに通知する。さらに、記録の後工程にテープインサーターが備えられている場合、記録不良が生じた記録物P’にテープを挟むための通知を行う。これにより、ユーザはどの記録物に不良があったかを知ることができ、不良の記録物を容易に取り除くことができる。
S1307では、不良領域920を避けて画像領域を配置する面付け処理とレンダリングとを行う。本実施形態ではこれらの処理を、不良領域の通知を受けた上位装置HC2で行う。但し、ホスト装置HC1や他のコンピュータ(図示せず)などの他の装置において面付け処理およびレンダリング処理を行うことも可能であり、その場合にも上位装置HC2で処理を実行した場合と同様の効果を得ることができる。
ここで、図14のフローチャートに基づき、S1307で行う再面付け処理の手順を説明する。なお、前述のように以下の処理は、上位装置HC2で行う。S1401では、不良領域920が記録媒体Pの画像形成領域902~905の範囲内に位置するか否かを判定する。ここで不良領域920が画像形成領域の範囲外であると判定された場合(判定結果がNoの場合)、処理はS1404に移行する。また、不良領域920が画像形成領域902~905の範囲内にある場合(判定結果がYesの場合)には、処理はS1402に移行する。図12(b)に示す例では、記録媒体Pの画像形成領域903、905と不良領域920とが重なっている。このため、S1401における判定結果はYesとなり、処理はS1402に移行する。
S1402では、不良領域920との重なりを回避できる回避位置に画像形成領域902~905を移動させることが可能か否かを判定する。図12(b)に示す例では、画像形成領域903、905を不良領域の延在する方向(X方向)と直交する方向(±Y方向)に移動させることで、画像形成領域902内に不良領域920が含まれることを回避できるか否かを判定する。なお、本例では説明の簡略化のためY方向の移動についてのみ記載するが、この限りではない。面付けのレイアウトによっては画像形成領域の回転や、Y方向の移動あるいは回転とX方向への移動とを組み合わせることにより不良領域を回避可能な場合もある。このため、画像形成領域のX方向への移動や回転を再面付けの処理に加えてもよい。これによれば、面付けの自由度が高まり、不良領域と画像形成領域との重なりを回避し得る可能性が高まる。例えば、不良領域と重なる画像形成領域を、当該画像形成領域よりX方向に位置する空白(他の画像領域が存在しない領域)との対向位置まで移動させ後、その後、空白へ向けてY方向へと移動させることにより、不良領域との重なりを回避することが可能になる。また、回避させようとする画像形成領域をX方向移動させる前に、まず、他の画像形成領域をX方向へと移動させて空白を作り、その空白に向けて不良領域と重なっている画像形成領域を移動させ、不良領域との重なりを回避するこことも可能になる。このように、X方向、Y方向、回転などを組み合わせて自在に面付けできるようにすれば、不良領域と画像形成領域との重なりを回避できる可能性は高まる。
図15は前述のステップS1402で行う判定処理、すなわち不良領域との重なりを回避可能な回避位置へと画像形成領域を移動させることが可能であるかを判定する処理の一例を示すフローチャートである。以下、図15に示す各処理を、図12に示す例を参照しつつ説明する。なお、図15に示す処理は、上位装置HC2の処理部であるCPU201によって実行される。
S1501では、不良領域920と重なる位置に存在する画像形成領域(図12に示す例では、画像形成領域903、905)を1画素分だけY方向(この場合+Y方向)に移動させる。次いで、S1502では、移動させた画像領域(903、905)が他の画像形成領域(例えば902、904)と重なっていないかを判定する。重なっていない場合(判定結果がYesの場合)は、S1503の処理に移行し、重なっている場合(判定結果がNoの場合)は、S1507の処理に移行する。S1507では、重なった画像形成領域902,904を移動させる。移動は、不良領域と重なっている画像形成領域903、905と同じ方向へ同じ画素数だけ移動させる。これにより、画像形成領域どうしが重なる事を防ぐ事ができる。その後、処理はステップS1503へと移行する。
S1503では、全ての画像形成領域が、画像形成可能領域901をはみ出していないかを判定する。ここで、画像形成可能領域901とは、記録ヘッド30によって記録媒体Pの記録面に画像を記録することが可能な領域を指す。本実施形態では、画像形成可能領域901内に画像形成領域902~905、ノズルチェックパターン906~909などが内包されるように(はみ出さないように)初期面付けおよび再面付けを行う。なお、この画像形成可能領域に対応する画像データを、元画像データともいう。
S1503の判定処理において画像形成領域902と904が画像形成領域901からはみ出していないと判定した場合(判定結果がYesの場合)、S1504の処理に移行する。また、画像形成領域が1つでも画像形成可能領域901からはみ出すと判定された場合(判定結果がNoの場合)にはS1508の処理に移行する。
S1504では、全ての画像形成領域902~905が不良領域920と重なっていないかを判定する。全ての画像形成領域902~905が不良領域と重なっていないと判定した場合(判定結果がYesの場合)にはS1505の処理に移行する。また、不良領域920と重なっている画像形成領域が存在すると判定した場合(判定結果がNoの場合)には、再びS1501に移行し、S1501~S1504の処理を繰り返す。
なお、複数の画像形成領域のうち、一部の画像形成領域が不良領域920と重なっていない場合においてもS1504判定結果はNoとなり、S1501の処理に移行する。この際S1501では、複数の画像形成領域のうち、不良領域920と重なっていない画像形成領域については移動処理の対象から除外し、不良領域920と重なっている画像形成領域のみを移動させる。また、不良領域920が画像形成可能領域901内に複数存在する場合もある。この場合、S1504では、全ての画像形成領域902~905が、全ての不良領域920と重なっていないかを判断する。そして、1つでも不良領域920と重なる画像形成領域が存在する場合には、判定結果をNoとし、S1502に移行して不良領域920と重ならない画像形成領域のみを移動させる。
S1503の判定処理の結果、画像形成領域が画像形成可能範囲からはみ出していると判定された場合(判定結果がNoの場合)、S1508において、不良領域を回避不可能と判断し、その後、図15のフローチャートの処理を終了する。これは、S1501の処理において画像形成領域を画像データからはみ出す直前まで移動させても不良領域を回避できなかったためである。
S1505では、不良領域920と画像形成領域との重なりを回避可能であると判断し、その旨をRAM203上に記憶し、S1506の処理に進む。この後、S1506では、画像形成領域それぞれの移動方向と移動距離をRAM203に記憶する。例えば、「+Y方向へ20画素」等の情報を記憶する。記憶を終えると、図15のフローチャートに示す1回目の判定処理を終了する。
なお、本実施形態では、再面付けを行うS1501の移動処理において、画像形成領域を1画素ずつ移動させるようにしたが、これに限定されない。画像形成領域を、複数画素(例えば2画素)ずつ画像形成領域を移動させるようにしてもよい。これによれば、処理速度はおよそ複数倍(2画素の場合は略2倍)になる。この他、画像形成領域を移動させる方法として、画像形成領域が不良領域に重ならない位置まで移動させるために必要な距離を演算により求め、求めた距離だけ画像形成領域を移動させるようにしてもよい。例えば、図12(a)における画像形成領域903の左端を、不良領域920の右端へと移動させる距離、つまり図12(b)に示す距離913を演算で求め、この距離だけ画像形成領域を+Y方向へと移動させるようにしてもよい。これによれば、演算回数を大幅に減らすことが可能となり、移動処理に要する時間を大幅に短縮することが可能になる。
なお、上記の処理において、形成すべき画像の中に、後工程で必要なトンボなどがある場合には、それも画像形成領域として処理を行う。
図15のフローチャートに示す1回目の判定処理が終了すると、再度、図15のフローチャートに示す判定処理を繰り返す。1回目の判定処理では、S1501において不良領域と重なる画像形成領域903、905をY方向におけるプラス方向(+Y方向)へ移動させたが、2回目の判定処理では画像形成領域903、905Yのマイナス方向へ移動させて、同様の処理を行う。
1回目の判定処理と2回目の判定処理を実行した結果、両方の判定処理において、不良領域920と画像形成領域903、905との重なりを回避することができないと判定された場合、S1402では、最終的に不良領域を回避不可能と判定する。この場合、処理は図14のS1406へと移行し、記録動作は停止する。
また、1回目の判定処理と2回目の判定処理のいずれか一方において、不良領域920と画像形成領域903、905との重なりを回避することができると判定した場合、S1402では、最終的に不良領域を回避可能と判定する。その後、処理はS1403に移行する。この場合、後に行われるS1403の記録位置の移動処理では、回避可能と判断した一方の判定処理のS1506でRAM203に記憶した移動距離が使用される。
また、1回目の判定処理と2回目の判定処理の双方において、不良領域920と画像形成領域903、905との重なりを回避することができると判定した場合、S1402では、最終的に不良領域を回避可能と判定する。この場合、S1403の処理では、RAM203に記憶した短い方の移動距離が選択される。なお、移動距離の選択方法としては、他の画像形成領域の移動がない方の判定処理で記憶された移動距離を優先するなどの方法を採用してもよい。この選択方法を採用した場合、元画像データからの変化が少ない画像を形成できるという効果が得られる。なお、S1402において不良領域を回避可能と判定した場合(判定結果がYesの場合)、S1403では、不良を回避するために必要な移動量Yvを記憶しておく。このYvはマイナス値の場合も含む。
S1403では、S1402の判定結果に応じて、画像形成領域903、905をY方向に移動させ、再面付け処理を行う。図12を用いて再面付け処理を説明する。図12(a)は、初期面付け処理によって配置された画像を示しており、画像形成領域903、905の全てが不良領域と重ならないように移動させることが可能な場合を示している。
上位装置HC2は、制御ユニット13から通知された画像IDに紐づけられた原稿データを用いて、再面付けを処理を行う。再面付け処理では、初期面付け処理によって配置されている画像形成領域を、S1403で記憶した移動量Yvに基づいてY方向へ移動させる。図12(b)は、再面付け処理を行った後の状態を示している。図12(b)において、903D、905Dは、図12(a)の状態から移動させた後の画像形成領域の位置を示している。また、913は、図9(C)の状態から、画像形成領域903、905を移動させた距離を示しており、この距離は前述の移動量Yvに相当する。以上のようにして上位装置HC2は、画像形成領域の再面付け処理を行う。
なお、画像形成領域の位置を移動させる処理は、ホスト装置HC1で行ってもよい。また、制御ユニット13のメインコントローラ13Aまたはエンジンコントローラ13Bで行うことも可能である。これは、画像形成領域がどこであるかを示す情報を上位装置HC2から制御ユニット13が取得することで実現可能である。例えば、上位装置HC2が、画像データと同じ幅、高さの画像を用意し、画像形成領域の画素値は1、その他の画素値は0として、その情報を画像形成領域の位置情報として制御ユニット13に伝える。これにより、メインコントローラ13Aまたはエンジンコントローラ13Bは受信した情報と、不良領域の情報に従って画像形成領域を移動させることができる。
以上のように、本実施形態では、記録ヘッド30のノズルに吐出不良ノズルが発生した場合、その吐出不良ノズルに対応する不良領域との重なりを避けた位置に画像形成領域を移動させる再面付け処理を行う。このため、吐出不良ノズルを用いずに適正な画像を記録することが可能になり、ノズルの吐出不良を解消させるためのメンテナンスを行うことなく、記録動作を継続させることが可能になる。ここでメンテナンスとは、前述した回復ユニット12による回復動作、記録ヘッド30の交換等が挙げられる。サーマルインクジェット方式の場合、メンテナンスを行うと、連続して記録動作を行った場合に比べて記録された画像の色が変わることがある。これは次のような理由による。
回復ユニット12では、インク吐出面から記録ヘッド30内のインクを負圧吸引してノズルの吐出性能を回復させるメンテンスが行われる。このメンテナンスでは、ノズル内を流れるインクにより、ノズル内のヒータが冷却される。その結果、再度記録動作を開始すると、吐出を継続した状態よりも低い温度のヒータに電気パルスが供給されることとなる。すなわち、ヒータに対して電気パルスに応じた電力が供給されることとなる。この場合、ノズル内のインクの膜沸騰の状態が変わり、連続して記録を行った場合に比べて吐出されるインク量に微小な変化が生じ、これが記録画像の色を微妙に変化させることとなる。
また、記録ヘッドの交換をすると、記録ヘッドの製造のばらつきによりノズルのインク吐出量が変化することがある。加えて、連続で記録した場合に比べて、ノズルの温度が低下しているため、連続で記録し続けた場合とはインク吐出量に微小な差が生じる。インクの吐出量が変化する結果、記録画像の色に微妙な差異が生じる。このため、例えば図書等の成果物が商品として複数並べて展示された場合、人間の視覚感度は高いため、隣接して配置された成果物の間に微妙な色の差を感じることとなる。本実施形態では、メンテナンスを行うことなく連続した記録が可能となるため、成果物間に生じる色の差を抑制することが可能になる。
次に、図14のS1404で行われる不良領域の吐出変更処理について説明する。このS1404の処理は、S1401で不良領域が画像形成領域の範囲内ではないと判定された場合、およびS1403の処理を終えた場合に実行される。
図11は、上位装置HC2により初期面付け処理が行われた場合に記録された画像を示しており、(a)は吐出不良が生じていない正常な記録ヘッド30で記録された画像を、(b)は吐出不良が生じた記録ヘッド30で記録された画像をそれぞれ示している。図11(a)に示す画像では、ノズルチェックパターン906~909は、欠落なく全て適正な状態で記録されている。これに対し、図11(b)に示すノズルチェックパターン906~909には、マゼンタインクを吐出する記録ヘッドの一部のノズルに吐出不良が発生し、色抜けが生じている。S1404では、吐出不良ノズルを含む不良領域のノズルチェックパターンの画像データに変更を加え、不良ノズルの吐出の頻度を下げるようにする。具体的には、吐出不良が発生しているインク色(ここではマゼンタ)のノズルチェックパターンの不良領域に対応する記録データを、吐出しない方向に変更する処理を行う。本実施形態では、制御ユニット13が、マゼンタのノズルチェックパターン907におけるマゼンタの吐出データを、1(吐出)から0(非吐出)に変更する。
一方、本処理を上位装置HC2が行う場合、上位装置HC2は、マゼンタのノズルチェックパターン907における画像データの輝度を上げる処理を行う。
本実施形態では、不良領域920に対応する画像データ(画素値)の輝度値dRGBを最高の輝度値に変更する。最高値のdRGBの画像データは白を表しており、この画像データをCMYKへと色分解した場合、C,M,Y,K=0,0,0,0となり、不良領域に対応するノズルからはインクは吐出されない。つまり、不良領域920に対応する複数のノズルのヒータのそれぞれには、それらを駆動するための電気パルスが供給されず、加熱されない。このように不良領域に対応する複数のヒータに電気パルスを供給せずに記録した結果を、図12(b)に示す。図12(b)に示すように、マゼンタのノズルチェックパターン907のうち、不良領域920に対応する部分にはインクが付与されず、記録媒体Pの地色(例えば白)が現れる、いわゆる色抜けの発生した部分W1が形成されている。なお、不良領域920は、前述のように、吐出不良ノズルを含む複数のノズルに対応する領域であるため、図12(b)に示す色抜け部分W1の幅は、図12(a)に示す吐出不良ノズルのみに対応する色抜け部分Wの幅より大きくなっている。
このように、吐出不良領域に対応するノズルのヒータに電気パルスを供給しないようにする。つまり、不良ノズルに供給する電力量を0とする。これにより、吐出不良ノズルにおけるコゲの発生を抑制することが可能になり、ノズルの寿命、延いては記録ヘッド30の寿命を延ばすことが可能になる。
ノズルに発生するコゲは、ヒータの熱によってノズル内に残留している色材などのインク成分が焦げることによって発生するものであり、これは吐出不良ノズルに発生し易い。例えば、ノズル内に気泡が混入しインクが適正に供給されずに吐出不良状態となっているノズルにおいて、ヒータに電気パルスが供給され続けた場合、ヒータの熱によってノズル内が過熱状態となり、コゲが発生しやすい。このコゲは、メンテナンスによって流路内の泡が無くなりインク供給が回復した後も、吐出が不安定になったり、不吐出や吐出方向の異常(ヨレ)等が発生したりする要因となる。本実施形態では、上述のS1404の処理により、不良ノズルへの電気パルスの供給を0にすることにより、ノズルにおけるコゲの発生を抑制することができる。
なお、上記の不良領域の吐出変更処理では、吐出不良が発生した記録ヘッド30に対し、不良領域920に対応するノズルへのパルスの供給を完全に遮断し、不良領域920に対応するノズルから全くインクを吐出させない例を示したが、これに限定されない。例えば、吐出不良が発生した記録ヘッド30に対し、不良領域920に対応するノズルへの電気パルスの供給頻度を、ノズルチェックパターンを形成する際の通常のパルスの供給頻度の1/N(N>1)とすることも可能である。つまり、ノズルチェックパターンの形成領域において、不良領域に対応する部分に対するインクの吐出数(インク滴の数)を、不良領域に対応しない部分に対するインクの吐出数の1/Nにしてもよい。この場合、不良領域に対応する部分の濃度は、他の部分の濃度より低くなる。
なお、本実施形態ではノズルチェックパターンは全ての画像データに配置される。このため、吐出不良ノズルが発生していない場合には、吐出基板同士の重なり部分を除き、その他の部分(非重なり部分)のノズルは、1枚の記録物P’に対して1回以上インクを吐出することとなる。従って、不良領域に対応するノズルの吐出頻度を1/Nにした場合、記録物P’がN枚記録された時に1回以上の電気パルスが供給されることとなる。つまり、正常なノズルで行われる1枚分の吐出数となる。
このように、不良領域に対応するノズルに供給する電気パルスの供給頻度を0とせず、1以下とした場合にも、吐出不良ノズルにおけるコゲの発生を、低減することが可能になる。なお、Nの値は任意に設定可能である。少なくとも通常記録時との比率(1/N)が1.0を下回る値であれば、効果を得ることができる。
また、図3に示すように、隣接する吐出基板が一部重なった状態で配置されている記録ヘッド30では、吐出基板が重なっている部分と、非重なり部分とで、不良領域に対応するノズルの吐出数を異ならせてもよい。図3に示す非重なり部分のノズル縦列(m~p)には2つのノズルが存在し、重なり部分のノズル縦列にはノズルが4ノズル(i~l)存在している。このため、重なり部分に吐出不良ノズルが存在する場合には、不良領域における吐出数は他の領域における吐出数の1/2とし、非重なり部分の吐出不良ノズルが存在する場合には、不良領域における吐出数を1/4とする。これは、吐出不良ノズルが存在していない場合にも、重なり部分における各ノズルの吐出数は、非重なり部分における各ノズルの吐出数の1/2となっているためである。
一般にインクジェット方式の記録装置では、記録動作において吐出が行われていないノズルは大気に曝されているため、乾燥しやすい。ノズル内のインクの溶剤や水分が揮発すると、増粘あるいは固化したインクがノズルに固着し、吐出不良を発生させる可能性がある。そのため、メンテナスが行われているが、これには多くの時間とインクの消費を伴う。よって、ノズルは定期的に吐出を行い、揮発前のフレッシュなインクが通る状態が望ましい。しかし、前述のように吐出不良が発生しているノズルに電気パルスを供給し続けると、焦げが発生する可能性が高まる。これに対し、上記のようにノズルチェックパターンへの電気パルスの供給頻度を0とせず、通常の吐出数より減少させるようにすることにより、ノズル内の焦げが発生する確率を下げ、かつ乾燥による固着を低減するが可能となる。
また、本実施形態では、記録速度や読み取り装置の分解能などを考慮して、ノズル単位ではなく吐出不良ノズルを含む複数のノズルからなる不良領域に対して電気パルスの供給頻度の制御を行っている。このため、不良領域内には正常なノズルも含まれている可能性があるが、前述のように、不良領域に対応するノズルに対する電気パルスの供給を完全に遮断せずに減少させることにより、正常なノズルの乾燥による固着も低減することが可能となる。
なお、ノズル内の小さい泡によりインク供給がされず、吐出不良が発生している場合がある。この場合、時間と共に泡が消え、インク供給がされて吐出性能が回復することがある。従って、検査ユニット9A等により不良領域における濃度を監視し、検出した濃度が継続して予定の濃度になった場合には、不良領域に対応するノズルへの制御を解除し、当該ノズルを通常の吐出動作に戻すようにしてもよい。この場合、上位装置HC2において、図11(a)のような初期の面付け状態に戻して記録を行ってもよい。これによれば、継続して不良領域に対応するノズルの吐出数を減少させる場合に比べ、さらにノズルの乾燥やインクの固化などを低減させることが可能である。
また、記録ヘッドのノズルに生じる吐出不良には、インクがノズルから吐出されない不吐出の他に、インクの吐出方向に異常が生じる、ヨレと称する現象も含まれる。吐出不良が不吐ではなく、ヨレであった場合、本来インクが打たれるはずだった場所とは他の場所へインクが着く(着弾する)事になる。異常な吐出方向へ吐出した先が、正常なノズルが打ったインクが着弾している場所の可能性があり、その場所には想定の2倍のインク量が打たれることになる。過剰なインク量は滲みや紙への転写不良を引き起こし、転写体を汚してしまう原因になり得る。また、転写体を用いず、ノズルから記録用紙へ直接記録する記録装置においても、想定以上のインク量は用紙のインク受容体で吸収しきれず、インクが溢れてしまう可能性がある。溢れたインクは機械や別の記録物を汚す原因となり得る。
本実施形態では、ヨレが発生するノズルに対してもS1104の処理を行うことにより、吐出頻度を下げることにより、記録装置や他の記録物を汚す確率を減らすことができ、これにより、上述のヨレによって生じる種々の不都合を低減することが可能になる。また、吐出不良がヨレであると判断した場合、予備吐出やノズルチェックパターンなど画像形成領域以外のノズルへの電気パルス供給頻度を減少させるが0にはしない。つまり、ノズルへの電力量を0にはせず、通常の電力量より減少させる。これにより、ノズルの乾燥によるインクの固着を低減することができる。
なお、ヨレは、読み取り画像などより検出することができる。例えば、読み取り画像上のある1ノズル分が薄くなっており、その近辺のある場所が濃くなっている場合、本来インクが着弾するはずだった場所とは異なる場所に着弾している。これにより、薄くなった部分のノズルがヨレを起こしていると判断できる。加えて、薄くなっている場所があるが、濃くなっている場所がない時は吐出不良と判断することができる。また、ヘッドの温度の監視から不吐出ではないが、読み取り画像上のある1ノズル分が薄くなっている場合もヨレと判定できる。さらに、赤外線や可視光のセンサーを備えておき、ノズルの吐出が正常であるかを光学的に調べることによってもヨレが発生しているノズルを特定することができる。
以上のS1404の処理を終えると、処理はステップS1405へと進む。S1405では、S1404の処理により実施されたことを受けて、記録動作継続を示す信号をRAM203に格納する。そして、図11のフローチャートの処理を終了する。
なお、前述のS1402における判定結果がNoであった場合には、S1406に移行して記録動作を停止させると共に、記録動作停止の信号をRAM203に格納する。これは、画像形成領域を移動させても不良領域を避けることができず、欠陥のある記録物P’を記録することになるため、後に記録動作が行われることを避けるためである。記録動作の停止後は、図14のフローチャートの処理を終了する。
図14の処理が終了した後、図13のS1307では、再面付け後の画像データがある場合、当該画像データをレンダリングする。そして、S1307の処理が終了すると、S1308へ移行する。S1308では、前述S1405においてRAM203に格納された信号に基づき、記録動作を継続するか否かの判定を上位装置HC2が行う。ここで記録動作継続の信号がRAM203に格納されていた場合、上位装置HC2はレンダリングされた画像データを制御ユニット13に送信する。また、上位装置HC2は、断裁位置など、後工程で必要となる情報を作成し、画像データIDと共に後工程140における断裁機141に送信する。これにより、断裁機141は、画像形成領域を移動させた後の新たな断裁位置に従って記録物P’を断裁することができる。
なお、図12(b)のように、画像形成可能範囲901内で不良領域920と重ならない位置に画像形成領域が配置されている場合、記録媒体と画像形成領域が同一であれば、以降に入力される元画像データについても画像形成領域を同様に移動させることができる。従って、以降の他の元画像データにおいても同じレイアウトで面付けを行うことができ、面付けのための演算処理は不要となる。
S1308において記録動作を継続する旨の判定がなされた場合、処理はステップS1302へ移行し、記録動作が行われる。この際、不良領域に対応するヒータへの電気パルスの供給頻度は、S1307の再面付け処理及びS1404の吐出変更処理によって減少している。このため、不良領域に対応するノズルにコゲが発生する可能性は低減される。また、記録動作継続の信号がRAM203に格納されていた場合、処理はS1308からS1310へと移行する。
S1310では、メインコントローラ13Aが記録動作を停止させると共に、操作部133のタッチパネルに記録動作を停止した旨の表示を行い、ユーザーに伝える。ここで、図13のフローチャートに示す一連の処理は終了となる。
記録動作の停止後は、不良領域に発生した不良を解消させるためのメンテナンスをユーザー操作で行い、再記録が行われる。なお、自動でメンテナンスを行い、再記録が行われるようにしてもよい。これによれば、ユーザーの手間を低減することができる。
また、S1309では、後工程140として断裁機141による断裁が行われる。後工程では記録された記録物P’を断裁し、画像形成領域内の画像を成果物とする。上述のように後工程140の断裁機141には、画像データIDおよび後工程で必要な情報が上位装置HC2から送信されている。そのため、画像形成領域が移動した場合も、正しく処理を行うことが可能である。例えば、画像形成領域の移動により、断裁位置が変更になった場合にも正しい位置で断裁が可能となる。
上記のように本実施形態では、画像形成領域を記録する際には、不良領域を避けて再面付けを行うことにより、吐出不良ノズルのヒータに対する電気パルスの供給を停止させる。また、ノズルチェックパターンを記録する際には、吐出不良ノズルのヒータに対する電気パルスの供給を減少させる。このようにして吐出不良ノズルに供給される電力量を減少させることにより、吐出不良ノズルにおける焦げの発生を低減することが可能になる。また、本実施形態では、成果物として使用されないノズルチェックパターンの形成時には、不良領域に対応する複数のノズルに対する電気パルスの供給を完全には停止させず、少数のパルスを供給する。これにより、不良領域に存在する吐出不良ノズルではインクを流動および気泡の消失を促進することができ、また正常ノズルにおいてはインクの吐出を行うことができる。このため、不良領域に存在する吐出不良ノズルおよび正常ノズルにおいてインクの乾燥および固化を抑制することが可能になる。
さらに、不良領域を避けて画像形成領域を面付けすることにより、成果物に色抜け等の画像劣化が生じることはなくなる。また、吐出不良の発生に起因する記録ヘッドの交換やメンテナンス等の頻度を低減しつつ継続して記録動作を行うことが可能になり、画像の微妙な色変化の発生を抑制することが可能になると共に、生産性およびランニングコストを向上させることが可能になる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
上述の第1実施形態では、不良領域と重ならない位置に画像形成領域を移動可能か否かの判定(S1402)を行った。これに対し、本実施形態では、画像形成領域内の記録画像(インク像)と不良領域とが重ならない位置に画像形成領域を移動可能か否かを判定し、その判定結果に基づいて記録動作を継続するか記録動作を停止するかを決定する。
図16は、吐出不良ノズルが発生した際に、その吐出不良ノズルを含む不良領域と画像形成領域を移動させる処理を説明するための図である。図16(a)において、1301は本実施形態の画像形成可能領域に相当する。1302は本実施形態の画像形成領域を表している。大文字のアルファベット「ABCD EFGH」1303は、マゼンタインクとイエローインクを使って赤色で記録される記録画像(インク像)である。小文字のアルファベット1304はブラックインクのみで記録される記録される記録画像(インク像)である。破線1305で表される矩形の領域は図13のS1306において決定された不良領域である。本例では、マゼンタインクを吐出する記録ヘッドの中に吐出不良ノズルが存在しており、当該吐出不良ノズルを含む複数のノズルが不良領域に対応している。1306~1309はそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクのノズルチェックパターンである。
画像形成領域1302内の記録画像を形成する場合には、本実施形態においても、吐出不良ノズルを含む記録ヘッドの不良領域に対応するノズル(本例では、マゼンタインク吐出用のノズル)には、電気パルスは供給しないようにする。従って、画像形成領域1302と不良領域1305とが図16(a)に示す位置関係にある状態で、そのまま記録を行った場合、図16(b)に示すように、マゼンタを使用する大文字アルファベット1303の部分に欠陥(色抜け)が生じる。
前述のように、第1実施形態においては、画像形成可能領域901をはみ出さない範囲内で画像形成領域を移動して不良領域との重なりを回避可能であるかを判定している。これに対し、図16(a)に示す例では、画像形成可能領域1301の範囲内で、画像形成領域1302をどのように移動させても、画像形成領域1302と不良領域1305との重なりを回避することはできない。
そこで、本実施形態では、色分解後の画像データを取得し、吐出不良が生じているマゼンタインクを用いて記録を行う位置と不良領域1305とが重ならないように画像形成領域を画像形成可能領域1301の範囲内で移動させることが可能かを判定する。
図15に示す処理フローと同様に、画像形成領域1302を1画素ずつY方向へ移動させつつ、不良領域1305とマゼンタインクを使用する記録画像1303との重なりが回避可能であるかを判定する。本実施形態と第1実施形態とが異なる点は、S1504の処理では、画像形成領域と不良領域とが重なっていないかを判定するのに対し、本実施形態では色分解後のマゼンタの記録画像(インク像)が不良領域1305と重なっていないかを判定する点にある。
図16(c)は、マゼンタインクを使用する記録画像1303と不良領域1305との重なりを回避できる回避位置に画像形成領域を移動させた1つの例を示す図である。ここでは、画像形成領域1302を+Y方向へと移動させることにより、マゼンタインクを用いる大文字のアルファベット1303が、不良領域1305と重ならないように配置されている。一方、小文字のアルファベット1304は不良領域と重なっているが、マゼンタインクを使用しないため、適正に画像を記録することができる。
図16(c)に示すマゼンタのノズルチェックパターン1307は、第1実施形態と同様に、マゼンタのノズルチェックパターン1407におけるマゼンタの吐出データを、1(吐出)から0(非吐出)に変更する。また、本処理を上位装置HC2が行う場合は、画像データの画素値を白(R,G,Bを最高値)にし、不良領域に対応するマゼンタインク吐出用のノズルへの電気パルスの供給頻度を0にする。すなわち、電気パルスの供給を行わないようにしている。但し第1実施形態と同様に、吐出不良が発生しているインク色(ここではマゼンタ)のノズルチェックパターンを記録する場合、不良領域1305に対応するノズルへの電気パルスの供給頻度は、0に限定されない。吐出変更処理を行う前の吐出頻度に対して1.0未満の吐出頻度にすれば、コゲの発生を抑制する効果が得られる。
以上のように本実施形態においては、画像形成領域内の記録画像およびノズルチェックパターンの記録において、吐出不良ノズルへの電気パルスの供給頻度を0とする、あるいは低減することにより、吐出不良ノズル内の焦げの発生を抑制することが可能である。
また、画像形成領域内の記録画像と不良領域とが重ならない位置に画像形成領域を移動させて記録動作を行うため、画像形成領域単位で不良領域を回避する場合よりも移動の距離を小さく抑えることができる。このため、不良領域を回避し得る可能性が高まり、その結果、記録動作を継続し得る可能性が高まる。すなわち、記録ヘッドの交換およびメンテナンス等の頻度をさらに低減することが可能になり、画像の微妙な色変化の発生をより抑制することが可能になると共に、生産性およびランニングコストをさらに向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態においても上記実施形態との相違点を中心に説明する。
上記の第1、第2実施形態では、記録画像に変更を加えてノズルへの電気パルスの供給頻度を低減する例について説明した。すなわち、上記実施形態では、吐出不良が発生したノズルで記録されるノズルチェックパターンにおいて、不良領域に対応する画像データを白または濃度の薄いマゼンタへと変更する例について説明した。
これに対し、本実施形態では、図5に示す記録制御部15Aにおいて不良領域に対応するノズルへの電気パルスの供給頻度を低減させる制御を行う。従って、図14のS1404における不良領域の吐出変更の処理において、ノズルチェックパターンを表す画像データの輝度を変更する処理は行わない。代わりに、記録制御部15Aに、不良領域の位置、吐出不良色(マゼンタ)、および電気パルスの供給頻度の減少率(1/N)を伝える。ここで減少率とは、ノズルチェックパターンの形成時において、吐出不良が発生していないノズルへの電気パルスの供給頻度と、不良領域に対応するノズル対する電気パルスの供給頻度との比率を意味する。
記録制御部15Aは、図7のS707の2値化処理において、不良領域に対応するノズルの吐出頻度を下げる処理を行う。例えば、不良領域のマゼンタの電気パルスの供給頻度を1/2にする場合、不良領域に対応するノズルに関してはdCMYK’’’のマゼンタの値を確率的に1/2にする。確率的に1/2とは、例えば、値が0の時には0として扱い、値が1の時にはランダムで50%は1、50%は0として扱う。そして、値が2の時には1として扱う。
他の例として、吐出頻度を1/Nにする場合、ハーフトーン処理S706において初期値の誤差を0とし、dCMYK’’’の値に1/Nを掛け、その数値に既にハーフトーン処理が終了した隣接画素で発生した誤差を足す。その整数部を新たなdCMYK’’’として扱い、小数点以下を誤差に加える。このようにして誤差を次のX方向における画素値に分配することで確率的に電気パルスの供給頻度を1/Nにすることが可能である。
また、不良領域に対応するノズルの全てのインクについて、ノズルへの電気パルスの供給頻度を下げるようにしてもよい。これにより、2値化処理を行う記録制御部15Aへ、不良領域の位置のみを伝えればよくなり、制御が容易になる。
他の例として、不良領域のノズルへの電気パルスの供給頻度を(例えば1/Nに)下げるような制御を、以下の処理のいずれか、あるいは上記2値化処理や画像データの生成などを含む複数箇所で行ってもよい。
図7のS703のインク色分解、S704のガンマ補正、S705のヘッドシェーディングのいずれかで行ってもよい。LUTを参照してdCMYKを出力する際、不良領域における吐出不良色(マゼンタ)についてはdCMYKの値に1/Nを乗じた値を出力とする。あるいは、1/Nの値を出力をするLUTを予め用意し、不良領域における吐出不良色は該LUTを参照するようにしてもよい。
また、S706のハーフトーンの処理で行ってもよい。不良領域における吐出不良色については、比較する閾値マトリクスの値をN倍にすればよい。あるいは、出力された多値に1/Nを乗算し、それを出力としてもよい。
なお、上記の処理方法においては、図7のフローチャートの下流に行く程、吐出するドット数との相関が高くなるため、ノズルへの電気パルスの供給頻度をより正確に低減することが可能である。
以上のように本実施形態では、チェックパターン形成において、画像処理の下流側に位置する記録制御部15Aにおいて電気パルスの供給頻度を減少させる処理を行う。これにより、より正確に不良領域に対応するノズルへの電気パルスの供給頻度を減少させることが可能となり、ノズルの焦げをより確実に低減することが可能になる。また、不良領域に対応するノズルへの電気パルスの吐出頻度を0とせずに減少させるようにすれば、ノズル内のインクの乾燥、固化を抑制することが可能になる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を説明する。本実施形態においても上記実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第1~第3実施形態では、図1に示すように、記録ヘッド30から転写体2へとインクを吐出してインク像を形成し、そのインク像を転写体2から記録媒体Pに転写することによって画像を記録するものとなっている。これに対し、本実施形態における記録装置は、記録ヘッドから記録用紙に直接インクを吐出して記録を行う。また、上記実施形態では、ノズルチェックパターンを形成する際のインクの吐出動作が、ノズル内の吐出性能の維持・回復を行う予備吐出を兼ねている。これに対し、本実施形態では、ノズルチェックパターンを全ての記録媒体には形成せず、所定の複数枚毎に記録媒体へノズルチェックパターンを形成し、これを読み取ることによって吐出不良ノズルを特定する。そして、ノズルチェックパターンを形成しない記録媒体への記録動作では、記録ヘッドの下方に対向して設けられた予備吐溝に対して予備吐出を行う。
上記のように構成された本実施形態の記録装置では、ノズルチェックパターンが形成されない記録媒体の記録動作が終了する毎に、記録ヘッドの全ノズルが予備吐溝に対して予備吐を行う。これによりノズルにフレッシュなインクが通過し、ノズル内のインクの乾燥・固化を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1実施形態のように、ノズルチェックパターンの画像データに対する変更処理(S1404)は実行しない。代わりに、ノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいて求めた不良領域に対応するノズルの位置、吐出不良色、電気パルスの供給頻度の減少率(1/N)等の情報を記録制御部15Aに送信する。
ノズルチェックパターンを記録しない記録媒体の1枚分の記録動作が終了すると、記録ヘッド30は、記録制御部の命令に従って予備吐溝に対し予備吐出を行う。このとき、吐出不良ノズルが存在する記録ヘッドの中の不良領域に対応するノズルについては、電気パルスの供給頻度が1/Nになるように制御する。これにより、予備吐溝に予備吐出動作を行う場合にも、吐出不良ノズルにおけるコゲの発生を抑制することができる。また、不良領域に対応するノズルにおいて少量の吐出を行うようにすれば、ノズル内のインクの乾燥・固化を抑制することが可能になる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を説明する。本実施形態においても上記実施形態との相違点を中心に説明する。
上記実施形態では、フルライン型の記録装置を例に採り説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、記録媒体を所定方向へと間欠的に移動させると共に、記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と交差する方向に往復走査させながらインクを吐出することにより、記録媒体上に画像を記録するシリアル型の記録装置にも本発明は適用可能である。
図17(a)は、シリアル型の記録方式を説明するための図である。記録ヘッド1501は、複数の異なるインクに対応した複数のノズル列が形成されている。本実施形態では、シアンインクを吐出するシアンノズル列1511、マゼンタインクを吐出マゼンタノズル列1512、イエローインクを吐出するイエローノズル列1513、ブラックインクを吐出するブラックノズル列1514がY方向に沿って並設されている。各ノズル列には等間隔に複数のノズルがY方向と直交するX方向に沿って配列されており、各ノズルから記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行う。
記録制御部の制御によって、記録ヘッド1501は、記録媒体P上をY方向(例えば+Y方向)に沿って走査しつつインクを吐出し、記録媒体Pへの記録を行う。記録ヘッド1501の移動経路の端部には、回復ユニットが設けられている。記録ヘッド1501が移動経路の端部に達すると、記録ヘッド1501は回復ユニット上に位置する。チェックパターンを記録しない場合、記録ヘッド1501の各ノズルは、回復ユニットに対する予備吐出を記録制御部の制御によって行う。
次に、記録媒体Pの搬送手段は、搬送制御部の制御によって、記録媒体PをX方向へと所定量搬送させる。記録媒体が所定量搬送されると、記録ヘッド1501は再び記録媒体P上をY方向(例えば-Y方向)へと走査しながらインクを吐出して記録を行う。以上のように、シリアル型の記録装置は、記録媒体の間欠的な搬送動作と、記録ヘッドの走査とを繰り返しながら記録媒体Pへの記録を行う。なお、本例では、記録ヘッドのX方向における幅に相当する領域の画像を、記録ヘッドの1回の走査によって完成させる所謂1パス記録方式を示している。
図17(b)は、記録ヘッド1501のシアンノズル列1511において、1503の位置に存在するノズルに吐出不良が発生した場合を表している。この吐出不良が発生した記録ヘッド1501で記録動作を行った場合、図中の破線1505で示す領域には色抜け等の画像劣化が生じる。
また、図17(b)において、1504は、記録媒体P上に設定される画像形成領域を示し、1504は、記録ヘッドの中に発生した吐出不良ノズルを含む複数のノズルに対応する不良領域を示している。本例の場合、不良領域1505が画像形成領域1504に重なっていない。そのため、この状態では記録動作を続行する。記録ヘッド1501が移動経路の端部に達すると、記録ヘッド1501は回復ユニット上に位置する。その際、通常であれば全てのノズルが回復ユニットに対して予備吐出を行うが、本実施形態では、吐出不良ノズルを含むシアンノズル列1511のうち、不良領域1505内のノズルに対する電気パルスの供給頻度を0にするか、あるいは減少させる。このため、予備吐出により発生する熱を低減することができ、吐出不良ノズルにおけるコゲの発生を抑制することが可能になる。
なお、吐出不良ノズルおよび不良領域は、別紙にノズルチェックパターンを記録し、それを検査ユニットによって光学的に読み取り、第1実施形態と同様の処理を行うことによって特定することができる。また、不良領域が画像形成領域に重なる場合には、第1実施形態と同様に不良領域を避けて画像形成領域を再面付けしてもよい。
また図18に、他の記録方式を用いて記録動作を行う例を示す。
図18(a)においても、図17(b)と同様に、シアンノズル列1511の中の1503の位置にあるノズルに吐出不良が発生した場合を示している。
図17(a)において説明したように、記録ヘッド1501の移動と記録媒体Pの移動とを繰り返すことにより記録を行うと、不良領域1505は記録媒体P上を多数回通過することとなる。この場合、記録制御部は、記録ヘッド1501におけるノズルの中の吐出不良が生じていないノズル群1507のみを使用する制御を行う。ここでは説明を簡単にするため、ノズル群1507は各ノズル列の全体の長さの半分の長さとする。また、搬送制御部は搬送手段を制御して、ノズル群1507の長さに相当する搬送距離だけ搬送を行う。
以上の制御により記録動作を行った場合の、記録ヘッドと記録媒体Pとの位置関係を図18(b)に示す。図18(a)に示す例では、記録媒体Pの1回の搬送距離が、図17(a)に示す例の1/2になっている。また、記録媒体に対する記録ヘッド1501の走査回数は、図17(a)に示す例の2倍になっている。このようにして記録ヘッド1501の走査と記録媒体Pの搬送動作を行いながら、記録ヘッドのノズル群1507からインクを吐出し、記録媒体Pへの記録を行う。
また、記録ヘッド1501が回復ユニット上に達したときには、前述のように回復ユニットに対して予備吐出を行う。この際、吐出不良ノズルを含む吐出口列(シアンノズル列1511)における不良領域1503内のノズルに対する電気パルスの供給頻度は、0とするかあるいは低減させる。これにより、図18に示すような記録方式によって記録動作を行う場合にも、予備吐時に吐出不良ノズル内にコゲが発生する可能性を低減することができる。
なお、以上の説明では説明を簡単にするため、ノズル群1507の長さは、各ノズル列の全体の長さの半分の長さとし、このノズル群1507のみを使用する例を示したが、これに限定されない。例えば、ノズル列の中の連続した2/3のノズルからなるノズル群に吐出不良がない場合、そのノズル群を用いて記録を行うようにすることも可能である。なお、この場合には、1回の記録媒体の搬送距離も使用するノズル群の長さに相当する長さに設定すればよい。これによれば、ノズル列の1/2のノズルを使用する場合に比べて、高速に記録することが可能になる。
また、記録媒体上の同一の箇所に対して記録ヘッドの中に設定した異なるノズル群を複数回通過させながら記録を行うマルチパス方式での記録の場合、吐出不良ノズルのみ使用せず、他のタイミングで他のノズルにより記録を行うことも可能である。この場合、予備吐出動作においては、吐出不良ノズルに対する電気パルスの供給頻度を0または1未満に低減させる。これによれば、マルチパスによる画質向上の効果および吐出不良ノズルの補完の効果に加え、吐出不良ノズルにおけるコゲの発生を抑制する効果も得られる。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態を説明する。本実施形態においても上記実施形態との相違点を中心に説明する。図19(a)において、1602~1605は画像形成領域を示し、1606は上述の実施形態と同様に設定した不良領域を示している。
第1実施形態では、S1402において画像形成領域を移動して不良領域との重なりを回避可能かを判定し、回避できないと判定した場合には、記録動作を停止した。例えば、図19(a)のように、不良領域1606に重なっている画像形成領域1603および1605にあっては、これらを画像形成可能領域1601内で移動させても不良領域1606との重なりを回避することはできない。このような場合、第1実施形態では記録動作を停止させる処理を行う。
これに対し本実施形態では、画像形成領域1603を移動させても不良領域1606との重なりを回避できない場合、以下のような処理を行う。すなわち、第1実施形態と同様に、図14のS1402の処理を行い、画像形成領域1603、1605と不良領域1606との重なりを回避できないとの判定が下されたとする。この場合、上位装置HCはS1403において、画像形成領域1603、1605を、画像形成領域1601、1604とは異なる記録媒体に配置する処理を行う。具体的には、図19(b)、(c)に示すように、画像形成領域1602、1604は記録媒体1601B1に配置し、画像形成領域1603、1605は記録媒体1601B2に配置するように画像データを作成する。そして、メインコントローラ13Aへ該画像データを送る。さらに、作成した画像データに関する情報は後工程(例えば断裁機)へも送信する。これにより後工程では、記録物P’に対して適正な処理を行うことが可能になる。例えば、後工程で光沢処理や断裁処理を行う場合には、記録物P’に対し適正な位置に光沢処理あるいは断裁処理を施すことが可能になる。なお、画像形成領域を複数の記録媒体に分けて記録しても不良領域を回避不可能な場合、処理はS1402からステップS1406へ進み、記録動作停止の命令を出す。
このように本実施形態によれば、画像形成領域を複数の記録媒体に分けることにより、不良領域と画像形成領域との重なりを回避することができる。不良領域と画像形成領域との重なりがなくなることにより、画像形成領域内の画像を色抜け等の欠落を生じさせることなく適正に記録することが可能になると共に、不良領域への電気パルスの供給頻度を低減することが可能になる。また、図19には示していないが、記録媒体Pの余白などにノズルチェックパターンを記録し、それを検査ユニットによって光学的に読み取ることにより、吐出不良ノズルを検出することができる。不良ノズルを検出した後は、第1実施形態と同様に不良領域を定め、第不良領域に対する電気パルスの供給頻度を低減させる。これによれば、画像形成領域における記録動作とノズルチェックパターンの記録動作の双方において、電気パルスの供給頻度を0にするか、あるいは低減させることが可能になり、吐出不良ノズルにおけるコゲの発生を抑制することが可能になる。加えて、回復ユニットによるインク吸引等のメンテナンスを行うことなく記録動作を継続できるため、成果物の微小な色変化の発生を軽減することが可能になる。
[他の実施形態]
上述の実施形態では、ノズルチェックパターンや予備吐溝への吐出に対して電気パルスの供給頻度を低減させたが、これに限定されない。例えば、記録媒体P全体におよそ均等に予備吐出を行う紙面内予備吐出においても、不良領域については吐出命令である電気パルスの供給の頻度を低減させることでノズル内のコゲの発生を抑制することができる。
また、第1実施形態では記録物P’に形成されたノズルチェックパターンを読み取ったが、他の方法を用いることも可能である。例えば、転写体2を撮像可能なカメラを設置し、このカメラによって転写体2上に記録されたノズルチェックパターン等のインク像を読み取ることによって吐出不良ノズルの検出を行うようにしてもよい。この場合、さらに記録媒体P’に記録されたノズルチェックパターンを読み取るようにすれば、吐出不良か、それ以後のプロセスの異常(例えば転写不良や記録媒体の傷)かを判断することが可能になる。例えば、転写体2上のインク像には存在していなかった色抜けが記録媒体P’上に存在する場合、この色抜けの原因がノズルの不吐ではないと判断することができる。
また、不良領域について低減する吐出命令の頻度を、インク毎に変えても良い。インクは、使用する溶剤や濃度によって乾燥のしやすさに差が生じる場合がある。このため、乾燥しにくいインクを吐出するノズルが吐出不良である場合、電気パルスの供給頻度を低減したり0にしたりする。逆に、乾燥しやすいインクを吐出するノズルが吐出不良である場合、電気パルスの供給頻度の減少率を小さくする。
また、インクの粘度が高く、焦げ付きやすいインクを吐出するノズルが吐出不良である場合、電気パルスの供給頻度をより低減したり0にしたりする。反対に、粘度が低く、焦げ付きにくいインクのノズルが吐出不良の場合、電気パルスの供給頻度の減少率を小さくしてもよい。このように、電気パルスの供給頻度を下げる割合を吐出不良のノズルのインクの特性によって決定するようにしてもよい。これによれば、各インクの特性に合った処理が可能となり、ノズルにおけるコゲや固着の発生を抑制する効果はさらに向上する。
上記第1実施形態では、記録媒体P’上に画像形成領域とノズルチェックパターンを配置したが、これに限定されない。例えば、1枚は画像形成領域を記録し、次の1枚にはノズルチェックパターンや色を確認する測色用チャートなどを記録する場合にも、上記実施形態において述べた電気パルスの供給頻度を制御するようにして同様の効果を期待できる。
また、ロール紙などに連続して記録を行う場合にも同様の効果が得られる。複数あるいは単数の画像形成領域の間に、ノズルチェックパターンなど予備吐出としての効果があるパターンを記録する場合、不良領域への電気パルスの供給頻度を下げることで、同様の効果を得ることができる。
上記実施形態では、記録ユニット3が複数の記録ヘッド30を有するが、一つの記録ヘッド30を有し、単色で記録してもよい。
記録媒体Pの搬送機構は、ローラ対によって記録媒体Pを挟持して搬送する方式等、他の方式であってもよい。ローラ対によって記録媒体Pを搬送する方式等においては、記録媒体Pとしてロールシートを用いてもよく、転写後にロールシートをカットして記録物P’を製造してもよい。
上記実施形態では、転写体2を転写ドラム41の外周面に設けたが、転写体2を無端の帯状に形成し、循環的に走行させる方式等、他の方式であってもよい。
また、本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
30 記録ヘッド
n ノズル
P 記録媒体
9A 検査ユニット
13 制御ユニット
HC2 上位装置

Claims (17)

  1. 電気熱変換素子を有するノズルを複数備え、前記電気熱変換素子の発熱によって前記ノズルから所定のインク吐出を行うことにより記録媒体への記録を行う記録手段と、
    前記電気熱変換素子の発熱によって前記所定のインク吐出が正常に行われない吐出不良ノズルを複数の前記ノズルの中から検出する検出手段と、
    前記電気熱変換素子の発熱によって前記所定のインク吐出が正常に行われる正常ノズルの前記電気熱変換素子に供給する通常の電力量より前記吐出不良ノズルの電気熱変換素子に供給する電力を減少させる制御手段と、
    を備えることを特徴とする記録装置。
  2. 前記制御手段は、前記吐出不良ノズルの前記電気熱変換素子に供給する電力量を0にすることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記制御手段は、前記吐出不良ノズルの前記電気熱変換素子に供給する電力量を0にせずに、前記通常の電力量より減少させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  4. 前記制御手段は、前記吐出不良ノズルが不吐出ではない場合に当該吐出不良ノズルの電気熱変換素子に供給する電力量を0にせずに前記通常の電力量より減少させることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
  5. 前記記録手段は、前記記録媒体内に配置される少なくとも1つの画像形成領域と、当該画像形成領域の外側に配置されるノズルチェックパターンとに対応する画像データに基づいて記録を行い、
    前記制御手段は、前記画像形成領域への記録において前記吐出不良ノズルの前記電気熱変換素子に供給される電力量を0にし、前記ノズルチェックパターンの記録と予備吐出の少なくとも一方において前記吐出不良ノズルの前記電気熱変換素子に供給される電力量を前記通常の電力量より減少させることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
  6. 前記制御手段は、
    前記検出手段によって検出された前記吐出不良ノズルによって画像が形成される領域を含む不良領域を特定する不良領域特定手段と、
    前記不良領域と前記画像形成領域との重なりを回避し得る回避位置へと前記画像形成領域を移動させる面付け手段と、
    を備えることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
  7. 前記ノズルチェックパターンの記録および予備吐出の少なくともいずれか一方において前記不良領域に対応するノズルの前記電気熱変換素子に供給される電力量を前記通常の電力量より減少させることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
  8. 前記面付け手段は、前記記録媒体への記録を可能とする画像形成可能領域内に前記回避位置が存在する場合には、当該回避位置へと前記画像形成領域を移動させ、
    前記制御手段は、前記画像形成可能領域内に前記回避位置が存在しない場合には前記記録手段による記録を停止させるための処理を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の記録装置。
  9. 前記面付け手段は、前記記録媒体への記録を可能とする画像形成可能領域内に複数の画像形成領域が存在する際に、前記不良領域と重なる画像形成領域を他の画像形成領域と重なることなく前記不良領域から回避できる回避位置が前記画像形成可能領域内に存在する場合には、当該回避位置へと前記画像形成領域を移動させ、
    前記制御手段は、前記画像形成可能領域内に前記回避位置が存在しない場合には前記記録手段による記録を停止させるための処理を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の記録装置。
  10. 前記面付け手段は、前記記録媒体への記録を可能とする画像形成可能領域内に複数の画像形成領域が存在する際に、前記不良領域と重なる画像形成領域を他の画像形成領域と重なることなく前記不良領域から回避できる回避位置が前記画像形成可能領域内に存在する場合には、当該回避位置へと前記画像形成領域を移動させ、前記画像形成可能領域内に前記回避位置が存在しない場合には前記複数の画像形成領域を異なる記録媒体に分けて配置することを特徴とする請求項6または7に記載の記録装置。
  11. 前記制御手段は、前記吐出不良ノズルの前記電気熱変換素子に供給する電力量を前記通常の電力量より減少させる比率を、前記吐出不良ノズルに供給されるインクの特性により決定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
  12. 前記制御手段は、前記吐出不良ノズルに供給されるインクとは異なる種類のインクを吐出するノズルの前記電気熱変換素子に供給する電力量を前記通常の電力量より減少させないことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の記録装置。
  13. 前記ノズルの電気熱変換素子に供給される電力量は、当該電気熱変換素子に供給される電気パルスの供給頻度に対応し、
    前記制御手段は、前記吐出不良ノズルに供給する電気パルスの供給頻度を前記正常ノズルに供給する電気パルスの供給頻度より減少させることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の記録装置。
  14. 前記記録媒体を所定の搬送方向へと搬送する搬送手段をさらに備え、
    前記記録手段は、前記搬送方向と交差する方向に沿って複数の前記ノズルを配置してなるフルラインヘッドを備えることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の記録装置。
  15. 前記記録媒体を所定の搬送方向へと搬送する搬送手段をさらに備え、
    前記記録手段は、前記搬送方向に沿って複数の前記ノズルを配置してなる記録ヘッドを前記搬送方向と交差する方向に沿って移動させつつ前記ノズルからインクを吐出させて記録を行うことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の記録装置。
  16. 電気熱変換素子を有するノズルを複数備え、前記電気熱変換素子の発熱によって前記ノズルから所定のインク吐出を行うことにより記録媒体への記録を行う記録工程と、
    前記電気熱変換素子の発熱によって前記所定のインク吐出が正常に行われない吐出不良ノズルを複数の前記ノズルの中から検出する検出工程と、
    前記電気熱変換素子の発熱によって前記所定のインク吐出が正常に行われる正常ノズルの前記電気熱変換素子に供給する通常の電力量より前記吐出不良ノズルの電気熱変換素子に供給する電力を減少させる制御工程と、
    を備えることを特徴とする記録方法。
  17. コンピュータに請求項16に記載の記録方法における各工程を実行させるためのプログラム。
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