JP2023020971A - 乳製品の劣化臭マスキング剤、及びその応用 - Google Patents

乳製品の劣化臭マスキング剤、及びその応用 Download PDF

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Abstract

【課題】乳製品について光曝露及び/熱曝露に起因する劣化臭のマスキング剤、当該マスキング剤を含有する乳製品、劣化臭がマスキングされてなる乳製品の製造方法、及び乳製品について劣化臭をマスキングする方法を提供する。【解決手段】スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を乳製品劣化臭マスキング剤として用いる。【選択図】なし

Description

本発明は乳製品の劣化臭のマスキング剤に関する。また本発明は、当該マスキング剤を含有することで、劣化臭がマスキングされてなる乳製品に関する。さらに本発明は、劣化臭がマスキングされてなる乳製品の製造方法、及び乳製品について劣化臭をマスキングする方法に関する。
乳製品、特にヨーグルト、及び発酵乳等に代表される酸乳製品は、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラル等を含有し、栄養学的にバランスがよく、更にその良好な嗜好性から広く消費されている。
これらの乳製品には、例えば、光透過性容器に充填された状態で、小売店等でショーケースに陳列され、長時間強い光に曝された場合、乳中に含有しているリボフラビンが光の照射により励起され、それに伴い、メチオニン、システイン等の含硫化合物の酸化が連鎖的に促されて、光劣化によるオフフレーバー(すなわち、光劣化臭)が発生し、乳製品の香りが著しく劣化するといった、劣化臭発生の問題があった。
そのため、前記劣化臭成分の発生を抑制する技術として、乳含有酸性飲料にL-アスコルビン酸、コレカルシフェロール及びフラボノールから選ばれた少なくとも2種以上を含有させる技術(特許文献1)、乳含有酸性飲料にルチン、モリン又はケルセチンのうち1種あるいは2種以上を添加する技術(特許文献2)、並びに、乳又は乳製品にエピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、クロロゲン酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、ロズマリン酸及び没食子酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する技術(特許文献3)等が提案されている。また、前記劣化臭をマスキングする技術として、1,3-オクタンジオール、5-オクテン-1,3-ジオール及びジメチルメトキシフラノンよりなる群から選ばれる化合物の1種以上を乳製品に配合する技術(特許文献4)等が提案されている。
しかしながら、特許文献1~3に記載された技術においては、乳含有製品の劣化臭成分の発生に対する抑制効果は認められるものの、その抑制効果は完全なものではないことから、光照射の履歴、及び条件によっては劣化臭の発生は避けられず、更なる改善が求められていた。一方、劣化臭の主たる原因物質は、通常、前記の含硫化合物に留まらず、その他の化合物も含む混合物であることから、特許文献4に記載された乳製品の劣化臭をマスキングする技術においては、そのマスキング効果はまだ十分でなく、より汎用的、かつ、より効果的なマスキング技術の提供が求められていた。
特開平3-272643号公報 特公平4-21450号公報 特開2002-291406号公報 特開2010-200635号公報
本発明は、乳製品の製造、流通、保管、及び販売等の各段階で生じ得る劣化臭(例えば、光曝露によって生じる乳製品の光劣化臭、又は熱曝露によって生じる乳製品の熱劣化臭)を、簡便にかつ高い安全性で、マスキングすることができる劣化臭マスキング剤及びマスキング方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該劣化臭がマスキングされてなる乳製品、当該乳製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンといった従来甘味料として使用されている成分(以下、これらを総称して「甘味成分」とも称する)に、乳製品、とりわけ酸乳製品の劣化臭をマスキングする作用があることを見出し、またその作用は、甘味を呈する量だけでなく、甘味を呈さない量でも発揮することを確認した。これらの知見から、当該甘味成分を乳製品劣化臭マスキング剤として、乳製品に共存させることで、劣化臭がマスキングされた乳製品が得られることを確認して本発明を完成した。
本発明はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
(I)乳製品劣化臭マスキング剤
(I-1)スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、乳製品の劣化臭のマスキング剤。
(I-2)前記マスキング剤が、レバイディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1(質量比)の割合で含有するステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物である、(I-1)に記載する乳製品劣化臭のマスキング剤。
(I-3)前記劣化臭が、光曝露による劣化臭、又は/及び、熱曝露による劣化臭である、(I-1)又は(I-2)に記載する乳製品劣化臭のマスキング剤。
(I-4)前記乳製品が酸乳製品である、(I-1)~(I-3)に記載する乳製品劣化臭のマスキング剤。
(II)劣化臭がマスキングされた乳製品、その製造方法
(II-1)スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する乳製品。
(II-2)スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、甘味の閾値未満である、(II-1)記載の乳製品。
(II-3)前記マスキング剤が、レバイディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1(質量比)の割合で含有するステビア抽出物とラカンカ抽出物との混合物である、(II-1)又は(II-2)に記載する乳製品。
(II-4)前記乳製品が酸乳製品である、(II-1)~(II-3)に記載する乳製品。
(II-5)乳製品の劣化臭をマスキングするための乳製品の製造方法であって、乳製品の製造において、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種のマスキング剤を、好ましくは各々甘味の閾値未満の量、配合し、乳製品に共存させる工程を有する、前記製造方法。
(II-6)前記マスキング剤が、レバウディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1(質量比)の割合で含有するステビア抽出物とラカンカ抽出物との混合物である、(II-5)に記載する製造方法。
(II-7)前記乳製品が酸乳製品である、(II-5)又は(II-6)に記載する製造方法。
(III)乳製品劣化臭マスキング方法
(III-1)乳製品を、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることを特徴とする、乳製品の光曝露及び/又は熱曝露に起因する劣化臭(乳製品劣化臭)のマスキング方法。
(III-2)スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する乳製品を光曝露及び/又は熱曝露の状態におく工程を有する、(III-1)に記載する乳製品劣化臭マスキング方法。
(III-3)前記マスキング剤が、レバイディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1(質量比)の割合で含有するステビア抽出物とラカンカ抽出物との混合物である、(III-1)又は(III-2)に記載する乳製品劣化臭マスキング方法。
(III-4)乳製品中のスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、甘味の閾値未満の量である、(III-1)~(III-3)のいずれかに記載する乳製品劣化臭マスキング方法。
(III-5)前記乳製品が酸乳製品である、(III-1)~(III-4)のいずれかに記載する乳製品劣化臭マスキング方法。
本発明のマスキング剤又はマスキング方法を乳製品に用いることにより、乳製品が光曝露及び/又は熱曝露を受けた際に生じる劣化臭を効果的にマスキングすることができる。つまり、本発明の乳製品劣化臭マスキング剤又はそれを用いたマスキング方法によれば、製造、流通、保管、及び陳列等の段階で、乳製品が光及び/又は熱に曝露されることで生じる劣化臭を有効にマスキングすることができ、風味の劣化が抑制された乳製品を提供することができる。
本明細書中、語句「含む」又は語句「含有する」は、語句「からなる」、及び語句「のみからなる」を包含することを意図して用いられる。本明細書中に記載の操作、及び工程は、特に記載のない限り、室温で実施され得る。本明細書中、用語「室温」は、技術常識に従って理解され、例えば、10℃~35℃の範囲内の温度を意味することができる。
本発明において「乳製品」とは、動物の乳、特に牛の生乳又は牛乳を加工して作られる製品であり、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ジェラート等を含む)、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳(無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳)、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、タンパク質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、調整液状乳、乳飲料(コーヒー入り乳飲料、カルシウム強化乳飲料等を含む)、酸乳製品(発酵乳、乳酸菌飲料、酸乳飲料等を含む)、及びこれらを一種以上含有する飲食品、例えば菓子類(例えば、プリン、ゼリー、ババロア、杏仁豆腐、ビスケット等が含まれる)、冷菓及び氷菓等を挙げることができる。
乳製品のうち、好ましくは酸乳製品、及びこれを一種以上含有する飲食品である。酸乳製品はpHが2.5~6の範囲にある乳製品であり、前述するように発酵乳、乳酸菌飲料、及び酸乳飲料等が含まれる。発酵乳とは、食品衛生法にもとづく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(以下、乳等省令)の規定に従って「乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌または酵母で発酵させ糊状または液状にしたもの、またはこれらを凍結させたもの」であり、ヨーグルトが含まれる。乳酸菌飲料とは、乳等省令の規定に従って「乳などを乳酸菌または酵母で発酵させたものを加工し、または主要原料とした飲料(発酵乳を除く)」であり、乳製品乳酸菌飲料及び乳酸菌飲料の両方が含まれる。酸乳飲料とは、牛乳や脱脂乳等を原料として、乳酸菌によって乳酸発酵をさせ、そのままか、または糖類、果汁、果実加工品、香料などを添加し、あるいは水で希釈して飲用に供するものである。また、乳酸発酵することなく、脱脂乳に乳酸、クエン酸、香料などを加えて作る合成酸乳飲料も含まれる。
一般に臭いには、鼻で直接感じる臭い(オルソネーザルアロマ)と、口に含んだとき、または飲み込んだときに、喉の奥から鼻腔内で感じる臭い(レトロネーザルアロマ)の2種類がある。本発明が対象とする臭いは、好ましくは乳製品を口に含んだとき、または飲み込んだときに、喉の奥から鼻腔内で感じる臭い(レトロネーザルアロマ)である。
また本発明において、乳製品劣化臭をマスキングするとは、当該劣化臭を完全に消失することに限定されるものではなく、劣化臭の強さを減弱(低減)することを包含する意味である。つまり、乳製品劣化臭マスキングとは、乳製品に当該マスキング剤が含まれていることで、当該乳製品の臭い(劣化臭)が、当該マスキング剤を添加しない乳製品の臭い(劣化臭)と比較して少ない(低減した)と感じさせる作用効果である。こうした作用効果は、通常、訓練された専門パネルによる官能試験によって評価判定することができる。具体的には、マスキング剤(候補物を含む)を添加した乳製品の臭い(レトロネーザルアロマ)と、マスキング剤を添加していない乳製品の臭い(レトロネーザルアロマ)とを比較して、マスキング剤を配合した乳製品のほうが臭いが少ないと感じられる場合には、当該マスキング剤(候補物)は、本発明のマスキング剤に該当すると判断することができる。
本発明が対象とする乳製品の劣化臭は、好ましくは乳製品の光劣化臭、及び/又は、熱劣化臭である。
光劣化臭は、乳製品を光照射下にて光曝露させた場合に生じる臭いである。照射光としては、劣化を招来することが知られている紫外線、可視光線、及び/又は赤外線を含むものであればよく、例えば太陽光、蛍光灯(白熱球、蛍光球)照射光、及びLED照射光等を例示することができる。後述する実施例に示すように、本発明によれば、少なくとも、乳製品を10℃の条件下で2万ルクスのLED照射下に21時間以上おいて光曝露させた場合に生じる臭い(光劣化臭)をマスキングすることができる。このため、本発明のマスキング剤を含有するか、または本発明のマスキング方法で処理された乳製品は、少なくともこれを前記条件下で光曝露させた場合に、光劣化臭がマスキングされているという特性を有する。
熱劣化臭は、乳製品を熱曝露させた場合に生じる臭いである。後述する実施例に示すように、本発明によれば、少なくとも、乳製品を60℃の高温条件下で3日間以上おいて熱曝露させた場合に生じる臭い(熱劣化臭)をマスキングすることができる。このため、本発明のマスキング剤を含有するか、または本発明のマスキング方法で処理された乳製品は、少なくともこれを前記条件下で熱曝露させた場合に、熱劣化臭がマスキングされているという特性を有する。
(I)乳製品劣化臭マスキング剤
本発明の乳製品劣化臭マスキング剤(以下、「本マスキング剤」とも称する)は、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
(スクラロース)
スクラロース(化学名: 1,6-Dichloro-1,6-dideoxy-β-D-fructofuranosyl-4-chloro-4-deoxy-α-D-galactopyranoside)は、ショ糖(砂糖)の約600倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分である。水に溶けやすく、安定性に優れているため、甘味料としてだけでなく、従来広く様々な用途で食品に使用されている成分である。ちなみにスクラロースの甘味の閾値は、乳製品存在下では約10ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社から市販されている。
(ラカンカ抽出物)
羅漢果(学名:Siraitia grosvenorii)は、中国を原産地とするウリ科ラカンカ属のつる性の多年生植物である。本発明が対象とするラカンカ抽出物は、産地の別を問わず、羅漢果の果実、好ましくは羅漢果の生果実から、水又はエタノール等の有機溶媒を用いて抽出されたモグロシドV(以下「MogV」と表記する場合あり)を含有する抽出物である。モグロシドVは、ラカンカ抽出物に含まれているトリテルペン系配糖体であり、ショ糖(砂糖)の約300倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分でもある。
本マスキング剤で用いられるラカンカ抽出物のモグロシドV含有量は、本発明の効果を奏することを限度として、特に制限されない。言い換えれば、本マスキング剤において、モグロシドVは、ラカンカ抽出物から精製された状態で使用することもできるし、また、ラカンカ抽出物に含まれるモグロシドV以外のトリテルペン系配糖体(モグロール、モグロシドIE1、モグロシドIA1、モグロシドIIE、モグロシドIII、モグロシドIVa、モグロシドIVE、シメノシド、11-オキソモゴロシド、5α,6α-エポキシモグロシド)と混合した状態で使用することもできる。本発明において「ラカンカ抽出物」の用語には、これらの両方の意味が包含される。ラカンカ抽出物中のモグロシドVの含有量は、全体の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、とりわけ好ましくは50質量%以上である。
こうしたラカンカ抽出物は、羅漢果の果実から抽出し、さらに必要に応じて精製処理することで調製することも可能であるが、簡便には商業的に入手することができる。例えば、市販されているラカンカ抽出物として「FD羅漢果濃縮エキスパウダー」(7質量%又は15質量%モグロシドV含有物)、「サンナチュレ(登録商標) M30」(30質量%モグロシドV含有物)、「サンナチュレ(登録商標) M50」(50質量%モグロシドV含有品)[以上、いずれも三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製];並びに高純度ラカンカ抽出物(サラヤ株式会社製)等を例示することができる。
(ステビア抽出物)
ステビアレバウディアナ・ベルトニ(Stevia Rebaudiana Bertoni)(本発明では「ステビア」と略称する)は、南米パラグアイを原産地とするキク科ステビア属に属する植物である。本発明が対象とするステビア抽出物は、産地の別を問わず、ステビアの葉又は茎などから、水又はエタノール等の有機溶媒を用いて抽出されたレバウディオサイドA(以下「RevA」と表記する場合あり)を含有する抽出物である。レバウディオサイドAは、ステビア抽出物に含まれているステビオール配糖体であり、ショ糖(砂糖)の300~450倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分でもある。
本マスキング剤において用いられるステビア抽出物のレバウディオサイドA含有量は、本発明の効果を奏することを限度として、特に制限されない。言い換えれば、本マスキング剤において、レバウディオサイドAは、ステビア抽出物から精製された状態で使用することもできるし、また、ステビア抽出物に含まれるレバウディオサイドA以外のステビオール配糖体(ステビオサイド、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、レブソサイド、ステビオールビオサイドなど)と混合した状態で使用することもできる。本発明において「ステビア抽出物」の用語には、これらの両方の意味が包含される。ステビア抽出物中のレバウディオサイドAの含有量は、制限されないが、全体の90質量%以上であることが好ましい。より好ましくは95質量%以上である。なお、本発明が対象とするステビア抽出物には、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビア抽出物も含まれる。つまり、本発明が対象とするステビア抽出物には、酵素非処理ステビア抽出物及び酵素処理ステビア抽出物が含まれ、いずれかを一方を選択して用いることもできるし、併用することもできる。但し、好ましくは酵素非処理ステビア抽出物である。
こうしたステビア抽出物は、ステビアの葉や茎等を原料として抽出し、さらに必要に応じて精製処理することで調製することも可能であるが、簡便には商業的に入手することができる。例えば、市販されているステビア抽出物として、「レバウディオJ-100」、及び「レバウディオAD」(以上、いずれも守田化学工業(株)製)などを挙げることができる。これらの製品はレバウディオサイドAを90質量%以上の割合で含有するレバウディオサイドA含有製品(ステビア抽出物)である。
(アセスルファムカリウム)
アセスルファムカリウムは、6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4(3H)-オン-2,2-ジオキシド(6-methyl-1,2,3-oxathiazine-4(3H)-one 2,2-dioxide) のカリウム塩であり、ショ糖(砂糖)の200倍もの甘味度を有する高甘味度甘味料である。ちなみにアセスルファムカリウムの甘味の閾値は乳製品存在下では約30ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば「サネット」という商品名でMCフーズスペシャリティー株式会社から市販されている。
(アスパルテーム)
アスパルテーム(化学名:N-(L-α-Aspartyl)-L-phenylalanine, 1-methyl ester)は、ショ糖(砂糖)の100~200倍の甘味度を有するアミノ酸に由来する甘味成分であり、フェニルアラニンのメチルエステルと、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造を持つジペプチドのメチルエステルである。ちなみにアスパルテームの甘味の閾値は乳製品存在下では約30ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば味の素株式会社から市販されている。
(ソーマチン)
ソーマチンは、西アフリカ原産のクズウコン科の植物Thaumatococcusdaniellii(Benn.)Benth. &Hook. f.の種子に多く含まれる分子量約21,000の蛋白質(植物性蛋白)であり、ショ糖(砂糖)の3,000~8,000倍もの甘味度を有するため天然甘味料として使用されている。ソーマチンの甘味の閾値は乳製品存在下では約1ppmである。これは商業的に入手することができ、例えばソーマチンを0.15質量%の割合で含有する甘味料(ネオサンマルク(商標登録)AG)が三栄源エフ・エフ・アイ株式会社から市販されている。
(本マスキング剤)
本マスキング剤は、前述するスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有するものであればよく、これらを1種単独で含有するものであっても、また2種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。なお、本マスキング剤に含まれるスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンの割合は、乳製品と共存させることで、光曝露することで生じる臭い(乳製品光劣化臭)、及び/又は、熱曝露することで生じる臭い(乳製品光熱化臭)をマスキングするという目的に適うものであればよく、その限りにおいて、100質量%を限度として適宜設定することができる。
2種以上を組み合わせる態様として、制限されないものの、好ましくはステビア抽出物とラカンカ抽出物とが少なくとも含まれる組み合わせを例示することができる。ステビア抽出物にラカンカ抽出物を併用することで、ステビア抽出物特有の味質(苦味、後引き感)を抑えながらも、高い乳製品劣化臭マスキング作用を有する組成物を得ることができる。なお、ステビア抽出物とラカンカ抽出物との配合比は、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されない。一例を挙げると、本マスキング剤に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVとの配合比が質量比(以下、同じ)で50:50~99:1となるような組み合わせを挙げることができる。配合比はこの範囲で適宜設定することができ、例えば60:40~99:1、70:30~99:1、70:30~98:2、80:20~99:1、又は90:10~99:1の範囲を例示することができる。
本マスキング剤は、乳製品を光曝露及び/又は熱曝露する場合に生じる臭いをマスキングするために用いられる。その形態を問わないが、粉末状、顆粒状、タブレット状、及びカプセル剤状などの固体の形態、ならびに液状(水溶液、分散液状、懸濁液状を含む)、乳液状、シロップ状、ペースト状、及びジェル状などの半固体又は液体の形態を有することができる。
本マスキング剤は、本発明の効果を妨げないことを限度として、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下「本有効成分」と総称する場合がある)を前述する製剤形態に調製する際に、その形態に応じて、飲食品に配合可能な可食性の担体(基剤)や添加剤を適宜配合することもできる。
担体や添加剤を用いることで、本マスキング剤は、前述する固体、半固体または液体の剤型など、任意の剤型にすることができる。制限されないものの、一例として、本有効成分を溶解又は分散した水溶液にデキストリン等の賦形剤を配合し、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の定法に従って粉末化して粉末製剤として調製されてもよいし、さらに造粒されることで顆粒製剤として調製されてもよい。また、本マスキング剤は、一剤の形態のほか、二剤の形態(例えば、ラカンカ抽出物を含有する製剤とステビア抽出物を含有する製剤との組み合わせ物など)を有するものであってもよい。
乳製品に対する本マスキング剤の使用量としては、本マスキング剤の有効成分(本有効成分)に起因する甘味を考慮して、目的に応じて選択設定することができる。例えば、前述するように、スクラロースの甘味度はショ糖(スクロース)の600倍、モグロシドVの甘味度はショ糖の300倍、レバウディオサイドAの甘味度はショ糖の300~450倍、アセスルファムカリウムの甘味度はショ糖の200倍、アスパルテームの甘味度はショ糖の100~200倍、ソーマチンの甘味度はショ糖の3,000~8,000倍である。
このため、例えば、本マスキング剤を、乳製品に対して、乳製品劣化臭を低減するだけでなく甘味付与を目的として配合する場合は、本有効成分を甘味を発揮する量(甘味の閾値以上の量)で配合することが好ましい。具体的には、例えばスクラロースの配合量としては0.001質量%(10ppm)以上、ラカンカ抽出物の配合量としてはモグロシドVの量に換算して0.00075質量%(7.5ppm)以上、ステビア抽出物の配合量としてはレバウディオサイドAの量に換算して0.001425質量%(14.25ppm)、アセスルファムカリウムの配合量としては0.003質量%(30ppm)以上、アスパルテームの配合量としては0.003質量%(30ppm)以上、ソーマチンの配合量としては0.0003質量%(3ppm)以上となるような範囲で適宜調整することができる。一方、本マスキング剤を、乳製品に対して、乳製品劣化臭をマスキングするだけで、甘味付与を目的としないで配合する場合は、本マスキング剤の有効成分を甘味を呈さない量(甘味の閾値未満の量)で配合する。具体的には、例えばスクラロースの配合量としては0.001質量%(10ppm)未満、ラカンカ抽出物の配合量としてはモグロシドVの量に換算して0.00075質量%(7.5ppm)未満、ステビア抽出物の配合量としてはレバウディオサイドAの量に換算して0.001425質量%(14.25ppm)未満、アセスルファムカリウムの配合量としては0.003質量%(30ppm)未満、アスパルテームの配合量としては0.003質量%(30ppm)未満、ソーマチンの配合量としては0.0003質量%(3ppm)未満となるような範囲で適宜調整することができる。なお、実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用する乳製品毎に個別に設定することが好ましく、この場合、閾値の設定は極限法に従って行うことが好ましい。
前述するように本マスキング剤に該当するかどうかは、訓練された専門パネルによる官能試験によって判定することができる。
具体的には、マスキング剤(候補物を含む)を添加した乳製品と、マスキング剤を添加していない乳製品とを、各々10℃の条件下で2万ルクスのLED照射下に21時間以上おいて光曝露させた後、両者の臭い(レトロネーザルアロマ)を比較して、マスキング剤を配合した乳製品のほうが臭いが少ないと感じられる場合には、当該マスキング剤(候補物)は、本発明のマスキング剤、特に乳製品の光劣化臭を有効にマスキングすることができるマスキング剤(光劣化臭マスキング剤)に該当すると判断することができる。
また、マスキング剤(候補物を含む)を添加した乳製品と、マスキング剤を添加していない乳製品とを、各々60℃の高温条件下で3日間以上おいて熱曝露させた後、両者の臭い(レトロネーザルアロマ)を比較して、マスキング剤を配合した乳製品のほうが臭いが少ないと感じられる場合には、当該マスキング剤(候補物)は、本発明のマスキング剤、特に乳製品の熱劣化臭を有効にマスキングすることができるマスキング剤(熱劣化臭マスキング剤)に該当すると判断することができる。
(II)乳製品
本発明の乳製品は、本マスキング剤を含有する飲食品である。
乳製品に対する本マスキング剤の配合割合は、本マスキング剤を配合することによって調製される乳製品が、本発明の効果を奏するものであればよく、その限りにおいて特に制限されない。具体的には、乳製品に配合する本マスキング剤の種類などに応じて適宜設定調整することができ、制限されないものの、乳製品に適用する本マスキング剤の割合としては、後述する割合を例示することができる。
本マスキング剤としてスクラロースを用いる場合、乳製品中のスクラロースの含有量としては0.5ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは1ppm以上であり、この割合で含有することで光曝露だけでなく熱曝露による劣化臭を有意にマスキングすることができる。より好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、スクラロースを、甘味を呈さない量で使用する場合は、甘味の閾値未満になるように調整することが好ましい。実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用する乳製品毎に個別に設定することが好ましく、閾値の設定は極限法に従って行うことができる(後述する有効成分も同じ)。また、乳製品中においてスクラロースは濃度が10ppm以上になると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。スクラロースを甘味を呈さない量で使用する場合、その配合割合として、例えば0.5ppm~10ppm未満、好ましくは5ppm~10ppm未満の範囲を挙げることができる。スクラロースを甘味を呈する量(10ppm以上)で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば乳製品中のスクラロースの濃度が500ppm以下になるように調整することができる。
本マスキング剤としてラカンカ抽出物を用いる場合、乳製品中のラカンカ抽出物の含有量は、モグロシドVの濃度に換算して、0.5ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは2.5ppm以上、より好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上を例示することができる。上限は特に制限されないが、ラカンカ抽出物を、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にラカンカ抽出物は、モグロシドVの濃度に換算して、7.5ppm以上になると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ラカンカ抽出物を甘味を呈さない量で使用する場合、その配合割合として、モグロシドVの濃度に換算して、例えば0.5ppm~7.5pm未満、好ましくは2.5ppm~7.5ppm未満、より好ましくは5~7.5ppm未満の範囲を挙げることができる。ラカンカ抽出物を甘味を呈する量(モグロシドVの量に換算して7.5ppm以上)で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば乳製品中のモグロシドVの濃度が750ppm以下になるように調整することができる。
後述する実施例に示すように、ステビア抽出物も、少なくともその甘味閾値付近(レバウディオサイドAの濃度に換算して14.25ppm付近)で乳製品の光劣化臭及び熱劣化臭をマスキングする効果を発揮する。このため、本マスキング剤としてステビア抽出物を用いる場合、乳製品中のステビア抽出物の含有量は、その甘味閾値未満及び甘味閾値以上の範囲から適宜選択することができる。
後述する実施例に示すように、アセスルファムカリウムも、少なくともその甘味閾値付近(30ppm付近)で乳製品の光劣化臭及び熱劣化臭をマスキングする効果を発揮する。このため、本マスキング剤としてアセスルファムカリウムを用いる場合、乳製品中のアセスルファムカリウムの含有量は、その甘味閾値未満及び甘味閾値以上の範囲から適宜選択することができる。
後述する実施例に示すように、アセスルファムカリウムも、少なくともその甘味閾値付近(30ppm付近)で乳製品の光劣化臭及び熱劣化臭をマスキングする効果を発揮する。このため、本マスキング剤としてアスパルテームを用いる場合、乳製品中のアスパルテームの含有量は、その甘味閾値未満及び甘味閾値以上の範囲から適宜選択することができる。
本マスキング剤としてソーマチンを用いる場合、乳製品中のソーマチンの含有量としては0.3ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは0.75ppm以上であり、この割合で含有することで光曝露だけでなく熱曝露による劣化臭を有意にマスキングすることができる。より好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは3ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、ソーマチンを、甘味を呈さない量で使用する場合は、甘味の閾値未満になるように調整することが好ましい。実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用する乳製品毎に個別に設定することが好ましく、閾値の設定は極限法に従って行うことができる(後述する有効成分も同じ)。また、乳製品中においてソーマチンは濃度が3ppm以上になると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ソーマチンを甘味を呈さない量で使用する場合、その配合割合として、例えば0.3ppm~3ppm未満、好ましくは0.75ppm~3ppm未満の範囲を挙げることができる。ソーマチンを甘味を呈する量(3ppm以上)で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば乳製品中のソーマチンの濃度が50ppm以下になるように調整することができる。
なお、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及び/又はソーマチンは、乳製品中に配合されていればよく、乳製品の製造過程の任意の段階で添加することができる。
斯くして本発明の乳製品は、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む本マスキング剤を含有していることで、これらをいずれも含有しない乳製品と比較して、前記光曝露及び/又は熱曝露に起因する臭い(乳製品劣化臭)がマスキングされてなることを特徴とする。
乳製品について乳製品劣化臭がマスキングされているか否かは、マスキング剤が配合された乳製品劣化臭(被験食品)を、マスキング剤が配合されていない以外は前記被験食品と同じ組成からなる乳製品(比較食品)を、各々10℃の条件下で2万ルクスのLED照射下に21時間以上おいて光曝露させるか、又は各々60℃の高温条件下で3日間以上おいて熱曝露させた後、両者の臭い(レトロネーザルアロマ)を比較することで評価することができる。この評価において、比較食品と比較して被験食品のほうが臭い(乳製品劣化臭)が少ない場合に、被験食品について本マスキング剤の配合により乳製品劣化臭(光劣化臭、熱劣化臭)がマスキングされていると判断することができる。具体的な評価方法は、制限されないものの、後述する実施例の記載に従って行うことができる。
このように、乳製品の製造工程で本マスキング剤を添加配合するという簡便な方法で、乳製品劣化臭をマスキングすることができ、その結果、劣化臭(光劣化臭、熱劣化臭)が消失又は低減した乳製品を調製し提供することができる。
(III)乳製品の劣化臭をマスキングするための乳製品の製造方法
前述する本発明の乳製品は、最終の乳製品に本マスキング剤が含まれていればよく、その限りにおいて、本マスキング剤の配合時期や配合方法など、本発明の乳製品の製造方法は特に制限されない。つまり、本発明の乳製品の製造方法は、乳製品中に、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を配合する工程を含むものであればよい。
(IV)乳製品劣化臭マスキング方法
本発明の乳製品劣化臭マスキング方法は、乳製品を、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種の本マスキング剤と共存させることで実施することができる。スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンは、乳製品に対するそれらの配合割合を含めて、前記(I)~(II)で説明した通りであり、前記の記載はここに援用することができる。
乳製品について、それにスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及び/又はソーマチン(本有効成分)を配合することで乳製品劣化臭がマスキングされたか否かは、本有効成分が配合された乳製品(被験物)の光曝露後及び/又は熱曝露後の劣化臭を、本有効成分が配合されていない以外は前記被験物と同じ乳製品(比較物)の光曝露後及び/又は熱曝露後の劣化臭と比較することで評価することができる。この評価において、比較物と比べて被験物のほうが劣化臭が少ない場合に、被験物について、本有効成分の配合により劣化臭がマスキングされていると判断することができる。具体的な評価方法は、制限されないものの、後述する実施例の記載に従って行うことができる。
このように、本有効成分を配合するという簡便な方法により、乳製品の劣化臭をマスキングすることができ、その結果、光曝露及び/又は熱曝露によって生じる劣化臭がしないか、又は減弱(低減)した乳製品を調製し提供することができる。
本発明の内容を以下の実験例や実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また各実験例で採用したパネルは飲食品の臭いの官能評価に従事し訓練して社内試験に合格した官能評価適格者であり、乳製品の臭いの官能評価についてよく訓練したうえで、本実験を実施した。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実験例に使用した原料は下記の通りである。なお、後述する各表に記載する各成分の配合量は各製品の量である。このうち、(1)、(4)及び(5)の各製品の含量は甘味成分の量に相当する。
(1)スクラロース
スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)。ショ糖(スクロース)の約600倍の甘味度を有する甘味料製剤。
(2)ラカンカ抽出物
サンナチュレ(登録商標)M50(乾燥粉末製品、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)。羅漢果の生果実(未乾燥果実)を水で抽出した後、濾過して回収した水抽出液を脱色及び濃縮した後、スプレードライにより乾燥粉末としてモグロシドVを50%の割合で含むように調製された、ショ糖の約300倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(3)ステビア抽出物
レバウディオJ-100(乾燥粉末製品、守田化学工業(株)製)。レバウディオサイドA 95%以上含有品。ショ糖の約300倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(4)アセスルファムカリウム
サネット(MCフーズスペシャリティー株式会社製)。ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(5)アスパルテーム
パルスイート(登録商標)ダイエット(味の素株式会社製)。ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(6)ソーマチン
ネオサンマルク(登録商標)AG(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)。ソーマチンを0.15%含有する高甘味度甘味料。
実験例1 光曝露による酸乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その1)
4名のパネルに、各種の甘味料(候補マスキング剤)を配合した酸乳飲料(被験飲料)について光曝露試験した後の劣化臭を評価してもらった。なお、劣化臭の評価は、被験飲料を、各パネルに飲んでもらい、口腔から鼻腔にかけて感じる臭い(レトロネーザルアロマ)を評価してもらうことで実施した。
(1)酸乳飲料、及び被験飲料の調製
表1に示すように、酸乳飲料(pH3.8)に各種の甘味料1~7を配合して被験飲料1~8を調製した。酸乳飲料の処方は表2に、甘味料1~8の種類とその添加量は表3に、それぞれ記載する。各甘味料の添加量は、各甘味料の当該酸乳飲料における甘味閾値付近の量である。また対照飲料1及び2として、酸乳飲料そのものを用意した。
Figure 2023020971000001
Figure 2023020971000002
各飲料を10℃の状態に維持したままで、2万ルクスのLED照射光にて、対照飲料1は21時間、対照飲料2は18時間、被験飲料1~8は21時間、それぞれ照射し、光曝露に供した。
(2)酸乳飲料の光劣化臭の評価
LED照射後の酸乳飲料(対照飲料1、対照飲料2、被験飲料1~8)を、4名のパネルに飲んでもらい、対照飲料1及び2との比較で、被験飲料1~8の光劣化臭を評価してもらった。評価の結果は、下記の基準に従って、各パネルにスコアをつけてもらった。ちなみに、各パネルは、事前に、光照射前の酸乳飲料、光照射後の対照飲料1及び2を飲んで、当該対照飲料の光劣化臭を把握し、パネル間同士でその劣化臭並びにその程度を確認しあった後、下記の基準をすり合わせて、各自の内的基準が互いに等しくなるように調整した(以下の実験例2も同じ。)。
[評価基準]
3点:対照飲料2よりも臭いが少ない。
2点:対照飲料2の臭いと同等。
1点:対照飲料1の臭いより少ないが、対照飲料2の臭いより強い。
0点:対照飲料1の臭いと同等。
被験飲料の評価結果(パネルの平均)を表3に合わせて示す。
Figure 2023020971000003
この結果から、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンに、酸乳製品の光劣化臭マスキング効果が認められた。この中でも、特に光劣化臭マスキング効果が高かったのは、スクラロース、ラカンカ抽出物、及びソーマチンであり、ラカンカ抽出物はステビア抽出物を併用することで、各々単独で用いるよりも高い光劣化臭マスキング効果を発揮することが確認された。
実験例2 光曝露による酸乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その2)
実験例1において光劣化臭に対するマスキング効果が特に高かったスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物、及びソーマチンを用いて、光劣化臭のマスキング効果に対する濃度依存性を評価した。
具体的には、実験例1と同様に、酸乳飲料に、表4~8に記載する添加量で、スクラロース(表4)、ラカンカ抽出物(表5)、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物(表6及び7)、ソーマチン(表8)を配合した各被験飲料と、対照飲料1及び2に対して、表1に記載する特定時間、LEDを照射し、照射後の被験飲料の臭いと対照試料1及び2の臭いを4名のパネルによる官能評価試験により比較した。実験例1と同じ評価方法及び評価基準に従って評価した結果を、表4~8に示す。
Figure 2023020971000004
スクラロースに、甘味を呈する添加量(0.001wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.00005wt%~0.001wt%未満)に、光劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000005
ラカンカ抽出物に、甘味を呈する添加量(0.0015wt%以上)(モグロシドVの量に換算して0.00075wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.0001wt%~0.0015wt%未満)(モグロシドVの量に換算して0.00005wt%~0.00075wt%未満)に、光劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000006
ステビア抽出物とラカンカ抽出物を併用することで、各々単独で使用するよりも光劣化臭マスキング効果が高くなることが確認された。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000007
ステビア抽出物とラカンカ抽出物との併用は、上記の割合のすべてにマスキング効果が認められた。特にレバウディオサイドAとモグロシドVの配合割合が70:30~98:2の範囲で高いマスキング効果が認められた。
Figure 2023020971000008
ソーマチンに、甘味を呈する添加量(添加量0.2 wt%以上:ソーマチン成分0.0003wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(添加量0.02~0.2wt%未満:ソーマチン成分0.00003~0.0003wt%未満)に、光劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
以上に示すように、効果の程度には差があるものの、甘味の閾値未満及び閾値以上の別にかかわらず、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンに、酸乳製品の光劣化臭をマスキングする効果があることが確認された。
実験例3 熱曝露による酸乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その1)
実験例1と同様に、4名のパネルに、各種の甘味料(候補マスキング剤)を配合した酸乳飲料(被験飲料)について熱曝露試験した後の劣化臭を評価してもらった。
(1)酸乳飲料、及び被験飲料の調製
前述する表1に示すように、酸乳飲料(pH3.8)に各種の甘味料1~8を配合して被験飲料1~8を調製した。酸乳飲料の処方は表2に、但し、甘味料1~8の種類とその添加量は表9に、それぞれ記載する。各甘味料の添加量は、各甘味料の当該酸乳飲料における甘味閾値付近の量である。また対照飲料1及び2として、酸乳飲料そのものを用意した。
各飲料をペットボトルの容器に入れて、60℃に保った恒温室の中で、対照飲料1は3日間、対照飲料2は2日間、被験飲料1~7は3日間、それぞれ保存し、熱曝露に供した。
(2)酸乳飲料の熱劣化臭の評価
熱曝露後の酸乳飲料(対照飲料1、対照飲料2、被験飲料1~8)を、4名のパネルに飲んでもらい、対照飲料1及び2との比較で、被験飲料1~8の熱劣化臭を評価してもらった。評価の結果は、実験例1と同じ基準に従って、各パネルにスコアをつけてもらった。ちなみに、各パネルは、実験例1と同様に、事前に、熱曝露前の酸乳飲料、熱曝露後の対照飲料1及び2を飲んで、当該対照飲料の熱劣化臭を把握し、パネル間同士でその劣化臭並びにその程度を確認しあった後、評価基準をすり合わせて、各自の内的基準が互いに等しくなるように調整した。
被験飲料の評価結果(パネルの平均)を表9に合わせて示す。
Figure 2023020971000009
この結果から、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンに、酸乳製品の熱劣化臭マスキング効果が認められた。この中でも、特に熱劣化臭マスキング効果が高かったのは、ソーマチン、スクラロース及びラカンカ抽出物であり、ラカンカ抽出物はステビア抽出物を併用することで、各々単独で用いるよりも高い熱劣化臭マスキング効果を発揮することが確認された。
実験例4 熱曝露による酸乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その2)
実験例3において熱劣化臭に対するマスキング効果が特に高かったスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物、及びソーマチンを用いて、熱劣化臭のマスキング効果に対する濃度依存性を評価した。
具体的には、実験例3と同様に、酸乳飲料に、表10~14に記載する添加量で、スクラロース(表10)、ラカンカ抽出物(表11)、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物(表12及び13)、ソーマチン(表14)を配合した各被験飲料と、対照飲料1及び2に対して、実験例3と同じ特定時間、熱曝露を実施し、熱曝露後の被験飲料の臭いと対照試料1及び2の臭いを4名のパネルによる官能評価試験により比較した。実験例1と同じ評価方法及び評価基準に従って評価した結果を、表10~14に示す。
Figure 2023020971000010
スクラロースに、甘味を呈する添加量(0.001wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.00005wt%~0.001wt%未満)に、熱劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000011
ラカンカ抽出物に、甘味を呈する添加量(0.0015wt%以上)(モグロシドVの量に換算して0.00075wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.0001wt%~0.0015wt%未満)(モグロシドVの量に換算して0.00005wt%~0.00075wt%未満)に、熱劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000012
ステビア抽出物とラカンカ抽出物を併用することで、各々単独で使用するよりも熱劣化臭マスキング効果が高くなることが確認された。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000013
ステビア抽出物とラカンカ抽出物との併用は、上記の割合のすべてにマスキング効果が認められた。特にレバウディオサイドAとモグロシドVの配合割合が60:40~98:2の範囲で高いマスキング効果が認められた。
Figure 2023020971000014
ソーマチンに、甘味を呈する添加量(添加量0.2 wt%以上:ソーマチン成分0.0003wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(添加量0.02~0.2 wt%未満:ソーマチン成分0.00003~0.0003wt%未満)に、熱劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
以上に示すように、効果の程度には差があるものの、甘味の閾値未満及び閾値以上の別にかかわらず、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びネオテームに、酸乳製品の熱劣化臭をマスキングする効果があることが確認された。
実験例5 光曝露による乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その1)
4名のパネルに、各種の甘味料(候補マスキング剤)を配合した乳飲料(被験飲料)について光曝露試験した後の劣化臭を評価してもらった。なお、劣化臭の評価は、実験例1と同様に、被験飲料を、各パネルに飲んでもらい、口腔から鼻腔にかけて感じる臭い(レトロネーザルアロマ)を評価してもらうことで実施した。
(1)乳飲料、及び被験飲料の調製
表15に示すように、乳飲料に各種の甘味料1及び3~8を配合し、121℃で20分間レトルト殺菌して被験飲料9~15を調製した(pH 6.8、Brix 3.1°)。乳飲料(被験飲料)の処方は表16に、甘味料1及び3~8の種類とその添加量は表17に、それぞれ記載する。各甘味料の添加量は、各甘味料の当該乳飲料における甘味閾値付近の量である。また対照飲料1及び2として、乳飲料そのものを用意した。
Figure 2023020971000015
Figure 2023020971000016
各飲料を10℃の状態に維持したままで、2万ルクスのLED照射光にて、対照飲料1は21時間、対照飲料2は18時間、被験飲料9~16は21時間、それぞれ照射し、光曝露に供した。
(2)乳飲料の光劣化臭の評価
LED照射後の乳飲料(対照飲料1、対照飲料2、被験飲料9~15)を、4名のパネルに飲んでもらい、対照飲料1及び2との比較で、被験飲料9~15の光劣化臭を評価してもらった。実験例1と同じ評価方法及び評価基準に従って評価した結果を、表17に示す。
Figure 2023020971000017
この結果から、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、及びソーマチンに、乳製品の光劣化臭マスキング効果が認められた。この中でも、特に光劣化臭マスキング効果が高かったのは、スクラロース、ラカンカ抽出物、及びソーマチンであり、ラカンカ抽出物はステビア抽出物を併用することで、各々単独で用いるよりも高い光劣化臭マスキング効果を発揮することが確認された。
実験例6 光曝露による乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その2)
実験例5において光劣化臭に対するマスキング効果が特に高かったスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物、及びソーマチンを用いて、光劣化臭のマスキング効果に対する濃度依存性を評価した。
具体的には、実験例5と同様に、乳飲料に、表18~21に記載する添加量で、スクラロース(表18)、ラカンカ抽出物(表19)、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物(表20)、ソーマチン(表21)を配合した各被験飲料と、対照飲料1及び2に対して、表15に記載する特定時間、LEDを照射し、照射後の被験飲料の臭いと対照試料1及び2の臭いを4名のパネルによる官能評価試験により比較した。実験例1と同じ評価方法及び評価基準に従って評価した結果を、表18~21に示す。
Figure 2023020971000018
スクラロースに、甘味を呈する添加量(0.001wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.00005wt%~0.001wt%未満)に、光劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000019
ラカンカ抽出物に、甘味を呈する添加量(0.0015wt%以上)(モグロシドVの量に換算して0.00075wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.0001wt%~0.0015wt%未満)(モグロシドVの量に換算して0.00005wt%~0.00075wt%未満)に、光劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000020
ステビア抽出物とラカンカ抽出物を併用することで、各々単独で使用するよりも光劣化臭マスキング効果が高くなることが確認された。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000021
ソーマチンに、甘味を呈する添加量(添加量0.2 wt%以上:ソーマチン成分0.0003wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(添加量0.02~0.2wt%未満:ソーマチン成分0.00003~0.0003wt%未満)に、光劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
以上に示すように、効果の程度には差があるものの、甘味の閾値未満及び閾値以上の別にかかわらず、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンに、乳製品の光劣化臭をマスキングする効果があることが確認された。
実験例7 熱曝露による乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その1)
実験例3と同様に、4名のパネルに、各種の甘味料(候補マスキング剤)を配合した乳飲料(被験飲料)について熱曝露試験した後の劣化臭を評価してもらった。
(1)乳飲料、及び被験飲料の調製
前述する表15に示すように、乳飲料に各種の甘味料1、3~8を配合して被験飲料9~15を調製した。乳飲料(被験飲料)の処方は表16に、甘味料1、3~8の種類とその添加量は表22に、それぞれ記載する。各甘味料の添加量は、各甘味料の当該乳飲料における甘味閾値付近の量である。また対照飲料1及び2として、乳飲料そのものを用意した。
各飲料をペットボトルの容器に入れて、60℃に保った恒温室の中で、対照飲料1は3日間、対照飲料2は2日間、被験飲料9~15は3日間、それぞれ保存し、熱曝露に供した。
(2)乳飲料の熱劣化臭の評価
熱曝露後の乳飲料(対照飲料1、対照飲料2、被験飲料9~15)を、4名のパネルに飲んでもらい、対照飲料1及び2との比較で、被験飲料9~15の熱劣化臭を評価してもらった。評価の結果は、実験例1と同じ基準に従って、各パネルにスコアをつけてもらった。
被験飲料の評価結果(パネルの平均)を表22に合わせて示す。
Figure 2023020971000022
この結果から、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、及びソーマチンに、乳製品の熱劣化臭マスキング効果が認められた。この中でも、特に熱劣化臭マスキング効果が高かったのは、ラカンカ抽出物、ソーマチン、スクラロース、及びステビア抽出物であった。
実験例8 熱曝露による乳飲料の劣化臭に対するマスキング効果の評価(その2)
実験例7において熱劣化臭に対するマスキング効果が特に高かったスクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物、及びソーマチンを用いて、熱劣化臭のマスキング効果に対する濃度依存性を評価した。
具体的には、実験例7と同様に、乳飲料に、表23~26に記載する添加量で、スクラロース(表23)、ラカンカ抽出物(表24)、ステビア抽出物とラカンカ抽出物の混合物(表25)、ソーマチン(表26)を配合した各被験飲料と、対照飲料1及び2に対して、実験例7と同じ特定時間、熱曝露を実施し、熱曝露後の被験飲料の臭いと対照試料1及び2の臭いを4名のパネルによる官能評価試験により比較した。実験例1と同じ評価方法及び評価基準に従って評価した結果を、表23~26に示す。
Figure 2023020971000023
スクラロースに、甘味を呈する添加量(0.001wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.00005wt%~0.001wt%未満)に、熱劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000024
ラカンカ抽出物に、甘味を呈する添加量(0.0015wt%以上)(モグロシドVの量に換算して0.00075wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(0.0001wt%~0.0015wt%未満)(モグロシドVの量に換算して0.00005wt%~0.00075wt%未満)に、熱劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
Figure 2023020971000025
ステビア抽出物とラカンカ抽出物を併用した場合でも高い熱劣化臭マスキング効果があることが確認された。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが認められた。
Figure 2023020971000026
ソーマチンに、甘味を呈する添加量(添加量0.2wt%以上:ソーマチン成分0.0003wt%以上)のみならず、甘味を呈さない添加量(添加量0.02~0.2wt%未満:ソーマチン成分0.00003~0.0003wt%未満)に、熱劣化臭マスキング効果が認められた。その効果は、濃度依存性があり、濃度が高くなるほどマスキング効果も高くなることが確認された。
以上に示すように、効果の程度には差があるものの、甘味の閾値未満及び閾値以上の別にかかわらず、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、及びネオテームに、乳製品の熱劣化臭をマスキングする効果があることが確認された。

Claims (6)

  1. スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、乳製品劣化臭のマスキング剤。
  2. 前記劣化臭が、光曝露による劣化臭、又は/及び、熱曝露による劣化臭である、請求項1に記載する乳製品劣化臭のマスキング剤。
  3. スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を、甘味の閾値未満の割合で含有する乳製品。
  4. 乳製品の劣化臭をマスキングするための製造方法であって、
    乳製品の製造において、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種を配合し、乳製品に共存させる工程を有する、前記製造方法。
  5. スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種の配合量が、甘味の閾値未満の量である、請求項4に記載する製造方法。
  6. 乳製品を、スクラロース、ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることを特徴とする、乳製品の光曝露及び/又は熱曝露に起因する劣化臭のマスキング方法。
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