JP2023016310A - ガス検出装置、湿度補正方法および制御装置 - Google Patents

ガス検出装置、湿度補正方法および制御装置 Download PDF

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陽介 恩田
Yosuke Onda
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Abstract

【課題】センサの経時変化に柔軟に対応しつつ、測定値の補正精度を向上させる。【解決手段】本発明の一形態に係るガス検出装置は、検出素子と、湿度センサと、制御装置とを具備する。前記検出素子は、検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる。前記湿度センサは、前記検出対象ガスの湿度を検出する。前記制御装置は、取得部と、記憶部と、測定部と、更新部とを有する。前記取得部は、前記検出素子の測定値と、前記湿度センサの測定値とを取得する。前記記憶部は、補正係数を記憶する。前記測定部は、前記補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定する。前記更新部は、前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である第1の履歴データに基づいて算出された更新用補正係数に更新する。【選択図】図1

Description

本発明は、ガス検出装置、湿度補正方法および制御装置に関する。
複数のにおい成分の集合体であるにおいを識別するために、複数の異なる化学的性質を有する吸着膜をアレイ化してマルチアレイセンサとし、においをパターン化させるにおいセンサの開発が近年活発となってきている。このようなにおいセンサを用いることにより快適なにおいと不快なにおいの区別が可能となり、室内や車内の環境管理、工場の工程管理、初期火災や人体に影響を及ぼす悪臭を検知するための環境モニタリングなど、これまで人が官能的に評価していた分野へのにおいセンサの応用が検討され始めている。
例えば、においセンサには、水晶振動子上に吸着膜を設けた検出素子が用いられる。水晶振動子の共振周波数は吸着膜に吸着したにおい成分の重量に比例して減少するので、共振周波数の変化量を基ににおい成分の量を検出することができる。このため、におい成分を吸着する吸着膜の経時劣化による感度レベルの低下はにおいセンサの信頼性に影響を及ぼす。経時劣化による吸着膜の劣化は、センサ使用時に吸着したにおい成分が吸着膜から脱離できなくなり、吸着膜に留まり続けることで、におい成分が堆積していくことが主要因である。
例えば特許文献1には、劣化具合に応じて2段階のパラメータをもつ補正手段を用いて経時劣化によるセンサ値の補正精度を向上させる手法が開示されている。また、特許文献2には、センサの応答量を補正するためのリファレンスとなるセンサを新たに付加することで補正を行う方法が開示されている。
特許第6730110号公報 特許第6428779号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、2段階のみのパラメータを持つため、劣化具合に対し、柔軟に対応することが難しく、長期的な環境や、パラメータの変化点等においては、その差が生じやすい。またセンサ個体に特有の経時変化を示してしまった場合には、補正はうまく機能しなくなる。
一方、特許文献2の方法では、ガスセンサの補正のためにリファレンスを用意しなければならないため、追加のコストが必要になる。また、使用するリファレンスは、測定に用いるセンサの経時変化特性を含めて同じ特性を持っていなければならない。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、センサの経時変化に柔軟に対応しつつ、測定値の補正精度を向上させることができるガス検出装置、湿度補正方法および制御装置を提供することにある。
本発明の一形態に係るガス検出装置は、検出素子と、湿度センサと、制御装置とを具備する。
前記検出素子は、検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる。
前記湿度センサは、前記検出対象ガスの湿度を検出する。
前記制御装置は、取得部と、記憶部と、測定部と、更新部とを有する。
前記取得部は、前記検出素子の測定値と、前記湿度センサの測定値とを取得する。
前記記憶部は、補正係数を記憶する。
前記測定部は、前記補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定する。
前記更新部は、前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である第1の履歴データに基づいて算出された更新用補正係数に更新する。
前記検出素子の測定値は、測定期間内で取得された共振周波数の最小値もしくは最大値、又は、測定期間終了時点における共振周波数であってもよい。
前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値は、互いに時間的に紐づけされた測定値であってもよい。
前記制御装置は、前記補正係数の履歴である第2の履歴データを基に設定された判定基準に基づいて、前記補正係数を前記更新用補正係数に更新すべきか否かを判定する判定部をさらに有してもよい。
前記判定部は、前記第2の履歴データにおける前記補正係数の平均値を基に前記判定基準を設定し、前記更新用補正係数が前記判定基準を満たす場合に限り、前記補正係数を前記更新用補正係数に更新するように構成されてもよい。
前記検出素子は、複数の検出素子を有しもよい。
前記検出素子は、前記におい成分を吸着する吸着膜を有し、前記におい成分の吸着により共振周波数変化を生じる振動デバイスであってもよい。
本発明の一形態に係る湿度補正方法は、ガス検出装置用の湿度補正方法であって、
第1の周期で、検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる検出素子の測定値と、前記検出対象ガスの湿度を検出する湿度センサの測定値とを取得し、
補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定し、
前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である履歴データに基づいて算出された更新用補正係数を算出する。
本発明の一形態に係る制御装置は、ガス検出装置用の制御装置であって、
第1の周期で、検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる検出素子の測定値と、前記検出対象ガスの湿度を検出する湿度センサの測定値とを取得する取得部と、
補正係数を記憶する記憶部と、
前記補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定する測定部と、
前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である第1の履歴データに基づいて算出された補正係数に更新する更新部と
を具備する。
本発明によれば、センサの経時変化に柔軟に対応しつつ、測定値の補正精度を向上させることができる。
本発明の実施形態に係るガス検出装置の概略模式図である。 検出素子の一構成例を示す模式図である。 湿度補正用の補正係数の算出方法の説明図である。 湿度補正用の補正係数の算出方法の説明図である。 検出素子の周波数変化を示す模式図である。 ガス検出装置における制御装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。 補正係数の履歴データの一例を示す図である。 更新用補正係数の採否判定方法を説明する図である。 更新用補正係数の採否判定方法を説明する図である。 更新用補正係数の採否判定方法を説明する図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[ガス検出装置]
図1は、本実施形態に係るガス検出装置100の概略模式図である。
ガス検出装置1は、例えば、配電盤の内部に設置され、ケーブル火災などの異常が生じた際に発生するガス中の特定のにおい成分を検出して警報等を発動させる警報装置として構成される。
図1に示すように、ガス検出装置100は、ガスセンサ2と、制御装置4と、警報装置5とを備える。
ガスセンサ2は、筐体20と、第1吸気口21と、第2吸気口22と、センサ室60とを有する。
第1吸気口21は、第1流路31を介してセンサ室60に連通する。第2吸気口22は、第2流路32を介してセンサ室60に連通する。
第1吸気口21および第2吸気口22は、センサ室60に外気Gを取り込む入口である。外気Gは、ガス検出装置100の検出対象ガスであり、本実施形態では、配電盤内部の空気である。本実施形態の説明において、ガスは、水分やにおい成分を含む。
第1流路31には、第1吸気口21から外気Gをセンサ室60に取り込む第1ポンプ31Pが配置される。
第2流路32には、第2吸気口22から外気Gをセンサ室60に取り込む第2ポンプ32Pが配置される。第2流路32には、第2吸気口22から取り込んだ外気Gに含まれるにおい成分や水分を吸着してクリーンエアを生成するフィルタ32Fが配置される。
本発明の実施形態においてクリーンエアとは、外気Gに含まれるにおい成分や水分をフィルタで除いた気体のことを指すが、別途におい成分や水分が含まれない清浄な気体を生成する装置を備え、その装置から清浄な気体をクリーンエアとしてセンサ室60に送出してもよい。
第1ポンプ31Pおよび第2ポンプ32Pは、典型的にはダイアフラムポンプで構成されるが、これ以外にも、ファンやブロワなど一定の流量で気体を送出あるいは吸引可能な気体送出器が採用可能である。
第1ポンプ31Pおよび第2ポンプ32Pは、制御装置4により個別に駆動されるとともに、いずれか一方が駆動されることで、外気の取り込み流路として第1流路31および第2流路32のいずれが選択される。
フィルタ32Fには、湿度や親水性のにおい成分を除去するためにシリカゲルやモレキュラーシーブ等の湿度除去効果の高い材料、におい成分を除去するために活性炭やゼオライト等のにおい吸着効果の高い材料、またはそれらの組み合わせを用いることができる。
センサ室60は、検出素子としての複数のQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサ10と、湿度センサ70を収容する。
センサ室60は、外気Gを取り込んで測定を行う部屋を形成する。センサ室60は第1流路31および第2流路32に接続され、第1吸気口21または第2吸気口22を介して外気Gがセンサ室60に導入される。センサ室60には、図示しないが、導入されたガスを排気する排気通路が接続される。
QCMセンサ10は、外気Gに含まれるにおい成分の吸着により共振周波数の変化が生じる検出素子である。各QCMセンサ10は、検出チャンネル(ch)を構成する。QCMセンサ10の数はチャンネル数に相当し、その数は特に限定されない。本実施形態では、16chのQCMセンサ10を備える例をあげるが、少なくとも1chあればよい。
各QCMセンサ10には、発振回路50が接続される。各発振回路50は、制御装置4により駆動される。各発振回路50は、各QCMセンサ10を所定の共振周波数で振動させる。発振回路50は、QCMセンサ10の発振周波数をカウントするカウンタ回路(図示略)に接続される。上記カウンタ回路は、各QCMセンサ10の共振周波数の変化をカウントし、そのカウント値を制御装置4へ出力する。本実施形態において、各QCMセンサ10の測定値は、上記カウンタ回路により出力されるカウント値である。
湿度センサ70は、外気Gの相対湿度を測定するものである。湿度センサ70の出力である測定値は、制御装置4へ出力される。制御装置4は、後述するように、湿度センサ70により測定された湿度を基に、各QCMセンサ10の測定値を補正する。
湿度センサ70には、静電容量の出力値によって湿度を検出する静電容量方式、抵抗値の出力値によって湿度を検出する半導体方式といった従来のものを用いることができるが、これに限られない。QCMセンサ上に親水性の吸着膜を形成して、におい成分が吸着したときの共振周波数変化に基づき、各QCMセンサ10の湿度を補正してもよい。
なお、センサ室60には、外気Gの温度を検出する温度センサをさらに備えてもよい。この場合、当該温度センサにより検出された温度を基に、各QCMセンサ10で検出された共振周波数から温度による共振周波数変化をキャンセルして、温度の影響のない各QCMセンサ10の共振周波数変化を検出することができる。
各QCMセンサ10、各発振回路50および湿度センサ70は、共通の配線基板に搭載されてもよいし、それぞれ別々の配線基板に搭載されてもよい。
各QCMセンサ10は、いずれも振動子としての水晶振動子と、該水晶振動子上に設けられ、外気Gに含まれるにおい成分を吸着する吸着膜を備えた構成を有しており、吸着膜の種類が異なるのみで基本構造は同じである。
図2に示すように、QCMセンサ10は、水晶振動子13と、電極11と、吸着膜12と、リードランド16Aと、リードランド16Bと、リード14Aと、リード14Bと、ピン端子19Aと、ピン端子19Bと、ホルダ18とを有する。水晶振動子13は、例えば、ATカットの水晶板である。水晶振動子13の共振周波数は特に限定されず、例えば、32MHzである。
QCMセンサ10の水晶振動子13の共振周波数は吸着膜12に吸着したガスの重量の増加に比例して減少するので、QCMセンサ10ごとに共振周波数の変化量を算出し、外気Gにおけるにおい成分の有無を検出し、あるいは、1つ以上のにおい成分の量もしくは濃度を測定する。さらに、この算出結果を基に、外気Gに含まれるにおいの種類または強度を求めることができる。
本実施形態においては、検出素子の振動子に水晶振動子を用いるが、これに限定されない。例えば、水晶振動子以外にセラミック振動子、表面弾性波素子、圧電薄膜共振子、カンチレバー、ダイヤフラムなどの振動デバイスを用いることもできる。
電極11は、水晶振動子13の両面にそれぞれ形成され、吸着膜12は水晶振動子13の一方の面に形成された電極11上に形成される。リードランド16Aは一方の面に形成された電極11と一体形成されてなり、リードランド16Bは他方の面に形成された電極11と一体形成されてなる。
各QCMセンサ10の吸着膜12は、それぞれ、異なる種類の材料で構成される。吸着膜12を構成する材料は、検出するべきにおい成分の種類に応じて任意に選定される。吸着膜12は、1つ以上の種類のにおい成分を吸着できるように構成される。
リード14A及びリード14Bは金属バネ材で構成される。リード14Aは、一端がリードランド16Aを介して一方の面に形成された電極11と電気的に接続し、他端がピン端子19Aに接続する。リード14Bは一端がリードランド16Bを介して他方の面に形成された電極11と電気的に接続し、他端がピン端子19Bに接続する。
ピン端子19Aと、ピン端子19Bは、配線基板上に設けられたホルダ18に支持され、ホルダ18によって水晶振動子13は振動自在に支持される。
制御装置4は、各QCMセンサ10の測定値に基づいて、検出対象ガスである外気Gにおけるにおい成分の有無を検出し、あるいは、1つ以上のにおい成分の量もしくは濃度を測定する。
この際、各QCMセンサ10の吸着膜12は、におい成分だけでなく、検出対象ガスに含まれる水分をも吸着する。このため、各QCMセンサ10の測定値には、水分の吸着による周波数変化に関する情報も含まれる。
そこで制御装置4は、におい成分の吸着による周波数変化のみを精度よく測定するために、各QCMセンサ10の測定値から湿度成分を除去するための補正(以下、湿度補正ともいう)を行う。
さらに、測定装置4は、各QCMセンサ10の吸着膜12の経時劣化に伴う測定精度の低下を抑えるため、湿度補正用の補正係数を定期的に更新することが可能に構成される。
[制御装置]
以下、制御装置4の詳細について説明する。
制御装置4は、CPUおよびメモリを有する情報処理装置で構成される。制御装置4は、第1ポンプ31P、第2ポンプ32P、発振回路50、湿度センサ70などの駆動を制御し、発振回路50および湿度センサ70から各QCMセンサ10の共振周波数の変化量および外気Gの湿度に関する情報を取得する。
図1に示すように、制御装置4は、CPUの機能ブロックとして、取得部41と、測定部42と、算出部43と、更新部44と、判定部45とを有する。制御装置4はさらに、半導体メモリ等で構成された記憶部46を備える。
(記憶部)
記憶部46は、取得部41、測定部42、算出部43、判定部45および更新部44をCPUの機能ブロックとして動作させるためのプログラムを記憶する。
記憶部46は、取得部41で取得された、クリーンエアにより吸着膜12およびセンサ室60が清浄化された状態での各QCMセンサ10の共振周波数を記憶する。吸着膜12の清浄化とは、クリーンエアによって、吸着膜12からにおい成分を脱着させることをいう。クリーンエアには、第2吸気口22から外気Gを取り込み、第2流路32のフィルタ32Fを通してセンサ室60に導入したものを用いることができる。クリーンエアにより吸着膜12およびセンサ室60が清浄化された状態での各QCMセンサ10の共振周波数を以下、各QCMセンサ10の周波数のゼロ点ともいう。ゼロ点はQCMセンサ10毎に予め取得され、記憶部46に記憶される。
記憶部46は、取得部41で取得された、各QCMセンサ10の測定値を記憶する。各QCMセンサ10の測定値は、第1吸気口21から第1流路31を通して外気Gをセンサ室60に導入したときの各QCMセンサ10の共振周波数の変化量に相当する。
記憶部46は、取得部41で取得された、湿度センサ70の測定値を記憶する。
記憶部46は、各QCMセンサ10の測定値と湿度センサ70の測定値とを時間的に紐づけし、これら各QCMセンサ10及び湿度センサ70各々の測定値の履歴である履歴データ(以下、第1の履歴データともいう)を記憶する。
記憶部46は、算出部43で算出された補正係数を、算出した日時情報と紐づけし、これらの履歴である履歴データ(以下、第2の履歴データともいう)を記憶する。
記憶部46はさらに、各種のにおいをセンサ室60で検出したときの参照用検出パターンを異なる種類のにおい毎に予め記憶する。
記憶部46は、各QCMセンサ10について固有の補正係数の初期値を記憶する。補正係数の初期値は、未使用のガス検出装置100が最初に使用される際に参照される補正係数である。この補正係数は、予めにおい成分のない環境下で測定した各QCMセンサ10の湿度依存特性に基づいて算出される。
(補正係数の初期値の決定方法)
ここで、補正係数の初期値の算出方法について説明する。
補正係数の初期値の算出に際しては、ガスとして大気を用いて測定した各QCMセンサ10及び湿度センサ70の出力の時間変化が参照される。その測定結果の一例を図3に示す。
図3において横軸は測定時間、左側の縦軸はQCMセンサ10の共振周波数、右側の縦軸は湿度センサ70により検出される検出対象ガスである大気の相対湿度をそれぞれ示している。
におい成分を含まないガスを用いて各QCMセンサ10の出力パターンを測定することで、各QCMセンサ10の出力と環境要因(本例では湿度)との関係を知ることができる。
各QCMセンサ10は、ガス中の水分の吸着量の相違に応じて共振周波数がゼロ点から徐々に低下する方向に変動し、測定開始から所定時間経過後に一定の共振周波数で振動する。図示の例では、検出チャンネル番号8である「ch8」のQCMセンサ10が最も周波数変化量が大きいことを示している。このことは、「ch8」のQCMセンサ10の吸着膜12が他のチャンネルの吸着膜12と比較して水分が吸着しやすく、水分との親和性が高いことを示している。
一方、湿度センサ70については、大気の導入開始に伴う測定環境の湿度の上昇に伴い、測定開始から検出湿度が徐々に増加する方向に変動する。
図3において、「dch」は、各QCMセンサ10のゼロ点からの周波数変動量であり、「dch min」は、各QCMセンサ10の共振周波数の最小値である。「ch8 min」は、「ch8」のQCMセンサ10の共振周波数の最小値を意味する。
また、「dhumidity」(以下、dhmdと略記する)は、湿度センサ70の測定値であり、「dhmd min」は、全QCMセンサ10のうち最も周波数変動量が大きい「ch8」のQCMセンサ10の共振周波数が最小値を示すときの湿度センサ70の測定値である。
なお、図3に示すデータは、大気をQCMセンサ10に当てたとき、大気に含まれているにおい成分がQCMセンサ10に吸着されることでその共振周波数が低下する様子を示している。湿度センサ70の測定値としては、上述のように、最も周波数変動量が大きい検出チャンネルのQCMセンサ10の共振周波数の最小値を示すときの湿度センサの測定値が採用される。図3に示す場合では、最も周波数変動量が大きい「ch8」のQCMセンサ10の共振周波数の最小値を示すときの湿度センサの測定値が採用される。
一方、大気によってQCMセンサ10に吸着された水分が脱着する場合がある。この場合、QCMセンサ10の共振周波数は上昇するため、湿度センサ70の測定値としては、最も周波数変動量が大きい検出チャンネルのQCMセンサ10の共振周波数が最大値を示すときの湿度センサの測定値が採用される。
このように、大気をQCMセンサ10に当てたときにQCMセンサ10の共振周波数が低下する場合と上昇する場合のいずれもが起こり得るため、湿度センサ70の測定値の決定の際に基準とされるQCMセンサ10の測定値には、最も周波数変動の大きい検出チャンネルのQCMセンサ10の共振周波数の最小値の絶対値と最大値の絶対値を比較し、それらのうち最も大きな値を示す測定値が採用されてもよい。さらに別の方法として、測定期間の終了時点における最も周波数変動の大きい検出チャンネルのQCMセンサ10の測定値が採用されてもよい。
続いて、測定開始時の湿度と任意の測定時間における湿度センサ70の測定値との差を湿度差とし、湿度差に対する各QCMセンサ10の周波数変動量をプロットした結果を図4に示す。図4に示すように各QCMセンサ10の周波数変動量と湿度差との間には、次式で示すように極めて明瞭な直線関係がみられる。
(dch)=a1×(dhmd)+b1 …(1)
上式において、定数a1およびb1は、各QCMセンサ10について固有の値であり、典型的には、定数a1が補正係数の初期値に相当する。なお、定数a1だけでなく、定数b1や直線以外の式の係数も湿度補正に使用されてもよい。
上記補正式は、複数回の測定によって得られたQCMセンサ10の周波数変動量(dch)と湿度センサ70の測定値(dhmd)から回帰分析によって求められる。
(取得部)
取得部41は、各QCMセンサ10の測定値、及び、湿度センサ70の測定値を取得する。
より詳細には、取得部41は、クリーンエアの導入により吸着膜12およびセンサ室60を清浄化したときの各QCMセンサ10の共振周波数のゼロ点を取得する。以下、この処理をリフレッシュ処理ともいう。リフレッシュ処理は、外気Gに対する各QCMセンサ10の測定前または測定後に実行される。リフレッシュ処理は、例えば1分間である。
取得部41は、第1の周期で、センサ室60に外気Gを導入したときの各QCMセンサ10の測定値を取得する。以下、この処理をガス測定処理ともいう。第1の周期は特に限定されず、例えば1時間である。本実施形態では、毎回のガス測定処理中における各QCMセンサ10の共振周波数の最大変化量を各QCMセンサ10の測定値として取得する。
取得部41は、第1の周期で、湿度センサ70の測定値を取得する。本実施形態では図3を参照して説明したように、毎回のガス測定処理中において、QCMセンサ10のうち周波数変化が最も大きいQCMセンサ10の共振周波数が最小値をとるときの湿度センサ70の出力を、湿度センサ70の測定値として取得する。
なお、この場合も上述と同様に、周波数変化が最も大きい検出チャンネルのQCMセンサ10の共振周波数の最小値の絶対値と最大値の絶対値のうちいずれか大きい方が採用されてもよいし、測定期間終了時点における測定値が採用されてもよい。
図5は、リフレッシュ処理およびガス測定処理におけるQCMセンサ10の出力変化の一例を示す模式図である。
同図に示すように、制御装置4は、リフレッシュ処理とガス測定処理とを交互に行う処理を実行する。
ガス測定処理前のリフレッシュ処理期間において、各QCMセンサ10の吸着膜12およびセンサ室60をクリーンエアで十分に清浄化し、各QCMセンサ10の振動数やセンサ室60の湿度などの環境要因をゼロ点にする。このときのリフレッシュ処理期間は、例えば20分である。
ガス測定処理は、リフレッシュ処理後に実行される。図示の例では、16chのQCMセンサ10のうち、ch1、ch2及びch3の3つのQCMセンサ10の共振周波数が変化した様子を示す。各chの共振周波数のゼロ点からの最大変化量を示す周波数の最小値が、各QCMセンサ10の測定値に含まれる。ガス測定処理は、第1の周期、例えば1時間ごとに所定時間(例えば1分)実行される。
具体的に例を挙げると、ガス測定処理前のリフレッシュ処理が20分実行された後、ガス測定処理が1分実行され、その後1分のリフレッシュ処理が実行され、その後、38分の待機時間を設けることを第1の周期とする。38分の待機時間は、ポンプを駆動せず、リフレッシュ処理とガス測定処理を行わない期間である。その後次の周期が開始され、ガス測定処理前のリフレッシュ処理が始まる。第1の周期は、1時間に限られない。ガス測定処理、リフレッシュ処理、および待機時間も任意に設定できる。待機時間を設けず、ガス測定処理の実行とリフレッシュ処理の実行を順に行うことで第1の周期としてもよい。
ガス測定処理の終了後は、リフレッシュ処理が再度実行される。これにより、各QCMセンサ10の吸着膜12に吸着されたにおい成分や水分が脱離し、各QCMセンサ10の共振周波数はゼロ点に復帰する。リフレッシュ処理期間は特に限定されず、ガス測定処理の終了後、次のガス測定処理の直前まで継続して行ってもよい。
各QCMセンサ10の振動数のゼロ点は、経時劣化のないQCMセンサ10では、水晶振動子13の固有振動数である32MHzである。一方、吸着膜12の経時劣化等によりにおい成分や水分の脱離が不十分な場合は、QCMセンサ10のゼロ点は、水晶振動子13の固有振動数よりも低い周波数となる。
(測定部)
測定部42は、ガス測定処理時において、補正係数を用いて各QCMセンサ10の測定値を湿度補正し、検出対象ガスである外気Gにおけるにおい成分の種類およびその量あるいは濃度を測定する。におい成分とは、各QCMセンサ10のうち少なくとも1つの吸着膜12で吸着されるにおい成分であって、記憶部46に記憶された参照用検出パターンで特定可能なものをいう。
上述のように、QCMセンサ10の周波数変動と湿度との間には直線的な関係が見られる。そこで、QCMセンサ10の測定値に余分に含まれる湿度による周波数変動分を「Δchhumidity」、湿度センサ70の測定開始時における測定値とQCMセンサ10の測定値の取得時における湿度センサ70の測定値との差を「ΔHumidity」とすると、両者の間の関係は次式のように表すことができる。
Δchhumidity=a2×ΔHumidity+b2 …(2)
なお、定数a2およびb2は、各QCMセンサ10について固有の値をもち、典型的には、定数a2が補正係数として使用される。なお、定数a2だけでなく、定数b2や直線以外の式の係数も湿度補正に使用されてもよい。
測定部42において実行される各QCMセンサ10の測定値の湿度補正では、各QCMセンサ10の測定値に湿度による変動分が余分に含まれていると仮定する。そこで、湿度補正前のQCMセンサ10の測定値をΔchraw、湿度補正後のQCMセンサ10の測定値をΔchsampleとすると、測定部42は、次式で示す演算処理を実行することで、QCMセンサ10の測定値の湿度補正を行う。
Δchsample=Δchraw-Δchhumidity …(3)
測定部42は、湿度補正した各QCMセンサ10の測定値の組み合わせパターンを、記憶部46に予め記憶されている参照用検出パターンと照合し、機械学習によるパターン認識などでにおい種類や強度を評価する。
測定部42は、異常を示すにおい成分を検出したとき、あるいは、当該におい成分の濃度が所定以上の濃度であると評価したとき、異常信号を生成して警報装置5へ出力する。
警報装置5は、ブザー、ランプ等の警報機器を有する。警報装置5は、制御装置4からにおい成分の検出時に生成される異常信号を受信し、ブザーを鳴動し、あるいはランプを点灯あるいは明滅させる。これにより、外部へ配電盤の異常を報知することができる。
(算出部)
QCMセンサ10の湿度補正に用いられる補正係数は、経時的に変化する。つまり、一定周期(本実施形態では1時間)でガス測定処理が繰り返し行われるため、その後のリフレッシュ処理での吸着膜12の清浄化レベルが徐々に低下する。その結果、測定開始から日数が経過するにつれて、固定された補正係数では適切な湿度補正が行えなくなり、におい成分の評価結果を誤る可能性がある。具体的には、異常が発生していないにもかかわらず異常と判断したり、異常が発生しているにもかかわらず異常が発生していないと判断したりする可能性がある。
このような問題を防ぐため、本実施形態の制御装置4は、補正係数を更新することが可能に構成される。算出部43は、更新用の補正係数を定期的に算出する処理を実行するように構成される。
算出部43は、記憶部46に記憶された各QCMセンサ10および湿度センサ70各々の測定値の履歴である第1の履歴データに基づいて補正係数を算出する。補正係数の算出方法は、図3および図4を参照して説明した補正係数の初期値の算出方法と同様な手法が採用されるが、更新用の補正係数の算出に際しては、各QCMセンサ10の測定値として、ガス測定処理の際に取得した各QCMセンサ10の測定値が用いられる。これにより、雰囲気調整された測定環境を新たに用意する必要がなくなるため、ガス検出装置100による定常的な異常監視動作を継続しながら、新たに補正係数を算出することができる。
算出部43は、ガス測定処理の動作周期である上述の第1の周期(本例では1時間)よりも長い第2の周期で、更新用の補正係数(以下、更新用補正係数ともいう)を算出する処理を実行する。第2の周期は特に限定されず、例えば1日(24時間)である。
算出部43は、補正係数の算出の際、過去24時間分の各QCMセンサ10の測定値とこれらに紐づけられた湿度センサ70の測定値との履歴データ(第1の履歴データ)の中から直近の履歴データを用いて、上記(1)式で示したような補正式を算出する。直近の履歴データの数は特に限定されず、本実施形態では、過去24時間分の履歴データ、すなわち、直近の過去24回分のガス測定処理の際に取得した各QCMセンサ10および湿度センサ70の測定値が用いられる。
(更新部)
更新部44は、測定部42における湿度補正処理で使用されている補正係数を、第2の周期で(24時間ごとに)、算出部43において算出された更新用補正係数に更新する処理を実行可能に構成される。これにより、吸着膜12の経時劣化に伴う各QCMセンサの測定値の精度低下を抑制し、長期にわたる適正な異常検知動作を確保することができる。
本実施形態では、後述するように、判定部46において更新が許可された場合に限り、現在の補正係数を更新用補正係数に更新するように構成される。
(判定部)
更新用補正係数を算出する際に参照されるデータは、においがなく、純粋に湿度の変動のみによって周波数変動が引き起こされたQCMセンサ10の測定値であることが理想である。一方、本実施形態では、ガス測定処理期間で取得した各QCMセンサ10の測定値を基に更新用補正係数を算出しているが、これらの測定値は、常ににおいのない環境で測定されたデータであるとは限られない。例えば、におい成分が検出されたものの、異常状態を評価されるほどではないときがある。このような条件で測定されたデータを基に算出された補正係数を採用した場合、後続の異常検知処理に多大な影響をもたらすおそれがある。
そこで本実施形態では、新たに算出された更新用補正係数をそのまま採用せず、算出された更新用補正係数が過去の補正係数の履歴に基づいて適切であるか否かを判定する判定部45を有する。
判定部45は、記憶部46に記憶された補正係数の過去の履歴である第2の履歴データを基に設定された判定基準に基づいて、現在の補正係数を、算出部42において算出された更新用補正係数に更新すべきか否かを判定するように構成される。
判定基準としては、過去の補正係数から次の補正係数の予測値と、その許容範囲を算出する。予測値としては、例えば、過去の補正係数の平均値が挙げられ、許容範囲としては、例えば、補正係数の履歴の標準偏差に一定の係数を乗算したものが挙げられる。
[ガス検出装置の動作]
以下、制御装置4の詳細について、ガス検出装置100の典型的な動作とともに説明する。図6は、制御装置4の処理手順の一例を示すフローチャートである。
(ガス測定処理)
制御装置4は、ガス検出装置100の運転が開始してから第1の周期でガス測定処理を定期的に実行する。本実施形態では、第1の周期すなわち1時間ごとにガス測定処理が実施される(ステップ101~104)。
ガス測定処理では、上述のように、第1ポンプ31Pの駆動により第1吸気口21から取り込んだ外気G(配電盤内部の空気)が第1流路31を通してセンサ室60へ導入される。制御装置4は、各QCMセンサ10および湿度センサ70各々の測定値を取得し、記憶部46へ記憶する(ステップ102)。
続いて、制御装置4は、湿度センサ70で取得された外気Gの相対湿度と記憶部46に格納された補正係数とを用いて、各QCMセンサ10の測定値を湿度補正する(ステップ103)。補正係数の更新前であれば、図3および図4を参照して説明したように予め測定された補正係数の初期値が用いられる。
制御装置4は、湿度補正した各QCMセンサ10の測定値の組み合わせである検出パターンを、記憶部46に予め記憶されている参照用検出パターンと照合し、機械学習によるパターン認識などでにおい成分の種類または強度を評価する(ステップ104)。
そして、ここでは、異常を示すにおい成分が無いか、その濃度が所定値未満の場合は無臭と判断し、正常であると判断する(ステップ105において「Y」)。
一方、異常を示すにおい成分の濃度が所定値以上であると評価したとき、異常と判断し(ステップ105において「N」)、異常信号を生成して警報装置5へ出力する(ステップ106)。
制御装置4は、上述したガス測定処理の終了後、リフレッシュ処理を実行する。リフレッシュ処理では、第1ポンプ31Pの駆動が停止され、第2ポンプ32Pの駆動により第2吸気口22から取り込んだ外気Gが第2流路32およびフィルタ32Fを通してセンサ室60へ導入される。これにより、各QCMセンサ10の吸着膜12およびセンサ室60内が清浄化されるとともに、各QCMセンサ10の共振周波数をゼロ点に復帰させる(図5参照)。
制御装置4は、リフレッシュ処理の終了後、上述したガス測定処理およびリフレッシュ処理を第1の周期で繰り返す動作(以下、定常動作ともいう)を実行し、各回のガス測定処理について各QCMセンサ10および湿度センサ70の測定値、湿度補正後の各QCMセンサ10の測定値、におい評価結果などを含む履歴データを第1履歴データとして記憶部46に記憶する。
(補正係数算出処理)
制御装置4は、最初にガス測定処理を実行してから、第2の周期で更新用補正係数の算出処理を定期的に実行する。本実施形態では、第2の周期すなわち24時間ごとに更新用補正係数の算出処理が実施される(ステップ107~111)。更新用補正係数の算出処理は、QCMセンサ10ごとに実行される。
更新用補正係数の算出処理は、記憶部46に格納された過去24時間分のQCMセンサ10および湿度センサ70の測定値を基に、上記(1)式で示したような補正式を用いて更新用補正係数を算出する(ステップ108)。制御装置4は、後述するように、算出された更新用補正係数が許容範囲内であるか否かを判定し(ステップ109)、許容範囲内であれば、算出された更新用補正係数で現在の補正係数を更新し、次回のガス測定処理から更新された補正係数を用いて各QCMセンサ10の測定値の湿度補正処理が実行される。
一方、算出された更新用補正係数が許容範囲外である場合は、算出された更新用補正係数を破棄して、現在の補正係数を引き続き用いて各QCMセンサ10の測定値の湿度補正処理が実行される。
上述した更新用補正係数の算出処理および更新処理は、第2の周期で繰り返し実行し、各回の更新用補正係数の算出結果および補正係数の更新値などを含む履歴データを第2の履歴データとして記憶部46に記憶する。
(更新用補正係数の採否判定)
以下、ステップ109の処理において実行される更新用補正係数の採否判定について説明する。
図7は、補正係数の履歴の一例を示す図である。記憶部46には、ガス検出装置100の運転開始から現在までの補正係数の履歴データがQCMセンサ10ごとに記憶される。同図に示すように、各QCMセンサで補正係数の値や推移は異なり、特に、「ch4」の補正係数が更新のたびに大きく変動する様子がわかる。
図8は、更新用補正係数の採否判定の判定基準の説明図である。同図において、横軸は日数、縦軸は補正係数であり、1日単位で更新された補正係数の履歴が折れ線グラフで示され、丸で囲った点が、今回新たに算出された補正係数である(図9、10についても同様)。
判定基準は、図示の例では、過去の補正係数の平均値を中心にその標準偏差の3倍である±3σの範囲とされ、この範囲を更新されるべき補正係数の許容範囲とする。したがって図示の例では、今回算出された更新用補正係数が許容範囲内にあるため、現在の補正係数が当該更新用補正係数に更新される(図6におけるステップ109,110)。このような判定は、各QCMセンサ10について個別に実行される。
許容範囲は、前回の補正係数が反映されているため、補正係数の平均値は、次回更新されるべき補正係数の予測値とみなすことができる。つまり、補正係数の平均値は、日数に応じて異なり、したがって、許容範囲も常時変動するため、実情に即した適切な補正係数に更新することができる。
なお、更新用補正係数の算出時に参照される過去の補正係数は、過去所定の期間内(例えば過去2週間以内)のものであってもよい。この場合、比較的新しい過去の補正係数を用いて更新用補正係数が算出されるため、実情に即した補正係数が得られやすい。
これに対して、図9に示すように、新たに算出された更新用補正係数が許容範囲外になった場合、制御装置4は、当該更新用補正係数は不適であると判定し、これを破棄する(図6におけるステップ109,111)。
過去24時間以内においてQCMセンサ10に何等かの異常、例えば、吸着膜12の劣化、特定のにおい成分の低濃度の検出、未知のにおい成分の検出などが生じたとき、これらのデータを基に算出される更新用補正係数は、それ以前の補正係数と比べて大きく変動する可能性が高い。したがって、このような許容範囲外の補正係数を新たな補正係数として採用すると、におい測定の誤った評価を招くおそれがあるため、今回算出された更新用補正係数は採用しないこととした。
また、前回算出された更新用補正係数が許容範囲外の場合でも、図10に示すように、次に算出される更新用補正係数が許容範囲内に収まることがある。
したがって、算出された更新用補正係数が許容範囲外と判定した場合は、典型的には、現在の補正係数が引き続き使用される。これに限られず、例えば、許容範囲内の過去の直近数日分の補正係数の平均値などが、更新用補正係数として更新されてもよい。
なお、許容範囲外の更新用補正係数が連続して複数回算出された場合は、上述したように過去の補正係数の平均値が採用されてもよい。
以上のように本実施形態においては、ガス検出装置100の定常動作に伴って得られるQCMセンサ10および湿度センサ70の測定値を数値的に処理し、定期的に補正係数を更新し、なおかつ得られた補正係数の履歴から、次の補正係数の予測値とその範囲を算出し、次の測定によって得られた値がその範囲内に収まっている場合のみ、その新たな補正係数を、最新の補正係数として採用する。これにより、センサの経時変化に柔軟に対応しつつ、測定値の補正精度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、補正係数を自動的に算出、更新するように構成されているため、長期にわたり高精度な異常検知動作を安定して行うことができる。特に、配電盤など、普段は人が出入りしない場所の異常の有無の検査が容易になるため、作業者の負担を軽減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば以上の実施形態では、におい成分の検出素子としてQCMセンサを例に挙げて説明したが、これに限られず、におい成分の吸着により抵抗値の変化が生じる半導体センサなどの他の検出素子が採用されてもよい。また、吸着膜のガス吸着による重量増加、膨張応力増加等の物理変化を検出し、電気信号に変換できるものであってもよい。
また本発明に係るガス検出装置は、火災等の異常検知の用途に限られない。例えば、室内における不快なにおい成分を検知して換気動作を行うためのセンサとして用いられてもよい。また、未知のガスに含まれるにおい成分の分析などにも本発明は適用可能である。
さらに以上の実施形態では、最も周波数変動の大きいQCMセンサ10の共振周波数の変化に基づいて湿度センサ70の測定値を決定し、当該湿度センサ70の測定値を共通に用いて各検出チャンネルのQCMセンサ10の測定値の湿度補正を行ったが、これに限られない。例えば、各QCMセンサ10の共振周波数の最小値または最大値に基づき湿度センサ70の測定値を検出チャンネルごとに個々に決定し、決定した各検出チャンネルの湿度センサの測定値を用いて各検出チャンネルのQCMセンサ10の測定値の湿度補正を個別に行ってもよい。
4…制御装置
10…QCMセンサ(検出素子)
12…吸着膜
41…取得部
42…測定部
43…算出部
44…更新部
45…判定部
46…記憶部
70…湿度センサ
100…ガス検出装置

Claims (9)

  1. 検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる検出素子と、
    前記検出対象ガスの湿度を検出する湿度センサと、
    制御装置と
    を具備し、
    前記制御装置は、
    前記検出素子の測定値と、前記湿度センサの測定値とを取得する取得部と、
    補正係数を記憶する記憶部と、
    前記補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定する測定部と、
    前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である第1の履歴データに基づいて算出された更新用補正係数に更新する更新部と、を有する
    ガス検出装置。
  2. 請求項1に記載のガス検出装置であって、
    前記検出素子の測定値は、測定期間内で取得された共振周波数の最小値もしくは最大値、又は、測定期間終了時点における共振周波数である
    ガス検出装置。
  3. 請求項1又は2に記載のガス検出装置であって、
    前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値は、互いに時間的に紐づけされた測定値である
    ガス検出装置。
  4. 請求項1~3のいずれか1つに記載のガス検出装置であって、
    前記制御装置は、前記補正係数の履歴である第2の履歴データを基に設定された判定基準に基づいて、前記補正係数を前記更新用補正係数に更新すべきか否かを判定する判定部をさらに有する
    ガス検出装置。
  5. 請求項4に記載のガス検出装置であって、
    前記判定部は、前記第2の履歴データにおける前記補正係数の平均値を基に前記判定基準を設定し、前記更新用補正係数が前記判定基準を満たす場合に限り、前記補正係数を前記更新用補正係数に更新する
    ガス検出装置。
  6. 請求項1~5のいずれか1つに記載のガス検出装置であって、
    前記検出素子は、複数の検出素子を有する
    ガス検出装置。
  7. 請求項1~6のいずれか1つに記載のガス検出装置であって、
    前記検出素子は、前記におい成分を吸着する吸着膜を有し、前記におい成分の吸着により共振周波数変化を生じる振動デバイスである
    ガス検出装置。
  8. ガス検出装置用の湿度補正方法であって、
    検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる検出素子の測定値と、前記検出対象ガスの湿度を検出する湿度センサの測定値とを取得し、

    補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定し、
    前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である履歴データに基づいて算出された更新用補正係数を算出する
    湿度補正方法。
  9. ガス検出装置用の制御装置であって、
    検出対象ガスに含まれるにおい成分の吸着により出力変化を生じる検出素子の測定値と、前記検出対象ガスの湿度を検出する湿度センサの測定値とを取得する取得部と、
    補正係数を記憶する記憶部と、
    前記補正係数を用いて湿度補正された前記検出素子の出力に基づいて前記におい成分を測定する測定部と、
    前記検出素子および前記湿度センサ各々の測定値の履歴である第1の履歴データに基づいて算出された補正係数に更新する更新部と
    を具備する制御装置。
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