JP2023000328A - 変性セルロースおよび樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】生分解性成分で形成され、樹脂に対する補強材として有用な変性セルロース繊維を提供する。【解決手段】セルロース繊維に、3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーが変性した変性セルロースを調製する。前記変性セルロースは、前記セルロース繊維の無水グルコース単位の6位に、前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーがエステル結合していてもよい。前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーの平均重合度は1~10であってもよい。前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーによるグラフト化率は5~30モル%であってもよい。前記3-ヒドロキシ酪酸はR-3-ヒドロキシ酪酸であってもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、3-ヒドロキシ酪酸(以下、単に「3HB」と称する場合がある)またはそのオリゴマーで変性されたセルロースおよびこの変性セルロースを含む樹脂組成物に関する。
環境保全や持続可能な社会の実現などの観点からプラスチック原料の一部または全部のバイオマス化が進められ、バイオベースプラスチック(または生分解性プラスチック)の利用が進んでいる。このようなプラスチックは、耐久性や強度などの観点から、一般に様々な添加剤や補強材と組み合わせて樹脂組成物の形態で使用されている。補強材としては、繊維状補強材、例えば、炭素繊維、ガラス繊維などが使用されているが、これらの繊維状補強材は、製造過程で多くの二酸化炭素を排出し、リサイクル性に乏しい。一方、植物由来の繊維であるセルロースは、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有する。そのため、補強材として、セルロースなどの植物由来の繊維に代替することが求められている。しかし、セルロース繊維やそのナノ繊維であるセルロースナノファイバーは、一般にプラスチックとの相性(親和性、混和性)に劣り、相溶化剤などが併用される。
特開2017-171713号公報(特許文献1)には、アシル化修飾植物繊維と、熱可塑性樹脂と、相溶化剤とを含み、希釈用樹脂で希釈されるマスターバッチが記載され、前記アシル化修飾植物繊維としてアセチル化修飾植物繊維を用い、前記熱可塑性樹脂としてポリ乳酸を用い、希釈用樹脂としてポリプロピレン、ポリエチレンを用いた例が記載されている。
特開2016-79369号公報(特許文献2)には、樹脂に対して分散性の高い修飾セルロースとして、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物で修飾され、樹脂を複合化する材料として有用な修飾セルロースが記載され、樹脂として、ポリ乳酸などのバイオマス由来の脂肪族ポリエステル系樹脂も例示されている。
また、前記樹脂組成物が、一部または全部が生分解性を示さない成分(プラスチック、添加剤、補強材など)を含むと、土壌、湖沼、河川を含む環境や、海洋中に流出した非生分解性成分が、紫外線などにより崩壊、細分化され、直径5mm以下のマイクロプラスチックが生成する。このマイクロプラスチックが、鳥類、魚類などの生体内に取り込まれると、内分泌かく乱を引き起こすことが懸念されている。
なお、生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)などが挙げられる。しかし、これらの生分解性プラスチックは、嫌気条件での生分解性(またはバイオガス化)が低く、海洋中での生分解性が低い。前記生分解性プラスチックは密度が高く海洋中に沈むため、マイクロプラスチック問題の解決には、海洋中などの嫌気条件においても高い生分解性を有するプラスチックの開発が必要である。
H.Yagi et al., Polymer Degradation and Stability, 110, (2014), 278-283(非特許文献1)には、各種生分解性ポリエステルの嫌気条件における生分解性が評価されており、PLA、PCL、PBSに比べて、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(PHB)が嫌気条件で高い生分解性を示すことが開示されている。しかし、微生物によって産生(生合成)されるPHBなどのポリ-3-ヒドロキシアルカン酸は、汎用のプラスチック成形体に必要な機械的特性が不足している上に、経済性も低いため、普及が進んでいなかった。
一方、化学合成により3HBを導入した生分解性プラスチックとして、特開2017-025138号公報(特許文献3)には、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)単位の割合が、全構成単位に対して1~20モル%である生分解性コポリマーが開示されている。特許文献3には、3HB単位がランダムに導入された生分解性コポリマーが、好気条件下および嫌気条件下において高い生分解性を有することなどが記載されている。
特開2017-171713号公報 特開2016-79369号公報 特開2017-025138号公報
H.Yagi et al., Polymer Degradation and Stability, 110, (2014), 278-283
特許文献1に記載のマスターバッチは、繊維強化樹脂組成物を調製するのに適している。しかし、前記マスターバッチの相溶化剤が生分解性を示さないため、持続的な環境保全の観点からは必ずしも十分ではない。特に、生分解性を示さない希釈用樹脂を用いると、繊維強化樹脂組成物の生分解性が期待できなくなる。また、各成分が所定の溶解度パラメータの関係を有しているため、材料の選択の幅が狭くなる虞がある。さらに、アシル化修飾植物繊維は、必ずしも生分解性、特に、嫌気条件での分解性が十分ではない。
特許文献2に記載の前記修飾セルロースは、樹脂に対する混和性が高いものの、生分解性が十分ではない。そのため、上記修飾セルロースを生分解性プラスチックに添加しても、樹脂組成物全体の生分解性を向上できない。
特許文献3に記載の生分解性コポリマーは、3HBの反応性が低い上に、熱や酸により容易に分子内脱水が生じるため、高分子量化が困難であり、機械的特性が不十分な場合がある。
従って、本発明の目的は、生分解性成分で形成され、樹脂に対する補強材として有用な変性セルロース繊維(または修飾セルロース繊維)およびこの変性セルロース繊維を含む樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、相溶化剤を必ずしも必要とせず、生分解性プラスチックを有効に補強でき、かつ生分解性を有する補強材として有用な変性セルロース繊維(または修飾セルロース繊維)およびこの変性セルロース繊維を含む樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、土壌、海洋を含む水中などの嫌気性条件下でも、セルロースを含む全てのポリマー成分が生分解性を有する生分解性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、生分解性を有するセルロース繊維を3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーで修飾した3-ヒドロキシ酪酸変性セルロース(3HB-C)が、生分解性成分で形成され、樹脂に対する補強材として有用であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の変性セルロースは、セルロース繊維に、3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーが結合している。前記変性セルロースは、前記セルロース繊維の無水グルコース単位の6位に、前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーがエステル結合していてもよい。前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーの平均重合度は1~10であってもよい。前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーによるグラフト化率は5~30モル%であってもよい。前記3-ヒドロキシ酪酸はR-3-ヒドロキシ酪酸であってもよい。
本発明には、前記変性セルロースと、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂とを含む樹脂組成物も含まれる。前記樹脂は、生分解性プラスチックを含んでいてもよい。前記樹脂は、ヒドロキシアルカン酸およびラクトンから選択された少なくとも一種の単量体の単独または共重合体であってもよい。前記変性セルロースの割合は、前記樹脂100質量部に対して0.1~20質量部であってもよい。
本発明には、樹脂に前記変性セルロースを配合して前記樹脂の機械的特性を向上する方法も含まれる。前記樹脂は生分解性プラスチックであってもよい。
本発明では、生分解性を有するセルロース繊維が3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーで修飾されているため、生分解性成分で形成され、かつ樹脂に対する補強材として有用である。
また、セルロース系フィラーは一般に樹脂との親和性は低いが、3HBで修飾することにより、PHBHなどのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)との界面親和性が向上する。そのため、本発明では、相溶化剤を必ずしも必要とせず、生分解性プラスチックを有効に補強でき、かつ生分解性を有する補強材として有用である。
さらに、非特許文献1に示されている通り、PHA(およびそのモノマーである3HA)およびセルロースは、全て、土壌、海洋を含む水中などの嫌気条件下においても生分解性を示す数少ないポリマーである。そのため、3HB-CとPHAとを組み合わせると、双方ともに嫌気条件下で分解できる成分のみで構成されたバイオマスフィラーを形成でき、低炭素・脱炭素化に貢献できる。
図1は、実施例で使用した原料および得られた変性セルロースのFT-IR(フーリエ変換赤外分光法)を示すチャートである。 図2は、実施例および比較例で得られた変性セルロースの固体13C-NMRスペクトルのチャートである。 図3は、比較例1~2および実施例7で得られたフィルムにおける引張試験の結果を示すグラフである。 図4は、比較例1、3および実施例8で得られたフィルムにおける引張試験の結果を示すグラフである。 図5は、比較例1、4および実施例9で得られたフィルムにおける引張試験の結果を示すグラフである。 図6は、実施例8および比較例4で得られたフィルムにおける引張破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
[変性セルロース]
本開示の変性セルロースは、セルロース繊維と、3-ヒドロキシ酪酸(3-ヒドロキシブタン酸)またはそのオリゴマーとが結合している。
(セルロース繊維)
セルロース繊維を構成するセルロースとしては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維パルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ない点から、パルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
セルロースは、結晶性の高いセルロース(またはセルロース繊維)であってもよく、セルロースの結晶化度は、例えば40~100%(例えば50~100%)、好ましくは60~100%、さらに好ましくは70~100%(特に75~99%)であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば60~98%)であってもよい。また、セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。なお、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
セルロース繊維(特に、セルロースナノファイバー)は、セルロース成分の含有量(またはセルロース純度)が高い。セルロース成分の含有量は、セルロース繊維全体に対して、例えば60~100質量%程度の範囲から選択でき、例えば70~100質量%(例えば、70~98質量%)、好ましくは80~100質量%(例えば80~99質量%)、さらに好ましくは90~100質量%である。
セルロースは、ヘミセルロースやリグニンなどの非セルロース成分を含んでいてもよく、セルロース繊維(特に、セルロースナノ繊維)の場合、非セルロース成分の割合は繊維状セルロース中30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。セルロース繊維は、非セルロース成分を実質的に含まないセルロース繊維(特に、非セルロース成分を含まないセルロース繊維)であってもよい。
セルロースの重合度は、500以上であってもよく、好ましくは600以上(例えば600~10万程度)であってもよく、ナノ繊維の場合、粘度平均重合度が、例えば100~10000、好ましくは200~5000、より好ましくは300~2000であってもよい。
粘度平均重合度は、TAPPI T230に記載の粘度法により測定できる。すなわち、変性セルロース繊維(または原料セルロース繊維)0.04gを精秤し、水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとを加え、5分間程度攪拌して修飾セルロースを溶解する。得られた溶液をウベローデ型粘度管に入れ、25℃下で流下速度を測定する。水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとの混合液をブランクとして測定する。これらの測定値に基づいて算出した固有粘度[η]を用い、木質科学実験マニュアル(日本木材学会編、文永堂出版)に記載の下記式に従って粘度平均重合度を算出できる。
粘度平均重合度=175×[η]。
セルロース繊維の繊維径は、ミクロンオーダーであってもよく、ナノメーターサイズであってもよい。
詳しくは、セルロース繊維の平均繊維径は3nm~100μm程度の範囲から選択でき、例えば4nm~50μm、好ましくは5nm~30μm、さらに好ましくは10nm~20μmである。また、セルロース繊維がミクロンオーダーの場合は、セルロース繊維の平均繊維径は、例えば1~100μm、好ましくは3~50μm、さらに好ましくは5~30μm、より好ましくは10~20μmであってもよい。さらに、セルロース繊維がナノメータサイズである場合、セルロース繊維の平均繊維径は、例えば1~1000nm、好ましくは3~500nm、さらに好ましくは5~300nm、より好ましくは10~100nmであってもよい。繊維径が小さすぎると、補強材として樹脂に配合した場合、樹脂中で均一に分散させるのが困難になったり、セルロース繊維自体を調製するのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、補強材として樹脂の機械的特性を向上できない虞がある。
セルロース繊維の平均繊維長は、例えば0.01~500μm(特に0.1~400μm)程度の範囲から選択でき、通常1μm以上(例えば5~300μm)、好ましくは10μm以上(例えば20~200μm)、さらに好ましくは30μm以上(特に50~150μm)である。平均繊維長が短すぎると、樹脂の機械的特性が低下する虞があり、逆に長すぎると、樹脂中での分散性が低下する虞がある。
セルロース繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば1.5以上(例えば1.5~10000)、好ましくは2以上(例えば2~1000)、さらに好ましくは2.5以上(例えば2.5~500)、特に3以上(例えば3~100)であってもよく、4以上(例えば4~50)、さらには5以上(例えば5~10)であってもよい。また、アスペクト比が小さすぎると、樹脂に対する補強効果が低下し、逆に大きすぎると、均一な分散が困難となり、繊維が分解(または損傷)し易くなる虞がある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
セルロース繊維がナノファイバーである場合は、前記セルロース原料を慣用の方法、例えば、高圧ホモジナイザー法、水中対抗衝突法、グラインダー法、ボールミル法、二軸混練法などの物理的または機械的方法、TEMPO触媒、リン酸、二塩基酸、硫酸、塩酸などを用いた化学的方法により、繊維径をナノメータサイズまで解繊処理することにより調製できる。
(変性剤)
変性セルロースは、変性剤(エステル化剤)として3HBを含んでおり、前記セルロースに3HBまたはそのオリゴマー[以下「(ポリ)3HB」と称する場合もある]が化学結合している。(ポリ)3HBは、セルロースの繰り返し単位である無水グルコース単位(またはグルコース単位)の2位、3位および6位のいずれの水酸基と化学結合していてもよいが、生産性などの点から、少なくとも6位にエステル結合しているのが好ましい。
3HBは、光学異性体(R体またはS体)であってもよく、ラセミ体であってもよいが、生分解性の観点から、R体(R-3-ヒドロキシ酪酸)を少なくとも含むのが好ましい。3HB中のR体の割合、すなわち光学純度(鏡像体または光学異性体過剰率)は、例えば50%e.e.以上(例えば80%e.e.以上)、好ましくは90%e.e.以上(例えば95~100%e.e.)、さらに好ましくは98~100%e.e.(例えば99~100%e.e.、特に実質的に100%e.e.)である。光学純度が低すぎると生分解性が低下する虞がある。なお、3HBは、市販品を用いてもよく、バイオマス原料(生物由来の資源)を用いて微生物により発酵生産した3HBを利用してもよい。
(ポリ)3HBの平均重合度は1以上であればよいが、例えば1~100、好ましくは1~10(例えば2~5)、さらに好ましくは1.5~5、より好ましくは2~4.5、最も好ましくは3~4である。(ポリ)3HBの平均重合度が小さすぎると、(ポリ)3HBによる変性の効果が発現しない虞があり、逆に大きすぎると、補強材としての機能が低下する虞がある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、(ポリ)3HBの平均重合度は、セルロース繊維の水酸基にグラフトしている部分の平均重合度であり、NMRを用いて算出でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
(ポリ)3HBによるグラフト化率は1モル%以上であればよく、例えば1~80モル%、好ましくは3~50モル%、さらに好ましくは5~30モル%、より好ましくは7~20モル%、最も好ましくは10~15モル%である。グラフト化率が小さすぎると、(ポリ)3HBによる変性の効果が発現しない虞がある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、(ポリ)3HBによるグラフト化率は、セルロース繊維の無水グルコース単位当たりの(ポリ)3HB(グラフト鎖)の割合[無水グルコース単位の水酸基に対してエステル結合で結合した(ポリ)3HBのグラフト化率]を意味する。(ポリ)3HBによるグラフト化率は、NMRを用いて算出でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
変性セルロースは、(ポリ)3HBに加えて、他の変性剤[(ポリ)3HB以外の変性剤]でさらに変性されていてもよい。
他の変性剤(エステル化剤)としては、例えば、カルボン酸、他のヒドロキシアルカン酸(3HB以外のアルカン酸)またはそのオリゴマー、3HBと他のヒドロキシアルカン酸とのオリゴマーなどが挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸またはその無水物[例えば、(無水)酢酸、(無水)プロピオン酸、(無水)酪酸、(無水)イソ酪酸、(無水)吉草酸、エタン酸プロピオン酸無水物、(無水)(メタ)アクリル酸、(無水)クロトン酸、(無水)オレイン酸などの(無水)脂肪族モノカルボン酸;(無水)シクロヘキサンカルボン酸、(無水)テトラヒドロ安息香酸などの(無水)脂環族カルボン酸;(無水)安息香酸、(無水)4-メチル安息香酸などの(無水)芳香族モノカルボン酸など]、ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、ナフタル酸などの芳香族ジカルボン酸など)、ポリカルボン酸類[例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの(無水)ポリカルボン酸など]などが挙げられる。
他のヒドロキシアルカン酸としては、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン酸(2-ヒドロキシ酪酸)、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸(2-ヒドロキシ吉草酸)、3-ヒドロキシペンタン酸、5-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル-ペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシ-ヘプタン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、9-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのC1-6アルキル基を有していてもよいヒドロキシC2-15アルカン酸などが挙げられる。なお、他のヒドロキシアルカン酸は、対応するラクトンであってもよい。
他の変性剤の割合は、(ポリ)3HB100質量部に対して100質量部以下(例えば0.01~100質量部)であってもよく、例えば50質量部以下、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下であり、0質量部が最も好ましい。他の変性剤の割合が多すぎると、生分解性が低下する虞がある。
(変性セルロースの特性)
本開示の変性セルロースの形態は、特に制限されず、分散液の形態であってもよいが、通常、粉末状の形態を有しているため、取り扱い性に優れる。さらに、変性セルロースに結合した(ポリ)3HBが種々の有機媒体(樹脂を含む)に対して高い親和性または混和性を有するため、変性セルロースは、樹脂に対して高い分散性を示し、かつ高い補強性を有する。そのため、本開示の変性セルロースは、樹脂の補強材として有用である。
[変性セルロースの製造方法]
本開示の変性セルロースは、セルロース繊維(原料セルロース繊維)を3HB(原料3HB)でエステル化反応させることにより得られる。
変性セルロースの製造方法において、原料3HBの割合は、目的の変性度合に応じて、原料セルロース繊維100質量部に対して50~10000質量部程度の範囲から選択でき、例えば100~5000質量部、好ましくは150~4000質量部、さらに好ましくは200~3000質量部である。
原料セルロース繊維と原料3HBとの反応は、触媒の非存在下または存在下で行ってもよい。本開示の変性セルロースは、触媒の非存在下であっても、3HBを十分にエステル化できるが、(ポリ)3HBの重合度やグラフト化率を調整するために触媒を用いてもよい。操作性に優れ、着色も抑制できる点からは、触媒の非存在下で反応させるのが好ましい。
触媒としては、慣用のエステル化触媒を利用できる。慣用のエステル化触媒は、塩基触媒であってもよく、酸触媒であってもよい。
塩基触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウムなどの炭酸アルカリ土類金属塩;炭酸水素マグネシウムなどの炭酸水素アルカリ土類金属塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1-4アルキルアミンなどの第三級アミン類;4-ジメチルアミノピリジン、モルホリン、ピペリジンなどの複素環式アミン類などが挙げられる。
酸触媒としては、例えば、硫酸、塩化水素(または塩酸)、硝酸、リン酸などの無機酸;スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)などの有機酸などが挙げられる。
触媒の使用量は、セルロース繊維100質量部に対して、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.05~50質量部、さらに好ましくは0.1~30質量部である。
反応は、有機溶媒の非存在下で行ってもよく、有機溶媒の存在下で行ってもよい。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1-4アルカノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、ピロリドン類(N-メチル-2-ピロリドンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2-4アルカンジオール)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトールなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。
本開示の変性セルロースは、有機溶媒の非存在下であっても、セルロースを3HBで十分にエステル化できるため、操作性などの点から、有機溶媒の非存在下で反応させるのが好ましい。
反応は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれで行ってもよいが、反応性を向上できる点から、減圧下で行うのが好ましい。減圧させる圧力(ゲージ圧)は、例えば10~300kPa、好ましくは30~200kPa、さらに好ましくは50~150kPaである。
反応温度は、例えば50~200℃、好ましくは70~180℃、さらに好ましくは80~150℃、より好ましくは100~130℃である。また、反応時間は、例えば10分~48時間、好ましくは30分~24時間、さらに好ましくは1~12時間、より好ましくは2~8時間である。さらに、反応は、空気中または不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガスなどの希ガスなど)雰囲気下、混合または攪拌しながら行うことができる。
混合または攪拌の方法としては、慣用の混合または攪拌手段により、例えば10~2000rpm、好ましくは20~1500rpm、さらに好ましくは30~1000rpm、特に50~500rpm程度の回転速度で混練してもよい。慣用の混合または攪拌方法としては、例えば、ボールミル、タンブルミキサー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。
反応により生成した変性セルロースは、慣用の方法(例えば、遠心分離、濾過、濃縮、抽出など)により分離精製してもよい。例えば、少なくとも3HBを溶解可能な溶媒を反応混合物に添加し、前記遠心分離、濾過、抽出などの分離法(慣用の方法)で未反応3HBを除去し、分離精製してもよい。なお、前記分離操作は複数回(例えば2~5回程度)行うことができる。さらに、分離精製した変性セルロースを常温または加熱下において、減圧下または常圧下で乾燥することにより、粉末状の形態を有する変性セルロースを得ることができる。
なお、未反応3HBを前記分離方法などにより繰り返し除去して精製した変性セルロースを、FT-IR分析などの方法により分析すると、エステル結合に由来するピークと3HBに由来するピークとが存在し、セルロースに3HBが結合していることが確認できる。
[樹脂組成物]
本開示の樹脂組成物は、前記変性セルロースと、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂とを含む。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体(本開示の変性セルロースを除く)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。これらの硬化性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、成形性などの点から、熱可塑性樹脂が好ましく、変性セルロースとの親和性に優れる点から、エステル結合および/またはカーボネート結合を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂;ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのポリカーボネート系樹脂など)がさらに好ましく、ポリエステル系樹脂が最も好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられる。これらのうち、変性セルロースとの親和性に優れる点から、ポリエステル樹脂が好ましく、ヒドロキシアルカン酸およびラクトンから選択された少なくとも一種の単量体の単独または共重合体が特に好ましい。ヒドロキシアルカン酸としては、前記変性セルロースの変性剤の項で例示されたヒドロキシアルカン酸などが挙げられる。
本開示の変性セルロースは、生分解性に優れるため、前記樹脂も生分解性プラスチックであるのが好ましい。生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体(本開示の変性セルロースを除く)などが挙げられる。これらのうち、変性セルロースとの親和性に優れる点から、脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリ3-ヒドロキシ酪酸(PHB)、3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシへキサノエート共重合体(PHBH)、ポリヒドロキシ吉草酸などのポリヒドロキシアルカノエート(PHA);ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート(PBS)などの脂肪族ジカルボンと脂肪族ジオールとの重合体;ポリカプロラクトン(PCL)などのラクトン開環重合体などが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらの脂肪族ポリエステル系樹脂のうち、変性セルロースとの親和性が高い点から、PHAが好ましく、嫌気性条件下においても高い生分解性を有する点から、3HB(特に、R-3HB)の単独または共重合体を含む生分解性樹脂(例えば、PHB、PHBHなど)がより好ましく、機械的特性などの諸特性のバランスに優れる点から、PHBHなどの3HBの共重合体が最も好ましい。
熱可塑性樹脂(特に、PHBHなどのPHA)の分子量は、特に制限されず、重量平均分子量(単位:×10)は、例えば0.1~100、好ましくは1~80、さらに好ましくは2~70程度;数平均分子量(単位:×10)は、例えば0.1~100、好ましくは1~80、さらに好ましくは2~70であってもよく、分散度(M/M)は、例えば1~5、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、特に1~1.5であってもよい。なお、樹脂の重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)は、GPC(Gel Permeation Chromatography、ゲル浸透クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算で測定できる。
変性セルロースの割合は、前記樹脂(特に、PHBHなどのPHA)100質量部に対して0.01~100質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.05~30質量部、好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部、最も好ましくは0.5~3質量部である。変性セルロースの割合が少なすぎると、補強材としての効果が発現しない虞があり、逆に多すぎると、機械的特性が低下する虞がある。
樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤[例えば、可塑剤、難燃剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、着色剤(顔料など)、充填材、帯電防止剤、滑剤、離形剤、抗菌剤、防カビ剤など]をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これら添加剤の合計割合は、添加剤の種類に応じて選択でき、添加剤の総量は、前記樹脂100質量部に対して、0.001~100質量部の範囲から選択でき、例えば100質量部以下(例えば0.01~80質量部)、好ましくは70質量部以下(例えば0.1~60質量部)、さらに好ましくは50質量部以下(例えば0.1~40質量部)である。
樹脂組成物で形成された成形体は、機械的特性に優れており、例えば、変性セルロースを2質量%含む樹脂組成物において、引張試験のヤング率は1200MPa以上であってもよく、例えば1200~2000MPa、好ましくは1230~1500MPa、さらに好ましくは1250~1300MPaである。また、変性セルロースを2質量%含む樹脂組成物において、引張試験の破断点伸度は10%以上であってもよく、例えば10~50%、好ましくは12~40%、さらに好ましくは13~30%である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、引張試験の最大応力および破断点伸度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
樹脂組成物は、慣用の成形法(加熱プレス成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法などの溶融成形法、キャスティング法など)により、線状、フィルム状またはシート状、筒状またはパイプ状、ケーシング、ハウジングなどの三次元形状などの所定の形態の成形体を作製できる。成形温度は、例えば130~230℃、好ましくは140~200℃、さらに150~190℃、より好ましくは160~180℃である。成形において、加圧してもよく、圧力は、例えば1~100MPa、好ましくは5~50MPa、さらに好ましくは10~30MPaである。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。用いた原料および評価方法は以下の通りである。
(原料)
セルロース:ナカライテスク(株)製セルロース粉末、製品番号07748-75平均繊維径12.6μm、平均繊維長77.3μm(平均繊維径および平均繊維長は走査型電子顕微鏡を用いて測定した20個の測定値の平均値である)
3HB:下記方法で合成したR-3-ヒドロキシ酪酸
(3HBの合成方法)
特開2019-176839号公報の実施例1に記載された方法に準じて製造したR-3-ヒドロキシ酪酸水溶液を、70℃に設定したエバポレーターで水分が出なくなるまで濃縮した。得られた濃縮液の質量に対して30質量%の酢酸エチルと、0.1質量%程度のR-3-ヒドロキシ酪酸の種結晶とを入れて4℃に一晩放置した後、濾別、乾燥した。
PHBH:(株)カネカ製、商品名「AONILEX X131A」。
(FT-IR分析)
原料3HB、原料セルロース、変性セルロースについて、FT-IR分析装置を用いて、反応前後の分子構造や官能基の導入を測定し、3HBの導入を確認した。FT-IR分析装置としては、iD5ATRアタッチメントを備えたNicoletiS5分光計(Thermo Fisher SCIENTIFIC(株)製)を用いた。測定範囲は4000~400cm-1とした。
(変性セルロースのグラフト化率)
変性セルロースについて、固体13C-NMRとして、Bruker AVANCE III WB(BRUKER社製)を用いて、核種は13Cとして定量分析を行った。図2に、変性セルロースの固体13C-NMRスペクトルのチャートを示すが、グラフト化率は、C7,11の炭素量(積分強度に基づく値)と、C1の炭素量との比較に基づいて求めた。すなわち、セルロースに結合している3HBは、オリゴマーであるため、C7,11の炭素量/(n+1)によりグラフト鎖の本数を計算し(n+1は、3HBの平均重合度を示す)、セルロース主鎖のグルコース単位数に相当するC1の炭素量と比較した。詳しくは、グラフト化率は、C7,11の炭素量/(n+1)/C1の炭素量×100%として求めた。
(3HBの平均重合度n+1)
変性セルロースについて、固体13C-NMRとして、Bruker AVANCE III WB(BRUKER社製)を用いて、核種は13Cとして定量分析を行って3HBの平均重合度(n+1)を測定した。
(引張試験)
樹脂組成物について、小型卓上試験機((株)島津製作所製「EZ-Graph」)を用いて、JIS K 7161に準拠し、ヤング率、最大応力、破断店伸度を測定した。試験条件は、クロスヘッドの速さを10mm/minとして、試験片の長さを20mm、幅を2mm、厚さを約0.1mmとした。ロードセルは100Nを使用した。
実施例1
セルロース1gと3HB 5gを混合し、110℃、-97kPa(G)の条件で4時間反応した。反応物に過剰量のメタノールを加えて攪拌し、濾過した。次いで過剰量のクロロホルムを加えて攪拌し、濾過した後に室温で減圧乾燥することで、粉末状の3HB変性セルロース(3HB-C)を得た。
実施例2
3HBを10gに変更した以外は実施例1と同じ条件で反応、洗浄することで3HB-Cを得た。
実施例3
3HBを15gに変更した以外は実施例1と同じ条件で反応、洗浄することで3HB-Cを得た。
実施例4
3HBを30gに変更した以外は実施例1と同じ条件で反応、洗浄することで3HB-Cを得た。
実施例5
反応時間を2時間に変更した以外は実施例2と同じ条件で反応、洗浄することで3HB-Cを得た。
実施例6
反応時間を8時間に変更した以外は実施例2と同じ条件で反応、洗浄することで3HB-Cを得た。
実施例1~6で得られた3HB-CをFT-IR分析した結果を原料3HBおよび原料セルロースの結果とともに図1に示す。図1から明らかなように、実施例1~6で得られた3HB-Cは、3HBのカルボン酸に由来する1700cm-1付近のピークは消失しており、1730cm-1付近にエステルに由来するピークが観測されたことから、3HBとセルロースはエステルを形成していることを確認した。
さらに、実施例1~6で得られた3HB-Cについて、固体13C-NMRよりグラフト化率、平均重合度を算出した結果を表1に示す。
Figure 2023000328000001
なお、固体13C-NMRの結果から、実施例1~6で得られた変性セルロースは、無水グルコース単位の炭素6位(C6)に3HBが、グラフト化率7~15%程度および平均重合度3~4程度で結合していることが確認できた。
比較例1
PHBHを170℃、20MPaの条件でホットプレスすることで引張試験用のフィルムを得た。
比較例2
原料セルロース 0.01gとPHBH 1.99gをクロロホルムに投入、攪拌し、過剰量のメタノールを加えて再沈殿させた。濾別した沈殿物を室温(20℃程度)で減圧乾燥してセルロース/PHBH複合粉末を得た。次に、この粉末を170℃、20MPaの条件でホットプレスすることで引張試験用のフィルムを得た。
比較例3
原料セルロースを0.02g、PHBHを1.98gとする以外は比較例2と同様の方法で引張試験用のフィルムを得た。
比較例4
原料セルロースを0.04g、PHBHを1.96gとする以外は比較例2と同様の方法で引張試験用のフィルムを得た。
実施例7
実施例2で得られた3HB―C 0.01gとPHBH 1.99gをクロロホルムに投入、攪拌し、過剰量のメタノールを加えて再沈殿させた。これを濾別したものを室温で減圧乾燥して3HB-C/PHBH複合粉末を得た。次に、この粉末を170℃、20MPaの条件でホットプレスすることで引張試験用のフィルムを得た。
実施例8
3HB―Cを0.02g、PHBHを1.98gとする以外は実施例7と同様の方法で引張試験用のフィルムを得た。
実施例9
3HB―Cを0.04g、PHBHを1.96gとする以外は実施例7と同様の方法で引張試験用のフィルムを得た。
実施例7~9および比較例1~4で得られたフィルムを引張試験に供した結果を表2に示す。
Figure 2023000328000002
表2の結果から明らかなように、実施例の複合フィルムは、セルロースを配合していない比較例1よりもヤング率および最大応力が向上した。また、比較例2~4と実施例7~9との比較から、セルロースを変性することにより、ヤング率、最大応力、破断点伸度がいずれも向上した。すなわち、引張試験の結果から、明らかに3HB-C/PHBH複合フィルムは原料セルロース/PHBH複合材料と比較して弾性率、強度、破断伸びの全ての値が改善していることがわかる。図3に、比較例1~2および実施例7で得られた複合フィルムにおける引張試験の結果を示し、図4に、比較例1、3および実施例8で得られた複合フィルムにおける引張試験の結果を示し、図5に、比較例1、4および実施例9で得られた複合フィルムにおける引張試験の結果を示す。いずれの図面においても、セルロースを変性することにより、引張特性が改善されていることが容易に理解できる。
実施例8(PHBH/3HB-C)および比較例4(PHBH/原料セルロース)で得られた複合フィルムの引張破断面のSEM写真を図6に示す。実施例および比較例ともに、それぞれ界面の様子がよくわかるように、拡大図も添えた。図6から明らかなように、比較例4では、原料セルロースとPHBHとの界面は剥離が生じていたが、実施例8では、3HB-CとPHBHとの界面ではそのような剥離は見られなかった。例えば、3HB-Cを配合した実施例8の写真の拡大図における矢印の部分では、3HB-CとPHBHとの界面が相溶していることが明確に観察できるのに対して、比較例4の写真の拡大図では、界面に大きな空洞の隙間が発生している。すなわち、3HBをセルロースに修飾することで、セルロース表面の3HB(オリゴマー)は相溶化剤として機能していることがわかった。
本開示の変性セルロースは、樹脂に対する添加剤、特に補強材などとして利用できる。本開示の樹脂組成物は、樹脂の種類に応じて、日用品、電気・電子機器、建築材料などの各種成形体を形成するために使用できる。特に、生分解性プラスチックの補強材として使用すると、変性セルロースが好気性および嫌気性条件下(特に、嫌気性条件下)における生分解性を示すため、変性セルロース繊維を含む樹脂組成物は、食器類(ストロー、コップ、皿、箸、スプーン、フォークなど)、包装材料(例えば、食品、日用品、電気、電子機器および部品などの容器;レジ袋、エコバッグ(登録商標)、ゴミ袋などの袋など)などの使い捨て製品(ディスポーザブル製品)などに有用である。

Claims (11)

  1. セルロース繊維に、3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーが結合した変性セルロース。
  2. 前記セルロース繊維の無水グルコース単位の6位に、前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーがエステル結合している請求項1記載の変性セルロース。
  3. 前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーの平均重合度が1~10である請求項1または2記載の変性セルロース。
  4. 前記3-ヒドロキシ酪酸またはそのオリゴマーによるグラフト化率が5~30モル%である請求項1~3のいずれか一項に記載の変性セルロース。
  5. 前記3-ヒドロキシ酪酸がR-3-ヒドロキシ酪酸である請求項1~4のいずれか一項に記載の変性セルロース。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の変性セルロースと、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂とを含む樹脂組成物。
  7. 前記樹脂が、生分解性プラスチックを含む請求項6記載の樹脂組成物。
  8. 前記樹脂が、ヒドロキシアルカン酸およびラクトンから選択された少なくとも一種の単量体の単独または共重合体である請求項6または7記載の樹脂組成物。
  9. 前記変性セルロースの割合が、前記樹脂100質量部に対して0.1~20質量部である請求項6~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 樹脂に請求項1~5のいずれか一項に記載の変性セルロースを配合して前記樹脂の機械的特性を向上する方法。
  11. 前記樹脂が生分解性プラスチックである請求項10記載の方法。
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