JP2022531233A - がんの処置に使用するための乳酸脱水素酵素阻害剤ポリペプチド - Google Patents

がんの処置に使用するための乳酸脱水素酵素阻害剤ポリペプチド Download PDF

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Abstract

本発明は、ネイティブな四量体の乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームの活性を調節するポリペプチド、およびがんの処置のための医薬品としてのその使用に関する。より具体的には、本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化を阻害する直鎖状ポリペプチドおよび環状ポリペプチドに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、ネイティブな四量体の乳酸脱水素酵素の活性を調節するポリペプチド、およびがんの処置のための医薬品としてのその使用に関する。より具体的には、本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化を阻害する直鎖状ポリペプチドおよび環状ポリペプチドに関する。
がん細胞は、それらの同化増殖および増殖の意図を持続するために驚異的な代謝の適応を経る。この代謝の柔軟性の最も典型的な特性は、酸素の利用可能性に関係のない、増幅された解糖活性および乳酸の産生である。Warburg効果として知られている、この解糖の増強により、がん細胞はエネルギー産生由来の糖のフラックスのフラクションを同化経路へ再度方向付け、これにより細胞増殖を強化する。他方で、解糖系の最終産物である、乳酸の細胞内および細胞外での増加は、血管新生(de Saedeleer et al. (2012); Beckert et al. (2006); Vegran et al. (2011))、侵襲性(Izumi et al. (2011); Colen et al. (2011))および炎症(Colegio et al. (2014); Doherty and Cleveland (2013))などのいくつかの現象を促進させることにより病態形成を駆動する。乳酸の代謝の中心にある、乳酸脱水素酵素(LDH、EC:1.1.1.27)は、NAD依存性酵素であり、ピルビン酸の乳酸への転換を触媒する。言及した(sub-mentioned)病態発症経路に直接関与することに加え、LDHは、酸化的がん細胞および解糖系のがん細胞の間の代謝の共生を可能にし(Sonveaux et al. (2008))、リソソームの酸性化を介してオートファジーを促進し(Brisson et al. (2016))、NADを再産生することにより細胞内のレドックスの均衡を安定化させる。さらに、LDHAは、がん組織でのアセチル化により調節されると思われる。中国特許公開公報第102805861号(FUDAN UNIVERSITY)は、アミノ酸残基K5でのLDHAのアセチル化の活性化因子を提供する。よってこれは、近年のがんの病態形成におけるLDHの幅広い関与の発見により、がん療法にとって好ましい標的となった。
LDHは、2つの主要なサブユニット、すなわちLDHA(LDH-Mサブユニットとも呼ばれる)およびLDHB(LDH-Hサブユニットとも呼ばれる)であって、5つのアイソフォーム、すなわちLDH1、LDH2、LDH3、LDH4、およびLDH5をもたらす機能的なホモまたはヘテロの四量体にアセンブリできる、LDHAおよびLDHBから構成される四量体の酵素である。これら5つのアイソフォームのうち、ホモ四量体のLDH1(4つのLDHBサブユニット)およびLDH5(4つのLDHAサブユニット)は、最も詳細に研究されており、上述した機構を介してがん細胞の増殖および生存におけるそれらの関与に関してよく知られている。
著しい構造上の同一性を共有するにも関わらず、LDH1およびLDH5は、その局在性およびその触媒の特性において異なっている。LDH5は、主に骨格筋などの解糖組織で見出されており、LDH1サブユニットは、主に心臓、ニューロン、および赤血球で発現している。またLDH5は、LDHBサブユニットと比較して高いピルビン酸の親和性および高いピルビン酸の還元の最大反応速度(Vmax)を呈する(Eszes et al. (1996); Hewitt et al. (1999))。反対に、LDH1サブユニットは、乳酸をピルビン酸に酸化するための生理的および病理的な条件で良好な性質を示し、これにより酸化的細胞は、酸化的リン酸化の栄養源としておよび細胞内シグナリング作用物質としての乳酸を使用することが可能となる。
がん細胞の増殖および生存におけるLDHの病態発症的な広い関与により、LDH活性を選択的に阻害できる小分子を開発することに過去何年も多大な努力が払われた(Rani and Kumar (2016))。たとえば、Dobeli et al. (1982)は、触媒上不活性な単量体の活性な四量体酵素単位へのアセンブリを妨げるヒト尿由来の2つのペプチドを単離し、Jafary et al. (2019)は、酵素の四量体化の妨害を介して乳酸脱水素酵素の阻害性ペプチドを設計するためのin silicoでの方法を使用した。LDH1とLDH5との間の異なる触媒特性にも関わらず、2つの四量体酵素の触媒部位は、著しい構造上の相同性を共有する。結果として、あるアイソフォームよりも他のアイソフォームに対して高い選択性を達成することは、結果が軽減する困難なタスクであることが見出された(Labadie et al. (2015); Billiard et al. (2013); Rai et al. (2017))。さらに、アイソフォーム間で選択性を達成することが望ましいかどうかは、未だ議論の下にある(Zdralevic et al. (2018))。実際に、いくつかのグループは、選択的な阻害剤を開発することに焦点を当てているが、他のグループは、非選択的なpan-LDH阻害剤の見込みのあるさらなる治療上の価値を論じている(Purkey et al. (2016); Ward et al. (2012))。これまで、LDHを阻害するために開発された全ての分子は、触媒部位での相互作用に焦点を当てており、よってLDH活性部位の固有の構造上の特性により共通する欠点に悩まされていた。実際に、LDH触媒部位は、極性が高く、主に補因子結合部位により構成されている(Fiume et al. (2014))。結果として、LDHの活性部位と相互作用するほとんどの分子は、NAD+競合性であり、よってLDHの「ロスマンフォールド」と相互作用する(Ward et al. (2012); Kohlmann et al. (2013))。「ロスマンフォールド」は、多くのジヌクレオチド結合酵素が共有する構造上のモチーフである(Rao and Rossmann (1973))。結果として、ほとんどのLDH阻害剤は、全般的に、他のNAD依存性酵素に対する選択性の欠如に直面している(Fiume et al. (2014))。他方で、LDH1またはLDH5の触媒部位と強力な相互作用を達成する分子は、通常、それらの著しい極性の性質、よって、多くの場合不十分な臨床的価値をもたらす非「薬物様の」性質により妨げられている(Ward et al. (2012); Kohlmann et al. (2013))。まとめると、LDHは、依然として非常に見込みがあり検証されている標的ではあるが、LDH阻害剤は、その可能性を臨床試験でさらに示す必要がある。
LDH阻害剤は、本発明の主題である。
よって本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドであって、式(I):X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(I)(配列番号5)のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド:
(式中、
X1は、好ましくはアミノ酸残基A、G、K、およびCからなる群から選択される、いずれかのアミノ酸残基を表し、
X2は、C、T、またはSを表し、
X3は、C、L、A、T、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、またはmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を表し、
X4は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基K、C、A、およびAib(2-アミノイソ酪酸)からなる群から選択される、好ましくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Kを表し、
X5は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基E、D、K、A、およびCからなる群から選択される、好ましくは負もしくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Eを表し、
X6は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基E、K、Q、A、Aib(2-アミノイソ酪酸)、およびCからなる群から選択される、好ましくは負もしくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Kを表し、
X7は、C、L、I、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、またはmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を表し、
X8はC、I、またはGを表す)
に関する。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、好ましくは配列番号6~配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、直鎖状ポリペプチドである。一部の他の実施形態では、本発明のポリペプチドは、好ましくは配列番号30~配列番号35、配列番号55~配列番号58、配列番号61~配列番号65、配列番号67、および配列番号68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、環状ポリペプチドである。特定の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号55、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号67、および配列番号68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号61、配列番号67、または配列番号68により表されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、上記乳酸脱水素酵素のサブユニットは、乳酸脱水素酵素B(LDHB)のサブユニットである。一部の実施形態では、本ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸残基の遊離-COOH基の-OH基が、-O-アルキル基、-O-アリール基、-NH基、-N-アルキルアミン基、-N-アリールアミン基、または-N-アルキル/アリール基から選択される基で置き換えられている。
さらに本発明は、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
さらに本発明は、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物に関する。
さらに本発明は、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、または医薬組成物と、任意選択で少なくとも1つの抗がん剤とを含む、がんを予防および/または処置するためのキットに関する。
さらに本発明は、医薬品として使用するための、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または医薬組成物に関する。
さらに本発明は、がんを予防および/または処置するための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、または医薬組成物に関する。
また本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系を準備するステップと、
b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を伴う系を準備するステップと、
c.本発明に係るポリペプチドの存在下または非存在下で前記候補化合物のLDHtrのサブユニットの二量体に対する結合のレベルを測定するステップと
を含み、
LDHtrのサブユニットの二量体に対する結合に関する前記ポリペプチドと前記候補化合物との間の競合の観察が、前期候補化合物が乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤であることを表す、
方法に関する。
一実施形態では、LDHBtrサブユニットの二量体に対する結合に関する前記ポリペプチドと前記候補化合物との間の競合の観察が、乳酸脱水素酵素のサブユニット上での四量体化部位に対する前記候補化合物の結合の特異性を表す。
本発明のさらなる態様は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系(1)およびネイティブな四量体LDHを含む系(2)を準備するステップと、
b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を含む系(1)および(2)を準備するステップと、
c.系(1)におけるLDHtrのサブユニットの二量体および系(2)におけるネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合レベル(Kd)を測定するステップと
を含み、
系(1)におけるLDHtrのサブユニットの二量体に対する前記候補化合物の結合の観察および系(2)におけるネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合の変更の観察は、前記候補化合物が、LDHサブユニットの表面で相互作用することにより、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤となることを表す、
方法に関する。
定義
本発明では、他の意味が定義されない限り、以下の用語は以下の意味を有する。
用語「約」は、ある数字に先行する場合、上記数字の±10%を意味する。
用語「アミノ酸の置換」は、ポリペプチドにおける1つのアミノ酸の別のアミノ酸での置き換えを表す。一実施形態では、アミノ酸は、たとえば保存的アミノ酸の置き換えといった、同様の構造上および/または化学的な特性を有する別のアミノ酸と置き換えられる。「保存的アミノ酸の置換」は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づきなされ得る。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸として、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられ;正に荷電した(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられ;負に荷電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。非保存的な置換は、これらクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。たとえば、アミノ酸の置換はまた、1つのアミノ酸を、異なる構造上および/または化学的な特性を有する別のアミノ酸と置き換えること、たとえば1つの基に由来するアミノ酸(たとえば極性)を異なる基に由来する別のアミノ酸(たとえば塩基性)で置き換えることをもたらし得る。アミノ酸の置換は、当該分野でよく知られている遺伝子に関するかまたは化学的な方法を使用してもたらされ得る。遺伝子に関する方法は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などを含み得る。化学的修飾などの遺伝子操作以外の方法によりアミノ酸の側鎖基を変える方法もまた有用であり得ることが企図されている。
用語「ポリヌクレオチド」は、修飾されていないRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAであり得る、いずれかのポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを表す。「ポリヌクレオチド」として、限定するものではないが、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖もしくは一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。さらに、「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む三重鎖の領域を表す。また用語ポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾された塩基を含むDNAまたはRNAおよび安定性または他の理由のため修飾された骨格を有するDNAまたはRNAを含む。「修飾された」塩基は、たとえばトリチル化された塩基およびイノシンなどの希な塩基を含む。DNAおよびRNAに対して様々な修飾がなされており;よって「ポリヌクレオチド」は、通常天然で見出されるポリヌクレオチドの化学的であるか、酵素によるか、または代謝により修飾された形態、ならびにウイルスおよび細胞に特有のDNAおよびRNAの化学的な形態を包含する。また「ポリヌクレオチド」は、多くの場合オリゴヌクレオチドと呼ばれる比較的短いポリヌクレオチドを包含する。
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合、すなわちペプチドイソスターにより、互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含むいずれかのペプチドまたはタンパク質を表す。「ポリペプチド」は、一般にペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと呼ばれる短い鎖、および一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を表す。ポリペプチドは、20の遺伝子によりコードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。
「がんを予防する」との用言は、がんの少なくとも1つの有害な作用または症状を発生させないことを意味するように意図されている。
用語「対象」は、哺乳類、好ましくはヒトを表す。一実施形態では、対象は雄性である。別の実施形態では、対象は雌性である。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または過去/現在/将来医療の対象であった/ある/あり得るか、または炎症の発症に関してモニタリングされている温血動物、より好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、対象は、成年(たとえば18歳超の対象)である。別の実施形態では、対象は、小児(たとえば18歳未満の対象)である。
用語「治療上有効量」は、対象に有意な負のまたは有害な副作用をもたらすことなく、(1)がんの発症を遅延もしくは予防するか;(2)がんの1つ以上の症状の進行、憎悪、もしくは悪化を遅延もしくは停止するか;(3)がんの症状の寛解をもたらすか;(4)がんの重症度もしくは発症頻度を低減するか;または、(5)がんの形成を予防することを目的とする作用物質のレベルまたは量を意味する。一実施形態では、治療上有効量は、防止的または予防的作用のため、がん形成の発症の前に投与される。
用語「がんを処置すること」または「処置」または「軽減」は、治療上の処置および防止的または予防的な手段の両方を意味し、ここでの目的は、がんを予防または遅延(減弱)することである。処置を必要とするものは、すでにがんを有するもの、およびがんを有する傾向のあるもの、またはがんを予防すべきものを含む。本発明に係るポリペプチドの治療量を投与された後に、患者が以下:病原性細胞の数の低下;病原性である細胞の合計のパーセントの低下;および/またはがんに関連する1つ以上の症状のある程度までの軽減;罹患率および死亡率の低下、ならびにクオリティオブライフの問題の改善のうちの1つ以上の観察可能かつ/または測定可能な低減または非存在を示す場合、対象または哺乳類のがんに関する「処置」は成功している。処置の成功および疾患の改善を評価するための上記のパラメータは、医師に知られている規定の手法により容易に測定可能である。
詳細な説明
LDH阻害に対する新規の手法に着手するために、この標的化がこの問題に着手するために前例のない方法をもたらし得るLDHのアロステリック部位の解明に焦点があてられた。四量体が最小機能単位であるとすると、LDHの活性は、その触媒部位およびオリゴマー形成の状態の両方に依存する。LDHに関しては、サブユニットは、1つのサブユニットから伸長し、2つの隣接するサブユニットの周りに巻き付き、よって全体的な四量体の接着を促進する、それらのN末端アームによりまとめて保持されている。興味深いことに、LDHの32のN末端のアミノ酸フラグメントは、LDHの四量体化のプロセスをin vitroで妨げることが知られている(Dobeli et al. (1987))。まとめると、これらの知見を鑑み、本発明者らは、LDHの四量体化を妨げる分子の設計および開発のための開始点としてこのN末端アームを評価することとした。
本発明は、ネイティブな四量体の乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームの活性を調節するポリペプチドに関する。
「乳酸脱水素酵素」または「LDH」は、ピルビン酸および乳酸の相互変換、および同時に起こるNADHおよびNADの相互変換を触媒できる四量体の酵素を意味する。
今日までに、乳酸脱水素酵素の5つのアイソフォーム、すなわちLDH1、LDH2、LDH3、LDH4、およびLDH5が同定されており、これは、2つのサブユニット、すなわちLDHAサブユニットおよびLDHBサブユニットの固有の組み合わせを構成している。
本発明の文脈では、「調節すること(modulating)」は、本発明のポリペプチドが、乳酸脱水素酵素の5つのアイソフォーム、すなわちLDH1、LDH2、LDH3、LDH4、およびLDH5のいずれか1つの生体活性、ならびに/または1つ以上のサブユニット、すなわちLDHAサブユニットおよび/もしくはLDHBサブユニットの生体活性を有意にアップレギュレートまたはダウンレギュレートする生物学的な作用を有することを意味する。
「ネイティブな」は、乳酸脱水素酵素(LDH)の配列が、本出願に記載される場合、たとえばいずれかの種に由来する、天然物に由来することを意味する。さらに、このような乳酸脱水素酵素のネイティブな配列は、天然物から単離されてもよく、またはサブユニットのLDHAおよび/もしくはLDHBから組み換えまたは合成の手段により産生され得る。
一部の実施形態では、LDHAサブユニットは、アミノ酸配列番号1により表されており、LDHBサブユニットは、アミノ酸配列番号2により表されている。
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、ネイティブな四量体の乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームまたはその少なくとも1つのサブユニットの活性を阻害する。
「阻害剤」または「阻害すること」は、本発明のポリペプチドが、生体作用に関して、乳酸脱水素酵素の5つのアイソフォームのいずれか1つの生体活性を阻害または有意に低減またはダウンレギュレートする必要があることを意味する。特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、ネイティブな乳酸脱水素酵素の活性を、最大約10%、好ましくは最大約25%、好ましくは最大約50%、好ましくは最大約75%、80%、90%、95%、より好ましくは最大約96%、97%、98%、99%、または100%阻害できる。
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化を阻害する。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、4つのLDHAサブユニットのうちの少なくとも1つの四量体化を阻害し、よってLDH5のアイソフォームの活性を阻害する。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、3つのLDHAサブユニットのうちの少なくとも1つおよび/またはLDHBサブユニットの四量体化を阻害し、よってアイソフォームLDH4の活性を阻害する。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、2つのLDHAサブユニットのうちの少なくとも1つおよび/または2つのLDHBサブユニットのうちの少なくとも1つの四量体化を阻害し、よってアイソフォームLDH3の活性を阻害する。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、LDHAサブユニットおよび/または3つのLDHBサブユニットのうちの少なくとも1つの四量体化を阻害し、よってアイソフォームLDH2の活性を阻害する。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、4つのLDHBサブユニットのうちの少なくとも1つの四量体化を阻害し、よってアイソフォームLDH1の活性を阻害する。
乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害が、当該分野の状態で利用可能ないずれかの適切な手段、特にいずれかの適切な生化学的または生物物理学的な方法により評価され得ることは、言うまでもない。
例として、生化学的な方法、たとえばアフィニティー電気泳動、BiFC(bimolecular fluorescence complementation)、共免疫沈降法、タンデムアフィニティ精製、内因性トリプトファン蛍光、分子ふるいクロマトグラフィー、遠心分別(fractionated centrifugation)、架橋(SDS PAGE)電気泳動など;または生物物理学的な方法、たとえばビアコア、二面偏波式干渉法(DPI)、動的光散乱(DLS)、マイクロスケール熱泳動(MST)、NMR WaterLOGSY、飽和移動差(STD)分光法、CPMG(Carr Purcell Meiboom Gill)パルスシーケンスおよび/もしくは静的光散乱(SLS)、表面プラズモン共鳴(SPR)などが使用され得る。
一部の実施形態では、乳酸脱水素酵素のサブユニットの少なくとも1つの四量体化の阻害は、N末端の20アミノ酸の残基を欠いている1つ以上のLDHサブユニット、すなわちトランケートされているLDHAまたはLDHAtr、およびトランケートされているLDHBまたはLDHBtrに結合する目的のポリペプチドの特性により評価され得る。
一部の実施形態では、LDHAtrは、アミノ酸配列番号3により表される。
一部の実施形態では、LDHBtrは、アミノ酸配列番号4により表される。
一部の実施形態では、MST法が行われる場合、LDHAtr(配列番号3)またはLDHBtr(配列番号4)、好ましくはLDHBtr(配列番号4)に対する本発明に係るポリペプチドの有意な結合が、1μM~5mM、好ましくは50μM~3.5mMに含まれる解離定数(Kd)をもたらし得る。
1μM~5mMは、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、1mM、1.5mM、2mM、2.5mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、および5mMを含む。
一部の態様では、本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドであって、式(I):X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(I)(配列番号5)の配列のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド:
(式中、
X1は、好ましくはアミノ酸残基A、G、K、およびCからなる群から選択される、いずれかのアミノ酸残基を表し、
X2は、C、T、またはSを表し、
X3は、C、L、A、T、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、またはmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を表し、
X4は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基K、C、A、およびAib(2-アミノイソ酪酸)からなる群から選択される、好ましくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Kを表し、
X5は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基E、D、K、A、およびCからなる群から選択される、好ましくは負もしくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Eを表し、
X6は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基E、K、Q、A、Aib(2-アミノイソ酪酸)、およびCからなる群から選択される、好ましくは負もしくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Kを表し、
X7は、C、L、I、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、またはmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を表し、
X8はC、I、またはGを表す)
に関する。
一実施形態では、上記ポリペプチドは、上述の配列番号5のアミノ酸配列を含むが、ただし上記アミノ酸配列番号5は、アルファヘリックスの立体構造を有する。
本発明の範囲内では、「正に荷電した」アミノ酸残基は、アミノ酸R、H、またはKを表すように意図されている。
本発明の範囲内では、「負に荷電した」アミノ酸残基は、アミノ酸DまたはEを表すように意図されている。
本発明の範囲内では、「中性の」アミノ酸残基は、アミノ酸A、V、I、L、M、Q、C、Aib(2-アミノイソ酪酸)、S、またはTを表すように意図されている。
本発明の範囲内では、「Aib」は、α-アミノイソ酪酸、2-メチルアラニン、または
α-メチルアラニンとも呼ばれる、2-アミノイソ酪酸のアミノ酸残基を表すように意図されている。
一部の実施形態では、本ポリペプチドの第1のアミノ酸残基は、さらにアセチル化されている。特定の実施形態では、配列番号5のアミノ酸残基X1は、アセチル化されている。
一部の実施形態では、本ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸残基は、さらにアミド化されており、これにより、本発明に係るポリペプチドのNt末端およびCt末端は、NH基を呈する。一部の実施形態では、本ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸残基は、さらにN-アルキルアミド化またはN-アリールアミド化されている。一部の実施形態では、本ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸残基は、さらにエステル化されている。
特定の実施形態では、本ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸残基の遊離-COOH基の-OH基は、-O-アルキル基、-O-アリール基、-NH基、-N-アルキルアミン基、-N-アリールアミン基、または-N-アルキル/アリール基から選択される基で置き換えられている。
適切なアルキル基の非限定的な例として、C-C12のアルキルが挙げられる。アリール基の非限定的な例として、フェニル、トリル、キシリル、またはナフチル基が挙げられ、これは、O、N、-OH、-NH、C-C12アルキル基、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)に由来する1つ以上の原子または基で置換され得る。-N-アルキルアミン基の非限定的な例として、-NR基(式中、RおよびRは、HまたはC-C12アルキル基を表す)が挙げられる。-N-アリールアミン基の非限定的な例として、-NHR(式中Rは、O、N、-OH、-NH、C-C12アルキル基、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)由来の1つ以上の原子または基で置換されてもよい、フェニル、トリル、キシリル、またはナフチル基を表す)が挙げられる。-N-アルキル/アリール基の非限定的な例として、-NR(式中、Rは、C-C12のアルキルを表し、Rは、O、N、-OH、-NH、C-C12アルキル基、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)由来の1つ以上の原子または基で置換されてもよい、フェニル、トリル、キシリル、またはナフチル基を表す)が挙げられる。
実際に、遊離-COOH基の-OH基の置き換えは、当該分野の状態で知られているいずれかの適切な方法またはそれらに由来する適合した方法により、行われ得る。
一部の実施形態では、配列番号5のアミノ酸配列に由来するアミノ酸残基Lは、非天然のロイシンアミノ酸残基類縁体で置換され得る。
本発明の範囲内では、非天然のロイシンアミノ酸残基類縁体は、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、およびmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を含む群から選択されるアミノ酸残基を表すように意図されている。
本発明に係るポリペプチドはαヘリックスの立体構造を有するため、上記立体構造を妨げることが知られているアミノ酸残基の数は、本発明に係るポリペプチドの配列の中で限定されるものである。
例として、PおよびYなどのアミノ酸残基は、αヘリックスの形成の発生に好ましくないことが当該分野で知られている。
一部の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、最大3アミノ酸残基のPおよび/またはY、最大2アミノ酸残基のPおよび/またはY、最大1アミノ酸残基のPおよび/またはYを含む。
一部の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、アミノ酸残基Pおよび/またはYを全く含まない。
一部の実施形態では、本発明に係るポリペプチドのN末端のアミノ酸残基は、アミド化されていない。
目的のペプチドにおけるαヘリックスの存在を予測および/またはモニタリングするための手段は、当該分野でよく知られている。
目的のペプチドにおけるαヘリックスの存在を予測するためのいくつかのソフトウェア、たとえばAgadir(Munoz and Serrano (1994a, b, c, 1997); Lacroix et al. 1998))、PredictProtein(Yachdav et al. (2014))などが、当該分野で利用可能である。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、直鎖状ポリペプチドである。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号6~配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、本発明に係る直鎖状ポリペプチドは、配列番号6(LB19)、配列番号7(LB13)、配列番号8(LB8)、配列番号21(LA19)、および配列番号22(LA8)からなる群から選択される。
一部の他の実施形態では、本発明のポリペプチドは、環状ポリペプチドである。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号30~配列番号35、配列番号55~配列番号58、配列番号61~配列番号65、配列番号67、および配列番号68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、環状ポリペプチドは、CXXXCモチーフ(式中、Xは、上記の配列番号5のポリペプチドの定義と一致するアミノ酸残基を表す)を含む。
一部の実施形態では、CXXXCモチーフに由来するアミノ酸残基Cは、両方とも、好ましくはα,α’-ビスブロモキシレン、ヘキサフルオロベンゼン、2,2’-ビス(ブロモメチル)-1,1’-ビフェニル、1,2-ビス(ブロモメチル)ベンゼン、1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼン、3,3’-ビス(ブロモメチル)-1,1’-ビフェニル、および4,4’-ビス(ブロモメチル)-1,1’-ビフェニルを含む群で選択されるアルキル化剤によりアルキル化されている。
一部の実施形態では、環状ポリペプチドは、ラクタム架橋(lactam bridge)により得られる。本発明の範囲内では、用語「ラクタム架橋」は、グルタミン酸またはアスパラギン酸のアミノ酸残基の側鎖とアミド結合を形成するためのリジンアミノ酸残基の側鎖のポリペプチドの中での共有結合を表すように意図されている。例として、たとえばTaylor (2002)およびAihara et al. (2015)において、ラクタム架橋の形成が開示されている。
特定の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号30(VS-142-BisAlk)、配列番号31(LT018)、および配列番号32(LT020)からなる群から選択される。特定の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号55(MP1)、配列番号56(MP2)、配列番号57(MP3)、配列番号58(MP4)、配列番号61(MP7)、配列番号62(MP8)、配列番号63(MP9)、配列番号64(MP10)、配列番号65(MP11)、配列番号67(CT-44)、および配列番号68(CT-45)からなる群から選択される。
一部の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号55、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号67、および配列番号68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号55(MP1)により表されるアミノ酸配列、すなわちCTLKCKLIにより表されるアミノ酸配列(式中システイン残基は、m-ベンジルにより結合している)を含むか、またはこれから構成される。一部の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号61(MP7)により表されるアミノ酸配列、すなわちCTLKCKLIにより表されるアミノ酸配列(式中、システイン残基は、p-テトラフルオロフェニルにより結合している)を含むかまたはこれから構成される。一部の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号62(MP8)により表されるアミノ酸配列、すなわちCTLKCKLIにより表されるアミノ酸配列(式中システイン残基は、o-ベンジルにより結合している)を含むかまたはこれから構成される。一部の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号63(MP9)により表されるアミノ酸配列、すなわちCTLKCKLIにより表されるアミノ酸配列(式中、システイン残基は、p-ベンジルにより結合している)を含むかまたはこれから構成される。一部の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号67(CT-44)により表されるアミノ酸配列、すなわちCT(mlL)KCKLIにより表されるアミノ酸配列(式中、システイン残基は、p-テトラフルオロフェニルにより結合している)を含むかまたはこれから構成される。一部の実施形態では、本発明の環状ポリペプチドは、配列番号68(CT-45)により表されるアミノ酸配列、すなわちCTLKCK(cpA)Iにより表されるアミノ酸配列(式中、システイン残基は、p-テトラフルオロフェニルにより結合している)を含むかまたはこれから構成される。
特定の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号61、配列番号67、または配列番号68により表されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号61により表されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号67により表されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、上記環状ポリペプチドは、配列番号68により表されるアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、上記乳酸脱水素酵素のサブユニットは、乳酸脱水素酵素B(LDHB)のサブユニットである。
一部の実施形態では、上記乳酸脱水素酵素のサブユニットは、乳酸脱水素酵素A(LDHA)のサブユニットである。
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号2の完全長のLDHBサブユニットのアミノ酸残基L178、V206、V209、L211、およびW227と相互作用することにより、LDHBサブユニットの機能的な四量体(アイソフォームのLDH1に対応)の形成を防ぐことができる。さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドはまた、配列番号2のLDHBサブユニットのアミノ酸残基L300およびV303と相互作用することができる。
さらに、本発明に係るポリペプチドは、第1のαヘリックスを形成する、配列番号2のLDHBサブユニットのアミノ酸残基L178、V206、V209、L211、およびW227と、および任意選択で第2のαヘリックスを形成する、配列番号2のLDHBサブユニットのアミノ酸残基L300およびV303と、相互作用し得る。
また本発明は、本明細書中定義されるポリペプチドの誘導体に関する。
実際に、本発明はまた、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または挿入により、本明細書中具体的に開示されるポリペプチド、たとえばアミノ酸配列番号5のポリペプチドとは異なるいずれかのポリペプチドを包有する。このような誘導体は、天然に存在していてもよく、またはたとえば上記本発明のポリペプチド配列の1つ以上を修飾し、本発明のポリペプチドの1つ以上の阻害活性を評価し、かつ/もしくは当該分野でよく知られている多くの技術のいずれかを使用することにより、合成的に作製され得る。
本発明のポリペプチドの構造において修飾がなされてもよく、さらには望ましい特徴を伴う派生的なポリペプチドをコードする機能的な分子を得てもよい。均等物またはさらには改善したバリアントまたは一部を作製するために本発明に係るポリペプチドのアミノ酸配列を変えることが望ましい場合、当業者は、通常、コードしたポリヌクレオチド(たとえばDNA)配列のコドンの1つ以上を変える。
たとえば、特定のアミノ酸残基は、他のポリペプチド(たとえばLDHBtr)に結合するその特性の明らかな喪失を伴うことなくタンパク質構造において他のアミノ酸残基で置換され得る。タンパク質の生体での機能的な活性を定義するものはタンパク質の結合能および性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換が、タンパク質配列、および当然その根底にあるDNAをコードする配列においてなされてよく、にもかかわらず、類似する性質を有するタンパク質を得ることができる。
よって、本発明のポリペプチド配列または、それらの阻害活性の明らかな喪失を伴うことなく上記ポリペプチドをコードする対応するポリヌクレオチド配列(たとえばDNA配列)において様々な変更がなされ得ることが企図される。多くの場合、本発明に係るペプチドまたはポリペプチドのバリアントは、1つ以上の保存的置換を含む。「保存的置換」は、アミノ酸残基が、類似する特性を有する別のアミノ酸残基で置換される置換であり、これによりペプチド化学の当業者は、ポリペプチドの二次構造およびヒドロパシーの性質が実質的に変化しないと予測する。
したがって上述されるように、アミノ酸の置換は、全般的に、アミノ酸の側鎖の置換基、たとえばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどの相対的な類似性に基づく。様々な前述の特徴を考慮する例示的な置換は、当業者によく知られており、アミノ酸残基RおよびK;アミノ酸残基DおよびE;アミノ酸残基SおよびT;アミノ酸残基QおよびN;ならびにアミノ酸残基A、V、L、およびIを含む。
アミノ酸の置換は、アミノ酸残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づきさらになされ得る。たとえば、負に荷電したアミノ酸として、アミノ酸残基DおよびEが挙げられ;正に荷電したアミノ酸として、アミノ酸残基KおよびRが挙げられ、類似する親水性の値を有する荷電していない極性頭部基を有するアミノ酸として、アミノ酸残基A、L、I、およびV;アミノ酸残基GおよびA;アミノ酸残基NおよびQ;ならびにアミノ酸残基S、T、F、およびYが挙げられる。保存的な変化を表し得るアミノ酸の他の基として、(1)アミノ酸残基A、P、G、E、D、Q、N、S、T;(2)アミノ酸残基C、S、Y、T;(3)アミノ酸残基V、I、L、M、A、F;(4)アミノ酸残基K、R、H;および(5)アミノ酸残基F、Y、W、Hが挙げられる。
本発明に係るポリペプチドの誘導体は、同様にまたはあるいは、非保存的な変更を含み得る。別の実施形態では、誘導体は、5つ以下のアミノ酸残基の置換、欠失、または付加によりポリペプチド配列と異なる。同様に(またはあるいは)、誘導体は、たとえば本発明に係るポリペプチドの阻害特性に最小限の影響を有するアミノ酸残基の欠失または付加により、修飾され得る。
別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、乳酸脱水素酵素のサブユニット、より具体的には乳酸脱水素酵素A(LDHA)または乳酸脱水素酵素B(LDHB)のサブユニットの四量体化ドメインの全体または一部を含む。上記実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号21、または配列番号22を含む。
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、乳酸脱水素酵素A(LDHA)または乳酸脱水素酵素B(LDHB)のサブユニットのN末端の少なくとも8、好ましくは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、75、100、125、150、または160のアミノ酸残基により表され得る。
にもかかわらず、本発明に係るポリペプチドは、LDHAまたはLDHBなどのいずれかのネイティブな乳酸脱水素酵素のサブユニットのアミノ酸配列を含まない。
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19のアミノ酸を含む。
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、8~150アミノ酸、好ましくは8~125アミノ酸、より好ましくは8~100アミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、8~75アミノ酸、好ましくは8~50アミノ酸、8~40アミノ酸、または8~30アミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、8~25アミノ酸、8~20アミノ酸、または8~19アミノ酸を含む。
別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、13~150アミノ酸、好ましくは13~125アミノ酸、より好ましくは13~100アミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、13~75アミノ酸、好ましくは13~50アミノ酸、13~40アミノ酸、または13~30アミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、13~25アミノ酸、13~20アミノ酸、または13~19アミノ酸を含む。
別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、19~150アミノ酸、好ましくは19~125アミノ酸、より好ましくは19~100アミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、19~75アミノ酸、好ましくは19~50アミノ酸、19~40アミノ酸、または19~30アミノ酸を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、19~25アミノ酸、または19~20アミノ酸を含む。
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、最大100、90、80、70、60、50、40、30、または20のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、最大19のアミノ酸を含む。
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19、またはそれ以上のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、8つのアミノ酸を含む。別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、13アミノ酸を含む。別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、19アミノ酸を含む。別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のアミノ酸を含む。
一部の実施形態では、本発明に係るポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1または配列番号2ではない。
特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、本発明に係るポリペプチドを精製もしくは検出のためエピトープで特異的に標識させるか、または本発明に係るポリペプチドを対象の特定の細胞、特定の組織、または特定の臓器、すなわち特定の身体の位置に標的化させる、本明細書中以下で「タグポリペプチド」と呼ばれる、少なくとも1つのさらなるアミノ酸配列をさらに含む。上記実施形態では、上記ポリペプチドは、少なくとも1つのタグポリペプチドをさらに含む。
さらに、特定の実施形態では、タグポリペプチドによりさらに、本発明のポリペプチドは、標的細胞、より好ましくはがん細胞の細胞質、核、またはオルガネラにおいて標的化される。
本発明の特定の実施形態では、上記タグポリペプチドは、本発明のポリペプチドの阻害活性を妨げないように十分に短い。例として、適切なタグポリペプチドは、全般的に、少なくとも6つのアミノ酸残基、好ましくは約8~約50アミノ酸残基、より好ましくは約10~約20アミノ酸残基を有する。
本発明で使用するためのタグポリペプチドは、抗タグ抗体が選択的に結合することができるエピトープを提供し得るか、または抗タグ抗体もしくはエピトープタグに結合する別の種類のアフィニティマトリックスを使用するアフィニティー精製により本発明のペプチドまたはポリペプチドを容易に精製できてもよい。
様々なタグポリペプチドが、当該分野でよく知られている。例として、ポリ-ヒスチジン(poly-his)またはポリ-ヒスチジン-グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド、c-mycタグ、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ、Flagペプチド、KT3エピトープペプチド;αチューブリンエピトープペプチド;ならびにT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグが挙げられる。
本発明に係るポリペプチドはまた、たとえばビオチン化によるか、または放射標識、蛍光標識、もしくは酵素標識などの当該分野で知られているいずれかの検出可能な標識の組み込みにより、より容易に検出できるように修飾され得る。よって、特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、上記ポリペプチドをより容易に精製または検出させるいずれかのアミノ酸配列(たとえばヒスタグ、ビオチンタグ、またはストレプトアビジン(Streptavidine)タグ)をさらに含み得る。
よって、特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、細胞への進入を容易にするタンパク質伝達ドメインとしても知られている、膜透過性ペプチド(cell-penetrating peptide:CPP)から構成される少なくとも1つのタグポリペプチドをさらに含み得る。当該分野でよく知られているように、膜透過性ペプチドは、全般的に正味の正の電荷を有する最大30の残基の短いペプチドであり、レセプターとは無関係でありエネルギーに依存しない方法で作用する。
よって、本発明に係るポリペプチドは、1つ以上の膜透過性ペプチドを含み得る。含む場合、膜透過性ペプチドは、細胞の中で切断可能であり得る。CPPの例として、親水性CPPおよび両親媒性CPPからなる群で選択されるCPPが挙げられる。親水性CPPは、通常アミノ酸残基RおよびKを多く含む親水性アミノ酸により主に構成されているペプチドである。
親水性CPPの例として、アンテナペディアペネトラチン(Antennapedia Penetratin)(RQIKWFQNRRMKWKK、配列番号36)、TAT(YGRKKRRQRRR、配列番号37)、SynB1(RGGRLSYSRRRFSTSTGR、配列番号38)、SynB3(RRLSYSRRRF 配列番号39)、PTD-4(PIRRRKKLRRLK、配列番号40)、PTD-5(RRQRRTSKLMKR 配列番号41)、FHV Coat-(35-49)(RRRRNRTRRNRRRVR、配列番号42)、BMV Gag-(7-25)(KMTRAQRRAAARRNRWTAR、配列番号43)、HTLV-II Rex-(4-16)(TRRQRTRRARRNR、配列番号44)、D-Tat(GRKKRRQRRRPPQ、配列番号45)、およびR9-Tat(GRRRRRRRRRPPQ、配列番号46)が挙げられる。
両親媒性CPPは、通常アミノ酸残基Kを多く含むペプチドである。両親媒性CPPの例として、抗菌ペプチド、たとえばMAPまたはトランスポータン:トランスポータン(GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL、配列番号47)、MAP(KLALKLALKLALALKLA、配列番号48)、SBP(MGLGLHLLVLAAALQGAWSQPKKKRKV、配列番号49)、FBP(GALFLGWLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV、配列番号50)、MPG(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV、配列番号51)、MPG(ΔNLS)(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV、配列番号52)、Pep-1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV、配列番号53)、およびPep-2(KETWFETWFTEWSQPKKKRKV、配列番号54)が挙げられる。
アンテナペディア由来のペネトラチン(Derossi et al. (1994))およびTatペプチド(Vives et al. (1997))またはそれらの誘導体は、細胞内へのペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチドなどのカーゴ分子(cargo molecule)の送達のため、特に広く使用されているツールである(Fischer et al. (2001))。別の実施形態では、本発明のポリペプチドはまた、国際特許公開公報第2011/157713号および同第2011/157715号(Hoffmann La Roche(登録商標))に記載されるものなどの膜透過性ペプチドまたはその誘導体を含み得る。
本発明の特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、リンカーにより少なくとも1つの膜透過性ペプチド(CPP)に結合している。本発明の意味の範囲内で、「リンカー」は、単一の共有結合または安定した一連の共有結合を含む部分であって、多くの場合、本発明のリガンドにカップリング官能基または生体活性基を共有結合するC、N、O、S、およびPからなる群から選択される1~40の複数の原子価の原子を組み込んでいる、部分を意味する。リンカーの複数の原子価の原子の数は、たとえば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、または30、または最大40以上のより大きな数であり得る。リンカーは、直鎖状または非直鎖状であってよく;一部のリンカーは、ペンダント側鎖またはペンダント官能基(またはその両方)を有し得る。
本発明のポリペプチドは、望ましいポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換もしくはトランスフェクトした細胞を培養するかまたは別の方法、たとえば固相技術を使用した直接的なペプチド合成もしくはin vitroでのタンパク質合成などの、当業者によく知られている方法により調製され得る。
さらに本発明は、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNA核酸配列を含む。
また本開示は、本発明に係る少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む核酸ベクターに関する。
本発明の中で、「少なくとも1つのポリヌクレオチド」との表現は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上のポリヌクレオチドを含むように意図されている。
一部の実施形態では、ベクターは、上記少なくとも1つのポリペプチドの制御された発現を可能にする。
特定の実施形態では、ベクターは、好ましくはアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、非統合型レンチウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、およびバキュロウイルスを含む群で選択される、ウイルスベクターである。
一部の実施形態では、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、または核酸ベクターは、特に他の天然または合成の化合物、たとえば脂質、タンパク質、ペプチド、またはポリマーと組み合わせて、送達粒子に含まれ得る。
本発明の範囲内で、上記送達粒子は、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、または核酸ベクターを伴う標的の細胞、組織、または臓器を提供または「送達」するように意図されている。
一部の実施形態では、送達粒子は、陽イオン性脂質を含むリポプレックス;脂質ナノエマルジョン;固体脂質ナノ粒子;ペプチドベースの粒子;特に天然および/または合成のポリマーを含む、ポリマーベースの粒子;ならびにそれらの混合物の形態であり得る。
一部の実施形態では、ポリマーベースの粒子は、合成ポリマー、特にポリエチレンイミン(PEI)、デンドリマー、ポリ(DL-ラクチド)(PLA)、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコシド)(PLGA)、ポリメタクリレート、およびポリホスホエステルを含み得る。
一部の実施形態では、送達粒子は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または核酸ベクターを標的の細胞、組織、または臓器に向けるために適した1つ以上のリガンドをその表面にさらに含む。
さらに本発明は、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または送達粒子と、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物に関する。一部の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物に関する。
一部の実施形態では、薬学的に許容されるビヒクルは、溶媒、希釈剤、担体、賦形剤、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、およびそれらの組み合わせを含む群で選択される。担体、希釈剤、溶媒、または賦形剤は、本ポリペプチドまたはその誘導体と適合可能である意味で「許容」されなければならないが、これと共に投与される対象に有害であってはならない。通常、ビヒクルは、対象、好ましくはヒト対象に投与される場合に、有害な反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をもたらさない。
ヒト投与の特定の目的のため、本医薬組成物は、たとえばFDA局またはEMAなどの規制局が要求する無菌性、発熱性、全般的な安全性、および純度の基準を満たすべきである。
一部の実施形態では、担体は、無菌性かつパイロジェンフリーである、水または食塩水(saline)(たとえば生理食塩水(physiological saline)であり得る。適切な賦形剤として、マンニトール、ブドウ糖、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
治療上の使用に許容される担体、溶媒、希釈剤、および賦形剤は、医薬の分野でよく知られており、たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro ed. 1985)に記載されている。適切な薬学的な担体、溶媒、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な薬学的な実務でなされ得る。本医薬組成物は、担体、賦形剤、溶媒、または希釈剤としてまたはこれに加えて、いずれかの適切な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、または可溶化剤を含み得る。保存剤、安定剤、色素、およびさらには香料が、本医薬組成物に提供され得る。
本製剤は、単位剤形で簡便に提示されてもよく、薬学の分野でよく知られている方法および良好な実務のいずれかにより、調製され得る。このような方法は、1つ以上の副成分を構成する担体と本ペプチドまたは本ポリペプチドの結合をもたらすステップを含む。
経口投与に適した本発明に係る製剤は、それぞれが所定の量の本発明に係るポリペプチドを含む、カプセル、カシェー、もしくは錠剤などの別々の単位として;散剤もしくは顆粒剤として;水系の液体もしくは非水系の液体の液剤もしくは懸濁剤として;または水中油型の液体のエマルジョンもしくは油中水型の液体のエマルジョンとして、提示され得る。また本発明のポリペプチドは、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提示され得る。
非経口投与に適した製剤として、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、および本製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水系および非水系の無菌注射液剤;ならびに懸濁化剤および増ちょう剤を含み得る水系および非水系の無菌性の懸濁剤が挙げられる。本製剤は、単位用量または複数回投与用の容器、たとえば密閉されたアンプルおよびバイアルに提示されてもよく、使用の直前に無菌性の液体の担体、たとえば注射用の水の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze-dried:lyophilized)した状態で保存され得る。即時注射用の液剤および懸濁剤は、無菌性の散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。本発明で使用するための製剤は、問題となる製剤の種類を考慮した当該分野で従来よりある他の作用物質をさらに含んでよく、たとえば経口投与に適切な作用物質は、香料を含み得る。
本発明の医薬組成物または医薬品は、経口的に、非経口的に、局所的に、吸入スプレーにより、直腸に、経鼻的に、頬に、膣に、または埋め込まれたリザーバーを介して投与され得る。本明細書中使用される用語投与は、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内の注射または注入技術を含む。
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物または医薬品は、非経口的に、皮下に、静脈内に、または埋め込まれたリザーバーを介して投与される。
一実施形態では、本発明の医薬組成物または医薬品は、眼内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、または静脈内注射または注入などの注射に適した形態である。
注射に適した形態の例として、限定するものではないが、液剤、たとえば無菌性水系液剤、分散剤、エマルジョン、懸濁剤、使用前に液体を添加して液剤または懸濁剤を調製するための使用に適した固体の形態、たとえば散剤、リポソーム形態などが挙げられる。
処置は、ある期間にわたる単回の投与または複数回投与からなり得る。本ポリペプチドまたはその誘導体は、長期間、たとえば少なくとも2または4または6または8週間にわたる徐放を提供するための徐放製剤に製剤化され得る。好ましくは、徐放は、少なくとも4週間にわたり提供される。
特定の実施形態では、投与されるポリペプチドの有効量は、投与のため選択される物質、投与が単回投与または複数回投与であるかどうか、ならびに年齢、身体状態、大きさ、体重、性別、および処置される疾患の重症度を含む対象のパラメータを含む様々なパラメータに応じて変化し得る。
特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドの有効量は、用量単位あたり約0.001mg~約3,000mg、好ましくは用量単位あたり約0.05mg~約1,000mgを含み得る。
本発明の範囲内では、約0.001mg~約3000mgは、用量単位あたり約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,100mg、1,150mg、1,200mg、1,250mg、1,300mg、1,350mg、1,400mg、1,450mg、1,500mg、1,550mg、1,600mg、1,650mg、1,700mg、1,750mg、1,800mg、1,850mg、1,900mg、1,950mg、2,000mg、2,100mg、2,150mg、2,200mg、2,250mg、2,300mg、2,350mg、2,400mg、2,450mg、2,500mg、2,550mg、2,600mg、2,650mg、2,700mg、2,750mg、2,800mg、2,850mg、2,900mg、2,950mg、および3,000mgを含む。
特定の実施形態では、投与されるポリペプチドは、1日あたり約0.001mg/kg(対象の体重)~約100mg/kg(対象の体重)、約0.01mg/kg(対象の体重)~約50mg/kg(対象の体重)、好ましくは約0.1mg/kg(対象の体重)~約40mg/kg(対象の体重)、好ましくは約0.5mg/kg(対象の体重)~約30mg/kg(対象の体重)、約0.01mg/kg(対象の体重)~約10mg/kg(対象の体重)、約0.1mg/kg(対象の体重)~約10mg/kg(対象の体重)、より好ましくは約1mg/kg(対象の体重)~約25mg/kg(対象の体重)を送達するために十分な投与レベルであり得る。
一部の特定の実施形態では、投与されるポリヌクレオチドまたは核酸ベクターの有効量は、用量単位あたり約1×10~約1×1015コピーを含み得る。
本発明の範囲内では、約1×10~約1×1015コピーは、用量単位あたり1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、9×1011、1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、9×1013、1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、9×1014、および1×1015のコピーを含む。
さらに本発明は、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または送達粒子を含む医薬品に関する。
さらに本発明は、医薬品として使用するための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または送達粒子、または医薬組成物に関する。さらに本発明は、医薬品として使用するための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、または医薬組成物に関する。
一部の実施形態では、本発明はまた、医薬品の製造または調製のための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターもしくは送達粒子、または医薬組成物に関する。
さらに本発明は、がんの予防および/または処置に使用するための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、送達粒子、医薬組成物、または医薬品に関する。さらに本発明は、がんの予防および/または処置に使用するための本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、または医薬組成物に関する。
さらに本発明は、それを必要とする対象の基底オートファジーの阻止に使用するための本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、送達粒子、医薬組成物、または医薬品に関する。
また本発明は、それを必要とする対象のがん細胞の増殖の阻害に使用するための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、送達粒子、医薬組成物、または医薬品に関する。
また本発明は、がんを有する対象の全生存の改善に使用するための、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、送達粒子、医薬組成物、または医薬品に関する。
一部の他の実施形態では、本発明はまた、がんを予防および/または処置するための方法であって、本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、送達粒子、医薬組成物、または医薬品の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法に関する。
「がん」は、本明細書中使用される場合、悪性または良性であるかにかかわらず、全ての新生物の細胞の増殖(growthおよびproliferation)、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を包有する。用語「がん」および「がん性」は、通常無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳類の生理的状態を表すかまたはこれを説明するように意図されている。がんの例として、限定するものではないが、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このようながんのより特定の例として、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化器がん、膵がん、グリオブラストーマ、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、大腸がん、子宮内膜がん、唾液腺癌、腎がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、および様々な種類の頭頚部がんが挙げられる。
特定の実施形態では、さらに本発明は、酸化的がん性細胞および/または解糖系のがん性細胞を含むがんを予防および/または処置するための本発明に係るポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、送達粒子、医薬組成物、または医薬品に関する。
本発明の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドまたはその誘導体に加えて、さらなる抗がん性治療用作用物質を、処置される対象に投与する。たとえば、特定のがんを予防または処置するために本ポリペプチドを投与する場合、このがんの予防または処置に有用であることが知られているさらなる治療用作用物質が投与され得る。
例として、乳がんを予防または処置する場合、さらなる治療用作用物質は、乳がんを予防または処置することが知られている作用物質であり得る。
同様に、子宮がんを予防または処置する場合、さらなる治療用作用物質は、子宮がんを予防または処置することが知られている作用物質であり得る。
例として、さらなる治療用作用物質は、当該分野で知られているいずれかの抗がん剤であり得る。さらなる抗がん性治療用作用物質の例として、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトトキシン(cytoxin)、タキソイド、たとえばパクリタキセル(タキソール、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、およびドセタキセル(doxetaxel)(TaxotereDD, Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France)、トキソテレ(toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4,675,187号参照)、メルファラン、および他の関連するナイトロジェンマスタードが挙げられる。また、腫瘍でのホルモン作用を調節または阻害するように作用するホルモン剤、たとえばタモキシフェンおよびオナプリストンなどもこの定義に含まれる。
さらなる治療用作用物質が、本発明のポリペプチドと同時に(すなわち任意選択で共製剤での同時投与)または本ポリペプチドと異なる時間で(すなわち、さらなる治療用作用物質が本ポリペプチドを投与する前または後に投与される連続投与)投与され得ることが認識される。さらなる治療用作用物質は、本発明のポリペプチドと同じ方法で、またはさらなる治療用作用物質にとって通常の投与経路を使用することにより、投与され得る。
特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドは、治療上有効量でそれを必要とする対象に投与される。
「治療上有効量」は、対象に有意な負または有害な副作用をもたらすことなく、がんの1つ以上の症状の進行、憎悪、もしくは悪化の遅延もしくは停止;またはがんの症状の軽減;またはがんの治癒に必要かつ十分である、ポリペプチドまたは医薬組成物のレベルまたは量を意味する。
特定の実施形態では、本発明に係るポリペプチドの有効量は、用量単位あたり約0.001mg~約3,000mg、好ましくは用量単位あたり約0.05mg~約1,000mgを含み得る。
「対象」は、哺乳類または非哺乳類の動物、好ましくはヒトを表すように意図されている。
一部の実施形態では、非ヒトの動物は、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、およびウマを含む、有用な経済的な動物またはペット用動物の群で選択され得る。
一部の実施形態では、「それを必要とする対象」は、がんおよび/または転移を有すると診断されたことがある。一実施形態では、対象は、がんおよび/または転移を発症しやすい。一部の実施形態では、「それを必要とする対象」は、がんおよび/または転移を発症するリスクがある。別の実施形態では、「それを必要とする対象」は、がんおよび/または転移に関してすでに処置されている。
また本発明は、それを必要とする対象の基底オートファジーを阻止するための方法であって、本発明に係るポリペプチドまたは医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法に関する。
さらに本発明は、それを必要とする対象におけるがん細胞の増殖を阻害するための方法であって、本発明に係るポリペプチドまたは医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法に関する。
一部の実施形態では、がん細胞は、解糖系のがん細胞である。一部の代替的な実施形態では、がん細胞は、酸化的がん細胞である。
さらに本発明は、がんを有する対象の全生存を改善するための方法であって、本発明に係るポリペプチドまたは医薬組成物の有効量を上記対象に投与するステップを含む、方法に関する。
また本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系を準備するステップと、
b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を伴う系を準備するステップと、
c.本発明に係るポリペプチドの存在下または非存在下で前記候補化合物のLDHtrのサブユニットの二量体に対する結合のレベルを測定するステップと
を含み、
LDHtrのサブユニットの二量体に対する結合に関する前記ポリペプチドと前記候補化合物との間の競合の観察が、前期候補化合物が乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤であることを表す、
方法に関する。
一実施形態では、LDHtrのサブユニットの二量体に対する結合に関する前記ポリペプチドと前記候補化合物との間の競合の観察が、乳酸脱水素酵素のサブユニット上の四量体化部位に対する候補化合物の結合の特異性を表す。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、トランケートされているLDHAサブユニット、特に四量体化ドメインを欠いているLDHAサブユニットに関する。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、トランケートされているLDHBサブユニット、特に四量体化ドメインを欠いているLDHBサブユニットに関する。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、LDHAサブユニットおよびLDHBサブユニットの両方を含む。
一部の実施形態では、候補化合物のLDHtrのサブユニットの二量体に対する結合のレベルを測定するステップは、本発明に係るポリペプチドの増大する量の存在下で行われ得る。
また本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系を準備するステップと、
b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を伴う系を準備するステップと、
c.前記候補化合物のLDHtrのサブユニットの二量体に対する結合のレベルを測定するステップと
を含み、
LDHtrのサブユニットの二量体に対する候補化合物の結合の観察が、候補化合物が乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤であることを表す、
方法に関する。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットに対する本発明に係るポリペプチド、特に式(I)のポリペプチドの結合のレベルを測定するステップは、陽性対照として行われる。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、トランケートされているLDHAサブユニット、特に四量体化ドメインを欠いているLDHAサブユニットである。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、トランケートされているLDHBサブユニット、特に四量体化ドメインを欠いているLDHBサブユニットである。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、LDHAサブユニットおよびLDHBサブユニットの両方を含む。
また本発明は、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系(1)およびネイティブな四量体LDHを含む系(2)を準備するステップと、
b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を含む系(1)および(2)を準備するステップと、
c.系(1)におけるLDHtrのサブユニットの二量体および系(2)におけるネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合レベル(Kd)を測定するステップと
を含み、
系(1)におけるLDHtrのサブユニットの二量体に対する前記候補化合物の結合の観察および系(2)におけるネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合の変更の観察は、前記候補化合物が、LDHサブユニットの表面で相互作用することにより、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤となることを表す、
方法に関する。
本発明の範囲内では、ネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合の変更は、LDHtrのサブユニットの二量体に対する上記候補化合物の結合レベル(Kd)と比較して少なくとも50%減少しているネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合レベル(Kd)を表すように意図されている。本明細書中使用される場合、用語「少なくとも50%」は、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、1,000%、1,500%、2,000%、2,500%、3,000%、3,500%、4,000%、4,500%、5,000%、7,500%、10,000%、またはそれ以上を含む。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、医薬組成物、送達粒子、または医薬品は、経口的、非経口的、局所的、吸入スプレーによるか、直腸に、経鼻的、頬に、膣に、または埋め込まれたリザーバーを介して投与され得る。本明細書中使用される用語投与は、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、医薬組成物、送達粒子、または医薬品は、非経口的、皮下、静脈内、または埋め込まれたリザーバーを介して投与される。
一実施形態では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、医薬組成物、送達粒子、または医薬品は、眼内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、または静脈内注射または注入などの注射に適した形態である。
さらに本発明は、がんを予防および/または処置するためのキットであって、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチドと、任意選択で少なくとも1つの抗がん剤とを含む、キットに関する。さらに本発明は、がんを予防および/または処置するためのキットであって、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチド、ポリペプチド、または医薬組成物と、任意選択で少なくとも1つの抗がん剤とを含む、キットに関する。
本発明の範囲内で、「少なくとも1つの抗がん剤」との表現は、少なくとも1つの本発明に係るポリペプチドと併用または連続して投与され得る、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種の抗がん剤を含むように意図されている。
また本開示は、乳酸脱水素酵素LDHBおよび/またはLDHAサブユニットの四量体化を調節する化合物をスクリーニングするためのキットであって、
LDHtrのサブユニットと、
本発明に係るポリペプチドと
を含む、キットに関する。
本発明に係るポリペプチドは、陽性対照として後者のキットで使用され得ることを理解されたい。
一部の実施形態では、LDHtrのサブユニットは、LDHAサブユニット、特に四量体化ドメインを欠いているLDHAサブユニットである。
代替的な実施形態では、LDHtrのサブユニットは、LDHBサブユニット、特に四量体化ドメインを欠いているLDHBサブユニットである。
また本開示は、乳酸脱水素酵素LDHBおよび/またはLDHAサブユニットの四量体化を調節する化合物をスクリーニングするためのキットであって、
LDHtrのサブユニットと、
ネイティブな四量体LDHと、
本発明に係るポリペプチドと
を含む、キットに関する。
図1A~Dは、(A)透かし絵により示される19のN末端のアミノ酸を有する単量体毎に色付けされた完全長のLDHB四量体((PDB code 1I0Z);(B)単量体A、B、およびCにより形成される三量体に重ね合わされた1つの単量体の19のN末端のペプチド(鎖D)、ならびに((C)および(D))19のN末端のペプチドと単量体BおよびCとの間の主な相互作用の3D図である(Delano Scientific製のPymol(登録商標)を使用して作成した画像)。 図2A~Dは、(A)完全長のLDHBおよび(B)トランケートされているLDHBの保持体積を決定するために使用される分子ふるいクロマトグラム、(C)補因子NADHを用いたLDHBおよびLDHBtr結合アッセイの重ね合わせ;(D)トランケートされているLDHB(左)および完全長のLDHB(右)のサーマルシフト(thermal shift)アッセイを示すグラフのセットである。示される温度は、生の蛍光の導関数により計算されたサーマルシフトに対応する。 図3A~Cは、(A)NMR WaterLOGSYシーケンスを使用したLDHBtr(15μM)に対する800μMのLB8類縁体のスクリーニング;破線は、対照実験と比較した場合のNMR WaterLOGSYシグナルの10%の増加に対応する、0.1の任意の閾値を表す;(B)LDHB四量体化部位と相互作用するLB8のin silicoでのモデル;(C)LB8残基の構造活性の関係を示すグラフのセットである。 図4A~Cは、(A)らせん度を促進させるために使用されるシステイン架橋戦略の概略図;(B)最良に相互作用する環状ペプチドの構造;(C)完全長のLDHB(上部)およびトランケートされているLDHB(下部)に対するこの環状ペプチドの結合の比較を示すグラフのセットである。 図5A~Dは、(A)完全長のLDHB(LDHBfl)およびトランケートされているLDHB(LDHBtr)の蛍光スペクトル;(B)中性およびわずかに酸性の条件でのLDH-Mの蛍光スペクトルを表すグラフ;(C)中性条件における復元後のLDH-Mの蛍光スペクトルを表すグラフ;(D)復元後の経時的なLDH-Mの蛍光強度の回復を表すグラフを示すグラフのセットである。 図6A~Dは、LB8(A)およびLBc(B)での変性後の蛍光強度の回復;(C)1完全長のLDHBおよび2トランケートされているLDHBのトリプトファンの蛍光スペクトル;(D)LT018での変性後の蛍光強度の回復を示すグラフのセットである。 図7は、LDHBの利用可能なX線構造(PDB ID 1I0Z)を使用してMOEソフトウェアから計算した全体的なLB19側鎖結合エネルギー(H結合、Vdw、イオン性)を示すグラフである。自由エネルギーの計算は、8つのN末端のアミノ酸を有するLB19の全体的なSARが全般的な結合に最も重要であることを良好に予測している。 図8A~Bは、以下のグラフのセットである。(A)二量体のLDHBtr(plot1)、四量体のLDH1(plot 2)およびLDH5(plot 3)での大環状ペプチドMP7のMST結合曲線を示すグラフ。結合曲線は、赤色色素の生の蛍光から抽出したLDH5での結合曲線(n=3)を除き、10~20sのMST on時間でMSTトレースから抽出した(n=3)。(B)大環状ペプチドMP7に曝露した様々な濃度のヒトLDH5のNanoDSF(n=6)を示すグラフ。350/330nmの蛍光発光の変化は、青色または赤色のシフトを表し、フォールディングされていない事象を表す;Plot 1-3:400μM MP 7;Plot 1:300nM LDH5;Plot 2:500nM LDH5;Plot 3:1,200nM LDH5;Plot 4:1,200nM LDH5。 図9A~Dは、酸への曝露後のウサギLDH5の蛍光の回復に及ぼすMP1およびMP7の影響を示すグラフのセットである(n=6)。(A)200nMのrLDH5は、50μMのMP7の非存在下(plot 1)または存在下(plot 2)で復元した;(B)200nMのrLDH5は、50μMのMP1の非存在下(plot 1)または存在下(plot 2)で復元した;(C)200nMのrLDH5は、50μMのLB8の非存在下(plot 1)または存在下(plot 2)で復元した;(D)200nMのrLDH5は、50μMのLBcの非存在下(plot 1)または存在下(plot 2)で復元した。 図10は、MSTから得られたLDH5でのMP7の結合曲線(plot 2、結合の割合(Fraction bound))と重なった増大する濃度のMP7(plot 1;四量体(%))でのLDH5の四量体の状態を示すグラフである。四量体の状態は、LDH5(100%の四量体として企図)およびLDHBtr(0%との四量体として企図)のスペクトルに関して正規化された350nmの蛍光強度を使用して推定する。 図11A~Eは、大環状ペプチドMP7(7)または対照ビヒクル(対照)の添加後のMia Paca-2細胞の細胞外酸性化速度(extracellular acidification rate:ECAR)および酸素消費速度(OCR)の変化を示すグラフのセットである。(A)基底ミトコンドリアOCR(pmol/分/10個の細胞)。(B)最大ミトコンドリアOCR(pmol/分/10個の細胞)。(C)OCR依存性のATPの産生。(D)解糖に関連するECAR、および(E)解糖能ECAR(mpH/分)。N=2、n=15-16。*(p<0.05);****(p<0.0001)。
実施例
さらに本発明を、以下の実施例により示す。
実施例1
1-実験の手法
1.1-ペプチド合成
本明細書中使用する全てのポリペプチドは、GeneCust(登録商標)(www.genecust.com)から購入した。ペプチドの純度のレベルは、95%超であった。構造の一致および純度のグレードは、分析用HPLC分析および質量分析により確認した。全てのペプチドは、他の記載がない限り、それらのC末端でアミド化した。
1.2-核磁気共鳴(NMR)
6His Tagでタグ付与した完全長のヒトLDHB(LDHB;配列番号2)およびトランケートされているLDHB、すなわち最初のN末端の19アミノ酸残基を欠いているLDHBサブユニット(LDHBtr;配列番号4)を、上述のように大腸菌細胞から発現させ、精製した。全ての実験は、broadband cryoprobe(Bruker(登録商標)GmBH, Germany)を搭載したBruker Ascend Avance III 600 MHzで得た。
1.3-NMR WaterLOGSY実験
NMR WaterLOGSYを、50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.6)および100mMのNaClを含む10%のDOバッファーで調製したサンプルで行った。LDHサブユニットの濃度は、15~20μMであった。リガンド結合は、1秒の混合時間でNMR WaterLOGSY ephogsygpno.2 advance-version sequenceを使用して検出した。水シグナルの抑制は、励起スカルプティングスキーム(excitation sculpting scheme)を使用して達成し、タンパク質のバックグラウンドシグナルを抑制するために、50msのスピンロックを使用した。各実験で、512のスキャンを回収して、16KポイントのFIDを得た。NMR WaterLOGSY強度は、タンパク質の存在下および非存在下で記録されるリガンドのNMR WaterLOGSYスペクトルの強度の差異をプロットすることにより補正した。
NMR WaterLOGSYスクリーニング実験では、補正係数を、サンプル間のわずかな濃度のバリエーションを補正するために適用した。これを行うために、50msのスピンロックで8つのスキャンの1H NMRスペクトルを記録した後、NMR WaterLOGSY実験を行った。タンパク質を伴う脂肪族領域および伴わない脂肪族領域(0.700ppm~0.955ppm)の強度比率を、LDHサブユニットを伴う目的のポリペプチドおよび伴わない目的のポリペプチドのNMR WaterLOGSY強度を比較するための補正係数として使用した。タンパク質を伴うスペクトルとタンパク質を伴わないスペクトルとの間のNMR WaterLOGSYシグナル強度の10%の減少に対応する、0.1の任意の閾値を、バインダーと非バインダーとの間を区別するために設定した。
1.4-2D実験
ポリペプチドを、100mMのNaCl、1mMのTSP、および10%のDOを含む50mMのリン酸塩バッファー(pH7.0)に溶解した。全ての実験で、水の抑制を、励起スカルプティングスキームを使用して達成した。4Kの時間領域ポイントおよび256のインクリメントが、全ての2Dスペクトルに適用された。
TOCSYの実験は、80秒の混合時間にてdipsi2シーケンスで等核のハートマンハーン(Hartman-Hahn)伝達を使用して行った。スペクトルあたり8つのスキャン、4Kの時間領域ポイント、および256のインクリメントを記録した。
ROESY実験を、混合のためのcwスピンロックを伴う2D ROESYシーケンスを使用して行い、400秒の混合時間を使用し、記録したスキャンの数は32であった。
1.5-分子ふるい実験
分子ふるいクロマトグラフィーを、0.7ml/分で、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、100mMのNaClで平衡化したSuperdex 200 Increase 10/300 GLを搭載したAKTA explorer(GE Healthcare(登録商標))を使用して行った。LDHBfl(配列番号2)およびLDHBtr(配列番号4)を、アッセイバッファーで3μMに希釈した。最終的な注入容量は、100μlであった。実験前に、カラムを、蒸留およびろ過したHOで2倍のカラム容量で、次に3倍のカラム容量のろ過されたバッファーにより、平衡化した。分子量は、製造社の説明に従い同じアッセイバッファーにおいてBioradのゲルろ過標準物質を使用して決定した。
1.6-蛍光ベースのサーマルシフト
サーマルシフトアッセイを、96ウェルの白色のプレート(Roche(登録商標))においてStepOnePlus Real-Time PCR System(Thermo Fisher Scientific(登録商標))で行った。各ウェルは、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、100mMのNaClにおいて5μMのタンパク質および5×SYPRO Orange20μlを含んでいた。各プレートを、光学的に透明なホイルで密閉し、1000rpmで1分間遠心分離した後、アッセイを行った。プレートを、約4℃/分-1、20~99℃で加熱した。蛍光強度を、λex=480nmおよびλem=580nmで測定した。融解温度(Tm)を、融解曲線の一次導関数の曲線の最小値を決定することにより得た。
1.7-マイクロスケール熱泳動(MST)
MSTの測定を、赤色色素-NHS蛍光標識を使用してNanotemper Monolith NT.115 instrument(Nanotemper Technologies(登録商標), GmbH)で行った。均一となるまで精製した、各LDH(WTまたはトランケート済みの)サンプルを、供給されたプロトコルによりMonolith RED-NHS第2世代の標識色素(Nanotemper Technologies(登録商標), GmbH)で標識した。測定を、premium treated capillaries(Nanotemper Technologies(登録商標), GmbH)において、0.05%のTween-20を含む50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)および100mMのNaClで行った。このアッセイにおけるいずれかの標識したタンパク質の最終濃度は100nMであった。リガンド(NADHおよびペプチド)を、製造社の推奨により1:1希釈で滴定した。全ての結合反応物を、毛細管に充填した後室温で5’インキュベートした。実験を、40%のLED powerおよび中程度のMST powerを使用して三連で行った。LaserOn時間は20秒であり、Laser Off時間は3秒であった。直鎖状のオクタペプチドを、それらの熱泳動パターンについて評価した。より長い環状ペプチドが標識色素と相互作用することが見出され、よって、熱泳動パターンの代わりに生の蛍光を使用して、製造社の説明により解離定数を抽出した。
1.8-6Hisでタグ付与したヒトLDHポリペプチドの精製
pET-28a発現ベクター内にクローニングしたhLDH(wtおよびトランケート済み)の配列は、Genecust(登録商標), Luxembourgからオーダーした。次に、組み換えプラスミドを宿主細菌の大腸菌Rosetta株(DE3)に形質転換した。形質転換体を、50μg/mlのカナマイシンおよび34μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地で、光学密度が0.6に達するまで37℃で培養した。LDH発現を、1mMのイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)により、20℃で20時間誘導した。次に、細胞を、5,000rpm、4℃で25分間の遠心分離により回収した。ペレットを、溶解バッファーに懸濁し、次に超音波処置により破壊し、次いで4℃、10,000rpmで30分間遠心分離した。不溶性のフラクションを廃棄し、可溶性フラクション1mlあたり1μlのβ-メルカプトエタノールを添加した。組み換えポリペプチドの精製を、1mlのHis-trap FF粗製カラム(GE Healthcare(登録商標))を使用して製造社の説明により行った。最後に、濃度を、Biorad Protein Assay Kitを用いてBradford法を使用して測定し、サンプルの均一性を、染色剤としてクーマシーブリリアントブルーを用いる硫酸塩-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して評価した。
1.9-分光光度法による実験
全ての分光光度法による実験を、spectramax m2e分光光度計を使用して透明または不透明な96ウェルプレートで行った。
1.10-酵素アッセイ
デヒドロゲナーゼ反応を、LDH1(LDHBの四量体)の生理的に関連する乳酸からピルビン酸への方向で、乳酸の酸化の間に産生されたNADH蛍光を経過観察することにより行った。反応の進行を、340/460nmでの蛍光の増大としてモニタリングした。
ミカエリスメンテン定数の決定を、GraphPad prismソフトウェアを使用して行った。酵素反応を、乳酸からピルビン酸への酸化を高めるためのリン酸塩バッファー(100mM、pH8.3)、EDTA(1mM)、およびDTT(1mM)を含む溶液において行った。最終的なタンパク質濃度は、完全長のLDHBサブユニットで7.7nMであり、トランケートされているLDHBサブユニット(LDHBtr)で13.5nMであった。NADKmの決定のため、乳酸の濃度は、20mMに設定され、補因子の濃度は、完全長の酵素では1μM~5mMの範囲にあり、トランケートされている形態では50μM~10mMの範囲にあった。乳酸のKmの決定では、NADの濃度は、1mMに設定し、基質濃度は、完全長の酵素では1μM~40mMの範囲、トランケートされている形態では1mM~40mMの範囲にあった。
1.11-内因性蛍光アッセイ
記載される手法により;ウサギLDHAの市販の溶液を含む硫酸アンモニウム懸濁液(pH約7.0、3.2M)を、まずNaCl(200mM)の溶液で1mg/mlに希釈し、次に、200mMのNaClに対して4℃で2回×2時間透析した。次に、1mg/mlの原液を、NaCl(200mM)で30μg/mlに希釈し、アッセイ溶液を得た。
アッセイ溶液を、酢酸塩-塩化物バッファー(20mMの酢酸/酢酸塩、180mMのNaCl、pH5.0)、またはリン酸塩バッファー(250mMのリン酸塩(pH7.6))と1:1で混合した。4℃で30’保存した後、サンプルを取り出し、250mMのリン酸塩バッファー(pH7.6)で1:1に希釈して、7.5μg/mlの再結合したLDH-Mの最終濃度を得た。
次に、得られた溶液のサンプルを、内因性蛍光の回復の動態実験に供した(Exc=286nm、Em=350nm、10’、rt)。後に、完全なトリプトファンの蛍光スペクトルを記録した(Exc=286nm、Em=320-400nm、rt)。
1.12-ポリペプチドの環化
NHHCOバッファー(100mM、pH=8.0)における凍結乾燥した粗製ペプチド溶液(約3mg/mL、約1.5mM)を、TCEP(1.5当量)(同じNHHCOバッファーにおいて1Mの溶液から2.25μl)で処置し、1時間(700rpm)撹拌した。DMFにおけるアルキル化剤(約3当量)(50mM溶液から100μl)を溶液に添加し、2時間(700rpm)撹拌した。反応を、混合物のpHを0.5NのHClまたはTFA(150μl/ml)の添加を介してわずかに酸性の条件に調節することによりクエンチした。次に、粗製混合物を10,000rpmで20分間遠心分離した。次に、この上清を、HPLC/MSにより分析および精製した。
1.13-in silicoでの評価
自由結合エネルギーの計算を、利用可能なLDHB(配列番号2)の結晶構造を用いてMOEソフトウェアを使用して行った。計算前に極小化は行わなかった。
2-結果
2.1-LDH四量体化部位のin silicoでの試験
LDHAおよびLDHBのサブユニットは、in vitroおよびin celluloでハイブリダイズしてヘテロ四量体のLDH2-3-4を提供できるため、LDHAおよびLDHBの四量体化部位およびN末端アームは、構造上非常に類似している。よって、1つのサブユニットに対する選択性は、企図した手法を使用して達成されるとは予測されない。まず、LDH1(四量体LDHB)およびそのN末端アームを試験した。利用可能なLDHBの結晶構造の分析は、2つの他のサブユニットと各サブユニットの19のN末端のアミノ酸ポリペプチドの相互作用による、4つのアームが四量体を包含するような四量体の安定化を明確に示している(図1Aおよび1B)。これらペプチドアームは、ループを介して、サブユニットに結合したN末端のαヘリックス、次いで短いβシートを伴う特定の伸長した立体構造を採用している。4つの19のN末端のアミノ酸を比較する場合、側鎖の配向に関するわずかな差異が恐らくはペプチドの柔軟性のため観察され得ることが強調される。しかしながら、全ての事例において、19のN末端のアミノ酸ペプチドは、アミノ酸残基L3およびL7とAポケットのL178、V206、V209、V211、およびW227との間の非極性相互作用、ならびにアミノ酸残基V11とBポケットのL300およびV303との間の非極性相互作用を主に介して2つの異なるサブユニット上の2つの隣接するポケット(AおよびB)に結合する(図1Cおよび1D)。水素結合などの極性相互作用(I7とN305、A9とV303、A12/E14とR298)もまた、AポケットおよびBポケットの中のペプチドの安定化に寄与している。
この構造解析に基づき、完全長のLDH1酵素上のLDHBの19のN末端のアミノ酸ペプチド(ATLKEKLIAPVAEEEATVP、すなわちLB19、配列番号6)の薬理学的な性質を評価した。残念なことに、生化学的評価および生物物理学的な評価は、LB19とLDH1との間の相互作用を示さなかった。この作用の欠如は、四量体化部位に関するLDHBのN末端の19merペプチドアームとLB19との間の「アンフェアな」競合から生じたとの仮説を立てた。この仮説により、この相互作用の評価を可能とする新たなタンパク質モデルの設計および評価を行うこととした。
2.2-二量体のLDHの設計および評価
四量体化部位でのツール化合物の評価の課題に取り組むために、19のN末端のアミノ酸残基のトランケートされている第2のLDHB(LDHBtr)を産生させた。この四量体化アームを欠いているトランケートされているタンパク質は、恐らくはネイティブな二量体の状態にあり、よってLDHBの四量体化部位へのアクセス可能性を得ることを可能にするであろうとの仮説を立てた。
組み換え型のLDHBtr(配列番号4)の形態を、大腸菌で産生させ、分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)、拡散光散乱(diffusion light scattering:DLS)、および内因性蛍光によりネイティブな二量体の状態にあることが示された。さらに、その補因子に対するrLDHBtrの親和性を、マイクロスケール熱泳動(MST)を使用して評価し、完全長のLDHB(Kd=24μM+/-8μM)と同様な21μM+/-5μMのKd値が得られ、よって、タンパク質の「ロスマンドメイン」が正しくフォールドしていることが示された。またrLDHBtrの触媒の性質が、標準的な生化学的アッセイを使用して評価され(図1)、基質および補因子の両方でミカエリスメンテン定数Kmが5倍増加し、最大速度Vmaxが10倍減少すると完全長のLDHBと比較して非常に弱い活性が示された(表1)。
Figure 2022531233000001
最後に、LDHBtrの安定性を、サーマルシフトアッセイおよびTYCHO NT.6を使用して評価した。二量体のLDHBは、それぞれ、融解温度において18℃および24℃のシフトで四量体のLDHBと比較した場合に非常に不安定化していることが見出された(図2)。結論として、これら結果は、トランケートされているLDHBが良好にフォールディングされているが、活性が不十分な二量体のタンパク質であることを表している。さらに、LDHの四量体化の標的化は、酵素を不安定にし、その活性を弱くし得ることが示されている。
2.3-LB19およびLDHBtrの四量体化部位の間の相互作用の試験および最適化
LDHBtr(配列番号4)およびLB19(配列番号6)の間の相互作用の生物物理学的な評価を、2つの生物物理学的な直交する方法:NMR WaterLOGSYおよびマイクロスケール熱泳動(MST)を使用して行った。MST分析によると、LB19は270μM[+/-70μM]のKdでLDHBtrと相互作用する。NMR WaterLOGSY分析は、LB19とLDHBtrとの間の相互作用から生じる正のシグナルを示した。NMR WaterLOGSYスペクトルの分析は、2つの分子の間の相互作用のエピトープマッピングを可能にしていた。興味深いことに、LB19のN末端の残基は、そのC末端の対応物よりも飽和移動を経ており、LB19のN末端の残基が、結合強度の大部分に寄与している可能性があることを意味している。よって、LDHBのネイティブなアームの全体的な結合エネルギーの計算は、同様の結果を示した。
これらの知見により、一部のC末端のアミノ酸は、LDHBtrとの結合に寄与するN末端由来のアミノ酸のみを保持するために、LB19から除去された。これに基づき、LDHBtr(配列番号4)に対するポリペプチドLB13(配列番号7)の結合を評価することとした。LB13は、残基の相互作用が以前の結果と一致して全て再現され、よって、LB19と正確に同じNMR WaterLOGSYスペクトルを提示した。さらに、MST分析により、相互作用の減弱がKd=605μM[+/-290μM]とわずかに留まったことが確認された。LB13からのさらなる大きさの減少のため、バリン残基を除き、LB13中と同じ相互作用残基をまとめた、LB8(ATLKEKLI;配列番号8)の評価をすることとした。繰り返すが、相互作用の強度(Kd=1.4mM[+/-0.4mM])の小さな低下とは別に、LB8は、LDHBのN末端アームのN末端のαヘリックスと正確に一致しており、よって、LDHB四量体化部位とそのN末端アームとの間の相互作用の「ホットスポット」と予測することができる。LB19の中心にあたるフラグメント(LIAPVAE、すなわちLBc;配列番号26)もまた、陰性対照として評価され、これら条件下で明らかな飽和移動を全く示さないことが見出された。
2.4-LB8 SAR
LB8(配列番号8)とLDHB四量体化部位との間の構造活性の関係の評価を、さらに試験した。LB8の活性な立体構造はαヘリックスであることが予想されるため、in silicoおよび実験の評価の組み合わせを、LB8 SARを解明するために使用した。15個のLB8の構造上の類縁体のセットを構築し、800μMの単一の濃度でNMR WaterLOGSY実験によりさらに分析して、飽和移動の喪失をもたらす構造上の修飾を同定した(表2および図3)。まとめると、これら結果は、LB8の構造活性の関係に知見をもたらした。
Figure 2022531233000002
Figure 2022531233000003
Figure 2022531233000004
結晶のデータの分析と一致して、2つのLアミノ酸残基およびC末端のイソロイシンが、結合に必要であることが見出された。LDHB 3D構造から抽出したin silicoでのモデルは、これら脂肪族側鎖が四量体化部位の疎水性キャビティに向けて突き出ることを表した。飽和移動強度のNMR WaterLOGSYマッピングにより、親油性残基が他のいずれかよりも多くの飽和移動を経ており、よって、四量体化部位でより密接に相互作用することが確認された。
LB8(配列番号8)では、アミノ酸残基のTからAへの切り替え、および末端残基のいずれかの除去はまた、相互作用の解消をもたらした(表2および図3A)。このin silicoでのモデルおよびAgadirらせん度の計算に基づき、これら修飾が、活性のαヘリックスの立体構造を不安定化させるとの仮説を立てた。他の側鎖の残基の修飾は、LDHBの四量体化部位とのペプチドの相互作用に対して影響しなかった。
2.5-環化
LB8の弱い結合は、結合前に多大なエントロピーコストをもたらす不十分ならせんの傾向により説明され得ることが予想された。実際に、2D NOESYおよびROESYの分析により、N末端領域においてαヘリックスに特徴的なクロスカップリングの不存在が確認された。さらに、以前の研究は、ペプチドの立体構造の自由を制限することによりエントロピーを介した有効性の増加を示していた。よってLB8の側鎖間の環化が、そのらせん度を促進するように行われた。ペプチドの大環状化に関する多くの戦略が記載されている(Hill et al. (2014))。その中で、αヘリックス促進剤を用いたシステインアルキル化は、すでに、小分子ペプチドのらせん度、よって親和性の増強を強力にもたらすことが示されている(図4A)(Jo et al. (2012))。よって、LB8 SARに基づき、本発明者らは、様々なiおよびi+4位でシステインを導入し、α,α’ビスブロモキシレンを使用してこれらペプチドをアルキル化した。次に、得られた環状ペプチドを、NMR WaterLOGSYおよび直交の方法のMST実験を使用してその結合に関してアッセイした。
Figure 2022531233000005
これらのうち、LT018ポリペプチド(配列番号31)は、LB8(配列番号8)と比較して明らかな30倍の有効性の増加(Kd=66μM+/-32μM)および強力な飽和移動を有する最も見込みのある1つであることが明らかとなった。しかしながら、この親和性の増大にも関わらず、LT018ポリペプチド(配列番号31)は、依然として、LDHBのネイティブなアームと競合することができなかった(図4)。にもかかわらず、これは、さらなるLDHの四量体化部位の評価にとって見込みのあるツールを構成していた。
2.6-VS-142-BisAlkポリペプチドは、LDHの四量体化を阻害する
LT018ポリペプチド(配列番号31)がLDHBのネイティブなアームと競合することができず、よって、すでに形成されたLDHB四量体を破壊することができなかったという知見を受けて、これは恐らくは事前の解離に依存する方法で四量体化部位に結合し得ることが推論された。よって、この仮説を確認するために、わずかに酸性の条件で開始される事前の解離の後のLDH四量体の形態の回復を経過観察するための実験を設計した。簡潔に述べると、LDH構造において6つのトリプトファンが見出されており、これらのうち3つは、二量体間の界面に位置している。トリプトファンの量子収率は極性環境で減少するため、二量体のLDHは、四量体のLDHと比較して非常に弱いトリプトファンの蛍光を示す。よって、酸性条件(pH5.0)では、LDHは、四量体の解離と相関しているトリプトファンの蛍光の減少を示す(Rudolph and Jaenicke (1976);図5)。よって、pHの中和後の蛍光の回復は、四量体の再結合の直接的な評価基準である。
LB8は、100μMまで影響を及ぼさなかった(図6A)が、驚くべきことに、LT018ポリペプチド(配列番号31)は、50μMで蛍光の回復を良好に妨げた(図6D)。またLBc(配列番号26)は、陰性対照として使用され、LDHの再結合時に影響を及ぼさなかった(図6B)。結論として、これら結果は、LT018ポリペプチド(配列番号31)が、LDHの四量体化のプロセスを妨げることができることを表している。
実施例2
1-材料および方法
1.1-化学物質およびペプチド
全ての試薬は、化学物質の製造業者から購入し、精製することなく使用した。ウサギLDHAおよび組み換え型ヒトLDHAは、それぞれSigma-Aldrich(登録商標)およびAbnova(登録商標)から購入した。生物物理学の実験で直接使用した直鎖状ペプチドは、Genecust(登録商標)から購入し、システインのステープリング(cysteine stapling)に使用される直鎖状ペプチドは、固相ペプチド合成により合成した。ラクタム環状ペプチドは、Proteogenix(登録商標)から購入した。構造の一致および純度のグレード(>95%)は、市販のペプチドおよび合成ペプチドの両方で、分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析および質量分析(MS)により評価した。全てのペプチドは、そのC末端でアミド化した。
1.2-ペプチドの合成
システインの架橋の手法に使用した全てのペプチドは、Rink amide AM resin(Bachem(登録商標))(substitution 0.5~1.2mmol/g)を使用して0.05または0.1mmolのスケールで合成した。フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)で保護したアミノ酸(5倍過剰)を、1当量のヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HBTU)および2当量のジイソプロピルエタノールアミン(DIPEA)(アミノ酸と比較して同等)で活性化した。室温で60分間、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)においてカップリングを行った。Fmoc脱保護を、NMPにおいて20%のピペリジンを使用して、室温で10分間行った。側鎖の脱保護および同時にレジンからの切断を、トリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン/水/チオアニソール(90/2.5/2.5/5)の混合物を使用して、室温、2時間で達成した。次に、TFAを窒素フラックス下で蒸発させ、粗製ペプチドを、氷冷したジエチルエーテルを使用して沈殿させた。次に、粗製ペプチドを、kinetex 5μm EVO C18(150×4,6mm)を搭載したAgilent(登録商標)(1100シリーズ)HPLCのシングル四重極(InfinityLab, ESI+)システムを使用して分析し、その後さらに使用するため凍結乾燥した。
1.3-架橋したペプチドの合成
ヘキサフルオロベンゼンを使用したステープリングを、Spokoyny et al. (2013)により記載される以下の手法により行った。ペプチド(約7.5μモル)の凍結乾燥したサンプルに、DMFにおいて100mMのヘキサフルオロベンゼンの溶液(約25当量)1.9mLおよびDMFにおいて50mMのトリス塩基の溶液1.5mLを添加した。溶液を室温で5時間撹拌させた。得られた混合物を、2倍容量の0.1%のTFA水溶液で希釈し、上述のHPLCでの分析および精製に供した。
1.4-マイクロスケール熱泳動(MST)
MSTの測定を、赤色色素-NHS蛍光標識を使用してNanotemper Monolith NT.115 instrument(NanoTemper Technologies(登録商標))で行った。均一となるまで精製した各LDHサンプルは、製造社の指示に従い、Monolith Red-dye-NHS第2世代の標識色素(NanoTemper Technologies(登録商標))で標識した。測定は、premium-treated capillaries(NanoTemper Technologies(登録商標))において、0.05%のTween-20を含む50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)および100mMのNaClで行った。このアッセイにおけるいずれかの標識したタンパク質の最終濃度は100nMであった。リガンド(NADHおよびペプチド)を、製造社の推奨により1:1希釈で滴定した。全ての結合反応物を、毛細管に充填した後室温で5分間インキュベートした。実験を、40%のLED powerおよび中程度のMST power、20sのLaser On時間、および3sのLaser Off時間を使用して三連で行った。ペプチドを、それらの熱泳動パターンについて評価し、Kdは、製造社の説明にしたがい10~20sのMST on時間で生のデータから抽出した。LDH5と7の相互作用に関しては、Kdは、生の蛍光から抽出した。変性試験は、製造社の推奨にしたがい行い、7と赤色色素との間の非特異的なスペクトルの相互作用を排除した。相互作用する大環状分子およびペプチドの全てのKdは、三連で入手し、TFA対イオンの分子量を考慮することにより補正した。ペプチドATGKEKLI(LB8-G3;配列番号29)は、陰性対照として使用し、LB8(配列番号8)と比較して明らかな結合を呈さなかった。
1.5-分光光度法の実験
全ての分光光度法の実験は、Spectramax m2e分光光度計(Molecular Devices)を使用して不透明な96ウェルプレートで行った。
a)動態アッセイ
デヒドロゲナーゼ反応を、乳酸のピルビン酸への酸化の間に産生されたNADH蛍光を受けてLDH1の生理的に関連する乳酸からピルビン酸への方向で行った。反応の進行を、340/460nmでの蛍光の増大としてモニタリングした。ミカエリスメンテン定数Kmの決定を、GraphPad prism7.0ソフトウェアを使用して行った。酵素反応を、乳酸からピルビン酸への酸化を高めるためのリン酸塩バッファー(100mM、pH8.0)、EDTA(1mM)を含む溶液において行った。最終的なタンパク質濃度は、LDHBで7.7nM、LDHBtrで13.5nMであった。NAD+Kmの決定のため、乳酸の濃度は、LDHBで20mM、LDHBtrで150mMに設定され、補因子の濃度は、LDHBで1μM~5mM、LDHBtrで50μM~10mMの範囲であった。乳酸のKmの決定のため、NAD+の濃度は1mMに設定され、基質濃度は、LDHBで1μM~30mM、LDHBtrで1mM~40mMであった。
b)内因性蛍光アッセイ
完全なトリプトファンの蛍光スペクトルを、286nmの励起波長を使用し、室温で320nm~400nmの励起スペクトルを記録して、記録した。さらに、各実験の生の蛍光を、タンパク質を伴わない対応する対照実験に対して減算した。実験を、50mMのリン酸ナトリウムおよび100mMのNaCl(pH7.6)のバッファーにおいて行った。LDHのサブユニットへの解離のため、増大する量のグアニジウム/HClを、試験タンパク質(1.3μM)と接触させ、その後蛍光スペクトルを記録した。グアニジウム/HClの濃度は、0.3M~2Mの範囲であった。
c)変性アッセイ
ウサギのLDHAの市販の溶液(Sigma-Aldrich(登録商標))を含む硫酸アンモニウム懸濁液(pH約7、3.2M)を、まずNaCl(200mM)の溶液で1mg/mlに希釈し、次に、200mMのNaClに対して4℃で2回×2時間透析した。次に、1mg/mlの原液を、NaCl(200mM)で30μg/ml(800nM)に希釈し、アッセイ溶液を得た。アッセイ溶液を、酢酸塩-塩化物バッファー(20mMの酢酸/酢酸塩、180mMのNaCl、1mMのDTT、pH5)で1:1に混合し、30分間氷上で保存した。次に、サンプルを氷から取り出し、2分間温めた。次に、酸性溶液を、阻害性ペプチドを含むかまたは含まない250mMのリン酸塩バッファー(pH7.6)で1:1に希釈し、7.5μg/ml(200nM)の最終濃度の再結合しているLDHAを回収した。次に、得られた溶液のサンプルを、内因性蛍光の回復の動態実験に供した(Exc=286nm、Em=350nm、10’、rt)。
1.6-統計
全ての定量的なデータは、平均値±SEMとして表した。場合により、エラーバーは、記号よりも小さい。nは、グループあたりのレプリケートの総数を表す。全ての実験は、独立して少なくとも2回反復した。データは、GraphPad Prism 7.0ソフトウェアを使用して分析した。適切な場合、スチューデントt検定、1元ANOVA、および2元ANOVAを使用した。P<0.05を、統計上有意とみなした。
2-結果
2.1-トランケートされているLDHB(LDHBtr)に対する大環状ペプチド(MP)の結合
LB8ポリペプチドの環化に最適なiおよびi+4位の同定の後、p-テトラフルオロフェニル(MP7)、o-ベンジル(MP8)、p-ベンジル(MP9)、ならびにK残基およびD残基の側鎖の間のリジンからアスパラギン酸までのラクタム架橋(MP10)を含む、他のリンカーを有する大環状ペプチド(MP)を調査した(表4参照)。
Figure 2022531233000006
Figure 2022531233000007
*Kは、on時間10s~20sでMSTトレースから抽出した(大環状ペプチドMP1-MP4およびMP7-MP11ではn=3、大環状ペプチドMP5-MP6およびMP12ではn=2)。ND、決定せず。1 mlLは、γ-メチル-L-ロイシンを表す。2 cpAは、シクロプロピル-L-アラニンを表す。
驚くべきことに、これら大環状ペプチドのKの評価は、評価された親和性に及ぼすリンカーにより課される全体的な制約の影響を明らかにした。実際に、p-テトラフルオロフェニル(MP7;配列番号61)およびo-ベンジル(MP8;配列番号62)類縁体は、大環状ペプチドMP1(配列番号55)と比較した場合に、それぞれ11μMおよび25μMのKで、親和性の補足的な2倍~6倍の改善をもたらした。比較すると、制約の少ないリンカーの、p-ベンジル(MP9;配列番号63)およびK-Dラクタム架橋(MP10;配列番号64)は、それぞれ113μMおよび142μMのKとやや強力な誘導体をもたらした。大環状ペプチドMP7(配列番号61)と比較した場合、大環状ペプチドCT-44(配列番号67)などにおいて、アミノ酸の3位のロイシンのγ-メチル-L-ロイシンでの置換は、結合特性に影響しなかった。同様に、大環状ペプチドCT-45(配列番号45)などにおいて、アミノ酸7位のロイシンのシクロプロピル-L-アラニンでの置換は、K値が変わらないか、あるいはさらにK値がわずかに改善した。
残基の側鎖上のN末端のアミノ基とカルボン酸との間のラクタム架橋の影響を、これら2つの部分がLB8のin silicoでのモデルにおいて互いに近いことが見出され得るため、さらに調査した。結果得られた大環状ペプチドMP11(配列番号65)は、465μMのKでLB8よりもわずかに強力であることが見出された(表4参照)。比較のため、K側鎖のNHとC末端のカルボキシラート基との間のラクタム架橋の影響を同様に評価した。得られたペプチドMP12(配列番号66)は、NMRまたはMSTのいずれかを使用した場合、明らかな結合をもたらさなかった(表4参照)。
2.2-設計された大環状ペプチドでのLDH四量体化の不安定化および破壊
大環状ペプチドMP1およびMP7がネイティブなLDHBのN末端のドメインと競合できるかどうかをさらに試験した。この目的のため、四量体LDH1およびLDH5と相互作用するこれらの特性を、最初にMSTを使用して調査した。興味深いことに、最も強力な類縁体である、大環状ペプチドMP7は、高濃度で、LDH1およびLDH5との、それぞれ380μM(CI95%:[315μM~457μM])および117μM(CI95%:[94μM~144μM]の推定Kでの相互作用を呈した(図8A)。比較して、大環状ペプチドMP1は、同様の条件で結合を全く示さなかった。よって、MP7と四量体タンパク質との間のこの相互作用は、四量体化部位に達するための環状ペプチドによるLDHのN末端アームの置換を示唆するものであった。
四量体のLDH1およびLDH5を不安定化させる大環状ペプチドMP1およびMP7の特性をさらに調査した。実際に、オリゴマーの界面で相互作用する分子は、複合体の総合的な安定性の撹乱により、試験したオリゴマーの融解温度を低減し得る。よって、LDH1およびLDH5の熱的変性に及ぼす大環状ペプチドMP1およびMP7の影響を、nanoDSFを使用して評価した。MP1は、500μMまでヒトLDH1およびLDH5の両方の安定性に影響を及ぼさなかったが、大環状ペプチドMP7は、400μMで両方のアイソフォームの立体構造を不安定化させる変化を誘導した(図8B)。LDH-5はLDH1より不安定であるため、不安定化は、LDH1(ΔTm=-1.5°C)よりもLDH-5四量体(ΔTm=-5°C)で強力であった。この2つのアイソザイムの安定性の差異は、MSTにより観察されるLDH5に対して高いMP7の親和性をさらに説明することができる。さらに、この効果の強度は、タンパク質濃度に依存しており、単量体の増大する量が四量体の複合体の形成に対する平衡のシフトをもたらすとの仮説と一致している。注目すべきことに、大環状ペプチドMP7は、LDHの二量体モデルに対してこのような不安定化を誘導しなかった。
次に、これら大環状ペプチドがLDH四量体形成の間に四量体化部位にも結合できるかどうかを評価した。このような手法は、たとえばヒトグルタチオンレダクターゼの界面で相互作用するペプチドの事例で、すでに報告されていた。
よって、酸性条件により開始する解離ステップ後のLDH四量体の回復をフォローするための実験を設計した。これら実験は、LDH1よりも安定性が少なくよってより解離する傾向があるため、LDH5で行った。強力な酸性条件(pH2.3)が、ヒトLDH5(hLDH5)ホモ四量体を破壊するために必要であり、部分的なタンパク質の変性をもたらすため、このアッセイを、酸性度の少ない条件(pH5)で解離し、変性せず、再現可能なデータを提供するウサギLDH5(rLDH5)で行った。rLDH5は、同様のnanoDSF変性パターンで、hLDH5と94%の配列同一性および98%の相同性を共有する。rLDH5四量体の状態のモニタリングを、以下の内因性トリプトファン蛍光により行った:6つのトリプトファン残基は、各rLDHA単量体で見出すことができ、これらのうち3つは、二量体間の界面に位置している。トリプトファンの量子収率は極性環境で減少するため、二量体のLDHは、四量体形態と比較して非常に弱いトリプトファン蛍光を示す。よって、二量体のrLDHAは、pH7.6の四量体rLDH5の高い蛍光と比較する場合pH5で非常に弱いトリプトファン蛍光を示した。このような低下は、四量体LDH1と二量体LDHBtrとの間のトリプトファン蛍光の差異と比較され得る。
酸性化の後に中性のpHに回復させる場合、大環状ペプチドMP1およびMP7は、LDH5の蛍光の回復を有意に妨げた(それぞれ図9Aおよび9B)が、LB8はこれに影響しなかった(図9C)。陰性対照のLBcは、LDHの再結合に影響を示さなかった(図9D)。
最後に、事前に解離することなくLDHのオリゴマー化状態を破壊する大環状ペプチドMP7の特性を調査した。よって、タンパク質のネイティブな蛍光に及ぼす大環状ペプチドMP7の影響を、直接評価した。驚くべきことに、大環状ペプチドMP 7にLDH1を曝露することは、LDH1蛍光スペクトルの二量体モデルLDHBtrのスペクトルへの濃度依存的な変換をもたらした。蛍光強度の正規化は、増大する量の大環状ペプチドMP7への曝露時のLDH1の破壊率(disruption ratio)を推定することを可能にした(図10)。この破壊作用は、MSTを使用して以前に観察された相互作用と一貫して一致し(EC50=172μM、CI95%:[142μM~207μM]))、LDH四量体化部位に対する大環状ペプチドMP7の結合の後に、タンパク質のオリゴマー状態が破壊されることが示唆される。注目すべきことに、大環状ペプチドMP7は、LDHBtrの蛍光スペクトルにおいて匹敵する低下を誘導しなかった。
まとめると、これら結果は、設計された環状ペプチドが、LDHBおよびLDHAの単量体のN末端ドメインと競合することによりLDHの四量体化部位を標的とすることができ、これにより四量体複合体の不安定化および破壊をもたらし得ることを示している。さらに、これら大環状ペプチドはまた、LDH四量体の形成を妨げることができる。またこれらデータは、LDHの高度に保存された四量体化部位の標的化がタンパク質の両方のアイソフォームに相互作用する分子をもたらし得ることを立証するものである。
実施例3
1-材料および方法
大環状ペプチドMP7(配列番号61)を、Mia Paca-2ヒト膵がん細胞(ATCC(登録商標))に対して200μMで評価した。
酸素消費速度(OCR)および細胞外酸性化速度(ECAR)を、XF cell mito stress kit(Agilent(登録商標))および2-デオキシ-D-グルコース(2DG;Sigma Aldrich(登録商標))の組み合わせを用いてSeahorse XF96 analyzer(Agilent(登録商標))で測定した。Seahorseでの実験を、10mmol/LのD-グルコースおよび1mmol/LのL-グルタミンを含むDMEM培地において10,000個の細胞/ウェルを使用して行った。分析前に、細胞を、COフリーのインキュベーターにおいて1時間インキュベートした。Seahorse analyzerで、XF cell mito stress kitの成分、すなわちATP-シンターゼを阻害するオリゴマイシン、ミトコンドリアの電位を乱すイオノフォアカルボニルシアニド-4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)、ならびにミトコンドリアの電子伝達系(ETC)の複合体IおよびIIIを同時に阻害するアンチマイシンAを伴うロテノンを連続的に添加した後、酸素測定を、閉鎖されたウェルにて反復して行った。いずれかの作用物質を添加する前の酸素測定は、細胞の基底呼吸速度を提供し;ATPに関連する回復(reparation)は、1μMのオリゴマイシンの添加の後に決定し、細胞の最大呼吸速度は、1μMのFCCPの添加の後に決定した。全てのデータは、SpectraMax miniMax 300 imaging cytometer(Molecular Devices(登録商標))を使用して酸素測定の直前に測定した細胞数に対して正規化した。大環状ペプチドMP7を含むPBSまたはPBS単独(対照実験)を、培地に直接添加し、Mia Paca-2細胞と4時間インキュベートした後、大環状ペプチドMP7を伴うかまたは伴わないMia Paca-2細胞を含む培地でSeahorseの実験を行った。
2-結果
Seahorseによる評価は、Mia Paca-2ヒト膵がん細胞のミトコンドリアの酸素消費速度(OCR)の強力な減少および解糖流量の増大を明らかにした(図11)。図11Aにおいて、基底ミトコンドリアOCRは、大環状ペプチドMP7の存在下または非存在下(対照)でのMia Paca-2細胞におけるミトコンドリアの自然な酸素消費速度を表す。図11Bでは、最大ミトコンドリアOCRは、大環状ペプチドMP7の存在下または非存在下(対照)でのMia Paca-2細胞におけるミトコンドリアの最大可能酸素消費速度(最大能)を表す。図11Cでは、OCRに関連したATP産生は、大環状ペプチドMP7の存在下または非存在下(対照)でのMia Paca-2細胞におけるミトコンドリアのATP産生に直接関連した酸素消費速度を表す。まとめると、図11A~Cは、大環状ペプチドMP7が、ミトコンドリアがATPを産生できなくなるような方法で、Mia Paca-2細胞の呼吸を大きく阻害することを示す。ATPは、がん細胞の生存に必要な化学エネルギーを提供するため、図11A~Cは、大環状ペプチドMP7が、Mia Paca-2ヒト膵がん細胞において抗がん作用を有することを示している。これは、LDH-1が乳酸+NADのピルビン酸+NADH+Hへの変換を触媒し、このピルビン酸およびNADHは両方ともミトコンドリアの燃料であるという事実により機構的に説明できる。大環状ペプチドMP7がLDH-1を阻害すると、ミトコンドリアの呼吸およびミトコンドリアのATP産生は減少する。これは、正に図11A~Cで観察されていることである。図11Dでは、ECARは、乳酸発酵、すなわち、1:1の分子比率でプロトンと共に乳酸の細胞の排出で終了する、グルコースのピルビン酸、次に乳酸への変換に関連する場合の、解糖に関連した細胞外酸性化速度を表す。よって、ECARは、細胞の解糖速度に直接比例する。図11Eは、細胞の最大解糖能を示す。がん細胞は、ミトコンドリアの呼吸を使用してATPを産生することが困難である場合、細胞質での乳酸発酵に関連する解糖を使用してATPを産生することにより補償しようとする。図11A~Cは、大環状ペプチドMP7が、Mia Paca-2がん細胞によるATPを産生するための酸素の使用を阻害することを示した。図11D~Eは、この場合に、Mia Paca-2細胞が、解糖の速度の増大、よって、解糖によるATPの産生を増大させることにより、呼吸の変更をある程度まで補償することにより自身を救出しようと試みていることを示している。まとめると、図11は、大環状ペプチドMP7が、Mia Paca-2ヒト膵がん細胞のエネルギー代謝を大いに変更し、MP7の抗がん作用に関与する代謝上のクライシスを誘導し得ることを示している。
Figure 2022531233000008
Figure 2022531233000009
Figure 2022531233000010
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Claims (15)

  1. 乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドであって、式(I):X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(I)(配列番号5)のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド:
    (式中、
    X1は、好ましくはアミノ酸残基A、G、K、およびCからなる群から選択される、いずれかのアミノ酸残基を表し、
    X2は、C、T、またはSを表し、
    X3は、C、L、A、T、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、またはmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を表し、
    X4は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基K、C、A、およびAib(2-アミノイソ酪酸)からなる群から選択される、好ましくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Kを表し、
    X5は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基E、D、K、A、およびCからなる群から選択される、好ましくは負もしくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Eを表し、
    X6は、いずれかのアミノ酸残基、好ましくはアミノ酸残基E、K、Q、A、Aib(2-アミノイソ酪酸)、およびCからなる群から選択される、好ましくは負もしくは正に荷電しているかまたは中性のアミノ酸残基、より好ましくはアミノ酸Kを表し、
    X7は、C、L、I、cpA(シクロプロピル-L-アラニン)、chG(L-シクロヘキシルグリシン)、chA(シクロヘキシル-L-アラニン)、またはmlL(γ-メチル-L-ロイシン)を表し、
    X8はC、I、またはGを表す)。
  2. 前記ポリペプチドが、好ましくは配列番号6~配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、直鎖状ポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記ポリペプチドが、好ましくは配列番号30~配列番号35、配列番号55~配列番号58、配列番号61~配列番号65、配列番号67、および配列番号68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、環状ポリペプチドである、請求項1または2のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  4. 前記環状ポリペプチドが、配列番号55、配列番号61、配列番号62、および配列番号63、配列番号67、および配列番号68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のポリペプチド。
  5. 前記環状ポリペプチドが、配列番号61、配列番号67、または配列番号68により表されるアミノ酸配列を含む、請求項3または4に記載のポリペプチド。
  6. 前記乳酸脱水素酵素のサブユニットが、乳酸脱水素酵素B(LDHB)のサブユニットである、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  7. 前記ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸残基の遊離-COOH基の-OH基が、-O-アルキル基、-O-アリール基、-NH基、-N-アルキルアミン基、-N-アリールアミン基、または-N-アルキル/アリール基から選択される基で置き換えられている、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  9. 少なくとも1つの請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物。
  10. 少なくとも1つの請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項8に記載のポリヌクレオチド、または請求項9に記載の医薬組成物と、任意選択で抗がん剤とを含むがんを予防および/または処置するためのキット。
  11. 医薬品として使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項8に記載のポリヌクレオチド、または請求項9に記載の医薬組成物。
  12. がんの予防および/または処置に使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項8に記載のポリヌクレオチド、または請求項9に記載の医薬組成物。
  13. 乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
    a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系を準備するステップと、
    b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を伴う系を準備するステップと、
    c.請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチドの存在下または非存在下で前記候補化合物のLDHtrのサブユニットの二量体に対する結合のレベルを測定するステップと
    を含み、
    LDHtrのサブユニットの二量体に対する結合に関する前記ポリペプチドと前記候補化合物との間の競合の観察が、前期候補化合物が乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤であることを表す、
    方法。
  14. LDHtrのサブユニットに対する結合に関する前記ポリペプチドと前記候補化合物との間の競合の観察が、乳酸脱水素酵素のサブユニット上での四量体化部位に対する前記候補化合物の結合の特異性を表す、請求項13に記載の方法。
  15. 乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化に影響する化合物をスクリーニングするための方法であって、
    a.トランケートされた乳酸脱水素酵素(LDHtr)のサブユニットを含む系(1)およびネイティブな四量体LDHを含む系(2)を準備するステップと、
    b.ネイティブな四量体LDHの活性を調節する候補化合物を含む系(1)および(2)を準備するステップと、
    c.系(1)におけるLDHtrのサブユニットの二量体および系(2)におけるネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合レベル(Kd)を測定するステップと
    を含み、
    系(1)におけるLDHtrのサブユニットの二量体に対する前記候補化合物の結合の観察および系(2)におけるネイティブな四量体LDHに対する前記候補化合物の結合の変更の観察は、前記候補化合物が、LDHサブユニットの表面で相互作用することにより、乳酸脱水素酵素のサブユニットの四量体化の阻害剤となることを表す、
    方法。
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