JP2022518733A - ファブリー病患者の脳血管事象のリスク低減におけるミガロスタットの使用 - Google Patents

ファブリー病患者の脳血管事象のリスク低減におけるミガロスタットの使用 Download PDF

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Abstract

患者においてファブリー病を治療する方法及び/又はファブリー病を有する患者において脳血管(CBV)事象のリスクを低減するリスクを低減する方法が提供される。特定の方法は、ERT経験又はERT未経験ファブリー患者の治療に関する。特定の方法は、CBV事象のリスクを低減するために約100mg~約150mg遊離塩基当量のミガラスタットを患者に投与することを含む。【選択図】なし

Description

本発明の原理及び実施形態は、概して、リソソーム蓄積障害の治療への薬理学的シャペロンの使用、特にファブリー病の治療へのミガラスタットの使用に関する。
ファブリー病は、α-Gal A遺伝子(GLA)の突然変異の結果としてリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠損に起因するグリコスフィンゴ脂質代謝の進行性X連鎖性先天異常である。X連鎖性障害にもかかわらず、女性は、様々な程度の臨床症状を発現できる。ファブリーは、一般母集団において40,000人に1人~117,000人に1人の男性で発生すると推定される、まれな疾患である。更に、古典型の徴候及び症状を呈さないため、過小診断される可能性のある、ファブリー病の遅発型表現型の異型が存在する。このこと及びファブリー病の新生児スクリーニングから、ファブリー病の実際の発生は、現在の推定よりも多い可能性があることが示唆される。
未治療では、血管疾患により腎臓、心臓及び/又は中枢神経系が冒されるので、ファブリー患者の平均余命は低下されるとともに、通常は30歳代又は40歳代で死亡する。酵素欠損は、体全体にわたり血管内皮及び内臓組織への基質グロボトリアオシルセラミド(GL-3)の細胞内蓄積をもたらす。グリコスフィンゴ脂質沈着に起因する腎機能の漸進的悪化及び高窒素血症の進行は、通常は人生の20歳代~40歳代に発生するが、10歳代という早期に発生することもある。腎病変は、ヘミ接合(男性)及びヘテロ接合(女性)の両方の患者に見出される。
心疾患は、ファブリー病の結果としてほとんどの男性及び多くの女性で発生する。早期心所見としては、左室拡大、弁障害及び伝導異常が挙げられる。僧帽弁不全は、典型的には小児期又は青年期に存在する最も頻度の高い弁病変である。脳血管症状は、主に多巣性小血管障害から生じるとともに、血栓症、一過性脳虚血発作、脳底動脈虚血及び動脈瘤、発作、片麻痺、片側感覚消失、失語症、迷路障害又は脳出血を含み得る。脳血管症状の平均発症年齢は33.8歳である。年齢の増加に伴って人格変化及び精神病的行動が現れることがある。
ファブリー病を治療するための承認された一療法は、酵素補充療法(ERT)であり、典型的には、これは精製形態の対応する野生型タンパク質の静脈内注入を含む。2つのα-Gal A製剤:アガルシダーゼアルファ(Replagal(登録商標)、Shire Human Genetic Therapies)及びアガルシダーゼベータ(Fabrazyme(登録商標)、Sanofi Genzyme Corporation)は、ファブリー病の治療に現在利用可能である。ERTは多くの状況に有効であるが、治療には限界もある。ERTは、脳卒中のリスクを減少させることが実証されておらず、心筋は徐々に応答し、且つ腎臓の細胞型の一部からのGL-3排出は制限される。一部の患者はまた、ERTに対して免疫応答を発生する。
従って、ファブリー病の治療のための、とりわけ脳血管事象のリスクを低減するための療法の必要性が残っている。
本発明の各種態様は、ミガラスタットを用いたERT未経験患者及びERT経験患者におけるファブリー病の治療に関する。かかる治療は、脳血管(CBV)事象のリスクを低減することを含み得る。各種実施形態において、治療は、長期ミガラスタット療法、例えば、少なくとも2、3、4年間、又はそれ以上の治療を含む。
本発明の一態様は、ファブリー病を有する患者においてCBV事象のリスクを低減する方法に関し、本方法は、1日おきに有効量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を患者に投与することを含み、有効量は、約100mg~約150mg遊離塩基等価物(FBE)である。
1つ以上の実施形態において、CBV事象は、脳幹虚血、脳梗塞、脳出血、脳虚血、脳血管障害、塞栓性脳卒中、又は一過性虚血発作の1つ以上を含む。
1つ以上の実施形態において、患者は、ミガラスタット又はその塩の投与開始前にCBV事象の増加したリスクを有する。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩はα-Gal A活性を増強する。
1つ以上の実施形態において、患者に、1日おきに約123mgFBEのミガラスタット又はその塩が投与される。
1つ以上の実施形態において、患者に、1日おきに約123mgのミガラスタット遊離塩基が投与される。
1つ以上の実施形態において、患者に、1日おきに約150mgのミガラスタット塩酸塩が投与される。
1つ以上の実施形態において、製剤は経口剤形を含む。1つ以上の実施形態において、経口剤形は錠剤、カプセル剤、又は溶液剤を含む。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は少なくとも2年間にわたり投与される。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は少なくとも3年間にわたり投与される。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は少なくとも4年間にわたり投与される。
1つ以上の実施形態において、患者はERT未経験患者である。
1つ以上の実施形態において、患者はERT経験患者である。
1つ以上の実施形態において、患者はα-ガラクトシダーゼAにHEKアッセイ適用可能突然変異を有する。1つ以上の実施形態において、突然変異は薬理学的参照表に開示される。1つ以上の実施形態において、薬理学的参照表はファブリー病の治療が承認されたミガラスタット製剤の製剤ラベルに提供される。1つ以上の実施形態において、薬理学的参照表はGALAFOLD(登録商標)の製剤ラベルに提供される。1つ以上の実施形態において、薬理学的参照表はウェブサイトに提供される。1つ以上の実施形態において、ウェブサイトはwww.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.comの1つ以上である。
本発明の別の態様は、CBV事象の増加したリスクを有する患者におけるファブリー病の治療方法に関し、本方法は、1日おきに有効量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を患者に投与することを含み、有効量は、約100mg~約150mgFBEである。
1つ以上の実施形態において、CBV事象は、脳幹虚血、脳梗塞、脳出血、脳虚血、脳血管障害、塞栓性脳卒中、又は一過性虚血発作の1つ以上を含む。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩はα-Gal A活性を増強する。
1つ以上の実施形態において、患者に、1日おきに約123mgFBEのミガラスタット又はその塩が投与される。
1つ以上の実施形態において、患者に、1日おきに約123mgのミガラスタット遊離塩基が投与される。
1つ以上の実施形態において、患者に、1日おきに約150mgのミガラスタット塩酸塩が投与される。
1つ以上の実施形態において、製剤は経口剤形を含む。1つ以上の実施形態において、経口剤形は錠剤、カプセル剤、又は溶液剤を含む。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は少なくとも2年間にわたり投与される。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は少なくとも3年間にわたり投与される。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は少なくとも4年間にわたり投与される。
1つ以上の実施形態において、患者はERT未経験患者である。
1つ以上の実施形態において、患者はERT経験患者である。
1つ以上の実施形態において、患者はα-ガラクトシダーゼAにHEKアッセイ適用可能突然変異を有する。1つ以上の実施形態において、突然変異は薬理学的参照表に開示される。1つ以上の実施形態において、薬理学的参照表はファブリー病の治療が承認されたミガラスタット製剤の製剤ラベルに提供される。1つ以上の実施形態において、薬理学的参照表はGALAFOLD(登録商標)の製剤ラベルに提供される。1つ以上の実施形態において、薬理学的参照表はウェブサイトに提供される。1つ以上の実施形態において、ウェブサイトはwww.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.comの1つ以上である。
本発明の更なる特徴は、以下に記載の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。
ヒト野生型GLA遺伝子の全DNA配列(配列番号1)を示す。 野生型α-Gal Aタンパク質(配列番号2)を示す。 野生型α-Gal Aタンパク質をコードする核酸配列(配列番号3)を示す。
本発明の幾つかの例示的実施形態を説明する前に、本発明が以下の説明に示される構築又は方法ステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、及び様々な方法で実施されること又は実行されることが可能である。
本発明の様々な態様は、ファブリー病の治療用ミガラスタットなどの薬理学的シャペロンを投与するための投与レジメンに関する。1つ以上の実施形態において、ミガラスタットの投与レジメンは、CBV事象のリスクの低減を行う。
定義
本明細書で使用される用語は、本発明の文脈の中で、及び各用語が使用される具体的な文脈において、概して当該技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物及び方法並びにそれをどのように作成及び使用すればよいかを説明するにおいて実施者に更なる手引きを与えるため、特定の用語を以下で、又は本明細書中の他の箇所で考察する。
用語「ファブリー病」は、リソソームα-Gal A活性欠損に起因するスフィンゴ糖脂質異化作用のX連鎖性先天異常を指す。この欠陥により、心臓、腎臓、皮膚、及び他の組織の血管内皮リソソームに基質グロボトリアオシルセラミド(「GL-3」、別名Gb又はセラミドトリヘキソシド)及び関連するスフィンゴ糖脂質の蓄積が引き起こされる。この酵素の別の基質は血漿グロボトリアオシルスフィンゴシン(「血漿lyso-Gb」)である。
用語「非定型ファブリー病」は、主にα-Gal A欠損の心症状、即ち、心臓(特に左心室)の有意な肥大をもたらす心筋細胞への進行性GL-3蓄積を有する患者を指す。
「保因者」は、一方のX染色体が欠陥α-Gal A遺伝子を含んで一方のX染色体が正常な遺伝子を含む、且つ1つ以上の細胞型に正常な対立遺伝子のX染色体不活性化が存在する女性である。保因者は多くの場合にファブリー病と診断される。
「患者」は、特定の疾患と診断されているか、又はそれを有する疑いがある対象を指す。患者はヒト又は動物であってよい。
「ファブリー患者」は、ファブリー病と診断されているか、又はそれを有する疑いのある、以下に更に定義する通りの突然変異型α-Gal Aを有する個体を指す。ファブリー病の特徴マーカーはヘミ接合男性及び女性保因者に同じ有病率で出現し得るが、典型的には女性の方が発症しても重症度が低い。
ヒトα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)は、ヒトGLA遺伝子によってコードされる酵素を指す。イントロン及びエクソンを含むα-Gal Aの完全DNA配列はGenBank受託番号X14448.1で利用可能であり、図1A~Eに示される(配列番号1)。ヒトα-Gal A酵素は429アミノ酸からなり、GenBank受託番号X14448.1及びU78027.1で利用可能であり、図2に示される(配列番号2)。配列番号1のコード領域(即ちエクソン)のみを含む核酸配列は図3に示される(配列番号3)。
用語「突然変異タンパク質」は、タンパク質をコードする遺伝子に、小胞体(ER)に通常存在する条件下ではそのタンパク質が安定したコンホメーションを実現できなくなるような突然変異を有するタンパク質を含む。安定したコンホメーションを実現できないと、相当量の酵素がリソソームに輸送されず、むしろ分解されることになる。かかる突然変異は時に「コンホメーション突然変異体」と呼ばれる。かかる突然変異としては、限定はされないが、ミスセンス突然変異、及びインフレーム小欠失及び挿入が挙げられる。
本明細書で一実施形態において使用されるとき、用語「突然変異α-Gal A」は、α-Gal Aをコードする遺伝子に、ERに通常存在する条件下ではその酵素が安定したコンホメーションを実現できなくなるような突然変異を有するα-Gal Aを含む。安定したコンホメーションを実現できないと、相当量の酵素がリソソームに輸送されず、むしろ分解されることになる。
本明細書で使用されるとき、用語「薬理学的シャペロン」(「PC」)は、タンパク質に特異的に結合する、且つ以下の効果のうちの1つ以上を有する:(i)タンパク質の安定した分子コンホメーションの形成を増進する;(ii)ERから別の細胞部位、好ましくは天然の細胞部位へのタンパク質のトラフィッキングを誘導し、即ちタンパク質のER関連分解を防止する;(iii)誤って折り畳まれたタンパク質の凝集を防止する;及び/又は(iv)タンパク質に少なくとも一部の野生型機能及び/又は活性を回復させる又は増強する、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物等を含めた任意の分子を指す。例えばα-Gal Aに特異的に結合する化合物とは、それが一般的な関連する又は無関係の酵素群でなく、その酵素に結合してシャペロン効果を及ぼすことを意味する。より具体的には、この用語は、BiPなどの内因性シャペロン、又はグリセロール、DMSO若しくは重水など、様々なタンパク質に対する非特異的シャペロン活性を実証している非特異的作用物質、即ち化学的シャペロンは指さない。本発明の1つ以上の実施形態において、PCは可逆的競合阻害薬であってもよい。一実施形態において、PCはミガラスタット又はその塩である。別の実施形態において、PCはミガラスタット遊離塩基(例えば、123mgのミガラスタット遊離塩基)である。更に別の実施形態において、PCはミガラスタットの塩(例えば、150mgのミガラスタットHCl)である。
酵素の「競合阻害薬」は、酵素基質の化学構造及び分子構造に構造的に類似していて、基質とほぼ同じ位置でその酵素に結合する化合物を指し得る。従って、阻害薬は基質分子と同じ活性部位に関して競合し、ひいてはKmを増加させる。競合阻害は、通常、阻害薬に取って代わるのに十分な基質分子が利用可能であるならば可逆的であり、即ち競合阻害薬は可逆的に結合することができる。従って、酵素阻害の量は、阻害薬濃度、基質濃度、並びに活性部位に対する阻害薬及び基質の相対的親和性に依存する。
本明細書で使用されるとき、用語「特異的に結合する」は、薬理学的シャペロンとα-Gal Aなどのタンパク質との相互作用、具体的には、薬理学的シャペロンとの接触に直接関与するタンパク質中のアミノ酸残基との相互作用を指す。薬理学的シャペロンは標的タンパク質、例えばα-Gal Aに特異的に結合して、一般的な関連する又は無関係のタンパク質群でなく、そのタンパク質にシャペロン効果を及ぼす。所与の薬理学的シャペロンと相互作用するタンパク質中のアミノ酸残基は、タンパク質の「活性部位」の範囲内にあっても、又はなくてもよい。特異的結合は、ルーチンの結合アッセイによるか、又は構造研究、例えば共結晶化、NMRなどによって評価することができる。α-Gal Aの活性部位は基質結合部位である。
「α-Gal A活性欠損」は、ファブリー病又は任意の他の疾患(特に血液疾患)を有しない又はそれを有する疑いがない正常な個体の活性と(同じ方法を用いて)比較したとき正常範囲を下回る患者からの細胞のα-Gal A活性を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「α-Gal A活性を増強する」又は「α-Gal A活性を増加させる」は、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触していない細胞(好ましくは同じ細胞型のもの、又は同じ細胞であって、例えばより早い時期のもの)における量と比べて、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞において安定したコンホメーションをとるα-Gal Aの量を増加させることを指す。この用語はまた、そのタンパク質に特異的な薬理学的シャペロンと接触していないα-Gal Aのトラフィッキングと比べて、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞においてリソソームへのα-Gal Aのトラフィッキングを増加させることも指す。これらの用語は、野生型及び突然変異体の両方のα-Gal Aを指す。一実施形態において、細胞におけるα-Gal A量の増加は、PCで処理した細胞からのライセート中の人工基質の加水分解を測定することにより測定される。加水分解の増加がα-Gal A活性の増加の指標である。
用語「α-Gal A活性」は、細胞における野生型α-Gal Aの正常な生理学的機能を指す。例えば、α-Gal A活性にはGL-3の加水分解が含まれる。
「奏効例」は、例えばファブリー病など、リソソーム蓄積障害(LSD)と診断された、又はそれ有する疑いがある個体であって、その細胞がPCとの接触に応答して、それぞれ、α-Gal A活性の十分な増加、及び/又は症状の軽減又は代用マーカーの増強を呈する個体である。ファブリーの代用マーカーの増強の非限定的な例は、lyso-GB3、及び、本明細書に参照によりその全体が引用される、米国特許出願公開第2010/0113517号明細書に開示されるものである。
米国特許出願公開第2010/0113517号明細書に開示されるファブリー病の代用マーカーの改善の非限定的な例としては、細胞(例えば、線維芽細胞)及び組織におけるα-Gal Aレベル又は活性の増加;GL-3蓄積の減少;ホモシステイン及び血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の血漿濃度の低下;心筋細胞及び弁線維細胞内におけるGL-3蓄積の低下;血漿lyso-Gbの減少;心肥大(特に左心室)の減少、弁閉鎖不全、及び不整脈の軽減;タンパク尿の軽減;CTH、ラクトシルセラミド、セラミドなどの脂質の尿中濃度の低下、並びにグルコシルセラミド及びスフィンゴミエリンの尿中濃度の増加;糸球体上皮細胞に層状封入体(ゼブラ小体)なし;腎機能の増強;発汗低下の緩和;被角血管腫なし;及び高周波感音難聴、進行性難聴、突発性難聴、又は耳鳴りなどの聴力異常における改善が挙げられる。神経症状の改善としては、一過性脳虚血発作(TIA)又は脳卒中の予防;及び先端感覚異常(肢端の灼熱痛又は刺痛)として現れる神経因性疼痛の軽減が挙げられる。ファブリー病を判定し得る別種の臨床マーカーは、有害心血管症状の有病率である。
上述した応答の1つ以上を達成する用量は「治療有効用量」である。
語句「薬学的に許容可能」は、生理学的に忍容可能な、且つ典型的にはヒトへの投与時に有害な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。一部の実施形態において、本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用が連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。医薬担体に関して用語「担体」は、化合物がそれと共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を指す。かかる医薬担体は、水及び油などの滅菌液であってもよい。担体としては好ましくは、特に注射溶液用に、水又は水溶液、生理食塩溶液並びにデキストロース及びグリセロール水溶液が利用される。好適な医薬担体については、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”by E.W.Martin,18th Edition、又は他の版に記載されている。
本明細書で使用されるとき、用語「単離された」は、言及されている材料が、それが通常見出される環境から取り出されることを意味する。従って、単離された生物学的材料は、細胞成分、即ちその材料が見出される又は産生される細胞の構成成分を含まないものであり得る。核酸分子の場合、単離核酸には、PCR産物、ゲル上のmRNAバンド、cDNA、又は制限酵素断片が含まれる。別の実施形態において、単離核酸は、好ましくは、それが見出され得る染色体から切り出され、より好ましくは、染色体中に見出されるときその単離核酸分子に含まれる遺伝子の上流又は下流に位置する非調節領域、非コード領域、又は他の遺伝子ともはやつながっていない。更に別の実施形態において、単離核酸は1つ以上のイントロンを欠いている。単離核酸は、プラスミド、コスミド、人工染色体などに挿入される配列を含む。従って、具体的な実施形態において、組換え核酸は単離核酸である。単離タンパク質は、他のタンパク質又は核酸、又は両方と、細胞においてそれが結び付いているものと、又はそれが膜結合性タンパク質である場合には細胞膜と結び付いていてもよい。単離細胞小器官、細胞、又は組織は、生物においてそれが見出される解剖学的部位から取り出される。単離材料は、必須ではないが、精製されてもよい。
用語「酵素補充療法」又は「ERT」は、かかる酵素の欠損を有する個体への精製された非天然酵素の導入を指す。投与されるタンパク質は、天然源から又は組換え発現により得ることが可能である(より詳細に以下に記載される通り)。この用語はまた、精製された酵素の投与を他の形で必要とする又はそれが奏効する個体(例えば、酵素不全を患う個体)への精製された酵素の導入を指す。導入される酵素は、インビトロで生成される精製された組換え酵素、又は単離された組織若しくは流体、例えば、胎盤若しくは動物乳若しくは植物由来のものから精製されたタンパク質であり得る。
用語「ERT未経験患者」は、ERTをまったく受けていない又はミガラスタット療法開始前に少なくとも6ヵ月間にわたりERTを受けていないファブリー患者を指す。
用語「ERT経験患者」は、ミガラスタット療法の開始直前にERTを受けていたファブリー患者を指す。幾つかの実施形態において、ERT経験患者は、ミガラスタット療法の開始直前に少なくとも12ヵ月間のERTを受けてきた。
本明細書で用いられる場合、用語「遊離塩基当量」又は「FBE」は、ミガラスタット又はその塩で存在するミガラスタットの量を指す。言い換えると、用語「FBE」は、ミガラスタット遊離塩基の量又はミガラスタットの塩により提供されるミガラスタット遊離塩基の等価量のどちらかを指す。例えば、塩酸塩の重量に基づいて、150mgのミガラスタット塩酸塩は、単に123mgの遊離塩基形態のミガラスタットと同量のミガラスタットを提供するにすぎない。他の塩は、塩の分子量に依存して異なる変換係数を有すると予想される。
用語「ミガラスタット」は、具体的に相反する指定がない限り、ミガラスタット遊離塩基又はその薬学的に許容可能な塩(例えば、ミガラスタットHCl)を包含する。
用語「突然変異」及び「変異」(例えば、「適用可能突然変異又は変異」に見られるような)は、遺伝子又は染色体のヌクレオチド配列の変化を指す。本明細書で参照される2つの用語は、例えば、「突然変異又は変異」に見られるように、典型的には一括して用いられ、前の文に明記されたヌクレオチド配列の変化を指す。何らかの理由で2つの用語の一方のみが挙げられた場合、欠失した用語は、含まれることが意図され、そのように理解すべきである。更に、用語「適用可能突然変異」及び「適用可能変異」は、PC療法に適用可能な突然変異又は変異、例えば、ミガラスタット療法に適用可能な突然変異を指す。特定タイプの適用可能突然変異又は変異は、「HEKアッセイ適用可能突然変異又は変異」であり、これは、本明細書及び米国特許第8,592,362号明細書(その全体が本明細書によって参照により援用される)に記載のインビトロ HEKアッセイの基準に従ってミガラスタット療法に適用可能であると決定される突然変異又は変異である。
用語「約」及び「近似的に」は、概して、計測の性質又は精度を所与として、計測した量の許容可能な誤差程度を意味するものとする。典型的な例示的誤差程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内である。或いは、特に生体系において、用語「約」及び「近似的に」は、所与の値のオーダー内、好ましくは10倍又は5倍以内、及びより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書に提供される数量は、特に明記しない限り近似であり、つまり、明示的に記載されないときも用語「約」又は「近似的に」が暗示され得る。
ファブリー病
ファブリー病は、まれな進行性の重篤なX連鎖性LSDである。GLA遺伝子の突然変異が、スフィンゴ糖脂質代謝に必要なリソソーム酵素α-Gal Aの欠損を引き起こす。幼児期に始まるα-Gal A活性の低下が、GL-3及び血漿lyso-Gbを含めたスフィンゴ糖脂質の蓄積を引き起こし、疼痛、胃腸症状、腎不全、心筋症、脳血管イベント、及び早期の死亡を含めたファブリー病の症状及び致死的続発症につながる。早期の療法開始及び生涯にわたる治療が、疾患の進行を遅らせ、平均余命を延ばす機会を提供する。
ファブリー病は様々な疾患重症度及び発症年齢を包含するが、従来、2つの主要な表現型、「古典型」及び「遅発型」に分けられている。古典型表現型は主に、α-Gal A活性が検出不能乃至低く、且つ腎臓、心臓及び/又は脳血管症状の発症が早い男性のものとみなされている。遅発型表現型は主に、残存α-Gal A活性がより高く、これらの疾患症状の発症がより遅い男性のものとみなされている。ヘテロ接合女性保因者は、典型的には遅発型表現型を発現するが、X染色体不活性化のパターンに応じて古典型表現型もまた呈し得る。
ファブリー病の原因となるGLA突然変異は1,000超同定されている。約60%が、α-Gal A酵素に単一アミノ酸置換をもたらすミスセンス突然変異である。ミスセンスGLA突然変異は、多くの場合に、異常に折り畳まれた不安定な形態のα-Gal Aの産生をもたらしており、その大部分は古典的表現型を伴う。ERにおける正常な細胞品質管理機構は、これらの異常なタンパク質がリソソームに移動するのを阻止し、それらを早期分解及び除去の標的とする。多くのミスセンス突然変異形態が、α-Gal A特異的薬理学的シャペロンであるミガラスタットの標的である。
ファブリー病の臨床症状は、広範な重症度にわたり、且つ患者の残留α-Gal Aレベルにほぼ相関する。現在治療される患者の大部分は古典的ファブリー患者といわれ、そのほとんどは男性である。これらの患者は、腎臓、心臓及び脳をはじめとする様々な器官の疾患を経験し、疾患症状は、青年期に最初に出現し、典型的には人生の30歳代又は40歳代で死亡するまでで重症度が進行する。幾つもの最近の研究から、心機能又は腎機能障害及び脳卒中など、通常は成人期に初めて出現する様々なファブリー病症状を有する診断未確定の男性及び女性が多数いることが示唆される。遅発型ファブリー病と称されるこの種のファブリー病者は、古典型ファブリー患者よりも残存α-Gal Aレベルが高い傾向がある。遅発型ファブリー病者は、典型的には成人期に初めて疾患症状を経験し、左心室の肥大又は進行性腎不全など、単一の器官に集中した疾患症状を有することが多い。加えて、遅発型ファブリー病はまた、原因不明の脳卒中の形でも見られ得る。
ファブリー患者は進行性腎臓機能障害を有し、未治療の患者は40歳代までに末期腎機能障害を呈する。α-Gal A活性の欠損は、腎臓の細胞を含め、多くの細胞型におけるGL-3及び関連するスフィンゴ糖脂質の蓄積につながる。GL-3は、タコ足細胞、遠位尿細管及びヘンレ係締の上皮細胞及び尿細管細胞に蓄積する。腎機能の機能障害はタンパク尿及び糸球体濾過率の低下として現れ得る。
ファブリー病はまれであり、多くの臓器が関わり、発症年齢の範囲が幅広く、及び不均一であるため、適切な診断は難題である。医療専門家の間でも認知度が低く、誤診が頻繁に起こる。ファブリー病の診断は、ほとんどの場合、患者が症状を示した後に、突然変異解析と併せて血漿又は末梢白血球(WBC)におけるα-Gal A活性の低下に基づき確認される。女性では、保因者の一部の細胞におけるランダムなX染色体不活性化に起因して保因者女性の酵素的同定の信頼性が低いため、診断は更に一層難題である。例えば、一部の絶対的保因者(古典型罹患男性の娘)は、正常から極めて低い活性にまで及ぶα-Gal A酵素活性を有する。保因者は白血球では正常なα-Gal A酵素活性を有し得るため、正確な保因者同定及び/又は診断を与えるのは、遺伝子検査によるα-Gal A突然変異の同定のみである。
1つ以上の実施形態において、ミガラスタットが適用可能とみなされるα-Gal Aの突然変異形態は、優良試験所基準(GLP)でバリデーションされたインビトロアッセイ(GLP HEK又はミガラスタット適用可能性アッセイ)に従いHEK-293細胞で突然変異形態のα-Gal Aを発現させたとき(「HEKアッセイ」と称される)、野生型(WT)の≧1.20倍の相対的増加(+10μMミガラスタット)及び≧3.0%の絶対的増加(+10μMミガラスタット)を示すものとして定義される。かかる突然変異は、本明細書では「HEKアッセイ適用可能」突然変異とも称される。
治療開始前に酵素の増強を判定する先行のスクリーニング方法が提供されている。例えば、HEK-293細胞を使用したアッセイが、所与の突然変異が薬理学的シャペロン(例えばミガラスタット)治療に応答性かどうかを予測するため臨床試験において利用されている。このアッセイでは、cDNAコンストラクトを作成する。HEK-293細胞において対応するα-Gal A突然変異形態を一過性に発現させる。次に細胞を±ミガラスタット(17nM~1mM)で4~5日間インキュベートする。その後、合成蛍光発生基質(4-MU-α-Gal)を使用するか、又はウエスタンブロットにより、細胞ライセート中のα-Gal Aレベルを測定する。これは、疾患を引き起こす公知のミスセンス又は小型インフレーム挿入/欠失突然変異について行われている。これまでにこれらの方法を用いてPC(例えばミガラスタット)に応答性であると同定されている突然変異が、米国特許第8,592,362号明細書に列挙されている。
薬理学的シャペロン
LSDに関連する酵素の小分子阻害薬の結合は、突然変異酵素及び対応する野生型酵素の両方の安定性を増加させることができる(米国特許第6,274,597号明細書;同第6,583,158号明細書;同第6,589,964号明細書;同第6,599,919号明細書;同第6,916,829号明細書、及び同第7,141,582号明細書を参照のこと、すべて参照により本明細書に援用される)。詳細には、幾つかの標的リソソーム酵素の特異的で選択的な競合阻害薬であるグルコース及びガラクトースの小分子誘導体を投与すると、インビトロで細胞内の酵素の安定性が有効に増加し、ひいてはリソソームへの酵素のトラフィッキングが増加した。従って、リソソーム内の酵素量が増加することにより、酵素基質の加水分解が増加するものと予想される。この戦略の背後にあった当初の理論は以下の通りであった:突然変異酵素タンパク質はERにおいて不安定であるため(Ishii et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812-815)、酵素タンパク質は正常な輸送経路(ER→ゴルジ体→エンドソーム→リソソーム)において遅れ、早まって分解される。従って、突然変異酵素に結合してその安定性を増加させる化合物が酵素の「シャペロン」として働き、ERを出てリソソームに移ることのできる量を増加させ得る。加えて、一部の野生型タンパク質のフォールディング及びトラフィッキングは不完全で、場合によっては一部の野生型タンパク質の最大70%がその最終的な細胞部位に到達する前に分解されるため、シャペロンを野生型酵素の安定化に使用して、ERを出てリソソームに輸送されることのできる酵素の量を増加させることができる。
1つ以上の実施形態において、薬理学的シャペロンはミガラスタット又はその塩を含む。1-デオキシガラクトノジリマイシン(1-DGJ)又は(2R,3S,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5トリオールとしても知られる化合物ミガラスタットは、以下の化学式を有する化合物である。
Figure 2022518733000001
本明細書で考察されるように、ミガラスタットの薬学的に許容可能な塩もまた、本発明で使用し得る。ミガラスタットの塩を使用する場合、塩の投与量は、患者により摂取されるミガラスタットの用量が、ミガラスタット遊離塩基を使用したならば摂取されたであろう量と等価になるように調整されるであろう。ミガラスタットの薬学的に許容可能な塩の一例は、ミガラスタットHClである。
Figure 2022518733000002
ミガラスタットは低分子量イミノ糖であり、GL-3の末端ガラクトースの類似体である。インビトロ及びインビボでの薬理学的研究から、ミガラスタットが薬理学的シャペロンとして働き、野生型α-Gal A及び特異的突然変異形態のα-Gal A(その遺伝子型はHEKアッセイ適用可能突然変異と称される)の活性部位に高親和性で選択的且つ可逆的に結合することが実証されている。ミガラスタットが結合すると、これらの突然変異形態のα-Gal Aが小胞体において安定し、リソソームへのその適切なトラフィッキングが促進され、リソソームでミガラスタットが解離することにより、α-Gal AがGL-3及び他の基質レベルを低下させることが可能になる。ファブリー病患者の約30~50%がHEKアッセイ適用可能突然変異を有する;その大多数がこの疾患の古典型表現型に関連する。
HEKアッセイ適用可能突然変異は、少なくとも薬理学的参照表に列挙される突然変異(例えば、GALAFOLD(登録商標)などのミガラスタット製剤に対して米国又は国際製剤ラベルに列挙されるもの)を含む。本明細書で用いられる場合、「薬理学的参照表」は、ミガラスタット製剤(例えば、GALAFOLD(登録商標))のパッケージング内の製剤ラベル又はヘルスケア提供者によりアクセス可能なウェブサイトのどちらかに含まれるいずれかの公的にアクセス可能な文書記録又は電子記録を意味し、これらの記録は、特定の突然変異又は変異がミガラスタット(例えば、GALAFOLD(登録商標))PC療法に反応するかを伝えるものであり、必ずしも表形式で提示される文書記録に限定されるとは限らない。そのため、本発明の一実施形態において、「薬理学的参照表」は、1つ以上の適用可能突然変異又は変異を含む情報のいずれかのデポジトリーを指す。HEKアッセイ適用可能突然変異に対する模範的薬理学的参照表は、GALAFOLD(登録商標)の使用が承認された各種国々のGALAFOLD(登録商標)の製剤特性の概要及び/又は処方情報或いはwww.galafoldamenabilitytable.comやwww.fabrygenevariantsearch.comなどのウェブサイト(その各々はその全体が本明細書によって参照により援用される)に見いだし得る。
HEKアッセイ適用可能突然変異に対する模範的薬理学的参照表は、以下の表1に提供される。1つ以上の実施形態において、同じ染色体上に二重突然変異が存在する場合(男性及び女性)、当該の患者は、表1の1つのエントリにその二重突然変異が存在する場合に(例えば、D55V/Q57L)、HEKアッセイ適用可能とみなされる。一部の実施形態において、二重突然変異が異なる染色体上に存在する場合(女性のみ)、当該の患者は、表1に個々の突然変異のいずれか一方が存在する場合にHEKアッセイに適用可能とみなされる。
Figure 2022518733000003
Figure 2022518733000004
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Figure 2022518733000011
投与量、製剤及び投与
従って、1つ以上の実施形態において、ファブリー患者にミガラスタット又はその塩が1日おきに1回(「QOD」とも称される)の頻度で投与される。様々な実施形態において、本明細書に記載される用量は、ミガラスタット塩酸塩又は等価な用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩に関する。一部の実施形態において、これらの用量はミガラスタットの遊離塩基に関する。代替的実施形態において、これらの用量はミガラスタットの塩に関する。更なる実施形態において、ミガラスタットの塩はミガラスタット塩酸塩である。ミガラスタット又はミガラスタットの塩の投与は、本明細書では「ミガラスタット療法」と称される。
ミガラスタット又はその塩の有効量は約100mg FBE~約150mg FBEの範囲であり得る。例示的用量としては、約100mg FBE、約105mg FBE、約110mg FBE、約115mg FBE、約120mg FBE、約123mg FBE、約125mg FBE、約130mg FBE、約135mg FBE、約140mg FBE、約145mg FBE又は約150mg FBEが挙げられる。
ここでもまた、150mgのミガラスタット塩酸塩は123mgの遊離塩基形態のミガラスタットと等価であることが注記される。従って、1つ以上の実施形態において、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される150mgのミガラスタット塩酸塩又は等価な用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩である。上記に示される通り、この用量は123mg FBEのミガラスタットと称される。更なる実施形態において、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される150mgのミガラスタット塩酸塩である。他の実施形態において、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される123mgのミガラスタット遊離塩基である。
様々な実施形態において、有効量は、約122mg、約128mg、約134mg、約140mg、約146mg、約150mg、約152mg、約159mg、約165mg、約171mg、約177mg又は約183mgのミガラスタット塩酸塩である。
従って、様々な実施形態において、ミガラスタット療法は、150mgのミガラスタット塩酸塩を1日おきなど、123mg FBEを1日おきに1回の頻度で投与することを含む。
ミガラスタット又はその塩の投与は、ある一定の期間にわたり得る。1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩は、少なくとも28日の継続期間、例えば少なくとも30、60又は90日又は少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24、30又は36ヵ月又は少なくとも1、2、3、4又は5年の継続期間にわたって投与される。様々な実施形態において、ミガラスタット療法は、少なくとも約2、3、4又は5年の長期ミガラスタット療法である。
本発明にかかるミガラスタット又はその塩の投与は、任意の投与経路に好適な製剤であってよく、しかし好ましくは、錠剤、カプセル又は溶液などの経口剤形で投与される。一例として、患者には、各々150mgのミガラスタット塩酸塩又は等価な用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩を含有するカプセルが経口投与される。
一部の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は経口投与される。1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は注射によって投与される。PCは薬学的に許容可能な担体を伴うこともあり、これは投与方法に依存し得る。
1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は単剤療法として投与され、例えば、錠剤又はカプセル又は液体の形態で経口的に、注射用に滅菌水溶液でなど、任意の投与経路に好適な形態であってもよい。他の実施形態において、PCは、投与前にインビトロで酵素凝集を防ぐため再構成中又は再構成直後に補充酵素の製剤に加えられる、凍結乾燥粉末で提供される。
PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)が経口投与用に製剤化される場合、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に従来手段によって錠剤又はカプセルが調製されてもよい。錠剤は当該技術分野において周知の方法によってコーティングされてもよい。経口投与用の液体調合物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとってもよく、又は使用前に水又は別の好適な媒体で構成するための乾燥製剤として調製されてもよい。かかる液体調合物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性媒体(例えば、扁桃油、油性エステル類、エチルアルコール又は分画植物油);及び保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤と共に従来手段によって調製されてもよい。調合物はまた、緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤も適宜含有し得る。経口投与用の調合物は、活性シャペロン化合物の制御放出をもたらすように好適に製剤化されてもよい。
非経口/注射使用に好適なPC(例えば、ミガラスタット又はその塩)の医薬製剤としては、概して、滅菌水溶液(水溶性の場合)、又は滅菌注射用溶液若しくは分散液の即時調製用の分散液及び滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合にも、形態は無菌でなければならず、及び易注射針通過性が存在する程度の流動性がなければならない。これは製造及び保管条件下で安定していなければならず、且つ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含めることが妥当となり得る。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することにより、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に必要な量の精製酵素(存在する場合)及びPC(例えば、ミガラスタット又はその塩)を、必要に応じて上記に列挙される種々の他の成分と共に配合し、続いて濾過又は最終滅菌することにより調製される。概して、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙されるものからの他の必要な成分を含有する滅菌媒体中に様々な滅菌活性成分を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+任意の追加的な所望の成分の粉末を予め滅菌濾過されたその溶液から生じさせる真空乾燥法及び凍結乾燥法である。
製剤は賦形剤を含有し得る。製剤に含まれ得る薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝液、例えば、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、及び重炭酸塩緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール類、アスコルビン酸、リン脂質;血清アルブミン、コラーゲン、及びゼラチンなどのタンパク質;EDTA又はEGTAなどの塩、及び塩化ナトリウム;リポソーム;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidone);デキストラン、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールなどの糖類;プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000、PEG-6000);グリセロール;グリシン又は他のアミノ酸;及び脂質である。製剤と使用する緩衝液系としては、クエン酸塩;酢酸塩;重炭酸塩;及びリン酸塩緩衝液が挙げられる。リン酸塩緩衝液が好ましい実施形態である。
シャペロン化合物の投与経路は、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、頬側、直腸、腟内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、脳室内、髄腔内、大槽内、嚢内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、又は吸入によることを含め、経口又は非経口であってよい。
上述の非経口製剤のシャペロン化合物の投与は、調合物のボーラスの定期的注射によってもよく、又は外部(例えば、点滴静注バッグ)若しくは内部(例えば、生体内分解性インプラント)のリザーバからの静脈内若しくは腹腔内投与によって投与されてもよい。
医薬製剤及び投与に関する実施形態は、本発明の他の実施形態、例えば、ファブリー病患者の治療方法、ERT未経験ファブリー患者の治療方法、ERT経験ファブリー患者の治療方法、CBV事象のリスクの低減方法、CBV事象の増加したリスクを有するファブリー患者の治療方法、CBV事象の病歴を有するファブリー患者の治療方法、CBV事象の病歴のないファブリー患者の治療方法、ファブリー病と診断された若しくはそれを有する疑いのある患者におけるα-Gal Aの増強方法、ファブリー病と診断された患者を治療する医薬の製造のためのα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンの使用に関する実施形態、又はファブリー病と診断された患者の治療に使用するためのα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンに関する実施形態、更には適用可能突然変異、PC及びその好適な投与量に関する実施形態のいずれかと組み合わされ得る。
1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)はERTと併用して投与される。ERTは、野生型酵素又は生物学的に機能性の酵素を注入によって外因的に導入することによりタンパク質の量を増加させる。この療法は、上述の通り、ファブリー病などのLSDを含めた多くの遺伝的障害向けに開発された。注入後、外因性酵素は非特異的又は受容体特異的機構を介して組織により取り込まれるものと想定される。一般に、取込み効率は高くなく、外因性タンパク質の循環時間は短い。加えて、外因性タンパク質は不安定で、急速な細胞内分解を受けるとともに、続く治療との有害な免疫反応の可能性もある。1つ以上の実施形態において、シャペロンは補充酵素(例えば、補充α-Gal A)と同時に投与される。一部の実施形態において、シャペロンは補充酵素(例えば、補充α-Gal A)と共に製剤化される。
1つ以上の実施形態において、患者はERTからミガラスタット療法に切り換えられる。一部の実施形態において、ERTを受けている患者が同定され、患者のERTが中断され、患者はミガラスタット療法を受け始める。ミガラスタット療法は、本明細書に記載される方法のいずれかに従うものであり得る。
CBV事象
本明細書に記載の投与レジメンは、ファブリー患者においてCBV事象のリスクを低減可能である。限定されるものではないが脳卒中及び一過性虚血発作をはじめとするCBV事象は、El Dib,et al(El Dib R.PLoS One.2017;12(3):e0173358)によるメタ解析によれば、4.5年間の平均フォローアップにわたり未治療患者の約18%で起こるファブリー病患者間に共通の深刻な臨床事象である。ERTを受けている患者におけるCBV事象の発生率は、2%~27%の範囲内であると報告されている。しかしながら、CBV事象のリスクに及ぼすERTの影響は、プラセボ対照試験が不足しているため未知のままであるとともに、組換えリソソーム酵素は、血液脳関門を通過することが示されていない。
以下の実施例に更に詳細に記載されるように、ミガラスタット療法は、ERT経験患者及びERT未経験患者の両方においてCBV事象の発生率を低減することが、第2相及び第3相試験で見出された。それゆえ、ミガラスタット療法は、CBV事象のリスクを低減するために、及び/又はCBV事象の病歴を有する患者若しくはCBV事象の病歴を有していない患者を含めてCBV事象のリスクが高いファブリー患者を治療するために、使用可能である。
実施例1: ミガラスタット塩酸塩を用いたERT経験及びERT未経験ファブリー患者の治療用投与レジメン
この実施例では、ERT経験及びERT未経験ファブリー患者におけるミガラスタット療法の第2相及び第3相試験を記載する。
試験設計
この解析は、以下の図X1に示されるように2017年2月10日のデータカットオフで4つの第2相及び4つの第3相の臨床試験のデータを含んでいた。
FAB-CL-202(NCT00283959)、FAB-CL-203(NCT00283933)、及びFAB-CL-204(NCT00304512)は、ファブリー病患者においてミガラスタット(用量範囲:50~250mg)の安全性、耐容性、薬動学(PK)、及び薬力学(PD)を評価する第2相オープンラベル非比較試験であった。
FAB-CL-205(NCT0052607)は、FAB-CL-202、FAB-CL-203、及びFAB-CL-204を含む第2相臨床試験を完了した患者に対する第2相長期オープンラベル延長(OLE)試験であった。試験は、ミガラスタット150mg1日おき(QOD)、次いで用量漸増期間、続いて150mgQODの期間を含んでいた。
FACETS(AT1001-011、NCT00925301)は、ファブリー病及びミガラスタット適用可能GLA変異を有するERT未経験患者において6ヵ月間のミガラスタット150mgQOD対プラセボ、続いて18ヵ月間のミガラスタットのオープンラベル延長(OLE)の効能、安全性、及びPDを評価するために設計された第3相プラセボ対照試験であった。
ATTRACT(AT1001-012、NCT01218659)は、ミガラスタット適用可能GLA変異を有するERT治療患者において18ヵ月間のミガラスタット150mgQOD対ERT、続いて12ヵ月間のミガラスタットのOLEの効能及び安全性を比較するための第3相オープンラベル実薬対照試験であった。
AT1001-041(NCT01458119)は、FAB-CL-205、AT1001-011、又はAT1001-012を完了した患者においてミガラスタットの長期安全性及び効能を評価する長期OLE試験であった。
AT1001-042(NCT02194985)は、AT1001-012又はAT1001-041に参加した患者においてミガラスタットの長期安全性及び効能を評価する継続長期OLE試験である。
解析
解析では、第2相及び第3相臨床試験で適用可能突然変異を有する患者においてミガラスタット150mgQOD治療時に治療下発現有害事象(TEAE)として報告されたCBV事象を評価する。
CBV事象は、脳幹虚血、脳梗塞、脳出血、脳虚血、脳血管障害、塞栓性脳卒中、及びTIAを含む脳卒中関連用語を用いて病歴及びTEAEリストを検索することにより同定された。
少なくとも1回のミガラスタット150mgQODを摂取した適用可能患者のみをこの解析に含めた。
適用性は、適正試験所規範(GLP)検証インビトロミガラスタット適用性アッセイに基づいていた。
解析に含まれる臨床試験
Figure 2022518733000012
結果
ミガラスタット150mgQOD合計暴露
ミガラスタット150mgQODへの合計平均(SD)暴露持続期間は、4.0(2.0)年間(N=114)であった。
ミガラスタット150mgQODへの暴露持続期間は0.1~8.3年間の範囲内であり、中央値は4.4年間であった。
デモグラフィックス及びベースライン特性
少なくとも1回のミガラスタット150mgQODを摂取するすべての適用可能患者の平均(SD)年齢は、46.2(13.1)歳(範囲:16~72歳)であった(表2)。マジョリティーは白人であり、且つ57.0%は女性であった。ファブリー病の診断以降の平均(SD)期間は、9.8(10.1)年間(範囲:1~44年間)であった。
Figure 2022518733000013
CBV事象の病歴
114人に16人の患者(14%)は、ミガラスタット治療前にCBV事象を経験した(表3)。試験AT1001-012からの1人の患者は、病歴に2回のCBV事象を報告した。
5/16人の患者では、CBV事象は、試験エントリ時、現在の病態が病歴に報告される通りとみなされた。AT1001-011からの1人の患者は、継続脳虚血を有し、他の1人は、継続脳幹梗塞を有していた。AT1001-012からの2人の患者は、継続TIAを有し、1人は、継続脳血管障害、特に左中大脳動脈性脳卒中を有していた
最初のCBV事象時の平均(SD)年齢は、43.6(14.4)歳であった。
Figure 2022518733000014
ミガラスタット150mgQOD治療時のCBV事象の発生
ミガラスタット150mgQODによる治療時に8人の患者(7%)で11のCBV事象が報告された(表4)。7つのCBV事象は、重篤有害事象(SAE)としてカテゴリー化されたが、ほとんど(82%)の事象は、重症度が軽度~中等度であった(表5)。2つのCBV事象は、治療中止をもたらした(表5)。11のCBV事象は、いずれも、治療に関連するとみなされなかった
8人に6人の患者は、ミガラスタット治療を受ける前にCBVを経験したので、2/114人(2%)の患者のみ、ミガラスタット投与の間に最初のCBV事象を有した(表5)。ミガラスタット治療時の最初の事象の患者の平均(SD)年齢は、50.6(14.6)歳であった(表5)。最初の事象発生時のミガラスタット150mgQOD投与の平均(SD)期間は、1.1(1.1)年間であった。
プレミガラスタットCBV事象を有する16人の患者のうち、10人(63%)は、ミガラスタット治療時に新しいCBV事象を経験しなかった。
Figure 2022518733000015
Figure 2022518733000016
以上の表から分かるように、CBV事象の全発生率はミガラスタット治療時に低かった。ミガラスタットの平均4年間、8/114人(7%)の患者はCBV事象を経験し、主にCBV事象の病歴を有する患者で起こった。
本明細書に記載の実施形態は、本組成物及び方法を例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。全体として記載内容に一致するとともに当業者に簡単に分かる各種修正及び変更は、含まれることが意図される。添付の特許請求の範囲は、実施例に示される具体的実施形態により限定されるべきではなく、全体として記載内容に一致する最広義の解釈が与えられるべきである。
特許、特許出願、刊行物、製剤説明、GenBank受託番号、及びプロトコルは、本願全体を通じて引用され、それらの開示は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に援用される。

Claims (41)

  1. ファブリー病を有する患者において脳血管(CBV)事象のリスクを低減する方法であって、少なくとも2年間にわたり1日おきに有効量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を前記患者に投与することを含み、前記有効量が約100mg~約150mg遊離塩基等価物(FBE)である、方法。
  2. 前記CBV事象が脳幹虚血、脳梗塞、脳出血、脳虚血、脳血管障害、塞栓性脳卒中、又は一過性虚血発作の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記患者がミガラスタット又はその塩の投与開始前にCBV事象の増加したリスクを有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ミガラスタット又はその塩がα-ガラクトシダーゼA活性を増強する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記患者に1日おきに約123mgFBEのミガラスタット又はその塩が投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記患者に1日おきに約123mgのミガラスタット遊離塩基が投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記患者に1日おきに約150mgのミガラスタット塩酸塩が投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記製剤が経口剤形を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記経口剤形が錠剤、カプセル剤、又は溶液剤を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記ミガラスタット又はその塩が少なくとも3年間にわたり投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ミガラスタット又はその塩が少なくとも4年間にわたり投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記患者が前記ミガラスタット又はその塩の投与開始前に最初のCBV事象を有していなかった、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記患者が前記ミガラスタット又はその塩の投与開始前に最初のCBV事象を有していた、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記患者が酵素補充療法(ERT)未経験患者である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記患者がERT経験患者である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記患者がα-ガラクトシダーゼAにHEKアッセイ適用可能突然変異を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記突然変異が薬理学的参照表に開示される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記薬理学的参照表が、ファブリー病の治療が承認されたミガラスタット製剤の製剤ラベルに提供される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記薬理学的参照表がGALAFOLD(登録商標)の製剤ラベルに提供される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記薬理学的参照表がウェブサイトに提供される、請求項18に記載の方法。
  21. 前記ウェブサイトがwww.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.comの1つ以上である、請求項20に記載の方法。
  22. 脳血管(CBV)事象の増加したリスクを有する患者においてファブリー病を治療する方法であって、少なくとも2年間にわたり1日おきに有効量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を前記患者に投与することを含み、前記有効量が約100mg~約150mg遊離塩基等価物(FBE)である、方法。
  23. 前記CBV事象が脳幹虚血、脳梗塞、脳出血、脳虚血、脳血管障害、塞栓性脳卒中、又は一過性虚血発作の1つ以上を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記ミガラスタット又はその塩がα-ガラクトシダーゼA活性を増強する、請求項21又は22に記載の方法。
  25. 前記患者に1日おきに約123mgFBEの前記ミガラスタット又はその塩が投与される、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記患者に1日おきに約123mgのミガラスタット遊離塩基が投与される、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記患者に1日おきに約150mgのミガラスタット塩酸塩が投与される、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記製剤が経口剤形を含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記経口剤形が錠剤、カプセル剤、又は溶液剤を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記ミガラスタット又はその塩が少なくとも3年間にわたり投与される、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記ミガラスタット又はその塩が少なくとも4年間にわたり投与される、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記患者が前記ミガラスタット又はその塩の投与開始前に最初のCBV事象を有していなかった、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
  33. 前記患者が前記ミガラスタット又はその塩の投与開始前に最初のCBV事象を有していた、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記患者が酵素補充療法(ERT)未経験患者である、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
  35. 前記患者がERT経験患者である、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
  36. 前記患者がα-ガラクトシダーゼAにHEKアッセイ適用可能突然変異を有する、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
  37. 前記突然変異が薬理学的参照表に開示される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記薬理学的参照表が、ファブリー病の治療が承認されたミガラスタット製剤の製剤ラベルに提供される、請求項37に記載の方法。
  39. 前記薬理学的参照表がGALAFOLD(登録商標)の製剤ラベルに提供される、請求項38に記載の方法。
  40. 前記薬理学的参照表がウェブサイトに提供される、請求項38に記載の方法。
  41. 前記ウェブサイトがwww.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.comの1つ以上である、請求項40に記載の方法。
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