JP2022502039A - タンパク質精製方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、可溶化されると、適正にフォールディングされた、活性なタンパク質を生じる可溶化可能な複合体の形態で発現されるタンパク質を精製する方法を提供する。本発明の更なる態様は、タンパク質の発現及び精製において使用され得るポリペプチドに関する。【選択図】図1

Description

関連出願に対する参照
本出願は、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる2018年9月25日に出願された米国仮出願第62/735,861号の優先権の有益性を主張する。
配列表に対する参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年9月20日に作成され、63キロバイト(KB)のサイズを有する「AbSci−005PCT_ST25.txt」という表題のファイルで、電子的に提出された配列表を包含する。
発明の分野
本発明は、分子生物学及び生物工学的製造の総合技術分野におけるものである。より詳細には、本発明は、組換えタンパク質産生の技術分野におけるものである。
組換えタンパク質又は他の遺伝子産物の効率的な発現は、系の使用を必要とし、その様々な態様、即ち、発現構築物(複数可)、宿主細胞株、増殖条件、及び精製方法は全て、材料及び時間の消費を最低限に抑えながら、十分な量で所望の産物を作製するように共同する。
組換え産物の工業生産に現在使用されている多くの発現系は、高価な哺乳動物細胞培養に依存するか、又は細菌細胞質における遺伝子産物の発現よりも、細胞1つ当たりの産物の量に限りがあり、且つより時間がかかる細菌細胞のペリプラズムへのタンパク質の分泌を利用する。細菌細胞質が、組換え発現に好ましい細胞区画として使用される他者らによって開発された多くの発現系では、所望のタンパク質が、不溶性封入体として産生されることが一般的である(例えば、Chung et al.,「Recombinant production of biologically active giant grouper (Epinephelus lanceolatus)growth hormone from inclusion bodies of Escherichia coli by fed−batch culture」,Protein Expr Purif 2015 Jun;110:79−88;doi:10.1016/j.pep.2015.02.012;Epub 2015 Feb 19を参照)。幾つかの可溶性で正確にフォールディングされたタンパク質を封入体から回収するためには、更なるリフォールディングステップを実施する必要がある(Yamaguchi and Miyazaki,「Refolding techniques for recovering biologically active recombinant proteins from inclusion bodies」,Biomolecules 2014 Feb 20;4(1):235−251;doi:10.3390/biom4010235;Review)。ジスルフィド結合を含有するタンパク質に関して、これらのリフォールディングステップは通常、任意の不適切に形成されるジスルフィド結合、特に不溶性封入体への凝集に寄与している可能性がある分子間ジスルフィドを、チオール基に変換するための還元剤の使用を包含する。
適切にフォールディングされた溶解形態で、また市販の産生レベルにまでスケールアップすることが可能な様式で、組換えタンパク質等の遺伝子産物をより効率的に産生するための改善された発現系及びそれらを使用する方法が、明らかに必要とされている。
本発明は、還元剤の使用を必要とせずに、可溶化されると、適正にフォールディングされた、活性な遺伝子産物を生じる可溶化可能な複合体の形態で発現されるタンパク質及び他の遺伝子産物を精製する方法を提供する。本発明の利点は、可溶化可能なペレットの形態で遺伝子産物の可溶化可能な複合体を収集することができることであり、宿主細胞溶解物の望ましくない構成分を、上清中に廃棄させることが可能である。遺伝子産物の可溶化可能な複合体が、例えば、宿主細胞溶解物中に存在する場合、可溶化可能な複合体を、遠心分離又は他の手段によって沈降させてペレットにすることができ、宿主細胞溶解物の主に液体画分と分離させることができる点で、この混合物は懸濁液とみなすことができる。本明細書中で使用する場合、「溶液」という用語は、懸濁液の特性を示すことができる混合物を包含する。本発明の更なる態様は、タンパク質の発現及び精製において使用され得るポリペプチドプロ配列に関する。
本発明の態様は、1つ又は複数の遺伝子産物を産生する方法であって、宿主細胞において発現された少なくとも1つの遺伝子産物を含む第1の溶液を提供するステップであって、第1の溶液中の上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、900×gの力で、又は900×g〜7,000×gで、又は7,000×gで遠心分離(pH7.4及び4℃にて200mM NaClの塩条件で)によって沈降させて、可溶化可能なペレットを形成することができる、ステップと、上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、可溶化溶液中に配置するステップとを含む方法である。本発明の上記方法は、下記のパラグラフにおいて表されるような本発明の方法の任意の態様に従って、それらの任意の組合せで利用され得る:
上記少なくとも1つの遺伝子産物が、少なくとも1つのジスルフィド結合を形成するポリペプチドである、本発明の方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物が、単一ペプチドを欠如しているポリペプチドである、本発明の方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物が、(a)レプチン、メトレレプチン、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン、インスリンの成熟鎖のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び(b)(a)のポリペプチドのいずれかの断片からなる群から選択されるポリペプチドを含む、本発明の方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物が、成熟インスリン鎖のアミノ酸配列並びに(a)配列番号12〜配列番号14及び配列番号37のいずれか及び(b)(a)のアミノ酸配列のいずれかの長さの少なくとも50%(又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)に対して、少なくとも70%(又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)アミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、本発明の方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物が、(a)配列番号27〜配列番号36のいずれか及び(b)(a)のアミノ酸配列のいずれかの長さの少なくとも50%(又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)に対して、少なくとも70%(又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)アミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、本発明の方法。
少なくとも1つの遺伝子産物が、Asp−Proアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、本発明の方法であって、Asp−Proアミノ酸配列での上記プロペプチドの切断を更に含む、本発明のこの方法。
第1の溶液が、上記宿主細胞の溶解物である、本発明の方法であって、上記宿主細胞の溶解物が、宿主細胞を、リゾチームと接触させることによって産生されたか、又は上記宿主細胞の溶解物が、機械的溶解によって産生された、本発明のこの方法。
宿主細胞が、原核細胞である、本発明の方法であって、宿主細胞が、大腸菌(Escherichia coli)細胞である、本発明のこの方法。
宿主細胞が、より酸化している細胞質を有するように修飾されている、本発明の方法であって、上記宿主細胞の修飾が、trxB、gor、gshA、及びgshBからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の欠損をもたらし、上記宿主細胞が、ahpC遺伝子において突然変異を更に含む、本発明のこの方法。
宿主細胞が、1つ又は複数の発現構築物を含む、本発明の方法であって、上記少なくとも1つの前記発現構築物が、少なくとも1つの誘導性プロモーターを含み、上記少なくとも1つの誘導性プロモーターが、アラビノース誘導性プロモーター、プロピオネート誘導性プロモーター、ラムノース誘導性プロモーター、キシロース誘導性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、及びホスフェート欠失によって誘導可能なプロモーターからなる群から選択され、及び/又は上記宿主細胞が、上記少なくとも1つの誘導性プロモーターの少なくとも1つの誘導物質を代謝するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の遺伝子機能のレベルの低減を有し、少なくとも1つの遺伝子が、araA、araB、araD、prpB、prpD、rhaA、rhaB、rhaD、xylA、及びxylBからなる群から選択される、本発明のこの方法。
前記第1の溶液を、遠心分離に付すステップを更に含む、本発明の方法であって、遠心分離が、900×g、又は900×g〜25,000×g、又は900×g〜7,000×g、又は2,000×g〜20,000×gの力で、或いは3,300×g、又は3,300×g〜20,000×gで、或いは7,000×g、又は7,000×g〜20,000×gであり、上記第1の溶液が、可溶性画分及びペレットに分離され、上記ペレットが、上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを含み、上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、上記ペレットから回収するステップを更に含み、上記ペレット中に存在する上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかが、可溶化溶液中に配置される、本発明のこの方法。
上記可溶化溶液が、少なくとも1つのカオトロピック剤を含む、本発明の方法であって、上記少なくとも1つのカオトロピック剤が、n−ブタノール、エタノール、塩化グアニジウム、塩酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2−プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択され、上記記少なくとも1つのカオトロピック剤が、2M〜10Mの濃度の尿素及び2M〜8Mの濃度の塩酸グアニジンからなる群から選択されるか、又は7M〜8Mの濃度の尿素である、本発明のこの方法。
可溶化溶液中の上記少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度を低減させるステップを更に含む、本発明の方法であって、可溶化溶液中の上記少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度が、可溶化溶液中のその初期濃度の50%又はそれ未満に低減され、及び/又は可溶化溶液中の上記少なくとも1つのカオトロピック剤の初期濃度が、7M〜8Mの濃度の尿素であり、上記少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度が、3M〜4Mの濃度の尿素に低減され、可溶化溶液中の上記少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度の低減が、透析、希釈、及びダイアフィルトレーションからなる群から選択される方法によって達成され、低減された濃度の上記少なくとも1つのカオトロピック剤を含む可溶化溶液を、少なくとも1時間、2時間、5時間、10時間、12時間、15時間、12時間〜24時間、24時間、24時間〜72時間、36時間、48時間、72時間、72時間〜120時間、及び120時間からなる群から選択される期間、インキュベートするステップを更に含む、本発明のこの方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、上記可溶化溶液から回収するステップを更に含む、本発明の方法であって、上記可溶化溶液から回収された上記少なくとも1つの遺伝子産物の量が、上記第1の溶液中に存在する上記少なくとも1つの遺伝子産物の総量の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%であり、及び/又は上記可溶化溶液から回収された上記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかが、適正に形成されたジスルフィド結合及び遺伝子産物活性からなる群から選択される特性を有し、上記可溶化溶液から回収された少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%が、適正に形成されたジスルフィド結合を有する、本発明のこの方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物のクロマトグラフィー精製を更に含む、本発明の方法であって、クロマトグラフィー精製が、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)であり、クロマトグラフィー精製が、Ni−NTAカラムを利用する、本発明のこの方法。
上記少なくとも1つの遺伝子産物が、還元剤と接触されない、本発明の方法。
本発明の更なる態様は、(a)配列番号12〜配列番号14及び配列番号27〜配列番号36のいずれか、並びに(b)(a)のアミノ酸配列のいずれかの長さの少なくとも50%(又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)に対して、少なくとも70%(又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)アミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
図1は、本発明の方法によって産生された可溶化可能な遺伝子産物複合体を精製する方法を概要するフローチャートである。 図2は、本発明の方法に従って発現及び可溶化されたCPBpro_リスプロプロインスリンが、ジスルフィド結合を含有することを示す図である。8M尿素で可溶化されたCPBpro_リスプロプロインスリンを、12%Bis−Trisゲル上でポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。宿主細胞は、宿主細胞培養液の濃度よりも5倍(「5X」)又は10倍(「10X」)高い濃度で溶解させた。
Figure 2022502039
可溶化されたCPBpro_リスプロプロインスリンを、還元剤DTTで処理することにより、可溶化されたCPBpro_リスプロプロインスリンを、ゲル上で、わずかにゆっくりとした速度で移動させ、DTT処理が、非還元型の可溶化されたCPBpro_リスプロプロインスリン中に存在するジスルフィド結合を還元したこと示した。図2はまた、可溶化可能なCPBpro_リスプロプロインスリン複合体をペレット化することにより、宿主細胞溶解物中に存在する潜在的に混入する(レーン1及びレーン2)タンパク質の大部分を、可溶化可能なペレットから除去させ、可溶化されたCPBpro_リスプロプロインスリンの非常に精製された調製物をもたらす(レーン3〜レーン6)ことを示す。
図3は、CPBpro_グラルギンプロインスリンポリペプチドの略図である。A鎖及びB鎖のアミノ酸は、それぞれ、淡灰色及び濃灰色の丸として示される。N末端CPBproプロペプチドは、破線として示され、A鎖及びB鎖を結合させるC−ペプチド(又は「結合性ペプチド」)は、灰色アーチとして示される。A鎖におけるシステイン残基とB鎖におけるシステイン残基との間にある濃灰色の実線、及びA鎖内の2つのシステインを結合している濃灰色の実線は、正確にフォールディングされたインスリングラルギン中に存在されるジスルフィド結合を表す。 図4は、質量分析による特性決定のための架橋ペプチド断片を生成するための精製されたCPBpro_グラルギンプロインスリンの、トリプシン及びグルタミルエンドペプシダーゼ(「Glu−C」)による消化を表す模式図である。ジスルフィド結合は、システイン残基を結合している濃灰色の実線によって表される。 図5は、ペレット化された可溶化可能な複合体からの可溶化によってのみ精製されたCPBpro_グラルギンプロインスリンの93%が、ジスルフィド結合の正確な形成を有し、したがって、適正にフォールディングされていることを示す1組の3つの質量分析クロマトグラフである。パネルA:ベースピーククロマトグラム(非還元型);パネルB:2つのジスルフィド結合を有するペプチド断片に相当するピークを示す、抽出イオンクロマトグラム(非還元型、+/−5ppm);パネルC:1つのジスルフィド結合を有するペプチド断片に相当するピークを示す、抽出イオンクロマトグラム(非還元型、+/−5ppm)。矢印は、インスリングラルギン標準物質によって生じるクロマトグラムに対する比較によって決定されるように、表示したペプチド断片に相当するピークを示す。「スワップされた形態」と標識された矢印は、成熟インスリンのA6位及びA7位にあるシステイン(図4を参照)が、「スワップされた」ジスルフィド結合パートナーを有するコンホメーションに相当する微量なピークを示す。:アスタリスクは、正確な電荷状態において、CPBpro_グラルギンプロインスリンに由来するはずのないピークを指し示している。
商業規模で、また活性形態で組換えタンパク質等の遺伝子産物を産生する問題は、本明細書中に記載されるタンパク質発現及び精製方法を提供することによって対処される。ポリペプチド等の遺伝子産物が、十分な遺伝子産物密度になるように、また遺伝子産物が発現された場合に適正にフォールディングされて、どのジスルフィド結合も適正に形成されるのを可能にする様式で宿主細胞において発現された場合、ポリペプチド等の遺伝子産物は、他の細胞構成成分から容易に精製され、続いて、適正フォールディングされ、推定上、活性な遺伝子産物を産生するように可溶化される可溶化可能な複合体を形成することを、本発明者らは見出した。かかる可溶化可能な複合体の形態での遺伝子産物の産生、適正にフォールディングされた遺伝子産物の続く精製に関する本発明のこれらの方法は、遺伝子産物を還元剤と接触させることを伴う手順を必要としないという利点を有する。
本発明の別の態様として、細胞溶解後に不溶性画分及び可溶性画分を分離するための初期の遠心分離ステップを有さずに、可溶化可能な複合体の形態で宿主細胞によって産生されるポリペプチドの直接的な可溶化に関する、及びかかるポリペプチドを還元剤とを接触させる必要なく、ジスルフィド結合を形成する、適正にフォールディングされ及び/又は活性なポリペプチドの精製を可能にする方法が提供される。
1つ又は複数のポリペプチドを含む遺伝子産物等の遺伝子産物の適切なフォールディングは、その遺伝子産物中のどのジスルフィド結合も、その遺伝子産物内の適正な位置で形成されていることと整合する。したがって、遺伝子産物が適切にフォールディングされているかどうかを決定することは、実施例2C及び実施例8において更に記載されるように、遺伝子産物中に存在するあらゆるジスルフィド結合の特性決定を伴い、それらのジスルフィド結合が適正に形成されているかどうかを評価することができる。適正に形成されたジスルフィド結合は、アッセイされると、2つの硫黄原子を結合する共有結合であり、ポリペプチド内、又は2つのポリペプチド間に存在する場合には、ポリペプチド(複数可)を含む遺伝子産物の所望の形態でジスルフィド結合によって連結される2つの硫黄含有アミノ酸残基(システイン又はCys残基)の硫黄原子を連結する(又は結合する)共有結合であるものである。例えば、図3に示されるようなグラルギンプロインスリンに関して、3つの適正に形成されたジスルフィド結合は、配列番号6の6位及び11位にあるCys残基、配列番号6の7位及び配列番号7の7位にあるCys残基、並びに配列番号6の20位及び配列番号7の19位にあるCys残基を結合するものである。
活性な遺伝子産物は、遺伝子産物の所望の形態と関連付けられるタイプの測定可能な形態を有する任意の遺伝子産物を含む。例えば、活性なインスリン遺伝子産物は、測定可能なインスリン受容体結合活性、又は測定可能な抗インスリン抗体結合活性、又はインスリン遺伝子産物の所望の形態と関連付けられる活性の任意の他のタイプを有し得る。
タンパク質の適正にフォールディングされた、及び/又は活性な形態の、封入体からの回収は通常、少なくとも1つの還元剤による処理を含む。「還元剤」という用語は、本明細書中で使用される場合、pH7.0及び25℃で−0.26Vよりも負の還元電位を伴う化学物質(非タンパク質)、例えば、DTE(ジチオエリスリトール)、DTT(ジチオトレイトール)、及びTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン)を包含し、したがって、「還元剤」という用語は、L−システイン(「L−cys」)又はグルタチオンを含まない。遺伝子産物の、封入体からの回収とは異なり、還元剤の使用を含まない本明細書中に開示される可溶化方法は、遺伝子産物の実質的により高い回収、例えば、実施例7に記載される方法によって算出される場合に、宿主細胞溶解物中に存在する総遺伝子産物材料の少なくとも50%、60%、70%、又は80%の回収をもたらす。細胞溶解物において達成された高収量の遺伝子産物(5g/L〜20g/L)を考慮すると、本明細書中に記載される可溶化方法(実施例1〜実施例3で見られるように)は、遺伝子産物の収量(4g/L〜16g/L)をもたらし得る。
宿主細胞が、可溶化可能な複合体の形態で遺伝子産物(複数可)を産生するためには、本明細書中に詳述されるように、遺伝子産物発現の下記態様I〜IVの適切な組合せを利用することが、最も好適である:
I.所望の遺伝子産物(複数可)の発現において使用されるべき任意のトランスポーター、補因子、シャペロン、及び/又はタグ若しくはプロペプチドを含む、産生されるべき遺伝子産物(複数可)。
II.遺伝子産物(複数可)の発現に使用されるべき発現構築物(複数可)。
III.遺伝子産物(複数可)をコードする発現構築物(複数可)を発現するのに使用されるべき宿主細胞。
IV.宿主細胞増殖及び発現の誘導に関する条件。
セクションV.は、本発明の可溶化及び精製方法について記載する。
その全てが参照により本明細書に明らかに組み込まれる下記の特許公報及び特許出願(複数可)は、遺伝子産物、発現構築物、宿主細胞、並びに本発明の精製方法に適した可溶化可能な複合体の産生に用いられ得る増殖及び誘導条件の更なる例を提供する:US9617335B2号、「Inducible Coexpression System」、WO2016205570A1号、「Vectors for Use in an Inducible Coexpression System」、及び国際出願PCT/US2016/067064号、「Cytoplasmic Expression System」。
I.本発明の方法によって作製される産物
多数の発現用途において、及び産物の特性において、本発明の遺伝子発現及び遺伝子産物精製方法を利用する際に広い万能性が見られる。
本発明の方法によって産生される遺伝子産物は、下記のいずれか、又は1つよりも多くを含み得る:1−アンチトリプシン;2C4;アクチビン;アドレシン;アルカリホスファターゼ;抗CD11a;抗CD18;抗CD20;プロテインC等の抗凝固因子;抗HER−2抗体;抗IgE;抗IgG;抗VEGF;抗体及び抗体断片;ErbB2の細胞外ドメインにおける領域(ErbB2のおよそ残基22からおよそ残基584の領域におけるいずれかの1つ又は複数の残基、端を含む)に結合する2C4(WO01/00245号、ハイブリドーマATCC HB−12697)等のErbB2ドメイン(複数可)に対する抗体;Apo2リガンド(Apo2L);心房性ナトリウム利尿因子;BDNF;ベータ−ラクタマーゼ;ボンベシン;骨形成タンパク質(BMP);ボツリヌス毒素;脳IGF−I;カルシトニン;カルジオトロフィン−1(CT−1)等のカルジオトロフィン(心肥大因子);CD−3、CD−4、CD−8、及びCD−19等のCDタンパク質;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォンヴィルブランド因子等の凝固因子;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;サイトカイン;崩壊促進因子;des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I);DNアーゼ;エンケファリナーゼ;上皮増殖因子(EGF);エリスリポエチン;aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;卵胞刺激ホルモン;グルカゴン;gp120;グレリン;ヒト成長ホルモン又はウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;造血増殖因子;ホーミング受容体;HSA;IGF−I;IGF−II;免疫毒素;インヒビン;インスリン鎖(インスリンA鎖、インスリンB鎖)又はプロインスリン;インスリン様増殖因子結合タンパク質;インスリン様増殖因子I及びII(IGF−I及びIGF−II);インテグリン;インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、及びインターフェロン−ガンマ等のインターフェロン;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−10;レプチン;リポタンパク質;肺界面活性剤;黄体ホルモン、メトレレプチン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;ミュラー管阻害物質;神経成長因子(NGF);脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5、又はニューロトロフィン−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)等の神経栄養因子;骨誘導因子;副甲状腺ホルモン;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化因子;血小板由来増殖因子(PDGF);プロリラクシン;プロテインA又はD;ホルモン又は増殖因子に関する受容体;調節タンパク質;リラクシンA鎖;リラクシンB鎖;レンニン;リウマチ因子;ヒト血清アルブミン(HSA)又はウシ血清アルブミン(BSA)等の血清アルブミン;スーパーオキシドジムスターゼ;表面膜タンパク質;T細胞受容体;TGF−ベータ;トロンビン;トロンボポエチン;甲状腺刺激ホルモン;TGF−1、TGF−2、TGF−3、TGF−4、又はTGF−5を含む、TGF−アルファ及びTGF−ベータ等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);輸送タンパク質;腫瘍壊死因子−アルファ及びベータ;ウロキナーゼ;血管内皮増殖因子(VEGF);例えば、AIDSエンベロープの一部等のウイルス抗原;上記のいずれかの断片、及び上記タンパク質若しくはそれらの断片又は抗体Fcドメイン、抗体単鎖可変断片(scFV)、酵素活性を有するドメイン(グリコシドヒドロラーゼドメイン又はキナーゼドメイン等の)、EVH1(Ena/Vasp相同性、又はWH1)ドメイン、PAS(Per−Arnt−Sim)ドメイン、PDZドメイン、POU(Pit−1、Oct、Unc−86)ドメイン、SPR(Spread、Sprouty)ドメイン、VWFC(フォンヴィルブランド因子、タイプC又はVWC)ドメイン、若しくはジンクフィンガードメイン(例えば、RING−フィンガードメイン)の1つ又は複数に共有結合されている上記のいずれか若しくはそれらの断片。
本発明によって産生される遺伝子産物は、下記のインスリンポリペプチドのいずれか、又は1つよりも多くを含み得る。本発明の方法によって産生されるインスリンポリペプチドは、幾つかの実施形態では、インスリンの成熟A鎖又は成熟B鎖のアミノ酸配列を含み、他の実施形態では、成熟A鎖及び成熟B鎖の両方を含む。プロインスリンポリペプチドは、インスリン成熟A鎖及びインスリンの成熟B鎖を含む。インスリンポリペプチド鎖は、或る特定の実施形態では、インスリンの天然に存在するアミノ酸配列、若しくはそれらの断片のいずれかの1つ又は複数を含み、他の実施形態では、1つ又は複数のインスリン類似体アミノ酸配列、若しくはそれらの断片を含み、更なる実施形態では、天然に存在するインスリンアミノ酸配列及び/又はインスリン類似体アミノ酸配列の組合せを含む。天然に存在するインスリンアミノ酸配列及びインスリン類似体アミノ酸配列の例を表1に示す。
Figure 2022502039
プレプロインスリンポリペプチドは、好ましくは下記のN末端からC末端への順序で、下記の構成成分を含み得る:宿主細胞シグナルペプチダーゼによってタンパク質発現中に切断されるシグナルペプチドであり得るプレペプチド;プロペプチド;B鎖;C−ペプチド(又は「結合性ペプチド」);及びA−鎖。プレプロインスリンポリペプチドはまた、異なるN末端からC末端への順序、例えば:プレペプチド;プロペプチド;A鎖;C−ペプチド;及びB鎖で、A鎖及びB鎖を含み得る。宿主細胞の細胞質において発現されるべきプロインスリンポリペプチドに関しては、シグナル配列を含むプレペプチドは、存在しない。プロインスリングラルギンポリペプチドの図を、図3に示す。C−ペプチドの例として、ヒトインスリンのC−ペプチド(NCBI参照配列NP_001278826.1のアミノ酸55〜アミノ酸89、配列番号10)、及び人工C−ペプチドRRYPGDVKR(配列番号NO:11)が挙げられる(Chang et al.,「Human insulin production from a novel mini−proinsulin which has high receptor−binding activity」,Biochem J 1998 Feb 1;329(Pt 3):631−635)。プロインスリンポリペプチドにおいて使用され得る更なるC−ペプチドアミノ酸配列は、ヒトC−ペプチド(配列番号12及び配列番号13)の人工変異体、及び人工C−ペプチドRRDDNLER(配列番号14)である。C−ペプチドアミノ酸配列は一般に、プロインスリンポリペプチドが、トリプシン消化プロセスにより成熟インスリンに変換される場合に、通常切断される末端アルギニン及びリジン酸基を含むものとして、本明細書中に提示されている。図3に示されるようなプロインスリングラルギンのC−ペプチドは例外である:インスリングラルギンの成熟B鎖が、2つのアルギニン(R)残基を有するので、これらのアルギニン残基は、図3では、C−ペプチドの一部としてではなく、インスリングラルギンの成熟B鎖の一部として表されている。
本発明の方法によって産生される遺伝子産物は、レプチン及び/又はメトレレプチンポリペプチドを含み得る。メトレレプチンとも呼ばれるレプチンポリペプチドの例は、配列番号15に示され、そのN末端でメチオニン残基を有する成熟ヒトレプチンに相当する。レプチンポリペプチドの他の例は、配列番号15のアミノ酸2〜アミノ酸147等のN末端メチオニン残基を欠如しているアミノ酸配列を含む。レプチンの一般的なアイソフォームは、配列番号15の74位で、バリン残基に代わって、メチオニン残基を有する。本発明の方法によって産生されるレプチンポリペプチドは、幾つかの実施形態では、そのN末端でメチオニン残基を(メトレレプチン)、他の実施形態では、レプチンポリペプチドのN末端に付加されたタグ、リンカー又は他のプロペプチドアミノ酸配列(以下で更に記載されるような)を、幾つかの実施形態ではメトレレプチンアミノ酸配列のN末端でメチオニンを含み、また他の実施形態ではメトレレプチンアミノ酸配列のN末端でメチオニンを含まずに有するレプチンポリペプチドのアミノ酸配列を含む。
シグナルペプチド。本発明の方法によって産生されるポリペプチド遺伝子産物は、シグナルペプチドを有し得るか、又は欠如し得る。本発明の或る特定の実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、かかる遺伝子産物が、宿主細胞の酸化している細胞質において保持されることが好適であるため、シグナルペプチドを欠如している。シグナルペプチド(シグナル配列、リーダー配列、又はリーダーペプチドとも称される)は、単一のアルファヘリックスを形成する傾向にある、構造的に、およそ5アミノ酸長〜20アミノ酸長、多くの場合はおよそ10アミノ酸長〜15アミノ酸長の一続きの疎水性アミノ酸を特徴とする。この疎水性の一続きは多くの場合、正に帯電したアミノ酸(特に、リジン)に富んだより短い一続きが、すぐ前に先行する。成熟ポリペプチドから切断されるべきシグナルペプチドは通常、シグナルペプチダーゼによって認識及び切断される一続きのアミノ酸で終わっている。場合によってはシグナルアンカー配列と称される、ポリペプチド遺伝子産物の、膜への挿入を誘導するシグナペプチドは、シグナルペプチダーゼによって切断されるアミノ酸配列を欠如してもよく、その場合、ポリペプチド遺伝子産物において保持される。シグナルペプチドは多くの場合、機能的に、ポリペプチドの、同時翻訳で、又は翻訳後に、細胞質から、また例えば、原核生物の原形質膜(又はE.coliのようなグラム陰性菌の内膜)を通って、又は真核細胞の小胞体への直接的な輸送を誘導する能力を特徴とし得る。シグナルペプチドが、ポリペプチドを、例えば、E.coliのような宿主細胞のペリプラズム腔へ輸送させることを可能にする程度は、以下の実施例9に提供する方法等の方法を使用して、ペリプラズムタンパク質を、細胞質において保持されるタンパク質と分離させることによって決定され得る。
遺伝子産物とともに使用することができるタグ及び他のポリペプチド配列
タグ。本発明の方法によって発現されるべき遺伝子産物は、遺伝子産物の精製及び/又は検出に役立つ分子部分を含むように設計され得る。多くのかかる部分は、当該技術分野で既知であり、一例として、ポリペプチド遺伝子産物は、そのN又はC末端に、連続する6個又はそれよりも多いヒスチジン、好ましくは6個〜10個のヒスチジン残基、最も好ましくは6個のヒスチジン(「6×His」)のポリヒスチジン「タグ」配列を含むように設計され得る。ポリペプチドの末端上のポリヒスチジン配列の存在により、それを、コバルト又はニッケルベースの親和性媒体によって結合させて、他のポリペプチドと分離することが可能となる。ポリヒスチジンタグ配列は、エキソペプチダーゼによって除去することができる。
本発明の方法によって産生されるポリペプチド遺伝子産物のアミノ酸配列のN末端で発現される更なるタグは、或る特定の実施形態では、(1)豚熱ウイルス(CSFV)とも呼ばれブタコレラウイルス(Alfort株)(配列番号16)等のペスチウイルス由来、ボーダー病ウイルス(BDV)及びウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)由来のポリタンパク質の自己切断型N末端部分(Npro)、及びそれらの断片、及び/又は(2)低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)(配列番号17、SwissProt P55853.1)を含む。任意のN末端タグはそれ自体、そのN末端で、6×His等のポリヒスチジンタグで、更にタグ付けされてもよく、ニッケルカラム上でのタグ付けされたポリペプチドの初期精製、続いて、それぞれ、Npro等のタグの自己切断、又はSUMOプロテアーゼによるSUMO N末端タグの酵素的切断、及び解放されたポリペプチドの、カラムからの溶出が可能となる。この方法の一実施形態では、SUMOプロテアーゼポリペプチドはまた、6×Hisタグを含む融合タンパク質であり、2ステップ精製が可能となり、第1のステップでは、発現された6×His−SUMOでタグ付けされたポリペプチドが、ニッケルカラムへの結合、続く、カラムからの溶出によって精製される。第2のステップでは、精製されたポリペプチド上のSUMOタグを、6×Hisでタグ付けされたSUMOプロテアーゼによって切断し、SUMOプロテアーゼ−ポリペプチド反応混合物を、第2のニッケルカラムに流し、第2のニッケルカラムは、SUMOプロテアーゼを保持するが、この段階でタグ付けされていないポリペプチドを流すことが可能である。
別の例として、蛍光タンパク質配列は、ポリペプチド遺伝子産物の一部として発現させることができ、蛍光タンパク質に関するアミノ酸配列は好ましくは、ポリペプチド遺伝子産物のアミノ酸配列のN又はC末端で付加される。得られた融合タンパク質は、或る特定の波長の光に曝露されると蛍光を発して、融合タンパク質の存在を視覚的に検出することが可能となる。周知の蛍光タンパク質は、オワンクラゲ(Aequorea victoria)の緑色蛍光タンパク質であり、多くの他の蛍光タンパク質は、それらをコードするヌクレオチド配列とともに市販されている。
リンカー。リンカーは、2つの他のポリペプチドを結合するのに使用されるポリペプチドである。アルファ−ヘリックスを形成するリンカーポリペプチドの例は、配列番号18及び配列番号19として提供される(Amet et al.,「Insertion of the designed helical linker led to increased expression of Tf−based fusion proteins」,Pharm Res 2009 Mar;26(3):523−528;doi:10.1007/s11095−008−9767−0;Epub 2008 Nov 11)。
切断配列。切断配列は、化学試薬又は酵素によって作用を受けて、切断配列を含有するポリペプチドの切断を達成することができる別個のアミノ酸配列である。これらの配列の1つ又は複数は、タグ又はプロペプチド配列と、ポリペプチド遺伝子産物のアミノ酸配列との間位に導入されて、遺伝子産物の精製プロセス中にタグ又はプロペプチドが切断されるのを可能にすることができる。切断配列の例として、アミノ配列DP及びGGDPGGG(配列番号20、これは、D(Asp)とP(Pro)との間の結合で、ギ酸による処理によって切断され得る)が挙げられる。或る特定の酸切断可能な配列は、以下で記載される特定のプロペプチド内に存在する(配列番号33〜配列番号35)。更なる例は、TEV(タバコエッチウイルス)プロテアーゼ(切断配列ENLYFQGG(配列番号21))、エンテロキナーゼ(切断配列DDDDKG(配列番号22))、及びトロンビン(切断配列LVPRGS(配列番号23))等のプロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列である。
プロペプチド。本明細書中に記載されるプロペプチドは、ポリペプチド遺伝子産物のアミノ酸配列に対してN末端若しくはC末端のいずれか、又は両方で、ポリペプチド遺伝子産物に結合され、ポリペプチド遺伝子産物のアミノ酸初列に直接、又はプロペプチドと、ポリペプチド遺伝子産物との間に配置されるリンカー若しくはタグ等の他のポリペプチド配列を用いて結合され得る。プロペプチドとして使用され得るポリペプチドの例として、哺乳動物カルボキシペプチダーゼB前駆体タンパク質(以下で更に記載される)及びシグナル配列を有するマルトース結合タンパク質又は「MBP」(UniProtKB/Swiss−Prot:P0AEX9.1、配列番号24)が挙げられ、配列番号24のアミノ酸2〜アミノ酸26を除去して、細胞質中で局在化されたままであるプロペプチドを生成することができる。プロペプチドとして使用されてきた別のポリペプチドは、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)キシラナーゼ10a由来のファミリー9炭水化物結合モジュール又は「CBM9」(配列番号25、UniProtKB/Swiss−Prot:Q60037のアミノ酸700〜アミノ酸868、Notenboom et al.,「Crystal structures of the family 9 carbohydrate−binding module from Thermotoga maritima xylanase 10A in native and ligand−bound forms」,Biochemistry 2001 May 29;40(21):6248−6256)である。
カルボキシペプチダーゼBプロペプチド(CPBpro)。典型的な哺乳動物カルボキシペプチダーゼB前駆体タンパク質は、そのN末端にシグナルペプチドを、続いて、そのC末端に、アルギニン残基を有する95個のアミノ酸のプロペプチドを有し、カルボキシペプチダーゼB活性化ドメインとも称されるこのプロペプチドは、トリプシン加水分解によってカルボキシペプチダーゼB酵素(EC 3.4.17.2)の残部から切断されて、酵素は活性化される(Coll et al.,「Three−dimensional structure of porcine procarboxypeptidase B:a structural basis of its inactivity」,EMBO J 1991 Jan;10(1):1−9)。ヒトカルボキシペプチダーゼB前駆体タンパク質又はCPBproのアミノ酸配列は、配列番号26として提供される。
「CPBpro」及び「CPBproプロペプチド」という用語は、本明細書中に開示される新規変異体を含むカルボキシペプチダーゼBプロペプチドを指すのに本明細書中で使用される。CPBproプロペプチドは、例えばCBPproプロペプチドのC末端アルギニン残基で、目的のポリペプチドの所望のN末端残基に融合される、組換えポリペプチドの産生に使用することができ、CPBpro_ポリペプチドの発現後、CPBproプロペプチドは、トリプシンによって目的のポリペプチドから切断して、所望のN末端を生成することができる。変異体CPBproプロペプチドの例として、配列番号27〜配列番号36が挙げられ、配列番号37のアミノ酸配列を有する更なるプロペプチドが提供される。
可溶化可能な遺伝子産物の形成。或る特定の実施形態では、本明細書中に記載される発現方法を使用した遺伝子産物の発現は、遺伝子産物に対するタグ又は他のポリペプチドの付加を必要とせずに、可溶化可能な遺伝子産物複合体の形成をもたらす。例えば、小容積実験で、本明細書中に記載される発現方法に従った、メトレレプチン(配列番号15)とErv1pスルフィドリルオキシダーゼ(配列番号38、以下に記載)との同時発現は、発現されたメトレレプチン形成性可溶化可能な複合体の大部分(約70%)を生じ、Erv1pと、CPBpro変異体プロペプチド(配列番号27)のメトレレプチン(配列番号15)への付加によって形成される遺伝子産物(配列番号39)との類似した同時発現は、より大部分の遺伝子産物(約84%)形成性可溶化可能な複合体を生じる。可溶化可能な複合体における遺伝子産物(複数可)の発現の最適化に関して、遺伝子産物(複数可)はまず、修飾せずに発現させることができ、産生された可溶化可能な複合体の量を決定することができる。次に、様々なポリペプチド配列(タグ、プロペプチド、任意選択で、組合せで、並びに任意選択で、リンカー及び/又は切断配列との更なる組合せで)の、ポリペプチド遺伝子産物(複数可)への付加の効果を、好ましくは小容積発現実験で評価して、より大部分の所望の遺伝子産物(複数可)が続いて、可溶化可能な複合体として発現されるかどうかを決定することができる。
ジスルフィド結合。本発明の方法によって産生される遺伝子産物は、場合によっては、ジスルフィド結合を形成するポリペプチドである。ポリペプチドによって形成されるジスルフィドの数及び位置は、以下の実施例8の方法等の方法によって決定され得る。ポリペプチド等の遺伝子産物に関するジスルフィドの数は、その遺伝子産物が機能性産物中に存在する場合に、その遺伝子産物によって形成される分子内及び分子間結合の総数である。例えば、ヒトIgG抗体の軽鎖は通常、3個のジスルフィド結合(分子内結合2個及び分子間結合1個)を有し、ヒトIgG抗体の重鎖は、7個のジスルフィド結合(分子内結合4個及び分子間結合3個)を有する。本発明の或る特定の実施形態では、本発明の方法によって産生される遺伝子産物は、少なくとも1個及び12個よりも少ないジスルフィド結合、又は少なくとも2個及び17個よりも少ないジスルフィド結合、又は少なくとも17個及び50個よりも少ないジスルフィド結合、又は少なくとも3個及び10個よりも少ないジスルフィド結合、又は少なくとも3個及び8個よりも少ないジスルフィド結合を形成するポリペプチドであるか、或いは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、及び9個のジスルフィド結合からなる群から選択されるジスルフィド結合を形成するポリペプチドである。
グリコシル化。本発明によって産生される遺伝子産物は、グリコシル化されてもよく、又はグリコシル化されなくてもよい。本発明の一実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドである。グリコシル化されたポリペプチドは、共有結合されたグリコシル基を含むポリペプチドであり、そのポリペプチドの特定の残基上に通常結合された全てのグリコシル基(完全にグリコシル化されたポリペプチド)、部分的にグリコシル化されたポリペプチド、グリコシル化が通常起こらない1つ又は複数の残基でグリコシル化を有するポリペプチド(変化されたグリコシル化)、及び1つ又は複数の指定残基に通常結合されるグリコシル基と構造が異なる少なくとも1つのグリコシル基でグリコシル化されたポリペプチド(修飾されたグリコシル化)が挙げられる。修飾されたグリコシル化の例は、ポリペプチドをフコシル化する能力を欠如している宿主細胞におけるポリペプチドの発現によって、フコシル部分に結合されたグリコシル基においてフコシル部分を欠如しているポリペプチドである、「脱フコシル化」又は「フコース欠乏性」ポリペプチドの産生である。グリコシル化されていないポリペプチドは、共有結合されたグリコシル基を含まないポリペプチドである。グリコシル化されていないポリペプチドは、ポリペプチドの脱グリコシル化、又はアグリコシル化ポリペプチドの産生の結果であり得る。脱グリコシル化ポリペプチドは、グリコシル化されたポリペプチドを酵素的に脱グリコシル化することによって得られ得るのに対して、アグリコシル化ポリペプチドは、原核細胞又は少なくとも1つのグリコシル化酵素の機能が排除若しくは低減されている細胞等の、ポリペプチドをグリコシル化する能力を有さない宿主細胞において、ポリペプチドを発現させることによって産生され得る。特定の実施形態では、発現されたポリペプチドは、アグリコシル化されており、より特定の実施形態では、アグリコシル化ポリペプチドは、E.coli等の原核細胞において発現される。
遺伝子産物の他の修飾。
本発明の方法によって産生される遺伝子産物は、他のタイプの分子に共有結合されてもよい。本発明の範囲を限定せずに、遺伝子産物に共有結合されてもよい分子の例として、ポリペプチド(例えば、受容体、リガンド、サイトカイン、増殖因子、ポリペプチドホルモン、DNA結合性ドメイン、PDZドメイン等のタンパク質相互作用ドメイン、キナーゼドメイン、抗体、及び任意のかかるポリペプチドの断片);水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド及びその類似した化合物、誘導体、又は混合物);及び細胞傷害剤(例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、及び放射性同位体)が挙げられる。
シャペロン。幾つかの実施形態では、所望の遺伝子産物は、所望の遺伝子産物の産生に有益であるシャペロン等の他の遺伝子産物と同時発現される。シャペロンは、他の遺伝子産物の非共有結合的なフォールディング若しくはアンフォールディング、及び/又は構築若しくは分解を助長するタンパク質であるが、構造が、それらの通常の生物学的機能(フォールディング及び/又は構築のプロセスを意図している)を実施している場合、得られた単量体又は多量体遺伝子産物構造では見られないタンパク質である。シャペロンは、発現構築物内で誘導性プロモーター又は構成的プロモーターから発現させることができるか、又は宿主細胞染色体から発現させることができ、好ましくは、宿主細胞におけるシャペロンタンパク質(複数可)の発現は、適正にフォールディングされ、及び/又は所望の産物へ構築される同時発現された遺伝子産物を産生するのに十分高レベルである。E.coli宿主細胞中に存在するシャペロンの例は、フォールディング因子DnaK/DnaJ/GrpE、DsbC/DsbG、GroEL/GroES、IbpA/IbpB、Skp、Tig(誘発因子)、及びFkpAであり、これらは、細胞質又はペリプラズムタンパク質のタンパク質凝集を防ぐのに使用されている。DnaK/DnaJ/GrpE、GroEL/GroES、及びClpBは、タンパク質フォールディングを助長するのに相乗的に機能を果たすことができ、したがって、これらのシャペロンの発現は、組合せで、タンパク質発現に有益であることが示されている(Makino et al.,「Strain engineering for improved expression of recombinant proteins in bacteria」,Microb Cell Fact 2011 May 14;10:32)。原核生物宿主細胞において真核生物タンパク質を発現させると、同じか、又は関連する真核生物種由来のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)等の真核生物シャペロンタンパク質は、本発明の或る特定の実施形態では、所望の遺伝子産物とともに同時発現されるか、又は誘導可能に同時発現される。
宿主細胞において発現され得るシャペロンの1つは、土壌糸状菌類(soil hyphomycete)(軟腐病真菌)であるフミコーラ・イソレンス(Humicola insolens)由来のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼである。フミコーラ・イソレンスPDIのアミノ酸配列は、配列番号40として示され、それは、自然タンパク質のシグナルペプチドを欠如しており、その結果、それは宿主細胞質にとどまる。PDIをコードするヌクレオチド配列は、E.coliにおける発現に関して最適化されており、PDIに関する発現構築物は、配列番号41として示される。配列番号41は、その5’末端にGCTAGC NheI制限部位を、ヌクレオチド7〜12にAGGAGGリボソーム結合部位を、ヌクレオチド21〜1478にPDIコード配列を、及びその3’末端にGTCGAC SalI制限部位を含有する。配列番号41のヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター等のプロモーターのすぐ下流に挿入されるよう設計された。配列番号41におけるNheI及びSalI制限部位を使用して、それを、その全体が参照により本発明に組み込まれる米国特許出願US2015353940A1号に記載されている、pSOL発現ベクター(配列番号42)のベクター多重クローニング部位等のベクター多重クローニング部位へ挿入することができる。様々な種(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(UniProtKB P17967)、ヒト(Homo sapiens)(UniProtKB P07237)、ハツカネズミ(Mus musculus)(UniProtKB P09103)、線虫(Caenorhabditis elegans)(UniProtKB Q17770及びQ17967)、シロイヌナズナ(Arabdopsis thaliana)(UniProtKB O48773、Q9XI01、Q9SRG3、Q9LJU2、Q9MAU6、Q94F09、及びQ9T042)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(UniProtKB Q12730))由来のPDIポリペプチド、及び同様にかかるPDIポリペプチドの修飾形態を含む他のPDIポリペプチドもまた、宿主細胞において発現され得る。本発明の或る特定の実施形態では、本発明の宿主細胞において発現されるPDIポリペプチドは、配列番号40の長さの少なくとも50%(又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)に対して、少なくとも70%、又は80%、又は90%、又は95%のアミノ酸配列同一性を共有し、ここで、アミノ酸配列同一性は、実施例11に従って決定される。
補因子の細胞輸送。機能にとって補因子を要する遺伝子産物を産生するために本発明の発現系を使用する場合、入手可能な前駆体から補因子を合成することが可能であるか、又は補因子を環境から採取することが可能な宿主細胞を使用することが有用である。一般的な補因子として、ATP、補酵素A、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、NAD/NADH、及びヘムが挙げられる。補因子輸送ポリペプチド及び/又は補因子合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞へ導入させることができ、かかるポリペプチドは、本発明の方法によって産生されるべき遺伝子産物とともに、構成的に発現され得るか、又は誘導可能に同時発現され得る。
II.発現構築物。
発現構築物は、目的の1つ又は複数の遺伝子産物の発現用に設計されたポリヌクレオチドである。目的の或る特定の遺伝子産物は、それらが発現される宿主細胞の種とは異なる種に由来する「異種」遺伝子産物であり、及び/又は遺伝子構築物内で利用されるプロモーター(複数可)から自然に発現されない異種遺伝子産物であり、及び/又はかかる遺伝子産物の天然に存在する形態との差を含むように設計されている修飾遺伝子産物である。異種及び/又は修飾遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含むか、又は異なる種の生物に由来したポリヌクレオチドの組合せを含むか、又は天然に存在するポリヌクレオチドとは異なるように修飾されているポリヌクレオチドを含む発現構築物は、天然に存在しない分子である。発現構築物は、宿主細胞染色体へ組み込ませることができるか、又はプラスミド若しくは人工染色体等の、宿主細胞染色体とは無関係に複製するポリヌクレオチド分子として、宿主内に維持され得る。発現構築物の例は、1つ又は複数のポリヌクレオチド配列の、宿主細胞染色体への挿入から得られるポリヌクレオチドであり、ここで、挿入されたポリヌクレオチド配列は、染色体コード配列の発現を変化させる。発現ベクターは、1つ又は複数の遺伝子産物の発現用に具体的に使用されるプラスミド発現構築物である。1つ又は複数の発現構築物は、宿主細胞染色体へ組み込まれ得るか、又はプラスミド若しくは人工染色体等の染色体外ポリヌクレオチド上で維持され得る。本発明の或る特定の実施形態では、発現構築物は、pSOL発現ベクター(配列番号42)である。
発現構築物は、複製起点、選択可能マーカー、構成的又は誘導性プロモーター(以下で更に記載される)等のプロモーター、リボソーム結合部位、及び多重クローニング部位等の或る特定のポリヌクレオチド要素を含み得る。これらのポリヌクレオチド要素の例は、当該技術分野で周知であり、それらの更なる説明は、下記の特許公報及び出願(複数可)に見出すことができ、それらは全て、参照により本明細書に明らかに組み込まれる:US9617335B2号及びWO2014025663A1号、「Inducible Coexpression System」;WO2016205570A1号、「Vectors for Use in an Inducible Coexpression System」;及び国際出願PCT/US2016/067064号、「Cytoplasmic Expression System」。
誘導性プロモーター。以下で更に記載されるように、本発明の発現系の一部として発現構築物に含まれ得る幾つかの異なる誘導性プロモーターが存在する。好ましい誘導性プロモーターは、WO2014025663A1号の表1で規定されるようなプロモーターポリヌクレオチド配列の少なくとも30個(より好ましくは、少なくとも40個、最も好ましくは少なくとも50個)の連続塩基に対して、少なくとも80%ポリヌクレオチド配列同一性(より好ましくは、少なくとも90%同一性、最も好ましくは、少なくとも95%同一性)を共有し、ここで、パーセントポリヌクレオチド配列同一性は、実施例11の方法を使用して決定される。「標準的な」誘導条件(実施例10を参照)下では、好ましい誘導性プロモーターは、De Mey et al.「Promoter knock−in:a novel rational method for the fine tuning of gene」,BMC Biotechnol 2010 Mar 24; 10: 26の定量的PCR方法を使用して決定される場合に、E.coliK−12亜株MG1655の相当する「野生型」誘導性プロモーターの強度の少なくとも75%(より好ましくは、少なくとも100%、最も好ましくは、少なくとも110%)を有する(WO2014025663A1号、実施8Aを参照)。発現構築物内で、誘導性プロモーターは、誘導可能に発現されるべき遺伝子産物に関するコード配列に対して5’に(又は「その上流に」)配置されて、その結果、誘導性プロモーターの存在が、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドのコード鎖に対して5’から3’への方向で、遺伝子産物コード配列の転写を誘導する。発現構築物内の誘導性プロモーターから発現される遺伝子産物は、これらの誘導性プロモーターから自然に発現される遺伝子産物ではなく、むしろ、それらは、異種遺伝子産物であり、誘導性プロモーターから発現される異種遺伝子産物を含む発現構築物は、必然的に自然には見られない人工構築物であるという結果を伴う。
誘導性プロモーター。下記は、遺伝子産物の発現用の発現構築物において、かかる発現構築物を含有する宿主細胞に対して成され得る遺伝子組換えの幾つかと併せて、使用され得る誘導性プロモーターの説明である。これらの誘導性プロモーター及び関連遺伝子の例は、別記しない限り、大腸菌(E.coli)株MG1655(American Type Culture Collection寄託ATCC 700926)、すなわち、E.coliK−12亜株(American Type Culture Collection寄託ATCC 10798)に由来するものである。国際出願PCT/US13/53562号(WO2014025663A1号として公開)の表1は、誘導性プロモーター及び関連遺伝子のこれらの例に関するヌクレオチド配列のE.coliMG1655におけるゲノム位置を列挙しており、WO2014025663A1号公報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。WO2014025663A1号の表1に見られるようなゲノム位置によって言及されるヌクレオチド及び他の遺伝子配列は、参照により本明細書に明らかに組み込まれる。本明細書中に記載されるE.coliプロモーター、遺伝子、及び株に関する更なる情報は、ecoliwiki.net.に位置するオンラインEcoliWikiリソースを含む多くの公的情報源に見出すことができる。
アラビノースプロモーター。(本明細書中で使用する場合、「アラビノース」は、L−アラビノースを意味する。)アラビノース利用に関与する幾つかのE.coliオペロンは、アラビノースによって誘導可能である(araBAD、araC、araE、及びaraFGH)が、「アラビノースプロモーター」及び「araプロモーター」という用語は通常、araBADプロモーターを指定するのに使用される。Para、ParaB、ParaBAD、及びPBAD等の幾つかの更なる用語が、E.coli araBADプロモーターを示すのに使用されている。「araプロモーター」又は上述の代替的用語のいずれかの本明細書中での使用は、E.coli araBADプロモーターを意味する。別の用語「araC−araBADプロモーター」の使用から分かるように、araBADプロモーターは、双方向性プロモーターの一部であるとみなされ、araBADプロモーターは、一方の方向で、araBADオペロンの発現を制御し、araCプロモーターは、他方の方向で、araBADプロモーターに非常に接近して、araBADプロモーターとは逆鎖上で、araCコード配列の発現を制御している。AraCタンパク質は、araBADプロモーターの正及び負の両方の転写制御因子である。アラビノースの非存在下では、AraCタンパク質は、PBADからの転写を抑圧するが、アラビノースの存在下では、アラビノースの結合時にそのコンホメーションを変化させるAraCタンパク質は、PBADからの転写を可能にする正の調節要素となる。araBADオペロンは、L−アラビノースを、中間体L−リブロース及びL−リブロースリン酸塩を通じて、D−キシルロース−5−リン酸塩に変換することによって、L−アラビノースを代謝するタンパク質をコードする。アラビノース誘導性プロモーターからの発現の誘導を最大限にする目的で、L−アラビノースの、L−リブロースへの変換を触媒するAraAの機能を排除又は低減すること、また同様に、任意選択で、AraB及びAraDの少なくとも1つの機能を排除又は低減することが有用である。アラビノースを、他の糖に変換する細胞の能力を排除又は低減することによって、宿主細胞の、細胞におけるアラビノースの有効濃度を減少する能力を排除又は低減することにより、より多くのアラビノースが、アラビノース誘導性プロモーターの誘導に利用可能となる。アラビノースを宿主細胞に移動させるトランスポーターをコードする遺伝子は、低親和性L−アラビノースプロトン共輸送体をコードするaraE、及びABCスーパーファミリー高親和性L−アラビノーストランスポーターのサブユニットをコードするaraFGHオペロンである。L−アラビノースを細胞に輸送し得る他のタンパク質は、それぞれ、177位でアラニンに代わって、システイン又はバリンアミノ酸を有する、LacYラクトースパーミアーゼ:LacY(A177C)及びLacY(A177V)タンパク質の或る特定の突然変異体である(Morgan−Kiss et al.,「Long−term and homogeneous regulation of the Escherichia coli araBAD promoter by use of a lactose transporter of relaxed specificity」,Proc Natl Acad Sci U S A 2002 May 28; 99(11):7373−7377)。アラビノース誘導性プロモーターの相同的誘導を達成するために、アラビノースによる調節に関係なく、アラビノースの、細胞への輸送を行うことが有用である。これは、AraFGHトランスポータータンパク質の活性を排除又は低減すること、及びaraEが構成的プロモーターからのみ転写されるようにaraEの発現を変化させることによって遂行することができる。araEの構成的発現は、自然araE遺伝子の機能を排除又は低減すること、及び構成的プロモーターから発現されるAraEタンパク質に関するコード配列を含む発現構築物を、細胞に導入することによって遂行され得る。或いは、AraFGH機能を欠如している細胞において、宿主細胞の染色体araE遺伝子の発現を制御するプロモーターは、アラビノース誘導性プロモーターから、構成的プロモーターへ変更させることができる。同様の様式で、アラビノース誘導性プロモーターの相同的誘導に対する更なる代替物として、AraE機能を欠如している宿主細胞は、構成的プロモーターから発現される細胞中に存在する任意の機能的AraFGHコード配列を有し得る。別の代替物として、自然araE及びaraFGHプロモーターを、宿主染色体において構成的プロモーターで置き換えることによって、araE遺伝子及びaraFGHオペロンの両方を、構成的プロモーターから発現することが可能である。また、AraE及びAraFGHアラビノーストランスポーターの両方の活性を排除又は低減すること、またその状況で、このタンパク質がアラビノースを輸送することを可能にするLacYラクトースパーミアーゼにおいて突然変異を使用することが可能である。lacY遺伝子の発現は通常、アラビノースによって調節されないため、LacY(A177C)又はLacY(A177V)等のLacY突然変異体の使用は、アラビノース誘導性プロモーターが、アラビノースの存在によって誘導される場合に「有るか無しか」の誘導現象を引き起こさない。LacY(A177C)タンパク質は、アラビノースを細胞に輸送する際により有効であるようであるので、LacY(A177C)タンパク質をコードするポリヌクレオチドの使用は、LacY(A177V)タンパク質をコードするポリヌクレオチドの使用にとって好ましい。
プロピオネートプロモーター。「プロピオネートプロモーター」又は「prpプロモーター」は、E.coli prpBCDEオペロンに関するプロモーターであり、PprpBとも呼ばれる。araプロモーターと同様に、prpプロモーターは、双方向性プロモーターの一部であり、一方の方向で、prpBCDEオペロンの発現を制御し、prpRプロモーターは、他方の方向で、prpRコード配列の発現を制御している。PrpRタンパク質は、prpプロモーターの転写調節因子であり、PrpRタンパク質が2−メチルクエン酸(「2−MC」)を結合すると、prpプロモーターからの転写を活性化させる。プロピオネート(プロパノエートとも呼ばれる)は、プロピオン酸(又は「プロパン酸」)のイオンCHCHCOOであり、この種の分子の或る特定の特性:水から塩析される場合、油状層を生じるという特性及び石鹸様カリウム塩を有するという特性を共有する一般式H(CHCOOHを有する「脂肪」酸の最小である。市販のプロピオネートは概して、プロピオン酸ナトリウム(CHCHCOONa)等のプロピオン酸の一価陽イオン塩として、又はプロピオン酸カルシウム(Ca(CHCHCOO))等の二価陽イオン塩として販売されている。プロピオネートは、膜透過性であり、PrpE(プロピオニル−CoAシンテターゼ)によるプロピオネートの、プロピオニル−CoAへの変換、続くPrpC(2メチルクエン酸シンターゼ)による、プロピオニル−CoAの、2MCへの変換によって、2MCへ代謝される。prpBCDEオペロンによってコードされる他のタンパク質であるPrpD(2−メチルクエン酸デヒドラターゼ)及びPrpB(2−メチルイソクエン酸リアーゼ)は、2MCの、ピルビン酸塩及びコハク酸塩等のより小さな産物への更なる代謝に関与している。したがって、細胞増殖培地に添加したプロピオネートによる、プロピオネート誘導性プロモーターの誘導を最大限にするためには、プロピオネートを2MCに変換するためのPrpC及びPrpE活性を有するが、同様に2MCが代謝されるのを防ぐための排除又は低減されたPrpD活性、及び同様に任意選択で排除又は低減されたPrpB活性を有する宿主細胞を有することが望ましい。2MC生合成に関与するタンパク質をコードする別のオペロンは、sbm−ygfDGHオペロンとも呼ばれる、scpA−argK−scpBCオペロンである。これらの遺伝子は、コハク酸塩の、プロピオニル−CoAへの変換に必要とされるタンパク質をコードして、続いてそれらは、PrpCによって2MCに変換され得る。これらのタンパク質の機能の排除又は低減は、2−MC誘導物質の産生に関する平行経路を除去し、したがって、プロピオネート誘導性プロモーターの発現のバックグラウンドレベルを低減し、外因的に供給されるプロピオネートに対する、プロピオネート誘導性プロモーターの感度を高め得る。株JSBを創出するためのE.coli BL21(DE3)に導入されたsbm−ygfD−ygfG−ygfH−ygfIの欠失(Lee and Keasling,「A propionate−inducible expression system for enteric bacteria」,Appl Environ Microbiol 2005 Nov; 71(11):6856−6862)は、外因的に供給される誘導物質の非存在下でバックグラウンド発現を低減させるのに役立ったが、この欠失はまた、株JSBにおけるprpプロモーターからの全体的な発現を低減させた。しかしながら、欠失sbm−ygfD−ygfG−ygfH−ygfIはまた、未知の機能を有する推定上のLysR−ファミリー転写調節因子をコードするygfIに影響を及ぼすようであることに留意されるべきである。遺伝子sbm−ygfDGHは、1つのオペロンとして転写され、ygfIは、逆鎖から転写される。ygfH及びygfIコード配列の3’末端は、数個の塩基対で重複しており、したがって、sbm−ygfDGHオペロンの全てを取り出す欠失は、同様に、ygfIコード機能も取り出すようである。YgfG(ScpB、メチルマロニル−CoAデカルボキシラーゼとも呼ばれる)等のsbm−ygfDGH遺伝子産物のサブセットの機能を排除若しくは低減すること、又はygfIの発現に影響を及ぼさないようにygfH(又はscpC)遺伝子の十分な3’末端を残しながら、sbm−ygfDGH(又はscpA−argK−scpBC)オペロンの大部分を欠失させることは、誘導される発現の最大レベルを低減させずに、プロピオネート誘導性プロモーターからバックグラウンド発現を低減させるのに十分であり得る。
ラムノースプロモーター。(本明細書中で使用する場合、「ラムノース」は、L−ラムノースを意味する。)「ラムノースプロモーター」又は「rhaプロモーター」、又はPrhaSRは、E.coli rhaSRオペロンに関するプロモーターである。ara及びprpプロモーターと同様に、rhaプロモーターは、双方向性プロモーターの一部であり、一方の方向で、rhaSRオペロンの発現を制御し、rhaBADプロモーターは、他方の方向で、rhaBADオペロンの発現を制御している。しかしながら、rhaプロモーターは、発現の調節に関与する2つの転写調節因子を有する:RhaR及びRhaS。RhaRタンパク質は、ラムノースの存在下でrhaSRオペロンの発現を活性化するのに対して、RhaSタンパク質は、それぞれ、L−ラムノース異化オペロン及び輸送オペロンであるrhaBAD及びrhaTの発現を活性化する(Wickstrum et al.,「The AraC/XylS family activator RhaS negatively autoregulates rhaSR expression by preventing cyclic AMP receptor protein activation」,J Bacteriol 2010 Jan;192(1):225−232)。RhaSタンパク質はまた、rhaSRオペロンの発現も活性化することができるが、事実上、RhaSは、より高いレベルにまで、サイクリックAMP受容体タンパク質(CRP)の、RhaRともに発現を同時活性化する能力を妨害することによって、この発現を負に自己調節する。rhaBADオペロンは、L−ラムノースをL−ラムヌロースへ変換するラムノース異化タンパク質RhaA(L−ラムノースイソメラーゼ);L−ラムヌロースをリン酸化して、L−ラムヌロース−1−Pを形成するRhaB(ラムヌロキナーゼ);及びL−ラムヌロース−1−PをL−ラクトアルデヒド及びDHAP(ジヒドロキシアセトンリン酸)に変換するRhaD(ラムヌロース−1−リン酸アドラーゼ)をコードする。ラムノース誘導性プロモーターからの発現の誘導に利用可能な細胞におけるラムノースの量を最大限にするために、RhaAの機能を、若しくは任意選択で、RhaA、並びにRhaB及びRhaDの少なくとも1つの機能を排除又は低減することによって、触媒により分解されるラムノースの量を低減させることが望ましい。E.coli細胞はまた、rmlBDACX(又はrfbBDACX)オペロンによってコードされるタンパク質RmlA、RmlB、RmlC、及びRmlD(それぞれ、RfbA、RfbB、RfbC、及びRfbDとも呼ばれる)の活性により、アルファ−D−グルコース−1−PからL−ラムノースを合成することができる。ラムノース誘導性プロモーターからバックグラウンド発現を低減し、外因的に供給されるラムノースによるラムノース誘導性プロモーターの誘導の感度を高めるために、RmlA、RmlB、RmlC、及びRmlDタンパク質の1つ又は複数の機能を排除又は低減することが有用であり得る。L−ラムノースは、RhaT、ラムノースパーミアーゼ又はL−ラムノース:プロトン共輸送体によって細胞に輸送される。上述するように、RhaTの発現は、転写調節因子RhaSによって活性化される。ラムノースによる誘導(RhaSの発現を誘導する)に関係なく、RhaTの発現を行うためには、細胞における全ての機能的なRhaTコード配列が、構成的プロモーターから発現されるように、宿主細胞が変化され得る。更に、RhaSに関するコード配列は、欠失又は不活性化させることができ、その結果、機能的RhaSは産生されない。細胞におけるRhaSの機能を排除又は低減することによって、rhaSRプロモーターからの発現のレベルは、RhaSによる負の自己調節の非存在に起因して増加し、ラムノース触媒オペロンrhaBADの発現レベルは減少されて、ラムノースの、rhaプロモーターからの発現を誘導する能力が更に高まる。
キシロースプロモーター。(本明細書中で使用する場合、「キシロース」は、D−キシロースを意味する)「キシロースプロモーター」又は「xylプロモーター」、又はPxylAは、E.coli xylABオペロンに関するプロモーターを意味する。キシロースプロモーター領域は、xylABオペロン及びxylFGHRオペロンがともに、E.coli染色体上の反対方向で、隣接するキシロース誘導性プロモーターから発現されるという点で、他の誘導性プロモーターに対する組織が類似している(Song and Park,「Organization and regulation of the D−xylose operons in Escherichia coli K−12: XylR acts as a transcriptional activator」,J Bacteriol.1997 Nov;179(22):7025−7032)。PxylA及びPxylFプロモーターの両方の転写調節因子は、キシロースの存在下でこれらのプロモーターの発現を活性化するXylRである。xylR遺伝子は、xylFGHRオペロンの一部として、又はキシロースによって誘導可能でなく、xylHタンパク質コード配列とxylRタンパク質コード配列との間に位置するそれ自身の弱いプロモーターから発現される。D−キシロースは、D−キシロースをD−キシルロースに変換するXylA(D−キシロースイソメラーゼ)によって異化されて、続いて、D−キシルロースが、XylB(キシルロキナーゼ)によってリン酸化されて、D−キシルロース−5−Pを形成する。キシロース誘導性プロモーターからの発現の誘導に利用可能な細胞におけるキシロースの量を最大限にするために、少なくともXylAの機能を、若しくは任意選択で、XylA及びXylBの両方の機能を排除又は低減することによって、触媒により分解されるキシロースの量を低減させることが望ましい。xylFGHRオペロンは、ABCスーパーファミリー高親和性D−キシローストランスポーターのサブユニットであるXylF、XylG、及びXylHをコードする。E.coli低親和性キシローススプロトン共輸送体をコードするxylE遺伝子は、独立したオペロンを表し、その発現もまた、キシロースによって誘導可能である。キシロースによる誘導に関係なく、キシローストランスポーターの発現を行うためには、全ての機能的なキシローストランスポーターが、構成的プロモーターから発現されるように、宿主細胞が変化され得る。例えば、xylFGHRオペロンは、xylFGHコード配列が欠失されるように変化させることができ、キシロース誘導性PxylFプロモーターから発現される唯一の活性タンパク質としてXylRを残し、xylEコード配列は、その自然プロモーターではなく、構成的プロモーターから発現される。別の例として、xylRコード配列は、発現構築物においてPxylA又はPxylFプロモーターから発現されるのに対して、xylFGHRオペロンはいずれかが欠失されて、xylEが、構成的に発現されるか、或いはxylFGHオペロン(発現構築物中に存在している間はずっと、xylRコード配列を欠如している)が、構成的プロモーターから発現され、xylEコード配列は、欠失又は変化されて、xylEコード配列は、活性タンパク質を産生しない。
ラクトースプロモーター。「ラクトースプロモーター」という用語は、lacZp1とも呼ばれるプロモーターであるlacZYAオペロンに関するラクトース誘導性プロモーターを指し、このラクトースプロモーターは、E.coli K−12亜株MG1655(NCBI参照配列NC_000913.2,11−JAN−2012)のゲノム配列において、およそ365603〜365568(マイナス鎖、およそ365603〜365598にRNAポリメラーゼ結合(「−35」)部位、365579〜365573にプリブノーボックス(「−10」)、及び365567に転写開始部位を有する)に位置する。幾つかの実施形態では、本発明の発現系は、lacZYAプロモーター等のラクトース誘導性プロモーターを含み得る。他の実施形態では、本発明の発現系は、ラクトース誘導性プロモーターではない1つ又は複数の誘導性プロモーターを含む。
アルカリホスファターゼプロモーター。「アルカリホスファターゼプロモーター」及び「phoAプロモーター」という用語は、リン酸飢餓の条件下で誘導されるプロモーターであるphoApsiFオペロンに関するプロモーターを指す。phoAプロモーター領域は、E.coli K−12亜株MG1655(NCBI参照配列NC_000913.3,16−DEC−2014)のゲノム配列において、およそ401647〜401746(プラス鎖、401695〜401701にプリブノーボックス(「−10」)(Kikuchi et al.,「The nucleotide sequence of the promoter and the amino−terminal region of alkaline phosphatase structural gene (phoA) of Escherichia coli」,Nucleic Acids Res 1981 Nov 11;9(21):5671−5678)を有する)に位置する。phoAプロモーターに関する転写活性化因子は、E.coliにおいてセンサータンパク質PhoRとともに、二成分シグナル伝達系を形成する転写調節因子であるphoBである。PhoB及びPhoRは、E.coli K−12亜株MG1655(NCBI参照配列NC_000913.3, 16−DEC−2014)のゲノム配列において、およそ417050〜419300(プラス鎖、417,142〜417,831にPhoBコード配列、及び417,889〜419,184にPhoRを有する)に位置する、phoBRオペロンから転写される。phoAプロモーターは、それが誘導物質の添加によってではなく、物質−細胞内リン酸−の欠如によって誘導されるという点で、上述の誘導性プロモーターとは異なる。この理由で、phoAプロモーターは概して、発酵の後期段階等の、宿主がリン酸に関して枯渇している段階で産生されるべき遺伝子産物の転写を誘導する。幾つかの実施形態では、本発明の発現系は、phoAプロモーターを含み得る。他の実施形態では、本発明の発現系は、phoAプロモーターではない1つ又は複数の誘導性プロモーターを含む。
III.宿主細胞。
目的の遺伝子産物をコードする発現構築物は、宿主細胞において発現されて、目的の遺伝子産物を産生する。宿主細胞は、かかる発現構築物を含み、またそれらを発現することが可能な任意の細胞であり得る。特に適切な宿主細胞は、発酵培養において高い細胞密度で増殖可能であり、高度に制御された誘導性遺伝子発現により、酸化している宿主細胞の細胞質において遺伝子産物を産生することができる。これらの品質を備えた宿主細胞は、下記特性の幾つか又は全てを組み合わせることによって産生される。(1)宿主細胞は、細胞質において酸化ポリペプチドの発現又は機能を高めることにより、及び/又は細胞質において還元ポリペプチドの発現又は機能を減少させることによって、酸化している細胞質を有するように遺伝子組換えされる。かかる遺伝子変化の具体例を本明細書中に提供する。任意選択で、宿主細胞はまた、所望の遺伝子産物(複数可)の産生に役立つシャペロン及び/又は補因子を発現するように、及び/又はポリペプチド遺伝子産物をグリコシル化するように遺伝子組換えされ得る。(2)宿主細胞は、目的の1つ又は複数の遺伝子の発現に関して設計された1つ又は複数の発現構築物を含み、或る特定の実施形態では、少なくとも1つの発現構築物は、誘導性プロモーター及び誘導性プロモーターから発現されるべき遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む。(3)宿主細胞は、発現構築物(複数可)からの遺伝子産物発現の或る特定の態様を改善するよう設計された更なる遺伝子組換えを含有する。特定の実施形態では、宿主細胞は、(A)少なくとも1つの誘導性プロモーターの誘導物質に関するトランスポータータンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の遺伝子機能の変化を有し、別の例として、ここで、トランスポータータンパク質をコードする遺伝子は、araE、araF、araG、araH、rhaT、xylF、xylG、及びxylHからなる群から選択されるか、又は特にaraEであり、或いは遺伝子機能の変化は、より詳細には、構成的プロモーターからのaraEの発現であり、及び/又は(B)少なくとも1つの誘導性プロモーターの誘導物質を代謝するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の遺伝子機能のレベルの低減を有し、更なる例として、ここで、少なくとも1つの上記誘導性プロモーターの誘導物質を代謝するタンパク質をコードする遺伝子は、araA、araB、araD、prpB、prpD、rhaA、rhaB、rhaD、xylA、及びxylBからなる群から選択され、及び/又は(C)少なくとも1つの誘導性プロモーターの誘導物質の生合成に関与するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の遺伝子機能のレベルの低減を有し、この遺伝子は、更なる実施形態では、scpA/sbm、argK/ygfD、scpB/ygfG、scpC/ygfH、rmlA、rmlB、rmlC、及びrmlDからなる群から選択される。
多量体産物を含む、遺伝子産物の効率的且つ費用効果の高い産生を可能にする宿主細胞の例が提供される。宿主細胞として、培養液中の単離細胞の他に、多細胞生物の一部である細胞、又は異なる生物若しくは生物系内で増殖させた細胞を挙げることができる。本発明の或る特定の実施形態では、宿主細胞は、酵母(サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)等)若しくは細菌等の微生物細胞であるか、又はグラム陽性菌若しくはグラム陰性菌であるか、E.coliであるか、又はE.coliB株であるか、又はE.coli(B株)EB0001細胞(E.coliASE(DGH)細胞とも呼ばれる)であるか、又はE.coli(B株)EB0002細胞である。酸化している細胞質を有するE.coli宿主細胞、具体的にはE.coliB株SHuffle(登録商標)Express(NEBカタログNo.C3028H)及びSHuffle(登録商標)T7 Express(NEBカタログNo.C3029H)及びE.coliK株SHuffle(登録商標)T7(NEBカタログNo.C3026H)を用いた増殖実験において、酸化している細胞質を有するこれらのE.coliB株は、最も密接に相当するE.coli K株よりもはるかに高い細胞密度に増殖することが可能であると、本発明者らは決定した。
原核生物宿主細胞。本発明の幾つかの実施形態では、遺伝子産物の発現用に設計された発現構築物は、原核生物宿主細胞等の宿主細胞において提供される。原核生物宿主細胞として、古細菌(例えば、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus))、グラム陽性菌(例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、ブレビバチルス・コシネンシス(Brevibacillus choshinensis)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブリネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、及びストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans))、又はアルファプロテオバクテリアを含むグラム陰性菌(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、及びシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti))、ベータプロテオバクテリア(アリカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus))、及びガンマプロテオバクテリア(アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、大腸菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida))を挙げることができる。好ましい宿主細胞として、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エシャリキア属(Escherichia)(E.coliを含む)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)(サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)を含む)、セラチア属(Serratia)(セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)を含む)、及シゲラ属(Shigella)等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)のガンマプロテオバクテリアが挙げられる。
真核生物宿主細胞。酵母(カンジダ・シャハタエ(Candida shehatae)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、他のクルイベロマイセス属(Kluyveromyces)種、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)としても既知のビール酵母(Saccharomyces pastorianus)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、デッケラ属(Dekkera)/ブレタノマイセス属(Brettanomyces)種、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica));他の真菌類(アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、アオカビ属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesia));昆虫細胞系統(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)シュナイダー2細胞及びツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)Sf9細胞);及び不死化細胞系統を含む哺乳動物細胞系統(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト胎児由来腎臓(HEK,293、又はHEK−293)細胞、及びヒト肝細胞癌細胞(Hep G2))等の真核細胞を含む、多くの更なるタイプの宿主細胞が、本発明の発現系で使用され得る。上記宿主細胞は、American Type Culture Collectionから入手可能である。
宿主細胞遺伝子機能に対する変化。誘導性発現構築物を含む宿主細胞の遺伝子機能に、或る特定の変化を成して、誘導物質による宿主細胞集団の効率的且つ均質な誘導を促進することができる。好ましくは、発現構築物、宿主細胞遺伝子型、及び誘導条件の組合せにより、WO2014025663A1号の実施例8Bに記載されるように、Khlebnikov et al.「Regulatable arabinose−inducible gene expression system with consistent control in all cells of a culture」,J Bacteriol 2000 Dec;182(24): 7029−7034の方法によって測定されるように、誘導されたプロモーターそれぞれから遺伝子産物を発現する培養液における、少なくとも75%(より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは95%)の細胞をもたらす。E.coli以外の宿主細胞に関して、これらの変化には、E.coli遺伝子に構造上類似している遺伝子、又はE.coli遺伝子の機能に類似した宿主細胞内の機能を実行する遺伝子の機能が関与し得る。宿主細胞遺伝子機能に対する変化は、遺伝子タンパク質コード配列を、その全体で欠失すること、又は遺伝子の十分大きな部分を欠失すること、配列を遺伝子に挿入すること、又はそうでなければ、機能的な遺伝子産物のレベルの低減が、その遺伝子から成されるように遺伝子配列を変化させることによって、遺伝子機能を排除又は低減することを含む。宿主細胞遺伝子機能に対する変化はまた、例えば、遺伝子のより高レベルの転写を誘導する、より強力な遺伝子プロモーターを創出するように自然プロモーターを変化させること、又はミスセンス突然変異を、より高活性の遺伝子産物を生じるタンパク質コード配列に導入することによって、遺伝子機能を高めることを包含する。宿主細胞遺伝子機能に対する変化は、任意の方法で遺伝子機能を変更させること、例えば、構成的に活性化されるプロモーターを創出するように自然誘導性プロモーターを変化させることを含む。誘導性プロモーター、及び/又はシャペロンタンパク質の発現の変更に関して本明細書中に記載されるような、誘導物質の輸送及び代謝に関する遺伝子機能における変化の他に、宿主細胞の還元−酸化環境を変化させることも可能である。
宿主細胞還元−酸化環境。E.coli等の細菌細胞において、ジスルフィド結合を必要とするタンパク質は、ジスルフィド結合形成及び異性化が、DsbABCD及びDsbGを含むDsb系によって触媒されるペリプラズムに通常排出される。通常は全てペリプラズムに輸送される、システインオキシダーゼDsbA、ジスルフィドイソメラーゼDsbC、又はDsbタンパク質の組合せの発現の増加は、ジスルフィド結合を必要とする異種タンパク質の発現において利用されている(Makino et al.,「Strain engineering for improved expression of recombinant proteins in bacteria」,Microb Cell Fact 2011 May 14;10: 32)。シグナルペプチドを欠如している、したがって、ペリプラズムへ輸送されないDsbA及び/又はDsbC(「cDsbA」又は「cDsbC」)の細胞質バージョン等のこれらのDsbタンパク質の細胞質形態を発現することも可能である。cDsbA及び/又はcDsbC等の細胞質Dsbタンパク質は、宿主細胞の細胞質を、より酸化している状態に、したがって、細胞質において産生される異種タンパク質におけるジスルフィド結合の形成をより促すようにさせるのに有用である。宿主細胞の細胞質はまた、チオレドキシン及びグルタレドキシン/グルタチオン酵素系を直接変更させることによって、あまり還元状態でなく、したがって、より酸化している状態にさせることができる:グルタチオンレダクターゼ(gor)又はグルタチオンシンテターゼ(gshB)を欠損している突然変異株は、チオレドキシンレダクターゼ(trxB)とともに、細胞を酸化させている。これらの株は、リボヌクレオチドを還元することが不可能であり、したがって、ジチオトレイトール(DTT)等の外因性反応物の非存在下で増殖することができない。ペルオキシレドキシンAhpCをコードする遺伝子ahpCにおける、サプレッサー突然変異(例えば、ahpC及びahpCΔ、Lobstein et al.,「SHuffle,a novel Escherichia coli protein expression strain capable of correctly folding disulfide bonded proteins in its cytoplasm」,Microb Cell Fact 2012 May 8;11:56;doi:10.1186/1475−2859−11−56)は、それを、還元型グルタチオンを生成するジスルフィドレダクターゼに変換して、酵素リボヌクレオチドレダクターゼ上への電子のチャネリングを可能にし、またgor及びtrxBを欠損しているか、又はgshB及びtrxBを欠損している細胞が、DTTの非存在下で増殖するのを可能にする。AhpCの異なる種類の突然変異形態は、ガンマグルタミルシステインシンテターゼ(gshA)の活性を欠損しており、且つtrxBを欠損している株を、DTTの非存在下で増殖させることができる:これらとして、AhpC V164G、AhpC S71F、AhpC E173/S71F、AhpC E171Ter、及びAhpC dup162−169(Faulkner et al.,「Functional plasticity of a peroxidase allows evolution of diverse disulfide−reducing pathways」,Proc Natl Acad Sci U S A 2008 May 6;105(18):6735−6740,Epub 2008 May 2)。酸化している細胞質を有するかかる株では、露出されたタンパク質システインが、チオレドキシンによって、それらの生理学的機能を逆転させて触媒されるプロセスで容易に酸化されるようになり、ジスルフィド結合の形成をもたらす。酸化している細胞質の宿主細胞における酸化的ストレス効果を低減するのに有益であり得る他のタンパク質は、ペルオキシドを水及びOへと不均化(disproportionate)を起こさせる、E.coli katGによってコードされるHPI(ヒドロペルオキシダーゼI)及びE.colikatEによってコードされるHPII(ヒドロペルオキシダーゼII)カタラーゼ−ペルオキシダーゼである(Farr and Kogoma,「Oxidative stress responses in Escherichia coli and Salmonella typhimurium」,Microbiol Rev. 1991 Dec;55(4):561−585;Review)。誘導された同時発現により、又は構成的発現のレベルの上昇により、宿主細胞においてKatG及び/又はKatEタンパク質のレベルを増加させることは、本発明の幾つかの実施形態の態様である。
宿主細胞に対して成され得る別の変化は、スルフヒドリルオキシダーゼErv1pを、宿主細胞の細胞質における酵母ミトコンドリアの内膜腔からは発現させることであり、これは、gor又はtrxBにおける突然変異の非存在下でさえ、E.coliの細胞質における真核生物起源のジスルフィド結合されたタンパク質の様々な複合体の産生を増加させることがわかっている(Nguyen et al.,「Pre−expression of a sulfhydryl oxidase significantly increases the yields of eukaryotic disulfide bond containing proteins expressed in the cytoplasm of E. coli」Microb Cell Fact 2011 Jan 7;10:1)。
発現構築物を含む宿主細胞はまた、好ましくは、cDsbA及び/又はcDsbC及び/又はErv1pを発現し、trxB遺伝子機能を欠損しており、またgor、gshB、及び/又はgshAの遺伝子機能も欠損しており、任意選択で、katG及び/又はkatE遺伝子のレベルを増加させ、任意選択で、AhpCの適切な突然変異形態を発現し、その結果、宿主細胞は、DTTの非存在下で増殖され得る。
ポリペプチド遺伝子産物のグリコシル化。宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化する、それらの能力において変化を有し得る。例えば、真核生物宿主細胞は、グリコシルトランスフェラーゼ及び/又はオリゴサッカリルトランスフェラーゼにおいて、排除又は低減された遺伝子機能を有することができ、糖タンパク質を形成するためのポリペプチドの正常な真核細胞グリコシル化を損なう。通常はポリペプチドをグリコシル化しないE.coli等の原核宿主細胞は、グリコシル化機能を提供する一連の真核生物又は原核生物遺伝子を発現するよう変化され得る(DeLisa et al.,「Glycosylated protein expression in prokaryotes」,WO2009089154A2号,2009 Jul 16)。
変化した遺伝子機能を有する利用可能な宿主細胞株。本発明の発現系及び方法において使用されるべき宿主細胞の好ましい株を創出するために、所望の遺伝子変化をすでに含む株から開始することは有用であり、これらの例を表2に提供する。
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宿主細胞遺伝子機能を変化させる方法。遺伝子機能を排除、低減、又は変更するために宿主細胞遺伝子に対して変化を成す、当該技術分野で既知の多くの方法が存在する。E.coli及び他の原核生物等の宿主細胞における遺伝子の標的破壊を行う方法が記載されており(Muyrers et al.,「Rapid modification of bacterial artificial chromosomes by ET−recombination」,Nucleic Acids Res 1999 Mar 15;27(6):1555−1557;Datsenko and Wanner,「One−step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K−12 using PCR products」,Proc Natl Acad Sci U S A 2000 Jun 6;97(12):6640−6645)、類似したRed/ET組換え方法を使用するためのキットが市販されている(例えば、Gene Bridges社、ドイツ、ハイデルベルのthe Quick & Easy E. coli Gene Deletion Kit)。本発明の一実施形態では、宿主細胞の1つ又は複数の遺伝子の機能は、配列のゲノム位置に対する参照によって本明細書に組み込まれるE.coli K−12亜株MG1655コード配列の1つ等の、破壊されるべき遺伝子のコード配列内のヌクレオチド配列を同定することによって、より具体的には、そのコード配列内の50個のヌクレオチドそれぞれの2つの隣接する一続きを選択することによって、排除又は低減される。続いて、The Quick & Easy E. coli Gene Deletion Kitを製造業者の指示書に従って使用して、コード配列の選択した隣接する一続き間に、選択可能マーカーを含有するポリヌクレオチド構築物を挿入して、遺伝子の正常な機能を排除又は低減する。また、Red/ET組換え方法を使用して、プロモーター配列を、異なるプロモーター、例えば、構成的プロモーター、又は或る特定レベルの転写を促進すると予測される人工プロモーターの配列で置き換えることができる(De Mey et al.,「Promoter knock−in:a novel rational method for the fine tuning of genes」,BMC Biotechnol 2010 Mar 24;10:26)。宿主細胞遺伝子の機能はまた、RNAサイレンシング方法によって、排除又は低減され得る(Man et al.,「Artificial trans−encoded small non−coding RNAs specifically silence the selected gene expression in bacteria」,Nucleic Acids Res 2011 Apr;39(8):e50,Epub 2011 Feb 3)。更に、宿主細胞遺伝子機能を変化させる既知の突然変異は、伝統的な遺伝的方法により宿主細胞へ導入され得る。
IV.宿主細胞を増殖させる方法。
小容積増殖。本発明の方法を実行するのに使用される宿主細胞は、増殖又は誘導条件を試験する目的で、又は多重の異なる遺伝子産物の産生のため、などで小容積で増殖させることができる。実施されるべき実験の性質により、1mL〜最大1リットル、又は5mL〜500mL、又は任意の利便性の高い容積等の、宿主細胞が増殖されるべき容積が決定される。或る特定の実施形態では、増殖培地を攪拌して、したがって、宿主細胞に酸素を供給するために、宿主細胞が増殖される容器は、繰り返し移動される。宿主細胞は、適切な栄養素及び抗生物質耐性を提供する発現構築物の宿主細胞による保持に関して選択するのに必要とされる任意の抗生物質を含有する培地中で増殖される。宿主細胞の小容積増殖の例は、実施例1に提供される。細胞中に存在する誘導性発現構築物の発現を誘導するのに使用されるのに適した、誘導物質の量を決定するために、実施例10に記載されるような実験は、例えばマルチウェルプレートにおいて小容積で増殖される宿主細胞を用いて、好適に実施することができる。
発酵。組換えタンパク質の産生に関与する発酵プロセスは、下記のカテゴリーの1つに収まる操作モードを使用する:(1)不連続(バッチプロセス)操作、(2)連続操作、及び(3)半連続(フェドバッチ)操作。バッチプロセスは、プロセスの開始時に滅菌培養培地(バッチ培地)に微生物を接種することを特徴とし、特定の反応期間培養される。培養中、細胞濃度、基質濃度(炭素源、栄養素の塩、ビタミン等)、及び産物濃度は変化する。良好な混合により、反応混合物の組成又は温度の著しい局所的な差は、確実に見られない。反応は、非定常性であり、増殖制限基質(一般に、炭素源)が消費されるまで、細胞は増殖される。
連続操作は、新鮮な培養培地(フィード培地)が発酵槽に連続的に添加されること、また消費した培地及び細胞が、同じ速度で発酵槽から連続的に引き出されることを特徴とする。連続操作では、増殖速度は、培地添加の速度によって決定され、増殖収量は、増殖制限基質(即ち、炭素源)の濃度によって決定される。反応変数及び制御パラメーターは全て、時間内で一定のままであり、したがって、時間一定状態は、発酵槽において確立されており、続いて一定の生産性及び出力において確立される。
半連続操作は、バッチ操作及び連続操作の組合せとしてみみなされ得る。発酵は、バッチプロセスとして着手され、増殖制限基質が消費された場合に、グルコース及び無機質を含有する連続フィード培地が、指定された様式で添加される(フェドバッチ)。換言すると、この操作は、バッチ培地及びフィード培地の両方を用いて、細胞増殖及び所望のタンパク質の効率的な産生を達成する。細胞は、培養期間中、添加もされず、また取り去られもせず、したがって、微生物が関連する限りは、発酵槽が、バッチ式で操作する。本発明は、上述するプロセスを含む、様々なプロセスにおいて利用され得る一方で、特定の利用が、フェドバッチプロセスと併用される。
上記プロセスそれぞれにおいて、細胞増殖及び産物蓄積は、代謝産物形成と、培地pH、光学密度、色彩及び滴定可能な酸性度等の幾つか他の変数との間の相関を活用することによって、間接的にモニタリングすることができる。例えば、光学密度は、不溶性細胞粒子の蓄積の表示を提供し、ディスプレイデバイス又はレコーダーに接続されたマイクロODユニットを使用して稼働させた状態で、或いはサンプリングによってオフラインでモニタリングすることができる。600ナノメートルでの光学密度の読取り(OD600)を、乾燥細胞重量を決定する手段として使用する。
高細胞密度発酵は概して、最低でも細胞乾燥重量30g/リットルを上回る収量(60を上回るOD600)をもたらし、或る特定の実施形態では、細胞乾燥重量40g/リットルを上回る収量(80を上回るOD600)をもたらプロセスとして記載される。高細胞密度発酵プロセスは全て、「フェドバッチ」プロセスで発酵槽へ徐々に計量される濃縮栄養素培地を用いる。供給中の発酵槽内容物の希釈を最低限に抑えるために、濃縮栄養素フィード培地は、高細胞密度プロセスに必要とされる。フェドバッチプロセスは、オペレーターが炭素源供給を制御するのを可能にするので必要とされ、これは、細胞が、高細胞密度を生成するのに十分高い炭素源濃度に曝露される場合に、非常に多くの阻害性副産物である酢酸塩を産生し、その増殖が停止するので、重要である(Majewski and Domach,「Simple constrained−optimization view of acetate overflow in E. coli」,Biotechnol Bioeng 1990 Mar 25;35(7):732−738)。
酢酸及びその脱プロトン化されたイオンである酢酸塩はともに、バイオリアクターにおける細菌増殖及び組換えタンパク質産生の主な阻害性副産物の1つを表す。pH7にて、酢酸塩は、酢酸の最も一般的な形態である。炭素エネルギー供給源の量が、細菌のプロセシング能力を非常に超過すると、任意の過剰な炭素エネルギー供給源は、酢酸に変換され得る。研究により、トリカルボン酸回路及び/又は電子伝達系の飽和が、酢酸蓄積の最も可能性の高い原因であることがわかっている。増殖培地の選択は、酢酸阻害のレベルに影響を及ぼす可能性があり、限定培地中で増殖させた細胞は、複合培地中で増殖させた細胞によりも、酢酸により影響を及ぼされ得る。グルコースの、グリセロールによる置き換えはまた、産生される酢酸の量を非常に減少させ得る。グリセロールは、細胞への輸送のその速度が、グルコースの速度よりもはるかに遅いので、グルコースよりも少ない酢酸を産生すると考えられている。しかしながら、グリセロールは、グルコースよりも高価であり、細菌をよりゆっくりと増殖させ得る。増殖温度の低減の使用もまた、炭素源の取込みの速度及び増殖速度を減少することができ、したがって、酢酸の産生を減少させる。細菌は、過剰な炭素エネルギー供給源の存在下で、又は高速増殖中に酢酸を産生するだけでなく、嫌気性条件下でも酢酸を産生する。E.coli等の細菌が、非常に高速で増殖されると、細菌は、嫌気性増殖条件を引き起こし得るバイオリアクター系の酸素送達能力を超過し得る。このことが起こるのを防ぐために、よりゆっくりとした一定の増殖速度が、栄養素制限により維持され得る。酢酸蓄積を低減する他の方法として、酢酸産生を防止するための遺伝子組換え、酢酸利用遺伝子の付加、及び酢酸が低減された株の選択が挙げられる。E.coli BL21(DE3)は、そのグリオキシル酸シャント回路において、酢酸を使用するその能力のため、より低レベルの酢酸を産生することがわかっている株の1つである。
様々なより大規模なフェドバッチ発酵槽が、組換えタンパク質の産生に利用可能である。より大きな発酵槽は、ヘッドスペース用に十分な余地を残している少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000リットル〜100,000リットルの容量(即ち、作業容積)を有する。これらの発酵槽は、撹拌機の羽根車又は酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー供給源)を分配させるための他の適切な手段を使用する。小規模発酵は概して、容積の容量がおよそ100リットル以下、幾つかの特定の実施形態では、およそ10リットル以下の発酵槽における発酵を指す。
組換えタンパク質を産生するのに使用される発酵プロセスに関する標準的な反応条件は概して、E.coli等の微生物宿主細胞に関しては、約5.0〜8.0のpHの維持及び20℃〜50℃の範囲の培養温度の維持を伴う。宿主系としてE.coliを利用する本発明の一実施形態では、発酵は、約7.0の最適pH及び約30℃の最適な培養温度で実施される。
これらの発酵プロセスにおける標準的な栄養素培地構成成分としては概して、エネルギー、炭素、窒素、リン、マグネシウム、並びに微量の鉄及びカルシウムが挙げられる。更に、培地は、増殖因子(例えば、ビタミン及びアミノ酸)、無機塩、及び産物形成に必須の任意の他の前駆物質を含有し得る。培地は、グリセロリン酸等の輸送可能な有機リン酸、例えば、アルファ−グリセロリン酸及び/又はベータ−グリセロリン酸を、またより具体的な例として、グリセロール−2−リン酸及び/又はグリセロール−3−リン酸を含有し得る。培養中の宿主細胞の元素組成を使用して、細胞増殖を支持するのに要される構成成分それぞれの比率を算出することができる。構成成分濃度は、プロセスが、低細胞密度でプロセスであるか、又は高細胞密度プロセスであるかに応じて多様である。例えば、低細胞密度バッチ発酵プロセスにおけるグルコース濃度は、1g/L〜5g/Lの範囲であるのに対して、高細胞密度バッチプロセスは、45g/L〜75g/Lの範囲のグルコース濃度を使用する。更に、増殖培地は、適度な濃度(例えば、0.1mM〜5mMの範囲、又は0.25mM、0.5mM、1mM、1.5mM、若しくは2mM)のベタイン、ジメチスルホニオイソプロピオネート、及び/又は塩素等の保護性オスモライトを含有し得る。
1つ又は複数の誘導物質は、目的の遺伝子産物(複数可)の発現を誘導するように増殖培地へ導入され得る。誘導は、指数増殖期中に、例えば、指数増殖期の終わりに向かうが、培養が最大細胞密度に達する前に、又は発酵中のより初期で、若しくはより後期で開始され得る。目的の遺伝子産物(複数可)を、リン酸塩等の栄養素の枯渇によって誘導可能な1つ又は複数のプロモーターから発現する場合、栄養素が、外因性誘導物質を添加せずに、増殖培地から十分に枯渇されていた場合に、誘導が起きる。
宿主細胞の指数増殖中、代謝速度は、酸素及び炭素/エネルギー供給源の利用可能性に正比例し、したがって、利用可能な酸素又は炭素/エネルギー供給源、又はその両方のレベルを低減すると、代謝速度は低減する。攪拌速度又は背圧等の発酵槽操作パラメーターの操作、又はO圧を低減させることにより、利用可能な酸素レベルが調節され、宿主細胞代謝速度が低減され得る。炭素/エネルギー供給源(複数可)の濃度若しくは送達速度、又はその両方の低減は、類似した効果を有する。更に、発現系の性質に応じて、発現の誘導は、宿主細胞代謝速度の減少を引き起こし得る。最終的に、最大細胞密度に達すると、増殖速度は、停止するか、又は劇的に減少する。宿主細胞代謝速度の低減は、タンパク質フォールディング及び構築のプロセスを含む、目的の遺伝子産物(複数可)のより制御された発現をもたらし得る。宿主細胞代謝速度は、比増殖速度又は瞬間増殖速度のいずれかの細胞増殖速度を測定することによって(OD600等の光学密度(OD)を測定することによって、及び/又は任意選択で、ODをバイオマスに換算することによって)評価され得る。アッセイした時点それぞれでのおおよそのバイオマス(細胞乾燥重量)を算出する:おおよそのバイオマス(g)=(OD600÷2)×容積(L)。望ましい増殖速度は、本発明の或る特定の実施形態では、0.01〜0.7の範囲であるか、又は0.05〜0.3の範囲であるか、又は0.1〜0.2の範囲であるか、又はおよそ0.15(0.15+又は−10%)であるか、又は0.15である。
発酵設備。下記は、宿主細胞を増殖させるのに使用され得る設備の例である;発酵系の多くの他の構造が市販されている。宿主細胞は、2X Rushtonインペラー及びBioFlo/CelliGen 115発酵槽/バイオリアクターコントローラを備えた1L容器サイズのNew Brunswick BioFlo/CelliGen 115ウォータージャケット付発酵槽(Eppendorf North America社、ニューヨーク州、ホーポージ)において増殖させることができ、温度、pH及び溶解酸素(DO)がモニタリングされる。また、それぞれが2X Rushtonインペラー、DASbox排気型冷却器、並びにDASbox供給及びモニタリングモジュール(これには、温度センサー、pH/酸化還元センサー、及び溶解酸素センサーが含まれる)を備えた4個の60ml〜250mlのDASbox発酵容器を含む4倍設計可能なDSAGIP系(Eppendorf North America社、ニューヨーク州、ホーポージ)において宿主細胞を増殖させることも可能である。また、適切な発酵設備として、ステンレス鋼容器中に容量30L及び最大作業容積20L、空気のみでスパージャされる2個のRushtonインペラー、並びにpH、DO、排気O、排気CO、温度、及び圧力を含む全ての関連パラメーターの追跡及び制御を可能にするBioSCADAソフトウェアを実行する制御システムを備えたNLF 22 30L lab発酵槽(Bioengineering社、マサチューセッツ州、サマービル)も挙げられる。
V.可溶化及び精製方法。
本明細書中に記載する方法によって発現される遺伝子産物は、様々な精製方法を使用して精製することができる。遺伝子産物が、本明細書中に記載されるように、特に実施例1及び実施例2に記載される特定の実施形態で見られるように、可溶化可能な複合体を産生するように発現される場合、非常に好適な精製方法を使用して、更なるリフォールディングステップを必要とせずに、適切にフォールディングされた活性な遺伝子産物を効率的に産生することができる。実施例3は、可溶性画分及び不溶性画分を分離するための溶解後の遠心分離の必要性なく、また還元剤を使用せずに、ジスルフィド結合を形成する遺伝子産物を含む、可溶化可能な複合体として発現される遺伝子産物を精製する、更なる「直接的な可溶化」方法について記載している。これらの方法で可溶化可能な遺伝子酸産物複合体を精製する方法を図1に図で概略しており、以下でより詳細に記載している。
遠心分離による宿主細胞の収集。発現構築物を含む宿主細胞は増殖され、目的の遺伝子産物の発現は、本明細書中で更に記載されるように誘導されて、宿主細胞内での、目的の遺伝子産物の可溶化可能な複合体の産生をもたらす。増殖及び誘導期間が完了した後、宿主細胞は、例えば、4℃で4,000×gにて10分間の遠心分離によって収集される。宿主細胞は、この時点で凍結させて、後の精製用に保管することができる。
宿主細胞の溶解。幾つかの代替的な方法の1つを使用して、無傷の宿主細胞の得られたペレットを溶解させる。宿主細胞のペレットは、0mM〜300mMのNaCl若しくは2.5mMのL−システイン、pH9.5を補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はTris緩衝生理食塩水(TBS)等の非変性溶解緩衝液中に再懸濁される。溶解緩衝液中に再懸濁した後、宿主細胞は、酵素的又は化学的溶解、機械的溶解、及び/又は凍結融解法を含む方法によって溶解され得る。酵素的溶解に関して、溶解は、組換えリゾチーム、ベンゾナーゼ(benzonase)、及びオクチルグルコシドを、溶解緩衝液に添加することによって達成され得る。機械的溶解に関して、再懸濁させた宿主細胞を、最大60mlの容積に関してはMicrofluidicsモデルLV1マイクロフルダイザー、若しくは60mLを超える容積に関してはMicrofluidicsモデルM−110Y1マイクロフルダイザー(Microfluidics International社、マサチューセッツ州、ウェストウッド)等のマイクロフルダイザーに、又はPandaPLUS 2000卓上型ホモジナイザー若しくはGEO Niro(GEA North America社、メリーランド州、コロンビア)に1回又は複数回通す。凍結融解法に関しては、細胞懸濁液を−80℃で凍結させて、25℃〜37℃の温度で融解させる。
溶解後、溶解した細胞混合物を任意選択で遠心分離して、可溶化可能な遺伝子産物複合体をペレット化する。この遠心分離ステップの速度及び時間は、3,300〜20,000×g及び30分〜60分で多様であり得る。より高速を使用すると、再懸濁させるのがより困難である可溶化可能な遺伝子産物複合体のペレットを生じ得る。この遠心分離ステップにおいて使用される速度が小さいほど、可溶化可能な遺伝子産物複合体と、上清との分離を完了させるのに必要とされる遠心分離の持続期間はより長い。塩濃度及び/又は細胞溶解物のpHを変更して、可溶化可能な遺伝子産物複合体を、細胞溶解物中の他の構成成分と分離するのに必要な遠心分離又は他の条件を変化させることが可能である。
このように目的の遺伝子産物を収集する重要な利点の1つは、潜在的に混入している宿主細胞タンパク質及び他の分子の大部分が、上清中に残存し、ペレット化された可溶化遺伝子産物複合体から除去されることであり、したがって、可溶化遺伝子産物複合体は、目的の遺伝子産物が非常に富化された調製物である。或いは、可溶化可能な複合体のペレット化後に残存する上清が、十分な遺伝子産物を保持する場合、この上清中の遺伝子産物は、直接的な可溶化方法に関して記載されるように可溶化させることができ、及び/又は更に精製され得る。ペレット化された材料の分析により、相当数の細胞が溶解されずに生き残り、可溶化可能な遺伝子産物複合体をともに遠心沈降されて(spun−down)いることが示される場合、無傷細胞を、可溶化可能な遺伝子産物複合体と分離させる遠心分離手順における「クッション」として、高濃度スクロース溶液等の濃い、及び/又は粘性の溶液を使用することが可能である。機械的溶解が使用される場合、溶解された細胞混合物は、マイクロフルダイザーに多重回(例えば、4回又は5回)通すことができる。以下で記載されるように、上記遠心分離手順が、直接的に可溶化方法では省略される場合、細胞溶解物を試薬と混合して、可溶化可能な遺伝子産物複合体の可溶化に関する条件を作り出す。
遺伝子産物は、可溶化溶液中に配置することによって可溶化可能な複合体から放出され、可溶化された遺伝子産物を生じる。遠心分離から生じたペレット中の、又は細胞溶解物中のいずれかの遺伝子産物は、下記の通りに可溶化される。可溶化溶液は好ましくは、1つ又は複数のn−ブタノール、エタノール、塩化グアニジウム、塩酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2−プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、又は尿素等の1つ又は複数のカオトロピック剤を含有する。例示的な可溶化溶液は、任意選択で2.5mM L−システインを有するpH9.5のPBS若しくはTRIS中の7M〜8Mの尿素、又はpH7.5でのPBS中の6Mのグアニジン塩酸塩を含有することができ、有効な可溶化実験は、6.5〜11.0の範囲のpH値で、可溶化緩衝液を使用してきた。可溶化に使用されるべき代替的な緩衝液組成を決定するための実験は、実施例5に記載されている。ペレットは、再懸濁に先立って、任意選択で洗浄されてもよい。可溶化緩衝液の、ペレットへの添加後、ペレットを手で再懸濁するよりも、ピペットチップを使用して、例えばプレートボルテキサーを用いて少なくとも10分間、ペレットを含有するチューブを機械的に攪拌することは、より効率的である。遺伝子産物の可逆的化学修飾、例えば、遊離リジン残基及び第1級アミノ基のシトラコニル化は、遺伝子産物の溶解度を変化させることができる。
遠心分離による、可溶化された遺伝子産物の任意選択の浄化。図1に示されるように、可溶化された遺伝子産物の溶液は、任意選択で、例えば、16℃で、7,000×gにて1時間の遠心分離によって浄化され得る。可溶化された遺伝子産物を含有する上清は、遠心分離後に保持される。浄化手順は、以下に記載されるように、可溶化された遺伝子産物を、可溶化溶液よりも濃度が低い溶液へ配置させる前及び/又は後に実施され得る。
可溶化された遺伝子産物の、可溶化溶液よりも濃度が低い溶液への配置。ペプチドマッピングによって分析されるべきタンパク質遺伝子産物の試料に関して、7M〜8M尿素又は6Mグアニジン塩酸塩が、多数のプロテアーゼの切断効率を阻害するため、可溶化された遺伝子産物は通常、透析、希釈、又はダイアフィルトレーション等の方法を使用して、2倍〜10倍低減させた濃度の変性剤を有する溶液中に配置させる。例えば、任意選択で2.5mM L−システインを有する、PBS又はTRIS、pH6.5〜9.5中の7M〜8M尿素中での可溶化後、遺伝子産物を含有する試料を、任意選択で2.5mM L−システインを有する、PBS又はTRIS、pH6.5〜9.5中の2M〜4M尿素中に配置させて、例えば16℃で振盪しながら、10時間〜120時間インキュベートさせることができる。
より高濃度の遺伝子産物を有する溶液の任意選択の形成。保管、更なる精製、又は特性決定等の目的で、可溶化された遺伝子産物の溶液を再構成させて、より高濃度の遺伝子産物を有する溶液を生じることができる。これは、以下に記載するように、溶液をクロマトグラフィーカラムに流すことと、所望の緩衝液に溶出させることとによって、又は以下に記載するようにスピン脱塩若しくはダイアフィルトレーションによって、又は他の既知の方法によって達成され得る。別の代替法は、遺伝子産物を沈殿させるための、硫酸アンモニウム沈殿等の沈殿方法の使用であり、遺伝子産物は、任意選択で、所望の濃度で所望の緩衝液中にペレットを再懸濁させる前に洗浄され得る。
切断配列を有する遺伝子産物は、任意選択で、化学的処理又は酵素的処理によって切断され得る。例えば、トリプシン等の酵素によって切断される配列、及び/又は上述の、また実施例2の「DP」(Asp−Pro)化学的切断配列等の配列を含む遺伝子産物は、使用又は更なる精製に先立って、適切な酵素的又は化学的処理によって切断され得る。
可溶化された遺伝子産物は、任意選択で、更に精製され得る。例えば、6×Hisタグを含む遺伝子産物は、他の分子を流しながら、目的の6×Hisでタグ付けした遺伝子産物を特異的に保持するニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)カラムの使用等の固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によって精製され得る。IMACは、ヒスチジン残基と、二価金属イオン、最も一般的にはNi2+との間の相互作用を利用し、Cu2+、Co2+、Fe2+、及びZn2+を含む他の金属イオンもまた、His残基に対して親和性を有することがわかっている。金属イオンは通常、イミノ二酢酸(IDA)、より一般的に使用されるニトリロ三酢酸(NTA)を含む各種金属−キレーター系によりマトリクスに固定化されている。ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)、Niセファロース、及び銅−カルボキシメチルアスパラギン酸(CO−CMA)等の多種多様なマトリクスが市販されている。カラムは、50mM Tris、3M尿素、0.5M NaCl、25mMイミダゾール、pH8.0等の緩衝液で平衡化され得る。6×Hisでタグ付けした遺伝子産物の結合後、低濃度のイミダゾール(0mM、又は10mM〜50mM)を含有する緩衝液、又は結合緩衝液のpHよりも高いか、若しくは低いpHを有する緩衝液を用いた洗浄ステップを含み、試料の負荷中にカラムに弱く結合される非特異的なタンパク質を除去することができる。例えば、50mM Tris、100mM NaCl、pH10の洗浄緩衝液を使用することができる。6×Hisでタグ付けした遺伝子産物は、少なくとも100mMイミダゾール、又は250mM〜500mMイミダゾール、又は500mMイミダゾールの濃度でイミダゾールを含有する緩衝液を使用して、マトリックスから溶出され得る。また、緩衝液pHを下げることによって、及び/又は溶出緩衝液中にEDTA等のキレート剤(50mM〜200mM、又は100mMの濃度で)を含むことによって、目的の遺伝子産物を溶出することが可能である。例えば、50mM Tris、100mM NaCl、100mMイミダゾール、pH10の溶出緩衝液を使用することができる。ポリヒスチジンタグを含む遺伝子産物に関する精製方法は、Bornhorst and Falke,「Purification of proteins using polyhistidine affinity tags」,Methods Enzymol 2000;326:245−254に更に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。Ni−NTA Superflow(QIAgen社、メリーランド州、ジャーマンタウン)又はHisTrap HP Niセファロースカラム(GE Healthcare社、ペンシルベニア州、ピッツバーグ)を使用した、可溶化可能な複合体からの6×Hisでタグ付けされたCPBproプロインスリンタンパク質のIMACによる精製において、この方法は、プロインスリン遺伝子産物の、90%を上回る純度への精製を可能にした。
6×Hisタグを欠如している試料に関して、又はかかるタグの使用が必要ではない手順に関して、DEAE樹脂の使用等の陽イオン若しくは陰イオン交換クロマトグラフ、及び/又は逆相若しくは高速液体クロマトグラフィー(PRLC又はHPLC)を用いて、目的の遺伝子産物を、他の混入物と、又は化学的若しくは酵素的処理の望ましくない産物(複数可)と更に分離することができる。
化学的又は酵素的手順は、任意選択で、カラム等の固体基板によって保持されている遺伝子産物に対して実施することができる:例えば、実施例3Cにおいて以下に記載されるような、プロインスリンの、成熟インスリンへのトランスバージョンとも呼ばれる、分取又は分析目的でのプロインスリン遺伝子産物のトリプシン切断。
また、IMAC等のクロマトグラフィー手段を使用して、可溶化された複合体を、複合体を可溶化するのに使用される緩衝液以外の緩衝液に、例えば、PBS pH7.5中の250mM〜最大500mMイミダゾールに溶出させることができ、続いて、実施例2Dに記載されるように、スピン脱塩を行って、溶出緩衝液を、より好ましい緩衝液に交換する。塩等の望ましくない緩衝液構成成分を除去する方法として、透析、ダイアフィルトレーション(例えば、遠心濃縮器又はタンジェンシャルフロー濾過を使用して)、並びに例えば、ポリアクリルアミドビーズ(Bio−Rad社、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)、セファデックス樹脂(GE Healthcare社、ペンシルベニア州、ピッツバーグ)、及び/又はサイズ排除樹脂(Zeba(商標)Spin Desalting Columns、ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)等の他のクロマトグラフィー樹脂を使用したゲル濾過が挙げられる。
可溶化された遺伝子産物は、化学的に及び/又は構造的に特性決定され得る。ジスルフィド結合を含有するタンパク質遺伝子産物に関して、本発明の方法によって産生されるタンパク質の適正なフォールディングは、正確に形成されたジスルフィド結合の存在から推測することができる。ジスルフィド結合の同定及び特性決定は、タンパク質の化学的又は酵素的処理を使用して、ペプチド断片を産生するペプチドマッピング方法を使用して達成され得る。これらの断片の分離及び同定は、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)分析によって遂行され、ペプチドマッピング及びLC−MS方法は、以下の実施例8に更に記載される。ペプチドマッピング及びLC−MS分析はまた、点突然変異及び翻訳後修飾(PTM)等のタンパク質一次構造の差を同定することができる。
酸化されたジスルフィド結合の数及び存在は、無処置(intact)のタンパク質試料に関して検証され得る。タンパク質遺伝子産物は、ジチオトレイトール(DTT)等の還元剤、及び/又はヨードアセトアミド(IAA)等のスルフヒドリル反応性試薬で処理され得る。還元された試料及び/又はアルキル化された試料のLC−MS分析は、ジスルフィド結合還元1つにつき2Daの質量増加及び各遊離チオールのアルキル化1つにつき57Daの質量増加をもたらす。タンパク質遺伝子産物は、ジスルフィドの正確な数の形成のみに関してではなく、正確な架橋配置又は「ジスルフィド構造」に関しても特性決定され得る。この手順は、タンパク質分解、得られたペプチドの、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離、及びHPLCピークによって表されるペプチドの質量分析(MS)の分析からなる。タンパク質分解性のペプチド産物を生成するために、タンパク質遺伝子産物は、臭化シアン等の化学的作用物質、及び/又はトリプシン、ペプシン、リジルエンドペプチダーゼ(Lys−C)、グルタミルエンドペプチダーゼ(Glu−C)、及びペプチジル−Aspメタロエンドペプチダーゼ(Asp−N)等の酵素的作用物質により断片化され得る。タンパク質遺伝子産物プロインスリンに関して、Glu−C及びトリプシンを使用して、逐次タンパク質切断反応を実施することができ、ここで、プロテアーゼの添加の順序は交換することができる(即ち、Glu−C、続いて、トリプシン、又はトリプシン、続いてGlu−C)。プロテアーゼ消化反応は、温度範囲25〜37℃で4〜16時間実行させることができ、酵素に対する基質の比は、プロテアーゼ1マイクログラムにつきプロインスリン12〜200マイクログラムの範囲である。タンパク質分解効率及び特異性は、ProteaseMax(商標)(Promega社、ウィスコンシン州、マディソン)及びRapiGest SF(Waters社、マサチューセッツ州、ミルフォード)等の市販の界面活性剤、及び/又は10%〜20%アセトニトリル等の低濃度の有機溶媒の添加により改善され得る。
実施例2Cにおいて更に記載されるように、また図5に示されるように、LC−MS分析により、可溶化後に更なるリフォールディング又は精製ステップなしで、可溶化されたタンパク質遺伝子産物のおよそ93%が、適正に形成されたジスルフィド結合を有することが実証された。可溶化された遺伝子産物の特性決定に使用され得る他の方法として、ゲル電気泳動、活性アッセイ、及び分析用逆相による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分離又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)が挙げられる。
実施例1
リスプロプロインスリンの産生におけるCPBpro変異プロペプチドの使用
A.CPBpro_リスプロプロインスリンに関する発現構築物の調製
これらの実験では、或る特定のCPBpro変異体を、リスプロプロインスリンポリペプチドの小規模発現におけるプロペプチドとして使用した。表3に示されるCPBproプロインスリンポリペプチドをコードし、且つE.coliにおける発現に関して最適化されたポリヌクレオチドを含む発現構築物は、ATUM社(カリフォルニア州、ニューアーク)によって合成された。表3の第1の欄は、各完全CPBproプロインスリンポリペプチドアミノ酸配列に関するタンパク質番号(PN)及び配列番号を提供する。RBS配列から終結コドンに至るまでの提示されるCPBproプロインスリンポリペプチドそれぞれをコードするポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、及び配列番号54を有する。表3の第2の欄〜第5の欄は、各CPBproプロインスリンポリペプチドの各部分のアミノ酸配列:N末端CPBproプロペプチド配列、続いて下記のNからCへの順序での、リスプロインスリンB鎖(表1に示されるような)、C−ペプチド、及びリスプロインスリンA鎖(表1に示されるような)を示す。
Figure 2022502039
CPBproプロインスリンポリペプチドをそれぞれコードするポリヌクレオチドは、pSOL発現ベクター(配列番号42)におけるaraBADプロモーターの下流に位置させた。また、これらの発現構築物はそれぞれ、pSOL発現ベクター内のprpBCDEプロモーターの下流にタンパク質ジスルフィドイソメラーゼに関するコード配列(PDI、配列番号41)を含有した。
B.CPBpro_リスプロプロインスリンの宿主細胞の形質転換及び発現
pSOL:CPBpro−リスプロ/PDI発現構築物は、下記の通り、EB0001細胞に形質転換された;EB0001細胞の遺伝子型は、表2に示される。化学的にコンピテントな(CaCl処理した)EB0001細胞を、氷上で10分間解凍した。DNA(各発現構築物DNAストックから1マイクロリットル)を、冷滅菌エッペンドルフチューブに添加した。EB0001細胞(100マイクロリットル)を、DNAの各チューブに添加して、混合物を氷上で30分間インキュベートした。チューブに、42℃で20秒間、熱ショックを与えて、氷上で5分間静置させた。形質転換した細胞は、SOC増殖培地(NEW England Biolabs社カタログ番号B9020S)900マイクロリットル中で、37℃で1時間、275RPMで振盪しながら回復させた。回復期間後、細胞を、3.8k×gで2分間ペレット化して、上清由来の残存している回復培地約100マイクロリットル容積中に再懸濁させた後、50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有する寒天プレート上に蒔いた。形質転換して蒔いた細胞を、37℃で18時間増殖させた。各形質転換に関して、3つのコロニーをプレートから採取して、50マイクログラム/mLのカナマイシンを有するLB培地中で、30℃にて、275RPMで振盪しながら一晩、定常期(2.0を超えるOD600)に達するまで培養した。一晩の培養液750マイクロリットルに、40%グリセロール750マイクロリットルを添加することによって、グリセロールストックを作製した。グリセロールストックは、−80℃で保管した。
CPBpro_リスプロプロインスリンの発現用の宿主細胞培養は、グリセロールストックを穿刺することと、0.5Lのバッフルなしのフラスコ中で50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有するLB培地0.1Lを接種することとによって開始された。細胞を30℃で一晩、275RPMで振盪しながら、OD600が2に達するまで増殖させた。宿主細胞培養液を、50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有するLB培地中に、OD600が0.2になるように希釈して、0.5Lのバッフル付きフラスコ中で総容積0.1Lにて、30℃にて、275RPMで振盪しながら、OD600が0.6〜0.8に達するまで増殖させた。この時点で、適切な容積をペレット化して(3800×g、10分)、その結果、50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有するM9最小培地中の再懸濁により、OD600 0.7〜0.75が得られた。
M9最小培地。容積1.2L中で、オートクレーブする:
リン酸ナトリウム、二塩基性、七水和物 15.36g
リン酸カリウム、一塩基性 3.6g
塩化ナトリウム 0.6g
塩化アンモニウム 1.2g
カザミノ酸 2.4g
KOHでpHを7.2に調節して、121℃で45分間、オートクレーブして、室温に冷却させる;これにより、不完全M9最小培地が創出される。培地を完成するために、不完全培地それぞれ10mLに関して、下記の容積の濾過滅菌した塩:1M MgSO4 20マイクロリットル、1M CaCl2 1マイクロリットル、5mg/mLのFeSO4 1マイクロリットルを添加する。
培養液を、24ウェルのディープウェルプレートに移行した。下記の誘導条件それぞれに関して、宿主細胞培養液の試料3mLを、各ウェルに添加した:15マイクロモルのアラビノースを有する各発現構築物に関しては6つのウェル、及び45マイクロモルのアラビノースを有する各構築物に関しては6つのウェル。宿主細胞を、27℃又は30℃で6時間、275RPMで振盪しながら誘導させた。宿主細胞の光学密度を、誘導期間後に測定して、OD600は、全てのウェルにおいて1.0〜1.2であった。各発現構築物に関する各誘導条件用の反復試料(3×1mL、2×5mLのペレット)を、3800×gで7分間、室温での遠心分離によって収集した。
PN2.5、PN2.7、及びPN2.9発現構築物の誘導の成功が、クマシーブルー染色を用いたSDS−PAGEを使用して確認された。各発現構築物に関する各誘導条件用の5mLペレットを、氷上で10分間解凍した。宿主細胞を、GLB−OG溶解緩衝液、pH7.4(1%オクチルグルコシド、1Xプロテアーゼ阻害剤、培養液1mL当たり2Uベンゾナーゼ(EMD#70746)及び培養液1mL当たり2.25kU rLysozyme(EMD#71110)を有する50mM Tris pH7.4、200mM NaCl)中に収集時の培養濃度よりも6倍濃度で溶解させた。溶解は、氷上で10分間インキュベートすることによって進行させた。溶解後、試料を2つのプールに分けて、そのうちの一方に、総溶解物調製物を入れ、他方には、可溶性溶解物調製物を入れた。総溶解物調製物に関して、溶解後、50mM Tris pH7.4、200mM NaCl中の8M尿素を、各試料に1:1の比で添加して、室温で20分間インキュベートした後、ゲル上に試料を流すよう準備した。可溶性溶解物調製物に関しては、試料を、20k×gで30分間、4℃で遠心分離し、上清(可溶性画分)を取り出して、50mM Tris pH7.4、200mM NaCl中の8M尿素に、1:1の比で添加して、室温で20分間インキュベートした後、ゲル上に試料を流すよう準備した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を、SDS−MES緩衝液中の還元性12%Bis−Trisゲル上の試料で実施し、ゲルをクマシーブルー染色で染色した。総溶解物調製物を用いた場合のレーンではPN2.5(配列番号43)、PN2.7(配列番号47)、及びPN2.9(配列番号51)試料のみに関して、予想サイズの相当なバンドが見られた:これらの試料中のCPBproポリペプチドは全て、N末端メチオニン残基の直後に6×His配列を有する。しかしながら、PN2.5、PN2.7、及びPN2.9に関するバンドは、可溶性溶解物調製物では観察されず、相当する発現構築物から産生されたタンパク質の相当量が、不溶性(且つ可溶化可能な)形態で産生されることを示した。PN2.6、PN2.8、及びPN2.10発現に関する発現は、いかなる調製物においても観察されず、また追跡実験でも、PN2.6発現構築物からの発現は検出されなかった。PN2.6、PN2.8、及びPN2.10をコードする発現構築物からの発現の非存在の原因が確定されていないが、これらの発現構築物は、PN2.5、PN2.7、及びPN2.9をコードする発現構築物におけるものとは異なる翻訳開始部位周辺に共通のヌクレオチド配列を共有しており、PN2.6、PN2.8、及びPN2.10発現構築物から転写されるメッセージが、効率的に翻訳されない可能性がある。
C.CPBpro_リスプロプロインスリンの可溶化及び特性決定
2M〜6M尿素による可溶化。PN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリン(配列番号43)の可溶化に関する条件を決定するために、実施例1.Bで産生したPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンを含有する宿主細胞の5mLペレットを、氷上で10分間解凍した。宿主細胞を、GLB−OG溶解緩衝液pH7.4中に、収集時の培養濃度よりも2倍濃度で、氷上で10分間溶解させた。続いて、溶解物を12個の試料に分けて、下記の通りに処理した;総溶解物試料を除く下記試料は全て、20k×gで、4℃で30分間、遠心分離した:
総溶解物: スピンなし、可溶化添加剤なし
処理なし: 可溶化添加剤なし
6M尿素: GLB中の8M尿素の添加
4M尿素: GLB中の5.3M尿素の添加
2M尿素: GLB中の2.66M尿素の添加
1M尿素: GLB中の1.33M尿素の添加
0.5M尿素: GLB中の0.66M尿素の添加
4%Triton−X100: GLB中の5%Triton−X100の添加
2%Triton−X100: GLB中の2.5%Triton−X100の添加
1%Triton−X100: GLB中の1.25%Triton−X100の添加
0.5%Triton−X100: GLB中の0.625%Triton−X100の添加
0.25%Triton−X100:GLB中の0.3125%Triton−X100の添加
各試料中に存在するPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの量は、WES機器(ProteinSimple社、カリフォルニア州、サンノゼ)を使用して、製造業者のプロトコールに倣って、また一般に実施例6に記載されるように、自動キャピラリー電気泳動「ウェスタンブロット」によって決定した。還元性条件下での分析用の調製物において、上記に示すように総溶解物、処理なし、及び可溶化された試料を、DTTを添加した(48mM)0.1×WES緩衝液(ProteinSimple社)に1:300で希釈して、試料を最終濃度0.0033Xにした。PN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンは、5、15、30、60、120、240、及び480秒の曝露で(5秒の曝露のみを定量化に使用する)、マウス抗リスプロ一次抗体及びHRPコンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体を使用して、WES機器でのキャピラリー電気泳動によって検出された。Triton−Xのみの可溶化処理は概して、この実験では成功せず、総溶解物中で検出されるPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの量によって示されるように、試料中に存在する総PN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンのほんのおよそ10%又はそれ未満を溶解したに過ぎなかった。少なくとも2Mの濃度での尿素による可溶化は、より成功した:可溶化されたPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの量は、尿素濃度を増加させるとともに増加し、6M尿素は、試料中に存在するPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの約70%を可溶化させた。
可溶化可能なCPBpro_リスプロプロインスリン複合体のサイズの特性決定。可溶化可能なPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリン複合体を含有する宿主細胞を、下記の通りに溶解させた。宿主細胞溶解によって生成されるタンパク質の総量を表す対照「グアニジン溶解」試料を創出するために、実施例1.Bで産生されたPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンを含有する宿主細胞の1mLペレットを、氷上で10分間解凍して、6MグアニジンHCl緩衝液、pH8(6MグアニジンHCl、100mM NaPO4、10mM Tris塩基、10mMイミダゾール、5M NaOHでpH8に調節)500マイクロリットル中に再懸濁した。宿主細胞を、−80℃で1時間凍結させることによって溶解させた後、室温で、30分間又は完全に解凍するまで解凍させた。また、上述するように、宿主細胞をGLB−OG溶解緩衝液中に溶解して、溶解物を、900×gで、4℃にて15分間遠心分離して、ペレット画分(「P1」)及び上清(「S1」)画分を創出した。S1上清画分の一部を保持して、残りを7000×gで、4℃にて30分間遠心分離して、ペレット画分(「P2」)及び上清(「S2」)画分を創出した。S2上清画分の一部を保持して、残りを20K×gで、4℃にて30分間遠心分離して、ペレット画分(「P3」)及び上清(「S3」)画分を創出した。P1ペレットを、6MグアニジンHCl緩衝液、pH8中に可溶化した。グアニジン溶解、可溶化されたP1、S1、S2、及びS3試料を、WES機器でのキャピラリー電気泳動によって、上述するような還元性条件下で分析した。900×gのスピン後、S1可溶性画分中に検出されたPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの量は、グアニジン溶解試料中に検出された「総溶解」量の約42%であった。可溶化されたP1ペレットから検出されたPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの量は、予想の58%ではなく、グアニジン溶解試料中の「総溶解」量の約35%であり、GLB−OG溶解、遠心分離、及び可溶化手順の幾つかの段階で、潜在的に回収可能なPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの損失が起きることが示唆された。より高速の7000×g及び20K×gのスピン後、ほんの少量(約7%)のPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンが、S2及びS3可溶性画分で検出され、タンパク質の大部分が、P2ペレット及びP3ペレットになった。これらの結果は、N2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの相当部分、おそらく宿主細胞中に存在していたそのおよそ半分が、溶解細胞由来の細胞片をペレット化することができるが可溶性タンパク質をペレット化することができない比較的低い遠心分離速度である900×g(2017年3月29日のCube Biotech,「Screening detergents for optimal solubilization and purification of membrane proteins」,2013,retrieved from www.cube−biotech.com/files/protocols/Screening_Detergents.pdfを参照)で遠心沈降させるのに十分大きな複合体中に存在することと整合する。900×gのスピン中に可溶性のままである宿主細胞中に存在するPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンのうち、その大部分が7000×gの中間的な遠心分離速度でペレット化された。これは、残存するCPBpro_リスプロプロインスリンも宿主中に大きな可溶化可能な複合体の形態で存在することと整合する。
8M尿素及び3.5M尿素/5%Triton−X中での可溶化。PN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリン(配列番号43)の調製に関する可溶化条件を更に評価するために、実施例1Bに記載されるように、PN2.5 pSOL:CPBpro−リスプロ/PDI発現構築物を含むEB0001宿主細胞を増殖させて、15マイクロモルのアラビノースを用いて誘導させた。誘導後、宿主細胞培養液の1mL試料を、3800×gで、4℃にて10分間の遠心分離によって収集した。溶解のために、宿主細胞ペレットを、GLB−OG溶解緩衝液pH7.4中に再溶解させて、溶解は、氷上で15分間進行させた。宿主細胞溶解物を、20K×gで、4℃にて15分間遠心分離して、得られたペレットを、1×Tris緩衝生理食塩水(TBS)pH8.0中の8M尿素、又は1×TBS pH8.0中の3.5M尿素/5%triton−Xのいずれか中に再懸濁させた。可溶化されたタンパク質の試料は、Pierce(商標)SDS PAGE Prepキット(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)を使用して、3.5M尿素/5%triton−X試料からtriton−Xを除去することによって、及び非還元型(LDS試料緩衝液中、Thermo Fisher Scientific社)及び還元型試料(LDS試料緩衝液+100mM DTT中)の両方を調製することによって、PAGE用に調製して、各可溶化条件に関してPAGEによって分析した。各試料中の可溶化されたPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの量を、SDS−MES緩衝液中の12%Bis−Trisゲル上でPAGEによって評価し、ゲルをクマシーブルー染色で染色した。PN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンの分子量(12.25kD)に関して予想されるようなバンド移動が明らかに見られ、8M尿素中に可溶化された試料は、3.5M尿素/5%triton−X中に可溶化された試料よりも非常に濃いバンドを生じた。この結果により、これらの条件下で、8M尿素は、プロインスリン複合体を可溶化する際に、3.5M尿素/5%triton−Xよりも有効であることが示される。
可溶化可能な複合体由来のCPBpro_リスプロプロインスリンは、ジスルフィド結合を有し、高度に精製される。可溶化可能な複合体由来のPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリンが、ジスルフィド結合又は遊離チオール残基を有するかどうかを決定するために、8M尿素中に可溶化され、上述されるように調製した試料を、SDS−MES緩衝液中の12%Bis−Trisゲル上でPAGEによって分析し、試料の非還元型及び還元型の対は、隣接するレーンに流した。ゲルは、クマシーブルーで染色されて、図2に示される。DTTによる処理により、還元型試料(レーン4及びレーン6)は、相当する非還元型試料(レーン3及びレーン5)よりもわずかにゆっくりと流れ、非還元型PN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリン中のジスルフィド結合の存在を示した。還元型CPBpro_リスプロプロインスリンと、非還元型CPBpro_リスプロプロインスリンとの間の移動速度の差は、分析用逆相クロマトグラフィーによって確認された。図2はまた、可溶化されたPN2.5 CPBpro_リスプロプロインスリン(レーン3〜レーン6)が、総宿主細胞溶解物(レーン1及びレーン2)中の可溶性タンパク質の、可溶化可能なCPBpro_リスプロプロインスリンペレットからの除去の結果として非常に精製されたことを示す。
誘導全体にわたる可溶化可能なCPBpro_リスプロプロインスリン複合体形態。可溶化可能なCPBpro_リスプロプロインスリン複合体の形成を更に特性決定するために、PN2.5 pSOL:CPBpro−リスプロ/PDI発現構築物を含むEB0001宿主細胞を用いて、経時的な誘導を実施して、一般的に実施例1Bに記載されるように、それらを増殖及び誘導させた。この実験では、1Lのバッフル付きフラスコ中にそれぞれ200mLの3つの容積において、誘導物質として15マイクロモルのアラビノースを用いて、誘導を宿主細胞培養液で実施して、誘導の開始後の0時間、2時間後、4時間、及び6時間の時点で、試料1mLを採取した。宿主細胞を収集して、溶解を実施して、可溶化可能なペレットを、上述されるように、1×Tris緩衝生理食塩水(TBS)pH8.0中の8M尿素中に再懸濁させ、PAGEによって分析した。可溶化可能なCPBpro_リスプロプロインスリン複合体は、予想される位置にある各レーンにおけるバンドによって示されるように、2時間、4時間、及び6時間の時点それぞれにて、宿主細胞中に存在した。この結果により、可溶化可能な複合体は、誘導期間全体にわたって、宿主細胞において形成されており、誘導のほんの2時間後に可溶化可能な複合体を形成するのに十分なCPBpro_リスプロプロインスリンが、宿主細胞内に存在することが示される。
実施例2
グラルギンプロインスリンの産生におけるCPBpro変異体プロペプチドの使用
A.CPBpro_グラルギンプロプロインスリンの発現用の宿主細胞
これらの実験では、配列番号27のアミノ酸配列を有するCPBproプロペプチド(「His−CPB1」)を、グラルギンプロインスリンポリペプチドの発酵規模の発現において使用した。His−CPB1プロペプチドをコードし、且つE.coliにおける発現に関して最適化されたポリヌクレオチドは、これまでに合成されている(実施例1A)。His−CPB1プロペプチドをコードする配列を、E.coliにおける発現に関して同様に最適化され、同様にATUM社(カリフォルニア州、ニューアーク)によって合成されているグラルギンプロインスリンをコードするポリヌクレオチド配列を含む既存の発現構築物にクローニングした。PN3.13 CPBpro_グラルギンプロインスリンポリペプチド(配列番号55)は、そのN末端にHis−CPB1プロペプチド(配列番号27)を、続いてグラルギンインスリンB鎖(配列番号7)、RRYPGDVKRに相当するC−ペプチド(配列番号11)を有するが、但し、C−ペプチドの初期アルギニン(RR)は、この場合、配列番号7のB鎖の末端、及びグラルギンインスリンA鎖(配列番号6)に存在するとして示される。インスリングラルギン中に見られるジスルフィド結合を含む、PN3.13 CPBpro_グラルギンプロインスリンポリペプチドの構造は、図3に模式的に示される。PN3.13 CPBpro_グラルギンプロインスリンポリペプチド(配列番号56)をコードするポリヌクレオチドは、pSOL発現ベクター(配列番号42)中のaraBADプロモーターの下流に挿入された。この発現構築物はまた、E.coli(配列番号57)における発現に関して最適化され、pSOL発現ベクター内のprpBCDEプロモーターの下流にあるErv1p(配列番号38)を含有した。実施例1Bに記載される方法を使用して、pSOL:PN3.13−CPBpro_グラルギン/Erv1p発現構築物を、E.coli EB0001細胞に形質添加して、形質転換された宿主細胞のグリセロールストックを調製して、−80℃で保管した。
B.CPBpro_グラルギンプロインスリンの宿主細胞増殖及びその発現の誘導
EB0001(pSOL:PN3.13−CPBpro_グラルギン/Erv1p)宿主細胞を、250mlのDASbox発酵容器の1つであるバイオリアクター1(「BR1」)(上記の「発酵設備」を参照)においてDSAGIP発酵系(Eppendorf North America社、ニューヨーク州、ホーポージ)中で増殖させた。バイオリアクターは、下記通りに較正した:pHオフセット0.80pH、pHスロープ104.15%、DOオフセット0.01nA;DOスロープ66.72nA。
発酵培地。発酵培地、並びに増殖及び誘導フィードの総容積100mLは、下記の通りに調製した。
発酵培地;滅菌前構成成分、各バイオリアクターに添加した容積90mL当たりのg/Lでの濃度
・リン酸カリウム(一塩基性) 14.8
・クエン酸カリウム三塩基性(一水和物) 3.3
・硫酸アンモニウム 4.4
・塩化ナトリウム 2.2
・酵母抽出物 11.1
修飾Korz微量金属(100倍ストック);以下の構成成分(ここで、最終濃度は、g/Lで示される)を組み合わせて、フィルター濾過する:
・CoCl・6HO 0.25
・MnCl・4HO 1.5
・CuSO・5HO 0.22
・HBO 0.3
・NaMoO・2HO 0.25
・ZnSO・7HO 1.7
発酵培地;滅菌後構成成分(滅菌ストック濃度)、バイオリアクター中に総容積約100mLに達するように添加したmLでの量:
・グルコース(700g/L) 1.4
・EDTA(100×ストック、0.84g/L) 1.0
・修飾Korz微量金属(100×ストック) 1.0
・硫酸アンモニウム第一鉄(40g/L) 0.8
・1:5希釈した硫酸マグネシウム七水和物(500g/L) 1.3
・70%エタノール/30%HO中に10%溶解された滅菌Antiform 204(Sigma−Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス) 0.3
・1:10希釈したカナマイシン(50g/L) 1.0
・塩化カルシウム(200g/L) 1.0
増殖フィード;構成成分(滅菌ストック濃度)、1つのバイオリアクター用に調製され得るmLでの量:
・グルコース(700g/L) 80
・EDTA(100×ストック、0.84g/L) 1.36
・修飾Korz微量金属(100×ストック) 1.44
・硫酸アンモニウム第一鉄(40g/L) 1.40
・硫酸マグネシウム七水和物(500g/L) 4.0
・カナマイシン(50g/L) 0.08
・酵母抽出物(250g/L) 2.8
誘導フィード;構成成分(滅菌ストック濃度)、1つのバイオリアクター用に調製され得るmLでの量:
・グリセロール(700g/L) 80
・EDTA(100×ストック、0.84g/L) 1.36
・修飾Korz微量金属(100×ストック) 1.44
・硫酸アンモニウム第一鉄(40g/L) 1.40
・硫酸マグネシウム七水和物(500g/L) 4.0
・カナマイシン(50g/L) 0.08
・アラビノース(500g/L) 0.97
10×Tremendousブロス(「10×TB」):
蒸留HO 90mLに下記を添加する:ソイトン12g、酵母抽出物24g。蒸留HOで100mLに調節する。オートクレーブすることによって滅菌する。室温にまで冷却させる。
発酵手順。
EB0001(pSOL:PN3.13−CPBpro_グラルギン/Erv1p)宿主細胞のフィーダー培養液を、一般に実施例1Bに記載される方法に従って増殖させたが、但し、OD600が約3に達するまで一晩増殖させ、増殖の5.5時間後に最終細胞密度OD600 2.40に達するように、1%グルコースを有するLB培地へのより大きな2日目の接種材料を用いた。このフィーダー培養液を使用して、バイオリアクターにおいて発酵培地を接種し、4.2mL分取量を、培地約100mLに添加して、その結果、初期の光学密度の読取り(OD600)は、約0.1である。
増殖段階条件(1時間当たり3.2mLの最大フィード速度を用いた場合の設定増殖速度0.15/時間に関して、30.0℃、DO30%、pH7.0、初期フィード速度0.6mL/時間での70%グルコースを含有する増殖フィード)下で、細胞を29時間増殖させた。誘導の開始の直前に、10×Tremendousブロ5mLをバイオリアクターに添加した。誘導を開始させて、発酵条件を、誘導段階条件に設定した:30.0℃、DO30%、pH7.0、及び1時間当たり誘導フィード係数2.1mLでの70%グリセロールを含有する誘導フィード。誘導フィードはまた、誘導フィードを作成するように添加した構成成分の総容積から下記の通りに算出される濃度で、誘導物質L−アラビノースを含有した:
誘導フィードにおける[L−アラビノース]:(0.97mL×500g/L)/89.25mL=5.4g/L
バイオリアクター中の宿主細胞を、発酵及び誘導中の幾つかの時点で試料採取し、経過発酵時間(EFT(時間))及び経過誘導時間(EIT(時間))に関して表したこれらの時点での増殖培養液の光学密度を以下に示す。
Figure 2022502039
誘導後の9時間又はそれ以上で、光学密度測定用に採取した2mL試料中の宿主細胞、及びPBS緩衝液中に1:20希釈した宿主細胞125マイクロリットルを、4300RPMで、4℃にて7分間の遠心分離によって収集し、乾燥凍結ペレットとして、−80℃で保管した。
C.CPBpro_グラルギンプロインスリンの可溶化及び特性決定
可溶化可能なCPBpro_グラルギンプロインスリン複合体中に存在するジスルフィド結合が、正しい残基間で形成されるかどうかを検討するために、可溶化されたCPBpro_グラルギンプロインスリン複合体を、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)によって分析した。実施例2Bに記載されるように、増殖させ、誘導し、培養液1mLから収集した宿主細胞のペレットを、GLB−OG溶解緩衝液pH7.4 15mL中に再懸濁させて、溶解は、氷上で15分間進行させた。宿主細胞溶解物を、20K×gで、4℃にて30分間遠心分離して、得られたペレットを、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.5中の8M尿素5mL中に再懸濁させた。
下記手順は、CPBpro_グラルギンプロインスリンの酵素消化及非還元型ジスルフィドマッピングにおいて実施されて、図4に模式的に示される。出発試料は、8M尿素、PBS、pH7.5中に、濃度0.63mg/mLで、可溶化されたCPBpro_グラルギンプロインスリンを含有した。酵素消化用に試料を調製するために、1M Tris pH7.5 25マイクロリットル、脱イオン水165マイクロリットル、及びCPBpro_グラルギンプロインスリン試料60マイクロリットルを、各試料に関して1.5mLのエッペンドルフチューブに添加して、0.15mg/mL(及びCPBpro_グラルギンプロインスリン総計37.5マイクログラム)のCPBpro_グラルギンプロインスリン試料の最終濃度を生成し、尿素の濃度を約1.9Mに下げた。シーケンシング等級のトリプシン(Promega社、ウィスコンシン州、マディソン)を、50mM酢酸中に0.1mg/mLで再構成した。トリプシン10マイクロロットル容積(又は1マイクログラム)を各試料チューブに添加して、37℃で4時間、275RPMで振盪しながらインキュベートした。Pierce(商標)グルタミルエンドペプチダーゼ(「Glu−C」)MS Grade(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)を、0.04mg/mLで脱イオン水中に再構成させて、Glu−C 5マイクロリットル(又は0.2マイクログラム)を各試料チューブに添加した。試料を、37℃で16時間、275RPMで振盪しながらインキュベートした。10%酢酸5マイクロリットル容積を各チューブに添加して、プロテアーゼを不活性化した。この時点で、試料を、任意選択で、分析前に−80℃で凍結させた。試料はまた、任意選択で、SDS−PAGE又は逆相LCによって分析して、消化が行われたことを決定することができる。酵素消化後、試料を14×gで、4℃にて5分間遠心分離して、上清20マイクロリットルを、下記のMS分析における使用のために適切なオートサンプラーバイアルに移行した。
Nano−LC MS/MS分析を、最近較正したOrbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計及びDionex UltiMate(商標)3000RSLCnano System(Thermo Fisher Scientific社)で60分メソッドを用いて行った。Acclaim(商標)Pepmap(商標)100 C18 75マイクロメートル×25cm×2マイクロメートル分析カラムを、Acclaim(商標)Pepmap(商標)100 C18 100マイクロメートル×2cm×5マイクロメートルトラッピングカラム(Thermo Fisher Scientific社)とともに使用した。緩衝液Aは、LC−MS等級の水中の0.1%ギ酸からなり、緩衝液Bは、LC−MS等級のアセトニトリル中の0.1%ギ酸からなった。試料200ngをトラップ上に注入した。勾配は、下記の通りに実行した:0分〜5分2%緩衝液B;5分〜5.1分2%〜7.5%緩衝液B;5.1分〜35分7.5%〜30%緩衝液B;36分〜41分30%〜98%緩衝液B、及び42分〜60分2%緩衝液B。試料は、ポジティブイオンモードで、イオン移動管温度275℃でEASY−Spray(商標)供給源(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、2400Vで分析した。MS1スキャンは、分解120KでAGC(自動利得制御)400,000及び最大注入時間50msで、400m/z〜1600m/zから獲得された。ターゲットMS/MSを742.8330m/z(z=4)で行い、鎖間ジスルフィド1つ及び鎖内ジスルフィド1つを有する下記配列QCCTSICSLYQLE(配列番号58)及びFVNQHLGSHLVE(配列番号59)を表した。質量は、計算に関して小数点4桁で算出した(例えば、H+=1.0073)。ターゲットMS/MS設定には、3m/z四重極単離、30%でのHCD活性化、並びに最大注入時間250ms及びAGCターゲット50,000で100m/z〜2000m/zから分解能15KでのOrbitrap質量分析計における検出が含まれた。更なるデータ依存又はターゲットMS/MS事象は、任意選択で、所望の通りに予定することができるか、但し、MS1サーベイスキャンは、少なくとも2秒ごとに行われる。この液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)分析の結果を図5に示す。
D.CPBpro_グラルギンプロインスリンの更なる精製及び溶解度
それぞれ、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35に相当するプロペプチド部分をそれぞれが有し、1つ又は複数の酸切断可能なDP(Asp−Pro)配列がプロペプチドのC末端に存在するアルギニンの前に挿入された、更なる変異体CPBpro_グラルギンプロインスリンを調製した(PN3.15、PN3.16、及びPN3.17)。PN3.13 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号55)をコードする発現構築物(配列番号56)に対して修飾を行って、PN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号62)、PN3.16 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号64)、及びPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号66)をコードする発現構築物(リボソーム結合部位(RBS)から終結コドンまで示される、それぞれ、配列番号63、配列番号65、及び配列番号67、+18bpの下流ヌクレオチド配列)を産生し、各発現構築物は、実施例2Aに記載されるように、pSOL発現ベクターにおけるaraBADプロモーターの下流に位置するCPBpro_グラルギンプロインスリンをコードするポリヌクレオチド、及びprpBCDEプロモーターの下流のErv1p(配列番号38)をコードするポリヌクレオチド(配列番号57)を有した。これらのpSOL:PN3.15−CPBpro_グラルギン/Erv1P、pSOL:PN3.16−CPBpro_グラルギン/Erv1P、及びpSOL:PN3.17−CPBpro_グラルギン/Erv1P発現構築物を、E.coli EB0001細胞に形質転換した。PN3.15、PN3.16、及びPN3.17CPBpro_グラルギンプロインスリンは、本質的に実施例2Bに記載されるような発酵によって産生され、宿主細胞の溶解、続く20K×gで、4℃にて30分間の遠心分離を行った。CPBpro_グラルギンプロインスリンの可溶化可能な複合体を含む、得られたペレットを、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.5中の8M尿素中に可溶化させた。
可溶化可能な複合体から調製されたPN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号62)の一部を、1×PBS pH7.5中の8M尿素及び10mMイミダゾールで洗浄した5mLのNi−NTAカラム上に負荷して、続いて、1×PBS pH7.5中の500mMイミダゾール中で溶出させた。PN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリンは、Ni−NTAカラム精製及び中性pH7.5での1×PBS中の500mMイミダゾールへの溶出の非変性条件で、安定且つ可溶性であった。Ni−NTAカラムからの溶出後、1×PBS pH7.5中の500mMイミダゾール中のPN3.15、PN3.16、及びPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン試料をそれぞれ、ギ酸を用いてpH6に調節して、精製したCPBpro_グラルギンプロインスリンを16K×gで、4℃にて10分間沈殿させて、ペレットを、pH2で0.1M酢酸中に再懸濁して、65℃で12時間インキュベートして、PN3.15、PN3.16、及びPN3.17プロペプチドそれぞれに存在するDP(Asp−Pro)配列で各プロペプチドを切断した。インキュベーション後、試料を2M NH4HCO3(炭酸水素アンモニウム)で、最終pH7.0〜8.0に中和した。プロペプチドの切断は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって観察された。
PN3.17プロペプチドの切断されたN末端部分と、PN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号66)の残部との分離は、Capto S培地(GE Healthcare社、ペンシルベニア州、ピッツバーグ)を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー(「CEX」)によって達成された。PN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンが、pH2の0.1M酢酸で処理されて、60℃で24時間、275RPMで振盪しながらインキュベートされる切断反応を、1M塩酸でpH4に調節して、陽イオン交換カラム上に負荷して、続いて、20mM NaOAc pH6.5中の8M尿素で平衡化して、20mM NaOAc pH6.5中の8M尿素中の0M〜0.35M NaClの増加塩濃度で溶出させた。CEXで精製したグラルギンプロインスリン断片のLC−MS分析により、断片の質量が、その二重結合が全て無傷であるグラルギンプロインスリンに関して予想される通りであることが確定された。CEXで精製したグラルギンプロインスリンのトリプシン消化により、LC−MS分析によって示されるように、無傷のジスルフィド結合を有する成熟グラルギンインスリン分子が生じた。
酸性条件によってPN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号62)の沈殿を更に検討するために、上述するように、可溶化可能な複合体の可溶化及び1×PBS pH7.8中の500mMイミダゾールによるNi−NTAカラムからの溶出によって調製されるPN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリンの試料を、10%ギ酸を使用して、下記pH値に調節した:pH7.5、7.2、7.0、6.7、6.5、6.0、5.5、及び5.0。次に、試料を14K×gで、4℃にて15分間遠心分離して、上清を除去して、遠心蒸発によって乾燥させた。ペレット及び乾燥させた上清を、1×PBS pH7.5中の8M尿素中に再懸濁させ、変性条件下でポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。7.8〜7.2のpH値で、PN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリンの大部分は、可溶性のままであった。pH7.0では、上清及びペレットにおいて、ほぼ等量のPN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリンが観察された。pHが減少するにつれ、pH5.0でほぼ全てが沈殿するまで、PN3.15 CPBpro_グラルギンプロインスリンの増加部分が、ペレット中に存在した。タンパク質溶液のpHを変化させることによってタンパク質を沈殿させる能力は、例えば、より小さく、より濃縮された容積での、及び/又は種々の緩衝液中でのタンパク質の再懸濁に有用である。溶解度に対するpHのこの効果はまた、PN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンに関しても観察され、可溶化可能な複合体を形成する他のポリペプチド遺伝子産物に特徴的である可能性が高いと考えられる。
更なる分析用に精製されたPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン(配列番号66)を得るために、PN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンは、本質的に実施例2Bに記載されるような発酵によって産生され、宿主細胞の溶解、続く20K×gで、4℃にて30分間の遠心分離を行った。ペレット化された材料を、回収した宿主細胞重量の湿細胞重量1gにつき再懸濁緩衝液10mLで、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.5中の8M尿素中に可溶化させ、ボルテックスして、室温で20分〜30分間インキュベーションして、続いて、4000×gで、4℃にて5分間、浄化スピンさせた。可溶化されたPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンを、5mLのNi−NTAカラムに流した。PBS pH7.5中の8M尿素の5倍カラム容積(CV)を使用して、カラムを平衡化して、試料を負荷して、洗浄1(5CVのPBS pH7.5中の8M尿素及び20mMイミダゾール)、洗浄2(1.25CVのPBS pH7.5中の20mMイミダゾール)、溶出(5CVのPBS pH7.5中の500mMイミダゾール)、及びクリーニング(1.25CV 0.2N NaOH、6CV20%EtOH)。各種緩衝液中のPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンの溶解度を検討するために、収集された宿主細胞の湿細胞重量0.5gに相当する、Ni−NTAで精製したPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンの試料を、7K分子量カットオフ(MWCO)を有する5mLのZeba(商標)スピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)に流した。試料がその中へスピンされる緩衝液は、PBS pH7.5中の500mMイミダゾール、PBS pH7.5中の200mMイミダゾール、PBS pH7.5、PBS pH7.5中の50mM EDTA、及び10mMリン酸K pH7.5中の25mM L−アルギニンであった。Bradfordタンパク質アッセイを使用して、PBS PH7.5中の500mMイミダゾール中に溶出させた場合のPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン溶液のタンパク質濃度、及び各種緩衝液へのスピン脱塩後のPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン溶液のタンパク質濃度を測定した。出発緩衝液であるPBS pH7.5中の500mMイミダゾールを同じ緩衝液で置き換えた実験におけるPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンの収率は、スピン脱塩手順の効率を表し、およそ80%であった。種々の緩衝液へスピン脱塩によってそれぞれ移行される他の試料の収率は、77%〜91%の範囲であり、スピン脱塩手順自体から予想される収率と有意に異ならず、異なる緩衝液に移された場合、沈殿からのPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンの更なる損失が見られないことを示唆した。脱塩されたPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリン試料もまた、還元性条件及び非還元性条件下で、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析され、還元性条件に曝露した場合のPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンバンドの電気泳動移動度のシフトにより、Ni−NTAカラムから溶出されて、脱塩された場合のPN3.17 CPBpro_グラルギンプロインスリンが、ジスルフィド結合を含有したことが示される。
実施例3
グラルギンプロインスリンの産生における変異体プロペプチド及びC−ペプチドの使用
A.グラルギンプロインスリンの調製
配列番号36又は配列番号37のいずれかに相当する変異体プロペプチド部分、並びに配列番号12、配列番号13、及び配列番号14のうちの1つに相当する変異体C−ペプチドをそれぞれ有する、更なるグラルギンプロインスリンを調製した(PN3.62、PN3.116、PN3.165、PN3.172、及びPN3.185)(表4を参照)。
Figure 2022502039
グラルギンプロインスリンポリペプチドそれぞれをコードするポリヌクレオチドを、pSOL発現ベクター(配列番号42)におけるaraBADプロモーターの下流に挿入した。これらの発現構築物はそれぞれ、pSOL発現ベクター内のprpBCDEプロモーターの下流にタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、配列番号41)に関するコード配列を含有した。
グラルギンプロインスリンポリペプチドをコードする発現ベクターそれぞれを使用して、E.Coli EB0001宿主細胞を形質転換して、下記を形成した。
EB0001(pSOL:PN3.62プログラルギン/PDI)、
EB0001(pSOL:PN3.116プログラルギン/PDI)、
EB0001(pSOL:PN3.165プログラルギン/PDI)、
EB0001(pSOL:PN3.172プログラルギン/PDI)、及び
EB0001(pSOL:PN3.185プログラルギン/PDI)。
上記宿主細胞の5つのタイプそれぞれを、一般に実施例2Bに記載されるように、発酵培養で増殖させて、タンパク質発現に関して誘導させた後、収集した。発酵プロセス中の試料間で変化した2つの要素は、発酵が、DASbox装置中で実行されたか、又はNLF装置で実行されたかどうか、及びKorz微量金属の構成成分として、MnCl2が発酵に添加されたか、又は添加されなかったかであった(実施例2Bを参照)。これらの要素は、実施例3Bに記載されるように、精製及び分析されたグラルギンプロインスリン試料それぞれに関して示されている。
B.直接的な可溶化によるグラルギンプロインスリンの精製
実施例3Cに記載されるように、成熟グラルギンインスリンへのトランスバージョンの目的で、正確に配置されたジスルフィド結合を有する、適正にフォールディングされたグラルギンプロインスリンの非常に精製された試料を調製するために、上記で収集された宿主細胞を、可溶化可能な複合体の形態でグラルギンプロインスリンを収集するために可溶性画分と不溶性画分を分離する初期遠心分離ステップを使用しない溶解後に、直接的な可溶化処理に付した。
精製された収集宿主細胞の試料は、発酵装置、及び発酵中に、MnCl2が添加された(+)か、又は存在しなかった(−)かどうかに留意して、下記のリストにおいて示されるように言及される。
PN3.62A DASbox MnCl2を添加(+)
PN3.62B NLF MnCl2が非存在(−)
PN3.62C NLF MnCl2が非存在(−)
PN3.116 DASbox MnCl2が非存在(−)
PN3.165A DASbox MnCl2が非存在(−)
PN3.165B NLF MnCl2を添加(+)
PN3.165C NLF MnCl2を添加(+)
PN3.172 DASbox MnCl2が非存在(−)
PN3.185A DASbox MnCl2を添加(+)
PN3.185B NLF MnCl2を添加(+)
PN3.185C NLF MnCl2を添加(+)
溶解に関して、「主な試料群」として、PN3.62A、PN3.62B、及びPN3.62C;PN3.116;PN3.165A;PN3.172;並びにPN3.185Aが挙げられる。主な試料群に関して、収集された宿主細胞を、発酵培養容積に関して10倍希釈で、7M尿素、50mM Tris pH8中に再懸濁させた。更なる試料(PN3.165B及びPN3.165C、並びにPN3.185B及び3.185C)を、発酵培養容積に関して2倍希釈で、7M尿素、2.5mM L−Cys、50mM Tris pH9.5中に再懸濁させた。試料は全て、8,000psiで総計5回均質化して、細胞を溶解させた。溶解物を、50mM Tris pH8(主な試料群)、又は2.5mL L−Cys、50mM Tris pH9.5(PN3.165B及びPN3.165C、並びにPN3.185B及び3.185C)中に3.5倍希釈して、その結果、試料は全て、2M尿素溶液中に存在していた。PN3.165C及びPN3.185Cを除く全ての試料を、16℃で、120RPMで振盪しながら、48時間〜72時間、又はPN3.165C及びPN3.185Cに関しては24時間、インキュベートした。
インキュベーション後、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用した精製用に、溶解物試料は全て、3300×gでの遠心分離によって浄化して、可溶性溶解物を、0.45マイクロリットルのポリエーテルスルホン(PES)膜に通して濾過して、収集して、最終濃度10mMのために、イミダゾールを溶解物に添加した。浄化における遠心分離ステップはまた、7000〜20,000×gで、30分〜60分間実施することができ、可溶性溶解物はまた、グラスファイバー濾過(液体中で0.7マイクロメートル粒子の保持)によって濾過することもできる。IMAC中の非特異的な結合を防止するための浄化された溶解物への添加剤には、10mM〜20mMイミダゾール及び/又は0mM〜300mM NaClが含まれ得る。
IMACカラムを、2倍〜4倍カラム容積(CV)の7M尿素、0.3M NaCl、10mMイミダゾール、25mM Tris pH8で平衡化して、続いて、2倍〜4倍のCVの0.1M NaCl、40mM Tris pH10で洗浄した。1つの試料群(PN3.62A及びPN3.62B、PN3.165A、PN3.172、並びにPN3.185A)に関して、各試料を、Niセファロース高速流カラム(GE Healthcare Life Sciences社、ペンシルベニア州、ピッツバーグ)上に負荷した。第2の試料群(PN3.62C、PN3.116、PN3.165B及びPN3.165C、並びにPN3.185B及びPN3.185C)に関して、各試料を、Ni HisTrap高速カラム(GE Healthcare Life Sciences、ペンシルベニア州、ピッツバーグ)上に負荷した。試料は、樹脂1mL当たり0.5mL〜1mLの発酵培養容積の等価量で負荷した。試料は全て、2倍〜4倍のCVの0.5Mイミダゾール、40mM Tris、0.1M NaCl pH10を使用して溶出させた。カラムを2倍のCVの0.5M NaOHを用いて適所でクリーニングされ、7M尿素、0.3M NaCl、0.5Mイミダゾール、及び25mM Tris pH8で取り除いた。
IMAC後、試料を濃縮及び脱塩した。1つの試料群(PN3.62A、PN3.165A、PN3.172、及びPN3.185A)に関して、各試料を、3kDa分子量カットオフ(MWCO)Amicon(登録商標)遠心濃縮器(Sigma−Aldrich社、ミズーリ州、セントルイス)を使用して濃縮し、蒸留水を添加して、各試料をその出発容積に戻して、同じ遠心濃縮器を使用して2回〜3回交換した。他の試料群(PN3.62B及びPN3.62C、PN3.116、PN3.165B及びPN3.165C、並びにPN3.185B及び3.185C)に関しては、各試料を、3−kDa MWCO Vivaflow 50タンジェンシャル濃縮器(Sartorius社、ドイツ、ゲッティンゲン)でタンジェンシャルフロー濾過及び不連続なダイアフィルトレーションによって濃縮し、フィードリザーバ中の容積は、出発容積の約十分の一に濃縮され、続いて、蒸留水を添加して、各試料をその出発容積に戻して、そのプロセスを2回〜3回繰り返した。
C.グラルギンプロインスリンの、成熟グラルギンインスリンへのトランスバージョン
様々な形態のグラルギンプロインスリンの、成熟グラルギンインスリン(「B32グラルギン」)への、トリプシンを用いた消化によるトランスバージョンに最適な条件を同定するための実験を実施した。処理プロトコールに倣って、結果を、固相抽出質量分析(SPE−MS)によって分析した。
SPE−MSパラメーターは下記の通りであった:
Figure 2022502039
SPE−MSの結果に従って、最適なB32グラルギンを産生する各グラルギンプロインスリンに関する条件を選択し、相当する試料を、四重極飛行時間型質量分析(QTOF)液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)によって流した。USPグラルギンの真正標準物質を、外部標準曲線に使用して、トランスバージョンを受けた材料のパーセントを定量化した。トランスバージョンのパーセント(トランスバージョン%)は、USPグラルギン標準物質に対するA280 LC積分により決定される場合のB32グラルギンの濃度を、アミノ酸分析標準物質に対するA280 LC積分により決定される場合のグラルギンプロインスリンの出発濃度で除算して、100%を乗じたものに等しい。同じグラルギン外部標準曲線に対するA214での、且つ抽出イオンクロマトグラムによる積分は、A280での積分と一致した。
QTOF−LCMSパラメーターは、下記の通りであり:
Figure 2022502039
下記の勾配表を用いた:
Figure 2022502039
実験1では、各グラルギンプロインスリン試料1.5マイクロリットルを、様々な濃度のNiCl2溶液5マイクロリットル、及びトリプシン溶液(120mM Tris 300mM NaCl pH9、15mM CaCl2中の4.5g/Lのトリプシン)5マイクロリットルと混合した。組み合わせた容積を、500×gで1分間スピンさせた後、室温で、100RPMで振盪しながら、可変量の時間でインキュベートし、続いて1%ギ酸を有する8M尿素(pH3〜3.5)の添加によって、反応を停止させた。
実験2では、様々な濃度のNiCl2、FeCl2、NaCl、及びCaCl2を、トリプシン反応混合物に添加し、反応は、様々な量の時間で実行されたが、その他の点では、一般に上述の通りであった。
実験3では、様々な濃度のNaCl又はTris緩衝液を、一定量の1.5g/Lのトリプシン、50mM CaCl2、及び7マイクロモルのNiCl2を有したトリプシン反応混合物に添加し、トリプシン混合物は、反応は、様々な量の時間で実行されたが、その他の点では、一般に実験1に記載される通りであった。
実験4では、1.5g/Lのトリプシン、50mM CaCl2、120mM Tris、300mM NiCl2を含有するトリプシン反応混合物において、様々な濃度のNaCl及び反応時間を試験した。
実験5では、1.5g/Lのトリプシンを含有する2つのトリプシン反応条件を、様々な長さの反応時間で試験した。以下の表に示されるように、条件はそれぞれ、匹敵する最大の結果をもたらした。
実験6では、1.5g/Lのトリプシン及び7マイクロモルのNiCl2を含有するトリプシン反応混合物において、様々な濃度のNaCl及びpHを、様々な量の時間で試験した。
各実験に関して、試験した目的のグラルギンプロインスリンそれぞれに関する最良の反応条件を、トランスバージョンのパーセントとともに以下に示す。
Figure 2022502039
これらの結果により、高いトランスバージョン頻度が、本明細書中に開示される方法を使用して、本発明の変異体グラルギンプロインスリンポリペプチドに関して得ることができることが実証される。
実施例4
発現産物の溶解度の決定:封入体を検出する方法
本発明の方法を使用して、宿主細胞の細胞質において遺伝子産物を発現する場合、下記の手順を使用して、遺伝子産物が、可溶性形態で細胞において産生される度合いを決定することができる。
最も分かりやすいアプローチは、実施例1でより詳細に記載されるように、リゾチームを用いた酵素的溶解等の、又はマイクロフルイダイザーを用いた細胞破壊による、任意の有効な方法を使用して、細胞を溶解することである。細胞溶解物の試料は、宿主細胞によって産生される可溶性及び不溶性の総遺伝子産物の尺度として保持され得る。続いて、溶解した細胞を、20,000×gで、室温にて15分間遠心分離して、不溶性画分をペレットとして分離して除き、可溶性画分(上清)を収集する。細胞溶解物中に存在する総遺伝子産物の量から、上清中で回収された可溶性遺伝子発現の量を減じたものが、ペレット中に存在する不溶性遺伝子産物の総量を表す。本明細書中に記載される可溶化に関する方法を使用して、ペレット中の不溶性画分のどの部分が、可溶化可能であるかを決定することができる。遺伝子産物を検出するのに、好ましくは各画分中の遺伝子産物を特異的且つ定量化可能に検出するのに使用することができる、ELISA又はキャピラリー電気泳動ウェスタンブロット等の任意の方法を用いて、可溶性画分及び不溶性画分中に存在する量を比較する。このアプローチの有効性を試験するために、可溶性であり、且つ宿主細胞の細胞質のみに存在すると知られている内因性宿主細胞タンパク質を、可溶性画分及び不溶性画分の両方において検出して、溶解及び分画方法が、不溶性画分中に、検出可能な量の可溶性の細胞質産物を捕捉しているかどうかを決定する。
細胞が封入体を含有するかどうかを直接評価することも可能である。封入体は、溶解した宿主細胞の遠心分離によって収集して、コンゴレッド等の色素で染色して、明視野又は交差偏光顕微鏡法を使用して、中程度(10倍)の倍率で可視化させることができる(Wang et al.,「Bacterial inclusion bodies contain amyloid−like structure」,PLoS Biol 2008 Aug 5;6(8):e195; doi:10.1371/journal.pbio.0060195)。かかる封入体はまた、再度可溶化させることもでき(Singh and Panda,「Solubilization and refolding of bacterial inclusion body proteins」,J Biosci Bioeng 2005 Apr;99(4):303−310;Review)、タンパク質同定の特異的な結合アッセイ又は他の方法を使用して、例えば、それらが特定の遺伝子産物を含むかどうかを決定することができる。封入体は、可溶化によって封入体から回収される遺伝子産物の大部分が、活性ではなく、又は適正にフォールディングされた形態でもなく、活性であり、及び/又は適正にフォールディングされている遺伝子産物の大部分を得るのに、少なくとも1つの更なるリフォールディングステップを要するという点で、本明細書中に記載される可溶化可能な複合体と区別することができる。
実施例5
可溶化可能な遺伝子産物複合体の可溶化に関する更なる方法の決定
本発明の方法によって産生される遺伝子産物複合体の可溶化に使用される緩衝液は、以下に記載されるように、幾つか異なるタイプの構成成分を含み得る。目的の任意の遺伝子産物の可溶化を最適化するために、可溶化緩衝液構成成分の最も有効な組合せを同定するための実験に取りかかることができる。市販の化合物を使用して、緩衝液構成成分のどの組合せが、研究室で容易に調製することができるかどうかを同定するために、初期実験を実施する。試験緩衝液が調製されたら、目的の遺伝子産物複合体を用いた、及び任意選択で、参照可溶化緩衝液中で異なる程度に可溶化可能であることが既知である対照遺伝子産物複合体を用いた可溶化実験で、試験緩衝液を使用することができる。実施例1及び実施例2において記載されるような、遺伝子産物複合体を用いた使用のための可溶化プロトコールの例が、本明細書中に提供されている。
可溶化緩衝液の構成成分:
表5に概要される緩衝液構成成分の下記の説明は、考え得る緩衝液構成成分又はそれらの組合せに対して制限なく、可溶化緩衝液において組合せで使用することができる種々のタイプの構成成分の例を提供すると意図される。例えば、カオトロピック剤として、n−ブタノール、エタノール、塩化グアニジウム、塩酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2−プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、及び/又は尿素が挙げられる。緩衝液構成成分の各タイプの1つ又は複数の化合物は、可溶化緩衝液の調製において、いずれかの、又は全ての他の構成成分タイプの1つ又は複数の化合物と組み合わせて使用して、遺伝子産物複合体を可溶化する際の有効性に関して検査され得る。表5に示される緩衝液の濃度には、有効性に関して検査され得る濃度の範囲、またその濃度の特定の例が含まれる。
適正にフォールディングされた遺伝子産物のコンホメーションを保持し、適正に形成されたジスルフィド結合を保持し、及び/又はタンパク質活性を保持するような、目的の遺伝子産物の調製では、還元剤は、可溶化緩衝液中に含まれない。しかしながら、キャピラリー電気泳動ウェスタンブロット(実施例6を参照)等の或る特定の分析アッセイは、好ましくは、還元型状態の可溶化された遺伝子産物試料を用いて実施される。かかるアッセイ用に試料を調製する目的で、還元剤(例えば、DTE(ジチオエリスリトール)、DTT(ジチオトレイトール)、及び/又はTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))は、例えば10mMの濃度で、又は最大100mMの濃度で、緩衝液に含まれ得る。
Figure 2022502039
実施例6
キャピラリー電気泳動ウェスタンブロットによる特性決定
以下に記載するように、例として可溶性又は可溶化されたタンパク質遺伝子産物を使用して、製造業者の指示書に従ってWESシステム(ProteinSimple社、カリフォルニア州、サンノゼ)でのキャピラリー電気泳動ウェスタンブロットによって、遺伝子産物を検出及び定量化することができる。可溶性タンパク質抽出物を、キャピラリーセットに負荷し、タンパク質は、サイズによって電気泳動的に分離される。試料中の目的のタンパク質を、そのタンパク質に特異的な一次抗体で検出し、一次抗体の重及び/又は軽鎖を認識する、ヤギ抗ヒト又は抗マウス二次抗体等のHRPコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートする。HRPコンジュゲート二次抗体の存在の検出は、化学発光基質の、キャピラリーへの付加、及び酵素を触媒とする反応中に放出される光の直接的な捕捉によって達成される。分子量の概算は、各実行に関して12k〜230kDaの範囲の6つのビオチン化タンパク質を使用して作成した標準曲線を使用して算出される。蛍光標準物質は、試料ローディング緩衝液中に含まれ、各試料を、分子量標準物質と並べるのに使用される内部標準物質を、各試料に与える。
所与の分子量で存在するタンパク質の量を決定するために、既知の量の目的のタンパク質標準物質調製物を、キャピラリーの幾つかに流して、実験試料に関するのと同じ一次抗体及び二次抗体を使用して検出する。市販のタンパク質標準物質等の、既知の濃度を有する目的のタンパク質に関する標準物質の段階希釈物を、例えば、10マイクログラム/mLから出発し1.0ナノグラム/mLまで希釈して調製する。およそ5つのWESシステムキャピラリーを使用して、段階希釈物を流した。実験キャピラリー及び段階希釈物キャピラリーの両方における各タンパク質バンドに関して、タンパク質のバンドの化学発光強度を表すWESシステムソフトウェアによって、曲線を作成し、各曲線下面積を評価して、これらの面積の標準曲線を、段階希釈物キャピラリーにおけるタンパク質バンドに関してプロットする。実験試料の濃度を決定するために、実験試料の化学発酵強度を表す各曲線下面積を、既知の濃度の試料に関して作成した標準曲線と比較することができる。
実施例7
本発明の可溶化及び精製方法を使用して産生される遺伝子産物の収量及び回収率の決定
下記の方法を使用して、細胞溶解物中に存在する総量と比較した場合に、可溶化及び精製プロセスの種々の段階で回収される遺伝子産物の量を算出することができる。
遺伝子産物の標準試料が必要とされる。これは、既知の濃度を有する遺伝子産物の市販の試料、又は遺伝子産物のアミノ酸分析された(AAA)完全精製試料であり得る。
発酵培養液等の宿主細胞培養液由来の細胞溶解物は、既知レベルの希釈で、宿主細胞培養液から調製される。4%〜12%ゲル等のSDS−PAGEゲルを調製して、遺伝子産物の細胞溶解物及び標準試料の両方の試料の段階希釈物セットを、還元性条件下でSDS−PAGEゲル上に流した後、SimplyBlue SafeStain(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)で染色する。還元性条件の使用は、細胞溶解物中の遺伝子産物の総量を測定するのを可能にするのに必要である。SDS−PAGEゲル上の遺伝子産物バンドのデンシトメトリー測定は、試料それぞれに関して実施され、デンシトメトリーデータに基づく曲線を下記の通りにプロットする。
遺伝子産物の標準試料に関して、ゲル上での各標準試料の遺伝子産物バンドのバンド強度をy軸にプロットし、試料容積(マイクロリットルで)をx軸にプロットする。試料容積に関して、最低希釈した試料(例えば、6マイクロリットル)中に存在する標準試料溶液の容積をプロットする。各段階希釈した標準試料に関して、その容積を、最低希釈した試料(例えば、6マイクロリットル)中の標準の容積を各希釈計数(例えば、2)で除算したものとしてプロットする。これらの値に関して、試料容積(マイクロリットルで)は、6、3、1.5、0.75等である。ベストフィット線形標準曲線は、プロットしたデータに基づいて作成され、これは、式y=m(標準)x+k(式中、mは、標準曲線の傾きであり、kは、y切片である)で表すことができる。
細胞溶解物中に存在する遺伝子産物の収量(又は力価、g/Lで)を決定するために、上述の標準試料に関するのと同じ様式で、各細胞溶解物試料に関する遺伝子産物バンドのバンド強度を、x軸上の試料容積に対してy軸にプロットする。細胞溶解物試料に関するベストフィット線形曲線もまた、y=m(実験)x+kの形式で作成される。細胞溶解物中の遺伝子産物の収量を算出するために、細胞溶解物試料に関する傾きを、標準試料に関する傾きで除算した後、標準試料溶液の濃度を乗じて、また細胞溶解物試料が宿主細胞培養液に対して希釈された度合い(例えば、100倍希釈に関しては100)を乗じる。
この方法の使用を説明するために、下記実施例は、発酵プロセスからのPN3.172プログラルギンの総遺伝子産物収量の決定である。PN3.172の非常に精製され、アミノ酸分析された(AAA)標準試料が精製され、それは、0.266マイクログラム/マイクロリットルの濃度を有し、これは、0.266g/Lに等しい。PN3.172プログラルギンポリペプチドを、一般に上記実施例2B及び実施例3Aに記載される方法に従って、宿主細胞発酵培養液において発現させて、溶解させた。分析された細胞溶解物は、宿主細胞発酵培養液に対して80倍に希釈され、したがって、希釈因子は、80である。AAA PN3.172標準及びPN3.172細胞溶解物両方の試料は、容積6.0、4.8、3.8、3.1、及び2.5マイクロリットルを有する、1.25倍で段階希釈した試料セットとして調製され、これらの試料を、還元性条件下で4%〜12%SDS−PAGEゲルに流した後、SimplyBlue SafeStain(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)で染色した。バンドデンシトメトリーを、AAA PN3.172標準及びPN3.172細胞溶解物試料それぞれに関して実施し、ベストフィット線形曲線をプロットした。AAA PN3.172標準に関しては、曲線は、y=93,899x−129,917であり、傾き又はm(標準)は、93,899に等しかった。PN3.172細胞溶解物に関しては、曲線は、y=72,614x−228,763であり、傾き又はm(実験)は、72,614に等しかった。細胞溶解物におけるPN3.172の収量の計算は:
(m(実験)/m(標準))×希釈因子×標準の濃度=(72,614/93,899)×80×0.266g/L=16.5g/L。更なる実験では、細胞溶解物におけるプロインスリン遺伝子産物の収量は、5g/L〜20g/Lの範囲であった。
宿主細胞増殖培養液の光学密度(例えば、OD600)が、溶解時に測定される場合、上記で算出されるようなg/Lでの収量を、光学密度で除算することによって、g/L/ODとして遺伝子産物の収量を算出することも可能である。
収量を算出するこの方法はまた、可溶化及び精製プロセスにおける後期ステップでも使用することができる。例えば、SDS−PAGEゲルは、標準試料を、また本明細書中に記載される方法の1つによって可溶化された実験試料を流し、実験試料の可溶化後の収量を決定することができる。また、この収量算出方法を使用して、Ni−IMAC精製等のカラムクロマトグラフィーによる精製後に、好ましくは標準試料ピーク及び実験試料ピークのRP−UPLC分析を使用して、遺伝子産物の収量を決定することができる。RP−UPLC分析を使用する場合、所望の遺伝子産物に関する予想保持時間(秒)でのクロマトグラムピーク(複数可)下の算出面積は、上述の収量算出方法におけるバンド密度とほぼ同じように使用される。標準試料の段階希釈物を作製して、既知の遺伝子産物の量の試料を、1度に1つずつクロマトグラフィーカラムに流して、遺伝子産物ピーク下面積を算出して、標準曲線プロットする。実験試料に関して、RP−UPLCに通した任意の単回の実行からの予想保持時間(秒)でのクロマトグラムピーク(複数可)下の算出面積を、標準試料の段階希釈物から算出される標準曲線と比較して、実験試料中の遺伝子産物の量を得ることができる。
連続的なプロセスステップ間で回収される遺伝子産物のパーセントは、後期ステップでの収量を、初期のプロセスステップでの収量で除算することと、100%を乗じることとによって決定することができる。精製プロセスは、PN3.172プログラルギンに対して実施され、ここで、細胞溶解段階での収量は、上記方法を使用して決定され、PN3.172プログラルギンは、可溶化可能な複合体を遠心分離して、ペレットを形成することと、続いてPN3.172プログラルギンを、ペレットから可溶化させること(実施例1及び実施例2に見られるような)とによって、或いは直接的な可溶化方法(実施例3に見られるような)によって可溶化された。可溶性PN3.172プログラルギンの収量は、上記方法を使用して決定され、可溶性PN3.172プログラルギンの回収パーセントは、各可溶化方法に関して算出された。実施例1及び実施例2の「ペレット化及び可溶化」方法は、回収率84.7%でPN3.172プログラルギンをもたらし、回収された材料は、BEH 300A 1.7μmの2.1×150mmC4タンパク質カラム(製品番号186006549、Waters社、マサチューセッツ州、ミルフォード)を使用して、RP−UPLC分析によって決定された場合、75.3%純粋なPN3.172プログラルギンタンパク質であった。実施例3の「直接的な可溶化」方法は、匹敵する回収率81.4%で、PN3.172プログラルギンを生じたが、回収された材料は、RP−UPLC分析によって決定された場合、30.4%純粋なPN3.172プログラルギンタンパク質であった。Ni−IMACカラム及び緩衝液交換ステップを使用した、各可溶化方法によって調製されるPN3.172プログラルギンの続く精製は、純度98.2%で、「ペレット化及び可溶化」PN3.172プログラルギンに関して、総回収率70.8%を、また純度94.7%で、「直接的な可溶化」PN3.172プログラルギンに関して、総回収率71.0%をもたらした。この実験により、実施例1及び実施例2の「ペレット化及び可溶化」方法が、実施例3の直接的な可溶化方法と同程度に多い遺伝子産物を回収し、続くクロマトグラフィーステップの前及び後の両方で、より高い純度の材料を生じることが実証された。
実施例8
発現産物中に存在するジスルフィド結合の特性決定
タンパク質発現産物中のジスルフィド結合の数及び位置は、非還元性条件下で、トリプシン等のプロテアーゼによるタンパク質の消化と、得られたペプチド断片を、一連の電子移動解離(ETD)及び衝突誘起解離(CID)MSステップ(MS2、MS3)を組み合わせる質量分析(MS)に付すこととによって決定することができる(Nili et al.,「Defining the disulfide bonds of insulin−like growth factor−binding protein−5 by tandem mass spectrometry with electron transfer dissociation and collision−induced dissociation」,J Biol Chem 2012 Jan 6;287(2):1510−1519;Epub 2011 Nov 22)。
発現されたタンパク質の消化。ジスルフィド結合の転位を防ぐために、任意の遊離システイン残基をまず、アルキル化でブロックする:発現されたタンパク質を、遮光下で、アルキル化剤ヨードアセトアミド(5mM)とともに、振盪しながら、20℃にて30分間、4M尿素を有する緩衝液中でインキュベートする。或いは、また好ましくは、NEMをアルキル化剤として使用し、トリプシンのタンパク質分解を、還元/アルキル化と組み合わせて、変性条件(6M GuaHCl)下で行う。アルキル化後、発現されたタンパク質を、precastゲルを使用して非還元性SDS−PAGEによって分離する。或いは、発現されたタンパク質を、電気泳動後に、ヨードアセトアミド又はNEMとともに、又は対照としてそれを伴わずに、ゲルにおいてインキュベートする。タンパク質バンドを染色して、二重脱イオン水で脱染して、切り取って、50mM炭酸水素アンモニウム、50%(v/v)アセトニトリル500マイクロリットル中で二度、振盪しながら、20℃で30分間インキュベートする。タンパク質試料を、2分間100%アセトニトリル中で脱水して、真空遠心分離によって乾燥させて、50mM炭酸水素アンモニウム及び5mM塩化カルシウムを含有する緩衝液中で、10mg/mlのトリプシン又はキモトリプシンを用いて、氷上で15分間再水和する。過剰な緩衝液を除去して、酵素を有さない同じ緩衝液50マイクロリットルと取り換えて、続いて、それぞれ、トリプシン及びキモトリプシンに関して、37℃又は20℃で16時間、振盪しながらインキュベートする。消化は、88%ギ酸3マイクロリットルの添加によって停止させて、短くボルテックスした後、上清を除去して、分析するまで−20℃で保管する。トリプシン分解(trypsinolysis)が不十分な配列カバレッジ(75%未満)を提供する場合に、代替的なタンパク質断片化方法(LysC、Glu−C、又はCNBr)が使用される。酸性条件下でNEMの存在下で還元剤TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)を使用することにより、部分的に無傷のジスルフィド結合を有する断片を入手する機会が提供される。ジスルフィドが無傷の消化マップは、還元型(DTT又はTCEP)消化マップと比較される。
質量分析によるジスルフィド結合の局在性。ペプチドを、0.1%ギ酸を含有する移動相にて、20マイクロリットル/分で、1mm×8mmのトラップカラム(Michrom BioResources社、カリフォルニア州、オーバーン)に注入する。続いて、トラップカートリッジを、5mmのZorbax SB−C18固定相を含有する、0.5mm×250mmカラムに沿って配置し(Agilent Technologies社、カリフォルニア州、サンタクララ)、1100シリーズのキャピラリーHPLC(Agilent Technologies社)を用いて、10マイクロリットル/分で90分にわたる2%〜30%アセトニトリル勾配により、ペプチドを分離し、或いは、UPLCに適したC18カラムを使用する。ETDソースによりLTQ Velosリニアイオントラップ(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州、ウォルサム)を使用して、ペプチドを分析する。Captive Sprayソース(Michrom Bioresources社)、又は好ましくは、3.0kVのコーティングされていない引き抜き溶融石英エミッタ(New Objective社、マサチューセッツ州、ウォーバーン)を使用して、エレクトロスプレーイオン化を実施する。或いは、中程度のサイズのタンパク質分解断片の分析を、Thermo LTQ−FT MS(7 Tesla)機器、又はSynapt G2−Si四重極進行波イオン移動度飛行時間型(ToF)質量分析計(WATERS社、マサチューセッツ州、ミルフォード)を使用して実施する。好ましくは、Orbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、ペプチドを分析する。ジスルフィド結合されたペプチドは、2つのN末端及びカルボキシ末端にある2つの塩基性残基(アルギニン又はリジン)の存在に起因して、トリプシン処理後に+4又はそれよりも多い電荷状態を有する。これらのジスルフィド結合されたペプチドを、Orbitrap Fusion(商標)機器によって優先的に単離し、その結果、ジスルフィド結合は、ETD断片化を使用して破壊され得る。サーベイMSスキャン後に、サーベイスキャンにおいて最も強いイオンに対して、CID及びETD MS2スキャンからなる7つのデータ依存性スキャンを行い、続いて、ETD MS2スキャンにおいて1番目から5番目に強いイオンに対して、5つのMS3 CIDスキャンを行う。CIDスキャンは、正規化された衝突エネルギー35を使用し、ETDスキャンは、追加の活性化を有効にして、100msの活性化時間を使用する。MS2 CID及びETDスキャンを開始するための最小シグナルは、10,000であり、MS3 CIDスキャンの開始のための最小シグナルは、1000であり、MS2及びMS3スキャン全てに関する単離幅は、3.0m/zである。ソフトウェアの動的排除(dynamic exclusion)機能は、繰り返し回数1、排除リストサイズ100、及びエクスクルージョン持続期間30秒で有効化する。ETD MS2スキャンの収集のための標的特異的架橋種に対する包含リストを使用する。MS2及びMS3スキャンに関する分離データファイルは、ZSA電荷状態分析を使用してBioworks 3.3(Thermo Fisher Scientific社)によって作成される。MS2及びMS3のスキャンの、ペプチド配列に対するマッチングは、Sequest(V27,Rev 12、Thermo Fisher Scientific社)によって実施される。分析は、酵素特異性、2.5の親イオン質量許容差、1.0の断片質量許容差、及び酸化されたメチオニン残基についての+16の変動質量なしで実施される。続いて、結果を、最小のペプチド及びタンパク質の蓋然性95%及び99%を使用するプログラムScaffold(V3_00_08、Proteome Software社、オレゴン州、ポートランド)を使用して分析する。データ解釈用ソフトウェアツールは、Disulfinatorノード(Thermo Fisher Scientific社)を伴うProteome Discoverer(商標)2.0も含む。MS3結果からのペプチドをスキャン数によってソートし、ペプチドを含有するシステインを、ETD MS2スキャンにおいて観察される5つの最も強いイオンから産生されるMS3スキャンの群から同定する。ジスルフィド結合種に関与するシステインペプチドの同一性を、サーベイスキャン及びETD MS2スキャンで観察される親イオン質量を手動で検査することによって更に確認する。
実施例9
細菌細胞ペリプラズムからの、スフェロプラストからの、及び細胞全体からの、発現産物の可溶化及び精製
本発明の可溶化及び精製方法は、細胞質又はペリプラズム等の、細胞の異なるコンパートメントに蓄積する遺伝子産物の産生において使用することができる。E.coli又はS.セレビシエ(S.cereviciae)等の宿主細胞は、外側の細胞膜又は細胞壁を有し、外側の膜又は壁が除去される場合にスフェロプラストを形成し得る。かかる宿主において作製される発現されたタンパク質は、下記方法を使用して、具体的には、ペリプラズムから、又はスフェロプラストから、又は細胞全体から精製され得る(Schoenfeld,「Convenient,rapid enrichment of periplasmic and spheroplasmic protein fractions using the newPeriPreps(商標)Periplasting Kit」,Epicentre Forum 1998 5(1):5;epibio.com/docs/default−source/forum−archive/forum−05−1−−−convenient−rapid−enrichment−of−periplasmic−and−spheroplasmic−protein−fractions−using−the−new−peripreps−periplasting−kit.pdfで入手可能)。この方法は、E.coli及び他のグラム陰性菌に関して設計されるが、一般的なアプローチは、S.セレビシエ等の他の宿主細胞に関して変更することができる。
1.細菌宿主細胞培養液は、固定相におけるより古い細胞培養液が、通常リゾチーム処理に幾らかの耐性を示すため、後期の対数期までしか増殖させない。組換えタンパク質の発現が過剰である場合、細胞が早期に溶解することがあり、したがって、細胞培養液は、過剰なタンパク質合成を誘導し得る富栄養培地又はより高い増殖温度では増殖されない。続いて、タンパク質発現は誘導され、細胞は、対数期又は早期の固定期に存在すべきである。
2.細胞培養液を、最低1,000×gで、室温にて10分間、遠心分離によってペレット化する。注記:細胞は、新鮮でなければならず、凍結してはならない。このプロトコールに必要とされる試薬の量を計算するために、細胞ペレットの湿重量を決定する。
3.細胞を、細胞1グラムにつき最低2mlのPeriPreps Periplasting Buffer(200mM Tris−HCl pH7.5、20%スクロース、1mM EDTA、及び30U/マイクロリットルのReady−Lyse Lysozyme)中で、細胞懸濁液が均質になるまでボルテックスミキシング又はピペッティングして、完全に再懸濁させる。注記:過剰な撹拌は、スフェロプラストの早期の溶解を引き起こす場合があり、細胞質タンパク質によりペリプラズム画分の汚染をもたらす。
4.室温で5分間インキュベートする。Ready−Lyse Lysozymeを、室温で最適に活性化する。より低温(0℃〜4℃)での溶解には、更なるインキュベーション時間が必要とされ、かかる温度では、インキュベーション時間は、2倍〜4倍に延びる。
5.元の細胞のペレット重量1グラムにつき3mlの精製水を、4℃で添加し(ステップ2)、倒置により混合する。
6.氷上で、10分間インキュベートする。
7.溶解された細胞を、最低4,000×gで、室温にて15分間、遠心分離によってペレット化する。
8.ペリプラズム画分を含有する上清を、きれいな試験管に移す。
9.混入している核酸を分解するために、OmniCleave Endonucleaseを、任意選択で、PeriPreps Lysis Bufferに添加する。ヌクレアーゼを含めると、概して、タンパク質の収量及び溶解物の取り扱いの容易性が改善されるが、ヌクレアーゼの添加は、場合によっては望ましくなく、例えば、残留するヌクレアーゼ活性又はマグネシウム補因子に対する一過性の曝露が、続くアッセイ又は精製されたタンパク質の使用を妨害する場合には、ヌクレアーゼの使用を避けるべきである。OmniCleave Endonucleaseを不活化するための溶解物へのEDTAの添加は、同様に、続くアッセイ又は精製されたタンパク質の使用を妨害し得る。ヌクレアーゼが添加されるべきである場合、OmniCleave Endonuclease 2マイクロリットル及び1.0M MgCl 10マイクロリットルを、ステップ10で必要とされるLysis Buffer 1ミリリットル当たり最大1mlまで、PeriPreps Lysis Buffer(10mM Tris−HCl pH7.5、50mM KCl、1mM EDTA、及び0.1%デオキシコール酸塩)で希釈する。
10.ペレットを、元の細胞ペレット重量1グラムにつき5mlのPeriPreps Lysis Buffer中に再懸濁する。
11.ペレットを、室温で10分間インキュベートする(含まれる場合には、OmniCleave Endonuclease活性により、粘度の著しい減少が引き起こされ、細胞懸濁液が水の稠度になるまで、インキュベーションを継続する)。
12.細胞片を、最低4,000×gで、4℃にて15分間、遠心分離によってペレット化する。
13.スフェロプラスト画分を含む上清を、きれいな試験管に移す。
14.OmniCleaveエンドヌクレアーゼを、PeriPreps Lysis Bufferに添加した場合、結果として得られるスフェロプラスト画分1ミリリットル当たり20マイクロリットルの500mM EDTAを添加して、マグネシウムをキレート化する(溶解物中のEDTAの最終濃度は、10mMである)。OmniCleave Endonucleaseによる核酸の加水分解後、溶解物は、相当量のモノ又はオリゴヌクレオチドを含有し得る。これらの分解産物の存在は、溶解物の更なるプロセシングに影響を及ぼし得る:例えば、ヌクレオチドは、樹脂と相互作用することによって、陰イオン交換樹脂の結合能力を減少させ得る。
上記のプロトコールは、下記変更を伴って、総細胞タンパク質を調製するのに使用することができる。ステップ2でペレット化した細胞は、新鮮であってもよく、又は凍結させてもよく、ステップ4では、細胞を15分間インキュベートし、ステップ5〜8を省略し、ステップ10では、元の細胞ペレット重量1グラムにつき3mlのPeriPreps Lysis Bufferを添加する。
ペリプラズム、又はスフェロプラスト、又は細胞全体のタンパク質試料の調製後、試料を、多数のタンパク質特性決定及び/又は定量化方法のいずれかによって分析し得る。一例では、ペリプラズム及びスフェロプラストタンパク質の首尾よい分画は、SDS−PAGEによるペリプラズム画分及びスフェロプラスト画分の両方のアリコートを分析することによって確認される(各画分2マイクロリットルは、概して、クーマシーブリリアントブルーで染色することによる可視化に十分である)。所与の画分における特有のタンパク質の存在又は特定のタンパク質の濃縮は、首尾よい分画を示す。例えば、宿主細胞が、アンピシリン耐性マーカーを有する高コピー数のプラスミドを含有する場合には、主にペリプラズム画分におけるβ−ラクタマーゼ(31.5kDa)の存在が、首尾よい分画を示す。ペリプラズム腔で見られる他のE.coliタンパク質として、アルカリホスファターゼ(50kDa)及び伸長因子Tu(43kDa)が挙げられる。所与の画分で見られるタンパク質の量は、多数の方法のいずれか(例えば、数ある方法の中でもとりわけ、染色若しくは標識されたタンパク質バンドのSDS−PAGE及びデンシトメトリー分析、放射標識されたタンパク質のシンチレーション測定、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又はシンチレーション近接アッセイ)を使用して定量化することができる。スフェロプラスト画分と比較した場合に、ペリプラズム画分で見られるタンパク質の量を比較することで、タンパク質が細胞質からペリプラズム内に排出された程度が示される。
実施例10
誘導物質濃度を変化させることによる発現の滴定
本発明の発現系を使用して遺伝子産物の産生を最適化するために、誘導物質の濃度を独立して調節又は滴定することが可能である。誘導性プロモーター(L−アラビノース誘導性、プロピオネート誘導性、L−ラムノース誘導性、又はD−キシロース誘導性プロモーター等)を含む発現構築物を含有する宿主細胞を、適切な抗生物質を含有するM9最小培地で、少容積滴定に所望の密度(例えば、OD600およそ0.5)にまで増殖させた後、細胞を、グリセロール等の炭素源なしで、適切な抗生物質、及び様々な濃度の各誘導物質を用いて、任意選択で調製した小容積のM9最小培地にアリコートする。小容積滴定を、200ml〜500mlの振盪フラスコ中で実施することができる。発現を誘導するのに必要なL−アラビノース、L−ラムノース、又はD−キシロースの濃度は、典型的には、細胞のOD単位当たり、0.02%未満である(多くの場合、0.02%を大きく下回る)。滴定実験では、L−アラビノースの試験濃度は、全て細胞のOD単位当たり、2%〜1.5%、1%、0.5%、0.2%、0.1%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.005%、0.002%、0.001%、0.0005%、0.0002%、0.0001%、0.00005%、0.00002%、0.00001%、0.000005%、0.000002%、0.000001%、0.0000005%、0.0000002%、0.0000001%、0.00000005%、0.00000002%、及び0.00000001%の範囲であり得る。66.61マイクロモルのL−アラビノースの濃度は、0.001%のL−アラビノースに相当する。L−アラビノース、L−ラムノース、又はD−キシロースに関する代替的な滴定実験は、モル濃度に関して表される、下記濃度を試験することである:全て細胞のOD単位当たり、250mM、100mM、50mM、25mM、10mM、5mM、2.5mM、1.0mM、500マイクロモル、250マイクロモル、100マイクロモル、75マイクロモル、50マイクロモル、25マイクロモル、10マイクロモル、5.0マイクロモル、2.5マイクロモル、1.0マイクロモル、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5.0nM、2.5nM、1.0nM、500pM、250pM、100pM、50pM、25pM、10pM、5.0pM、2.5pM、及び1.0pM。プロピオネートに関しては、試験されるべき濃度は、全て細胞のOD単位当たり、1M〜750mM、500mM、250mM、100mM、75mM、50mM、25mM、10mM、5mM、1mM、750マイクロモル、500マイクロモル、250マイクロモル、100マイクロモル、50マイクロモル、25マイクロモル、10マイクロモル、5.0マイクロモル、2.5マイクロモル、1.0マイクロモル、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5.0nM、2.5nM、及び1.0nMの範囲であり得る。
試験されるL−アラビノース(又はL−ラムノース又はD−キシロース)の各濃度「x」について、濃度「x」の第1の誘導物質を含有するチューブそれぞれに添加される、プロピオネート等の異なる誘導物質の濃度は、一連の試料それぞれで変化される。或いは、滴定実験は、誘導物質濃度の「標準的」組合せで開始することができ、これは、誘導物質を代謝するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子機能の低減されたレベルを有する宿主細胞に関しては、細胞のOD単位当たり、0.0015%(100マイクロモル)のL−アラビノース、L−ラムノース、若しくはD−キシロースのうちのいずれか、及び/又は細胞のOD単位当たり、100マイクロモルのプロピオネートである。誘導物質を代謝するタンパク質が機能性である宿主細胞に関しては、誘導物質濃度の「標準的」組合せは、細胞のOD単位当たり、0.0033%(220マイクロモル)のL−アラビノース、L−ラムノース、若しくはD−キシロースのいずれか、及び/又は細胞のOD単位当たり、83mMのプロピオネートである。「標準的」組合せの濃度とは異なる誘導物質濃度の更なる組合せを試験し、一連の滴定実験において、初期の実験からの結果を使用して、後期の実験で使用される誘導物質濃度を「微調整する」ことができる。類似の滴定実験は、L−アラビノース、プロピオネート、L−ラムノース、及びD−キシロースを含むがこれらに限定されない、本発明の発現系において使用される誘導物質の任意の組合せで実施することができる。誘導物質の存在下で、6時間増殖させた後、細胞をペレット化し、所望の産物を細胞から抽出し、細胞の質量値当たりの産物の収量は、ELISA等の定量的免疫学的アッセイによって、又は産物の精製及び280nmでのUV吸光度による定量化によって決定される。
また、ハイスループットアッセイを使用して、誘導物質濃度を滴定することも可能であり、ここで、発現されるべきタンパク質は、mKate2赤色蛍光タンパク質(Evrogen社、ロシア、モスクワ)又はオワンクラゲ及びバチルス・セレウス(Bacillus cereus)由来の増強緑色蛍光タンパク質によって提供されるもの等の、蛍光タンパク質部分を含むように操作される。ハイスループット滴定実験における異なる濃度の誘導物質によって産生される遺伝子産物の量及び活性を決定するための別のアプローチは、表面プラズモン共鳴を検出するセンサー又はバイオレイヤー干渉法を用いるセンサー(bio−layer interferometry)(BLI)(例えば、Octet(登録商標)QKシステム、forteBIO社、カリフォルニア州、メンローパークから)等の、生体分子の結合相互作用を測定することが可能なセンサーを用いることである。発現される遺伝子産物に十分な特異性で結合する抗体が利用可能である場合、遺伝子産物は、実施例6に記載されるようなWES系で実行されるもの等の、キャピラリー電気泳動ウェスタンブロットを使用して、検出及び定量化することができる。
実施例11
ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列類似性の決定
ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列同一性のパーセントは、整列させた配列両方において同一である、整列させたシンボル、即ち、ヌクレオチド又はアミノ酸の数を、ギャップを含む、2つの配列のアラインメントにおけるシンボルの総数で除算したものとして定義される。2つの配列間の類似性の度合い(同一性パーセント)は、ウェブサイトのblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiを通じて利用可能である、Needleman−Wunschグローバル配列アライメントツールにおいて国立生物工学情報センター(NCBI)によって実行されるように、Needleman及びWunschのグローバルアラインメント方法(J.Mol.Biol.48:443,1970)を使用して、配列を整列させることによって決定され得る。一実施形態では、Needleman及びWunschアライメントパラメーターをデフォルト値に設定する(それぞれ、マッチ/ミスマッチスコア2及び−3、並びにそれぞれ、Existence及びExtensionに関するギャップコスト5及び2)。例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi ウェブサイトに記載されるデフォルトパラメーター設定を使用して、NCBIによって実行されるような、ベーシックローカルアライメントサーチツール又はBLAST(登録商標)プログラム(Altschul et al.,「Basic local alignment search tool」,J Mol Biol 1990 Oct 5;215(3):403−410)等の、配列比較の当業者によって使用される他のプログラムを使用して、配列を整列させてもよい。BLASTアルゴリズムは、下記の通りに使用され得る2つを含む、多重の任意選択のパラメーターを有する:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント又は好ましくは利用されないか、若しくは「オフ」に設定される短周期性の内部反復からなるセグメントをマスクするためのフィルターを含めること、及び(B)「Expect」又はEスコアと呼ばれる、データベース配列に対するマッチを報告するための統計的有意性閾値(単に偶然に見出されるマッチの期待される蓋然性;マッチに帰される統計学的有意性がこのEスコア閾値よりも大きい場合、マッチは報告されないことになる)。この「Expect」又はEスコア値が、デフォルト値(10)から調節される場合、好ましい閾値は、0.5であるか、又は0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、0.00001、及び0.000001の順で優先性が増加する。
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術における多くの従来技法が、任意選択で使用される。かかる従来技法は、ベクター、宿主細胞、及び組換え方法に関する。これらの技法は、周知であり、例えば、Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Mc,San Diego,CA;Sambrook et al.,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(3rd Ed.),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2006年を通して追補)で説明されている。例えば、細胞単離及び培養に関する、並びに続く核酸又はタンパク質単離にする、他の有用な参照文献として、Freshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,third edition,Wiley−Liss,New York及び本書で引用されている参照文献;Payne et al.(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Gamborg and Phillips(Eds.)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York);並びにAtlas and Parks(Eds.)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC Press,Boca Raton,FLが挙げられる。核酸を作製する方法(例えば、in vitro増幅、細胞からの精製、又は化学合成による)、核酸を操作する方法(例えば、部位特異的突然変異誘発、制限酵素消化、ライゲーション等による)、並びに核酸を操作及び作製する際に有用な種々のベクター、細胞株等が、上記参照文献に記載されている。更に、本質的に任意のポリヌクレオチド(標識又はビオチン化されたポリヌクレオチドを含む)は、様々な市販ソースのいずれかから、特別注文又は標準注文することができる。
本発明は、本発明の実施に関して或る特定の様式を含むことが見出されるか、又は提唱される特定の実施形態の見地から記載されている。本開示を鑑みて、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変更が、例証される特定の実施形態において成され得ることは、当業者に理解されよう。
特許公報を含む、引用した参照文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。公開されている遺伝子位置又は他の記述によって言及される、ヌクレオチド及び他の遺伝子配列もまた、参照により本明細書に明白に組み込まれる。
配列表において提示される配列
Figure 2022502039
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Claims (29)

  1. 1つ又は複数の遺伝子産物を産生する方法であって、
    宿主細胞において発現された少なくとも1つの遺伝子産物を含む第1の溶液を提供するステップであって、前記第1の溶液における少なくとも1つの前記遺伝子産物の少なくとも幾つかを、7000×gで遠心分離によって沈降させて、可溶化可能なペレットを形成することができる、ステップと、
    少なくとも1つの前記遺伝子産物の少なくとも幾つかを、可溶化溶液中に配置するステップと、
    少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、前記可溶化溶液から回収するステップであって、前記可溶化溶液から回収された前記少なくとも1つの遺伝子産物の量が、前記第1の溶液中に存在する前記少なくとも1つの遺伝子産物の総量の少なくとも50%である、ステップと
    を含み、前記少なくとも1つの遺伝子産物が、還元剤と接触されない、上記方法。
  2. 前記第1の溶液を、遠心分離に付すステップであって、前記第1の溶液が、可溶性画分及びペレットに分離される、ステップと、
    前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、前記ペレットから回収するステップであって、前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかが、前記可溶化溶液に配置される、ステップ
    を更に含む、請求項2に記載の方法。
  3. 1つ又は複数の遺伝子産物を産生する方法であって、
    宿主細胞において発現された少なくとも1つの遺伝子産物を含む第1の溶液を提供するステップと、
    前記第1の溶液を、遠心分離に付すステップであって、前記第1の溶液が、可溶性画分及びペレットに分離される、ステップと、
    前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、前記ペレットから回収するステップと、
    前記ペレットから回収された前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、可溶化溶液中に配置するステップと、
    前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかを、前記可溶化溶液から回収するステップであって、前記可溶化溶液から回収された前記少なくとも1つの遺伝子産物の量が、前記第1の溶液中に存在する前記少なくとも1つの遺伝子産物の総量の少なくとも50%である、ステップと
    を含み、前記少なくとも1つの遺伝子産物が、還元剤と接触されない、上記方法。
  4. 前記少なくとも1つの遺伝子産物が、少なくとも1つのジスルフィド結合を形成するポリペプチドである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記少なくとも1つの遺伝子産物が、シグナルペプチドを欠如しているポリペプチドである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記少なくとも1つの前記遺伝子産物が、(a)レプチン、メトレレプチン、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン、インスリンの成熟鎖のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び(b)(a)のポリペプチドのいずれかの断片からなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 第1の溶液が、前記宿主細胞の溶解物である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記宿主細胞の溶解物が、宿主細胞をリゾチームと接触させることによって産生された、請求項7に記載の方法。
  9. 前記宿主細胞の溶解物が、機械的溶解によって産生された、請求項7に記載の方法。
  10. 宿主細胞が、原核細胞である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 宿主細胞が、大腸菌細胞である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記宿主細胞が、より酸化している細胞質を有するように修飾されている、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記宿主細胞に対する修飾が、trxB、gor、gshA、及びgshBからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の欠損をもたらす、請求項12に記載の方法。
  14. 前記宿主細胞が、ahpC遺伝子において突然変異を更に含む、請求項13に記載の方法。
  15. 宿主細胞が、1つ又は複数の発現構築物を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 少なくとも1つの前記発現構築物が、少なくとも1つの誘導性プロモーターを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記宿主細胞が、前記少なくとも1つの誘導性プロモーターの少なくとも1つの誘導物質を代謝するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の遺伝子機能のレベルの低減を有する、請求項16に記載の方法。
  18. 遠心分離が、900×g〜25,000×gの力で行われる、請求項2〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記可溶化溶液が、少なくとも1つのカオトロピック剤を含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 前記少なくとも1つのカオトロピック剤が、n−ブタノール、エタノール、塩化グアニジウム、塩酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2−プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
  21. 前記少なくとも1つのカオトロピック剤が、2M〜10Mの濃度の尿素及び2M〜8Mの濃度の塩酸グアニジンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 可溶化溶液中の前記少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度を低減させるステップを更に含む、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
  23. 前記可溶化溶液を希釈するステップが、前記少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度を、前記可溶化溶液中のその初期濃度の50%又はそれ未満に低減させる、請求項22に記載の方法。
  24. 低減された濃度の前記少なくとも1つのカオトロピック剤を含む前記可溶化溶液を、少なくとも1時間インキュベートするステップを更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
  25. 前記可溶化溶液から回収された前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも幾つかが、適正に形成されたジスルフィド結合及び遺伝子産物活性からなる群から選択される特性を有する、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
  26. 前記可溶化溶液から回収された前記少なくとも1つの遺伝子産物の少なくとも50%が、適正に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項25に記載の方法。
  27. 前記少なくとも1つの遺伝子産物のクロマトグラフィー精製を更に含む、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
  28. クロマトグラフィー精製が、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)である、請求項27に記載の方法。
  29. クロマトグラフィー精製が、Ni−NTAカラムを利用する、請求項28に記載の方法。
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