JP2022182378A - 歯車加工方法 - Google Patents

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Katsuhito Yoshinaga
英紀 柴田
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Abstract

【課題】噛み合い初期におけるトロコイド干渉を回避しつつ、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる歯車加工方法を提供する。【解決手段】歯車加工方法は、基準加工条件に対してバイアス修整を付与したギヤスカイビング加工を施すことにより、歯先かつ歯すじ方向端部、または、歯元かつ歯すじ方向端部の少なくとも1つである歯面角部D,bを、所定歯面形状に対して削り取る加工を行う歯面角部加工工程ST3,ST14と、歯面角部加工工程ST3,ST14の前工程または後工程に実施され、基準加工条件による歯車加工を施すことにより、歯面角部D,b以外の部位を所定歯面形状に加工する基準歯面加工工程ST4,ST13とを備える。【選択図】図12

Description

本発明は、歯車加工方法に関する。
歯車の損傷原因の1つに、トロコイド干渉が知られている。トロコイド干渉は、歯車の駆動時の負荷による歯の変形や組付け時の誤差などによって、噛み合い初期において従動歯車の歯先が駆動歯車の歯元に食い込む現象である。このような干渉を回避するために、歯すじ方向(歯幅方向)の全域の歯先に面取りを施すセミトッピングを行うことが知られている。
また、特許文献1には、歯車の歯の噛み合い状態を調整するために、セミトッピングの他に、ギヤスカイビング加工において、次のような歯面の修整を行うことが記載されている。当該歯面の修整としては、例えば、クラウニング修整、バイアス修整、ねじれ角修整、圧力角修整、歯形丸み修整などがある。
特開2021-11011号公報
セミトッピングを施すと、噛み合いに有効な歯末のたけが減少し、噛み合い率が減少する。そのため、大きなセミトッピングを施すことはできない。セミトッピングを小さくすると、トロコイド干渉を十分に低減することができない。
また、はすば歯車などのねじれ角を有する歯車においては、噛み合い時に駆動歯車と従動歯車と同時に接触する線は、歯すじ方向に対して傾斜している。従って、歯先の歯すじ方向の全域にセミトッピングが施されることによって、噛み合い初期以外(噛み合い中期、噛み合い後期)においても噛み合い率が低下してしまう。噛み合い率の低下によって、面圧が増大する。
従って、噛み合い初期におけるトロコイド干渉を回避しつつ、噛み合い初期以外においては噛み合い率を低下させないように、歯面の修整を施すことが求められる。クラウニング修整やバイアス修整などを施しただけでは、噛み合い初期におけるトロコイド干渉を回避しつつ、噛み合い率を向上させることは容易ではない。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、噛み合い初期におけるトロコイド干渉を回避しつつ、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる歯車加工方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、
工作物に歯車の歯面を加工する歯車加工方法であって、
基準加工条件に対してバイアス修整を付与したギヤスカイビング加工を施すことにより、歯先かつ歯すじ方向端部、または、歯元かつ歯すじ方向端部の少なくとも1つである歯面角部を、所定歯面形状に対して削り取る加工を行う歯面角部加工工程と、
前記歯面角部加工工程の前工程または後工程に実施され、前記基準加工条件による歯車加工を施すことにより、前記歯面角部以外の部位を前記所定歯面形状に加工する基準歯面加工工程と、
を備える、歯車加工方法にある。
バイアス修整は、修整前の歯面形状をねじれさせた面形状にする修整方法である。つまり、バイアス修整は、歯すじ方向に進むに従って、圧力角が徐々に変化するように歯形形状を異ならせる修整方法である。従って、バイアス修整を付与して歯面全面を加工した場合には、歯面を構成する4隅のうち一対の角部が相対的に深く削り取られ、残りの一対の角部が相対的に浅く削り取られることになる。
そこで、歯面角部加工工程において、バイアス修整を付与する加工を行うことで、歯先かつ歯すじ方向端部、または、歯元かつ歯すじ方向端部の少なくとも1つである歯面角部を加工するようにしている。一方、基準歯面加工工程は、基準加工条件により、所定歯面形状の加工を行う。つまり、加工完成後の歯車の歯面において、歯面角部は、歯面角部加工工程において加工された部位であり、歯面角部以外の部位は、基準歯面加工工程において加工された部位である。
このように、基準加工条件に対してバイアス修整を付与した加工工程、および、基準加工条件による加工工程を含む複数の加工工程を利用している。従って、歯面角部のみを、他の部位に対して深く削り取ることができる。このようにして加工された歯車は、噛み合い初期におけるトロコイド干渉を回避しつつ、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる。
歯車加工装置の一例を示す図である。 X-Z平面において工作物の回転軸線に直交する方向から、工作物および工具を見た図である。工具を示す破線は、工作物に歯車加工を施した後の位置を示す。 Y方向から、工作物および工具を見た図である。工具を示す破線は、工作物に歯車加工を施した後の位置を示す。 駆動歯車と従動歯車の噛み合い部分であって、トロコイド干渉が発生する部位を示す。 ねじれ角を有する歯車において、従動歯車の歯を示し、噛み合い時に駆動歯車に同時に接触する線を破線にて示し、白抜き矢印は噛み合いの進行に伴う接触線の移動方向を示す。 圧力角を説明する図である。 バイアス修整を説明する図である。 歯車の所定歯面形状を、縦軸H0における歯形方向(半径方向)と歯すじ方向(歯幅方向)との平面にて表す座標系であって、縦軸を所定歯面形状からのずれ量(修整量)で表した置換座標系を示す。 従動歯車の1つの歯の目標形状を示す。 従動歯車の1つの歯の目標形状を置換座標系にて表した図を示す。 図10に示す置換座標系を180°反転させた図であって、修整対象である歯面角部を手前側に示した図である。 歯車加工方法を示すフローチャートである。 置換座標系において、仕上加工工程の2サイクル前における基準荒加工工程を終了した歯面形状を示す。 置換座標系において、仕上加工工程の1サイクル前における修整荒加工工程を終了した歯面形状を示す。 修整荒加工工程を終了した歯面形状を、置換座標系の歯形方向(半径方向)から見た図である。斜線は、手前側に見える面を示す。 修整荒加工工程を終了した歯面形状を、置換座標系の歯すじ方向(歯幅方向)から見た図である。斜線は、手前側に見える面を示す。 置換座標系において、仕上加工工程を終了した歯面形状を示す。 仕上加工工程を終了した歯面形状を、置換座標系の歯形方向(半径方向)から見た図である。斜線は、手前側に見える面を示す。 仕上加工工程を終了した歯面形状を、置換座標系の歯すじ方向(歯幅方向)から見た図である。斜線は、手前側に見える面を示す。 置換座標系において、修整荒加工工程における加工条件を決定するための計算上の説明図を示す。 歯車加工方法の他の例を示すフローチャートである。 駆動歯車の1つの歯の目標形状を示す。 駆動歯車の1つの歯の目標形状を置換座標系にて表した図を示す。
(1.歯車加工装置1の構成)
歯車加工装置1について図1を参照して説明する。歯車加工装置1は、ギヤスカイビングカッタTと工作物Wと回転させながら相対移動させることにより、ギヤスカイビングカッタTによって工作物Wに歯形を創成加工する装置である。
本形態においては、歯車加工装置1は、汎用的な工作機械、例えば、マシニングセンタを適用する。マシニングセンタは、工具交換可能に構成されており、装着された工具に応じた加工が可能である。例えば、交換可能な歯車加工工具としては、ギヤスカイビングカッタTの他に、ホブカッタ、シェーパカッタなどである。ホブカッタやシェーパカッタに交換することで、歯車加工装置1は、ホブ加工やシェーパ加工により工作物Wに歯形を加工する装置となる。
また、歯車加工以外の交換可能な工具としては、例えば、エンドミル、フライス工具、ドリル、旋削工具、ねじ切り工具、研削工具などである。なお、図1においては、工具交換装置および工具を保管する工具マガジンは図示しない。
また、本形態においては、歯車加工装置1としてのマシニングセンタは、横形マシニングセンタを基本構成とする。ただし、歯車加工装置1は、立形マシニングセンタなど、他の構成を適用することもできる。
図1に示すように、歯車加工装置1は、例えば、相互に直交する3つの直進軸(X軸、Y軸、Z軸)を駆動軸として有する。ここで、ギヤスカイビングカッタTの回転軸線(工具主軸の回転軸線に等しい)の方向をZ軸方向と定義し、Z軸方向に直交する2軸をX軸およびY軸と定義する。図1においては、水平方向をX軸方向とし、鉛直方向をY軸方向とする。
さらに、歯車加工装置1は、ギヤスカイビングカッタTと工作物Wとの相対姿勢を変更するための1つの回転軸(B軸)を駆動軸として有する。本形態において、B軸は、Y軸方向を回転中心とする回転軸である。また、歯車加工装置1は、ギヤスカイビングカッタTを回転するための回転軸としてのCt軸、および、工作物Wを回転するための回転軸としてのCw軸を有する。
歯車加工装置1において、ギヤスカイビングカッタTと工作物Wを相対移動させる構成は、適宜選択可能である。例えば、歯車加工装置1は、B軸に代えて、X軸方向を回転中心とするA軸を有する構成としても良い。以下においては、歯車加工装置1は、ギヤスカイビングカッタTをY軸方向およびZ軸方向に直動可能とし、工作物WをX軸方向に直動可能とし、さらに工作物WをB軸に回転可能とする場合を例にあげる。
歯車加工装置1は、ベッド10、工作物保持装置20、工具保持装置30および制御装置40を備える。ベッド10は、設置面上に設置され、工作物保持装置20の形状、工具保持装置30の形状、および、これらの移動機構に応じた形状に形成される。本形態においては、ベッド10は、例えば、矩形状とする。ベッド10の上面には、X軸ガイドレール11およびZ軸ガイドレール12が形成されている。
工作物保持装置20は、工作物Wをベッド10に対して、X軸方向に直動し、B軸に回転可能とし、Cw軸に回転可能とする。工作物保持装置20は、X軸移動テーブル21、B軸回転テーブル22、工作物主軸装置23を主に備える。
X軸移動テーブル21は、図示しないリニアモータまたはボールねじ機構などの駆動装置によって駆動されることにより、ベッド10のX軸ガイドレール11に案内されながらX軸方向へ移動する。B軸回転テーブル22は、X軸移動テーブル21の上面に設置され、X軸移動テーブル21と一体的にX軸方向へ移動する。また、B軸回転テーブル22は、X軸移動テーブル21に対してB軸に回転可能に設けられる。B軸回転テーブル22には、図示しない回転モータが収納され、B軸回転テーブル22は、回転モータを駆動することでB軸に回転可能となる。
工作物主軸装置23は、B軸回転テーブル22に設けられ、B軸回転テーブル22と一体的にB軸回転する。工作物主軸装置23は、工作物Wを支持する。工作物主軸装置23には、図示しない回転モータが収納され、工作物主軸装置23は、回転モータの駆動により工作物WをCw軸に回転可能とする。このようにして、工作物保持装置20は、工作物Wを、ベッド10に対して、X軸方向へ移動可能とし、B軸に回転およびCw軸に回転可能とする。
工具保持装置30は、コラム31、サドル32、工具主軸装置3を主に備える。コラム31は、図示しないリニアモータまたはボールねじ機構などの駆動装置によって駆動されることにより、ベッド10のZ軸ガイドレール12に案内されながらZ軸方向へ移動する。コラム31の上下方向に延びる面(図1の左面)には、Y軸ガイドレール31aが形成されている。サドル32は、図示しないリニアモータまたはボールねじ機構などの駆動装置によって駆動されることにより、コラム31のY軸ガイドレール31aに案内されながらY軸方向へ移動する。
工具主軸装置33は、サドル32に設けられると共に、サドル32と一体的にY軸方向へ移動する。工具主軸装置33は、ギヤスカイビングカッタTを支持する。工具主軸装置33には、図示しない回転モータが収納され、工具主軸装置33は、回転モータの駆動によりギヤスカイビングカッタTをCt軸に回転可能とする。このようにして、工具保持装置30は、ギヤスカイビングカッタTを、ベッド10に対して、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能とし、かつ、Ct軸に回転可能に保持する。
制御装置40は、演算装置および記憶装置を備えており、加工プログラムを実行することにより、各駆動装置を制御する。
(2.ギヤスカイビング加工の説明)
ギヤスカイビングカッタTにより、工作物Wに歯形を創成加工する際の状態について、図2および図3を参照して説明する。
ギヤスカイビング加工は、ギヤスカイビングカッタTの回転軸線Atを工作物Wの回転軸線Awに平行な軸線に対して交差角θを有する状態にする。また、ギヤスカイビングカッタTの回転軸線Atと工作物Wの回転軸線Awは、X-Z平面に対して平行である。ギヤスカイビングカッタTの回転軸線Atと工作物Wの回転軸線Awの中心間距離、すなわちY軸方向の距離をDa(以下、「軸間距離」と称する)とする。
工作物Wを回転軸線Aw回り(Cw軸)に回転し、かつ、ギヤスカイビングカッタTを回転軸線At回り(Ct軸)に回転する。工作物Wの回転とギヤスカイビングカッタTの回転とを同期させながら、ギヤスカイビングカッタTを工作物Wに対して工作物Wの回転軸線Awの方向に相対移動させることで、工作物Wに歯車の歯形が創成加工される。ギヤスカイビング加工においては、工作物Wが1回転する間に、工作物Wの各歯溝の部分が、ギヤスカイビングカッタTによって1回だけ加工される。
(3.トロコイド干渉の説明)
トロコイド干渉について図4を参照して説明する。図4に示すように、駆動歯車G1と従動歯車G2とは、噛み合った状態で動力伝達されている。駆動歯車G1と従動歯車G2との噛み合い初期において、Pa部分において、従動歯車G2の歯先が、駆動歯車の歯元に食い込む。この現象がトロコイド干渉である。
また、図5を参照して、駆動歯車G1および従動歯車G2がねじれ角を有する歯車である場合に、従動歯車G2の歯面において、駆動歯車G1との接触線の時間変化について説明する。図5の破線にて示すように、従動歯車G2の歯面において、駆動歯車G1との接触線(噛み合い線)は、歯すじ方向に対して傾斜している。詳細には、最初に、従動歯車G2の歯面における歯先かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部Dが噛み合い、歯元かつ歯すじ方向他方端部である歯面角部Bに向かって、接触線(噛み合い線)が移動する。
つまり、ねじれ角を有する歯車において、トロコイド干渉は、従動歯車G2における歯面角部Dにおいて生じ得る。駆動歯車G1においては、従動歯車G2の歯面角部Dに対応する部位であって、歯元かつ歯すじ方向端部である歯面角部(図示せず)にて生じ得る。ねじれ角を有する歯車は、例えば、はすば歯車、やまば歯車、まがりばかさ歯車などである。
(4.歯面修整方法)
圧力角について、図6を参照して説明する。圧力角δとは、歯車Gの歯面上のある点を通る半径線と歯形の接線とがなす角である。図6においては、歯面がインボリュート歯面であって、圧力角δは、インボリュート歯面の基準ピッチ点における圧力角を示す。歯面修整方法の1つとしての圧力角修整は、圧力角δを修整する方法である。例えば、圧力角修整は、歯車Gにおける歯すじ方向中央部における圧力角δの修整を意味する。
歯面修整方法の1つとして、バイアス修整について図7を参照して説明する。バイアス修整とは、歯すじ方向に圧力角を連続的に変化させ、歯面にねじれを持たせることである。例えば、図7の左手前面である歯すじ方向他方端部(歯幅方向他方端部)において、歯先における歯面角部Aは、歯面外側(図7の右側)に移動するのに対して、歯元における歯面角部Bは、歯面内側(図7の左側)に移動するように、圧力角が修整される。一方、図7の右奥側面である歯すじ方向一方端部(歯幅方向一方端部)において、歯先における歯面角部Dは、歯面内側(図7の左側)に移動するのに対して、歯元における歯面角部Cは、歯面外側(図7の右側)に移動するように、圧力角が修整される。
図7において、バイアス修整において連続的に変化する圧力角の修整量が0となる部位は、歯すじ方向中央部としている。ただし、バイアス修整において連続的に変化する圧力角の修整量が0となる部位は、歯すじ方向中央部からずれた位置にすることもできる。
例えば、歯すじ方向中央部における圧力角δの修整量を0とした場合には、歯すじ方向一方端における圧力角の修整量と、歯すじ方向他方端における圧力角の修整量とは、正負逆となり、絶対値が一致する。ただし、歯すじ方向中央部における圧力角δの修整量を付与した場合には、歯すじ方向一方端における圧力角の修整量と、歯すじ方向他方端における圧力角の修整量とは、正負逆となるが、絶対値は一致しない。
バイアス修整および圧力角修整は、交差角θ、軸間距離Da、X軸方向の位置、ギヤスカイビングカッタTの回転軸Ct、工作物Wの回転軸Cwなどを変更することにより実現できる。例えば、特開2021-11011号公報などにより公知の技術である。なお、バイアス修整および圧力角修整以外の歯面修整方法、例えばクラウニング修整などについても、同様である。
(5.置換座標系の説明)
歯車の歯面形状を容易に把握するための座標系としての置換座標系について、図8を参照して説明する。図8の左側に示すように、歯車Gの所定歯面形状は、例えば、インボリュート歯面形状や、インボリュート歯面にクラウニングなどの修整処理を付与した形状などである。インボリュート歯面形状などの所定歯面形状は、三次元曲面であるため、歯面修整量を視覚的に把握することができない。
そこで、歯車Gの歯面形状、特に、歯面修整量を視覚的に把握するために、図8の右側に示すような置換座標系を用いる。置換座標系は、歯車Gの所定歯面形状を、縦軸の基準値H0における歯形方向(半径方向)と歯すじ方向(歯幅方向)との平面にて表す座標系である。置換座標系における縦軸は、所定歯面形状からのずれ量(修整量)を示す。基準値H0よりも大きな値は、浅くなる方向のずれ値を示し、基準値H0よりも小さな値は、深くなる方向のずれ値を示す。歯車Gの歯面が所定歯面形状である場合において、図8の左側に示す歯面における4つの歯面角部A,B,C,Dは、図8の右側に示すように、縦軸が基準値H0となる平面上の長方形の各角部に位置する。
(6.従動歯車G2の目標歯面形状)
従動歯車G2の目標歯面形状について、図9~図11を参照して説明する。図9は、従動歯車G2の目標歯面形状を、実際の三次元座標系にて表しており、図10および図11は、従動歯車G2の歯面を置換座標系にて表している。
従動歯車G2の目標歯面形状は、上述したトロコイド干渉を低減するための形状である。具体的には、図9に示すように、従動歯車G2の目標歯面形状は、歯先かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部Dが削り取られた形状であって、歯面角部D以外の部位が所定歯面形状にて表される形状である。
例えば、所定歯面形状をインボリュート形状とする場合、歯面角部D以外の部位は、インボリュート形状に形成されている。一方、歯面角部Dは、所定歯面形状であるインボリュート形状に対して削り取られている。つまり、歯面角部Dのみが、所定歯面形状に対して、面取り加工が施された形状に形成されている。図9に示すように、歯面角部Dは、三角形状をなしている。なお、歯面角部Dは、平面ではなく、僅かに凸状に湾曲した曲面である。
ここで、所定歯面形状は、インボリュート形状に限られるものではなく、インボリュート形状に所定の歯面修整が付与された形状とすることもできる。例えば、所定歯面形状は、インボリュート形状に、クラウニングなどの歯面修整が付与された形状などとすることができる。
図10および図11に示すように、置換座標系においては、歯面角部D以外の部位は、所定歯面形状であるため、縦軸が基準値H0となる平面にて表される。つまり、歯面角部D以外の部位は、それぞれの歯面角部A,B,Cに対応する角点A0,B0,C0を通る平面状に形成されている。
歯面角部Dは、所定歯面形状に対して面取りのように削り取られた形状である。従って、歯面角部Dは、縦軸が基準値H0よりも小さな値を示す。歯面角部Dの角点D1は、縦軸の値が最も小さな値を示す。図10および図11に示すように、歯面角部Dは、三角形の輪郭を有する形状をなし、僅かに湾曲した曲面にて示される。なお、図10においては、歯面角部Dが奥側に位置するため、図11は、歯面角部Dが手前側に位置するように回転させた置換座標系にて表している。
(7.歯車加工方法)
ギヤスカイビング加工により、工作物Wに歯車Gの歯面を加工する歯車加工方法について、図12~図19を参照して説明する。ここでは、従動歯車G2の歯面を加工する場合について説明する。
歯車加工方法は、歯車加工装置1を構成する制御装置40(図1に示す)が加工プログラムを実行することにより、歯車加工装置1を構成する各駆動装置が動作することで行われる。また、本形態においては、工作物Wの素材形状から従動歯車G2の仕上歯面までの切込みを複数回に分けて加工する。
まず、制御装置40は、基準加工条件によるギヤスカイビング加工を施す基準荒加工工程ST1を実施する。基準加工条件とは、歯車Gの歯面を所定の基準荒歯面形状に加工する加工条件である。所定の基準荒歯面形状は、例えば、インボリュート形状などである。つまり、基準荒加工工程ST1にて、歯面の全面に対して荒加工を施されることにより、歯面が所定の基準荒歯面形状、例えば、インボリュート形状に加工される。
所定の基準荒歯面形状は、上述した従動歯車G2の目標歯面形状における所定歯面形状に対応する。ただし、両者は切込量が異なるため、所定の基準荒は面形状と目標歯面形状における所定歯面形状とは一致しない。
基準荒加工工程ST1を実施した後の従動歯車G2の歯面は、置換座標系において、図13のように加工される。歯面の全面に亘って所定の基準荒歯面形状に形成されているため、置換座標系においては、縦軸が基準値H2となる平面にて表される。つまり、置換座標系において、基準荒加工工程ST1を実施した後の従動歯車G2の歯面は、それぞれの歯面角部A,B,C,Dに対応する角点A2,B2,C2,D2を通る平面状に形成されている。
続いて、図12に示すように、制御装置40は、今回実施した基準荒加工工程ST1が仕上加工工程の2サイクル前であるか否かを判定する(判定工程ST2)。仕上加工工程の2サイクル前でない場合には(ST2:No)、制御装置40は、仕上加工工程の2サイクル前に達するまで、切込量を付与して基準荒加工工程ST1を再び実施する。
実施した基準荒加工工程ST1が仕上加工工程の2サイクル前に達した場合には(ST2:Yes)、制御装置40は、修整荒加工条件によるギヤスカイビング加工を施す修整荒加工工程ST3を実施する。修整荒加工条件は、基準加工条件に対して、図7に示すように、少なくともバイアス修整を付与した加工条件である。本形態においては、修整荒加工条件は、基準加工条件に対して、図7に示すように、バイアス修整を付与すると共に、図6に示すように、歯すじ方向中央部における圧力角修整を付与した加工条件とする。圧力角修整量はδである。
修整荒加工工程ST3を実施した後の従動歯車G2の歯面は、置換座標系において、図14~図16に示すように加工される。修整荒加工工程ST3における基準値H1は、直前に実施された基準荒加工工程ST1の基準値H2に対して、所定の荒切込量Dbを付与した値である。つまり、仮に基準加工条件にて加工された場合には、置換座標系において、歯面が基準値H1となる平面となるように加工される。ここでの仮の基準加工条件とは、基準荒加工工程ST1における基準加工条件に対して、切込量を付与した加工条件であって、歯面を所定の基準荒歯面形状に対応する歯面形状(仮想的な基準歯面形状)に加工する加工条件である。
しかし、修整荒加工工程ST3においては、基準加工条件に対して、少なくともバイアス修整が付与され、さらに圧力角修整が付与されている。従って、修整荒加工工程ST3にて加工された歯面は、基準値H1を通る平面(修整荒加工工程ST3における仮想的な基準歯面形状)からずれた面形状となる。
本形態では、歯面角部Cに対応する角点C1が基準値H1に一致するように、所定の荒切込量Dbが設定されている。従って、歯面角部Cに対応する角点C1が、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点C10に一致する。歯面角部B,Dは、仮想的な基準歯面形状に対して深く削り取る加工が施されている。従って、歯面角部B,Dに対応する角点B1,D1は、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点B10,D10よりも負方向(図14の下方向)に位置する。
また、本形態においては、歯面角部Aに対応する角点A1も、基準値H1に一致するように設定されている。従って、歯面角部Aに対応する角点A1は、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点A10に一致する。ただし、歯面角部Aに対応する角点A1は、基準値H1に一致しないように設定しても良い。
修整荒加工工程ST3を上記のように実施することで、従動歯車G2の歯面の全面に対して加工が施されることになる。詳細には、修整荒加工工程ST3では、少なくとも所定の荒切込量Dbの加工が施される。
ここで、修整荒加工工程ST3においては、図14に示すように、歯すじ方向中央部における圧力角修整量をδとしている。これにより、歯すじ方向一方端における圧力角の絶対値と、歯すじ方向他方端における圧力角の絶対値とを、異なる値とすることができる。特に、歯面角部Dに対応する角点D1を、歯面角部Bに対応する角点B1よりも、深く削り取る位置とすることができる。
より詳細には、歯面角部Dに対応する角点D1と、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点D10との距離(修整量)は、後述する所定の仕上切込量Dcよりも大きな値に設定されている。一方、歯面角部Bに対応する角点B1と、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点B10との距離(修整量)は、後述する所定の仕上切込量Dcよりも小さな値に設定されている。このように、修整荒加工工程ST3は、歯面角部Dを他の部位に比べて大きく削り取る加工であるため、歯面角部加工工程と称する。
そして、図12に示すように、制御装置40は、修整荒加工工程ST3(歯面角部加工工程)に続いて、仕上加工工程ST4(基準歯面加工工程)を実施する。仕上加工工程ST4は、基準加工条件によるギヤスカイビング加工を施す。
仕上加工工程ST4を実施した後の従動歯車G2の歯面は、置換座標系において、図17~図19に示すように加工される。仕上加工工程ST4における基準値H0は、直前に実施された修整荒加工工程ST3の基準値H1に対して、所定の仕上切込量Dcを付与した値である。つまり、仕上加工工程ST4において、歯面は、置換座標系において、基準値H0となる平面となるように加工される。ここでの基準加工条件とは、基準荒加工工程ST1における基準加工条件に対して、切込量を付与した加工条件であって、歯面を所定歯面形状(仕上歯面形状)に加工する加工条件である。
しかし、上述したように、修整荒加工工程ST3において、歯面角部Dに対応する角点D1と、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点D10との距離(修整量)は、後述する所定の仕上切込量Dcよりも大きな値に設定されている。つまり、歯面角部Dは、仕上切込量Dcに対応する位置よりも深い位置に位置する。一方、歯面角部D以外の部位は、仕上切込量Dcに対応する位置よりも浅い位置に位置する。
従って、仕上加工工程ST4においては、歯面角部D以外の部位を、所定歯面形状に加工する。一方、仕上加工工程ST4においては、歯面角部Dは、加工されない。つまり、歯面角部Dは、修整荒加工工程ST3において加工された面が残存する。
(8.修整荒加工工程ST3における加工条件の決定方法)
修整荒加工工程ST3における加工条件の決定方法について、図11、図14、図17、および、図20を参照して説明する。
図14および図17に示すように、修整荒加工工程ST3における歯面角部Cに対応する角点C1が、基準値H1に一致する。そして、修整荒加工工程ST3にて加工される歯面は、置換座標系において、基準値H1となる平面上、または、基準値H1となる平面よりも深い位置に位置する。
また、図14および図17に示すように、修整荒加工工程ST3は、バイアス修整を付与しているため、歯面は、歯すじ方向の全長S3に亘ってねじれている。そして、図14に示すように、歯すじ方向一方の端面から圧力角修整量が0になる歯すじ方向の位置P1までの長さを、S2とする。ここで、歯すじ方向中央部における圧力角修整を付与しているため、圧力角修整量が0となる位置は、歯すじ方向中央部からずれた位置に位置する。本形態においては、長さS2は、歯すじ方向の全長の半分よりも長い。
そして、図17に示すように、歯面角部Dに対応する角点D1と、仮想的な基準歯面形状上に位置する角点D10との距離(修整量)は、仕上加工工程ST4における所定の仕上切込量Dcよりも大きな値に設定されている。従って、仕上加工工程ST4において、歯面角部D以外が加工され、歯面角部Dが、三角形状の面取りとして残存する。歯面角部Dの修整領域における歯形方向の長さをR1とし、歯面角部Dの修整領域における歯すじ方向の長さをS1とする。
修整荒加工工程ST3における歯面形状は、バイアス修整が付与されているため、非常に複雑な三次元形状となる。しかし、このような複雑な三次元形状のままでは、歯面形状の設計が容易ではない。そこで、図20に示すように、歯すじ方向において、歯すじ方向一方端から圧力角修整量が0となる位置までの範囲(S2)であって、歯形方向において全長の範囲(R2)を、以下に示すような仮想形状と定義する。
修整荒加工工程ST3において加工される歯面角部Cに対応する角点C1を通る基準平面を生成する。基準平面は、点C1,P2,P3,P4を通り、縦軸の値が同一となる平面である。点P2は、図14に示す点D10に一致する。点P3は、図14および図17に示す点P1とは異なる値となる。ただし、点P3は、点P1と一致する場合もある。
次に、点C1,P3および点D1を頂点とする三角形平面を生成する。当該三角形平面は、図20において斜線を付した領域である。つまり、当該三角形平面は、歯面角部Dを含む平面であって、従動歯車G2の歯面(図20の上面)、歯すじ方向一方の歯端面(図20の左前面)、歯先面(図20の右前面)とからなる3つの面により構成される歯部の頂点P2を切り落とした切頂三角形平面である。つまり、斜線領域の一部に含まれる歯面角部Dが、従動歯車G2の歯面(図20の上面)、歯すじ方向一方の歯端面(図20の左前面)、歯先面(図20の右前面)とからなる3つの面により構成される歯部の頂点P2を切り落とした切頂三角形平面として近似される。
そして、歯すじ方向一方の歯端面における圧力角修整量をαと定義する。仕上加工工程ST4において歯面角部Cに対応する角点C0と、修整荒加工工程ST3において歯面角部Cに対応する角点C1との距離を、βと定義する。すなわち、距離βは、仕上加工工程ST4における所定の仕上切込量Dcに一致する。また、歯面の最終形状において、歯面角部Dにおける歯厚方向の最大修整量をγとする。
そして、歯すじ方向一方の歯端面における圧力角修整量αは、式(1)(2)(3)を満たすように決定される。
α=β+γ ・・・ (1)
α/R2=γ/R1 ・・・ (2)
α/S2=γ/S1 ・・・ (3)
α:歯端面における圧力角修整量
β:切頂三角形平面において歯面角部とは歯形方向反対側の端点と所定歯面形状との歯厚方向の距離
γ:歯面角部における歯厚方向の最大修整量
R1:歯面角部の修整領域における歯形方向の長さ
R2:歯形方向の評価範囲(歯先面と歯底側の歯形基準面との距離)
S1:歯面角部の修整領域における歯すじ方向の長さ
S2:歯端面から圧力角修整量が0になる歯すじ方向の位置までの長さ
ここで、仕上加工工程ST4における所定の仕上切込量βは、「0<β<αの最大修整量」の範囲で決定される。αの最大修整量とは、修整荒加工工程ST3において、歯面角部Dに付与可能な修整量の最大値である。
(9.歯車加工方法による効果)
上述したように、歯面角部Dは、修整荒加工工程ST3にて加工し、歯面角部D以外の部位は、仕上加工工程ST4にて加工する。修整荒加工工程ST3におけるバイアス修整は、修整前の歯面形状をねじれさせた面形状にする修整方法である。つまり、バイアス修整は、歯すじ方向に進むに従って、圧力角が徐々に変化するように歯形形状を異ならせる修整方法である。従って、バイアス修整を付与して歯面全面を加工した場合には、歯面を構成する4隅のうち一対の角部が相対的に深く削り取られ、残りの一対の角部が相対的に浅く削り取られることになる。
そこで、修整荒加工工程ST3(歯面角部加工工程)において、バイアス修整を付与する加工を行うことで、従動歯車G2における歯先かつ歯すじ方向一方端部に位置する歯面角部Dを深く加工するようにしている。一方、仕上加工工程ST4(基準歯面加工工程)は、基準加工条件により、所定歯面形状の加工を行う。つまり、加工完成後の従動歯車G2の歯面において、歯面角部Dは、修整荒加工工程ST3において加工された部位であり、歯面角部D以外の部位は、仕上加工工程において加工された部位である。
このように、基準加工条件に対してバイアス修整を付与した加工工程、および、基準加工条件による加工工程を含む複数の加工工程を利用している。従って、従動歯車G2において、歯面角部Dのみを、他の部位に対して深く削り取ることができる。このようにして加工された従動歯車G2は、噛み合い初期におけるトロコイド干渉を回避しつつ、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる。
また、仕上加工工程ST4を、修整荒加工工程ST3の後工程として実施するようにした。これにより、修整荒加工工程ST3は、歯面角部Dを加工すると共に、歯面角部D以外の部位を加工している。そして、仕上加工工程は、修整荒加工工程ST3の後工程に実施され、修整荒加工工程ST3における歯面角部D以外の部位を加工している。つまり、修整荒加工工程ST3は、通常の荒加工工程の1回として機能しており、歯面角部Dを加工するための特別な加工工程を追加する必要がない。
ここで、駆動歯車G1および従動歯車G2は、ねじれ角を有する歯車である。そして、従動歯車G2を加工対象とした場合において、修整荒加工工程ST3は、従動歯車G2の歯先かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部Dを加工している。特に、ねじれ角を有する歯車において、従動歯車G2における歯面角部Dにおけるトロコイド干渉を回避し、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる。
修整荒加工工程ST3においては、バイアス修整を付与するため、歯面角部Dを基準値H1に対して深く加工する場合には、対角に位置する歯面角部Bも基準値H1に対して深く加工される可能性がある。
ただし、修整荒加工工程ST3は、基準加工条件に対してバイアス修整を付与すると共に歯すじ方向中央部における圧力角修整を付与することとした。このようにすることで、従動歯車G2における歯先かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部Dにおける修整量を相対的に大きくし、歯元かつ歯すじ方向他方端部である歯面角部Bにおける修整量を相対的に小さくする。
つまり、修整荒加工工程ST3において加工された従動歯車G2の歯先かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部Dが、仕上加工工程ST4にて加工されない部位となる。一方、修整荒加工工程ST3にて加工された従動歯車G2の歯元かつ歯すじ方向他方端部である歯面角部Bは、仕上加工工程ST4にて加工される部位となる。
このように、修整荒加工工程ST3が、バイアス修整のみならず、歯すじ方向中央部における圧力角修整を付与することにより、最終歯面形状として、歯面角部Dのみが修整荒加工工程ST3にて加工された面となり、他の部位が仕上加工工程ST4にて加工された面となる。従って、ねじれ角を有する歯車において、従動歯車G2における歯面角部Dにおけるトロコイド干渉を回避し、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる。
また、基準荒加工工程ST1、修整荒加工工程ST3、および、仕上加工工程ST4は、全てギヤスカイビング加工を施すことにより歯面を加工する。従って、工具を交換することなく、歯車の加工を行うことができる。また、一連の加工動作での加工も可能となる。
(10.歯車加工方法の他の例)
歯車加工方法の他の例について図21を参照して説明する。上記においては、仕上加工工程ST4を、修整荒加工工程ST3(歯面角部加工工程)の後工程に実施した。本例においては、仕上加工工程ST13を、歯面角部加工工程ST14の前工程に実施する。
制御装置40は、基準荒加工工程ST11を実施する。基準荒加工工程ST11は、上述した基準荒加工工程ST1と同一である。続いて、制御装置40は、今回実施した基準荒加工工程ST11が仕上加工工程の1サイクル前であるか否かを判定する(判定工程ST12)。仕上加工工程の1サイクル前でない場合には(ST12:No)、制御装置40は、仕上加工工程の1サイクル前に達するまで、基準荒加工工程ST11を再び実施する。
実施した基準荒加工工程ST11が仕上加工工程の1サイクル前に達した場合には(ST12:Yes)、制御装置40は、仕上加工工程ST13を実施する。仕上加工工程ST13は、上記実施形態における仕上加工工程ST4と同一の加工条件にて実施される。つまり、仕上加工工程ST13においては、歯面の全面に亘って加工され、歯面が所定歯面形状に形成される。
続いて、歯面角部加工工程ST14を実施する。歯面角部加工工程ST14は、上述した修整荒加工工程ST3と同一の加工条件にて実施される。つまり、歯面角部加工工程ST14は、歯面角部Dを加工する。ただし、歯面角部加工工程ST14は、歯面角部D以外の部位は加工しない。
このように、仕上加工工程ST13を歯面角部加工工程ST14の前工程として実施した場合であっても、最終的に歯面角部Dのみを削り取った形状を形成することができる。その結果、従動歯車G2における歯面角部Dにおけるトロコイド干渉を回避し、噛み合い初期以外において噛み合い率を向上させることができる。
(11.駆動歯車G1の目標歯面形状)
上記においては、従動歯車G2について説明した。駆動歯車G1についても、実質的に同様に適用することができる。ただし、トロコイド干渉が生じる部位が、従動歯車G2においては歯先であるのに対して、駆動歯車G1においては歯元となる。従って、従動歯車G2の歯面の歯面角部Dに相当する形状を、駆動歯車G1における歯面の歯元側に形成する。
この場合の駆動歯車G1の目標歯面形状について、図22および図23を参照して説明する。図22は、駆動歯車G1の目標歯面形状を、実際の三次元座標系にて表しており、図23は、駆動歯車G1の歯面を置換座標系にて表している。
駆動歯車G1の目標歯面形状は、上述したトロコイド干渉を低減するための形状として、歯元かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部bが、削り取られた形状であって、歯面角部b以外の部位が、所定歯面形状にて表される形状である。図22および図23において、駆動歯車G1の歯面は、歯面角部a,b,c,dを有しており、それぞれの歯面角部a,b,c,dに対応する角点がa0,b1,c0,d0である。
駆動歯車G1の当該歯面の加工方法は、上述した従動歯車G2を対象した歯車加工方法を、同様に適用できる。具体的には、図12に示す歯車加工方法も、図21に示す歯車加工方法も適用できる。
また、歯面角部加工工程ST3,ST14における加工条件の決定方法については、上記従動歯車G2においては、歯面角部Dを、歯面、歯端面、歯先面とからなる3つの面により構成される歯部の頂点を切り落とした切頂三角形平面として近似した。駆動歯車G1においては、歯面角部bを、歯面、歯端面、歯底側の歯形基準面とからなる3つの面により構成される歯部の頂点を切り落とした切頂三角形平面として近似すれば良い。歯形基準面とは、歯部において、歯先面の裏面に相当する仮想面である。
このように、駆動歯車G1についても歯面角部bを所定歯面形状に対して削り取る加工を行うことにより、トロコイド干渉を低減できるようになる。また、駆動歯車G1および従動歯車G2の両者に、上述したような加工を施すことにより、より確実にトロコイド干渉を低減できる。
(12.その他)
上記実施形態においては、基準荒加工工程ST1、修整荒加工工程ST3、および、仕上加工工程ST4は、全てギヤスカイビング加工を施すことにより歯面を加工することとした。この他に、例えば、基準荒加工工程ST1および修整荒加工工程ST3が、ギヤスカイビング加工を適用し、仕上加工工程ST4が、ホブカッタによるホブ加工やシェーパカッタによるシェーパ加工などの他の歯車加工方法を適用しても良い。また、基準荒加工工程ST1がホブ加工やシェーパ加工などを適用し、修整荒加工工程ST3および仕上加工工程ST4がギヤスカイビング加工を適用しても良い。また、修整荒加工工程ST3の後に焼入れなどの熱処理工程を実施し、熱処理工程の後に仕上加工工程ST4を実施するようにしても良い。
また、修整荒加工工程ST3および歯面角部加工工程ST14においては、歯面の全面に対してバイアス修整を付与した加工を行った。この他に、歯すじ方向において歯面角部D,bを含む部分のみをバイアス修整を付与し、歯すじ方向の残りの部位(歯面角部A,B寄りの部分、歯面角部c、d寄りの部分)はバイアス修整を付与しない加工とすることもできる。つまり、一回の加工送り動作における歯すじ方向の途中で、バイアス修整を付与した状態とバイアス修整を付与しない状態とで切替を行う。
例えば、従動歯車G2において、歯すじ方向において、歯面角部A,B側から加工を開始する場合には、最初はバイアス修整を付与せず、歯すじ方向の途中からバイアス修整を付与して歯面角部C,Dに至るまで加工を行う。また、従動歯車G2において、歯すじ方向において、歯面角部C,D側から加工を開始する場合には、最初はバイアス修整を付与して加工を行い、歯すじ方向の途中からバイアス修整を付与せず歯面角部A,Bに至るまで加工を行う。
例えば、駆動歯車G1において、歯すじ方向において、歯面角部c,d側から加工を開始する場合には、最初はバイアス修整を付与せず、歯すじ方向の途中からバイアス修整を付与して歯面角部a,bに至るまで加工を行う。また、駆動歯車G1において、歯すじ方向において、歯面角部a,b側から加工を開始する場合には、最初はバイアス修整を付与して加工を行い、歯すじ方向の途中からバイアス修整を付与せず歯面角部c,dに至るまで加工を行う。
W 工作物
G,G1,G2 歯車
ST3,ST14 歯面角部加工工程
ST4,ST13 基準歯面加工工程
D,b 歯面角部

Claims (8)

  1. 工作物に歯車の歯面を加工する歯車加工方法であって、
    基準加工条件に対してバイアス修整を付与したギヤスカイビング加工を施すことにより、歯先かつ歯すじ方向端部、または、歯元かつ歯すじ方向端部の少なくとも1つである歯面角部を、所定歯面形状に対して削り取る加工を行う歯面角部加工工程と、
    前記歯面角部加工工程の前工程または後工程に実施され、前記基準加工条件による歯車加工を施すことにより、前記歯面角部以外の部位を前記所定歯面形状に加工する基準歯面加工工程と、
    を備える、歯車加工方法。
  2. 前記歯面角部加工工程は、前記歯面角部を加工すると共に前記歯面角部以外の部位を加工し、
    前記基準歯面加工工程は、前記歯面角部加工工程の後工程に実施され、前記歯面角部加工工程における前記歯面角部以外の部位を加工する仕上加工工程として実施される、請求項1に記載の歯車加工方法。
  3. 前記基準歯面加工工程は、前記基準加工条件によるギヤスカイビング加工を施すことにより、前記歯面角部以外の部位を前記所定歯面形状に加工する、請求項1または2に記載の歯車加工方法。
  4. 加工対象である前記歯車は、従動歯車であってねじれ角を有する歯車であり、
    前記歯面角部加工工程は、前記従動歯車の歯先かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部を加工する、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯車加工方法。
  5. 前記歯面角部加工工程は、前記基準加工条件に対して前記バイアス修整を付与すると共に歯すじ方向中央部における圧力角修整を付与して、前記歯先かつ前記歯すじ方向一方端部における修整量を相対的に大きくし、前記歯元かつ歯すじ方向他方端部における修整量を相対的に小さくすることにより、前記従動歯車の前記歯先かつ前記歯すじ方向一方端部を加工する、請求項4に記載の歯車加工方法。
  6. 加工対象である前記歯車は、駆動歯車であってねじれ角を有する歯車であり、
    前記歯面角部加工工程は、前記駆動歯車の歯元かつ歯すじ方向一方端部である歯面角部を加工する、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯車加工方法。
  7. 前記歯面角部加工工程は、前記基準加工条件に対して前記バイアス修整を付与すると共に歯すじ方向中央部における圧力角修整を付与して、前記歯元かつ前記歯すじ方向一方端部における修整量を相対的に大きくし、前記歯先かつ歯すじ方向他方端部における修整量を相対的に小さくすることにより、前記駆動歯車の前記歯元かつ前記歯すじ方向一方端部を加工する、請求項6に記載の歯車加工方法。
  8. 前記歯面角部を、歯面と、歯端面と、歯先面または歯底側の歯形基準面とからなる3つの面により構成される歯部の頂点を切り落とした切頂三角形平面として近似し、
    式(1)(2)(3)を満たすように、歯端面における圧力角修整量αを決定する、請求項1~7のいずれか1項に記載の歯車加工方法。
    α=β+γ ・・・ (1)
    α/R2=γ/R1 ・・・ (2)
    α/S2=γ/S1 ・・・ (3)
    α:歯端面における圧力角修整量
    β:切頂三角形平面において歯面角部とは歯形方向反対側の端点と所定歯面形状との歯厚方向の距離
    γ:歯面角部における歯厚方向の最大修整量
    R1:歯面角部の修整領域における歯形方向の長さ
    R2:歯形方向の評価範囲(歯先面と歯底側の歯形基準面との距離)
    S1:歯面角部の修整領域における歯すじ方向の長さ
    S2:歯端面から圧力角修整量が0になる歯すじ方向の位置までの長さ
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