JP2022177821A - キナーゼ阻害剤療法と関連した、遺伝的耐性を克服し、治療効果を向上させ、安全性リスクを最小化する方法 - Google Patents

キナーゼ阻害剤療法と関連した、遺伝的耐性を克服し、治療効果を向上させ、安全性リスクを最小化する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】キナーゼ阻害剤の薬物結合相互作用に基づいて、癌及び他の疾患である患者の治療計画を開発する方法、ならびにキナーゼの変異状態及びキナーゼ占有率を特定する方法を提供する。【解決手段】試験化合物の標的キナーゼ占有率を特定する方法であって、試験試料中の、活性状態にあるが試験化合物と結合していない標的キナーゼの残存レベルを、参照化合物と結合した代表的なシグネチャーペプチドのレベルに基づいて得ることと、なお、試験試料中の活性状態にある標的キナーゼのレベルは、結合型標的キナーゼのレベルと残存レベルとを合算したレベルであり、試験試料中の標的キナーゼの総レベルは、活性状態にある標的キナーゼのレベルと遊離型標的キナーゼのレベルとを合算したレベルである、標的キナーゼ占有率を得ることと、標的キナーゼ占有率は、標的キナーゼの総レベルに対する結合型標的キナーゼのレベルである、方法である。【選択図】なし

Description

[関連出願]
本出願は、2021年5月18日付けで出願された米国仮特許出願第63/190,092号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
細胞シグナル伝達における重要な役割を前提に、タンパク質キナーゼは、薬学研究において集中的に追求される標的となっており、様々な小分子キナーゼ阻害剤が、米国食品医薬品局(FDA)により臨床使用に承認されてきた。こうした薬物に関しては、癌が主要な適応症であったものの、製薬業界内の注目は、関節リウマチ、自己免疫疾患、アレルギー、及びパーキンソン病等、他の疾病を含むように拡大してきた。
多くの種類の癌は、初期こそ治療に反応するものの、経時的に、薬剤耐性を促進する代償的機構を発達させる可能性がある。耐性は、小分子キナーゼ阻害剤の臨床有効性を妨げる大きな問題である。薬物の有効性は、その分子標的により影響を受ける。この標的の、遺伝子変異、翻訳後修飾(PTM)、又は発現/活性化レベルを通じた変更は、癌細胞が生存するために用いるやり方である。例えば、変異は、キナーゼ阻害剤が結合する接触点を変更することにより、又は標的酵素の立体構造状態を摂動させることにより、キナーゼ阻害剤の効果を妨害する可能性がある。そのような変異は、阻害剤の結合に不利に働き、その結果、有効性を制限する。遺伝的相違は、治療前から癌細胞集団内に低レベル(又は検出不能レベル)で存在して、臨床上有効な標的特化作用剤に曝されている間に正の選択を受ける可能性がある。小分子キナーゼ阻害剤は、癌、特に血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)の治療への使用が増加しつつある。難治性又は再発患者に合わせた個人専用特化治療を提供する新たな戦略が緊急に必要とされている。
1つの態様において、本明細書中に記載されるのは、試験化合物の標的キナーゼ占有率を特定する方法である。本方法は、
(1)試験試料を得ることと、
なお、試験試料は、試験化合物が投与された試験対象に由来する生体試料であるか、又は試験化合物と接触させた生体試料である;
(2)試験試料の第一部分を処理して、結合型シグネチャーペプチド及び遊離型シグネチャーペプチドを含む代表的なシグネチャーペプチドの集団を生成させることと、
なお、結合型シグネチャーペプチドは、試験化合物と結合した代表的なシグネチャーペプチドであり、遊離型シグネチャーペプチドは、試験化合物と結合していない代表的なシグネチャーペプチドであり、代表的なシグネチャーペプチドは、試験化合物との結合部位を含む標的キナーゼの断片である;
(3)処理された試料中の、結合型シグネチャーペプチドのレベル及び遊離型シグネチャーペプチドのレベルを特定することと、
(4)結合型シグネチャーペプチドのレベル及び遊離型シグネチャーペプチドのレベルそれぞれに基づき、試験試料中の結合型標的キナーゼのレベル及び遊離型標的キナーゼのレベルを得ることと、
結合型標的キナーゼは、試験化合物と結合した標的キナーゼであり、遊離型標的キナーゼは、試験化合物と結合していない標的キナーゼである;
(5)試験化合物の標的キナーゼ占有率を得ることと、
標的キナーゼ占有率は、結合型標的キナーゼのレベルと遊離型標的キナーゼのレベルを合算したレベルに対する結合型標的キナーゼのレベルである;
を含む。標的キナーゼは、化合物の意図する標的であることも、意図しない標的であることも可能である。
本方法は、工程(1)の後で、ただし工程(2)の前に、試験試料を、飽和量の、代表的なシグネチャーペプチド内の結合部位で標的キナーゼと共有結合で強力に結合することができる参照化合物と接触させることと、処理した試料中の、参照化合物と結合した代表的なシグネチャーペプチドのレベルを特定することとを更に含むことができ、試験化合物は、標的キナーゼと共有結合する。一部の実施形態において、参照化合物は、安定同位体標識された又はビオチン化された試験化合物である。
一部の実施形態において、本方法は、
試験試料中の、活性状態にあるが試験化合物と結合していない標的キナーゼの残存レベルを、参照化合物と結合した代表的なシグネチャーペプチドのレベルに基づいて得ることと、
なお、試験試料中の活性状態にある標的キナーゼのレベルは、結合型標的キナーゼのレベルと残存レベルとを合算したレベルであり、試験試料中の標的キナーゼの総レベルは、活性状態にある標的キナーゼのレベルと遊離型標的キナーゼのレベルとを合算したレベルである;
標的キナーゼ占有率を得ることと、
標的キナーゼ占有率は、標的キナーゼの総レベルに対する結合型標的キナーゼのレベルである;
を更に含む。一部の実施形態において、標的キナーゼ占有率は、100×(結合型標的キナーゼのレベル/標的キナーゼの総レベル)で計算されるキナーゼ占有率パーセントである。
本方法は、工程(1)の後で、ただし工程(2)の前に、試験試料の第二部分を、飽和量の、標的キナーゼ中の試験化合物の結合部位を含む部位と不可逆的に結合することができるビオチン化プローブと接触させることと、試験試料の第二部分を処理してプローブ結合したシグネチャーペプチドを生成させることと、シグネチャーペプチドは、ビオチン化プローブと結合した代表的なシグネチャーペプチドである;プローブ結合したシグネチャーペプチドのレベルを特定することとを更に含むことができ、試験化合物は、標的キナーゼと可逆的に又は非共有結合で結合する。
一部の実施形態において、本方法は、第二部分をビオチン化プローブと接触させる前に、試験化合物を標的キナーゼから解離させることを更に含む。
一部の実施形態において、本方法は、
プローブ結合したシグネチャーペプチドのレベルに基づき、活性状態にある標的キナーゼのレベルを得ることと、
なお、試験試料中の標的キナーゼの総レベルは、活性状態にある標的キナーゼのレベルと遊離型標的キナーゼのレベルとを合算したレベルである;
標的キナーゼ占有率を得ることと、
標的キナーゼ占有率は、標的キナーゼの総レベルに対する結合型標的キナーゼのレベルである;
を更に含む。一部の実施形態において、標的キナーゼ占有率は、100×(結合型標的キナーゼのレベル/標的キナーゼの総レベル)で計算されるキナーゼ占有率パーセントである。
一部の実施形態において、本方法は、
工程(1)の後、試験試料の第三部分を、飽和量の、標的キナーゼ中の、試験化合物の結合部位を含む部位と不可逆的に結合することができる参照化合物と接触させること、並びに試験試料の第三部分を処理して、参照化合物と結合しなかったあらゆるタンパク質及び余剰参照化合物を除去することと、
試験化合物を、あらゆる結合タンパク質から解離させること、解離したタンパク質を沈殿させること、並びに上清中の試験化合物及び参照化合物のレベルを測定することと、
なお、試験化合物と結合した総タンパク質レベルは、上清中の試験化合物のレベルで与えられ、タンパク質と結合しなかった総タンパク質量は、上清中の参照化合物のレベルで与えられ、総キナーゼ量は、結合したキナーゼ+未結合キナーゼの量に等しい;
総標的占有率を得ることと、
総標的占有率は、総キナーゼレベルに対する結合した総キナーゼのレベルである;
を更に含む。一部の実施形態において、総標的占有率は、100×(結合した総キナーゼのレベル/総キナーゼレベル)で計算される占有率パーセントである。
本方法は、総標的占有率から標的キナーゼ占有率を減算することにより、試験化合物のオフターゲット占有率を得ることを更に含むことができ、オフターゲット占有率は、試験化合物の意図しない標的1種以上に対する試験化合物の占有率である。
一部の実施形態において、本方法は、工程(1)の後、硫酸アンモニウムを加えて他のタンパク質を沈殿させること、上清を回収すること、更に硫酸アンモニウムを加えて試験化合物キナーゼタンパク質複合体を沈殿させるとともに、沈殿した複合体を分析用に収集することにより、試験試料の一部から、試験化合物キナーゼ複合体を分取することとを更に含む。
一部の実施形態において、代表的なシグネチャーペプチドは、MANGCLL(配列番号1)、MANGSLL(配列番号2)、MANGYLL(配列番号4)、MANGRLL(配列番号5)、MANGALL(配列番号6)、MANGFLL(配列番号7)、MANGTLL(配列番号8)、MANGPLL(配列番号9)、ISNGCLL(配列番号16)、EFMEHGCLSDY(配列番号17)、LPSGCL(配列番号18)、LPSGCLRDF(配列番号19)、MERGCLL(配列番号20)、MENGCLL(配列番号21)、又はMPHGCLL(配列番号22)を有する、最大50のアミノ酸を含むペプチドである。
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、対象が候補化合物に反応する見込みを評価する方法であり、本方法は、
(1)試験試料を得ることと、
なお、試験試料は、対象由来の生体試料である;
(2)試験試料を処理して、修飾シグネチャーペプチド及び野生型シグネチャーペプチドを含む代表的なシグネチャーペプチドの集団を生成させることと、
代表的なシグネチャーペプチドは、候補化合物の標的であるキナーゼの断片であり、代表的なシグネチャーペプチドは、変異した又は翻訳後修飾を受けた場合、候補化合物に対する反応性に影響を及ぼす可能性がある部位を含み、修飾シグネチャーペプチドは、変異した又は修飾された代表的なシグネチャーペプチドであり、野生型シグネチャーペプチドは、変異又は修飾を含まない代表的なシグネチャーペプチドである;
(3)処理した試料中の修飾シグネチャーペプチドのレベル及び野生型シグネチャーペプチドのレベルを特定することと、
(4)修飾シグネチャーペプチドのレベル及び野生型シグネチャーペプチドのレベルに基づいて、変異又は修飾の存在又はパーセンテージを得ることと、
(5)存在又はパーセンテージに基づいて、対象が候補化合物に反応する見込みを評価することと、
存在する又は高いパーセンテージであることは、見込みが低いことを示す;
を含む。一部の実施形態において、候補化合物は、キナーゼの阻害剤である。
一部の実施形態において、変異又は修飾は、BTK遺伝子変異であり、任意選択で、C481S、C481F、C481Y、C481R、C481P、C481A、C481T、T474I、T474M、T474S、T474P、T316A、及びL528Wから選択されるか、又はpY223、pY551、pY225、pY344、及びpY361から選択される自己リン酸化事象である。
1つの態様において、本明細書中に記載されるのは、対象が候補化合物に反応する見込みを評価する方法であり、本方法は、
(1)試験試料を得ることと、
なお、試験試料は、対象由来の生体試料である;
(2)試験試料を処理して、リン酸化シグネチャーペプチド及び非リン酸化シグネチャーペプチドを含む代表的なシグネチャーペプチドの集団を生成させることと、
代表的なシグネチャーペプチドは、(i)キナーゼの活性化に際してリン酸化されるリン酸化可能な残基を含む活性化セグメントの一部を含むキナーゼ断片、又は(ii)キナーゼの基質の、リン酸化可能な残基を含む断片であり、リン酸化シグネチャーペプチドは、リン酸化可能な残基でリン酸化された代表的なシグネチャーペプチドであり、非リン酸化シグネチャーペプチドは、リン酸化を欠いている代表的なシグネチャーペプチドであり、キナーゼは、候補化合物の標的である;
(3)処理した試料中のリン酸化シグネチャーペプチドのレベル及び非リン酸化シグネチャーペプチドのレベルを特定することと、
(4)リン酸化シグネチャーペプチドのレベル及び非リン酸化シグネチャーペプチドのレベルに基づいて、活性化キナーゼのレベル又はキナーゼのリン酸化基質のレベルを得ることと、
(5)活性化キナーゼ又はキナーゼのリン酸化基質のレベル又はパーセンテージに基づいて、対象が候補化合物に反応する見込みを評価することと、
なお、レベル又はパーセンテージが高いほど、対象は、候補化合物に対して耐性である見込みがあることを示す;
を含む。
更に別の態様において、対象においてキナーゼを標的とする治療化合物の有効性を上昇させる方法を記載する。本方法は、2つ以上の条件下で対象に化合物を投与することと、本明細書中に記載される方法のいずれかを用いて、2つ以上の条件のそれぞれの下で対象から得られた生体試料中の、化合物の標的キナーゼ占有率を得ることと、なお、この標的キナーゼは、化合物の意図する標的である;2つ以上の条件下で得られた標的キナーゼ占有率に基づき、対象において所望の標的キナーゼ占有率を達成するように、化合物の投薬又はレジメンを最適化することとを含む。一部の実施形態において、対象には、キナーゼを標的とする治療化合物を2種以上含む併用療法が施されており、この場合、各化合物の標的キナーゼ占有率を特定して、各化合物の標的キナーゼ占有率に基づき、併用療法の投薬又はレジメンを最適化する。
1つの態様において、本明細書中に開示されるのは、対象においてキナーゼを標的とする治療化合物の副作用を低減する方法であり、本方法は、2つ以上の条件下、対象に化合物を投与することと、本明細書中に記載される方法のいずれかを用いて、2つ以上の条件のそれぞれの下で対象から得られた生体試料中の、化合物の標的キナーゼ占有率を得ることと、なお、この標的キナーゼは、化合物の意図する標的ではない;2つ以上の条件下で得られた標的キナーゼ占有率に基づき、対象において最小標的キナーゼ占有率を達成するように、化合物の投薬又はレジメンを最適化することとを含む。
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、キナーゼを標的とする治療化合物で治療されている対象をモニタリングする方法であり、本方法は、本明細書中に記載される方法のいずれかを用いて、化合物投与後に対象から得られた生体試料中の、化合物の標的キナーゼ占有率を得ることと、得られた標的キナーゼ占有率を、対応する先に定めた占有率と比較することとを含み、この先に定めた占有率は、化合物が所望の効果を呈する参照対象由来の参照試料、又は化合物が所望の効果を呈した時点の同一対象から得られるものであり、キナーゼ標的占有率が、先に定めた占有率以上である場合、この化合物は、対象において所望の効果を有すると確定される。
別の態様において、対象においてキナーゼを標的とする治療化合物のオフターゲット効果をモニタリングする方法が記載される。本方法は、本明細書中に記載される方法のいずれかを用いて、化合物投与後に対象から得られた生体試料中の、化合物の標的キナーゼ占有率を得ることと、なお、この標的キナーゼは、化合物の意図する標的ではない;得られた標的キナーゼ占有率を、対応する先に定めた占有率と比較することとを含み、この先に定めた占有率は、化合物がオフターゲット効果を引き起こす参照対象由来の参照試料、又は化合物がオフターゲット効果を引き起こした時点の同一対象から得られるものであり、キナーゼ標的占有率が、先に定めた占有率以上である場合、この化合物は、対象においてオフターゲット効果を有すると確定される。
本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、標的キナーゼ占有率は、対象に治療が施された後、異なる時点で得られた少なくとも2つの試料で特定することができる。
特定された標的キナーゼ占有率を用いて、化合物の投与を続けるかどうか、化合物の投薬量を増減させるか、化合物の投薬レジメンを変更するかどうか、化合物の投与を中止するかどうか、又は代替治療を施すかどうかを決定することができる。
本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、試験試料又は生体試料は、体液(例えば、血液、血漿、血清、尿、若しくは脳脊髄液)、組織片(例えば、脳、腎臓、肺、又は脂肪組織)、細胞(例えば、末梢血単核球(PBMC)、リンパ球、白血球、神経、線維芽細胞、又は他の細胞生検試料)、誘導多能性幹細胞、又は細胞由来小胞を含有するか、又はそれらから得られたものであることが可能である。試料は、対象由来細胞、例えば、末梢血細胞(例えば、PBMC、リンパ球、白血球、リンパ球、顆粒球、単球、及びマクロファージ)又は癌細胞(例えば、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、黒色腫細胞、膵臓癌細胞、胆嚢癌細胞、及び甲状腺癌細胞)、又は腫瘍細胞株を含有することができる。
本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、シグネチャーペプチドは、タンパク質を切断してペプチドにする任意の手段、例えば、特異的タンパク質切断手段(例えば、トリプシン又はキモトリプシン消化)、非特異的タンパク質分解手段(例えば、サブチリシン、プロテイナーゼ、又はフィシン)、又は化学反応に基づくアプローチを用いて生成させることができる。
シグネチャーペプチド(例えば、遊離ペプチド、化合物と結合したペプチド、リン酸化ペプチド、又は変異若しくは修飾ペプチド)のレベルを特定するため、本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)を利用した技法、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段(例えば、LC-MS、LC-MS/MS、CE-MS、又はCE-MS/MS)を利用することができる。
本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、キナーゼは、タンパク質キナーゼB(PKB)、チロシンタンパク質キナーゼBLK、チロシンタンパク質キナーゼBMX、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2(ERBB2)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-4(ERBB4)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、チロシンタンパク質キナーゼFgr(FGR)、Fyn関連キナーゼ(FRK)、チロシンタンパク質キナーゼFyn(FYN)、チロシンタンパク質キナーゼHCK、チロシンタンパク質キナーゼITK/TSK/LYK、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、チロシンタンパク質キナーゼLyn(LYN)、リボソームタンパク質S6キナーゼA3(RPS6KA3)、チロシンタンパク質キナーゼSrc(SRC)、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、チロシンタンパク質キナーゼTec(TEC)、チロシンタンパク質キナーゼTXK、チロシンタンパク質キナーゼYes、及びチロシンタンパク質キナーゼZAP-70から選択することができる。
本明細書中に開示される方法のいずれにおいても、試験化合物又は治療化合物は、血液癌(例えば、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)、マントル細胞リンパ腫、白血病、小児白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群、及び真性赤血球増加症)、関節リウマチ、自己免疫疾患、アレルギー、又はパーキンソン病の治療用のものであることが可能である。一部の実施形態において、対象は、脳腫瘍(例えば、神経膠芽細胞腫(GBM)、神経芽細胞腫(NB)、髄芽細胞腫(MB)、及び転移性脳腫瘍)又は別の種類の癌(例えば、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、皮膚癌、中皮腫、肺癌、口腔癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、肉腫、甲状腺癌、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、又は白血病)を有する。
1つ以上の実施形態の詳細を添付の図面及び下記明細書に記載する。本実施形態の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面及び特許請求の範囲から明らかとなる。
キナーゼ標的の例であるブルトンチロシンキナーゼ(BTK)の模式図である。 非共有結合キナーゼ阻害剤(イブルチニブ)と結合したBTKのシグネチャーペプチドの例(配列番号1)を示すスキームである。 シグネチャーペプチドのLC-MS/MS分析により特定した場合の、癌患者の末梢血単核球(PBMC)中のイブルチニブ結合型BTK及び遊離型BTKの濃度を示す一組のグラフである。 ヒト白血球における、BTKの各種小分子共有結合阻害剤、すなわち、イブルチニブ、アカラブルチニブ、スペブルチニブ、ザヌブルチニブ、及びチラブルチニブのin vitro標的占有率を示すグラフである。 白血病患者におけるザヌブルチニブのBTK占有率を示すグラフである。 様々な白血病患者におけるアカラブルチニブ及びその活性代謝産物ACP-5386のBTK占有率を示すグラフである。 異なる用量のイブルチニブでの、癌患者におけるBTK占有率を示すグラフである。 異なる時点での、投薬後BTK占有率を示すグラフである。 BTKにおけるTyr551のリン酸化に対する用量の効果を示すグラフである。 白血病患者における、チロシンタンパク質キナーゼBMXに対するイブルチニブのオフターゲット結合、BMX占有率を示すグラフである。
本開示は、標的キナーゼ結合部位と共有結合で強力に結合することができる参照化合物を過剰に用いて試料を飽和させることにより、共有結合(すなわち、不可逆的)キナーゼ阻害剤のキナーゼ占有率を、ex vivoアッセイにおいてより正確に特定することができるという予期せぬ発見に、少なくとも部分的に基づく。別の予期せぬ発見は、標的キナーゼ結合部位と不可逆的に結合することができるビオチン化プローブ又は参照化合物を用いて試料を飽和させることにより、非共有結合(すなわち、可逆的)キナーゼ阻害剤のキナーゼ占有率を、より正確に特定することができるというものであった。キナーゼ阻害剤のオンターゲット及びオフターゲット占有率は、結合したキナーゼ及び未結合キナーゼから生成するシグネチャーペプチドを測定することにより、特定することができる。
タンパク質キナーゼシグネチャーペプチド(遊離型及び薬物結合型)のレベルを、個人特化アプローチにおいて用いることで、癌及び他の疾病の患者において、正の臨床成績を達成するとともに小分子キナーゼ阻害剤に関連した意図しない副作用を低減することができる。統合されたアプローチは、患者に固有の遺伝子差異及び後天性の遺伝子差異を考慮に入れる。これにより、医師及び研究者は、所与の治療戦略及びレジメンに患者が反応する見込みをより正確に予測することが可能になる。以下の説明及び例は、キナーゼを標的とする癌療法、特に白血病治療用のBTK阻害剤イブルチニブに注目を置いているものの、同様なアプローチを、他の症状、例えば、関節リウマチ、自己免疫疾患、アレルギー、及びパーキンソン病等に適用することが可能である。
本開示は、患者独自の疾患状態を評価し、意図するキナーゼ標的の状態(すなわち、その定量的レベル、活性化状態、及び遺伝子変異の存在又はパーセンテージ)、阻害剤係合(薬物占有率%)、及び阻害剤の選択性に基づいて、適切な治療選択肢又はレジメンを選択する方法を記載する。このアプローチでは、結合パートナー(可逆的又は不可逆的)により占有された酵素のパーセンテージは、関心対象のキナーゼに特異的である代表的なシグネチャーペプチドのレベルに基づいて特定される。これらのバイオマーカーは、酵素と阻害剤との間の係合部位(複数の場合もある)を含んでおり、酵素がその活性(結合及び未結合)状態及び不活性状態のどれであるかに対応する。本明細書中に記載される方法は、キナーゼ阻害剤療法を受ける患者において、占有率と効果との間の関連性を定義するのに、臨床現場で投与される用量を最適化するのに、遺伝的耐性を克服するのに、治療有効性を向上させるのに、及び望ましくない副作用を最小化するのに、有用である。
キナーゼを標的とする癌療法
タンパク質キナーゼは、リン酸源としてATPを用いて特定アミノ酸をリン酸化することにより、他のタンパク質の生物活性を調節する酵素である。タンパク質キナーゼは、細胞増殖、***、代謝、及びアポトーシスシグナル伝達経路で重要な役割を担う。タンパク質キナーゼの例として、以下が挙げられる:タンパク質キナーゼB(PKB、Akt)、チロシンタンパク質キナーゼBLK(Bリンパ球キナーゼ)、チロシンタンパク質キナーゼBMX(染色体Xの骨髄チロシンキナーゼ遺伝子、別名ETK)、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2(ERBB2、HER2)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-4(ERBB4、HER4)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、チロシンタンパク質キナーゼFgr(FGR)、Fyn関連キナーゼ(FRK、チロシンタンパク質キナーゼ5)、チロシンタンパク質キナーゼFyn(FYN)、チロシンタンパク質キナーゼHCK(造血細胞キナーゼ)、チロシンタンパク質キナーゼITK/TSK/LYK(インターロイキン-2-誘導性T細胞キナーゼ)、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、チロシンタンパク質キナーゼLyn(LYN)、リボソームタンパク質S6キナーゼA3(RPS6KA3)、チロシンタンパク質キナーゼSrc(SRC)、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、チロシンタンパク質キナーゼTec(TEC)、チロシンタンパク質キナーゼTXK(休止リンパ球キナーゼ、RLK)、チロシンタンパク質キナーゼYes(YES1、癌原遺伝子c-Yes、p61-Yes)、及びチロシンタンパク質キナーゼZAP-70(ZAP70、S遺伝子座受容体キナーゼ、SRK)。
キナーゼ活性の調節不全は、様々な種類の癌の癌発生及び転移に関係しており、こうしたキナーゼは、癌細胞成長を調節するとともに、それらの生存を助ける。こうした特徴により、キナーゼ(例えば、ブルトンタンパク質チロシンキナーゼ、BTK)は、癌、特に血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)の治療において、魅力的な標的となっている。キナーゼ阻害剤により治療される可能性のある症状又は障害として、以下が挙げられる:血液癌、例えば、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)、マントル細胞リンパ腫、白血病、小児白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、及び真性赤血球増加症等;脳癌、例えば、神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、及び転移性脳腫瘍等;他の種類の癌、例えば、肺癌、乳癌、胃食道癌、膵癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、子宮頸癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、皮膚癌、中皮腫、肉腫、及び甲状腺癌等;並びに、他の疾病、例えば、関節リウマチ、自己免疫疾患、アレルギー、及びパーキンソン病等。
キナーゼは、リン酸化のため基質タンパク質に結合しこれを方向づける活性部位、すなわちMg2+-ATP(リン酸ドナー)用の結合部位、及び様々なアロステリック(すなわち、調節)部位を有する。Avendano C, Menendez JC. Medicinal Chemistry of Anticancer Drugs, 1st Edition 2008;及びLitalien et al., Pediatric Critical Care (Fourth Edition), 2011, Chapter 117, Pages 1553-1568を参照。同じく、図1を参照。大部分のキナーゼについて、活性セグメント内の残基(例えば、BTKのTyr551)のリン酸化は、不活性(すなわち、圧縮された)酵素を、活性酵素に変換する。ペプチド/タンパク質基質及びATPが活性部位内で、通常は、酵素の露出した溝又はポケットに、適切に位置取りすることにより、触媒反応が生じることが可能になる。活性化セグメントの状態が露出/圧縮(すなわち、活性/不活性)であることを用いて、酵素の主要な立体構造状態を表すことが多い。
癌生物学におけるタンパク質キナーゼの役割を考慮して、多大な努力がそれらの機能を遮断することに向けられてきており、各種小分子キナーゼ阻害剤が、米国食品医薬品局(FDA)により臨床使用に承認されてきた。キナーゼ阻害剤の例として、以下が挙げられる:アベマシクリブ、アカラブルチニブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、バリシチニブ、ビニメチニブ、ボスチニブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、エンコラフェニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ホスタマチニブ、ゲフィチニブ、ギルテリチニブ、GNE-431、イブルチニブ、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、レンバチニブ、ロルラチニブ、ミドスタウリン、ネラチニブ、ネタルスジル、ニロチニブ、ニンテダニブ、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ペキシダルチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、リボシクリブ、ルキソリチニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スペブルチニブ、スニチニブ、テムシロリムス、チラブルチニブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベカブルチニブ、ベムラフェニブ、及びザヌブルチニブ。これらの阻害剤は、カイノームメンバー、例えば、EGFR、ERBB2、ERBB4、BLK、BTK、BMX、ITK、JAK3、TEC、TXK、VEGFR、Kit、PDGFR、ABL、SRC、及びmTORを標的とする。臨床使用される大部分の小分子キナーゼ阻害剤は、酵素のATP結合ポケットを標的とする(I型及びII型)。少数の非ATP競合阻害剤は、アロステリック(すなわち、調節)部位を標的とする(III型)か、酵素の他のポケットを標的とする(IV型)。異なる型の阻害剤(I型~IV型)を、共有結合又は非共有結合で結合させることができる。
治療耐性を特定するアッセイ
大部分の型のキナーゼ阻害剤は、遺伝子変異耐性の対象であり、これにより一部の患者では反応性が低下する。エビデンスは、こうした変異が、薬物治療前から低レベルで存在し、臨床上有効な標的特化作用剤に曝されている間に正の選択を受ける可能性があることを示唆する。イブルチニブの場合、BTK自身の変異が、治療を受けながら病勢進行することの根底にある重要な分子機構であるように思われ、この変異は耐性患者において高頻度で出現する。Woyach et al., N Engl J Med. 2014 Jun 12;370(24):2286-94; Lampson and Brown, Expert Rev Hematol. 2018 March; 11(3):185-194;及びSharma et al., Oncotarget, 2016 7(42):68833-68841を参照。
イブルチニブは、BTKがその活性立体構造にあると仮定した場合、BTKのATP結合ポケットを占有する。イブルチニブ耐性と関連するBTK変異で報告されたものほぼ全てにおいて、変異は、イブルチニブが共有結合する残基であるCys481ホットスポットに影響を及ぼしている(例えば、Cys481Ser/Tyr/Arg/Ala/Phe/Thr)。イブルチニブが水素結合を形成する相手であるThr474ゲートキーパーを含む他のBTK部位での希な変異(例えば、Thr474Phe/Ile/Ser、Thr316Ala、及びLeu528Trp)も、イブルチニブ療法で再発/難治性である患者において検出されてきた。Sharma et al., Oncotarget, 2016 7(42):68833-68841;及びHamasy et al., Leukemia. 2017 Jan;31(1):177-185を参照。
遺伝子変異は、薬物結合の接触点を変更することに加えて、キナーゼ薬物標的の立体構造状態を変化させることができ、これにより、キナーゼの活性を向上又は低下させる。典型的には、こうした変異は、キナーゼによる活性立体構造の採用を促進する(すなわち、キナーゼ活性を上方制御する)か、薬物結合に必要な立体構造変化を阻止するかのいずれかである。
BTKの変異をスクリーニングするために遺伝子配列決定分析が常用的に信頼されて使用されてきたものの、そうした分析は、患者の反応を常に正確に予測するわけではない。BTKの変異は、持続した反応を示す患者の中でも頻発する。イブルチニブのような不可逆的阻害剤を用いると、阻害剤との反応が遅くなる変異であってさえ、薬物との接触が十分に長ければ、完全に不活性化する可能性がある。例えば、BTKのCys481Ser変異という悪化因子は、イブルチニブを、不可逆的阻害剤から可逆的(それでもなお機能性である)阻害剤にする変換である。Lampson and Brown, Expert Rev Hematol. 2018 March; 11(3):185-194を参照。薬剤耐性と関連する更なる悪化因子は、癌細胞による標的の代償的増幅及び発癌活性化である。
本明細書中に記載される方法を用いて、治療の前、最中、及び後の、患者の末梢血細胞中の標的変異の存在及びレベルに基づいて、個人特化治療計画を開発することができる。本方法は、(1)関心対象の変異(又はPTM)をスキャンする代表的なシグネチャーペプチドを同定することと、(2)候補である対象又は患者由来の試験試料を処理して、シグネチャーペプチドを生成させることと、(3)処理した試料中のシグネチャーペプチドレベルに基づき、変異(PTM)の存在又はパーセンテージを特定することと、(4)対象が治療に反応する見込みを評価することと、(5)適切な治療を施すこと(又は、不適切な治療を中止すること)とを含む。例えば、後天性耐性は徐々に発達する可能性があり、細胞のサブ集団が、変異を獲得する又はすでに有している場合、これらの細胞は、薬物選択圧下で出現してくることができる。変異型ペプチド、例えば、MANGSLL(配列番号2)が、野生型ペプチド、例えば、MANGCLL(配列番号1)を上回って出現する、又はそのパーセンテージを上昇させることは、患者が、イブルチニブに対する耐性を獲得したことを示すと考えられ、医師に対して代替治療の選択機会を与える。
BTKアミノ酸配列(配列番号3)
MAAVILESIFLKRSQQKKKTSPLNFKKRLFLLTVHKLSYYEYDFERGRRGSKKGSIDVEKITCVETVVPEKNPPPERQIPRRGEESSEMEQISIIERFPYPFQVVYDEGPLYVFSPTEELRKRWIHQLKNVIRYNSDLVQKYHPCFWIDGQYLCCSQTAKNAMGCQILENRNGSLKPGSSHRKTKKPLPPTPEEDQILKKPLPPEPAAAPVSTSELKKVVALYDYMPMNANDLQLRKGDEYFILEESNLPWWRARDKNGQEGYIPSNYVTEAEDSIEMYEWYSKHMTRSQAEQLLKQEGKEGGFIVRDSSKAGKYTVSVFAKSTGDPQGVIRHYVVCSTPQSQYYLAEKHLFSTIPELINYHQHNSAGLISRLKYPVSQQNKNAPSTAGLGYGSWEIDPKDLTFLKELGTGQFGVVKYGKWRGQYDVAIKMIKEGSMSEDEFIEEAKVMMNLSHEKLVQLYGVCTKQRPIFIITEYMANGCLLNYLREMRHRFQTQQLLEMCKDVCEAMEYLESKQFLHRDLAARNCLVNDQGVVKVSDFGLSRYVLDDEYTSSVGSKFPVRWSPPEVLMYSKFSSKSDIWAFGVLMWEIYSLGKMPYERFTNSETAEHIAQGLRLYRPHLASEKVYTIMYSCWHEKADERPTFKILLSNILDVMDEES
この態様において、シグネチャーペプチドは、5~50(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、5~10、10~15、15~20、20~25、又は25~30)のアミノ酸を含むキナーゼ断片であり、この断片には、仮に変異した(例えば、置換又は欠失により)又は修飾された(例えば、翻訳後修飾により)場合、キナーゼの阻害剤に対する反応性に影響を及ぼす可能性のある残基が含まれている。シグネチャーペプチドは、野生型残基を含むことも変異型残基を含むこともできる。シグネチャーペプチドの例として、野生型残基を含むペプチド、並びに変異型カウンターパートを含むペプチド、例えば、MANGCLL(配列番号1)、MANGSLL(配列番号2)、MANGYLL(配列番号4)、MANGRLL(配列番号5)、MANGALL(配列番号6)、MANGFLL(配列番号7)、MANGTLL(配列番号8)、MANGPLL(配列番号9)、YTVSVFAK(配列番号10)、YAVSVFAK(配列番号11)、NCLVNDQGVVK(配列番号12)、及びNCWVNDQGVVK(配列番号13)が挙げられる。
本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、シグネチャーペプチドは、タンパク質を切断してペプチドにする任意の手段、例えば、特異的タンパク質切断手段(例えば、トリプシン又はキモトリプシン消化)、非特異的タンパク質分解手段(例えば、サブチリシン、プロテイナーゼ、又はフィシン)、又は化学反応に基づくアプローチを用いて生成させることができる。シグネチャーペプチドのレベルは、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段(例えば、LC-MS、LC MS/MS、CE-MS、又はCE-MS/MS)等の方法を用いて定量することができる。測定されたペプチド濃度を、タンパク質濃度に変換して、総タンパク質により正規化することができる。
キナーゼ標的の活性化又は活性
タンパク質キナーゼは、疎水性の触媒背骨残基及び調節背骨残基並びに活性酵素を組み立てるのに必要な側枝殻残基を有する。大部分のタンパク質キナーゼに関連して、大きく2種類の立体構造変化が存在する。第一の立体構造変化は、活性キナーゼを形成するための無傷の調節背骨の形成が関与する。調節背骨は、ペプチド又はタンパク質基質を適切に位置取りさせ、触媒背骨は、活性部位内でATPを位置取りさせて、これにより触媒活性を可能にする。この段階では、酵素は、安定した圧縮立体構造で存在する、すなわち自己阻害されている。
第二の立体構造変化は、触媒サイクルの間、活性キナーゼが開放型及び閉鎖型(すなわち、圧縮された)立体構造の間で切り替わるとおり、活性キナーゼで生じる。例えば、細胞膜でのBTKのPIP3介在型二量体化は、BTKの圧縮型の形成を妨害するとともに、一方又は両方のタンパク質の活性セグメント内でTyr551のトランスリン酸化を招き、これにより、活性化状態になる。Tyr223のリン酸化も生じる。この修飾は、BTKの触媒活性を改変しないが、その結合パートナーに対する選択性を変化させる可能性がある。本明細書中に記載されるとおり、露出した/圧縮された(活性/不活性)活性化セグメントを使用して、酵素の主要な立体構造状態を表す。
BTKは、B細胞悪性腫瘍で過剰発現する。BTKは、Bリンパ球の発生、活性化、シグナル伝達、増殖、及び生存において重要な役割を担っており、B細胞受容体(BCR)の既知の下流メディエーターである。活性化BTKは、B細胞抗原受容体シグナル伝達経路に関与し(すなわち、BTKは、残基Tyr753及びTyr759で、ホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)を直接リン酸化及び活性化する)、これは、Ras/RAF/MEK/ERKシグナル伝達モジュール(細胞成長及び増殖を促進する)及び核内因子NF-κB経路(免疫応答)の活性化を招く。さらに、BTKは、B細胞のケモカイン介在型ホーミング及び付着において本質的な役割を担う。BCRシグナル伝達における役割の他に、BTKは、ケモカイン及びToll様受容体シグナル伝達に関与している。免疫細胞(例えば、マクロファージ)のFcγ受容体(FcγR)は、腫瘍特異的抗体介在型免疫応答において重要な役割を担っており、そのような反応の多くは、BTKが関与している。
本明細書中に記載されるのは、患者試料中の標的キナーゼの活性化状態及び活性を特定する方法である。本方法は、(1)活性状態又は不活性状態にある標的の活性化セグメント、例えば、BTKのYVLDDEY[Pho]TSSVGSK(配列番号14)及びYVLDDEYTSSVGSK(配列番号14)、及び/又はキナーゼ基質のリン酸化部位、例えば、BTKの場合はPLCγ2のDINSLYDVSR(配列番号15)及びDINSLY[Pho]DVSR(配列番号15)をスキャンするシグネチャーペプチドを同定することと、(2)候補である対象又は患者由来の試験試料を処理して、シグネチャーペプチドを生成させることと、(3)処理した試料中のシグネチャーペプチドレベルに基づいて、活性化酵素及び/又はリン酸化基質の存在又はパーセンテージを特定することとを含むことができる。結果を用いて、対象が治療に反応する見込みを評価することができ、適切な治療を特定する又は不適切な治療を中止する決断を下すことができる。例えば、キナーゼ(例えば、BTK)活性化及び活性レベルの上昇は、キナーゼ阻害剤(例えば、イブルチニブ)の存在下であってさえ、シグナル伝達(例えば、BCR)経路を通じたシグナル伝達が持続していることを表す可能性がある。リン酸化シグネチャーペプチド(例えば、BTK又はPLCγ2ペプチド)のパーセンテージが非リン酸化シグネチャーペプチドを上回って上昇していることは、患者がキナーゼ阻害剤に対して抵抗性であることを示していると考えられ、用量を変更する又は代替治療を選択する機会をもたらす。
この態様において、シグネチャーペプチドは、5~50(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、5~10、10~15、15~20、20~25、又は25~30)のアミノ酸を有するキナーゼ断片であり、この断片には、キナーゼの活性化に際してリン酸化される残基を有する活性化セグメントの一部分が含まれている。或いは、シグネチャーペプチドは、5~50のアミノ酸を有するキナーゼ基質断片であることが可能であり、この断片には、キナーゼのリン酸化可能な標的残基が含まれる。シグネチャーペプチドは、リン酸化されていることもリン酸化されていないことも可能である。
薬物占有率及び選択性
別の態様において、本開示は、患者試料由来の代表的なシグネチャーペプチドをバイオマーカーとして用いて、薬物占有率及び選択性を特定する方法を記載する。シグネチャーペプチドは、活性(薬物結合又は遊離)状態のキナーゼ及び不活性状態のキナーゼの濃度を測定するのに用いられる。選択されたペプチドは、関心対象のキナーゼの薬物結合部位(複数の場合もある)に特異的である。異なる阻害剤は、同じキナーゼの異なる部位で、共有結合及び/又は非共有結合で結合することができる。例えば、イブルチニブは、BTKと、ゲートキーパーThr474で、並びに第一(E475)及び第三(M477)ヒンジ残基で水素結合を形成し、近隣のCys481と共有結合して、不活性付加体を形成する。アカラブルチニブも同様に、BTKのCys481と共有結合するが、イブルチニブに比べて反応性固有反応性が低下する。ベカブルチニブは、ゲートキーパーThr474と可逆的に結合する非共有結合BTK阻害剤である。強力な不可逆結合パートナー(例えば、BTKの場合のイブルチニブ-d5又はビオチン化プローブ)を過剰に用いて患者試料を飽和させ、それにより、試料中のあらゆる残存活性キナーゼを結合させることにより、キナーゼ阻害剤の薬物占有率%をより正確に特定することができることが、予期せず発見された。
標的占有率は、上記のとおり、キナーゼの変異状態又は活性化状態とも相関する可能性がある。例えば、薬物占有率及び変異状態及び/又は活性化状態は、同じ対象由来の単数又は複数の試料で特定することができる。
本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、シグネチャーペプチドは、タンパク質を切断してペプチドにする手段、例えば、特異的タンパク質切断手段(例えば、トリプシン又はキモトリプシン消化)、非特異的タンパク質分解手段(例えば、サブチリシン、プロテイナーゼ、又はフィシン)、又は化学反応に基づくアプローチを用いて生成させることができる。シグネチャーペプチド又はタンパク質のレベルは、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段(例えば、LC-MS、LC MS/MS、CE-MS、又はCE-MS/MS)等の方法を用いて、定量することができる。測定されたペプチド濃度を、タンパク質濃度に変換して、総タンパク質により正規化することができる。
I.共有結合タンパク質キナーゼ阻害剤
共有結合(不可逆的)小分子キナーゼ阻害剤(例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ、チラブルチニブ、及びエボブルチニブ)は、典型的には、反応部分(弾頭)と、キナーゼ標的(例えば、ATP結合部位)に対して非共有結合で係留する可逆的部分とを、統合することにより設計される。弾頭は、キナーゼ反応性残基と共有結合で相互作用を形成することにより、結合親和性及び選択性を改善する。最も多くの場合において、共有結合反応性残基は、ATP結合部位の近くに位置するシステインである(例えば、BTKのCys481、BLKのCys319、BMXのCys496、TECのCys449、及びTXKのCys350)。
患者試料中の活性キナーゼは、強力な不可逆的結合パートナー(例えば、イブルチニブ-d5又はビオチン複合体)を過剰に加えることにより捕捉することができる。例えば、薬物ナイーブ患者由来の試料中の全ての活性キナーゼ分子を、ビオチンリンカープローブと結合させ、そしてビオチンとストレプトアビジンとの間の強力な親和性により、試料から精製して定量することができる。或いは、試料内で、活性酵素の強力な同位体標識化プローブとの結合親和性により、活性酵素を不活性酵素から識別することができる。共有結合キナーゼ阻害剤治療を受けている患者において、強力な結合プローブは、試料中のどのような残存活性キナーゼとも結合することができる。
本明細書中に記載されるのは、試験化合物が投与されたヒト対象又は試験化合物と接触させた試験試料中の、試験化合物の占有率を特定する方法である。本方法は、(1)試験試料を得る工程と、(2)試験試料を処理して、関心対象の薬物結合部位に特異的なシグネチャーペプチドを生成させる工程と、(3)処理した試料中のシグネチャーペプチドのレベル及び状態(結合型又は遊離型)を特定する工程とを含み、試験化合物の占有率は、総合値に対するシグネチャーペプチドのレベル及び状態に基づいて特定される。
ここでは、シグネチャーペプチドは、5~50(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、5~10、10~15、15~20、20~25、又は25~30)のアミノ酸を含むキナーゼ断片であり、この断片には、そのキナーゼを標的とするキナーゼ阻害剤が共有結合することができる残基が含まれている。シグネチャーペプチドは、遊離していても、キナーゼ阻害剤と結合していてもよい。本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、シグネチャーペプチドは、タンパク質を切断してペプチドにする任意の手段、例えば、特異的タンパク質切断手段(例えば、トリプシン又はキモトリプシン消化)、又は非特異的タンパク質分解手段(例えば、サブチリシン、プロテイナーゼ、又はフィシン)、又は化学反応に基づくアプローチを用いて生成させることができる。BTKのシグネチャーペプチドの例として、野生型残基を含むペプチド、並びに変異型カウンターパートを含むペプチド、例えば、MANGCLL(配列番号1)、MANGSLL(配列番号2)、MANGYLL(配列番号4)、MANGRLL(配列番号5)、MANGALL(配列番号6)、MANGFLL(配列番号7)、MANGTLL(配列番号8)、及びMANGPLL(配列番号9)が挙げられる。シグネチャーペプチドの更なる例として、BMXのISNGCLL(配列番号16)、ITKのEFMEHGCLSDY(配列番号17)、JAK3-1のLPSGCL(配列番号18)、JAK3-2のLPSGCLRDF(配列番号19)、TECのMERGCLL(配列番号20)、TXKのMENGCLL(配列番号21)、及びERBB4のMPHGCLL(配列番号22)が挙げられる。キナーゼとキナーゼ阻害剤との間の結合残基(複数の場合もある)が既知であれば、どの標的キナーゼについてもシグネチャーペプチドを設計することができる。
キナーゼ阻害剤(すなわち、結合パートナー)が存在しない場合、試験試料中のキナーゼは、100%が、未結合である(すなわち、遊離型)。試験試料を、強力なキナーゼ結合剤(binding binder)、例えば、イブルチニブ-d5(BTK阻害剤イブルチニブの類似体)を飽和レベルで用いて処理した場合、試料中の活性キナーゼは、全て、イブルチニブ-d5と結合した状態になる。活性キナーゼの濃度は、代表的なシグネチャーペプチド、例えば、BTKのMANGC[イブルチニブ-d5]LL(配列番号1)のレベルに基づいて測定される。どの不活性キナーゼのレベルも、対応する遊離型ペプチド、例えば、MANGCLL(配列番号1)により測定される。
共有結合不可逆的阻害剤(例えば、イブルチニブ及びアカラブルチニブ)の存在下、試験試料中のキナーゼは、一部又は全部が、すでに阻害剤結合した状態であることができる。試料を、強力な結合パートナーを飽和レベルで用いて処理した場合、どのような残存活性キナーゼも、強力な結合パートナーと結合することになる。異なる状態にある(すなわち、遊離している、阻害剤と結合している、又は強力な結合パートナーと結合している)キナーゼシグネチャーペプチド、例えば、BTKのMANGC[イブルチニブ]LL(配列番号1)、MANGC[イブルチニブ-d5]LL(配列番号1)、及びMANGCLL(配列番号1)のレベルを測定して、活性(結合型及び遊離型)状態及び不活性状態のキナーゼの濃度を特定する。遊離しているペプチドは、不活性状態を表し、すでに阻害剤と結合していたペプチドは、活性かつ結合状態を表し、強力な結合パートナーと結合したペプチドは、活性かつ遊離状態を表す。
測定されたペプチド濃度を、タンパク質濃度に変換して、総タンパク質により正規化することができる。
試験化合物のキナーゼ占有率パーセントは、占有率%=100×(結合した量/総量)で与えられ、完全キナーゼ占有率は、100%で確認される。処理した試料中のキナーゼ総量は、[総量=活性キナーゼ量(結合状態及び未結合状態)+不活性キナーゼ量]で与えられる。
II.可逆的(非共有結合)キナーゼ阻害剤
同じく本明細書中に記載されるのは、非共有結合(すなわち、可逆的)キナーゼ阻害剤(例えば、ベカブルチニブ、Loxo-305、ARQ-531)の占有率を特定する方法である。本方法は、試験化合物が投与されたヒト対象又は試験試料と接触させた試料から試験試料を得ることと、試料を処理してシグネチャーペプチドを得ることと、シグネチャーペプチドのレベルを特定することとを含み、試験化合物の占有率は、キナーゼの総合値と比べた、結合状態のキナーゼを表すシグネチャーペプチドのレベル及び状態に基づいて、特定される。
ここでは、シグネチャーペプチドは、5~50(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、5~10、10~15、15~20、20~25、又は25~30)のアミノ酸を含むキナーゼ断片であり、この断片には、そのキナーゼを標的とするキナーゼ阻害剤が非共有結合で結合することができる残基が含まれている。シグネチャーペプチドは、遊離型であっても、キナーゼ阻害剤と結合していてもよい。キナーゼとキナーゼ阻害剤との間の結合残基(複数の場合もある)が既知であれば、どの標的キナーゼについてもシグネチャーペプチドを設計することができる。
非共有結合可逆的阻害剤の存在下、試験試料中のキナーゼ分子は、一部又は全部が、阻害剤と結合した状態であることが可能である。試料又は試料の一部分から生成させたシグネチャーペプチドを測定して、活性結合状態のキナーゼの濃度を特定する(例えば、ベカブルチニブと可逆的に結合したBTKの場合Thr474[ベカブルチニブ]ゲートキーパー残基を含むペプチド)。未結合残基(例えば、Thr474)を含む対応する遊離型ペプチドのレベルを用いて、未結合の活性及び不活性キナーゼの量を特定する。
同じ試料(例えば、試料の一部)を用いた別個の実験において、阻害剤をキナーゼ結合部位から解離させる(すなわち、結合ポケットを開放する)ことができ、そして試料を、過剰なビオチン化リンカープローブと接触させる。次いで、シグネチャーペプチドを生成させることができる。活性キナーゼの総量は、ビオチン化プローブと結合した(すなわち、Thr474[ビオチン化プローブ]残基を含む)シグネチャーペプチドのレベルで与えられる。活性キナーゼ(未結合状態)の量=総活性キナーゼ-活性キナーゼ(結合状態)。測定されたペプチド濃度を、タンパク質濃度に変換して、総タンパク質により正規化することができる。
1つの実施形態において、非共有結合薬物タンパク質複合体は、特定量の硫酸アンモニウムを加えて、望ましくないタンパク質を沈殿させることにより、試験試料又は試験試料の一部から分取することができる。上清を回収することができ、次いで、追加の硫酸アンモニウムを上清に加えて、所望の薬物タンパク質複合体を沈殿させることができる。沈殿物は、更なる分析用に、遠心で単離することができる。
別の態様において、本方法を用いて、スクリーニングパネルとして分析した複数のシグネチャーペプチド(例えば、それぞれがキナーゼ結合可能性のある部位を1つ以上有する)のプロファイルに基づき、キナーゼ阻害剤と特定のキナーゼとの又は様々なキナーゼとの非共有結合相互作用をプロファイリングすることができる。
III.キナーゼ阻害剤選択性(オフターゲット占有率)
キナーゼ阻害剤は、複数種のキナーゼに対して活性を有することができ、多様な選択性プロファイルを有する。例えば、レゴラフェニブは、少なくとも14種のキナーゼを標的とすることが既知であるが、一方で、ラパチニブ、ビスモデギブ、アキシチニブ、及びルキソリチニブは、それよりも限られたキナーゼ阻害範囲を有する。所望の選択性プロファイルを持つ強力な阻害剤を設計する利点として、忍容性及び治療指数の改善、併用レジメンの開発が可能になること、腫瘍の新規標的及び分子依存の検証、並びに作用機序の評価が挙げられる。
本明細書中に記載されるのは、キナーゼ阻害剤のオフターゲット占有率を特定する方法である。1つの態様において、本方法は、試験化合物が投与された試験対象から試験試料を得る又は試験化合物と接触させた試験試料を得ることと、試料を処理して、オフターゲット薬物結合の可能性のある部位に特異的なシグネチャーペプチドを生成させることと、試験試料中のオフターゲットキナーゼを表すシグネチャーペプチドのレベル及び状態、例えば、活性(結合型及び未結合型)及び不活性を測定することと、上記のとおりのオフターゲット占有率(共有結合又は非共有結合)を特定することとを含む。
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、試料中の非共有結合キナーゼ阻害剤(試験化合物)の標的占有率と総占有率とを比較することにより、非共有結合キナーゼ阻害剤(試験化合物)のオフターゲット占有率を特定する方法である。オフターゲット占有率%=総占有率%-標的占有率%。本方法において、試験化合物の標的占有率は、上記のとおりのシグネチャーペプチドに基づくアプローチにより特定される。総占有率%は、以下のとおり、同じ試料又は試料の一部を用いて、別個の実験で特定される。試料又は試料の一部に、試験化合物の類似体(例えば、ベカブルチニブの場合のベカブルチニブ-d3)又は同じ結合部位を標的とする別の可逆的結合剤を過剰に添加する。試料を処理し、次いで、どのような未結合タンパク質及び過剰な類似体も、試料から除去する(例えば、洗い落とす)。次いで、溶媒を加えて、非共有結合複合体を解離させ、タンパク質を沈殿させる。試験化合物及びその類似体(又は他の非共有結合結合剤)の濃度を、上清で測定する。試験化合物の総占有率%は、占有率%=100×(結合タンパク質量/総タンパク質量)で与えられ、完全占有率は、100%で確認される。結合タンパク質の量は、試験化合物(例えば、ベカブルチニブ)のレベルにより与えられる。未結合タンパク質の量は、添加した類似体(例えば、ベカブルチニブ-3)のレベルにより与えられ、総タンパク質量は、結合タンパク質量+未結合タンパク質量に等しい。
言い換えると、共有結合タンパク質キナーゼ阻害剤及び可逆的タンパク質キナーゼ阻害剤用の薬物占有率を特定する上記の同一方法を用いて、オフターゲットキナーゼ由来のシグネチャーペプチドを用いてオフターゲット占有率を評価することができる。
タンパク質、試験化合物、又は類似体のレベルは、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段(例えば、LC-MS、LC MS/MS、CE-MS、又はCE-MS/MS)等の方法を用いて、定量することができる。
薬物有効性を向上させる方法
同じく本明細書中に記載されるのは、薬物有効性を向上させる方法であり、本方法は、或る特定のタンパク質キナーゼのシグネチャーペプチドをバイオマーカーとして利用して、小分子キナーゼ阻害剤の占有率及び選択性を特定する。本方法は、(1)占有率と効果との間の関係性を定義するのに、(2)キナーゼを標的とする療法の有効性を向上させるのに、(3)患者の治療を管理及びモニタリングするのに、並びに(4)併用療法を評価するのに研究及び臨床の現場で使用することができる。
I.占有率と効果との間の関係性を定義する
標的占有率から薬物の薬物動力学への変換は、占有率と効果との間の関係性に依存しており、これは次に標的脆弱性に依存する。標的脆弱性は、所望の臨床成績を誘発するためには意図するキナーゼ標的をどのくらいの割合で係合させなければならないかを示す。1つの目的は、所望の標的キナーゼ占有率(すなわち、所望の反応を生成させるために必要な係合度合い)を達成することである。脆弱性の低い標的の場合、薬物の完全な又は望まれる生理学的効果は、標的係合100%に近いこと(例えば、90%~95%)が必要とされる可能性があるが、脆弱性の高い標的の場合、それより低い係合(例えば、50%以下)で十分な可能性がある。Tonge, ACS Chemical Neuroscience 2018 9:29-39を参照。1つの態様において、本明細書中に記載される方法を用いて、キナーゼ占有率と効果との間の関係性を評価し、患者にとって適切な用量レベルを特定することができる。例えば、キナーゼ占有率を、様々な条件(例えば、頻度、投薬量、及び投薬レジメン)下でキナーゼ阻害剤が投与された対象で特定して、キナーゼ占有率と効果との間の関係性を評価することができる。所望の標的係合(例えば、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、又は95%)を達成するのに最適な投薬量又はレジメンを選択することができる。
II.キナーゼを標的とする療法の有効性を向上させる
標的占有率(結合)及び選択性は、薬物投与レベル及び頻度を最適化するのに重要な態様である。1つの態様において、本明細書中に記載されるのは、(1)単数又は複数の試験対象に、2つ以上の条件下(例えば、異なる投薬レベル、頻度、及び/又は期間)でキナーゼ阻害剤を投与することと、(2)本明細書中に記載されるとおりのシグネチャーペプチドレベルに基づき、試験対象(複数の場合もある)から得られた試料(複数の場合もある)中のキナーゼ標的占有率を特定することと、(3)標的占有率と臨床成績(例えば、白血球数)とを相関させることと、(4)結果に基づき、有効性を向上させる目的で、投薬条件又はレジメンを最適化することとを含む方法である。
III.患者の治療を管理及びモニタリングする
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、キナーゼを標的とする療法を受けている患者をモニタリングする方法である。本方法は、(1)療法実施後の患者から得られた試料中の、化合物のキナーゼ標的占有率を特定する工程(本明細書中に記載されるとおりのシグネチャーペプチドレベルに基づく)と、(2)特定されたレベルを、相当する先に定めたレベルと比較する工程と含み、先に定めたレベルは、参照試料から得られるものであり、キナーゼ標的占有率が先に定めたレベルを超える場合、この化合物は、この患者で所望の成績を達成することが予想される。参照レベルは、所望の成績を有する対照の対象から、又は所望の成績を呈している時点の同じ患者から得ることができる。
IV.併用療法を評価する
同じく本明細書中に記載されるのは、単一経路又は並列するキナーゼ経路内で、同じ標的キナーゼに対する薬物の組合せ(例えば、同じ標的の同じ部位又は異なる部位に結合する共有結合及び/又は非共有結合化合物の様々な組合せ)又は異なる標的に対する薬物の組合せを探索する方法である。本方法は、(1)本明細書中に記載される方法を用いて、併用療法実施後の患者から得られた試料中の複数化合物の標的占有率を特定する工程と、(2)占有率レベル、及び任意選択で、臨床成績に基づき、有効性を向上させるように投薬レジメンを最適化する工程とを含む。
オフターゲット副作用を最小化する
小分子キナーゼ阻害剤は臨床試験において有意義な利益を実証したものの、それらの経時的な副作用についての疑念は依然として存在する。例えば、BTK阻害剤イブルチニブは、慢性リンパ性白血病(CLL)臨床試験で著しい有効性をもたらし、治療歴を問わずどのようなCLL患者でも、その治療薬として米国FDAにより承認されている。しかしながら、イブルチニブは、BTK選択性ではなく、よく知られた毒性、例えば、心房細動、感染、間質性肺炎、出血、及び関節痛と関連する。深い反応を達成するのに十分なほど長く患者でこの薬物を続けるための毒性管理は、イブルチニブの恩恵を受けるために重要であるが、現在のところ、有害事象を理由にイブルチニブを中止した後の可能な反応持続性についてはほとんど不明である。Brown, Blood 2018 Jan 25; 131(4):379-386を参照。
本明細書中に記載されるのは、キナーゼ阻害剤の副作用を最小化する方法である。本方法は、可能性のあるオフターゲットタンパク質キナーゼのシグネチャーペプチドをバイオマーカーとして利用して、関心対象の阻害剤のオフターゲット占有率及び選択性を特定する。本方法は、(1)キナーゼを標的とする療法の副作用を最小化するのに、及び(2)患者毒性を管理及びモニタリングするのに研究及び臨床の現場で使用することができる。
I.キナーゼを標的とする療法の副作用を最小化する
オフターゲット毒性は、キナーゼ阻害剤の使用を制限する可能性がある。1つの態様において、本開示は、(1)単数又は複数の試験対象に、2つ以上の条件下(例えば、異なるレベル、頻度、及び/又は期間)でキナーゼ阻害剤を投与する工程と、(2)本明細書中に記載される方法を用いて、シグネチャーペプチドを用いて、試験対象(複数の場合もある)から得られた試料中のオフターゲットキナーゼ占有率を特定する工程と、(3)特定されたレベルに基づき、オフターゲット副作用を最小化する目的で、投薬又はレジメンを最適化する工程とを含む方法を含む。
II.オフターゲット効果を管理及びモニタリングする
同じく本明細書中に記載されるのは、キナーゼを標的とする療法を受けている患者をモニタリングする方法であり、本方法は、(1)阻害剤投与後、シグネチャーペプチドを用いて、患者から得られた試料中のキナーゼ阻害剤のオフターゲットキナーゼ占有率を特定する工程と、(2)特定されたレベルを、対応する先に定めたレベルと比較する工程とを含み、先に定めたレベルは、阻害剤が副作用(複数の場合もある)を引き起こした参照対象に由来する、又は副作用(複数の場合もある)が存在する時点での患者に由来する参照試料から得られる。オフターゲット占有率が、先に定めたレベルを超える場合、その阻害剤は、患者において望ましくない副作用(複数の場合もある)を有すると確定される。
以下の具体例は、例示にすぎず、いかなるやり方でも本開示の残部を限定しないと解釈されるべきである。更なる詳細がなくても、当業者なら、本明細書中の説明に基づき、本開示を最大限に利用することができると思われる。本明細書中に引用される全ての刊行物は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
キナーゼ標的係合(薬物占有率%)の血液アッセイ
BTK阻害剤イブルチニブ(イムブルビカ)の標的係合を、癌患者で調査した。イブルチニブは、BTKのATP結合ポケット内のCys481残基を標的とする小分子共有結合不可逆的BTK阻害剤である。図2を参照。イブルチニブと結合したBTKの濃度を、キモトリプシン消化手段に由来する代表的なシグネチャーペプチドに基づき、患者の末梢血単核球(PBMC)で特定した。PBMCライセートを還元し、ヨードアセトアミド(IAM)でアルキル化した。アルキル化後、試料をキモトリプシンで処理して、遊離(未結合)型BTKペプチドMANGCLL(配列番号1)及び阻害剤結合型BTKペプチドMANGC[イブルチニブ]LL(配列番号1)を生成させた。
高感度/特異的UPLC-MS/MS法を用いて、消化したPBMCライセート中のMANGCLL(配列番号1)ペプチド及びMANGC[イブルチニブ]LL(配列番号1)ペプチドの絶対量を測定した。内部標準として、相当する質量シフトした安定同位体標識化ペプチドを用いた。株式会社島津製作所のSIL 30ACMPオートサンプラー及び株式会社島津製作所のLC-20ADポンプを用いて、UPLCカラムへの注入を行った。移動相Aは、0.1%ギ酸含有水であった。移動相Bは、0.1%ギ酸含有90:10アセトニトリル/水(v/v)であった。分析物は、API SCIEX TripleTOF 6600質量分析器を用いて検出した。測定されたペプチド濃度をタンパク質濃度に変換し、総タンパク質で正規化した。データはPBMCライセート中のng/ng総タンパク質単位で記録した。図3を参照。
本方法は、臨床試験及び患者試料におけるイブルチニブの標的係合の評価を可能にすると思われる。イブルチニブの他にも、シグネチャーペプチド、すなわち、MANGCLL(配列番号1)及びMANGC[阻害剤]LL(配列番号1)の利用は、残基Cys481で共有結合する任意の他のBTK阻害剤(例えば、アカラブルチニブ及びザヌブルチニブ)に容易に応用可能である。そのうえ、他のBTKシグネチャーペプチドを選択して、Cys481以外の残基と相互作用する阻害剤の標的係合も同様に調査することが可能である。本方法は、キナーゼ内の阻害剤結合部位が既知である限りにおいて、任意のキナーゼを標的とするキナーゼ阻害剤に応用可能である。
遺伝的耐性克服についての血液アッセイ
本明細書中に記載される方法を用いて、治療前、最中、及び後の、患者末梢血細胞における標的キナーゼの遺伝子変異及び/又は状態の存在又はパーセンテージ(例えば、定量レベル若しくは活性化状態)に基づき、個人特化治療計画を開発することができる。例えば、BTK C481SシグネチャーペプチドMANGSLL(配列番号2)が検出される又はそのパーセンテージが上昇して野生型MANGCLL(配列番号1)ペプチドを上回ることは、患者がイブルチニブ耐性を獲得したことの警報となる可能性があり、医師に代替治療を選択する機会を提供する。様々なBTK C481変異(C481S/R/P)のパーセンテージを、異なる癌患者で特定した。表1を参照。
Figure 2022177821000001
アッセイ定量化-BTK阻害剤の占有率%は治療レベルとともに上昇
小分子共有結合不可逆的BTK阻害剤(イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ、スペブルチニブ、及びチラブルチニブ)の標的占有率を、in vitroで調査した。ヒト全血を、別々の実験で、BTK阻害剤濃度を上昇させながら(C最終=0.5nM~1000nM)処理した。インキュベーション後、飽和量のイブルチニブ類似体であるイブルチニブ-d5を、各実験試料に添加して、あらゆる残存(すなわち、遊離型)活性キナーゼと結合させた。試料から白血球を単離し、キモトリプシンで消化して阻害剤結合型BTKペプチド、例えば、MANGC[イブルチニブ]LL(配列番号1)及びMANGC[アカラブルチニブ]LL(配列番号1)、イブルチニブ-d5結合型ペプチド(MANGC[イブルチニブ-d5]LL(配列番号1))、並びに未結合型不活性BTKペプチドMANGCLL(配列番号1)を生成させた。上記の高感度/特異的UPLC-MS/MS法を用いて、シグネチャーペプチドの絶対量を測定した。測定されたペプチド濃度をタンパク質濃度に変換し、総タンパク質で正規化した。
各BTK阻害剤について、キナーゼ占有率パーセントを、占有率%=100×(結合型/総量)として特定した。この場合、完全占有率は、100%で確認した。結合状態及び遊離状態の活性キナーゼの濃度を、それぞれ、阻害剤結合型シグネチャーペプチドMANGC[イブルチニブ]LL(配列番号1)及びMANGC[イブルチニブ-d5]LL(配列番号1)のレベルに基づいて特定した。不活性キナーゼの濃度を、未結合型BTKペプチドMANGCLL(配列番号1)のレベルに基づいて特定した。BTKの総量は、総量=活性キナーゼ(結合状態及び未結合状態)+不活性キナーゼにより得た。
BTK阻害剤の酵素占有率を、図4に示す。各化合物のBTK占有率は、濃度とともに上昇した(C最終=0.5nM~1000nM)。最も高い占有率%は、イブルチニブで観察され、続いてザヌブルチニブ、チラブルチニブ、アカラブルチニブ、そしてスペブルチニブであった。
薬物標的係合-白血病患者由来の一次試料におけるザヌブルチニブ、アカラブルチニブ、及びイブルチニブの占有率%
白血病患者におけるザヌブルチニブ、アカラブルチニブ、及びイブルチニブ療法でのBTK占有率%を特定した。結果は、1人の患者(19番)がザヌブルチニブ療法の利益を完全には得ていない(すなわち、占有率%レベル50%未満)ことを示した。図5を参照。医師は、この情報を用いて、迅速な様式で治療を調整することが可能であった。
結果は、可変的代謝により異なる集合体標的係合が構成されることも示した。図6を参照。一部の患者では、親薬物(アカラブルチニブ)もその活性代謝産物(ACP-5386)も、有効なレベル(50%以上のBTK占有率)を達成しなかった。この情報により、医師は、リアルタイムで薬物の選択に決定を下すことが可能であると思われる。
癌患者における異なる用量のイブルチニブ療法(140mg/日、280mg/日、420mg/日、又は560mg/日)でのBTK占有率%を特定した。一部の患者では用量が少なくても適切であった(50%超の占有率%)ものの、一部の患者(5番及び15番)では用量が多くても不十分であった。図7を参照。この情報により、医師は、投薬、有効性、及び副作用を管理することが可能であると思われる。
投薬後の薬物占有率を異なる時点で評価することにより、医師は、患者が毎日の投薬を必要とするのか毎日より少ない投薬を必要とするのか確定することができ、それにより副作用を最小化することができる。図8を参照。
癌に対する効力及び正常細胞に対する効果の評価
イブルチニブ療法を受けている様々な癌患者についてBTKのTyr551残基のリン酸化%を測定した。図9を参照。図7に示すとおり、これらの患者において全ての用量(すなわち、140mg/日、280mg/日、420mg/日、又は560mg/日)にまたがり、堅固な標的係合が観察されたものの、Tyr551残基の自己リン酸化(すなわち、BTKの活性化)は、用量が多くなると、過剰阻害されてしまった可能性がある。BTKの関与するアレルギー反応及び免疫防御機構のFcγ受容体(FcγR)活性化が、遮断されてしまった可能性がある。これらの用量は、多すぎる可能性がある。この種のデータにより、医師は、薬物の用量を増やすことの利益及びリスクを評価することが可能であると思われる。
白血病患者におけるイブルチニブ療法でのオフターゲット効果
イブルチニブ療法を受けている白血病患者の白血球を、キモトリプシンで消化して、タンパク質キナーゼのパネル(BTK、BLK、BMX、TEC、及びTXK)の結合部位を表すシグネチャーペプチドを生成させた。各タンパク質について、イブルチニブ結合型及び遊離(未結合)型シグネチャーペプチド(例えば、BMXの場合、ISNGCイブルチニブLL(配列番号16)及びISNGCLL(配列番号16))のレベルを、UPLC-MS/MSにより特定した。シグネチャーペプチドレベルを用いて、各タンパク質キナーゼについてイブルチニブ占有率%を特定した。白血病患者におけるイブルチニブのBMX(オフターゲット)占有率%を、図10に示す。
他の実施形態
本明細書に開示の特徴は全て、任意に組み合わせて併用することができる。本明細書に開示のそれぞれの特徴は、同じ、同等又は同様の目的に役立つ代替の特徴に置き換えることができる。したがって、他に明記されない限り、開示のそれぞれの特徴は、一般的な一連の同等又は同様の特徴の一例に過ぎない。
上記の説明から、当業者であれば記載の実施形態の本質的な特徴を容易に解明することができ、その趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な用途及び条件に合うように実施形態の種々の変化及び変更を適用させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。

Claims (22)

  1. 試験化合物の標的キナーゼ占有率を特定する方法であって:
    (1)1つの試験試料又は複数の試験試料を得ること、
    ここで、前記試験試料は、前記試験化合物が投与された試験対象に由来する生体試料であるか、又は前記試験化合物と接触させた生体試料である;
    (2)前記試験試料の第一部分を処理して、結合型シグネチャーペプチド及び遊離型シグネチャーペプチドを含む代表的なシグネチャーペプチドの集団を生成させること、
    ここで、前記結合型シグネチャーペプチドは、前記試験化合物と結合した代表的なシグネチャーペプチドであり、前記遊離型シグネチャーペプチドは、前記試験化合物と結合していない代表的なシグネチャーペプチドであり、前記代表的なシグネチャーペプチドは、前記試験化合物との結合部位を含む前記標的キナーゼの断片である;
    (3)前記処理された試料中の、前記結合型シグネチャーペプチドのレベル及び前記遊離型シグネチャーペプチドのレベルを特定すること、
    (4)前記結合型シグネチャーペプチドのレベル及び前記遊離型シグネチャーペプチドのレベルそれぞれに基づき、前記試験試料中の結合型標的キナーゼのレベル及び遊離型標的キナーゼのレベルを得ること、
    前記結合型標的キナーゼは、前記試験化合物と結合した前記標的キナーゼであり、前記遊離型標的キナーゼは、前記試験化合物と結合していない前記標的キナーゼである;及び
    (5)前記試験化合物の前記標的キナーゼ占有率を得ること、
    前記標的キナーゼ占有率は、前記結合型標的キナーゼのレベルと前記遊離型標的キナーゼのレベルとを合算したレベルに対する前記結合型標的キナーゼのレベルである;
    を含む、方法。
  2. 工程(1)の後、工程(2)の前に、前記試験試料を、飽和量の、前記代表的なシグネチャーペプチド内の結合部位で前記標的キナーゼと共有結合で強力に結合することができる参照化合物と接触させることと、前記処理した試料中の、前記参照化合物と結合した前記代表的なシグネチャーペプチドのレベルを特定することとを更に含み、前記試験化合物は、前記標的キナーゼと共有結合する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記試験試料中の、活性状態にあるが前記試験化合物と結合していない前記標的キナーゼの残存レベルを、前記参照化合物と結合した前記代表的なシグネチャーペプチドのレベルに基づいて得ることと、
    ここで、前記試験試料中の活性状態にある前記標的キナーゼのレベルは、前記結合型標的キナーゼのレベルと前記残存レベルとを合算したレベルであり、前記試験試料中の前記標的キナーゼの総レベルは、活性状態にある前記標的キナーゼのレベルと前記遊離型標的キナーゼのレベルとを合算したレベルである;及び
    前記標的キナーゼ占有率を得ること、
    前記占有率は、前記標的キナーゼの総レベルに対する前記結合型標的キナーゼのレベルであり、任意に、前記標的キナーゼ占有率は、100×(前記結合型標的キナーゼのレベル/前記標的キナーゼの総レベル)で計算されるキナーゼ占有率パーセントである;
    を更に含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記参照化合物は、安定に同位体標識された又はビオチン化された前記試験化合物である、請求項2に記載の方法。
  5. 工程(1)の後、工程(2)の前に、前記試験試料の第二部分を、飽和量の、前記標的キナーゼ中の前記試験化合物の前記結合部位を含む部位と不可逆的に結合することができるビオチン化プローブと接触させること、
    前記試験試料の前記第二部分を処理して、前記ビオチン化プローブと結合した代表的なシグネチャーペプチドであるプローブ結合したシグネチャーペプチドを生成させること、及び
    前記プローブ結合したシグネチャーペプチドのレベルを特定することとを更に含み、
    ここで、前記試験化合物は、前記標的キナーゼと可逆的に又は非共有結合で結合する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記第二部分を前記ビオチン化プローブと接触させる前に、前記試験化合物を前記標的キナーゼから解離させることを更に含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記プローブ結合したシグネチャーペプチドのレベルに基づき、活性状態にある前記標的キナーゼのレベルを得ること、
    ここで、前記試験試料中の前記標的キナーゼの総レベルは、活性状態にある前記標的キナーゼのレベルと前記遊離型標的キナーゼのレベルとを合算したレベルである;
    前記標的キナーゼ占有率を得ること、
    前記標的キナーゼ占有率は、前記標的キナーゼの総レベルに対する結合型標的キナーゼのレベルであり、任意に、前記標的キナーゼ占有率は、100×(結合型標的キナーゼのレベル/前記標的キナーゼの総レベル)で計算されるキナーゼ占有率パーセントである;
    を更に含む、請求項5に記載の方法。
  8. 工程(1)の後、前記試験試料の第三部分を、飽和量の、前記標的キナーゼ中の、前記試験化合物の前記結合部位を含む部位と不可逆的に結合することができる参照化合物と接触させること、並びに前記試験試料の前記第三部分を処理して、前記参照化合物と結合しなかったあらゆるタンパク質及び余剰参照化合物を除去すること;
    前記試験化合物を、あらゆる結合タンパク質から解離させること、前記解離したタンパク質を沈殿させること、並びに上清中の前記試験化合物及び前記参照化合物のレベルを測定することと、
    ここで、前記試験化合物と結合した総タンパク質レベルは、前記上清中の前記試験化合物のレベルで与えられ、前記タンパク質と結合しなかった(未結合型)総タンパク質量は、前記上清中の前記参照化合物のレベルで与えられ、総キナーゼ量は、結合したキナーゼ+未結合キナーゼの量に等しい;
    総標的占有率を得ること、
    前記総標的占有率は、総キナーゼレベルに対する結合した総キナーゼのレベルであり、任意に、前記総標的占有率は、100×(結合した総キナーゼのレベル/総キナーゼレベル)で計算される占有率パーセントである;
    を更に含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記総標的占有率から前記標的キナーゼ占有率を減算することにより、前記試験化合物のオフターゲット占有率を得ることを更に含み、前記オフターゲット占有率は、前記試験化合物の意図しない標的1種以上に対する前記試験化合物の占有率である、請求項8に記載の方法。
  10. 工程(1)の後、硫酸アンモニウムを加えて他のタンパク質を沈殿させること、上清を回収すること、更に硫酸アンモニウムを加えて試験化合物キナーゼタンパク質複合体を沈殿させるとともに、前記沈殿した複合体を分析用に収集することにより、前記試験試料の一部から、前記試験化合物キナーゼ複合体を分取することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  11. 代表的なシグネチャーペプチドの前記集団は、特異的タンパク質切断手段により、非特異的タンパク質分解手段により、又は化学反応に基づく手段により生成する、請求項1に記載の方法。
  12. 前記特定する工程は、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段を用いて実施される、請求項1に記載の方法。
  13. 前記標的キナーゼは、前記化合物の意図しない標的であるか、意図しない標的ではない、請求項1に記載の方法。
  14. 前記標的キナーゼは、タンパク質キナーゼB(PKB)、チロシンタンパク質キナーゼBLK、チロシンタンパク質キナーゼBMX、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2(ERBB2)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-4(ERBB4)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、チロシンタンパク質キナーゼFgr(FGR)、Fyn関連キナーゼ(FRK)、チロシンタンパク質キナーゼFyn(FYN)、チロシンタンパク質キナーゼHCK、チロシンタンパク質キナーゼITK/TSK/LYK、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、チロシンタンパク質キナーゼLyn(LYN)、リボソームタンパク質S6キナーゼA3(RPS6KA3)、チロシンタンパク質キナーゼSrc(SRC)、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、チロシンタンパク質キナーゼTec(TEC)、チロシンタンパク質キナーゼTXK、チロシンタンパク質キナーゼYes、及びチロシンタンパク質キナーゼZAP-70から選択される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記代表的なシグネチャーペプチドは、MANGCLL(配列番号1)、MANGSLL(配列番号2)、MANGYLL(配列番号4)、MANGRLL(配列番号5)、MANGALL(配列番号6)、MANGFLL(配列番号7)、MANGTLL(配列番号8)、MANGPLL(配列番号9)、ISNGCLL(配列番号16)、EFMEHGCLSDY(配列番号17)、LPSGCL(配列番号18)、LPSGCLRDF(配列番号19)、MERGCLL(配列番号20)、MENGCLL(配列番号21)、又はMPHGCLL(配列番号22)を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 対象が候補化合物に反応する見込みを評価する方法であって、
    (1)試験試料を得ること、
    ここで、前記試験試料は、前記対象由来の生体試料である;
    (2)前記試験試料を処理して、修飾シグネチャーペプチド及び野生型シグネチャーペプチドを含む代表的なシグネチャーペプチドの集団を生成させること、
    前記代表的なシグネチャーペプチドは、前記候補化合物の標的であるキナーゼの断片であり、前記代表的なシグネチャーペプチドは、変異した又は翻訳後修飾を受けた場合、前記候補化合物に対する反応性に影響を及ぼす可能性がある部位を含み、前記修飾シグネチャーペプチドは、前記変異した又は修飾された代表的なシグネチャーペプチドであり、前記野生型シグネチャーペプチドは、前記変異又は修飾を含まない前記代表的なシグネチャーペプチドである;
    (3)前記処理した試料中の前記修飾シグネチャーペプチドのレベル及び前記野生型シグネチャーペプチドのレベルを特定すること、
    (4)前記修飾シグネチャーペプチドのレベル及び前記野生型シグネチャーペプチドのレベルに基づいて、前記変異又は修飾の存在又はパーセンテージを得ること、及び
    (5)前記存在又はパーセンテージに基づいて、前記対象が前記候補化合物に反応する見込みを評価すること、
    ここで、存在する又は高いパーセンテージであることは、見込みが低いことを示す;
    を含む、方法。
  17. 前記候補化合物は、タンパク質キナーゼB(PKB)、チロシンタンパク質キナーゼBLK、チロシンタンパク質キナーゼBMX、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2(ERBB2)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-4(ERBB4)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、チロシンタンパク質キナーゼFgr(FGR)、Fyn関連キナーゼ(FRK)、チロシンタンパク質キナーゼFyn(FYN)、チロシンタンパク質キナーゼHCK、チロシンタンパク質キナーゼITK/TSK/LYK、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、チロシンタンパク質キナーゼLyn(LYN)、リボソームタンパク質S6キナーゼA3(RPS6KA3)、チロシンタンパク質キナーゼSrc(SRC)、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、チロシンタンパク質キナーゼTec(TEC)、チロシンタンパク質キナーゼTXK、チロシンタンパク質キナーゼYes、及びチロシンタンパク質キナーゼZAP-70から選択されるキナーゼの阻害剤である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記変異又は修飾は、BTK遺伝子変異であり、任意に、前記変異又は修飾は、C481S、C481F、C481Y、C481R、C481A、C481T、T474I、T474M、T474S、T474P、T316A、及びL528Wから選択されるか、又はpY223、pY551、pY225、pY344、及びpY361から選択される自己リン酸化事象である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記特定する工程は、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)を利用した技法、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段を用いて実施される、請求項16に記載の方法。
  20. 対象が候補化合物に反応する見込みを評価する方法であって、
    (1)試験試料を得ること、
    ここで、前記試験試料は、前記対象由来の生体試料である;
    (2)前記試験試料を処理して、リン酸化シグネチャーペプチド及び非リン酸化シグネチャーペプチドを含む代表的なシグネチャーペプチドの集団を生成させること、
    前記代表的なシグネチャーペプチドは、(i)キナーゼの活性化に際してリン酸化されるリン酸化可能な残基を含む活性化セグメントの一部を含むキナーゼ断片、又は(ii)前記キナーゼの基質の、リン酸化可能な残基を含む断片であり、前記リン酸化シグネチャーペプチドは、前記リン酸化可能な残基でリン酸化された前記代表的なシグネチャーペプチドであり、前記非リン酸化シグネチャーペプチドは、前記リン酸化を欠いている前記代表的なシグネチャーペプチドであり、前記キナーゼは、前記候補化合物の標的である;
    (3)前記処理した試料中の前記リン酸化シグネチャーペプチドのレベル及び前記非リン酸化シグネチャーペプチドのレベルを特定すること、
    (4)前記リン酸化シグネチャーペプチドのレベル及び前記非リン酸化シグネチャーペプチドのレベルに基づいて、活性化キナーゼのレベル又はキナーゼのリン酸化基質のレベルを得ること、及び
    (5)前記活性化キナーゼ又は前記キナーゼの前記リン酸化基質のレベル又はパーセンテージに基づいて、前記対象が前記候補化合物に反応する見込みを評価することと、
    ここで、レベル又はパーセンテージが高いほど、前記対象は、前記候補化合物に対して耐性である見込みがあることを示す;
    を含む、方法。
  21. 前記候補化合物は、タンパク質キナーゼB(PKB)、チロシンタンパク質キナーゼBLK、チロシンタンパク質キナーゼBMX、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2(ERBB2)、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-4(ERBB4)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、チロシンタンパク質キナーゼFgr(FGR)、Fyn関連キナーゼ(FRK)、チロシンタンパク質キナーゼFyn(FYN)、チロシンタンパク質キナーゼHCK、チロシンタンパク質キナーゼITK/TSK/LYK、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、チロシンタンパク質キナーゼLyn(LYN)、リボソームタンパク質S6キナーゼA3(RPS6KA3)、チロシンタンパク質キナーゼSrc(SRC)、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、チロシンタンパク質キナーゼTec(TEC)、チロシンタンパク質キナーゼTXK、チロシンタンパク質キナーゼYes、及びチロシンタンパク質キナーゼZAP-70から選択されるキナーゼの阻害剤である、請求項20に記載の方法。
  22. 前記特定する工程は、リガンド結合アッセイ、液体クロマトグラフィー(LC)を利用した技法、キャピラリー電気泳動(CE)を利用した技法、又は複合型LC若しくはCE質量分析(MS)手段を用いて実施される、請求項20に記載の方法。
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