JP2022165931A - コンクリート製柱状体の補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】工場等で予め製造された複数の巻立てパネルを、施工現場に搬入してコンクリート製の柱状体を巻立てるように設置することにより、既存のコンクリート製柱状体を補強する作業を迅速かつ適切に行うことができるようにする。【解決手段】コンクリート製柱状体10を巻立てるように設置される複数の巻立てパネル2と、相隣接する前記巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結する連結部3,4とを備え、前記巻立てパネル2が、繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層及び補強用シート材層を含む積層構造体からなり、積層構造体からなり、前記補強用シート材層が、前記パネル本体層の主面に沿った方向に延びるように設けられているコンクリート製柱状体の補強構造1。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄筋コンクリート製の橋脚等からなるコンクリート製柱状体の補強構造に関する。
従来、例えば特許文献1に示すように、いわゆるRC巻立て工法により既存の柱を補強して、その耐力や変形性能を向上させることが行われている。すなわち、既設柱の側半部を囲繞可能にそれぞれ略コ字状に形成した第1の補強部材及び第2の補強部材を、これら補強部材の自由端同士が対向するように前記既設柱に取付けるとともに、両補強部材をポリマーセメントモルタル等の樹脂モルタル又はこの樹脂モルタルに骨材を混入した樹脂コンクリート等からなる補強用増厚材で埋設してなる既設柱の補強構造が知られている。
また、例えば特許文献2に示すように、道路橋や鉄道橋などの既設RC構造物の補強工法として、いわゆる鋼板巻立て工法が提案されている。すなわち、既設RC構造物の外周面に厚さが6~12mm程度の複数枚の鋼板を多数のアンカーボルトで固定し、上記各鋼板を環状に結合して既設RC構造物の周りを囲んでから、既設RC構造物と鋼板との間に形成された間隙に無収縮モルタルやエポキシ樹脂などの硬化性材料を流動状態で充填して硬化させ、既設RC構造物に鋼板を硬化性材料で一体化することによって、構造物の靱性と耐力を向上させることが行われている。
さらに、例えば特許文献3に示すように、橋脚の表面を補強用シート材で覆う橋脚の補強工法であって、橋脚の高さ方向の位置で靭性補強区間とその他の区間とで区分けして補強用シート材の種類を変更するものにおいて、前記靭性補強区間以外の区間に用いられる補強用シート材としてアラミド繊維シートを用い、前記靭性補強区間には、前記靭性補強区間以外の区間に用いられるアラミド繊維シートより高い伸度を有する高伸度繊維シートを用いた、いわゆる繊維シート巻立て工法が知られている。
また、例えば特許文献4に示すように、縦方向主鉄筋の配筋量が変化した段落とし部を有する既製壁式橋脚の躯体のほぼ全体の外周に炭素繊維シートを縦と横の両方向に重ねて貼り付け、その外側を、間隙を明けて筒状の鋼鈑で覆うとともに、前記間隙にモルタルを充填し、それから、躯体の基部に橋軸方向に貫通させて設置したPC鋼材を緊張して、その両端を前記鋼鈑に定着させることを特徴とする段落とし配筋既製壁式橋脚の耐震補強工法が知られている。
特開2005-320819号公報 特開平9-256327号公報 特許第4087827号明細書 特開2000-96521号公報
特許文献1に開示されたRC巻立て工法では、研磨工具を用いて柱状体の表面を研磨する下地処理と、鉄筋を拘束するためのPC鋼棒を躯体に貫通させる工程と、柱状体のフーチング部にアンカーを設置する工程と、鉄筋の組立工程と、型枠の設置工程と、型枠内にコンクリートを打設する工程と、コンクリートの養生後に型枠を取り外す脱型工程とを施工現場で行う必要があり、現場作業に要する時間が長くなることが避けられない。また、多数の鉄筋や型枠等を用いるために広い設置スペースが必要であるとともに、RCの巻立てにより柱状体の断面が顕著に増加するために狭小な場所では施工が困難である等の問題があった。
また、特許文献2に開示された鋼板巻立て工法では、研磨工具を用いて柱状体の表面を研磨する下地処理と、柱状体のフーチング部にアンカーを設置する工程と、クレーン等を用いて鉄板を建て込む工程と、鋼板を位置決めして突き合わせた状態で溶接する工程と、鋼板と柱状体との間に無収縮モルタルからなるグラウト材やエポキシ樹脂等を注入する工程と、鋼板の表面を塗装する工程とを施工現場で行う必要があり、重量が極めて重い鋼板を人力で設置することが困難であるために、施工性が悪いという問題があった。
さらに、特許文献3に開示された繊維シート巻立て工法では、研磨工具を用いて柱状体の表面を研磨する下地処理と、柱状体の表面にプライマを塗布する工程と、仕上がりを平滑にするために不陸部分をパテで埋める不陸調整と、柱状体の表面に貼り付けた補強用シート材に含浸樹脂を塗布して一体化させるシート貼り付け工程と、その養生工程と、仕上げ塗装作業とを施工現場で行う必要がある。前記繊維シートの巻立てにより十分な補強を行うためには、複数回のシート貼り付け工程が必要であるとともに、各工程において塗装用ハンドローラ等を用いて柱状体の表面全体にわたって含浸樹脂を均一に塗布する必要があるため、熟練した技量が要求される。また、気温の低い時期や雨天時等には、含浸樹脂の塗布作業を行うことが困難であるため、作業可能な時期が著しく制限され、結果として工期が長くなることが避けられなかった。
特許文献4に開示された段落とし配筋既製壁式橋脚の耐震補強工法は、鉛直方向に延びるように設置された主鉄筋の配筋量が変化する段落とし部を、特許文献3の繊維シート巻立て工法と、特許文献2の鋼板巻立て工法との両方により補強するようにしたものであり、地震時等に作用する荷重による段落とし部の損傷を抑止することが可能である。この反面、橋脚躯体の外周を覆うように炭素繊維シートを適正状態で貼り付けるのに熟練した技量が要求されるとともに、その外側に大重量の鋼板を施工現場において設置する必要があるために、極めて施工性が悪いという問題があった。
本発明の目的は、コンクリート製柱状体の補強作業を迅速かつ適切に行うことができるコンクリート製柱状体の補強構造を提供することである。
本発明に係るコンクリート製柱状体の補強構造は、コンクリート製柱状体を巻立てるように設置される複数の巻立てパネルと、相隣接する前記巻立てパネルの縁部同士を互いに連結する連結部とを備え、前記巻立てパネルが、繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層及び補強用シート材層を含む積層構造体からなり、前記補強用シ-ト材層が、前記パネル本体層の主面に沿った方向に延びるように設けられたものである。
この構成によれば、工場で生産された複数の巻立てパネルを施工現場に搬送して相隣接する巻立てパネルの縁部同士を連結部により互いに連結するだけで、コンクリート製柱状体を巻立てるように設置することができるため、施工現場における作業時間を効果的に短縮することができる。また、工場生産によって巻立てパネルの品質を安定させることができるため、必要な補強強度が容易に得られるとともに、比較的軽量で高い圧縮強度を有するパネル本体層と、高い引張強度を有する補強用シート材層とを有する積層構造体により巻立てパネルを構成したため、この巻立てパネルの重量が過大になるのを防止しつつ、必要な強度を得ることができる。さらに、熟練した技量を要することなく、施工現場における作業を容易かつ適切に行うことができるとともに、天候や気温に左右されることなく、現場作業を短期間で行うことができる。
また、前記補強用シート材層が、前記パネル本体層内に埋設されたものであってもよい。
この構成によれば、合成樹脂製の接着剤等を用いることなく、補強用シート材層をパネル本体層内に埋設した状態で強固に一体化することができる。
また、前記補強用シート材層が、前記パネル本体層の主面上に一体に接合されていることが好ましい。
この構成によれば、巻立てパネルの曲げ剛性を増大させることにより巻立てパネルの強度を効果的に向上させることができるともに、パネル本体層の表面および裏面を補強用シート材層により保護してパネル本体の劣化を防止することができる。
また、前記補強用シート材層として炭素繊維シートが用いられることが好ましい。
この構成によれば、鋼材の10倍以上の比強度を有する炭素繊維強化プラスチックを主体とした炭素繊維シートからなる補強用シート材層を用いることにより、巻立てパネルの重量を、より軽量化しつつ、必要な強度を得ることができる。
また、前記連結部は、前記巻立てパネルの相隣接部を跨ぐように設置された連結板と、前記連結板を前記巻立てパネルに接続する接続部材とを有していることが好ましい。
この構成によれば、連結板及び接続部材を用いて相隣接する巻立てパネルを容易かつ強固に連結することができるとともに、コンクリート製柱状体の大きさに応じて巻立てパネルの個数を増減することにより、コンクリート製柱状体の周囲を適正に巻立てることができるという利点がある。
また、前記巻立てパネルの最外方部には、金属製被覆板が一体に設けられた構成とすることが好ましい。
この構成によれば、比較的軽量で高い圧縮強度を有するパネル本体と、高い引張強度を有する補強用シート材層と、金属製被覆板とを積層することによる相乗効果で、優れた補強作用が得られるという利点がある。
また、前記連結部は、前記巻立てパネルの相隣接部を跨ぐように設置された連結板と、前記連結板を前記金属製被覆板に溶接した溶接部とを有する構成としてもよい。
この構成によれば、施工現場において連結板の側辺部を金属製被覆板に溶接する等により、相隣接する巻立てパネルを容易かつ強固に連結することができるとともに、コンクリート製柱状体の大きさに応じて巻立てパネルの個数を増減することが可能である。
また、前記巻立てパネルを前記コンクリート製柱状体に固定するアンカーボルトを、さらに備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、施工現場においてアンカーボルトにより巻立てパネルをコンクリート製柱状体に安定して固定することができるとともに、連結部により相隣接する巻立てパネルの縁部同士を互いに連結する作業を容易かつ適正に行うことができる。
また、前記巻立てパネルは、前記コンクリート製柱状体との間に間隙が形成され、前記間隙内にグラウト材が注入された構成としてもよい。
この構成によれば、巻立てパネルとコンクリート製柱状体とを強固に一体化することができるため、前記巻立てパネルを用いることによるコンクリート製柱状体の補強作用を効果的に向上させることができる。
前記グラウト材として無収縮モルタルが用いられ、該無収縮モルタルが前記間隙内に透き間なく注入されることにより、前記巻立てパネルと前記コンクリート製柱状体と前記無収縮モルタルとが一体化されていることが好ましい。
この構成によれば、打設後に収縮する性質を有する一般的なグラウト材を用いた場合のように、巻立てパネル、コンクリート製柱状体、及びグラウト材の間にズレや剥離が生じることはなく、コンクリート製柱状体の外周部を無収縮モルタルにより途切れることなく囲繞して、コンクリート製柱状体の全周に亘り均一な抗力を作用させることができる。また、コンクリート製柱状体と無収縮モルタルとの間、及び、無収縮モルタルと巻立てパネルとの間に隙間なく、一体化され、コンクリート製柱状体、無収縮モルタル、及び巻立てパネルの3個の部材が、一つの部材として、一つの断面を有し、一つの断面積を有することとなる。このため、コンクリート製柱状体の断面積を増大することにより、コンクリート製柱状体が補強される。
また、前記巻立てパネルは、前記コンクリート製柱状体の上下方向に沿って複数配置され、前記上下方向に相隣接して設置される前記巻立てパネルの上下隣接部が前記連結部により互いに連結された構成としてもよい。
この構成によれば、施工現場において上下方向に相隣接するように設置された巻立てパネルの上下隣接部を連結部により互いに連結するだけで、コンクリート製柱状体の上下方向に亘る領域を容易かつ効果的に補強することができる。
また、前記コンクリート製柱状体の上下方向に延びる主鉄筋の配筋量が変化する段落とし部を有する場合において、前記巻立てパネルが、前記段落とし部を含む範囲を巻立てるように設置された構成とすることが好ましい。
この構成によれば、段落とし部の補強個所以外に悪影響を及ぼすことなく、コンクリート製柱状体の段落とし部に配設された主鉄筋に生じる応力を大幅に低減し、その耐力を効果的に向上させることができる。
本発明に係るコンクリート製柱状体の補強構造によれば、工場等で予め製造された複数の巻立てパネルを、施工現場に搬入してコンクリート製の柱状体を巻立てるように設置することにより、既存のコンクリート製柱状体を補強する作業を迅速かつ適切に行うことができるという効果を奏する。
本発明に係るコンクリート製柱状体の補強構造の第一実施形態を示す斜視図である。 コンクリート製柱状体の補強構造を示す断面図である。 コンクリート製柱状体の補強構造の一部を分解した状態を示す断面図である。 巻立てパネルの具体的構造を示す斜視図である。 巻立てパネルの変形例を示す斜視図である。 巻立てパネルの強度試験例を示す説明図である。 巻立てパネルの他の強度試験例を示す説明図である。 巻立てパネルの他の強度試験例を示す説明図である。 連結部の別の実施形態を示す斜視図である。 巻立てパネルをコンクリート製柱状体に密着させた例を示す断面図である。 グラウト材として無収縮モルタルを用いた例を示す断面図である。 コンクリート製柱状体の補強構造の別の実施形態を示す断面図である。 コンクリート製柱状体の補強構造のさらに別の実施形態を示す断面図である。 コンクリート製柱状体の補強構造のさらに別の実施形態を示す断面図である。 コンクリート製柱状体の補強構造のさらに別の実施形態を示す断面図である。 本発明に係る補強構造の第二実施形態を示す斜視図である。 図16のXVII-XVII線断面図である。 下段の巻立て部を示す斜視図である。 図18のXIX-XIX線断面図である。 本発明に係る補強構造の第三実施形態を示す正面図である。 図20のXXI-XXI線断面図である。 試験体の強度試験例を示す説明図である。 第三実施形態に係る補強構造の変形例を示す正面図である。
以下、本発明に係るコンクリート製柱状体の補強構造の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
図1~図3は、本発明の第一実施形態に係るコンクリート製柱状体の補強構造1を示し、図4は、コンクリート製柱状体の補強構造1を構成する巻立てパネル2の断面形状を示している。コンクリート製柱状体の補強構造1は、高架道路を支持する柱脚、橋梁を支持する橋脚、又建築物の柱等からなるコンクリート製柱状体10の周囲を巻立てるように設置される複数の巻立てパネル2と、相隣接する巻立てパネル2の縁部を一体に連結する後述の連結部3とを備えている。
巻立てパネル2は、例えばセメント、水、補強繊維を混練した混練物を成形型内に充填して、養生固化することで得られる繊維補強コンクリート材を主体としたパネル本体層21と、このパネル本体層21の表面及び裏面からなる主面を覆うようにそれぞれ一体に接合された補強用シート材層22とを有する積層構造体からなっている。また、巻立てパネル2の最外方部には、パネル本体層21の主面側部分、具体的には補強用シート材層22の外表面部を覆う金属製主面板23と、パネル本体層21の周面側部分、具体的には、パネル本体層21の上下両端面部及び左右両側面部を覆う金属製周面板24とからなる金属製被覆板が一体に設けられている。
パネル本体層21の主体となるセメントの材質は、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等、各種セメントを使用できる。
前記補強繊維としては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
補強用シート材層22としては、パネル本体層21よりも高い引張強度を有する素材、例えばポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維などの繊維材からなるシート状体を採用できる。その中でも、特に軽くて強い炭素繊維強化プラスチックを主体として織物状に加工された炭素繊維シートからなる補強用シート材層22を用いることが好ましい。なお、補強用シート材層22の厚みは、特に制限されない。
補強用シート材層22をパネル本体層21の主面に接合する方法としては、例えばパネル本体層21の主面に合成樹脂製の接着剤を塗布した後、その上に補強用シート材層22を貼り付けて補強用シート材層22に接着剤を含浸させることにより、補強用シート材層22とパネル本体層21とを一体化する方法が考えられる。
合成樹脂製の接着剤は、特に限定されるものではないが、酢酸ビニル-アクリル系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系、スチレン-ブタジエン系、ニトリルゴム系、クロロプレンゴム系、変性シリコーン系、シアノアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系、メラミン系、ユリア系、ポリアミド系、ニトロセルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系等の接着剤を使用可能である。
前記接着剤を補強用シート材層22に充分に含浸させることが好ましい。なお、パネル本体層21を成形する際に、その成形型内に補強用シート材層22を配設した状態で、セメント、水及び補強繊維の混練物を充填して固化させることにより、補強用シート材層22をパネル本体層21の主面に一体に接合することも可能である。
金属製主面板23は、例えば補強用シート材層22をパネル本体層21の主面に固定する際に使用した接着剤の接着力に応じて、補強用シート材層22及びパネル本体層21と一体化されることにより、補強用シート材層22の外表面部に接合される。一方、金属製周面板24は、例えばパネル本体層21の長手方向両端面部及び幅方向両側面部に塗布された合成樹脂製の接着剤の接着力に応じて、パネル本体層21の周面に接合される。
なお、補強用シート材層22に含浸させた接着剤の硬化後に、補強用シート材層22上に新たな接着剤を塗布し、この接着剤により金属製主面板23を補強用シート材層22の外面に接合するようにしてもよい。また、締結ボルトもしくはタッピングねじ等からなる後述の接続部材33を介して、金属製主面板23、補強用シート材層22及びパネル本体層21を一体に接合することも可能である。
上述の構成を有する巻立てパネル2を用いて既設のコンクリート製柱状体10を補強するには、まず製造工場において巻立てパネル2を製造した後、これを施工現場に搬送する。そして、図1及び図2に示すように、既設のコンクリート製柱状体10の壁面との間に一定の間隔を隔てた状態で、このコンクリート製柱状体10の周囲を囲繞するように複数の巻立てパネル2を設置する。各巻立てパネル2を複数本のアンカーボルト5によりコンクリート製柱状体10にそれぞれ固定するとともに、相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を連結部3,4により互いに連結する。
図例では、正方形の断面形状を有するコンクリート製柱状体10の各面に二枚ずつの巻立てパネル2,2を横方向に並べるとともに、この横方向に相隣接する巻立てパネル2の縁部を互いに突き合せた状態で、コンクリート製柱状体10を囲繞するように8枚の巻立てパネル2を立設している。また、図3に示すように、コンクリート製柱状体10の壁面に対向した両巻立てパネル2の突き合わせ部からなる相隣接部を跨ぐようにその外面側及び内面側に配設されたフラットバー等からなる平坦部用の連結板31,32と、これらを一体に接合する締結ボルト又はタッピングねじ等からなる接続部材33とを有する連結部3により、両巻立てパネル2の縁部同士が互いに連結されるようになっている。
前記接続部材33により平坦部用の連結板31,32及び巻立てパネル2を一体に接合するには、例えば施工現場で連結板31,32及び巻立てパネル2を貫通するように下穴を形成した後、接続部材33で接合すれすればよい。なお、製造工場において巻立てパネル2に下穴を予め形成するとともに、平坦部用の連結板31,32に製作誤差を吸収するための長孔を予め形成しておき、これらを施工現場で位置合わせして接続部材33により接合するようにしてもよい。
また、コンクリート製柱状体10の角部に対向した両巻立てパネル2の直交部からなる相隣接部に跨ぐようにその外面側及び内面側に配設された角部用の連結板41,42と、これらを一体に接合する接続部材43とを有する連結部4により、コンクリート製柱状体10の角部に位置する両巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結する。
次いで、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間に形成された間隙内にグラウト材6を注入して硬化させることにより、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10とを一体に接合する。グラウト材6としては、高強度の接合力と優れた防水性とを備えた樹脂モルタル、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂またはポリエレア樹脂等からなる合成樹脂と、砂等の細骨材とが混合された樹脂モルタルを使用可能である。特に、優れた流動性と混和材等の機能とを有する無収縮モルタルからなるグラウト材6を用いた場合には、透き間のない好適な仕上がりを実現可能である。
そして、図1に示すように、コンクリート製柱状体10の下方部から上方部へと複数段の巻立てパネル2を積み上げることによりコンクリート製柱状体10の全体を巻立てるようにする。なお、巻立てパネル2の外面、具体的には金属製主面板23の表面に、錆が発生するのを防止するとともに、光の反射を抑制するため塗装を施すことが望ましい。また、表面に塗装が施された塗装鋼板により巻立てパネル2を構成することが、より好ましい。
上述のように本発明に係るコンクリート製柱状体10の補強構造1は、既設のコンクリート製柱状体10を巻立てるように設置される複数の巻立てパネル2と、相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結する連結部3,4とを備え、巻立てパネル2が、繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21と、このパネル本体層21よりも高い引張強度を有する素材からなる補強用シート材層22とを有する積層構造体からなり、補強用シート材層22が、パネル本体層21の主面に沿った方向に延びるように設けられたものであるため、コンクリート製柱状体10の補強作業を迅速かつ適切に行うことができる。
すなわち、工場で生産された複数の巻立てパネル2を施工現場に搬送して相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を連結部3,4により互いに連結するだけで、コンクリート製柱状体10を巻立てるように設置することができる。このため、特許文献1に開示されたRC巻立て工法のように、鉄筋の組立工程、型枠の設置工程、及びコンクリートの養生後に型枠を取り外す脱型工程等を現場で行う必要はなく、施工現場における作業時間を効果的に短縮することができる。また、コンクリート製柱状体10の大きさ及び必要とする補強強度等に応じて、巻立てパネル2の板厚、形状、大きさ及び枚数を種々に設計、選択することができるため、狭小な場所おいても適切に施工することができるとともに、部品点数や補強構造の厚みが必要以上に増大するのを防止することができる。しかも、工場生産によって巻立てパネル2の品質を安定させることができるため、必要な強度が容易に得られるという利点がある。
さらに、比較的軽量で高い圧縮強度を有するパネル本体層21と、高い引張強度を有する補強用シート材層22とを有する積層構造体により巻立てパネル2を構成したため、この巻立てパネル2の重量が過大になるのを防止しつつ、必要な強度を得ることができる。したがって、特許文献2に開示された鋼板巻立て工法のようにクレーン等を用いて鉄板を建て込むという大掛かりな作業は不要であり、工場等で予め製造された巻立てパネル2を、施工現場に搬入してコンクリート製柱状体10を囲繞するように設置する作業を人力で容易に行うことができる。
また、特許文献3に開示された繊維シート巻立て工法のように、塗装用ハンドローラ等を用いて柱状体の表面全体にわたって含浸樹脂を均一に塗布する工程や、その養生工程及び仕上げ塗装作業を施工現場で行う必要がなく、パネル本体層21及び補強用シート材層22を有する積層構造体からなる複数の巻立てパネル2を工場で効率よく生産することができる。しかも、熟練した技術者によらずとも施工現場における作業を容易かつ適切に行うことができるとともに、天候や気温に左右されることがないので、作業時間と費用とを低減することができる。
上述の実施形態では、パネル本体層21の主面に補強用シート材層22を一体に接合した構成としたため、巻立てパネル2の曲げ剛性(ヤング率E×断面二次モーメントI)を効果的に増大させることができるともに、パネル本体層21の表面および裏面を補強用シート材層22により保護してパネル本体層21の劣化を防止することができる。
なお、パネル本体層21の表面及び裏面にそれぞれ一枚ずつの補強用シート材層22を接合してなる上述の実施形態に代え、パネル本体層21の表面及び裏面にそれぞれ二枚以上の補強用シート材層22を接合した構成としてもよく、あるいはパネル本体層21の表面及び裏面のいずれか一方にのみ補強用シート材層22を接合した構成としてもよい。
また、補強用シート材層22に含浸させた合成樹脂製の接着剤によりパネル本体層21の主面に補強用シート材層22を一体に被覆させるようにした上述の構成に代え、生産工場において、巻立てパネル成形用の型枠内に、パネル本体層21の表面および裏面からなる両主面を覆う補強用シート材層22をそれぞれ配置した状態で、セメント混合物を型枠内に注入して固化させることにより、パネル本体層21と補強用シート材層22とを一体に接合するようにしてもよい。
さらに、図5に示すように、補強用シート材層22をパネル本体層21内に埋設し、一対の補強用シート材層22をそれぞれパネル本体層21の表面部及び裏面部と内層部との間に挟み込んでなる巻立てパネル2´を用いてもよい。この構成によれば、前記合成樹脂製の接着剤を用いることなく、補強用シート材層22とパネル本体層21とを強固に一体化することができる。なお、パネル本体層21の内部に、二枚以上の補強用シート材層22を埋設し、あるいは一枚の補強用シート材層22を埋設した構成としてもよい。
上述の実施形態では、巻立てパネル2の最外方部に、例えば亜鉛メッキ鋼板等の高い曲げ強度及び引張強度を有する金属製被覆板、具体的には、補強用シート材層22の外側面を覆う金属製主面板23とパネル本体層21の上下両端面及び左右両側面を覆う金属製周面板24とを一体に設けた構成としたため、比較的軽量で高い圧縮強度を有するパネル本体層21と、高い引張強度を有する補強用シート材層22と、巻立てパネル2の最外方部を補強する金属製主面板23とを積層することによる相乗効果で、優れた補強作用が得られるという利点がある。
上述の実施形態では、巻立てパネル2の相隣接部を跨ぐように設置された平坦部用の連結板31,32及び角部用の連結板41,42と、これらを巻立てパネル2に接続する接続部材33,43とを有する連結部3により、巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結している。この構成によれば、施工現場において相隣接する巻立てパネル2を容易かつ強固に連結することができるとともに、コンクリート製柱状体10の大きさに応じて巻立てパネル2の個数を増減することにより、コンクリート製柱状体10の周囲を適正に巻立てることができる。
上述の構成を有する巻立てパネル2の強度を確認するために、約50mmの平均幅Wと、15mm前後の平均厚みTと、約300mmの平均長さLとを有する実施例(1),(2)の試験体を作製し、図6に示す下部エッジのスパンSを225mmとした状態で、JISA 1408に規定する建築用ボード類の曲げ及び衝撃試験方法に基づき、各試験体の中央部に集中荷重Pを作用させて強度試験を行ったところ、表1に示すデータが得られた。表1に記載の実施例(1)~(2)では、1.1の比重を有する繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21の表裏両面に補強用シート材層22を接合するとともに、その外面側に厚さ0.5mmの鉄板からなる金属製主面板23を接合している。補強用シート材層22としては600g/mの目付量を有する炭素繊維シートを使用した(後述の実施例(3)~(15)の試験体も同じ。)。
Figure 2022165931000002
そして、実施例(1)の試験体では、ウレタン接着剤等からなるプライマを200g/mの割合で塗布するとともに、エポキシ接着剤を1200g/mの割合で塗布し、実施例(2)に試験体では、プライマを80g/mの割合で塗布するとともに、エポキシ接着剤を435g/mの割合で塗布した。
表1からプライマの使用量が200g/mであるとともにエポキシ接着剤の使用量が1200g/mである実施例(1)では、そのひび割れ時の荷重が3508Nとなり、かつ破壊時の最大応力が118.2N/mmとなった。これに対して、プライマの使用量が80g/mであるとともにエポキシ接着剤の使用量が435g/mである実施例(2)では、そのひび割れ時の荷重が2625Nとなり、かつ破壊時の最大応力が70.4N/mmとなった。このデータから、プライマの使用量及びエポキシ接着剤の使用量が多いほど、巻立てパネル2が高強度になることが確認された。
また、約50mmの平均幅Wと、約16.5mmの平均厚みTと、約630mmの平均長さLとを有する図7に示す実施例(3)の試験体及び図8に示す実施例(4)の試験体を作製し、図7及び図8に示す下部エッジのスパンSを500mmとした状態で、JISA 1408に規定する建築用ボード類の曲げ及び衝撃試験方法に基づいて、強度試験を行ったところ、表1に示す実施例(3),(4)のデータが得られた。なお、実施例(3),(4)では、1.1の比重を有する繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21の長さ方向の両端部を含む全周に補強用シート材を接合し、プライマを200g/mの割合で塗布するとともに、エポキシ接着剤を1200g/mの割合で塗布し、かつ試験体の表裏両面に厚さ0.5mmの鉄板からなる金属製主面板23を接合している。
実施例(4)では、図8に示すように、試験体を、その一端から例えば150mmの個所において切断するとともに、この切断個所を厚さ2.3mmのフラットバーからなる平坦部用の連結板31,32と、直径5mmのタッピングねじからなる接続部材33とを有する連結部3で連結しており、この点で、図7に示す実施例(3)と相違している。そして、表1に示すように、連結部の無い実施例(3)は、ヤング率が48100N/mmになるとともに、破壊時の最大応力が99.8N/mmとなった。これに対して連結部3を有する実施例(4)は、ヤング率が53652N/mmになるとともに、破壊時の最大応力が132.8N/mmとなり、連結部の無い実施例(3)に比べて、ヤング率及び破壊時の最大応力は、それぞれ大きくなることが確認された。また、実施例(4)では、前記連結個所以外の部分において破壊現象が見られたが、連結個所における破壊現象は見られなかった。この結果、平坦部用の連結板31,32と接続部材33とを有する連結部3を設けることにより、十分な連結強度が得られるとともに、巻立てパネルの強度も向上することが確認された。
また、表1に示す実施例(5)の試験体は、1.1の比重を有する繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21の主面に補強用シート材層22が接合されるとともに、その外面が厚さ0.5mmの鉄板で覆われ、かつプライマが200g/mの割合で塗布されるとともに、エポキシ接着剤が780g/mの割合で塗布されている。このエポキシ接着剤の塗布量は、実施例(2)よりも多く、かつ実施例(3)よりも少ない値とされている。このデータからも、エポキシ接着剤の使用量が多いほど、巻立てパネル2が高強度になることがわかる。
Figure 2022165931000003
表2は、約50mmの平均幅Wと、約30mmの平均厚みTと、約480mmの平均長さLを有する試験体を、約465mmのスパンSを有する下部エッジにより支持した状態で、JISA 1408に規定する建築用ボード類の曲げ及び衝撃試験方法に基づき、各試験体の中央部に集中荷重Pを作用させることにより行った強度試験の結果を示している。表2に示す実施例(6)~(12)の試験体は、1.9の比重を有する繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21内に、補強用シート材層22が埋設され、かつ前記金属製主面板が設けられていない点で、前記表1の実施例(1)~(5)と異なっている。そして、表2に示す実施例(6)の試験体内には一枚の補強用シート材層22が埋設され、同実施例(7)の試験体内には二枚の補強用シート材層22が埋設され、同実施例(8)の試験体内には三枚の補強用シート材層22が埋設され、かつ同実施例(9)に係る試験体内には五枚の補強用シート材層22が埋設されている。
表2の実施例(6)~(9)における破壊時の最大応力の欄に示すデータから、金属製主面板を省略した場合においても、パネル本体層21内に補強用シート材層22を埋設することにより、破壊時の最大応力が65.5N/mm~99.7N/mmとなり、必要とする強度が得られることが確認された。また、前記補強用シート材層22の枚数を増やすことにより、巻立てパネル2の強度が原則として向上することが確認された。なお、補強用シート材層22の枚数が5枚である実施例(9)では、破壊時の最大応力が98.2N/mmとなり、補強用シート材層22の枚数が3枚である実施例(8)に比べて強度がやや低下し、補強用シート材の枚数が一定値以上になると枚数分の補強効果が得られないことが確認された。
また、表2に示す実施例(10)~(12)の試験体は、実施例(6)~(8)よりも材齢日数がそれぞれ長く設定されたものであり、破壊時の最大応力が75.3N/mm~111.3N/mmであった。このデータから、コンクリートの養生期間を長くすることにより、巻立てパネル2の強度を向上できることが確認された。
Figure 2022165931000004
表3は、約50mmの平均幅Wと、15mm前後の平均厚みTと、約460mmの平均長さLを有する試験体を、約270mmのスパンSを有する下部エッジにより支持した状態で、JISA 1408に規定する建築用ボード類の曲げ及び衝撃試験方法に基づき、各試験体の中央部に集中荷重Pを作用させることにより行った強度試験の結果を示している。表3に示す実施例(13)~(15)の試験体は、1.9の比重を有する繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21内に、補強用シート材が埋設され、かつ前記金属製主面板が設けられていない点で、前記表1に示す試験体とは異なっている。また、表3に示す実施例(13)~(15)の試験体は、その平均厚みTが約15mmであり、表2に示す試験体よりも薄く設定されたものであり、破壊時の最大応力が110.4N/mm~137.8N/mmであった。このデータから、巻立てパネル2の板厚をある程度薄くしても、必要とする強度が得られることが確認された。
図9は、巻立てパネル2の相隣接部を跨ぐように設置された平坦部用の連結板31及び角部用の連結板41と、巻立てパネル2の表面を覆う金属製主面板23に連結板31,41の側辺部を溶接した溶接部30とを有する連結部3,4により、相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結した例を示している。この構成によれば、例えば施工現場において連結板31,41の側辺部を金属製主面板23に溶接することにより、相隣接する巻立てパネル2を容易かつ強固に連結することができるとともに、コンクリート製柱状体10の大きさに応じて巻立てパネル2の個数を容易に増減することできる。
なお、相隣接する巻立てパネル2の突き合わせ部をエポキシ樹脂材からなる接着剤で接着することにより、相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結することも可能であり、あるいはこの接着剤を用いた連結構造と、前記溶接部30を有する連結構造とを併用することも可能である。
上述の実施形態では、巻立てパネル2をアンカーボルト5によりコンクリート製柱状体10に固定するように構成したため、施工現場において巻立てパネル2をコンクリート製柱状体10に安定して固定することができる。しかも、巻立てパネル2をコンクリート製柱状体10に保持させた状態で、連結部3,4により相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を互いに連結する作業を容易かつ適正に行うことができる。
また、上述のようにコンクリート製柱状体10との間に一定間隔の間隙を置いて巻立てパネル2を設置し、この巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間に形成された間隙内にグラウト材6を注入して、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10とを一体に接合するように構成した場合には、巻立てパネル2を設けることによるコンクリート製柱状体10の補強作用を効果的に向上させることができる。なお、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間に、必ずしも間隙を設ける必要はなく、図10に示すように、巻立てパネル2を、コンクリート製柱状体10の壁面に密着させた状態でアンカーボルト5等により固定するように構成してもよい。
図11に示すように、無収縮モルタル60からなるグラウト材を、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間隙内に透き間なく注入することにより、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10と無収縮モルタル60とを一体化させるように構成した場合には、巻立てパネル2、コンクリート製柱状体10、及び無収縮モルタル60の間にズレや剥離が生じるのを防止して、これらを強固に固着させることができる。このため、コンクリート製柱状体10の周囲を囲繞するように巻立てパネル2を設置することによる補強作用を効果的に増強することができる。
無収縮モルタル60は、その乾燥後における膨張率(JSCE-F-542及びJSCE-F-533に準ずる。)が、例えば、0以上かつ0.30%以下であって、好ましくは0以上かつ0.25%以下であり、硬化時にわずかに膨張するとともに、乾燥後も収縮しないという性質を有している。また、無収縮モルタル60の付着強度は、3.0N/mm以上かつ4.5N/mm以下である。さらに、材齢28日における無収縮モルタル60の圧縮強度は、50.0N/mm以上である。
例えば、住友大阪セメント株式会社製の商品名「フィルコンR」のプレミックスタイプからなる無収縮モルタル60を、図11に示すように、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間隙内に注入して固化させる試験を行った。商品名「フィルコンR」からなる無収縮モルタル60は、上記膨張率が、材齢7日において0.21%であり、収縮することがない。また、「フィルコンR」は、3.5N/mmの付着強度を有し、かつ材齢28日において50.0N/mm以上の圧縮強度を有している。また、「フィルコンR」は、ブリーディング(JSCE-F-522に準ずる。)が、0%である。
上述のように打設後にわずかに膨張する性質を有する無収縮モルタル60を、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間隙内に透き間なく注入して、これら一体化させた場合には、打設後に収縮する性質を有する一般的なグラウト材を用いた場合のように、巻立てパネル2、コンクリート製柱状体10、及びグラウト材の間にズレや剥離が生じることはない。したがって、コンクリート製柱状体10の外周部を無収縮モルタル60により途切れることなく囲繞して、コンクリート製柱状体10の全周に亘り均一な抗力Qに分散して作用させることができ、コンクリート製柱状体10に応力が集中することによる損傷の発生を効果的に防止することができる。また、無収縮モルタル60によってコンクリート製柱状体10と、無収縮モルタル60と、巻立てパネル2とを一体化することができ、巻立てパネル2を安定した状態で、コンクリート製柱状体10に固定できる。
上述の実施形態では、平板形の基本形状を有する巻立てパネル2を用いてコンクリート製柱状体10を補強した例について説明したが、この構成に代え、図12に示すようにL字状の断面形状を有する一対の巻立てパネル2a,2aを用いるとともに、その縁部同士を角部用の連結板41,42と、接続部材43とを有する連結部4で連結することにより、コンクリート製柱状体10の補強構造1aを構成してもよい。また、図13に示すように、コ字状の断面形状を有する一対の巻立てパネル2b,2bの縁部同士を、平坦部用の連結板31,32と接続部材33とを有する連結部3で連結することにより、コンクリート製柱状体10の補強構造1bを構成してもよい。上述の構成によれば、正方形の断面形状を有する既設のコンクリート製柱状体10を、少ない部品点数で容易かつ強固に連結することができる。
図14は、円形の断面形状を有するコンクリート製柱状体10cの補強構造1cを示している。この実施形態では、円弧状の断面形状を有する複数の巻立てパネル2cをコンクリート製柱状体10cの周囲に設置するとともに、円弧状に湾曲した平面視形状を有する連結板と、タッピングねじ等からなる接続部材とを有する連結部3cにより巻立てパネル2c,2cの縁部同士を連結している。この構成によれば、円形の断面形状を有する既設のコンクリート製柱状体10cに適合した形状の補強構造1cを形成することができる。
図15は、円形の断面形状を有するコンクリート製柱状体10dの周囲に、平板形状の巻立てパネル2dを多角形状に配置するとともに、所定角度に折曲された平面視形状を有する連結板と、タッピングねじ等からなる接続部材とを有する連結部4dにより、前記巻立てパネル2dの縁部同士を連結してなるコンクリート製柱状体10dの補強構造1dを示している。この構成によれば、平板状の基本形状を有する巻立てパネル2dを用いて、円形の断面形状を有する既設のコンクリート製柱状体10cを補強することができる。
なお、図示は省略したが、長円形の断面形状を有するコンクリート製柱状体の場合には、平板形状の巻立てパネル2と、円弧状の断面形状を有する複数の巻立てパネル2cとを組み合わせて楕円形に配列することにより、前記コンクリート製柱状体を補強することが可能である。
(第二実施形態)
図16及び図17は、本発明の第二実施形態に係るコンクリート製柱状体10の補強構造1Aを示している。この第二実施形態に係るコンクリート製柱状体10の補強構造1Aは、高架道路を支持する柱脚、橋梁を支持する橋脚、又建築物の柱等からなるコンクリート製柱状体10の上下方向に沿って配置された複数の巻立てパネル2と、この上下方向に相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を連結する連結部7を備えている。連結部7は、コンクリート製柱状体10の下方に設置された巻立てパネル2と、その上方に配設された巻立てパネル2との突き合わせ部からなる上下隣接部を跨ぐ位置において、水平方向に延びるように配設された表裏一対のフラットバー等からなる連結板71,72と、これらを一体に接合する締結ボルト又はタッピングねじ等からなる接続部材73とを有している。
上述の補強構造1Aを構築するには、まず上述の第一実施形態と同様にして図18に示すように、コンクリート製柱状体10の下方部を囲繞するように複数枚の巻立てパネル2を設置するとともに、必要に応じてアンカーボルト5により各巻立てパネル2をコンクリート製柱状体10にそれぞれ固定する。そして、コンクリート製柱状体10の横方向に相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を連結部3により互いに連結するとともに、コンクリート製柱状体10の角部に位置する両巻立てパネル2の直交部からなる相隣接部を連結部4により互いに連結することにより、下段の巻立て部51を形成する。
次いで、図19に示すように、下段の巻立て部51を構成する巻立てパネル2の上端部に連結板71,72を設置して、これらを接続部材73により一体に接合した後、巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間に形成された間隙内に無収縮モルタル60等からなるグラウト材を注入して硬化させることにより、下段の巻立て部51を構成する巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10とを一体に接合する。
その後、図16及び図17に示すように、下段の巻立て部51の上方に複数の巻立てパネル2を設置して上段の巻立て部52を形成するとともに、上段の巻立てパネル2の下端部と連結板71,72とを接続部材73により一体に接合することにより、上下の巻立てパネル2の突き合わせ部からなる上下隣接部を連結部7により互いに連結する。また、上段の巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10との間に形成された間隙内に無収縮モルタル60等を注入して硬化させることにより、上段の巻立て部52を構成する巻立てパネル2とコンクリート製柱状体10とを一体に接合する(図17参照)。
このように上下方向に相隣接して設置された巻立てパネル2,2の上下隣接部を連結部7により互いに連結するように構成すれば、繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21及び補強用シート材層22を含む積層構造体からなる複数枚の巻立てパネル2,2を、施工現場において上下方向に相隣接して、これらを容易かつ強固に連結することができる。しかも、コンクリート製柱状体10の上下寸法に応じて巻立てパネル2の個数を増減することにより、コンクリート製柱状体10の上下方向に亘る領域を適正に補強できるという利点がある。
(第三実施形態)
図20及び図21は、本発明の第三実施形態に係るコンクリート製柱状体10Bの補強構造1Bを示している。この第三実施形態に係るコンクリート製柱状体10Bは、地中に埋設されるフーチング11と、その上面から上方に延びる柱状本体12とを有している。また、コンクリート製柱状体10Bには、その上下方向に延びる主鉄筋13,14が配設されるとともに、この主鉄筋13,14の配筋量が変化する段落とし部15が柱状本体12の長さ方向の途中に設けられている。すなわち、コンクリート製柱状体10Bの上端部からフーチング11の下端部に至る範囲には、長尺の第一主鉄筋13が8本配設され、コンクリート製柱状体10Bの長さ方向途中からフーチング11の下端部に至る範囲には、短尺の第二主鉄筋14が8本配設されている。これにより、第二主鉄筋14の上端を中心としたコンクリート製柱状体10Bの長さ方向の一定領域からなる段落とし部15よりも下方には、8本の第一主鉄筋13及び8本の第二主鉄筋14の両方が配設されているのに対し、前記段落とし部15よりも上方には、8本の第一主鉄筋13のみが配設されている。
そして、段落とし部15を含むコンクリート製柱状体10Bの上下方向の一定範囲を巻立てるように複数枚の巻立てパネル2を設置するとともに、相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を連結部3,4により互いに連結することにより、段落とし部15を含む範囲を補強するように構成されている(図21参照)。この構成によれば、段落とし部15の補強個所以外に悪影響を及ぼすことなく、コンクリート製柱状体10B内に配設された主鉄筋13,14に生じる応力を大幅に低減し、その耐力を効果的に向上させることができる。なお、図21において、符号16は主鉄筋13,14を拘束する帯筋(剪断補強筋)である。
本実施形態に係るコンクリート製柱状体10Bの補強構造1Bによる効果を確認するために、高速道路用に設計された実橋脚の1/4の大きさを有し、その長さ方向の途中に段落とし部15が設けられたコンクリート製柱状体10Bの試験体として、段落とし部15の補強構造1Bの無い試験体(α)と、段落とし部15の補強構造1Bを有する試験体(β)とを作成した。そして、図22に示すように、載荷装置17によりコンクリート製柱状体10Bの上端に一定の荷重Nを載荷した状態で、コンクリート製柱状体10Bに取り付けられた駆動装置18により、柱状本体12の上部を水平方向に押し引きする往復荷重Rを負荷して、試験体(α),(β)内の主鉄筋13,14に生じる曲げ歪を歪ゲージで測定する試験を行ったところ、表4,5に示すデータが得られた。
試験体(α),(β)のフーチング11の上下寸法H1は、750mmに設定され、柱状本体12の上下寸法Hは、3350mmに設定されている。試験体(α),(β)の段落とし部15付近における柱状体の断面は、450×625mmの寸法を有する矩形に形成され、実橋脚(1800×2500mm)の1/4の断面積を有している。また、フーチング11の上面からなる柱状本体12の基部から往復荷重Rの負荷位置までの距離h1は、2950mmに設定され、柱状本体12の基部から第二主鉄筋14の上端までの距離h2は、1850mmに設定されている。
試験体(α),(β)の段落とし部15の下方部には、4本の異形鉄筋D16(公称直径15.9mm)からなる主鉄筋13と、3本のD13の異形鉄筋(公称直径12.7mm)からなる主鉄筋14とが配設されることにより、合計の鉄筋量が1175mmとされている。この柱状本体12の下方部における単位面積当たりの主鉄筋量は、1175/(625×450)≒0.0042であって、実橋脚の単位面積当たりの鉄筋量(0.0046)と略同じ値に設定されている。
一方、試験体(α),(β)の段落とし部15の上方部には、4本の異形鉄筋D16(公称直径15.9mm)からなる主鉄筋13のみが配設されることにより、合計の主鉄筋量が794mmとされている。この柱状本体12の上方部における単位面積当たりの鉄筋量は、794/(625×450)≒0.0027であって、実橋脚の単位面積当たりの鉄筋量(0.0030)と略同じ値に設定されている。なお、試験体(α),(β)を構成するコンクリートは、実橋脚と同じ強度(24N/mm)を有するものを使用した。また、試験体(α),(β)内に配設される主鉄筋13,14の材質は、実橋脚と同じSD345の規格のものを使用した。
そして、試験体(β)では、1.4kN/mの単位体積当たりの重量と、10.5mmの厚さと、30N/mmの圧縮力強度と、3.5N/mmの曲げ引張強度と、14kN/mmの弾性係数とを有する繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層21の表裏両面に補強用シート材層22を接合してなる複数枚の巻立てパネル2を用いて、段落とし部15を補強した。具体的には、775mmの上下寸法を有する巻立てパネル2の下端部と、柱状本体12の基部との距離が1325mmとなるように、複数の巻立てパネル2を設置するとともに、相隣接する巻立てパネル2の縁部同士を連結部3,4で互いに連結することにより、段落とし部15を含む範囲を補強する補強構造1bを構成した。上記鉄筋量、上記圧縮力強度、上記曲げ引張強度及び上記弾性係数等の上記諸元を有する試験体(β)の場合、巻立てパネル2の上下寸法は、柱状本体12の上下寸法に対して、775/3350=約0.231である。この寸法比によって、表4~7に示す効果(詳細は後述する。)が得られた。この寸法比を数値限定すると、0.18倍以上0.28倍以下である。但し、この寸法比は、特に限定されず、上記諸元に基づいて、適宜変更することが可能である。巻立てパネル2で補強する範囲を、段落とし部15を含む範囲に限定してコストを低減できる。
また、補強用シート材層22として、200g/mの単位重量と、1.8g/cmの密度と、0.111mmの厚さと、3400N/mmの引張強度と、245kN/mmの弾性係数とを有するCFRP(炭素繊維強化樹脂)を使用した。さらに、巻立てパネル2と試験体(α),(β)の柱状本体12との間隙内に注入されるグラウト材として、住友大阪セメント株式会社製の商品名「フィルコンR」のプレミックスタイプからなる無収縮モルタル60を使用した。
そして、コンクリート製柱状体10Bの上端部に250kNの軸方向荷重Nを載荷した状態で、基部(フーチング11の上面)からh1=2950mmの高さ位置において、柱状本体12の上部を水平方向に押し引きすることにより、12mmを一単位δyとして水平方向に変位させる往復荷重Rを5mm/秒の載荷速度で3サイクルに亘って負荷した。また、水平方向の変位を1δy(12mm)から、2δy(24mm)、3δy(36mm)・・・8δy(96mm)へと順次増大させるように往復荷重Rを変化させて、柱状本体12の基部(フーチング11の上面)からh3=1475mmの高さ位置において、柱状本体12のF面側(往復荷重Rを負荷する駆動装置18の設置部側)に位置する主鉄筋13の曲げ歪と、柱状本体12のB面側(駆動装置18の設置部の反対側)に位置する主鉄筋13の曲げ歪とを、それぞれ歪ゲージにより測定したところ、表4,5に示すデータが得られた。
Figure 2022165931000005
Figure 2022165931000006
柱状本体12のF面側に設けられた主鉄筋13の曲げ歪を、補強構造1B無しの試験体(α)と補強構造1B有りの試験体(β)とで比較したところ、試験体(β)の曲げ歪は、試験体(α)に比して、平均で約0.54倍に低減されることが確認された。また、柱状本体12のB面側に設けられた主鉄筋13の曲げ歪を、補強構造1B無しの試験体(α)と補強構造1B有りの試験体(β)とで比較したところ、試験体(β)の曲げ歪は、試験体(α)に比して、平均で約0.61倍に低減されることが確認された。この結果、段落とし部15を含む範囲を補強する補強構造1Bを設けることにより、段落とし部15近傍に位置する主鉄筋13の曲げ歪が大幅に低減され、優れた補強作用が得られることが確認された。
なお、試験体(α),(β)の基部(フーチング11の上面からの高さh3が0mmの位置)における主鉄筋の曲げ歪を、それぞれ測定して比較したところ、柱状本体12のF面側では、補強構造1B有りの試験体(β)の曲げ歪が、補強構造1B無しの試験体(α)に比して、平均で約1.05倍であった。また、柱状本体12のF面側では、特異データを除くと、補強構造1B有りの試験体(β)の曲げ歪が、補強構造1B無しの試験体(α)に比して、平均で約1.06倍であった。このデータから、前記補強構造1Bの有無に応じて柱状本体12の基部における主鉄筋13の曲げ歪に大きな影響を及ぼさないことが確認された。
次に、同様にして試験体(α),(β)の基部(フーチング11の上面)からh3=1950mmの高さ位置において、柱状本体12のF面側に位置する主鉄筋13の曲げ歪と、同B面側に位置する主鉄筋13の曲げ歪とを、それぞれ歪ゲージにより測定したところ、表6,7に示すデータが得られた。
Figure 2022165931000007
Figure 2022165931000008
柱状本体12のF面側に設けられた主鉄筋13の曲げ歪を、補強構造1B無しの試験体(α)と補強構造1B有りの試験体(β)とで比較したところ、表6に示すように、試験体(β)の曲げ歪が試験体(α)に比して、平均で約0.27倍に低減されることが確認された。また、柱状本体12のB面側に設けられた主鉄筋13の曲げ歪を、補強構造1B無しの試験体(α)と補強構造1B有りの試験体(β)とで比較したところ、表7に示すように、試験体(β)の曲げ歪は、試験体(α)に比して、平均で約0.29倍に低減されることが確認された。
この試験結果から、コンクリート製柱状体10Bの段落とし部15を含む範囲を巻立てパネル2で補強する補強構造1Bを設けることにより、第二主鉄筋14の上端(h2=1850mm)の近傍に位置する段落とし部15よりも上方、つまり主鉄筋14が配設されていない個所において、主鉄筋13の曲げ歪を顕著に低減できることが確認された。さらに、上述の検出位置(h3=1950mmの高さ位置)においては、往復荷重Rが大きくなって、柱状本体12の上部の水平変位量が増大する程、試験体(β)の曲げ歪を、試験体(α)に比して、より顕著に低減できることが確認された。
なお、水平方向の変位が8δy(96mm)もしくは9δy(108mm)となる往復荷重Gが負荷された時点で、試験体(α),(β)に基部におけるコンクリートの剥落が始まり、水平方向の変位が11δy(144mm)となった時点で、コンクリートの圧壊、剥離、主鉄筋の座屈が発生したため、試験を終了した。そして、試験体(α),(β)の段落とし部15を含む範囲におけるクラックの発生状況を確認したところ、補強構造1B無しの試験体(α)では、段落とし部15を含む範囲においても他の部位と同様のクラックが発生していた。これに対して補強構造1B有りの試験体(β)では、段落とし部15を含む範囲にクラックがほとんど発生していなかった。
また、補強用の巻立てパネル2の表面にも変化が見られず、打音検査により補強構造1Bの間隙内に充填されたグラウト材の一部に浮きの発生が想定されたが、試験完了後の試験体(β)の補強用巻立てパネル2を撤去したうえで、目視により調査した結果、補強用巻立てパネル2、グラウト材、及び橋脚柱コンクリートのいずれにもクラック、浮き等の発生は見られなかった。さらに、コンクリート製柱状体10Bの段落とし部15近傍における主鉄筋13の応力度は、前記曲げ歪の測定結果から、補強構造1B無しの試験体(α)では、最大240N/mmであり、補強構造1B有りの試験体(β)では、140N/mm程度であると推定され、いずれも降伏点まで達していないためクラックの発生に顕著な差異は認められないが、補強構造1B有り試験体(β)ではクラックの発生が減少していることが確認された。
さらに、補強構造1B無しの試験体(α)について、歪ゲージの設置高さh3を、0mm、100mm、1475mm、及び1950mmに変化させて、柱状本体12のF面側に位置する主鉄筋の曲げ歪と、同B面側に位置する主鉄筋の曲げ歪とを、それぞれ歪ゲージにより測定したところ、表8,9に示すデータが得られた。
Figure 2022165931000009
Figure 2022165931000010
表8,9に示すデータから、歪ゲージの設置高さh3が低い程、つまり柱状本体12の基部に近い程、主鉄筋13の曲げ歪が大きくなり、主鉄筋13及び柱状本体12に作用する応力も増大することが分かる。したがって、図23に示すように、コンクリート製柱状体10Bの段落とし部15を含む範囲を補強する補強構造1Bと、柱状本体12の基部近傍を補強する補強構造1Cとを設けた構成とすることが好ましい。この構成によれば、コンクリート製柱状体10Bの段落とし部15近傍と、柱状本体12の基端部近傍との両方を補強することにより、コンクリート製柱状体10Bの強度及び剛性を、その高さ方向全長に亘って効果的に向上させることができる。
なお、コンクリート製柱状体10Bの段落とし部15近傍においてそれ程顕著な強度の低下が見られない場合は、段落とし部15近傍を補強する補強構造1Bを省略し、大きな曲げ応力が作用する柱状本体12の基部近傍を補強する補強構造1Cのみを設けた構成としてもよい。この構成によれば、コンクリート製柱状体10Bの強度及び剛性を、簡単な構成で効果的に補強できるという利点がある。
1 コンクリート製柱状体の補強構造
2 巻立てパネル
3,4,7 連結部
5 アンカーボルト
10 コンクリート製柱状体
11 フーチング
12 柱状本体
13,14 主鉄筋
15 段落とし部
21 パネル本体層
22 補強用シート材層
23 金属製主面板(金属製被覆板)
24 金属製周面板(金属製被覆板)
30 溶接部
31,32 平坦部用の連結板
33,43 接続部材
41,42 角部用の連結板
71,72 連結板

Claims (12)

  1. コンクリート製柱状体を巻立てるように設置される複数の巻立てパネルと、
    相隣接する前記巻立てパネルの縁部同士を互いに連結する連結部とを備え、
    前記巻立てパネルが、繊維補強コンクリートを主体としたパネル本体層及び補強用シート材層を含む積層構造体からなり、
    前記補強用シ-ト材層が、前記パネル本体層の主面に沿った方向に延びるように設けられているコンクリート製柱状体の補強構造。
  2. 前記補強用シート材層がパネル本体層内に埋設されている請求項1記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  3. 前記パネル本体層の主面に前記補強用シート材層が一体に接合されている請求項1記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  4. 前記補強用シート材層として炭素繊維シートが用いられる請求項3に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  5. 前記連結部は、前記巻立てパネルの相隣接部を跨ぐように設置された連結板と、前記連結板を前記巻立てパネルに接続する接続部材とを有している請求項3に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  6. 前記巻立てパネルの最外方部には、金属製被覆板が一体に設けられている請求項3に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  7. 前記連結部は、前記巻立てパネルの相隣接部を跨ぐように設置された連結板と、前記連結板を前記金属製被覆板に溶接した溶接部とを有している請求項6記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  8. 前記巻立てパネルを前記コンクリート製柱状体に固定するアンカーボルトを、さらに備えている請求項7に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  9. 前記巻立てパネルは、前記コンクリート製柱状体との間に間隙が形成され、該間隙内にグラウト材が注入されている請求項1~8のいずれか1項に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  10. 前記グラウト材として無収縮モルタルが用いられ、
    該無収縮モルタルが前記間隙内に透き間なく注入されることにより、前記巻立てパネルと前記コンクリート製柱状体と前記無収縮モルタルとが一体化されている請求項9記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  11. 前記巻立てパネルは、前記コンクリート製柱状体の上下方向に沿って複数配置され、
    前記上下方向に相隣接して設置される前記巻立てパネルの上下隣接部が前記連結部により互いに連結されている請求項10に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
  12. 前記コンクリート製柱状体は、その上下方向に延びる主鉄筋の配筋量が変化する段落とし部を有し、
    前記段落とし部を含む範囲を巻立てるように前記巻立てパネルが設置されている請求項11に記載のコンクリート製柱状体の補強構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7477733B1 (ja) 2023-08-10 2024-05-01 鹿島建設株式会社 補強構造および補強方法

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