JP2022155326A - チョコレート - Google Patents

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JP2022155326A JP2021058766A JP2021058766A JP2022155326A JP 2022155326 A JP2022155326 A JP 2022155326A JP 2021058766 A JP2021058766 A JP 2021058766A JP 2021058766 A JP2021058766 A JP 2021058766A JP 2022155326 A JP2022155326 A JP 2022155326A
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絵梨子 内藤
Eriko Naito
薫 塩口
Kaoru Shioguchi
朝貞 増子
Tomosada Masuko
直基 坂元
Naomoto Sakamoto
泰佳 金田
Yasuyoshi Kaneda
宏之 渡部
Hiroyuki Watabe
克実 佐々木
Katsumi Sasaki
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Abstract

【課題】長期間、ブルームを抑制することができるテンパリング型チョコレートを提供することを課題とする。【解決手段】テンパリング型チョコレートであって、油脂、下記乳化剤A及び下記乳化剤Bを含有する、チョコレート。乳化剤A:ポリグリセリン脂肪酸エステル;乳化剤B:構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステル【選択図】なし

Description

本発明は、チョコレートに関する。
チョコレートは、カカオマス、ココアバター、および、必要に応じて、糖類、乳製品、その他の食用油脂、ココアパウダー、乳化剤、香料等を混合し、口腔内でざらつきを感じないように微粒化、精練した後、後述する油脂の種類に応じて、必要な場合はテンパリング処理を施し、成形して得られる菓子である。テンパリング処理の要否は、チョコレートに使用される油脂種によって判断される。ココアバターや、その代替脂であるテンパリング型ハードバターなど、いわゆるテンパリング型油脂を用いたテンパリング型チョコレートは、シャープで良好な口溶けを示すが、結晶多形現象が生じるため、ブルーム現象を引き起こす恐れがある。
チョコレートにおいては、その作製時や保存時において、表面が白くなるブルーム現象(単に「ブルーム」とも称する)が生じ得る。チョコレートにおけるブルームの一種であるファットブルームは、チョコレート表面に存在するココアバター等の油脂が粗大結晶化し白化する現象であり、白化した外観により消費者に嫌悪感を与えてしまうだけでなく、口腔内での表面のざらつきにより消費者に嫌悪感を与えてしまう。ブルームを発生させる要因は種々考えられるが、例えば、チョコレートがココアバターの融点以上になって完全に融解した後に冷えて固まった際に発生したり(融解によるブルーム)、テンパリング操作の不良によりココアバターの不安定な結晶が初期から存在しており、該結晶が徐々に成長して粗大化したり(テンパリング不良によるブルーム)、長期保管中にココアバターの安定型結晶(V型)がさらに安定した結晶(VI型)に転移して粗大化したりする(油脂結晶の転移によるブルーム)。また、チョコレートをコーティングしたナッツ類や焼き菓子、又はシェルチョコのフィリングから油脂(液油)がチョコレート中に移行し、チョコレート中のココアバターが液油へ溶解し、表面へと押し出され再結晶化する(油脂移行によるブルーム)。これらのブルームの要因から分かるように、いずれも油脂の結晶多形現象が影響しており、チョコレートにおける最適な安定型結晶(V型)が保てなくなること
によってブルームが発生する。従って、結晶多形現象を有するテンパリング型油脂、特にココアバターの含有量が多いと、ブルームの程度が悪化する。
ブルーム問題を改善するため、テンパリング型チョコレートに高融点油脂成分を添加する技術があったが、添加量が多くチョコレートの口溶けや風味の点で問題があった。そこで、特許文献1には、ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするシーディング法チョコレートのファットブルーム防止剤が開示されている。確かに口溶けに影響を与えない少量の添加であるものの、未だブルーム抑制効果が不十分であった。
特開平6-153798号公報
上記の特許文献1に開示される従来技術により、確かにブルーム現象抑制の可能性は見出されているが、未だ抑制期間としては短く不十分であり、現実の産業上利用にかなうだけの長期の保存性を得るための解決策が未だ提示されていない。
そこで本発明は、長期間、ブルームを抑制することができるテンパリング型チョコレートを提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の材料を組み合わせてテンパリング型チョコレートを作製することにより、上記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]テンパリング型チョコレートであって、油脂、下記乳化剤A及び下記乳化剤Bを含有する、チョコレート。
乳化剤A:ポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤B:構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステル
[2]前記乳化剤Bが、構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び炭素数16~18の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類の脂肪酸を含むショ糖脂肪酸エステルである、[1]に記載のチョコレート。
[3]チョコレート中の前記乳化剤Aの含有量が0.01~3.0質量%であり、前記乳化剤Bの含有量が0.01~3.0質量%であり、かつ、前記乳化剤A及び前記乳化剤Bの総含有量が5.0質量%以下である、[1]又は[2]に記載のチョコレート。
[4]前記油脂を構成するトリグリセリド全量に対するStUSt型のトリグリセリド(St:C16~18の飽和脂肪酸、U:C16~18の不飽和脂肪酸)の含有量が26質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のチョコレート。
[5]前記油脂を構成するトリグリセリドの全構成脂肪酸全量に対するラウリン酸のモル分率が38%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のチョコレート。
[6]チョコレート中のカカオ分の含有量が60質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のチョコレート。
本発明によれば、長期間、ブルームを抑制することができるテンパリング型チョコレートを提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上、B以下であることを意味する。
また、本明細書において、「複数」とは、2以上であることを表す。
<チョコレートの構成及び特性>
本発明の一実施形態であるチョコレート(単に「チョコレート」とも称する)は、テンパリング型チョコレートであって、油脂、下記乳化剤A及び下記乳化剤Bを含有する、チョコレートである。
乳化剤A:ポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤B:構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステル
テンパリング型とは、ココアバターを含む油脂の主要なトリグリセリドの組成が2-不飽和-1,3ジ飽和トリグリセリドからなり、製造工程においてテンパリング操作が必要となるものである。該テンパリング操作とは、コンチング終了後のチョコレート生地を、攪拌あるいはかき取りしながら連続的に冷却する過程において、27℃~29℃の温度まで冷却した後、30℃~33℃へ一旦昇温させた後、再度冷却しながら所定の温度に調節し、溶融状態のチョコレート生地に安定結晶の結晶核を生じさせる操作のことである。ま
た、この操作はシード剤を用い、温度操作を簡略化させることができる。
本実施形態に係るチョコレートは、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステルを含有する。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖一分子に対し脂肪酸がエステル結合してなるために構造がリジットであり、ココアバター結晶に対して鋳型となり得る。ショ糖脂肪酸エステルがココアバターの結晶間に入り込み、分子を拘束することで、結晶構造の変化を抑制する。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、複数のグリセリン基が重合したフレキシブルな構造であり、ココアバター結晶間に網目状に入り込み、三次元ネットワークを形成して転移の立体障壁となり得る。これらの機能を有する乳化剤を組み合わせて用いることにより、ブルーム現象のさらなる抑制を図ることができると本発明者らは推測している。
チョコレートの成分は、油脂、上記の乳化剤A及び乳化剤Bを含有していれば特段制限されない。乳化剤A及び乳化剤Bを含め、チョコレートに含有し得る材料(成分)を以下に説明するが、これらの材料の入手方法は特段制限されず、公知の製造方法により製造されたものであっても、市販されているものであってもよい。
[乳化剤A]
乳化剤Aであるポリグリセリン脂肪酸エステルは、高親水性から油溶性まで幅広い性質及び機能を付与することができ、また、耐酸性及び耐塩性に優れる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるポリグリセリドの平均重合度は、特段制限されないが、フレキシブルかつ三次元ネットワーク形成上の観点から、通常2以上であり、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、また、通常20以下であり、16以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均重合度とは、ポリグリセリン1モル当たりのグリセリン骨格の繰り返し単位数の平均値である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、構成脂肪酸(ポリグリセリンに縮合される脂肪酸)(単に「脂肪酸」とも称する)の種類は、特段制限されず、複数存在する脂肪酸は全て同じ種類であっても、異なっていてもよく、また、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。
ポリグリセリンに縮合される脂肪酸の炭素数は、特段制限されないが、ネットワークを形成しやすい観点、及び結晶性向上の観点から、通常6以上であり、8以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、16以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましく、また、通常30以下であり、26以下であることが好ましく、24以下であることがさらに好ましい。その中でも、ココアバター結晶の鋳型となり得る結晶性の高い脂肪酸が好ましく、特に炭素数16であるパルミチン酸や炭素数18であるステアリン酸や炭素数22であるベヘン酸といった飽和脂肪酸が好ましく、さらにステアリン酸主体もしくはベヘン酸主体のものが好ましい。
ステアリン酸が主体の乳化剤Aについては、乳化剤Aを構成するポリグリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸全量に対するステアリン酸のモル分率は、特段制限されず、通常50%以上であり、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、63%以上であることがさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらに好ましい。また、乳化剤Aを構成するポリグリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸全量に対するパルミチン酸のモル分率は、特段制限されず、通常10%以上であり、15%以上であることが好ましく、18%以上であることがより好ましく、20%以上で
あることがさらに好ましく、また、通常50%以下であり、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。
ベヘン酸が主体の乳化剤Aについては、乳化剤Aを構成するポリグリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸全量に対するベヘン酸のモル分率は、特段制限されず、通常70%以上であり、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、また、通常100%以下であり、99%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらに好ましい。
乳化剤Aは、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
チョコレート中の乳化剤Aの含有量は、特段制限されないが、ブルームに対する十分な抑制効果が得られることから、通常0.01質量%以上であり、0.02質量%以上であることが好ましく、0.07質量%以上であることがより好ましく、0.12質量%以上であることがさらに好ましい。また、乳化剤独特の風味が生じにくく、チョコレートの口どけに影響しにくいことから、通常3.0質量%以下であり、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
乳化剤AのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance、親水性親油性バランス)は、特段制限されないが、油脂への溶解性及び親和性の観点から、通常1以上であり、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、通常16以下であり、15以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。HLBとは、親水性と親油性(疎水性)とのバランスを表すパラメータであり、その数値が小さいほど親油性が高く、大きいほど親水性が高いことを示す。該HLBは、ポリグリセリンの重合度とポリグリセリンに縮合する脂肪酸のエステル化度のバランスで増減させることができる。
上記のHLBは、親水基部分の分子量を乳化剤の総分子量で除した値に20を乗じることで算出することができる。
上述の通り、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、公知の製造方法で製造されたものを用いてもよいが、例えば、パーム油を水酸化ナトリウム等で加水分解することによりグリセリン及び脂肪酸を得た後、該グリセリンを脱水縮合してポリグリセリンを作製し、該ポリグリセリンと該脂肪酸とを脱水縮合することにより得ることができる。
[乳化剤B]
乳化剤Bである、構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖が有する8個の水酸基を任意の数の脂肪酸で縮合し、高親水性から油溶性まで幅広い性質及び機能を付与することができる。
ショ糖脂肪酸エステルにおいて、構成脂肪酸(ショ糖に縮合される脂肪酸)(単に「脂肪酸」とも称する)の種類は、特段制限されず、複数存在する脂肪酸は全て同じ種類であっても、異なっていてもよく、また、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とを含むものであっても、不飽和脂肪酸のみを含むものであってもよい。
ショ糖に縮合される脂肪酸の炭素数は、特段制限されないが、ココアバターとの相溶性向上によるブルーム抑制の観点から、通常6以上であり、8以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、14以上であることがさらに好ましく、また、通常30以下であり、24以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
また、ショ糖に縮合される脂肪酸について、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び炭素数16~18の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類の脂肪酸を含むことが好ましい。ショ糖に縮合される脂肪酸について、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含むこ
とにより、ブルームの要因となり得るココアバターの脂肪酸に比較的類似するためココアバター結晶との親和性が高く、このためにココアバター結晶の立体構造変化を抑制し、多形転移に伴うブルーム現象を抑制することができることから、特に、飽和脂肪酸であるパルミチン酸とステアリン酸のうち少なくとも1種類以上を含み、及び不飽和脂肪酸であるオレイン酸を含むことがより好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸をいずれも含むことがさらに好ましい。
乳化剤Bを構成するショ糖脂肪酸エステルの全構成脂肪酸全量に対するパルミチン酸のモル分率は、特段制限されず、通常5%以上であり、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましく、また、通常60%以下であり、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。
乳化剤Bを構成するショ糖脂肪酸エステルの全構成脂肪酸全量に対するステアリン酸のモル分率は、特段制限されず、通常5%以上であり、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、また、通常60%以下であり、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。
乳化剤Bを構成するショ糖脂肪酸エステルの全構成脂肪酸全量に対するオレイン酸のモル分率は、特段制限されず、通常5%以上であり、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、また、通常80%以下であり、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、55%以下であることがさらに好ましい。
乳化剤Bの構成脂肪酸のうち、脂肪酸全量に対する不飽和脂肪酸のモル分率は、特段制限されないが、ココアバターとの相溶性の観点から、5%以上であり、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、また、通常80%以下であり、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、55%以下であることがさらに好ましい。
また、乳化剤Bは、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
チョコレート中の乳化剤Bの含有量は、特段制限されないが、ブルームに対する十分な抑制効果が得られることから、通常0.01質量%以上であり、0.02質量%以上であることが好ましく、0.07質量%以上であることがより好ましく、0.12質量%以上であることがさらに好ましい。また、乳化剤独特の風味が生じにくく、チョコレートの口どけに影響しにくいことから、通常3.0質量%以下であり、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
乳化剤BのHLBは、特段制限されないが、油脂への溶解性並びに親和性の観点から、通常0以上であり、1以上であることが好ましく、11以下であり、7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。該HLBは、ショ糖1分子に結合する脂肪酸のエステル化度で増減させることができる。
上記のHLBは、上述の乳化剤Aにおける測定方法と同様の方法で算出することができる。
上述の通り、構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステルは、公知の製造方法で製造されたものを用いてもよいが、例えば、サトウキビから採取されたショ糖と、パーム油やナタネ油を水酸化ナトリウム等で加水分解することにより得られる脂肪酸メチルと、を脱水縮合することにより得ることができる。
チョコレート中の上記の乳化剤A及び乳化剤Bの総含有量は、特段制限されないが、多いほどブルームに対する十分な抑制効果が得られることから、通常0.02質量%以上であり、0.10質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましく、0.28質量%以上であることがさらに好ましく、0.37質量%以上であることが特に好ましい。また、乳化剤独特の風味が生じにくく、チョコレートの口どけに影響しにくいことから、通常5.0質量%以下であり、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましい。
チョコレート中において、乳化剤Bの含有量に対する乳化剤Aの含有量の比率(乳化剤A/乳化剤B)は、質量比で、通常0.05以上であり、0.1以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましく、0.5以上であることが特に好ましく、通常10.0以下であり、6.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。
上述の乳化剤A及び乳化剤Bの構造や含有量の特定は、チョコレートをカラム分離して得られた油相を高速ガスクロマトグラフィー分析することで評価することができる。また、以下に示す乳化剤A及び乳化剤B以外の成分の構造や含有量についても、特定可能である場合には、同様の方法を適用することができる。また、チョコレートに含まれる各成分の含有量は、製造時の原料の仕込み量から算出することもできる。
[その他の乳化剤]
チョコレートは、上記の乳化剤A及び乳化剤B以外の任意の公知の乳化剤(その他の乳化剤)を含んでいてもよい。その他の乳化剤としては、例えば、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。上記の「グリセリン脂肪酸エステル」は、グリセリンモノ脂肪酸エステル及びグリセリンジ脂肪酸エステルの総称を表し、上記の「有機酸グリセリン脂肪酸エステル」は、有機酸グリセリンモノ脂肪酸エステル及び有機酸グリセリンジ脂肪酸エステルの総称を表す。
チョコレート中の乳化剤の総含有量(乳化剤A、乳化剤B、及びその他の乳化剤の合計含有量)は、特段制限されないが、乳化剤独特の風味が生じにくく、チョコレートの口どけに影響しないことから、通常0.05質量%以上であり、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましく、また、通常6.0質量%以下であり、4.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
[油脂]
テンパリング型チョコレートに含まれる油脂は、特段制限されないが、通常、ココアバター及び又はテンパリング型ハードバター(ココアバター以外の植物油脂)、乳脂などが含まれる。テンパリング型ハードバターは、トランス型脂肪酸を主成分とする、又はラウリン酸を主成分とする非テンパリング型ハードバターよりも、ココアバターとの相溶性に優れるため、ココアバターと任意の配合が可能である。非テンパリング型ハードバターだとココアバターの相溶性の観点から、チョコレートに含まれる油脂100質量%に対して、トランス型脂肪酸タイプではココアバター15~25質量%程度の配合、ラウリン酸タイプではココアバター3~5質量%程度の配合が通常であり、これらの範囲の上限を超えて配合することは難しい。
チョコレート中の油脂の含有量は、特段制限されないが、チョコレート特有の口溶けやスナップ性を付与することから、通常18質量%以上であり、20質量%以上であること
が好ましく、28質量%以上であることがより好ましく、33質量%以上であることがさらに好ましい。また、チョコレートの固さを保ち、油脂特有の風味を生じないことから通常60質量%以下であり、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明において、油脂を構成するトリグリセリド全量に対する2-不飽和-1,3ジ飽和トリグリセリドの含有量(特に、StUSt型(St:C16~18の飽和脂肪酸、U:C16~18の不飽和脂肪酸)のトリグリセリドの含有量)は、特段制限されないが、良好なテンパリング操作を付与する観点から、通常26質量%以上であり、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、また、通常100質量%以下であり、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、88質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係るテンパリング型チョコレートには、ココアバター及びテンパリング型ハードバターから成るテンパリング型油脂が主に用いられ、チョコレート中のテンパリング型油脂の含有量は、チョコレート特有の口溶けやスナップ性、良好な風味の付与の観点から、通常18質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、28質量%以上であることがさらに好ましい。また、チョコレートの固さを保ち、油脂特有の風味を生じないことから、通常60質量%以下であり、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
また、チョコレートに含まれる全油脂を構成するトリグリセリドの全構成脂肪酸全量に対するラウリン酸のモル分率は、特段制限されないが、良好なテンパリング性を付与する観点から、通常38%以下であり、25%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
油脂中の固体脂含量は、特段制限されないが、口に含んだ瞬間に溶ける口溶けの良さとスナップ性の観点から、以下の条件を充たすことが好ましい。
環境温度10℃における油脂中の固体脂含量は、通常55質量%以上、99質量%以下であり、60質量%以上、98質量%以下であることが好ましく、65質量%以上、97質量%以下であることがより好ましい。
環境温度20℃における油脂中の固体脂含量は、通常40質量%以上、98質量%以下であり、50質量%以上、97質量%以下であることが好ましく、55質量%以上、95質量%以下であることがより好ましい。
環境温度30℃における油脂中の固体脂含量は、通常1質量%以上、70質量%以下であり、30質量%以上、68質量%以下であることが好ましく、40質量%以上、65質量%以下であることがより好ましい。
なお、油脂の固体脂含量は、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9-2013 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定することができる。
(ココアバター)
チョコレートには、上述の通り、通常ココアバターが含有されるが、その態様は特段制限されず、公知のものを用いることができカカオマスやココアパウダー等の含油原料由来としてチョコレート中に含まれるものと、後添加されるものがある。
チョコレート中のココアバターの含有量は、特段制限されないが、通常5質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常60質量%以下であり、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量
%以下であることがさらに好ましい。ココアバターは結晶多形を有し、テンパリング直後にはチョコレートにおける最適な安定型結晶(V型)の結晶多形を保つものの、テンパリ
ング不良や長期の保管中にV型が保てなくなることによってブルームが発生する。従って
、結晶多形現象を有するテンパリング型油脂、特にココアバターの含有量が多いと、ブルームが発生しやすくなる課題がある。
また、ココアバターは、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
(ココアバター以外のハードバター)
チョコレートは、ココアバター以外のハードバターを含んでいてもよく、その態様は特段制限されないものの、本実施形態に係るチョコレートはテンパリング型であるため、ココアバターとの相溶性の観点から、テンパリング型ハードバターであることが好ましい。
このテンパリング型ハードバターに含まれるトリグリセリドは、少なくともStStSt型、StUSt型、StStU型、StUU型、又はUUU型の何れかを含み、特に、StUSt型のトリグリセリドを多く含むことが好ましい。
トリグリセリドを多く含む油脂としては、具体的には、シア脂、パーム油、サル脂、ボルネオタロー、マンゴ脂、モーラー脂、コクム脂、パームオレイン、大豆油、米ぬか油、米油、綿実油、コーン油、ナタネ油、パーム核油、ヤシ油、イリッペ脂、菜種油、サフラワー油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(硬化油、水素添加油、分別油、エステル交換油)等が挙げられ、これらのうち、StUSt型のトリグリセリド成分に富む油脂としては、パーム油、イリッペ脂、シア脂、又はこれらの加工油脂等が挙げられる。
このテンパリング型ハードバターは、ココアバターと同様に結晶多形を有し、テンパリング直後にはチョコレートにおける良好なV型の結晶多形を保つものの、テンパリング不
良や長期の保管中にV型が保てなくなることによってブルームが発生する。従って、結晶
多形現象を有するテンパリング型油脂であるテンパリング型ハードバターの含有量が多いと、ブルームが発生しやすくなる。
また、ココアバター以外のテンパリング型ハードバターは、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の種類及び割合で併用してもよい。
チョコレート中のココアバター以外のハードバターの含有量は、特段制限されないが、相溶性の観点から任意の比率で配合でき、油脂の0~100%で置換が可能である。
テンパリング型油脂の機能を損なわない範囲で、テンパリング型油脂の一部を非テンパリング型ハードバターで置き換えてもよい。
(その他の油脂)
チョコレートは、本発明の効果が得られる範囲で、上記のココアバター及びハードバター以外の油脂(その他の油脂)を含有もしくは置き換えしてもよい。例えば、無水乳脂、全脂粉乳、バターオイル、乳脂の分画油などの加工油脂、非カカオ植物性油脂として、中鎖脂肪酸等の低カロリー油脂、ナッツオイル、バニラオイル等のフレーバーオイル等が挙げられる。
また、後述するテンパリング操作の簡略化のための油脂から構成されるシード剤を含有してもよい。
チョコレート中のその他の油脂の含有量は、特段制限されないが、チョコレートへの結晶構造へ大きな影響を与えない観点から、通常0.001質量%以上であり、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常20質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であ
ることがさらに好ましい。
[その他の成分]
チョコレートは、上記の各成分以外の成分(その他の成分)を任意に含有してもよく、例えば、ココアバター以外のカカオ分(カカオマス、カカオニブ、ココアケーキ、ココアパウダー)、糖類、乳固形分等の各種粉末食品、香料、色素、食物繊維、ポリフェノール類、栄養素、機能性成分等の成分が挙げられる。これらの各成分は、公知のものを任意に用いることができる。
チョコレート中のその他の成分の含有量は、特段制限されないが、通常40質量%以上であり、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常82質量%以下であり、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
カカオ分とは、全国チョコレート業公正取引協議会「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」にて、カカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ及びココアパウダー(香料その他のものを含まないもの)の水分を除いた合計量であると定義される。カカオマス、カカオニブ、ココアパウダー、ココアケーキの態様は特段制限されない。
チョコレート中のカカオ分の含有量は、特段制限されないが、チョコレート特有の風味の観点から、通常20質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、高すぎるとカカオ成分の苦味が顕著になるため、通常99質量%以下であり、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
近年、健康志向、及び本物志向の消費者ニーズに適したカカオ分を多く含むハイカカオチョコレートが人気であるが、チョコレート中にカカオ分を通常60質量%以上含有し、好ましくは65質量%以上含有し、より好ましくは68質量%以上含有し、さらに好ましくは70質量%以上含有する。しかし、カカオ分であるカカオマスやココアパウダーを多く含むとチョコレート中のココアバター含量が増加し、スイートタイプやミルクタイプに比べ油脂総量が多くなるため、必然的にブルームが発生しやすくなる課題がある。
糖類としては、通常は砂糖だが、グルコース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マルトース、オリゴ糖、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール等の糖や糖アルコール、又は果糖ぶどう糖液等の異性化糖、又はステビア、ローハニー、アガベ糖等の低GI甘味料も用いることができる。乳製品としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエーパウダー、バターミルクパウダー、乳糖粉末等を用いることができる。香料としては、例えば、バニリン、フルーツ香料、果実等のフリーズドライパウダー、乾燥果汁パウダー、抽出エキス、粉末香料、果汁、エッセンス等を用いることができる。色素としては、食品への添加が認められているものであれば適宜用いることができる。ポリフェノール類としては、例えば、フラバノン配糖体(フラボノイド)およびそれらを含む食品、粉末加工品を用いることができる。栄養素としては、ビタミンや鉄等のミネラル等を含む化合物およびそれらを含む食品、粉末加工品、乳・大豆等を原料とするタンパク質やそれらの加水分解物を用いることができる。機能性成分としては、難消化デキストリン、難消化性オリゴ糖、γ-アミノ酪酸、乳酸菌、ビフィズス菌等を用いることができる。
チョコレート中の水の含有量は、日持ち向上や風味劣化防止の観点から、主には精錬工程にて除かれるが、通常3質量%以下であり、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
[チョコレートの特性]
(ブルーム評価)
チョコレートを用いて、32℃と20℃の環境下に交互に静置し(各温度の保持時間を11時間とし、次の温度に達するまでの時間を1時間とし、24時間で1サイクルするように静置した)、チョコレート成形体表面にブルームが発生した日数をカウントする。ブルームの発生の有無は、チョコレート表面の白色化の程度を目視で判断する。なお、測定対象であるチョコレートは、作製後に必要な期間エージングを取り終え、上記サイクル温度条件下に処した時点を評価開始時点とすることが好ましい。
上記評価によるチョコレートのブルーム発生の日数は、7日以上であることが好ましく、15日以上であることがより好ましく、17日以上であることがさらに好ましい。
<チョコレートの製造方法>
上記のチョコレートの製造方法は、特段制限されず、公知の方法により製造することができる。以下にその一例を示すが、この例の方法に限定されない。
原料として、上述した乳化剤A及び乳化剤Bを含むチョコレートの各材料を準備し、これらの材料を混合して原料混合物を得ることができる(ミキシング工程)。なお、各材料のうち、乳化剤及び香料は、後述のコンチング工程で加えてもよい。混合する方法は特段制限されず、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル等の装置を用いて行うことができる。
上記のミキシング工程で得られた原料混合物を微粉砕して微粉砕混合物を得る(リファイニング工程)。微粉砕する方法は特段制限されず、例えば、リファイニングロール等の装置を用いて行うことができる。
上記のリファイニング工程で得られた微粉砕混合物において、ココアバターを均一に分散させてコンチング処理を施し分散混合物を得ることができる(コンチング工程)。コンチングを行うことにより、チョコレートを滑らかにしたり、摩擦熱及びその放出によりチョコレートの風味を出したりすることができる。コンチングを行う方法は特段制限されず、コンチェ等の装置を用いて行うことができる。なお、上述したように、本工程において、乳化剤及び香料を添加してもよい。
また、リファイニング工程の粉砕機能とコンチング工程のコンチング機能を兼ね備えた装置であるメランジャーやリファイナーコンチェなどの装置を用いて製造することもできる。
上記のコンチング工程で得られた分散混合物を用いてテンパリング処理を行うことによりテンパリング処理混合物を得ることができる(テンパリング工程)。テンパリング処理は、チョコレート中のココアバターの一部を、安定な結晶として固化させるために行われるものであり、該処理により安定結晶の結晶核を生じさせることができる。例えば、35~50℃で融解しているチョコレートを、品温が27~29℃程度になるまで冷却した冷却した後に、再度30~33℃程度まで加温する操作である。通常、品温を27~29℃程度に下げることでココアバターの不安定型結晶(IV型)が得られ、再度30~33℃程度まで加温することにより安定型結晶(V型)が得られる。これらのテンパリング操作は連続式テンパリング装置内で、通常10分以内に行われる。また、シード剤と呼ばれるココアバターのV型結晶の構造と近しい結晶構造を有する粉末状の固体を添加することで
、煩雑な温度操作を簡略化することも可能である。シード剤の融点以下の温度で融解したチョコレートに対し、シード剤を添加し分散させた後冷却することで、シード剤が結晶核となり、直接ココアバターのV型結晶を析出させることができる。
この処理はテンパリング型ハードバターを含むチョコレート、及びテンパリング型油脂の機能を損なわない程度に非テンパリング型ハードバターを含むチョコレートに対しても有効である。
上記のコンチング工程で得られたテンパリング処理混合物を成形することにより成形体を得ることができる(成形工程)。成形する方法は特段制限されず、例えば、モールディングにより板物シェル物を得ることができ、エンロビングにより被膜物を得ることができ、また、レボリングにより掛物をえることができる。
また、成形工程において、又は該工程の前後においては、チョコレートの型抜き工程、検査工程、梱包工程、熟成工程を設けてもよい。
上記のチョコレートの使用態様は特段制限されず、例えば、ダークチョコレート、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等であってよく、また、スプレット、シロップ、コーチング、フラワーペースト、ドリンク等の形態で用いることができる。また、チョコレートは単体で最終製品とされてもよく、他の食品と組み合わせて最終製品とされてもよい。また、最終製品の態様に応じて適宜包装材で包装して出荷される。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。なお、実施例で使用した材料及び評価項目の測定法は以下の通りである。実施例中の「%」は、特に記載がない場合は質量基準である。
また、本実施例における「質量部」は、特段の断りがない限り、後述する基本配合原料の合計含有量を100質量部とした場合の割合を表す。
<実験1>
<チョコレート組成物の作製>
(実施例1)
下記の表1に示す材料及び配合で基本配合原料を準備し、該基本配合原料に、下記の各乳化剤を加えて溶融混合し、チョコレート組成物1を得た。
乳化剤A:ポリグリセリンベヘン酸エステル(三菱ケミカルフーズ(株)製のリョートーポリグリエステル B-70D、HLB=4、結合脂肪酸純度:ベヘン酸約88%)
乳化剤B:ショ糖混合脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ(株)製のリョートーシュガーエステル POS-135、HLB=1、結合脂肪酸純度:パルミチン酸約29%、ステアリン酸約23%、オレイン酸約40%)
レシチン:大豆レシチン(辻製油(株)製のSLP-ペースト)
乳化剤の含有量については、基本配合原料の合計含有量100質量部に対して、乳化剤Aを0.25質量部、乳化剤Bを0.25質量部、レシチンを0.1質量部となるようにした。
また、下記の表1において、カカオマスには日新化工(株)社製のNKクイックカカオマス、砂糖には(株)富澤商店社製の純粉砂糖、ココアバターには日新化工(株)社製のNKガーナココアバターを用いた。このチョコレート組成物は、基本配合原料の合計含有量100質量%に対して、カカオ分は70%、油脂含量は41.2%であった。チョコレート中の油脂中の固体脂含量は、10℃で92%、20℃で82%、30℃で53%であった。また、油脂を構成するトリグリセリド全量に対するStUSt型のトリグリセリドの含有量は、文献値より76.8%で、油脂を構成するトリグリセリドの全構成脂肪酸全量に対し、ラウリン酸量は文献値より1%以下であった。
Figure 2022155326000001
(実施例2)
乳化剤Aについて、ポリグリセリンベヘン酸エステルから、ポリグリステアリン酸エステル(三菱ケミカルフーズ(株)製のリョートーポリグリエステル S-28D、HLB=9、結合脂肪酸純度:ステアリン酸約70%、パルミチン酸約30%)に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物2を得た。
(比較例1)
乳化剤A及び乳化剤Bを加えなかったこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物3を得た。
(比較例2)
乳化剤Aを加えなかったこと、及び乳化剤Bの含有量を0.25質量部から0.5質量部に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物4を得た。
(比較例3)
乳化剤Aの含有量を0.25質量部から0.5質量部に変更したこと、及び乳化剤Bを加えなかったこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物5を得た。
(比較例4)
乳化剤Aについて、ポリグリセリンベヘン酸エステルから、ソルビタントリステアリン酸エステル(ソルビタントリステアレート)(花王(株)製のエマゾール S-30V、HLB=2.1)に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物6を得た。
(比較例5)
乳化剤Bについて、ショ糖混合脂肪酸エステルから、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(阪本薬品工業(株)製のSYグリスター CRS-75、HLB=3.3)に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物7を得た。
上記の実施例1及び2、並びに比較例1~5におけるチョコレート組成物1~7における乳化剤の含有量を、下記の表2に示す。
Figure 2022155326000002
[成形体の作製]
上記のチョコレート組成物1を50℃以上に加温した後、31℃までチョコレート組成物を冷却し、シード剤「NKクイックテンパ」(日新化工株式会社製)0.1%を加えた後、数分間よく攪拌して、品温が27~28℃℃になるまで冷却させた後、品温が30~32℃になるまで再加熱することによりテンパリングし、直ちにモールドに流し入れてエア抜きしたものを冷蔵30分で固化させ、モールドから取り出してチョコレート成形体1(直径35ミリ、高さ7ミリの正円型、約7g/個)を得た。上記のチョコレート組成物2~7に対しても同様の方法を適用し、チョコレート成形体2~7を得た。
[ブルーム評価]
上記の各チョコレート成形体について、20℃で4日以上静置したチョコレートを、32℃と20℃の環境下に交互に静置し(各温度の保持時間を11時間とし、次の温度に達するまでの時間を1時間とし、24時間で1サイクルするように静置した)、チョコレート成形体表面の様子を、以下のブルーム評価基準で所定の期間目視評価した。チョコレート成形体表面に評価基準+以上のブルームが発生した日数をブルーム発生日数としてカウントした。
<ブルーム評価基準>
-:全個体に、発生せず
±:一部の個体に、表面一部にわずかに発生
+:全個体に、表面全体的に発生
++:全個体に、表面全体的に激しく発生
チョコレート成形体1~7を用いたブルーム評価結果を下記の表3に示す。ブルーム発生日数と、所定の日数を経過した際のチョコレート成形体の状態を、チョコレート成形体表面のブルーム評価基準で示した。
Figure 2022155326000003
上記の表3から、乳化剤として、乳化剤A及び乳化剤Bを含有する実施例1及び2のチョコレート成形体1及び2は、乳化剤A及び乳化剤Bのいずれか一方を含有しない、又は両方を含有しない比較例1~3のチョコレート成形体3~5と比較して、ブルーム抑制期間が長いことが分かる。また、乳化剤Aもしくは乳化剤Bを、これらとは異なる種類の乳化剤へ変更した比較例4および5のチョコレート成形体6および7はブルーム発生までの日数が比較例1より長いものの、比較例2および3と同等であり、ブルーム抑制効果は低いことが分かる。これは、比較例4ではポリグリセリン脂肪酸エステルを含まず、比較例5では構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステルを含まないためであり、両者が揃った処方において顕著なブルーム抑制効果が得られると本発明者らは推測する。
<実験2>
[チョコレート組成物の作製]
(実施例3)
乳化剤Aの含有量を0.25質量部から0.15質量部に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物8を得た。
(実施例4)
乳化剤Aの含有量を0.25質量部から0.10質量部に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物9を得た。
(実施例5)
乳化剤Aの含有量を0.25質量部から0.05質量部に変更したこと以外は、上記の実施例1におけるチョコレート組成物1の製造方法と同様の製造方法を適用し、チョコレート組成物10を得た。
上記の実施例3~5におけるチョコレート組成物8~10における乳化剤の含有量を、下記の表4に示す。
Figure 2022155326000004
上記のチョコレート組成物8~10を用いて、上記の実験1と同様の方法でチョコレート成形体の作製を行い、チョコレート成形体8~10を得た。
また、該チョコレート成形体8~10を用いて、上記の実験1と同様の方法でブルーム評価及び状態評価を行った。
チョコレート成形体8~10を用いたブルーム評価結果を下記の表5に示す。ブルーム発生日数と、所定の日数を経過した際のチョコレート成形体の状態を、チョコレート成形体表面のブルーム評価基準で示した。
Figure 2022155326000005
上記の表5から、乳化剤Aの含有量を段階的に減らしてもブルーム抑制効果が認められる。これにより、高融点である乳化剤Aの量を少量に抑え、口溶けや風味が良好なチョコレートを提供することができる。
以上より、本発明によれば、長期間、ブルームを抑制することができるテンパリング型チョコレートを提供することができる。

Claims (6)

  1. テンパリング型チョコレートであって、油脂、下記乳化剤A及び下記乳化剤Bを含有する、チョコレート。
    乳化剤A:ポリグリセリン脂肪酸エステル
    乳化剤B:構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5%以上含むショ糖脂肪酸エステル
  2. 前記乳化剤Bが、構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び炭素数16~18の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類の脂肪酸を含むショ糖脂肪酸エステルである、請求項1に記載のチョコレート。
  3. チョコレート中の前記乳化剤Aの含有量が0.01~3.0質量%であり、前記乳化剤Bの含有量が0.01~3.0質量%であり、かつ、前記乳化剤A及び前記乳化剤Bの総含有量が5.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のチョコレート。
  4. 前記油脂を構成するトリグリセリド全量に対するStUSt型のトリグリセリド(St:C16~18の飽和脂肪酸、U:C16~18の不飽和脂肪酸)の含有量が26質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のチョコレート。
  5. 前記油脂を構成するトリグリセリドの全構成脂肪酸全量に対するラウリン酸のモル分率が38%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のチョコレート。
  6. チョコレート中のカカオ分の含有量が60質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のチョコレート。
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