JP2022153158A - 歯科修復用キット - Google Patents

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Abstract

【課題】フッ化ジアンミン銀の臨床的効果(例えば、う蝕の予防、う蝕の進行抑制、象牙質知覚過敏症を抑制等)を維持しつつ、かつフッ化ジアンミン銀による黒変を遮蔽し得る、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液及び自己接着性歯科用コンポジットレジンを備える歯科修復用キットを提供すること。【解決手段】酸性基を有する単量体(a)、酸性基を有しない単量体(b)、重合開始剤(c)、及びフィラー(d)を含む自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)と、フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)とを備え、前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の透明性(ΔL*)が25以下である、歯科修復用キット。【選択図】なし

Description

本発明は歯科修復用キットに関する。より詳細には、本発明の歯科修復用キットはフッ化ジアンミン銀を含む水溶液にて歯面を処理した後、特定の自己接着性歯科用コンポジットレジンにて修復することでう蝕(初期う蝕、二次う蝕)又は象牙質知覚過敏症を抑制し、かつフッ化ジアンミン銀による黒変を遮蔽し得る、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液及び自己接着性歯科用コンポジットレジンを備える歯科修復用キットに関する。
フッ化ジアンミン銀を含む水溶液は、初期う蝕の進行抑制、二次う蝕の抑制、象牙質知覚過敏症の抑制(象牙質鈍麻)の作用が知られており、主に治療が困難な小児又は歯科医院への来院が難しい高齢者の予防処置に用いられている。しかしながら、フッ化ジアンミン銀の適用によって象牙質が黒変するという課題があり、永久歯(特に前歯)への適用は推奨されていない。
フッ化ジアンミン銀による黒変を抑制するために、ヨウ化カリウム水溶液をフッ化ジアンミン銀による処理後の歯質に適用する試みがなされているが、ヨウ化カリウム水溶液の適用はフッ化ジアンミン銀の作用を抑制する可能性があることが知られている(非特許文献1)。
また、フッ化ジアンミン銀による黒変を抑制する研究として、フッ化ジアンミン銀適用後の歯質に対し、ヨウ化カリウム水溶液を適用し、さらにレジン強化型グラスアイオノマーセメント又はグラスアイオノマーセメントで充填修復する試みもなされているが(非特許文献2)、従来技術では、フッ化ジアンミン銀の効能を維持し、かつ黒変を抑制する方法は知られていない。
一方、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液の機能として、象牙質コラーゲンを固定する作用、及び溶出するフッ素イオンの効果によって象牙質を強化する作用が知られている。そのため、窩洞形成後の歯質に対して、従来のボンディング材とコンポジットレジンによる直接充填修復の前処理の目的でフッ化ジアンミン銀の水溶液を使用することもある。このような場合にもヨウ化カリウム水溶液を併用し、黒変を抑制することは可能と考えられるが、フッ化ジアンミン銀の水溶液とボンディング材を併用する場合には、ボンディング材に含まれる酸性単量体と銀イオンの反応により銀イオンの歯質内部への浸透が阻害され、ヨウ化カリウム水溶液と同様にフッ化ジアンミン銀水溶液の持つ効能(う蝕進行抑制など)が抑制される可能性がある。従来技術では、フッ化ジアンミン銀の効能を維持し、かつ黒変を抑制する方法は知られていない。
Zhao IS, Mei ML, Burrow MF, Lo EC, Chu CH, Effect of Silver Diamine Fluoride and Potassium Iodide Treatment of Secondary Caries Prevention and Tooth Discolouration in Cervical Glass Ionomer Cement Restoration. Int J. Mol. Sci. 18(2), 2017. Vinh Nguyen, Cody Neill, Joel Felsenfeld and Carolyn Primus, Potassium Iodide. The Solution to Silver Diamine Fluoride Discoloration?, Adv Dent Oral Health,Vol. 5, Issue 1, 2017.
本発明は、フッ化ジアンミン銀の臨床的効果(例えば、う蝕の予防、う蝕の進行抑制、象牙質知覚過敏症を抑制等)を維持しつつ、かつフッ化ジアンミン銀による黒変を遮蔽し得る、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液と自己接着性歯科用コンポジットレジンとを備える歯科修復用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、本発明のフッ化ジアンミン銀を含む水溶液と、特定の自己接着性歯科用コンポジットレジンとを備える歯科修復用キットによれば、自己接着性歯科用コンポジットレジンに含まれる酸性を有する単量体と銀イオンの反応により銀イオンの歯質内部への浸透が阻害されることがなく、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]酸性基を有する単量体(a)、酸性基を有しない単量体(b)、重合開始剤(c)、及びフィラー(d)を含む自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)と、
フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)とを備え、
前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の透明性(ΔL*)が25以下である、歯科修復用キット。
[2]前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の総量100質量部において、フィラー(d)の含有量が、50質量部以上である、[1]に記載の歯科修復用キット。
[3]前記フィラー(d)が、無機フィラー(d-1)を含み、前記無機フィラー(d-1)の平均粒子径が0.001~50μmである、[1]又は[2]に記載の歯科修復用キット。
[4]前記無機フィラー(d-1)が、石英、シリカ、シリカ-ジルコニア、及びバリウムガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種と、シリカコートフッ化イッテルビウムとの組み合わせを含む、[3]に記載の歯科修復用キット。
[5]前記無機フィラー(d-1)に加えて、屈折率が1.9以上の無機フィラー(d-1a)をさらに含み、前記無機フィラー(d-1a)の含有量が、前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の総量100質量部において、0.001質量部以上である、[3]又は[4]に記載の歯科修復用キット。
[6]前記無機フィラー(d-1a)が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[5]に記載の歯科修復用キット。
本発明の歯科修復用キットは、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液にて歯面を処理した後、特定の自己接着性歯科用コンポジットレジンにて修復することで、フッ化ジアンミン銀の臨床的効果(例えば、う蝕の予防、う蝕の進行抑制、象牙質知覚過敏症を抑制等)を維持しつつ、かつフッ化ジアンミン銀による黒変を遮蔽し得る、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液及び自己接着性歯科用コンポジットレジンを備える歯科修復用キットを提供できる。
また、本発明の歯科修復用キットは、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液による持続的な抗菌作用が期待されることから、う蝕により軟化した象牙質を除去せずに封鎖する、いわゆるシールドレストレーションにも好適に用いることができる。
本発明の歯科修復用キットは、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)と、フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)とを備え、前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の透明性(ΔL*)が25以下である。
以下、本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)に用いられる各成分について説明する。
<酸性基を有する単量体(a)>
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)には歯質への接着性の観点から、酸性基を有する単量体(a)が必須である。自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)には、ラジカル単量体が好適に用いられる。酸性基を有する単量体(a)におけるラジカル単量体の具体例としては、(メタ)アクリレート系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ-N-ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から(メタ)アクリレート系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましい。
本発明に用いられる酸性基を有する単量体(a)としては、例えば、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する単量体が挙げられる。酸性基を有する単量体(a)は、1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。酸性基を有する単量体(a)の具体例を下記する。
リン酸基を有する単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9-(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-(2-ブロモエチル)ハイドロジェンホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチル-(4-メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピル-(4-メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート並びにこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩及びアミン塩が挙げられる。
ピロリン酸基を有する単量体としては、ピロリン酸ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕並びにこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩及びアミン塩が挙げられる。
チオリン酸基を有する単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
ホスホン酸基を有する単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノプロピオネート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノアセテート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノアセテート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
カルボン酸基を有する単量体としては、分子内に1個のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性(メタ)アクリル酸エステル、分子内に複数のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
分子内に1個のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、N-(メタ)アクリロイルグリシン、N-(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、O-(メタ)アクリロイルチロシン、N-(メタ)アクリロイルチロシン、N-(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N-(メタ)アクリロイル-p-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-o-アミノ安息香酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノサリチル酸、N-(メタ)アクリロイル-4-アミノサリチル酸等及びこれらの化合物のカルボキシル基を酸無水物基化した化合物が挙げられる。
分子内に複数のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性単量体の例としては、例えば、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキサン-1,1-ジカルボン酸、9-(メタ)アクリロイルオキシノナン-1,1-ジカルボン酸、10-(メタ)アクリロイルオキシデカン-1,1-ジカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデカン-1,1-ジカルボン酸、12-(メタ)アクリロイルオキシドデカン-1,1-ジカルボン酸、13-(メタ)アクリロイルオキシトリデカン-1,1-ジカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(メタ)アクリロイルオキシ-2’-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸無水物、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-2,3,6-トリカルボン酸無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル-1,8-ナフタル酸無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,8-トリカルボン酸無水物等が挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、2-スルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上述の酸性基を有する単量体(a)の中でも、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)として用いた場合に接着強さが良好である観点から、リン酸基を有する単量体又はカルボン酸基を有する単量体を含むことが好ましく、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデカン-1,1-ジカルボン酸、及び、2-メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2-メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物がより好ましく、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェートがさらに好ましく、硬化性とのバランスの観点から、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが最も好ましい。
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における酸性基を有する単量体(a)の含有量は特に限定されないが、歯質に対する接着性の観点から、単量体の総量100質量部において、1~40質量部であることが好ましく、2.5~35質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることがさらに好ましい。
<酸性基を有しない単量体(b)>
本発明における酸性基を有しない単量体(b)としては、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1);25℃の水に対する溶解度が10質量%未満である酸性基を有しない疎水性単量体(b-2)(以下、単に「疎水性単量体(b-2)」と称することがある);25℃の水に対する溶解度が10質量%以上である酸性基を有しない親水性単量体(b-3)(以下、単に「親水性単量体(b-3)」と称することがある)が挙げられる。酸性基を有しない単量体(b)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、酸性基を有さず、アクリルアミド基とメタクリロイルオキシ基とを含有する化合物を非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)とし、酸性基を有さず、かつ非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)に含まれない化合物を、親水性の程度に応じて、疎水性単量体(b-2)と、親水性単量体(b-3)とに分ける。
・非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)
ある好適な実施形態としては、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)を含む、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)が挙げられる。非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)は、歯質への接着性などを向上させることから、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2022153158000001
式中、Zは置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基であって、前記脂肪族基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-NR1-、-CO-NR1-、-NR1-CO-、-CO-O-NR1-、-O-CO-NR1-及び-NR1-CO-NR1-からなる群より選ばれる少なくとも1個の結合基によって中断されていてもよい。R1は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基を表す。
Zは、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)の親水性を調整する部位である。Zで表される置換基を有していてもよいC1~C8の脂肪族基は、飽和脂肪族基(アルキレン基、シクロアルキレン基(例えば、1,4-シクロへキシレン基等))、不飽和脂肪族基(アルケニレン基、アルキニレン基)のいずれであってもよく、入手又は製造の容易さ及び化学的安定性の観点から飽和脂肪族基(アルキレン基)であることが好ましい。Zは、歯質に対する接着性と重合硬化性の観点から、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のC1~C4の脂肪族基であることが好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のC2~C4の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基としては、アルキレン基が好ましい。前記C1~C8のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基などが挙げられる。
Zで表される置換基を有していてもよい芳香族基としては、例えばアリール基、芳香族性ヘテロ環基が挙げられる。前記芳香族基としては、アリール基が、芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基が好ましい。芳香族性ヘテロ環基としては、例えば、フラン基、チオフェン基、ピロール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、イミダゾール基、ピラゾール基、フラザン基、トリアゾール基、ピラン基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、及び1,3,5-トリアジン基が挙げられる。前記芳香族基のうち、フェニル基が特に好ましい。
1における脂肪族基としては、飽和脂肪族基(アルキル基)、不飽和脂肪族基(アルケニル基、アルキニル基)のいずれであってもよく、入手又は製造の容易さ及び化学的安定性の観点から飽和脂肪族基(アルキル基)が好ましい。前記アルキル基としては、Xにおける置換基として説明したものと同様のものが挙げられる。
1としては、水素原子又は置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のC1~C4のアルキル基がより好ましく、水素原子又は置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のC1~C3のアルキル基がさらに好ましい。
Zの前記脂肪族基が前記結合基によって中断されている場合、結合基の数は特に限定されないが、1~10個程度であってもよく、好ましくは1個、2個又は3個であり、より好ましくは1個又は2個である。また、前記式(1)において、Zの脂肪族基は連続する前記結合基によって中断されないものが好ましい。すなわち、前記結合基同士が隣接しないものが好ましい。結合基としては、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-NH-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CO-O-NH-、-O-CO-NH-及び-NH-CO-NH-からなる群より選ばれる少なくとも1個の結合基がさらに好ましく、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-CO-NH-及び-NH-CO-からなる群より選ばれる少なくとも1個の結合基が特に好ましい。
Zにおける置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基、C2~C6の直鎖状又は分岐鎖状のアシル基、C1~C6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C1~C6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。
非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)の具体例としては、特に限定されないが、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2022153158000002
この中でも、歯質に対する接着性と重合硬化性の観点から、Zが置換基を有していてもよいC2~C4の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基である非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物が好ましく、N-メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド(通称「MAEA」)、N-メタクリロイルオキシプロピルアクリルアミド、N-メタクリロイルオキシブチルアクリルアミド、N-(1-エチル-(2-メタクリロイルオキシ)エチル)アクリルアミド、N-(2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチル)アクリルアミドがより好ましく、象牙質のコラーゲン層への浸透に関わる親水性の高さの観点からMAEA、N-メタクリロイルオキシプロピルアクリルアミドが特に好ましい。
非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)は、1種を単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における単量体の総量100質量部において、1~60質量部が好ましく、2~45質量部がより好ましく、3~30質量部がさらに好ましく、5~25質量部が特に好ましい。
・酸性基を有しない疎水性単量体(b-2)
酸性基を有しない疎水性単量体(b-2)は、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)のハンドリング性、硬化物の機械的強度などを向上させる。疎水性単量体(b-2)としては、酸性基を有さず重合性基を有するラジカル単量体が好ましく、ラジカル重合が容易である観点から、重合性基は(メタ)アクリル基及び/又は(メタ)アクリルアミド基が好ましい。疎水性単量体(b-2)とは、酸性基を有さず、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)に相当せず、かつ25℃の水に対する溶解度が10質量%未満の単量体を意味する。疎水性単量体(b-2)としては、例えば、芳香族化合物系の二官能性単量体、脂肪族化合物系の二官能性単量体、三官能性以上の単量体などの架橋性の単量体が挙げられる。
芳香族化合物系の二官能性単量体としては、例えば、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis-GMA」)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、通称「D-2.6E」)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
脂肪族化合物系の二官能性単量体としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称「3G」)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、1,10-デカンジオールジメタクリレート(通称「DD」)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートが好ましい。
三官能性以上の単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7-ジアクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキサヘプタンなどが挙げられる。これらの中でも、N,N-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラメタクリレートが好ましい。
上記の疎水性単量体(b-2)の中でも、機械的強度及びハンドリング性の観点で、芳香族化合物系の二官能性単量体、及び脂肪族化合物系の二官能性単量体が好ましく用いられる。芳香族化合物系の二官能性単量体としては、Bis-GMA、D-2.6Eが好ましい。脂肪族化合物系の二官能性単量体としては、グリセロールジ(メタ)アクリレート、3G、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、DD、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、UDMAが好ましい。
上記の疎水性単量体(b-2)の中でも、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)(組成物)として用いた場合の歯質に対する接着性が良好である観点から、Bis-GMA、D-2.6E、3G、UDMA、DDがより好ましく、D-2.6E、3G、Bis-GMAがさらに好ましい。
疎水性単量体(b-2)は、1種を単独で配合してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における疎水性単量体(b-2)の含有量は、単量体の総量100質量部において、20~98質量部が好ましく、40~95質量部がより好ましく、60~92質量部がさらに好ましい。疎水性単量体(b-2)の含有量が前記上限値以下の場合、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の歯質への濡れ性が低下することがなく、所望の接着力が得られやすく、同含有量が前記下限値以上である場合、所望の硬化物の機械的強度が得られやすい。
・酸性基を有しない親水性単量体(b-3)
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)としては、酸性基を有しない親水性単量体(b-3)を含むことが好ましい。親水性単量体(b-3)は、自己接着性歯科用コンポジットレジンの歯質への濡れ性を向上させる。親水性単量体(b-3)としては、酸性基を有さず重合性基を有するラジカル単量体が好ましく、ラジカル重合が容易である観点から、重合性基は(メタ)アクリル基及び/又は(メタ)アクリルアミド基が好ましい。親水性単量体(b-3)とは、酸性基を有さず、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)に相当せず、かつ25℃の水に対する溶解度が10質量%以上のものを意味し、該溶解度が30質量%以上のものが好ましく、25℃において任意の割合で水に溶解可能なものがより好ましい。親水性単量体としては、水酸基、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロプレン基、アミド基などの親水性基を有するものが好ましい。親水性単量体(b-3)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9以上のもの)などの親水性の単官能性(メタ)アクリレート系単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-トリヒドロキシメチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジエチルアクリルアミドなどの単官能性(メタ)アクリルアミド系単量体などが挙げられる。
これらの親水性単量体(b-3)の中でも、歯質に対する接着性の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド及び親水性の単官能性(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジエチルアクリルアミドがより好ましい。親水性単量体(b-3)は、1種を単独で配合してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における親水性単量体(b-3)の含有量は、単量体の総量100質量部において、0~50質量部の範囲が好ましく、0~40質量部がより好ましく、0~30質量部がさらに好ましい。親水性単量体(b-3)の含有量は単量体の総量100質量部において、0質量部であってもよい。本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における親水性単量体(b-3)の含有量が前記下限値以上である場合、接着力の向上効果が十分に得られやすく、同含有量が前記上限値以下の場合、所望の硬化物の機械的強度が得られやすい。
自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における酸性基を有しない単量体(b)の含有量は、単量体の総量100質量部において、60~99質量部が好ましく、65~97.5質量部がより好ましく、70~95質量部がさらに好ましい。また、歯質に対する接着性の観点から、歯質に対する接着性の観点から、疎水性単量体(b-2)と親水性単量体(b-3)の質量比((b-2):(b-3))は10:0~1:2であることが好ましく、10:0~1:1がより好ましく、10:0~2:1がさらに好ましい。
ある好適な実施形態としては、二官能性以上の(メタ)アクリルアミド系単量体を実質的に含まない、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)が挙げられる。また、他のある好適な実施形態としては、リン酸水素ジエステル基含有単量体を実質的に含まない、自己接着性歯科用コンポジットレジンが挙げられる。リン酸水素ジエステル基含有単量体は、(メタ)アクリロイルオキシ基及び/又は(メタ)アクリルアミド基を有する。本発明において、ある重合性化合物を実質的に含まないとは、当該重合性化合物の含有量が、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の組成物に含まれる単量体の総量100質量部において、0.5質量部未満であり、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部未満であることがより好ましく、0質量部であってもよい。また、実質的に含まれない当該重合性化合物の含有量は、組成物全体において、0.5質量%未満であってもよく、0.1質量%未満であってもよい。
<重合開始剤(c)>
重合開始剤(c)は光重合開始剤(c-1)、又は化学重合開始剤(c-2)を含み、それぞれ1種を単独で配合してもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(c-1)は水溶性光重合開始剤(c-1a)と非水溶性光重合開始剤(c-1b)に分類される。光重合開始剤(c-1)としては、水溶性光重合開始剤(c-1a)のみを用いてもよく、非水溶性光重合開始剤(c-1b)のみを用いてもよく、非水溶性光重合開始剤(c-1a)と非水溶性光重合開始剤(c-1b)を併用してもよく、併用することが好ましい。
・水溶性光重合開始剤(c-1a)
水溶性光重合開始剤(c-1a)は、親水的な歯面界面での重合硬化性が向上し、高い接着強さを実現できる。水溶性光重合開始剤(c-1a)は、25℃の水に対する溶解度が10g/L以上であり、15g/L以上であることが好ましく、20g/L以上であることがより好ましく、25g/L以上であることがさらに好ましい。同溶解度が10g/L以上であることで、接着界面部において水溶性光重合開始剤(c-1a)が歯質中の水に十分に溶解し、重合促進効果が発現しやすくなる。
水溶性光重合開始剤(c-1a)としては、例えば、水溶性チオキサントン類、水溶性アシルホスフィンオキシド類、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンの水酸基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの水酸基及び/又はフェニル基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのフェニル基へ-OCH2COO-Na+を導入したもの、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの水酸基及び/又はフェニル基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンのフェニル基へ-OCH2COO-Na+を導入したものなどのα-ヒドロキシアルキルアセトフェノン類;2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[(4-モルホリノ)フェニル]-1-ブタノンなどのα-アミノアルキルフェノン類のアミノ基を四級アンモニウム塩化したものなどが挙げられる。
前記水溶性チオキサントン類としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(1-メチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(1,3,4-トリメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
前記水溶性アシルホスフィンオキシド類としては、下記一般式(2)又は(3)で表されるアシルホスフィンオキシド類が挙げられる。
Figure 2022153158000003
Figure 2022153158000004
式(2)及び(3)中、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は互いに独立して、C1~C4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はハロゲン原子であり、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、マグネシウムイオン、ピリジニウムイオン(ピリジン環が置換基を有していてもよい)、又はHN+91011(式中、R9、R10、及びR11は互いに独立して、有機基又は水素原子)で示されるアンモニウムイオンであり、nは1又は2であり、XはC1~C4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基であり、R8は-CH(CH3)COO(C24O)pCH3で表され、pは1~1000の整数を表す。
2、R3、R4、R5、R6、及びR7のアルキル基としては、C1~C4の直鎖状又は分岐鎖状のものであれば特に限定されず、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のアルキル基としては、C1~C3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。Xとしては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基などが挙げられる。Xとしては、C1~C3の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
Mがピリジニウムイオンである場合のピリジン環の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基、C2~C6の直鎖状又は分岐鎖状のアシル基、C1~C6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、C1~C6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基などが挙げられる。Mとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、マグネシウムイオン、ピリジニウムイオン(ピリジン環が置換基を有していてもよい)、又はHN+91011(式中、記号は上記と同一意味を有する)で示されるアンモニウムイオンが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンが挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンが挙げられる。R9、R10、及びR11の有機基としては、前記ピリジン環の置換基と同様のもの(ハロゲン原子を除く)が挙げられる。
これらの中でも、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7がすべてメチル基である化合物が自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の組成物中での保存安定性及び色調安定性の点から特に好ましい。また、アンモニウムイオンとしては、各種のアミンから誘導されるアンモニウムイオンが挙げられる。アミンの例としては、アンモニア、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアニリン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノメタクリレート、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸及びそのアルキルエステル、4-(N,N-ジエチルアミノ)安息香酸及びそのアルキルエステル、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジンなどが挙げられる。
8としては、接着性の観点から、pは1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましく、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、75以下がさらに好ましく、50以下が特に好ましい。
これらの水溶性アシルホスフィンオキシド類の中でも、一般式(2)で表され、Mn+がリチウムイオンである一般式(2)の化合物、及び、R8で表される基に相当する部分が分子量950であるポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートから合成された一般式(3)で表される化合物が特に好ましい。
このような構造を有する水溶性アシルホスフィンオキシド類は、公知方法に準じて合成することができ、一部は市販品としても入手可能である。例えば、特開昭57-197289号公報又は国際公開第2014/095724号などに開示された方法により合成することができる。水溶性光重合開始剤(c-1a)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性光重合開始剤(c-1a)は、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)に溶解されていても自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の組成物中に粉末で分散されていてもよい。
水溶性光重合開始剤(c-1a)を粉末で分散する場合、その平均粒子径が過大であると沈降しやすくなるので、500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。一方、平均粒子径が過小であると粉末の比表面積が過大になって自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の組成物への分散可能な量が減少するので、0.01μm以上が好ましい。すなわち、水溶性光重合開始剤(c-1a)の平均粒子径は0.01~500μmの範囲が好ましく、0.01~100μmの範囲がより好ましく、0.01~50μmの範囲がさらに好ましい。
各々の水溶性光重合開始剤(c-1a)の粉末の平均粒子径は、粒子100個以上の電子顕微鏡写真をもとに画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View;株式会社マウンテック製)を用いて画像解析を行った後に体積平均粒子径として算出することができる。
水溶性光重合開始剤(c-1a)を粉末で分散する場合の形状については、球状、針状、板状、破砕状など、種々の形状が挙げられるが、特に制限されない。水溶性光重合開始剤(c-1a)は、粉砕法、凍結乾燥法、再沈殿法などの従来公知の方法で作製することができ、得られる粉末の平均粒子径の観点で、凍結乾燥法及び再沈殿法が好ましく、凍結乾燥法がより好ましい。
水溶性光重合開始剤(c-1a)の含有量は、得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化性などの観点からは、本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における単量体の総量100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、歯質への接着力の点から、0.05~10質量部がより好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましい。水溶性光重合開始剤(c-1a)の含有量が前記下限値以上である場合、接着界面での重合が十分に進行し、十分な接着強さを得られやすい。一方、水溶性光重合開始剤(c-1a)の含有量が前記上限値以下である場合、十分な接着強さが得られやすい。
・非水溶性光重合開始剤(c-1b)
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)は、硬化性の観点から、水溶性光重合開始剤(c-1a)以外に25℃の水への溶解度が10g/L未満である非水溶性光重合開始剤(c-1b)(以下、非水溶性光重合開始剤(c-1b)と称することがある。)を含むことが好ましい。本発明に用いられる非水溶性光重合開始剤(c-1b)は、公知の光重合開始剤を使用することができる。非水溶性光重合開始剤(c-1b)は、1種を単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
非水溶性光重合開始剤(c-1b)としては、水溶性光重合開始剤(c-1a)以外の(ビス)アシルホスフィンオキシド類、チオキサントン類、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物、α-アミノケトン系化合物などが挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記チオキサントン類としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサンテン-9-オンなどが挙げられる。
前記ケタール類としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどが挙げられる。
前記α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、dl-カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、dl-カンファーキノンが特に好ましい。
前記クマリン類としては、例えば、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-チエノイルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-6-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-8-メトキシクマリン、3-ベンゾイルクマリン、7-メトキシ-3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3,5-カルボニルビス(7-メトキシクマリン)、3-ベンゾイル-6-ブロモクマリン、3,3’-カルボニルビスクマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3-カルボキシクマリン、3-カルボキシ-7-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-6-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-8-メトキシクマリン、3-アセチルベンゾ[f]クマリン、3-ベンゾイル-6-ニトロクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、7-ジメチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノ)クマリン、7-メトキシ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-(4-ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3-(4-エトキシシンナモイル)-7-メトキシクマリン、3-(4-ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3-(4-ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3-[(3-ジメチルベンゾチアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3-[(1-メチルナフト[1,2-d]チアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3,3’-カルボニルビス(6-メトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-アセトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジメチルアミノクマリン)、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジブチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾイミダゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジオクチルアミノ)クマリン、3-アセチル-7-(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニル-7-ジエチルアミノクマリン-7’-ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10-[3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1-オキソ-2-プロペニル]-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、10-(2-ベンゾチアゾリル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オンなどの特開平9-3109号公報、特開平10-245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
上述のクマリン類の中でも、特に、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)及び3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)が好適である。
前記アントラキノン類としては、例えば、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
前記ベンゾインアルキルエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
前記α-アミノケトン系化合物としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどが挙げられる。
これらの非水溶性光重合開始剤(c-1b)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ジケトン類、及びクマリン類からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)が得られる。
非水溶性光重合開始剤(c-1b)の含有量は特に限定されないが、得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の組成物の硬化性などの観点から、本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における単量体の総量100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~7質量部がより好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましい。なお、非水溶性光重合開始剤(c-1b)の含有量が前記上限値以下であることで、非水溶性光重合開始剤(c-1b)自体の重合性能が低い場合おいても、十分な接着強さが得られやすく、さらには自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)からの非水溶性光重合開始剤(c-1b)自体の析出を抑制できる。
水溶性光重合開始剤(c-1a)と非水溶性光重合開始剤(c-1b)を併用する場合、本発明における水溶性光重合開始剤(c-1a)と非水溶性光重合開始剤(c-1b)の質量比〔(c-1a):(c-1b)〕は、好ましくは10:1~1:10であり、より好ましくは7:1~1:7であり、さらに好ましくは5:1~1:5であり、特に好ましくは3:1~1:3である。水溶性光重合開始剤(c-1a)が質量比10:1より多く含有されると、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)自体の硬化性が低下し、高い接着強さを発現させることが困難になる場合がある。一方、非水溶性光重合開始剤(c-1b)が質量比1:10より多く含有されると、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)自体の硬化性は高められるものの接着界面部の重合促進が不十分になり、高い接着強さを発現させることが困難になる場合がある。
・化学重合開始剤(c-2)
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)は、さらに化学重合開始剤を含有することができ、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、例えば、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。これらの有機過酸化物の具体例としては、国際公開第2008/087977号に記載のものが挙げられる。化学重合開始剤(c-2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<フィラー(d)>
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)は、ハンドリング性を調整するために、また硬化物の機械的強度を高めるために、フィラー(d)を含む。このようなフィラーとして、無機フィラー(d-1)、有機無機複合フィラー(d-2)、有機フィラー(d-3)等が挙げられる。フィラー(d)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラー(d-1)の素材としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、酸化イッテルビウム、シリカコートフッ化イッテルビウムなどが挙げられる。ある好適な実施形態では、フィラー(d)が、無機フィラー(d-1)を含む、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)を備える、歯科修復用キットが挙げられる。無機フィラー(d-1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラー(d-1)の中でも、得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の透明性及び機械的強度の観点で、石英、シリカ、シリカ-ジルコニア、バリウムガラス、酸化イッテルビウム、シリカコートフッ化イッテルビウムが好ましく、石英、シリカ、シリカ-ジルコニア、バリウムガラス、シリカコートフッ化イッテルビウムがより好ましい。石英、シリカ、シリカ-ジルコニア、及びバリウムガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種と、シリカコートフッ化イッテルビウムとの組み合わせがさらに好ましく、石英とシリカコートフッ化イッテルビウムとの組み合わせが特に好ましく用いられる。これらの無機フィラーを用いる際には、前記酸性基を有する単量体(a)、及び酸性基を有しない単量体(b)を合わせた重合性単量体(単量体が2種以上の場合は、重合性単量体混合物)の屈折率と無機フィラーの屈折率の差を調整することで、透明性を適宜調整できる。
無機フィラー(d-1)の平均粒子径は、得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、0.001~50μmであることが好ましく、0.001~10μmであることがより好ましい。なお、本発明において、無機フィラー(d-1)に、後記するように表面処理をした場合は、無機フィラー(d-1)の平均粒子径は、表面処理前の平均粒子径を意味する。
ある好適な実施形態としては、フィラー(d)が、無機フィラー(d-1)を含み、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液(Y)による黒変に対する遮蔽性を高める観点で、無機フィラー(d-1)に加えて、さらに、屈折率が1.9以上の無機フィラー(d-1a)(以下、単に「無機フィラー(d-1a)」と称することがある)を含む、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)を備える歯科修復用キットが挙げられる。無機フィラー(d-1)は無機フィラー(d-1a)を除く。無機フィラー(d-1a)の屈折率としては、1.9以上であり、審美性と表面硬化性の観点から2.0以上が好ましく、2.1以上がより好ましい。無機フィラー(d-1a)としては、酸化チタン(屈折率:2.49~2.90)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.13~2.19)、酸化亜鉛(屈折率:2.00~2.02)などが挙げられる。なお、本明細書において、無機フィラー(d-1)、及び単量体成分の屈折率はアッベ屈折計にて測定できる。無機フィラー(d-1)の屈折率の場合、JIS K 0062:1992を一部変更して測定可能であり、具体的にはアッベ屈折計を用い、ナトリウムのD線を光源として、23℃下にて液浸法で測定できる。液浸法に用いる液体としては、試料のフィラーの想定される屈折率と近い屈折率の液体を2種以上組み合わせることにより、異なる屈折率を有する液体を複数種類調製する。23℃雰囲気下で試料を各液体に懸濁させ、肉眼観察により最も透明に見えるような液体を選ぶ。その液体の屈折率を試料の屈折率とし、液体の屈折率をアッベ屈折計にて測定する。使用できる液体(中間液)は、例えば、硫黄の溶解したジヨードメタン、1-ブロモナフタレン、サリチル酸メチル、ジメチルホルムアミド、1-ペンタノール等である。単量体成分(2種以上の単量体を用いる場合は、重合性単量体混合物)の場合は、JIS K 0062:1992に準拠し、具体的には、アッベ屈折計を用い、ナトリウムのD線を光源として、23℃雰囲気下で測定できる。硬化前の単量体成分の場合は液体のまま測定を実施することができる。硬化後の単量体成分(2種以上の単量体を用いる場合は、重合性単量体混合物の硬化物)の場合は、単量体成分を一定の大きさの硬化板にし、測定する。使用可能な液体は硫黄の溶解したジヨードメタン、1-ブロモナフタレン、サリチル酸メチル、ジメチルホルムアミド、1-ペンタノール等である。
無機フィラー(d-1a)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。無機フィラー(d-1a)の含有量は、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の総量100質量部において0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上の範囲がより好ましく、0.1質量部以上の範囲がさらに好ましい。無機フィラー(d-1a)の含有量の上限は特に限定されないが、あまり多く配合すると、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の審美性が低下する場合があることから、1質量部以下の範囲で適宜配合することが好ましい。
無機フィラー(d-1a)の平均粒子径は、得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の遮蔽性及びハンドリング性などの観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.05~5μmであることがより好ましい。
無機フィラー(d-1)の形状としては、特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができ、例えば、不定形フィラー及び球状フィラーが挙げられる。自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化物の機械的強度を向上させる観点からは、前記無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。ここで球状フィラーとは、電子顕微鏡でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーである。前記球状フィラーの平均粒子径は好ましくは0.05~5μmである。平均粒子径が前記下限値以上であることで、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)において十分な球状フィラーの充填率が得られやすく、所望の機械的強度が得られやすい。一方、平均粒子径が前記上限値以下であることで、前記球状フィラーの表面積が低下しにくく、所望の機械的強度を有する自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化物が得られやすい。
無機フィラー(d-1)は、自己接着性歯科用コンポジットレジンの流動性を調整するため、必要に応じて、シランカップリング剤などの公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。例えば、シランカップリング剤で無機フィラーの表面に存在する水酸基を表面処理することで、該水酸基が表面処理された無機フィラーを得ることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、11-メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
表面処理の方法としては、公知の方法を特に限定されずに用いることができ、例えば、無機フィラーを激しく撹拌しながら上記表面処理剤をスプレー添加する方法、適当な溶媒へ無機フィラーと上記表面処理剤とを分散又は溶解させた後、溶媒を除去する方法、あるいは水溶液中で上記表面処理剤のアルコキシ基を酸触媒により加水分解してシラノール基へ変換し、該水溶液中で無機フィラー表面に付着させた後、水を除去する方法などがあり、いずれの方法においても、通常50~150℃の範囲で加熱することにより、無機フィラー表面と上記表面処理剤との反応を完結させ、表面処理を行うことができる。なお、表面処理量は特に制限されず、例えば、処理前の無機フィラー100質量部に対して、表面処理剤を1~10質量部用いることができる。
本発明で用いられる有機無機複合フィラー(d-2)とは、上述の無機フィラー(d-1)に単量体を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。有機無機複合フィラー(d-2)は、無機フィラー(d-1)と重合性単量体の重合体とを含むフィラーを示す。前記有機無機複合フィラー(d-2)としては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。前記有機無機複合フィラー(d-2)の形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機無機複合フィラー(d-2)の平均粒子径は、0.001~50μmであることが好ましく、0.001~10μmであることがより好ましい。
有機フィラー(d-3)の素材としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体などが挙げられ、有機フィラー(d-3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラー(d-3)の形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機フィラー(d-3)の平均粒子径は、0.001~50μmであることが好ましく、0.001~10μmであることがより好ましい。
なお、本明細書において、フィラー(d)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法又は粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。
レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2300:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて体積基準で測定することができる。
電子顕微鏡観察は、具体的に例えば、粒子の電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4000型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View(株式会社マウンテック製))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)は、異なった材質、粒度分布、形態を持つ2種以上のフィラーを、混合又は組み合わせて用いることが好ましい。2種以上のフィラーを組み合わせることにより、フィラーが密に充填されるとともに、フィラーと単量体、もしくはフィラー同士の相互作用点が増える。また、フィラーの種類により、剪断力の有無によるペーストの流動性をコントロール可能となる。中でも、本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)のハンドリング性とペースト性状の観点から、前記フィラー(d)が、平均粒子径1nm以上0.1μm未満のフィラー(d-i)と、平均粒子径0.1μm以上1μm以下のフィラー(d-ii)との組み合わせ(I)、平均粒子径1nm以上0.1μm未満のフィラー(d-i)と、平均粒子径1μm超10μm以下のフィラー(d-iii)との組み合わせ(II)、平均粒子径1nm以上0.1μm未満のフィラー(d-i)と、平均粒子径0.1μm以上1μm以下のフィラー(d-ii)、平均粒子径1μm超10μm以下のフィラー(d-iii)との組み合わせ(III)、及び平均粒子径0.1μm以上1μm以下のフィラー(d-ii)同士の組み合わせ(IV)が好ましく、これらの組み合わせの中でも、ペースト性状、窩洞封鎖性の観点から、(I)、(II)、(III)がより好ましく、(I)、(II)がさらに好ましい。平均粒子径0.1μm以上1μm以下のフィラー(d-ii)同士の組み合わせ(IV)とは、平均粒子径が異なる2種の0.1μm以上1μm以下のフィラー(d-ii)を含む実施形態を意味する。なお、上記組み合わせであれば、各粒子径のフィラー(d)に異なる種類のフィラーが含まれていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、意図せずに、フィラー以外の粒子が不純物として含まれていてもよい。
フィラー(d)の含有量は特に限定されないが、硬化物の機械的強度と歯質に対する接着性の観点から、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の総量100質量部において、50質量部以上であることが好ましく、50~90質量部であることがより好ましく、55~85質量部であることがさらに好ましく、60~80質量部であることが特に好ましい。
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の材型は特に限定されず、例えば2ペースト型としてもよいが、操作性の観点から、全ての成分が予め混合された1材型(1ペースト型)であることが好ましい。
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の製造方法は、特に限定はなく、当業者に公知の方法(例えば、必要な成分を混合する等)により、容易に製造することができる。
<重合促進剤(f)>
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)は、重合開始剤(c)とともに重合促進剤(f)を用いることができる。本発明に用いられる重合促進剤(f)としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
重合促進剤(f)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミンなどの脂肪族第1級アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルエタノールアミンなどの脂肪族第2級アミン;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族第3級アミンなどが挙げられる。これらの中でも、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化性及び保存安定性の観点から、脂肪族第3級アミンが好ましく、その中でもN-メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましい。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジイソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸プロピル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチルなどが挙げられる。これらの中でも、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及びチオ尿素化合物の具体例としては、国際公開第2008/087977号に記載のものが挙げられる。
重合促進剤(f)は、1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。本発明に用いられる重合促進剤(f)の含有量は特に限定されないが、得られる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化性などの観点からは、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における単量体の総量100質量部に対して、0.001~30質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましい。重合促進剤(f)の含有量が前記下限値以上である場合、重合が十分に進行し、十分な接着強さを得られやすく、より好適には0.05質量部以上である。一方、重合促進剤(f)の含有量が前記上限値以下であることで、十分な接着性が得られやすくなり、さらには自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)からの重合促進剤(f)自体の析出を抑制できるため、より好適には20質量部以下である。
<フッ素イオン放出性物質>
本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)は、さらにフッ素イオン放出性物質を含有してもよい。フッ素イオン放出性物質を含有することによって、歯質に耐酸性を付与することができる自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)が得られる。かかるフッ素イオン放出性物質としては、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムなどの金属フッ化物類などが挙げられる。上記フッ素イオン放出性物質は1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
また、本発明の自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)には、性能を低下させない範囲内で、公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、酸化防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、有機溶媒等の溶媒、増粘剤等が挙げられる。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ある実施形態では、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における溶媒(例えば、水、有機溶媒)の含有量が自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の全質量に基づいて、1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン等が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の単量体の総量100質量部に対して0.001~1.0質量部が好ましい。
自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化物の透明性(ΔL*)は25以下であるが、フッ化ジアンミン銀の臨床的効果(例えば、う蝕の予防、う蝕の進行抑制、象牙質知覚過敏症を抑制等)を維持しつつ、かつフッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)による変色をより遮蔽する観点で、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。硬化物の透明性(ΔL*)の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化物の透明性(ΔL*)を25以下にするには、フィラー(d)の屈折率と、酸性基を有する単量体(a)及び酸性基を有しない単量体(b)を合わせた重合性単量体の屈折率との差及びそれらの配合比率で調整することができる。また、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の硬化物の透明性(ΔL*)は、フィラー(d)自体の透明性が低いものを選択する等、フィラー(d)自体の透明性も組み合わせることによって調整することもできる。一般に、酸性基を有する単量体(a)及び酸性基を有しない単量体(b)を合わせた重合性単量体混合物の硬化物の屈折率は、重合性単量体全体に含まれる芳香族化合物系の重合性単量体(芳香族化合物系の重合性単量体が2種以上の場合はそれらの混合物)の配合比率に主に依存する。従って、例えば、自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)が、芳香族化合物系の二官能性単量体として、Bis-GMA及び/又はD-2.6Eを含む場合、使用するフィラー(d)の屈折率及びフィラー(d)自体の透明性に応じて重合性単量体全体におけるBis-GMA及び/又はD-2.6Eの配合比率を調整することで、硬化物の透明性(ΔL*)を適宜調整できる。
本発明の歯科修復用キットの自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)における好適な組成割合の一例を示す。単量体の総量を100質量部とした場合、単量体の総量100質量部において、酸性基を有する単量体(a)を1~40質量部、酸性基を有しない単量体(b)を60~99質量部含み、単量体の総量100質量部に対して、光重合開始剤(c-1)を0.05~10質量部、フィラー(d)を100~900質量部、重合促進剤(f)0.001~30質量部を含むことが好ましく、単量体の総量100質量部において、酸性基を有する単量体(a)を2.5~35質量部、酸性基を有しない単量体(b)を65~97.5質量部含み、単量体の総量100質量部に対して、光重合開始剤(c-1)を0.1~5質量部、フィラー(d)を120~560質量部、重合促進剤(f)0.01~10質量部含むことがより好ましく、単量体の総量100質量部において、酸性基を有する単量体(a)を5~30質量部、酸性基を有しない単量体(b)を70~95質量部含み、単量体の総量100質量部に対して、光重合開始剤(c-1)を0.15~2.5質量部、フィラー(d)を150~400質量部、重合促進剤(f)を0.1~5質量部含むことがさらに好ましい。
フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)は、フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液であれば濃度は特に限定されないが、初期う蝕の進行抑制、二次う蝕の抑制、象牙質知覚過敏症の抑制(象牙質鈍麻)の作用の観点から1w/v%以上の水溶液が好ましく、初期う蝕の進行抑制、二次う蝕の抑制、象牙質知覚過敏症の抑制(象牙質鈍麻)の作用がより優れる点から、フッ化ジアンミン銀の濃度が20w/v%以上の水溶液がより好ましく、30w/v%以上の水溶液がさらに好ましく、35w/v%以上の水溶液が特に好ましい。フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)は市販品を使用することができる。市販品としては、特に、水1ml中にフッ化ジアンミン銀38mgを含む3.8w/v%水溶液、水1ml中にフッ化ジアンミン銀380mgを含む38w/v%水溶液が好ましい。これらは、それぞれ商品名「サホライド・RC液歯科用3.8%」「サホライド液歯科用38%」(東洋製薬化成株式会社製)として販売されている。フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液の作用の観点からは、水1ml中にフッ化ジアンミン銀380mgを含む38%水溶液が最も好ましい。
フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)の適用方法は特に限定されないが、通常は小綿球等に数滴(0.15~0.20ml)を浸ませて歯質に塗布し、3~4分間放置する。塗布後は、水又は希食塩水で洗浄する。
フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)には、性能を低下させない範囲内で、公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、酸化防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、有機溶媒、増粘剤等が挙げられる。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。水溶液(Y)は、フッ化ジアンミン銀(e)の有する効果を発揮する点から、酸性基を有する単量体(a)、酸性基を有しない単量体(b)、重合開始剤(c)、及びフィラー(d)及び重合促進剤(f)を含まなくてもよい。
本発明の歯科修復用キットは、う蝕の治療(例えば、初期う蝕の進行抑制、二次う蝕の抑制、根管の治療)、象牙質知覚過敏症の治療に使用することができる。特に、う蝕の治療については、本発明の歯科修復用キットは、軟化象牙質に対して、銀成分が十分な浸透深さを示すことから、う蝕により軟化した象牙質を除去せずに封鎖する、いわゆるシールドレストレーションと呼ばれる治療にも好適に用いることができる。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、例中の部は、特記しない限り質量部である。
次に、実施例及び比較例の歯科修復用キットの成分を略号とともに以下に記す。
[酸性基を有する単量体(a)]
MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
[酸性基を有しない単量体(b)]
・非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b-1)
MAEA:N-メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド
・酸性基を有しない疎水性単量体(b-2)
Bis-GMA:2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
D-2.6E:2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
[光重合開始剤(c-1)]
・非水溶性光重合開始剤(c-1b)
CQ:カンファーキノン
[フィラー(d)]
・フィラー(d-1)
フィラー1:日本アエロジル株式会社製、超微粒子シリカ「アエロジル(登録商標)R 972」、平均粒子径:16nm、屈折率:1.46
フィラー2:シラン処理珪石粉
珪石粉(株式会社ニッチツ製、商品名:ハイシリカ、屈折率:1.55)をボールミルで粉砕し、粉砕珪石粉を得た。得られた粉砕珪石粉の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、型式「SALD-2300」)を用いて体積基準で測定したところ、2.2μmであった。この粉砕珪石粉100質量部に対して、常法により4質量部のγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理を行い、シラン処理珪石粉を得た。
フィラー3:シラン処理バリウムガラス粉
GM27884 NF180グレード(SCHOTT社製バリウムガラス、平均粒子径:0.18μm、屈折率:1.53)100g、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン13g、及び0.3質量%酢酸水溶液200mLを三口フラスコに入れ、2時間、室温下で撹拌した。凍結乾燥により水を除去した後、80℃で5時間加熱処理を行い、フィラー3(シラン処理バリウムガラス粉)を得た。
フィラー4:シラン処理シリカコートフッ化イッテルビウム
市販品(SG-YBF100WSCMP10、平均粒子径:110nm、球形、屈折率:1.53、製造会社:Sukgyung AT社)をそのまま用いた。
・フィラー(d-1a)
フィラー5:シラン処理酸化チタン
γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10gをトルエン10gに溶かして溶液とし、この溶液に屈折率:2.72の酸化チタン粉末10gを加えて撹拌した後、トルエンを減圧溜去し、引き続いて、90℃で3時間加熱処理を行い、シラン処理した酸化チタン18gを得た。
[重合促進剤(f)]
DABE:4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル(光重合開始剤の重合促進剤)
[その他]
BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(安定剤)
[屈折率]
JIS K 0062:1992に準拠して、フィラー(d)及び重合性単量体混合物について屈折率の測定を行った。具体的には、アッベ屈折計を用い、ナトリウムのD線を光源として、硫黄の溶解したジヨードメタン、1-ブロモナフタレン、サリチル酸メチル、ジメチルホルムアミド、1-ペンタノール等を液体(中間液)として液浸法で25℃にて測定した。重合性単量体混合物の屈折率は、重合性単量体混合物、光重合開始剤、重合促進剤を混合して均一溶液とした後、光重合により硬化物を作製し、該硬化物の屈折率を測定した。該硬化物を切り出して、幅5~8mm,長さ15~25mm及び厚み3mmの硬化板を測定試料とした。実施例1~8の重合性単量体混合物の硬化物の屈折率は、1.54であり、比較例1では重合性単量体混合物の硬化物の屈折率は1.56であった。
[実施例1~6、及び比較例1]
表1に示す組成になるように各成分を混合して自己接着性歯科用コンポジットレジンを作製した。該自己接着性歯科用コンポジットレジンを用いて、以下に示す方法で各特性を評価した。
[試験片の作製]
ウシ下顎前歯を研磨加工して象牙質を露出させ、厚さ1mmの板状の象牙質片を作製した。得られた象牙質片の表面を流水下にて#1000のシリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨した。得られた象牙質片をpH4.5の酢酸バッファーに浸漬し、37℃の恒温器中に静置した。2週間後に象牙質片を取り出し、流水下で洗浄した。得られた象牙質片は、象牙質表面から深さ方向に約150μm程度の脱灰層(軟化象牙質)を有していた。
上記の象牙質片の表面の水をエアブローで乾燥後、直径7mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを2カ所に貼着し、処理面を規定した。片方の丸穴内に対して、水1ml中に380mgのフッ化ジアンミン銀を含む38%水溶液(東洋製薬化成株式会社製、商品名「サホライド液歯科用38%」、以下「サホライド38%」と呼ぶことがある。)を添付文書に従って適用した。内径7mm、高さ2mmのポリエチレン製のチューブを2カ所のテープ上に、穴部分が重なるようにそれぞれ設置し、表1に示す自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)をチューブの中に満たした。チューブの上面をスライドガラスで覆い、上面から歯科用LED照射器(ウルトラデント社製、商品名「VALO」)にて20秒間光照射を行った。スライドガラスを剥すことにより、サホライド38%で処理した軟化象牙質及び未処理の軟化象牙質に、直径7mm、高さ2mmの自己接着性歯科用コンポジットレジンがそれぞれ形成された試験片を得た。該試験片を37℃の蒸留水中に24時間保管した後、以下に示す方法でフッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した軟化象牙質表面と未処理の軟化象牙質表面に形成された自己接着性歯科用コンポジットレジンの色調の差(ΔE*)、及び銀成分の軟化象牙質に対する浸透深さを測定した。なお、自己接着性歯科用コンポジットレジンの透明性(ΔL*)は、以下に示す方法で1mm板を作製し、測定した。
[自己接着性歯科用コンポジットレジンの硬化物の透明性]
スライドガラス上に厚さ1mmの金属製スペーサー2枚を設置し、この2枚の金属製スペーサーで挟まれた箇所に表1に示す自己接着性歯科用コンポジットレジンを適量載せた。上からもう1枚のスライドガラスを押し付け、クランプで固定した。上面から歯科用LED照射器(ウルトラデント社製、商品名「VALO」)にて自己接着性歯科用コンポジットレジンに20秒間光照射を行った。裏面についても同様に20秒間の光照射を行った後、スライドガラスから取り外し、厚さ1mmの自己接着性歯科用コンポジットレジンの硬化物の試験片を得た。分光式色差計(SE6000:日本電色工業株式会社製)を用い、D65光源、視野2度で試験片の背後に標準白板を置いて色度を測定した場合の明度と、同じ試験片の背後に標準黒板を置いて色度を測定した場合の明度を測定し、両者の差を透明性(ΔL*)として算出した(n=3)。ΔL*の値が大きいほど硬化物の透明性が高い。
[フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した軟化象牙質表面と未処理の軟化象牙質表面に形成された自己接着性歯科用コンポジットレジンの色調の差(ΔE*)]
分光式色差計(SE6000:日本電色工業株式会社製)を用い、自己接着性歯科用コンポジットレジンの硬化面を測定窓に設置し、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した軟化象牙質表面及び未処理の軟化象牙質表面に形成された自己接着性歯科用コンポジットレジンの色調をD65光源、視野2度でそれぞれ測色した。得られたL*、a*、b*値よりフッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した軟化象牙質表面と未処理の軟化象牙質表面に形成された自己接着性歯科用コンポジットレジンとの色調の差(ΔE*)を算出した(n=3)。ΔE*の値が大きいほど色調の差が大きい。
[銀成分の軟化象牙質に対する浸透深さ]
自己接着性歯科用コンポジットレジンが形成された象牙質の板状片を低速ダイアモンドソーに固定し、円柱状の自己接着性歯科用コンポジットレジンの中心線を通るように縦方向にそれぞれ切断した。切断面は、流水下にて#3000のシリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨し、流水洗浄後、乾燥させた。エネルギー分散型X線分析装置(商品名「EMAX Evolution、X-MaxN20」、株式会社堀場製作所製)を用いて軟化象牙質表面から深さ方向に250μm、幅250μmの領域について、ライン間隔10μm(スキャン回数20)で銀元素のライン分析を行い、象牙質の深さ方向に対して銀元素が検出される限界の深さを浸透深さとした(n=3)。
[実施例7~8]
サホライド38%の代わりに、水1ml中に38mgのフッ化ジアンミン銀を含む3.8%水溶液(東洋製薬化成株式会社製、商品名「サホライド・RC液歯科用3.8%」、以下「サホライド3.8%」と呼ぶことがある)を用いた以外は実施例1と同様にして、色調の差(ΔE*)、及び銀成分の軟化象牙質に対する浸透深さを測定した。
[比較例2]
サホライド38%適用後の軟化象牙質に対して、自己接着性歯科用コンポジットレジンの代わりに、従来法として歯科用接着剤(クラレノリタケデンタル株式会社製、商品名「クリアフィルユニバーサルボンドクイックER」)と歯科用コンポジットレジン(クラレノリタケデンタル株式会社製、商品名「クリアフィルAP-X、A3」)を添付文書に従って使用した以外は実施例1と同様にして、サホライド液で処理した軟化象牙質及び未処理の軟化象牙質に、直径7mm、高さ2mmの歯科用コンポジットレジンがそれぞれ形成された試験片を得た。37℃の蒸留水中に24時間保管後、実施例1~8と同様の方法で、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した軟化象牙質及び未処理の軟化象牙質に形成された歯科用コンポジットレジンの色調の差(ΔE*)、及び銀成分の軟化象牙質に対する浸透深さ、歯科用コンポジットレジンの透明性(ΔL*)を測定した。
Figure 2022153158000005
実施例1~8に係る歯科修復用キットは、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した場合と処理しない場合とにおける軟化象牙質に形成した自己接着性歯科用コンポジットレジンの色調の差は軽微で、かつ軟化象牙質に対して銀成分の十分な浸透が認められた。実施例1~8に係る歯科修復用キットでは、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した場合と処理しない場合とにおける軟化象牙質に形成した自己接着性歯科用コンポジットレジンの色調の差が小さいため、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した場合に生じる黒変を十分に遮蔽できていた。また、銀成分の軟化象牙質に対する浸透深さの測定に使用したフッ化ジアンミン銀製剤(商品名「サホライド液歯科用38%」及び「サホライド・RC液歯科用3.8%」)は、銀成分(硝酸銀)による臨床的効果が確認されたものであり、軟化象牙質に対して銀成分の十分な浸透が認められるということは、フッ化ジアンミン銀に起因した銀成分による臨床的効果が得られることを意味する。
比較例1に係る歯科修復用キットは、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した場合と処理しない場合とにおける軟化象牙質に形成した自己接着性歯科用コンポジットレジンの色調の差が大きく、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液による黒変を十分に遮蔽できていなかった。
比較例2に示される通り、従来法のう蝕の治療(進行抑制)又は予防方法として、フッ化ジアンミン銀を含む水溶液で処理した後に、歯科用接着剤と歯科用コンポジットレジンによる処理した場合には、色調の差は軽微であったが、軟化象牙質に対する銀成分の浸透は十分でなかった。実施例1~8に係る本発明の歯科修復用キットは、比較例2に比べて、銀イオンの歯質内部への浸透が阻害されることがなく、軟化象牙質に対する銀成分の浸透深さにおいて、有意に優れていた。

Claims (6)

  1. 酸性基を有する単量体(a)、酸性基を有しない単量体(b)、重合開始剤(c)、及びフィラー(d)を含む自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)と、
    フッ化ジアンミン銀(e)を含む水溶液(Y)とを備え、
    前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の透明性(ΔL*)が25以下である、歯科修復用キット。
  2. 前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の総量100質量部において、フィラー(d)の含有量が、50質量部以上である、請求項1に記載の歯科修復用キット。
  3. 前記フィラー(d)が、無機フィラー(d-1)を含み、前記無機フィラー(d-1)の平均粒子径が0.001~50μmである、請求項1又は2に記載の歯科修復用キット。
  4. 前記無機フィラー(d-1)が、石英、シリカ、シリカ-ジルコニア、及びバリウムガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種と、シリカコートフッ化イッテルビウムとの組み合わせを含む、請求項3に記載の歯科修復用キット。
  5. 前記無機フィラー(d-1)に加えて、屈折率が1.9以上の無機フィラー(d-1a)をさらに含み、前記無機フィラー(d-1a)の含有量が、前記自己接着性歯科用コンポジットレジン(X)の総量100質量部において、0.001質量部以上である、請求項3又は4に記載の歯科修復用キット。
  6. 前記無機フィラー(d-1a)が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載の歯科修復用キット。
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