JP2022146322A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、その製造方法、および成形品 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、その製造方法、および成形品 Download PDF

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【課題】ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する優れた各種特性を犠牲にすることなく、優れた靱性を有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および樹脂成形品を提供する。【解決手段】(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体を15~40重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなる成形品のモルフォロジーにおいて、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(a-1)を形成し、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体が平均粒子径300~1000nmである分散相(b)を形成し、さらに分散相(b)中に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が平均粒子径100nm以下の分散相を形成し、前記分散相(b)の占める面積が20%以上であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する優れた各種特性を犠牲にすることなく、靭性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および樹脂成形品を提供する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略すこともある)などの熱可塑性樹脂材料は、その優れた耐薬品性、耐熱性、難燃性、電気的特性、機械的特性から電気・電子分野や自動車分野を中心として、幅広い産業分野で使用されている。近年、電線被覆のような柔軟さが求められる分野においては架橋ポリエチレンやシリコンのような材料が使用されているが、前者は耐熱性に乏しいこと、後者は耐薬品性に課題があることなどから、PPS樹脂のような高い耐熱性と耐薬品性を有している材料が求められている。しかしながら、PPS樹脂は、剛直な骨格を有していることから柔軟性に乏しく、そのような分野への適用は難しかった。
このような要求特性にPPS樹脂単独で対応することは難しい。そこで、PPS樹脂の靭性を改善するため、エラストマーを添加する方法が知られている。例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂と反応性官能基を有する樹脂とを用いて、モルフォロジーをコントロールすることで剛性と靭性を相互に高めた材料が開示されている。
特許文献2では、カルボキシル基を有するポリフェニレンサルファイド樹脂とカルボキシル基に付加反応するグリシジル基を有したオレフィン共重合体を用いて、電線被覆への適合していることが開示されている。
特開2010-195853 特開2015-65127
しかしながら、特許文献1では反応性官能基を有する樹脂の含有量が少ないことと分散相の粒径の規定がないために、靭性を満足させる結果とならなかった。特許文献2では、PPS樹脂を含む連続相およびオレフィン系共重合体を含む分散相からなるモルフォロジーが開示されているが、その特性として十分な靭性を発現できていない。
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する優れた各種特性を犠牲にすることなく、靭性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および成形品を提供する。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、下記を提供するものである。
(1)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体を15~40重量部を配合してからなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなる成形品のモルフォロジーにおいて、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(a-1)を形成し、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体が平均粒子径300~1000nmである分散相(b)を形成し、さらに分散相(b)中に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が平均粒子径100nm以下の分散相(a-2)を形成することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(2)前記、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体の反応性官能基がアミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、グリシジル基、酸無水物、およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)前記、分散相(b)の平均粒子径が500~1000nmであることを特徴とする(1)または(2)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、二軸押出機のスクリュー長さをL(mm)、スクリュー直径をD(mm)としたときのL/Dが45以上である二軸押出機を使用して、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体を溶融混練する、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
(5)前記二軸押出機の回転数をN(rpm)、生産速度をQ(kg/hr)としたときのQ/Nが0.04~1.2であることを特徴とする(4)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
(6)(1)~(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
(7)(1)~(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる電線被覆材。
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する優れた各種特性を犠牲にすることなく、靭性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および成形品を提供する。
本発明の実施例2の樹脂組成物からなる成形品を、透過型電子顕微鏡で観察した画像の模式図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明に用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 2022146322000001
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2022146322000002
次に、本発明の(A)PPS樹脂を得るための方法について説明する。PPS樹脂の製造方法は、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程の公知の方法で製造することができる。PPS樹脂の製造に用いられる原料、前工程に関しては特開2017-155221号公報に記載されている方法に準拠することが好ましい。
本発明において用いる(A)PPS樹脂は、MFRが50~800g/10分であることが好ましく、さらには90~650g/10分であることが好ましい。MFRが50g/10分以上とすることで、流動性があり成形が可能である。800g/10分以下とすることで、流動性が良すぎる場合に発生する成形機からのハナタレや成形品のバリの発生も抑制できるので好ましい。
本発明の樹脂組成物には、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体を配合する。(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体は、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、グリシジル基、酸無水物、およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有することが好ましい。反応性官能基を有するオレフィン系共重合体は、オレフィン系重合体及び/またはオレフィン系共重合体にグリシジル基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分(官能基含有成分)を導入することにより得られる。その官能基含有成分の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ[2.2.1]5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのグリシジル基を含有する単量体、カルボン酸金属錯体などのアイオノマーを含有する単量体が挙げられる。オレフィン系共重合体の種類としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1、イソブチレンなどのα-オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α-オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β-不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体などがあり、具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/ブテン-1共重合体、エチレン/ヘキセン-1共重合体、エチレン/オクテン-1共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。官能基の中でも、PPS樹脂との相溶性の向上の観点から、グリシジル基を有することが好ましい。
オレフィン系共重合体に官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、オレフィン系(共)重合体を(共)重合する際に共重合せしめたり、オレフィン系(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。特に有用な反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン-g-メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン-1-g-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン-1-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル-g-無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体の亜鉛錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のマグネシウム錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のナトリウム錯体あるいは、エチレン、プロピレンなどのα-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルが好適に用いられる。
(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体は、(A)PPS樹脂100重量部に対して15~40重量部を配合することが必要である。15重量部未満の場合、靭性が不足し電線被覆に適用した場合には伸びを満足できなくなる。40重量部を超えるとPPS樹脂本来の耐熱性や強度が損なわれるために好ましくない。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品のモルフォロジーにおいて、(A)PPS樹脂が連続相(a-1)を形成し、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体が分散相(b)を形成し、さらに分散相(b)の内部に(A)PPS樹脂が分散相(a-2)を形成することが好ましい。分散相(b)の平均粒子径は300~1000nmであることが好ましく、より好ましくは500~1000nmである。300nm以上である場合、ポリオレフィン共重合体の靭性を満足に発現することができる。1000nm以下である場合、(A)PPS樹脂および(B)ポリオレフィン共重合体のそれぞれの特性を満足に発現することができる。分散相(a-2)は、100nm以下であることが好ましい、より好ましくは1~50nmである。分散相(a-2)が100nm以下であることは、高い靭性の発現においては好ましい。なお、分散相(b)および分散相(a-2)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、倍率10000倍による観察画像を取得し、得られたTEM画像を用いて画像解析にて平均粒子径を算出した。画像解析の方法としては、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scrion Image」を使用して、各分散相の長径および短径を求め、これらの平均値を各分散相の粒子径とし、これらの平均値を算出することにより求めることができる。
さらに、本発明におけるPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体を配合してもよい。炭素原子数3~12のα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1、イソブチレンなどのα-オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体を配合してもよい。
官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体の配合量は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、0~20重量部が好ましく、特に0~15重量部が好ましい。(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体を配合しない場合と比較して、1重量部以上配合する場合、耐ヒートサイクル性が飛躍的に向上する効果がある。また、20重量部以下とすることで、分散性が悪化による物性の低下を抑制できる。
本発明のPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物(以下、シラン化合物と呼ぶこともある。)を配合してもよい。
なお、本発明のPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダートフェノール系、ヒドロキノン系、リン系、ホスファイト系、アミン系、硫黄系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ステアラート、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等の無機結晶核剤または有機結晶核剤))、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの強度向上材、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のPPS樹脂組成物の調製方法に特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280~380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。好ましくは、2軸押出機のスクリュー長さL(mm)とスクリュー直径D(mm)としたときのL/Dが45以上であることが好ましく、50~200の範囲であることがより好ましい。45以上の場合、つまりはスクリュー長さが大きい場合、またはスクリュー直径が小さい場合、十分に混練させることができ所定のモルフォロジーを発現させることができる。かかるスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部からスクリュー先端部までの長さである。原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法を用いてもよい。また、少量添加する成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
L/Dが45以上の二軸押出機を使用してポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を製造する場合、スクリュー回転数をN(rpm)、生産速度をQ(kg/hr)としたとき、Q/Nが0.04~1.2の範囲であることが好ましい。生産速度Qとは、二軸押出機より1時間あたりに押し出される樹脂組成物の生産量を表す。スクリュー回転数Nは二軸押出機のスクリューの回転数である。QとNは押出機の大きさや仕様などによって異なるため、二軸押出機内での溶融樹脂の混練強度を表す指標であるQ/Nを用いた。Q/Nが小さい場合は、つまりは生産速度が非常に遅い、もしくは、スクリューの回転が非常に速いこととなり、混練強度が非常に強くなる。一方で、Q/Nが大きい場合は、つまりは生産速度が非常に速い、もしくはスクリュー回転数が非常に遅いこととなり、混練強度が非常に弱くなる。Q/Nの下限値は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.06以上である。Q/Nの上限値は、0.12以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。0.04以上の場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂の連続相と分散相(b)、および分散相(b)中に存在する分散相(a-2)を形成することができ、十分な靭性を得ることができる。Q/Nが1.2以下の場合、分散相(b)が300nm以下となることを抑制でき、十分な靭性を得ることができる。
このようにして得られる本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に押出成形用途に適している。
本発明で用いるPPS樹脂組成物成形品は、耐熱性、機械特性、電気特性に優れていることに加えて、靭性に優れることから電線被覆用途に適用できる。
その他本発明で用いられるPPS樹脂組成物からなる成形品の適用可能な用途としては、例えばハーネス被覆材、チューブなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[製造したPPS樹脂の評価方法]
(1)メルトフローレート(MFR)
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM-D1238-70に準ずる方法で測定した。
但し、粘度が低いポリフェニレンサルファイド樹脂に関しては、次の方法でMFRを算出した。ポリフェニレンサルファイド樹脂を測定温度315.5℃、345g荷重とし、ASTM-D1238-70に準ずる方法でERを測定し、下記式(2)によりMFRの値を算出した。
式(2) MFR=15.8×4.4×ER。
[参考例1]PPSの重合(PPS-1)
充填材入り精留塔を取り付けた撹拌機付きオートクレーブに濃度48wt%の水硫化ナトリウム水溶液2.923kg(水硫化ナトリウム換算で25.0モル)、濃度48wt%の水酸化ナトリウム水溶液2.188kg(水酸化ナトリウム換算で26.3モル)、NMP4.090kg(41.3モル)及び無水酢酸ナトリウム0.8kg(9.8モル)を室温で仕込んだ。常圧で窒素を通じて撹拌しながら240℃まで約2.5時間かけて徐々に加熱して2.658kgの水を留出した。このときに飛散した硫化水素は0.4モルであった。
次にオートクレーブを180℃に冷却後、1,4-ジクロロベンゼン3.655kg(25.4モル)ならびにNMP3.345kg(33.8モル)を加えて、窒素下に密閉し、270℃まで160分かけて昇温後、270℃で80分反応した。反応後、水0.45kgを15分かけてオートクレーブに投入しながら250℃まで冷却した後、220℃まで75分かけて冷却を行った。その後、12.5リットルのNMP中に内容物を投入し85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾別して固形物を得た。得られた固形物を再度NMP12.5リットルで洗浄、濾過した。次に得られた固形物を25リットルの水(70℃)で3回洗浄、濾別した。ついで、得られた固形物に酢酸13gおよび水(70℃)25リットルを加えて洗浄、濾別した。更に得られた固形物を再度25リットルの水(70℃)で洗浄、濾別した。
このようにして得られた固形物を80℃で24時間減圧乾燥しMFR100g/10分(重量平均分子量70,000)、融解ピーク温度280℃、降温結晶化温度225℃のPPS樹脂を得た。
なお、MFRは、乾燥後のPPS樹脂粉末5gを、315.5℃、5分滞留させた後、5000g荷重をかけ測定(ASTM-D1238-70準拠)して求めた。
[参考例2]PPS-2
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.42kg(70.86モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPS-2を得た。得られたポリマーのMFRは600g/10分であった。
本発明において使用する原料を以下に示す。
(A)PPS樹脂
PPS-1:参考例1に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS-2:参考例2に記載の方法で重合したPPS樹脂
(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体
B-1:グリシジル基含有ポリオレフィン(三井化学社製 ボンドファースト7M)
実施例および比較例においては、次の方法により評価した。
(1)機械特性
ASTM D638に準拠して測定を行った。具体的には次のように測定を行った。本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:310℃、金型温度:145℃に設定した住友重機械工業株式会社製射出成形機(SE-50D)に供給し、ASTM D638に規定されるタイプ1試験片形状(3.2mm±0.4mm厚み)の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形を行い、試験片を得た。この試験片を、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、つかみ具間距離:115mm、試験速度:5mm/minの条件で、ASTM D638に準拠して引張強度および引張破断歪の測定を行った。引張歪は30%以上であれば実用上問題のない製品レベルといえるが、この値が高いほど機械的強度に優れ、好ましいと判断できる。
(2)モルフォロジー
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを用いて(1)機械特性で成形したASTM D638に規定されるタイプ1試験片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)による10000倍によって観察した。得られたTEM画像の平均粒子径については画像解析にて算出した。画像解析の方法としては、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scrion Image」を使用して、各分散相の長径および短径を求め、これらの平均値を各分散相の粒子径とし、これらの平均値より算出した。
(実施例1および2、比較例1および2)
シリンダー温度を320℃、スクリュー回転数(N)および生産速度(Q)が表1に記載のQ/Nの値になるように設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26:L/D=64.6)を用いて、表1に示すとおりの原料を表1に記載の配合組成にて原料供給口から添加して溶融状態とし、溶融混練してペレットを得た。このペレットを用いて各特性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2022146322000003
実施例1,2と比較例1、2から、(A)PPS樹脂が連続相(a-1)を形成し、分散相(b)の平均粒子径が300~1000nmであって、分散相(a-2)が100nm以下である場合に、50%以上の引張破断歪を発現した。特にQ/Nを0.06の条件でPPS樹脂組成物を溶融混練すると、100%を超える引張破断歪となった。
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する優れた各種特性を犠牲にすることなく、靭性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および成形品を提供する。
1 連続相(a-1)
2 分散相(b)
3 分散相(a-2)

Claims (7)

  1. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体を15~40重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなる成形品のモルフォロジーにおいて、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(a-1)を形成し、(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体が平均粒子径300~1000nmである分散相(b)を形成し、さらに分散相(b)中に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が平均粒子径100nm以下の分散相(a-2)を形成することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体の反応性官能基がアミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、グリシジル基、酸無水物、およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記分散相(b)の平均粒子径が500~1000nmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、二軸押出機のスクリュー長さをL(mm)、スクリュー直径をD(mm)としたときのL/Dが45以上である二軸押出機を使用して、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(B)反応性官能基を有するポリオレフィン共重合体を溶融混練する、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記二軸押出機の回転数をN(rpm)、生産速度をQ(kg/hr)としたときのQ/Nが0.04~1.2であることを特徴とする請求項4に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1~3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
  7. 請求項1~3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる電線被覆材。
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