JP2022139398A - 希土類系酸化物超伝導多芯線材、および、その製造方法 - Google Patents

希土類系酸化物超伝導多芯線材、および、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 希土類系酸化物超伝導層間の抵抗を低減した希土類系酸化物超伝導多芯線材およびその製造方法を提供すること。【解決手段】 本発明の希土類系酸化物超伝導多芯線材は、両面に銅を含有する層が付与され、金属基板と金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材がはんだ母材を介して積層された多芯構造体と、多芯構造体を被覆する安定化材とを備える。本発明の上記多芯線材の製造方法は、上記テープ芯材を複数束ね、溶融したはんだに浸漬させることと、複数束ねたテープ芯材を穴のあいた治具に通し、多芯構造体を得ることと、多芯構造体を安定化材で被覆することとを包含する。【選択図】 図1

Description

本発明は、希土類系酸化物超伝導多芯線材、および、その製造方法に関する。
希土類系酸化物超伝導材料は、超伝導臨界温度が液体窒素温度を超える高温超伝導材料として知られており、加えて、臨界磁場も高いため、強磁場核磁気共鳴(NMR)装置、核磁気共鳴画像法(MRI)、超電導電力貯蔵装置(SMES)、核融合炉、高エネルギー粒子加速器、送電ケーブルなど、様々な応用が期待されている。特に、発生磁場が23.5T(テスラ)を超える1GHz超級強磁場NMR装置では、従来のNbSn超伝導では対応できず、希土類系酸化物超伝導が不可欠とされる。また、核融合炉などの大型マグネットにおいては、その優れた高磁場臨界電流密度特性から、装置のコンパクト化、それによる製造コストの大幅な削減が期待されている。
この希土類系酸化物超伝導材料が発見された1980年代後半には、テープ基板上に酸化物系超電導体層を焼結した超電導テープ導体、ならびに、これを積層して追加焼結した超電導線が提案された(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、単にテープ基板上に焼結させた酸化物超電導体層は配向性が悪く、実用上必要な臨界電流密度を得ることができない。そのため当時は、特許文献1のように超電導テープ導体を積層することが必要であった。こうした特性上の問題から、現在ではこのような焼結導体を用いることはまずない。
酸化物超伝導層の臨界電流密度は、粒界の傾角に著しく依存し、高い臨界電流密度を得るためには、少なくとも傾角を5°以下に抑えなければならない。こうした背景から、配向テープ基板上に希土類系酸化物超伝導層をエピタキシャル成長させる方法が開発され、これが現在の希土類系酸化物超伝導テープ線材の主流となっている。
しかしながら、こうした製法の特徴から、製造される希土類系酸化物超伝導テープ線材は線幅が少なくとも4mm以上、厚さが最低でも50μm程度と、極めて扁平な形状に限られる。そのため、極端な扁平形状に起因して、磁化の増大や交流損失の増大、安定性の低下が顕著となり、実用化の足かせとなっている。この問題は、外部磁場がテープ面に垂直に印加されるのであれば、特許文献1の導体でも同様に起こる。
こうした問題を解決する手法として、配向テープ基板上に希土類系酸化物超伝導層をエピタキシャル成長させ、その上にAg保護膜を配置したテープ線材にレーザースクライビング加工を行い、希土類系酸化物超伝導層のみを分断し、フィラメント化する技術がある(例えば、非特許文献1を参照)。このように希土類系酸化物超伝導層をフィラメント化することで、磁化の増大や交流損失の増大を抑制することが可能となった。しかしながらこの構造では、フィラメント間の電気的結合性が低く、仮にいずれかのフィラメントで突発的な熱的擾乱が発生した場合、フィラメントは常伝導転移しそのフィラメントを流れる電流が迂回できずに、温度上昇し、場合によっては不可逆的な熱的不安定性が生じて線材全体が常伝導転移に至る。これを回避するためには、フィラメントが電気的に互いに良好に結合するよう導体化することが求められていた。
また、大容量導体化という観点では、単純に希土類系酸化物超伝導テープ線材をステンレスフォーマーの中に積層した導体や(例えば、非特許文献2を参照)、複数のテープ線材をフォーマー上にらせん状に巻き付けて導体化する技術がある(例えば、非特許文献3を参照)。しかしながら非特許文献2、3においても、テープ線材間の抵抗が大きく、改良が求められている。
特公昭64-12415号公報
T Machiら,Supercond.Sci.Technol.,26,2013,105016 Y.Terazakiら,IEEE Trans.Appl.Supercond.,25,2015,4602905 D C van der Laanら,Supercond.Sci.Technol.,32,2019,033001
以上から、本発明の課題は、希土類系酸化物超伝導層間の抵抗を低減さらには、磁化および交流損失を低減したした希土類系酸化物超伝導多芯線材およびその製造方法を提供することである。
本発明による希土類系酸化物超伝導多芯線材は、両面に銅を含有する層が付与され、金属基板と前記金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材がはんだ母材を介して積層された多芯構造体と、前記多芯構造体を被覆する安定化材とを備え、これにより上記課題を解決する。
前記希土類系酸化物超伝導層は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)および酸素(O)を含有する一般式REBaCuで表され、
REは、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)からなる群から少なくとも1つ選択される元素であり、xは、0<x≦2を満たし、yは、6.2≦y≦7を満たしてもよい。
前記銅を含有する層は、銅金属、または、銅と、銀、亜鉛、および、ニッケルからなる群から選択される金属との銅合金であってもよい。
前記銅を含有する層は、1μm以上30μm以下の範囲の厚さを有してもよい。
前記はんだ母材は、スズ系合金または鉛系合金であってもよい。
前記安定化材は、銅金属、銅合金、銀金属、および、銀合金からなる群から選択されてもよい。
前記テープ芯材の幅は、0.2mm以上2mm以下の範囲であってもよい。
前記テープ芯材の幅は、0.2mm以上1mm以下の範囲であってもよい。
前記希土類系酸化物超伝導多芯線材の線径は、0.4mm以上2mm以下の範囲であってもよい。
前記多芯構造体に対する前記テープ芯材の占積率は、50%以上95%以下の範囲であってもよい。 前記多芯構造体に対する前記希土類系酸化物超伝導層の占積率は、0.5%以上20%以下の範囲であってもよい。
前記多芯構造体に対する前記はんだ母材の占積率は、10%以上40%以下の範囲であってもよい。
前記多芯構造体の断面積に対する前記安定化材の断面積の比は、0.5以上1.5以下の範囲であってもよい。
前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が、前記多芯線材の中心に向くように、積層されていてもよい。
前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が向き合って対をなすように、積層されていてもよい。
前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が、前記多芯線材の中心から外側に向くように、積層されていてもよい。
前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が同じ方向を向くように、積層されていてもよい。
前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が、前記多芯線材の中心軸を取り囲むように、積層されていてもよい。
前記テープ芯材は、前記多芯線材の軸方向にわたってツイストされるように積層されていてもよい。
本発明による上記希土類系酸化物超伝導多芯線材を製造する方法は、両面に銅を含有する層が付与された、金属基板と前記金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材を複数束ね、溶融したはんだに浸漬させることと、前記複数束ねたテープ芯材を穴のあいた治具に通し、多芯構造体を得ることと、前記多芯構造体を安定化材で被覆することとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記穴の内径Rは、W×1.3≦R≦W×2(ここで、Wは、前記テープ芯材の幅である)を満たしてもよい。
前記治具の前記穴は、8°以上45°以下の範囲のリダクション角を有してもよい。
前記被覆することは、電気メッキまたは無電解メッキによって行われてもよい。
本発明の希土類系酸化物超伝導多芯線材は、両面に銅を含有する層が付与され、金属基板と希土類系酸化物超伝導層を備えたテープ芯材がはんだ母材を介して積層された多芯構造体と、多芯構造体を被覆する安定化材とを備える。テープ芯材には両面に銅を含有する層が付与されているので、はんだ母材が希土類系酸化物超伝導層と反応することはない。このため、希土類系酸化物超伝導層は優れた超伝導特性を発揮できる。さらに、テープ芯材には金属基板が備えられており、線材の高強度化が得られる。さらに、希土類系酸化物超伝導層が多芯線化されているため、磁化の増大や交流損失の増大を抑制できる。加えて、はんだ母材によりテープ芯材間の抵抗が劇的に低減するため、擾乱などにも対応した多芯線材を提供できる。
本発明の希土類系酸化物超伝導多芯線材の製造方法は、両面に銅を含有する層が付与された、金属基板と希土類系酸化物超伝導層を備えたテープ芯材を複数束ね、溶融したはんだに浸漬させることと、これらを穴のあいた治具に通し、多芯構造体を得ることと、多芯構造体を安定化材で被覆することとを包含する。本発明の製造方法は、特別の装置や熟練の技術等を不要とするため、汎用性に優れ、歩留まりよく上述の多芯線材を製造できる。
本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材を模式的に示す図 本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材中のテープ芯材の配置の例を模式的に示す図 本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材の製造工程を示すフローチャート 本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材の製造する様子を示す模式図 穴のあいた治具の断面構造を模式的に示す図 Cu被膜を有しないテープ線材1をはんだ母材に浸漬させた場合のSEM像(A)およびEDX元素マッピング(B)を示す図 Cu被膜を有するテープ線材1をはんだ母材に浸漬させた場合のSEM像を示す図 参考例2のテープ芯材間抵抗予備測定用の多芯線材の断面および測定回路を示す模式図 参考例2のはんだ母材を充填したテープ芯材間抵抗予備測定用の多芯線材の断面および外観を示す図 はんだ母材が充填されていない場合のテープ芯材間の抵抗(A)およびはんだ母材が充填されている場合のテープ芯材間の抵抗(B)を示す図 実施例2の多芯構造体の断面を示すSEM像 実施例1の多芯線材の外観および断面を示すSEM像 実施例1の多芯線材の通電試験結果を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
上述した技術背景の中、本発明者は、スズ(Sn)系はんだが希土類系酸化物超伝導層を容易に破損すること、界面に銅(Cu)層を介入させることで、その厚さが非常に薄い場合であっても、その破損の防止に効果的なことを明らかにした。さらに、希土類系酸化物超伝導テープ線をはんだマトリクスに埋め込むことで、テープ線材間の接続抵抗が、2桁以上低減できることを実験的に明らかにした。これらの2つの実験結果から、はんだを母材とした多芯導体構造が、高安定な導体構造となりうること、さらにレーザ加工等による細線化技術と組み合わせることで、さらなる磁化の低減や交流損失の低減が達成された希土類系酸化物超伝導多芯線材が実現できるという発想を得た。また、線材ハンドリング上の希土類系酸化物超伝導層の座屈を抑制するためには、希土類系酸化物超伝導テープ線材の金属基板をそのまま利用することが必要であると考え、本発明を想到した。以下に詳述する。
図1は、本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材を模式的に示す図である。
本発明の希土類系酸化物超伝導多芯線材(以降では簡単のため単に多芯線材と称する)100は、テープ芯材110がはんだ母材120を介して積層された多芯構造体130と、多芯構造体130を被覆する安定化材140とを備える。ここで、テープ芯材110は、金属基板150と、その上に位置する希土類系酸化物超伝導層(以降では簡単のため超伝導層と称する)160とを備え、超伝導層160の表面およびそれと対向する金属基板150の表面の両面に銅を含有する層170が付与されている。多芯構造体130において、はんだ母材120は、積層されたテープ芯材110の周りのみならず、テープ芯材110とテープ芯材110との間にも位置するものとする。
テープ芯材110には両面に銅を有する層170が付与されており、超伝導層160が、はんだ母材120と接しないので、互いに反応することはない。このため、超伝導層160は、優れた超伝導特性を発揮できる。また、テープ芯材110には金属基板150が備えられているため、多芯線材100の強度を増大できる。超伝導層160が多芯線化されているため、磁化の増大や交流損失の増大を抑制する。はんだ母材120によりテープ芯材110間の抵抗が劇的に低減するため、いずれかのテープ芯材110において突発的な熱的擾乱が発生しても、テープ芯材110を流れる電流は容易に別のテープ芯材へ迂回できるので、熱的安定性に優れる。
ここで、本発明の多芯線材100と背景技術で述べた技術との違いを述べる。特許文献1では、希土類系酸化物超電導体層は、銅を含有する層で被覆されておらず、さらにははんだ母材を介して積層されていない点が異なる。また、非特許文献2や3の大型導体でも、導体間にはんだを均一に充填して母材化する実用的な手法は開発されてこなかった。仮に溶融したはんだを流し込んだとしても、濡れ性の問題から内部に空隙が生じる可能性が高く、それが導体を曲げた際の応力集中の起点となるため、この方法を利用することは困難である。
各構成要素について詳細に説明する。
テープ芯材110を構成する金属基板150は、超伝導層160を2軸配向させ得るものであれば特に制限はないが、好ましくは、Ni基合金、ステンレス鋼がある。Ni基合金は、好ましくは、ニッケル(Ni)に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)からなる群から少なくとも1つ選択される元素を含む。また、酸化亜鉛(MgO)、ガドリニウム-亜鉛酸化物(GdZr:GZO)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO)、ランタンマンガン酸化物(LaMnO:LMO)、イットリア(Y)等のバッファ層をさらに備えてもよい。
金属基板150の厚さは、特に制限はないが、多芯材100の機械的強度および曲げ特性を考慮すると、10μm以上150μm以下の範囲であってよい金属基板150の厚さは、好ましくは、30μm以上100μm以下の範囲である。これにより、テープ芯材110の製造歩留まりに優れる。金属基板150の厚さは、なお好ましくは、50μm以上100μm以下の範囲である。
超伝導層160は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)および酸素(O)を含有する一般式REBaCuで表される。ここで、REは、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)からなる群から少なくとも1つ選択される元素である。xは、0<x≦2を満たし、yは、6.2≦y≦7を満たす。この範囲を満たせば、超伝導臨界温度が液体窒素温度を超える高温超伝導材料となる。
超伝導層160の厚さは、特に制限はないが、0.5μm以上30μm以下の範囲であればよい。超伝導層160の厚さは、好ましくは、超伝導特性の観点から、0.5μm以上15μm以下の範囲である。超伝導層160の厚さは、なお好ましくは、0.5μm以上5μm以下の範囲である。
超伝導層160上にさらに保護層を有してもよい。このような保護層は、銀(Ag)、銀と金との合金(Ag-Au)等からなってよい。これにより、超伝導層160を保護できるので、長期間にわたって高い超伝導特性を維持できる。
多芯構造体130に対する超伝導層160の占積率(超伝導層160の厚さ/多芯構造体130の厚さの百分率)は、好ましくは、0.5%以上20%以下の範囲である。それ以外の部分は補強材に利用することができるため、この範囲であれば、多芯線材100は、高強度を維持しつつ優れた通電特性を確保できる。多芯構造体130に対する超伝導層160の占積率は、より好ましくは、0.9%以上16%以下の範囲であり、なおさらに好ましくは、1%以上12%以下の範囲であり、なおさらに好ましくは、1%以上1.5%以下の範囲である。厚さは、多芯線材100の長手方向に垂直な方向の断面おける厚さである。
銅を含有する層170は、はんだ母材120との反応を抑制するという観点から銅を含有していればよいが、好ましくは、銅金属、または、銅と、銀、亜鉛、および、ニッケルからなる群から選択される金属との銅合金である。銅金属または上述の銅合金であれば、はんだ母材140との馴染みがよいのに加え、効率的に反応を抑制できる。銅合金中の銅の含有量は、特に制限はないが、50wt%以上99.5wt%以下の範囲であり得る。
銅を含有する層170の厚さは、はんだ母材120と超伝導層160とが直接接触しない限り制限はないが、好ましくは、1μm以上30μm以下の範囲である。1μm以上であれば、銅を含有する層170中の銅がはんだ母材120に溶融することをより効果的に抑制でき、超伝導層160が劣化することはない。30μm以下であれば超伝導層160の占積率を高く維持できるので、オーバーオールの臨界電流密度特性を効率的に維持できる。銅を含有する層170の厚さは、なおさらに好ましくは、2μm以上30μm以下の範囲であり、さらに好ましくは、2μm以上25μm以下の範囲である。
テープ芯材110の幅は、好ましくは、0.2mm以上2mm以下の範囲である。この範囲とすることにより、テープ芯材110の積層による効果に加えて、磁化の増大や交流損失の増大をさらに抑制できる。
テープ芯材110の幅は、より好ましくは、0.2mm以上1mm以下の範囲である。この範囲とすることにより、テープ芯材がエッジワイズ方向に曲げられた際の特性の劣化をより低減できる。このとき、多芯線材100の線径は、0.4mm以上2mm以下の範囲を有し、磁化や交流損失が特に低減された多芯線材100を提供できる。
多芯構造体130に対するテープ芯材110の占積率(テープ芯材110の合計断面積/多芯構造体130の全断面積の百分率)は、好ましくは、50%以上95%以下の範囲である。この範囲であれば、多芯線材100は、優れた超伝導特性を発揮できる。多芯構造体130に対するテープ芯材110の占積率は、より好ましくは、60%以上90%以下の範囲であり、なおさらに好ましくは、80%以上90%以下の範囲である。断面積は、多芯線材100の長手方向に垂直な方向の断面の面積である。
はんだ母材120は、テープ芯材110の間および周りに位置すべく、テープ芯材110の銅を含有する層170との濡れ性がよく、電気伝導性に優れる材料であれば特に制限はないが、好ましくは、スズ系合金または鉛系合金である。これらの合金は、銅を含有する層170との濡れ性に優れ、電気伝導性に優れる。
スズ系合金は、スズ(Sn)金属であってもよいし、Snと、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)および銀(Ag)からなる群から少なくとも1種選択された元素との合金であってもよい。このようなスズ系合金には、Pb-Sn合金、Pb-Sn-Bi合金、Sn-Ag合金等がある。これらのスズ系合金ははんだ材料として公知であり、電気伝導性に優れ、銅を含有する層170に対する濡れ性にも優れる。
鉛系合金は、鉛(Pb)金属であってもよいし、Pbと、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、アンチモン(Sb)、バリウム(Ba)およびビスマス(Bi)からなる群から少なくとも1種選択された元素との合金であってもよい。このような鉛系合金には、Pb-Bi合金、Pb-Sn-Ca合金、Pb-Sn-Ba合金等がある。これらの鉛系合金もまたはんだ材料として公知であり、電気伝導性に優れ、銅を含有する層170に対する濡れ性にも優れる。
はんだ母材120は、融点が200℃以下のものを選択するとよい。これにより、テープ芯材110における超伝導層160のダメージを低減できるので、優れた超伝導特性が得られる。このような材料には、例えば、Sn-58wt%Bi、Sn-57wt%Bi-1wt%Ag等があるが、これらに限らない。
多芯構造体130に対するはんだ母材120の占積率(はんだ母材120の合計断面積/多芯構造体130の全断面積の百分率)は、好ましくは、10%以上40%以下の範囲である。この範囲であれば、多芯線材100において、テープ芯材110間の抵抗を効果的に低減できる。多芯構造体130に対するはんだ母材120の占積率は、より好ましくは、10%以上15%以下の範囲である。
安定化材140は、多芯構造体110を被覆し、常伝導金属材料からなってよい。これにより、多芯構造体130のうち一部の超伝導層160がより大きな熱的擾乱によって部分的に不安定になっても、電流を容易に迂回させ、安定化できる。
安定化材140は、好ましくは、銅金属、銅合金、銀金属、および、銀合金からなる群から選択される材料からなってよい。これらはいずれも常伝導金属材料として公知である。中でも、価格や加工性の観点から銅金属が好ましい。
多芯構造体130の断面積に対する安定化材140の断面積比は、好ましくは、0.5以上1.5以下の範囲である。0.5以上とすることにより、超伝導層160が突発的に常伝導転移した際に、安定化材140に流れた電流によるジュール発熱を小さくできるので、多芯線材100が焼損する可能性を低減できる。1.5未満とすることにより、超伝導層160の占積率を高く維持でき、オーバーオールの臨界電流密度の値を維持できる。安定化材140の断面積比は、より好ましくは、0.8以上1.2以下の範囲である。この範囲とすることにより、ジュール発熱をより低減し、オーバーオールの臨界電流密度の値を高く維持した、安定な多芯線材100を提供できる。断面積は、多芯線材100の長手方向に垂直な方向の断面の面積である。
図2は、本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材中のテープ芯材の配置の例を模式的に示す図である。
多芯線材100中の多芯構造体130中のテープ芯材110の配置に、特に制限はないが、用途に応じて配置を選択することができる。図2では、多芯線材100の長手方向に垂直な方向の断面を示す。図2(A)は、図1と同様の配置であり、テープ芯材110は、超伝導層160が多芯線材100の中心を向くように積層されている。図2(A)の構成は、超伝導層160の経験曲げひずみの観点から好ましい。
図2(B)によれば、テープ芯材110は、超伝導層160が向き合って対をなすように積層されている。図2(B)の構成は、電流シェアリングの観点から好ましい。図2(C)によれば、テープ芯材110は、超伝導層160が多芯線材100の中心から外側に向くように積層されている。図2(C)の構成は、電極との接続、すなわち、電極から各テープ芯材110への電流の流れ易さの観点から好ましい。
図2(D)によれば、テープ芯材110は、超伝導層160が同じ方向を向くように積層されている。図2(D)の構成は、導体作製の際のテープ芯材110の積層のしやすさの観点から好ましい。図2(E)によれば、テープ芯材110は、超伝導層160が多芯線材100の中心軸210を取り囲むように積層されている。図2(E)では、中心軸210周りにテープ芯材110によって形成される断面形状が三角形である場合を示すが、四角形、五角形などの多角形であってよい。図2(E)の構成は、よりシンメトリックな構造が得られ、外部磁場異方性を軽減できる点で好ましい。
図2(A)~(E)では、テープ芯材110は、いずれも、多芯線材100の中心軸の方向にねじれることなく積層されている様子を示すが、テープ芯材は、中心軸の方向にわたってねじれる(ツイストされる)ように積層されていてもよい。これにより、外部変動磁場に対する渦電流損失の低減を可能にする。
本発明の希土類系酸化物超伝導多芯線材は、磁化の増大や交流損失の増大が抑制され、安定性に優れるので、(1GHz超)強磁場核磁気共鳴(NMR)装置、核融合炉、高エネルギー粒子加速器、核磁気共鳴画像法(MRI)、超電導電力貯蔵装置(SMES)等のマグネットに利用され得る。
次に、本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材の製造方法を説明する。
図3は、本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材の製造工程を示すフローチャートである。
図4は、本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材の製造する様子を示す模式図である。
ステップS310:両面に銅を含有する層が付与された、金属基板と金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材110を複数束ね、溶融したはんだ410に浸漬させる。
ステップS320:複数束ねたテープ芯材を穴のあいた治具430に通し、多芯構造体130を得る。
ステップS330:多芯構造体130を安定化材で被覆する。
以上のステップによって、上述した本発明の希土類酸化物系超伝導多芯線材100が得られる。詳細に説明する。
ステップS310において、テープ芯材110は、図1を参照して説明したとおりであるため説明を省略する。なお、テープ芯材110は、図1を参照して説明した条件を満たすものであれば、市販品であってもよいし、金属基板150上に物理的気相成長法によって超伝導層160、銅を含有する層170を順次堆積させて製造してもよい。このような製造方法には公知のプロセスを採用できる。
ステップS310において、はんだ410は、はんだ母材120と同一の材料であり、ヒータ420の加熱によって容易に溶融する。ステップS310において、テープ芯材110を複数束ねる際に、図2を参照してテープ芯材110の配置を決定してもよい。
図5は、穴のあいた治具の断面構造を模式的に示す図である。
ステップS320において、図5に示すような治具430を通し、引き抜くことにより、多芯構造体130が得られる。治具430の内径Rは、好ましくは、W×1.3≦R≦W×2(ここで、Wは、テープ芯材110の幅)を満たす。これにより、所望の配置でテープ芯材110が積層された多芯構造体130が得られる。治具430の内径Rは、より好ましくは、W×1.35≦R≦W×1.5(ここで、Wは、テープ芯材110の幅)を満たす。これにより、テープ芯材110の幾何学的配置を乱すことなく、所望の配置でテープ芯材110が積層された多芯構造体130が得られる。
また、治具430の穴が、好ましくは、8°以上45°以下の範囲のリダクション角θを有する。この範囲とすることにより、溶融したはんだ410がスムーズに治具430を通過できる。リダクション角θは、好ましくは、8°以上15°以下の範囲である。これにより、上述のはんだ母材の占積率を満たす多芯構造体130が得られる。
ステップS330において、得られた多芯構造体130を上述の安定化材140で被覆するが、被覆の方法は特に制限はない。例示的には、被覆することは、メッキ法が採用されるが、電気メッキまたは無電解メッキによって行われる。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
実施例に先立って、銅を含有する層170(図1)の有用性に関する予備実験を行った。
[参考例1]
参考例1では、銅を含有する層とはんだ母材との反応性について調べた。
金属基板としてニッケル基合金のハステロイ(登録商標)(Hastelloy)上にプラズマレーザデポジション(PLD)法を用いてGdBaCu層、次いでAg保護膜を成膜し、幅4mmのテープ線材1を得た。同様にして、テープ線材1に銅を含有する層としてCu被膜を電気メッキした、テープ線材2を得た。なお、X線回折によりGdBaCu層の配向膜が得られたことを確認した。
テープ線材1
Ag保護膜(2μm)/GdBaCu層(2μm)/Hastelloy(0.075mm)
テープ線材2
Cu被膜(2μm)/Ag保護膜(2μm)/GdBaCu層(2μm)/Hastelloy(0.075mm)
テープ線材1および2を、それぞれ、はんだ母材として150℃に保持した溶融Sn-58wt%Bi浴に浸漬させ、30秒保持した後、引き上げた。それぞれのテープ線材を、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)付走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製)を用いて、観察し、元素マッピングを調べた。結果を図6および図7に示す。
図6は、Cu被膜を有しないテープ線材1をはんだ母材に浸漬させた場合のSEM像(A)およびEDX元素マッピング(B)を示す図である。
図7は、Cu被膜を有するテープ線材1をはんだ母材に浸漬させた場合のSEM像を示す図である。
図6ではグレースケールで示すが、図6(B)において、明るく示される部分が、図中に示す元素が存在していることを示す。図6によれば、Cu被覆を有しないテープ線材1は、Ag保護膜を有していても、わずか30秒の浸漬の間に、Agが溶出し、続いてGdBaCu層も溶出していることが分かる。
一方、図7に示すように、Cu被膜を有するテープ線材2では、Cu被膜が2μmという薄さにもかかわらず、はんだ母材による浸食を防止し、健全な界面が保たれることが分かった。
以上から、銅を含有する層は、はんだ母材と反応しないことが示された。
[参考例2]
参考例2では、はんだ母材によるテープ線材間の抵抗低減の効果について調べた。
金属基板としてニッケル基合金のハステロイ(登録商標)(Hastelloy)上にプラズマレーザデポジション(PLD)法を用いてGdBaCu層、次いでAg保護膜を成膜し、幅10mmのテープ線材を得た。これを、UVパルスレーザにより1mm幅で長手方向に切断し、銅を含有する層としてCu被膜を電気メッキし、テープ芯材を得た。
Cu被膜(3.5μm)/Ag保護膜(2μm)/GdBaCu層(2μm)/Hastelloy(0.070mm)
図8は、参考例2のテープ芯材間抵抗予備測定用の多芯線材の断面および測定回路を示す模式図である。
テープ芯材1~8を、外径2.5mmのコの字銅管810に図8(A)に示すように挿入した。テープ芯材1~8の両端に電流リード線と信号線とを取り付け、図8(B)に示す測定回路を構成し、テープ芯材間のすべての抵抗を四端子法により測定した。測定結果を図10(A)に示す。
次いで、図8(C)に示すように、テープ芯材1~8の間にはんだ母材820を充填した。はんだ母材には、Snの融点よりも低い融点を有するSn-58wt%Biを用いた。
図9は、参考例2のはんだ母材を充填したテープ芯材間抵抗予備測定用の多芯線材の断面および外観を示す図である。
図9(A)に示すように、はんだ母材を充填した後、テープ芯材間のすべての抵抗を、図9(B)に示すように四端子法により測定した。結果を図10(B)に示す。
図10は、はんだ母材が充填されていない場合のテープ芯材間の抵抗(A)およびはんだ母材が充填されている場合のテープ芯材間の抵抗(B)を示す図である。
図10において、抵抗率rは、単位表面積当たりの値として以下の式より算出した。
r(μΩ・cm)=R×S
ここで、Rは測定抵抗、Sはテープ芯材の表面積であった。
図10によれば、銅管内部をはんだ母材で充填することにより、劇的にテープ芯材間の抵抗率が低減することが分かった。抵抗の低減率は、2桁以上であった。
以上から、テープ芯材間のはんだ母材は、テープ芯材間の抵抗の低減に有効であることが示された。
[実施例1]
実施例1では、図3の方法により希土類系酸化物超伝導多芯線材を製造した。
金属基板としてニッケル基合金のハステロイ(登録商標)(Hastelloy)上にプラズマレーザデポジション(PLD)法を用いてGdBaCu層を成膜した。次いで、銅を含有する層として、GdBaCu層上、および、対向する金属基板表面上にCu被膜を電気メッキし、両面に銅層が付与されたテープ芯材を得た。これを、UVパルスレーザにより0.5mm幅で長手方向に切断し、表1に示すテープ芯材を得た。
テープ芯材4本を束ね、300℃に加熱され、溶融したはんだ浴(はんだ母材:Pb-60wt%Sn)に浸漬させた(図3のステップS310)。はんだ浴に、穴径が0.714mmであり、リダクション角が10°である穴のあいた治具(ダイス)を配置し、4本束ねたテープ芯材を治具に通し、多芯構造体を得た(図3のステップS320)。詳細には、テープ芯材4本は、図2(A)のパターンとなるよう束ねられ、治具を通し、先端を固定のためはんだ付けした後、引き抜いた。治具から引き抜かれると、直ちにはんだが冷却されて、固体化し、テープ芯材4本がばらけることなく、多芯構造体が得られた。
次いで、多芯構造体を安定化材として銅で被覆した(図3のステップS330)。詳細には、硫酸銅溶液を用い、長さ10cmに対して、通電電流値100mA、時間30分間の条件で電気メッキした。このようにして、本発明の希土類系酸化物超伝導多芯線材(実施例1の多芯線材)を得た。以上の製造条件を簡単のため、表2に示す。
実施例1の多芯線材の外観および断面の様子をSEMで観察した。断面SEM像を用い、画像解析によりテープ芯材の占積率(%)およびはんだ母材の占積率(%)を算出した。テープ芯材の占積率(%)は、多芯構造体の全断面積に対するテープ芯材の合計断面積をの比を求め、百分率で表した。はんだ母材の占積率(%)は、多芯構造体の全断面積に対するはんだ母材の合計断面積の比を求め、百分率で表した。多芯線材の異なる断面積について5か所測定し、平均値とした。
また、テープ芯材中の超伝導層の厚さをもとに超伝導層の占積率(%)を算出した。超伝導層の占積率(%)は、多芯構造体中のテープ芯材の占積率に、テープ芯材の厚さに対する超伝導層の厚さの比を掛け、百分率で表した。多芯線材の異なる断面積について5か所測定し、平均値とした。
また、断面SEM像を用い、画像解析により銅安定化材比を算出した。銅安定化材比は、多芯構造体の断面積に対する銅安定化材の断面積の比であった。ここでも、多芯線材の異なる断面積について5か所測定し、平均値とした。
さらに、実施例1の線材の1%曲げひずみが印加される曲げ直径を算出した。線材の曲げ直径がこの値以上であれば、線材は座屈することはなかった。また、77Kにおいて、歪みのない状態の臨界電流密度(Ic)に対して少なくとも50%以上のIcを維持できることがわかった。
以上の結果を図12および表3に示す。
実施例1の多芯線材の通電試験を行った。詳細には、多芯線材(長さ8cm)の両端1cmに電極を接続し、中心部に1cm間隔で電圧タップを取り付け、77Kにおける電流電圧(IV)特性を調べた。結果を図13に示す。
[実施例2]
実施例2では、図3の方法により希土類系酸化物超伝導多芯線材を製造した。治具の穴径が0.814mmであり、テープ芯材を図2(D)となるように束ねた以外は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
実施例2の多芯構造体の断面の様子をSEMで観察し、テープ芯材、はんだ母材、超伝導層の占積率(%)を算出した。結果を図11および表3に示す。
Figure 2022139398000002
Figure 2022139398000003
図11は、実施例2の多芯構造体の断面を示すSEM像である。
図12は、実施例1の多芯線材の外観および断面を示すSEM像である。
図11によれば、本発明の方法(図3のステップS310~S320)を実施することにより、両面に銅を含有する層が付与され、金属基板と金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材110がはんだ母材120を介して積層された多芯構造体130が得られることが分かった。はんだ母材120は、テープ芯材110間ならびに積層されたテープ芯材110の周りにも位置することを確認した。また、治具の穴径Rおよびテープ芯材の幅Wとに着目すると、表3に示すように、治具の穴径Rおよびテープ芯材の幅Wは、W×1.3≦R≦W×2を満たすことが望ましいことが示された。
図12に示すように、実施例1による多芯構造体も同様の断面であったが、実施例2に比べて、テープ芯材の配置の幾何学的な乱れはなかった。これは、治具の穴径(内径)の違いによるものであり、よりシンメトリックな断面形状の多芯線材を得るには、治具の穴径におけるテープ芯材の充填率を上げ、W×1.35≦R≦W×1.5を満たすことが望ましいことが示された。
図12によれば、本発明の方法(図3のステップS310~S330)を実施することにより、テープ芯材110がはんだ母材120を介して積層された多芯構造体130と、それを被覆する安定化材140とを備える多芯線材100が得られることが分かった。安定化材140(実施例1ではCu被覆)の厚さは、100μmであり、多芯線材100の線径は0.95mmであった。図12では、安定化材の表面は凹凸を有したが、電気メッキの条件を制御することにより、より平滑な表面が得られる。図示しないが、実施例2の多芯線材も同様の外観および断面であった。
Figure 2022139398000004
実施例1および実施例2によれば、多芯線材において、多芯構造体に対するテープ芯材の占積率は、50%以上95%以下の範囲を満たし、超伝導層の占積率は、0.5%以上20%以下の範囲を満たし、はんだ母材の占積率は、10%以上40%以下の範囲を満たし、安定化材比は、0.5以上1.5以下の範囲を満たすことが分かった。
特に、テープ芯材の占積率が80%以上90%以下の範囲を満たし、超伝導層の占積率が1%以上1.5%以下の範囲を満たし、はんだ母材の占積率が10%以上15%以下の範囲を満たし、安定化材比が0.8以上1.2以下の範囲を満たす、実施例1の多芯線材は、曲げ特性にも優れていた。
図13は、実施例1の多芯線材の通電試験結果を示す図である。
図13によれば、実施例1の多芯線材は、120A付近で常伝導状態へと遷移し、急激な電圧上昇を示した。実施例1で用いたテープ芯材1本の臨界電流値は27Aであるので、120Aは、テープ芯材4本分の合計臨界電流値に相当することが分かった。なお、通電電流55A~120Aの間でわずかながら抵抗成分が見られた。これは、電極から多芯線材中のテープ芯材への電流の乗り移りが悪いため、はんだ母材に流れた電流による抵抗成分を検出したためと考える。電極と多芯線材との接続部の長さを長くすることにより、抵抗成分を低減できる。図示しないが、実施例2の多芯線材も120A付近で常伝導状態となることを確認した。
本発明によれば、磁化の増大や交流損失の増大が抑制され、安定性に優れた希土類系酸化物超伝導多芯線材が提供されるので、(1GHz超)強磁場核磁気共鳴(NMR)装置、核融合炉、高エネルギー粒子加速器、核磁気共鳴画像法(MRI)、超電導電力貯蔵装置(SMES)等のマグネットに有利である。
100 希土類系酸化物超伝導多芯線材
110 テープ芯材
120 はんだ母材
130 多芯構造体
140 安定化材
150 金属基板
160 希土類系酸化物超伝導層
170 銅を含有する層
410 溶融したはんだ
420 ヒータ
430 治具

Claims (23)

  1. 両面に銅を含有する層が付与され、金属基板と前記金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材がはんだ母材を介して積層された多芯構造体と、
    前記多芯構造体を被覆する安定化材と
    を備える、希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  2. 前記希土類系酸化物超伝導層は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)および酸素(O)を含有する一般式REBaCuで表され、
    REは、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)からなる群から少なくとも1つ選択される元素であり、xは、0<x≦2を満たし、yは、6.2≦y≦7を満たす、請求項1に記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  3. 前記銅を含有する層は、銅金属、または、銅と、銀、亜鉛、および、ニッケルからなる群から選択される金属との銅合金である、請求項1または2に記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  4. 前記銅を含有する層は、1μm以上30μm以下の範囲の厚さを有する、請求項1~3のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  5. 前記はんだ母材は、スズ系合金または鉛系合金である、請求項1~4のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  6. 前記安定化材は、銅金属、銅合金、銀金属、および、銀合金からなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  7. 前記テープ芯材の幅は、0.2mm以上2mm以下の範囲である、請求項1~6のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  8. 前記テープ芯材の幅は、0.2mm以上1mm以下の範囲である、請求項7に記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  9. 前記希土類系酸化物超伝導多芯線材の線径は、0.4mm以上2mm以下の範囲である、請求項8に記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  10. 前記多芯構造体に対する前記テープ芯材の占積率は、50%以上95%以下の範囲である、請求項1~9のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  11. 前記多芯構造体に対する前記希土類系酸化物超伝導層の占積率は、0.5%以上20%以下の範囲である、請求項1~10のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  12. 前記多芯構造体に対する前記はんだ母材の占積率は、10%以上40%以下の範囲である、請求項1~11のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  13. 前記多芯構造体の断面積に対する前記安定化材の断面積の比は、0.5以上1.5以下の範囲である、請求項1~12のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  14. 前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が、前記多芯線材の中心に向くように、積層されている、請求項1~13のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  15. 前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が向き合って対をなすように、積層されている、請求項1~13のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  16. 前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が、前記多芯線材の中心から外側に向くように、積層されている、請求項1~13のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  17. 前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が同じ方向を向くように、積層されている、請求項1~13のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  18. 前記テープ芯材は、前記希土類系酸化物超伝導層が、前記多芯線材の中心軸を取り囲むように、積層されている、請求項1~13のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  19. 前記テープ芯材は、前記多芯線材の軸方向にわたってツイストされるように積層されている、請求項1~18のいずれかに記載の希土類系酸化物超伝導多芯線材。
  20. 両面に銅を含有する層が付与された、金属基板と前記金属基板上に位置する希土類系酸化物超伝導層とを備えたテープ芯材を複数束ね、溶融したはんだに浸漬させることと、
    前記複数束ねたテープ芯材を穴のあいた治具に通し、多芯構造体を得ることと、
    前記多芯構造体を安定化材で被覆することと
    を包含する、希土類系酸化物超伝導多芯線材を製造する方法。
  21. 前記穴の内径Rは、W×1.3≦R≦W×2(ここで、Wは、前記テープ芯材の幅である)を満たす、請求項20に記載の方法。
  22. 前記治具の前記穴は、8°以上45°以下の範囲のリダクション角を有する、請求項20または21に記載の方法。
  23. 前記被覆することは、電気メッキまたは無電解メッキによって行われる、請求項20~22のいずれかに記載の方法。
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