JP2022121333A - エクソソームの産生方法 - Google Patents

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Masahiko Hagiwara
美香 森本
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Abstract

【課題】細胞を用いて長期間に亘り継続して均一な品質のエクソソームを高収率で産生する方法、エクソソーム産生装置、キット、及びそれらの使用、並びにそれらを用いて生産されたエクソソームを提供することを目的とする。【解決手段】細胞を用いてエクソソームを産生する方法であって、細胞を細胞培養モジュールに適用する工程;及び前記細胞が適用された前記細胞培養モジュールを、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で振盪及び/又は攪拌しながら培養し、前記細胞によりエクソソームを産生する工程、を含み、ここで前記細胞培養モジュールが、ポリイミド多孔質膜と、2以上の培地流出入口を有し、前記ポリイミド多孔質膜が収容されたケーシングとを備えるものである、方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞を用いてエクソソームを産生する方法に関する。
エクソソームは細胞が細胞外に分泌する50~300nmの膜質小胞構造の一種で、エンドサイトーシスにより形成された多胞性エンドソームの内部にエンドソームの膜が陥没して形成されるため、表面に細胞膜由来表面タンパク質、内部に細胞質由来の核酸やタンパク質を含有している。近年、様々な細胞種において、タンパク質や核酸の構成が精妙にコントロールされたエンドソームが近傍又は遠隔の細胞間での情報伝達に関与することが報告されている(非特許文献1)。
エクソソームは、主に診断マーカー、薬物送達担体、及び生物医薬としての利用が図られている。癌細胞や疾患細胞はその病理的状態を反映するエクソソームを分泌するため、エクソソームの特徴をプロファイリングすることにより疾患の診断が可能となる(非特許文献2)。薬物を担持させたエクソソームを、そのエクソソームを受け取る細胞を標的とした薬物送達に利用することも出来る。薬物を担持する方法として、分泌されたエクソソームに薬物を結合又は取り込ませる手法や、細胞質内に薬物を含有する細胞に薬物を含んだエクソソームを分泌させる手法が有る(非特許文献3)。
エクソソーム自体が生理活性物質として機能し得ることも報告されている。培養神経幹細胞株から単離したエクソソームが、インビトロで線維芽細胞の移動、ヒト臍帯静脈内皮細胞の分岐及び神経突起の伸長を誘導することが示されている(特許文献1)。骨髄樹状細胞のエクソソームは免疫調節機能を有することが報告されており、マウスモデルにおいて感染症、アレルギー、自己免疫疾患等に対する治療効果が試験されている(非特許文献4及び5)。また、エクソソームを用いる臨床試験は、既に世界中で進行しており、各種雑誌やClinical Trial .gov 等に情報が公開されている。また、ヒト間葉系幹細胞移植等の再生医療を代替する手法としても、多方面から注目を集めている。
エクソソームが有する生理活性は、エクソソームの由来する細胞によってコントロールされた核酸やタンパク質の構成によって支持されると考えられている。特にエクソソームが含有するmiRNAと生理活性との関連性が注目されており、特許文献2には、心筋球(cardiosphere)又は心筋由来細胞(CDC)から単離されたエクソソームが、miR-146a、miR-210、miR-22及びmiR-24を含み、これらが損傷または罹患した心臓組織の治療効果があることが記載されている。また、特許文献3には、miR-34b、miR-132、miR-137、miR-193a及びmiR-203の少なくとも1以上のmiRNAを含むリポソームが口腔扁平上皮癌の抑制剤として作用することが記載されている。更に、非特許文献6にはmiR-26a及びmiR-26bが胃細胞癌の細胞遊走及び湿潤を阻害し、非特許文献7には、miR-23b、miR-27b及びmiR-24が前立腺癌細胞の細胞遊走及び湿潤を優位に阻害することが記載されている。
これらの有効性を示す研究や臨床試験が拡大的に進む一方で、エクソソームを量的質的に安定的に確保する方法論は未だに確立されていない。細胞培養とエクソソーム産生に関する課題に関して、培養する細胞及び産生されるエクソソームの量的及び質的側面から以下に纏めたい。エクソソームを薬物送達担体や生理活性物質として利用するためには、均一な品質のエクソソームを十分量生産する手法を確立する必要が有る。通常、エクソソームは、培養細胞が培養系中に分泌したエクソソームを超遠心で回収することによって取得される。特許文献4は、エクソソームを生産する方法を開示している。この方法は、プロスタグランジンEレセプター4(EP4)アンタゴニストを幹細胞に接触させることによりエクソソーム分泌を誘導することを特徴としている。良好な生理活性を有するエクソソームを高効率で生産するために構成された細胞培養系の例として、非特許文献8は、間葉系幹細胞の3D培養系とタンジェンシャルフロー濾過(TFF)を組み合わせた系を提示している。
上述のようにエクソソームを特徴付ける核酸やタンパク質、各種シグナル分子の構成は、エクソソームの由来する細胞によってコントロールされるため、細胞培養における誘導期、対数増殖期、静止期及び死滅期の各段階で産生されるエクソソームの品質は変化すると考えられる。しかしながら、エクソソームの工業的スケールでの生産を考える場合、エクソソームの特性が培養時間によって変化するのは品質管理上好ましくなく、一度確立した生産系で長期間に亘って均一な品質のエクソソームを産生できることが求められる。従来の培養細胞を用いたエクソソーム産生技術において、こうした細胞培養系の時間経過によるエクソソームの品質の変化の問題は十分に対処されておらず、品質の安定したエクソソームの供給や工業的スケールでのエクソソーム産生系の確立を阻害する技術的障壁となっている。エクソソームの量的かつ質的確保にむけては、細胞培養の培養段階での量的及び質的対応が必須であり、安定した品質のエクソソームを一つの細胞からできる限り大量にかつ、できる限り長期間に亘って、大量のスケールで産生させる事が必須不可欠となる。
細胞は生体内では一般に三次元的な構造をとった集団として存在する。一方で、細胞を人工環境において培養する場合は、細胞が培養容器底面に単層状に張り付く形で二次元的に培養される古典的な平面培養法や、液体培養液中に細胞を分散させた状態で培養する浮遊培養法が一般的に用いられる。平面培養法に用いられる細胞については、比較的接着性の高い細胞が適しているが、適した細胞を用いた場合でも、培養環境の違いにより、細胞の性質が大きく変化することがある。浮遊培養法についても、適した細胞と適さない細胞が存在する。
エクソソームのみならず、医療用途に用いられる生体内タンパク質等への需要が高まるにつれ、細胞培養を用いた生体内タンパク質等の大量産生が注目を集めている。大腸菌等の浮遊細胞については、大型培養槽で大量培養する技術が研究されてきた。大型培養槽を用いた浮遊細胞の大量培養では、多量の培養液と撹拌装置が必要になる。一方、付着細胞を用いて物質産生を行なう研究も、使用する細胞の研究の進展と相まって、多くの興味を集めつつある。付着細胞の場合、古典的な平面培養法では、細胞は二次元的にしか展開しないため、多くの培養面積が必要になる。生体内タンパク質等の大量産生のために、より立体的に大量の細胞を培養すべく、細胞培養担体とバイオリアクターの研究も数多く取り組まれている。
代表的な細胞培養用担体としては、細胞が付着育成出来る小粒子であるマイクロキャリアが広く研究対象となっている(特許文献5)。様々な種類のマイクロキャリアが研究・開発され、市販されているものも多い。ワクチンやタンパク質の製造にも多く用いられ、スケールアップにも耐えるシステムとして、広く方法論として採用されている。しかしながら、マイクロキャリア培養においては、マイクロキャリアが十分に攪拌・拡散され凝集しない必要がある為、細胞培養の量的な上限がある。その上、例えば物質産生を行なう場合、キャリアそのものを分離する為には細かな粒子を分別するフィルター等で分離させる必要があるなど、方法論的にも煩雑な作業が必要となる。更に、せん断力により細胞の剥離が起こり易い為、撹拌条件も極めて限定される事となり、例えば大腸菌で用いる様な強い流路での培養条件には全く適合しない。
エクソソームの大量産生にこれらの培養方法を当てはめた場合、特にヒト間葉系幹細胞等の初代細胞を用いるエクソソーム取得について考えれば、前述の“限られたエクソソーム産生量”の課題を克服する為には、(1)一つの細胞から分泌されるエクソソーム量を最大限に保つ事、(2)その細胞状態を安定的に維持する事、(3)維持された高効率で分泌されたエクソソームが品質を維持し得る事、(4)これら3つの条件を維持しながら大量細胞培養等のスケールアップに適合し得る事、等々が挙げられる。
幹細胞培養に関しては、更に重要な課題が含まれる。細胞老化に関する問題である。一般に知られる通り、再生医療で注目を集めるヒト間葉系幹細胞移植では、ヒト間葉系幹細胞を如何に老化・変性させずに大量に入手するかが臨床の現場での大きな問題となっている。ヒト間葉系幹細胞は、継代と共に老化が進み、増殖能や分化誘導能を失うという特長が知られており、大量の非変性・非老化細胞を入手し難い事が知られている。エクソソーム治療は、この細胞移植再生医療の代替療法として期待を集めているが、老化した間葉系幹細胞から分泌されるエクソソームは再生能力が失われている事が報告されている。これらを総合すると、細胞の特性維持を実現しながら最大限のエクソソームを長期に亘り安定的に産生させる事の重要性が明確に示される。
これらの重要な特性に関して、(1)に関しては、既に様々な研究や開発結果が特許及び非特許文献として報告されている。特許文献6及び7には、アジポネクチンやスフィンゴイド塩基やセラミドを、また、非特許文献9には、ノルエピネフリンやフォルスコリンといった低分子物質を添加する事でエクソソーム産生量が増大する効果が示されており、また、非特許文献10には、ナノ粒子添加による同様の効果が示されている。これらはもちろん、エクソソーム産生量増強に有効であるが、例えば、長期的に見た場合での生存率や効果検証後のエクソソーム特性の変化等に関しては検証されておらず、あくまで一過性の処方であり、前述(2)~(4)に示した細胞状態の維持や品質の安定性といった視点からはかけ離れた技術である。非特許文献11に示された弱超音波照射によるエクソソーム産生は、(1)の視点を満たす内容であり、非常に興味深く(2)及び(3)の特性も満たす可能性が高い。但し、特殊な機器を必要とする為、スケールアップには不向きであり、(4)を満たすとは考え難い。
上記(1)~(4)を満たし得る様な、新規なエクソソーム産生システムの構築の必要性が高まっている。
<ポリイミド多孔質膜>
細胞をポリイミド多孔質膜に適用して培養することを含む、細胞の培養方法が報告されている(特許文献8)。
ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称である。芳香族ポリイミドは、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された高分子を意味する。芳香族ポリイミドは芳香族と芳香族とがイミド結合を介して共役構造を持つため、剛直で強固な分子構造を持ち、且つ、イミド結合が強い分子間力を持つために非常に高いレベルの熱的、機械的、化学的性質を有する。
ポリイミド多孔質膜は、本出願前よりフィルター、低誘電率フィルム、燃料電池用電解質膜など、特に電池関係を中心とする用途のために利用されてきた。特許文献9~12は、特に、気体などの物質透過性に優れ、空孔率の高い、両表面の平滑性が優れ、相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず、膜厚み方向への圧縮応力に対する耐力に優れるマクロボイドを多数有するポリイミド多孔質膜を記載している。これらはいずれも、アミック酸を経由して作成されたポリイミド多孔質膜である。
国際公開第2013/150303号 特開2019-38840号公報 特開2009-171876号公報 特開2018-064550号公報 国際公開第2003/054174号 特開2019-156786号公報 特許第6618079号公報 国際公開第2015/012415号 国際公開第2010/038873号 特開2011-219585号公報 特開2011-219586号公報 国際公開第2018/021368号
J. of Extracellular Vesicles, 2015, 4, Article: 27066 AMA Oncology, 2016, 2, p882-889 Trends in Biotechnology, 2017, 7, p665-676 Transplantation 2003, 76: 1503-10 Am. J. Transplant. 2006, 6:1541-50 Int J Oncol. 2016 May;48(5):1837-46 Oncotarget. 2014; 5:7748-7759 Molecular Therapy vol. 26 No 12 2018 2838-2847 Cells. 2020 Mar; 9(3): 660. Journal of Nanobiotechnology vol. 18: 178 (2020) Communications Biology vol. 3: 553 (2020)
本発明は、運動条件下にある細胞を用いて長期間に亘り継続して均一な品質のエクソソームを高収率で産生する方法、エクソソーム産生装置、キット、及びそれらの使用、並びにそれらを用いて生産されたエクソソームを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究に努めた結果、ポリイミド多孔質膜がケーシングに収容されて構成されたモジュールを用いて、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で攪拌しながら培養する際、適正な運動を付与することによって、長期間に亘り、安定した産生量と品質を有するエクソソームの産生が可能となることを見出し、本発明に至った。
驚くべきことに、本発明の方法を用いることにより、培養細胞は、均一な品質のエクソソームを持続的に産生することが出来る。これは、一度確立した所望の性質を有するエクソソームの生産系を長期間利用し続けられる点、及び均一な品質を有するエクソソームを大量に調製し得る点で、生理活性物質として利用するエクソソームを工業的スケールで産生する上で極めて有利である。同時に、老化や変性を受けやすい各種初代細胞に於いても、その特性を維持した状態でエクソソーム産生が可能となる為、大規模でのエクソソーム使用に堪えうる方法論を提供し得る。
限定されるわけではないが、本発明は好ましくは以下の態様を含む。
[1]細胞を用いてエクソソームを産生する方法であって、
細胞を細胞培養モジュールに適用する工程;及び
前記細胞が適用された前記細胞培養モジュールを、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で振盪及び/又は攪拌しながら培養し、前記細胞によりエクソソームを産生する工程、
を含み、
ここで前記細胞培養モジュールが、
ポリイミド多孔質膜と、
2以上の培地流出入口を有し、前記ポリイミド多孔質膜が収容されたケーシングと
を備えるものであって、
ここで、前記ポリイミド多孔質膜が、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、前記表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であって、ここで前記表面層Aに存在する孔の平均孔径は、前記表面層Bに存在する孔の平均孔径よりも小さく、前記マクロボイド層は、前記表面層A及びBに結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層A及びBに囲まれた複数のマクロボイドとを有し、前記表面層A及びBにおける孔が前記マクロボイドに連通し、
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記ポリイミド多孔質膜が、集約されて、
(ii)前記ポリイミド多孔質膜が、折り畳まれて、
(iii)前記ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)前記ポリイミド多孔質膜が、縄状に結ばれて、
収容されている、細胞培養モジュールであって、
ここで前記ポリイミド多孔質膜は、流体によって継続的に波打つ動きを行わない状態で前記ケーシングに収容されているものである、
前記方法。
[2] 前記細胞培養容器が、フラスコ、培養ボトル、培養ディッシュ、培養バッグ、撹拌式リアクターからなる群から選択される培養容器である、項目1に記載の方法。
[3] 前記旋回運動が、旋回振盪シェーカーにより実施される、項目1又は2に記載の方法。
[4] 前記旋回運動が、40rpm~150rpmで行われる、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記旋回運動の直径が、0.5cm~10cmである、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記波動形揺動運動が、WAVEリアクターにより実施される、項目1~2のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記波動形揺動運動が、前記細胞培養容器の底面を4度~15度の範囲で、5rpm~25rpmで周期的に揺動させて生じさせる、項目6に記載の方法。
[8] 培養バッグ及び培養シェーカーを用いて、前記細胞培養モジュールを旋回運動及び波動形揺動運動させた状態で振盪する、項目1に記載の方法。
[9] 前記回転運動が、撹拌式リアクターにより実施される、項目1又は2に記載の方法。
[10] 前記回転運動が、10rpm~300rpmで行われる、項目9に記載の方法。
[11] 前記培地流出入口の径が、細胞の径よりも大きく、且つ、前記ポリイミド多孔質膜が流出する径よりも小さい、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
[12] 前記ケーシングがメッシュ状の構造を有する、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記ケーシングが非可撓性素材からなる、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
[14] 前記ポリイミド多孔質膜が、平均孔径0.01~100μmの複数の細孔を有する、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
[15] 前記表面層Aの平均孔径が、0.01~50μmである、項目1~14のいずれか1項に記載の方法。
[16] 前記表面層Bの平均孔径が、20~100μmである、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
[17] 前記ポリイミド多孔質膜の総膜厚が、5~500μmである、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
[18] 前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、項目1~17のいずれか1項に記載の方法。
[19] 前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理することにより得られる着色したポリイミド多孔質膜である、項目1~18のいずれか1項に記載の方法。
[20] 前記細胞を培養する工程が、インキュベータ内に設置した細胞培養装置中もしくは、ベンチトップリアクターの様な単独型細胞培養装置中で行われ、ここにおいて、前記細胞培養装置は、細胞を担持する前記細胞培養モジュールを収容する培養ユニットであって、培地供給口および培地排出口を備えた培養ユニット、培地供給ユニットであって、培地収納容器と、培地供給ラインと、培地供給ラインを介して培地を送液する送液ポンプとを備え、ここで培地供給ラインの第一の端部は培地収納容器内の培地に接触し、培地供給ラインの第二の端部は培養ユニットの培地供給口を介して培養ユニット内に連通している、培地供給ユニット、
を含む、項目1~19のいずれか1項に記載の方法。
[21] 前記細胞培養装置が、培地供給ライン、送液ポンプ、空気供給口、空気排出口及び酸素透過膜を有しない、項目20に記載の方法。
[22] 前記細胞が、多能性幹細胞、組織幹細胞、体細胞、生殖細胞、肉腫細胞、株化細胞及び形質転換細胞からなる群から選択される、項目1~21のいずれか1項に記載の方法。
[23] 前記細胞がヒト間葉系幹細胞、ヒト神経幹細胞、ヒト骨芽細胞、ヒト軟骨細胞、ヒト心筋細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト滑膜細胞、ヒト肝細胞及びそれらの疾患細胞からなる群から選択される、項目1~22のいずれか1項に記載の方法。
[24] 前記エクソソームを産生する工程が、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月若しくは6ヶ月又はそれ以上の期間に亘り継続される、項目1~23のいずれか1項に記載の方法。
[25] 前記細胞培養モジュールを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の方法に使用するためのエクソソーム産生装置。
[26] 前記細胞培養モジュールを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット。
[27] 前記細胞培養モジュールの、項目1~24のいずれか1項に記載の方法のための使用。
[28] 前記細胞培養モジュールを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の方法によって取得したエクソソーム。
ケーシングに収容され、モジュール化されたポリイミド多孔質膜を用いることで、懸濁された細胞を効率的に吸着し、従来の浮遊培養容器などを用いて、細胞を長期的に安定して培養することが可能となる。細胞が適切な条件下で長期間安定して連続的に大量培養出来ることにより、安定且つ効率的なエクソソーム生産系を構築することが出来る。
図1は、細胞培養モジュールの一実施態様を示す。ケーシング内にポリイミド多孔質膜が収容されている。 図2は、細胞培養モジュールの一実施態様を示す。ケーシング内にポリイミド多孔質膜が収容されている。 図3は、細胞培養モジュールの一実施態様を示す。図2のA-A断面を示している。 図4は、一実施形態における本発明の細胞培養モジュールを適用したWAVE型バイオリアクターを示す図である。 図5は、一実施形態における本発明の細胞培養モジュールを適用したエルレンマイヤーリアクターを示す図である。 図6は、ポリイミド多孔質膜を用いた細胞培養のモデル図を示す。 図7は、ヒト骨芽細胞を適用した細胞培養モジュールをエルレンマイヤーフラスコ又はローラーボトルにより攪拌培養した場合の、モジュール内の細胞密度を示す。 図8は、ヒト骨芽細胞を適用した細胞培養モジュールをエルレンマイヤーフラスコ又はローラーボトルにより攪拌培養した場合の、エクソソーム産生量の比較結果を示す。 図9は、ヒト皮膚線維芽細胞を適用した細胞培養モジュールをエルレンマイヤーフラスコ又はローラーボトルにより攪拌培養した場合の、モジュール内の細胞密度を示す。 図10は、ヒト皮膚線維芽細胞を適用した細胞培養モジュールをエルレンマイヤーフラスコ又はローラーボトルにより攪拌培養した場合の、エクソソーム産生量の比較結果を示す。
I.エクソソームを産生する方法
一実施態様において、本発明は、
細胞を用いてエクソソームを産生する方法であって、
細胞を細胞培養モジュールに適用する工程;及び
前記細胞が適用された前記細胞培養モジュールを、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動、又はそれらの運動を組み合わせた状態で振盪及び/又は攪拌しながら培養し、前記細胞によりエクソソームを産生する工程、
を含み、
ここで前記細胞培養モジュールが、
ポリイミド多孔質膜と、
2以上の培地流出入口を有し、前記ポリイミド多孔質膜が収容されたケーシングと
を備えるものであって、
ここで、前記ポリイミド多孔質膜が、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、前記表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であって、ここで前記表面層Aに存在する孔の平均孔径は、前記表面層Bに存在する孔の平均孔径よりも小さく、前記マクロボイド層は、前記表面層A及びBに結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層A及びBに囲まれた複数のマクロボイドとを有し、前記表面層A及びBにおける孔が前記マクロボイドに連通し、
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記ポリイミド多孔質膜が、集約されて、
(ii)前記ポリイミド多孔質膜が、折り畳まれて、
(iii)前記ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)前記ポリイミド多孔質膜が、縄状に結ばれて、
収容されている、細胞培養モジュールであって、
ここで前記ポリイミド多孔質膜は、流体によって継続的に波打つ動きを行わない状態で前記ケーシングに収容されているものである、
前記方法、に関する。
1.細胞
本発明の方法に利用し得る細胞の種類は、エクソソームを産生するものである限り、特に限定されない。エクソソームは様々な細胞において生産されることが知られており、それらが生産するエクソソームのプロフィールも、由来する細胞や産生時の条件によって異なる。従って、本発明において、所望の品質及び収率でエクソソームを産生することの出来る細胞が、個々の実施態様に基づいて適宜選択され得る。
一つの態様において、本発明において、培養細胞として多能性幹細胞が用いられる。多能性幹細胞とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞の総称することを意図する。限定されるわけではないが、多能性幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)等を含む。好ましくは、ES細胞又はiPS細胞である。iPS細胞は倫理的な問題もない等の理由により特に好ましい。多能性幹細胞としては公知の任意のものを使用可能であるが、例えば、国際公開WO2009/123349(PCT/JP2009/057041)に記載の多能性幹細胞を使用可能である。
一つの態様において、本発明において、培養細胞として組織幹細胞が用いられる。組織幹細胞とは、分化可能な細胞系列が特定の組織に限定されているが、多様な細胞種へ分化可能な能力(分化多能性)を有する幹細胞を意味する。例えば骨髄中の造血幹細胞は血球のもととなり、神経幹細胞は神経細胞へと分化する。このほかにも肝臓をつくる肝幹細胞、皮膚組織になる皮膚幹細胞などさまざまな種類がある。好ましくは、組織幹細胞は、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、又は造血幹細胞から選択される。
一つの態様において、本発明において、培養細胞として体細胞が用いられる。体細胞とは、多細胞生物を構成する細胞のうち生殖細胞以外の細胞のことを言う。有性生殖においては次世代へは受け継がれない。本発明において用いられる得る体細胞は、肝細胞、膵細胞、筋細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、膵細胞、腎細胞、肺細胞、心筋細胞、滑膜細胞又は、リンパ球、赤血球、白血球、単球、マクロファージ若しくは巨核球の血球細胞、又はこれらの疾患細胞から選択されるものであってもよく、例えば、ヒト骨芽細胞、ヒト軟骨細胞、ヒト心筋細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト滑膜細胞、ヒト肝細胞及びそれらの疾患細胞からなる群から選択されるものであってもよい。
一つの態様において、本発明において、培養細胞として生殖細胞が用いられる。生殖細胞は、生殖において遺伝情報を次世代へ伝える役割を持つ細胞を意味する。例えば、有性生殖のための配偶子、即ち卵子、卵細胞、***、精細胞、無性生殖のための 胞子などを含む。
細胞は、肉腫細胞、株化細胞及び形質転換細胞からなる群から選択してもよい。「肉腫」とは、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血液等の非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生する癌で、軟部肉腫、悪性骨腫瘍などを含む。肉腫細胞は、肉腫に由来する細胞である。「株化細胞」とは、長期間にわたって体外で維持され、一定の安定した性質をもつに至り、半永久的な継代培養が可能になった培養細胞を意味する。PC12細胞(ラット副腎髄質由来)、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)、HEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来)、HL-60細胞(ヒト白血球細胞由来)、HeLa細胞(ヒト子宮頸癌由来)、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮細胞由来)、MDCK細胞(イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来)、HepG2細胞(ヒト肝癌由来)などヒトを含む様々な生物種の様々な組織に由来する細胞株が存在する。「形質転換細胞」は、細胞外部から核酸(DNA等)を導入し、遺伝的性質を変化させた細胞を意味する。
エクソソームは幹細胞や癌細胞などの未分化な細胞において活発に産生されることが知られており、有利な場合、本発明の方法において培養細胞は、幹細胞、例えば間葉系幹細胞又は神経幹細胞であってもよく、ヒト間葉系幹細胞又はヒト神経幹細胞が用いられてもよい。
2.エクソソーム
エクソソームは、本発明において、細胞が細胞外に分泌する50~300nmの膜質小胞構造を意味する。エクソソームが由来する細胞の種類や産生時の条件がエクソソームの品質に影響するため、本発明の方法において、所望の品質及び収率でエクソソームを産生することの出来る条件が適宜選択され得る。有利な場合、薬物送達担体や生理活性物質としての使用等、取得されたエクソソームがその用途に適う品質を備えているか否かが評価される。
3.細胞培養モジュール
本発明の方法に用いる細胞培養モジュールは、
ポリイミド多孔質膜と、
2以上の培地流出入口を有し、前記ポリイミド多孔質膜が収容されたケーシングと
を備えるものであって、
ここで、前記ポリイミド多孔質膜が、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、前記表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であって、ここで前記表面層Aに存在する孔の平均孔径は、前記表面層Bに存在する孔の平均孔径よりも小さく、前記マクロボイド層は、前記表面層A及びBに結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層A及びBに囲まれた複数のマクロボイドとを有し、前記表面層A及びBにおける孔が前記マクロボイドに連通し、
ここで、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記ポリイミド多孔質膜が、集約されて、
(ii)前記ポリイミド多孔質膜が、折り畳まれて、
(iii)前記ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)前記ポリイミド多孔質膜が、縄状に結ばれて、
収容されている、細胞培養モジュールであって、
ここで前記ポリイミド多孔質膜は、流体によって継続的に波打つ動きを行わない状態で前記ケーシングに収容されている。該細胞培養モジュールを、以下で、「本発明の細胞培養モジュール」とも呼ぶ。なお、本明細書において、「細胞培養モジュール」との記載は、単に「モジュール」と記載することができ、相互に変更しても同一のことを意味する。
本明細書において、「細胞培養モジュール」とは、細胞培養容器、細胞培養装置及び細胞培養システム、特に浮遊培養に用いられる細胞培養容器、細胞培養装置及び細胞培養システムに適用可能な、細胞培養基材をいう。細胞培養モジュールのいくつかの実施態様を、図1~3に示す。国際公開WO2018/021368に記載の細胞培養モジュールも本発明に適用し得る。本発明の細胞培養モジュールは、一例として図4のようなWAVEリアクターを用いる実施態様によって使用することができる。また、図5で示すように、後述する実施例に示すエルレンマイヤーリアクターを用いる態様によっても使用することができる。
本発明の細胞培養モジュールは、ポリイミド多孔質膜がケーシングに収容されていることによって、膜状のポリイミド多孔質膜がケーシング内で、継続的に形態が変形することが防止される。これによって、ポリイミド多孔質膜内で生育される細胞にストレスが加えられることが防止され、アポトーシス等が抑制されて安定的且つ大量の細胞を培養することが可能となる。また、本発明において用いられ得る細胞培養モジュールは、浮遊培養においてせん断応力が強度に負荷される旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、又はそれらの運動を組み合わせた状態で培養することにより、細胞培養モジュールに適用された細胞から、安定的且つ大量のエクソソームを産生させ得ることができる。
本発明の細胞培養モジュールが備えるケーシングは、2以上の培地流出入口を有することで、細胞培地がケーシングの内部へ供給及び外部へ排出される。該ケーシングの培地流出入口の径は、ケーシングの内部へ細胞が流入可能であるように、前記細胞の径よりも大きいことが好ましい。また、培地流出入口の径が、該培地流出入口よりポリイミド多孔質膜が流出する径よりも小さいことが好ましい。ポリイミド多孔質膜が流出する径よりも小さい径は、ケーシングに収容されたポリイミド多孔質膜の形状、大きさによって適宜選択可能である。例えば、ポリイミド多孔質膜がひも状である場合、該ポリイミド多孔質膜の短辺の幅より小さく、該ポリイミド多孔質膜が流出しない適度の径であれば特に限定されない。該培地流出入口の数は、細胞培地がケーシング内外へ供給及び/又は排出されやすいように、出来るだけ多く設けられていることが好ましい。好ましくは、5以上、好ましくは10以上、好ましくは20以上、好ましくは50以上、好ましくは100以上である。培地流出入口は、ケーシングの一部又は全部が、メッシュ状の構造を有していてもよい。また、該ケーシング自体がメッシュ状であってもよい。本発明において、メッシュ形状の構造とは、例えば、縦、横、及び/又は斜めの格子状の構造を有するものであって、各目開きが、流体が通過出来る程度に培地流出入口を形成するものであるが、これに限定されない。
本発明の細胞培養モジュールが備えるケーシングは、通常の培養条件、例えば、攪拌培養、振とう培養条件における培地の動きによって変形しない程度に強度を有することが好ましく、非可撓性素材から形成されていることが好ましい。また、ケーシングは、細胞培養において、細胞の生育に影響を与えない素材によって形成されていることが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリマー、ステンレス綱、チタンなどの金属が挙げられるが、これに限定されない。ケーシングにある程度強度があることにより、ケーシング内部のポリイミド多孔質膜の形状が継続的に変形することが防止され、本発明の効果がより発揮される。本明細書において、「ケーシングが変形しない」とは、通常の培養環境下で受ける負荷において変形しないことを意味するものであり、絶対的に変形しないことを意味するものではない。
本発明の細胞培養モジュールは、前記ケーシング内に
(i)2以上の独立した前記ポリイミド多孔質膜が、集約されて、
(ii)前記ポリイミド多孔質膜が、折り畳まれて、
(iii)前記ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
(iv)前記ポリイミド多孔質膜が、縄状に結ばれて、
収容されている。
本明細書において、「ケーシング内に2以上の独立した該ポリイミド多孔質膜が集約されて収容されている」とは、互いに独立した2以上のポリマー多孔性膜が、ケーシングで囲まれた一定空間内に集約されて収容されている状態を指す。本発明において、2以上の独立した該ポリイミド多孔質膜は、該ポリイミド多孔質膜の少なくとも1カ所と該ケーシング内の少なくとも1カ所とを任意の方法によって固定され、該ポリイミド多孔質膜がケーシング内で動かない状態に固定されたものであってもよい。また、2以上の独立したポリイミド多孔質膜は、小片であってもよい。小片の形状は、例えば、円、楕円形、四角、三角、多角形、ひも状など、任意の形をとりうるが、好ましくは、略正方形が好ましい。本発明において、小片の大きさは、任意の大きさをとりうるが、略正方形である場合、長さは任意の長さでよいが、例えば、80mm以下がよく、好ましくは50mm以下がよく、より好ましくは30mm以下がよく、さらにより好ましくは20mm以下がよく、10mm以下であってもよい。また、ポリマー多孔性膜の小片が略正方形である場合、その一辺の長さは、ポリイミド多孔質膜がケーシング内で動かない状態となるように、ケーシングの内壁に沿って、又は内壁の一辺の長さより短く(例えば、0.1mm~1mm程度短い)形成されたものであってもよい。これによって、ポリイミド多孔質膜内で生育される細胞にストレスが加えられることが防止され、アポトーシス等が抑制されて安定的且つ大量の細胞を培養することが可能となる。なお、ひも状のポリイミド多孔質膜の場合、後述するように、(ii)前記ポリイミド多孔質膜が、折り畳まれて、(iii)前記ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、(iv)前記ポリイミド多孔質膜が、縄状に結ばれて、該ケーシングに収容されてもよい。また、ケーシング内に2以上の独立したポリイミド多孔質膜を集約して収容するために、任意の枚数のポリイミド多孔質膜を積層させてもよい。この場合、ポリイミド多孔質膜とポリイミド多孔質膜の間には中敷が設けられてもよい。中敷が設けられることにより、積層されたポリイミド多孔質膜の間に効率的に培地を供給させることができる。中敷は、積層されたポリイミド多孔質膜の間に任意の空間を形成し、効率的に培地を供給させる機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、メッシュ構造を有する平面構造体を用いることができる。中敷の材質は、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ステンレス鋼製のメッシュを用いることができるが、これに限定されない。メッシュ構造を有する中敷を有する場合、積層されたポリイミド多孔質膜の間に培地を供給できる程度の目開きを有していればよく、適宜選択することができる。
本明細書において、「折り畳まれたポリイミド多孔質膜」とは、該ケーシング内にて折り畳まれていることで、ポリイミド多孔質膜の各面及び/又はケーシング内の表面との摩擦力によってケーシング内で動かない状態となったポリイミド多孔質膜である。本明細書において、「折り畳まれた」とは、ポリマー多孔膜に折り目がついた状態であってもよく、折り目がついていない状態であってもよい。
本明細書において、「ロール状に巻き込まれたポリイミド多孔質膜」とは、ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、ポリイミド多孔質膜の各面及び/又はケーシング内の表面との摩擦力によってケーシング内で動かない状態となったポリイミド多孔質膜をいう。また、本発明おいて、縄状に編み込まれたポリイミド多孔質膜とは、例えば短冊状の複数のポリイミド多孔質膜を、任意の方法によって縄状に編み込み、ポリイミド多孔質膜同士の摩擦力によって互いに動かない状態のポリイミド多孔質膜をいう。(i)2以上の独立した前記ポリイミド多孔質膜が集約されたポリイミド多孔質膜、(ii)折り畳まれたポリイミド多孔質膜、(iii)ロール状に巻き込まれたポリイミド多孔質膜、及び(iv)縄状に結ばれたポリイミド多孔質膜、が、組み合わせられてケーシング内に収容されていてもよい。
本明細書において、「該ポリイミド多孔質膜がケーシング内で動かない状態」とは、該細胞培養モジュールを細胞培養培地中で培養する場合に、該ポリイミド多孔質膜が継続的に形態変化しない状態になるようにケーシング内に収容されている状態をいう。換言すれば、該ポリイミド多孔質膜自体が、流体によって、継続的に波打つ動きを行わないように抑制された状態である。ポリイミド多孔質膜がケーシング内で動かない状態を保つため、ポリイミド多孔質膜内で生育されている細胞にストレスが加えられることが防止され、アポトーシス等による細胞が死滅されることなく安定的に細胞が培養可能となる。
本発明において用いられ得る細胞培養モジュールは、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、又はそれらの運動を組み合わせた状態で攪拌可能な培養容器、培養装置及びシステム等であれば、市販のものを適用することが可能である。例えば、培養容器が可撓性のバッグからなる培養装置にも適用可能であり、当該培養容器内に浮遊させた状態で使用することが可能である。また、本発明の細胞培養モジュールは、例えば、スピナーフラスコ等の撹拌式リアクターに適用し、培養することが可能である。その他、培養容器としては、開放容器にも適用可能であり、閉鎖容器にも適用可能である。例えば、細胞培養用のシャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。一方で、ローラーボトルなどの縦型回転運動を伴うローラー培養装置は、本発明において用いない方がよい。
4.細胞培養装置への細胞培養モジュールの適用
本明細書において、「細胞培養装置」とは、一般に、細胞培養システム、バイオリアクター、又はリアクターと同義に扱われる用語であって、相互に入れ替えても同一の意味を有する。
5.ポリイミド多孔質膜
本発明で使用されるポリイミド多孔質膜中の表面層A(以下で、「A面」又は「メッシュ面」とも呼ぶ)に存在する孔の平均孔径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上200μm未満、0.01~150μm、0.01~100μm、0.01~50μm、0.01μm~40μm、0.01μm~30μm、0.01μm~20μm、又は0.01μm~15μmであり、好ましくは、0.01μm~15μmである。
本発明で使用されるポリイミド多孔質膜中の表面層B(以下で、「B面」又は「大穴面」とも呼ぶ)に存在する孔の平均孔径は、表面層Aに存在する孔の平均孔径よりも大きい限り特に限定されないが、例えば、5μm超200μm以下、20μm~100μm、30μm~100μm、40μm~100μm、50μm~100μm、又は60μm~100μmであり、好ましくは、20μm~100μmである。
ポリイミド多孔質膜表面の平均孔径は、多孔質膜表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めることができる。
Figure 2022121333000001
(式中、Saは孔面積の平均値を意味する。)
表面層A及びBの厚さは、特に限定されないが、例えば0.01~50μmであり、好ましくは0.01~20μmである。
ポリイミド多孔質膜におけるマクロボイド層中のマクロボイドの膜平面方向の平均孔径は、特に限定されないが、例えば10~500μmであり、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは10~80μmである。また、当該マクロボイド層中の隔壁の厚さは、特に限定されないが、例えば0.01~50μmであり、好ましくは、0.01~20μmである。一の実施形態において、当該マクロボイド層中の少なくとも1つの隔壁は、隣接するマクロボイド同士を連通する、平均孔径0.01~100μmの、好ましくは0.01~50μmの、1つ又は複数の孔を有する。別の実施形態において、当該マクロボイド層中の隔壁は孔を有さない。
本発明で使用されるポリイミド多孔質膜表面の総膜厚は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上、20μm以上又は25μm以上であってもよく、500μm以下、300μm以下、100μm以下、75μm以下又は50μm以下であってもよい。好ましくは、5~500μmであり、より好ましくは25~75μmである。
本発明で使用されるポリイミド多孔質膜の膜厚の測定は、接触式の厚み計で行うことができる。
本発明で使用されるポリイミド多孔質膜の空孔率は特に限定されないが、例えば、40%以上95%未満である。
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜の空孔率は、所定の大きさに切り取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から下式(2)に従って求めることができる。
Figure 2022121333000002
(式中、Sは多孔質フィルムの面積、dは総膜厚、wは測定した質量、Dはポリマーの密度をそれぞれ意味する。ポリマーがポリイミドである場合は、密度は1.34g/cm3とする。)
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜は、好ましくは、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、前記表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であって、ここで前記表面層Aに存在する孔の平均孔径は0.01μm~15μmであり、前記表面層Bに存在する孔の平均孔径は20μm~100μmであり、前記マクロボイド層は、前記表面層A及びBに結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層A及びBに囲まれた複数のマクロボイドとを有し、前記マクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層A及びBの厚さは0.01~20μmであり、前記表面層A及びBにおける孔がマクロボイドに連通しており、総膜厚が5~500μmであり、空孔率が40%以上95%未満である、ポリイミド多孔質膜である。一の実施形態において、マクロボイド層中の少なくとも1つの隔壁は、隣接するマクロボイド同士を連通する、平均孔径0.01~100μmの、好ましくは0.01~50μmの、1つ又は複数の孔を有する。別の実施形態において、隔壁は、そのような孔を有さない。
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜は、滅菌されていることが好ましい。滅菌処理としては、特に限定されないが、乾熱滅菌、蒸気滅菌、エタノール等消毒剤による滅菌、紫外線やガンマ線等の電磁波滅菌等任意の滅菌処理などが挙げられる。
本発明で使用されるポリイミド多孔質膜は、上記した構造的特徴を備える限り、特に限定されないが、好ましくはポリイミド多孔質膜、又はポリエーテルスルホン(PES)多孔質膜である。
ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称であり、通常は、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドを意味する。芳香族ポリイミドは芳香族と芳香族とがイミド結合を介して共役構造を持つため、剛直で強固な分子構造を持ち、且つ、イミド結合が強い分子間力を持つために非常に高いレベルの熱的、機械的、化学的性質を有する。
本発明で使用され得るポリイミド多孔質膜は、好ましくは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを(主たる成分として)含むポリイミド多孔質膜であり、より好ましくはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドからなるポリイミド多孔質膜である。「主たる成分として含む」とは、ポリイミド多孔質膜の構成成分として、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミド以外の成分は、本質的に含まない、あるいは含まれていてもよいが、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドの性質に影響を与えない付加的な成分であることを意味する。
一実施形態において、本発明で使用され得るポリイミド多孔質膜は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理することにより得られる着色したポリイミド多孔質膜も含まれる。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを重合して得られる。ポリアミック酸は、熱イミド化又は化学イミド化することにより閉環してポリイミドとすることができるポリイミド前駆体である。
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。すなわち、ポリアミック酸は、部分的に熱イミド化又は化学イミド化されていてもよい。
ポリアミック酸を熱イミド化する場合は、必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等をポリアミック酸溶液に添加することができる。また、ポリアミック酸を化学イミド化する場合は、必要に応じて、化学イミド化剤、脱水剤、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等をポリアミック酸溶液に添加することができる。ポリアミック酸溶液に前記成分を配合しても、着色前駆体が析出しない条件で行うことが好ましい。
本明細書において、「着色前駆体」とは、250℃以上の熱処理により一部または全部が炭化して着色化物を生成する前駆体を意味する。
上記ポリイミド多孔質膜の製造において使用され得る着色前駆体としては、ポリアミック酸溶液又はポリイミド溶液に均一に溶解または分散し、250℃以上、好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理、好ましくは空気等の酸素存在下での250℃以上、好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理により熱分解し、炭化して着色化物を生成するものが好ましく、黒色系の着色化物を生成するものがより好ましく、炭素系着色前駆体がより好ましい。
着色前駆体は、加熱していくと一見炭素化物に見えるものになるが、組織的には炭素以外の異元素を含み、層構造、芳香族架橋構造、四面体炭素を含む無秩序構造のものを含む。
炭素系着色前駆体は特に制限されず、例えば、石油タール、石油ピッチ、石炭タール、石炭ピッチ等のタール又はピッチ、コークス、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体、フェロセン化合物(フェロセン及びフェロセン誘導体)等が挙げられる。これらの中では、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体及び/又はフェロセン化合物が好ましく、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体としてはポリアクリルニトリルが好ましい。
また、別の実施形態において、本発明で使用され得るポリイミド多孔質膜は、上記の着色前駆体を使用せずに、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液を成形した後、熱処理することにより得られる、ポリイミド多孔質膜も含まれる。
着色前駆体を使用せずに製造されるポリイミド多孔質膜は、例えば、極限粘度数が1.0~3.0であるポリアミック酸3~60質量%と有機極性溶媒40~97質量%とからなるポリアミック酸溶液をフィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製し、その後当該ポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化することにより製造されてもよい。この方法において、水を必須成分とする凝固溶媒が、水であるか、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液であってもよい。また、上記イミド化の後、得られた多孔質ポリイミド膜の少なくとも片面にプラズマ処理を施してもよい。
上記ポリイミド多孔質膜の製造において使用され得るテトラカルボン酸二無水物は、任意のテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
上記ポリイミド多孔質膜の製造において使用され得るジアミンは、任意のジアミンを用いることができる。ジアミンの具体例として、以下のものを挙げることができる。
1)1,4-ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン;
2)4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン;
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン;
4)3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
本発明で使用され得るポリイミド多孔質膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを組み合わせて得られるポリイミドから形成されていることが好ましい。
本発明で使用され得るポリイミド多孔質膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、以下の芳香族ポリイミドからなるポリイミド多孔質膜であることが好ましい。
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜は、好ましくは、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、前記表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であって、ここで前記表面層Aに存在する孔の平均孔径は0.01μm~15μmであり、前記表面層Bに存在する孔の平均孔径は20μm~100μmであり、前記マクロボイド層は、前記表面層A及びBに結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層A及びBに囲まれた複数のマクロボイドとを有し、前記マクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層A及びBの厚さは0.01~20μmであり、前記表面層A及びBにおける孔がマクロボイドに連通しており、総膜厚が5~500μmであり、空孔率が40%以上95%未満である、ポリイミド多孔質膜である。ここで、マクロボイド層中の少なくとも1つの隔壁は、隣接するマクロボイド同士を連通する、平均孔径0.01~100μmの、好ましくは0.01~50μmの、1つ又は複数の孔を有する。
例えば、国際公開第2010/038873号、特開2011-219585号公報、又は特開2011-219586号公報に記載されているポリイミド多孔質膜も、本発明に使用可能である。
6.細胞培養モジュールへの細胞の適用
細胞の細胞培養モジュールへの適用の具体的な工程は特に限定されない。本明細書に記載の工程、あるいは、細胞を膜状の担体に適用するのに適した任意の手法を採用することが可能である。限定されるわけではないが、本発明の方法において、細胞の細胞培養モジュールへの適用は、例えば、以下のような態様を含むものであってもよい。
(1)懸濁された細胞を含む第1培地を、細胞培養モジュールに適用する工程、
(2)前記細胞培養モジュールを細胞培養可能な温度に維持し、前記細胞培養モジュール中のポリイミド多孔質膜に前記細胞を吸着させる工程、及び、
(3)前記細胞を吸着させた前記細胞培養モジュールを、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で振盪及び/又は攪拌しながら第2培地にて培養する工程、
を含む。
細胞培養モジュールを用いた細胞培養のモデル図を図6に示す。図6は理解を助けるための図であり、各要素は実寸ではない。本発明の細胞の培養方法では、細胞培養モジュールに細胞を適用し、培養することにより、ポリイミド多孔質膜の有する内部の多面的な連結多孔部分や表面に、大量の細胞が生育するため、大量の細胞を簡便に培養することが可能となる。また、本発明の細胞の培養方法では、細胞培養に用いる培地の量を従来の方法よりも大幅に減らしつつ、大量の細胞を培養することが可能となる。例えば、ポリイミド多孔質膜の一部分又は全体が、細胞培養培地の液相と接触していない状態であっても、大量の細胞を長期にわたって培養することができる。また、細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和に対して、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積を著しく減らすことも可能となる。
本明細書において、細胞を含まないポリイミド多孔質膜がその内部間隙の体積も含めて空間中に占める体積を「見かけ上ポリイミド多孔質膜体積」と呼称する(図6参照)。そして、ポリイミド多孔質膜に細胞を適用し、ポリイミド多孔質膜の表面及び内部に細胞が担持された状態において、ポリイミド多孔質膜、細胞、及びポリイミド多孔質膜内部に浸潤した培地が全体として空間中に占める体積を「細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積」と呼称する(図6参照)。膜厚25μmのポリイミド多孔質膜の場合、細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積は、見かけ上ポリイミド多孔質膜体積より、最大で50%程度大きな値となる。本発明の方法では、1つの細胞培養容器中に複数のポリイミド多孔質膜を収容して培養することができるが、その場合、細胞を担持した複数のポリイミド多孔質膜のそれぞれについての細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和を、単に「細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和」と記載することがある。
前記細胞培養モジュールを用いることにより、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和の10000倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することが可能となる。また、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和の1000倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することができる。さらに、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和の100倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することができる。そして、細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地の総体積が、細胞生存域を含むポリイミド多孔質膜体積の総和の10倍又はそれより少ない条件でも、細胞を長期にわたって良好に培養することができる。
つまり、本発明によれば、細胞培養する空間(容器)を従来の二次元培養を行う細胞培養装置に比べて極限まで小型化可能となる。また、培養する細胞の数を増やしたい場合は、積層するポリイミド多孔質膜の枚数を増やす等の簡便な操作により、柔軟に細胞培養する体積を増やすことが可能となる。本発明に用いられるポリイミド多孔質膜を備えた細胞培養装置であれば、細胞を培養する空間(容器)と細胞培養培地を貯蔵する空間(容器)とを分離することが可能となり、培養する細胞数に応じて、必要となる量の細胞培養培地を準備することが可能となる。細胞培養培地を貯蔵する空間(容器)は、目的に応じて大型化又は小型化してもよく、あるいは取り替え可能な容器であってもよく、特に限定されない。
本発明の方法において、例えば、ポリイミド多孔質膜を用いた培養後に細胞培養容器中に含まれる細胞の数が、細胞がすべて細胞培養容器中に含まれる細胞培養培地に均一に分散しているものとして、培地1ミリリットルあたり1.0×105個以上、1.0×106個以上、2.0×106個以上、5.0×106個以上、1.0×107個以上、2.0×107個以上、5.0×107個以上、1.0×108個以上、2.0×108個以上、5.0×108個以上、1.0×109個以上、2.0×109個以上、または5.0×109個以上となるまで培養され得る。
本明細書において、「培地」とは、細胞、特に動物細胞を培養するための細胞培養培地のことを指す。培地は、細胞培養液と同義の意味として用いられる。そのため、本発明において用いられる培地とは、液体培地のことを指す。培地の種類は、通常使用される培地を使用することが可能であり、培養する細胞の種類によって適宜決定される。
本発明の細胞の培養において、該工程(1)で用いられる第1培地は、細胞を培養できる培地であれば特に限定されないが、例えば、CHO細胞を培養する場合であれば、Irvine Scientific社製BalanCD(商標) CHO GROWTH Aを用いることができる。
本発明の細胞の培養において、該工程(2)の細胞培養可能な温度とは、細胞がポリイミド多孔質膜に吸着可能な温度であればよく、10℃~45℃、好ましくは、15℃~42℃、より好ましくは20℃~40℃、さらに好ましくは25℃~39℃である。また、本発明の細胞の培養方法において、該工程(2)の細胞を吸着させる時間は、例えば、5分~24時間、好ましくは10分~12時間、より好ましくは15分~500分である。
本発明の細胞の培養において、該工程(2)は、振とう及び/又は攪拌しながら、該細胞培養モジュールの該ポリイミド多孔質膜へ細胞を吸着させてもよく、静置して該細胞培養モジュールの該ポリイミド多孔質膜へ細胞を吸着させてもよい。振とうする方法は特に限定されないが、例えば、市販の振とう装置上に、本発明の細胞培養モジュールと細胞とを含む培養容器を載置し、振とうしてもよい。振とうは、継続的又は断続的に行ってもよく、例えば、振とうと静置を交互に繰り返してもよく、適宜調整すればよい。攪拌する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の細胞培養モジュールと細胞とを市販のスピナーフラスコ内に入れ、スターラーを回転させることで攪拌してもよい。攪拌は、継続的又は断続的に行ってもよく、例えば、攪拌と静置を交互に繰り返してもよく、適宜調整すればよい。
本発明の細胞の培養において、該工程(3)で用いられる第2培地は、接着細胞の培養に用いられる培地が選択され、例えば、D-MEM、E-MEM、IMDM、Ham’s F-12などを用いることができるが、これに限定されない。第2培地は、細胞が基材へ接着するのを阻害する成分、例えば、界面活性剤が含まれない培地が好ましい。使用される第2培地は、細胞の種類によって適宜選択される。該工程(3)において、第2培地で培養することで、該工程(2)でポリイミド多孔質膜に吸着された細胞が、該ポリマー多孔性膜内に接着することを促進する。これによって、細胞が該ポリイミド多孔質膜から脱落することなく安定的に培養可能である。また、本発明の細胞の培養方法は、前述のポリイミド多孔質膜を備えた細胞培養モジュールを使用する。本発明の細胞の培養方法で用いられる細胞培養モジュールは、ポリイミド多孔質膜がケーシングに収容されていることによって、膜状のポリイミド多孔質膜がケーシング内で継続的に形態が変形することが防止されている。これによって、ポリイミド多孔質膜内で生育される細胞にストレスが加えられることが防止され、アポトーシス等が抑制されて安定的且つ大量の細胞を培養することが可能となる。
本発明の細胞の培養において、該工程(3)は、細胞を培養する培養容器、培養装置及びシステム等であれば、市販のものを適用することが可能である。例えば、培養容器が可撓性バッグ型培養容器であってもよく、また、撹拌式リアクター、例えばスピナーフラスコ等の培養容器で培養することも可能である。その他、培養容器としては、開放容器にも適用可能であり、閉鎖容器にも適用可能である。例えば、細胞培養用のシャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。また、本発明の細胞の培養方法において、細胞培養モジュールを用いることにより、生来浮遊培養が可能でなかった細胞についても浮遊培養向け装置にて、浮遊培養類似状態での培養を行うことが可能となる。浮遊培養用の装置としては、例えば、コーニング社製のスピナーフラスコ等の撹拌式リアクターが使用可能である。また、該工程(3)は、本明細書に記載の細胞培養装置で実施してもよい。
本発明の細胞の培養において、該工程(3)は、該細胞培養モジュールを含む培養容器に連続的に培地を添加し回収するような連続循環型の装置を用いて実行することも可能である。
本発明の細胞の培養において、該工程(3)は、該細胞培養モジュールを含む培養容器の外に設置された細胞培養培地供給手段から連続的又は間歇的に細胞培養培地が細胞培養容器中に供給される系であってもよい。その際、細胞培養培地が細胞培養培地供給手段と細胞培養容器との間を循環する系とすることができる。
7.細胞の培養・エクソソーム産生システム及び培養条件
本発明の方法において、細胞培養モジュールを浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で攪拌可能な培養容器、培養装置及びシステム等であれば、市販のものを適用することが可能である。例えば、培養容器が可撓性バッグ型培養容器であってもよく、また、撹拌式リアクター、例えばスピナーフラスコ等の培養容器で培養することも可能である。その他、培養容器としては、開放容器にも適用可能であり、閉鎖容器にも適用可能である。例えば、細胞培養用のシャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。また、本発明の細胞の培養方法において、細胞培養モジュールを用いることにより、生来浮遊培養が可能でなかった細胞についても浮遊培養向け装置にて、浮遊培養類似状態での培養を行うことが可能となる。浮遊培養用の装置としては、例えば、コーニング社製のスピナーフラスコ等の撹拌式リアクターが使用可能である。一方で、ローラーボトルなどの縦型回転運動を伴うローラー培養装置は、本発明には好ましくない。
一実施態様において、本発明で用いられ得る細胞培養容器は、フラスコ、培養ボトル、培養ディッシュ、培養バッグ、撹拌式リアクターからなる群から選択される培養容器であってもよい。
本明細書において、「旋回運動」とは、水平面と平行な面において培養容器を旋回させて、培養容器内の液体を攪拌させる運動であり、本発明に旋回運動を適用する場合は、市販の培養シェーカー、例えば旋回振盪シェーカーを用いればよい。本発明において適用される旋回運動は、例えば40rpm~150rpmで実施してもよい。本発明において適用される旋回運動は、例えば、旋回運動の直径が0.5~10cmにて実施されるものであってもよい。
本明細書において、「往復運動」とは、培養容器を左右又は前後に移動させて培養容器内の液体を攪拌させる運動であり、本発明に往復運動を適用する場合は、市販の培養シェーカー、例えば往復振盪シェーカーを用いればよい。本発明において適用される往復運動は、例えば40往復/分~150往復/分で実施されるものであってもよい。本発明において適用される往復運動の移行距離は、例えば、0.5~10cmにて実施されるものであってもよい。
本明細書において、「上下運動」とは、培養容器を垂直方向に上下に移動させて培養容器内の液体を攪拌させる運動であり、上下運動を適用する場合は、市販の培養シェーカー、例えば上下振盪シェーカーを用いればよい。本発明において適用される上下運動は、例えば40往復/分~150往復/分で実施されるものであってもよい。本発明において適用される往復運動の移行距離は、例えば、0.5~10cmにて実施されるものであってもよい。
本明細書において、「波動形揺動運動」とは、前後及び/又は左右のシーソー運動により、培養容器内の液体に波動を生じさせて攪拌する運動である。波動形揺動運動を実施するためには、市販の培養シェーカー、例えばWAVEリアクターを用いればよい。本発明において適用される波動形揺動運動は、例えば、細胞培養容器の底面を4度~15度の範囲で傾斜させて揺動するものであってもよい。また、本発明において適用される波動形揺動運動は、例えば、5rpm~25rpmにて実施されるものであってもよい。
本明細書において、「回転運動」とは、培養容器内の液体を、物理的な攪拌手段を回転させることによって培養容器内の液体を攪拌させる運動である。回転運動を実施するためには、例えば撹拌式リアクター、例えば、スピナーフラスコ、又は攪拌翼を有する据え置き攪拌型リアクターなどを用いればよい。本発明において適用される回転運動は、例えば、10rpm~300rpmにて実施されるものであってもよい。
本発明において、細胞が適用された細胞培養モジュールは、旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で振盪及び/又は攪拌しながら培養される。一実施態様において、本発明は、培養容器として培養バッグが用いられ、培養シェーカーを用いることにより、細胞培養モジュールを旋回運動及び波動形揺動運動させた状態で攪拌しながら、培養する。これにより、安定且つ効率的にエクソソームを産生することが可能となる。
一実施態様における本発明では間歇的に培地を交換する事で、産生されたエクソソームを単離する事が可能である。また、これらの各方法に、連続的もしくは間歇的な培地交換システムを取り付け、長期培養を指向する事も可能である。
本発明において、細胞を連続的に培養してもよい。例えば、本発明の方法における培養は、細胞培養モジュールに連続的に培地を添加し回収するような連続循環もしくは開放型の装置を用いて、空気中にポリイミド多孔質膜を露出させるような型式で実行することも可能である。
本発明において、細胞の培養は、細胞培養容器外に設置された細胞培養培地供給手段から連続的又は間歇的に細胞培養培地が細胞培養容器中に供給される系で行ってもよい。その際、細胞培養培地が細胞培養培地供給手段と細胞培養容器との間を循環する系であることができる。
本発明は、細胞培養装置をインキュベータ内に設置し、細胞を培養することを含む、態様を含む。また、本発明は、ベンチトップリアクターの様な単独型細胞培養装置中で、細胞を培養することを含む、態様を含む。細胞培養容器外に設置された細胞培養培地供給手段から連続的又は間歇的に細胞培養培地が細胞培養容器中に供給される系で行う場合、その系は、細胞培養容器である培養ユニットと細胞培養培地供給手段である培地供給ユニットとを含む細胞培養装置であってよく、ここで、培養ユニットは細胞を担持するための1又は複数の細胞培養モジュールを収容する培養ユニットであって、培地供給口および培地排出口を備えた培養ユニットであり、培地供給ユニットは培地収納容器と、培地供給ラインと、培地供給ラインを介して培地を送液する送液ポンプとを備え、ここで培地供給ラインの第一の端部は培地収納容器内の培地に接触し、培地供給ラインの第二の端部は培養ユニットの培地供給口を介して培養ユニット内に連通している、培地供給ユニットである、細胞培養装置であってよい。
また、上記細胞培養装置において、培養ユニットは培地供給ライン、送液ポンプ、空気供給口及び空気排出口を備えない培養ユニットであってよく、また、培地供給ライン、送液ポンプ、空気供給口及び空気排出口を備えた培養ユニットであってよい。培養ユニットは空気供給口及び空気排出口を備えないものであってもよい。さらに、上記細胞培養装置において、培養ユニットが培地排出ラインをさらに備え、ここで培地排出ラインの第一の端部は培地収納容器に接続し、培地排出ラインの第二の端部は培養ユニットの培地排出口を介して培養ユニット内に連通し、培地が培地供給ユニットと培養ユニットとを循環可能であってよい。
8.細胞によるエクソソームの産生
本発明は、上述したように細胞を培養することにより、細胞よりエクソソームを産生させる。産生されたエクソソームは公知の方法により回収することが可能である。エクソソームは細胞から分泌されるため、細胞培養培地から物質を回収することができる。
本発明の方法において、細胞培養工程とエクソソーム産生工程は、個別のものであってもなくてもよい。例えば、細胞培養モジュールに細胞を適用して細胞培養を開始した時点で細胞はエクソソームを産生しているので、培養開始から終了まで継続して細胞からエクソソームを回収するように生産系を設計する場合、細胞培養工程とエクソソーム産生工程は同時に実施されることになる。あるいは、細胞培養とエクソソーム産生との間で、例えば培地組成や培養装置の設定等が異なる場合、細胞培養工程の終了後にエクソソーム産生用に設計された培養条件に切り替えられるため、両工程は個別のものとなる。
本発明の方法において、培養細胞は、長期間に亘り均一な品質のエクソソームを持続的に産生することが出来る。好ましくは、本発明の方法において、エクソソームを産生する工程は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月若しくは6ヶ月又はそれ以上の期間に亘り継続される。好ましくは、本発明の方法において、エクソソーム産生期間中、細胞が産生したエクソソームの分子的プロフィールや生理活性が評価される。
II.エクソソーム産生装置
本発明はまた、細胞培養モジュールを含む、本発明の方法に使用するための、細胞培養によりエクソソームを産生する装置に関する。本発明のエクソソーム産生装置において、細胞培養モジュールは固定されて用いられてもよく、あるいは細胞培養培地中に浮遊して用いられてもよく、培地中に置かれても、培地から露出しても良い。
本発明の細胞培養におけるエクソソーム産生装置としては、細胞培養モジュールと、旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で攪拌しながら培養可能な培養リアクターとを組み合わせた形態を取ってよく、例えば、フラスコ、培養ボトル、培養ディッシュ、培養バッグ、撹拌式リアクターからなる群から選択される培養容器と、旋回振盪シェーカー、往復振盪シェーカー、上下振盪シェーカー、WAVEリアクター、及び撹拌式リアクターからなる群から選択される培養リアクターとを組み合わせて用いることが可能である。
本発明の培養細胞によるエクソソーム産生装置は、細胞培養モジュール上に連続的に培地を添加し回収する様な、連続循環もしくは開放型の装置で、空気中にポリイミド多孔質膜シートを露出させる様な型式で実行する事も可能である。
本発明の方法において細胞が産生したエクソソームをより高濃度に回収するための手段をさらに設けてもよい。例えば、循環式添加培地に半透膜等を直結させる事で、乳酸等の不要物を除きながら、糖質やアミノ酸類を追加して、効率良い長時間の培養法兼不要物除去法を構築する事も可能である。
III.キット
本発明はさらに、細胞培養モジュールを含む、本発明の方法に使用するためのキットに関する。本発明のキットは、細胞培養モジュールの他に、細胞培養、エクソソーム産生、エクソソーム回収に必要な構成要素を適宜含みうる。例えば、細胞培養モジュールに適用する細胞、細胞培養培地、連続的培地供給装置、連続的培地循環装置、細胞培養装置、エクソソーム産生を確認する為の評価手段、エクソソーム回収手段(例えば、超遠心、限外濾過、免疫沈降、クロマトグラフィー等)、キットの取り扱い説明書などが含まれる。
IV.使用
本発明はさらに、細胞培養モジュールの上述した本発明の方法のための使用、を含む。
V.エクソソーム
本発明はさらに、本発明の方法によって取得したエクソソームを含む。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例1]
エルレンマイヤーフラスコ及びローラーボトルに入れたモジュールを用いたヒト骨芽細胞培養によるエクソソーム産生量の比較
以下の実施例で使用されたポリマー多孔質膜は、ポリイミド多孔質膜であり、テトラカルボン酸成分である3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)とジアミン成分である4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とから得られるポリアミック酸溶液と、着色前駆体であるポリアクリルアミドとを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理することにより、調製された。得られたポリイミド多孔質膜は、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、当該表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であり、表面層Aに存在する孔の平均孔径は19μmであり、表面層Bに存在する孔の平均孔径は42μmであり、膜厚が25μmであり、空孔率が74%であった。
また、以下の実施例で使用したモジュール化ポリマー多孔質膜(以下の実施例中では、「モジュール」という。)は、片面に2mm×2mmの培地流出入口を16個有するポリエチレン製のケーシングに、以下:1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚、をこの順番で積層して収容したものを用いた。
また、以下の実施例で使用したモジュールは、使用前に湿潤及び滅菌化を進める必要がある。モジュール10個~30個程度を生産日本社製ラミジップ(登録商標)「チャック付ラミ袋」LZ-13内に入れ、10ml~30mlの超純水を加え、チャックでのシール後にヒートシーラーにて封止し、ガンマ線照射にて滅菌したモジュールを以下実験では用いる。
前記湿潤・滅菌済モジュール20個を入れたコーニング製490cm丸型ローラーボトルに培地(コージンバイオ株式会社製ゼノフリー培地;KBM ADSC-4にグルコースを注加し、2000mg/Lに調整した培地)を60mL注加した後、COインキュベータ内に設置されたローラーボトルリアクターにて約1時間、回転速度2rpmで回転させ、播種準備を完了した。並行して、同様に湿潤・滅菌したモジュール10個を入れたThermo Fisher Scientific社製250mLエルレンマイヤーフラスコを2個用意し、前記培地(グルコース調整済KBM ADSC-4)30mlを加えた後、CO5%、37℃に設定したN-BIOTEK社製加湿対応シェーカー搭載COインキュベータ(aniCell)内に据え、約1時間100rpmで振盪し、同様に播種準備を完了した。
IWAKI コラーゲンIコート ディッシュで培養した2継代目のPromoCell社製ヒト骨芽細胞(Y30 female_439Z037.2)をGibco社製Trypsin-EDTA(0.05%),phenol redを使用して剥がし、前記培地(KBM ADSC-4)で懸濁した。モジュール内部の培養基材ポリイミド多孔質膜の面積1cmあたり1.0×10cellsの細胞懸濁液を上記ローラーボトル(4.0×10cells)及び2種エルレンマイヤーフラスコ(各2.0×10cells)内へ注加した。ローラーボトル及びエルレンマイヤーフラスコを準備条件のままで回転・振盪させ、そのまま、培養を継続した。ローラーボトル培養では24時間後に40mlの前記培地(KBM ADSC-4)を、また、エルレンマイヤーフラスコ培養では24時間後に10mlの同培地を注加して培養を継続した。培養開始から6日後に培地交換を行い、その後は3日もしくは4日に一度のペースで培地交換を行った。ローラーボトル培養では、培養開始9日目から、使用する培地を150mlに増加させた。また、エルレンマイヤーフラスコ培養では、80rpm、100rpm共に培養開始後14日目から、使用する培地を100mlに増加させた(1モジュールあたり培地10ml)。ローラーボトル培養に於いては、培養開始後24日にモジュール5個を取り除き、15個のモジュールを150mlで継続培養する比率とした(1モジュールあたり培地10ml)。ローラーボトルリアクター培養、エルレンマイヤーフラスコ培養の80rpm及び100rpm条件、これら3種の培養に於いて、モジュール対培地の比率が同等となった事となる。
培養開始後、6日、12日、21日、26日に3種リアクターに関して、株式会社 同仁化学研究所製呈色試薬CCK8を用いて、モジュール内に生育する細胞数を測定した。結果を図7に示す。培養期間を通じて、安定な増殖と準定常状態への移行が観察された。培養開始後30日に培地交換を行い、3日後の33日目に、各リアクター内の培地を3種のリアクターから回収して、産生されるエクソソームの量を、コスモ・バイオ社製ヒト由来エクソソーム定量用CD9×CD63ELISAキットにてエクソソーム産生量をCD63のタンパク量として測定したところ、3日間で、ローラーボトル使用モジュールでは26pg/ml、エルレンマイヤーフラスコ80rpm培養モジュールでは78pg/ml、エルレンマイヤーフラスコ100rpm培養モジュールでは84pg/mlのエクソソーム産生が確認された。
培養開始後33日目にローラーボトル使用モジュール5個を取り出し、エルレンマイヤーフラスコ80rpmに移して、前記培地(グルコース調整済KBM ADSC-4)50mlを加えて、4種目のリアクターとした。モジュール5個を取り出したローラーボトル培養系では培地量を100mlに下げて培地交換を実施し、1モジュールあたり培地量を10mlに統一した4種のリアクターとして培養を継続した。3日後の36日目に4種のリアクターから培地を回収してエクソソーム産生量をCD63のタンパク量として測定した。培地交換後3日間で、ローラーボトル使用モジュールでは38pg/ml、エルレンマイヤーフラスコ80rpm培養モジュールでは106pg/ml、エルレンマイヤーフラスコ100rpm培養モジュールでは103pg/ml、ローラーボトル培養から移したエルレンマイヤーフラスコ80rpmでの培養モジュールでは31pg/mlのエクソソーム産生が確認された。14日後の47日目では培地交換後3日間で、ローラーボトル使用モジュールでは35pg/ml、エルレンマイヤーフラスコ80rpm培養モジュールでは90pg/ml、エルレンマイヤーフラスコ100rpm培養モジュールでは104pg/ml、ローラーボトル培養から移したエルレンマイヤーフラスコ80rpmでの培養モジュールでは59pg/mlエクソソーム産生が確認された。各リアクターに於ける1日1モジュールあたりのエクソソーム産生量を表1及び図8に示した。培養期間を通じて、ローラーボトル培養に比べてエルレンマイヤーフラスコ培養でのモジュールによるエクソソーム産生が高い事実が示されている。また、ローラーボトル培養からエルレンマイヤーフラスコ培養に移行させたモジュールでは、徐々にエクソソーム産生能が向上している事が確認された。エクソソーム産生実験期間に於ける細胞数も、前期CCK8による呈色法で確認し、安定な細胞数が維持されている事も確認した。(図7参照)
Figure 2022121333000003
[実施例2]
エルレンマイヤーフラスコ及びローラーボトルに入れたモジュールを用いたヒト皮膚線維芽細胞培養によるエクソソーム産生量の比較
以下の実施例で使用されたポリマー多孔質膜は、ポリイミド多孔質膜であり、テトラカルボン酸成分である3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)とジアミン成分である4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とから得られるポリアミック酸溶液と、着色前駆体であるポリアクリルアミドとを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理することにより、調製された。得られたポリイミド多孔質膜は、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、当該表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であり、表面層Aに存在する孔の平均孔径は19μmであり、表面層Bに存在する孔の平均孔径は42μmであり、膜厚が25μmであり、空孔率が74%であった。
また、以下の実施例で使用したモジュール化ポリマー多孔質膜(以下の実施例中では、「モジュール」という。)は、片面に2mm×2mmの培地流出入口を16個有するポリエチレン製のケーシングに、以下:1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚;1.0×1.0cmの中敷き(ポリプロピレン/ポリエチレン、NBCメッシュテック社製、品番:ESP10TC);1.0×1.0cmの正方形のポリイミド多孔質膜4枚、をこの順番で積層して収容したものを用いた。
また、以下の実施例で使用したモジュールは、使用前に湿潤及び滅菌化を進める必要がある。モジュール10個~30個程度を生産日本社製ラミジップ(登録商標)「チャック付ラミ袋」LZ-13内に入れ、10ml~30mlの超純水を加え、チャックでのシール後にヒートシーラーにて封止し、ガンマ線照射にて滅菌したモジュールを以下実験では用いる。
前記湿潤・滅菌済モジュール100個を入れたThermo Fisher Scientific社製1Lエルレンマイヤーフラスコを1個用意し、前記培地(KBM ADSC-4)400mlを加えた後、CO5%、37℃に設定したN-BIOTEK社製加湿対応シェーカー搭載COインキュベータ(aniCell)内に据え、約1時間80rpmで振盪し、同様に播種準備を完了した。
IWAKI コラーゲンIコート ディッシュで培養した4継代目のLonza社製ヒト皮膚線維芽細胞(Y37 female_18TL215675)9プレートをGibco社製Trypsin-EDTA(0.05%),phenol redを使用して剥がし、前記培地(KBM ADSC-4)で懸濁した。モジュール内部の培養基材ポリイミド多孔質膜の面積1cmあたり1.0×10cells(Total;2.0×10cells)の細胞懸濁液を上記エルレンマイヤーフラスコ内へ注加し、同条件で振盪させたまま培養を継続した。培養開始から8日後に半量の培地交換し、その後は3日もしくは4日に一度のペースで培地交換を行った。細胞増殖の状況を、7日、14日、20日及び以下に示す分割実験後の42日に、実施例1に記述したCCK8を用いる呈色反応により測定した。結果を図9に示す、実験期間を通じて安定した細胞増殖及び生育維持が確認された。
培養開始から20日後に、この1Lエルレンマイヤーフラスコ培養系から10個のモジュールを除き、残り90個のモジュールを、70個、10個、10個の3種リアクターに分割した。70個のモジュールは、Thermo Fisher Scientific社製500mLエルレンマイヤーフラスコに、10個のモジュールは、Thermo Fisher Scientific社製125mLエルレンマイヤーフラスコに、残り10個のモジュールは、Costar社製500ml丸形Storage Bottleに滅菌的に移送し、10個モジュールの2種リアクターには40mlの前記調整培地(コージンバイオ株式会社製ゼノフリー培地;KBM ADSC-4にグルコースを注加し、3000mg/Lに調整した培地)を、70個モジュールのエルレンマイヤーフラスコ培養系には280mlの同培地を注加して、分割培養準備を完了した。ローラーボトル培養はCOインキュベータ内に設置されたローラーボトルリアクターにて約1時間、回転速度2rpmで回転させ、エルレンマイヤーフラスコ培養系2種は、37℃に設定したN-BIOTEK社製加湿対応シェーカー搭載COインキュベータ(aniCell)内に据え、80rpmで振盪し、連続培養を開始した。
上記3リアクターへの分割から4日後、7日後及び11日後に、細胞培養液中に含まれるエクソソーム量をコスモ・バイオ社製ヒト由来エクソソーム定量用CD9×CD63ELISAキットにてエクソソーム産生量をCD63のタンパク量として測定した。結果を図10に示す。シェーカーを用いた振盪培養系では、ローラーボトル培養系と比較して、安定的に高値のエクソソームが産生されている事を確認した。

Claims (28)

  1. 細胞を用いてエクソソームを産生する方法であって、
    細胞を細胞培養モジュールに適用する工程;及び
    前記細胞が適用された前記細胞培養モジュールを、浮遊培養用の細胞培養容器内に固定されていない状態で培地中に浮遊させ、前記細胞培養モジュールを旋回運動、往復運動、上下運動、波動形揺動運動、回転運動又はそれらの運動を組み合わせた状態で振盪及び/又は攪拌しながら培養し、前記細胞によりエクソソームを産生する工程、
    を含み、
    ここで前記細胞培養モジュールが、
    ポリイミド多孔質膜と、
    2以上の培地流出入口を有し、前記ポリイミド多孔質膜が収容されたケーシングと
    を備えるものであって、
    ここで、前記ポリイミド多孔質膜が、複数の孔を有する表面層A及び表面層Bと、前記表面層A及び表面層Bの間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質膜であって、ここで前記表面層Aに存在する孔の平均孔径は、前記表面層Bに存在する孔の平均孔径よりも小さく、前記マクロボイド層は、前記表面層A及びBに結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層A及びBに囲まれた複数のマクロボイドとを有し、前記表面層A及びBにおける孔が前記マクロボイドに連通し、
    ここで、前記ケーシング内に
    (i)2以上の独立した前記ポリイミド多孔質膜が、集約されて、
    (ii)前記ポリイミド多孔質膜が、折り畳まれて、
    (iii)前記ポリイミド多孔質膜が、ロール状に巻き込まれて、及び/又は、
    (iv)前記ポリイミド多孔質膜が、縄状に結ばれて、
    収容されている、細胞培養モジュールであって、
    ここで前記ポリイミド多孔質膜は、流体によって継続的に波打つ動きを行わない状態で前記ケーシングに収容されているものである、
    前記方法。
  2. 前記細胞培養容器が、フラスコ、培養ボトル、培養ディッシュ、培養バッグ、撹拌式リアクターからなる群から選択される培養容器である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記旋回運動が、旋回振盪シェーカーにより実施される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記旋回運動が、40rpm~150rpmで行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記旋回運動の直径が、0.5cm~10cmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記波動形揺動運動が、WAVEリアクターにより実施される、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 前記波動形揺動運動が、前記細胞培養容器の底面を4度~15度の範囲で、5rpm~25rpmで周期的に揺動させて生じさせる、請求項6に記載の方法。
  8. 培養バッグ及び培養シェーカーを用いて、前記細胞培養モジュールを旋回運動及び波動形揺動運動させた状態で振盪する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記回転運動が、撹拌式リアクターにより実施される、請求項1又は2に記載の方法。
  10. 前記回転運動が、10rpm~300rpmで行われる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記培地流出入口の径が、細胞の径よりも大きく、且つ、前記ポリイミド多孔質膜が流出する径よりも小さい、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記ケーシングがメッシュ状の構造を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記ケーシングが非可撓性素材からなる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記ポリイミド多孔質膜が、平均孔径0.01~100μmの複数の細孔を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記表面層Aの平均孔径が、0.01~50μmである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記表面層Bの平均孔径が、20~100μmである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記ポリイミド多孔質膜の総膜厚が、5~500μmである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理することにより得られる着色したポリイミド多孔質膜である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記細胞を培養する工程が、インキュベータ内に設置した細胞培養装置中もしくは、ベンチトップリアクターの様な単独型細胞培養装置中で行われ、ここにおいて、前記細胞培養装置は、細胞を担持する前記細胞培養モジュールを収容する培養ユニットであって、培地供給口および培地排出口を備えた培養ユニット、培地供給ユニットであって、培地収納容器と、培地供給ラインと、培地供給ラインを介して培地を送液する送液ポンプとを備え、ここで培地供給ラインの第一の端部は培地収納容器内の培地に接触し、培地供給ラインの第二の端部は培養ユニットの培地供給口を介して培養ユニット内に連通している、培地供給ユニット、
    を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記細胞培養装置が、培地供給ライン、送液ポンプ、空気供給口、空気排出口及び酸素透過膜を有しない、請求項20に記載の方法。
  22. 前記細胞が、多能性幹細胞、組織幹細胞、体細胞、生殖細胞、肉腫細胞、株化細胞及び形質転換細胞からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 前記細胞がヒト間葉系幹細胞、ヒト神経幹細胞、ヒト骨芽細胞、ヒト軟骨細胞、ヒト心筋細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト滑膜細胞、ヒト肝細胞及びそれらの疾患細胞からなる群から選択される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
  24. 前記エクソソームを産生する工程が、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月若しくは6ヶ月又はそれ以上の期間に亘り継続される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記細胞培養モジュールを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法に使用するためのエクソソーム産生装置。
  26. 前記細胞培養モジュールを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット。
  27. 前記細胞培養モジュールの、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法のための使用。
  28. 前記細胞培養モジュールを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法によって取得したエクソソーム。
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