JP2022114253A - ポリカーボネート樹脂組成物および通信機器用回路成形品 - Google Patents

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健 皆川
Takeshi Minagawa
敦 角田
Atsushi Tsunoda
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Abstract

【課題】強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性および長期耐久性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)B成分を除く芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)回路形成安定剤(B成分)70~3500重量部、(C)レーザー照射立体回路成形用添加剤30~200重量部、(D)難燃剤(D成分)0.05~1000重量部および(E)含フッ素滴下防止剤(E成分)0.1~30重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂、回路形成安定剤、レーザー照射立体回路成形用添加剤、難燃剤および含フッ素滴下防止剤からなる樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性および長期耐久性を兼ね備えるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性に優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子機器の筐体、自動車内装・外装部品、建材、家具、楽器、雑貨類などの幅広い分野で使用されている。こうしたなか、スマートフォンを含む携帯電話などの電子装置内部にアンテナを製造する方法が種々検討されている。特に、Sub6帯やマイクロ波やミリ波帯などの比較的高周波数帯域に使用できる広帯域なアンテナ、および該アンテナを電子装置に三次元設計できる方法が求められている。このような三次元アンテナを形成する技術の1つとして、レーザー照射立体回路成形技術が注目されている。本技術は、例えば、金属錯体を分散した樹脂材料を用い、レーザー光により錯体を還元し触媒核として、選択メッキにより接着層を有さずに直接アンテナなどの回路を形成できる技術である。このようなレーザー照射立体回路成形技術を用いたものとして、例えば、ポリカーボネート樹脂と特定の導電性酸化物からなる樹脂組成物が提案されている(特許文献1)が、広帯域な三次元アンテナに求められる金属薄膜との良好な密着性や長期耐久性は十分でなく、更なる改善が求められている。また、幅広いレーザーの照射条件で金属薄膜を適切に形成可能な樹脂組成物が提案されている(特許文献2)が、照射条件は厳しくなる一方で強度、外観、金属薄膜の長期耐久性が十分でないことに加え、広帯域な三次元アンテナに求められる電波損失が低減できず不十分である。また、電子装置の三次元化に伴い難燃性に優れる樹脂組成物が提案されている(特許文献3)が、広帯域な三次元アンテナに求められる金属薄膜との良好な密着性や長期耐久性は十分でなく、電波損失が低減できず不十分である。上述の如く、強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性および長期耐久性を兼ね備えるポリカーボネート樹脂組成物は得られていなかった。
特開2012-72338号公報 国際公開第2014/042070号 国際公開第2014/061460号
本発明の課題は、強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性および長期耐久性を兼ね備えるポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂に回路形成安定剤、レーザー照射立体回路成形用添加剤、難燃剤および含フッ素滴下防止剤を添加することで、従来の樹脂組成物では得られなかった強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性および長期耐久性を兼ね備えるポリカーボネート樹脂組成物を得ることができることを見出し本発明に達した。
すなわち本発明によれば、(1)(A)B成分を除く芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)回路形成安定剤(B成分)70~3500重量部、(C)レーザー照射立体回路成形用添加剤30~200重量部、(D)難燃剤(D成分)0.05~1000重量部および(E)含フッ素滴下防止剤(E成分)0.1~30重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
本発明のより好適な態様の一つは(2)A成分が、下記式(1)で表されるポリカーボネートブロックおよび下記式(3)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A-1成分)を1~100重量%含む芳香族ポリカーボネート樹脂であり、かつA-1成分100重量%中のポリジオルガノシロキサン含有量が0.05~20.0重量%であることを特徴とする上記構成1に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
Figure 2022114253000001
(上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a及びbは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
Figure 2022114253000002
(上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数である。)
Figure 2022114253000003
(上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、e及びfは夫々1~4の整数であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
本発明のより好適な態様の一つは(3)B成分が、(B-1)下記式(4)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物(B-1成分)および(B-2)B-1成分を除く下記式(5)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物(B-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む回路形成安定剤であることを特徴とする上記構成1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
Figure 2022114253000004
(上記一般式(4)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、RおよびRは夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは0~10の整数を表す。)
Figure 2022114253000005
(上記一般式(5)において、RおよびRは各々独立に炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいシクロアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリール基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキル基から選ばれる基を表し、RおよびRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいシクロアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリール基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキル基、炭素原子数2~20の置換されていてもよいアルケニル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数6~20の置換されていてもよい
シクロアルコキシ基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリールオキシ基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシ基からから選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a、bは1~3の自然数であり、Wは単結合もしくは上記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
本発明のより好適な態様の一つは(4)C成分が、少なくとも2種の金属を含むレーザー照射立体回路成形用添加剤であることを特徴とする上記構成1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(5)C成分が銅、クロム、スズおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも2種の金属を含む化合物であることを特徴とする上記構成4に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(6)D成分がハロゲン系化合物、縮合リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、有機金属塩および無機系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の難燃剤を含有することを特徴とする上記構成1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(7)B-2成分が、(B-2-1)下記式(6)で表される構成単位(A)、下記式(7)で表される構成単位(B)および下記式(8)で表される構成単位(C)から構成され、全構成単位における構成単位(A)の割合が5~15モル%、構成単位(B)の割合が20~60モル%、構成単位(C)の割合が25~75モル%である化合物(B-2-1成分)並びに(B-2-2)下記式(7)で表される繰り返し構成単位(B)および下記式(8)で表される繰り返し構成単位(C)から構成され、全構成単位における構成単位(B)の割合が20~100モル%、構成単位(C)の割合が0~80モル%である化合物(B-2-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む回路形成安定剤であることを特徴とする上記構成3~6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
Figure 2022114253000006
(上記一般式(6)において、RおよびRは夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1~9の炭化水素基またはハロゲン原子である。)
Figure 2022114253000007
(上記一般式(7)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
Figure 2022114253000008
(上記一般式(8)において、Wは単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基である。)
本発明のより好適な態様の一つは(8)構成単位(A)が9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンから誘導された構成単位、構成単位(B)が2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位、構成単位(C)が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位であることを特徴とする上記構成7に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(9)B-1成分が1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1、1-ビス(3-tert―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンまたは1,1-ビス(4-ヒドロキシー3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから誘導された構成単位を20モル%以上含む化合物であることを特徴とする上記構成3~8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(10)A成分100重量部に対し、(F)レーザーマーキング用添加剤(F成分)30~200重量部を含有することを特徴とする上記構成1~9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(11)A成分100重量部に対し、(G)無機充填材(G成分)1~2500重量部を含有することを特徴とする上記構成1~10のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(12)G成分が、ガラス、炭素繊維、タルク、マイカおよびワラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材であることを特徴とする上記構成11に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(13)G成分が(G-1)数平均繊維長が30~5000μm、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0~10.0、断面積を真円に換算したときの繊維径が3.0~35.0μmである非円形断面ガラス繊維(G-1成分)および(G-2)数平均繊維長が30~5000μm、平均繊維径が7.0~13.0μmである円形断面ガラス繊維(G-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種のガラス繊維であることを特徴とする上記構成11または12のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(14)G成分が、ガラス繊維全量に対し、52.0~57.0重量%のSiO、13.0~17.0重量のAl、15.0~21.5重量%のB、2.0~6.0重量%のMgO、2.0~6.0重量%のCaO、1.0~4.0重量%のTiOおよび1.5重量%未満のFとを含み、かつ、LiO、NaOおよびKOの合計量が0.6重量%未満であるガラス繊維であることを特徴とする上記構成11~13のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(15)回路成型用である上記構成1~14のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明のより好適な態様の一つは(16)上記構成13に記載の回路形成用ポリカーボネート樹脂組成物からなる通信機器用回路成形品である。
以下、本発明について具体的に説明する。
(A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂)
本発明において使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、B成分を除いた芳香族ポリカーボネート樹脂である。該芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。ここで使用されるジヒドロキシ成分としては、通常芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、ビスフェノール類でも脂肪族ジオール類でも良い。ビスフェノール類としては、下記式(9)で表されるビスフェノール類が好ましく用いられる。
Figure 2022114253000009
[上記一般式(9)において、R及びRは夫々独立して水素原子を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a及びbは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
Figure 2022114253000010
(上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立に水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数である。)]
ビスフェノール類の具体例としては、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
脂肪族ジオール類としては、例えば2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、1,14-テトラデカンジオール、オクタエチレングリコール、1,16-ヘキサデカンジオール、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}メタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}エタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-1-フェニルエタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル}プロパン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ビフェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル}プロパン、2,2-ビス{3-t-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}ブタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-4-メチルペンタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}オクタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}デカン、2,2-ビス{3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、1,1-ビス{3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}ジフェニルメタン、9,9-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレン、9,9-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル}フルオレン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロペンタン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、1,3-ビス[2-{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,3-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、4,8-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-5,7-ジメチルアダマンタン、3,9-ビス(2-ヒドロキシー1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール(イソイディッド)等が挙げられる。
これらの中で芳香族ビスフェノール類が好ましく、なかでも1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、が好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、および4,4’-スルホニルジフェノールが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、分岐化剤を上記のジヒドロキシ化合物と併用して分岐化ポリカーボネート樹脂としてもよい。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
これらのポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。その製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
本発明において、重合反応においては末端停止剤を使用する。末端停止剤は分子量調節のために使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる末端停止剤としては、下記一般式(10)~(12)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
Figure 2022114253000011
[上記一般式(10)において、Aは水素原子、炭素数1~9のアルキル基、アルキルフェニル基(アルキル部分の炭素数は1~9)、フェニル基、またはフェニルアルキル基(アルキル部分の炭素数1~9)であり、rは1~5、好ましくは1~3の整数である。]
Figure 2022114253000012
Figure 2022114253000013
[上記一般式(11)および(12)において、Yは-R-O-、-R-CO-O-または-R-O-CO-である、ここでRは単結合または炭素数1~10、好ましくは1~5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10~50の整数を示す。]
上記一般式(10)で表される単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クレゾール、p-クミルフェノール、2-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、およびイソオクチルフェノールなどが挙げられる。また、上記一般式(11)および(12)で表される単官能フェノール類は、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類であり、これらを用いてポリカーボネート樹脂の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、樹脂の吸水率を低くする効果があり好ましく使用される。上記一般式(11)の置換フェノール類としてはnが10~30、特に10~26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。また、上記一般式(12)の置換フェノール類としてはYが-R-CO-O-であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10~30、特に10~26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。これら単官能フェノール類の内、上記一般式(10)で表される単官能フェノール類が好ましく、より好ましくはアルキル置換もしくはフェニルアルキル置換のフェノール類であり、特に好ましくはp-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールまたは2-フェニルフェノールである。これらの単官能フェノール類の末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
本発明のA成分として用いられるポリカーボネート樹脂は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸あるいはその誘導体を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。
本発明のA成分として用いられるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、12,000~50,000の範囲が好ましく、12,000~30,000の範囲がより好ましく、12,000~25,000の範囲がさらに好ましく、15,000~25,000の範囲が最も好ましい。分子量が50,000を越えると溶融粘度が高くなりすぎて成形性に劣る場合があり、分子量が12,000未満であると機械的強度に問題が生じる場合がある。また、A-1成分以外の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000~16,000の範囲が好ましく、10,500~16,000の範囲がより好ましく、11,000~15,800の範囲がさらに好ましい。分子量が16,000を越えると表面外観が悪化する場合があり、分子量が10,000未満であると強度が低下する場合がある。なお、本発明でいう粘度平均分子量は、まず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
本発明のA成分として用いられるポリカーボネート樹脂は、樹脂中の全Cl(塩素)量が好ましくは0~200ppm、より好ましくは0~150ppmである。ポリカーボネート樹脂中の全Cl量が200ppmを越えると、色相および熱安定性が悪くなる場合があるので好ましくない。
本発明のA成分は、下記式(1)で表されるポリカーボネートブロックおよび下記式(3)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A-1成分)を1~100重量%含む芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。A-1成分の含有量は1~70重量%がより好ましく、5~50重量%がさらに好ましい。A-1成分の含有量が1重量%未満の場合、十分な強度が得られない場合がある。
Figure 2022114253000014
[上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a及びbは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。]
Figure 2022114253000015
(上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数である。)]
Figure 2022114253000016
[上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、e及びfは夫々1~4の整数であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。]
一般式(1)で表されるカーボネート構成単位を誘導する二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(3)で表されるカーボネート構成単位において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基が特に好ましい。R及びR10は夫々独立して好ましくは水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であり、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル
基が特に好ましい。上記一般式(3)で表されるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)としては、例えば下記一般式(I)に示すような化合物が好適に用いられる。
Figure 2022114253000017
p+qは4~120が好ましく、30~120がより好ましく、30~100がさらに好ましく、30~60が最も好ましい。
次に、上記の好ましいポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法について以下に説明する。あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび/または末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調製する。クロロホルメート形成性化合物としてはホスゲンが好適である。
二価フェノール(I)からのクロロホルメート化合物を生成するにあたり、上記一般式(1)で表されるカーボネート構成単位を誘導する二価フェノール(I)の全量を一度にクロロホルメート化合物としてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。このクロロホルメート化合物生成反応の方法は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。更に、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、およびハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよく、添加することが好ましい。クロロホルメート形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、好適なクロロホルメート形成性化合物であるホスゲンを使用する場合、ガス化したホスゲンを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、二価フェノール(I)のクロロホルメート化合物の形成に使用する二価フェノール(I)1モルあたり(通常1モルは2当量に相当)、2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレンの如き炭化水素溶媒、並びに、塩化メチレンおよびクロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレンの如きハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
クロロホルメート化合物の生成反応における圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、もしくは減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、反応に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2~10時間で行われる。クロロホルメート化合物の生成反応におけるpH範囲は、公知の界面反応条件が利用でき、pHは通常10以上に調製される。
本発明のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造においては、このようにして二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調整した後、該混合溶液を攪拌しながら一般式(3)で表わされるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を、該混合溶液の調整にあたり仕込まれた二価フェノール(I)の量1モルあたり、0.01モル/min以下の速度で加え、該ジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該クロロホーメート化合物とを界面重縮合させることにより、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得る。
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、分岐化剤を二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂とすることができる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
かかる分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法は、クロロホルメート化合物の生成反応時にその混合溶液中に分岐化剤が含まれる方法であっても、該生成反応終了後の界面重縮合反応時に分岐化剤が添加される方法であってもよい。分岐化剤由来のカーボネート構成単位の割合は、該共重合樹脂を構成するカーボネート構成単位全量中、好ましくは0.005~1.5モル%、より好ましくは0.01~1.2モル%、特に好ましくは0.05~1.0モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
重縮合反応における系内の圧力は、減圧、常圧、もしくは加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5~10時間で行われる。場合により、得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
上記一般式(3)に含まれる下記一般式(13)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックの含有量はポリカーボネート樹脂組成物の全重量を基準にして、1.0~20.0重量%であることが好ましく、1.0~15.0重量%がより好ましく、1.0~10.0重量%がさらに好ましく、1.0~8.0重量%が最も好ましい。
Figure 2022114253000018
(上記一般式(13)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。)
A-1成分100重量%中のポリジオルガノシロキサン含有量は0.05~20.0重量%であることが好ましく、0.5~15.0重量%であることがより好ましく、1.0~10.0重量%であることがより好ましい。該含有量が0.05重量%未満である場合、強度が不十分である場合があり、20.0重量%を超えた場合、ポリジオルガノシロキサン起因の外観悪化が生じる場合がある。
(B成分:回路形成安定剤)
本発明でB成分として使用される回路形成安定剤とは、レーザー照射により形成された回路の密着性や長期耐久性を改良できる化合物である。回路形成安定剤は、(B-1)下記式(4)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物(B-1成分)および(B-2)B-1成分を除く下記式(5)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物(B-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む化合物であることが好ましい。回路形成安定剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
Figure 2022114253000019
(上記一般式(4)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、RおよびRは夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは0~10の整数を表す。)
Figure 2022114253000020
(上記一般式(5)において、R、Rは各々独立に炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいシクロアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリール基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキル基から選ばれる基を表し、R、Rは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいシクロアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリール基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキル基、炭素原子数2~20の置換されていてもよいアルケニル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数6~20の置換されていてもよいシクロアルコキシ基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリールオキシ基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシ基からから選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a、bは1~3の自然数であり、Wは単結合もしくは上記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
B-1成分は、全構成単位100モル%に対する上記式(4)で表されるカーボネート構成単位の割合が10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、30モル%以上であることが特に好ましく、50モル%以上であることが最も好ましい。該構成単位の割合が10モル%未満であると、電波損失低減効果や金属薄膜の密着性、長期耐久性に劣る場合がある。なお、該含有量の上限は100モル%であることが好ましい。
上記式(4)で表されるカーボネート構成単位(A)を誘導する二価フェノールとしては、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス
(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。好適な二価フェノールは、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンまたは1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから誘導された構成単位であり、特に好適な二価フェノールは、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンおよび/または1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
また、他の二価フェノールから誘導されるカーボネート結合繰り返し単位を、本発明の目的および特性を損なわない限り含有してもよい。かかる他のニ価フェノールの代表的な例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-フェニル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3メチルフェニル)フルオレン、1,1’-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-オルト-ジイソプロピルベンゼン、1,1’-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタ-ジイソプロピルベンゼン、1,1’-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-パラ-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’-ジヒドロキシジフェニルエステル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン等が挙げられる、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。最も好適な二価フェノールは、ビスフェノールCである。
B-2成分は、B-1成分を除く上記式(5)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物である。該含有量は好ましくは15~100モル%、より好ましくは20~100モル%、さらに好ましくは30~100モル%である。含有量が10モル%未満の場合、回路形成安定性や伝送特性に劣る場合がある。
上記一般式(5)で表されるカーボネート構成単位は、通常ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体から誘導される。
上記一般式(5)で表されるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物として、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-
3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンがより好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンが最も好ましい。
B-2成分は、(B-2-1)下記式(6)で表される構成単位(A)、下記式(7)で表される構成単位(B)および下記式(8)で表される構成単位(C)から構成され、全構成単位における構成単位(A)の割合が5~15モル%、構成単位(B)の割合が20~60モル%、構成単位(C)の割合が25~75モル%である化合物(B-2-1成分)並びに(B-2-2)下記式(7)で表される繰り返し構成単位(B)および下記式(8)で表される繰り返し構成単位(C)から構成され、全構成単位における構成単位(B)の割合が20~100モル%、構成単位(C)の割合が0~80モル%である化合物(B-2-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む回路形成安定剤であることが好ましい。
Figure 2022114253000021
(上記一般式(6)において、RおよびRは夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1~9の炭化水素基またはハロゲン原子である。)
Figure 2022114253000022
(上記一般式(7)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
Figure 2022114253000023
(上記一般式(8)において、Wは単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基である。)
前記式(6)で表される構成単位(A)において、RおよびRは夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましい。
構成単位(A)を誘導する二価フェノールとしては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、および9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。最も好適な二価フェノールは、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンである。
B-2-1成分において全構成単位に対する、構成単位(A)の割合は5~15モル%であり、好ましくは5~12モル%、より好ましくは8~10モル%である。構成単位(A)の割合が15モル%を超えると耐熱性は向上するが、強度や回路の長期耐久性が劣る場合がある。構成単位(A)の割合が5モル%未満では、強度が劣る場合がある。
前記式(7)で表される構成単位(B)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、Xは単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であることが好ましい。
構成単位(B)を誘導する二価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと記載)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。最も好適な二価フェノールは、ビスフェノールCである。
B-2-1成分において全構成単位に対する、構成単位(B)の割合が20~60モル%であり、30~50モル%が好ましい。構成単位(B)の割合が60モル%を超えると、強度が劣る場合がある。構成単位(B)の割合が20モル%未満では、回路形成安定性に劣る場合がある。
構成単位(C)を誘導する二価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフ
ェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと記載)、4,4’-ジヒドロキシ-1,1-ビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン等が例示される。最も好適な二価フェノールは、ビスフェノールAである。
B-2-1成分において全構成単位に対する、構成単位(C)の割合は25~75モル%であり、30~70モル%が好ましく、35~65モル%がより好ましく、40~60モル%がさらに好ましい。構成単位(C)の割合が75モル%を超えると、回路形成安定性が劣る場合がある。構成単位(C)の割合が25モル%未満では、強度が劣る場合がある。
B-1成分は、構成単位(A)、(B)および(C)以外の他の二価フェノールから誘導されるカーボネート結合繰り返し単位を、本発明の目的および特性を損なわない限り含有してもよい。
構成単位(A)、(B)および(C)以外の構成単位を誘導する二価フェノールとして、好適には、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素数1~3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン-5-オール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5-オール、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロインダン、1-メチル-1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-イソプロピルシクロヘキサン、1-メチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン等が例示される。かかるポリカーボネートのその他詳細については、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報、および特開2002-117580号公報等に記載されている。
B-2-2成分において、構成単位(B)および(C)はB-2-1成分と同じである。B-2-2成分において全構成単位に対する、構成単位(B)の割合は20~100モル%であり、好ましくは25~100モル%、より好ましくは40~100モル%である。構成単位(B)の割合が20モル%より少なくなると、誘電特性が高くなり、金属薄膜の密着性、長期耐久性が低下する場合がある。
本発明で使用される回路形成安定剤は、二価フェノールと、カーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。また、3官能成分を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、並びにビニル系単量体を共重合させた回路形成安定剤であってもよい。
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては
例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた回路形成安定剤は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
本発明で使用される回路形成安定剤は、必要に応じて脂肪族ジオールを共重合することができる。例えば、イソソルビド:1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、テトラメチルシクロブタンジオール(TMCBD)、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、混合異性体、シス/トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シス/トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シクロヘクス-1,4-イルエンジメタノール、トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(tCHDM)、トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(cCHDM)、シス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-4,4’-ジオール、スピログリコール、ジシクロヘキシル-4,4’-ジオール、4,4’-ジヒドロキシビシクロヘキシル、及びポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
本発明で使用される回路形成安定剤は、必要に応じて脂肪酸を共重合することができる。例えば、1,10-ドデカンジオン酸(DDDA)、アジピン酸、ヘキサンジオン酸、イソフタル酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸(mHBA)、及び4-ヒドロキシ安息香酸(pHBA)が挙げられる。
本発明で使用される回路形成安定剤は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合した化合物を含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジ
カルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。
本発明で使用される回路形成安定剤は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐状回路形成安定剤とすることもできる。分岐状回路形成安定剤に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、70~3500重量部であり、80~3000重量部が好ましく、200~2500重量部がより好ましい。含有量が70重量部未満であると、誘電特性が高くなり、金属薄膜の密着性および長期耐久性が十分で無く、3500重量部を超えると強度が十分でない。
(C成分:レーザー照射立体回路成形用添加剤)
本発明に使用されるレーザー照射立体回路成形用添加剤とは、配合することによって、レーザー照射による立体回路成形を可能とする化合物であり、帝人製PC(Panlite(R)L-1250WP等)樹脂100重量部に対し、レーザー照射立体回路成形用添加
剤を5重量部添加し、波長1064nmのYVO4レーザーを用い、出力1.45W、周波数80kHz、速度2m/sにて照射し、標準的な無電解銅メッキ工程にて、該レーザー照射面にメッキを形成できる化合物であることが好ましい。レーザー照射立体回路成形用添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はレーザー照射立体回路成形用添加剤として市販されているものの他、他の用途として販売されている物質であってもよい。レーザー照射立体回路成形用添加剤は、少なくとも2種の金属を含む化合物であることが好ましい。該金属としては、銅、クロム、スズおよびアンチモンが例示される。レーザー照射立体回路成形用添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明で用いるレーザー照射立体回路成形用添加剤として、酸化スズを主成分とする化合物が好ましく、アンチモンおよびスズを含む酸化物を主成分とする化合物がより好ましい。このようなレーザー照射立体回路成形用添加剤を用いることにより、樹脂成形品のメッキ特性をより向上させることができるため、樹脂成形品の表面にメッキを適切に形成することができる。その中でも、スズの含有量がアンチモンの含有量よりも多いものが好ましく、スズおよびアンチモンの合計量に対するスズの含有量が、80重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることがさらに好ましい。そのような化合物として、アンチモンがドープされた酸化スズおよび酸化アンチモンがドープされた酸化スズが挙げられ、酸化アンチモンがドープされた酸化スズが好ましい。また、アンチモンおよび酸化スズを含むレーザー照射立体回路成形用添加剤において、酸化スズおよびアンチモンの合計量に対するアンチモンの含有量は、1~20重量%であることが好ましく、3~15重量%がより好ましい。また、アンチモンおよび酸化スズを含むレーザー照射立体回路成形用添加剤において、酸化スズおよびアンチモンの合計量に対するアンチモンの含有量は、0.5~10重量%であることが好ましく、1.0~8.0重量%であることがより好ましい。
本発明で用いるレーザー照射立体回路成形用添加剤の平均粒子径は、0.01~50μmであることが好ましく、0.05~30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、30~200重量部であり、40~180重量部が好ましく、50~170重量部がより好ましい。含有量が30重量部未満であると金属薄膜の密着性、長期耐久性が十分でなく、200重量部を超えると強度が低下すると共に、難燃性、表面外観が悪化し、誘電特性も高くなる。
(D成分:難燃剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤として知られる各種の化合物を含有する。尚、難燃剤として使用される化合物の配合は難燃性の向上のみならず、各化合物の性質に基づき、例えば帯電防止性、流動性、剛性、および熱安定性の向上などがもたらされる。D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.05~1000重量部であり、好ましくは0.1~950重量部、より好ましくは0.15~900重量部である。含有量が0.05重量部未満の場合、難燃性が向上せず、1000重量部を超えると強度が低下するとともに長期耐久性が十分得られない。
かかる難燃剤としては、(1)有機金属塩系難燃剤(例えば有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤など)、(2)有機リン系難燃剤(例えば、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、およびホスホン酸アミド化合物など)、(3)シリコーン化合物からなるシリコーン系難燃剤、並びに(4)ハロゲン系難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート(オリゴマーを含む)、臭素化ポリアクリレート、および塩素化ポリエチレンなど)等が挙げられる。
(1)有機金属塩系難燃剤
有機金属塩系難燃剤は、耐熱性がほぼ維持されると共に少なからず帯電防止性を付与できる点で有利である。本発明において最も有利に使用される有機金属塩系難燃剤は、含フッ素有機金属塩化合物である。本発明の含フッ素有機金属塩化合物とは、フッ素置換された炭化水素基を有する有機酸からなるアニオン成分と金属イオンからなるカチオン成分からなる金属塩化合物をいう。より好適な具体例としては、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩、フッ素置換有機硫酸エステルの金属塩、およびフッ素置換有機リン酸エステルの金属塩が例示される。含フッ素有機金属塩化合物は1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。その中でも好ましいのはフッ素置換有機スルホン酸の金属塩であり、とくに好ましいのはパーフルオロアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である。ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1~18の範囲が好ましく、1~10の範囲がより好ましく、更に好ましくは1~8の範囲である。
有機金属塩系難燃剤の金属イオンを構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土
類金属であり、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。したがって好適な有機金属塩系難燃剤は、パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属の中でも、透明性の要求がより高い場合にはルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、コストや難燃性の点で有利であるがリチウムおよびナトリウムは逆に透明性の点で不利な場合がある。これらを勘案してパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたパーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩が最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
かかるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
上記の含フッ素有機金属塩はイオンクロマトグラフィー法により測定した弗化物イオンの含有量が好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。弗化物イオンの含有量が低いほど、難燃性や耐光性が良好となる。弗化物イオンの含有量の下限は実質的に0とすることも可能であるが、精製工数と効果との兼ね合いから実用的には0.2ppm程度が好ましい。かかる弗化物イオンの含有量のパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は例えば次のように精製される。パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩を、該金属塩の2~10重量倍のイオン交換水に、40~90℃(より好適には60~85℃)の範囲において溶解させる。該パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は、パーフルオロアルキルスルホン酸をアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和する方法、もしくはパーフルオロアルキルスルホニルフルオライドをアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和する方法により(より好適には後者の方法により)生成される。また該イオン交換水は、特に好適には電気抵抗値が18MΩ・cm以上である水である。金属塩を溶解した液を上記温度下で0.1~3時間、より好適には0.5~2.5時間撹拌する。その後該液を0~40℃、より好適に10~35℃の範囲に冷却する。冷却により結晶が析出する。析出した結晶をろ過によって取り出す。これにより好適な精製されたパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩が製造される。
含フッ素有機金属塩化合物の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.05~6重量部、より好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.15~3重量部である。かかる好ましい範囲であるほど含フッ素有機金属塩の配合により期待される効果(例えば難燃性や帯電防止性など)が発揮されると共に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性に与える悪影響も少なくなる。
その他上記含フッ素有機金属塩化合物以外の有機金属塩系難燃剤としては、フッ素原子
を含有しない有機スルホン酸の金属塩が好適である。該金属塩としては、例えば脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、および芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩等(いずれもフッ素原子を含有しない)が挙げられる。
脂肪族スルホン酸金属塩の好ましい例としては、アルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)。かかるアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用するアルカンスルホン酸の好ましい例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、メチルブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、へプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用する芳香族スルホン酸としては、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の具体例としては、例えばジフェニルサルファイド-4,4’-ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド-4,4’-ジスルホン酸ジカリウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1-メトキシナフタレン-4-スルホン酸カルシウム、4-ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3-フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4-フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6-ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2-フルオロ-6-ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p-ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル-3,3’-ジスルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3,4’-ジスルホン酸ジカリウムな、α,α,α-トリフルオロアセトフェノン-4-スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン-2,5-ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン-2,5-ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン-2,5-ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド-4-スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、およびアントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
一方、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレン
アルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、およびステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
また他のアルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N-(p-トリルスルホニル)-p-トルエンスルホイミド、N-(N’-ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN-(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。
上記の中でも好ましいフッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩は、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であり、特にカリウム塩が好適である。かかる芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩を配合する場合その含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.05~6重量部であり、より好ましくは0.10~5重量部、さらに好ましくは0.15~3重量部である。
(2)有機リン系難燃剤
本発明の有機リン系難燃剤としては、縮合リン酸エステル化合物およびホスファゼン化合物が好適である。
1)縮合リン酸エステル化合物
縮合リン酸エステル化合物としては、アリールホスフェート化合物が好適に用いられる。縮合リン酸エステル化合物は可塑化効果があるため、成形加工性を高められる点で有利である。アリールホスフェート化合物は、従来難燃剤として公知の各種ホスフェート化合物が使用できるが、より好適には特に下記一般式(14)で表される1種または2種以上のホスフェート化合物を挙げることができる。
Figure 2022114253000024
(上記一般式(14)において、Mは、二価フェノールから誘導される二価の有機基を表し、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ一価フェノールから誘導される一価の有機基を表す。a、b、c及びdはそれぞれ独立して0または1であり、mは0~5の整数であり、重合度mの異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合mはその平均値を表し、0~5の値である。)
前記式のホスフェート化合物は、異なるm数を有する化合物の混合物であってもよく、かかる混合物の場合、平均のm数は好ましくは0.5~1.5、より好ましくは0.8~1.2、更に好ましくは0.95~1.15、特に好ましくは1~1.14の範囲である。
上記Mを誘導する二価フェノールの好適な具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4-ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジ
フェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4-ヒドロキシフェニル)サルファイドが例示され、中でも好ましくはレゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルである。
上記Ar、Ar、Ar、およびArを誘導する一価フェノールの好適な具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp-クミルフェノールが例示され、中でも好ましくはフェノール、および2,6-ジメチルフェノールである。
尚、かかる一価フェノールはハロゲン原子で置換されてもよく、該一価フェノールから誘導される基を有するホスフェート化合物の具体例としては、トリス(2,4,6-トリブロモフェニル)ホスフェートおよびトリス(2,4-ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4-ブロモフェニル)ホスフェートなどが例示される。
一方、ハロゲン原子で置換されていないホスフェート化合物の具体例としては、トリ(2,6-キシリル)ホスフェートなどのモノホスフェート化合物、並びにレゾルシノールビスジ(2,6-キシリル)ホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー、4,4-ジヒドロキシジフェニルビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー、およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマーが好適である。(ここで主体とするとは、重合度の異なる他の成分を少量含んでよいことを示し、より好適には前記式(14)におけるm=1の成分が80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含有されることを示す。)
2)ホスファゼン化合物
ホスファゼン化合物は可塑化効果があるため、成形加工性を高められる点で有利である。ホスファゼン化合物は、従来難燃剤として公知の各種ホスファゼン化合物が使用できるが、下記一般式(15)、(16)で表されるホスファゼン化合物が好ましい。
Figure 2022114253000025
Figure 2022114253000026
(上記一般式(15)および(16)において、X、X、X、Xは、水素、水酸基、アミノ基、またはハロゲン原子を含まない有機基を表す。また、rは3~10の整数を表す。)
上記式(15)、(16)中、X、X、X、Xで表されるハロゲン原子を含ま
ない有機基としては、例えば、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基などが挙げられる。中でも上記式(15)で表される環状ホスファゼン化合物が好ましく、更に、上記式(15)中のX、Xがフェノキシ基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
有機リン系難燃剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは1~1000重量部であり、より好ましくは10~800重量部、さらに好ましくは20~700重量部である。
(3)シリコーン系難燃剤
本発明のシリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物は、燃焼時の化学反応によって難燃性を向上させるものである。該化合物としては従来芳香族ポリカーボネート樹脂の難燃剤として提案された各種の化合物を使用することができる。シリコーン化合物はその燃焼時にそれ自体が結合してまたは樹脂に由来する成分と結合してストラクチャーを形成することにより、または該ストラクチャー形成時の還元反応により、ポリカーボネート樹脂に難燃効果を付与するものと考えられている。したがってかかる反応における活性の高い基を含んでいることが好ましく、より具体的にはアルコキシ基およびハイドロジェン(即ちSi-H基)から選択された少なくとも1種の基を所定量含んでいることが好ましい。かかる基(アルコキシ基、Si-H基)の含有割合としては、0.1~1.2mol/100gの範囲が好ましく、0.12~1mol/100gの範囲がより好ましく、0.15~0.6mol/100gの範囲が更に好ましい。かかる割合はアルカリ分解法より、シリコーン化合物の単位重量当たりに発生した水素またはアルコールの量を測定することにより求められる。尚、アルコキシ基は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好適である。
一般的にシリコーン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。すなわち、
M単位:(CH)3SiO1/2、H(CH)2SiO1/2、H(CH)SiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2、(CH(C)SiO1/2、(CH)(C)(CH=CH)SiO1/2等の1官能性シロキサン単位、D単位:(CH)2SiO、H(CH)SiO、HSiO、H(C)SiO、(CH)(CH=CH)SiO、(C)2SiO等の2官能性シロキサン単位、T単位:(CH)SiO3/2、(C)SiO3/2、HSiO3/2、(CH=CH)SiO3/2、(C)SiO3/2等の3官能性シロキサン単位、Q単位:SiO2で示される4官能性シロキサン単位である。
シリコーン系難燃剤に使用されるシリコーン化合物の構造は、具体的には、示性式としてDn、Tp、MmDn、MmTp、MmQq、MmDnTp、MmDnQq、MmTpQq、MmDnTpQq、DnTp、DnQq、DnTpQqが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、MmDn、MmTp、MmDnTp、MmDnQqであり、さらに好ましい構造は、MmDnまたはMmDnTpである。
ここで、上記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す1以上の整数であり、各示性式における係数の合計がシリコーン化合物の平均重合度となる。この平均重合度は好ましくは3~150の範囲、より好ましくは3~80の範囲、更に好ましくは3~60の範囲、特に好ましくは4~40の範囲である。かかる好適な範囲であるほど難燃性において優れるようになる。更に後述するように芳香族基を所定量含むシリコーン化合物においては透明性や色相にも優れる。
またm、n、p、qのいずれかが2以上の数値である場合、その係数の付いたシロキサ
ン単位は、結合する水素原子や有機残基が異なる2種以上のシロキサン単位とすることができる。
シリコーン化合物は、直鎖状であっても分岐構造を持つものであってもよい。またシリコン原子に結合する有機残基は炭素数1~30、より好ましくは1~20の有機残基であることが好ましい。かかる有機残基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、およびデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基の如きシクロアルキル基、フェニル基の如きアリール基、並びにトリル基の如きアラルキル基を挙げることがでる。さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、アルケニル基またはアリール基である。アルキル基としては、特にはメチル基、エチル基、およびプロピル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
さらにシリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物はアリール基を含有することが好ましい。より好適には下記一般式(17)で示される芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10~70重量%(より好適には15~60重量%)である。
Figure 2022114253000027
(上記一般式(17)において、Xはそれぞれ独立にOH基、炭素数1~20の一価の有機残基を示す。nは0~5の整数を表わす。さらに式(17)中においてnが2以上の場合はそれぞれ互いに異なる種類のXを取ることができる。)
シリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物は、上記Si-H基およびアルコキシ基以外にも反応基を含有していてもよく、かかる反応基としては例えば、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、およびメタクリロキシ基などが例示される。
Si-H基を有するシリコーン化合物としては、下記一般式(18)および(19)で示される構成単位の少なくとも一種以上を含むシリコーン化合物が好適に例示される。
Figure 2022114253000028
Figure 2022114253000029
(上記一般式(18)および式(19)において、Z~Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の一価の有機残基、または下記一般式(20)で示される化合物を示す。α1~α3はそれぞれ独立に0または1を表わす。m1は0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式(18)中においてm1が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
Figure 2022114253000030
(上記一般式(20)において、Z~Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の一価の有機残基を示す。α4~α8はそれぞれ独立に0または1を表わす。m2は0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式(20)中においてm2が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
シリコーン系難燃剤に使用されるシリコーン化合物において、アルコキシ基を有するシリコーン化合物としては、例えば一般式(21)および一般式(22)に示される化合物から選択される少なくとも1種の化合物があげられる。
Figure 2022114253000031
(上記一般式(21)において、β1はビニル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、並びに炭素数6~12のアリール基およびアラルキル基を示す。γ1、γ2、γ3、γ4、γ5、およびγ6は炭素数1~6のアルキル基およびシクロアルキル基、並びに炭素数6~12のアリール基およびアラルキル基を示し、少なくとも1つの基がアリール基またはアラルキル基である。δ1、δ2、およびδ3は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。)
Figure 2022114253000032
(上記一般式(22)において、β2およびβ3はビニル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、並びに炭素数6~12のアリール基およびアラルキル基を示す。γ7、γ8、γ9、γ10、γ11、γ12、γ13およびγ14は炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、並びに炭素数6~12のアリール基およびアラルキル基を示し、少なくとも1つの基がアリール基またはアラルキルである。δ4、δ5、δ6、およびδ7は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。)
シリコーン系難燃剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~500重量部が好ましく、より好ましくは0.5~400重量部、さらに好ましくは1~300重量部である。
(4)ハロゲン系難燃剤
本発明のハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリカーボネート(オリゴマーを含む)が特に好適である。臭素化ポリカーボネートは耐熱性に優れ、かつ大幅に難燃性を向上できる。本発明で使用する臭素化ポリカーボネートは、下記一般式(23)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%であり、特に好ましくは実質的に下記一般式(23)で表される構成単位からなる臭素化ポリカーボネート化合物である。
Figure 2022114253000033
(上記一般式(23)において、Xは臭素原子、Rは炭素数1~4のアルキレン基、炭素数1~4のアルキリデン基または-SO-である。)
また、かかる式(23)において、好適にはRはメチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、-SO-、特に好ましくはイソプロピリデン基を示す。
臭素化ポリカーボネートは、残存するクロロホーメート基末端が少なく、末端塩素量が0.3ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2ppm以下である。かかる末端塩素量は、試料を塩化メチレンに溶解し、4-(p-ニトロベンジル)ピリジンを加えて末端塩素(末端クロロホーメート)と反応させ、これを紫外可視分光光度計(日立製作所製U-3200)により測定して求めることができる。末端塩素量が0.3ppm以下であると、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性がより良好となり、更に高温の成
形が可能となり、その結果成形加工性により優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
また臭素化ポリカーボネートは、残存する水酸基末端が少ないことが好ましい。より具体的には臭素化ポリカーボネートの構成単位1モルに対して、末端水酸基量が0.0005モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.0003モル以下である。末端水酸基量は、試料を重クロロホルムに溶解し、H-NMR法により測定して求めることができる。かかる末端水酸基量であると、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が更に向上し好ましい。
臭素化ポリカーボネートの比粘度は、好ましくは0.015~0.1の範囲、より好ましくは0.015~0.08の範囲である。臭素化ポリカーボネートの比粘度は、前述した本発明のA成分であるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を算出するに際し使用した上記比粘度の算出式に従って算出されたものである。
ハロゲン系難燃剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.5~1000重量部が好ましく、より好ましくは1~800重量部、さらに好ましくは20~700重量部である。
(E成分:含フッ素滴下防止剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、含フッ素滴下防止剤を含む。かかる含フッ素滴下防止剤を上記難燃剤と併用することにより、より良好な難燃性を得ることができる。かかる含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることかできるが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(フィブリル化PTFE)は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その数平均分子量は、150万~数千万の範囲である。かかる下限はより好ましくは300万である。かかる数平均分子量は、特開平6-145520号公報に開示されているとおり、380℃でのポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度に基づき算出される。即ち、フィブリル化PTFEは、かかる公報に記載された方法で測定される380℃における溶融粘度が10~1013poiseの範囲であり、好ましくは10~1012poiseの範囲である。
かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。また、特開平6-145520号公報に開示されているとおり、かかるフィブリル化PTFEを芯とし、低分子量のポリテトラフルオロエチレンを殻とした構造を有するものも好ましく利用される。
フィブリル化PTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F-201Lなどを挙げることができる。フィブリル化PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD-1、AD-936、ダイキン工業(株)製のフルオンD-1、D-2、三井・デュポンフロロケミカル(株)
製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
混合形態のフィブリル化PTFEとしては、(1)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60-258263号公報、特開昭63-154744号公報などに記載された方法)、(2)フィブリル化PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4-272957号公報に記載された方法)、(3)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06-220210号公報、特開平08-188653号公報などに記載された方法)、(4)フィブリル化PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9-95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11-29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のフィブリル化PTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3800」(商品名)、GEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)およびPacific Interchem Corporation社製「POLY TS AD001」(商品名)などが例示される。
上記フィブリル化PTFEは機械的強度を低下させないため、できる限り微分散されることが好ましい。かかる微分散を達成する手段として、上記混合形態のフィブリル化PTFEは有利である。また水性分散液形態のものを溶融混練機に直接供給する方法も微分散には有利である。但し水性分散液形態のものはやや色相が悪化する点に配慮を要する。混合形態におけるフィブリル化PTFEの割合としては、かかる混合物100重量%中、フィブリル化PTFEが10~80重量%が好ましく、より好ましくは15~75重量%である。フィブリル化PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、フィブリル化PTFEの良好な分散性を達成することができる。
E成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.1~30重量部であり、好ましくは0.1~28重量部、より好ましくは0.5~25重量部である。E成分の含有量が0.1重量部未満の場合、難燃性が得られず、30重量を超えると強度低下が生じる。
(F成分:レーザーマーキング用添加剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、レーザーマーキング用添加剤を含んでもよい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、レーザー照射立体回路成形用添加剤とともにレーザーマーキング用添加剤を配合することによって、レーザーマーキング用添加剤を含まないポリカーボネート樹脂組成物と比較して、レーザーを容易に吸収する。そのため、樹脂成形品としたときに、レーザーが照射された樹脂成形品の表面部分の樹脂が除去され、レーザー照射立体回路成形用添加剤が表出しやすくなる。表出されたレーザー照射立体回路成形用添加剤にはレーザーが照射されやすくなり、結果として、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、従来よりも幅広いレーザーの照射条件でも、樹脂成形品の表面に適切にメッキ層を形成することができるようになる。特に、レーザーの照射量が少なくてもメッキを形成できることから、生産性を向上させることが可能になる。
本発明で用いるレーザーマーキング用添加剤は、特に限定されるものではない。例えば、ポリカーボネート樹脂にレーザーマーキング用添加剤を2重量部添加し、200μmの厚さのフィルムをプレスで成形し、得られたフィルムの下にカーボンブラックを添加したプレートを敷いて、所定条件のレーザーを当てた際、フィルム表面に印字が可能で、カーボンブラックを添加したプレートに印字がされないことを達成できるものが挙げられる。
このようなレーザーマーキング用添加剤としては、具体的には、銅およびモリブデンを含む酸化物、ビスマス並びにガリウムおよび/またはネオジムを含む酸化物、雲母の薄片状基質に、アンチモン、砒素、ビスマス、銅、ガリウム、ゲルマニウムまたはそれらの酸化物をドープした酸化錫を被覆した顔料、水酸化銅一燐酸塩または酸化モリブデンを添加した高分子物質、低次酸化チタンおよび/またはカーボンブラックよりなる化合物が挙げられる。また、レーザーマーキング用添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明で用いるレーザーマーキング用添加剤の平均粒子径は、0.01~50μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがより好ましい。
F成分の含有量は、A成分100重量部に対し、30~200重量部であることが好ましく、40~150重量部がより好ましく、50~100重量部がさらに好ましい。含有量が30重量部未満であると金属薄膜の密着性が十分でない場合があり、200重量部を超えると強度が低下し、誘電特性が高くなる場合がある。
(G成分:無機充填材)
本発明の樹脂組成物は、G成分として無機充填材を含有することができる。該無機充填材としては、従来公知の無機充填材が使用できるが、好適に使用される無機充填材は、繊維状ガラス充填材、板状ガラス充填材、繊維状炭素充填材、非繊維状炭素充填材および珪酸塩鉱物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材であり、その中でもガラス、炭素繊維、タルク、マイカおよびワラストナイトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機充填材であることが好ましい。
(G-1;ガラス繊維)
ガラス繊維としては、ガラスファイバー、金属コートガラスファイバーおよびガラスミルドファイバー等が挙げられる。
本発明で好適に使用されるガラス繊維としては、Eガラス組成(ガラス繊維の全量に対し、52.0~56.0重量%のSiO、12.0~16.0重量%のAl、合計で20.0~25.0重量%のMgOおよびCaOおよび5.0~10.0重量%のBとを含む組成)を備えるガラス繊維(Eガラス繊維)、NEガラス組成(ガラス繊維全量に対し、52.0~57.0重量%のSiO、13.0~17.0重量%のAl、15.0~21.5重量%のB、2.0~6.0重量%のMgO、2.0~6.0重量%のCaO、1.0~4.0重量%のTiOおよび1.5重量%未満のFとを含み、かつ、LiO、NaOおよびKOの合計量が0.6重量%未満である組成)を備えるガラス繊維(NEガラス繊維)の他、Sガラス、Dガラス等に代表されるガラス繊維が適用されるが、特にNEガラス繊維が誘電特性に優れるため好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるNEガラス繊維の全量に対するSiOの含有量が52.0重量%未満であると、誘電特性を損なうとともに、耐水性及び耐酸性が低下して、ガラス繊維及びポリカーボネート樹脂組成物の劣化を引き起こす場合がある。一方、ガラス繊維の全量に対するSiOの含有量が57.0重量%を超えると、紡糸時に粘度が高くなり過ぎて、繊維化が困難となる場合がある。ガラス繊維全量に対するSiOの含有量は、52.5~56.8重量%が好ましく、53.0~56.6重量%がより好ましく、53.5~56.5重量%がさらに好ましく、53.8~56.3重量%が特に好ましく、54.0~56.2重量%が最も好ましい。
ガラス繊維全量に対するAlの含有量は、13.3~16.5重量%が好ましく、13.7~16.0重量%がより好ましく、14.0~15.5重量%がさらに好ましく、14.3~15.3重量%が特に好ましく、14.5~15.1重量%が最も好ましい。ガラス繊維全量に対するAlの含有量が13.0重量%未満であると、分相を生じ易く、耐水性が悪くなる場合がある。一方、ガラス繊維全量に対するAlの含有量が17.0重量%を超えると、液相温度が高くなるため作業温度範囲が狭くなってガラス繊維の製造が困難になる場合がある。
ガラス繊維全量に対するBの含有量は、15.5~21.0重量%が好ましく、16.0~20.5重量%がより好ましく、16.5~20.0重量%がさらに好ましく、17.5~19.4重量%が特に好ましい。Bの含有量が15.0重量%未満であると電波透過性が著しく損なわれ場合がある。一方Bの含有量が21.5重量%を超えると、紡糸時にBの揮発量が高く、ブッシングノズル付近へ付着するBの汚れによるガラス繊維の切断がみられ、作業性、生産性において問題となる場合がある。さらに、均質なガラスを得ることができず、耐水性が悪くなり過ぎる場合がある。
ガラス繊維全量に対するMgOの含有量は、2.5~5.9重量%が好ましく、2.9~5.8重量%がより好ましく、3.3~5.7重量%がさらに好ましく、3.6~5.3重量%が特に好ましく、4.0~4.8重量%が最も好ましい。ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が2.0重量%未満であると、脈理が増加し、Bの揮発量が多くなる場合がある。一方、MgOの含有量が6.0重量%を超えると分相性が強くなって耐水性が低下し、また電波透過性を大きく損なう場合がある。
ガラス繊維全量に対するCaOの含有量は、2.6~5.5重量%が好ましく、3.2~5.0重量%がより好ましく、3.7~4.7重量%がさらに好ましく、3.9~4.5重量%が特に好ましく、4.0~4.4重量%が最も好ましい。ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が2.0重量%未満であると、溶融性が悪くなるとともに、耐水性が悪くなり過ぎる場合がある。一方、CaOの含有量が6.0重量部%を超えると、誘電特性を大きく損なう場合がある。
ガラス繊維全量に対するTiOの含有量は、1.3~3.0重量%が好ましく、1.5~2.5重量%がより好ましく、1.6~2.3重量%がさらに好ましく、1.7~2.1重量%が特に好ましく、1.8~2.0重量%が最も好ましい。ガラス繊維全量に対するTiOの含有量が1.0重量%未満であると、誘電正接を下げ、粘性を低下させ、初期溶融時における溶融分離を抑制し、炉表面で発生するスカムを減少させる効果が小さくなる場合がある。一方、TiOの含有量が4.0重量%を超えると、分相を生じ易く、化学的耐久性が悪くなる場合がある。
ガラス繊維全量に対するFの含有量は、0.1~1.4重量%が好ましく、0.3~1.3重量%がより好ましく、0.4~1.2重量%がさらに好ましく、0.5~1.1重量%が特に好ましく、0.6~1.0重量%が最も好ましい。ガラス繊維全量に対するFの含有量が1.5重量%以上であると、ガラスが分相しやすくなるとともに、ガラスの耐熱性が悪くなることがある場合がある。一方、前記ガラス繊維おいて、Fを含むことでガラスの粘性が低下して溶融しやすくなるだけでなく、ガラスの誘電特性を低くすることができる場合がある。
ガラス繊維全量に対するLiO、NaO及びKOの合計量の含有量は、0.02~0.50重量%が好ましく、0.03~0.40重量%がより好ましく、0.04~0.30重量%がさらに好ましく、0.05~0.25重量%が特に好ましい。ガラス繊維全量に対するLiO、NaO及びKOの合計量が0.6重量%以上であると、誘電特性が高くなり過ぎ、また耐水性も悪くなる場合がある。一方、LiO、NaO及びKOを含むことでガラスの粘性が低下し、ガラスを溶融しやすくなる場合がある。
また、NEガラス繊維は、ガラス繊維の全量に対して0.4重量%未満の範囲で、前記した成分以外の不純物を含みうる。前記ガラス繊維が含みうる不純物としては、Fe、Cr、ZrO、MoO、SO、Cl等が挙げられる。これらの中でも、溶融ガラス中の輻射熱の吸収やガラス繊維の着色に影響するため、ガラス繊維全量に対するFeの含有量は0.05~0.15重量%の範囲とすることが好ましい。
TiOの含有率(重量%)に対するBの含有率(重量%)の比(B(重量%)/TiO(重量%))が9.6~11.4の範囲である組成を備えることが好ましい。TiOの含有率(重量%)に対するBの含有率(重量%)の比は、9.8~10.8の範囲であることがより好ましく、10.0~10.4の範囲であることがさらに好ましい。TiOの含有率(重量%)に対するBの含有率(重量%)の比が前記範囲を備えるガラス繊維を含有することで、ガラス溶融時や紡糸時の生産性を高く維持しつつ、高い電波透過性を兼ね備えることができる場合がある。
なお、NEガラス繊維において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
測定方法としては、初めに、ポリカーボネート樹脂組成物を、例えば、300~650℃のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を分解する。次に、残ったガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるLiについてはガラス粉末をアルカリおよび酸溶融にて分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率を求めることができる。
本発明において、ガラス繊維は、30~5000μmの数平均繊維長を有することが好ましい。該ガラス繊維の数平均繊維長が30μm未満であると、該ガラス繊維強化樹脂成形品において十分な引張強度及び衝撃強さを得ることができない場合がある。また、ポリカーボネート樹脂組成物の製造過程で、ガラス繊維の折損が発生するので、該ガラス繊維の数平均繊維長を5000μm超とすることは困難である。数平均繊維長は、100~3000μmの範囲であることがより好ましく、150~2000μmの範囲であることがさらに好ましく、200~1000μmの範囲であることが特に好ましく、300~500μmの範囲であることが格段に好ましく、315~450μmの範囲であることが最も好ましい。
なお、数平均繊維長の測定方法としては、初めに、ポリカーボネート樹脂組成物を、例えば、300~650℃のマッフルで0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を分解する。次に、残ったガラス繊維をガラスシャーレに移し、アセトンを用いてシャーレの表面に分散させる。次に、表面に分散した、500本以上のガラス繊維について実体顕微鏡を用いて繊維長を測定し、数平均繊維長を算出する。
本発明において、ガラス繊維は、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0~10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(以下、換算繊維径ということもある)が3.0~35.0μmの範囲にある非円形断面を備えることが好ましい。ガラス繊維がこのような断面を備える場合、ガラス繊維が円形断面を備える場合と比較して、ポリカーボネート樹脂組成物の引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さを基準とした、引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さの向上率が極めて高くなる場合がある。
前記ガラス繊維において、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、高い引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性との両立の観点から、2.2~6.0の範囲であることがより好ましく、3.2~4.5の範囲であることがさらに好ましい。なお、ガラス繊維が複数本のガラスフィラメントが集束されて形成される場合、ガラス繊維の断面形状は、ガラス繊維を形成するガラスフィラメントの断面形状を意味する。
また、前記ガラス繊維において、換算繊維径は、ポリカーボネート樹脂組成物の高い引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さと、ガラス繊維又はガラス繊維強化樹脂成形品を製造する際の製造容易性との両立の観点から、6.0~20.0μmの範囲であることがより好ましく、6.5~16.0μmであることがより好ましい。なお、ガラス繊維が複数本のガラスフィラメントが集束されて形成される場合、ガラス繊維の繊維径は、ガラス繊維を形成するガラスフィラメントの繊維径を意味する。
また、前記ガラス繊維において、非円形の形状としては、ポリカーボネート樹脂組成物を製造する際の流動性に優れることから、繭形、楕円形又は長円形(長方形の両端に半円状形状を付けたもの、あるいはそれに類似した形状をいう)が好ましく、長円形がより好ましい。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記非円形断面を備えるガラス繊維と円形断面を備えるガラス繊維との両方を含むことができる。前記非円形断面を備えるガラス繊維と円形断面を備えるガラス繊維との両方を含む場合、例えば、前記非円形断面ガラス繊維の含有率(重量%)に対する円形断面ガラス繊維の含有率(重量%)の比(円形断面を備えるガラス繊維(重量%)/非円形断面を備えるガラス繊維(重量%))は、0.1~1.0の範囲とすることができる。
また、本発明において、円形断面を備えるガラス繊維は、繊維径が7.0~13.0μmの範囲にある円形断面を備えることが好ましい。繊維径が7.0μm未満であると強度が十分でない場合があり、13.0μmを超えるとガラス繊維の加工性に劣る場合がある。
(G-2;板状ガラス充填材)
板状ガラス充填材としては、ガラスフレーク、金属コートガラスフレークおよび金属酸化物コートガラスフレーク等が挙げられる。
板状ガラス充填材の基体となるガラスフレークは、円筒ブロー法やゾル-ゲル法などに方法によって製造される板状のガラス充填材である。かかるガラスフレークの原料の大きさも粉砕や分級の程度により種々のものを選択可能である。原料に使用するガラスフレークの平均粒径は10~1000μmが好ましく、20~500μmがより好ましく、30~300μmが更に好ましい。上記範囲のものは取り扱い性と成形加工性との両立に優れるためである。通常板状ガラス充填材は樹脂との溶融混練加工により割れが生じ、その平均粒径は小径化する。熱可塑性樹脂組成物中の板状ガラス充填材の数平均粒径は10~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましく、20~80μmが更に好ましい。尚、かかる数平均粒径は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取される板状ガラス充填材の残さを光学顕微鏡観察した画像から画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際してはフレーク厚みを目安にそれ以下の長さのものはカウントしない方法による値である。また厚みとしては0.5~10μmが好ましく、1~8μmがより好ましく、1.5~6μmが更に好ましい。上記数平均粒径および厚みを有する板状ガラス充填材は良好な機械的強度、外観、成形加工性を達成する場合がある。
板状ガラス充填材のガラス組成は、Aガラス、Cガラス、およびEガラス等に代表される各種のガラス組成が適用され、特に限定されない。かかるガラス充填材は、必要に応じてTiO、SO、およびP等の成分を含有するものであってもよい。これらの中でもEガラス(無アルカリガラス)がより好ましい。また板状ガラス充填材は、周知の表面処理剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、またはアルミネートカップリング剤等で表面処理が施されたものが機械的強度の向上の点から好ましい。また、板状ガラス充填材は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましく使用される。集束処理された板状ガラス充填材の集束剤付着量は、板状ガラス充填材100重量%中好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~4重量%である。
更に板状ガラス充填材は、異種材料が表面被覆されたものを含む。かかる異種材料としては金属および金属酸化物が好適に例示される。金属としては、銀、銅、ニッケル、およびアルミニウムなどが例示される。また金属酸化物としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素などが例示される。かかる異種材料の表面被覆の方法としては特に限定されるものではなく、例えば公知の各種メッキ法(例えば、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法(例えば熱CVD、MOCVD、プラズマCVDなど)、PVD法、およびスパッタリング法などを挙げることができる。
(G-3;繊維状炭素充填材)
繊維状炭素充填材としては、例えばカーボンファイバー、金属コートカーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、気相成長カーボンファイバー、およびカーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンナノチューブは繊維径0.003~0.1μm、単層、2層、および多層のいずれであってもよく、多層(いわゆるMWCNT)が好ましい。これらの中でも機械的強度に優れる点、並びに良好な導電性を付与できる点において、カーボンファイバー、および金属コートカーボンファイバーが好ましい。尚、良好な導電性は近年のデジタル精密機器(例えばデジタルスチルカメラに代表される)において、樹脂材料に求められる重要な特性の1つになっている。
カーボンファイバーとしては、セルロース系、ポリアクリロニトリル系、およびピッチ系などのいずれも使用可能である。また芳香族スルホン酸類またはそれらの塩のメチレン型結合による重合体と溶媒よりなる原料組成を防止または成形し、次いで炭化するなどの方法に代表される不融化工程を経ない紡糸を行う方法により得られたものも使用可能である。更に汎用タイプ、中弾性率タイプ、および高弾性率タイプのいずれも使用可能である。これらの中でも特にポリアクリロニトリル系の高弾性率タイプが好ましい。また、カーボンファイバーの平均繊維径は特に限定されないが、通常3~15μmであり、好ましくは5~13μmである。かかる範囲の平均繊維径を持つカーボンファイバーは、成形品外観を損なうことなく良好な機械的強度および疲労特性を発現することができる場合がある。また、カーボンファイバーの好ましい繊維長は、熱可塑性樹脂組成物中における数平均繊維長として60~500μm、好ましくは80~400μm、特に好ましくは100~300μmのものである。尚、かかる数平均繊維長は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取されるカーボンファイバーの残さから光学顕微鏡観察などから画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際しては繊維長以下の長さのものはカウントしない方法による値である。カーボンファイバーのアスペクト比は、好ましくは10~200の範囲、より好ましくは15~100の範囲、更に好ましくは20~50の範囲である。アスペクト比は平均繊維長を平均繊維径で除した値をいう。
さらにカーボンファイバーの表面はマトリックス樹脂との密着性を高め、機械的強度を向上する目的で酸化処理されることが好ましい。酸化処理方法は特に限定されないが、例えば、(1)繊維状炭素充填材を酸もしくはアルカリまたはそれらの塩、あるいは酸化性気体により処理する方法、(2)繊維状炭素充填材化可能な繊維または繊維状炭素充填材を、含酸素化合物を含む不活性ガスの存在下、700℃以上の温度で焼成する方法、および(3)繊維状炭素充填材を酸化処理した後、不活性ガスの存在下で熱処理する方法などが好適に例示される。
金属コートカーボンファイバーは、カーボンファイバーの表面に金属層をコートしたものである。金属としては、銀、銅、ニッケル、およびアルミニウムなどが挙げられ、ニッケルが金属層の耐腐食性の点から好ましい。金属コートの方法としては、先に板状ガラス充填材における異種材料による表面被覆で述べた各種の方法が採用できる。中でもメッキ法が好適に利用される。また、かかる金属コートカーボンファイバーの場合も、元となるカーボンファイバーとしては上記のカーボンファイバーとして挙げたものが使用可能である。金属被覆層の厚みは好ましくは0.1~1μm、より好ましくは0.15~0.5μmである。更に好ましくは0.2~0.35μmである。
かかるカーボンファイバー、金属コートカーボンファイバーは、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましい。特にウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂で処理された繊維状炭素充填材は、機械的強度に優れることから本発明において好適である。
(G-4;非繊維状炭素充填材)
非繊維状炭素充填材としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、フラーレン等が挙げられる。これらの中でも機械的強度、耐湿熱性、熱安定性の点から、カーボンブラック、黒鉛が好ましい。カーボンブラックとしては、DBP吸油量が100ml/100g~500ml/100gであるカーボンブラックが導電性の点で好ましい。かかるカーボンブラックは、一般的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラックである。具体的には、例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック、キャボット社製バルカンXC-72およびBP-2000、ライオン(株)製ケッチェンブラックECおよびケッチェンブラックEC-600JD等が挙げられる。
黒鉛としては、鉱物名で石墨とされる天然黒鉛、または各種の人造黒鉛のいずれも利用することができる。天然黒鉛としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛(塊状黒鉛とも称されるVein Graphite)および鱗片状黒鉛(Flake Graphite)のいずれを利用することもできる。また人造黒鉛は、無定形炭素を熱処理し不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般炭素材料に使用される人造黒鉛の他、キッシュ黒鉛、分解黒鉛、および熱分解黒鉛などを含む。一般炭素材料に使用される人造黒鉛は、通常石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として黒鉛化処理により製造される。
本発明の黒鉛は、酸処理に代表される処理をすることで、熱膨張可能とした膨張黒鉛、または該膨張処理済みの黒鉛を含んでもよい。黒鉛の粒径は、2~300μmの範囲であることが好ましい。かかる粒径はより好ましくは5~200μm、さらに好ましくは7~100μm、特に好ましくは7~50μmである。かかる範囲を満足することにより、良好な機械的強度、成形品外観が達成される場合がある。一方、平均粒径が2μm未満であ
ると剛性の向上効果が小さくなる場合があり、平均粒径が300μmを超えると耐衝撃性の低下が著しく、成形品表面にいわゆる黒鉛の浮きが目立つようになる場合があり好ましくない。
本発明の黒鉛の固定炭素量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。また本発明の黒鉛の揮発分は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
本発明における黒鉛の平均粒径は、樹脂組成物となる以前の黒鉛自体の粒径をいい、またかかる粒径はレーザー回折・散乱法によって求められたものをいう。
また黒鉛の表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて熱可塑性樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、シランカップリング処理、および酸化処理等が施されていてもよい。
(G-5;珪酸塩鉱物)
本発明における無機充填材としては、少なくとも金属酸化物成分とSiO成分とからなる珪酸塩鉱物が挙げられ、オルトシリケート、ジシリケート、環状シリケート、および鎖状シリケートなどが好適である。珪酸塩鉱物は結晶状態を取るものであり、更に該結晶は各珪酸塩鉱物が取り得るいずれの形態であってもよく、また結晶の形状も繊維状や板状などの各種の形状を取ることができる。
珪酸塩鉱物は複合酸化物、酸素酸塩(イオン格子からなる)、固溶体のいずれの化合物でもよく、更に複合酸化物は単一酸化物の2種以上の組合せ、および単一酸化物と酸素酸塩との2種以上の組合せのいずれであってもよく、更に固溶体においても2種以上の金属酸化物の固溶体、および2種以上の酸素酸塩の固溶体のいずれであってもよい。また水和物であってもよい。水和物における結晶水の形態はSi-OHとして水素珪酸イオンとして入るもの、金属陽イオンに対して水酸イオン(OH-)としてイオン的に入るもの、および構造の隙間にHO分子として入るもののいずれの形態であってもよい。
珪酸塩鉱物としては、天然物に対応する人工合成物を使用することもできる。人工合成物としては、従来公知の各種の方法、例えば固体反応、水熱反応、および超高圧反応などを利用した各種の合成法、から得られた珪酸塩鉱物が利用できる。
各金属酸化物成分における珪酸塩鉱物の具体例としては以下のものが挙げられる。ここでカッコ内の表記はかかる珪酸塩鉱物を主成分とする鉱物等の名称であり、例示された金属塩としてカッコ内の化合物が使用できることを意味する。
Oをその成分に含むものとしては、KO・SiO、KO・4SiO・HO、KO・Al・2SiO(カルシライト)、KO・Al・4SiO(白リュウ石)、およびKO・Al・6SiO(正長石)、などが挙げられる。
NaOをその成分に含むものとしては、NaO・SiO、およびその水化物、NaO・2SiO、2NaO・SiO、NaO・4SiO、NaO・3SiO・3HO、NaO・Al・2SiO、NaO・Al・4SiO(ヒスイ輝石)、2NaO・3CaO・5SiO、3NaO・2CaO・5SiO、およびNaO・Al・6SiO(曹長石)などが挙げられる。
LiOをその成分に含むものとしては、LiO・SiO、2LiO・SiO
、LiO・SiO・HO、3LiO・2SiO、LiO・AlO3・4SiO(ペタライト)、LiO・Al・2SiO(ユークリプタイト)、およびLiO・Al・4SiO(スポジュメン)などが挙げられる。
BaOをその成分に含むものとしては、BaO・SiO、2BaO・SiO、BaO・Al・2SiO(セルシアン)、およびBaO・TiO・3SiO(ベントアイト)などが挙げられる。
CaOをその成分に含むものとしては、3CaO・SiO(セメントクリンカー鉱物のエーライト)、2CaO・SiO(セメントクリンカー鉱物のビーライト)、2CaO・MgO・2SiO(オーケルマナイト)、2CaO・Al・SiO(ゲーレナイト)、オーケルマナイトとゲーレナイトとの固溶体(メリライト)、CaO・SiO(ワラストナイト(α-型、β-型のいずれも含む))、CaO・MgO・2SiO(ジオプサイド)、CaO・MgO・SiO(灰苦土カンラン石)、3CaO・MgO・2SiO(メルウイナイト)、CaO・Al・2SiO(アノーサイト)、5CaO・6SiO・5HO(トバモライト、その他5CaO・6SiO・9HOなど)などのトバモライトグループ水和物、2CaO・SiO・HO(ヒレブランダイト)などのワラストナイトグループ水和物、6CaO・6SiO・HO(ゾノトライト)などのゾノトライトグループ水和物、2CaO・SiO・2HO(ジャイロライト)などのジャイロライトグループ水和物、CaO・Al・2SiO・HO(ローソナイト)、CaO・FeO・2SiO(ヘデンキ石)、3CaO・2SiO(チルコアナイト)、3CaO・Al・3SiO(グロシュラ)、3CaO・Fe・3SiO(アンドラダイト)、6CaO・4Al・FeO・SiO(プレオクロアイト)、並びにクリノゾイサイト、紅レン石、褐レン石、ベスブ石、オノ石、スコウタイト、およびオージャイトなどが挙げられる。
更にCaOをその成分に含む珪酸塩鉱物としてポルトランドセメントを挙げることができる。ポルトランドセメントの種類は特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中よう熱、耐硫酸塩、白色などのいずれの種類も使用できる。更に各種の混合セメント、例えば高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどもB成分として使用できる。またその他のCaOをその成分に含む珪酸塩鉱物として高炉スラグやフェライトなどを挙げることができる。
ZnOをその成分に含むものとしては、ZnO・SiO、2ZnO・SiO(トロースタイト)、および4ZnO・2SiO・HO(異極鉱)などが挙げられる。
MnOをその成分に含むものとしては、MnO・SiO、2MnO・SiO、CaO・4MnO・5SiO(ロードナイト)およびコーズライトなどが挙げられる。
FeOをその成分に含むものとしては、FeO・SiO(フェロシライト)、2FeO・SiO(鉄カンラン石)、3FeO・Al・3SiO(アルマンジン)、および2CaO・5FeO・8SiO・HO(テツアクチノセン石)などが挙げられる。
CoOをその成分に含むものとしては、CoO・SiOおよび2CoO・SiOなどが挙げられる。
MgOをその成分に含むものとしては、MgO・SiO(ステアタイト、エンスタタイト)、2MgO・SiO(フォルステライト)、3MgO・Al・3SiO(バイロープ)、2MgO・2Al・5SiO(コーディエライト)、2MgO・3SiO・5HO、3MgO・4SiO・HO(タルク)、5MgO・8SiO・9HO(アタパルジャイト)、4MgO・6SiO・7HO(セピオライト
)、3MgO・2SiO・2HO(クリソライト)、5MgO・2CaO・8SiO・HO(透セン石)、5MgO・Al・3SiO・4HO(緑泥石)、KO・6MgO・Al・6SiO・2HO(フロゴバイト)、NaO・3MgO・3Al・8SiO・HO(ランセン石)、並びにマグネシウム電気石、直セン石、カミントンセン石、バーミキュライト、スメクタイトなどが挙げられる。
Feをその成分に含むものとしては、Fe・SiOなどが挙げられる。
ZrOをその成分に含むものとしては、ZrO・SiO(ジルコン)およびAZS耐火物などが挙げられる。
Alをその成分に含むものとしては、Al・SiO(シリマナイト、アンダリューサイト、カイアナイト)、2Al・SiO、Al・3SiO、3Al・2SiO(ムライト)、Al・2SiO・2HO(カオリナイト)、Al・4SiO・HO(パイロフィライト)、Al・4SiO・HO(ベントナイト)、KO・3NaO・4Al・8SiO(カスミ石)、KO・3Al・6SiO・2HO(マスコバイト、セリサイト)、KO・6MgO・Al・6SiO・2HO(フロゴバイト)、並びに各種のゼオライト、フッ素金雲母、および黒雲母などを挙げることができる。
上記の珪酸塩鉱物の中でも特に好適であるのは、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、耐湿熱性や熱安定性や外観にも優れ、更に入手も容易である点でから、タルク、マイカ、ワウォラストナイトである。
(G-5-i)タルク
タルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO・3MgO・2HOで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiOを56~65重量%、MgOを28~35重量%、HO約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFeが0.03~1.2重量%、Alが0.05~1.5重量%、CaOが0.05~1.2重量%、KOが0.2重量%以下、NaOが0.2重量%以下などを含有している。より好適なタルクの組成としては、SiO:62~63.5重量%、MgO:31~32.5重量%、Fe:0.03~0.15重量%、AlO3:0.05~0.25重量%、およびCaO:0.05~0.25重量%が好ましい。更に強熱減量が2~5.5重量%であることが好ましい。かかる好適な組成においては、良好な熱安定性および色相を有する樹脂組成物が得られ、更なる成形加工温度の上昇によっても良好な成形品が製造される。これにより本発明の組成物は更に高流動化が可能となり、より大型または複雑形状の薄肉成形品に対応可能となる。
タルクの粒子径は、沈降法により測定される平均粒径が0.1~50μm(より好ましくは0.1~10μm、更に好ましくは0.2~5μm、特に好ましくは0.2~3.5μm)の範囲であることが好ましい。したがって、本発明のより好適なタルクは、上記の好ましい組成を有し、かつ平均粒径が0.2~3.5μmのタルクである。更にかさ密度を0.5(g/cm)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。かかる条件を満足するタルクとして、林化成(株)製「Upn HS-T0.8」が例示される。タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、ア
ニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
(G-5-ii)マイカ
マイカは、その平均粒径が5~250μmのものが好ましく使用できる。より好ましくはレーザー回折・散乱法で測定される平均粒径(D50(粒子径分布のメジアン径))が5~50μmのマイカである。マイカの平均粒径が5μm未満では剛性向上の効果が得られにくくなる。一方250μmを超える平均粒径のマイカを含有する樹脂組成物は、機械的物性が飽和傾向にある一方で外観や難燃性が劣るようになる場合がある。尚、マイカの平均粒径は、レーザー回折・散乱法または振動式篩分け法により測定される。レーザー回折・散乱法は、振動式篩分け法により325メッシュパスが、95重量%以上のマイカに対して行うのが好適である。それ以上の粒径のマイカに対しては、振動式篩分け法を使用するのが一般的である。本発明の振動式篩分け法は、まず振動篩器を用い使用するマイカ粉体100gを目開きの順番に重ねたJIS規格の標準篩により10分間篩分けを行う。各篩の上に残った粉体の重量を測定して粒度分布を求める方法である。
マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは厚みが0.03~0.3μmである。アスペクト比としては5~200、より好ましくは10~100のものを好ましく使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。したがって、本発明のより好適なマイカは、平均粒径が5~250μm、より好ましくは5~50μmであるマスコバイトである。かかる好適なマイカとしては例えば(株)山口雲母工業所製「A-21」が例示される。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効である(樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる)。本発明では、湿式粉砕法のマイカがより好適である。
(G-5-iii)ワラストナイト
ワラストナイトの繊維径は0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。一方平均繊
維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。ワラストナイトは、その元来有する白色度を十分に樹脂組成物に反映させるため、原料鉱石中に混入する鉄分並びに原料鉱石を粉砕する際に機器の摩耗により混入する鉄分を磁選機によって極力取り除くことが好ましい。かかる磁選機処理によりワラストナイト中の鉄の含有量はFeに換算して、0.5重量%以下であることが好ましい。したがって、本発明のより好適なワラストナイトは、その繊維径が0.1~10μm、より好ましくは0.1~5μm、更に好ましくは0.1~3μmであり、平均粒径が5~250μm、より好ましくは5~50μmであり、鉄の含有量はFeに換算して0.5重量%以下のワラストナイトである。かかる好適なワラストナイトとしては例えばキンセイマテック社製「SH-1250」、「SH-1800」、関西マテック社製「KGP-H40」、NYCO社製「NYGLOS4」等が例示される。
珪酸塩鉱物は、表面処理されていないことが好ましいが、シランカップリング剤(アルキルアルコキシシランやポリオルガノハイドロジェンシロキサンなどを含む)、高級脂肪酸エステル、酸化合物(例えば、亜リン酸、リン酸、カルボン酸、およびカルボン酸無水物など)並びにワックスなどの各種表面処理剤で表面処理されていてもよい。さらに各種樹脂、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。本発明における珪酸塩鉱物において特に好適であるのはタルクやワウォラストナイトである。かかるタルクやワウォラストナイトは剛性と耐衝撃性との両立において良好であり、ポリカーボネート樹脂に配合した場合の色相の悪化および外観の悪化(例えばシルバーストリークの発生)が小さい。
G成分の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは1~2500重量部、より好ましくは50~2200重量部、さらに好ましくは100~2000重量部である。含有量が1重量部未満では、製品の強度を満足するには不十分である場合があり、2500重量部を超えると、ストランド加工性が悪く良好なペレットが得られない場合がある。
(その他の添加剤について)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形加工時の分子量低下や色相を安定化させるための各種安定剤、離型剤、色剤、衝撃改質剤等を使用することができる。
(i)安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には公知の各種安定剤を配合することができる。安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤などが挙げられる。
(i-1)リン系安定剤
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。これらの中でも特に、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、およびホスホン酸、トリオルガノホスフェート化合物、およびアシッドホスフェート化合物が好ましい。尚、アシッドホスフェート化合物における有機基は、一置換、二置換、およびこれらの混合物のいずれも含む。該化合物に対応する下記の例示化合物においても同様にいずれをも含むものとする。
トリオルガノホスフェート化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、およびトリブトキシエチルホスフェートなどが例示される。これらの中でもトリアルキルホスフェートが好ましい。かかるトリアルキルホスフェートの炭素数は、好ましくは1~22、より好ましくは1~4である。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリメチルホスフェートである。
アシッドホスフェート化合物としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、およびビスフェノールAアシッドホスフェートなどが例示される。これらの中でも炭素数10以上の長鎖ジアルキルアシッドホスフェートが熱安定性の向上に有効であり、該アシッドホスフェート自体の安定性が高いことから好ましい。
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス
(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
好適なリン系安定剤は、トリオルガノホスフェート化合物、アシッドホスフェート化合物、および下記一般式(24)で表されるホスファイト化合物である。殊にトリオルガノホスフェート化合物を配合することが好ましい。
Figure 2022114253000034
(上記一般式(24)において、RおよびR’は炭素数6~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
上記の如く、ホスホナイト化合物としてはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P-EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P-EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。
また上記式(24)の中でもより好適なホスファイト化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
(i-2)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール化合物としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
上記化合物の中でも、本発明においてはテトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特に3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤はいずれかが配合されることが好ましい。殊にリン系安定剤が配合されることが好ましく、トリオルガノホスフェート化合物が配合されることがより好ましい。リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、それぞれA成分100重量部に対し、好ましくは0.005~5重量部、より好ましくは0.1~4重量部である。
(i-3)紫外線吸収剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な色相をも有することから、紫外線吸収剤の配合により屋外の使用においてもかかる色相を長期間維持することができる。
ベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.1~100重量部、より好ましくは0.2~80重量部、更に好ましくは0.5~70重量部、最も好ましくは1~60重量部である。
(i-4)その他の熱安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、上記のリン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかるその他の熱安定剤は、これらの安定剤および酸化防止剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。かかる他の熱安定剤としては、例えば3-ヒドロキシ-
5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(かかる安定剤の詳細は特開平7-233160号公報に記載されている)が好適に例示される。かかる化合物はIrganox HP-136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば上記社製のIrganox HP-2921が好適に例示される。本発明においてもかかる予め混合された安定剤を利用することもできる。ラクトン系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.0005~0.05重量部、より好ましくは0.001~0.03重量部である。
またその他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤が例示される。かかる安定剤は、ポリカーボネート樹脂組成物が回転成形に適用される場合に特に有効である。かかるイオウ含有安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.1~2重量部である。
(ii)離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、その成形時の生産性向上や成形品の寸法精度の向上を目的として、更に、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などの公知の離型剤を配合することもできる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、良好な流動性を有することから圧力伝播が良好で、歪の均一化された成形品が得られる。一方で離型抵抗が大きくなるような複雑形状の成形品の場合、離型時における成形品の変形を招く恐れがある。上記特定の成分の配合は、かかる問題をポリカーボネート樹脂組成物の特性を損なうことなく解決するものである。
かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数は、好ましくは3~32、より好ましくは5~30である。一方、脂肪族カルボン酸は好ましくは炭素数3~32、より好ましくは炭素数10~30の脂肪族カルボン酸である。その中でも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。本発明の脂肪酸エステルは、全エステル(フルエステル)が高温時の熱安定性に優れる点で好ましい。本発明の脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30の範囲がより好ましい。更に脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
ポリオレフィン系ワックスとしては、分子量が1,000~10,000である、エチレン単独重合体、炭素原子数3~60のα-オレフィンの単独重合体または共重合体、もしくはエチレンと炭素原子数3~60のα-オレフィンとの共重合体が例示される。かかる分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により標準ポリスチレン換算で測定される数平均分子量である。かかる数平均分子量の上限は、より好ましくは6,000、更に好ましくは3,000である。ポリオレフィン系ワックスにおけるα-オレフィン成分の炭素数は好ましくは60以下、より好ましくは40以下である。より好適な具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンなどが例示される。好適なポリオレフィン系ワックスはエチレン単独重合体、もしくはエチレンと炭素原子数3~60のα-オレフィンとの共重合体である。炭素原子数3~60のα-オレフィンの割合は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。いわゆるポリエチレンワックスとして市販されている
ものが好適に利用される。
離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.05~15重量部、より好ましくは0.1~12重量部、更に好ましくは0.5~10重量部である。
(iii)染顔料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。本発明で使用する染顔料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、アルミ粉が好適である。また、蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
染顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、0.00001~10重量部が好ましく、0.00005~8重量部がより好ましい。
(iv)熱線吸収能を有する化合物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は熱線吸収能を有する化合物を含有することができる。かかる化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウム、酸化イモニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系や酸化タングステン系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR-362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含む)およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0005~1重量部が好ましく、0.0008~0.8重量部がより好ましく、0.001~0.7重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーの含有量は、本発明の樹脂組成物中、0.1~200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5~100ppmの範囲がより好ましい。
(v)光拡散剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、光拡散剤を配合して光拡散効果を付与することができる。かかる光拡散剤としては高分子微粒子、炭酸カルシウムの如き低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示される。かかる高分子微粒子は、既にポリカーボネート樹脂の光拡散剤として公知の微粒子である。より好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン架橋粒子などが例示される。光拡散剤の形状は球形、円盤形、柱形、および不定形などが例示される。かかる球形は、完全球である必要はなく変形しているものを含み、かかる柱形は立方体を含む。好ましい光拡散剤は球形であり、その粒径は均一であるほど好ましい。光拡散剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.05~400重量部、より好ましくは0.1~300重量部、更に好ましくは0.5~200重量部である。尚、光拡散剤は2種以上を併用することができる。
(vi)光高反射用白色顔料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、光高反射用白色顔料を配合して光反射効果を付与することができる。かかる白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましい。かかる光高反射用白色顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、1~500重量部が好ましく、5~300重量部がより好ましい。尚、光高反射用白色顔料は2種以上を併用することができる。
(vii)帯電防止剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量はA成分100重量部に対し、100重量部以下が適切であり、好ましくは0.05~100重量部、より好ましくは1~80重量部、更に好ましくは1.5~70重量部の範囲である。
帯電防止剤としては例えば、(2)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、および有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。かかる金属塩は前述のとおり、難燃剤としても使用される。かかる金属塩は、より具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量はA成分100重量部に対し、20重量部以下が適切であり、好ましくは0.01~20重量部、より好ましくは0.05~10重量部である。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
帯電防止剤としては、例えば(3)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩はA成分、B成分とC成分の合計100重量部を基準として、2重量部以下が適切である。帯電防止剤としては、例えば(4)ポリエーテルエステルアミドの如きポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部に対し、100重量部以下が適切である。
(viii)その他の添加剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、A成分、B成分以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、その他の流動改質剤、抗菌剤、流動パラフィンの如き分散剤、光触媒系防汚剤およびフォトクロミック剤、イオン液体などを配合することができる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフ
ィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、並びに熱可塑性フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される)等の樹脂が挙げられる。
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは4000重量部以下、より好ましくは3000重量部以下である。
(ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることができる。例えばA成分、B成分、C成分、D成分、E成分および任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどによりかかる予備混合物の造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、その後ペレタイザーによりペレット化する方法が挙げられる。
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、超臨界流体を用いた溶融混錬機に供給する方法、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。各成分の一部を予備混合する方法としては例えば、A成分以外の成分を予め予備混合した後、A成分に混合または押出機に直接供給する方法が挙げられる。予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドしてパウダーで希釈した添加剤のマスターバッチを製造し、かかるマスターバッチを利用する方法が挙げられる。更に一成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。 溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の低減、運送または輸送時に発生する微小粉の低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1~5mm、より好ましくは1.5~4mm、さらに好ましくは2~3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1~30mm、より好ましくは2~5mm、さらに好ましくは2.5~3.5mmである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、回路形成安定剤、レーザー照射立体回路成形用添加剤、難燃剤および含フッ素滴下防止剤からなる樹脂組成物は、強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性・長期耐久性を兼ね備えることから、建築物、建築資材、農業資材、海洋資材、車両、電気・電子機器、機械、その他の各種分野における広帯域なアンテナ、および該アンテナを電子装置に三次元設計用機材として好適に用いることができる。したがって本発明の奏する産業上の効果は極めて大である。
本発明を実施するための形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
1.芳香族ポリカーボネート樹脂の評価
(i)粘度平均分子量(Mv)
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂を溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4 Mv0.83
c=0.7
2.樹脂組成物の評価
(i)衝撃特性(シャルピー衝撃値)(ノッチ有)
下記の方法で得られた長さ80mm×幅10mm×厚み4mmの試験片を用いてISO179(測定条件23℃)に準拠して測定した。
(ii)表面外観
下記の方法で得られた成形用材料の表面外観を目視観察し、C成分の分散性が不十分だったことにより発生する外観不良が確認されなかったものを○(良好)、部分的に確認されたものを△(やや良好)、成形品表面全体に確認されたものを×(不良)とした。
(iii)誘電特性
下記の方法で得られた長さ300mm×幅300mm×厚み1mmの試験片を用いて、エッチングにより、長さ20cmのマイクロストラップラインを作成し、ベクトルネットワークアナライザーを用いて10GHzにおける電波透過性を測定した。この数値が高いほど誘電特性が低くなる。
(iV)密着性
下記の方法で得られた50mm×100mm×1mmの板状試験片を用い下記条件にてメッキをした後、金属薄膜と樹脂との密着性評価を実施した。なお碁盤目剥離試験は「JISK5600 塗料一般試験方法」の4-6に準拠して実施した。
○:メッキ未着部が全くない。且つ、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生なし。
△:メッキ未着部が全くないが、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生あり。
×:メッキ未着部が発生する。且つ、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生あり。
(V)長期耐久性
下記の方法で得られた50mm×100mm×1mmの板状試験片を用い下記条件にてメッキをした後、80℃・85%RH環境下にて1,000時間処理をしたのち、(iii)と同様の密着性評価を実施した。
○:メッキ未着部が全くない。且つ、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生なし。
△:メッキ未着部が全くないが、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生あり。
×:メッキ未着部が発生する。且つ、セロハンテープによる碁盤目剥離試験にて剥離発生あり。
(VI)難燃性
UL94規格に従って下記の方法で得られた作成した厚さ1.5mmの試験片を用いて試験を行った。試験の結果に基づいてUL-94 V-0、V-1、V-2および規格外Not-Vのいずれかの等級に評価した。本発明の樹脂組成物の難燃性は、V-0にする必要がある。
[実施例1~16、比較例1~8]
(評価試験片の作成)
芳香族ポリカーボネート樹脂、回路形成安定剤、レーザー照射立体回路成形用添加剤、難燃剤、含フッ素滴下防止剤および各種添加剤を表2および表3記載の各配合量でブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。使用する各種添加剤は、それぞれ配合量の10~100倍の濃度を目安に予め芳香族ポリカーボネート樹脂との予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。押出は径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α-38.5BW-3V)を使用し、スクリュー回転数230rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaで、押出温度は第一供給口から第二供給口まで300℃、第二供給口からダイス部
分まで310℃として溶融混練しペレットを得た。ポリカーボネート樹脂および添加剤は第一供給口から押出機に供給した。ここでいう第一供給口とはダイスから最も離れた供給口である。得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後に、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG-150U)によりシリンダー温度300℃、金型温度80℃の成形条件で、評価用の試験片を成形した。
かかる成形品のうち、密着性、長期耐久性評価は以下に示す条件にしたがってメッキを施したのちに実施した。メッキ工程として、得られた試験片をキーエンス製MDX-2000を用いて1064nmのYVO4レーザーにて周波数80kHz、速度2m/s、出力1.45W、レーザースポット径60μm、オーバーラップ30μmの条件にて幅5mmの印字を行った後、下記の操作を実施した。
(a)脱脂(45℃で5分間) OPCクリーナーMIC* 150ml/L
(b)超音波水洗(室温で2分間)
(c)無電解銅(55℃、10分)OPCカッパーMIC-ST*
(d)水洗(1分)
(e)活性化(30℃、1分間) ICPアクセラ200ml/L、35%塩酸85ml/L
(f)水洗(1分)
(g)無電解ニッケル(80℃、10分間)ICP二コロンGM-M 120ml/L、ICP二コロンGM-1 50ml/L
(h)乾燥
(処理液で*印の処理液は奥野製薬工業(株)の商品名である。)
各評価結果を表2および表3に示した。なお、表2および表3中の記号表記の各成分は下記の通りである。
(A成分)
A-1: 芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量15,500のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトCM-1000(製品名))
A-2: 芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量19,700のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトL-1225WX(製品名))
A-3:芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量23,900のポリカーボネート樹脂粉末、帝人(株)製 パンライトL-1250WP(製品名))
A-4:ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(粘度平均分子量23,500、PDMS量8.4%、PDMS重合度37)
(B成分)
B-1-1:温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器を、窒素置換により窒素雰囲気下にした後、25%水酸化ナトリウム水溶液93.3部およびイオン交換水182部を仕込み、これに1,1-ビス(4-ヒドロキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下、BP-TMCと記載)11.8部、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、BP-Cと記載)39.9部、およびハイドロサルファイトナトリウム0.1部を溶解した後、塩化メチレン231部を加えた。続いてその反応容器を窒素で10分間パージした後、撹拌下、18~21℃でホスゲン25部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、25%水酸化ナトリウム水溶液15.6部およびp-tert-ブチルフェノール1.05部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン0.05部を加え、さらに20~27℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、室温にて生成物を塩化メチレンで希釈して水洗し、続いて塩酸酸性にして水洗
した。水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで純水にて水洗を繰り返し、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液を得た。次いで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネートをフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。
B-1-2:BP-TMC 29.6部、BP-C 24.9部とした以外は、B-1-1と同様の操作を行い、パウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。
B-1-3:温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液4,760部およびイオン交換水20,779部を仕込み、これに1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン4,271部、およびハイドロサルファイト8.54部を溶解した後、塩化メチレン15,945部を加え、撹拌下、15~25℃でホスゲン2,000部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液595部およびp-tert-ブチルフェノール86.6部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン5.01部を加え、さらに26~33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネートをフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。
B-1-4:温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器を、窒素置換により窒素雰囲気下にした後、48%水酸化ナトリウム水溶液592部およびイオン交換水2,909部を仕込み、これに1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン135部、BP-C255部、およびハイドロサルファイト1.1部を溶解した後、塩化メチレン1,984部を加えた。続いてその反応容器を窒素で10分間パージした後、撹拌下、18~21℃でホスゲン240部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液74部およびp-tert-ブチルフェノール81部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン0.5部を加え、さらに20~27℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、室温にて生成物を塩化メチレンで希釈して水洗し、続いて塩酸酸性にして水洗した。水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで純水にて水洗を繰り返し、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液を得た。次いで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネートをフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。
B-2-1:温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液4,555部およびイオン交換水22,730部を仕込み、これに9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン298部、BP-C1,820部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BP-Aと記載)1,799部、p-tert-ブチルフェノール71.0部、およびハイドロサルファイト7.94部を溶解した後、塩化メチレン13,415部を加え、撹拌下、15~25℃でホスゲン2,000部を約70分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液650部およびp-tert-ブチルフェノール87.6部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン3.94部を加え、さらに28~35℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸を加え、酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフ
ィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネートをフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。
B-2-2:温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液3844部およびイオン交換水22,380部を仕込み、これにBP-C1,992部(7.8モル)、BP-A1,773部(7.8モル)を溶解した後、塩化メチレン13,210部を加え、撹拌下、15~25℃でホスゲン2,000部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液640部およびp-tert-ブチルフェノール93.2部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン3.24部を加え、さらに28~33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネートをフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。
(C成分)
C-1:アンチモン酸化スズコート酸化チタン(三菱マテリアル(株)製W-1)
C-2:銅、クロムの複合酸化物(シェファードカラージャパンインク製ブラック1G)
(D成分)
D-1:ハロゲン系難燃剤(帝人(株)製 FG-7000)
D-2:縮合リン酸エステル難燃剤(大八化学工業(株)製 PX-200)
D-3:ホスファゼン((株)伏見製作所製FP-110T)
D-4:パーフルオロアルカンスルホン酸カリウム(大日本インキ化学工業(株)製 F-114P)
D-5:シリコーン系難燃剤(信越化学工業(株)製 X-40-2600J)
(E成分)
E-1:ポリテトラフルオロエチレン(三菱ケミカル(株)製 メタブレンA3750)
(F成分)
F-1:チタンブラック(三菱マテリアル(株)製13M)
F-2:三酸化ビスマス+三酸化ネオジム混合物(TOMATEC(株)製42-920A)
(G成分)
G-1:表1記載の組成1からなる円形断面ガラス繊維(繊維径11μm、カット長3mm、長径/短径比=1.0)
G-2:表1記載の組成1からなる非円形断面ガラス繊維(繊維径15μm、カット長3mm、長径28μm、短径7μm)
G-3:タルク[(株)勝光山鉱業所 ビクトリライトTK-RC]
Figure 2022114253000035
(その他成分)
S-1:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(アデカ製2112)
S-2:3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(アデカ製AO-80)
UV:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製:Tinuvin234)
L:低分子量ポリエチレン(三井化学(株)製ハイワックスHW405MP(商品名))CB:カーボンブラック(越谷化成工業(株)製 RB-90003S)
Figure 2022114253000036
Figure 2022114253000037
表2および表3から本発明の配合により、強度、外観、難燃性、低誘電特性に加え、回路形成時の金属薄膜との良好な密着性および長期耐久性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることがわかる。

Claims (16)

  1. (A)B成分を除く芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)回路形成安定剤(B成分)70~3500重量部、(C)レーザー照射立体回路成形用添加剤30~200重量部、(D)難燃剤(D成分)0.05~1000重量部および(E)含フッ素滴下防止剤(E成分)0.1~30重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. A成分が、下記式(1)で表されるポリカーボネートブロックおよび下記式(3)で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A-1成分)を1~100重量%含む芳香族ポリカーボネート樹脂であり、かつA-1成分100重量%中のポリジオルガノシロキサン含有量が0.05~20.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2022114253000038
    (上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a及びbは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
    Figure 2022114253000039
    (上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数である。)
    Figure 2022114253000040
    (上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、e及びfは夫々1~4の整数であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
  3. B成分が、(B-1)下記式(4)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物(B-1成分)および(B-2)B-1成分を除く下記式(5)で表されるカーボネート構成単位を10モル%以上含む化合物(B-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む回路形成安定剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2022114253000041
    (上記一般式(4)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、RおよびRは夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは0~10の整数を表す。)
    Figure 2022114253000042
    (上記一般式(5)において、RおよびRは各々独立に炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいシクロアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリール基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキル基から選ばれる基を表し、RおよびRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいシクロアルキル基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリール基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキル基、炭素原子数2~20の置換されていてもよいアルケニル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数6~20の置換されていてもよいシクロアルコキシ基、炭素原子数6~15の置換されていてもよいアリールオキシ基、炭素原子数7~15の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシ基からから選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、a、bは1~3の自然数であり、Wは単結合もしくは上記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
  4. C成分が、少なくとも2種の金属を含むレーザー照射立体回路成形用添加剤であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. C成分が銅、クロム、スズおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも2種の金属を含む化合物であることを特徴とする請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. D成分がハロゲン系難燃剤、縮合リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、有機金属塩系難燃剤およびシリコーン系難燃剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の難燃剤を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. B-2成分が、(B-2-1)下記式(6)で表される構成単位(A)、下記式(7)で表される構成単位(B)および下記式(8)で表される構成単位(C)から構成され、全構成単位における構成単位(A)の割合が5~15モル%、構成単位(B)の割合が20~60モル%、構成単位(C)の割合が25~75モル%である化合物(B-2-1成分)並びに(B-2-2)下記式(7)で表される繰り返し構成単位(B)および下記式(8)で表される繰り返し構成単位(C)から構成され、全構成単位における構成単位(B)の割合が20~100モル%、構成単位(C)の割合が0~80モル%である化合物(B-2-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む回路形成安定剤であることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2022114253000043
    (上記一般式(6)において、RおよびRは夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1~9の炭化水素基またはハロゲン原子である。)
    Figure 2022114253000044
    (上記一般式(7)において、RおよびRは夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
    Figure 2022114253000045
    (上記一般式(8)において、Wは単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基である。)
  8. 構成単位(A)が9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンから誘導された構成単位、構成単位(B)が2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位、構成単位(C)が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位であることを特徴とする請求項7に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. B-1成分が1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1、1-ビス(3-tert―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンまたは1,1-ビス(4-ヒドロキシー3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから誘導された構成単位を20モル%以上含む化合物であることを特徴とする請求項3~8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  10. A成分100重量部に対し、(F)レーザーマーキング用添加剤(F成分)30~200重量部を含有することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  11. A成分100重量部に対し、(G)無機充填材(G成分)1~2500重量部を含有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  12. G成分が、ガラス、炭素繊維、タルク、マイカおよびワラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材であることを特徴とする請求項11に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  13. G成分が(G-1)数平均繊維長が30~5000μm、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0~10.0、断面積を真円に換算したときの繊維径が3.0~35.0μmである非円形断面ガラス繊維(G-1成分)および(G-2)数平均繊維長が30~5000μm、平均繊維径が7.0~13.0μmである円形断面ガラス繊維(G-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種のガラス繊維であることを特徴とする請求項11または12に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  14. G成分が、ガラス繊維全量に対し、52.0~57.0重量%のSiO、13.0~17.0重量のAl、15.0~21.5重量%のB、2.0~6.0重量%のMgO、2.0~6.0重量%のCaO、1.0~4.0重量%のTiOおよび1.5重量%未満のFとを含み、かつ、LiO、NaOおよびKOの合計量が0.6重量%未満であるガラス繊維であることを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物
  15. 回路成型用である請求項1~14のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  16. 請求項15に記載の回路形成用ポリカーボネート樹脂組成物からなる通信機器用回路成形品。
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