JP2022110663A - 坩堝、結晶体および光学素子 - Google Patents

坩堝、結晶体および光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶の外側面付近に添加元素が偏析する現象を抑制できる坩堝と、その坩堝を用いて得られる結晶体と、その結晶体を用いた光学素子とを提供すること。【解決手段】結晶の原料となる融液を溜める融液貯留部24と、結晶の形状を制御するノズル部34と、を有する坩堝である。ノズル部34は、融液を融液貯留部24からノズル部34の端面35に流出させるノズル孔36を有する。ノズル孔36の端面35でのノズル孔出口38は、端面35の外周縁35aの近くに位置するノズル孔形成領域40に配置してある。ノズル孔形成領域40の内側に位置する端面35の中心42を含む領域は、ノズル孔出口38が実質的に形成されないノズル孔非形成領域44である。【選択図】図2A

Description

本発明は、たとえばマイクロ引き下げ法(以下、μ-PD法ともいう)などに用いる坩堝と、その坩堝を用いて育成される結晶体と、その結晶体を用いた光学素子に関する。
μ-PD法は、坩堝底部に形成されたノズル孔を通過する原料融液を種結晶に接触させた後、種結晶を下方に移動することで結晶成長を行う方法の一種である。坩堝内の均一な原料融液が、ノズル孔から連続的かつ強制的に排出して結晶化するため、結晶成長方向の組成変動が少ない特徴を有する。
またノズル孔が設置され、ノズル孔を通過して坩堝外側に出た原料融液が濡れ拡がるノズル面の形状により、結晶成長面の形状を規定できるため、結晶成長時の形状精度が高い結晶が育成可能である。
単結晶材料は、目的の材料特性を付加させる手段として、単結晶構成元素以外の異種元素(ドーパント)を添加させる事例が多い。特に、レーザー用光学結晶、非線形光学結晶、シンチレータ用発光結晶、蛍光体結晶等の光学結晶は、ドーパントにより光学特性が大きく変化するため、結晶内のドーパント濃度分布が、結晶全体の光学特性に大きく作用する。
特許文献1に記載の坩堝では、ノズルの端面に複数のノズル孔を設け、結晶内の添加元素の均一化を図っている。しかしながら、従来の坩堝の構成では、特に偏析係数が1より小さい元素を添加元素とする場合には、結晶の外側面付近に添加元素が偏析しやすいことが本発明者により判明した。
特開2008-239352号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、結晶の外側面付近に添加元素が偏析する現象を抑制できる坩堝と、その坩堝を用いて得られる結晶体と、その結晶体を用いた光学素子とを提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明者は、ノズル孔の配置を工夫し、結晶育成(たとえばμ-PD法)時の原料融液の流れを制御することで、特に偏析係数が1未満の添加元素が結晶の外側面近く(ノズル部の端面の外端縁付近)に偏析する現象を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
より具体的には、原料融液がノズル孔を通過した後、結晶成長面に沿って移動する際の流れの方向を、結晶の外周から内側にすることで、結晶の外側面近くに偏析する現象が抑制できることを見出した。
なお、添加元素の結晶内での偏析係数が1未満であると言うことは、同元素が結晶構成元素より結晶内に取り込まれにくい状況を示唆する。結晶化の過程において、結晶構成元素が優先的に消費され、結果として未消費の原料融液中の添加元素濃度が濃縮していき、偏析現象が生じる。しかしながら、本発明の坩堝を用いることで、偏析係数が1未満の添加元素であっても、添加元素は融液の流れに沿って結晶中央で高濃度化するため、結晶の外側面近くに偏析する現象を効果的に抑制することができる。
すなわち、本発明に係る坩堝は、
結晶の原料となる融液を溜める融液貯留部と、結晶の形状を制御するノズル部と、を有する坩堝であって、
前記ノズル部は、前記融液を前記融液貯留部から前記ノズル部の端面に流出させるノズル孔を有し、
前記ノズル孔の前記端面でのノズル孔出口は、前記端面の外周縁の近くに位置するノズル孔形成領域に配置してあり、
前記ノズル孔形成領域の内側に位置する前記端面の中心を含む領域は、前記ノズル孔出口が実質的に形成されないノズル孔非形成領域であることを特徴とする。
本発明の坩堝を用いて結晶成長を行う場合には、ノズル部の端面の外周縁の近くに位置するノズル孔形成領域に配置してあるノズル孔出口から、ノズル孔非形成領域である端面の中心に向けて融液が流れて結晶成長を行うことになる。すなわち、本発明の坩堝を用いることで、結晶成長はノズル部の端面の外周縁近くから始まり内側に向けて進行する。そのため、偏析係数が1未満の添加元素が融液に含まれている場合であっても、その添加元素は、結晶中に取り込まれにくく、育成過程で徐々に濃くなるため、育成初期の外縁部に添加元素が偏析する現象を効果的に抑制することができる。
すなわち、本発明の坩堝を用いて得られる結晶体は、偏析係数が1未満の添加元素が含まれる場合であっても、結晶体の外側面近くでの添加元素(ドーパント)の過剰偏析が抑制されている。本発明の結晶体は、結晶性が向上し、単結晶に成りやすく、多結晶化を抑制することができると共に、クラックの発生も抑制される。
また、本発明の坩堝を用いて得られる結晶体は、結晶体の中央近くでの添加元素(ドーパント)の濃度希薄化を抑制することができ、結晶体へのドーパント添加効果が増大する。得られた結晶体は、光学素子として好ましく用いられる。
さらに、本発明の坩堝を用いることで、結晶成長の安定化が確保され、結晶体の形状精度が向上する。そのため、結晶体の加工ロスが少なくなり、高品質の結晶体を高効率で製造することができる。
なお、本発明において、「ノズル孔出口が実質的に形成されない」とは、ノズル孔出口が全く形成されないことが好ましいが、本発明の作用効果を機能させる限りにおいて、多少はノズル孔出口が形成されていてもよいという趣旨である。すなわち、「原料融液がノズル孔を通過した後、結晶成長面に沿って移動する際の流れの方向を、結晶の外周から内側にすることができる」限りにおいては、ノズル孔非形成領域にも、ノズル孔出口を形成してもよい。
また、本発明において、端面の中心とは、端面の幾何学的中心あるいは重心を意味する。たとえば端面の外周縁の形状が円の場合には、円の中心を意味し、外周縁の形状が多角形状、楕円形状、その他の異形形状の場合には、端面の重心を意味する。
好ましくは、前記ノズル孔形成領域は、前記端面の中心から前記外周縁までの距離の1/2を周方向に結ぶ仮想境界線と、前記外周縁との間の範囲内に位置する。さらに好ましくは、前記ノズル孔形成領域は、前記端面の中心から前記外周縁までの距離の2/3(さらに好ましくは3/4)を周方向に結ぶ仮想境界線と、前記外周縁との間の範囲内に位置する。
このような領域の範囲内にノズル孔形成領域を配置し、その内側をノズル孔非形成領域とすることで、原料融液がノズル孔出口を通過した後、結晶成長面に沿って移動する融液の流れが、結晶の外周側から内側に向かい易くなる。
好ましくは、前記ノズル孔出口は、前記外周縁に沿って長尺状に形成してある。このように構成してあることで、ノズル孔出口を通過した原料融液が、無作為に拡がらず、結晶の外周から内側に向けて方向性を持ち、融液の流れを安定させることが可能となる。
前記ノズル孔出口は、複数の個別出口を有してもよく、前記ノズル孔形成領域には、前記個別出口が、前記外周縁に沿って連続していてもよいが、断続的に配置してあってもよい。
好ましくは、前記ノズル孔の少なくとも一部は、前記ノズル孔出口の近くで、前記端面の中心に近づく方向に向かって傾斜している。このように構成してあることで、ノズル孔出口から吐出された原料融液が、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向き易くなる。
好ましくは、前記ノズル孔は、前記融液貯留部に開口する前記ノズル孔のノズル孔入口に比較して、前記ノズル孔出口が前記端面の中心に近づくように流路の少なくとも一部が傾斜している。このように構成してあることで、ノズル孔出口から吐出された原料融液が、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向き易くなる。
好ましくは、前記ノズル部は、前記融液貯留部の底部外面から突出しているノズル外側面を有し、前記ノズル外側面の少なくとも一部には、前記端面の外周縁に向かって外径が小さくなるテーパ部が形成してある。このように構成することで、ノズル孔出口を外周縁に近づけることが可能となり、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に流れる原料融液の量を増加させることができる。
本発明に係る結晶体(好ましくは単結晶)は、上記のいずれかに記載の坩堝を用いて製造され、偏析係数1未満の添加元素を含んでもよい。本発明に係る坩堝を用いて育成される結晶は、理想的な柱状の形状に近くなる。また、この結晶体は異相が混入しにくくなり、さらに、多結晶化しにくい。本発明に係る光学素子は、本発明に係る結晶体を含む。
また、本発明に係る結晶体の製造方法は、
結晶の原料となる融液を、ノズル部の端面に形成してあるノズル孔出口から吐出させる工程を有し、
前記ノズル孔出口から吐出された原料融液を、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向けて流しながら結晶成長を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、偏析係数が1未満の添加元素が含まれる場合であっても、結晶体の外側面近くでの添加元素(ドーパント)の過剰偏析が抑制された結晶体を得ることができる。本発明の製造方法により得られる結晶体は、結晶性が向上し、単結晶に成りやすく、多結晶化を抑制することができると共に、クラックの発生も抑制される。
また、本発明の製造方法を用いて得られる結晶体は、結晶体の中央近くでの添加元素(ドーパント)の濃度希薄化を抑制することができ、結晶体へのドーパント添加効果が増大する。得られた結晶体は、光学素子として好ましく用いられる。
さらに、本発明の方法を用いることで、結晶成長の安定化が確保され、結晶体の形状精度が向上する。そのため、結晶体の加工ロスが少なくなり、高品質の結晶体を高効率で製造することができる。
図1は本発明の一実施形態に係る坩堝を持つ結晶製造装置の概略断面図である。 図2Aは図1に示す坩堝のII部分の拡大断面図である。 図2Bは本発明の他の実施形態に係る坩堝の拡大断面図である。 図2Cは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝の拡大断面図である。 図2Dは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝の拡大断面図である。 図2Daは図2Dに示すノズル孔入口のIIDa-IIDa線に沿う断面図である。 図2Dbは図2Dに示すノズル部端面のIIDb-IIDb線に沿う平面図である。 図2Eは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝の拡大断面図である。 図2Eaは図2Eに示すノズル孔入口のIIEa-IIEa線に沿う断面図である。 図2Ebは図2Eに示すノズル部端面のIIEb-IIEb線に沿う平面図である。 図3Aは図2Aに示すノズル部端面のIII-III線に沿う平面図である。 図3Bは本発明の他の実施形態に係る坩堝におけるノズル部端面の平面図である。 図3Cは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝におけるノズル部端面の平面図である。 図3Dは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝におけるノズル部端面の平面図である。 図3Eは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝におけるノズル部端面の平面図である。 図3Fは本発明のさらに他の実施形態に係る坩堝におけるノズル部端面の平面図である。 図4Aは本発明の比較例に用いた従来の坩堝のノズル部端面の平面図である。 図4Bは本発明のその他の比較例に用いた従来の坩堝のノズル部端面の平面図である。 図5は本発明の実施例と比較例に係る形状精度の比較を示すグラフである。 図6は本発明の実施例と比較例に係る異相発生率の比較を示すグラフである。 図7は本発明の実施例と比較例に係る多結晶化率の比較を示すグラフである。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1に示すように、本実施形態の結晶製造装置2は、坩堝4と、耐火炉6とを有する。坩堝4については、後述する。耐火炉6は、坩堝4の周りを2重に覆っている。耐火炉6には、坩堝4からの融液の引き下げ状態を観察するための観察窓が形成してあってもよい。
耐火炉6は、さらに外ケーシング8により覆われており、外ケーシング8の外周には、坩堝4の全体を加熱するための主ヒータ10が設置してある。本実施形態では、外ケーシングは、たとえば石英管で形成してあり、主ヒータ10としては、誘導加熱コイル10を用いている。坩堝4の下方には、種結晶保持治具12により保持された種結晶14が配置される。種結晶14としては、製造されるべき結晶と同一または同種類の結晶が用いられる。たとえば製造すべき結晶がCeドープのYAG結晶であれば、添加物を含まないYAG単結晶などが用いられる。
種結晶保持治具12の素材は特に限定されないが、使用温度である1900℃付近において影響の少ない緻密アルミナ等で構成されることが好ましい。種結晶保持治具12の形状と大きさも特に限定されないが、耐火炉6に接触しない程度の径である棒状の形状であることが好ましい。
坩堝4の下端外周には、筒状のアフターヒータ16が設置されている。アフターヒータ16には、耐火炉6の観察窓と同位置に観察窓が形成してあってもよい。アフターヒータ16は、坩堝4に連結して用いられ、筒状のアフターヒータ16の内部空間に、図2Aに示す坩堝4のノズル部34のノズル孔出口38が位置するように配置され、ノズル部34とノズル孔出口38から引き出される融液とを加熱可能になっている。アフターヒータ16は、たとえば坩堝4と同様(同一である必要はない)な材質などで構成され、坩堝4と同様に高周波コイル10によりアフターヒーター16が誘導加熱されることで、アフターヒーター16の外表面から輻射熱が発生し、アフターヒータ16の内部を加熱可能になっている。
なお、図示しないが、結晶製造装置2には、耐火炉6の内部を減圧する減圧手段、減圧をモニターする圧力測定手段、耐火炉6の温度を測定する温度測定手段および耐火炉6の内部に不活性ガスを供給するガス供給手段などが設けられている。
結晶の融点が高いなどの理由から、坩堝4の材質はイリジウム、レニウム、モリブデン、タンタル、タングステン、白金、または、これらの合金であることが好ましい。また、坩堝4はカーボン製であってもよい。坩堝4を、坩堝4以外の部材の発熱により間接的に加熱する場合、結晶化する材料の融液と反応せず、融点で軟化等の現象が生じない坩堝4が好適である。誘導加熱(高周波加熱)等により坩堝4自体が発熱体となる場合、さらに電気伝導性を有し、外部磁界により加熱する材料が好適である。例としてIr(イリジウム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Pt(白金)、白金合金が挙げられる。また、坩堝4の材質の酸化による結晶への異物混入を防止するために、坩堝4の材質としては、イリジウム(Ir)を用いることがより好ましい。
なお、1500℃以下の融点の物質を対象とする場合は、坩堝4の材質としてPtを使用することが可能である。また、坩堝4の材質としてPtを使用する場合には、大気中での結晶成長が可能である。1500℃を超える高融点物質を対象とする場合は、坩堝4の材質として、Ir等を用いるため、結晶成長はAr等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。耐火炉6の材質は特に限定されないが、保温性や使用温度、結晶への不純物混入防止の観点からアルミナであることが好ましい。
次に、本実施形態の結晶製造装置2に用いる坩堝4について詳細に説明する。図2Aに示すように、本実施形態に係る坩堝4は、結晶の原料となる融液30を溜める融液貯留部24と、結晶の形状を制御するノズル部34とを有し、これらは一体的に形成してある。なお、坩堝4が大型の場合には、融液貯留部24の長手方向の途中で複数の部材を接合して坩堝4を構成してもよい。融液貯留部24は、有底筒状の収容壁26を有する。収容壁26の内面に一定量の融液30を融液貯留部24に貯留可能になっている。
本実施形態では、坩堝4は、μ-PD法に用いられ、ノズル部34は、ノズル部34が融液貯留部24の鉛直方向の下側に位置し、融液貯留部24に貯留してある融液30は、ノズル部34の下端面35に形成してあるノズル孔出口38から、種結晶14により鉛直方向の下側に引き出されるようになっている。
ノズル部34は、融液貯留部24を構成する収容壁26の底部外面28の略中央部から突出しているノズル外側面37を有する。ノズル外側面37の最下端が、ノズル部34の下端面35と交差し、下端面35と外側面37との境界に位置する角部が、下端面35の外周縁35aとなる。
結果として、ノズル部34の下端面35は、収容壁26の底部外面28から鉛直下方(引き出し方向Z)に向けて所定距離Z1で突出している。所定距離Z1は、好ましくは、ノズル孔出口38から引き出される融液が底部外面28には付着しないように決定され、好ましくは、1~5mm、さらに好ましくは1~2mmである。ノズル部34は、融液を溜める融液貯留部24からノズル部34の下端面35に流出させるノズル孔36を有する。ノズル部34の下端面35は、引出方向Zに実質的に垂直で平坦な面である。
融液貯留部24を構成する収容壁26の底部内面は、中央に位置するノズル部34に向けてテーパ状に傾斜する傾斜面を有し、貯留部24に貯留してある融液30は、ノズル部34に形成してあるノズル孔36のノズル孔入口32に向けて流れ込むようになっている。ノズル孔36は、融液貯留部24の底部に向けて開口するノズル孔入口と、ノズル部34の下面35で開口するノズル孔出口38とを有する。
図3Aに示すように、本実施形態では、ノズル部34の下端面35から見た外形形状は円形であり、下端面35の外周縁35aも円形となるが、外周縁35aの形状は、円形に限らず、図3Bに示すように六角形、あるいは図3Cに示すように四角形、その他の多角形状、楕円形状、あるいは、その他の異形形状であってもよい。外周縁35aの形状が、図2Aに示す坩堝4を用いたμ-PD法により製造される結晶の外側面形状を規定する。
本実施形態では、たとえば図3Aに示すように、ノズル孔36の下端面35でのノズル孔出口38は、下端面35の外周縁35aの近くに位置するノズル孔形成領域40に配置してある。また、本実施形態では、ノズル孔出口38は、ノズル孔形成領域40の範囲内で、周方向に沿って所定間隔で断続的に形成してある複数の個別な出口38で構成してある。複数の出口38は、図2Aに示す複数の個別なノズル孔36を通して、対応する複数のノズル孔入口32に繋がっている。
本実施形態では、各ノズル孔36の流路断面は、入口32および出口38と共に円形であり、それぞれのノズル孔36は、結晶の引き下げ方向Zと平行に成っている。ただし、本実施形態では、出口38のみを周方向に沿って複数の個別な円形出口で構成し、ノズル孔36は、これらの複数の円形出口38を周方向に沿って繋ぐ単一のリング状孔としてもよい。また、ノズル孔入口32に関しも、ノズル孔36と同様に、複数の円形出口38を周方向に沿って繋ぐ単一のリング状開口としてもよい。また、個別のノズル孔出口38の断面形状も、円形に限らず、多角形、楕円形、その他の形状にすることも可能である。
図3Aに示すように、ノズル孔形成領域40の内側に位置する下端面35の中心42を含む領域は、ノズル孔出口38が実質的に形成されないノズル孔非形成領域44である。なお、本実施形態において、下端面35の中心42とは、下端面35の平面形状の幾何学的中心あるいは重心を意味する。たとえば図3Aに示すように、下端面35の外周縁35aの形状が円の場合には、下端面35の中心42とは、円の中心を意味する。また、図3Bあるいは図3Cに示すように、外周縁35aの形状が六角または四角の多角形状、楕円形状、その他の異形形状の場合には、下端面35の重心を意味する。
図3Aに示すように、ノズル孔形成領域40は、下端面35の中心42から外周縁35aまでの距離Rの1/2を周方向に結ぶ仮想境界線46と、外周縁35aとの間の範囲内に位置する。さらに好ましくは、ノズル孔形成領域40は、下端面35の中心42から外周縁35aまでの距離Rの2/3(さらに好ましくは3/4)を周方向に結ぶ仮想境界線46と、前記外周縁との間の範囲内に位置する。
なお、仮想境界線46の中心42からの距離は、α×Rとして表すことができ、αは、好ましくは1/2以上、さらに好ましくは2/3以上、特に好ましくは3/4以上であり、αの上限は、1未満であり、(R-α×R)で示されるノズル孔形成領域40の範囲内に、ノズル孔出口38が形成されるように決定される。ノズル孔出口38は、可能な限り、外周端35aの近くに形成されることが好ましい。
各ノズル孔出口38の内径(または開口面積)は、特に限定されず。各ノズル孔出口36がノズル孔形成領域40の範囲(R-α×R)内に収まるように決定される。各ノズル孔出口38が円形の場合には、出口38の内径は、たとえば(R-α×R)の1/10~9/10程度である。また、ノズル孔形成領域40の範囲内に位置するノズル孔出口38の配置数は、特に限定されないが、たとえば周方向に沿って、好ましくは4以上であり、さらに好ましくは6以上であり、特に好ましくは8以上である。
図3Aに示すように、外周縁35aの形状が円の場合には、仮想境界線46の形状も円となり、その仮想境界線46の円の半径の大きさが、外周縁35aの距離(半径)Rのα倍となる。また、図3Bに示すように、外周縁35aの形状が六角形の場合には、仮想境界線46の形状も六角形となり、その仮想境界線46の形状は、外周縁35aの形状のα倍の相似形となる。さらに、図3Cに示すように、外周縁35aの形状が四角形の場合には、仮想境界線46の形状も四角形となり、その仮想境界線46の形状は、外周縁35aの形状のα倍の相似形となる。外周縁35aの形状が、その他の異形形状の場合でも、その仮想境界線46の形状は、外周縁35aの形状のα倍の相似形となる。
なお、仮想境界線46の内側(中心42を含む領域)が、ノズル孔非形成領域44となり、その領域には、ノズル孔出口38が実質的に形成されない。「ノズル孔出口38が実質的に形成されない」の意味については、後述する。
図1に示す本実施形態の坩堝4を有する結晶製造装置2は、μ-PD法などに好ましく用いられる。坩堝4の融液貯留部24に投入される原料は、メインヒータ10などで加熱されて、図2Aに示す溶融液30となり、ノズル部34のノズル孔36を通して、ノズル孔出口38から種結晶14により引き出され、種結晶14を引き下げることにより結晶を成長させて結晶体を得る。
次に、本実施形態の結晶製造装置2を用いる結晶の製造方法について簡単に説明する。本実施形態の結晶製造装置2では、まず、坩堝4の融液貯留部24に、得ようとする結晶体の原料を入れ、主ヒータ10を起動させ融液貯留部24を加熱する。融液貯留部24が加熱されることで原料は融液貯留部24内で溶融し融液30となり、ノズル部34のノズル孔入口32からノズル孔36に流れる。融液30は、ノズル孔36を経て、ノズル孔出口38で種結晶14の上端に接触する。
その前後で、アフターヒータ―16も起動され、ノズル部34付近を加熱する。本実施形態の坩堝4を用いることで、ノズル部34の端面35の外周縁35aの近くに位置するノズル孔形成領域40に配置してあるノズル孔出口38から、種結晶14により引き下げられる融液は、下端面35に沿ってノズル孔非形成領域44の中心42に向けて流れて結晶成長を行う。
すなわち、本実施形態の坩堝4を用いることで、結晶成長はノズル部34の端面35の外周縁35a近くから始まり内側に向けて進行する。そのため、偏析係数が1未満の添加元素が融液に含まれている場合であっても、その添加元素は、結晶中に取り込まれにくく、育成過程で徐々に濃くなるため、育成初期の外縁部に添加元素が偏析する現象を効果的に抑制することができる。
したがって、本実施形態の坩堝4を用いて得られる結晶体は、偏析係数が1未満の添加元素が含まれる場合であっても、結晶体の外側面近くでの添加元素(ドーパント)の過剰偏析が抑制されている。本実施形態の結晶体は、結晶性が向上し、単結晶に成りやすく、多結晶化を抑制することができると共に、クラックの発生も抑制される。
また、本実施形態の坩堝4を用いて得られる結晶体は、結晶体の中央近くでの添加元素(ドーパント)の濃度希薄化を抑制することができ、結晶体へのドーパント添加効果が増大する。得られた結晶体は、光学素子として好ましく用いられる。さらに、本実施形態の坩堝4を用いることで、結晶成長の安定化が確保され、結晶体の形状精度が向上する。そのため、結晶体の加工ロスが少なくなり、高品質の結晶体を高効率で製造することができる。
また、本実施形態では、ノズル部34の下端面35における外縁部35aの近くにノズル孔形成領域40を配置し、その内側をノズル孔非形成領域44とすることで、原料融液がノズル孔出口38を通過した後、結晶成長面に沿って移動する融液の流れが、結晶の外周側から内側に向かい易くなる。そのため、本実施形態に係る坩堝4を用いて育成される結晶は、理想的な柱状の形状に近くなる。また、この結晶体は異相が混入しにくくなり、さらに、多結晶化しにくい。
また、本実施形態に係る坩堝4を使用することにより、ノズル孔出口38から成長した結晶体中の組成(賦活剤含む)の濃度分布は、特に、引下方向Zに垂直な面で、略均一になる。また、引下方向Zに平行な面でも、略均一になる。本実施形態の装置2を用いて、たとえばCe:YAGを製造する場合には、Ceのような賦活剤が均一に分散されたCe:YAGなどの結晶体を得ることができる。
また、本実施形態に係る結晶体の製造方法は、結晶の原料となる融液を、ノズル部34の下端面35に形成してあるノズル孔出口38から吐出させる工程を有し、ノズル孔出口38から吐出された原料融液を、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向けて流しながら結晶成長を行う。本実施形態の製造方法によれば、偏析係数が1未満の添加元素が含まれる場合であっても、結晶体の外側面近くでの添加元素(ドーパント)の過剰偏析が抑制された結晶体を得ることができる。本実施形態の製造方法により得られる結晶体は、結晶性が向上し、単結晶に成りやすく、多結晶化を抑制することができると共に、クラックの発生も抑制される。
また、本実施形態の製造方法を用いて得られる結晶体は、結晶体の中央近くでの添加元素(ドーパント)の濃度希薄化を抑制することができ、結晶体へのドーパント添加効果が増大する。得られた結晶体は、光学素子として好ましく用いられる。
さらに、本発明の方法を用いることで、結晶成長の安定化が確保され、結晶体の形状精度が向上する。そのため、結晶体の加工ロスが少なくなり、高品質の結晶体を高効率で製造することができる。
なお、本実施形態において、ノズル孔非形成領域44において、「ノズル孔出口が実質的に形成されない」とは、ノズル孔出口が全く形成されないことが好ましいが、本実施形態の作用効果を機能させる限りにおいて、多少はノズル孔出口が形成されていてもよいという趣旨である。すなわち、「原料融液がノズル孔36を通過した後、結晶成長面に沿って移動する際の流れの方向を、結晶の外周から内側にすることができる」限りにおいては、ノズル孔非形成領域44にも、ノズル孔出口を形成してもよい。
たとえばノズル孔出口非形成領域44には、ノズル孔形成領域40に形成してあるノズル孔出口38の内径よりも小さいノズル孔出口を多少は形成してもよい。あるいは、ノズル孔出口38の内径が同じだとしても、ノズル孔出口非形成領域44には、ノズル孔形成領域40に形成してあるノズル孔出口38の数よりも、たとえば1/10以下程度に少ない数でノズル孔出口38を多少は形成してもよい。
第2実施形態
図3Dに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34のノズル孔出口38の構成が第1実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36の複数のノズル孔出口38は、四角形の外周縁35aに沿って、ノズル孔形成領域40の範囲内で、それぞれ長尺状に形成してある。各ノズル孔出口38の長手方向長さL1は、特に限定されず、ノズル孔形成領域38の配置数などに応じて決定される。また、各ノズル孔出口38の幅W1は、特に限定されず、図3Cに示す円形のノズル孔出口38の内径と同様にして決定される。
本実施形態に係るノズル部34を有する坩堝を用いることで、ノズル孔出口38を通過した原料融液が、無作為に拡がらず、結晶の外周から内側に向けて方向性を持ち、融液の流れを安定させることが可能となる。
第3実施形態
図3Eに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34のノズル孔出口38の構成が第1または第2実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1または第2実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36の複数のノズル孔出口38は、四角形の外周縁35aに沿って、ノズル孔形成領域40の範囲内で、それぞれ長尺状に形成してある。しかも、本実施形態では、第2実施形態と異なり、四角リング状のノズル孔形成領域40の4つの角部に、L字形状のノズル孔出口38が各々配置してある。
L字形状のノズル孔出口38の長手方向の長さL2は、その他のノズル孔出口38の長手方向長さL1よりも長くてもよい。各ノズル孔出口38の幅W1は、第2実施形態の各ノズル孔出口38の幅W1と同程度である。
本実施形態に係るノズル部34を有する坩堝を用いることで、特に結晶の外周角部においても、ノズル孔出口38を通過した原料融液が、無作為に拡がらず、結晶の外周から内側に向けて方向性を持ち、融液の流れを安定させることが可能となる。
第4実施形態
図3Fに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34のノズル孔出口38の構成が第1~第3実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1~第3実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36のノズル孔出口38は、四角形の外周縁35aに沿って、ノズル孔形成領域40の範囲内で、周方向に連続してあり、単一の開口部として形成してある。ノズル孔出口38の幅は、第2または第3実施形態の各ノズル孔出口38の幅W1と同程度である。
本実施形態に係るノズル部34を有する坩堝を用いることで、特に結晶の外周の全周において、ノズル孔出口38を通過した原料融液が、無作為に拡がらず、結晶の外周から内側に向けて方向性を持ち、融液の流れを安定させることが可能となる。
なお、本実施形態では、ノズル孔36のノズル孔入口(図示省略)、またはノズル孔36の流路途中において、端面35におけるノズル孔出口38の内側と外側とを連結する部材が必要になる。
第5実施形態
図2Bに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34の外側面37の構成が第1~第4実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1~第4実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36の外側面37の少なくとも一部(好ましくは端面35に近い側)には、端面35の外周縁35aに向かって外径が小さくなるテーパ部37aが形成してある。このように構成することで、ノズル孔出口38を外周縁35aに近づけることが可能となり、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に流れる原料融液の量を増加させることができる。
第6実施形態
図2Cに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34のノズル孔の構成が第1~第5実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1~第5実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36の少なくとも一部は、ノズル孔出口38の近くで、端面35の中心42に近づく方向に向かって傾斜している。このように構成してあることで、ノズル孔出口38から吐出された原料融液が、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向き易くなる。
また、本実施形態では、ノズル孔36では、融液貯留部24に開口するノズル孔入口32に比較して、ノズル孔出口38が端面35の中心42に近づくように流路の少なくとも一部が傾斜している。このように構成してあることで、ノズル孔出口38から吐出された原料融液が、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向き易くなる。
第7実施形態
図2D、図2Daおよび図2Dbに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34のノズル孔36の構成が第1~第6実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1~第6実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36は、ノズル孔入口32からノズル孔出口38に向けて、端面35の中心42に近づく方向に向かって傾斜している。また、本実施形態によれば、ノズル孔36では、融液貯留部24に開口するノズル孔入口32に比較して、ノズル孔出口38が端面35の中心42に近づくように流路の全体が傾斜している。このように構成してあることで、ノズル孔出口38から吐出された原料融液が、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向き易くなる。
なお、本実施形態では、各ノズル孔入口32におけるノズル孔36の長手方向長さに比較して、各ノズル孔出口38でのノズル孔36の長手方向長さが短くなっているが、これに限定されない。
たとえば、ノズル孔入口32とノズル孔出口38とでノズル孔36の長手方向長さを同じにしてもよく、あるいは、ノズル孔出口38の長手方向長さを、ノズル孔入口に比較して長くしてもよい。また、本実施形態では、ノズル孔入口32とノズル孔出口38とでノズル孔36の短手方向幅を同じにしてあるが、ノズル孔出口38の短手方向幅を、ノズル孔入口に比較して広くしてもよく、あるいは狭くしてもよい。これらの構成は、前述した第1~第6実施形態でも同様に適用することができる。
第8実施形態
図2E、図2Eaおよび図2Ebに示すように、本実施形態に係る結晶製造装置は、ノズル部34のノズル孔の構成が第1~第7実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1~第7実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る坩堝のノズル孔36は、ノズル孔入口32からノズル孔出口38に向けて、端面35の中心42に近づく方向に向かって傾斜している。また、本実施形態によれば、ノズル孔36では、融液貯留部24に開口するノズル孔入口32に比較して、ノズル孔出口38が端面35の中心42に近づくように流路の全体が傾斜している。
このように構成してあることで、ノズル孔出口38から吐出された原料融液が、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向き易くなる。
さらに本実施形態では、ノズル部34の外側面37の少なくとも一部(好ましくは外側面37の全体)には、端面35の外周縁35aに向かって外径が小さくなるテーパ部37aが形成してある。このように構成することで、ノズル孔出口38を外周縁35aに近づけることが可能となり、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に流れる原料融液の量を増加させることができる。
また、本実施形態では、第7実施形態に比較して、ノズル孔入口32からノズル孔出口38に向かって傾斜するノズル孔36の傾斜角度を大きくしても、ノズル孔出口38を外周縁35aに近づけることが可能になると言うメリットもある。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば本発明の坩堝および結晶製造装置を用いて製造される結晶としては、M元素(偏析係数1未満の添加元素)がドープしてあるYAGまたはLuAGの単結晶に限らず、Al(サファイア)、GAGG(GdAlGa12)、GGG(GdGa12)、GPS(GdSi)などの単結晶が例示される。また、単結晶に限らず、YAG-Al、LuAG-Alなどの共晶体でもよい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
図1に示す結晶製造装置2を用い、Ce:YAG(CeがドープしてあるYAG)の単結晶から成る蛍光体を製造した。育成に用いた坩堝1はイリジウム製で、外径20mm、内径18mm、高さ50mmの円筒形状であった。装置2は、図2Aおよび図3Cに示す構造のノズル部34を有し、合計12個のノズル孔36のノズル孔出口38が、ノズル端面35の外周縁35aより0.5mm内側の位置に等間隔ピッチ(1.0mm)で並び、鉛直方向(引下方向)に貫通していた。
ノズル端面35は、5.0mm×5.0mmの四角形(R=2.5mm)であり、各ノズル孔36の内径は、0.3mmであった。各ノズル孔出口38は、ノズル形成領域40の内部に配置され、ノズル孔非形成領域44には、全くノズル孔が形成されていなかった。ノズル形成領域40の幅を規定する(R-α×R)は、0.65mm(0.5+0.3/2)以上で1.25mm(R/2)以上であった。αは、1/2以上0.74以下であった。
それぞれ純度99.99%のAl、Y、CeO各酸化物粉末を、モル比でY:Al=3.0:5.0、かつCeO/(CeO+1/2Y)=0.01となる組成比で、計10gの原料を配合し、結晶育成用の原料とした。同原料を充填した坩堝4を単結晶育成装置2内に設置して、約2000°Cまで1時間かけて加熱した。
ガス流雰囲気にて、結晶方位<111>を長手方向とするYAl12単結晶を種結晶14として用い、図2Aに示すように、種結晶14の先端を、坩堝4の下端に具備してあるノズル部34に接触させ、ノズル部34のノズル孔出口38から出た原料融液が、種結晶14の先端に濡れ拡がる状態を経て、種結晶14を徐々に降下させて、毎分0.20mmの引下げ速度で結晶成長を行った。
約5mm角、長さ40mmの四角柱状のCe:YAG単結晶が得られた。単結晶10は、濃黄色かつ透明で、外観目視では結晶内部にインクルージョン等の析出物が観られなかった。結晶体の4側面は何れも平滑であり、引下方向に直交する断面は、結晶全体に渡りほぼ正方形状であった。
得られた結晶体について、以下のようにして、評価用の試料をサンプリングして、以下の評価を行った。
(評価用試料のサンプリング)
マイクロ引下げ法により育成した結晶を各10本育成した。一つの結晶から引下げ方向に異なる位置で3つの評価用サンプルを作製した。各サンプルは、引下げ育成時の結晶体の外側面が外周縁となるように、引下げ方向と直交する切断面で試料を切り出して作製した。さらに結晶内部が観察できるように両面を鏡面研磨し、厚さ約1mmの評価用平板サンプルを用意した。合計で30点のサンプルを用いて、育成結晶の形状精度、異相発生率、多結晶化率を評価した。
(形状精度の評価)
育成に使用した坩堝4のノズル端面35の平面形状を参照形状とし、評価する平板サンプルの外周縁形状、すなわち結晶体の横断面(引下方向に垂直な断面)形状と比較した。
参照形状と横断面形状を重ね合わせ、断面形状が参照形状からはみ出した領域と、不足する領域のそれぞれの面積を合計し、形状差分面積と定義する。両者の形状を重ね合わせる際に、形状差分面積が最小となるよう、重なる合わせる位置を調整した。さらに数値1.0から形状差分面積を参照形状面積で除算した値を引いた数値を、形状精度指数と定義した。
形状精度指数が1.0に近いほど、断面形状が参照形状に近い状態を示しており、高い形状精度を有すると判断した。30個のサンプルについて行った結果を図5に示す。
(異相有無の評価)
異相の有無は、リガク社製全自動多目的X線回折装置SmartLabを用いて、X線回折により評価した。評価用のサンプル(結晶体)を、乳鉢/乳棒等を用いて約10μm以下の粒度になるまで粉砕し、Cu線源を用いた粉末X線回折法により相同定を行った。JCPDSカード番号79-1891で示される、空間群Ia3dの立方晶YAl12(格子定数 a=12.017オングストローム)として指数付けできる回折ピークを単結晶相と判断した。
単結晶相として指数付けできない回折ピークが存在する場合、この回折ピークは単結晶相以外の相によるものとして、異相が存在すると判断した。異相を含むサンプルの数を測定数で除算した値を、異相発生率と定義した。30個のサンプルについて行った結果を図6に示す。
(多結晶化の評価)
多結晶化は、リガク社製全自動多目的X線回折装置SmartLabを用いて、Cu線源を用いた極点測定により評価した。評価用のサンプル(結晶体)が、JCPDSカード番号79-1891で示される、空間群Ia3dの立方晶YAl12(格子定数 a=12.017オングストローム)の結晶構造を有するとみなし、極点図に現れる回折強度分布が、一つの結晶方位による回折強度分布と一致する場合は、同サンプルを単結晶とみなし、一致しない回折強度分布が存在する場合は、同サンプルを多結晶と判断した。多結晶となるサンプル数を測定数で除算した値を、多結晶化率と定義した。30個のサンプルについて行った結果を図7に示す。
実施例2
ノズル孔36のノズル孔出口38が図3Dに示す構成となる以外は、実施例1と同様なノズル部34を有する坩堝を用いて、マイクロ引下げ法により、Ce:YAG単結晶を育成した。実施例2では、ノズル孔36のノズル孔出口38の長手方向が、四角形状のノズル端面35の外周縁35aの各辺と平行に配置してあり、ノズル部34を鉛直方向に貫通している。
実施例1と同じ原料、同じ育成条件で結晶育成を行い、実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5~図7に示す。
実施例3
ノズル孔36が図2D、図2Daおよび図2Dbで示される構造となる以外は、実施例1で用いた坩堝1と、同じ材料、形状の坩堝を用いて、マイクロ引下げ法によりCe:YAG単結晶を育成した。実施例3では、ノズル孔36が鉛直方向に対して傾きを有し、ノズル孔入口32に比較してノズル孔出口38の長手方向長さが小さく、ノズル孔36が上から下に向けて狭くなる状態となっている。
実施例1と同じ原料、同じ育成条件で結晶育成を行い、実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5~図7に示す。
実施例4
ノズル孔36が図2E、図2Eaおよび図2Ebで示される構造となる以外は、実施例1で用いた坩堝1と、同じ材料、形状の坩堝を用いて、マイクロ引下げ法によりCe:YAG単結晶を育成した。実施例4では、ノズル孔36が鉛直方向に対して傾きを有し、ノズル孔入口32に比較してノズル孔出口38の長手方向長さが小さく、ノズル孔36が上から下に向けて狭くなる状態となっている。またノズル部34の外側面37も鉛直方向に対して傾きを有し、上から下に向けて細くなる形状を有している。
実施例1と同じ原料、同じ育成条件で結晶育成を行い、実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5~図7に示す。
比較例1
図4Aに示すように、直径5mmのノズル部134の端面35の中心位置に、内径0.4mm(図示省略してあるノズル孔入口も同じ内径)のノズル孔136のノズル孔出口138を1つ設けたノズル構造を有するイリジウム製坩堝を用いた以外は、実施例1と同じ原料、装置、雰囲気および育成条件で結晶育成を行い、実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5~図7に示す。
比較例2
図4Bに示すように、5mm×5mmの四角形のノズル部234の端面35の中心位置と、4つの角部近くの位置との5箇所に、内径0.4mmのノズル孔236のノズル孔出口を設けたノズル構造を有するイリジウム製坩堝を用いた以外は、実施例1と同じ原料、装置、雰囲気および成長条件で結晶育成を行い、実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5~図7に示す。
評価
図5に示すように、実施例1~4の結果は、比較例1および2の結果と比較して、平均値が1.0に近く、かつバラツキが小さい結果となり、高い形状精度の結晶が育成できている結果を示している。また、図6に示すように、実施例1~4の結果は、比較例1および2の結果と比較して、異相発生率が低く、異相生成が抑制できている結果を示している。さらに、図7に示すように、実施例1~4の結果は、比較例1~2の結果と比較して、多結晶化率が低く、多結晶化が抑制できている結果を示している。
2… 結晶製造装置
4…坩堝
6… 耐火炉
8… 外ケーシング
10… 主ヒータ
12… 種結晶保持治具
14… 種結晶
16… アフターヒータ
24… 融液貯留部
26… 収容壁
28… 底部外面
30… 融液
32… ノズル孔入口
34.134,234… ノズル部
35… 端面
35a… 外周縁
36,136,236… ノズル孔
36a… 傾斜孔
37… 外側面
37a… テーパ部
38,138,238… ノズル孔出口
40… ノズル孔形成領域
42… 中心
44… ノズル孔非形成領域
46… 仮想境界線

Claims (9)

  1. 結晶の原料となる融液を溜める融液貯留部と、結晶の形状を制御するノズル部と、を有する坩堝であって、
    前記ノズル部は、前記融液を前記融液貯留部から前記ノズル部の端面に流出させるノズル孔を有し、
    前記ノズル孔の前記端面でのノズル孔出口は、前記端面の外周縁の近くに位置するノズル孔形成領域に配置してあり、
    前記ノズル孔形成領域の内側に位置する前記端面の中心を含む領域は、前記ノズル孔出口が実質的に形成されないノズル孔非形成領域である坩堝。
  2. 前記ノズル孔形成領域は、前記端面の中心から前記外周縁までの距離の1/2を周方向に結ぶ仮想境界線と、前記外周縁との間の範囲内に位置する請求項1に記載の坩堝。
  3. 前記ノズル孔出口は、前記外周縁に沿って長尺状に形成してある請求項1または2に記載の坩堝。
  4. 前記ノズル孔出口は、複数の個別出口を有し、
    前記ノズル孔形成領域には、前記個別出口が、前記外周縁に沿って断続的に配置してある請求項1~3のいずれかに記載の坩堝。
  5. 前記ノズル孔の少なくとも一部は、前記ノズル孔出口の近くで、前記端面の中心に近づく方向に向かって傾斜している請求項1~4のいずれかに記載の坩堝。
  6. 前記ノズル孔は、前記融液貯留部に開口する前記ノズル孔のノズル孔入口に比較して、前記ノズル孔出口が前記端面の中心に近づくように流路の少なくとも一部が傾斜している請求項5に記載の坩堝。
  7. 前記ノズル部は、前記融液貯留部の底部外面から突出しているノズル外側面を有し、
    前記ノズル外側面の少なくとも一部には、前記端面の外周縁に向かって外径が小さくなるテーパ部が形成してある請求項1~6のいずれかに記載の坩堝。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の坩堝を用いて製造され、偏析係数1未満の添加元素を含む結晶体。
  9. 請求項8に記載の結晶体を有する光学素子。
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