JP2022102169A - 複合樹脂分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】水系インクの保存安定性を向上させ、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる複合樹脂分散体、及び水系インクを提供する。【解決手段】[1]ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有する複合樹脂粒子を含む複合樹脂分散体であって、該ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分が、少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む複合樹脂分散体、及び[2]前記の複合樹脂粒子と顔料を含有する水系インクである。【選択図】なし

Description

本発明は、複合樹脂分散体及び水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印刷物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
近年、印刷物に耐候性や耐水性を付与する観点や、作業環境、自然環境への負荷軽減の観点から、着色剤として顔料を用い、顔料を分散させるポリマーを使用する水系顔料インクが注目されている。
一方、水系顔料分散体及び水系顔料インクは、顔料やポリマー由来の粗大粒子により、保存安定性等が悪いという問題がある。
また、商業印刷や産業印刷市場においては、樹脂フィルム等の低吸液性記録媒体が汎用されているが、水系顔料インクは低吸液性記録媒体、特にポリ塩化ビニル(PVC)等の極性を有する樹脂フィルムに対する密着性が悪く、インク塗膜が記録媒体から剥離し易く、記録物の美粧性を損なう等の問題がある。
そこで、これらの問題点を改善すべく種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、保存安定性に優れ、水系インクに用いることにより、非吸水性印刷媒体に対する優れた密着性を維持しつつ、高い印字濃度を有する水系顔料分散体として、顔料をポリマー分散剤で水系媒体に分散させた水系顔料分散体であって、該ポリマー分散剤が、(メタ)アクリル系樹脂とポリエステル樹脂とを含有する、水系顔料分散体が開示されている。
特開2019-119890号公報
インクジェット記録方法は、少量多品種の記録に適しているため、記録媒体の適用範囲の拡大が進んでいる。このような適用範囲の拡大に伴い、低吸液性の樹脂フィルム等を用いた商業印刷や産業印刷において、記録濃度、耐溶剤性の向上が求められている。
特許文献1等の従来の水系顔料分散体及びそれを用いた水系インクは、保存安定性、低吸液性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性について、更なる改善が望まれていた。
本発明は、水系インクの保存安定性を向上させ、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる複合樹脂分散体、及び水系インクを提供することを課題とする。
本発明者らは、ポリエステル樹脂セグメントと(メタ)アクリル系樹脂セグメントとを含有する複合樹脂分散体において、ポリエステル樹脂セグメントを構成するアルコール成分に3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含ませることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有する複合樹脂粒子を含む複合樹脂分散体であって、
該ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分が、少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む、複合樹脂分散体。
[2]複合樹脂粒子と顔料を含有する水系インクであって、
該複合樹脂が、ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有し、該ポリエステル樹脂(A)がアルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含み、該アルコール成分が少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む、水系インク。
本発明によれば、水系インクの保存安定性を向上させ、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる複合樹脂分散体、及び水系インクを提供することができる。
[複合樹脂分散体]
本発明の複合樹脂分散体は、ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有する複合樹脂粒子を含む複合樹脂分散体であって、
該ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分が、少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む。
本発明の複合樹脂分散体は、低吸水性記録媒体に対しても、上記の効果を発揮できるため、インクジェット記録用、フレキソ印刷用、グラビア印刷用等として用いることができるが、インクジェット記録用として用いることが好ましい。
なお、本明細書において、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
また、「低吸水性」とは、低吸液性、非吸液性を含む概念であり、記録媒体と純水との接触時間100m秒間における該記録媒体の吸水量が0g/m以上10g/m以下であることを意味する。
本発明の複合樹脂分散体は、水系インクの保存安定性を向上させ、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
水系顔料インクにおいて、顔料分散ポリマーとしてポリエステル樹脂を用いると、ポリエステル樹脂の加水分解による主鎖の切断が起こり、継時的に分子量が大きく低下していく。その結果、ポリエステル樹脂が顔料に吸着しても、その吸着状態を長期間安定に保つことができず、顔料、ポリマーが次第に凝集し、粗大粒子が発生するという問題があった。ポリエステル樹脂の加水分解による凝集を防ぐ手段として他ポリマーとの複合化が考えられるが、例えばポリエステル樹脂と(メタ)アクリル系樹脂との複合化の場合、一般的なポリエステル樹脂ではやはり加水分解が避けられないため所望の効果を得られないという問題があった。
本発明者らは、複合樹脂分散体として、ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有する複合樹脂を用い、該ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分に3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含ませることにより、凝集による粗大粒子の発生を抑制できることを見出した。
これは、3-メチル-1,5-ペンタンジオールの中心にあるメチル基が水系媒体との親和性を抑制し、かつ、ポリエステル樹脂(A)の加水分解も抑制して、複合樹脂を安定化するからであると考えられる。
このため、本発明の複合樹脂分散体を配合した水系インクを低吸水性記録媒体等に付着させると、本発明の複合樹脂分散体が乾燥して形成される樹脂塗膜において、ポリエステル樹脂(A)セグメントの部分と低吸水性記録媒体が強く相互作用し、該水系インクの密着性が向上すると考えられる。
また、前記複合樹脂は耐溶剤性に優れ、更に(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントがインクビヒクル中での複合樹脂粒子の分散安定性を高めると考えられる。その結果、本発明の複合樹脂分散体を配合した水系インクは、保存安定性に優れ、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得ることができると考えられる。
<複合樹脂粒子>
本発明に係る複合樹脂粒子は、ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有する。
前記複合樹脂は、水不溶性ポリマーであることが好ましい。
ここで、ポリマーの「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味し、ポリマーの前記溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。前記ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
複合樹脂中の(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントに対するポリエステル樹脂(A)セグメントの質量比[(A)/(B)]は、水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上であり、そして、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは90/10以下、より更に好ましくは85/15以下である。
〔ポリエステル樹脂(A)セグメント〕
ポリエステル樹脂(A)セグメントは、アルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位を含有し、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合することにより得ることができる。
(アルコール成分)
ポリエステル樹脂(A)を構成する原料モノマーであるアルコール成分は、水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む。3-メチル-1,5-ペンタンジオールは、1,6-ヘキサンジオールと異性体の関係にあるジオールであるが、その中心にあるメチル基の影響により非結晶性を示し、水系媒体との親和性を抑制し、かつ、ポリエステル樹脂(A)の加水分解も抑制して、複合樹脂を安定化すると考えられる。
アルコール成分中における3-メチル-1,5-ペンタンジオールの含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは45モル%以上であり、そして、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、より更に好ましくは70モル%以下である。
ポリエステル樹脂(A)の原料モノマーであるアルコール成分には、3-メチル-1,5-ペンタンジオール以外のその他のアルコール成分を含有することができる。
その他のアルコール成分としては、芳香族ジオールが好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物がより好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンにオキシアルキレン基を付加した構造を有する化合物であり、具体的には下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
Figure 2022102169000001
一般式(I)において、OR、ROは、それぞれ独立に炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基を示し、好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基である。
x及びyは、アルキレンオキシドの付加モル数であり、それぞれ独立して0以上の正数である。x及びyは、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
また、x個のORとy個のROは、各々同一であっても異なっていてもよいが、上記と同様の観点から、同一であることが好ましい。
このビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物がより好ましい。
アルコール成分中におけるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、より更に好ましくは55モル%以下であり、そして、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、より更に好ましくは30モル%以上である。
その他のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2以上4以下)オキシド付加物(平均付加モル数1以上16以下)等が挙げられる。
アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
(カルボン酸成分)
ポリエステル樹脂(A)の原料モノマーであるカルボン酸成分には、カルボン酸、その酸無水物及びそのアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が含まれる。
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、不飽和及び飽和の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。飽和脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。
脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸が好ましく、無水トリメリット酸も好ましい。
前記カルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
上記のカルボン酸成分は、水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、これらを併用するがより好ましい。
(ポリエステル樹脂(A)の製造)
ポリエステル樹脂(A)は、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを適宜組み合せて重縮合して得ることができる。例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてエステル化触媒を用いて、150℃以上250℃以下の温度で重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられ、エステル化反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。スズ触媒としては、酸化ジブチル錫、(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、これらの塩等が好ましく、(2-エチルヘキサン酸)錫(II)がより好ましい。必要に応じて、更に没食子酸等のエステル化助触媒を用いてもよい。
また、4-tert-ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤を併用してもよい。
ポリエステル樹脂(A)は、水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、酸基を有するものが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは12mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下である。
ポリエステル樹脂(A)の軟化点は、上記と同様の観点から、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、上記と同様の観点から、好ましくは38℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは42℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、上記と同様の観点から、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは3500以上であり、そして、好ましくは10000以下、より好ましくは7000以下、更に好ましくは5000以下である。
ポリエステル樹脂の酸価、軟化点、ガラス転移温度、及び数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、これらの物性は、用いるモノマーの種類、配合比率、重縮合の温度、反応時間を適宜調節することにより、所望のものを調製することができる。
〔(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメント〕
(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントは、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含有するビニル系ポリマーである。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上を意味する。
(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントは、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含有し、更に疎水性モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
ここで疎水性モノマーの「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。
疎水性モノマーの具体例としては、特開2018-83938号公報の段落〔0020〕~〔0022〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、炭素数1以上22以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びα-メチルスチレンから選ばれる1種以上がより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントは、更にノニオン性モノマー由来の構成単位を含有することができる。
ノニオン性モノマーの具体例としては、特開2018-83938号公報の段落〔0018〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
以上の観点から、(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントは、(メタ)アクリル酸由来の構成単位と、炭素数1以上6以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位、又はスチレン及びα-メチルスチレンから選ばれる1種以上由来の構成単位とを有する(メタ)アクリル系樹脂であることが更に好ましい。
((メタ)アクリル系樹脂(B)セグメント中の各構成単位の含有量)
(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントを構成する各構成単位の含有量は、水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、次のとおりである。
(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントを構成する全モノマー構成単位中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
疎水性モノマー由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントを構成する全モノマー構成単位中、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下であり、そして、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。
ノニオン性モノマーの構成単位を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメント中における(メタ)アクリル酸及び疎水性モノマー由来の構成単位の含有量は、測定により求めることができるし、(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造時における(メタ)アクリル酸及び疎水性モノマーを含む原料モノマーの仕込み比率で代用することもできる。
((メタ)アクリル系樹脂(B)の製造)
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸及び疎水性モノマー等のモノマー混合物を公知の重合法により共重合させることにより製造することができる。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、水、低級脂肪族アルコール、メチルエチルケトン等のケトン類、エーテル類、エステル類等の極性溶媒が好ましい。
重合の際には、アゾ化合物、過硫酸塩等の重合開始剤やメルカプタン類等の重合連鎖移動剤を用いることができる。重合温度は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。
(メタ)アクリル系樹脂(B)として、市販品を用いることもできる。かかる市販品としては、BASFジャパン株式会社製のジョンクリル67、678、683、690等のスチレン-アクリル樹脂等が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂(B)の数平均分子量は、水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは8000以上であり、そして、好ましくは10万以下、より好ましくは8万以下、更に好ましくは5万以下である。
(メタ)アクリル系樹脂(B)の酸価は、上記と同様の観点から、好ましくは150mgKOH/g以上であり、より好ましくは170mgKOH/g以上、更に好ましくは180mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは280mgKOH/g以下、更に好ましくは260mgKOH/g以下である。
(メタ)アクリル系樹脂(B)の数平均分子量及び酸価の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
<複合樹脂分散体の製造>
複合樹脂分散体の製造は、塊状重合-転相乳化法、シード重合法、分散処理法等の公知の方法により行うことができ、特に制限はない。
塊状重合-転相乳化法は、例えば、塊状重合によりポリエステル樹脂を製造した後、系内に(メタ)アクリル系樹脂を添加して反応させ、複合化した後、転相乳化し、必要に応じて更に架橋処理を行って複合樹脂分散体を製造する方法である。
シード重合法は、例えば、ポリエステル樹脂体中に(メタ)アクリル系樹脂の原料モノマーを加えて、反応させ、必要に応じて更に架橋処理を行って複合樹脂分散体を製造する方法である。
分散処理法は、例えば、ポリエステル樹脂分散液と、(メタ)アクリル系樹脂分散液とを高圧分散し、必要に応じて更に架橋処理を行って複合樹脂分散体を製造する方法である。
これらの中では、操作性の観点から、分散処理法が好ましい。
分散処理法としては、例えば、下記の工程1~2を有する方法が好ましい。また、必要に応じて、更に架橋工程3を行うことが好ましい。
工程1:(メタ)アクリル系樹脂(B)及び水を含有する混合物を分散処理して、(メタ)アクリル系樹脂(B)の水分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた水分散液と、ポリエステル樹脂(A)の水分散液とを分散処理して、複合樹脂粒子の分散体を得る工程
工程3:工程2で得られた分散体を、架橋剤(C)で架橋処理して、架橋複合樹脂粒子の分散体を得る工程
なお、本発明の複合樹脂分散体を製造する方法として、上記工程1で、ポリエステル樹脂(A)及び水を含有する混合物を分散処理してポリエステル樹脂(A)の水分散液を得る工程を行い、次いで工程2で、得られた水分散液と、(メタ)アクリル系樹脂(B)の水分散液とを分散処理する方法を用いてもよい。
本発明に係る複合樹脂分散体は、架橋前後の複合樹脂粒子の分散体を包含する。
以下、工程(1)で(メタ)アクリル系樹脂(B)の水分散液を得る方法について説明する。
(工程1)
工程1では、まず、(メタ)アクリル系樹脂(B)、水、中和剤、及び必要に応じて有機溶媒、界面活性剤等を混合し、(メタ)アクリル系樹脂(B)の水分散液を得る方法が好ましい。
工程1では(メタ)アクリル系樹脂(B)の酸基の少なくとも一部は中和剤により中和し、pHが7以上11以下になるように調整することが好ましい。
中和剤としては、保存安定性等を向上させる観点から、アルカリ金属化合物等が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
また、工程1の前に、(メタ)アクリル系樹脂(B)を予め中和しておいてもよい。
中和剤の使用当量は、上記と同様の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
ここで中和剤の使用当量は、中和前のポリマーを「ポリマーa’」とする場合、次式によって求めることができる。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマーa’の酸価(mgKOH/g)×ポリマーa’の質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
工程1における分散処理は、公知の方法で行うことができる。分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
(工程2)
工程2では、工程1で得られた水分散液と、ポリエステル樹脂(A)の水分散液とを分散処理して、複合樹脂粒子の分散体を得る。
ポリエステル樹脂(A)の水分散液は、(ポリエステル樹脂(A)の製造)の欄で得られた樹脂を水系媒体に分散したものを用いることができる。
分散処理は、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機等を用いて行うことができる。これらの中でも、複合樹脂粒子を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて分散処理を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、複合樹脂粒子水分散体中の複合樹脂粒子の平均粒径を調整することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上300MPa以下であり、パス回数は、好ましくは3以上30以下である。
得られた複合樹脂の酸基の少なくとも一部は、アルカリ金属水酸化物等の中和剤により中和することが好ましい。
複合樹脂の中和剤の使用当量は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
分散処理法で得た複合樹脂の中和剤の使用当量の算出は前記に準じて次式によって求めることができる。
複合樹脂の中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマーb’の酸価(mgKOH/g)×ポリマーb’の質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
ここで「複合樹脂の中和剤の使用当量」とは複合樹脂の中和に用いた中和剤の質量の合計であり、「ポリマーb’の酸価」とは、(メタ)アクリル系樹脂(B)の酸価とポリエステル樹脂(A)の酸価の加重平均値であり、「ポリマーb’の質量」とは複合樹脂を構成する(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントの質量とポリエステル樹脂(A)セグメントの質量の合計である。
(工程3)
工程3では、工程2で得られた分散体を、架橋剤(C)で架橋処理して、架橋複合樹脂粒子の分散体を得る。工程3は任意工程であるが、本発明の複合樹脂粒子の分散体及び該複合樹脂粒子の分散体を配合した本発明の水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、工程3を行うことが好ましい。
工程3を行うことにより、複合樹脂を構成するポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントのそれぞれの酸基の少なくとも一部と架橋剤(C)が反応して架橋し、複合樹脂粒子の表層部に架橋構造が形成される。すなわち、分散液中の複合樹脂粒子は架橋剤(C)によって架橋され、架橋複合樹脂粒子となる。
(架橋剤(C))
架橋剤(C)としては、分子中に2以上のエポキシ基、好ましくはグリシジルエーテル基を有する多官能エポキシ化合物が好ましく、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物がより好ましい。
多官能エポキシ化合物のエポキシ基の数は、分散液の保存安定性等を高める観点から、1分子あたり2以上、好ましくは3以上であり、そして、1分子あたり好ましくは6以下、市場入手性の観点から、より好ましくは4以下である。
多官能エポキシ化合物のエポキシ当量は、上記と同様の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは270以下、更に好ましくは250以下である。
多官能エポキシ化合物の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中では、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
架橋反応の温度は、反応の完結と経済性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下である。また、反応時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下である。
複合樹脂の架橋度は、本発明の複合樹脂粒子の分散体及び本発明の水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
複合樹脂の架橋度は、ポリエステル樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)の酸価と多官能エポキシ化合物のエポキシ基の当量から計算される見かけの架橋度である。すなわち、架橋度は「分散液に加えた多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル数/分散液中の複合樹脂のカルボキシ基のモル数」である。
本発明の複合樹脂分散体の(架橋)複合樹脂粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、密着性等を向上させる観点から、好ましくは80nm以上、より好ましくは85nm以上、更に好ましくは90nm以上であり、また、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
本発明の複合樹脂分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、保存安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、平均粒径、固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
(複合樹脂分散体中の各成分の含有量)
本発明の複合樹脂分散体中の複合樹脂粒子の含有量は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
本発明の複合樹脂分散体は、コーティング剤やクリアインクの構成成分として用いる場合を想定する観点から、顔料等の着色剤成分を含有しないことが好ましい。
[水系インク]
本発明の水系インクは、複合樹脂粒子と顔料を含有する水系インクであって、
該複合樹脂が、ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有し、該ポリエステル樹脂(A)がアルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含み、該アルコール成分が少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む。
複合樹脂粒子については、前述したとおりである。
なお、水系インクがクリアインクの場合は、顔料を含有しない。
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらとシリカ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色の有機顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
上記の顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(顔料を含有するポリマー粒子)
本発明の水系インクで用いられる顔料は、本発明の水系インクの保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、顔料を含有するポリマー粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の形態が好ましい。
本明細書において「顔料を含有するポリマー粒子」は、ポリマーが顔料を包含する形態、ポリマーと顔料からなる粒子の表面に顔料の一部が露出している形態、ポリマーが顔料の一部に吸着している形態、及びそれらの混合形態の粒子を含むが、顔料を包含するポリマー粒子の形態がより好ましい。
また、「顔料を含有するポリマー粒子」は、更に架橋剤で架橋されてなる「顔料を含有する架橋ポリマー粒子」であることがより好ましい。
顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマー(以下、「ポリマーa」ともいう)は、少なくとも顔料分散能を有するものであれば特に制限はない。
ポリマーaとしては、顔料の分散安定性の観点から、ポリエステル樹脂及びビニル系樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。ポリマーaは、適宜合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
ポリマーaは、水溶性ポリマーでも水不溶性ポリマーでもよいが、水不溶性ポリマーがより好ましい。使用するポリマーが水溶性ポリマーであっても、架橋処理すれば該ポリマーは水不溶性ポリマーとなる。
ポリマーの「水不溶性」の定義は前記のとおりである。
ポリマーaがポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂は、前述したポリエステル樹脂(A)であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂の具体例、好適例はポリエステル樹脂(A)と同じであるので、ここではその記載を省略する。
また、ポリマーaがビニル系樹脂である場合、ビニル系樹脂は、前述した(メタ)アクリル系樹脂(B)であることが好ましい。前記ビニル系樹脂の具体例、好適例は(メタ)アクリル系樹脂(B)と同じであるので、ここではその記載を省略する。
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
顔料含有ポリマー粒子は、顔料水分散体として下記の工程I及びIIを有する方法により、効率的に製造することができる。また、必要に応じて、更に下記の工程IIIを行うことが好ましい。
工程I:ポリマーa、有機溶媒、顔料、及び水を含む顔料混合物を分散処理して顔料分散液を得る工程
工程II:工程Iで得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体(i)」ともいう)を得る工程
工程III:工程IIで得られた顔料水分散体(i)に架橋剤を添加し、顔料含有ポリマー粒子を架橋させて、顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体(I)(以下、「顔料水分散体(I)」ともいう)を得る工程
工程Iにおける顔料分散液は、ポリマーaを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散液を得る方法により得ることが好ましい。
工程Iで用いる有機溶媒に制限はないが、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマーaの顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトンが更に好ましい。ポリマーaとしてビニル系樹脂を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
ポリマーaが酸基を有する場合、該酸基の少なくとも一部は中和剤により中和し、pHが7以上11以下になるように調整することが好ましい。
中和剤は、前記のとおりであり、水酸化ナトリウムが好ましい。
また、ポリマーaを予め中和しておいてもよい。
中和剤の使用当量は、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
ここで中和剤の使用当量の定義は、前記のとおりである。
工程Iにおける分散処理は、前述した「分散処理法」における工程2の分散処理と同じであるので、ここではその記載を省略する。
工程IIにおける有機溶媒の除去は、公知の方法で行うことができる。得られた顔料水分散体(i)中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、例えば0.1質量%以下残留していてもよい。
工程IIIは、任意であるが、工程IIで得られた顔料水分散体(i)に架橋剤を添加し、顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーaのカルボキシ基の一部を架橋し、顔料含有ポリマー粒子の表層部に架橋構造を形成させて、顔料含有架橋ポリマー粒子の顔料水分散体(I)を得ることができる。
架橋剤としては、前記の多官能エポキシ化合物が好ましい。多官能エポキシ化合物の具体例、好適例、架橋処理条件は前記のとおりであるので、ここではその記載を省略する。
得られる顔料水分散体(I)の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体(I)中の顔料の含有量は、分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
顔料含有(架橋)ポリマー粒子の平均粒径は、分散安定性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下である。
本発明の水系インク中の顔料含有(架橋)ポリマー粒子の平均粒径は、顔料水分散体(i)又は(I)中の顔料含有(架橋)ポリマー粒子の平均粒径と実質的に同じである。
平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の水系インクは、複合樹脂粒子と顔料以外に、水溶性有機溶剤と、必要に応じて、界面活性剤、保湿剤、湿潤剤、浸透剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤とを含有することができる。
(水溶性有機溶剤)
用いられる水溶性有機溶剤は、25℃で液体であっても固体であってもよいが、該有機溶剤を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量は10mL以上である。
水溶性有機溶剤は、インクの濡れ拡がり性を向上させる観点から、その沸点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上、より更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは245℃以下、更に好ましくは240℃以下、より更に好ましくは235℃以下である。
水溶性有機溶剤としては、アルキレングリコールエーテル等のグリコールエーテル、多価アルコール、アミド化合物等が挙げられる。これらの中では、アルキレングリコールエーテル、多価アルコールが好ましい。
アルキレングリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルがより好ましい。
多価アルコールとしては、プロピレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの中では、プロピレングリコールが好ましい。
本発明の水系インクは、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルとプロピレングリコールを併用することがより好ましい。
<界面活性剤>
本発明の水系インクは、インクの表面張力を適正に保ち、記録媒体への濡れ性を向上させる観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限はないが、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社製の「サーフィノール」シリーズ、「オルフィン」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。
(シリコーン系界面活性剤)
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン等が挙げられるが、上記と同様の観点から、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、PEG-3ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-9PEG-9ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンの市販品例としては、信越化学工業株式会社のシリコーン:KFシリーズ等が挙げられる。
上記の界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(本発明の水系インク中の各成分の含有量)
本発明の水系インク中の各成分の含有量は、保存安定性を向上し、低吸水性記録媒体に対する密着性、記録濃度、耐溶剤性に優れた記録物を得る観点から、以下のとおりである。
(複合樹脂粒子の含有量)
水系インク中の複合樹脂粒子の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(顔料の含有量)
本発明の水系インク中の顔料の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
本発明の水系インク中の顔料を含有するポリマー粒子の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
水系インク中の水溶性有機溶剤の合計含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
水系インク中の系界面活性剤の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
水系インク中の水の含有量は、好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
(本発明の水系インクの物性)
本発明の水系インクの32℃の粘度は、低吸水性記録媒体に対する密着性等の観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは2.5mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9mPa・s以下である。
本発明の水系インクのpHは、保存安定性、腐食性低減等の観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.2以上であり、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。
本発明の水系インクは、公知のインクジェット印刷装置に装填し、低吸水性等の記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。
インク液滴の吐出方式としては、ピエゾ式、サーマル式、静電式があるが、ピエゾ方式が好ましい。ピエゾ方式では、多数のノズルが、各々圧力室に連通しており、この圧力室の壁面をピエゾ素子で振動させることにより、ノズルからインク液滴を吐出させる。
低吸水性記録媒体としては、低吸水性のコート紙、アート紙等や、樹脂フィルムが挙げられる。
コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、透明合成樹脂フィルムが挙げられ、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムであってもよい。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性等の測定方法は以下のとおりである。
(1)樹脂の酸価
測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に変更したこと以外は、JIS K0070-1992に記載の中和滴定法に従って測定した。
(2)樹脂の軟化点
フローテスター(株式会社島津製作所製、商品名:CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(3)樹脂のガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(4)樹脂の数平均分子量(Mn)
以下のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量を求めた。
(4-1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(4-2)分子量測定
下記の測定装置及び分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー株式会社製)
検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。
(5)顔料水分散体の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム(大塚電子株式会社製、商品名:ELS-8000)を用いて、動的光散乱法により粒径を測定し、キュムラント法解析により算出した。
測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定サンプルには、水系顔料分散体をスクリュー管(マルエム株式会社製、No.5)に計量し、固形分濃度が2×10-4質量%になるように水を加えてマグネチックスターラーを用いて25℃で1時間撹拌したものを用いた。
(6)固形分濃度の測定
30mLのポリプロピレン製容器(φ:40mm、高さ:30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(7)pHの測定
pH電極(株式会社堀場製作所製、商品名:6337-10D)を使用した卓上型pH計(株式会社堀場製作所製、商品名:F-71)を用いて、20℃におけるインクのpHを測定した。
製造例I-1(アクリル樹脂A1の製造)
アクリル酸60部、スチレン130部、α-メチルスチレン10部を混合し、モノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK)20部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残り(前記モノマー混合液の90%)、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びアゾ系ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名:V-65、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))2.5部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、アクリル樹脂A1の溶液を得た。結果を表1に示す。
製造例I-2(アクリル樹脂A2の製造)
製造例I-1において、表1に示す条件に変えた以外は、製造例I-1と同様にしてアクリル樹脂A2を得た。結果を表1に示す。
Figure 2022102169000002
製造例II-1~II-6(複合樹脂H1~H6の製造)
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに、表2に示す無水トリメリット酸、フマル酸、及びアクリル樹脂以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒、エステル化助触媒を入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温した後、235℃にて10時間重縮合させた。
次いで、200℃まで降温した後、無水トリメリット酸、フマル酸、及び製造例I-1又はI-2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたアクリル樹脂A1又はA2を添加し、200℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行い、複合樹脂H1~H6を得た。結果を表2に示す。
Figure 2022102169000003
製造例III-1~III-2(ポリエステル樹脂P1、P2の製造)
窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表3に示すトリメリット酸無水物及びフマル以外の原料モノマー、エステル化触媒、及びエステル化助触媒を入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で10時間重縮合させた。
次いで、200℃まで降温した後、表3に示す無水トリメリット酸及びフマル酸を添加し、200℃で1時間反応させた。次いで、200℃、8kPaにて表3に示す軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステル樹脂P1及びP2を得た。結果を表3に示す。
比較製造例III-1(ポリエステル樹脂P3の製造)
窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表3に示す原料モノマー、エステル化触媒及び重合禁止剤を入れ、窒素雰囲気下、210℃まで10時間かけて昇温した。その後210℃で1時間重縮合させた後、40kPaにて表3に示す軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステル樹脂P3を得た。結果を表3に示す。
Figure 2022102169000004
実施例I-1~I-6(架橋複合樹脂分散体1~6の調製)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器(新東科学株式会社製、商品名:スリーワンモーターBL300)及び熱電対を装備した1L容の四つ口フラスコに、表4に示す種類及び配合量の複合樹脂を入れ、30℃でMEK200gと混合し、製造例II-1~II-6で得られた各々の複合樹脂H1~H6を溶解させた。
次いで、表4に示す量の48%水酸化ナトリウム水溶液を複合樹脂の中和度が60モル%となるように添加して30分間撹拌した後、30℃、撹拌下、20mL/minの速度で、表4に示すイオン交換水全量を滴下した。次いで、60℃に昇温した後、80kPa~30kPaに段階的に減圧していきながらMEKを留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、イオン交換水を加えて分散体の固形分濃度を30%に調整した。
得られた分散体をねじ口つきガラス瓶にとり、表4に示す量の架橋剤(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321L)を加えて密栓し、スタラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、室温まで降温した後、イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を25%に調整した。
得られた分散液を孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フィルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLのシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、架橋複合樹脂分散体1~6を得た。結果を表4に示す。
Figure 2022102169000005
実施例I-7~I-9、比較例I-1(架橋複合樹脂分散体7~9、21の調製)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器(新東科学株式会社製、商品名:スリーワンモーターBL300)及び熱電対を装備した1L容の四つ口フラスコに、製造例III-1~III-2、比較製造例III-1で得られたポリエステル樹脂P1、P2又はP3を表5に示す通りに入れ、30℃でMEK200gと混合し、ポリエステル樹脂を溶解させた。
次いで、表5に示す量の48%水酸化ナトリウム水溶液をポリエステル樹脂の中和度が60モル%となるように添加して30分間撹拌した後、30℃、撹拌下、20mL/minの速度で、表5に示すイオン交換水全量を滴下した。次いで、60℃に昇温した後、80kPa~30kPaに段階的に減圧していきながらMEKを留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、イオン交換水にて固形分30%に調整してポリエステル樹脂分散液を得た。
得られたポリエステル樹脂分散液を、還流冷却管、撹拌器(商品名:スリーワンモーターBL300)及び2つの滴下ロートを装備した1L容の四つ口フラスコに、表5に示す量で入れ、窒素ガス置換を十分に行った。一方の滴下ロートに表5に示すアクリル樹脂の原料モノマーの混合液を加え、もう一方のロートに1%過硫酸カリウム水溶液を加え、窒素雰囲気下、フラスコ内の分散液を撹拌しながら70℃まで昇温し、各々の滴下ロート中の原料を1時間かけて滴下した。滴下終了から70℃で2時間経過した後、更に1%過硫酸カリウムを加え、更に70℃で2時間、75℃で1時間熟成させた。室温まで降温した後、イオン交換水で固形分濃度を25%に調製し、複合樹脂分散体を得た。
表5に示す量の得られた複合樹脂分散体をねじ口つきガラス瓶にとり、48%水酸化ナトリウム水溶液及び架橋剤(商品名:デナコールEX-321L)を加え、その後、実施例I-1~I-6と同様の手順で架橋複合樹脂分散体7~9、21(固形分濃度:25%)を得た。結果を表5に示す。
Figure 2022102169000006
実施例I-10(複合樹脂分散体10の調製)
製造例I-1で得られたアクリル樹脂A1の溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー35部をMEK40部と混合し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液7.3部を加え、中和剤の使用当量が60モル%になるよう樹脂A1を中和した。次いで、イオン交換水180部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を1,400rpmで回転させる条件で15分間撹拌した。
製造例III-1で得られたポリエステル樹脂P1を315部、48%水酸化ナトリウム5.6部を加え、ディスパー翼を7,000rpmの回転条件に変更し、60分間撹拌し予備分散液を得た。得られた予備分散液を、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)を用いて200MPaの圧力で10パス分散処理し、分散液を得た。
得られた分散液にイオン交換水を200部加え、撹拌した後、減圧下、60℃でMEKを除去し、更に一部の水を除去し、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度30%の樹脂分散体を得た。得られた分散体をねじ口つきガラス瓶にとって密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、室温まで降温した後、イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を25%に調整した。
得られた分散体を孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フィルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLのシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、複合樹脂分散体10(固形分濃度:25%)を得た。結果を表6に示す。
実施例I-11(架橋複合樹脂分散体11の調製)
実施例I-10において、分散体をねじ口つきガラス瓶に取った後、架橋剤(商品名:デナコールEX-321L)1.1部を加えてから密栓した後は製造例1-10と同様にして架橋複合樹脂分散体11(固形分濃度:25%)を得た。結果を表6に示す。
実施例I-12(架橋複合樹脂分散体12の調製)
製造例I-2で得られたアクリル樹脂A2の溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー35部をMEK40部と混合し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液6.1部を加え、中和剤の使用当量が60モル%になるよう樹脂A2を中和した。次いで、イオン交換水180部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を1,400rpmで回転させる条件で15分間撹拌した。
製造例III-1で得られたポリエステル樹脂P1を140部及び48%水酸化ナトリウム2.5部を加え、以降は実施例I-10と同様にして、固形分濃度30%の樹脂分散体を得た。得られた分散体をねじ口つきガラス瓶にとり、架橋剤(商品名:デナコールEX-321L)1.5部を加えて密栓し、スタラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、室温まで降温した後、イオン交換水を加えて分散体の固形分濃度を25%に調整した。
得られた分散体を孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フィルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLのシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、架橋複合樹脂分散体12(固形分濃度:25%)を得た。結果を表6に示す。
比較例I-2(架橋複合樹脂分散体22の調製)
製造例III-1で得られたポリエステル樹脂P1 315部を製造例III-3で得られたポリエステル樹脂P3 82部に変更した以外は、実施例I-11と同様にして、固形分濃度30%の樹脂分散体を得た。その後、架橋剤(商品名:デナコールEX-321L)を2.3部に変更した以外は、実施例I-11と同様にして、架橋複合樹脂分散体22(固形分濃度:25%)を得た。結果を表6に示す。
Figure 2022102169000007
実施例II-1~II-12、比較例II-1~II-3(クリアインクの調製)
実施例I-1~I-12で得られた複合樹脂分散体1~12、製造例III-2で得られたポリエステル樹脂の分散液P2、又は比較例I-1~I-2で得られた複合樹脂分散体21、22(固形分濃度:25%)22部(クリアインク中5.5%)、プロピレングリコール10部、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBDG)15部、アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンE1010)1部、ポリエーテル変性シリコーン活性剤(PEG-11メチルエーテルジメチコン、信越化学工業株式会社製、商品名:KF-6011)1部及びイオン交換水を混合し(合計100部)、マグネチックスターラーを用いて室温で15分間撹拌し、クリアインク1~12、21~23を得た。
得られた各クリアインクを用いて、下記の方法で保存安定性、長期保存後の樹脂フィルム密着性を評価した。結果を表7に示す。
なお、表7中の各成分の量は有効分(固形分)量である。
(i)クリアインクの保存安定性の評価
クリアインクを密閉容器内で、60℃恒温室下で保存し、35日経た後に取り出し、保存後の平均粒径を測定した。60℃、35日保存後における平均粒径変化率を下記式により算出(小数点以下は切り捨て)し、以下の評価基準で保存安定性を評価した。
平均粒径変化率(%)=[〔保存後の平均粒径/保存前の平均粒径〕-1]×100
(評価基準)
A:平均粒径変化率の絶対値が、5%未満である。
B:平均粒径変化率の絶対値が、5%以上15%未満である。
C:平均粒径変化率の絶対値が、15%以上30%未満である
D:平均粒径変化率の絶対値が、30%以上50%未満である。
評価結果がB以上であれば、実使用上の問題はない。
(ii)長期保存後の樹脂フィルム(PVC)密着性の評価
上記(i)で得られた60℃35日保存後のクリアインクを用いて、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(スリーエムジャパン株式会社製、商品名:3MTM スコッチカルTM グラフィックフィルムIJ40―10R(白色光沢))に、バーコーターNo.6を用い、卓上塗工機(三井電気精機株式会社製、商品名:TC-1)にて速度6m/minで塗布した後、80℃の乾燥機で5分間乾燥し、塗膜を形成した。
次いで、形成された塗膜面に、カッターナイフを用いてPVCフィルム素地に達する縦横11本の切り傷(切り傷の間隔は1mm)をつけ、100マスの碁盤目を作製した。次いで、この碁盤目部分にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製、商品名:CT15)を貼り付け、角度90°で10cm/secの速度で該テープを剥がし、剥離のないマス目の数を目視により確認した。
表7には100マスに対する剥離のなかったマス目の数を示す。
剥離のないマス目の数が多いほど樹脂フィルム(PVC)に対する密着性に優れる。
Figure 2022102169000008
表7から、実施例II-1~II-12で得られた本発明の複合樹脂粒子を含むクリアインクは、比較例II-1~II-3で得られたクリアインクと比べて、疎水的な系中での保存安定性に優れ、長期保存後であっても樹脂フィルム(PVC)に対する密着性に優れることが分かる。
比較例II-1は、用いられた樹脂が、(メタ)アクリル樹脂セグメントを含んでおらず、複合樹脂ではないため、保存安定性に劣る。
比較例II-2及びII-3は、用いられた複合樹脂がポリエステル樹脂セグメンントとアクリル樹脂セグメンントを含んでいるが、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分中に3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含まないため、保存安定性及び長期保存後のインクの密着性に劣る。
製造例IV-1(顔料含有アクリル樹脂粒子の顔料水分散体C1の製造)
製造例I-1で得られたアクリル樹脂A1の溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー37部をMEK148部に溶かし、その中に中和剤として48%水酸化ナトリウム水溶液7.7部及びイオン交換水372部を加え、更にシアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3、ディーアイシー株式会社製、商品名:TGR-SD)100部を加え、顔料混合液(中和度:60モル%)を得た。
得られた顔料混合液をディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて7,000rpm、20℃の条件下で1時間混合した後、更に高圧ホモジナイザー(Microfluidics社製、商品名:マイクロフルイダイザーM-140K)を用いて、180MPaの圧力で15パス分散処理した。
得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散液を、減圧下60℃でMEKを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分をミニザルトシリンジフィルター(孔径:5μm)で濾過して粗大粒子を除き、イオン交換水により固形分濃度を22%に調整した。
得られた顔料水分散体100部をねじ口つきガラス瓶にとり、架橋剤(デナコールEX-321L)1.5部を加え密栓し、スタラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、室温まで降温した後、イオン交換水で固形分を調整し、得られた顔料水分散体を孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm)を取り付けた容量25mLのシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、顔料含有アクリル樹脂粒子の顔料水分散体C1(固形分濃度:20%、顔料:13.7%、ポリマー:6.3%、平均粒径:104nm)を得た。
製造例IV-2(顔料含有ポリエステル樹脂粒子の顔料水分散体C2の製造)
(1)ポリエステル樹脂B1の製造
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキシド(2.2)付加物4828部、テレフタル酸1374部、エステル化触媒として2-エチルヘキサン酸錫(II)35部、及びエステル化助触媒として没食子酸3.5部を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で5時間重縮合させた。次いで、180℃まで降温した後、フマル酸480部、無水トリメリット酸318部、及び重合禁止剤として4-tert-ブチルカテコール3.5部を添加し、210℃まで3時間かけて段階的に昇温させて反応させた。次いで、210℃で66.7kPaの減圧下にて3時間反応を行い、ポリエステル樹脂B1(酸価:30mgKOH/g、ガラス転移温度:72.2℃、軟化点:123.5℃)を得た。
(2)顔料水分散体C2の製造
上記(1)で得られたポリエステル樹脂B1 42.7部をMEK142.7部に溶解し、更に中和剤として48%水酸化ナトリウム水溶液1.6部(中和度:85モル%)、及びイオン交換水240部を加え、10~15℃でディスパー翼を用いて2,000rpmで15分間撹拌混合を行った。次いで、シアン顔料(商品名:TGR-SD)100部を加え、10~15℃でディスパー翼を用いて7,000rpmで3時間撹拌混合した。
得られた分散液を150メッシュ濾過し、イオン交換水110部を添加して希釈した後に、高圧ホモジナイザー(Microfluidics社製、商品名:マイクロフルイダイザー、型式:M-110K)を用いて、150MPaの圧力で15パス分散処理した。
得られた分散液を、減圧下60℃でMEKを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分を孔径10μmのフィルター(Pall社製)で濾過して粗大粒子を除き、イオン交換水を混合した後、前記孔径10μmのフィルターで濾過し、顔料含有ポリエステル樹脂粒子の顔料水分散体C2(固形分濃度:20%、顔料:14%、ポリマー:6%、平均粒径:120.5nm)を得た。
実施例III-1~III-12、比較例III-1~III-3(水系インクの調製)
100mLスクリュー管に、プロピレングリコール10部、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBDG)15部、アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンE1010)1部、ポリエーテル変性シリコーン活性剤(PEG-11メチルエーテルジメチコン、信越化学工業株式会社製、商品名:KF-6011)1部及びイオン交換水21.7部を加え、マグネチックスターラーを用いて室温で15分間撹拌して、混合溶液を得た。
次いで、製造例IV-1で得られた顔料含有アクリル樹脂粒子の顔料水分散体C1 29.3部(水系インク中、顔料として4%相当)をマグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液を添加し、更に表8に示す複合樹脂分散体22部をスポイトで滴下しながら撹拌混合した(合計100部)。次いで、孔径5.0μmのフィルター(Sartorius Stedim Biotech社製、商品名:ミニザルト)で濾過し、水系インク1~12、21~23(複合樹脂粒子:5.5%、顔料:4.0%、顔料含有ポリマー粒子:5.9%)を得た。
実施例III-13(水系インクの調製)
実施例III-12において、イオン交換水を22.5部、顔料含有アクリル樹脂粒子の顔料水分散体C1を、顔料含有ポリエステル樹脂粒子の顔料水分散体C2 28.5部に変更した以外は、実施例III-12と同様にして水系インク13(複合樹脂粒子:5.5%、顔料:4.0%、顔料含有ポリマー粒子:5.7%)を得た。
得られた各水系インクを用いて、下記の方法で保存安定性、長期保存後の樹脂フィルム密着性、印刷濃度、耐溶剤(アルコール)性を評価した。結果を表8に示す。
なお、表8中の各成分の量は有効分(固形分)量である。
(1)保存安定性1(平均粒径変化率)の評価
水系インクを密閉容器内で、60℃恒温室下で保存し、28日後に取り出し、保存後の平均粒径を測定した。60℃、28日保存後における平均粒径変化率を下記式により算出(小数点以下は切り捨て)し、以下の評価基準にて保存安定性を評価した。
平均粒径変化率(%)=[〔保存後の平均粒径/保存前の平均粒径〕-1]×100
(評価基準)
A:平均粒径変化率の絶対値が、5%未満である。
B:平均粒径変化率の絶対値が、5%以上15%未満である。
C:平均粒径変化率の絶対値が、15%以上30%未満である
D:平均粒径変化率の絶対値が、30%以上50%未満である。
E:平均粒径変化率の絶対値が、50%以上、又は、水系インクが流動性を失い、平均粒径を測定できる状態ではない。
評価結果がB以上であれば、実使用上の問題はない。
(2)保存安定性2(pH比)の評価
水系インクを密閉容器内で、60℃恒温室下で保存し、28日後に取り出し、水系インクのpHを測定した。保存前の水系インクのpHに対する保存後の水系インクのpHの比(保存後pH/保存前pH)を算出した。
前記pHの比が1に近いほど保存安定性に優れており、0.8以上であれば、実使用上の問題はない。
(3)長期保存後の樹脂フィルム(PVC)密着性の評価
上記で得られた60℃28日間保存後の水系インクを、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、商品名:IPSiO GX 2500、ピエゾ式)に充填し、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム(商品名:3MTM スコッチカルTM グラフィックフィルムIJ40-10R(白色光沢))にA4ベタ画像を印刷した。次いで、80℃の乾燥機にて5分間乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置し、評価用印刷物を得た。
評価用印刷物の印刷面にカッターナイフを用いてPVCフィルム素地に達する縦横11本の切り傷(切り傷の間隔は1mm)をつけ、100マスの碁盤目を作製した。次いでこの碁盤目部分にセロテープ(登録商標)(商品名:CT15)を貼り付け、角度90°で10cm/secの速度で該テープを剥がし、剥離のないマス目の数を目視により確認した。
表8には100マスに対する剥離のなかったマス目の数を示す。
剥離のないマス目の数が多いほど樹脂フィルム(PVC)に対する密着性に優れており、70以上であれば、実使用上の問題はない。
(4)長期保存後の印刷濃度の評価
上記(3)の密着性の評価と同様の方法により評価用印刷物を得た。得られた印刷物をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:スペクトロアイ)を用いて、中心及び四隅の計5点を測定し、その平均値を求めた。
値が大きいほど、長期保存後のインクの印刷濃度に優れており、1.6以上であれば、実使用上の問題はない。
(5)長期保存後の耐溶剤(アルコール)性の評価
上記(3)の密着性の評価と同様の方法により評価用印刷物を得た。
エタノールをイオン交換水で希釈し、エタノールの質量濃度が異なる評価用のエタノール水溶液を作製した(0~100%の範囲で10%刻みの水溶液を作製した)。次いで、前記エタノール水溶液(各質量濃度)を含浸させた綿棒を用いて、2~3cmの幅で1秒間に1往復の速度で、該印刷面を10回往復してなでるように軽く擦過した。擦過した印刷面の状態を目視により観察し、印刷面に傷、剥がれ、白濁等の変化が認められなかった最も高いエタノールの質量濃度を耐溶剤(アルコール)性の指標として表8に示す。
エタノールの質量濃度が高いほど耐アルコール性に優れており、50%以上であれば、実使用上の問題はないが、60%以上であることが好ましい。
Figure 2022102169000009
表8から、実施例III-1~III-13で得られた本発明の複合樹脂粒子を含む水系インクは、比較例III-1~III-3で得られた水系インクと比べ、疎水系での保存安定性に優れ、長期保存後のインクであっても樹脂フィルム(PVC)への密着性、印刷濃度、及び耐溶剤(エタノール)性に優れる印刷物を得られることが分かる。
比較例III-1は、用いられた樹脂が、(メタ)アクリル樹脂セグメントを含んでおらず、複合樹脂ではないため、保存安定性、長期保存後のインクの樹脂フィルム(PVC)への密着性、印刷物の印刷濃度、耐溶剤(アルコール)性に劣る。
比較例III-2及びIII-3は、用いられた複合樹脂がポリエステル樹脂セグメンントとアクリル樹脂セグメンントを含んでいるが、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分中に3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含まないため、保存安定性、長期保存後のインクの樹脂フィルム(PVC)への密着性、印刷物の印刷濃度、耐溶剤(エタノール)性に劣る。

Claims (8)

  1. ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有する複合樹脂粒子を含む複合樹脂分散体であって、
    該ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分が、少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む、複合樹脂分散体。
  2. (メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントを構成する(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が、(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントを構成する全モノマー構成単位中、10質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の複合樹脂分散体。
  3. (メタ)アクリル系樹脂(B)の酸価が150mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である、請求項1又は2に記載の複合樹脂分散体。
  4. (メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントに対するポリエステル樹脂(A)セグメントの質量比[(A)/(B)]が、20/80以上98/2以下である、請求項1~3のいずれかに記載の複合樹脂分散体。
  5. 複合樹脂粒子が、架橋剤(C)により架橋されてなる架橋複合樹脂粒子である、請求項1~4のいずれかに記載の複合樹脂分散体。
  6. インクジェット記録用である、請求項1~5のいずれかに記載の複合樹脂分散体。
  7. 複合樹脂粒子と顔料を含有する水系インクであって、
    該複合樹脂が、ポリエステル樹脂(A)セグメントと(メタ)アクリル系樹脂(B)セグメントとを含有し、該ポリエステル樹脂(A)がアルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含み、該アルコール成分が少なくとも3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む、水系インク。
  8. 顔料が、顔料を含有するポリマー粒子の形態である、請求項7に記載の水系インク。
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