JP2022093923A - 防汚構造体およびこれを有する自動車部品 - Google Patents

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Yuji Noguchi
聡哉 渋川
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Abstract

【課題】物品の防汚性を向上させうる手段を提供する。【解決手段】表面粗さ(Rz)が0.30μm以上1.25μm以下である凹凸構造を有する基材と、前記基材の凹凸構造の表面に形成された、平均開口径が200nm以下の空孔を有する多孔質層と、前記多孔質層の表面に形成された改質層と、前記改質層の表面に保持された防汚液体とを有する、防汚構造体。【選択図】図1

Description

本発明は、防汚構造体およびこれを有する自動車部品に関する。
物品の表面に指が触れると、皮脂(指紋)が付着する。自動車においては、インストルメントパネル、コンソール、ドアノブ等に皮脂が付着すると意匠性が低下したり、不快な印象を与えたりする。また、自動車のバックミラー、ルームミラー、カーナビゲーションの表示画面に皮脂が付着すると、視認性が低下する。よって、これらの物品の表面に防汚性(耐指紋性)を付与することが求められている。
特許文献1では、フッ素含有化合物を含む材質からなる微細な凹凸構造により、皮脂が付着しにくく、付着した場合でも油滴が微細化され、汚れを目立たなくすることができると記載されている。
国際公開第2013/008645号
しかしながら、特許文献1に記載された技術によっても、物品に十分な防汚性を付与することができない場合があり、さらなる改善が望まれていた。
そこで本発明は、物品の防汚性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の凹凸構造を有する基材の表面に、特定のサイズの空孔を有する多孔質層および改質層を積層し、当該改質層の表面に防汚液体を保持させることにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態は、表面粗さ(Rz)が0.30μm以上1.25μm以下である凹凸構造を有する基材と、前記基材の凹凸構造の表面に形成された、平均開口径が200nm以下の空孔を有する多孔質層と、前記多孔質層の表面に形成された改質層と、前記改質層の表面に保持された防汚液体とを有する、防汚構造体である。
本発明によれば、物品の防汚性を向上させうる手段を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る防汚構造体を積層方向(厚さ方向)に切断した際の断面図である。 図1における防汚層の拡大図である。 本発明の一実施形態に係る防汚構造体の防汚機能を説明するための図である。
<防汚構造体>
本発明の一形態は、表面粗さ(Rz)が0.30μm以上1.25μm以下である凹凸構造を有する基材と、前記基材の凹凸構造の表面に形成された、平均開口径が200nm以下の空孔を有する多孔質層と、前記多孔質層の表面に形成された改質層と、前記改質層の表面に保持された防汚液体とを有する、防汚構造体である。なお、本明細書では、多孔質層と、改質層と、防汚液体からなる防汚液膜とを合わせて「防汚層」とも称する。
本形態に係る防汚構造体によると、基材表面のマクロな凹凸構造により防汚構造体と指との接触面積を小さくすることができる。これにより、指が離れる際に防汚液膜に残存する皮脂の量を低減することができるため、物品の防汚性を向上させることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る防汚構造体を積層方向(厚さ方向)に切断した際の断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る防汚構造体10は、マクロな凹凸構造を有する基材1の表面に防汚層2を有する。図2は、図1における防汚層2の拡大図である。図2に示すように、防汚層2は、微細な空孔を有する多孔質層3、多孔質層3の表面に形成される改質層4、最表面に存在する防汚液体からなる防汚液膜5から構成される。なお、図示しないが、防汚液体は防汚液膜5以外にも、多孔質層3の空孔内や改質層4の内部に存在しうる。
図3は、本発明の一実施形態に係る防汚構造体の防汚機能を説明するための図である。一般に、指に付着した皮脂が防汚液体と接触して離れる際、表面張力がより小さい防汚液体が皮脂に引きずられ、防汚液体側で分断が起こる。そのため、皮脂側に一部の防汚液体が付着する。一方、重力や防汚液体との凝集力により、皮脂が防汚液体側にわずかに残る。本発明によると図3に示すように、マクロな凹凸構造を有する基材1に防汚層2が形成されるため、皮脂6と防汚液膜5との接触面積が小さくなる。これにより、重力や防汚液体との凝集力の影響が小さくなり、皮脂の残存をより一層抑制することができるため、防汚性が向上しうる。
[基材]
基材は、防汚構造体の構造を維持する役割を有する。基材を構成する材料は、特に制限されず、ガラス、金属、プラスチック、セラミック、木材および石材、ならびにこれらを組み合わせた複合材料等を適宜採用することができる。中でも、基材の材料として、ガラス、透明プラスチックなどの透明基材を用いることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る防汚構造体は、基材が透明基材である。このような防汚構造体は、ミラーや画像表示装置の表示画面等のへの防汚性の付与に好適に使用できる。なお、本明細書において、透明基材とは、基材の波長550nmにおける可視光透過率が80%以上であることを指す。
基材は表面粗さ(Rz)が0.30μm以上1.25μm以下である凹凸構造を有する。当該表面粗さ(Rz)は、好ましくは0.50μm以上1.10μm以下であり、より好ましくは0.70μm以上1.00μm以下である。表面粗さ(Rz)が0.30μm未満であると、凹凸構造が小さすぎて、皮脂と防汚液膜との接触面積を十分に小さくすることができず、皮脂の残存を抑制することができない場合がある。表面粗さ(Rz)が1.25μmを超えると、防汚構造体の意匠性が低下するおそれがある。また、前述のように基材として透明基材を用い、防汚構造体を表示画面へ適用する場合には、防汚構造体のヘイズが高くなり(5%を超える)、十分な視認性が得られないおそれがある。なお、本明細書において、表面粗さ(Rz)は実施例に記載の測定方法により得られた値を採用する。
当該表面粗さ(Rz)を有する基材は、従来公知の方法を用いることで製造することができ、例えば、上記材料の表面をエッチング処理する方法や、微粒子とマトリックスとを含むコーティング液をコートして、マトリックスを硬化させる方法が挙げられる。
[多孔質層]
多孔質層は、複数の空孔が互いに連通して三次元にランダムに配置された、所謂、スポンジ状の構造体であり、空孔内および/または表面に防汚液体を保持する。
多孔質層は酸化ケイ素を主成分とする金属酸化物から成ることが好ましい。多孔質層が、硬度の高い酸化ケイ素を含む金属酸化物からなることで、耐摺動性が向上し、防汚構造体の耐久性が向上しうる。なお、このような金属酸化物からなる多孔質層は、従来公知の方法、例えば、ゾルゲル法等を用いて形成することができる。
多孔質層を構成する金属酸化物としては、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等、酸化ケイ素(SiO)を60質量%以上含むものが挙げられる。
空孔の平均開口径は200nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下であり、より好ましくは20nm以上180nm以下であり、さらに好ましくは50nm以上150nm以下であり、特に好ましくは70nm以上120nm以下である。平均開口径が200nmを超えると高温下で防汚液体が揮発し、十分な耐久性が得られないおそれがある。平均開口径が10nm以上であれば、後述の改質層が空孔内において良好に形成されるため、十分な量の防汚液体を保持させることができる。なお、本明細書において、平均開口径は実施例に記載の測定方法により得られた値を採用する。
空孔の平均開口径は、例えば、ゾルゲル法において、加水分解・重縮合を行う際の酸または塩基の量を調整することにより制御することができる。具体的には、酸または塩基の量を増加させることにより、ゲルサイズが大きくなるため、平均開口径が大きな空孔を形成することができる。
多孔質層の平均膜厚は、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。平均膜厚が50nm以上であることで防汚液体を十分に保持することができるため、防汚構造体の耐久性が向上しうる。また、平均膜厚が1000nm以下であることで、多孔質層を形成する際の体積収縮等によるクラックの発生を防止できる。多孔質層の平均厚さは、例えば、多孔質層を形成する際に用いるコーティング溶液の希釈倍率(粘度)や、コートスピード等により調節できる。
[改質層]
改質層は防汚液体の保持力を高める役割を有する。また、改質層はその表面に防汚液体からなる平滑面(防汚液膜)を形成することができる。また、指などの被接触物の押圧によって防汚液体が押し退けられた場合であっても、改質層が存在することにより皮脂の付着を回避できる。
改質層は、防汚液体と親和性を有する材料から形成されることが好ましく、パーフルオロエーテル基含有化合物およびパーフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む改質剤により形成されることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る防汚構造体は、改質層がパーフルオロポリエーテル基含有化合物およびパーフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の改質剤の結合部が多孔質層に結合して形成される。
パーフルオロエーテル基含有化合物としては、パーフルオロエーテルアルコキシシランが挙げられ、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)DSX等が商業的に入手可能である。
パーフルオロアルキル基含有化合物としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランが挙げられ、具体的にはトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
改質層のフッ素含有率は、好ましくは38mol%以上60mol%以下であり、より好ましくは44mol%以上60mol%以下である。フッ素含有率が上記範囲内であると、押圧によって防汚液体が押し退けられた場合であっても、改質層が存在することにより皮脂の付着を回避できる。フッ素含有率は用いる改質剤の種類により制御することができる。なお、本明細書において、フッ素含有率は実施例に記載の測定方法により得られた値を採用する。
改質層の平均膜厚は、2nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上15nm以下であることがより好ましい。平均膜厚が2nm以上であると、改質欠陥が発生しにくく、防汚液体の保持力が高まるため、防汚構造体の耐久性が向上しうる。また、平均膜厚が20nm以下であることで、多孔質層の表面に存在する空孔容積を確保することができ、防汚液体の保持力が高まるため、防汚構造体の耐久性が向上しうる。平均膜厚は、改質層を形成する際の改質剤の蒸着量を調整することにより制御できる。
本発明において、上記多孔質層および改質層からなる積層体の膜厚は、ばらつきが20%以下であることが好ましく、1%以上20%以下であることがより好ましく、5%以上15%以下であることがさらに好ましい。ばらつきが20%以下であると、基材の表面のマクロな凹凸構造に沿うように防汚層が一様に形成されるため、防汚構造体と指との接触面積を小さくすることができ、その結果、本発明の効果がより一層発現される。ばらつきの下限値は特に制限されないが、製造上の観点から1%以上であることが好ましい。
特に、本発明において、前述の多孔質層の平均膜厚および改質層の平均膜厚ならびに多孔質層および改質層からなる積層体の膜厚のばらつきがそれぞれ特定の範囲内であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る防汚構造体は、多孔質層の平均膜厚が100nm以上500nm以下であり、改質層の平均膜厚が2nm以上20nm以下であり、多孔質層および改質層からなる積層体の膜厚のばらつきが20%以下である。なお、本明細書において、上記ばらつきは実施例に記載の測定方法により得られた値を採用する。
改質層の形成方法は特に制限されないが、まず、清浄な蒸着槽内で多孔質層にイオンビームを照射して多孔質層の表面を洗浄する。当該洗浄処理により、空気中の炭化水素等のコンタミが付着することによる改質欠陥の発生を防ぐことができる。その後、蒸着槽内で多孔質層表面のOH基に対して過剰の改質剤を蒸着させることで改質層を形成できる。また、洗浄処理後、多孔質層の表面にSiOを蒸着し、その後、改質剤を蒸着させることが好ましい。改質剤を蒸着させる前にSiOを蒸着させることで多孔質層の表面にSiOに由来するOH基が形成され、このOH基によって改質剤が多孔質層に結合し易くなり、改質欠陥の発生を防止できる。多孔質層の表面に改質剤を蒸着させた後、加熱処理を施すことで改質剤を多孔質層の表面に定着させる。加熱温度は改質剤にもよるが120℃以上180℃以下であることが好ましい。
[防汚液体]
防汚液体は、指が接触した際に皮脂の付着を抑制する役割を有する。防汚液体は、防汚構造体の最表面に防汚液膜として存在するとともに、多孔質層の空孔内や改質層の内部に存在しうる。
防汚液体の種類は特に制限されなくが、フッ素系オイルであることが好ましく、パーフルオロポリエーテルオイルおよびパーフルオロアルキルオイルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。フッ素系オイルは、皮脂に対する忌避性が高い。また、指に付着した皮脂が防汚液体と接触して離れる際、表面張力がより小さい防汚液体が皮脂に引きずられ、防汚液体側で分断が起こる。これにより、皮脂が防汚構造体の表面に残存することが抑制される。
特に、改質層を形成する際の改質剤に含まれる基と同様の基を有する防汚液体を用いることで、改質層と防汚液体との親和性が向上し、防汚液体の減耗を抑制することができる。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る防汚構造体は、改質層が、パーフルオロポリエーテル基含有化合物およびパーフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の改質剤の結合部が前記多孔質層に結合して形成され、防汚液体が、パーフルオロポリエーテルオイルおよびパーフルオロアルキルオイルからなる群から選択される少なくとも1種である。当該形態において、前記改質層が、パーフルオロポリエーテル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記防汚液体が、パーフルオロポリエーテルオイルからなる群から選択される少なくとも1種である形態;あるいは、前記改質層が、パーフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記防汚液体が、パーフルオロアルキルからなる群から選択される少なくとも1種である形態がより好ましい。
防汚液体の表面自由エネルギーは、20mJ/m以下であることが好ましく、10mJ/m以上20mJ/m以下であることがより好ましく、15mJ/m以上18mJ/m以下であることがより好ましい。皮脂の表面エネルギーは、30mJ/m程度であることから、防汚液体の表面自由エネルギーが20mJ/m以下であると、皮脂の残存をより一層抑制することができる。防汚液体の表面自由エネルギーが10mJ/m以上であれば、防汚液体の蒸発減量が大きくなりすぎないため、防汚構造体の耐熱性を維持することができる。なお、本明細書において、表面自由エネルギーは実施例に記載の測定方法により得られた値を採用する。
防汚液体としてフッ素系オイルを用いる場合における、当該フッ素系オイルの平均分子量は、1500~4000であることが好ましく、さらに2000~3500であることが好ましい。平均分子量が1500以上であると、改質剤分子と絡み合い、減耗が抑制できる。平均分子量が4000以下であると、改質剤分子との絡み合いが強固になりすぎず、皮脂側へフッ素系オイルが移行し易くなるため、皮脂等の残存を抑制することができる。
フッ素系オイルの構造は、側鎖を有しない直鎖型、側鎖を有する側鎖型のいずれでもよいが、側鎖型のフッ素系オイルであることが好ましい。側鎖型のフッ素系オイルは、直鎖型と比較してファンデルワールス力が小さいため、上記改質剤との結合力が大きくなりすぎず、皮脂側へフッ素系オイルが移行し易くなるため、皮脂等の残存を抑制することができる。側鎖型のフッ素系オイルとしては、デュポン社製のクライトックス(登録商標)100~102等が挙げられる。また、直鎖型のフッ素系オイルとしては、ソルベイ社製のフォンブリン(登録商標)M03等が挙げられる。
フッ素系オイルは、120℃で24時間放置したときの蒸発減量が35質量%以下であることが好ましい。蒸発減量が35質量%以下であると、防汚構造体の耐久性を維持することができる。
防汚液膜は、上記改質層の表面に防汚液体を付与した後、余剰の防汚液体を拭き取ることで形成できる。
本発明に係る防汚構造体は、防汚性が求められるあらゆる物品に適用することができる。本発明の好ましい一形態に係る防汚構造体は、基材が透明基材であり、ヘイズが5%未満である。このような防汚構造体は、視認性が求められる物品に好適に用いられる。
防汚構造体が適用される物品としては、例えば自動車部品が挙げられる。例えば、自動車のバックミラー、ルームミラー、カーナビゲーションの液晶画面、メーターパネル等、指紋によって視認性が低下する自動車部品の他、インストルメントパネル、コンソール、ドアノブ等、指紋汚れにより意匠性が低下する自動車部品にも好適に使用できる。したがって、本発明の好ましい一形態によると、上記防汚液体を有する自動車部品が提供される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<物性の測定方法>
[表面粗さ(Rz)]
走査プローブ顕微鏡(JSPM-5200:JEOL社製)により、30μm×30μmの基材の表面粗さを測定し、データより、JIS B0601:2013に従い、Rz値を算出した。
[平均開口径]
多孔質層の上面から表面の開口部を走査型電子顕微鏡(SEM)により50,000倍の視野にて観察した。そして、画像解析によって、各開口部の面積と同面積の円の直径を算出し、その平均値を平均開口径とした。
[平均膜厚]
防汚構造体を積層方向(厚さ方向)に切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。50,000倍の視野から、多孔質層の膜厚および改質層の膜厚を50か所にて測定した。そして、それぞれの平均値を算出し、多孔質層の平均膜厚および改質層の平均膜厚とした。
[ばらつき]
多孔質層および改質層からなる積層体の膜厚のばらつきを下記の方法により求めた。まず、防汚構造体を積層方向(厚さ方向)に切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。50,000倍の視野から、多孔質層および改質層からなる積層体の膜厚を50か所にて測定した。得られた値のうち、最大値を「最大膜厚」、最小値を「最小膜厚」とした。また、50個の値の平均値を「平均膜厚」とした。これらの値から、下記式に従って、膜厚のばらつきを算出した。
Figure 2022093923000002
[表面自由エネルギー]
防汚液体の表面自由エネルギーは、懸滴法を使用し、協和界面科学株式会社製の接触角計DropMaster 700を用いて、25℃にて測定することにより求めた。
[フッ素含有率]
改質層のフッ素含有率は、下記の装置および条件にて、元素組成測定を行い、全元素に対するフッ素原子の割合を算出することにより求めた。
装置名:X線光電子分光分析装置 PHI製 Quantum-2000
X線源:Monochromated Al Kα線(1486.6 eV) 40W
光電子取り出し角度:45° (測定深さ:約4nm)
測定エリア:200μmφ。
<防汚構造体の製造>
[実施例1]
(基材)
株式会社NSC製のアンチグレアガラス(Rz=0.992μm)を基材として使用した。
(多孔質層)
純水1.16g、TEG(トリエチレングリコール)1.50g、IPA(イソプロピルアルコール)0.78g、濃硫酸(濃度96質量%)0.30gをこの順番で混合して溶液Aを調製した。また、Si(OEt)12(コルコート社製、エチルシリケート40)8.04g、IPA 0.78gをこの順番で混合して溶液Bを調製した。溶液Aをマグネットスターラーにより1500rpmで撹拌しながら溶液Bを投入し、温度上昇が止まってから30分間撹拌した後、5倍に希釈されるようにIPAを投入し、さらに1500rpmで1分間撹拌して塗布液を得た。大気圧プラズマ処理した基材(5cm×10cm×0.5mm厚)に、塗布液を下記条件でスピンコートした後、すぐにスピナーから取り出して、2分間平面上に静置して風乾した。
スピンコートの条件:
塗布液の滴下量を1500μLとし、100rpmで3秒間塗布し、さらに500rpmで5秒間、1000rpmで15秒間塗布した。
その後、150℃の乾燥機内に1時間放置して仮焼成した後、乾燥機から取り出して、室温まで放置した。さらに、常温のマッフル炉に入れ、30~45分かけて400℃まで昇温させて1時間保持したのち加熱を停止し、マッフル炉内で150℃まで徐冷後、取り出して室温まで放置して平均開口径20nmの多孔質層を形成した。
(改質層)
多孔質層を形成した基材を清浄な蒸着槽に入れ、多孔質層にイオンビームを照射して表面を洗浄した。続けて蒸着槽内でSiOを蒸着させる前処理を行った。SiOを蒸着させた多孔質層に対し、過剰のパーフルオロポリエーテル系改質剤(ダイキン工業株式会社製、オプツールDSX)を蒸着させて平均膜厚が7nmの改質層を形成した。
(防汚液体)
多孔質層および改質層からなる積層体にパーフルオロポリエーテルオイル(デュポン社製、Krytox101、分子量:1780、表面自由エネルギー:16.6mJ/m、動粘度:17.4cSt)を防汚液体として付与し、余剰の防汚液体を拭き取って、防汚液体の保持量が0.0013gの防汚構造体を得た。
[実施例2]
株式会社NSC製のアンチグレアガラス(Rz=0.77μm)を基材として使用したこと;溶液Aの調製において濃硫酸(濃度96質量%)を1.00g使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で防汚構造体を得た。なお、得られた防汚構造体において、多孔質層の平均開口径は100nmであり、防汚液体の保持量は0.0011gであった。
[実施例3]
株式会社NSC製のアンチグレアガラス(Rz=0.77μm)を基材として使用したこと;溶液Aの調製において濃硫酸(濃度96質量%)を1.30g使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で防汚構造体を得た。なお、得られた防汚構造体において、多孔質層の平均開口径は180nmであり、防汚液体の保持量は0.0015gであった。
[実施例4]
株式会社NSC製のアンチグレアガラス(Rz=0.31μm)を基材として使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で防汚構造体を得た。なお、得られた防汚構造体において、多孔質層の平均開口径は20nmであり、防汚液体の保持量は0.0011gであった。
[実施例5]
株式会社NSC製のアンチグレアガラス(Rz=1.23μm)を基材として使用したこと;SiOを蒸着させる前処理を行うことなしに、過剰のパーフルオロアルキル系改質剤(関東化学株式会社製、C1021Si(OCH)を蒸着させて平均膜厚が2nmの改質層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で防汚構造体を得た。なお、得られた防汚構造体において、多孔質層の平均開口径は20nmであり、防汚液体の保持量は0.0012gであった。
[比較例1]
ソーダライムガラス(Rz=0.002μm)を基材として使用したこと;SiOを蒸着させる前処理を行うことなしに、過剰のパーフルオロアルキル系改質剤(関東化学株式会社製、C1021Si(OCH)を蒸着させて平均膜厚が2nmの改質層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で防汚構造体を得た。なお、得られた防汚構造体において、多孔質層の平均開口径は20nmであり、防汚液体の保持量は0.0011gであった。
[比較例2]
株式会社NSC製のアンチグレアガラス(Rz=2.87μm)を基材として使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で防汚構造体を得た。なお、得られた防汚構造体において、多孔質層の平均開口径は20nmであり、防汚液体の保持量は0.0010gであった。
<評価>
[ヘイズ]
防汚構造体のヘイズを、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズ・透過率計(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
[官能評価]
模擬指紋を付着させた防汚構造体を晴天下のクルマのナビ液晶画面上に固定し、運転席に着座したパネラー10人により指紋の気になりやすさについて下記絶対評価にて評点をつけた。そして、パネラー全員の評点合計からその平均値を算出し、下記の4段階判定基準により判定した。○以上であれば、実用上許容できる。
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:全く気にならない
4点:ほとんど気にならない
3点:あまり気にならない
2点:やや気になる
1点:とても気になる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点 :非常に良好
○ :3点以上5点未満:良好
△ :2点以上3点未満:やや不良
× :1点以上2点未満:不良。
[耐熱試験]
高温高湿槽内(90℃、相対湿度90%RH)に防汚構造体を垂直に設置し、200時間放置した。耐熱試験後の防汚構造体を液体窒素を用いて冷凍し、積層方向(厚さ方向)に切断して、断面をSEMにより観察した。50,000倍の視野から、50か所の防汚液体の膜厚を測定し、その平均値を算出した。
結果を下記表1に示す。
Figure 2022093923000003
表1に示されるように、本発明に係る防汚構造体によると、指紋の付着が少なく、防汚性が向上することが示された。
1 基材、
2 防汚層、
3 多孔質層、
4 改質層、
5 防汚液膜、
6 皮脂、
10 防汚構造体。

Claims (7)

  1. 表面粗さ(Rz)が0.30μm以上1.25μm以下である凹凸構造を有する基材と、
    前記基材の凹凸構造の表面に形成された、平均開口径が200nm以下の空孔を有する多孔質層と、
    前記多孔質層の表面に形成された改質層と、
    前記改質層の表面に保持された防汚液体と、
    を有する、防汚構造体。
  2. 前記多孔質層の平均膜厚が100nm以上500nm以下であり、
    前記改質層の平均膜厚が2nm以上20nm以下であり、
    前記多孔質層および前記改質層からなる積層体の膜厚のばらつきが20%以下である、請求項1に記載の防汚構造体。
  3. 前記防汚液体の表面自由エネルギーが20mJ/m以下である、請求項1または2に記載の防汚構造体。
  4. 前記改質層は、パーフルオロポリエーテル基含有化合物およびパーフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の改質剤の結合部が前記多孔質層に結合して形成され、
    前記防汚液体は、パーフルオロポリエーテルオイルおよびパーフルオロアルキルオイルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防汚構造体。
  5. 前記改質層のフッ素含有率が38mol%以上60mol%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防汚構造体。
  6. 前記基材が透明基材であり、
    ヘイズが5%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防汚構造体。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の防汚構造体を有する、自動車部品。
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