JP2022088769A - カチオン電着塗料組成物、電着塗装方法及びカチオン電着塗膜 - Google Patents

カチオン電着塗料組成物、電着塗装方法及びカチオン電着塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】貯蔵安定性に優れるとともに低温硬化可能であり、かつ耐食性に優れた塗膜を形成できる、カチオン電着塗料組成物を提供すること。【解決手段】アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び顔料(C)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は、ヘキサメチレンジイソシアネートを3,5-ジメチルピラゾールでブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)を含み、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の少なくとも一部は、ハーフブロック化されたハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤であるか、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は実質的に1級アミノ基を有しないか、の少なくとも何れかである、カチオン電着塗料組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、カチオン電着塗料組成物、電着塗装方法及びカチオン電着塗膜に関する。
従来、自動車などの工業製品に防食性を付与するための下塗り塗料等として使用されるカチオン電着塗料が知られている。カチオン電着塗料は、例えば、アミノ基含有エポキシ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含む。カチオン電着塗料は、高い防食性、防錆性と共に、低VOC(揮発性有機化合物)含有量、高い密着性、高い疎水性(遮断性)等の性能が要求される。
近年では、エネルギーコスト削減のため、電着塗料により形成される電着塗膜の焼付温度を低減可能な低温硬化電着塗料に関する技術が提案されている。例えば、低温硬化性のブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ基含有エポキシ樹脂、顔料分散ペーストを別々に水分散して混合するカチオン電着塗料に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2017/138445号
特許文献1に開示された技術は、低温硬化電着塗料の課題である、貯蔵安定性や形成される電着塗膜の耐食性を十分に改善できているとは言えず、未だ改善の余地があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性に優れるとともに低温硬化可能であり、かつ耐食性に優れた塗膜を形成できる、カチオン電着塗料組成物を提供することを目的とする。
(1) 本発明は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び顔料(C)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は、ヘキサメチレンジイソシアネートを3,5-ジメチルピラゾールでブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)を含み、前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の少なくとも一部は、ハーフブロック化されたハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤であるか、前記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は実質的に1級アミノ基を有しないか、の少なくとも何れかである、カチオン電着塗料組成物に関する。
(2) 前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)の含有量は、全樹脂固形分に対し15質量%以上45質量%以下である、(1)に記載のカチオン電着塗料組成物。
(3) 前記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)が1級アミノ基を有するものである場合における前記ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤の含有量は、前記ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤以外の全樹脂固形分に対し1質量%以上10質量%以下である、(1)又は(2)に記載のカチオン電着塗料組成物。
(4) 実質的に1級アミノ基を有しない前記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の含有量は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の全質量に対し90質量%以上である、(1)~(3)のいずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印可し、塗膜を形成する電着工程と、前記塗膜を、140℃以下の温度で硬化させて電着塗膜を得る、硬化工程と、を含む、電着塗装方法。
(6) また、本発明は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び顔料(C)を含有するカチオン電着塗料組成物により形成されるカチオン電着塗膜であって、前記カチオン電着塗膜の湿潤塗膜抵抗値が1.0×10(Ω・cm)以上である、カチオン電着塗膜に関する。
本発明によれば、貯蔵安定性に優れるとともに低温硬化可能であり、かつ耐食性に優れた塗膜を形成できる、カチオン電着塗料組成物を提供できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態の記載に限定されない。
<カチオン電着塗料組成物>
本実施形態に係るカチオン電着塗料組成物は、被塗物に対して電着塗装を行い、塗膜を析出させ、その後例えば140℃以下の低温焼付により塗膜を硬化させることで、被塗物表面に好ましい耐食性を有する電着塗膜を形成できる。また、好ましい貯蔵安定性を有する。本実施形態に係るカチオン電着塗料は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び顔料(C)を含有する。
(アミノ基含有エポキシ樹脂(A))
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、電着塗膜における塗膜形成樹脂である。アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂のオキシラン環(以下、「エポキシ基」と記載する場合がある)をアミン化合物で変性することで得られる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の出発原料であるエポキシ樹脂は、例えば、多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物である、ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。上記多環式フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。本明細書において、上記「ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」とは、ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び多環式フェノール化合物が鎖延長反応した状態を含む。
エポキシ樹脂のアミン化合物による変性においては、ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び多環式フェノール化合物が鎖延長反応したエポキシ樹脂を用いることが好ましい。上記鎖延長反応の条件は、特に限定されず、用いる撹拌装置、反応スケール等に応じて適宜選択することができる。反応条件としては、例えば、85~180℃で0.1~8時間とすることができる。より好ましくは、100~150℃で2~8時間とすることができる。用いる撹拌装置としては、特に限定されず、塗料分野において一般的に用いられる撹拌装置を使用できる。
エポキシ樹脂としては、上記以外に、特開平5-306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のイソシアネート基をメタノール、エタノール等の低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
上記エポキシ樹脂として、アミン化合物による変性の前に、その一部を鎖延長反応させたものを用いてもよい。上記鎖延長反応には、例えば、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、2塩基性カルボン酸等を用いることができる。上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド基を有するポリオール、ポリプロピレンオキシド基を有するポリオール等が挙げられる。これにより、例えば、ポリプロピレンオキシド基を有するポリオールを用いて鎖延長反応を行う場合は、ポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂となる。上記ポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1~40質量部であることが好ましく、15~25質量部であることがより好ましい。上記ポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂と同様の態様であるエポキシ樹脂として、ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、多環式フェノール化合物及びポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂が鎖延長反応したエポキシ樹脂が挙げられる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基とアミン化合物とを反応させることで得られる。後述するブロック化ポリイソシアネート化合物(B)が、ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含まない場合、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は実質的に1級アミノ基を有しない。
ブロックポリイソシアネート化合物(B)の少なくとも一部がハーフブロック化ポリイソシアネート化合物であるか、又はアミノ基含有エポキシ樹脂(A)が実質的に1級アミノ基を有しないアミノ基含有エポキシ樹脂であることで、形成される電着塗膜の、後述する湿潤塗膜抵抗値を向上させることができ、好ましい耐食性が得られる。
(実質的に1級アミノ基を有しないアミノ基含有エポキシ樹脂(A))
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂とアミノ化合物とを反応させ、エポキシ樹脂のオキシラン環を開環し、アミノ基を導入することで得られる。本実施形態に係るアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、実質的に1級アミノ基を有しないことが好ましい。これにより、低温硬化であっても、形成される電着塗膜の、後述する湿潤塗膜抵抗値を向上させることができ、好ましい耐食性が得られる。
上記実質的に1級アミノ基を有しないアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、アミン化合物としてケトン化合物でブロック化していない1級アミノ基と、2級又は3級アミノ基と、を有するジアミンを用いることで得られる。上記1級アミノ基は、ケトン化合物でブロック化されずに、エポキシ樹脂のアミン化反応で消費されて、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の分岐鎖の形成に使用される。これにより、実質的に1級アミノ基を有しないアミノ基含有エポキシ樹脂(A)が得られる。
上記ケトン化合物でブロック化していない1級アミノ基と、2級又は3級アミノ基と、を有するジアミンとしては、特に限定されず、例えば、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジメチルアミノエチルアミン等、1級アミノ基と、3級アミノ基と、を有するジアミン、又は、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン等、1級アミノ基と3級アミノ基の他にヒドロキシル基を有するジアミン等が好ましく用いられる。上記ヒドロキシル基を有するジアミンを用いることで、好ましい塗膜の密着性や硬化性が得られる。上記の例では、ケトン化合物でブロック化していない1級アミノ基の数は1個であり、特に限定されず複数個であってもよいが、反応制御の観点からは1個であることが好ましい。また、ヒドロキシル基の数も特に限定されず、1個以上であればよい。
本実施形態に係るアミノ基含有エポキシ樹脂(A)において、実質的に1級アミノ基を有しないアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の含有量は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の全質量に対し90質量%以上であることが貯蔵安定性の点で好ましい。
アミン化合物としては、上記以外のアミン化合物を併用することもできる。例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン等の2級アミン、ジエチレントリアミン等の複合アミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。上記アミン化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物としては、ケチミン化合物を極力使用しないことが好ましい。ケチミン基の形成には、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物によるブロックが必要であるが、脱ブロック時にVOCであるケトン化合物が発生するためである。ケチミン化合物は使用できないわけではなく、必要に応じて、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミン等を使用することができる。
アミン化合物の量は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量に対して0.9~1.2当量となる量であることが好ましい。また、エポキシ樹脂とアミン化合物とが反応して得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、実質的に1級アミノ基を有しないことが好ましい。本明細書中において、実質的に1級アミノ基を有しない、とは、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)中におけるアミノ基において、1級アミノ基の割合が2%以下であることを意味する。アミノ基含有エポキシ樹脂(A)における1級アミノ基の割合はアミノ基含有エポキシ樹脂(A)のアミノ基に占める3級アミノ基の比率である3級アミン化率を測定することで確認できる。実質的に1級アミノ基を有しないアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の前記比率は98%以上であり、99%以上であることが好ましく、100%であることがさらに好ましい。ここで3級アミン化率とは3級アミン価を全アミン価で除した百分率((三級アミン価)/(全アミン価))×100であり、以下の方法で求めることができる。
(三級アミン価試験方法)
(1)100mlビーカーにサンプルを秤量する。
(2)純水を0.5g加える。
(3)上記サンプルをTHF(テトラヒドロフラン)50gに溶解させる。
(4)5分間攪拌する。
(5)次に無水酢酸7.5mlおよび酢酸2.5mlを加え約40℃で5分間攪拌する。
(6)自動電位差滴定装置を使用し、0.1N過塩素酸酢酸溶液で滴定する。
(7)次式にて3級アミン価を測定する。
三級アミン価=(滴定量mL×ファクター×10)/(サンプル量g×固形分量)
(全アミン価試験方法)
(1)200ml三角フラスコにサンプルを500mg精秤する。
(2)氷酢酸約50mlを加え均一に溶解する。
(3)指示薬メチルバイオレット溶液を5~6滴加え均一にする。
(4)0.1N過塩素酸酢酸溶液で滴定していき、明緑色となった点を終点とする。
エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させる反応条件は、反応スケール等に応じて適宜選択することができる。反応条件として、例えば80~150℃で0.1~5時間、好ましくは120~150℃で0.5~3時間反応させる条件等が挙げられる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の数平均分子量は、1,000~7,000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が1,000以上であることにより、得られる硬化電着塗膜の耐溶剤性および耐食性等の物性が良好となる。一方で、数平均分子量が7,000以下であることにより、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の粘度調整が容易となって円滑な合成が可能となる。また、得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の好ましい分散性が得られ、取扱いが容易になる。アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の数平均分子量は1,500~4,000の範囲であることがより好ましい。
数平均分子量の測定は、以下のGPCシステム測定条件で測定できる。
装置名:alliance 2695 Separations Module
カラム:TSK gel ALPHA-M(東ソー株式会社製)
流速:1.00ml/min
検出器:alliance 2414 Refractive Index Detector
移動層:N,N’-ジメチルホルムアミド
標準サンプル:TSK STANDARD POLYSTYRENE(東ソー株式会社製)、A-500、A-2500、F-1、F-4、F-20、F-80、F-700、1-フェニルヘキサン(アルドリッチ社製)
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、樹脂固形分100gに対する塩基のミリグラム当量(MEQ(B))が50~350であることが好ましい。特にMEQ(B)が50未満である場合は、顔料分散ペーストの貯蔵安定性が劣ることとなるおそれがある。なお、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の固形分100gに対する塩基のミリグラム当量(MEQ(B))は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の調製において反応させるアミン化合物の種類および量によって調整することができる。
MEQ(B)とは、mg equivalent(base)の略であり、樹脂の固形分100g当たりの塩基のmg当量である。このMEQ(B)は、電着塗料組成物の固形分を約5g精秤し約50mlの溶剤(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した後、自動電位差滴定装置(例えば京都電子工業株式会社製、APB-710等)を用いて0.1N塩酸水溶液で電位差滴定を行うことによって、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)中の含塩基量を定量して測定することができる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の水酸基価は、150~650mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。水酸基価が150mgKOH/g以上であることにより、電着塗膜の硬化性が良好となり、塗膜外観も向上する。一方で、水酸基価が650mgKOH/g以下であることにより、電着塗膜中に残存する水酸基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがなくなる。アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の水酸基価は、150~400mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。なお、水酸基価はJIS K 1557-1に準拠した方法により求めることができる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)としては、上記数平均分子量、MEQ(B)及び水酸基価の少なくとも何れかが異なる、複数種類のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)を併用してもよい。この場合、各アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の質量比に基づいて算出される、平均MEQ(B)及び平均水酸基価が、上記範囲内であることが好ましい。複数種類のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)を併用する例としては、例えば、MEQ(B)が50~200であり、かつ、水酸基価が50~300mgKOH/gであるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)と、MEQ(B)が200~350であり、かつ、水酸基価が200~500mgKOH/gであるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)とを併用する例が挙げられる。上記組み合わせにより、エマルションのコア部の疎水性及びシェル部の親水性がより高くなる結果、形成される電着塗膜により優れた耐食性を付与することができる。
樹脂成分としては、上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)以外の樹脂が含まれていてもよい。例えば、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂等が必要に応じて含まれていてもよい。また、アミノ基含有樹脂以外に、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が含まれていてもよい。フェノール樹脂及びキシレン樹脂としては、例えば、2以上10以下の芳香族環を有する樹脂が挙げられる。
(ブロック化ポリイソシアネート化合物(B))
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は、ポリイソシアネートを、ブロック剤でブロック化することによって調製される。ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)のアミノ基と優先的に反応し、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)が水酸基を有している場合には、更に水酸基と反応して硬化し、電着塗膜が形成される。
上記ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と記載する場合がある)が挙げられる。また、上記ブロック剤としては、3,5-ジメチルピラゾール(以下、「DMP」と記載する場合がある)が挙げられる。上記HDIをDMPでブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)により、カチオン電着塗料組成物の反応性が向上し、好ましい低温硬化性が得られる。上記HDIをDMPでブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)は、全樹脂固形分に対する質量割合で15質量%以上45質量%以下含まれることが好ましい。全樹脂固形分に対する質量割合が15質量%以下であれば湿潤塗膜抵抗が低くなると共に耐食性が低下し、45質量%以上であれば密着官能基の低減により耐食性が低下する。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)として、上記HDIをDMPでブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)以外のブロック化ポリイソシアネート化合物(B)が含まれていてもよい。上記の場合、ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
同様に、DMP以外のブロック剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル又は芳香族アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノール等のポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;及びε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が挙げられる。
(ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤)
ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を公知のブロック剤でブロックしたものである。ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応は、必要に応じて触媒の存在の下で、攪拌下、ブロック剤を滴下しながら40~50℃に冷却することにより行うことが好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に平均で2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されず、例えば、前述したブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の調製に使用されるジイソシアネート化合物を用いることができる。上記ハーフブロック化ポリイソシアネートを調製するために用いられるブロック剤としては、例えば、4~20個の炭素原子を有する低級脂肪族アルキルモノアルコールが挙げられる。具体的には、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール等が挙げられる。
ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤の含有量は、ハーフブロック化ポリイソシアネート化合物以外の全樹脂固形分に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。上記含有量が1質量%未満である場合、湿潤塗膜抵抗値の向上効果が十分に得られない。上記含有量が10質量%を超える場合、密着官能基の低下に伴い、塗膜の密着性が低下する。
硬化剤としては、上記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、ハーフブロック化ポリイソシアネート化合物以外の硬化剤を併用してもよい。例えば、メラミン樹脂又はフェノール樹脂等の有機硬化剤、シランカップリング剤、金属硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化剤等が挙げられる。
(顔料(C))
顔料(C)としては、電着塗料組成物において通常使用される無機顔料又は有機顔料を用いることができる。例えば、チタンホワイト(二酸化チタン)、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー等の体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛等の防錆顔料等が挙げられる。
顔料(C)は、上記顔料及び顔料分散樹脂を混合し、水性媒体中に分散させた顔料分散ペーストとして予め調製される。これにより、粉体状である顔料を電着塗料組成物中において均一に分散させることができる。上記顔料分散樹脂としては、特に限定されず、例えば、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のカチオン性重合体が用いられる。上記水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等が用いられる。
上記顔料分散ペースト中における顔料分散樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、顔料100質量部に対して、樹脂固形分比で20~100質量部とすることができる。
上記顔料分散ペーストの固形分量は、特に限定されず、例えば、顔料分散ペースト全量に対して40~70質量%とすることができる。
上記顔料分散ペーストは、例えば、顔料及び顔料分散樹脂を混合した後、混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の公知の分散装置を用いて分散させることで得られる。
(その他の成分)
本実施形態に係るカチオン電着塗料は、上記以外の成分を含んでいてもよい。例えば、亜鉛化合物、第3族元素化合物、ビスマス化合物等を含んでいてもよい。これにより、形成される電着塗膜の防錆性を向上させることができる。亜鉛化合物としては、例えば、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸亜鉛等の亜硝酸金属塩が挙げられる。上記第3族元素化合物としては、例えば、酸化ランタン、水酸化ランタン、酸化ネオジム、水酸化ネオジム、酸化ランタン及び有機酸の混合物、水酸化ランタン及び有機酸の混合物、酸化ネオジム及び有機酸の混合物、水酸化ネオジム及び有機酸の混合物等が挙げられる。上記ビスマス化合物は、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、酸化ビスマス及び有機酸の混合物、水酸化ビスマス及び有機酸の混合物等が挙げられる。
本実施形態に係るカチオン電着塗料組成物は、塗料分野において一般的に用いられている添加剤を含んでいてもよい。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の有機溶媒、乾き防止剤、消泡剤等の界面活性剤、アクリル樹脂微粒子などの粘度調整剤、はじき防止剤、バナジウム塩、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム塩等の無機防錆剤等を必要に応じて含んでいてもよい。また上記以外に、目的に応じて公知の補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などを配合してもよい。これらの添加剤は、後述する樹脂エマルション製造の際に添加されてもよいし、顔料分散ペーストの製造時に添加されてもよいし、樹脂エマルションと顔料分散ペーストとの混合時又は混合後に添加されてもよい。
本実施形態に係るカチオン電着塗料は、pHが4.5~7.0であることが好ましい。カチオ電着塗料組成物のpHが4.5未満である場合は、カチオン電着塗料組成物中に存在する酸の量が過剰量となり、塗膜外観または塗装作業性が劣ることとなるおそれがある。一方で、pHが7.0を超える場合は、カチオン電着塗料組成物のろ過性が低下し、硬化電着塗膜の水平外観が低下する場合がある。カチオン電着塗料組成物のpHは、用いる中和酸の量、遊離酸の添加量などの調整によって、上記範囲に設定することができる。上記pHは、5.0~7.0であることがより好ましい。上記pHは、温度補償機能を有する市販のpHメーターを用いて測定することができる。
<カチオン電着塗料組成物の製造方法>
本実施形態に係るカチオン電着塗料組成物は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)を含む樹脂エマルションと、顔料(C)を含む顔料ペーストと、その他の成分を、従来公知の方法により混合することで調製し製造することができる。
本実施形態に係るカチオン電着塗料組成物において、固形分濃度は15~25質量%の範囲となるように好ましくは調整される。固形分濃度の調整には水性溶媒を使用して行うことができる。上記水性溶媒の例としては、イオン交換水、純水などが挙げられる。
<カチオン電着塗装方法>
本実施形態に係るカチオン電着塗料組成物を用いて被塗物に対し電着塗装することによって、被塗物の表面上に電着塗膜を形成することができる。本実施形態に係るカチオン電着塗装方法は、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印可し、塗膜を形成する電着工程と、塗膜を140℃以下の温度で硬化させて電着塗膜を得る、硬化工程と、を含む。
(電着工程)
電着工程においては、被塗物を陰極とし、陽極との間に電圧を印可する、これにより、電着塗膜が被塗物上に析出する。上記被塗物としては、通電可能な材質であれば特に限定されず、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板等が挙げられる。
電着工程において、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬した後、50~450Vの電圧を印加することによって、電着塗装が行われる。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、450Vを超えると、塗膜外観が劣ることとなるおそれがある。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、例えば、10~45℃に調節される。電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、例えば、2~5分とすることができる。上記電着工程後に、必要に応じて電着塗膜を水洗する工程を設けてもよい。
(硬化工程)
硬化工程においては、電着工程において析出させた塗膜を、140℃以下の温度で、例えば10~30分間加熱する工程である。上記硬化工程により、電着塗膜が硬化される。本実施形態に係る硬化工程においては、通常の電着塗膜の硬化温度よりも低温での硬化が可能である。
<カチオン電着塗膜>
上記被塗物上に形成されるカチオン電着塗膜は、湿潤塗膜抵抗値が1.0×10(Ω・cm)以上である。湿潤塗膜抵抗値は、その値が高いほど、水等の極性分子を遮断することができ、カチオン電着塗膜の遮断性が良好であることを示す。湿潤塗膜抵抗値は、例えば以下のような方法で測定できる。被塗物上にカチオン電着塗膜を析出させ、硬化させた試験片を測定セルに設置し、その後、測定セルにイオン交換水を注入し、測定セルを恒温槽(55℃)で維持する。その後、試験片と電極との間に0.5Vの交流電圧(波高:±0.5V、波長:1分の矩形波パルス)を1分間印加し、塗膜の抵抗値を測定する。例えば上記方法で5回測定を行った平均値を湿潤塗膜抵抗値とすることができる。
本実施形態に係る電着塗料組成物を用いてカチオン電着塗膜を形成する場合、140℃以下の温度で塗膜を低温硬化させた場合であっても、湿潤塗膜抵抗値を1.0×10(Ω・cm)以上とすることができる。
カチオン電着塗膜は、硬化後の膜厚が5~60μmであることが好ましく、20~45μmであることがより好ましい。電着塗膜の膜厚が5μm未満である場合、防錆性が不十分となる恐れがある。
以下、実施例に基づいて本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明の内容は以下の実施例の記載に限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。また、表1及び表2における数値の単位は、特に表示のない限り質量部を意味する。
(製造例1-A アミン化エポキシ樹脂(樹脂A)の製造)
ブチルセロソルブ44部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA236部、オクチル酸216部を混合し、120℃まで昇温した。その後、ジメチルベンジルアミン1部を加え、反応容器内の温度を140℃に保持し、エポキシ当量が1043g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が120℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン54部、ジエチレントリアミンジケチミン(固形分濃度73%のメチルイソブチルケトン溶液)161部、N-メチルエタノールアミン24部の混合物を添加し、120℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂A)を得た。
(製造例1-B アミン化エポキシ樹脂(樹脂B)の製造)
ブチルセロソルブ10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA254部、フェノール80部を混合し、120℃まで昇温した。その後、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が700g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン90部、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン44部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂B)を得た。
(製造例2-A ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤A)の製造)
2,4/2,6-トリレンジイソシアネート(商品名TDI-80、三菱化学ダウ社製)87部、メチルイソブチルケトン10部を混合し、50℃以上にならないように2-エチルヘキサノール73部を2.5時間かけて滴下した。その後NCO等量が330~370になっていることを確認しハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤A)を得た(固形分濃度94%)。
(製造例2-B ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤B)の製造)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名スミジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)160部およびMIBK24部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、3,5-ジメチルピラゾール80部を2時間かけ添加した。さらに70℃で2時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認した。その後、ブチルセロソルブ36部を加え、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤B)を得た(固形分濃度82%)。
(製造例2-C ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤C)の製造)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名スミジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)165部およびMIBK24部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)75部を2時間かけ滴下した。さらに70℃で2時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認した。その後、ブチルセロソルブ36部を加え、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤B)を得た(固形分濃度82%)。
(製造例3 顔料分散樹脂の調製)
撹拌装置、冷却管、窒素導入管及び温度計を装備した反応容器にイソホロンジイソシアネート2220部、メチルイソブチルケトン342.1部、ジブチル錫ラウレート2.2部、メチルエチルケトンオキシム878.7部を仕込んだ。その後、60℃で1時間保温し、NCO当量が348となっていることを確認し、ジメチルエタノールアミン890部を投入した。60℃で1時間保温しIRでNCOピークが消失していることを確認後、50%乳酸1872.6部と脱イオン水495部を投入して四級化剤を得た。次いで、異なる反応容器にトリレンジイソシアネート870部及びメチルイソブチルケトン49.5部を仕込み、2-エチルヘキサノール667.2部を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後メチルイソブチルケトン35.5部を投入し、30分保温した。その後NCO当量が330~370になっていることを確認しハーフブロックポリイソシアネートを得た。
撹拌装置、冷却管、窒素導入管及び温度計を装備した反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940.0部メタノール38.5部で希釈した後、ここへジブチル錫ジラウレート0.1部、トリレンジイソシアネート87.1部、N,N-ジメチルベンジルアミン1.4部を加え130℃で2時間保温した。このとき分留管によりメタノールを分留した。これを115℃まで冷却し、メチルイソブチルケトンを固形分濃度90%になるまで仕込み、その後ビスフェノールA270.3部、2-エチルヘキサン酸39.2部を仕込み125℃で2時間加熱撹拌した後、上記ハーフブロックポリイソシアネート516.4部を30分間かけて滴下し、その後30分間加熱撹拌した。ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1506部を徐々に加え溶解させた。90℃まで冷却後、上記四級化剤を加え、70~80℃に保ち酸価2以下を確認して、顔料分散樹脂を得た(樹脂固形分濃度30%)。
(製造例4 顔料分散ペーストの調製)
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散樹脂106.9部、カーボンブラック1.6部、カオリン40部、二酸化チタン55.4部、リンモリブデン酸アルミニウム3部、脱イオン水13部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分濃度60%)。
(製造例5-A 電着塗料樹脂エマルション(EmA)の製造)
製造例1-Aで得た樹脂(樹脂A)300g(固形分)と、製造例2-Aで得たハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤16g(固形分)と製造例2-Bで得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤100g(固形分)を混合し、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(12.5g)になるように添加した。次にギ酸を中和率30%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し,固形分濃度が41%の電着塗料樹脂エマルション(EmA)を得た。
(製造例5-B~L 電着塗料樹脂エマルション(EmB~L)の製造)
表1に示した配合で調製を行ったこと以外は製造例5-Aと同様にして、電着塗料樹脂エマルション(EmB~EmH)を得た。
<実施例1>
ステンレス容器に、イオン交換水1394g、樹脂エマルション(EmA)560gおよび製造例4で得られた顔料分散ペースト41gを添加しその後40℃で16時間エージングして、電着塗料組成物を形成した。
<実施例2~8及び比較例1~4>
実施例2~8(EmB~EmH)及び比較例1~4(EmI~EmL)についても、表1及び表2に示した配合で調製を行ったこと以外は実施例1と同様にして、電着塗料組成物を得た。
Figure 2022088769000001
<評価>
上記実施例及び比較例に係る電着塗料組成物を使用して、以下の条件で評価を行った。
[ゲル分率(硬化性)評価]
上記実施例及び比較例に係る電着塗料組成物を、重量を予め測定したブリキ板に対して、乾燥塗膜の膜厚が20μmとなるように塗膜を析出させた。その後、130℃で10分間焼き付けて塗膜を硬化させ、ブリキ板上にカチオン電着塗膜を作成した。得られた試験板は、その重量を測定した後、アセトンに浸漬して6時間還流を行い、その後105℃で20分間乾燥した。乾燥後の重量を測定し、以下の式(1)によりゲル分率を求めた。ゲル分率の数値により、以下の基準で硬化性の評価を行い、A及びBを合格とした。結果を表2に示す。
ゲル分率(%)=(W2-W0)/(W1-W0)×100・・・(1)
式(1)中、W0はブリキ板の重量、W1は焼き付け後の塗板の重量、W2はアセトン浸漬後の塗板の重量をそれぞれ示す。
A:ゲル分率95%以上
B:ゲル分率90%以上95%未満
C:ゲル分率85%以上90%未満
D:ゲル分率85%未満
[貯蔵安定性(MEQ(B)評価)]
上記各実施例及び比較例のMEQ(B)を、以下の方法により測定した。まず、電着塗料組成物の固形分を約10g精秤し約50mlの溶剤(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した後、無水酢酸7.5ml、酢酸2.5mlを加え、自動電位差滴定装置(京都電子工業株式会社製、APB-410)を用いて0.1N過塩素酸酢酸溶液で電位差滴定を行い、アミノ基含有エポキシ樹脂中の含塩基量を測定した。その後、各実施例及び比較例の電着塗料組成物を40℃で14日間貯蔵し、同様にMEQ(B)を測定した。貯蔵試験前後におけるMEQ(B)の変化量(%)を算出し、以下の評価基準に従って評価し、A、B、及びCを合格とした。結果を表2に示す。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上20%未満
D:20%以上
(塗装板の製造)
冷延鋼板(JISG3141、SPCC-SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。次いで、ZrFを0.005%含み、NaOHを用いてpH4に調整したジルコニウム化成処理液中に、40℃で90秒間浸漬して、ジルコニウム化成処理を行った。次いで、実施例及び比較例で得られた電着塗料組成物を、硬化後の電着塗膜の膜厚が20μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを必要量添加し、その後に鋼板を浸漬して、30秒昇圧180Vに達してから150秒間保持するという条件で電圧を印加して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。得られた未硬化の電着塗膜を、130℃で15分間焼き付け硬化させて、カチオン電着塗膜を有する塗装板を得た。上記塗装板を用いて、以下SDT試験を行った。
[温塩水浸漬試験(SDT試験)]
上記により得られた各実施例及び比較例の塗装板の塗膜に、基材に達するようにナイフで傷を入れ、この塗装板を、5%食塩水中に55℃で240時間浸漬した後、直線状の傷部からの錆やフクレ発生を目視で観察し、以下の評価基準に従って評価した。A、B及びCを合格とした。結果を表2に示す。
A:最大剥離幅4mm以下
B:最大剥離幅4mm超~8mm以下
C:最大剥離幅8mm超~10mm以下
D:最大剥離幅10mm超
[湿潤塗膜抵抗測定]
冷延鋼板(JIS G3141 SPCC-SD)を、日本ペイント社製サーフクリーナー53を用いて脱脂した。得られた鋼板に、リン酸亜鉛処理剤SD-6350(日本ペイント社製)を用いて化成処理を行った。化成処理を行った鋼板に、実施例および比較例のカチオン電着塗料組成物をそれぞれ用いて、乾燥塗膜の膜厚が15μmになるように電着塗装し、これを160℃で15分間焼き付けて硬化させて、硬化電着塗膜(試験片)を得た。
上記により得た硬化電着塗膜(試験片)を用い、湿潤塗膜抵抗の測定装置を用いて湿潤塗膜抵抗を測定した。硬化電着塗膜を有する被塗物は電着塗膜形成後の冷延鋼板(JIS G3141 SPCC-SD)に相当し、高抵抗計はKEITHLEY社製6517A ELECTROMETER/HIGH RESISTANCE METERを用いた。
測定条件は以下の通りである。上記試験片を測定セルに設置し、その後、測定セルにイオン交換水を50mL注入した。測定セルを恒温槽(55℃)に配置し、セル内の液温を55℃で維持した。
試験片と電極との間に0.5Vの交流電圧(波高:±0.5V、波長:1分の矩形波パルス)を1分間印加し、湿潤塗膜抵抗値を測定した。5回測定後の平均値を湿潤塗膜抵抗値とした。
湿潤塗膜抵抗値が高いほど、水などの極性分子を遮断することができ、電着塗膜は遮断性に優れる。湿潤塗膜抵抗値を以下の評価基準に従って評価した。A、B及びCを合格とした。結果を表2に示す。
A:1×1010Ω・cm以上
B:1×10Ω・cm以上1010Ω・cm未満
C:1×10Ω・cm以上10Ω・cm未満
D:1×10Ω・cm未満
Figure 2022088769000002
表2の結果から、各実施例に係る電着塗料組成物は、各比較例に係る電着塗料組成物と比較して、貯蔵安定性に優れると共に、低温硬化性が良好であり、かつ耐食性に優れたカチオン電着塗膜を形成できる結果が確認された。

Claims (6)

  1. アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び顔料(C)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
    前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は、ヘキサメチレンジイソシアネートを3,5-ジメチルピラゾールでブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)を含み、
    前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の少なくとも一部は、ハーフブロック化されたハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤であるか、前記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は実質的に1級アミノ基を有しないか、の少なくとも何れかである、カチオン電着塗料組成物。
  2. 前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)の含有量は、全樹脂固形分に対し15質量%以上45質量%以下である、請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. 前記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)が1級アミノ基を有するものである場合における前記ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤の含有量は、前記ハーフブロック化ポリイソシアネート硬化剤以外の全樹脂固形分に対し1質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載のカチオン電着塗料組成物。
  4. 実質的に1級アミノ基を有しない前記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の含有量は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の全質量に対し90質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印可し、塗膜を形成する電着工程と、
    前記塗膜を、140℃以下の温度で硬化させて電着塗膜を得る、硬化工程と、を含む、電着塗装方法。
  6. アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び顔料(C)を含有するカチオン電着塗料組成物により形成されるカチオン電着塗膜であって、
    前記カチオン電着塗膜の湿潤塗膜抵抗値が1.0×10(Ω・cm)以上である、カチオン電着塗膜。
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