JP2022086840A - 複層塗膜の形成方法及び複層塗膜 - Google Patents

複層塗膜の形成方法及び複層塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性を良好に保つことができる複層塗膜の形成方法を提供する。【解決手段】複層塗膜の形成方法は、被塗物上に、水系塗料組成物(P1)を塗装し、未硬化塗膜(C1)を得て、前記未硬化塗膜(C1)上に水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、三層からなる複層塗膜を得ること、を含み、前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボジイミド組成物を含み、前記カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、複層塗膜の形成方法及び複層塗膜に関する。
近年、自動車車体における塗膜の形成方法としては、電着塗料を塗装し、中塗り塗料を塗装し、さらに水性ベースコート塗料を塗装し、予備加熱(プレヒート)により、希釈媒体を揮発させた後、クリア塗料を塗装し、焼き付け硬化を施す方式により複層塗膜を形成する方法が採用されている。この方式で塗膜を形成するために必要な塗料組成物のうち、中塗り塗料、ベースコート塗料にカルボジイミド型架橋剤を用いる技術が特許文献1に開示されており、耐チッピング性、耐水性等の性能が発現することができる。また、カルボジイミド型架橋剤に関して特許文献2が開示されており、貯蔵経時での塗料の粘度変化を抑えることができる。
国際公開第2017/131100号 国際公開第2017/006950号
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、塗料の貯蔵経時での耐水性が低下する場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性を良好に保つことができる複層塗膜及びその形成方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 被塗物上に、水系塗料組成物(P1)を塗装し、未硬化塗膜(C1)を得て、前記未硬化塗膜(C1)上に水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、三層からなる複層塗膜を得ること、を含み、
前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボジイミド組成物を含み、
前記カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む、複層塗膜の形成方法。
(2) 前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物を含む、(1)に記載の複層塗膜の形成方法。
(3) 前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つ、及び、前記塗料組成物(P3)は、水酸基を有する水性樹脂組成物を含む、(1)又は(2)に記載の複層塗膜の形成方法。
(4) 被塗物上に、水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、二層からなる複層塗膜を得ること、を含み、
前記水系塗料組成物(P2)は、カルボジイミド組成物を含み、
前記カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む、複層塗膜の形成方法。
(5) 前記水系塗料組成物(P2)は、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物を含む、(4)に記載の複層塗膜の形成方法。
(6) 前記水系塗料組成物(P2)及び前記塗料組成物(P3)は、水酸基を有する水性樹脂組成物を含む、(4)又は(5)に記載の複層塗膜の形成方法。
(7) 前記塗料組成物(P3)は、イソシアネート成分(a)を含み、
前記水酸基を有する水性樹脂組成物が、前記塗料組成物(P3)に含まれるイソシアネート成分(a)によって、前記未硬化塗膜(C1)、前記未硬化塗膜(C2)及び前記未硬化塗膜(C3)、又は、前記未硬化塗膜(C2)及び前記未硬化塗膜(C3)を硬化させる、(3)又は(6)に記載の複層塗膜の形成方法。
(8) 前記イソシアネート成分(a)は、下記一般式(I)で示されるトリイソシアネートを含む、(7)に記載の複層塗膜の形成方法。
Figure 2022086840000001
(一般式(I)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。)
(9) 前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が、5%超100%以下である、(1)~(8)のいずれか一つに記載の複層塗膜の形成方法。
(10) 前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)が90/10以下である、(1)~(9)のいずれか一つに記載の複層塗膜の形成方法。
(11) 前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率が、前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも低い、(1)~(10)のいずれか一つに記載の複層塗膜の形成方法。
(12) (1)~(11)のいずれか一つに記載の複層塗膜の形成方法により形成されてなる、複層塗膜。
上記態様の複層塗膜の形成方法及び複層塗膜によれば、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が良好に保たれた複層塗膜を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」と称する場合がある)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、2つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有するモノマーが複数結合した重合体を意味する。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
≪複層塗膜の形成方法≫
本実施形態の複層塗膜の形成方法は、被塗物上に、水系塗料組成物(P1)を塗装し、未硬化塗膜(C1)を得て、前記未硬化塗膜(C1)上に水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、三層からなる複層塗膜を得ること、を含む。この複層塗膜の形成方法を、以下、「三層塗膜の形成方法」と称する場合がある。
或いは、別の実施形態において、複層塗膜の形成方法は、被塗物上に、水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、二層からなる複層塗膜を得ること、を含む。この複層塗膜の形成方法を、以下、「二層塗膜の形成方法」と称する場合がある。
以下、三層塗膜の形成方法及び二層塗膜の形成方法を総じて、複層塗膜の形成方法と称する場合がある。
三層塗膜の形成方法における、前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つ、並びに、二層塗膜の形成方法における、前記水系塗料組成物(P2)は、カルボジイミド組成物を含む。
カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む。
複層塗膜の形成方法において、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)それぞれの形成方法としては、水系塗料組成物(P1)、水系塗料組成物(P2)及び塗料組成物(P3)をそれぞれ、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の方法を用いて、基材、塗膜等の被塗物上に積層させることで形成できる。
前記基材としては、例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等が挙げられる。前記塗膜としては、ポリオール等の水酸基を含む樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート、メラミン等の硬化剤とを含む塗料組成物を塗装し、硬化させたもの等が挙げられる。
未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)の硬化後の膜厚は、各々、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。硬化後の膜厚の上限は、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。硬化後の膜厚が上記範囲内であることで、塗膜の耐久性が維持できる。
三層塗膜の形成方法において、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を、又は、二層塗膜の形成方法において、未硬化塗膜(C2)及び(C3)を、同時に硬化させるための加熱温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。一方、加熱温度の上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
加熱時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。一方、加熱時間の上限は、40分以下が好ましく、35分以下がより好ましい。
加熱温度及び加熱時間が上記範囲内であることで、塗膜の硬化性及び塗膜の耐黄変性がより良好なものとなる。
三層塗膜の形成方法において、未硬化塗膜(C1)を得た後であって水系塗料組成物(P2)を塗装する前、及び、未硬化塗膜(C2)を得た後であって塗料組成物(P3)を塗装する前、のうち少なくともいずれかのタイミングに、又は、二層塗膜の形成方法において、未硬化塗膜(C2)を得た後であって塗料組成物(P3)を塗装する前に、短時間のプレヒートを行うことができる。プレヒートは、約70℃以上80℃以下、約1分間以上5分間以下の低温短時間乾燥の工程であり、未硬化塗膜(C1)及び未硬化塗膜(C2)の少なくともいずれかが硬化しない条件で行うことができる。
本実施形態の複層塗膜の形成方法は、上記構成を有することで、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が良好に保たれた複層塗膜が得られる。
本実施形態の複層塗膜の形成方法に用いられる塗料組成物について、以下に詳細を説明する。
<水系塗料組成物>
水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボジイミド組成物を含む。
[カルボジイミド組成物]
カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含むことから、水中で、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が非水溶性のポリカルボジイミド(B)を覆った会合構造(会合体)を形成するものと推察される。このとき、会合構造において外側に存在する水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)のカルボジイミド基が変性されていることで、反応性が低い状態となっており、且つ、反応性の高い非水溶性のポリカルボジイミド(B)は会合構造の内側に存在する。
そのため、カルボキシ基を含む水性樹脂組成物等の主剤成分と混合した水系塗料組成物として貯蔵した場合においても、カルボジイミド基が主剤成分中のカルボジイミド基と反応し得る反応性基と反応することなく安定した状態で貯蔵することができる。一方で、当該塗料組成物を80℃程度の低温下で硬化させる際には、加熱により会合構造が崩れることで、反応性の高い未変性のカルボジイミド基が露出し、主剤成分の反応性基と反応することができる。また、これにより、十分な架橋構造が形成されることで、得られる塗膜の耐水性が良好なものとなる。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)における水溶性は、水中で、凝集体を形成せずに分散する性質を意味する。一方、非水溶性のポリカルボジイミド(B)における非水溶性は、水中で、それ単独では分散せずに凝集体を形成する性質を意味する。水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)及び非水溶性のポリカルボジイミド(B)を特定の質量比で混合することで、水中で、該水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が非水溶性のポリカルボジイミド(B)を覆った、会合体を形成できる。
水溶性及び非水溶性の指標としては、水100gに対する溶解度で示すことができる。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は、水100gに対する溶解度が10g以上であることが好ましく、30g以上であることがより好ましく、40g以上であることがさらに好ましく、40g超であることが特に好ましい。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、水100gに対する溶解度が10g未満であることが好ましく、5g未満であることがより好ましく、1g未満であることがさらに好ましい。
なお、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)及び非水溶性のポリカルボジイミド(B)の水100gに対する溶解度は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率を適宜調整することで、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を調整することができ、カルボジイミド組成物を含む水系塗料組成物の貯蔵安定性をより向上させることができる。具体的には、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率を高くすることで水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物の反応性を低減することが可能であり、一方、変性率を低くすることで水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)とカルボキシ基を有する化合物の反応性を高めることが可能である。
より具体的には、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率は、5%超100%以下であることが好ましく、60%以上100%以下がより好ましく、70%以上100%以下がさらに好ましい。変性率が上記下限値以上であることで、カルボジイミド組成物を含む水系塗料組成物の貯蔵安定性をより優れたものとすることができる。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率は、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。
まず、変性前及び変性後の水溶性のポリカルボジイミドについて、赤外吸収スペクトル測定により、カルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値を求める。次いで、得られた積分値から、下記式に基づいて変性率を算出することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて算出することができる。
「変性率」(%)
=(変性後の水溶性のポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値)/(変性前の水溶性のポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値)×100
カルボジイミド組成物は、非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)を適宜調整することで、カルボジイミド組成物を含む塗料組成物において、硬化剤成分であるカルボジイミド組成物と、主剤成分に由来するカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を調整することができ、カルボジイミド組成物を含む水系塗料組成物の貯蔵安定性及び低温硬化性のバランスをより良好に保つことができる。具体的には、質量比(A)/(B)を高くする、すなわち水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の比率を高くすることで、水中において主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物との反応性は低下するため、貯蔵安定性はより向上する。一方、質量比(A)/(B)を低くする、すなわち非水溶性のポリカルボジイミド(B)の比率を高くすることで、加熱硬化時において主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物との反応性がより向上するため、塗料組成物としての低温硬化性はより向上する。
より具体的には、非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)は、90/10以下であることが好ましく、10/90以上90/10以下であることがより好ましく、20/80以上80/20以下であることがさらに好ましく、30/70以上70/30以下であることが特に好ましい。質量比(A)/(B)が上記下限値以上であることで、塗料組成物としたときの塗膜外観をより優れたものとすることができ、一方で、上記上限値以下であることで、塗料組成物の低温硬化性をより優れたものとすることができる。すなわち、質量比(A)/(B)が上記範囲内であることで、塗料組成物の貯蔵安定性及び低温硬化性のバランスをより良好に保つことができる。
質量比(A)/(B)は、例えば、カルボジイミド組成物に含まれる水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)及び非水溶性のポリカルボジイミド(B)の質量から算出することができる。
次いで、カルボジイミド組成物を構成する各成分について詳細を以下に説明する。
(水溶性の変性ポリカルボジイミド(A))
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)としては、特別な限定はなく、一般的に知られている水溶性の変性ポリカルボジイミドと同様であるが、末端構造が親水性基からなり、カルボジイミド基の少なくとも一部が変性剤により変性されているポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)において、少なくとも一部のカルボジイミド基は、主剤成分中のカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を低減した官能基に変換(変性)されている。主剤成分中のカルボン酸(カルボキシ基)との反応性を低減した官能基としては、ウレトンイミン基、イソウレア基、グアニジン基、N-アシルウレア基、ウレア基、カルボキシイミドアミド基等が挙げられる。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の原料となるポリカルボジイミドは、イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化することで誘導されるものである。
イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート及び該ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、IPDI、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、ジメチルシクロへキサンジイソシアネート(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及びその混合物(以下、「TDIs」と略記する場合がある)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する場合がある)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(以下、「NDI」と略記する場合がある)、3,3-ジメチル-4,4-ジフェニレンジイソシアネート(以下、「TODI」と略記する場合がある)、粗製TDIs、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する場合がある)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、「TMXDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
中でも、ジイソシアネートとしては、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが好ましく、IPDI、水添MDI、MDI又はTMXDIがより好まく、IPDI又は水添MDIが特に好ましい。
ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものが挙げられる。中でも、ポリイソシアネートはイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが好ましい。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の原料となるポリカルボジイミド、すなわち、イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、300以上6000以下が好ましく、400以上5000以下がより好ましく、600以上4000以下がさらに好ましい。上記数平均分子量が上記範囲内であることで、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の水中での分散性をより向上することができ、カルボジイミド組成物を含む塗料組成物の貯蔵安定性がより良好なものとなる。
イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定により測定することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の末端において、ポリカルボジイミドと親水性基の結合様式は特に限定されないが、例えば、ウレタン結合、ウレア結合、カルボジイミド基、アミド結合等が挙げられる。
親水性基としては、ポリカルボジイミドに水溶性を付与することができる官能基であれば特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、水酸基、スルホン酸基、4級アンモニウム基、リン酸基等が挙げられる。中でも、エチレンオキサイド又はプロプレンオキサイドが好ましい。これら親水性基を1種単独で有していてもよく、2種以上組み合わせて有していてもよい。
また、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の水溶性が確保される限りにおいては、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の一部の末端構造が親水性基以外の官能基からなるものであってもよい。
水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は、例えば、以下の工程を含む製造方法により得られる。なお、工程2Aと工程3Aとは、変性剤の種類に応じて適宜順番を変更して行うことができるが、工程2A、工程3Aの順で行うことが一般的である。
(1)イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化してポリカルボジイミドを得る工程(以下、「工程1A」と称する場合がある。);
(2)工程1Aで得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基を、親水性基を有する化合物で封止して、親水性基末端ポリカルボジイミドを得る工程(以下、「工程2A」と称する場合がある。);
(3)工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)を得る工程(以下、「工程3A」と称する場合がある。)
(1)工程1A
工程1Aでは、イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下で脱炭酸縮合反応させて、ポリカルボジイミドを得る。
工程1Aで用いられるイソシアネート化合物としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
反応時間は、特に限定されないが、ポリカルボジイミドの数平均分子量が上記範囲内となる重合度に達するまでの時間とすることが好ましい。
脱炭酸縮合反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する場合がある)、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
カルボジイミド化触媒としては、例えば、ホスホレンオキサイド等が挙げられる。ホスホレンオキサイドとしては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド等が挙げられる。
工程1Aにおいて、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、ポリカルボジイミドを取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、ポリカルボジイミドを取り出せばよい。また、取り出したポリカルボジイミドは、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
工程1Aにおいては、反応終了後、ポリカルボジイミドを取り出さずに、次工程で用いてもよいが、目的物である水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の収率が向上する点から、ポリカルボジイミドを上述の方法で取り出すことが好ましい。
(2)工程2A
工程2Aでは、工程1Aで得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基を、親水性基を有する化合物で封止して、親水性基末端ポリカルボジイミドを得る。
親水性基を有する化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びそれらの重合体又は共重合体;アルコール、スルホン酸塩、4級アミン塩、リン酸塩等が挙げられる。
また、工程2Aにおいて、得られる水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の水溶性が確保される限りにおいては、親水性基を有する化合物と、親水性基を有さない化合物とを混合して使用することも可能である。
親水性基を有する化合物の配合量は、ポリカルボジイミドの末端イソシアネート基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記工程1Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
工程2Aにおいて、反応終了後は、工程1Aの場合と同様の方法で、親水性基末端ポリカルボジイミドを取り出すことができ、取り出した親水性基末端ポリカルボジイミドをさらに同様の方法で精製してもよい。
(3)工程3A
工程3Aでは、工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、少なくとも一部のカルボジイミド基が主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基に変換された、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)を得る。主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示された官能基と同様のものが挙げられる。
変性剤としては、カルボジイミド基と反応し得る反応性基を有する化合物であればよく、例えば、イソシアネート類、アルコール類、非環式アミン類、環式アミン類、オキシム類、活性メチレン類、カルボン酸類、水等が挙げられる。
イソシアネート類としては、1価のイソシアネート化合物が好ましく、例えば、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、エチルイソシアナトアセテート、ブチルイソシアナトアセテート、メタクリル酸2-イソシアナトエチル、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート等が挙げられる。
アルコール類としては、1価のアルコール化合物(モノアルコール)が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテル、ポリプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノール、置換フェノール等が挙げられる。
非環式アミン類としては、2級の非環式アミンが好ましく、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、N-エチルメチルアミン、N-エチルイソプロピルアミン、N-エチルプロピルアミン、N-ターシャリーブチルエチルアミン等が挙げられる。
環式アミン類としては、2級の環式アミンが好ましく、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、インドール等が挙げられる。
オキシム類としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
活性メチレン類としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、アセト酢酸イソプロピル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸tert-ブチルエチル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。
カルボン酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸等、アニス酸が挙げられる。
変性剤の配合量は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が上記範囲内となるように、親水性基末端ポリカルボジイミドが有するカルボジイミド基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
反応温度は、例えば、20℃以上100℃以下とすることができ、30℃以上80℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記工程1Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
工程3Aにおいて、反応終了後は、工程1Aの場合と同様の方法で、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)を取り出すことができ、取り出した水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)をさらに同様の方法で精製してもよい。
工程1Aで得られたポリカルボジイミド、工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミド、及び工程3Aで得られた水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
(非水溶性のポリカルボジイミド(B))
非水溶性のポリカルボジイミド(B)としては、特別な限定はなく、一般的に知られている非水溶性のポリカルボジイミドと同様であるが、末端構造が親水性を有しない基(疎水性基)からなるポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の原料となるポリカルボジイミドは、イソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化することで誘導されるものである。
イソシアネート化合物としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、イソシアネート化合物がジイソシアネートである場合には、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが好ましく、IPDI、水添MDI、MDI又はTMXDIがより好まく、IPDI又は水添MDIが特に好ましい。
また、イソシアネート化合物がポリイソシアネートである場合には、イソシアヌレート基、ウレタン基及びイミノオキサジアジンジオン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリイソシアネートが好ましい。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の原料となるポリカルボジイミド、すなわち、イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、300以上6000以下が好ましく、400以上5000以下がより好ましく、600以上4000以下がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内であることで、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)が覆ってなる会合体(ミセル)の粒子径が大きくなりすぎて凝集及び沈殿することを効果に防止し、その結果、会合体の水分散性をより向上することができ、本実施形態のカルボジイミド組成物を塗料組成物としたときの貯蔵安定性がより良好なものとなる。
イソシアネート基末端が封止される前のポリカルボジイミドの数平均分子量は、例えば、GPC測定により測定することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の末端において、ポリカルボジイミドと親水性を有しない基(「疎水性基」と称する場合がある)の結合様式は特に限定されないが、例えば、ウレタン結合、ウレア結合、カルボジイミド基、アミド結合等が挙げられる。親水性を有しない基(疎水性基)としては、ポリカルボジイミドに非水溶性を付与することができる官能基であれば特に限定されないが、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合を含んでもよい、脂肪族アルキル基、脂環式アルキル基、脂肪族アルケニル基、脂環式アルケニル基、脂肪族アルキニル基等が挙げられる。中でも、エーテル結合を含んでもよい、脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基が好ましい。
これら親水性を有しない基(疎水性基)を1種単独で有していてもよく、2種以上組み合わせて有していてもよい。
また、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の非水溶性が確保される限りにおいては、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の一部の末端構造が親水性基からなるものであってもよい。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、カルボジイミド基の少なくとも一部が変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)との相溶性を向上させる観点からは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、カルボジイミド基の少なくとも一部が変性していることが好ましい。一方で、反応性の高いカルボジイミド基をより多く有することで、塗料組成物としたときの低温硬化性及び塗膜としたときの耐水性を向上させる観点からは、非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、カルボジイミド基が変性されていないことが好ましい。
すなわち、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率を高くすることで、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)との相溶性をより向上させることができ、一方で、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率を低くすることで、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と主剤成分であるカルボキシ基を有する化合物との反応性を高めることができる。
具体的には、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも低いことが好ましく、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも10%以上低いことがより好ましく、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも30%以上低いことがさらに好ましく、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも50%以上低いことが特に好ましい。より具体的には、非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率は、5%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましく、0%が特に好ましい。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率は、上記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率と同様の方法を用いて算出することができる。
非水溶性のポリカルボジイミド(B)は、例えば;
イソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化し、且つ、得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基を、疎水性基を有する化合物で封止して、非水溶性のポリカルボジイミド(B)(疎水性基末端ポリカルボジイミドともいう)を得る工程(以下、「工程1B」と称する場合がある。);
を含む製造方法により得られる。
(1)工程1B
工程1Bでは、イソシアネート化合物のカルボジイミド化触媒存在下での脱炭酸縮合反応によるポリカルボジイミド化と、得られたポリカルボジイミドの末端イソシアネート基の疎水性基を有する化合物による封止化を同時に行い、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を得る。
なお、工程1Bにおいて、
イソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒存在下でポリカルボジイミド化し、ポリカルボジイミドを得る工程(以下、「工程1B-1」と称する場合がある)と、
工程1B-1で得られたポリカルボジイミドを、疎水性基を有する化合物で封止して、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を得る工程(以下、「工程1B-2」と称する場合がある。)と、
に分けて行ってもよいが、製造効率観点から、上記工程1B-1及び上記工程1B-2を同時に行うことが好ましい。
工程1Bで用いられるイソシアネート化合物としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
疎水性基を有する化合物としては、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合を含んでもよい、脂肪族アルカン、脂環式アルカン、脂肪族アルケン、脂環式アルケン、脂肪族アルキン等が挙げられる。
また、工程1Bにおいて、得られる非水溶性のポリカルボジイミド(B)の非水溶性が確保される限りにおいては、疎水性基を有する化合物と、親水性基を有する化合物とを混合して使用することも可能である。
疎水性基を有する化合物の配合量は、反応中に生成されるポリカルボジイミドの末端イソシアネート基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
反応温度は、例えば、100℃以上200℃以下とすることができる。
反応時間は、特に限定されないが、ポリカルボジイミドの数平均分子量が上記範囲内となる重合度に達するまでの時間とすることが好ましい。
脱炭酸縮合反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aで例示されたものと同様のものが挙げられる。
カルボジイミド化触媒としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aで例示されたものと同様のものが挙げられる。
工程1Bにおいて、反応終了後は、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aの場合と同様の方法で、非水溶性のポリカルボジイミド(B)を取り出すことができ、取り出した非水溶性のポリカルボジイミド(B)をさらに同様の方法で精製してもよい。
(2)工程2B
非水溶性のポリカルボジイミド(B)の製造において、工程1Bで得られた疎水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)を得る工程(以下、「工程2B」と称する場合がある。)を更に含んでもよい。
工程2Bでは、工程1Bで得られた疎水性基末端ポリカルボジイミドの少なくとも一部のカルボジイミド基を変性剤で変性させて、少なくとも一部のカルボジイミド基が主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基に変換された、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)を得る。主剤成分中に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)との反応性が低減された官能基としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)」において例示された官能基と同様のものが挙げられる。
変性剤としては、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程3Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
変性剤の配合量は、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)の変性率が上記範囲内となるように、疎水性基末端ポリカルボジイミドが有するカルボジイミド基のモル量に応じて、適宜調整することができる。
反応温度は、例えば、20℃以上100℃以下とすることができ、30℃以上80℃以下とすることができる。
反応は、溶媒存在下又は溶媒非存在下で行うことができる。溶媒としては上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。
工程2Bにおいて、反応終了後は、上記「水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の合成方法」の工程1Aの場合と同様の方法で、非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)を取り出すことができ、取り出した非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)をさらに同様の方法で精製してもよい。
工程1Bで得られた非水溶性のポリカルボジイミド(B)(疎水性基末端ポリカルボジイミド)、及び工程2Bで得られた非水溶性の変性ポリカルボジイミド(B’)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
(カルボジイミド組成物の製造方法)
カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、必要に応じて溶剤と、を混合することで、製造することができる。
溶剤としては、水であってもよく、有機溶剤であってもよい。
有機溶剤としては、カルボジイミド基と反応性を有しないものであればよく、例えば、炭化水素、エーテル、アミド結合を有する化合物、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテルとしては、例えば、THF、ジエチルエーテル等が挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
[水性樹脂組成物]
水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物を含むことが好ましい。カルボキシ基を有する水性樹脂組成物を含むことで、前記カルボジイミド組成物と反応し、架橋することで強靭且つ、耐水性に優れた塗膜を得ることができる。
また、水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、水酸基を有する水性樹脂組成物を含むことが好ましい。水酸基を有する水性樹脂組成物を含むことで、併用するイソシアネート化合物やメラミン等、後述する塗料組成物(P3)の好ましい態様において含まれるイソシアネート化合物と反応し、架橋することで、耐薬品性や耐チッピング性に優れた塗膜を得ることができる。
カルボキシ基を有する水性樹脂組成物としては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、アクリル、ポリオレフィン等が挙げられる。これら水性樹脂組成物は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。中でも、耐候性、耐薬品性及び硬度の観点からは、アクリルが好ましく、機械強度及び耐油性の観点からは、ポリエステルが好ましい。
前記水性樹脂組成物がカルボキシ基を有する場合、酸価は3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましく、8mgKOH/g以上が更に好ましい。前記範囲であることで架橋密度が高くなり形成する塗膜の強靭性が高くなる。また40mgKOH/g以下が好ましく、35mgKOH/g以下がより好ましく、30mgKOH/g以下が更に好ましい。前記範囲であることで得られる塗膜の耐水性が高くなる。
カルボキシ基を有する水性樹脂組成物のカルボキシ基に対する、上記カルボジイミド組成物のカルボジイミド基のモル当量比(カルボジイミド基/カルボキシ基)の下限値は、例えば0.1であり、0.2が好ましく、0.5がより好ましい。一方、カルボジイミド基/カルボキシ基の上限値は、例えば5.0であり、2.0が好ましく、1.5がより好ましい。
すなわち、カルボジイミド基/カルボキシ基は、0.1以上5.0以下であり、0.2以上2.0以下が好ましく、0.5以上1.5以下がより好ましい。
カルボジイミド基/カルボキシ基が上記範囲内であることで、得られる樹脂硬化物の耐水性がより優れ、且つ、架橋密度がより高くなる傾向にある。
前記水性樹脂組成物が水酸基を有する場合、水酸基価は10mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましく、30mgKOH/g以上が更に好ましい。前記範囲であることで得られる塗膜の密着性が高くなる。また250mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましい。前記範囲であることで得られる塗膜の耐水性が高くなる。
水酸基価及び酸価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
[その他構成成分]
水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、上記セミカルバジド組成物及び上記水性樹脂組成物に加えて、例えば、改質用樹脂、その他の硬化剤成分、顔料等を含むことができる。
改質用樹脂としては、水溶性又は水分散性の樹脂であって、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、改質用樹脂としては、仕上り性や耐チッピング性等の点から、ポリウレタン樹脂又はアクリル樹脂が好ましい。
その他の硬化剤成分としては、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート基含有化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物等が挙げられる。
顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等が挙げられる。これら顔料を1種単独で、又は、2種以上組み合わせて用いることができる。
顔料を含有する場合、該顔料の配合量は、水系塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、一般に、1質量部以上200質量部以下であり、20質量部以上150質量部以下が好ましく、50質量部以上120質量部以下がより好ましい。
水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、上記セミカルバジド組成物及び上記水性樹脂組成物に加えて、必要に応じて、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等の通常の塗料添加剤を更に含むことができる。
<塗料組成物(P3)>
塗料組成物(P3)としては、自動車車体、自動車部品又は家庭電気製品等の塗装用として公知の熱硬化性クリア塗料組成物、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂(主剤成分)及び架橋剤(硬化剤成分)を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料、水性熱硬化性塗料、熱硬化性粉体塗料、熱硬化性粉体スラリー塗料等が挙げられる。中でも、有機溶剤型熱硬化性塗料が好ましい。
基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、反応性不飽和基等が挙げられる。
基体樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
架橋剤(硬化剤成分)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシ基含有化合物、カルボキシ基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。
塗料組成物(P3)における基体樹脂及び架橋剤の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂及びブロックポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。
また、塗料組成物(P3)は、一液型又は多液型、例えば、二液型ウレタン樹脂塗料等であることができる。中でも、上記クリア塗料を約70℃以上約120℃未満の温度で加熱硬化させる場合は、ブロックポリイソシアネート化合物を硬化剤成分として含む一液型ウレタン樹脂塗料、又は、ブロックされていないポリイソシアネート化合物を硬化剤成分として含む二液型ウレタン樹脂塗料が好ましい。
塗料組成物(P3)は、所望により、透明性を阻害しない程度の着色顔料、光輝性顔料、染料等を含むことができ、そして体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含むことができる。
[イソシアネート成分(a)]
塗料組成物(P3)は、架橋剤(硬化剤成分)として、イソシアネート成分(a)を含むことが好ましい。
イソシアネート成分(a)は、イソシアネート化合物を含む硬化剤成分である。
本実施形態の複素塗膜の形成方法において、塗料組成物(P3)がイソシアネート成分(a)を含むことで、イソシアネート成分(a)の一部を、三層塗膜の形成方法における、未硬化塗膜(C1)及び未硬化塗膜(C2)、又は、二層塗膜の形成方法における、未硬化塗膜(C2)に移行させて、三層塗膜の形成方法における、未硬化塗膜(C1)及び未硬化塗膜(C2)、又は、二層塗膜の形成方法における、未硬化塗膜(C2)に、イソシアネート成分(a)を存在させることで、三層塗膜の形成方法における、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)、又は、二層塗膜の形成方法における、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を、加熱時に一括して硬化させることが好ましい。
[イソシアネート化合物]
イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネートモノマー、該イソシアネートモノマーを重合してなるポリイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネートモノマーとしては、例えば、ジイソシアネート、下記一般式(I)で表されるトリイソシアネート(以下、「トリイソシアネート(I)」と略記する場合がある)等が挙げられる。
中でも、耐チッピング性により優れる塗膜が得られることから、イソシアネート成分(a)は、トリイソシアネート(I)を含むことが好ましい。
Figure 2022086840000002
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定はされないが、得られた塗膜の耐水性及び機械的強度等が優れることから、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定はされないが、得られた塗膜の耐水性及び機械的強度等が優れることから、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、ジメチルシクロへキサンジイソシアネート(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及びその混合物(以下、「TDI」と略記する場合がある)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する場合がある)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(以下、「NDI」と略記する場合がある)、3,3-ジメチル-4,4-ジフェニレンジイソシアネート(以下、「TODI」と略記する場合がある)、粗製TDIs、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する場合がある)等が挙げられる。
これらジイソシアネート化合物を1種又は2種以上組み合わせて、用いることができる。
(トリイソシアネート(I))
トリイソシアネート(I)は、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2022086840000003
(1)Y
一般式(I)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
におけるエステル構造及びエーテル構造を含まない炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基としては、脂肪族基であってもよく、芳香族基であってもよい。前記脂肪族基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
前記直鎖状又は分岐状の脂肪族基としては、例えば、アルカンジイル基(アルキレン基)、アルキリデン基等が挙げられる。
前記環状の脂肪族基としては、例えば、シクロアルキレン基等が挙げられる。
前記芳香族基としては、例えば、フェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。
中でも、炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基としては、アルキレン基が好ましい。
前記アルキレン基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、前記アルキレン基としては、テトラメチレン基が好ましい。
におけるエステル構造(-COO-)及びエーテル構造(-O-)からなる群より選択される1種以上を含む炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基としては、例えば、下記一般式(II)で表される基(以下、「基(II)」と称する場合がある」)が挙げられる。
*1-(CHn1-X-(CHn2*2 (II)
前記一般式(II)において、*1は、上記一般式(I)中のCとの結合手を示し、*2は上記一般式(I)中のNと結合手を示す。
また、n1及びn2は、1≦n1+n2≦20となる整数である。すなわち、n1及びn2の両方とも0になることはなく、n2は1以上であることが好ましい。
中でも、n1及びn2はそれぞれ独立して、0以上20以下の整数であることが好ましく、0以上4以下の整数であることがより好ましく、0以上2以下の整数であることがさらに好ましい。
n1及びn2の組み合わせとしては、例えば、n1=0、n2=2の組み合わせ、n1=2、n2=2の組み合わせが好ましい。
また、基(II)において、Xはエステル構造であることが好ましい。
複数あるYのうち少なくとも1つが、脂肪族基及び芳香族基からなる群の1種以上を有する場合、イソシアネート成分をより低粘度とすることができる。
また、複数あるYのうち少なくとも1つが、脂肪族基及び脂環族基からなる群の1種以上を有する場合、塗膜の耐候性をより良好にすることができる。
また、複数あるYのうち少なくとも1つが、エステル構造を有する場合、イソシアネート成分の耐熱性をより向上させることができる。
(2)R
は、水素原子、又は、炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。Rにおける炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。中でも、Rとしては、水素原子が好ましい。
好ましいトリイソシアネート(I)として具体的には、例えば、国際公開第1996/17881号(参考文献1)に開示されている4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある、分子量251)、特開昭57-198760号公報(参考文献2)に開示されている1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある、分子量209)、特公平4-1033号公報(参考文献3)に開示されているビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある、分子量311)、特開昭53-135931号公報(参考文献4)に開示されているリジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある、分子量267)等が挙げられる。イソシアネート成分の第1の未硬化塗膜への移行性とイソシアネート基の反応性との観点から、LTI、NTI又はGTIが好ましく、LTIがより好ましい。
トリイソシアネート(I)の分子量の下限値は、139が好ましく、150がより好ましく、180がさらに好ましく、200が特に好ましい。
一方、トリイソシアネート(I)の分子量の上限値は、1000が好ましく、800がより好ましく、600がさらに好ましく、400が特に好ましい。
すなわち、トリイソシアネート(I)の分子量は、139以上1000以下が好ましく、150以上800以下がより好ましく、180以上600以下がさらに好ましく、200以上400以下が特に好ましい。
トリイソシアネート化合物(I)の分子量が上記下限値以上であることにより、結晶化をより抑制することができ、上記上限値以下であることにより、低粘度化をより達成しやすくなる。
トリイソシアネート(I)は、例えば、アミノ酸誘導体、エーテルアミン、アルキルトリアミン等のアミンをイソシアネート化して得ることができる。
アミノ酸誘導体としては、例えば、2,5-ジアミノ吉草酸、2,6-ジアミノヘキサン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。これらアミノ酸誘導体はジアミンモノカルボン酸又はモノアミンジカルボン酸である。そのため、カルボキシ基を、例えばエタノールアミン等のアルカノールアミンでエステル化することで、アミノ基数を制御することができる。又は、カルボキシ基を、例えばメタノール等のアルコールでエステル化することで、アミノ基数を制御することができる。
得られたエステル構造を有するアミンは、アミンのホスゲン化等により、エステル構造を含むトリイソシアネート化合物とすることができる。
エーテルアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレントリアミンである三井化学ファイン社の商品名「D403」等が挙げられる。これらエーテルアミンはトリアミンであり、アミンのホスゲン化等により、エーテル構造を含むトリイソシアネート化合物とすることができる。
アルキルトリアミンとしては、例えば、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン等が挙げられる。当該アルキルトリアミンは、アミンのホスゲン化等により炭化水素のみを含むトリイソシアネートとすることができる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、上記イソシアネートモノマーから誘導されたものであって、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノジオキサジアジンジオン基、ビュレット基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含むものが挙げられる。
なお、「イソシアヌレート基」とは、3つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(V)で示される基である。
一般に、「アロファネート基」とは、アルコールの水酸基とイソシアネート基とを反応させてなる官能基であり、下記式(VI)で示される基である。
一般に、「イミノオキサジアジンジオン基」とは、3つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(VII)で示される基である。
一般に、「ビウレット基」とは、3つのイソシアネート基とビウレット化剤とを反応させてなる官能基であり、下記式(VIII)で表される基である。
一般に、「ウレタン基」とは、1つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させてなる官能基であり、下記式(IX)で表される基である。
一般に、「ウレトジオン基」とは、2つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(X)で示される基である。
Figure 2022086840000004
中でも、入手のしやすさ、耐候性、作業性の観点から、ポリイソシアネートとしては、HDIから誘導された、イソシアヌレート基又はウレトジオン基を含むポリイソシアネートが好ましい。
≪複層塗膜≫
本実施形態の複層塗膜は、上記複層塗膜の形成方法により形成されてなるものである。
本実施形態の複層塗膜は、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性を良好に保つことができる。
本実施形態の複層塗膜は、水系塗料組成物(P1)、水系塗料組成物(P2)及び塗料組成物(P3)、又は、水系塗料組成物(P2)及び塗料組成物(P3)に由来する主剤成分及び硬化剤成分が各塗膜層中だけでなく、塗膜層間でも複雑な架橋構造を形成しており、各塗膜層及び塗膜層間において形成されている複雑な架橋構造を分析及び解析して特定することは困難である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例における、イソシアネート成分の物性及び塗膜の評価は、以下のとおり測定及び評価した。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
<物性の測定方法>
[物性1]
(数平均分子量)
イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(イソシアネート末端ポリカルボジイミド)の数平均分子量は、以下に示す測定条件にてGPC測定を行い、ポリスチレン基準の分子量として求めた。なお、検量線の作成には、分子量300以上40,000以下のポリスチレンを用いた。
(測定条件)
装置:HLC-8320GPC(TOSOH)
カラム:TSKgelSuperH3000×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH2000×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH1000×1本(TOSOH)
キャリアー:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:1.0質量%
注入量:20μL
温度:40℃
検出方法:示差屈折計
また、非水溶性のポリカルボジイミドにおいて、末端イソシアネート基の封止反応と、ポリカルボジイミド化反応を同時に行って合成したサンプルは、末端封止後の数平均分子量をGPCで測定し、得られた数平均分子量から封止構造を差し引いて、イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミドの数平均分子量を算出した。なお、末端がモノイソシアネートで封止されている場合には、封止前の構造から封止後の構造に変換される際、二酸化炭素の脱離が生じるため、その寄与分を計算に含めた。一方、末端がPGME等のアルコールで封止されている場合には、封止前の構造から封止後の構造に変換される際、二酸化炭素の脱離が生じないため、寄与分を考慮せず計算した。
具体的には、以下の式を用いて計算した。
(1)シクロヘキシルイソシアネートで末端封止した場合
(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量)=(末端封止後にGPCで求めたポリカルボジイミドの数平均分子量)-2×(シクロヘキシルイソシアネート分子量:125g/mol)+2×(二酸化炭素分子量:44g/mol)
(2)プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で末端封止した場合
(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量)=(末端封止後にGPCで求めたポリカルボジイミドの数平均分子量)-2×(PGME分子量:90g/mol)
[物性2]
(変性率)
後述する「水溶性の変性ポリカルボジイミドの合成」の工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドに変性剤を加えた直後(すなわち、変性前の親水性基末端ポリカルボジイミド(変性前の水溶性のポリカルボジイミド))と、「水溶性の変性ポリカルボジイミドの合成」の工程3Aで得られた水溶性の変性ポリカルボジイミドについて、赤外吸収スペクトル測定によりカルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値を求め、下記式に基づいて変性率を算出した。
「変性率」(%)
=(水溶性の変性ポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピークの積分値)/(親水性基末端ポリカルボジイミドの波長2150cm-1付近の吸収ピーク積分値)×100
[物性3]
(水100gに対する溶解度)
メカニカルスターラーを接続した内容積300mLのガラス製攪拌槽に各水溶性の変性ポリカルボジイミド又は各非水溶性のポリカルボジイミドを1gから41gまでの範囲で加えた。その後、水:100gを加え、40℃48時間攪拌した後、混合物中の沈殿の有無を目視確認した。各水溶性の変性ポリカルボジイミド又は各非水溶性のポリカルボジイミドにおいて、沈殿が認められたときの質量と沈殿が認められなかったときの質量の境界を精度1gで求め、沈殿が認められなかったときの最大質量を水100gへの溶解度とした。この方法によって算出された各水溶性の変性ポリカルボジイミドの水100gに対する溶解度は10g以上であることが分かった。一方、各非水溶性のポリカルボジイミドの水100gに対する溶解度は1g未満であることが分かった。
<評価方法>
[評価1]
(塗膜の耐水性)
各実施例及び比較例で得られた複層塗膜を40℃の温水に5日間浸漬した後、取り出して、水を拭き取った。この塗膜の密着性をJIS K5600-5-6に準じて評価した。塗膜の耐水性の評価基準は、以下のとおりである。以下の評価基準のうち、1以上であるものを塗膜の耐水性が良好であると評価した。
(評価基準)
5:100個全て剥離せずに残った
4:残った個数が95個以上99個以下
3:残った個数が90個以上94個以下
2:残った個数が85個以上89個以下
1:残った個数が80個以上84個以下
0:残った個数が79個以下
[評価2]
(塗膜外観)
各実施例及び比較例で得られた複層塗膜をBYK Garder社製、商品名「haze-gloss version3.40」を用いて、屈折率が1.567の黒色ガラス標準板での測定結果を100グロスユニットとして、20°の光沢値を測定した。なお、塗装に用いたガラス板単体の20°の光沢値は174であった。塗膜外観の評価基準は以下のとおりである。以下の評価基準のうち、1以上であるものを塗膜外観が良好であると評価した。
(評価基準)
4:20°の光沢値が160以上
3:20°の光沢値が150以上160未満
2:20°の光沢値が125以上150未満
1:20°の光沢値が100以上125未満
0:20°の光沢値が100未満
[評価3]
(貯蔵後の水性塗料組成物を用いた塗膜の耐水性)
各実施例及び比較例で得られた水性塗料組成物を40℃15日保管した後に、各実施例及び比較例に記載の方法で複層塗膜を作製した。複層塗膜を用いて、上記「評価1」と同様の方法を用いて、塗膜の耐水性を評価した。以下の評価基準のうち、1以上であるものを貯蔵後の水性塗料組成物を用いた塗膜の耐水性が良好であると評価した。
<水溶性のポリカルボジイミドの合成>
[合成例A-1]
(水溶性のポリカルボジイミドA-1の合成)
(1)工程1A:イソシアネート末端ポリカルボジイミドの合成
内容積1LのSUS316製攪拌槽に、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート:100gと3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(カルボジイミド化触媒):0.5gとを入れ、窒素雰囲気下190℃で20時間反応させて、イソシアネート末端ポリカルボジイミドを得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定のイソシアネート基に由来する2250cm-1付近の吸収ピークの積分値からイソシアネート基含有量(NCO%)を測定した結果、5.7質量%(重合度5.6)であり、得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドの数平均分子量は1485g/molであった。
(2)工程2A:親水性基末端ポリカルボジイミドの合成
上記工程1Aで得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドに、親水性基を有する化合物(以下、「親水性基含有化合物」と称する場合がある)として、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550):64gを加え、窒素雰囲気下160℃で48時間反応させて、親水性基末端ポリカルボジイミドを得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定によりイソシアネート基に由来する2250cm-1付近の吸収ピークの消失を確認した。
(3)工程3A:水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1の合成
上記工程2Aで得られた親水性基末端ポリカルボジイミドに、変性剤として2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE):33gを加え、窒素雰囲気下40℃で72時間反応させて、水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1を得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定によりカルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークの消失を確認した。
[合成例A-2~A-29]
(水溶性のポリカルボジイミドA-2~A-29の合成)
表1に示す、ジイソシアネート、末端構造の由来となる化合物及び変性剤を用いて、イソシアネート末端ポリカルボジイミド(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド)の数平均分子量及び得られた水溶性の変性ポリカルボジイミドの変性率が表1に示す値となるようにした以外は、合成例1と同様の方法を用いて、各水溶性の変性ポリカルボジイミドを得た。なお、末端構造の由来となる化合物を2種類用いた場合には、その配合比率は、表1及び表2に示すモル比となるように用いた。表1及び表2において、各略称は以下の化合物を意味する。
(ジイソシアネート)
hMDI:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
TDI:トルエンジイソシアネート
(末端構造の由来となる化合物)
MPEG400:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:400)
MPEG500:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:500)
MPEG550:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:550)
MPEG1000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:1000)
MPEG2000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:2000)
MPEG5000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:5000)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PO-EO(970):ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:970)
(変性剤)
TFE:2,2,2-トリフルオロエタノール
HFIP:ヘキサフルオロイソプロパノール
BuNCO:ブチルイソシアネート
DIPA:ジイソプロピルアミン
[合成例A-30]
(ポリカルボジイミドA-30の合成)
ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート:100g、及び、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド:1gを170℃で7時間反応させカルボジイミド化合物を得た。
次に、得られたカルボジイミド化合物:100gに、ポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製、商品名「PTMG-1000」、数平均分子量1000):53g、及び、ジブチルスズジラウレート0.1gを加えて、85℃に加熱し、2時間保った。次いでポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製、商品名「メチルポリグリコール130」):48gを加え、85℃3時間保った。IR測定によりNCOピークが消失していることを確認して反応を終了し、60℃に冷却した後、脱イオン水を加えて、樹脂固形分40%のポリカルボジイミドA-30を得た。
Figure 2022086840000005
Figure 2022086840000006
<非水溶性のポリカルボジイミドの合成>
[合成例B-1]非水溶性のポリカルボジイミドB-1の合成
内容積1LのSUS316製攪拌槽に、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート:100g、シクロヘキシルイソシアネート(CHI):58g、及び3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(カルボジイミド化触媒):0.5gを入れ、窒素雰囲気下190℃で72時間反応させて、非水溶性のポリカルボジイミドB-1を得た。反応後赤外吸収(IR)スペクトル測定のイソシアネート基に由来する2250cm-1付近の吸収ピークは認められず、カルボジイミド基に由来する2150cm-1付近の吸収ピークが認められた。得られたポリカルボジイミドの数平均分子量は567g/molであった。当該数平均分子量から封止構造を差し引いて、下記式に基づきイソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量を求めた結果、405g/molと算出された。
(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド(PCI)の数平均分子量)
=(末端封止後にGPCで求めたポリカルボジイミドの数平均分子量)-2×(シクロヘキシルイソシアネート分子量:125g/mol)+2×(二酸化炭素分子量:44g/mol)
[合成例B-2~B-15]
(非水溶性のポリカルボジイミドB-2~B-15の合成)
表3に示す、ジイソシアネート及び末端構造の由来となる化合物を用いて、イソシアネート末端ポリカルボジイミド(イソシアネート基末端封止前のポリカルボジイミド)の数平均分子量及び得られた非水溶性のポリカルボジイミドの変性率が表3に示す値となるようにした以外は、合成例B-1と同様の方法を用いて、各非水溶性のポリカルボジイミドを得た。
なお、変性剤を用いた非水溶性の変性ポリカルボジイミドは、合成例B-1に示す方法でイソシアネート基末端を封止した非水溶性のポリカルボジイミドを得た後に、表3に示す変性剤を加え、窒素雰囲気下40℃で72時間反応させて、非水溶性の変性ポリカルボジイミドを得た。反応後、赤外吸収(IR)スペクトル測定によりカルボジイミド基に由来する波長2150cm-1付近の吸収ピークを確認した。
表2において、各略称は以下の化合物を意味する。
(末端構造の由来となる化合物)
CHI:シクロヘキシルイソシアネート
Figure 2022086840000007
<イソシアネート成分(a)の合成>
[合成例C-1]
(NTIの製造)
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内に4-アミノメチル-1,8-オクタメチレンジアミン(以下、「トリアミン」と称する場合がある。)1060gをメタノー ル1500gに溶かし、これに35%濃塩酸1800mLを冷却しながら徐々に滴下した。減圧下にてメタノールおよび水を除去して濃縮し、60℃/5mmHgにて 24時間乾燥したところ、白色固体のトリアミン塩酸塩が得られた。得られたトリアミン塩酸塩650gを微粉末としてo-ジクロルベンゼン5000gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、100℃に達した時点でホスゲンを200g/Hrの速度にて吹込みはじめ、さらに昇温を続けて180℃に保持し、12時間ホスゲンを吹込み続けた。減圧下にて溶存ホスゲンおよび溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点161~163℃/1.2mmHgの無色透明な4-イソシアネートメチル-1,8-オクタンメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある。)420gが得られた。
[合成例C-2]
(LTIの製造)
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にエタノールアミン122.2g、o-ジクロロベンゼン100mL、トルエン420mLを入れ、氷冷化塩化水素ガスを導入し、エタノールアミンを塩酸塩に転換した。次に、リジン塩酸塩182.5gを添加し、反応液を80℃に加熱し、エタノールアミン塩酸塩を溶解させ、塩化水素ガスを導入してリジン二塩酸塩とした。さらに塩化水素ガスを20~30mL/分で通過させ、反応液を116℃に加熱し、水が留出しなくなるまでこの温度を維持した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩165gを得た。このリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩100gを微粉末としてo-ジクロロベンゼン1200mLに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、120℃に達した時点でホスゲンを0.4モル/時間の速度にて吹込みはじめ、10時間保持し、その後150℃に昇温した。懸濁液はほとんど溶解した。冷却後ろ過し、減圧下にて溶存ホスゲンおよび溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点155~157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI80.4gが得られた。
[合成例C-3]
(イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートC-3の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI50gを仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリン酸を加え、反応を行い、収率が40%になった時点でジブチルリン酸を添加し反応を停止した。その後、120℃、15分保持、反応停止を確認し、反応液を得た。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートC-3を得た。
<カルボジイミド組成物の合成>
[合成例D-1]
(カルボジイミド組成物PC-a1の製造)
水溶性の変性ポリカルボジイミドA-1:4g、及び、非水溶性のポリカルボジイミドB-1:4gを100mLナスフラスコに取り、テトラヒドロフラン(THF):20gを加えて、ポリカルボジイミドのTHF溶液とした。次いで、ポリカルボジイミドのTHF溶液にイオン交換水:30gを加えて、乳白色の溶液を得た。残留したTHFをイオン交換水と共に液温40℃、真空度5kPaの条件下で減圧留去し、その後イオン交換水を添加することで固形分10質量%の乳白色のカルボジイミド組成物PC-a1を得た。
[合成例D-1~D-62]
(カルボジイミド組成物PC-a2~PC-a56及びPC-b1~PC-b6の製造)
表4~表6に示す、水溶性の変性ポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドの種類及び配合比となるようにした以外は、合成例D-1と同様の方法を用いて、各カルボジイミド組成物を得た。
なお、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)を用いたカルボジイミド組成物では、イオン交換水を加える際に、DBSも同時に表4~表6に示す添加量となるように加えた。
Figure 2022086840000008
Figure 2022086840000009
Figure 2022086840000010
<複層塗膜の製造>
[実施例B1](複層塗膜B-a1の製造)
1.各塗料組成物の製造
カルボキシ基を有する水性樹脂組成物(Allnex社の商品名「SETAQUA6510」):45g、及び、カルボジイミド組成物PC-a1:30gを混合し、水系塗料組成物(P1)を得た。
また、メラミン(Allnex社の商品名「サイメル327」):10.7g、アクリルディスパージョン(Allnex社の商品名「SETAQUA6515」):50g、及び、水:7.7gを混合し、水系塗料組成物(P2)を得た。
また、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(C-3):16.6g、アクリルポリオール(Allnex社の商品名「SETALUX1767」):50g、及び、酢酸n-ブチル:31.6gを混合し、塗料組成物(P3)を得た。
2.複層塗膜の製造
被塗物として、JIS G 3141(SPCC,SD)カチオン電着塗装板を用いて、水系塗料組成物(P1)を乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C1)を得た。次いで、水系塗料組成物(P2)を、乾燥膜厚20μmになるようにスプレー塗装した後、80℃5分間プレヒートして、未硬化塗膜(C2)を得た。形成された未硬化塗膜(C1)及び未硬化塗膜(C2)の上に、塗料組成物(P3)を乾燥膜厚40μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、150℃30分間焼付けて、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)全てを一度に硬化させて、複層塗膜B-a1を得た。
[実施例B2~B56及び比較例B1~B6]
(複層塗膜B-a2~B-a56及びB-b1~B-b6の製造)
水系塗料組成物(P1)に含まれるカルボジイミド組成物の種類を表7及び表8に示したとおりとした以外は、実施例B1と同様の方法を用いて、複層塗膜B-a2~B-a56及びB-b1~B-b6を得た。
得られた各複層塗膜の耐水性、塗膜外観及び貯蔵後の水系塗料組成物を用いた塗膜の耐水性を上記に記載の方法を用いて評価した。結果を表7及び表8に示す。
Figure 2022086840000011
Figure 2022086840000012
表7及び表8に示すように、水溶性の変性ポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物(P1)を用いた複層塗膜B-a1~B-a56(実施例B1~B56)では、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が良好に保たれていた。
一方、水溶性の未変性のポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物を用いた複層塗膜B-b1(比較例B1)、水溶性の変性ポリカルボジイミドのみを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物を用いた複層塗膜B-b2~B-b6(比較例B2~B6)では、耐水性、外観、及び貯蔵後の塗料組成物を用いた場合における耐水性の全てが良好なものは得られなかった。
[実施例C1]
(複層塗膜C-a1の製造)
1.各塗料組成物の製造
メラミン(Allnex社の商品名「サイメル327」):10.7g、アクリルディスパージョン(Allnex社の商品名「SETAQUA6510」):50g、及び、水:7.7gを混合し、水系塗料組成物(P1)を得た。
また、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物(Allnex社の商品名「SETAQUA6515」):45g、および、カルボジイミド組成物PC-a1:30gを混合し、水系塗料組成物(P2)を得た。
また、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(C-3):16.6g、アクリルポリオール(Allnex社の商品名「SETALUX1767」):50g、及び、酢酸n-ブチル:31.6gを混合し、塗料組成物(P3)を得た。
2.複層塗膜の製造
被塗物として、JIS G 3141(SPCC,SD)カチオン電着塗装板を用いて、水系塗料組成物(P1)を乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C1)を得た。次いで、水系塗料組成物(P2)を、乾燥膜厚20μmになるようにスプレー塗装した後、80℃5分間プレヒートして、未硬化塗膜(C2)を得た。形成された塗膜(C1)及び(C2)の上に、塗料組成物(P3)を乾燥膜厚40μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、150℃30分間焼付けて、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)全てを一度に硬化させて、複層塗膜C-a1を得た。
[実施例C2~C56及び比較例C1~C6]
(複層塗膜C-a2~C-a56及びC-b1~C-b6の製造)
水系塗料組成物(P2)に含まれるカルボジイミド組成物の種類を表9及び表10に示したとおりとした以外は、実施例C1と同様の方法を用いて、複層塗膜C-a2~C-a56及びC-b1~C-b6を得た。
得られた複層塗膜の耐水性、塗膜外観及び貯蔵後の水系塗料組成物を用いた塗膜の耐水性を上記に記載の方法を用いて評価した。結果を表9及び表10に示す。
Figure 2022086840000013
Figure 2022086840000014
表9及び表10に示すように、水溶性の変性ポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物(P2)を用いた複層塗膜C-a1~C-a56(実施例C1~C56)では、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が良好に保たれていた。
一方、水溶性の未変性のポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物を用いた複層塗膜C-b1(比較例C1)、水溶性の変性ポリカルボジイミドのみを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物を用いた複層塗膜C-b2~C-b6(比較例C2~C6)では、耐水性、外観、及び貯蔵後の塗料組成物を用いた場合における耐水性の全てが良好なものは得られなかった。
[実施例D1]
(複層塗膜D-a1の製造)
1.各塗料組成物の製造
カルボキシ基を有する水性樹脂組成物(Allnex社の商品名「SETAQUA6510」):45g、及び、カルボジイミド組成物PC-a1:30gを混合し、水系塗料組成物(P1)を得た。
また、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物(Allnex社の商品名「SETAQUA6515」):45g、および、カルボジイミド組成物PC-a1:30gを混合し、水系塗料組成物(P2)を得た。
また、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(C-3):16.6g、アクリルポリオール(Allnex社の商品名「SETALUX1767」):50g、及び、酢酸n-ブチル:31.6gを混合し、塗料組成物(P3)を得た。
2.複層塗膜の製造
被塗物として、JIS G 3141(SPCC,SD)カチオン電着塗装板を用いて、水系塗料組成物(P1)を乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C1)を得た。次いで、水系塗料組成物(P2)を、乾燥膜厚20μmになるようにスプレー塗装した後、80℃5分間プレヒートして、未硬化塗膜(C2)を得た。形成された塗膜(C1)及び(C2)の上に、塗料組成物(P3)を乾燥膜厚40μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、150℃30分間焼付けて、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)全てを一度に硬化させて、複層塗膜D-a1を得た。
[実施例D2]
(複層塗膜D-a2の製造)
水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)に含まれるカルボジイミド組成物の種類を表11に示したとおりとした以外は、実施例D1と同様の方法を用いて、複層塗膜D-a2を得た。
得られた複層塗膜の耐水性、塗膜外観及び貯蔵後の水系塗料組成物を用いた塗膜の耐水性を上記に記載の方法を用いて評価した。結果を表11に示す。
Figure 2022086840000015
表11に示すように、水溶性の変性ポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物(P1)及び水系塗料組成物(P2)を用いた複層塗膜C-a1~C-a56(実施例C1~C56)では、耐水性及び外観が特に優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が特に良好に保たれていた。
[実施例E1]
(複層塗膜E-a1の製造)
1.各塗料組成物の製造
カルボキシ基を有する水性樹脂組成物(Allnex社の商品名「SETAQUA6510」):45g、及び、カルボジイミド組成物PC-a1:30gを混合し、水系塗料組成物(P1)を得た。
また、メラミン(Allnex社の商品名「サイメル327」):10.7g、アクリルディスパージョン(Allnex社の商品名「SETAQUA6515」):50g、及び、水:7.7gを混合し、水系塗料組成物(P2)を得た。
また、NTI:8.7g、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(C-3):8.7g、アクリルポリオール(Allnex社の商品名「SETALUX1767」):50g、及び、酢酸n-ブチル:31.6gを混合し、塗料組成物(P3)を得た。
2.複層塗膜の製造
被塗物として、JIS G 3141(SPCC,SD)カチオン電着塗装板を用いて、水系塗料組成物(P1)を乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C1)を得た。次いで、水系塗料組成物(P2)を、乾燥膜厚20μmになるようにスプレー塗装した後、80℃5分間プレヒートして、未硬化塗膜(C2)を得た。形成された塗膜(C1)および(C2)の上に、塗料組成物(P3)を乾燥膜厚40μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、150℃30分間焼付けて、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)全てを一度に硬化させて、複層塗膜E-a1を得た。
[実施例E2]
(複層塗膜E-a2の製造)
1.各塗料組成物の製造
カルボキシ基を有する水性樹脂組成物(Allnex社の商品名「SETAQUA6510」):45g、及び、カルボジイミド組成物PC-a1:30gを混合し、水系塗料組成物(P1)を得た。
また、メラミン(Allnex社の商品名「サイメル327」):10.7g、アクリルディスパージョン(Allnex社の商品名「SETAQUA6515」):50g、及び、水:7.7gを混合し、水系塗料組成物(P2)を得た。
また、LTI:8.7g、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(C-3):8.7g、アクリルポリオール(Allnex社の商品名「SETALUX1767」):50g、及び、酢酸n-ブチル:31.6gを混合し、塗料組成物(P3)を得た。
2.複層塗膜の製造
被塗物として、JIS G 3141(SPCC,SD)カチオン電着塗装板を用いて、水系塗料組成物(P1)を乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C1)を得た。次いで、水系塗料組成物(P2)を、乾燥膜厚20μmになるようにスプレー塗装した後、80℃5分間プレヒートして、未硬化塗膜(C2)を得た。形成された塗膜(C1)および(C2)の上に、塗料組成物(P3)を乾燥膜厚40μmになるようにスプレー塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、150℃30分間焼付けて、未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)全てを一度に硬化させて、複層塗膜E-a2を得た。
得られた複層塗膜の耐水性、塗膜外観及び貯蔵後の水系塗料組成物を用いた塗膜の耐水性を上記に記載の方法を用いて評価した。結果を表12に示す。
Figure 2022086840000016
表12に示すように、水溶性の変性ポリカルボジイミド及び非水溶性のポリカルボジイミドを含むカルボジイミド組成物を硬化剤成分として含む水系塗料組成物(P1)、並びに、トリイソシアネートを含むイソシアネート成分(a)を含む塗料組成物(P3)を用いた複層塗膜C-a1~C-a56(実施例C1~C56)では、耐水性及び外観が特に優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が特に良好に保たれていた。
本実施形態の複層塗膜の形成方法及び複層塗膜によれば、耐水性及び外観が優れ、且つ、貯蔵後の塗料組成物を用いた場合においても耐水性が良好に保たれた複層塗膜を提供することができる。

Claims (12)

  1. 被塗物上に、水系塗料組成物(P1)を塗装し、未硬化塗膜(C1)を得て、前記未硬化塗膜(C1)上に水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C1)、未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、三層からなる複層塗膜を得ること、を含み、
    前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボジイミド組成物を含み、
    前記カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む、複層塗膜の形成方法。
  2. 前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つは、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物を含む、請求項1に記載の複層塗膜の形成方法。
  3. 前記水系塗料組成物(P1)及び前記水系塗料組成物(P2)からなる群より選ばれる少なくとも1つ、及び、前記塗料組成物(P3)は、水酸基を有する水性樹脂組成物を含む、請求項1又は2に記載の複層塗膜の形成方法。
  4. 被塗物上に、水系塗料組成物(P2)を塗装し、未硬化塗膜(C2)を得て、更に前記未硬化塗膜(C2)上に塗料組成物(P3)を塗装し、未硬化塗膜(C3)を得た後、加熱により、前記未硬化塗膜(C2)及び未硬化塗膜(C3)を同時に硬化させて、二層からなる複層塗膜を得ること、を含み、
    前記水系塗料組成物(P2)は、カルボジイミド組成物を含み、
    前記カルボジイミド組成物は、水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)と、非水溶性のポリカルボジイミド(B)と、を含む、複層塗膜の形成方法。
  5. 前記水系塗料組成物(P2)は、カルボキシ基を有する水性樹脂組成物を含む、請求項4に記載の複層塗膜の形成方法。
  6. 前記水系塗料組成物(P2)及び前記塗料組成物(P3)は、水酸基を有する水性樹脂組成物を含む、請求項4又は5に記載の複層塗膜の形成方法。
  7. 前記塗料組成物(P3)は、イソシアネート成分(a)を含み、
    前記水酸基を有する水性樹脂組成物が、前記塗料組成物(P3)に含まれるイソシアネート成分(a)によって、前記未硬化塗膜(C1)、前記未硬化塗膜(C2)及び前記未硬化塗膜(C3)、又は、前記未硬化塗膜(C2)及び前記未硬化塗膜(C3)を硬化させる、請求項3又は6に記載の複層塗膜の形成方法。
  8. 前記イソシアネート成分(a)は、下記一般式(I)で示されるトリイソシアネートを含む、請求項7に記載の複層塗膜の形成方法。
    Figure 2022086840000017
    (一般式(I)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。)
  9. 前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率が、5%超100%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複層塗膜の形成方法。
  10. 前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)に対する前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の質量比(A)/(B)が90/10以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の複層塗膜の形成方法。
  11. 前記非水溶性のポリカルボジイミド(B)の変性率が、前記水溶性の変性ポリカルボジイミド(A)の変性率よりも低い、請求項1~10のいずれか一項に記載の複層塗膜の形成方法。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の複層塗膜の形成方法により形成されてなる、複層塗膜。
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