JP2022084334A - 谷地形用排水構造および暗渠ブロック - Google Patents
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Abstract
【解決手段】谷地形30において谷底30b寄りに形成される法面と谷底30bに設けられる暗渠32とからなる排水構造であって、暗渠32は、暗渠ブロック2と、この暗渠ブロック2の側壁3の外側に配される固形物12群と、を備え、法面は、法面ブロック8と、この法面ブロック8の背面9b側に配される固形物12群と、を備え、暗渠ブロック2は、側壁3の鉛直上方端縁3aに沿って形成される支保面7を備え、法面ブロック8は、暗渠ブロック2の支保面7に掛止されている谷地形用排水構造1Aによる。
【選択図】図1
Description
このように短期間に生じる雨量が通常時と比較して多い場合は、土中への雨水の浸透が追い付かず、表土上又は表土中を雨水が流動する。この結果、特に谷地形において傾斜面の崩壊や土石流等が生じ易くなる。
このような課題に対処するための先願としては、以下に示すようなものが知られている。
特許文献1に開示される発明である水路ブロックは、同文献中の図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、斜面(1)の高さ方向の途中に設けられた小段(1c)の、谷側(2b)から山側(2a)にかけて低くなる上面(2)における該小段(1c)の上側斜面(1a)との境界部(2c)に縦列設置された状態において、該小段上面(2)に開口(4)の谷側の縁(4b)が配置される、扁平凹形の横断面を有することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1に開示される水路ブロックによれば、斜面の高さ方向の途中に設けられた小段の、谷側から山側にかけて低くなる上面における該小段の上側斜面との境界部に縦列設置された状態において、該小段上面に開口の谷側の縁が配置される、扁平凹形の横断面を有する。このため、特許文献1に開示される発明によれば、小段上面における上側斜面との境界部を深く掘り下げることなく、排水路を敷設できる。このため、上側斜面を不安定な状態にすることなく、排水設備を安全に施工できる。しかも、特許文献1に開示される発明によれば、水路ブロックを水密に接合することは比較的容易であり、また、水路ブロック同士を水密に接合しておけば、その継目位置から地山に水が浸透するおそれもない。更に、特許文献1に開示される発明によれば、敷設された排水路は、横断面が扁平凹形の長い溝となり、この溝が通常の通水部として機能するため、傾斜する小段上面と上側斜面とで形成された鈍角の境界部を通水部とした場合に比べ、その排水・通水性能は格段に優れたものとなる。
特許文献2に開示される箱型擁壁は、同文献中の図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、法面10に沿って階段状に積み上げられた複数の段z1,z2を含み、各段z1,z2は、表面板2と後方の控板3とそれらを繋ぐ繋ぎ板4,4とを含み構成された箱型擁壁用ブロック1が法面10の手前に左右に複数並べられるとともに、表面板2から法面10までの間の空所6,7,8に充填石材19が充填されて構築されている。最下段z1の箱型擁壁用ブロック1の下に、左右に延び、左右長さ1m当たりの貯水容量が0.4~4m3であり、貯水槽上面部から貯水槽内に水が入り、周囲地盤11の土砂が貯水槽内に実質的に入らない貯水槽14が設けられていることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される発明によれば、ゲリラ豪雨などにより想定外の雨量が短時間に生じても、箱型擁壁の下に一時的に所定量以上の雨水や湧水を貯水することにより、基礎地盤の流出及び応力度低下を防ぎ、基礎地盤や背面地盤の安定性を維持することができる。
特許文献3に開示される発明は、同文献中の図3に記載される符号をそのまま用いて説明すると、法面Aの傾斜下方に配設される排水溝ブロック1と、この法面Aに沿設状態に設置して法面Aを被覆する壁面ブロック2とから成り、この壁面ブロック2の下端部を、排水溝ブロック1の側端部に連結せしめる連結構造3を壁面ブロック2の下端部と排水溝ブロック1の側端部とのいずれか一方若しくは双方に設けると共に、この連結構造3は、排水溝ブロック1に対して壁面ブロック2の連結角度を調整変更可能な構造としたことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献3に開示される発明によれば、法面保護用の壁面ブロックと排水溝ブロックとを連結できるように構成して壁面ブロックと排水溝ブロックとを一体的にして法面に設置固定できるようにするとともに、排水溝ブロックに対して壁面ブロックを角度調整変更可能に連結し得る構成としたことで、どのような角度の法面に対しても良好に対応して設置施工できるという効果を奏する。
このため、集中豪雨やゲリラ豪雨が発生した際に、地山の表層上又は表層中を流動する雨水により特許文献1に開示される水路ブロックと土の境界部分に洗堀が起こり、当該ブロックからなる排水路が崩壊してしまう懸念がある。
このため、集中豪雨やゲリラ豪雨が発生した場合で、かつ貯水槽に集められる雨水が貯水槽の容量を超えた場合、行き場を失った雨水が箱型擁壁用ブロック内に滞留し、さらにこの状態が続くことで箱型擁壁用ブロックを表面側(表面板側)に向かって崩壊させてしまう懸念がある。
しかしながら、特許文献3に開示される発明において壁面ブロックが方形枠体からなる場合、枠内開口部から裸出する地面を保護するものとして草木が想定されている。このため、この草木の生育が不十分である場合や、草木が枯死する期間(例えば冬季)に集中豪雨やゲリラ豪雨が起きた際に、壁面ブロックを構成する方形枠体の枠内開口部から土が流出して排水溝ブロック内に溜まり、排水溝ブロック内の水の流れを妨げる懸念があった。
また、第1の発明では、暗渠ブロックの鉛直上方側が一対の法面ブロックにより挟持された状態となる。この場合、谷地形の一方の傾斜面においてこの傾斜面を崩壊させるような土圧が生じた際に、この土圧を暗渠ブロック及び他方の法面ブロックを介して他方の傾斜面で間接的に支えるという作用を有する。これにより、谷地形における谷底側の傾斜面が崩壊するのを好適に抑制するという作用を有する。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。加えて、暗渠ブロックが一対の突条を備え、かつこの突条に支保面が形成される場合又は側壁と突条に跨って支保面が形成される場合は、支保面が暗渠ブロックの側壁にのみ形成されている場合に比べて、暗渠ブロックにおいて第1の通水孔が形成される側壁の面積を相対的に大きくなる。この場合、第2の発明において谷底側の土と暗渠ブロックの接触面積が増大し、暗渠ブロックへの集水効率又は暗渠ブロックからその周囲の土中への排水効率が向上する。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。加えて、第3の発明によれば、第1の通水孔を水の流れと略平行な細長形状にする場合に比べて、谷底側の土から暗渠ブロックへの集水効率を向上させるという作用を有する。
上記構成の第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。加えて、第4の発明は、暗渠ブロックの天井壁に貫通孔を有していないことで、天井壁が貫通孔を有している場合に比べて、天井壁の強度を高めるという作用を有する。つまり、暗渠ブロックの天井壁に側壁側から圧縮するような力が作用した際の暗渠ブロックの強度が高くなる。
この結果、暗渠ブロックの支保面に掛止される法面ブロック及びその背面側の土(法面ブロックの埋土)を長期間にわたり安定した状態で支え続けるという作用を有する。
上記構成の第5の発明は、上述の第1乃至第4の発明に用いられる暗渠ブロックを物の発明として特定したものであり、その作用は第1の発明における暗渠ブロックによる作用と同じである。
上記構成の第6の発明は、上述の第2の発明に用いられる暗渠ブロックを物の発明として特定したものであり、その作用は第2の発明における暗渠ブロックによる作用と同じである。
また、第1の発明では、その暗渠を構成する暗渠ブロックの天井壁上が実質的に谷底となる。そして、上記の通り第1の発明では、谷底側に集まる雨水等は通常暗渠内(暗渠ブロックの中空部内)を流動して排水される。他方、第1の発明が設けられる谷底地形の近辺で短時間に想定を上回る降雨があった場合は、暗渠ブロックの天井壁上が第2の排水路となって雨水が排水される。この場合、第2の排水路の水底はコンクリート製の天井壁であり、かつ上記第2の排水路を構成する川岸も同じくコンクリート製の法面ブロックを備えてなる法面である。このため、この第2の排水路を雨水が流れる際の谷底及びこの谷底に隣接する傾斜面(法面)の浸食や崩壊を好適に防ぐことができる。
さらに、第1の発明では、暗渠ブロックの鉛直上方側が一対の法面ブロックで挟持された状態で谷地形の谷底側に設置される。この場合、谷地形をなす一方の法面をその背面側から押し崩そうとする土圧が生じた際に、この土圧を他方の法面側の傾斜面で受け止めて支えることができる。つまり、第1の発明によれば、暗渠ブロックを介して谷底側の法面が互いに支え合う構造が実現される。この結果、谷地形の谷底側の排水を良好に維持しつつ、長期間にわたってその地形を安定した状態で維持することができる。
この結果、第3の発明によれば、谷底側の土中からの排水性がより優れた谷地形用排水構造を提供することができる。
このため、谷地形に第4の発明に係る谷地形用排水構造を設けることで谷地形の谷底側の保護効果が高まる。
よって、第5の発明による効果は、第1の発明における暗渠ブロックの効果と同じである。
よって、第6の発明による効果は、第2の発明における暗渠ブロックによる効果と同じである。
はじめに、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aについて図1乃至図4を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る谷地形用排水構造をその流路を横断する方向から見た断面図である。また、図2は本発明の実施形態に係る谷地形用排水構造における暗渠ブロック及び法面ブロックの連関を示す斜視図である。さらに、図3は本発明の実施形態に係る谷地形用排水構造における暗渠ブロックの斜視図である。加えて、図4(a)は本発明の実施形態に係る谷地形用排水構造における法面ブロックを正面側からみた斜視図であり、(b)は同法面ブロックを背面側からみた斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aは、主に谷地形30において谷底の地中に埋設される暗渠32と、この暗渠32に連続して形成される一対の法面33,33により構成される排水構造である。
また、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにおける暗渠32は主に、例えば図1に示すように、暗渠ブロック2と、この暗渠ブロック2の外側に配され、個々の固形物12からなる固形物12群とにより構成されている。
さらに、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにおける暗渠ブロック2は、例えば図1乃至図3に示すように、鉄筋コンクリートからなる一対の側壁3,3と、同じく鉄筋コンクリートからなり一対の側壁3,3におけるそれぞれの鉛直上方端縁同士をつなぐ天井壁4と、それぞれの側壁3の厚み方向を貫通して設けられ、側壁3の厚み方向に水を移動させる第1の通水孔5と、側壁3,3の鉛直上方端縁に沿って形成され、法面33を構成する法面ブロック8を掛止するための支保面7とを備えてなるものである。
また、上述の暗渠ブロック2における支保面7は、図1乃至図3に示すように、側壁3,3の鉛直上方端縁に沿って形成される平坦面である。なお、暗渠ブロック2に形成される支保面7は、暗渠ブロック2を谷底の土中に埋設した際に、その谷地形30の傾斜面30aに向かって傾斜するよう形成されている(図1を参照)。
さらに、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにおける法面ブロック8は、例えば図1,2,4に示すように、谷地形30の谷底30bに近接する位置において法面33を形成する平板9と、この平板9の背面9b側に突設され、法面33に平板9を固定する控え10と、平板9の厚み方向を貫通して設けられ、同方向に水を移動させる第2の通水孔11と、を備えている。
なお、法面ブロック8の控え10は、法面33に平板9を固定しておくためのアンカーとして作用する。さらに、この控え10は、法面33を形成する際に平板9を自立可能に支持するという作用も有する。
つまり、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、図1に示すように、その流路を遮る方向から谷地形用排水構造1Aを見た際に、暗渠ブロック2の鉛直上方寄りにおいて法面ブロック8の平板9が逆ハ字状に配された状態になる。
本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aは、以下に示すような手順で山地等の谷地形30に設置することができる。
より具体的には、山地や人工的に形成された谷地形30における図示しない谷筋を掘削して図1に示すような一対の内側面31a,31aと底面31bとを備える掘削溝31を形成する(ステップS1)。
この後、必要に応じて掘削溝31の底面31bに、例えば砕石や、掘削溝31の形成時に土中から出た自然石等からなる固形物12(固形物12群)を敷設してから、この固形物12群上に、天井壁4を鉛直上方に向けた状態で暗渠ブロック2を設置する(ステップS2)。つまり、暗渠ブロック2における側壁3の上方端縁3aを鉛直上方側に配するとともに、下方端縁3bを掘削溝31の底面31b上に配した状態で設置する。
また、複数の暗渠ブロック2を用いる場合は、掘削溝31の底面31b上に、その中空部を互いに連通させながら複数の暗渠ブロック2を直列状に配すればよい。
なお、掘削溝31の底面31bが特に硬い地盤や地層からなり、流水により容易に浸食されない場合は、底面31b上に固形物12群を敷設することなく直に暗渠ブロック2を載置してもよい。
この時、側壁3に形成される第1の通水孔5に隣接して配される固形物12は、この第1の通水孔5を通過しない大きさである必要がある。
さらに、上記ステップS3の後、掘削溝31を形成する際に生じた土の一部を暗渠ブロック2の側壁3の外側に配設される固形物12群と、掘削溝31の内側面31aとの間に埋土13aとして戻すことで、掘削溝31内への暗渠ブロック2の設置作業が完了する(ステップS4)。
このとき、掘削溝31内に埋設される暗渠ブロック2の鉛直上方側に設けられる支保面7は、埋土13a及び固形物12群中に埋設されることなく裸出させておく必要がある。
加えて、掘削溝31内に埋設される暗渠ブロック2の外側における埋土13aの上面は、以降の工程において法面ブロック8を設置可能にすべく平坦状にしておくとよい。
なお、上記ステップS1~ステップS4までが本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにおける暗渠32を形成する工程である。
より具体的には、先のステップS4の後、暗渠ブロック2と掘削溝31の内側面31aの間に埋め戻された埋土13a上に、法面ブロック8を載置する。この時、埋土13a及び固形物12群から裸出している暗渠ブロック2の支保面7に、法面ブロック8の平板9を掛止することで、より詳細には法面ブロック8における平板9の正面9aを支保面7に掛止することで、暗渠ブロック2と法面ブロック8を連係させることができる(ステップS5)。
この場合、暗渠ブロック2の支保面7の平面方向と、この支保面7に掛止される法面ブロック8の平板9(正面9a)の平面方向は平行(略平行の概念を含む)になる。
つまり、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aを、その流路を遮る方向から見た場合に、暗渠ブロック2の鉛直上方側に、一対の法面ブロック8,8を構成する平板9が、逆ハ字状をなすように配される(図1を参照)。
このとき、平板9の背面9bにおいて第2の通水孔11に隣接して配される固形物12は、この第2の通水孔11を通過しない大きさである必要がある。
さらに、上記ステップS6の後、掘削溝31を形成する際に生じた土の一部を法面ブロック8の背面9b側に配される固形物12群と、掘削溝31の内側面31aの間に埋土13bとして戻すことで、掘削溝31内への法面ブロック8の設置作業が完了する(ステップS7)。
なお、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aを構成する暗渠ブロック2及び法面ブロック8の最少単位は、1つの暗渠ブロック2と2つの法面ブロック8からなる組み合わせであるが、谷地形用排水構造1Aの設置対象に応じて暗渠ブロック2及び法面ブロック8の数を適宜変更してよい。
また、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、暗渠ブロック2の流路方向における長さを、同方向における法面ブロック8の長さと略同一に設定している場合を例に挙げて説明しているが、これらは必ずしも一致していなくともよい。
さらに、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、暗渠ブロック2の流路方向における端部位置と、同方向における法面ブロック8の端部位置を略一致させながらこれらを配設する場合を例に挙げて説明しているが、暗渠ブロック2の端部位置と法面ブロック8の端部位置は一致していなくともよい。つまり、暗渠ブロック2の端部同士からなる隙間をふさぐように法面ブロック8の平板9を配設してもよい。
上述のような本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは通常、暗渠ブロック2の側壁3,3の外側に配される埋土13a中の水が、第1の通水孔5を通じて暗渠ブロック2の中空部内に集水され、この後暗渠ブロック2の中空部内を通じて谷地形30の外に排出される。
このとき、暗渠ブロック2の側壁3と埋土13aの間に固形物12群が介設されていることで、埋土13aの一部が土中水とともに暗渠ブロック2の中空部内に流入するのを防ぐことができる。つまり、暗渠ブロック2における側壁3の外側に配される固形物12群は、埋土13a中に暗渠ブロック2を係止しておくためのアンカーとしての作用に加えて、暗渠ブロック2内への埋土13aの流入を防ぐためのフィルターとしても作用する。
また、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、暗渠ブロック2からなる法面33の底は、例えば図1に示すように固形物12群等からなる洗堀防止材が敷詰められている、あるいは谷地形30に自然に存在する硬い地層や岩盤が裸出した状態になる。このため、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、谷地形30の谷底30bが水流によって浸食され難いので、その周辺が地滑りを起こしたり、崩壊したりするリスクは極めて小さい。
そして、暗渠ブロック2の天井壁4上に排出された土中水は、一対の法面ブロック8,8及び暗渠ブロック2の天井壁4からなる水路(第2の水路)を通じて、谷地形30の外に排出される。
この場合、法面ブロック8と埋土13bの間に固形物12群が介設されていることで、埋土13bの一部が土中水とともに法面ブロック8の正面9a側に流出するのを防ぐことができる。つまり、法面ブロック8の平板9の背面9b側に配される固形物12群は、埋土13b中に法面ブロック8を係止しておくためのアンカーとしての作用に加えて、法面ブロック8の正面9a側への埋土13bの流出を防止するためのフィルターとしても作用する。
この場合、暗渠ブロック2の天井壁4は鉄筋コンクリートからなるため、上述のように第2の水路として用いる場合でも、天井壁4が浸食されるおそれがほとんどない。
さらに、暗渠ブロック2の天井壁4上を水が流れる場合、対をなす法面ブロック8の正面9a側が一時的に川岸となるが、この川岸も鉄筋コンクリートからなる平板9で保護されているため水流で浸食されるおそれはほとんどない。
よって、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aによれば、通常時も非常時も排水性を良好に維持しながら谷地形30の谷底30b側を強固に保護することができる。
この結果、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aによれば、谷地形30の排水性を良好に維持しつつ、その地形を長期間にわたり安定した状態で保全することができる。
さらに、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、その流路を遮る方向から見た際に、一対の法面33が暗渠ブロック2を介して互いに支え合うように形成されている。よって、この点からも法面33の崩壊を好適に抑制することができる。
さらに、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにおける暗渠ブロック2は、対をなす法面ブロック8,8により挟持されているため、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aの設置後に、周囲の土圧により暗渠ブロック2の位置が意図せずずれるという不具合も生じ難い。
よって、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aによれば、上記点からも安定性に優れた排水構造を提供することができる。
本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aを構成する暗渠ブロック2及び法面ブロック8の大きさを特定する必要は特にないが、例えば図5に示すように暗渠ブロック2及び法面ブロック8の大きさをメートル単位の大きさに設定してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、暗渠32を構成する暗渠ブロック2の天井壁4上(天面4a)は、通常時は水が流れていないので、谷地形用排水構造1Aの周辺の山地等の監視や管理、あるいはメンテナンスのための人の往来が可能な通路として使用できる。
よって、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aによれば、利便性に優れた排水構造を提供することができる。
[2-1;暗渠ブロックに形成される突条について]
先の図1乃至図3及び図5に示すように、本実施形態に係る暗渠ブロック2は、その側壁3の上方端縁3a(鉛直上方端縁)に沿って形成される突条6を備えるとともに、この突条6の外側面に支保面7を備えていてもよい(任意選択構成要素)。あるいは、本実施形態に係る暗渠ブロック2は特に図示しないが、上記突条6の外側面と側壁3の外側面に跨って支保面7が形成されていてもよい(任意選択構成要素)。
いずれの場合も、本実施形態に係る暗渠ブロック2が突条6を有することなく、かつ側壁3の外側面の上方端縁3aに沿って支保面7を備えている場合に比べて、側壁3の外側面の面積を相対的に大きくすることができる。
この場合、暗渠ブロック2が突条6を有しない場合に比べて、第1の通水孔5の形成領域が相対的に広くなる。この結果、暗渠ブロック2への集水効率を向上させるとともに、暗渠ブロック2から埋土13aへの排水効率も向上させることができる。
この場合、法面ブロック8の平板9により保護することができる鉛直上方側のエリアを広げることができる。この場合は、暗渠ブロック2や法面ブロック8の大きさを極力小さくしながら、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにより谷地形30の谷底30b側の広い範囲を保護することができる。
さらに、本実施形態に係る暗渠ブロック2において側壁3に形成される第1の通水孔5は、先の図1乃至図3及び図5に示すように、掘削溝31の底面31b上に設置した際に、鉛直方向に細長い形状をなすものを複数本並設してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、先の図1乃至図3及び図5に示すように、暗渠ブロック2の側壁3の外観は鉛直方向に複数の棒が並設された柵状をなす。
そして、本実施形態に係る暗渠ブロック2において第1の通水孔5が上記のように形成される場合は、第1の通水孔5が谷地形用排水構造1Aの流路と平行にかつ細長形状をなすように複数本並設される場合に比べて、埋土13aから暗渠ブロック2内への集水効率を向上させるとともに、暗渠ブロック2から埋土13aへの排水効率も向上させることができる。
よって、上述のような暗渠ブロック2を備える谷地形用排水構造1Aによれば、埋土13aから暗渠ブロック2への集水効率が高く、かつ暗渠ブロック2から埋土13aへの排水効率が高い排水構造を提供することができる。
先の図1乃至図3及び図5に示すように、本実施形態に係る暗渠ブロック2の天井壁4は、貫通孔を有しない厚板状の壁体であってもよい(任意選択構成要素)。
この場合、暗渠ブロック2の天井壁4が貫通孔を有する場合に比べて、天井壁4の強度及び剛性を高くすることができる。
また、先にも述べた通り、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aでは、暗渠ブロック2の天井壁4を介して、対をなす法面ブロック8同士が互いに支え合っている。
よって、暗渠ブロック2の天井壁4の強度及び剛性が高いということは、相対して配される法面ブロック8同士が互いに支え合う力も大きくなることを意味している。
したがって、貫通孔を有しない厚板状の壁体からなる天井壁4を備える暗渠ブロック2を用いる場合は、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aにおける暗渠ブロック2と法面ブロック8からなる連係構造の強度を向上させることができる。
よって、上述のような暗渠ブロック2を備える谷地形用排水構造1Aによれば、谷地形30の谷底30bの保護効果及び補強効果が一層優れた排水構造を提供することができる。
続いて、図6を参照しながら本実施形態に係る谷地形用排水構造1Aに用いられる暗渠ブロック2の変形例について説明する。
図6(a)は本発明に係る暗渠ブロックの第1の変形例を示す斜視図であり、(b)は本発明に係る暗渠ブロックの第2の変形例を示す斜視図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
変形例1に係る暗渠ブロック2’は、図6(a)に示すように側壁3の上方端縁3aに形成される突条6の所望箇所に凹部6aを備えていてもよい(任意選択構成要素)。
図6(a)に示すような変形例1に係る暗渠ブロック2’は、先の図1,2に示すような谷地形用排水構造1Aにおいて暗渠32を形成する暗渠ブロック2の代替品として用いることができるだけでなく、暗渠ブロック2’の上下方向を反転させることで浸透排水用の明渠ブロックとしても用いるもとができる。
変形例1に係る暗渠ブロック2’は、突条6が凹部6aを備えていることで、突条6の稜線部分が鋸歯状をなす。このため、暗渠ブロック2’を浸透排水用の明渠ブロックとして用いる際に、設置面(例えば土中に形成された掘削面)に鋸歯状をなす突条6の稜線部分を押し付けることで、暗渠ブロック2’の設置時の安定性を向上させることができる。つまり、暗渠ブロック2’の使用時に、意図しない位置ずれが生じるのを防ぐことができる。
よって、変形例1に係る暗渠ブロック2’によればより汎用性及び機能性が高い暗渠ブロックを提供することができる。
図7は変形例2に係る暗渠ブロックを用いてなる本発明に係る谷地形用排水構造の要部の斜視図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図7に示すように、図6(b)に示す変形例2に係る暗渠ブロック2”を用いる場合も、その支保面7に法面ブロック8の平板9を掛止させることで変形例に係る谷地形用排水構造1Bを形成することができる。
よって、突条6を有しない暗渠ブロック2”も、先の図1乃至図3及び図5に示す暗渠ブロック2と同じ作用・効果を奏する。
先の図1,2及び図5では、暗渠ブロック2上に法面ブロック8を1段のみ配する場合を例に挙げて説明しているが、暗渠ブロック2上に配される法面ブロック8は2段以上の複数段でもよい(任意選択構成要素)。この点について図8,9を参照しながら詳細に説明する。
図8は本発明の他の変形例に係る谷地形用排水構造における暗渠ブロック及び法面ブロックの連関を示す斜視図である。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
先の図4(a),(b)に示すように、本発明に係る法面ブロック8は、その平板9の上方端縁9cの長手方向に沿って切欠き9fを設けておいてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、図8に示すように、暗渠ブロック2の支保面7に掛止された法面ブロック8の上方端縁9cに、さらに新たな法面ブロック8を掛止してこれらを連係させることができる。
このような法面ブロック8を鉛直上方側に複数段連係させてなる本発明に係る谷地形用排水構造1Cによれば、谷地形30の谷底30b寄りの広範囲に法面33を形成することができる。
また、図8に示すような本発明の変形例に係る谷地形用排水構造1Cによれば、谷地形30の谷底30b寄りの広範囲に法面33を形成する必要がある場合でも、個々の法面ブロック8の平板9の平面サイズを大型化する必要がない。
このため、本発明の変形例に係る谷地形用排水構造1Cの施工性を大幅に向上させることができる。
また、図8に示すような法面ブロック8を用いる場合は、暗渠ブロック2の鉛直上方側において複数段の法面ブロック8を連係させる場合に、平板9が切欠き9f備えていることで鉛直方向における法面ブロック8の位置決めを正確かつ容易に行うことができる。
図9は本発明の別の変形例に係る谷地形用排水構造における暗渠ブロック及び法面ブロックの連関を示す斜視図である。なお、図1乃至図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
平板9の上方端縁9cに切欠き9fを備えていない法面ブロック8’を用いる場合は、図9に示すように、その平板9の上方端縁9cの背面9b側に、他の法面ブロック8’の平板9の下方端縁9dの背面9b側を接触させてこれらを連係させればよい。なお、同様の手順により暗渠ブロック2上に2段以上の法面ブロック8’を配することができる。
そして、図9に示すような法面ブロック8’を鉛直上方側に複数段連係させてなる本実施形態に係る谷地形用排水構造1Dによれば、先の図8に示す谷地形用排水構造1Cと同様の作用・効果を発揮させることができる。
また、特に図9に示すような法面ブロック8’を用いる場合は、その成形時に平板9に切欠き9fを形成する必要がないので、法面ブロック8’を形成する平板9の強度低下を防ぐことができる。加えて、法面ブロック8’を成型するための金型をシンプルにできるというメリットも有する。
よって、本実施形態に係る谷地形用排水構造1Dによれば、特にその法面の強度を高めつつ、法面ブロック8’の製造コストを廉価にできる。この結果、強度と安定性に優れた谷地形用排水構造1Dの施工費用を廉価にできる。
なお、本実施形態に係る谷地形用排水構造(例えば図1に示す谷地形用排水構造1A)では、暗渠ブロック2の側壁3の外側に配される固形物12群と掘削溝31の内側面31aの間に埋土13aを入れる場合を例に挙げて説明しているが、固形物12群と埋土13aの間に、固形物12群よりも平均粒径が小さい粒状物群を介設してもよい。これと同様に、法面ブロック8の背面9b側に配される固形物12群と埋土13bの間にも固形物12群よりも平均粒径が小さい粒状物群を介設してもよい(粒状物群はいずれも任意選択構成要素)。
この場合、本実施形態に係る谷地形用排水構造が、固形物12群に加えて粒状物群(図示せず)を備えていることで、固形物12群のみを備える場合に比べてより優れたフィルター効果を発揮させることができる。
よって、本実施形態に係る谷地形用排水構造が固形物12群に加えてさらに粒状物群を備えている場合は、暗渠ブロック2の中空部内に埋土13aが溜まるのを防ぐことができる。同様に、本実施形態に係る谷地形用排水構造において暗渠ブロック2の天面4aと、一対の法面33,33からなる第2の排水路内に埋土13bが溜まるのを防ぐことができる。
この結果、本実施形態に係る谷地形用排水構造の使用時に、排水路に流入した埋土13aや埋土13bによる詰まりが生じ難い谷地形用排水構造を提供することができる。
その際、本実施形態に係る谷地形用排水構造を構成する暗渠ブロック(暗渠ブロック2~2”等)及び法面ブロック(法面ブロック8,8’等)は、必ずしもメートル単位の大きさである必要はなく、その使用目的に応じて1メートル未満(数十センチ単位)の大きさであってもよい。
また、本実施形態に係る谷地形用排水構造を構成する暗渠ブロック(暗渠ブロック2~2”等)及び法面ブロック(法面ブロック8,8’等)は、その使用目的に応じた十分な強度を有するのであれば、鉄筋を有しないコンクリート製であってもよい。
また、本実施形態では埋土13a,13bとして、例えば堀削溝31を形成する際に生じた土を用いる場合を例に挙げて説明しているが、埋土13a,13bは必ずしも土である必要はなく、固形物12群と同様の砕石や、所望サイズの自然石、あるいは、廃コンクリート破砕物を必要に応じて分級した物、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を用いることができる。
Claims (6)
- 谷地形において谷底寄りに形成される法面と前記谷底に設けられる暗渠とからなる排水構造であって、
前記暗渠は、
コンクリートからなる一対の側壁と、コンクリートからなり一対の前記側壁の鉛直上方端縁同士をつなぐ天井壁と、前記側壁の厚み方向を貫通して設けられ同方向に水を移動させる第1の通水孔と、を備えてなる暗渠ブロックと、
前記暗渠ブロックの前記側壁の外側に配され、個々の固形物からなる固形物群と、を備え、
前記法面は、
コンクリートからなり前記谷底寄りにおいて前記法面を形成する平板と、前記平板の背面側に突設され、前記法面に前記平板を固定する控えと、前記平板の厚み方向を貫通して設けられ同方向に水を移動させる第2の通水孔と、を備えてなる法面ブロックと、
前記平板の前記背面側に配され、個々の固形物からなる固形物群と、を備え、
前記暗渠ブロックは、前記側壁の前記鉛直上方端縁に沿って形成され、前記谷地形の傾斜面に向かって傾いている支保面を備え、
前記法面ブロックの前記平板は、前記暗渠ブロックの前記支保面に掛止されていることを特徴とする谷地形用排水構造。 - 前記暗渠ブロックは、前記側壁の前記鉛直上方端縁に沿って形成される突条を備え、
前記支保面は、前記突条に、又は、前記側壁と前記突条に跨って、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の谷地形用排水構造。 - 前記暗渠ブロックの前記第1の通水孔は、鉛直方向に細長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の谷地形用排水構造。
- 前記暗渠ブロックの前記天井壁は、貫通孔を有していないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の谷地形用排水構造。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の谷地形用排水構造に用いられる前記暗渠ブロックであって、
前記暗渠ブロックは、
前記側壁と、前記天井壁と、前記第1の通水孔と、前記側壁に設けられる前記支保面と、を備えていることを特徴とする暗渠ブロック。 - 前記暗渠ブロックは、前記側壁の前記鉛直上方端縁に沿って形成される突条を備え、
前記支保面は、前記突条に、又は、前記側壁と前記突条に跨って、形成されていることを特徴とする請求項5に記載の暗渠ブロック。
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