JP2022082025A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪用軸受装置において、スリンガがハブ軸の所定位置から車両インナ側へ移動し玉に接触した場合に、玉に傷がつくのを抑制する。【解決手段】車輪用軸受装置10は、車輪が取り付けられるフランジ56を車両アウタ側に有するハブ軸11と、ハブ軸11の径方向外側に設けられている外輪12と、ハブ軸11と外輪12との間に設けられている複数の玉13と、複数の玉13を保持する保持器14と、外輪12に取り付けられている環状のシール部材20と、ハブ軸11に外嵌して取り付けられシール部材20が滑り接触する環状のスリンガ30と、を備え、スリンガ30は、径方向に延びる円環部32と、当該円環部32から車両インナ側に延びる筒部31と、を有し、筒部31の車両インナ側の端面の全周に、車両アウタ側に凹んで湾曲し玉13に面接触可能な凹曲面33が形成されている。【選択図】図2
Description
本発明は、車輪用軸受装置に関するものである。
自動車等の車両において、車輪を回転自在に支持するために車輪用軸受装置(ハブユニット)が用いられている。車輪用軸受装置は、車輪が取り付けられるフランジを車両アウタ側に有するハブ軸と、このハブ軸の径方向外側に設けられている外輪と、ハブ軸と外輪との間に設けられている複数の玉(転動体)と、複数の玉を保持する保持器と、ハブ軸と外輪との間に設けられる密封装置を備えている。密封装置は、複数の玉が設けられている軸受内部に、泥水等の異物が軸受外部から浸入するのを防ぐために設けられており、ハブ軸に環状のスリンガ(ステンレス製)を取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
スリンガは、ハブ軸の一部に外嵌して取り付けられ、緊迫力のみでハブ軸に保持されているため、車両が走行すると、やがてスリンガが車両インナ側へ移動することがある(以下、この現象をウォークアウトとも称する)。スリンガがウォークアウトすると、スリンガの車両インナ側の端部が玉に接触し、玉に傷がつく場合がある。玉の傷は、車輪用軸受装置の回転抵抗の増加や異音発生の原因となり、車輪用軸受装置の寿命を低下させる原因ともなる。
そこで、図9に示すように、スリンガ92に爪部93を設け、爪部93をハブ軸90の外周の一部91に係合させることで、スリンガ92の車両インナ側への移動を抑制する対策が講じられている車輪用軸受装置80がある。車輪用軸受装置80では、スリンガ92の車両インナ側への移動を抑制することで、玉94に傷がつくのを防止することができる。
本発明では、車輪用軸受装置において、スリンガがハブ軸の所定位置から車両インナ側へ移動し玉に接触したとしても、玉に傷がつくのを抑制することができる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
本発明の車輪用軸受装置は、車輪が取り付けられるフランジを軸方向一方側に有するハブ軸と、前記ハブ軸の径方向外側に設けられている外輪と、前記ハブ軸と前記外輪との間に設けられている複数の玉と、前記複数の玉を保持する保持器と、前記外輪の軸方向一方側に取り付けられている環状のシール部材と、前記ハブ軸に外嵌して前記フランジの軸方向他方側に取り付けられ、前記シール部材が滑り接触する環状のスリンガと、を備え、前記スリンガは、径方向に延びる円環部と、当該円環部から軸方向他方側に延びる筒部と、を有し、前記筒部の軸方向他方側の端面の全周に、軸方向一方側に凹んで湾曲し前記玉に面接触可能な凹曲面が形成されている。
この車輪用軸受装置によれば、スリンガがハブ軸の所定位置から車両インナ側へ移動した場合に、スリンガの凹曲面に玉を面接触させることができる。これにより、スリンガと玉との接触面圧を抑えることができ、スリンガがウォークアウトしたとしても、玉に傷がつくのを抑制することができる。
また、前記凹曲面は、前記玉の半径以上の曲率半径で形成されていると好ましい。
この構成によれば、凹曲面と玉とを面接触させることができ、スリンガと玉との接触面圧を抑えることが可能となる。
この構成によれば、凹曲面と玉とを面接触させることができ、スリンガと玉との接触面圧を抑えることが可能となる。
また、前記凹曲面は、当該凹曲面の径方向内端より外側かつ径方向外端より内側で前記玉に接触すると好ましい。
この構成によれば、凹曲面の径方向両端部に存在するエッジ状の部位が玉に接触することがないため、凹曲面と玉とを確実に面接触させることができ、スリンガと玉との接触面圧を確実に抑えることが可能となる。
この構成によれば、凹曲面の径方向両端部に存在するエッジ状の部位が玉に接触することがないため、凹曲面と玉とを確実に面接触させることができ、スリンガと玉との接触面圧を確実に抑えることが可能となる。
また、前記スリンガは、前記筒部の軸方向他方側の端部に、前記玉に比べて硬度が低い材料からなる異質部を有し、前記異質部に前記凹曲面が形成されていると好ましい。
この構成によれば、スリンガが玉に接触した場合に、スリンガ側を摩耗させることができる。これにより、スリンガとの接触により玉に傷がつくのをより確実に抑制することができる。
この構成によれば、スリンガが玉に接触した場合に、スリンガ側を摩耗させることができる。これにより、スリンガとの接触により玉に傷がつくのをより確実に抑制することができる。
本発明によれば、車輪用軸受装置において、スリンガがハブ軸の所定位置から車両インナ側へ移動し玉に接触したとしても、玉に傷がつくのを抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
[車輪用軸受装置の全体構成]
図1は車輪用軸受装置の断面図である。この車輪用軸受装置(ハブユニット)10は、例えば自動車の車体側の懸架装置(ナックル)に取り付けられ、車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置10は、ハブ軸11と、外輪12と、玉13と、保持器14と、密封装置15,17とを備えている。図1に示す密封装置15は、後で説明する第一実施形態に係るスリンガ30を備えている。
図1は車輪用軸受装置の断面図である。この車輪用軸受装置(ハブユニット)10は、例えば自動車の車体側の懸架装置(ナックル)に取り付けられ、車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置10は、ハブ軸11と、外輪12と、玉13と、保持器14と、密封装置15,17とを備えている。図1に示す密封装置15は、後で説明する第一実施形態に係るスリンガ30を備えている。
外輪12は、円筒状の部材であり、例えば機械構造用炭素鋼により製造されている。外輪12は、円筒形状である外輪本体51と、この外輪本体51から径方向外側に延びて設けられている固定用のフランジ部52とを有している。このフランジ部52が車体側部材であるナックル(図示せず)に固定されることで、外輪12を含む車輪用軸受装置10はナックルに固定される。
車輪用軸受装置10が車体側に固定された状態で、ハブ軸11が有する後述の車輪取り付け用のフランジ56側が車両の外側となる。つまり、図1の左側(フランジ56側)が車両アウタ側となり、図1の右側が車両インナ側となる。また、外輪12の中心線C(以下、軸受中心線Cという。)の方向が(図1では左右方向)が車輪用軸受装置10の軸方向となる。また、この軸方向に直交する方向が、車輪用軸受装置10の径方向となる。本説明では、車輪用軸受装置10においてフランジ56が形成されている側の軸方向一方側を車両アウタ側と定義し、その反対側の軸方向他方側を車両インナ側と定義する。
外輪12の内周面には、車両アウタ側の外輪軌道面12aと、車両インナ側の外輪軌道面12bとが形成されている。
ハブ軸11は、軸本体部55と、車輪取り付け用のフランジ56と、内輪57とを有している。これらは、例えば機械構造用炭素鋼により製造されている。軸本体部55は軸方向に長い軸部材である。フランジ56は、軸本体部55の車両アウタ側から径方向外側に延びて設けられており、円環形状を有している。フランジ56には、周方向に沿って複数の穴が形成されており、この穴に、車輪取り付け用のボルト69が取り付けられている。フランジ56には、図外の車輪の他にブレーキロータが取り付けられる。内輪57は、環状の部材であり、軸本体部55の車両インナ側に嵌合して取り付けられている。軸本体部55の車両アウタ側の外周面に軸軌道面11aが形成され、内輪57の外周面に内輪軌道面11bが形成されている。
車両アウタ側の外輪軌道面12aと軸軌道面11aとが径方向に対向し、車両インナ側の外輪軌道面12bと内輪軌道面11bとが径方向に対向し、車両アウタ側及びインナ側それぞれの軌道面間に転動体である玉13が配置されている。玉13は二列設けられており、各列の玉13は、環状の保持器14によって保持されている。ハブ軸11と外輪12との間に複数の玉13が設けられていることで、外輪12は、ハブ軸11(軸本体部55)の径方向外側においてハブ軸11と同心状に設けられた構成となる。玉13は、金属製の球状部材であり、本実施形態では直径Dとしている。玉13は、例えば高炭素クロム軸受鋼により製造されている。
車両アウタ側の保持器14は、車両アウタ側に位置する転動体列に含まれる複数の玉13を、周方向に間隔をあけて保持する。車両インナ側の保持器14は、車両インナ側に位置する転動体列に含まれる複数の玉13を、周方向に間隔をあけて保持する。保持器14は、例えば樹脂製とすることができる。
車両インナ側の密封装置17は、環状のシール部材40と、環状のスリンガ50とによって構成されている。シール部材40は、外輪12(外輪本体51)の内周側であって車両インナ側に嵌合して取り付けられている。スリンガ50は、内輪57の外周面に締り嵌めの状態で嵌合して取り付けられている。シール部材40(シール部材40のリップ)が、スリンガ50に滑り接触(摺接)することで、車両インナ側の外部から異物が軸受内部に浸入するのを抑制することができる。軸受内部とは、ハブ軸11と外輪12との間であって、二列の玉13が設けられている領域である。
車両アウタ側の密封装置15は、環状のシール部材20と、環状のスリンガ30とによって構成されている。シール部材20は、外輪12(外輪本体51)の内周側であって車両アウタ側に嵌合して取り付けられている。図2は、密封装置15及びその周囲を示す拡大断面図である。スリンガ30は、軸本体部55の車両アウタ側に取り付けられている。シール部材20のリップ21aが、スリンガ30に滑り接触(摺接)することで、車両アウタ側の外部から異物が軸受内部に浸入するのを抑制することができる。
シール部材20は、金属製の金属部材25と、ゴム製のシール本体26とを有している。金属部材25は、外輪12(外輪本体51)の車両アウタ側の端部12cの内周面に締り嵌めの状態で取り付けられている。シール本体26は、金属部材25に固定(加硫接着)されており、スリンガ30に滑り接触する第一リップ21a、第二リップ21b、第三リップ21cを有している。第一リップ21aと第二リップ21bは、スリンガ30との間から泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防ぐ機能を有している。第三リップ21cは、主として軸受内部のグリースが外部へ流出するのを防ぐ機能を有している。第一リップ21aと第二リップ21bは、スリンガ30に対して軸方向から接触する。第三リップ21cは、軸本体部55に対して径方向から接触する。
図2に示すシール本体26は、外輪12(外輪本体51)の車両アウタ側の端部12cの外周面に締め代を有して接触している第四リップ22を更に有している。このリップ22は、外輪12と金属部材25との間を通って泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防ぐ機能を有している。
[第一実施形態に係るスリンガ]
図2及び図3には、第一実施形態に係るスリンガ30を示している。スリンガ30は、金属製の環状部材であり、本実施形態ではステンレス製(SUS430)である。スリンガ30は、車両アウタ側の円環部32と、この円環部32から車両インナ側に延びている筒部31とを有している。円環部32は、径方向に延びる円環板状となっている部分であり、ハブ軸11のフランジ56の(裾部56bの)側面56aに対して軸方向から接触している。筒部31は、筒形状となっている部分である。
図2及び図3には、第一実施形態に係るスリンガ30を示している。スリンガ30は、金属製の環状部材であり、本実施形態ではステンレス製(SUS430)である。スリンガ30は、車両アウタ側の円環部32と、この円環部32から車両インナ側に延びている筒部31とを有している。円環部32は、径方向に延びる円環板状となっている部分であり、ハブ軸11のフランジ56の(裾部56bの)側面56aに対して軸方向から接触している。筒部31は、筒形状となっている部分である。
車輪用軸受装置10(図1参照)の軸受中心線Cを含む断面において(図2参照)フランジ56と軸本体部55との間の部分が凹アール形状となる面58を有していることから、この形状に応じてスリンガ30の筒部31はアール状筒部31bを有している。つまり、図2及び図3において、筒部31は、車両インナ側の円筒部31aと、この円筒部31aと連続している車両アウタ側のアール状筒部31bとを有している。円筒部31aは、軸受中心線Cを中心とする仮想の円筒面に沿った形状を有している。アール状筒部31bは、車両アウタ側へ向かうにつれて拡径し、断面においてアール形状(全体として円弧形状)を有している。なお、アール状筒部31bは、これ以外として、円弧に沿って折り曲げられた形状であってもよい。
スリンガ30の筒部31のうちの円筒部31aが、軸本体部55の車両アウタ側の一部(29)に締り嵌めの状態で外嵌している。ハブ軸11のうち、スリンガ30の筒部31が外嵌して取り付けられている部分(前記一部)を「取り付け部29」とも言う。取り付け部29の外周面は、軸受中心線Cを中心とする円筒面からなる。
スリンガ30の円環部32は、フランジ56の(裾部56bの)側面56aに面で接触している。この円環部32がフランジ56に接触している状態で、スリンガ30は車両アウタ側へ変位することができない。また、スリンガ30は、ハブ軸11の一部に外嵌して取り付けられ、緊迫力のみでハブ軸11に保持されているため、車両が走行すると、やがてスリンガ30がハブ軸11に沿って軸方向に変位し、ハブ軸11の所定位置から車両インナ側へ変位することがある。
スリンガ30は、円環部32の径方向外側の端部32aから車両インナ側に延びている第二の円筒部35を有している。この第二の円筒部35は、シール部材20の第四リップ22の一部の径方向外側に位置している。第二の円筒部35と第四リップ22との間にラビリンス隙間が形成されており、このラビリンス隙間は、第一リップ21aとスリンガ30との滑り接触部分に、外部から泥水等の異物が浸入するのを抑制する機能を有している。
[凹曲面]
図3には、第一実施形態に係るスリンガ30の軸受中心線Cを含む断面を示している。図2及び図3に示すように、スリンガ30は、円筒部31aの車両インナ側の端面に、凹曲面33を有している。凹曲面33は、円筒部31aの車両インナ側の端面を全周にわたって車両アウタ側へ凹ませて円環状に形成されており、軸受中心線Cを含む断面において凹アール形状で湾曲している。凹曲面33は、玉13と面接触可能な曲面形状を有している。また、図3に示すように、凹曲面33の径方向両端には、エッジ部37,38が形成されている。
図3には、第一実施形態に係るスリンガ30の軸受中心線Cを含む断面を示している。図2及び図3に示すように、スリンガ30は、円筒部31aの車両インナ側の端面に、凹曲面33を有している。凹曲面33は、円筒部31aの車両インナ側の端面を全周にわたって車両アウタ側へ凹ませて円環状に形成されており、軸受中心線Cを含む断面において凹アール形状で湾曲している。凹曲面33は、玉13と面接触可能な曲面形状を有している。また、図3に示すように、凹曲面33の径方向両端には、エッジ部37,38が形成されている。
凹曲面33は、玉13と軸方向に対面する位置に配置されている。このため、凹曲面33は、スリンガ30が軸方向に車両インナ側へ移動した場合に、玉13に面接触することができる。
[凹曲面の曲率半径]
図4に示すように、本実施形態の凹曲面33は、玉13の半径(D/2)以上の寸法の曲率半径Rで形成されている。このような構成では、凹曲面33が玉13と面接触するとともに、その接触面が楕円形状となっている。例えば、円筒部31aの車両インナ側の端面が平面である場合には、その端面と玉13との接触面は真円形状となり、接触面が楕円形状となっている場合に比べて、接触面積が小さくなる。
図4に示すように、本実施形態の凹曲面33は、玉13の半径(D/2)以上の寸法の曲率半径Rで形成されている。このような構成では、凹曲面33が玉13と面接触するとともに、その接触面が楕円形状となっている。例えば、円筒部31aの車両インナ側の端面が平面である場合には、その端面と玉13との接触面は真円形状となり、接触面が楕円形状となっている場合に比べて、接触面積が小さくなる。
このため、スリンガ30では、凹曲面33において玉13に面接触させることで、凹曲面33がない場合に比べて、スリンガ30と玉13との接触面積が増大している。これにより、スリンガ30と玉13との接触面圧を抑制している。そして、このようなスリンガ30では、玉13との接触面圧を小さくすることで、スリンガ30が玉13に接触したとしても、玉13に傷がつきにくくなっている。
以上に説明したように、スリンガ30では、凹曲面33は、玉13の半径(D/2)以上の曲率半径で形成されている。この構成によれば、凹曲面33と玉13を面接触させることができ、スリンガ30と玉13との接触面圧を抑えることができる。
[凹曲面の曲面形状]
スリンガ30が車両インナ側にウォークアウトし、凹曲面33が玉13に面接触している状態において、凹曲面33の径方向内端より外側かつ径方向外端より内側で玉13に接触するように、凹曲面33の円弧形状を設定すると好ましい。本実施形態のスリンガ30では、凹曲面33が玉13に接触している状態において、凹曲面33の径方向内端のエッジ部38より外側で、かつ径方向外端のエッジ部37より内側で玉13に接触するように、凹曲面33の円弧形状を設定している。
スリンガ30が車両インナ側にウォークアウトし、凹曲面33が玉13に面接触している状態において、凹曲面33の径方向内端より外側かつ径方向外端より内側で玉13に接触するように、凹曲面33の円弧形状を設定すると好ましい。本実施形態のスリンガ30では、凹曲面33が玉13に接触している状態において、凹曲面33の径方向内端のエッジ部38より外側で、かつ径方向外端のエッジ部37より内側で玉13に接触するように、凹曲面33の円弧形状を設定している。
具体的には、凹曲面33の曲面形状は、図5A,Bに示すように、玉13におけるスリンガ30が接触する範囲の形状を基準として設定すると好ましい。玉13における円筒部31aが接触する範囲は、軸受中心線Cを含む断面において、図5Aに示す円弧ABの範囲である。そして、このような場合には、図5Bに示すように、軸受中心線Cを含む断面において、円弧ABの中点Pと玉13の中心Xを通過する直線L上に曲率中心Yを設定し、曲率中心Yから曲率半径R(R≧D/2)で描いた円弧を、凹曲面33の曲面形状とすると好ましい。この構成によれば、凹曲面33の径方向両端部に存在するエッジ部37,38が玉13に接触することがなく、凹曲面33と玉13とを確実に面接触させることができる。これにより、スリンガ30と玉13との接触面圧を確実に抑えることが可能となる。なお、凹曲面33の曲率中心Yは、直線L上にあると最も好ましいが、エッジ部37,38が玉13に接触しない形状であればよく、直線Lの近傍に曲率中心Yを設定してもよい。
以上に説明したように、スリンガ30では、凹曲面33は、当該凹曲面33の径方向内端より外側かつ径方向外端より内側で玉13に接触する。この構成によれば、凹曲面33の径方向両端部に存在するエッジ部37,38が玉13に接触することがないため、凹曲面33と玉13とを確実に面接触させることができ、スリンガ30と玉13との接触面圧を確実に抑えることが可能となる。
[凹曲面の形成位置]
スリンガ30における凹曲面33の形成位置は、玉13における凹曲面33の接触部位の形状に合わせて、図6Aに示すように、円筒部31aの径方向内側に寄せて凹曲面33を形成してもよいし、図6Bに示すように、円筒部31aの径方向外側に寄せて凹曲面33を形成してもよいし、あるいは、図6Cに示すように、円筒部31aの径方向中央に凹曲面33を形成してもよい。また、円筒部31aの端面には、エッジ部37,38よりも径方向外側に平面部分を設けてもよい。
スリンガ30における凹曲面33の形成位置は、玉13における凹曲面33の接触部位の形状に合わせて、図6Aに示すように、円筒部31aの径方向内側に寄せて凹曲面33を形成してもよいし、図6Bに示すように、円筒部31aの径方向外側に寄せて凹曲面33を形成してもよいし、あるいは、図6Cに示すように、円筒部31aの径方向中央に凹曲面33を形成してもよい。また、円筒部31aの端面には、エッジ部37,38よりも径方向外側に平面部分を設けてもよい。
以上に説明したように、車輪用軸受装置10は、車輪が取り付けられるフランジ56を車両アウタ側(軸方向一方側)に有するハブ軸11と、ハブ軸11の径方向外側に設けられている外輪12と、ハブ軸11と外輪12との間に設けられている複数の玉13と、複数の玉13を保持する保持器14と、外輪12に取り付けられている環状のシール部材20と、ハブ軸11に外嵌して取り付けられシール部材20が滑り接触する環状のスリンガ30と、を備えている。そして、スリンガ30は、径方向に延びる円環部32と、当該円環部32から車両インナ側(軸方向他方側)に延びる筒部31と、を有し、筒部31の車両インナ側の端面の全周に、車両アウタ側に凹んで湾曲し玉13に接触可能な凹曲面33が形成されている。
この車輪用軸受装置10によれば、スリンガ30がハブ軸11の所定位置から車両インナ側へ移動した場合に、スリンガ30の凹曲面33に玉13を面接触させることができる。これにより、スリンガ30と玉13との接触面圧を抑えることができ、スリンガ30がウォークアウトしたとしても、玉13に傷がつくのを抑制することができる。
[第二実施形態に係るスリンガ]
図7及び図8には、第二実施形態に係るスリンガ39を示している。図7は、第二実施形態に係るスリンガ39の軸受中心線Cを含む断面図である。スリンガ39は、円筒部31aの車両インナ側の端部に異質部34を有している点で、第一実施形態のスリンガ30と相違しており、その他の部位については、第一実施形態のスリンガ30の構成と共通している。
図7及び図8には、第二実施形態に係るスリンガ39を示している。図7は、第二実施形態に係るスリンガ39の軸受中心線Cを含む断面図である。スリンガ39は、円筒部31aの車両インナ側の端部に異質部34を有している点で、第一実施形態のスリンガ30と相違しており、その他の部位については、第一実施形態のスリンガ30の構成と共通している。
[異質部]
図7に示すスリンガ39は、円筒部31aの車両インナ側の端部に異質部34を有している。異質部34は、スリンガ39の材質(本実施形態では、SUS430)と異なる材質で構成されている部位である。異質部34は、円筒部31aの車両インナ側の端部に、後で説明する方法により固定されている。異質部34を構成する材料としては、玉13に比べて硬度が低い材料を使用することができる。異質部34を構成する材料としては、玉13に比べて硬度が低い合成樹脂、ゴム、金属(例えばアルミ)等を用いることができる。そして、スリンガ39では、異質部34の車両インナ側の端部に凹曲面33が形成されている。
図7に示すスリンガ39は、円筒部31aの車両インナ側の端部に異質部34を有している。異質部34は、スリンガ39の材質(本実施形態では、SUS430)と異なる材質で構成されている部位である。異質部34は、円筒部31aの車両インナ側の端部に、後で説明する方法により固定されている。異質部34を構成する材料としては、玉13に比べて硬度が低い材料を使用することができる。異質部34を構成する材料としては、玉13に比べて硬度が低い合成樹脂、ゴム、金属(例えばアルミ)等を用いることができる。そして、スリンガ39では、異質部34の車両インナ側の端部に凹曲面33が形成されている。
[異質部の形成方法]
異質部34を構成する材料が合成樹脂である場合には、射出成型(インサート成型)によって、円筒部31aに異質部34を設けることができる。また、異質部34を構成する材料がゴムである場合には、加硫接着によって、円筒部31aに異質部34を設けることができる。また、異質部34を構成する材料がアルミ等の異種金属である場合には、接着剤を用いて、接着により円筒部31aに異質部34を設けることができる。
異質部34を構成する材料が合成樹脂である場合には、射出成型(インサート成型)によって、円筒部31aに異質部34を設けることができる。また、異質部34を構成する材料がゴムである場合には、加硫接着によって、円筒部31aに異質部34を設けることができる。また、異質部34を構成する材料がアルミ等の異種金属である場合には、接着剤を用いて、接着により円筒部31aに異質部34を設けることができる。
異質部34を構成する材料を、樹脂(合成樹脂やゴム等)とした場合には、異質部34を有するスリンガ39を、インサート成型や加硫接着等の金属部品に樹脂部分を設けるための一般的な方法で容易に製造することができる。また、異質部34を樹脂で構成した場合、当該樹脂に潤滑材料を含有させておけば、スリンガ39が玉13と接触した場合に、玉13に傷がつくことを抑制するとともに、玉13の潤滑状態をよくすることが可能となる。
図7に示す異質部34を備えたスリンガ39では、スリンガ39が車両インナ側にウォークアウトすると、異質部34に形成された凹曲面33に玉13が面接触する。異質部34は、玉13に比べて硬度が低いため、凹曲面33に玉13が面接触したとき、スリンガ39側の異質部34が摩耗される。これにより、玉13に傷がつくことを確実に抑制することができる。
[異質部の形状]
図7に示すように、スリンガ39では、円筒部31aの内径寸法に比べて異質部34の内径寸法を大きくして、異質部34の径方向内側に段差部36を設けている。このため、取り付け部29を円筒部31aに圧入する際、異質部34を取り付け部29から離間させておくことができ、これにより、異質部34に無駄な力を作用させずに済む。これにより、スリンガ39を取り付け部29に圧入する際に、異質部34に無駄な力が作用して、異質部34が損傷する(例えば外れてしまう)ことが抑制できる。
図7に示すように、スリンガ39では、円筒部31aの内径寸法に比べて異質部34の内径寸法を大きくして、異質部34の径方向内側に段差部36を設けている。このため、取り付け部29を円筒部31aに圧入する際、異質部34を取り付け部29から離間させておくことができ、これにより、異質部34に無駄な力を作用させずに済む。これにより、スリンガ39を取り付け部29に圧入する際に、異質部34に無駄な力が作用して、異質部34が損傷する(例えば外れてしまう)ことが抑制できる。
図8Aに示すように、スリンガ39では、円筒部31aの車両インナ側の端面に凹部31cを形成するとともに、異質部34の車両アウタ側の端面に凹部31cに嵌め込むことが可能な凸部34aを形成している。そして、凹部31cに凸部34aを嵌め込んだ状態で、円筒部31aに異質部34を固定している。このような構成では、異質部34に径方向への力が作用した場合に、凹部31cで凸部34aを係止することができるため、円筒部31aから異質部34が外れにくくなる。また、このような構成では、凹部31cと凸部34aを設けていない場合に比べて、円筒部31aと異質部34との接着面積を増大させることができるため、異質部34をより外れにくくすることができる。なお、円筒部31aから異質部34を外れにくくするために設ける凹凸構造は、図8Bに示すような構造であってもよい。
図8Bに示す構造では、円筒部31aの車両インナ側の端面に凹凸部31dを形成し、異質部34の車両インナ側の端面に凹凸部34bを形成している。そして、凹凸部31dと凹凸部34bを嵌め合わせた状態で、円筒部31aに異質部34を固定している。このような構成では、円筒部31aと異質部34との接着面積を増大させることができ、また異質部34に径方向への力が作用した場合に、凹凸部31dで凹凸部34bを係止することができるため、異質部34をより外れにくくすることができる。
以上に説明したように、スリンガ39は、筒部31の車両インナ側の端部に、玉13に比べて硬度が低い材料からなる異質部34を有し、異質部34に凹曲面33が形成されている。この構成によれば、スリンガ39が玉13に接触した場合に、スリンガ39側を摩耗させることができる。これにより、スリンガ39との接触によって玉13に傷がつくことをより確実に抑制することができる。
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の車輪用軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
10:車輪用軸受装置 11:ハブ軸 12:外輪
13:玉 14:保持器 20:シール部材
30:スリンガ(第一実施形態) 31:筒部 32:円環部
33:凹曲面 34:異質部 39:スリンガ(第二実施形態)
56:フランジ R:(凹曲面33の)曲率半径 D:(玉13の)直径
13:玉 14:保持器 20:シール部材
30:スリンガ(第一実施形態) 31:筒部 32:円環部
33:凹曲面 34:異質部 39:スリンガ(第二実施形態)
56:フランジ R:(凹曲面33の)曲率半径 D:(玉13の)直径
Claims (4)
- 車輪が取り付けられるフランジを軸方向一方側に有するハブ軸と、
前記ハブ軸の径方向外側に設けられている外輪と、
前記ハブ軸と前記外輪との間に設けられている複数の玉と、
前記複数の玉を保持する保持器と、
前記外輪の軸方向一方側に取り付けられている環状のシール部材と、
前記ハブ軸に外嵌して前記フランジの軸方向他方側に取り付けられ、前記シール部材が滑り接触する環状のスリンガと、
を備え、
前記スリンガは、径方向に延びる円環部と、
当該円環部から軸方向他方側に延びる筒部と、を有し、
前記筒部の軸方向他方側の端面の全周に、軸方向一方側に凹んで湾曲し前記玉に面接触可能な凹曲面が形成されている、車輪用軸受装置。 - 前記凹曲面は、
前記玉の半径以上の曲率半径で形成されている、請求項1に記載の車輪用軸受装置。 - 前記凹曲面は、
当該凹曲面の径方向内端より外側かつ径方向外端より内側で前記玉に接触する、請求項2に記載の車輪用軸受装置。 - 前記スリンガは、
前記筒部の軸方向他方側の端部に、前記玉に比べて硬度が低い材料からなる異質部を有し、前記異質部に前記凹曲面が形成されている、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020193322A JP2022082025A (ja) | 2020-11-20 | 2020-11-20 | 車輪用軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publication Number | Publication Date |
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JP2022082025A true JP2022082025A (ja) | 2022-06-01 |
Family
ID=81801295
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2020193322A Pending JP2022082025A (ja) | 2020-11-20 | 2020-11-20 | 車輪用軸受装置 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022082025A (ja) |
-
2020
- 2020-11-20 JP JP2020193322A patent/JP2022082025A/ja active Pending
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