JP2022078884A - Peg化環状一本鎖抗体 - Google Patents

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敬博 小橋川
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卓史 佐藤
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Abstract

【課題】高い安定性を有する環状一本鎖抗体およびその製造方法を提供する。【解決手段】本発明は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)において、そのN末端とC末端が第2のペプチドリンカーで連結されている、環状一本鎖抗体であって、第1および/または第2のペプチドリンカーが1以上のポリエチレングリコール側鎖を有する、前記環状一本鎖抗体を提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)側鎖を有する環状一本鎖抗体、およびその製造方法に関する。
モノクローナル抗体は、腫瘍学、慢性炎症性疾患、移植、感染症、循環器内科、または眼科疾患を含む様々な臨床現場において治療物質として利用され、さらに、検査薬、センサー素子等、様々な用途で利用されている。抗体の主要な機能は抗原(標的分子)に対して特異的に結合することであり、抗原は、Fvドメインにより認識されている。
抗体のFvドメインは重鎖由来のFvドメイン(VH)と軽鎖由来のFvドメイン(VL)から成る。Fvドメインを抗体から切り出してきた断片であるFv断片においても多くの抗体が標的結合能を維持しており、抗体の抗原結合機能の最小単位を成す。一本鎖抗体(scFv: single-chain Fv)はVHとVLをペプチドリンカーにより連結したものである。例えば、終末糖化産物(AGEs)を認識するscFvについて報告がされている(非特許文献1)。
一般にモノクローナル抗体はCHO細胞やハイブリドーマといった真核生物由来の細胞が生産に使用され、生産に多大なコストを要する。scFvは分子量が25kDa程度であり、全長抗体に比べてその分子量は著しく小さい。そのため、大腸菌などの原核生物をホストとして使用する生産が可能となり(非特許文献5)、scFvは全長抗体に比べて生産コストの面で優位性を有している。またポリエチレングリコールを導入することによるscFvの修飾に関する報告がされている(非特許文献6および7)。
またscFvの三量体に相当する環状一本鎖三重特異性抗体に関しても報告がされている(特許文献1)。一方でscFvは一般に会合して多量体を形成する特性を有しており、scFvが形成する二量体、三量体、および四量体に関して報告がされている(非特許文献2~4)。さらに、ソルターゼを用いる方法やインテイン反応を利用した環状一本鎖抗体の合成について報告がされている(特許文献2および3、非特許文献8および9)。
特表2005-501517 A WO2020/013126 A1 US2010/129807 A1
Fukuda, N. et al., Molecules. 2017, 22, 1695; PEI, X.Y., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1997, 94, 9637-9642; Todorovska, A. et al., Journal of Immunological Methods 248 (2001) 47-66; Lawrence, L.J. et al., FEBS Letters 425 (1998) 479-484; Liu, C. et al., Journal of Biochemistry, 166, 6, 2019, 455-462; Natarajan, A. et al., Bioconjugate Chem. 2005, 16, 1, 113-121; Kholodenko, I.V. et al., Molecules 2019, 24, 3835; Yamauchi, S. et al, Molecules 2019, 24, 2620; Liu, C. et al., Journal of Biochemistry, 168, 3, 2020, 257-263.
scFvはリンカーにより連結させたVH領域とVL領域が会合することにより抗原結合部位を形成する。一方で、VH領域とVL領域の会合は分子間においても生じるため、scFvは多量体を形成しやすく、更に会合が進むことにより凝集体が生じることが問題となる。この点についてscFvのC末端とN末端をさらにリンカーで連結させて環状とすることにより、分子間の会合が抑制され凝集体の発生量が低下することが報告されている(特許文献2)。一方で、医薬品の有効成分として利用可能なレベルの高い安定性を有する環状の一本鎖抗体が求められている。
一般に抗体を有効成分として含む医薬品は、凍結乾燥品として製造される場合があり、環状の一本鎖抗体においても凍結乾燥後の再溶解時に凝集体の発生が十分に抑えられていることが求められている。本発明は、このような問題を解決し、環状のscFvの産業利用を促進するための手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、環状のscFvにポリエチレングリコール側鎖を導入することにより、安定性が向上、特に凍結乾燥後の再溶解時における凝集体の発生が抑えられることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明により、以下の発明が提供される。
[1]重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)において、そのN末端とC末端が第2のペプチドリンカーで連結されている、環状一本鎖抗体であって、第1および/または第2のペプチドリンカーが1以上のポリエチレングリコール側鎖を有する、前記環状一本鎖抗体。
[2]第1または第2のペプチドリンカーのいずれかが1つのポリエチレングリコール側鎖を有する、[1]に記載の環状一本鎖抗体。
[3]分子内に1つの抗原結合部位を有する、[1]または[2]に記載の環状一本鎖抗体。
[4]第1のペプチドリンカーが15~27個のアミノ酸からなる、[1]~[3]のいずれかに記載の環状一本鎖抗体。
[5]第2のペプチドリンカーが15~28個のアミノ酸からなる、[1]~[4]のいずれかに記載の環状一本鎖抗体。
[6]ポリエチレングリコール側鎖において、ポリエチレングリコールがリンカーを介して第1または第2のペプチドリンカーのアミノ酸残基に連結する、[1]~[5]のいずれかに記載の環状一本鎖抗体。
[7]ポリエチレングリコール側鎖部分の分子量が100~20000である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
[8]ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子に連結している、[1]~[7]のいずれかに記載の環状一本鎖抗体。
[9]ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子の二重結合への付加反応により生じる結合を介して連結する、[1]~[8]のいずれかに記載の環状一本鎖抗体。
[10]VHおよびVLが同一でポリエチレングリコール側鎖を有さない環状一本鎖抗体と比較して、凝集体形成が抑制されている、[1]~[9]のいずれかに記載の環状一本鎖抗体。
[11][1]~[10]のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体の製造方法であって、
1)重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)であって、N末端にスプリットインテインのC末端側断片(Int-C)およびC末端にスプリットインテインのN末端側断片(Int-N)をそれぞれ有する非環状ペプチドを調製する工程;
2)スプリットインテインによるトランス-スプライシング反応により第2のペプチドリンカーを形成し、前記一本鎖抗体を環化する工程
3)第1または第2のペプチドリンカーに含まれるシステイン残基にポリエチレングリコール側鎖を導入する工程;
を含む、前記製造方法。
[12]スプリットインテインのC末端側断片(Int-C)としてDnaE-Int-C、N末端側断片(Int-N)としてDnaE-Int-Nが用いられる、[11]に記載の製造方法。
[13]ポリエチレングリコール側鎖が第2のペプチドリンカーに含まれるシステイン残基に導入される、[11]または[12]に記載の製造方法。
[1-1]重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)の水溶液中での分子間会合を抑制する方法であって、
1)該一本鎖抗体のN末端とC末端を第2のペプチドリンカーで連結して環状の一本鎖抗体に変換する工程;
2)第1または第2のペプチドリンカーに含まれるシステイン残基にポリエチレングリコール側鎖を導入する工程;および
3)該環状の一本鎖抗体の水溶液を調製する工程
を含み、環状の一本鎖抗体の環状構造がペプチド結合のみで形成されている、前記方法。
[1-2]第1または第2のペプチドリンカーのいずれかが1つのシステイン残基に導入されたポリエチレングリコール側鎖を有する、[1-1]に記載の方法。
[1-3]環状一本鎖抗体が分子内に1つの抗原結合部位を有する、[1-1]または[1-2]に記載の方法。
[1-4]第1のペプチドリンカーが15~27個のアミノ酸からなる、[1-1]~[1-3]のいずれかに記載の方法。
[1-5]第2のペプチドリンカーが15~28個のアミノ酸からなる、[1-1]~[1-4]のいずれかに記載の方法。
[1-6]ポリエチレングリコール側鎖において、ポリエチレングリコールがリンカーを介して第1または第2のペプチドリンカーのアミノ酸残基に連結する、[1-1]~[1-5]のいずれかに記載の方法。
[1-7]ポリエチレングリコール側鎖部分の分子量が100~20000である、[1-1]~[1-6]のいずれか1項に記載の方法。
[1-8]ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子に連結している、[1-1]~[1-7]のいずれかに記載の方法。
[1-9]ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子の二重結合への付加反応により生じる結合を介して連結する、[1-1]~[1-8]のいずれかに記載の方法。
[2-1]重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)の凍結乾燥による凝集体形成を抑制する方法であって、
1)該一本鎖抗体のN末端とC末端を第2のペプチドリンカーで連結して環状の一本鎖抗体に変換する工程;
2)第1または第2のペプチドリンカーに含まれるシステイン残基にポリエチレングリコール側鎖を導入する工程;および
3)該環状の一本鎖抗体の水溶液を調製する工程
を含み、環状の一本鎖抗体の環状構造がペプチド結合のみで形成されている、前記方法。
[2-2]第1または第2のペプチドリンカーのいずれかが1つのシステイン残基に導入されたポリエチレングリコール側鎖を有する、[2-1]に記載の方法。
[2-3]環状一本鎖抗体が分子内に1つの抗原結合部位を有する、[2-1]または[2-2]に記載の方法。
[2-4]第1のペプチドリンカーが15~27個のアミノ酸からなる、[2-1]~[2-3]のいずれかに記載の方法。
[2-5]第2のペプチドリンカーが15~28個のアミノ酸からなる、[2-1]~[2-4]のいずれかに記載の方法。
[2-6]ポリエチレングリコール側鎖において、ポリエチレングリコールがリンカーを介して第1または第2のペプチドリンカーのアミノ酸残基に連結する、[2-1]~[2-5]のいずれかに記載の方法。
[2-7]ポリエチレングリコール側鎖部分の分子量が100~20000である、[2-1]~[2-6]のいずれかに記載の方法。
[2-8]ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子に連結している、[2-1]~[2-7]のいずれかに記載の方法。
[2-9]ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子の二重結合への付加反応により生じる結合を介して連結する、[2-1]~[2-8]のいずれかに記載の方法。
本発明により、抗原に対する結合活性を維持するとともに、高い安定性を有する環状scFvが提供される。当該環状scFvは、分析や診断用のセンサー素子や医薬品などとして利用することができる。
図1は、実施例1において調製したPEG化環状Tras-scFvのSDS-PAGEの結果を示す図である。 図2は、凍結乾燥後に再溶解後した際の環状Tras-scFv溶液の濁度の測定結果を示すグラフである。 図3は、表面プラズモン共鳴測定におけるセンサーグラムの比較を示すグラフである。▲は非PEG化環状Tras-scFvの表面プラズモン共鳴測定のデータ、□はPEG化環状Tras-scFv の表面プラズモン共鳴測定のデータを示す。 図4-1は、表面プラズモン共鳴法による非PEG化環状Tras-scFvの凍結乾燥後に再溶解した際の残存活性の比較を示す。▲は凍結乾燥前のデータ、□は凍結乾燥後の表面プラズモン共鳴測定のデータを示す。 図4-2は、表面プラズモン共鳴法によるPEG化環状Tras-scFvの凍結乾燥後に再溶解した際の残存活性の比較を示す。▲は凍結乾燥前のデータ、□は凍結乾燥後の表面プラズモン共鳴測定のデータを示す。 図5は、実施例1において調製したPEG化環状73MuL9-scFvのSDS-PAGEの結果を示す図である。 図6は、表面プラズモン共鳴測定におけるセンサーグラムの比較を示すグラフである。▲は非PEG化環状73MuL9-scFv の表面プラズモン共鳴測定のデータ、□はPEG化環状73MuL9-scFvの表面プラズモン共鳴測定のデータを示す。 図7は、インテインによる環化反応に付すためのポリペプチド(Tras-scFv-Intein)の構造の模式図を示す。 図8は、Tras-scFvの製造に用いた、インテインによる環化反応に付すためのポリペプチド(Tras-scFv-Intein)のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。 図9は、73MuL9-scFvの製造に用いた、インテインによる環化反応に付すためのポリペプチド(73MuL9-scFv-Intein)のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
本発明に係る環状scFvは共有結合による環状構造を有する。環状scFvは、インテインを用いたインテイン反応、Native Chemical Ligation、グルタミナーゼを利用する方法、および化学的に連結する方法により製造することができる。例えば、環状scFvは特許文献2などに記載の方法により製造することができる。
本発明の一つの実施態様において、環状scFvの製造は、トランスペプチダーゼを用いた酵素的連結方法により行われる。トランスペプチダーゼとしては、例えばソルターゼが挙げられ、公知のソルターゼ酵素(Chenら、PNAS 108: 11399-11404、2011; Poppら、Nat Chem Biol 3: 707-708, 2007)を利用することができる。ソルターゼの好ましい例として、ソルターゼAが挙げられる。また、膜貫通領域を欠く可溶性の短縮型ソルターゼA(SrtA;黄色ブドウ球菌SrtAのアミノ酸残基60~206)が使用することもできる(Ton-That, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (1999) 12424-12429; Ilangovan, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 (2001) 6056-6061)。短縮型可溶性ソルターゼA変種は、大腸菌(E.coli)において作製することができる。
ソルターゼは、あるタンパク質のN末端を別のタンパク質のC末端付近の位置に共有結合で連結するために用いることができ、分子内での環化反応にも利用することができる。ソルターゼは、例えば、N末端GGG及びC末端LPXTGX’n(式中、X及びX’は、任意に独立して選択されるアミノ酸であり、nは、例えば1~99を含む任意の数のアミノ酸(例えば、天然アミノ酸)であり得る)を認識する。ソルターゼは、次いで、2つのペプチド配列中のグリシン残基の転位を容易にして、2つのペプチド配列間の共有結合及びGX’nの放出をもたらす。本発明の一つの態様において、ソルターゼを用いた酵素的連結のための連結部位をN末端とC末端に有する一本鎖抗体を環化することにより、環状scFvが製造される。
上記配列中のXとX’の例としては、天然アミノ酸、具体的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、およびバリンなどが挙げられ、より具体的には、Xはグルタミン酸、およびX’はロイシンなどが挙げられる。
VHおよびVLは「イムノグロブリンフォールド」と呼ばれる100~120程度のアミノ酸残基より構成され、同じ全体的な形態を有し、主にβシートからなる。環状scFvの作製に用いる非環状のscFvは、N末端にグリシンを有し、C末端領域にLPXTG (Xは任意のアミノ酸残基)を有する。当該非環状scFvにおいて、N末端からVHおよびVLの順であってもVL およびVHの順であってもよい。
抗体においてVHおよびVLに該当する領域は公知の知見に基づいて判断することができる。例えば、Martin, A.C.R. Accessing the Kabat Antibody Sequence Database by Computer PROTEINS: Structure, Function and Genetics, 25 (1996), 130-133;およびElvin A. Kabat, Tai Te Wu, Carl Foeller, Harold M. Perry, Kay S. Gottesman (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interestなどの文献を参酌することができる。本発明の一つの側面において、VH領域は、Kabatの配列番号0から113のアミノ酸配列として定義され、VL領域は、Kabatの配列番号0から109のアミノ酸配列として定義される。一つの態様において、VH、VL領域とも、フレームワーク4のC末端側2~3残基は二次構造を取らない抗体については、当該残基を含まない領域をVH、またはVLと定義することができる。
VHおよびVL領域の末端付近にはβシートが存在する。環状scFvの製造に用いる非環状scFvにおいて、連結部位 (オリゴグリシンGmとLPXTG) から配列上最も近接するβシートとの間のアミノ酸残基数は3残基以上が好ましく、より好ましくは5残基以上である。N末端のGlyについては配列上最も近接するβシートからのアミノ酸残基数は3残基以上が好ましく、より好ましくは5残基以上である。
本発明の一つの実施態様において、環状scFvの製造は、タンパク質スプライシング反応であるインテイン反応、より具体的には、スプリットインテインを用いたトランス-スプライシング反応を利用することができる。
インテインを2つに分割したもののうちN末端側断片をInt-N、C末端側断片をInt-Cと表記する。一つの態様において、本発明の環状一本鎖抗体は、Int-CのC末端に環化を行いたいタンパク質のN末端を融合し、さらに、そのC末端側にInt-NのN末端を融合させたタンパク質を作製することで製造することができる(図10)。具体的には、環状scFvを得るために、Int-CのC末端に非環状のscFvのN末端を融合し、非環状のC末端にInt-NのN末端を連結したポリペプチド鎖を用意し、自発的に環状化反応を行うことができる。本発明においては、タンパク質を環状化するため、インテインタンパク質を用いた細胞内環化反応を使用することができる。インテインタンパク質にはNostoc punctiforme 由来のDnaE (NpuDnaE)が使用可能であり、より具体的には特許文献2において配列番号15、配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるDnaE-Int-N (DnaE-N)、DnaE-Int-C(DnaE-C)、が使用可能である。
本発明において、タンパク質を環化するためのインテインタンパク質としては、Nostoc punctiforme由来のDnaEを使用することができる。より具体的には特許文献2において配列番号15、配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるDnaE-N、DnaE-Cを使用することができる。このDnaE-C、DnaE-Nとの間に目的タンパク質を連結したポリペプチド鎖においては、DnaEの自己触媒能によって自発的にスプライシングが進行し、目的タンパク質のN末端のアミノ基とC末端のカルボニル基の間でペプチド結合(アミド結合)が形成された環化タンパク質が合成される。当該反応の基質となるポリペプチドを細胞内に発現させることにより、上記の環化反応を細胞内において行うこともできる。
スプリットインテインを利用する場合、一つの態様において、環化反応の基質となるポリペプチドは、環化のためのペプチド結合(アミド結合)が生じる箇所のアミノ基側またはカルボン酸側のいずれかの残基にシステインまたはセリンを有し、カルボン酸側の残基はプロリン以外である。
スプリットインテインを利用する環化により形成される第2のペプチドリンカーは、例えば、CFNGT、CFN、CYNGT、またはCYNから選択されるアミノ酸配列を含んでいてもよい。一つの態様において、これらのアミノ酸配列のCのアミノ基が環化のためのペプチド結合(アミド結合)を形成する。
また第2のペプチドリンカーは、GSGSSのアミノ酸配列を含んでいてもよい。一つの態様において、当該アミノ酸配列のSのカルボキシル基が環化のためのペプチド結合(アミド結合)を形成する。
環状scFvの製造に用いる非環状scFvにおいて、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)は第1のペプチドリンカーで連結されている。本発明の一つの態様において、第1のペプチドリンカーのアミノ酸残基数としては、例えば、10残基以上、13残基以上、15残基以上であり、27残基以下、25残基以下、23残基以下である。第1のペプチドリンカーを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸であれば特に限定されない。当該アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられ、具体的には、グリシン、アラニン、セリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アルギニンなどが挙げられる。第1のペプチドリンカーの残基数は、環化反応の進行、会合特性が改善に影響する。
本発明の環状一本鎖抗体は環状構造がペプチド結合のみで形成されているという特徴を有する。上記の環状構造はさらに-SS-結合による架橋構造を有していてもよい。本発明の一つの態様において、環状一本鎖抗体は環構造を形成する重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が会合して、抗原結合部位を形成する。本発明の環状一本鎖抗体は、分子内にVHとVLが会合して形成される抗原結合部位を1つ有する。
環状scFvの製造に用いる非環状scFvの環化により、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の間に第2のペプチドリンカーが形成される。本発明の一つの態様において、第2のペプチドリンカーのアミノ酸残基数としては、例えば、12残基以上、13残基以上、15残基以上、16残基以上、19残基以上、21残基以上であり、28残基以下、26残基以下、24残基以下である。第2のペプチドリンカーを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸であれば特に限定されない。当該アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられ、具体的には、グリシン、アラニン、セリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アルギニンなどが挙げられる。第2のペプチドリンカーの残基数は、環化反応の進行、会合特性の改善に影響する。
本発明の環状scFvの製造方法は特に限定されないが、以下の方法が例示される。
(1)scFvのN末端にグリシンを導入する。N末端にグリシンを有するタンパク質の作製は発現ホストに内在するアミノペプチダーゼを利用する、グリシンの前にTEV Proteaseの認識配列 (ENLYFQ / G ただし、認識配列中の/は切断部位を示す) やHRV3Cプロテアーゼの認識配列 (LEVLFQ /GG ないしは LEVLFQ / GPただし、認識配列中の/は切断部位を示す)などのタンパク質分解酵素の切断配列を挿入しておくことで、タンパク質分解酵素で消化することでN末端にグリシンを有するscFvを作製することができる。
(2)(1)で例示される手順により作製されたN末端にグリシンを有し、C末端にLPXTG配列を含むscFvに対してソルターゼAを作用させることで環状scFvを作製することができる。中性付近 (pH 5.5~9.5)の緩衝液中で連結反応を行うこととなる。使用するソルターゼAによってはさらにカルシウムイオンを反応液中に添加することが必要となる。
(3)環状scFvを作製するのに用いるscFvの作製には大腸菌、酵母、哺乳細胞、昆虫細胞等を含むあらゆる宿主を用いることができ、プロモーターとしてはT7、Taq、lac等を含むあらゆるプロモーターを用いることができる。
環化反応の基質となるペプチドは、目的の環状ペプチドを得るために必要な構造に加えて、可溶化を高めるに別のペプチドやタンパク質、またはその断片と融合していてもよい。融合に用いられるペプチドおよびタンパク質としては、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、プロテインGB1ドメイン(GB1)などが挙げられる。
scFvが環化されたことを検出するためにはドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE)を用いて行うことができる。scFvが環化されると電気泳動において移動度が変化する。そのため、環化されていないscFvの移動度と比較することで検出できる。この際、環化されずにLPXTG配列中のグリシンから先の領域が切断された産物も生じ得る。この切断産物と環状scFvを区別する方法としては以下の方法が例示される。環状scFvはカルボキシペプチダーゼやアミノペプチダーゼにより消化されないが上記の切断産物は消化される。その他の方法としては、質量分析が挙げられる。
本明細書における「一本鎖抗体」は、全長抗体の重鎖由来のFvドメイン(VH)と軽鎖由来のFvドメイン(VL)をペプチドリンカーにより連結して得られる一本鎖Fv断片(scFv)を意味する。ここでペプチドリンカーは、一本鎖抗体が抗原結合性を有するのに適した配列であれば特に限定されず、例えば、10個以上のアミノ酸、具体的には10~27個のアミノ酸、より具体的には15~20個のアミノ酸から構成される。ペプチドリンカーを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸であれば特に限定されない。当該アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられ、具体的には、グリシン、アラニン、セリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アルギニンなどが挙げられる。
一本鎖抗体は、VLドメインのC末端とVHドメインのN末端をペプチドリンカーで連結する構造、またはVHドメインのC末端とVLドメインのN末端をペプチドリンカーで連結する構造のいずれを有していてもよい。
本発明で用いるscFvは、成書(例えば、Carl A. K. Borrebaeck 編集, (1995) Antibody Engineering (Second Edition), Oxford University Press, New York;John McCafferty, Hennie Hoogenboom, Dave Chiswell 編集, (1996) Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL Press, Oxfordなど)および文献(例えば、Biochim. Biophys. Acta - Protein Structure and Molecular Enzymology 1385, 17-32 (1998)、Molecules. 2017 22:e1695、Journal of Biochemistry 161:37-43など)に記載の方法により製造することができる。
本発明の環状一本鎖抗体は、遺伝子工学的手法により調製した形質転換体の培養により製造することができる。環状一本鎖抗体を製造するための環化反応の基質となる非環状ペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸は、化学合成、PCR、カセット変異法、部位特異的変異導入法などにより合成することができる。たとえば、末端に20塩基対程度の相補領域を有する100塩基程度までのオリゴヌクレオチドを複数、化学合成し、これらを組み合わせてオーバーラップ伸長法を行うことにより目的の核酸を全合成することができる。上記の環化反応の基質として使用する非環状ペプチドを本明細書では非環状一本鎖抗体と呼ぶ場合がある。このとき、非環状ペプチドおよび非環状一本鎖抗体は重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)などの一本鎖抗体として必要な要素を含むが、抗原結合活性の有無は特に問わない。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに上記の核酸を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明で使用するベクターとしては、宿主中で複製可能なもの又は目的の核酸を宿主ゲノムに組み込み可能なものであれば特に限定されない。例えば、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどが挙げられる。
プラスミドDNAとしては、放線菌由来のプラスミド(例えばpK4,pRK401,pRF31等)、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322,pBR325,pUC118,pUC119,pUC18等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13,YEp24,YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。遺伝子は、本発明の改良型タンパク質が発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、遺伝子の塩基配列のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)、開始コドン、終止コドンなどを連結することができる。また、製造するタンパク質の精製を容易にするためのタグ配列を連結することもできる。タグ配列としては、Hisタグ、GSTタグ、MBPタグなどの公知のタグをコードする塩基配列を利用することができる。
遺伝子がベクターに挿入されたか否かの確認は、公知の遺伝子工学技術を利用して行うことができる。たとえば、プラスミドベクターなどの場合、コンピテントセルを用いてベクターをサブクローニングし、DNAを抽出後、DNAシーケンサーを用いてその塩基配列を特定することで確認できる。他のベクターについても細菌あるいは他の宿主を用いてサブクローニング可能なものは、同様の手法が利用できる。また、薬剤耐性遺伝子などの選択マーカーを利用したベクター選別も有効である。
形質転換体は、本発明の組換えベクターを、本発明の改良型タンパク質が発現し得るように宿主細胞に導入することにより得ることができる。形質転換に使用する宿主としては、タンパク質又はポリペプチドを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、植物細胞、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
細菌を宿主とする場合は、組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、開始コドン、本発明の改良型タンパク質をコードする核酸、転写終結配列により構成されていることが好ましい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5αなどが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
細胞内での環状ペプチドの合成を行う場合、環化反応の基質となるペプチドに加えて、当該ペプチドのフォールディングに関与するペプチドを共発現させてもよい。共発現させるペプチドの例としては、SlyA、TF (トリガーファクター)、およびペプチジルプロリルイソメラーゼ(PPIase)、例えば、シクロフィリン、FKBP、およびPin1、などが挙げられ、具体的には、FKBP12が挙げられる。
本発明の環状scFvは、第1および/または第2のアミノ酸リンカーの1以上のアミノ酸残基に導入されたポリエチレングリコール側鎖(PEG側鎖)を有する。PEG側鎖はポリエチレングリコール基(PEG基)に連結するリンカーを有し、リンカーがアミノ酸残基に連結する。PEG側鎖が導入されるアミノ酸残基としては、PEG側鎖の導入が可能であることが知られているアミノ酸残基であれば特に限定されず、例えば、リシン、システインなど、具体的にはシステインが挙げられる。
PEG側鎖のアミノ酸残基への連結の様式としては、例えば、PEG側鎖リンカーとリシン残基のアミノ基とのアミド基の形成、PEG側鎖リンカーのオレフィンへのシステイン残基のスルファニル基の付加反応によるチオエーテルの形成、PEG側鎖リンカーのスルファニル基とシステイン残基のスルファニル基によるジスルヒドの形成、などが挙げられる。
PEG側鎖のリンカーは分岐構造を有し、複数のPEG基を含んでいてもよい。アミノ酸残基に連結するPEG側鎖は、例えば以下の式1により表される:
Figure 2022078884000002
式中、nは1~1000から選択される整数であり:
は、水素原子またはC1-6アルキルであり;
は、C1-6アルキレンであり;
は、直接結合または式:-X-C(=O)-X-で表される基であり;
は、C1-6アルキレンであり、Xに連結し;
は、直接結合、-NR-、-O-、または-S-であり、Xに連結し;
は、水素原子またはC1-6アルキルであり;
は、-S-、-C(=O)X**-CHCH-SO**、または下式:
Figure 2022078884000003
で表される基であり、
は、リシンのアミノ基の連結箇所を表し、は、システインのスルファニル基の連結箇所を表し、**は、Xの連結箇所を表し;
は、直接結合、-NR-、-O-、または-S-であり;
は、水素原子またはC1-6アルキルである。
本発明の1つの態様において、PEG側鎖は、以下の式1により表される:
Figure 2022078884000004
式中、nは1~1000から選択される整数であり:
は、水素原子またはメチルであり;
は、C2-3アルキレンであり;
は、直接結合または式:-X-C(=O)-X-で表される基であり;
は、C2-3アルキレンであり、Xに連結し;
は、-NR-、または-O-であり、Xに連結し;
は、水素原子またはメチルであり;
は、下式:
Figure 2022078884000005
で表される基であり、
は、システインのスルファニル基の連結箇所を表し、**は、Xの連結箇所を表す。式中のRは好ましくはメチルである。
式1において、nは例えば1~1000、具体的には3~500、より具体的には5~300である。本発明の一つの態様において、PEG側鎖部分の分子量は、例えば100~100000、具体的には500~20000、より具体的には1000~15000である。PEG側鎖部分の分子量は数平均分子量で表されていてもよい。PEG側鎖部分の分子量の下限としては、例えば、50、100、150、200、250、300、350、400などを挙げることができる。PEG側鎖部分の分子量の下限としては、例えば、18000、17000、16000、15000、14000、13000、12000、11000、10000などを挙げることができる。好ましくは、PEG側鎖部分は、分子量分布が狭いPEG側鎖導入用試薬を用いて形成される。PEG側鎖導入用試薬は、例えば日本特許第3050228号に記載の方法で調製することができるメトキシPEGを用いて調製することができる。
本発明の一つの態様において、PEG側鎖部分のPEG部分の分子量は、例えば100~100000、具体的には500~20000、より具体的には1000~15000である。PEG部分の分子量は数平均分子量で表されていてもよい。
PEG側鎖導入用試薬の具体例として、SUNBRIGHT ME-020MA(分子量:2000)、SUNBRIGHT ME-050MA(分子量:5000)、SUNBRIGHT ME-100MA(分子量:10000)、SUNBRIGHT ME-200MA(分子量:20000)、およびSUNBRIGHT ME-400MA(分子量:4000;以上、日油株式会社)、並びにmPEG-Mal,350(分子量:350) およびmPEG-Mal,1K (分子量:1000;以上、Funakoshi)が挙げられる。これらの試薬の化学構造は以下の式により示される。
Figure 2022078884000006
本発明の一つの態様において、環状scFvは、第1または第2のアミノ酸リンカーの1つのシステイン残基のスルファニル基に連結するPEG側鎖を有する。本発明の1つの態様において、環状scFvは、第1または第2のアミノ酸リンカーの1つのシステイン残基を有し、さらに1以上のシステイン残基を有する。好ましくは、PEG側鎖は第1または第2のアミノ酸リンカーの1つのシステイン残基に選択的に導入されている。本発明の一つの態様において、PEG側鎖を有する環状scFvのVHおよびVLに存在するシステイン残基は-SS-結合を形成している。
本発明の一つの側面においてPEG側鎖を有する環状scFvは、PEG側鎖を有さない環状scFvと比べて凝集体の形成が抑制されている点において優れた効果を有する。一つの態様において、PEG側鎖を有する環状scFvは、凍結乾燥後に再溶解を行って得られた溶液中においても、PEG側鎖を有さない環状scFvと比べて凝集体の形成が抑制されている点において優れた効果を有する。別の側面において、PEG側鎖を有する環状scFvは、PEG側鎖を有さない環状scFvと比べて、凍結乾燥によるダメージに対しても耐性を有している。
本発明の1つの態様において、PEG側鎖が導入される環状一本鎖抗体の分子量は、例えば10,000~60,000Da、具体的には15,000~50,000Da、より具体的には20,000~40,000Da、さらに具体的には25,000~30,000Daの分子量を有する。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
[実施例1]
本実施例においては、HER2に特異的に結合するトラスツズマブ由来のscFvである、Tras-scFvを用いた。文献記載の方法により、N末端から、マルトース結合タンパク質(MBP)、DnaE-C、His-tag、Tras-scFv、DnaE-Nで構成されているポリペプチド(Tras-scFv-Intein、図7および8)を大腸菌により発現させ、環状Tras-scFvを調製した(特許文献2、非特許文献9)。環状Tras-scFvのアミノ酸配列(配列番号3)を以下に示す:
CFNGTHHHHHHAAAAQVKLQQSGPSLVKPSQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRKFPGNKFEYLGYISYSGRTYYNPSLKSRISITRDTSKNQYYLQLNSVTTEDTATYYCSRPYYRYDYAIDYWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIELTQSPAIMSASLGEQVTMTCTASSSVSSSYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLASGVPARFSSSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQSWKAPYTFGGGTKLEIKSGSGSS
その後、環状Tras-scFvに対してポリエリレングリコール (PEG) の修飾を行った。PEG化は、環状scFvのペプチドリンカー内に含まれるシステイン残基と特異的に反応するマレイミド基を有するPEG試薬(Maleimide PEG)を用いて行った。
環状Tras-scFvとMaleimide PEG(分子量:350 ~ 40000)を混合し、4℃においてPEG化反応を行った後、ゲルろ過クロマトグラフィーによりPEG化環状Tras-scFvの分離を行った。
バッファー(2 mL;50 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 7.4)中に環状Tras-scFv(2μM)、Maleimide PEG(20μM)の組成で混合し、4℃にて1時間静置することでPEG化反応を行った。製造したサンプルと用いた試薬を表1に示す:
Figure 2022078884000007
その後、ゲルろ過クロマトグラフィーによりPEG化環状Tras-scFvの分離を行った。ゲルろ過クロマトグラフィーにはランニングバッファー(50 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 7.4)を用いた。環状Tras-scFvを100μg用いてSUNBRIGHT ME-020MAなど表1に示す試薬によるPEG化反応を行い、PEG化環状Tras-scFvはいずれの場合も80μg得られた。
精製したPEG化環状Tras-scFvのSDS-PAGEの結果を図1に示す。各レーンは以下の通り:
レーン1:分子量マーカー;
レーン2:環状Tras-scFv;
レーン3:PEG2000-環状Tras-scFv;
レーン4:PEG5000-環状Tras-scFv;
レーン5:PEG10000-環状Tras-scFv;
レーン6:PEG20000-環状Tras-scFv;
レーン7:PEG40000-環状Tras-scFv。
PEG化環状Tras-scFvを限外濾過法により濃縮した。濃縮はAmicon Ultra 10 k 0.5 mL(Merck Millipore Ltd.)を用いた。濃縮した非PEG化環状Tras-scFvおよびPEG化環状Tras-scFvは1.25 mg/mLになるようにバッファー(50 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 7.4)を用いて0.5 mLのマイクロチューブに200μL調製した。この溶液を-80℃にて終夜静置することで予備凍結し、凍結乾燥を行った。溶媒が完全に昇華したことを確認し、溶解後のタンパク質濃度が10 mg/mLとなるように超純水25μLを加え、4℃で1時間程度静置し、時々ピペットにより穏やかに混合することにより再溶解させた。
凝集体の量は、360nmにおける吸光度を測定することにより観測することができ、凝集体の量が多いほど360nmにおける吸光度が高くなる。再溶解したscFv溶液について360 nmの吸光度を測定することにより溶解性の評価を行った。測定にはND-1000 Spectrophotometer (Thermo Fisher Scientific) を用いた。その結果を図2と表2に示す。
Figure 2022078884000008
PEG化環状Tras-scFvの抗原親和性の評価を表面プラズモン共鳴測定により行うために、HER2のトラスツズマブ結合領域を含むペプチド断片とグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)の融合タンパク質(GST-HER2)を文献記載の方法により調製した(特許文献2)。
PEG化環状Tras-scFv(PEG2000)の抗原親和性の評価を表面プラズモン共鳴測定により行った。測定には、Biacore T200(Cytiva社)を用いた。測定は、HER2のトラスツズマブ結合領域を含むペプチド断片とグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)の融合タンパク質(GST-HER2)をセンサーチップに固定化して行った。センサーチップはSeries S Sensor Chip CM5(Cytiva社)を用い、GST-HER2の固定化はGST capture kit(Cytiva社)を用いた。25℃の条件において、PEG化環状Tras-scFvをHBS-EPバッファーにより40 nMに調製した後、測定を行った。その結果を図3と表3に示す。
Figure 2022078884000009
また、凍結乾燥前および凍結乾燥後のPEG化環状Tras-scFvの表面プラズモン共鳴測定における最大RU値の比較を行った(図4と表4)。最大RU値は凍結乾燥後に再溶解したTras-scFvの残存活性の指標であり、最大RU値が大きいほど残存活性が高いことを示す。
Figure 2022078884000010
[実施例2]
本実施例においては、GA-pyridineに特異的に結合する73MuL9-scFvを用いた。文献記載の方法により環状73MuL9-scFvを調製した(非特許文献9)。その後、環状73MuL9-scFvに対してポリエリレングリコール(PEG)の修飾を行った。PEG化は実施例1と同様の方法で行った。以下に環状73MuL9-scFvのアミノ酸配列のアミノ酸配列を示す。
CFNGTHHHHHHAAAAQVKLQQSGPSLVKPSQTLSLTCSVTGDSITSGYWNWIRKFPGNKFEYLGYISYSGRTYYNPSLKSRISITRDTSKNQYYLQLNSVTTEDTATYYCSRPYYRYDYAIDYWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIELTQSPAIMSASLGEQVTMTCTASSSVSSSYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLASGVPARFSSSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQSWKAPYTFGGGTKLEIKSGSGSS。
環状73MuL9-scFvとMaleimide PEG(分子量 ; 2,000(SUNBRIGHT ME-020MA)および40,000(SUNBRIGHT ME-400MA))を混合し、4℃においてPEG化反応を行った後、ゲルろ過クロマトグラフィーによりPEG化環状73MuL9-scFvの分離を行った。
バッファー(2 mL ; 50 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 7.4)中に環状73MuL9-scFv(2 μM)、Maleimide PEG(20 μM ; SUNBRIGHT ME-020MAおよびSUNBRIGHT ME-400MA(日油株式会社))の組成で混合し、4℃にて1時間静置することでPEG化反応を行った。その後、ゲルろ過クロマトグラフィーによりPEG化環状73MuL9-scFvの分離を行った。ゲルろ過クロマトグラフィーにはランニングバッファー(50 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 7.4)を用いた。環状73MuL9-scFvを100μg用いてSUNBRIGHT ME-020MAまたはSUNBRIGHT ME-400MAによるPEG化反応を行い、PEG化環状73MuL9-scFvはいずれの場合も 80μg得られた。
精製したPEG化環状73MuL9-scFvのSDS-PAGEの結果を図5に示す。各レーンは以下の通り:
レーン1:分子量マーカー;
レーン2:環状73MuL9-scFv;
レーン3:PEG2000-環状73MuL9-scFv;
レーン4:PEG40000-環状73MuL9-scFv。
PEG化環状73MuL9-scFvを限外濾過法により濃縮した。濃縮はAmicon Ultra 10 k 0.5 mL(Merck Millipore Ltd.)を用いた。濃縮した非環状73MuL9-scFv、非PEG化環状73MuL9-scFvおよびPEG化環状73MuL9-scFvは1.3 mg/mLになるようにバッファー(50 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 7.4)を用いて0.5 mLのマイクロチューブに200μL調製した。この溶液を-80℃にて終夜静置することで予備凍結し、凍結乾燥を行った。溶媒が完全に昇華したことを確認し、溶解後のタンパク質濃度が13 mg/mLとなるように超純水20μLを加え、4℃で1時間程度静置し、時々ピペットにより穏やかに混合することにより再溶解させた。
溶解性の評価は再溶解したscFv溶液の360 nmの吸光度を測定することにより行った。測定にはND-1000 Spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific)を用いた。その結果、PEG40000を修飾した環状73MuL9-scFv と比較して、PEG2000を修飾した環状73MuL9-scFvでは360 nmにおける吸光度が減少し、溶解性が向上していることが明らかとなった(表5)。
Figure 2022078884000011
PEG化環状73MuL9-scFv(PEG2000)の抗原親和性の評価を表面プラズモン共鳴測定により行った。測定はGA-pyridineを含むペプチド(Biotin-Gly-Ala-Gly-(GA-pyrydine)-Gly-Ala-CONH2)をセンサーチップ上に固定化して行った。センサーチップはSeries S Sensor Chip SA (Cytiva社) を用いた。25℃の条件において、PEG化環状73MuL9-scFvをHBS-EPバッファーにより50 nMに調製した後、測定を行った。結果を図6と表6に示す。
Figure 2022078884000012

Claims (13)

  1. 重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)において、そのN末端とC末端が第2のペプチドリンカーで連結されている、環状一本鎖抗体であって、第1および/または第2のペプチドリンカーが1以上のポリエチレングリコール側鎖を有する、前記環状一本鎖抗体。
  2. 第1または第2のペプチドリンカーのいずれかが1つのポリエチレングリコール側鎖を有する、請求項1に記載の環状一本鎖抗体。
  3. 分子内に1つの抗原結合部位を有する、請求項1または2に記載の環状一本鎖抗体。
  4. 第1のペプチドリンカーが15~27個のアミノ酸からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  5. 第2のペプチドリンカーが15~28個のアミノ酸からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  6. ポリエチレングリコール側鎖において、ポリエチレングリコールがリンカーを介して第1または第2のペプチドリンカーのアミノ酸残基に連結する、請求項1~5のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  7. ポリエチレングリコール側鎖部分の分子量が100~20000である、請求項1~6のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  8. ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子に連結している、請求項1~7のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  9. ポリエチレングリコール側鎖が、第1または第2のペプチドリンカーのシステイン残基のS原子の二重結合への付加反応により生じる結合を介して連結する、請求項1~8のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  10. VHおよびVLが同一でポリエチレングリコール側鎖を有さない環状一本鎖抗体と比較して、凝集体形成が抑制されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の環状一本鎖抗体の製造方法であって、
    1)重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が第1のペプチドリンカーで連結された一本鎖抗体(scFv)であって、N末端にスプリットインテインのC末端側断片(Int-C)およびC末端にスプリットインテインのN末端側断片(Int-N)をそれぞれ有する非環状ペプチドを調製する工程;
    2)スプリットインテインによるトランス-スプライシング反応により第2のペプチドリンカーを形成し、前記一本鎖抗体を環化する工程
    3)第1または第2のペプチドリンカーに含まれるシステイン残基にポリエチレングリコール側鎖を導入する工程;
    を含む、前記製造方法。
  12. スプリットインテインのC末端側断片(Int-C)としてDnaE-Int-C、N末端側断片(Int-N)としてDnaE-Int-Nが用いられる、請求項11に記載の製造方法。
  13. ポリエチレングリコール側鎖が第2のペプチドリンカーに含まれるシステイン残基に導入される、請求項11または12に記載の製造方法。
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