JP2022072315A - 液化ガス貯蔵用鋼管 - Google Patents
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Abstract
【課題】天然ガスを液化して船で輸送する貯蔵用容器に好適な鋼管を提供する。【解決手段】鋼板を成形し突き合わせ溶接し、母材が所定の成分を有し、母材の組織が、面積率で30%以上のベイナイト、及び20~60%のフェライトかつフェライトとベイナイトが面積率の総和で90%以上含み、母材のL方向、及びC方向における引張強さが570~760MPa、母材のL方向、及びC方向における降伏応力が520~635MPa、母材の降伏比が90%以下であり、母材の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が100J以上、鋼管の溶接金属部の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が81J以上、鋼管の溶接熱影響部の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が41J以上、鋼管の母材1、溶接金属2および溶接熱影響部の-45℃におけるCTOD値が0.18mm以上である液化ガス貯蔵用鋼管とする。【選択図】図1
Description
本発明は鋼管に関し、特に、船舶用の液化ガス貯蔵容器に好適な鋼管に関する。
原油・天然ガスの長距離輸送方法として、鋼管からなるラインパイプが用いられている。ラインパイプ用の鋼管は、一般的に、鋼板を成形し、鋼板の突き合わせ部を長手方向に内外両面からシーム溶接して製造される。シーム溶接は、通常、開先の一部をガスシールドアーク溶接で仮付溶接した後、サブマージアーク溶接により、鋼管の内面及び外面から一層ずつ溶接して完了する。仮付溶接は後続して行われるサブマージアーク溶接により完全に消去される。
このように製造される鋼管の例としては、UOE鋼管、JCOE鋼管が挙げられる。ラインパイプの溶接継手部は、採掘地の寒冷化や高圧化による輸送効率向上の観点から、高靭化が求められる。
特許文献1は、API規格X65~X70級の溶接鋼管に関し、溶接金属を多数のTiOを核として変態生成した微細なアシキュラーフェライト組織とし、高強度と優れた靭性を両立させることを開示している。
近年、天然ガスを液化して船で輸送するための貯蔵用容器として、複数の鋼管を用いた容器が用いられるようになっている。このような鋼管では、輸送中の振動等を考慮し、ラインパイプ等と比較して、高いレベルでの強度と靭性のバランスが求められる。また、鋼管の母材となる鋼板においてL方向、C方向の双方で高い強度が求められる。
本発明は、上記の事情に鑑み、強度と靭性のバランスに優れた鋼管を得ることを課題とする。
本発明者らは、強度と靭性のバランスに優れた鋼板を得る方法について、鋭意検討した。その結果、母材、及び溶接金属の成分を最適化し、さらに、製造条件を最適化することで、従来よりも強度と靭性のバランスに優れた鋼管を得られることを見出しだ。
本発明は上記の知見に基づきなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]鋼板を成形し突き合わせ溶接した船舶用液化ガス貯蔵容器用の鋼管であって、鋼管の板厚が6~20mmの前記鋼管の母材の成分が、質量%で、C:0.01~0.10%、Si:0.03~0.50%、Mn:0.5~2.0%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Al:0.001~0.050%、Ti:0.005~0.030%、N:0.002~0.006%、O:0.005%以下、Cu:0~0.5%、Ni:0~0.6%、Cr:0~0.5%、Mo:0~0.4%、V:0~0.06%、Nb:0~0.06%、残部:Fe及び不純物であり、かつ、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上の元素の含有量は0%超であり、
前記母材の組織が、面積率で30%以上のベイナイト、及び20~60%のフェライトかつフェライトとベイナイトが面積率の総和で90%以上を含み、前記母材のL方向、及びC方向における引張強さが570~760MPa、前記母材のL方向、及びC方向における降伏応力が520~635MPa、前記母材の降伏比が90%以下であり、前記母材の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が100J以上、前記鋼管の溶接熱影響部の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が41J以上、前記鋼管の溶接金属の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が81J以上、前記鋼管の母材、溶接熱影響部、溶接金属の-45℃におけるCTOD値が0.18mm以上であることを特徴とする液化ガス貯蔵用鋼管。
前記母材の組織が、面積率で30%以上のベイナイト、及び20~60%のフェライトかつフェライトとベイナイトが面積率の総和で90%以上を含み、前記母材のL方向、及びC方向における引張強さが570~760MPa、前記母材のL方向、及びC方向における降伏応力が520~635MPa、前記母材の降伏比が90%以下であり、前記母材の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が100J以上、前記鋼管の溶接熱影響部の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が41J以上、前記鋼管の溶接金属の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が81J以上、前記鋼管の母材、溶接熱影響部、溶接金属の-45℃におけるCTOD値が0.18mm以上であることを特徴とする液化ガス貯蔵用鋼管。
[2]前記母材の化学組成が、前記Feの一部に代えて、B:0~0.002%、Mg:0~0.01%、及びCa:0~0.03%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記[1]の液化ガス貯蔵用鋼管。
[3]前記鋼管の溶接金属の成分が、C:0.03~0.10%、Si:0.03~0.50%、Mn:0.5~2.0%、P:0.015%以下、S:0.010%以下、Al:0.001~0.030%、Ti:0.005~0.040%、N:0.002~0.006%、O:0.015~0.050%、Cu:0~0.6%、Ni:0~0.5%、Cr:0~0.5%、Mo:0~0.4%、V:0~0.06%、Nb:0~0.06%、残部:Fe及び不純物であり、かつ、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上の元素の含有量は0%超であり、0≦α’≦50…(1)、0.3≦Al/O≦0.8…(2)、0.30≦Ceq≦0.50…(3)、0.5≦Pcm≦2.0…(4)を満たし、前記溶接金属の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が54J以上であることを特徴とする前記[1]又は[2]の液化ガス貯蔵用鋼管。ここで、α´、Ceq、Pcmは、それぞれ、α´=(1.5×(O-0.89Al)+3.4×N-Ti)×1000…(5)、Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 …(6)、Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B …(7)で求められる値であり、上記の式(1)(2)、(5)、(6)、(7)の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示す。
[4]前記溶接金属の化学組成が、前記Feの一部に代えて、B:0~0.035%、Mg:0~0.01%、及びCa:0~0.005%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記[3]の液化ガス貯蔵用鋼管。
[5]前記溶接熱影響部の旧γ粒径が120μm以下で、EBSD粒径が100μm以下であることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれかの液化ガス貯蔵用鋼管。
[6]前記溶接金属の組織が、面積率で、アシキュラーフェライト:80%以上、粒界フェライト:10%以下、島状マルテンサイト:3%以下を含み、EBSD粒径が10μm以下であることを特徴とする前記[1]~[5]のいずれかの液化ガス貯蔵用鋼管。
[7]前記母材の組織のベイナイトの分率が、面積率で30%以上、フェライトの分率が、面積率で20~60%であることを特徴とする前記[1]~[6]のいずれかの液化ガス貯蔵用鋼管。
[8]前記鋼管の胴部、及び端部の内径の最大値と最小値の差が20mm以下であることを特徴とする前記[1]~[7]のいずれかの液化ガス貯蔵用鋼管。
本発明によれば、船舶用の液化ガス貯蔵容器に好適な強度と靭性を備えた鋼管を得ることができる。
以下、本発明の実施形態ついて、詳細に説明する。
はじめに、母材の成分について説明する。なお、以下、成分に関する「%」は「質量%」を表すものとする。
C:0.01~0.10%
Cは鋼の強度向上に有効であり、0.01%以上含有させる。C量が多すぎると強度過剰により母材及びHAZの低温靱性が劣化し、さらに、溶接性が劣化するので、C量は0.10%以下とする。好ましくは0.03~0.07%である。
Cは鋼の強度向上に有効であり、0.01%以上含有させる。C量が多すぎると強度過剰により母材及びHAZの低温靱性が劣化し、さらに、溶接性が劣化するので、C量は0.10%以下とする。好ましくは0.03~0.07%である。
Si:0.03~0.50%
Siは脱酸に必要な元素であり、0.03%以上含有させる。Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、Si量は0.50%以下とする。好ましくは0.35%未満である。
Siは脱酸に必要な元素であり、0.03%以上含有させる。Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、Si量は0.50%以下とする。好ましくは0.35%未満である。
Mn:0.5~2.0%
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、その効果を得るために0.5%以上含有させる。Mn量が多いと鋼の焼入れ性が増して、HAZ靱性、溶接性を劣化する。さらに、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、母材の低温靱性が劣化するので、Mn量は2.0%以下とする。好ましくは、1.0~1.8%である。
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、その効果を得るために0.5%以上含有させる。Mn量が多いと鋼の焼入れ性が増して、HAZ靱性、溶接性を劣化する。さらに、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、母材の低温靱性が劣化するので、Mn量は2.0%以下とする。好ましくは、1.0~1.8%である。
P :0.015%以下
S :0.010%以下
P、Sは、いずれも不純物であり、継手の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pは0.015%以下、Sは0.01%以下とする。好ましくは、Pは0.008%以下である。好ましくは、Sは0.003%以下である。
S :0.010%以下
P、Sは、いずれも不純物であり、継手の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pは0.015%以下、Sは0.01%以下とする。好ましくは、Pは0.008%以下である。好ましくは、Sは0.003%以下である。
Al:0.001~0.050%
Alは、脱酸材として鋼材中に含まれる元素である。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、鋼材の焼入れ部分の結晶粒の粗大化を抑制する。Alの含有量が低すぎると、この効果が得られないので、0.001%以上含有させる。Al含有量が高すぎると、粗大なAl2O3が破壊起点となり、母材靭性が低下するので、Al量は0.050%以下とする。好ましくは、0.020~0.040%である。
Alは、脱酸材として鋼材中に含まれる元素である。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、鋼材の焼入れ部分の結晶粒の粗大化を抑制する。Alの含有量が低すぎると、この効果が得られないので、0.001%以上含有させる。Al含有量が高すぎると、粗大なAl2O3が破壊起点となり、母材靭性が低下するので、Al量は0.050%以下とする。好ましくは、0.020~0.040%である。
Ti:0.005~0.030%
Tiは、鋼中で微細なTiNを形成し、その単体、あるいはMg(MgAl2O4)酸化物との複合介在物がピニング粒子として作用する。その結果、HAZのオーステナイト粒の粗大化が抑制されミクロ組織が微細化し、低温靱性が改善する。この効果を得るために、Tiは0.005%以上含有させる。Ti量が多くなると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、靭性が劣化するので、Ti量は0.030%以下とする。好ましくは、0.010~0.020%である。
Tiは、鋼中で微細なTiNを形成し、その単体、あるいはMg(MgAl2O4)酸化物との複合介在物がピニング粒子として作用する。その結果、HAZのオーステナイト粒の粗大化が抑制されミクロ組織が微細化し、低温靱性が改善する。この効果を得るために、Tiは0.005%以上含有させる。Ti量が多くなると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、靭性が劣化するので、Ti量は0.030%以下とする。好ましくは、0.010~0.020%である。
N :0.002~0.006%
NはTiと結合してTiNを形成する元素であり、0.002%以上含有させる。N量が多いと、Tiと結合しなかった固溶Nが靭性を低下させるので、N量は0.006%以下とする。好ましくは、0.003~0.005%である。
NはTiと結合してTiNを形成する元素であり、0.002%以上含有させる。N量が多いと、Tiと結合しなかった固溶Nが靭性を低下させるので、N量は0.006%以下とする。好ましくは、0.003~0.005%である。
O :0.005%以下
Oはピニング粒子を形成する元素である。しかしながら、Oを含有すると鋼の清浄度が低下するので少ない方が好ましく、0.005%以下とする。好ましくは0.003%以下である。
Oはピニング粒子を形成する元素である。しかしながら、Oを含有すると鋼の清浄度が低下するので少ない方が好ましく、0.005%以下とする。好ましくは0.003%以下である。
以下の、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及びNbは、すべての元素が母材に含まれる必要はないが、母材の強度を向上させるため、いずれか1種以上を0%超含有させる。
Cu:0~0.5%
Cuは母材の強度を向上することのできる元素である。Cu量が多くなると、効果は飽和する。Cuの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCu量は0.1~0.5%である。
Cuは母材の強度を向上することのできる元素である。Cu量が多くなると、効果は飽和する。Cuの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCu量は0.1~0.5%である。
Ni:0~0.6%
Niは靭性を低下させることなく、母材の強度を向上することのできる元素である。Ni量が多くなると、効果は飽和する。Niの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNi量は0.1~0.6%である。
Niは靭性を低下させることなく、母材の強度を向上することのできる元素である。Ni量が多くなると、効果は飽和する。Niの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNi量は0.1~0.6%である。
Cr:0~0.5%
Crは母材の強度を向上することのできる元素である。Cr量が多くなると、効果は飽和する。Crの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCr量は0.1~0.5%である。
Crは母材の強度を向上することのできる元素である。Cr量が多くなると、効果は飽和する。Crの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCr量は0.1~0.5%である。
Mo:0~0.4%
Moは母材の強度を向上することのできる元素である。Mo量が多くなると、効果は飽和し、さらに、靭性が低下する。Moの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なMo量は0~0.4%である。
Moは母材の強度を向上することのできる元素である。Mo量が多くなると、効果は飽和し、さらに、靭性が低下する。Moの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なMo量は0~0.4%である。
V :0~0.06%
Nbは母材強度を向上させる元素である。V量が大きくなると、析出硬化によって降伏比が上昇することがある。Vの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なV量は0.01~0.06%である。
Nbは母材強度を向上させる元素である。V量が大きくなると、析出硬化によって降伏比が上昇することがある。Vの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なV量は0.01~0.06%である。
Nb:0~0.06%
Nbは母材強度を向上させる元素である。Nb量が多くなると、島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下する。Nbの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNb量は0.01~0.04%である。
Nbは母材強度を向上させる元素である。Nb量が多くなると、島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下する。Nbの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNb量は0.01~0.04%である。
以上説明した以外の残部は、Fe及び不純物である。不純物とは、原材料に含まれる、あるいは製造の過程で混入する成分であり、意図的に鋼に含有させたものではない成分のことをいう。
母材は、上記のFeの一部に代えて、以下の元素を含有させてもよい。以下に説明する元素の含有は必須ではなく、母材中の含有量は0でもよい。
B :0~0.002%
Bは母材の焼入れ性向上、粒界フェライト形成抑制に有効な元素である。B量が多くなると、効果は飽和する。Bの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なB量は0.001~0.002%である。
Bは母材の焼入れ性向上、粒界フェライト形成抑制に有効な元素である。B量が多くなると、効果は飽和する。Bの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なB量は0.001~0.002%である。
Mg:0~0.01%
MgはMgAl2O4、MgSのような介在物を形成する元素である。MgAl2O4はTiN上に析出する。これらの介在物はピニング粒子として作用し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、低温靱性を改善する。Mg量が多くなると、効果は飽和する。Mgの含有量は0でもよい。
MgはMgAl2O4、MgSのような介在物を形成する元素である。MgAl2O4はTiN上に析出する。これらの介在物はピニング粒子として作用し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、低温靱性を改善する。Mg量が多くなると、効果は飽和する。Mgの含有量は0でもよい。
Ca:0~0.03%
Caは、硫化物系介在物の形態を制御し、低温靱性を向上させる元素である。さらに、リン化物、硫化物を形成して、実質的にPやSの濃度を低減し、硫化物応力割れ抵抗性を向上させる。Ca量が多いと、CaO-CaSが大型のクラスターや介在物となり、靱性に悪影響を及ぼすおそれがある。Caの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCa量は0.01~0.03%である。
Caは、硫化物系介在物の形態を制御し、低温靱性を向上させる元素である。さらに、リン化物、硫化物を形成して、実質的にPやSの濃度を低減し、硫化物応力割れ抵抗性を向上させる。Ca量が多いと、CaO-CaSが大型のクラスターや介在物となり、靱性に悪影響を及ぼすおそれがある。Caの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCa量は0.01~0.03%である。
次に、母材の組織について説明する。
本発明の母材の組織は、面積率で30%以上がベイナイト、及び20~60%のフェライトかつフェライトとベイナイトが面積率の総和で90%以上を含む。前述の成分を有するスラブを後述する製造方法で鋼板とすることにより、このような組織を得ることができる。また、フェライト、ベイナイト以外の残部組織はベイナイト、島状マルテンサイト、セメンタイトおよびパーライトである。
このような組織とすることにより、強度、靭性のバランスが良好なものとなる。具体的には、母材のL方向、及びC方向における引張強さが570~760MPa、母材のL方向、及びC方向における降伏応力が520~635MPa、母材の降伏比が90%以下、母材の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が100J以上とすることができる。
天然ガスを液化して輸送するための貯蔵用容器の用途では、タンクの安全性確保の観点から、初期亀裂がより鋭利となる厳しい破壊条件下での耐破壊特性、具体的には低温域でのCTOD特性に優れることが求められ、特に溶接部のCTOD値が十分に高い必要がある。本発明の鋼管においては、-45℃におけるCTOD値が0.18mm以上である。
次の、好ましい溶接金属の成分について説明する。
C:0.03~0.10%
Cは鋼の強度確保のために必要な元素であり、0.03%以上の含有が必要である。C量が多いと溶接シーム部において溶接高温割れが発生しやすくなるので、上限は0.10%とする。Cは好ましくは、0.05%以上、0.065%以下である。
Cは鋼の強度確保のために必要な元素であり、0.03%以上の含有が必要である。C量が多いと溶接シーム部において溶接高温割れが発生しやすくなるので、上限は0.10%とする。Cは好ましくは、0.05%以上、0.065%以下である。
Si:0.03~0.50%
Siはブローホール防止、アシキュラーフェライト主体の組織とするために0.03%以上の含有が必要である。Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、上限は0.50%とする。Siは好ましくは、0.15%以上、0.25%以下である。
Siはブローホール防止、アシキュラーフェライト主体の組織とするために0.03%以上の含有が必要である。Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、上限は0.50%とする。Siは好ましくは、0.15%以上、0.25%以下である。
Mn:0.5~2.0%
Mnは焼入れ性向上元素として作用する。溶接金属をアシキュラーフェライト主体の組織とするために0.5%以上の含有が必要である。Mn量が多いと、粗大なMnSが形成され、破壊の起点となるため、上限は2.0%とする。Mnは好ましくは、1.2%以上、1.5%以下である。
Mnは焼入れ性向上元素として作用する。溶接金属をアシキュラーフェライト主体の組織とするために0.5%以上の含有が必要である。Mn量が多いと、粗大なMnSが形成され、破壊の起点となるため、上限は2.0%とする。Mnは好ましくは、1.2%以上、1.5%以下である。
P:0.015%以下(0%を含む)
S:0.010%以下(0%を含む)
P、Sは、いずれも不純物であり、継手の靭性を悪化させる元素である。Pは0.015%以下、Sは0.010%以下に制限する。これらの含有量はなるべく低い方が好ましい。好ましくは、Pは0.008%以下である。好ましくは、Sは0.003%以下である。
S:0.010%以下(0%を含む)
P、Sは、いずれも不純物であり、継手の靭性を悪化させる元素である。Pは0.015%以下、Sは0.010%以下に制限する。これらの含有量はなるべく低い方が好ましい。好ましくは、Pは0.008%以下である。好ましくは、Sは0.003%以下である。
Al:0.001~0.030%
Alは脱酸元素として作用し、アシキュラーフェライト核生成サイトとして有効なTi酸化物を分散させるための酸素量制御に必要である。母材希釈を考慮すると、0.001%以上の含有が必要である。Al量が0.030%を超えると、酸化物の生成を阻害し、靭性を確保できないので、上限は0.030%とする。好ましくは0.010%以上、0.015%以下である。
Alは脱酸元素として作用し、アシキュラーフェライト核生成サイトとして有効なTi酸化物を分散させるための酸素量制御に必要である。母材希釈を考慮すると、0.001%以上の含有が必要である。Al量が0.030%を超えると、酸化物の生成を阻害し、靭性を確保できないので、上限は0.030%とする。好ましくは0.010%以上、0.015%以下である。
Ti:0.005~0.040%
Tiは溶接金属中の酸素と反応して、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を形成する。この酸化物を溶接金属中に多数微細分散させるため、0.005%以上の含有が必要である。Ti量が過剰になると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、アシキュラーフェライトの核を生成する能力が低下すること、また、Ti酸化物が破壊の起点となり靭性を確保できないので、上限は0.040%とする。好ましくは0.009%以上、0.015%以下である。
Tiは溶接金属中の酸素と反応して、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を形成する。この酸化物を溶接金属中に多数微細分散させるため、0.005%以上の含有が必要である。Ti量が過剰になると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、アシキュラーフェライトの核を生成する能力が低下すること、また、Ti酸化物が破壊の起点となり靭性を確保できないので、上限は0.040%とする。好ましくは0.009%以上、0.015%以下である。
N:0.002~0.006%
Nはアシキュラーフェライト組織形成のために有効なTi量の調整のために効果的元素であるため、0.002%以上の含有が必要である。しかし、0.006%を超えると、Tiと反応せずに残った固溶Nが著しく靭性を低下させるため、その上限を0.006%とするのが好ましい。好ましくは0.003%以上、0.004%以下である。
Nはアシキュラーフェライト組織形成のために有効なTi量の調整のために効果的元素であるため、0.002%以上の含有が必要である。しかし、0.006%を超えると、Tiと反応せずに残った固溶Nが著しく靭性を低下させるため、その上限を0.006%とするのが好ましい。好ましくは0.003%以上、0.004%以下である。
O:0.015~0.050%
Oはアシキュラーフェライトの核となる酸化物形成のために必要な元素である。そのため0.015%以上の含有が必要である。O量が0.050%を超えると、酸化物の過剰形成、凝集・粗大化により靭性が低下するので、上限は0.050%とする。好ましくは0.020%以上、0.030%以下である。
Oはアシキュラーフェライトの核となる酸化物形成のために必要な元素である。そのため0.015%以上の含有が必要である。O量が0.050%を超えると、酸化物の過剰形成、凝集・粗大化により靭性が低下するので、上限は0.050%とする。好ましくは0.020%以上、0.030%以下である。
以下の、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及びNbは、すべての元素が溶接金属に含まれる必要はないが、溶接金属の強度を向上させるため、いずれか1種以上を0%超含有させる。
Cu:0~0.60%
Cuは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Cuの含有量は0でもよい。0.6%を超えると効果が飽和するので、上限は0.6%とする。
Cuは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Cuの含有量は0でもよい。0.6%を超えると効果が飽和するので、上限は0.6%とする。
Ni:0~0.5%
Niは靭性を低下させることなく、溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Niの含有量は0でもよい。0.5%を超えると効果が飽和するので、上限は0.5%とする。
Niは靭性を低下させることなく、溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Niの含有量は0でもよい。0.5%を超えると効果が飽和するので、上限は0.5%とする。
Cr:0~0.5%
Crは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Crの含有量は0でもよい。0.5%を超えると効果が飽和するので、上限は0.5%とする。
Crは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Crの含有量は0でもよい。0.5%を超えると効果が飽和するので、上限は0.5%とする。
Mo:0~0.4%
Moは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Moの含有量は0でもよい。0.4%を超えると効果が飽和するため、上限を0.4%とする。
Moは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Moの含有量は0でもよい。0.4%を超えると効果が飽和するため、上限を0.4%とする。
V:0~0.06%
Vは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Vの含有量は0でもよい。0.06%を超えると効果が飽和するので、上限は0.06%とする。
Vは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Vの含有量は0でもよい。0.06%を超えると効果が飽和するので、上限は0.06%とする。
Nb:0~0.06%
Nbは強度向上、粒界フェライト抑制に有効な固溶Bを存在させるために有効な元素である。Nbの含有量は0でもよい。Nb量が0.06%を超えると島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下するので、上限を0.06%とする。望ましくは、0.02%である。
Nbは強度向上、粒界フェライト抑制に有効な固溶Bを存在させるために有効な元素である。Nbの含有量は0でもよい。Nb量が0.06%を超えると島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下するので、上限を0.06%とする。望ましくは、0.02%である。
溶接金属の残部はFe及び不純物である。不純物とは、溶接の過程で、溶接ワイヤ、フラックス、鋼板、周辺雰囲気等から混入する成分であり、意図的に含有させたものではない成分のことをいう。
溶接金属は、上記のFeの一部に代えて、以下の元素を含有させてもよい。以下に説明する元素の含有は必須ではなく、溶接金属中の含有量は0でもよい。
B:0~0.035%
Bは固溶状態のBが、溶接金属の粒界フェライト形成を抑制することにより、アシキュラーフェライトの形成を促進する。Bの含有量は0でもよいが、この効果を得るためには0.0001%以上の含有が好ましい。B量が0.035を超えると強度が高くなりすぎて、靭性が低下するので、上限を0.035%とする。溶接金属へのB添加は、厚板母材、フラックス、又はワイヤのいずれからでも添加することができる。例えば、母材がB無添加鋼の場合、B酸化物が含有したフラックスを用いればよい。Bは好ましくは0.0005%以上、0.010%以下である。
Bは固溶状態のBが、溶接金属の粒界フェライト形成を抑制することにより、アシキュラーフェライトの形成を促進する。Bの含有量は0でもよいが、この効果を得るためには0.0001%以上の含有が好ましい。B量が0.035を超えると強度が高くなりすぎて、靭性が低下するので、上限を0.035%とする。溶接金属へのB添加は、厚板母材、フラックス、又はワイヤのいずれからでも添加することができる。例えば、母材がB無添加鋼の場合、B酸化物が含有したフラックスを用いればよい。Bは好ましくは0.0005%以上、0.010%以下である。
Mg:0~0.01%
MgはMgSあるいはMgAl2O4を形成し、ピン止め粒子として作用する。Mgの含有量は0でもよい。溶接金属のオーステナイト粒成長を抑制するためには、0.001%以上の含有が好ましい。0.010%を超えると効果が飽和するので、上限は0.010%とする。好ましくは0.0015%以上、0.0025%以下である。
MgはMgSあるいはMgAl2O4を形成し、ピン止め粒子として作用する。Mgの含有量は0でもよい。溶接金属のオーステナイト粒成長を抑制するためには、0.001%以上の含有が好ましい。0.010%を超えると効果が飽和するので、上限は0.010%とする。好ましくは0.0015%以上、0.0025%以下である。
Ca:0~0.005%
Caは形態制御による延性の改善や組織微細化に有効な元素である。Caの含有量は0でもよい。Ca量が多いと、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性や靭性が劣化するので、上限は0.005%とする。
Caは形態制御による延性の改善や組織微細化に有効な元素である。Caの含有量は0でもよい。Ca量が多いと、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性や靭性が劣化するので、上限は0.005%とする。
本実施形態における溶接金属の成分は、さらに、以下に説明する関係を満たすことが好ましい。
0≦α´≦50
溶接継手の溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるα´が、0~50となることが好ましい。
溶接継手の溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるα´が、0~50となることが好ましい。
α´=(1.5×(%O-0.89%Al)+3.4×%N-%Ti)×1000
α´はAl、O及びTi、Nの化学量論比に基づいて、有効なアシキュラーフェライト生成能を示したパラメーターである。α´を、0~50の範囲に制御することによりアシキュラーフェライト核生成能が向上する。
α´が0未満の場合、Al、Ti量がいずれかが過多、あるいはN、O量が過少となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。α´が50超の場合、Al、Ti量がいずれかが過少、あるいはN、O量が過多となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。
Al/O:0.3~0.8
Al/Oは、Al量とO量の比であり、アルミ脱酸終了後の酸素ポテンシャルを示す指標である。Al/Oを0.3~0.8に制御することで、アシキュラーフェライトの生成量を向上できる。
Al/Oは、Al量とO量の比であり、アルミ脱酸終了後の酸素ポテンシャルを示す指標である。Al/Oを0.3~0.8に制御することで、アシキュラーフェライトの生成量を向上できる。
Al/O比が0.3未満の場合、O量が過多となり、Ti酸化物を形成しなかった溶存酸素が鋼の清浄度を下げるため靭性が低下する。一方、Al/Oが0.8超の場合、Al量が過多となり、Tiと結合するO量が低減し、アシキュラーフェライト核となるTi酸化物が減少し、靭性が低下する。よって、Al/Oは、0.3~0.8とするのが好ましい。
Ceq:0.35~0.50%
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるCeqを0.35~0.50%とするのが好ましい。
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるCeqを0.35~0.50%とするのが好ましい。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15
Ceqは母材の溶接熱影響による硬化能について、各合金元素の硬化能をそれぞれC量に換算して合計したものである。溶接金属が所望の引張り強さを達成するために、Ceqを0.35~0.50%に制御するのが好ましい。
Pcm:0.5~2.0%
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるPcmが0.5~2.0%となるのが好ましい。式中の%Xは、元素Xの溶接金属中の含有量(質量%)を意味する(以降の説明で同じ)。また、溶接金属に添加されない元素はゼロとして計算する(以降の説明で同じ)。
Pcm=%C+%Si/30+(%Mn+%Cu+%Cr)/20+%Ni/60
+%Mo/15+%V/10+5%B
+%Mo/15+%V/10+5%B
溶接金属の引張強さを確保するためには、種々の合金元素をバランスよく含有させることによって、Pcmの値を0.5%以上とするのが好ましい。合金元素を過剰に含有させるとコスト上昇につながるため、Pcmの値は2.0%以下とするのが好ましい。
次に、溶接金属の好ましい金属組織について説明する。
溶接金属の成分とパラメーターを上記の範囲にし、前述の鋼板を、溶接入熱15~60kJ/cmでサブマージアーク溶接を行うと、溶接金属の金属組織はアシキュラーフェライトを主とする組織となるになる。本発明が対象とする鋼管は、板厚が6~20mm程度であり、このような厚さの鋼板をサブマージアーク溶接する際には、溶接入熱15~60kJ/cmの範囲で行う。すると、溶接金属が受ける冷却速度が定まり、最終パスの溶接金属の金属組織が以下のような組織になる。以下に示す割合は、面積率である。
アシキュラーフェライト:80%以上
アシキュラーフェライトはTi系酸化物を核とした針状のフェライト組織であり、その割合が大きいほど、溶接金属部の破壊単位が微細化する。その効果を得るためには、アシキュラーフェライトを80%以上とすることが好ましい。
アシキュラーフェライトはTi系酸化物を核とした針状のフェライト組織であり、その割合が大きいほど、溶接金属部の破壊単位が微細化する。その効果を得るためには、アシキュラーフェライトを80%以上とすることが好ましい。
粒界フェライト:10%以下
粒界フェライトは脆化相の1つで、破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、粒界フェライトは10%以下とすることが好ましい。
粒界フェライトは脆化相の1つで、破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、粒界フェライトは10%以下とすることが好ましい。
島状マルテンサイト:3%以下
島状マルテンサイト脆化相の1つで、非常に硬度が高いため破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、島状マルテンサイトを3%以下とすることが好ましい。
島状マルテンサイト脆化相の1つで、非常に硬度が高いため破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、島状マルテンサイトを3%以下とすることが好ましい。
EBSD粒径:10μm以下
EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)粒径は破壊単位の目安となる結晶粒径サイズである。EBSD粒径が10μm以下であれば破壊単位が微細であり、低温での靭性を確保する面で好ましい。
EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)粒径は破壊単位の目安となる結晶粒径サイズである。EBSD粒径が10μm以下であれば破壊単位が微細であり、低温での靭性を確保する面で好ましい。
上述のような成分、組織とすることで、溶接金属の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーを81J以上とすることができる。
本発明の鋼管は、溶接熱影響部の溶融線第一近接の旧γ粒径が120μm以下で、EBSD粒径が100μm以下であることが望ましい。これにより、破壊単位が微細となり溶接熱影響部の靭性が良好なものとなる。
鋼管を、天然ガスを液化して輸送するための貯蔵用容器として用いる場合は、複数の鋼管を積み重ねて用いる場合があるので、鋼管の真円度が高いとが好ましく、鋼管の胴部、及び端部の内径の最大値と最小値の差が20mm以下であることが好ましい。
次に、本発明の鋼管の製造方法について説明する。
はじめに、前述した母材の化学組成を有する鋼材を公知の方法で溶製し、精錬された溶鋼を連続鋳造法によりスラブとする。次いで、スラブを1000~1200℃に加熱し、仕上げ温度を750~850℃として熱間圧延を行う。
続いて、仕上げ圧延後の鋼板を加速冷却する。母材の組織を前述した所定の組織とし、強度、靭性のバランスを良好なものとするためには、加速冷却の条件が重要である。具体的には、加速冷却の開始温度を740~800℃、加速冷却の停止温度を400~500℃、平均冷却速度を10~100℃/分として、加速冷却を行う。これにより、母材の組織が、面積率で30%以上のベイナイト、及び20~60%のフェライトかつフェライトとベイナイトが面積率の総和で90%以上の混合組織となり、所定の強度、靭性バランスを得ることができる。
次いで、得られた鋼板に、所定形状の開先加工を施す。開先形状としては、たとえば、鋼板の端部を表裏面の両面から溶接可能な開先形状、たとえば、X型開先に加工することができる。開先を加工した端部を突き合わせて内面側からのサブマージアーク溶接を完了させた後、外面側から長手方向にサブマージアーク溶接を実行することにより、本発明の製造できる。
開先内にはフラックスを散布し、サブマージアーク溶接用鋼ワイヤを使用し、入熱15~50kJ/cmの大入熱サブマージアーク溶接により接合する。フラックス及び鋼ワイヤは、特に限定されるものでなく、公知のものを使用することができる。鋼ワイヤを使用する場合、フラックスは、公知の焼成型フラックス、溶融型フラックなどを使用することができ、それによって上述した溶接金属成分を得ることができれば、靱性に優れた溶接金属を得られる。また、必要に応じ、溶接前のフラックス予熱を行ってもよい。
サブマージアーク溶接の方法は、特に限定されるものでなく、多電極のサブマージアーク溶接を含み、公知の溶接法がいずれも適用でき、溶接条件も、特に限定されるものでな
表1の化学組成を有する鋼材を溶製し、精錬された溶鋼を連続鋳造法によりスラブとし、1150℃に加熱後、熱間圧延を施した。その後、熱間圧延の仕上げ温度を780℃として、760~795℃から加速冷却を開始し、400~500℃で加速冷却を停止した。
得られた鋼板の板厚1/4tの位置からそれぞれ、JIS Z 2241(2011)で規定される4号試験片を、圧延方向と平行な方向(L方向)、及びそれと直角な方向(C方向)に採取し、降伏応力(YS)および引張強さ(TS)を測定した。また、試験片長手方向が圧延方向と平行になるようにシャルピー試験片を採取し、-51℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーを測定した。CTOD試験はISO規格に準じて行った。試験片は全厚でB×2Bで採取し、-45℃におけるCTOD値を測定した。
鋼板の組織は、鋼板の圧延方向垂直断面が観察できるようにサンプルを採取し、光学顕微鏡により表面から1mm、板厚1/4、板厚中心部の金属組織を500倍の倍率で撮影し、次に、画像解析ソフトを用いて適切な条件で二値化処理を施した後、フェライトとベイナイトの総面積を求め、撮影部の全面積で除してそれぞれの分率を求めた。結果を表2に示す。
続いて、得られた鋼板にX型開先を形成し、管状に成形し、公知のワイヤ及びフラックスを用いて、管の内面側、外面側の順にサブマージアーク溶接を行い、UO鋼管とした。溶接の際、入熱が65kJ/cm程度となるように、溶接速度などを調整した。表3-1~3-3に溶接金属の成分、Ceq、Pcm、Al/Oおよびα´を示す。
溶接後、溶接金属部、及び溶接熱影響部の組織を観察し、また、シャルピー衝撃試験により-51℃の吸収エネルギーを測定した。
サブマージアーク溶接後、溶接金属組織(アシキュラーフェライト、粒界フェライトと島状マルテンサイトの合計)の面積率(%)、溶接熱影響部の旧γ粒径、溶接金属部と溶接熱影響部のEBSD粒径、溶接継手の引張強さ、溶接金属と溶接熱影響部のシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーおよびCTOD試験のCTOD値を測定した。表4-1~4-3に、その結果を示す。表4-1~4-3におけるAF率、GBF率、MA率はそれぞれ、溶接金属組織におけるアシキュラーフェライト、粒界フェライト、島状マルテンサイトの面積率を示す。
また、溶接欠陥がある場合は「有」、ない場合は「無」とした。表4-1~4-3に結果を示す。ここで、溶接欠陥は高温あるいは低温割れ、ブローホールやスラグ巻き込みのことを言う。
シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーは、次のように測定した。
鋼板の外面表層2mm下の溶接金属部中央および外面表層2mm下の溶接熱影響部と溶接金属が50:50となる溶融線位置からシャルピー試験片を採取し、JIS Z2242に従って、-51℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。吸収エネルギーは、シャルピー衝撃試験を3回行い、その平均値とし、溶接金属は81J未満のもの、溶接熱影響部は41J未満のものを靭性が不良と判断した。
CTOD試験はISO規格に準じて行った。試験片は全厚でB×2Bで、溶接金属の評価用、溶接熱影響部の評価用でそれぞれ採取し、図1に示すように、溶接金属の評価の試験片には溶接金属中央11、溶接熱影響部の評価の試験片には溶接熱影響部と溶接金属が50:50となる溶融線位置12にノッチを入れて、-45℃で試験および評価した。試験はそれぞれ3本行い、CTOD値が3本とも0.18mm未満のものを靭性不良と判断した。表4-1~4-3のCTOD値は、3本の試験結果の最大値である。
組織の面積率は、次のように測定した。
外面表層から肉厚t/4位置の溶接ビード幅の1/2部を試験片採取し、研磨後、ナイタル腐食及びレペラ腐食を行い、現出した組織を光学顕微鏡にて、1000μm×1000μmの範囲で観察される組織を対象に10視野測定し、得られた像を画像解析し、各組織の平均面積率を算出して求めた。
溶接熱影響部の旧γ粒径は、内外面の表層から2mm位置を光学顕微鏡で観察できるように試験片採取し、研磨および旧γ粒を現出する腐食を行い、光学顕微鏡にて溶融線第一近接粒径を50個測定し、その平均粒径を求めた。
EBSD粒径は500μm×500μmの範囲で20視野EBSD解析し、結晶方位差15°で区切ったときの結晶粒サイズの平均とした。
表4-1~4-3に示すように、本発明の溶接継手成分組成を満足する発明例は、いずれも、-51℃におけるシャルピー吸収エネルギーが溶接金属で81J、溶接熱影響部で41J以上、-45℃におけるCTOD値が溶接金属および溶接熱影響部で0.18mm以上であり、優れた溶接金属部および溶接熱影響部靱性を有するものであった。
それに対して、本発明の溶接継手成分組成を満足しない比較例は、いずれも、-51℃におけるシャルピー吸収エネルギーが溶接金属で81J、溶接熱影響部で41J未満、-45℃におけるCTOD値が溶接金属および溶接熱影響部で0.18mm未満であり、溶接金属部及び溶接熱影響部靱性が低くなった。
本発明によれば、厚鋼板に大入熱溶接を実施して接合した場合であっても、溶接金属部の靱性に優れた縦シーム溶接鋼管を提供することができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。
1 母材
2 溶接金属
11 溶接金属中央
12 溶接熱影響部と溶接金属が50:50となる溶融線位置
2 溶接金属
11 溶接金属中央
12 溶接熱影響部と溶接金属が50:50となる溶融線位置
Claims (8)
- 鋼板を成形し突き合わせ溶接した船舶用液化ガス貯蔵容器用の鋼管であって、
前記鋼管の母材の成分が、質量%で、
C :0.01~0.10%、
Si:0.03~0.50%、
Mn:0.5~2.0%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.001~0.050%、
Ti:0.005~0.030%、
N :0.002~0.006%、
O :0.005%以下、
Cu:0~0.5%、
Ni:0~0.6%、
Cr:0~0.5%、
Mo:0~0.4%、
V :0~0.06%、
Nb:0~0.06%、
残部:Fe及び不純物
であり、
かつ、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上の元素の含有量は0%超であり、
前記母材の組織が、面積率で30%以上のベイナイト、及び20~60%のフェライトかつフェライトとベイナイトが面積率の総和で90%以上を含み、
前記母材のL方向、及びC方向における引張強さが570~760MPa、
前記母材のL方向、及びC方向における降伏応力が520~635MPa、
前記母材の降伏比が90%以下
であり、
前記母材の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が100J以上、
前記鋼管の溶接熱影響部の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が41J以上、
前記鋼管の溶接熱影響部の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が81J以上
前記鋼管の母材、溶接金属および溶接熱影響部の-45℃におけるCTOD値が0.18mm以上
であることを特徴とする液化ガス貯蔵用鋼管。 - 前記母材の化学組成が、前記Feの一部に代えて、
B :0~0.002%、
Mg:0~0.01%、及び
Ca:0~0.03%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。 - 前記鋼管の溶接金属の成分が、
C :0.03~0.10%、
Si:0.03~0.50%、
Mn:0.5~2.0%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.001~0.030%、
Ti:0.005~0.040%、
N :0.002~0.006%、
O :0.015~0.050%、
Cu:0~0.6%、
Ni:0~0.5%、
Cr:0~0.5%、
Mo:0~0.4%、
V :0~0.06%、
Nb:0~0.06%、
残部:Fe及び不純物
であり、
かつ、Cu、Ni、Cr、Mo、V、及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上の元素の含有量は0%超であり、
0≦α’≦50 …(1)
0.3≦Al/O≦0.8 …(2)
0.30≦Ceq≦0.50 …(3)
0.5≦Pcm≦2.0 …(4)
を満たし、
前記溶接金属の-51℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE-51が81J以上
であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。
ここで、α´、Ceq、Pcmは、それぞれ、
α´=(1.5×(O-0.89Al)+3.4×N-Ti)×1000
…(5)
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 …(6)
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15
+V/10+5B …(7)
で求められる値であり、上記の式(1)(2)、(5)、(6)、(7)の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示す。 - 前記溶接金属の化学組成が、前記Feの一部に代えて、
B :0~0.035%、
Mg:0~0.01%、及び
Ca:0~0.005%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。 - 前記溶接熱影響部の旧γ粒径が120μm以下で、EBSD粒径が100μm以下
であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。 - 前記溶接金属の組織が、面積率で、
アシキュラーフェライト:80%以上
粒界フェライト:10%以下
島状マルテンサイト:3%以下
を含み、EBSD粒径が10μm以下
であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。 - 前記母材の組織のフェライトの分率が、面積率で20%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。
- 前記鋼管の胴部、及び端部の内径の最大値と最小値の差が20mm以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の液化ガス貯蔵用鋼管。
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