JP2022071350A - 凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022071350000001
【課題】凍結細胞内包液滴の解凍などの取り扱いにかかる作業性を向上させることができる凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置を提供する。
【解決手段】インクジェットの技術(インクジェット装置10)によって細胞内包液滴を冷却されたキャリア部材30の表面へ吐出することで、そのキャリア部材30の表面に凍結・付着された凍結細胞内包液滴20を、キャリア部材30に衝撃を与えることによってそのキャリア部材30の表面から剥がして分離する。衝撃が与えられるキャリア部材30の凍結細胞内包液滴20が付着された面に対面して開口する容器であって冷却された冷却容器33の中へ、衝撃によってキャリア部材30から分離された凍結細胞内包液滴20を貯留させることができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、インクジェット技術によって細胞内包液滴を冷却されたキャリア部材の表面へ吐出することで、該キャリア部材の表面に凍結・付着された凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置に関する。
細胞の凍結保存技術は、細胞を取り扱う多くの研究分野及び臨床医療において必要不可欠な技術のひとつである。細胞をそのまま通常の速度で凍結すると、凍結過程において細胞内外の水分子が結晶化し、これが細胞膜や細胞小器官を傷つけることにより、細胞に致死的ダメージを与える。そのため、既存の凍結手法では、ジメチルスルホキシドやグリセロールなどの凍結保護剤を添加し、細胞内部の水分子の結晶化を抑制しガラス化状態にすることで凍結保存を実現していた。しかし凍結保護剤の細胞毒性や,凍結過程における細胞内部への浸透圧差による脱水作用が問題視されていた。
これに対し本発明者は、インクジェット技術を用いて微小液滴内に細胞を内包し、液体窒素で冷却された基板に吐出することで、細胞を凍結保護剤無しに超瞬間的に凍結保存する装置を開発してきた。本装置では、細胞内外の水分子を、結晶化する前にガラス転移温度(Tg:-137℃)にさせることで、ガラス化状態にしている。なお,本装置を一般的な動物細胞に用いた場合、従来法とほぼ同等な生存率を示し、また未分化細胞においては解凍後に未分化状態が確認された(非特許文献1参照)。
そして、図4に示すように、従来の解凍操作では、凍結細胞内包液滴20が、付着されたガラス基板100と共に解凍容器40に貯留された解凍液42へ投入されることで、そのガラス基板100から剥離されると共に解凍されて解凍細胞21となる。なお、41は解凍容器の蓋である。この図4に示した従来の解凍操作では、ピンセット200を用いてアルミニウムキャリア300を把持し、そのアルミニウムキャリア300に載置された基板(ガラス基板100)の運搬を手動で行っており、室温中でそのガラス基板100を運搬することによる昇温が確認されている。この昇温によって液滴温度がガラス転移温度を超え、細胞内外の水分子が急速に結晶化することで、解凍後の生存率の低下や,液滴間の昇温差による生存率の分散の原因となると考えられる。
また、従来の手動による解凍操作では、図4に示すように、凍結細胞内包液滴20を、その凍結細胞内包液滴20が付着されたガラス基板100と共に解凍液42へ投入しており、ガラス基板100に熱を奪われるため、細胞の解凍速度が低下するという現象が生じる。すなわち、ガラス基板100の熱伝導率の方が凍結細胞内包液滴20よりも高く、熱がガラス基板100の方へより移動し易くなるため、細胞の解凍速度が低下することになる。その結果、従来のガラス基板100を介した手動による解凍操作では、解凍後の生存率をさらに高めることが難しかった。
さらに、この従来の方法では、ガラス基板100に凍結細胞内包液滴20を付着した状態で細胞の保存を行うことになるため、多数のガラス基板100が必要になって、その保存方法が課題となる。そして、薄いガラス基板100は、割れ易く、取り扱いにより注意を要し、作業性を向上させることが難しいという課題がある。
Cryoprotectant-free cryopreservation of mammalian cells by superflash freezing Yoshitake Akiyama, Masato Shinose, Hiroki Watanabe, Shigeru Yamada, and Yasunari Kanda PNAS April 16, 2019 116 (16) 7738-7743; first published April 1, 2019 https://doi.org/10.1073/pnas.1808645116 Edited by Robert H. Austin, Princeton University, Princeton, NJ, and approved March 4, 2019 (received for review June 27, 2018)
凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置に関して解決しようとする課題は、従来の手動による解凍操作では、凍結細胞内包液滴を、その凍結細胞内包液滴が付着されたガラス基板と共に解凍液へ投入しており、ガラス基板を別に回収する工程を必要とするなど、作業が煩雑になる点にある。
そこで、本発明の目的は、凍結細胞内包液滴の解凍などの取り扱いにかかる作業性を向上させることができる凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法の一例によれば、インクジェット技術によって細胞内包液滴を冷却されたキャリア部材の表面へ吐出することで、該キャリア部材の表面に凍結・付着された凍結細胞内包液滴を、前記キャリア部材に衝撃を与えることで該キャリア部材の表面から剥がして分離する。
また、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法の一例によれば、衝撃が与えられる前記キャリア部材の前記凍結細胞内包液滴が付着された面に対面して開口する容器であって冷却された冷却容器の中へ、衝撃によって前記キャリア部材から分離された前記凍結細胞内包液滴を貯留させることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法の一例によれば、前記冷却容器に貯留された凍結細胞内包液滴を、解凍液へ投入し、該解凍液の中で解凍させることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法の一例によれば、前記凍結細胞内包液滴が付着された前記キャリア部材が下方を向いた状態で衝撃を与え、該キャリア部材の下方に置かれた解凍液へ落下させることで投入し、該解凍液の中で前記凍結細胞内包液滴を解凍させることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる前述の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の一例によれば、前記キャリア部材を移動させる移動体を備える移動手段と、前記キャリア部材及び前記移動体の移動の停止によって衝撃を与えるように、該キャリア部材又は移動体に衝突するように配されたストッパとを備えることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる前述の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の一例によれば、前記キャリア部材を保持する保持体を備える保持手段と、前記キャリア部材又は前記保持体に打撃によって衝撃を与える打撃手段とを備えることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる冷却容器を用いる凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の一例によれば、前記冷却容器を冷却する冷却手段と、該冷却手段から前記冷却容器を移動させて該冷却容器に貯留された前記凍結細胞内包液滴を解凍液へ投入させる冷却容器の移動手段を備えることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の一例によれば、前記キャリア部材が金属プレートであることを特徴とすることができる。
本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置によれば、凍結細胞内包液滴の解凍などの取り扱いにかかる作業性を向上させることができるという特別有利な効果を奏する。
本発明に関連する凍結方法と凍結状態を示す説明図である。 インクジェット技術を用いた超瞬間凍結装置の概要(左)を示す説明図と、格子状にパターニングされた凍結細胞内包液滴(中)と、基板に付着された凍結細胞内包液滴の単体の形状(右)を示す顕微鏡写真である。 各凍結条件における細胞の生存率を示すグラフである。 ガラス基板に付着された凍結細胞内包液滴を解凍する工程であって、従来の手動操作による方法を示す説明図である。 本発明に係る凍結細胞内包液滴の取扱方法の工程図であって、(a)はインクジェット技術で細胞内包液滴が瞬間的に凍結する工程を示す説明図、(b)は反転の衝撃で凍結細胞内包液滴を容器内へ落下させて貯める工程を示す説明図である。 本発明に係る凍結細胞内包液滴の取扱方法の工程図であって、(a)はインクジェット技術で細胞内包液滴が瞬間的に凍結する工程を示す説明図、(b)は打撃の衝撃で凍結細胞内包液滴を容器内へ落下させて貯める工程を示す説明図である。 本発明に係る凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置であって、インクジェット技術で細胞内包液滴を瞬間的に凍結させ、反転の衝撃で凍結細胞内包液滴を冷却容器内へ落下させて貯める工程を示す説明図である。 凍結細胞内包液滴が貯められた冷却容器の蓋を閉めた保管状態を示す説明図である。 凍結細胞内包液滴が貯められた冷却容器を反転させ、解凍液が貯留された解凍液容器へ、凍結細胞内包液滴を投入している状態を示す説明図である。 本発明に係る凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置であって、凍結細胞内包液滴が付着されたキャリア部材をばねヒンジの力で反転させて衝撃を与え、解凍液が貯留された解凍容器へ、キャリア部材から分離された凍結細胞内包液滴を投入している状態を示す説明図である。
本発明の前提技術となるインクジェット技術を用いた細胞内包液滴の瞬間凍結について、添付図面(図1~3)に基づいて説明する。
生きた生体試料の凍結保存技術は、細胞(iPS細胞やES細胞を含む各種細胞株)の系統維持、生殖医療や畜産などにおける***や卵子保存、微生物の系統維持など、生物、医学、農業など非常に幅広い分野において活用されている。このような細胞を単純にそのまま凍結した場合、水が結晶化し氷の粒(氷晶)を形成してしまい、これが細胞膜や細胞内小器官を破壊し、細胞に致死的ダメージを与えてしまうため、細胞は死滅してしまう(図1上)。生きたまま凍結保存するためには、凍結する際に、細胞内および周辺の水を結晶化させるのではなく、液体同様にランダムな分子構造のまま固体化(ガラス化)する必要があることが知られている。
そこで、現在用いられている凍結保存法は、ジメチルスルホキシド(DMSO)やグリセロールなどの凍結保護剤を添加することで、この氷晶の生成を防いでいる。例えば、緩慢凍結法では、凍結保護剤を10%程度加えた状態で、ゆっくりと冷却する。それにより、主に細胞外の水のみが徐々に凍結する。その結果、冷却が進むにつれて、細胞外液の濃度が高まり細胞は脱水され、最終的にガラス化される(図1中)。
しかし、凍結保護剤自身の細胞毒性や、細胞の未分化状態への影響など報告されており、理想的には凍結保護剤の添加を避けることが望ましいと言える。そこで、先に、本発明者は、超高速で冷却(超瞬間凍結)することで、従来誰もなし得なかった凍結保護剤を必要としない細胞の凍結保存法に挑戦した(図1下)。
従来、細胞をガラス化するために必要な冷却速度(臨界冷却速度)は、毎秒1万℃程度だと言われているが、そのような冷却速度で凍結することは困難だった。これまでにも、スプレーやインクジェットによる微小液滴を利用した急速冷却による細胞の凍結保存が試みられてわれているが、凍結保護剤の添加は必須だった。
これに対して、本発明者は、インクジェットによる細胞印刷技術において、これまでよりもさらに小さい200および40ピコリットルの液滴とし、液体窒素で冷却したガラス基板上に吐出する装置を開発した。図2(左)に示すように、ガラス製のインクジェットヘッド11のノズルから吐出された液滴は、液体窒素12で冷却されたアルミニウム製の土台15の上に設置されたガラス基板100の上に着滴する。液体窒素12は発泡スチロール製容器16にて保持されており、この容器16ごと、2軸の自動ステージ18の上に設置してある。この自動ステージ18とインクジェットヘッド11は同期して動くように、パーソナルコンピュータによって制御されており、任意の位置に液滴を吐出することができる。その一例として、図2(中)に格子状に吐出した蛍光色素溶液の様子を示す。
次に、実際に開発した装置による冷却速度が臨界冷却速度を超えているのかどうか、COMSOL Multiphysics(計測エンジニアリング)による伝熱解析により推測した。まず、200ピコリットルの液滴で、通常のガラス基板(150マイクロメートル厚)の場合は、毎秒7千℃強と臨界冷却速度を下回った。一方、40ピコリットルの液滴の場合は、通常基板において毎秒2万2千℃と臨界冷却速度を上回り、冷却速度をさらに高めるために極薄ガラス基板(5マイクロメートル厚)としたところ、毎秒3万7千℃にまで達した。以上のように、液滴サイズを40ピコリットルとすることで、凍結保護剤フリーの細胞凍結に必要な臨界冷却速度毎秒1万℃を達成できることが確認できた。また、顕微ラマン分光や高速度カメラによる観察によっても、40ピコリットルの場合、液滴がほぼガラス化していることを確認した。
そして、実際にマウス繊維芽細胞株3T3を用いて凍結実験を行い、その生存率を従来法であるDMSOを用いた緩慢凍結法と比較した。その結果を図3に示す。比較のために行った緩慢凍結法における3T3細胞の生存率は83.4%だった。まず、200ピコリットルを通常基板に吐出した場合の生存率は、15.6%と大きく緩慢凍結法を下回った。これは、伝熱解析における冷却速度が不十分であるという結果と一致する。次に、40ピコリットルの液滴を通常の基板に吐出した場合は、75.3%とほぼ同等たった。さらに極薄ガラス基板とすることで、86.5%まで上昇した。以上から、通常基板および極薄ガラス基板問わず、液滴サイズを40ピコリットルとすることで、凍結保護剤フリーの細胞凍結保存法を確立することに成功した。
また、以上の手法をマウス筋芽細胞株C2C12などに適用し、汎用的に用いることが出来ることを確認した。これによって、世界で初めての凍結保護剤不要の動物細胞凍結保存を、インクジェット技術を利用した超瞬間凍結により実現した。今後はより多くの細胞への適用が期待される。特に、凍結保護剤の影響が懸念されるヒトiPS細胞やその分化細胞、凍結保護剤の添加が望ましくない輸血用の血液細胞などが挙げられ、創薬や再生医療などへの応用が期待される。また、従来の凍結手法では凍結保存のできない細胞や微生物も数多く存在しており、このような細胞種への適用も期待される。
次に、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法及びそれに用いる装置の実施例を、添付図面(図5~10)に基づいて詳細に説明する。
本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法は、図5~7に示すように、インクジェット技術(インクジェット装置10)によって細胞内包液滴を冷却されたキャリア部材30の表面へ吐出することで、そのキャリア部材30の表面に凍結・付着された凍結細胞内包液滴20(図5(a)、図6(a)など参照)を、キャリア部材30に衝撃を与えることでそのキャリア部材30の表面から剥がして分離することを特徴とする。
このように、凍結細胞内包液滴20が衝撃によってキャリア部材30の表面から剥離されるのは、細胞内包液滴が、インクジェット技術でノズル(インクジェットヘッド11)から吐出されてキャリア部材30の表面に到達するまでに表面張力によって球体の形態となり、凍結してその球体の形態で凍結細胞内包液滴20となり、キャリア部材30の表面に付着(着滴)していることに起因している。
すなわち、凍結細胞内包液滴20が衝撃によってキャリア部材30の表面から剥離できるのは、この球形の凍結細胞内包液滴20の容積が、例えば40ピコリットル程度の場合、その凍結細胞内包液滴20の大きさは、直径で50μm程度となり、球体状(図2(右)参照)であるためキャリア部材30の表面に接している部分の面積が小さいと共に、十分に慣性力が作用する大きさであるため、衝撃の作用によってキャリア部材30の表面から剥離(分離)できることによる。
また、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法の一例としては、衝撃が与えられるキャリア部材30の凍結細胞内包液滴20が付着された面に対面して開口する容器であって冷却された冷却容器33の中へ、衝撃によってキャリア部材30から分離された凍結細胞内包液滴20を貯留させることができる。また、この操作(貯留工程)を繰り返し行うことで、大量の凍結細胞内包液滴20を一つの冷却容器33内に貯めることができる。この凍結細胞内包液滴を衝撃によってキャリア部材30から分離させて冷却容器33の中へ貯める工程は、凍結細胞内包液滴20のガラス化凍結状態を維持できる所定の温度以下に冷却された冷凍冷却雰囲気中で行うことで、細胞の生存率を高めることができる。
そして、上述のようにキャリア部材30の表面から剥離された凍結細胞内包液滴20を、図8に示すように冷却容器33内に貯めた状態で蓋34をして適切に保存することができる。また、貯留工程を一つの冷却容器33について複数回繰り返すことで、より数の多い凍結細胞内包液滴20をその冷却容器33内に貯めることができ、よりコンパクトに収納して保存できる。この冷却容器33の具体例としては、例えばポロプロピレン製クライオチューブであり、市販のものを利用できる。これによれば、図2(左)及び図4に示した従来のガラス基板100を用いることなく、また、本形態例で示したキャリア部材30を多数用いることなく、多数の凍結細胞内包液滴20を効率よく保存することが可能になる。また、ガラス基板100を用いないため、割れてしまう心配がなく、さらに解凍の際には、ガラス基板100を解凍液42へ投入する必要がないため、作業性が向上する。
そして、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法の一例としては、前述の冷却容器33に貯留された凍結細胞内包液滴20を解凍液42へ投入し、その解凍液42の中で解凍させることができる。この際に、この解凍液42へ投入する際の凍結細胞内包液滴20の移動距離(解凍液42に達するまでの距離)を短くすることで、凍結細胞内包液滴20の移動中の温度上昇を抑制低減することができ、細胞の生存率を高めることができる。また、多数の凍結細胞内包液滴20が集まって形成された塊である凝集体として投入することが可能になり、投入速度を高めることができるため、細胞の生存率を高めることができる。
すなわち、解凍液42の温度は、たとえば、体温に相当する37℃に設定されるが、その解凍液の熱によって凍結細胞内包液滴20の移動中に、その凍結細胞内包液滴20が温められてしまい、例えば、水のガラス化を維持できる温度である-137℃の温度帯を、所要の急速な昇温速度によらないで通過した場合に、結晶化が起こって生存率を低下させる。このため、凍結細胞内包液滴20は、ガラス化されている凍結状態から素早く解凍する必要があり、凍結細胞内包液滴20を解凍容器40に貯留された解凍液42へ投入するための時間を極力短くすることが求められる。従って、前述のように凍結細胞内包液滴20の移動距離を短くしたり、凍結細胞内包液滴20の移動の速度を高めたりすることが必要である。なお、凍結細胞内包液滴20の移動速度を高めるためには、例えば、気流による搬送力、衝撃力や慣性力を用いることなど、既知の技術を適宜選択的に適用できるのは勿論である。
前述では、冷却容器33内に貯めた状態で冷凍保存する工程と、そのように保存されたものを解凍する工程を含む場合について主に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多数のキャリア部材30によって、多数の凍結細胞内包液滴20を保存してもよいのは勿論である。なお、そのように多数のキャリア部材30を用いて凍結保存した場合は、多数の凍結細胞内包液滴20を解凍する直前に一旦冷却容器33に貯めて、その直後に解凍容器40に貯留された解凍液42へ投入しても良いし、解凍する前にその冷却容器33に貯めた状態でさらに保存しても良い。
また、本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法である解凍方法の実施例によれば、図10に示すように、凍結細胞内包液滴20が付着され保存されていたキャリア部材30が下方を向いた状態で衝撃を与え、そのキャリア部材30の下方に置かれた解凍液42へ落下させることで投入し、その解凍液42の中で凍結細胞内包液滴20を解凍させることができる。これによれば、キャリア部材30に付着された凍結細胞内包液滴20を、直接的に解凍液42へ投入することができる。
また、前述の本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の形態例としては、図5(b)、7、10に示すように、キャリア部材30を移動させる移動体51を備える移動手段50と、キャリア部材30及び移動体51の移動の停止によって衝撃を与えるように、そのキャリア部材30又は移動体51に衝突するように配されたストッパ55とを備えることができる。なお、本形態例では、キャリア部材30とばねヒンジ52の一部とによって移動体51を構成している形態になっているが、本発明の移動体51はこれに限定されるものではなく、キャリア部材30とは別体に分離できる部分として移動体51が設けられてもよい。
これによれば、キャリア部材30に付着された凍結細胞内包液滴20を、そのキャリア部材30から剥離させて分離する装置を合理的に構成できる。なお、図5(b)、7、10に示した形態例では、ばねヒンジ52による弾性力を用いて、移動体51(キャリア部材30)を反転させる機構になっている。
すなわち、図5(b)、7、10に示した形態例では、基本構成として前述の図2(左)と同様に、インクジェットヘッド11、液体窒素12で冷却されたアルミニウム製の土台15、発泡スチロール器容器16及び2軸の自動ステージ18を備えており、フレーム17を介して発泡スチロール製容器16を構成要素とする保温性の高いチャンバーが、2軸の自動ステージ18に搭載された装置形態となっている。そして、キャリア部材30を移動させる移動手段50として、フレーム17を基部としてそのフレーム17上に装着されたばねヒンジ52とそのばねヒンジ52の付勢力(弾性力)によるキャリア部材30の回転を阻止するロッカー53とを備えている。
この移動手段50によれば、ロッカー53によってキャリア部材30がロックされている状態では、そのキャリア部材30が、液体窒素12でアルミニウム製の土台15を介して冷却され、前述のようにインクジェットヘッド11から吐出された細胞内包液滴が凍結されて着滴される。そして、ロッカー53を引くことでキャリア部材30に掛かっていたロックが外れ、キャリア部材30の回転が始まる。すると、本形態例では、キャリア部材30が約180度回転した後に、そのキャリア部材30の被衝突部31がストッパ55に当たる。そのキャリア部材30が当たった衝撃で、凍結細胞内包液滴20が叩き落とされる状態で落下する。なお、このときの移動速度である回転速度は、具体例として本形態例では、最大で11.1°/msで回転し、20msで、その回転を終える速度になっていた。なお、本発明にかかる移動手段50としては、この形態例のような回転運動を用いる機構に限らず、直線運動を用いる機構など、物質を移動させる既知の手段を適宜選択的に用いることができるのは勿論である。
また、前述の本発明にかかる他の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の形態例としては、図6(b)に示すように、キャリア部材30を保持する保持体61を備える保持手段60と、キャリア部材30又は保持体61に打撃によって衝撃を与える打撃手段62とを備えることができる。
これによっても、キャリア部材30に付着された凍結細胞内包液滴20を、そのキャリア部材30から剥離させて分離する装置を合理的に構成できる。なお、図6(b)に示した実施例では、ハンマー状の打撃手段62によって、打撃による衝撃を与える機構になっている。すなわち、キャリア部材30又は保持体61に所要の力の衝撃を与えることができれば、凍結細胞内包液滴20をキャリア部材30から剥がして分離できるため、その衝撃を与える方法は、図5(b)や図6(b)に示したものに限定されるものではなく、既知の装置構成を適宜選択的に用いることができるのは勿論である。
また、前述の冷却容器を介在させる凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の形態例としては、図9に示すように、冷却容器33を冷却する冷却手段と、その冷却手段から冷却容器33を移動させてその冷却容器33に貯留された凍結細胞内包液滴20を解凍液42へ投入させる冷却容器の移動手段70を備えることができる。
なお、本発明にかかる凍冷却容器の移動手段70は、図9では把持手段のみを記載しているが、冷却容器33を保持して移動させるものであり、アームロボット装置など、既知の物質を移動させる手段を適宜選択的に用いることができ、特に限定されるものではない。また、凍結細胞内包液滴20の移動時間を短縮してする細胞の生存率を高めるためには、前述のように凍結細胞内包液滴20の移動距離を短くしたり、凍結細胞内包液滴20の移動速度を高めたりすることが必要であり、さらに凍結細胞内包液滴20の移動速度を高めるためには、例えば、気流による搬送力、衝撃力や慣性力を用いることなど、既知の技術を適宜選択的に適用できるのは勿論である。
なお、図7及び図9に示した本実施例の冷却手段は、断熱性の高いチャンバー35と液体窒素12とによって構成されている。また、図7及び図9では図示されていないが、凍結細胞内包液滴20をキャリア部材30から剥がして分離する作業空間は、凍結細胞内包液滴20がガラス凍結した状態を維持できるように、冷却空間になっている。
さらに、前述の本発明にかかる凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置の形態例としては、キャリア部材30を金属プレートとすることができる。なお、本形態例のキャリア部材30は、アルミニウム製の金属プレートになっている。この金属プレートによれば、衝撃に強いと共に熱伝導性が高く、キャリア部材30としての機能性を満足できる。
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
10 インクジェット装置
11 インクジェットヘッド
12 液体窒素
15 アルミニウム製の土台
16 発泡スチロール製容器
17 フレーム
18 2軸の自動ステージ
20 凍結細胞内包液滴
21 解凍細胞
30 キャリア部材
31 被衝突部
33 冷却容器
34 蓋
35 チャンバー
40 解凍容器
41 蓋
42 解凍液
50 移動手段
51 移動体
52 ばねヒンジ
53 ロッカー
55 ストッパ
60 保持手段
61 保持体
62 打撃手段
70 冷却容器の移動手段
100 ガラス基板
200 ピンセット
300 アルミニウムキャリア

Claims (8)

  1. インクジェット技術によって細胞内包液滴を冷却されたキャリア部材の表面へ吐出することで、該キャリア部材の表面に凍結・付着された凍結細胞内包液滴を、前記キャリア部材に衝撃を与えることで該キャリア部材の表面から剥がして分離することを特徴とする凍結細胞内包液滴の取扱方法。
  2. 衝撃が与えられる前記キャリア部材の前記凍結細胞内包液滴が付着された面に対面して開口する容器であって冷却された冷却容器の中へ、衝撃によって前記キャリア部材から分離された前記凍結細胞内包液滴を貯留させることを特徴とする請求項1記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法。
  3. 前記冷却容器に貯留された凍結細胞内包液滴を、解凍液へ投入し、該解凍液の中で解凍させることを特徴とする請求項2記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法。
  4. 前記凍結細胞内包液滴が付着された前記キャリア部材が下方を向いた状態で衝撃を与え、該キャリア部材の下方に置かれた解凍液へ落下させることで投入し、該解凍液の中で前記凍結細胞内包液滴を解凍させることを特徴とする請求項1記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置であって、
    前記キャリア部材を移動させる移動体を備える移動手段と、
    前記キャリア部材及び前記移動体の移動の停止によって衝撃を与えるように、該キャリア部材又は移動体に衝突するように配されたストッパとを備えることを特徴とする凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置。
  6. 請求項1~4のいずれかに記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置であって、
    前記キャリア部材を保持する保持体を備える保持手段と、
    前記キャリア部材又は前記保持体に打撃によって衝撃を与える打撃手段とを備えることを特徴とする凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置。
  7. 請求項3記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置であって、
    前記冷却容器を冷却する冷却手段と、
    該冷却手段から前記冷却容器を移動させて該冷却容器に貯留された前記凍結細胞内包液滴を解凍液へ投入させる冷却容器の移動手段を備えることを特徴とする請求項4又は5記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置。
  8. 前記キャリア部材が金属プレートであることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の凍結細胞内包液滴の取扱方法に用いる装置。
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