JP2022050493A - 癌を治療する方法における使用のための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRad3関連タンパク質キナーゼ(ATR)の阻害剤 - Google Patents

癌を治療する方法における使用のための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRad3関連タンパク質キナーゼ(ATR)の阻害剤 Download PDF

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Abstract

【課題】BAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する癌を有する個体を治療する方法を提供する。【解決手段】毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)で癌を有する個体を治療するための方法であって、(a)前記癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、及び(b)癌が1以上のBAF複合体遺伝子の変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のための前記個体を選択すること、及び(c)前記個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、及び(d)前記個体に治療有効量のATR阻害剤を投与することを含む、方法とする。【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、BAF複合体欠損癌を治療する方法において使用するための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRad3関連タンパク質キナーゼ(ATR)阻害剤に関し、特に、ATR阻害剤を用いてARID1A欠損癌などの癌の治療に合成致死を利用するための材料及び方法に関する。本発明はさらに、BAF複合遺伝子の変異癌又は欠損癌の治療に使用するためのATR阻害剤を特定する方法を提供する。ATR阻害剤を用いる滑膜肉腫の治療に関する医療用途及び方法も提供される。
発明の背景
毎年、新しい抗癌剤承認の大半は既存の標的に対するものであるが、新規分子に対してライセンス供与される化合物は、わずか2又は3種である。これは、標的の数が限られていることを示唆するというよりむしろ、疾患の病因に決定的なタンパク質の特定及び検証に伴う困難さ、時間及び費用を反映している。その結果、多くの重要なタンパク質が薬物化されないままであり、結局、新しい治療法を開発する機会が失われる。この状況は、疾患の発症と関連している経路の根底にある重要な分子標的を特定する手法を使用することによって改善され得る。例えば、遺伝子を選択的に不活化又はノックアウトできる遺伝子標的化などの技術が強力であり得る。しかしながら、このような手法は、そのコスト及び低いスループットによって制限される。さらに、癌治療に対する現在の手法は、それらの根底にある分子病態が異なるにもかかわらず、類似した臨床表現型をグループ化する場合が多い。この分子異質性の結果は、個体が薬物治療に対して様々な相違を頻繁に示すことである。このように、個々の癌の根本的な分子生物学を標的とする治療は、ますます魅力的な手法になってきている。
ATR(毛細血管拡張性運動失調症の変異した(ATM)Rad3関連タンパク質キナーゼ)は、細胞DNA損傷応答(DDR)の重要な構成要素である(1)。ATRは、複製ストレスの結果として頻繁に生じる一本鎖DNAの領域によって活性化される(2~4)。癌遺伝子の活性化は、複製ストレス及びATRチェックポイント機能への依存を誘導でき、癌治療薬としての小分子ATR阻害剤(ATRi)の使用のための1つの理論的根拠を提供する(5)。最近、現在第I相臨床試験中であるVE-821及びVX-970(別名VE-822)(Vertex)を含む強力かつ特異的なATRiが発見された(5)。しかしながら、今日まで、標準的なDNA修復遺伝子であるERCC1(10)、XRCC1(11)及びATM(12)の欠損のみが、単剤ATRi感受性の予測バイオマーカーとして提案されている。標準的なDDRを超えるプロセスがATRiの感度に影響を与える可能性があるかどうか、かつ他の一般的に発生する癌のドライバー遺伝子がこれらの薬剤に対する応答を変える可能性があるかどうかも明らかではない。
新しい治療方法、特に、異なる型の癌の遺伝的依存性を標的にする方法に対する必要性が依然として当技術分野に存在する。
本発明の概要
概して、本発明は、ATR阻害剤感受性のバイオマーカーとしての合成致死性遺伝因子を特定しようとする研究に基づいている。これらの結果は、ATR阻害剤VE-821及びVX-970を用いた例示的な証拠に基づいている。前臨床試験において、VE-821は、いくつかのDNA損傷剤の細胞傷害性効果を増強することが示され(6~9)、ATR阻害剤(ATRi)が化学増感剤としての臨床的有用性を有する可能性があることを示唆する。しかしながら、ATRiが、癌の治療のために、例えば単剤として使用され得る状況は、あまり明確ではない。
ATRのキナーゼ活性を阻害する薬物(ATRi)は、主に化学感受性剤として、癌の治療のための第1相臨床試験に最近入った。単剤ATRi応答の遺伝的決定因子を明らかにするために、本発明に至る研究は、一連の合成致死遺伝子スクリーニングを行い、BAF複合体の腫瘍抑制遺伝子ARID1Aの欠損が、インビトロ及びインビボの両方でATRiに対して腫瘍細胞を深く感作することを見出した。ATRiは、ARID1A変異細胞における早期有糸***の開始、ゲノム不安定性及びアポトーシスを誘発し、影響は既存のトポイソメラーゼ及びDNA脱連環(decatentation)欠損によっておそらく引き起こされる。BAF複合体欠損は、ヒト腫瘍の約20%に存在する。本明細書に記載の研究は、他のBAF腫瘍抑制遺伝子の阻害もATRi感受性を引き起こすことを見出し、この合成致死手法が広い有用性を有し得ることを示唆する。このデータはしたがって、ATRi応答のバイオマーカーとして評価されるBAF欠損についての前臨床の及び機構的な根拠を提供する。下記の研究において、発明者らは、単剤ATRi感受性の臨床的に実用的な決定要因を特定することを目的とした。大規模な遺伝子スクリーニングを使用して、発明者らは、ATRiの合成致死標的としてBAF構成要素のARID1Aを特定した。このデータに基づいて、本発明は、ARID1A及びBAF欠損がATRi感受性の臨床的に有用なバイオマーカーとして役立ち得ることを提案する。
スイッチ/ショ糖非発酵(SWI/SNF)クロマチンリモデリング複合体は、腫瘍抑制の役割を有するARID1A、SMARCA4及びSMARCB1などのタンパク質を含む、複数の構成要素から構成されている(13)。SWI/SNF複合体のタンパク質組成は大きく変動するが、SWI/SNFの2つの主要なバージョンであるBAF及びPBAFが存在する(14)。グループとしてとらえると、SWI/SNFの構成要素は、全てのヒト腫瘍の約20%において変異していると推定され、この複合体の喪失を癌における最も一般的な変化の1つにしている(13)。
加えて、滑膜肉腫と関連する遺伝子における転位もBAF複合体欠損を引き起こすことが知られているように、そのような遺伝子転位欠陥を含有する細胞株はATR阻害剤に感受性であることが実験によって実証されたので、本発明はATR阻害剤での滑膜肉腫の治療に及ぶ。実験は、細胞株が、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ(ATR)を標的にするssRNAi分子に感受性であるので、この効果が一般的であることを実証する。
本発明において、ATRへの言及は、毛細血管拡張性運動失調症の変異した(ATM)RAD3関連タンパク質キナーゼを表す。本発明において、ATRへの言及は、HGNC ID:882を有する毛細血管拡張性運動失調症の変異した(ATM)RAD3関連タンパク質キナーゼを表す。ATRについてのHUGO遺伝子記号報告は、ATR核酸及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene Symbol report?hgnc id=HGNC:882で見つけることができる。
ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B、及び/又はPBRM1から選択される1以上のBAF複合体遺伝子が変異又は欠損している癌の治療で使用するための、特に、BAF複合体遺伝子ARID1Aが変異又は欠損している癌の治療のためのATRの阻害剤(ATRi)が開示される。
したがって、第1の態様において、本発明は、癌を有する個体を治療する方法において使用するための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)を提供し、ここで癌は1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損している。
さらなる態様において、本発明は、1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損している癌を有する個体を治療する方法において使用するための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)を提供し、方法は:
(a)個体から得られた試料において、癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定すること、及び
(b)癌が1以上のBAF複合体遺伝子変異又は欠損を有する個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること、
を含む。
一例として、変異又は欠損したBAF複合体遺伝子は、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B、及び/又はPBRM1の1以上から選択される。より好ましくは、変異又は欠損したBAF複合体遺伝子は、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4及びSMARCB1の1以上から選択され、より好ましくは、変異又は欠損したBAF複合体遺伝子はARID1Aである。
さらなる態様において、本発明は、滑膜肉腫を有する個体を治療する方法において使用するための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)を提供する。
さらなる態様において、本発明は、SSX1、SSX2又はSS18から選択される1以上の遺伝子で変異又は欠損している滑膜肉腫を有する個体を治療する方法において使用するための、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)を提供し、方法は:
(a)個体から得られた試料において、癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定すること、並びに
(b)癌がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される1以上の遺伝子に変異又は欠損を有する個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること、
を含む。
変異又は欠損は、SS18-SSX1又はSS18-SSX2融合タンパク質をコードする転位であり得る。
さらなる態様において、本発明は、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)で治療するための癌を有する個体を選択する方法を提供し、方法は:
(a)個体から得られた試料において、癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定すること、及び
(b)癌が1以上のBAF複合体遺伝子変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のための個体を選択すること、及び
(c)この個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、
を含む。
任意選択で、本方法はさらに、個体に治療有効量のATR阻害剤を投与することを含んでよい。
さらなる態様において、本発明は、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)を用いて、癌を有する個体を治療するための方法を提供し、方法は:
(a)個体から得られた試料において、癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定すること、及び
(b)癌が1以上のBAF複合体遺伝子変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のための個体を選択すること、及び
(c)この個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、及び
(d)この個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること、
を含む。
さらなる態様において、本発明は、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)での治療のための、滑膜肉腫を有する個体を選択する方法を提供し、方法は:
(a)個体から得られた試料において、滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される1以上の遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定すること、及び
(b)滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される上記1以上の遺伝子に1以上の変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のために個体を選択すること、並びに
(c)この個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、
を含む。
変異又は欠損は、SS18-SSX1又はSS18-SSX2融合タンパク質をコードする転位であり得る。
任意選択で、本方法はさらに、個体に治療有効量のATR阻害剤を投与することを含んでよい。
さらなる態様において、本発明は、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)を用いて、滑膜肉腫を有する個体を治療するための方法を提供し、方法は:
(a)個体から得られた試料において、滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される1以上の遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定すること、並びに
(b)滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される上記1以上の遺伝子に1以上の変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のために個体を選択すること、並びに
(c)この個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、並びに
(d)この個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること、
を含む。
変異又は欠損は、SS18-SSX1又はSS18-SSX2融合タンパク質をコードする転位であり得る。したがって、本方法は、滑膜肉腫がSS18-SSX1又はSS18-SSX2融合タンパク質をコードする転位を有するかどうかを決定する工程を含んでよい。
さらなる態様において、癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損しているかどうかを決定するために試料を試験する工程は、個体の癌性細胞又は非癌性細胞から得られた核酸配列で実行される。適切な技術は当技術分野で周知であり、ダイレクトシーケンシング、プローブへのハイブリダイゼーション、制限断片長多型(RFLP)分析、一本鎖高次構造多型(SSCP)、特異的対立遺伝子のPCR増幅、PCRによるDNA標的の増幅に続くミニシーケンシングアッセイ、PCR中の対立遺伝子の特定、遺伝子ビット分析、パイロシーケンシング、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、融解曲線の分析、ヘテロ接合性の喪失(LOH)についての試験又は次世代シーケンシング(NGS)技術の使用を含む。
他の実施形態において、試験は、個体の癌性細胞又は非癌性細胞から得られるRNA配列で実行される。さらに別の実施形態において、試験は、個体の癌性細胞又は非癌性細胞から得られるタンパク質で実行される。
本発明の実施形態は、これから添付の図面を参照しながら一例として説明されるが、それに限定されるものではない。しかしながら、本発明の様々なさらなる態様及び実施形態は、本開示の観点から当業者には明らかであろう。
本明細書で使用する「及び/又は」は、他のものの有無に関わらず、2つの特定の特徴又は構成要素の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、それぞれが個々に本明細書に記載されているかのように、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びB、の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。
文脈が特に指示しない限り、上述した特徴の記載及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
RNAiスクリーニングはATRi感受性の遺伝的決定要因を明らかにする。A.VE-821の構造並びにMCF12A及びHCC1143細胞での平行VE-821化学増感スクリーニングについての概略を説明するワークフロー。B.化学増感スクリーニングで使用された全1280種のsiRNAからのVE-821薬物効果(DE)Zスコアの散布図。候補の合成致死相互作用を定義するために使用した-2(赤線)のDE Zスコア閾値が示される。C.MCF12A及びHCC1143細胞でのDEが-2未満のVE-821感作ヒットのベン図。示される数字は、感作遺伝子の数を示す。両方の細胞株におけるDE Zスコアが-2未満の30個の遺伝子の中で、7個の十分に確立された腫瘍抑制遺伝子を特定した。D.化学増感スクリーニングにおける対照、非標的化siRNA(siALLSTAR、siCON1、siCON2)及びARID1A siRNAのDE Zスコアを示す棒グラフ。示される値は、3回のスクリーニングの中央値であり、エラーバーはSDを表す。E.siRNA標的化ARID1A(赤)又はsiCon1(青)でトランスフェクトしたHCC1143細胞からの384ウェルプレート細胞生存データ。トランスフェクション後24時間の時点で、細胞を5日間連続してVE-821に暴露した。エラーバーは3回の実験からのSDを表す。生存曲線siARID1A対siCON1 p値<0.0001、ANOVA。F.実験(E)からのARID1Aタンパク質サイレンシングを示すウェスタンブロット。 インビトロでのARID1A/ATR合成致死。A.VX-970の化学構造。B.ヒトARID1A同質遺伝子HCT116細胞におけるARID1Aのウェスタンブロット。C.6ウェルプレートクローン原性アッセイにおけるコロニーの画像。HCT116 ARID1A同質遺伝子(+/+及び-/-)細胞株を、14日間、漸増濃度のVE-821(0、0.1、1μM)及びVX-970(0、0.01、0.05μM)に曝露した。D及びE.14日間、漸増濃度のVE-821及びVX-970に暴露したHCT116 ARID1A同質遺伝子(+/+及び-/-)細胞株の用量応答クローン原性生存曲線。エラーバーは、3回の実験のSDを表し、ANOVA p値は0.0001未満である。F.5日間、VX-970に曝露したヒト腫瘍細胞株の曲線下面積(AUC)ボックスウィスカー比較プロット。ARID1A野生型腫瘍細胞株(n=15)を、ARID1A変異細胞株(n=9)と比較した。スチューデントt検定 p=0.00594。G.マウスArid1a同質遺伝子ES細胞株の用量応答クローン原性生存曲線。実験を、(c)に従って実行した。エラーバーは、3回の実験のSDを表し、ANOVA p値は0.0001未満である。H.マウスES Arid1a同質遺伝子細胞でのArid1aタンパク質発現のウェスタンブロット。I.ATR siRNAでトランスフェクトした86種のヒト腫瘍細胞株のZスコアボックスウィスカー比較プロット。細胞株をsiRNAでトランスフェクトし、細胞生存率をCell Titre Glo試薬により5日後に推定した。ARID1A野生型(n=65)及びARID1A変異体(n=21)のATR siRNAのZスコアは、統計的に異なることが見出された(p=0.0084、メジアン並べ替え検定)。 インビボでのARID1A/ATR合成致死。A.確立されたHCT116ARID1A+/+及びARID1A-/-異種移植片を有するマウスにおけるVX-970療法実験の概略。細胞をヌードマウスの皮下に接種し、10日間、腫瘍を確立させた。マウスを次いでVX-970(60mg/kg、経管栄養によって週4回)又はビヒクルのいずれかの治療レジメンに無作為化した。マウスを次いで、その後40日間処置した。腫瘍体積を週に2回監視した。B.VX-970の有効性及びARID1A-/-異種移植片に関する選択性を示す(A)からの相対腫瘍体積プロット p=0.024、ANOVA。C.非確立HCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-異種移植片を有するマウスにおける腫瘍発生率実験の概略。マウスに、以前のように細胞を接種し、無作為化し、次いでVX-970で処置した。VX-970又はビヒクル処置を細胞移植の日に開始した。腫瘍体積を週に2回監視し、全体的な腫瘍の発生率を40日後に評価した。D.HCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞の移植後40日の時点の発生率の棒グラフ。各群は15匹の動物を含有し、バーの上の割合は、測定可能な異種移植片が形成した動物の数を示す。p=0.027フィッシャーの直接検定。E及びF.(c)に記載の実験における腫瘍増殖。p=0.015 ANOVA。G.TOV21G(ARID1A変異体)及びRMG1(ARID1A野生型)細胞からのVX-970の用量反応曲線。細胞を5日間、VX-970に暴露した。H.細胞溶解前の24時間、漸増濃度のVX-970に暴露したTOV21G細胞におけるPARP切断を示すウェスタンブロット。陽性対照として、細胞溶解前に細胞をカンプトテシン(Cpt;1μM、24時間)に曝露した。PARP-1、切断したPARP-1(85kDaの断片)及びチューブリンを、ウェスタンブロットにより検出した。I.24時間、漸増濃度のVX-970に暴露したRMG1及びTOV21G細胞におけるアポトーシスの割合を示す棒グラフ。カスパーゼ3/7活性を、Caspase-Gloを用いて評価し、全細胞生存率を、CellTitre-Gloを用いて推定した。Caspase-Glo(すなわち、アポトーシス細胞)及びCellTitre-Glo(すなわち、生存細胞)の発光比を各用量について決定し、DMSO処理試料に対して規準化した。スチューデントt検定、p<0.05。J.確立したTOV21Gを有するマウスにおけるVX-970療法実験の概略図。実験を(A)に従って実行したが、28日間だけ処置した。K.TOV21G異種移植片におけるVX-970の有効性を示す(J)からの相対腫瘍体積プロット。p=0.014、ANOVA。L.28日間の処置後のTOV21G異種移植片の画像。 ARID1A欠損細胞は、染色体脱連環欠損によりG2/M細胞周期チェックポイントに依存している。A.二重チミジンブロックによってG1/早期S期で同期され新鮮な培地中に放出された、HCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞におけるG2/Mの割合を示す棒グラフ。放出後0、7、8、9及び10時間の時点での細胞周期のG2/M期にある細胞のパーセンテージを示す。B.セリン10上のヒストンH3のリン酸化を有する細胞の相対量を示す棒グラフ。示されるところで、HCT116 ARID1A+/+細胞をsiARID1Aでトランスフェクトした。48時間後、細胞を固定し、FITC-P-S10ヒストンH3及びヨウ化プロピジウムで染色した。有糸***細胞(P-S10陽性及び2N)を、FACSによって定量化した。アスタリスクは、示される比較の間でスチューデントt検定による統計的に有意な差を示す。C.HCT116 ARID1A+/+とARID1A-/-の両方の細胞の細胞質画分におけるサイクリンB1タンパク質を示すウェスタンブロット。D.ARID1A+/+と比較したHCT116 ARID1A-/-細胞において上昇した後期ブリッジレベルを示す棒グラフ。細胞をDAPIで染色した。50個の後期の最小値を、3回の生物学的反復実験でスコア化した。p=0.038、スチューデントt検定。E.(E)における実験からの正常後期及び後期ブリッジの代表的な画像。スケールバーは20μmを表す。F.核及びクロマチン結合TOP2Aのウェスタンブロット。示される細胞株を、siRNA標的化ARID1A又は対照siRNAでトランスフェクトした。48時間後、細胞内画分を単離し、得られたウェスタンブロットを、示されるタンパク質について免疫ブロットした。G.(F)由来のTOP2Aタンパク質の定量化を示す棒グラフ。H.OCCC細胞株からの核及びクロマチン結合TOP2Aのウェスタンブロット。実験を、(F)に従って実行した。 細胞周期の進行、染色体不安定性、DNA損傷及びアポトーシスに対するATRi効果。A.二重チミジンブロックによってG1/早期S期で同期されDMSO又はVX-970(500nM)を含有する新鮮な培地中に放出された、HCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞におけるG2/Mの割合を示す棒グラフ。G2/M中の細胞のパーセンテージをPI染色後にFACSによって測定した。B.VX-970(0.5μM、8時間)に曝露したHCT116 ARID1A-/-及びARID1A+/+細胞において上昇した後期ブリッジレベルを示す棒グラフ。細胞をDAPIで染色した。50個の後期の最小値を、3回の生物学的反復実験でスコア化した。p=0.023、スチューデントt検定。C.固定前の8時間、VX-970(0.5μM)又はDMSOに暴露したTOV21G細胞における後期ブリッジの頻度を示す棒グラフ。実験を(B)に従って実行した。p=0.006スチューデントt検定。D.DMSO又はVX-970(1μM)のいずれかへの曝露後のHCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞からの有糸***の広がりの画像。スケールバーは20μmを表す。E.VX-970(1μM)に暴露したHCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞における染色体異常の程度を示す棒グラフ。p<0.05、スチューデントt検定。F.細胞溶解前に、示した時間の間VX-970(0.5μM)に暴露したHCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞におけるγΗ2ΑΧを示すウェスタンブロット。G.24時間、漸増濃度のVX-970に曝露した細胞におけるアポトーシスの割合を示す棒グラフ。実験を図3Iに従って実行した。H.VX-970に曝露したHCT116 ARID1A+/+及びARID1A-/-細胞におけるPARP切断を示すウェスタンブロット。実験を図3Hに従って実行した。 BAF複合体欠損はATR阻害に対する感受性を引き起こす。A.ヒト細胞におけるBAF複合体組成物の概略図。B.siRNA標的化ARID1B又はSMARCA4でトランスフェクトしたHCT116細胞からのVX-970用量反応曲線。トランスフェクション後48時間で、細胞をVX-970に5日間暴露した。エラーバーは3回の実験からのSDを表す。siCONに対するsiARID1B及びsiSMARCA4についてはp<0.0001、ANOVA。C.実験(B)におけるARID1B及びSMARCA4サイレンシングを示すウェスタンブロット。D.4つのOCCC細胞株である、3つのSMARCA4野生型(青;RMG1、KK及びES2)並びに1つのSMARCA4変異体(赤;TOV112D)からのVX-970用量反応曲線。E.SMARCA4又はARID1Aのいずれかを標的とするsiRNAでトランスフェクトしたHCC1143及びHela細胞における5日間のVX-970暴露後の生存の割合を示す棒グラフ。siConと比較したスチューデントt検定によってp<0.05。F.ARID1A、ARID1B又はSMARCA4を標的とするsiRNAでトランスフェクトしたHCT116細胞中のクロマチン結合TOP2Aのレベルを示すウェスタンブロット。細胞を、トランスフェクション後48時間時点で分析した。G.ATRiに対するARID1A欠損細胞の感受性を促進する提案された機構のモデル。ARID1A(又はARID1B/SMARCA4)への機能喪失ゲノム改変は、BAF複合体の機能不全をもたらす。これは次に、クロマチンへのTOP2Aの結合を減少させ、染色体脱連環の効率を低下させる。脱連環欠損は、ATR依存性のG2/M細胞周期チェックポイントを活性化し、細胞が連結された染色体を分離するのを可能にする。ATRiに暴露されたBAF欠損細胞は、連結された染色体と共に有糸***に進む。これは、DNA切断、染色体不安定性及び最終的にアポトーシスをもたらす。 遺伝子依存性プロファイリングは、滑膜肉腫腫瘍細胞における遺伝子依存性としてATRを特定する。A.滑膜肉腫(SS)腫瘍細胞株を、5つの平行して行うsiRNAスクリーニングに使用した。B.siRNAのスクリーニングの概略図(左)、高効率トランスフェクションを示すHS-SY-IIからのsiRNA Zスコア(siPLK1のZスコアは低く示されている、中間)及び2つのHS-SY-II siRNAスクリーニングからの例示的レプリカsiRNA Zスコア(右)。C~E.siRNAスクリーニングで特定されたSS腫瘍細胞株における候補遺伝子依存性。siRNA Zスコアは、非SS腫瘍細胞株(「パネル」)と比較した5つのSS腫瘍細胞株(「SS」)について示される。示されるp値は、中央値並べ替えt検定から導出した。 ATR遺伝子依存性滑膜肉腫腫瘍細胞-パート1。A.腫瘍細胞株の癌組織学に従って分類した、図7に記載のsiRNAスクリーニングからのATR siRNA Zスコア。B.ATRi耐性HCT116細胞と比較した、ATR小分子阻害剤(ATRi)VX970に対するSS腫瘍細胞株の感受性を示す用量反応生存曲線。細胞を5日間薬物に暴露し、細胞生存率をCellTiter-Gloを用いて推定した。各SS腫瘍細胞株についての、HCT116に対する用量反応ANOVA p<0.0001。C.ATRi耐性ARID1A野生型HCT116細胞(HCT116 ARID1A+/+)及びARID1A欠損HCT116細胞(HCT116 ARID1A-/-)と比較した、VX970に対するSS腫瘍細胞株の感受性を示す用量応答生存曲線。細胞を5日間薬物に暴露し、細胞生存率をCellTiter-Gloを用いて推定した。各SS腫瘍細胞株及びHCT116 ARID1A-/-についての、HCT116 ARID1A+/+に対する用量反応ANOVA p<0.0001。D.腫瘍細胞株におけるVX970曲線下面積(AUC)。ARID1A欠損細胞を「ARID1A-/-」として示し、ユーイング肉腫腫瘍細胞株を「EWS」として示す。E.確立した滑膜肉腫PDX、SA13412を有するマウスにおけるVX970での処置に対する抗腫瘍応答。VX970の処置開始後の腫瘍体積の中央値を示す。エラーバーは平均値の標準誤差(SEM)を表す。F.(E)からのデータのカプラン・マイヤー生存プロット。ログランクマンテルp=0.026。G.HCT116細胞における滑膜肉腫の融合タンパク質の発現を示すウェスタンブロット。SSX1の最後の8個の残基を欠失した(Δ71~78)SS18-SSX1変異体を、d71~78として示す。H.HCT116細胞における滑膜肉腫の融合タンパク質の発現後のAXIN2 mRNAの誘導を示す棒グラフ。I~K.HCT116細胞における滑膜肉腫融合タンパク質の発現がATRi感受性を引き起こすことを示す用量応答生存曲線。SSX18-SSX1又はSSX18-SSX2の発現はATRi感受性を引き起こすが、Δ71~78の発現は引き起こさない。 ATR遺伝子依存性滑膜肉腫腫瘍細胞-パート2。A.ATR siRNAはSS腫瘍細胞において細胞阻害を引き起こす。細胞をATR siRNAでトランスフェクトし、細胞生存率を5日後にCell Titre Gloの使用により推定した。生存の割合を示す棒グラフを左及び中央に示す。ATRタンパク質サイレンシングを示すウェスタンブロットを右に示す。腫瘍細胞株の癌組織学に従って分類した、図7に記載のsiRNAスクリーニングからのZスコア。B.ATRi耐性HCT116細胞及び非腫瘍細胞(HFF1、MCF10A)と比較した、ATR小分子阻害剤(ATRi)VX970に対するSS腫瘍細胞株の感受性を示す用量反応生存曲線。細胞を5日間薬物に暴露し、細胞生存率をCellTiter-Gloを用いて推定した。各SS腫瘍細胞株についての、HCT116に対する用量反応ANOVA p<0.0001。C.VX970に暴露した腫瘍細胞株におけるVX970生存の割合50値。ARID1A欠損細胞を「ARID1A-/-」として示し、ユーイング肉腫腫瘍細胞株を「EWS」として示す。D、E.ATRi耐性HCT116細胞と比較した、追加のATRi小分子阻害剤(ATRi)AZD6738、AZ20及びVE821に対するSS腫瘍細胞株の感受性を示す用量応答生存曲線。細胞を5日間薬物に暴露し、細胞生存率を、CellTiter-Gloを用いて推定した。 ATR阻害剤は、SS腫瘍細胞において複製フォークストレスを誘発する。A.Caspase-Gloによって推定される、VX970へのSYO1細胞の曝露によって引き起こされるアポトーシスを示す棒グラフ。エラーバーは3回の実験からのSEMを表す。p値はスチューデントt検定から導出した。B.24時間、VX970に暴露したSYO1細胞におけるPARP1切断を示すウェスタンブロット。C.VX970(0.1μΜ)に暴露したSYO1細胞におけるH2AXのリン酸化(γΗ2ΑΧ)を示すウェスタンブロット。D.VX970(0.1μΜ、24時間)に暴露したSYO1細胞におけるH2AXのリン酸化を示す共焦点顕微鏡画像。E.(D)からのデータを示す棒グラフ。エラーバーは、100枚の画像からのSEMを表す。p値はスチューデントt検定から導出した。F.2時間、0.1μΜのVX970に暴露したSYO1細胞における複製フォーク速度。p値はスチューデントt検定から導出した。G.SS18-SSX1融合タンパク質の異所性発現の存在下及び非存在下で2時間、0.1μΜのVX970に暴露したHCT116細胞における複製フォーク速度。p値はスチューデントt検定から導出した。SS18-SSX1の発現又はVX970への暴露は、フォーク速度を低下させた。組み合わせたSS18-SSX1発現とVX970の暴露は、フォーク速度の低下を増強した。H及びI.VX970に暴露したSYO1細胞からのFACSプロット。0.1μΜのVX970暴露は、S期の細胞の増加及びサブG画分の増加を引き起こす。
詳細説明
SWI/SNF BAF欠損と関連する以下の遺伝子に欠損(変異、発現喪失)を有する癌
本発明において、1以上のBAF複合体遺伝子で変異又は欠損している癌への言及は、そのタンパク質生成物がマルチサブユニットSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体「BRG1関連因子又はHRBM関連因子」(BAF)及びポリブロモ関連BAF(PBAF)を含むメンバーを表す。それらは、転写、複製、及びDNA修復中のATP依存性クロマチンリモデリングプロセスを媒介し、分化及び増殖に重要である。複合体のいくつかの構成要素は、腫瘍抑制因子として機能する(参照により本明細書に組み込まれるReisman,Oncogene 28:1653-1668,2009を参照されたい)。BAF複合体遺伝子は、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2及びSMARCD3、SMARCE1、ACTL6A及びACTL6B、並びにPBRM1を含むが、これらに限定されない。
本発明において、ARID1Aへの言及は、HGNC ID:11110を有するATリッチ相互作用ドメイン1Aを示す。ARID1AについてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、ARID1A核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11110で見つけることができる。ARID1Aは、ヒトの癌で頻繁に欠失している領域である[17]、1p36.11[15]に位置する。
本発明において、ARID1Bへの言及は、HGNC ID:18040を有するATリッチ相互作用ドメイン1Bを示す。ARID1BについてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、ARID1B核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:18040で見つけることができる。
本発明において、ARID2への言及は、HGNC ID:18037を有するATリッチ相互作用ドメイン2を示す。ARID2についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、ARID2核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:18037で見つけることができる。
本発明において、SMARCA2への言及は、HGNC ID:11098を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーメンバー2を示す。SMARCA2についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCA2核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11098で見つけることができる。
本発明において、SMARCA4への言及は、HGNC ID:11100を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーメンバー4を示す。SMARCA4についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCA4核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11100で見つけることができる。
本発明において、SMARCB1への言及は、HGNC ID:11103を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーbメンバー1を示す。SMARCB1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCB1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11103で見つけることができる。
本発明において、SMARCC1への言及は、HGNC ID:11104を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーcメンバー1を示す。SMARCC1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCC1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11104で見つけることができる。
本発明において、SMARCC2への言及は、HGNC ID:11105を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーcメンバー2を示す。SMARCC2についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCC2核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11105で見つけることができる。
本発明において、SMARCD1への言及は、HGNC ID:11106を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーdメンバー1を示す。SMARCD1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCD1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11106で見つけることができる。
本発明において、SMARCD2への言及は、HGNC ID:11107を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーdメンバー2を示す。SMARCD2についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCD2核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11107で見つけることができる。
本発明において、SMARCD3への言及は、HGNC ID:11108を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーdメンバー3を示す。SMARCD3についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCD3核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11108で見つけることができる。
本発明において、SMARCE1への言及は、HGNC ID:11109を有する、SWI/SNF関連マトリックス結合アクチン依存性クロマチン調節因子のサブファミリーeメンバー1を示す。SMARCE1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SMARCE1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11109で見つけることができる。
本発明において、ACTL6Aへの言及は、HGNC ID:24124を有するアクチン様6Aを示す。ACTL6AについてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、ACTL6A核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:24124で見つけることができる。
本発明において、ACTL6Bへの言及は、HGNC ID:160を有するアクチン様6Aを示す。ACTL6BについてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、ACTL6B核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:160で見つけることができる。
本発明において、PBRM1への言及は、HGNC ID:30064を有するポリブロモ1を示す。PBRM1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、PBRM1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:30064で見つけることができる。
滑膜肉腫と関連する以下の遺伝子に遺伝子転位欠陥を有する癌
滑膜肉腫(SS)は、主に青年及び若年成人(AYA)に影響を与える、高悪性度で治療が困難な種類の軟部組織肉腫である。SSは予後が不良で治療選択が限られている(Nielsen、Poulinら、2015)が、ほとんどの場合、局在性SSは、時々化学療法又は放射線療法と組み合わせて、手術で治療される。この設定における化学療法は、通常、ドキソルビシン又はイホスファミドからなる(Spurrell、Fisherら、2005)。進行した転移性SSを有する患者は、特に長期生存率が不良である。例えば、遠隔転移を有するものは、局所腫瘍を有する患者の69%と比較して、わずか8.9%の10年生存率を有する(Sultan、Rodriguez-Galindoら、2009)。まとめると、これらの要因は、SSに対する追加の、より特異的な標的化治療手法がこの病気を効果的に管理するのに必要であることを強調する。
滑膜肉腫と関連する遺伝子における転位はBAF複合体欠損も引き起こすことが知られているように、そのような遺伝子転位欠陥を含有する細胞系がATR阻害剤に感受性であることが実験によって実証されたので、本発明はATR阻害剤での滑膜肉腫の治療に及ぶ。実験は、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ(ATR)を標的にするssRNAi分子に対し細胞株が感受性であるので、この効果は一般的であることを実証する。
SSの圧倒的大部分は、t(X;18)染色体転位によって特徴付けられ、それは疾患の診断バイオマーカーとして使用される(Clark,Rocquesら、1994)。SSにおいて、t(X;18)転位は、SS18遺伝子(滑膜肉腫転位、染色体18)遺伝子の最初の10個のエクソンを、SSX(滑膜肉腫、Xブレークポイント)ファミリーの遺伝子である、SSX1、SSX2又はSSX4のうちの1つの最後の3つのエクソンに融合する(Clark,Rocquesら、1994、Amary,Berishaら、2007)。これらの転位は、SS18-SSX1、SS18-SSX2、又はSS18-SSX4融合タンパク質のいずれかをコードし、それらの各々は腫瘍の発達を促進するのに十分であると思われる。例えば、SS18-SSX1又はSS18-SSX2のいずれかは、トランスジェニックマウスにてMyf5筋芽細胞系列の細胞で発現される場合、100%の浸透度で腫瘍を生じさせるのに十分である(Haldar,Hancockら、2007、Jones,Barrottら、2016)。細胞遺伝学的に、SS腫瘍は、SS18-SSX転位に加えて、著しく少ない再発変異を示し(Vlenterie,Hillebrandtら、2015)、腫瘍形成が融合遺伝子単独により駆動されるという仮説を支持する。いくつかの研究は、SS腫瘍がゲノム不安定性を示すことを実証し、これは成人患者及び進行した転移性疾患を有する患者においてより一般的であると思われる(Lagarde,Przybylら、2013、Pryzbyl,Sciotら、2014、Vlenterie,Hillebrandtら、2015)。
SS18及びSSXタンパク質はいかなる既知のDNA結合ドメインも含有していないが、両方の野生型タンパク質は、転写の調節に関与している(de Bruijn,Allanderら、2006、Garcia,Shafferら、2012、Garcia,Shafferら、2012、Kadoch及びCrabtree2013)。少なくとも部分的に、SS18の転写機能は、BAF SWI/SNF複合体の一部としての役割に関連する可能性がある(Thaete、Brettら、1999、Nagai,Tanakaら、2001)。BAF複合体は、転写を制御すると考えられているATP依存性プロセスを介してヌクレオソームのリモデリングを媒介する(Wilson及びRoberts、2011、Smith-Roe,Nakamuraら、2015)だけでなく、DNA修復を含む他の様々なプロセスにおいて役割を有する(Shen,Pengら、2015、Smith-Roe,Nakamuraら、2015)。野生型SS18タンパク質は、SMARCA4、ARID1A及びSMARCB1を含む、BAF複合体の複数の他の要素と相互作用する。SS18-SSX融合によって引き起こされるこれらの相互作用の変化は、滑膜肉腫の病因においても役割を果たしている可能性がある(Middeljans,Wanら、2012、Kadoch及びCrabtree、2013)。例えば、SS18-SSX1融合タンパク質はBAFと相互作用するが、野生型SS18タンパク質及び追加のBAF構成要素であるSMARCB1をBAF複合体から移動させる(Kadoch及びCrabtree、2013)。
BAFからのSMARCB1の移動は、そのプロテアソーム分解をもたらし、BAF関連SMARCB1のレベルの低下は滑膜肉腫細胞株及び腫瘍に特徴的である(Kadoch及びCrabtree,2013、Ito,Asanoら、2015)。BAF複合体からのSMARCB1の喪失は、遺伝子発現の改変された調節とも関連する。例えば、初代ヒト新生児線維芽細胞において、SS18-SSX1の発現及びその後のSMARCB1の喪失は、SRY関連HMGボックス(SOX)ファミリー転写因子をコードするSOX2遺伝子(性決定領域Yボックス2)のプロモーターからの抑圧ポリコーム複合体の排除を引き起こす(Kadoch及びCrabtree、2013)。これは、滑膜肉腫細胞の生存に必要とされる、SOX2発現を増加させる(Kadoch及びCrabtree、2013)。興味深いことに、SMARCB1のホモ接合性変異又は欠失は、悪性ラブドイド腫瘍(MRT)でのみ観察される細胞遺伝学的異常であり(Versteege,Sevenetら、1998、McKenna,Sansamら、2008)、SMARCB1が腫瘍抑制遺伝子として機能できることを示唆する。複数の他のBAF複合体コード遺伝子もまた、ARID1A及びSMARCA4を含む癌発症に関与しており、BAF複合体変異がヒト癌の20%にも存在し得ることが最近示唆された(Kadoch、Hargreavesら、2013)。
滑膜肉腫と関連する遺伝子転位欠陥の好ましい例としては、SSX1、SSX2及びSS18での欠損が挙げられる。
本発明において、SSX1への言及は、HGNC ID:11335を有する滑膜肉腫Xブレークポイント1を示す。SSX1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SSX1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11335で見つけることができる。
本発明において、SSX2への言及は、HGNC ID:11336を有する滑膜肉腫Xブレークポイント2を示す。SSX2についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SSX2核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11336で見つけることができる。
本発明において、SS18への言及は、HGNC ID:11340を有する滑膜肉腫転位染色体18を示す。SS18についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SS18核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11340で見つけることができる。SS18は、BAF複合体の専用の安定なサブユニットであり、その異常形態は、滑膜肉腫における増殖を進行させる機能不全BAF複合体をもたらす(Kadochら、「滑膜肉腫におけるSS18-SSX発癌融合によるmSWI/SNF(BAF)複合体の可逆的破壊(Reversible Disruption of mSWI/SNF(BAF) Complexes by the SS18-SSX Oncogenic Fusion in Synovial Sarcoma)」、Cell 153.1(2013):71~85.PMC.Web.8 Jan.2016)。
滑膜肉腫と関連する以下の遺伝子における欠損(機能喪失変異、発現喪失)を有する癌:
本発明において、SSX1への言及は、HGNC ID:11335を有する滑膜肉腫Xブレークポイント1を示す。SSX1についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SSX1核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11335で見つけることができる。
本発明において、SSX2への言及は、HGNC ID:11336を有する滑膜肉腫Xブレークポイント2を示す。SSX2についてのHUGO遺伝子シンボルレポートは、SSX2核酸配列及びアミノ酸配列へのリンク、並びに相同なマウス及びラットのタンパク質への言及を提供するhttp://www.genenames.org/cgi-bin/gene_symbol_report?hgnc_id=HGNC:11336で見つけることができる。
同様の原理により、滑膜肉腫と関連する遺伝子、特に、SSX1及びSSX2などの、滑膜肉腫と関連する欠損を有する遺伝子の欠損(機能喪失変異、発現喪失)を有する癌もまた、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ(ATR)阻害剤(ATRi)を用いて標的化され得る。特に、欠損は、SS18-SSX1又はSS18-SSX2融合物をコードする転位であり得る。
阻害剤
本発明において、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ(ATR)阻害剤(ATRi)は、ATRの発現レベル又はキナーゼ活性を阻害する化合物又は物質を指し、それはBAF複合体遺伝子が変異又は欠損した癌を治療するために本発明に従って利用されるか、又はATR阻害剤としての使用のためにスクリーニングされてよい。いくつかの阻害剤が知られており、さらなる例としては、これらの標的に対するスクリーニング技術の適用によって見出され得る。
ATR阻害化合物は、小分子、ペプチド断片、抗体若しくはその断片、又はsiRNAであり得る。ATRi化合物の例として、AZ20、BEZ235(NVP-BEZ235、ダクトリシブ)、ETP-46464、VE-821、VE-822(VX-970)、AZD6738、NU6027、CP-466722、CGK733、KU-60019、KU-55933、シサンドリンB、及びミリンが挙げられるが、これらに限定されない。特に、本明細書に提供されるデータは、小分子阻害剤又はsiRNA標的化ATRが、1以上のBAF複合体遺伝子が変異又は欠損した癌の種類において一般的な抗癌効果を引き起こすことができることを示唆する。あるいは、阻害剤は、中和活性を有する抗体又はその断片を含んでよい。
小分子阻害剤
ATR阻害剤であり、本発明に従って使用できる小分子化合物の例としては、以下のものが挙げられる。
本発明において、AZ20への言及は、ChemSpider ID:29361340を有する4-シクロヘキシルメトキシ-5-ニトロソピリミジン-2,6-ジアミンを示す。AZ20についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.29361340.htmlで見つけることができる。AZ20は、インビボでの抗腫瘍活性(23)を有するATRキナーゼの選択的阻害剤である。
本発明において、BEZ235(NVP-BEZ235、ダクトリシブ)への言及は、ChemSpider ID:10151099を有する、2-メチル-2-{4-(3-メチル-2-オキソ-8-(3-キノリニル)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ(4,5-c)キノリン-1-イル)フェニル}プロパンニトリルを示す。BEZ235についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.10151099.htmlで見つけることができる。もともと二重PI3K/MTOR阻害剤として開発されたBEZ235はまた、ATRに対する実質的な活性を有している(25)。
本発明において、ETP-46464への言及は、ChemSpider ID:29785252を有する、2-メチル-2-{4-(2-オキソ-9-(3-キノリニル)-2H-(1,3)オキサジノ(5,4-c)キノリン-1(4H)-イル)フェニル}プロパンニトリルを示す。ETP-46464についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.29785252.htmlで見つけることができる。ETP-46464は、ATRキナーゼ活性の阻害剤である(25)。
本発明において、VE-821への言及は、ChemSpider ID:25991555を有する、3-アミノ-6-(4-メチルスルホニルフェニル)-N-フェニルピラジン-2-カルボキサミドを示す。VE-821についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.25991555.htmlで見つけることができる。VE-821は、いくつかのDNA損傷剤の細胞毒性効果を増強するATRキナーゼの阻害剤である(6~9)。
本発明において、VE-822(VX-970)への言及は、ChemSpider ID:30773968を有する、5-[4-(イソプロピルスルホニル)フェニル]-3-(3-{4-[(メチルアミノ)メチル]フェニル}-1,2-オキサゾール-5-イル)-2-ピラジンアミンを示す。VE-822についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.30773968.htmlで見つけることができる。VE-822は、現在第I相臨床試験にある特異的かつ強力なATRの阻害剤である(6)。
本発明において、AZD6738への言及は、ChemSpider ID:8054780を有する、6-[5-(3-シアノ-5-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]ニコチノニトリルを示す。AZD6538についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.8054780.htmlで見つけることができる。AZD6738は、溶解性、薬物動態及びバイオアベイラビリティが改良されたAZ20のアナログとして、強力かつ選択的なATR阻害剤である(26)。
本発明において、NU6027への言及は、ChemSpider ID:352956を有する4-シクロヘキシルメトキシ-5-ニトロソピリミジン-2,6-ジアミンを示す。NU60727についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.352956.htmlで見つけることができる。NU6027は、もともとCDK2阻害剤として開発されたが、ATR活性を強力に阻害もする(27)。
本発明において、CP-466722への言及は、ChemSpider ID:27445283を有する、1-(6,7-ジメトキシ-4-キナゾリニル)-3-(2-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-アミンを示す。CP-466722についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.27445283.htmlで見つけることができる。
本発明において、CGK733への言及は、ChemSpider ID:5037512を有する、2,2-ジフェニル-N-(2,2,2-トリクロロ-1-{[(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)カルバモチオイル]アミノ}エチル)アセトアミドを示す。CGK733についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.5037512.htmlで見つけることができる。CGK733は、もともとATM及びATRの阻害剤として特定され、サイクリンD1レベルを抑制し、細胞増殖を阻害することが示されている[28]。
本発明において、KU-60019への言及は、ChemSpider ID:28294997を有する、2-[(2R,6S)-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-N-[5-[4-オキソ-6-(1-ピペリジル)ピラン-2-イル]-9H-チオキサンテン-2-イル]アセトアミドを示す。KU-60019についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.28294997.htmlで見つけることができる。
本発明において、KU-55933への言及は、ChemSpider ID:4442218を有する、2-(モルホリン-4-イル)-6-(チアントレン-1-イル)-4H-ピラン-4-オンを示す。KU-55933についてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.4442218.htmlで見つけることができる。
本発明において、ミリンへの言及は、ChemSpider ID:1016643を有する4-チアゾリジノン5-(p-ヒドロキシベンジリデン)-2-イミノを示す。ミリンについてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.1016643.htmlで見つけることができる。
本発明において、シサンドリンBへの言及は、ChemSpider ID:97221を有する、1,2,3,13-テトラメトキシ-6,7-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロベンゾ[3’,4’]シクロオクタ[1’,2’:4,5]ベンゾ[1,2-d][1,3]ジオキソールを示す。シサンドリンBについてのChemSpiderレポート及び構造は、http://www.chemspider.com/Chemical-Structure.97221.htmlで見つけることができる。シサンドリンBはATRの選択的阻害剤である(29)。
阻害剤の別のクラスは、式A(すなわち、式A-I、A-I-a、A-II、A-II-aなど)を含む、本明細書の式の化合物又は本明細書の式のいずれかの化合物である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、式A-I:
Figure 2022050493000001
(式中:
は、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式アリール又はヘテロアリール環であり、上記単環式アリール又はヘテロアリール環は必要に応じて別の環に縮合されて、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~6個のヘテロ原子を有する8~10員の二環式アリール又はヘテロアリール環を形成し;各Rは、1~5個のJ基で必要に応じて置換されており;
は、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式アリール又はヘテロアリール環であり、上記単環式アリール又はヘテロアリール環は必要に応じて別の環に縮合されて、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する8~10員の二環式アリール又はヘテロアリール環を形成し;各Rは、1~5個のJ基で必要に応じて置換されており;
Lは、-C(O)NH-又はC(O)N(C1~6アルキル)-であり;
nは、0又は1であり;
各J及びJは独立して、ハロ、-CN、-NO、-V-R、又は-(V-Qであり;
は、0~3個のメチレン単位がO、NR”、S、C(O)、S(O)、又はS(O)で必要に応じてかつ独立して置換されるC1~10脂肪族鎖であり;Vは、JV1の1~6つの存在で必要に応じて置換されており;
は、0~3個のメチレン単位が、O、NR”、S、C(O)、S(O)、又はS(O)で必要に応じてかつ独立して置換されるC1~10脂肪族鎖であり;Vは、JV2の1~6つの存在で必要に応じて置換されており;
mは、0又は1であり;
Qは、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~8員の飽和若しくは不飽和の単環式環、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~6個のヘテロ原子を有する9~10員の飽和又は不飽和の二環式環であり;各Qは、0~5個のJで必要に応じて置換されており;
各JV1又はJV2は独立して、ハロゲン、CN、NH、NO、C1~4脂肪族、NH(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)、OH、O(C1~4脂肪族)、COH、CO(C1~4脂肪族)、C(O)NH、C(O)NH(C1~4脂肪族)、C(O)N(C1~4脂肪族)、NHCO(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)CO(C1~4脂肪族)、SO(C1~4脂肪族)、NHSO(C1~4脂肪族)、又はN(C1~4脂肪族)SO(C1~4脂肪族)であり、上記C1~4脂肪族は必要に応じてハロで置換されており;
Rは、H又はC1~6脂肪族であり、上記C1~6脂肪族はNH、NH(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)、ハロゲン、C1~4脂肪族、OH、O(C1~4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1~4脂肪族)、CO(C1~4脂肪族)、O(ハロC1~4脂肪族)、又はハロC1~4脂肪族の1~4つの存在で必要に応じて置換されており;
各Jは独立して、ハロ、オキソ、CN、NO、X-R、又は-(X)-Qであり;
pは、0又は1であり;
Xは、C1~10脂肪族であり、上記C1~6脂肪族の1~3個のメチレン単位はNR、-O-、-S-、-C(O)、S(O)、又はS(O)で必要に応じて置換されており;XはNH、NH(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)、ハロゲン、C1~4脂肪族、OH、O(C1~4脂肪族)、NO、CN、CO(C1~4脂肪族)、COH、CO(C1~4脂肪族)-C(O)NH、-C(O)NH(C1~4脂肪族)、C(O)N(C1~4脂肪族)、SO(C1~4脂肪族)、SO(C1~4脂肪族)、SONH(C1~4脂肪族)、SON(C1~4脂肪族)、NHC(O)(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)C(O)(C1~4脂肪族)の1~4つの存在で必要に応じてかつ独立して置換されており、上記C1~4脂肪族はハロの1~3つの存在で必要に応じて置換されており;
は、窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~8員の飽和若しくは不飽和の単環式環であるか、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~6個のヘテロ原子を有する8~10員の飽和若しくは不飽和の二環式環であり;各Qは、1~5個のJQ4で必要に応じて置換されており;
Q4は、ハロ、CN、又は最大2個のメチレン単位が、O、NR、S、C(O)、S(O)、又はS(O)で必要に応じて置換されるC1~4アルキルであり;
Rは、H又はC1~4アルキルであり、上記C1~4アルキルは必要に応じて1~4個のハロで置換されており:
R’、R”、及びRは、それぞれ独立してH、C1~4アルキルであるか、又は存在せず;
上記C1~4アルキルは必要に応じて1~4個のハロで置換される)
で表されるか又はその医薬として許容し得る塩である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、化合物A-1:
Figure 2022050493000002
又はその医薬として許容し得る塩である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、式AI-a:
Figure 2022050493000003
(式中:
環Aは、
Figure 2022050493000004
であり;
oは、H、F、Cl、C1~4脂肪族、O(C1~3脂肪族)、又はOHであり;
pは、
Figure 2022050493000005
であり;
p1は、H、C1~4脂肪族、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルであり;上記Jp1はOH又はハロの1~2つの存在で必要に応じて置換されており;
p2は、H、メチル、エチル、CHF、CF、又はCHOHであり;
oは、H、CN、又はSOCHであり;
mは、H、F、Cl、又はメチルであり;
pは、-SO(C1~6アルキル)、-SO(C3~6シクロアルキル)、-SO(4~6員のヘテロシクリル)、-SO(C1~4アルキル)N(C1~4アルキル)、又は-SO(C1~4アルキル)-(4~6員のヘテロシクリル)であり、上記ヘテロシクリルは酸素、窒素、又は硫黄から選択される1個のヘテロ原子を含有し;上記Jpはハロ、OH、又はO(C1~4アルキル)の1~3つの存在で必要に応じて置換される)
又はその医薬として許容し得る塩で表される。
いくつかの実施形態において、環Aは、
Figure 2022050493000006
である。いくつかの実施形態において、環Aは
Figure 2022050493000007
である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、化合物A-2:
Figure 2022050493000008
又はその医薬として許容し得る塩である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、化合物A-II:
Figure 2022050493000009
(式中:
10は、フルオロ、クロロ、又は-C(J10CNから独立して選択され;
10は、H又はC1~2アルキルから独立して選択されるか;又は
それらが結合している炭素原子と共にJ10の2つの存在は、必要に応じて置換される3~4員の炭素環を形成し;
20は、H、ハロ、-CN、NH、フルオロの0~3つの存在で必要に応じて置換されるC1~2アルキル、又は脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)で必要に応じて置換されるC1~3脂肪族鎖から独立して選択され;
は、H、ハロ、ハロの1~3つの存在で必要に応じて置換されるC1~4アルキル、C3~4シクロアルキル、-CN、又は脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)で必要に応じて置換されるC1~3脂肪族鎖から独立して選択され;
は、Q、又は脂肪族鎖の最大4個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、若しくはS(O)で必要に応じて置換されるC1~10脂肪族鎖から独立して選択され;各RはJQ1の0~5つの存在で必要に応じて置換されているか;又は
及びRは、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素又は硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する5~6員の芳香族又は非芳香族環を形成し;R及びRによって形成される環はJの0~3つの存在で必要に応じて置換されており;
は、3~7員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の単環式環、酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の二環式環から独立して選択され;
は、C1~6脂肪族、=O、ハロ、又は→Oから独立して選択され;
Q1は、-CN、ハロ、=O、Q、又はC1~8脂肪族鎖から独立して選択され、脂肪族鎖の最大3個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換されており;JQ1の各存在はJの0~3つの存在で必要に応じて置換されるか;又は
同じ原子上のJQ1の2つの存在は、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成し;JQ1の2つの存在により形成される環はJの0~3つの存在で必要に応じて置換されるか;又は
Q1の2つの存在は、Qと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
は、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の単環式環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の二環式環から独立して選択され;
は、-CN、ハロ;=O、→O、Q、又はC1~6脂肪族鎖から独立して選択され、脂肪族鎖の最大3つのメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換されており;各JはJの0~3つの存在で必要に応じて、置換されるか;又は
同じ原子上のJの2つの存在は、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成し;Jの2つの存在により形成される環はJの0~3つの存在で必要に応じて置換されるか;又は
の2つの存在は、Qと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
は、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の完全飽和、部分不飽和;若しくは芳香族の単環式環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の二環式環であり;
は、-CN、=O、ハロ、又はC1~4脂肪族鎖から独立して選択され、脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換されており;
は、ハロ、-CN、→O、=O、-OH、C1~6脂肪族鎖から独立して選択され、脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は、-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環で必要に応じて置換されており;Jの各存在はJの0~3つの存在で必要に応じて置換されるか;又は
同じ原子上のJの2つの存在は、それらが結合する原子と共に、酸素、窒素、又は硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成するか;又は
の2つの存在は、Qと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
は、ハロ又はC1~6脂肪族から独立して選択され;
Jは、H又はClであり;
zは、0、1又は2であり;
は、H又はC1~4脂肪族から独立して選択される)
又はその医薬として許容し得る塩で表される。
いくつかの実施形態において、R及びRはフルオロである。いくつかの実施形態において、RはQである。いくつかの実施形態において、Qは、ピペリジニル及びイミダゾリルから独立して選択される。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、化合物A-3:
Figure 2022050493000010
又はその医薬として許容し得る塩である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、式A-II-a:
Figure 2022050493000011
(式中:
10は、クロロ、フルオロ、又は-C(J10CNから独立して選択され;
10は、H又はC1~2アルキルから独立して選択されるか;又は
の2つの存在は、それらが結合している炭素原子と共に、必要に応じて置換される3~4員の炭素環を形成し;
は、H、クロロ、フルオロ;ハロの1~3つの存在で必要に応じて置換されるC1~4アルキル、C3~4シクロアルキル、-CN、又はC1~3脂肪族鎖から独立して選択され、脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換されており;
は、H;酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~7員の芳香族又は非芳香族環;又はC1~6脂肪族鎖であり、脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換されており;各LはC1~4脂肪族、-CN、ハロ、-OH;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環で必要に応じて置換されており;
は、H;酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~7員の芳香族又は非芳香族環;又はC1~6脂肪族鎖であり、脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換されており;
各Lは、C1~4脂肪族、-CN、ハロ、-OH;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環で必要に応じて置換されるか;又は
及びLは、それらが結合している窒素と共に、環Dを形成し;環DはJの0~5の存在で必要に応じて置換されており;
は、H、C1~3脂肪族、又はCNであり;
環Dは、酸素、窒素若しくは硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を有する3~7員のヘテロシクリル環;又は酸素、窒素若しくは硫黄から選択される1~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和又は部分不飽和の二環式環から独立して選択され;
は、ハロ、-CN、-N(R°)、→O、3~6員のカルボシクリル;酸素、窒素若しくは硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を有する3~6員のヘテロシクリル;又はC1~4アルキル鎖から独立して選択され、アルキル鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換されており;各Jは、Jの0~2つの存在で必要に応じて置換されており;
同じ原子上のJの2つの存在は、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成するか;又は
の2つの存在は、環Dと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
は、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~7員の芳香族又は非芳香族環であり;
zは、0、1、又は2であり;
及びR°は、H又はC1~4アルキルである)
又はその医薬として許容し得る塩で表される。
いくつかの実施形態において、R及びRは、フルオロである。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、化合物A-4:
Figure 2022050493000012
又はその医薬として許容し得る塩である。
いくつかの実施形態において、ATRを阻害する化合物は、
Figure 2022050493000013
Figure 2022050493000014
Figure 2022050493000015
Figure 2022050493000016
又はその医薬として許容し得る塩である。
上記のATR化合物は、当技術分野で公知の、例えば、WO2015/187451、WO2015/085132、WO2014/089379、WO2014/089379、WO2014/143242、WO2014/143241、WO2015/084384、WO2014/143240、WO2013/071094、WO2013/071093、WO2013/071090、WO2013/071088、WO2013/049859、WO2013/049719、WO2013/049720、WO2013/049722、WO2013/071085、WO2013/049726、WO2012/178125、WO2012/178124、WO2012/178123、WO2012/138938、WO2012/138938、WO2011/163527、WO2011/143423、WO2011/143426、WO2011/143425、WO2011/143422、WO2011/143419、WO2011/143399、WO2010/054398及びWO2010/071837の任意の適切な方法によって調製できる。
本発明で利用できるATR阻害剤の他の例は、WO2015/187451、WO2015/085132、WO2015/187451、WO2015/085132、WO2014/089379、WO2014/089379、WO2014/143242、WO2014/143241、WO2015/084384、WO2014/143240、WO2014/089379、WO2013/071094、WO2013/071093、WO2013/071090、WO2013/071088、WO2013/049859、WO2013/049719、WO2013/049720、WO2013/049722、WO2013/071085、WO2013/049726、WO2012/178125、WO2012/178124、WO2012/178123、WO2012/138938、WO2012/138938、WO2011/163527、WO2011/143423、WO2011/143426、WO2011/143425、WO2011/143422、WO2011/143419、WO2011/143399、WO2010/054398及びWO2010/071837に記載の化合物を含んでよく、全てのそのような化合物及び化合物の式は、参照により本明細書に組み込まれる。
本出願の目的のために、Jの2つの存在がQと共に架橋環系を形成する場合、Jの2つの存在はQの別の原子に結合されることが理解される。また、Jの2つの存在がQと共に架橋環系を形成する場合、Jの2つの存在はQの別の原子に結合される。さらに、Jの2つの存在がQと共に架橋環系を形成する場合、Jの2つの存在はQの別の原子に結合される。さらに、Jの2つの存在がWと共に架橋環系を形成する場合、Jの2つの存在はWの別の原子に結合される。最後に、Jの2つの存在が環Dと共に架橋環系を形成する場合、Jの2つの存在は環Dの別の原子に結合される。
→Oにおける矢印は配位結合を表すことを、当業者なら理解している。
本発明の化合物は、一般に本明細書に記載されるものを含み、本明細書に開示されるクラス、サブクラス、及び種によってさらに例示される。本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、以下の定義が適用される。本発明の目的のために、化学元素は元素の周期表、CASバージョン、化学と物理のハンドブック、第75版に従って特定される。さらに、有機化学の一般原則は、「有機化学」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、及び「マーチの最新有機化学」、第5版、Smith,M.B.及びMarch,J.(編),John Wiley & Sons,New York:2001に記述されており、これらの全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載されるように、原子の指定された数の範囲は、その中の任意の整数を含む。例えば、1~4個の原子を有する基は、1、2、3、又は4個の原子を有し得る。
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、そのようなものとして一般的に本明細書に示されるか、又は本発明の特定のクラス、サブクラス、及び種によって例示されるように、必要に応じて1以上の置換基で置換されてもよい。語句「必要に応じて置換される」は、語句「置換される又は置換されない」と互換的に使用されることを理解されたい。一般に、用語「置換」は、用語「必要に応じて」が先行するかしないかに関わらず、所定の構造中の水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルとの置換を指す。特に明記しない限り、必要に応じて置換される基は、基の各置換可能な位置で置換基を有してよく、任意の所定の構造における1以上の位置が特定の基から選択される2以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、全ての位置で同じであるか、又は異なっていてよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは好ましくは、安定な化合物又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。
特に断りのない限り、環の中心から引き出される結合によって連結される置換基は、置換基が環の任意の位置に結合できることを意味する。以下の実施例iにおいて、例えば、Jは、ピリジル環上の任意の位置に結合できる。二環式環については、両方の環を通って引き出される結合は、二環式環の任意の位置から結合できることを示す。以下の実施例iiにおいて、例えば、Jは、(例えば、窒素原子上の)5員環、及び6員環に結合され得る。
Figure 2022050493000017
本明細書で使用する用語「安定な」は、本明細書に開示される目的の1以上のためにそれらの製造、検出、収集、精製、及び使用を可能にする条件に供されたときに、実質的に変更されない化合物を指す。いくつかの実施形態において、安定な化合物又は化学的に実現可能な化合物は、40℃以下の温度に保たれたとき、少なくとも1週間、水分又は他の化学的に反応性のある条件の非存在下で、実質的に変更されないものである。
本明細書で使用する用語「供与結合」は、分子種間の相互作用時に形成される配位結合として定義され、それらの一方は、形成される複合体内で共有される電子対のドナーとして機能し、他方は受容体として機能する。
本明細書で使用する用語「脂肪族」又は「脂肪族基」は、完全に飽和しているか又は分子の残りへの単一の結合点を有する1以上の不飽和単位を含有する直鎖状(すなわち、非分枝状)、分枝状、若しくは環状の、置換された又は置換されない炭化水素鎖を意味する。
特に指定しない限り、脂肪族基は、1~20個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、脂肪族基は、1~10個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態において、脂肪族基は、1~8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含有する。脂肪族基は、直鎖状又は分枝状の、置換された又は置換されないアルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり得る。具体的な例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、sec-ブチル、ビニル、n-ブテニル、エチニル、及びtert-ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族基はまた、環状であり得るか、又は線形若しくは分岐状の基と環状基の組み合わせを有してよい。そのようなタイプの脂肪族基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、-CH-シクロプロピル、CHCHCH(CH)-シクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「脂環式」(又は「炭素環」又は「カルボシクリル」)は、完全に飽和しているか又は1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではなく、分子の残りへの単一の結合点を有する、単環式C~C炭化水素又は二環式C~C12炭化水素を指し、上記二環式環系中の任意の個々の環は3~7員を有する。脂環式基の例としては、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な例としては、シクロヘキシル、シクロプロピル、及びシクロブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、又は「複素環」は、1以上の環員が独立して選択されるヘテロ原子である非芳香族、単環式、二環式、又は三環式の環系を意味する。いくつかの実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、又は「複素環式」基は、1以上の環員が酸素、硫黄、窒素、又はリンから独立して選択されるヘテロ原子である3~14個の環員を有し、系における各環は3~7個の環員を含有する。
複素環の例としては、3-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン、3-(1-アルキル)-ベンゾイミダゾール-2-オン、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチオフェニル、3-テトラヒドロチオフェニル、2-モルホリノ、3-モルホリノ、4-モルホリノ、2-チオモルホリノ、3-チオモルホリノ、4-チオモルホリノ、1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、1-テトラヒドロピペラジニル、2-テトラヒドロピペラジニル、3-テトラヒドロピペラジニル、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、1-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、4-ピラゾリニル、5-ピラゾリニル、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、2-チアゾリジニル、3-チアゾリジニル、4-チアゾリジニル、1-イミダゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、5-イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、及び1,3-ジヒドロイミダゾール-2-オンが挙げられるが、これらに限定されない。
環状基(例えば、脂環式及び複素環)は、直線的に融合、架橋されるか、又はスピロ環状であり得る。
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、窒素、リン、又はケイ素(窒素、硫黄、リン、又はケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態又は;複素環の置換可能な窒素、例えばN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリル中のような)、NH(ピロリジニル中のような)、又はNR(N置換ピロリジニル中のような)を含む)の1以上を意味する。
本明細書で使用する用語「不飽和」は、部分が1以上の不飽和単位を有することを意味する。当業者によって知られているように、不飽和基は、部分的に不飽和又は完全に不飽和であり得る。部分不飽和基の例としては、ブテン、シクロヘキセン、及びテトラヒドロピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。完全不飽和基は、芳香族、抗芳香族、又は非芳香族であり得る。完全不飽和基の例としては、フェニル、シクロオクタテトラエン、ピリジル、チエニル、及び1-メチルピリジン-2(1H)-オンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する用語「アルコキシ」又は「チオアルキル」は、酸素原子(「アルコキシ」)又は硫黄原子(「チオアルキル」)を介して結合される、以前に定義されたアルキル基を指す。
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロ脂肪族」、及び「ハロアルコキシ」は、場合によっては、1以上のハロゲン原子で置換されるアルキル、アルケニル又はアルコキシを意味する。この用語は、-CF及び-CFCFなどの、過フッ素化アルキル基を含む。
用語「ハロゲン」、「ハロ」、及び「ハル」は、F、Cl、Br、又はIを意味する。
単独で、又は「アリールアルキル」、「アリールアルコキシ」、又は「アリールオキシアルキル」におけるより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、5~14個の環員を有する単環式、二環式、及び三環式環系を指し、系中の少なくとも1個の環が芳香族であり、かつ系中の各環が3~7個の環員を含有する。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。
単独で、又は「ヘテロアリールアルキル」又は「ヘテロアリールアルコキシ」におけるより大きな部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、5~14個の環員を有する単環式、二環式、及び三環式環系を指し、系中の少なくとも1個の環が芳香族であり、かつ系中の各環が3~7個の環員を含有する。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」又は用語「ヘテロ芳香族」と互換的に使用され得る。ヘテロアリール環の例としては、2-フラニル、3-フラニル、N-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、N-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3-ピリダジニル)、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5-テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2-トリアゾリル及び5-トリアゾリル)、2-チエニル、3-チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2-インドリル)、ピラゾリル(例えば、2-ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5-トリアジニル、キノリニル(例えば、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル)、及びイソキノリニル(例えば、1-イソキノリニル、3-イソキノリニル、又は4-イソキノリニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
用語「ヘテロアリール」は、2つの異なる形態間の平衡状態で存在する特定の種類のヘテロアリール環を含むことを理解されたい。より具体的には、例えば、ヒドロピリジン及びピリジノン(及び同様にヒドロキシピリミジン及びピリミジノン)などの種は、「ヘテロアリール」の定義の範囲内に包含されることが意図される。
Figure 2022050493000018
本明細書で使用する用語「保護基(protecting group)」及び「保護基(protective group)」は、互換的であり、複数の反応部位を有する化合物中の1以上の所望の官能基を一時的にブロックするために使用される薬剤を指す。特定の実施形態において、保護基は、以下の特性の1以上、又は好ましくは全てを有する:a)官能基に選択的に付加されて、良好な収率で保護基質を与える、b)その保護基質は他の反応性部位の1以上で生じる反応に対して安定であり、かつc)再生され脱保護された官能基を攻撃しない試薬によって良好な収率で選択的に除去可能である。当業者によって理解されるように、場合によって、試薬は、化合物中の他の反応性基を攻撃しない。他の場合では、試薬は、化合物中の他の反応性基とも反応できる。保護基の例としては、Greene,T.W.,Wuts,P.Gの「有機合成における保護基」(Protective Groups in Organic Synthesis)、第3版、John Wiley & Sons,New York:1999(及び書籍の他の版)に詳述されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用する用語「窒素保護基」は、多官能性化合物における1以上の所望の窒素反応部位を一時的にブロックするために使用される薬剤を指す。好ましい窒素保護基はまた、上記保護基について例示される特徴を有し、特定の例示的な窒素保護基は、Greene,T.W.,Wuts,P.Gの「有機合成における保護基」(Protective Groups in Organic Synthesis)、第3版、John Wiley & Sons,New York:1999の第7章に詳述されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態において、アルキル又は脂肪族鎖のメチレン単位は、必要に応じて別の原子又は基で置換される。そのような原子又は基の例としては、窒素、酸素、硫黄、-C(O)-、-C(=-N-CN)-、-C(=NR)-、-C(=NOR)-、-SO-、及び-SO-が挙げられるが、これらに限定されない。これらの原子又は基は、組み合わされてより大きなグループを形成できる。そのようなより大きな基の例としては、-OC(O)-、-C(O)CO-、-CO-、-C(O)NR-、-C(=N-CN)、-NRCO-、-NRC(O)O-、-SONR-、-NRSO-、-NRC(O)NR-、-OC(O)NR-、及び-NRSONR-が挙げられるが、これらに限定されず、式中、Rは、例えば、H又はC1~6脂肪族である。これらの基は、単結合、二重結合、又は三重結合を介して脂肪族鎖のメチレン単位に結合され得るできることを理解すべきである。二重結合を介して脂肪族鎖に結合される任意の置換基の例(この場合、窒素原子)は、-CH-CH=-N-CHであろう。場合によって、特に末端上の任意の置換は、三重結合を介して脂肪族基に結合され得る。この一例は、CHCHCHC≡Nである。このような状況では、末端窒素は他の原子に結合されないことを理解されたい。
用語「メチレン単位」は、分岐状又は置換されたメチレン単位を指してもよいことも理解されたい。例えば、イソプロピル部分[-CH(CH]において、最初に列挙した「メチレン単位」を置き換える窒素原子(例えば、NR)は、ジメチルアミン[-N(CH]をもたらす。これらなどの場合には、当業者なら、窒素原子がそれに結合される任意の追加の原子を有しておらず、「NR」由来の「R」はこの場合には存在しないことを理解する。
特に断りのない限り、任意選択の置換は化学的に安定な化合物を形成する。任意選択の置換は、鎖内及び/又は鎖のいずれかの末端での両方で;すなわち結合点で及び/又は末端でもの両方で生じ得る。2つの任意選択の置換はまた、それが化学的に安定な化合物を生じる限り、鎖内で互いに隣接し得る。例えば、C脂肪族は、必要に応じて2個の窒素原子と置換されて、-C-N≡Nを形成できる。任意選択の置換はまた、鎖中の炭素原子の全てを完全に置き換えてもよい。例えば、C脂肪族は必要に応じて、-NR-、-C(O)-、及び-NR-で置換されて、-NRC(O)NR-(尿素)を形成できる。
特に断りのない限り、置換が末端で生じる場合、置換原子は、末端上の水素原子に結合される。例えば、-CH-CH-CHのメチレン単位が必要に応じて、-O-で置換された場合、生じる化合物は、-OCHCH、-CHOCH、又は-CHCHOHであり得る。別の例において、-CHCHCHのメチレン単位が必要に応じて、-NH-で置換された場合、生じる化合物は、-NHCHCH、-CHNHCH、又はCHCHNHであり得る。末端原子が任意の自由原子価電子を含有しない場合、水素原子は末端で必要とされない(例えば、-CHCHCH=O又はCHCHC≡N)ことを理解されたい。
特に断りのない限り、本明細書に示される構造はまた、構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、立体配座異性体、及び回転異性体)の形態を含むことを意味する。例えば、各不斉中心についてのR及びS配置、(Z)及び(E)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)配座異性体が、本発明に含まれる。当業者に理解されるように、置換基は、任意の回転可能な結合の周りを自由に回転できる。例えば、
Figure 2022050493000019
として描かれる置換基はまた
Figure 2022050493000020
を表す。
したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、立体配座異性体、及び回転異性体の混合物は本発明の範囲内である。
特に断りのない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内である。
さらに、特に断りのない限り、本明細書に示される構造はまた、1以上の同位体濃縮原子の存在の点でのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素又はトリチウムによる水素の置換、又は13C-又は14C-濃縮炭素による炭素の置換を除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツール又はプローブとして有用である。
本明細書に記載の化合物は、遊離形態として、又は適切な場合、塩として存在してよい。医薬として許容し得るそれらの塩は、医療目的のために以下に記載される化合物を投与するのに有用であるので、特に重要である。医薬として許容されない塩は、単離及び精製の目的のために、及び場合によっては、本発明の化合物の立体異性体又はその中間体を分離するのに使用するために、製造工程において有用である。
医薬として許容し得る塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19の中で医薬として許容し得る塩について詳細に記載している。本明細書に記載の化合物の医薬として許容し得る塩は、適切な無機酸及び有機酸並び適切な無機塩基及び有機酸塩基から誘導されるものを含む。これらの塩は、化合物の最終単離及び精製中に、その場で調製されてよい。
本明細書に記載の化合物が、塩基性基を、又は十分に塩基性の生物学的等価体を含有する場合、酸付加塩は、1)適切な有機酸又は無機酸と遊離塩基形態の精製化合物を反応させ、2)このように形成された塩を単離すること、により調製できる。実際には、酸付加塩は、使用のためにより都合の良い形態であり得、塩の使用は遊離塩基形態の使用に等しい。
医薬として許容し得る、非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸と形成されるアミノ基の塩、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸などの有機酸と形成されるアミノ基の塩、又はイオン交換などの当技術分野で用いられる他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の医薬として許容し得る塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、及び吉草酸塩などを含む。
本明細書に記載の化合物がカルボキシ基又は十分に酸性の生物学的等価体を含有する場合、塩基付加塩は、1)その酸形態の精製化合物を適切な有機塩基又は無機塩基と反応させ、2)このように形成された塩を単離すること、によって調製できる。実際には、塩基付加塩の使用がより都合がよく、塩形態の使用は本質的に、遊離酸形態の使用に等しい。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、リチウム、及びカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム及びカルシウム)、アンモニウム及びN(C1~4アルキル)塩を含む。本発明はまた、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水又は油溶性又は分散性の生成物は、このような四級化によって得ることができる。
塩基付加塩は、医薬として許容し得る金属及びアミン塩を含む。適切な金属塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、及びアルミニウムを含む。ナトリウム及びカリウム塩が通常好ましい。さらなる医薬として許容し得る塩は、適切な場合、非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミン陽イオンを含む。適切な無機塩基付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化亜鉛などを含む、金属塩基から調製される。適切なアミン塩基付加塩は、それらの低毒性及び医学的使用に対する許容性のため、医薬品化学において頻繁に使用されるアミンから調製される。アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェンアミン(ephenamine)、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、ジシクロヘキシルアミンなどが、適切な塩基付加塩の例である。
他の酸及び塩基が、それ自体は医薬として許容し得るものではないが、本明細書に記載の化合物及びそれらの医薬として許容し得る酸付加塩又は塩基付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に使用できる。
本発明は、医薬として許容し得る異なる塩の混合物/組み合わせ並びに遊離形態の化合物と医薬として許容し得る塩の混合物/組み合わせも含むことを理解されたい。
本明細書に記載の化合物はまた、医薬として許容し得る溶媒和物(例えば、水和物)及び包接化合物としても存在し得る。本明細書で使用する場合、用語「医薬として許容し得る溶媒和物」は、1以上の医薬として許容し得る溶媒分子と本明細書に記載の化合物の1つとの会合から形成される溶媒和物である。用語溶媒和物は、水和物(例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、及び四水和物など)を含む。
本明細書で使用する場合、用語「水和物」は、非共有結合分子間力によって結合される化学量論的又は非化学量論的な量の水をさらに含む、本明細書に記載の化合物又はその塩を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「包接化合物」は、その中に捕捉されたゲスト分子(例えば、溶媒又は水)を有する空間(例えば、チャネル)を含有する結晶格子の形態にある、本明細書に記載の化合物又はその塩を意味する。
本明細書に記載の化合物に加えて、これらの化合物のプロドラッグを含む医薬として許容し得る誘導体もまた、本明細書で特定される障害を治療又は予防するための組成物で使用できる。
siRNA阻害剤
PTEN変異又は欠損癌の治療に有用な阻害剤の別のクラスは、活性ポリペプチドの生成を下方制御することによって活性又は機能を阻害する、1以上のSWI/SNF BAF複合体遺伝子の核酸阻害剤、又はその補体を含む。これは、実施例に記載されるように、例えばリアルタイムPCRを用いるスクリーニングにより、当技術分野で周知の従来の方法を用いて監視できる。
有糸***キナーゼの発現は、アンチセンス又はRNAi技術を用いて阻害できる。遺伝子発現を下方制御するためのこれらの手法の使用は、現在、当技術分野において十分に確立されている。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、核酸、プレmRNA又は成熟mRNAの相補的配列にハイブリダイズするように設計でき、塩基除去修復経路の構成要素の生成を妨害してその発現が低減又は完全に又はほぼ完全に防止されるようにする。コード配列の標的化に加えて、アンチセンス技術は、例えば5’隣接配列中の遺伝子の制御配列を標的化するために使用でき、それによってアンチセンスオリゴヌクレオチドが発現制御配列を干渉できる。アンチセンス配列の構築及びその使用は、例えば、Peyman & Ulman,Chemical Reviews,90:543-584,1990及びCrooke,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,32:329-376,1992に記載されている。
オリゴヌクレオチドが投与用にインビトロ又はエクスビボで生成されるか、又はアンチセンスRNAが、下方制御が所望される細胞内で、インビボで生成されてよい。したがって、二本鎖DNAは、DNAのアンチセンス鎖の転写が標的遺伝子のセンス鎖から転写される正常mRNAに相補的なRNAをもたらすように、「逆配向」でプロモーターの制御下に置くことができる。相補的なアンチセンスRNA配列は、次いでmRNAと結合して二本鎖を形成し、標的遺伝子からタンパク質への内因性mRNAの翻訳を阻害すると考えられている。これが実際の作用モードであるかどうかはまだ不明である。しかしながら、この技術が機能することは確立された事実である。
逆向きでコード配列に対応する完全な配列を使用する必要はない。例えば、十分な長さの断片を使用できる。当業者にとって、アンチセンス阻害のレベルを最適化するために、遺伝子の様々なコード配列部分又は隣接配列部分から様々な大きさの断片をスクリーニングすることは日常的事項である。開始メチオニンATGコドン、及び開始コドンの上流のおそらく1以上のヌクレオチドを含むことが有利であり得る。適切な断片は、約14~23ヌクレオチド、例えば、約15、16又は17個のヌクレオチドを有し得る。
アンチセンスの代替物は、センスで、すなわち標的遺伝子と同じ方向で、挿入される標的遺伝子の全部又は一部のコピーを使用して、共抑制によって標的遺伝子の発現の減少を達成することである(Angell & Baulcombe,The EMBO Journal 16(12):3675-3684,1997及びVoinnet & Baulcombe,Nature,389:553,1997)。二本鎖RNA(dsRNA)は、センス又はアンチセンス鎖単独の両方よりも、遺伝子サイレンシングにおいてさらにより効果的であることが見出されている(Fireら,Nature 391,806-811,1998)。dsRNA媒介性サイレンシングは遺伝子特異的であり、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる場合が多い。線虫、ショウジョウバエ、植物、及び哺乳動物で遺伝子を発現停止させるRNAiの使用に関する方法は、当技術分野で公知である(Fire,Trends Genet.,15:358-363,19999;Sharp,RNA interference,Genes Dev.15:485-490 2001;Hammondら,Nature Rev.Genet.2:110-1119,2001;Tuschl,Chem.Biochem.2:239-245,2001;Hamiltonら,Science 286:950-952,1999;Hammondら,Nature 404:293-296,2000;Zamoreら,Cell,101:25-33,2000;Bernstein,Nature,409:363-366,2001;Elbashirら,Genes Dev.,15:188-200,2001;WO01/29058;WO99/32619,及びElbashirら,Nature,411:494-498,2001)。
RNA干渉は、2段階のプロセスである。最初に、dsRNAは細胞内で切断されて、5’末端にリン酸及び3’に短いオーバーハング(約2nt)を有する約21~23nt長の低分子干渉RNA(siRNA)をもたらす。siRNAは、特に破壊のために対応するmRNA配列を標的にする(Zamore,Nature Structural Biology,8,9,746-750,2001)。
RNAiはまた、3’オーバーハング末端を有する同じ構造の化学的に合成されたsiRNA二本鎖を用いて効率的に誘導できる(Zamoreら,Cell,101:25-33,2000)。合成siRNA二本鎖は、広い範囲の哺乳動物細胞株で内因性遺伝子及び異種遺伝子の発現を特異的に抑制することが示されている(Elbashirら,Nature,411:494-498,2001)。
別の可能性は、特定部位で核酸を切断でき、したがって、遺伝子発現に影響を与えるのに有用なリボザイムを転写時に生成する核酸が使用されることであり、例えば、Kashani-Sabet & Scanlon,cancer Gene Therapy,2(3):213-223,1995及びMercola & Cohen,cancer Gene Therapy,2(1):47-59,1995を参照されたい。
低RNA分子を、遺伝子発現を調節するために用いることができる。これらは、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAの標的化分解、転写後の遺伝子サイレンシング(PTG)、マイクロRNA(miRNA)により発生過程で調節されるmRNAの配列特異的翻訳抑制、及び標的化された転写遺伝子サイレンシングを含む。
特定の染色体遺伝子座でのヘテロクロマチン複合体の標的化及びエピジェネティック遺伝子サイレンシングにおけるRNAi機構並びに低分子RNAの役割も実証されている。RNA干渉(RNAi)としても知られる二本鎖RNA(dsRNA)依存性転写後サイレンシングは、短時間でサイレンシングするために特定の相同性遺伝子をdsRNA複合体が標的にできる現象である。これは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するためのシグナルとして作用する。20ntのsiRNAは一般的に、遺伝子特異的サイレンシングを誘導するのに十分に長いが、宿主応答を回避するのに十分に短い。標的遺伝子生成物の発現の減少は大規模であり得、siRNAのいくつかの分子によって90%のサイレンシングが誘導される。
当技術分野では、これらのRNA配列は、それらの起源に応じて「低分子又は小分子干渉RNA」(siRNA)又は「マイクロRNA」(miRNA)と呼ばれる。両方の種類の配列を用いて、相補性RNAへの結合及びmRNAの除去(RNAi)を誘発するか又はタンパク質へのmRNA翻訳を阻止することにより遺伝子発現を下方制御できる。siRNAは、長い二本鎖RNAのプロセシングによって導出され、自然界で見出される場合、典型的には外因性の起源のものである。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、ショートヘアピンのプロセシングによって誘導される、内因的にコードされた非コーディング小RNAである。siRNAとmiRNAの両方は、RNAを切断することなく、部分的に相補的な標的配列を有するmRNAの翻訳を阻害し、かつ完全に相補的な配列を有するmRNAを分解できる。
siRNAリガンドは典型的には二本鎖であり、標的遺伝子の機能のRNA媒介性下方制御の有効性を最適化するためには、siRNA分子の長さは、mRNA標的のsiRNAによる認識を媒介するRISC複合体によるsiRNAの正確な認識を確実にするように選択され、その結果siRNAが宿主応答を低減させるのに十分に短いことが好ましい。
miRNAリガンドは典型的には一本鎖であり、リガンドがヘアピンを形成するのを可能にする部分的に相補性の領域を有する。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質へと翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列は、miRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列及びおおよその逆相補鎖を含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写される場合、miRNA配列とその逆相補鎖の塩基対は、部分的に二本鎖のRNAセグメントを形成する。マイクロRNA配列の設計は、Johnら,PLoS Biology,11(2),1862-1879,2004で論じられている。
典型的には、siRNA又はmiRNAの効果を模倣することが意図されるRNAリガンドは、10~40リボヌクレオチド(又はその合成類似体)を有し、より好ましくは17~30リボヌクレオチド、より好ましくは19~25リボヌクレオチド及び最も好ましくは21~23リボヌクレオチドを有する。二本鎖siRNAを用いる本発明のいくつかの実施形態において、分子は、対称的な3’オーバーハング、例えば1つ又は2つの(リボ)ヌクレオチドの、典型的には、dTdT 3’オーバーハングのUUを有してよい。本明細書に提供される開示に基づき、当業者は、例えば、Ambion社のsiRNA finderなどのリソースを用いて、適切なsiRNA及びmiRNA配列を容易に設計でき、http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.htmlを参照されたい。siRNA及びmiRNA配列は、合成的に生成され外因的に添加されて遺伝子の下方制御を引き起こすか、又は発現系(例えば、ベクター)を用いて生成され得る。好ましい実施形態において、siRNAは合成される。
より長い二本鎖RNAを細胞中で処理して、siRNAを生成できる(例えば、Myers,Nature Biotechnology,21:324-328,2003)。より長いdsRNA分子は、例えば1つ又は2つの(リボ)ヌクレオチドの対称な3’又は5’オーバーハングを有するか、又は平滑末端を有してよい。より長いdsRNA分子は、25ヌクレオチド長又はそれより長くてよい。好ましくは、より長いdsRNA分子は25~30ヌクレオチド長である。より好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長である。最も好ましくは、より長いdsRNA分子は、27ヌクレオチド長である。長さが30ヌクレオチド以上のdsRNAは、ベクターpDECAPを使用して発現させることができる(Shinagawaら,Genes and Dev.,17:1340-5,2003)。
別の代替物は、細胞でのショートヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。shRNAは、合成siRNAよりも安定である。shRNAは、小さなループ配列によって分離される短い逆方向反復からなる。1つの逆方向反復は、遺伝子標的に相補的である。細胞中でshRNAは、標的遺伝子mRNAを分解し発現を抑制するsiRNAへとDICERによって処理される。好ましい実施形態において、shRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)生成される。shRNAは、ヒトH1又は7SKプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーター又はRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、shRNA配列をコードするベクターで細胞をトランスフェクトすることによって細胞内で生成され得る。別の方法として、shRNAは、ベクターからの転写によって外因的に(インビトロで)合成され得る。shRNAはその後、細胞中に直接導入できる。好ましくは、shRNA配列は、40~100塩基長、より好ましくは40~70塩基長である。ヘアピンのステムは、好ましくは長さが19~30塩基対である。ステムは、ヘアピン構造を安定化するために、G-U対合を含有してよい。
一実施形態において、siRNA、より長いdsRNA又はmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)生成される。ベクターは、当技術分野で公知のいずれかの方法で細胞中に導入される。必要に応じて、RNA配列の発現は、組織特異的プロモーターを用いて調節できる。さらなる実施形態において、siRNA、より長いdsRNA又はmiRNAは、ベクターからの転写によって外因的に(インビトロで)生成される。
もう1つの方法として、siRNA分子は、当技術分野で知られている、標準的な固相又は液相合成技術を用いて合成される。ヌクレオチド間の結合は、ホスホジエステル結合又は代替物、例えば、式P(O)S、(チオエート)、P(S)S、(ジチオエート)、P(O)NR’2、P(O)R’、P(O)OR6、CO又はCONR’2の連結基であり得、式中、RはH(若しくは塩)又はアルキル(1~12C)であり、R6は、-O-又は-S-を介して隣接ヌクレオチドに連結されるアルキル(1~9C)である。
修飾ヌクレオチド塩基を、天然に存在する塩基に加えて使用でき、それらを含有するsiRNA分子に有利な特性を付与できる。
例えば、修飾塩基は、siRNA分子の安定性を増加させ、それによってサイレンシングに必要な量を減らすことができる。修飾塩基の提供はまた、非修飾siRNAより多かれ少なかれ、安定なsiRNA分子を提供できる。
用語「修飾ヌクレオチド塩基」は、共有結合で修飾された塩基及び/又は糖を有するヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドは、3’位のヒドロキシル基以外及び5’位のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合される糖を有するヌクレオチドを含む。したがって修飾ヌクレオチドはまた、2’-O-メチル-、2-O-アルキル、2-O-アリル、2’-S-アルキル、2’-S-アリル、2’-フルオロ、2’-ハロ又は2アジド-リボースなどの2’置換糖、炭素環式糖類似体、a-アノマー糖、アラビノース、キシロース又はリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖及びセドヘプツロースを含んでよい。
修飾ヌクレオチドは、当技術分野で公知であり、アルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリン及びピリミジン、及び他の複素環を含む。ピリミジン及びプリンのこれらのクラスは、当技術分野で公知であり、シュードイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチル-アデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、-D-マンノシルケオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5メトキシウラシル、2メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、ケオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5-エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、及び2,6-ジアミノプリン、メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルシトシンを含む。
抗体
抗体は、BAF複合体遺伝子変異又は欠損癌を治療するのに有用な阻害剤のクラスの例として、より具体的には、ATR阻害剤として本発明で用いることができる。それらはまた、癌を有する個体を評価するか、又は癌を有する個体の応答を予測するために、特に、個体が、本発明に従って治療可能であり得るBAF複合体遺伝子変異又は欠損癌を有するかどうかを決定するために、本明細書に開示される方法で使用できる。
本明細書で使用する用語「抗体」は、天然で生成されるか、又は部分的若しくは完全に合成されるかに関わらず、免疫グロブリンを含む。この用語は、抗体結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質も包含する。抗原結合ドメインを含む抗体断片は、Fab、scFv、Fv、dAb、Fdなど、及びダイアボディである。モノクローナル抗体及び他の抗体を取得し、組換えDNAテクノロジーの技術を使用して元の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ分子を生成することが可能である。そのような技術は、ある抗体の、免疫グロブリン可変領域、又は相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを異なる免疫グロブリンの、定常領域、又は定常領域+フレームワーク領域に導入することを伴い得る。例えば、EP 0184187A、GB 2,188,638A又はEP0239400Aを参照されたい。
抗体はいくつかの方法で修飾でき、用語「抗体分子」は、必要とされる特異性を有する抗体の抗原結合ドメインをもつ任意の特異的結合メンバー又は物質を包含すると解釈されるべきである。したがって、この用語は、天然であるか、又は部分的若しくは完全に合成であるかに関わらず、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む、抗体断片及び誘導体を包含する。別のポリペプチドに融合される免疫グロブリン結合ドメイン、又は等価物を含むキメラ分子がしたがって含まれる。キメラ抗体のクローニング及び発現は、EP0120694A及びEP0125023Aに記載されている。
全抗体の断片は、結合抗原の機能を実行できることが示されている。結合断片の例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward,E.S.ら,Nature 341,544-546(1989));(v)単離CDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;(vii)単鎖Fv分子(scFv)であって、VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成するのを可能にするペプチドリンカーによって連結される、分子(Birdら,Science,242;423-426,1988;Hustonら,PNAS USA,85:5879-5883,1988);(viii)二重特異的単鎖Fv二量体(WO 93/11161)及び(ix)遺伝子融合により構築される多価又は多特異性断片である、「ダイアボディ」(WO 94/13804;Holligerら,P.N.A.S.USA,90:6444-6448,1993);(x)イムノアドヘシン(WO 98/50431)である。Fv、scFv又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化され得る(Reiterら,Nature Biotech,14:1239-1245,1996)。CH3ドメインに結合されるscFvを含むミニボディも作製できる(Huら,Cancer Res.,56:3055-3061,1996)。
本発明に従って使用される好ましい抗体は、他のポリペプチドに結合できる抗体などの混入物質を含まずかつ/又は血清成分を含まないという意味で、単離される。ポリクローナル抗体は本発明の範囲内であるが、モノクローナル抗体がいくつかの目的のために好ましい。
試料に対する抗体の反応性は、任意の適切な手段によって決定できる。個々のレポーター分子でのタグ付けは、1つの可能性である。レポーター分子は、直接又は間接的に、検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを生成できる。レポーター分子の結合は、直接的又は間接的、例えばペプチド結合を介する共有結合的、又は非共有結合的であり得る。ペプチド結合を介する結合は、抗体及びレポーター分子をコードする遺伝子融合物の組換え発現の結果であり得る。1つの好ましいモードは、分光単離される吸収又は発光特性を有する個々の蛍光色素、リン光体又はレーザ励起色素との各抗体の共有結合によるものである。適する蛍光色素は、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン及びテキサスレッドを含む。好適な発色色素は、ジアミノベンジジンを含む。
他のレポーターは、有色の、磁性又は常磁性のラテックスビーズなどの高分子コロイド粒子又は粒状物質、及び目視観察されるか、電気的に検出されるか、又は他の方法で記録される検出可能なシグナルを直接的又は間接的に生じ得る、生物学的又は化学的に活性な薬剤を含む。これらの分子は、例えば、発色するか、又は色を変化させるか、又は電気的特性の変化を引き起こす反応を触媒する酵素であり得る。それらは、エネルギー状態間の電子遷移が特徴的なスペクトル吸収又は発光をもたらすように、分子的に励起可能であり得る。それらは、バイオセンサーと組み合わせて使用される化学物質を含んでよい。ビオチン/アビジン又はビオチン/ストレプトアビジン及びアルカリホスファターゼ検出系を用いることができる。
本発明による抗体は、説明したように、例えば細胞又は細胞溶解物を含有する試験試料中のポリペプチドの存在についてのスクリーニングに使用でき、例えば、コードする核酸からの発現によるポリペプチドの生成後に、本発明によるポリペプチドを精製及び/又は単離するのに使用できる。抗体は、それらが結合するポリペプチドの活性を調節でき、そのポリペプチドが個体に有害な影響を有する場合、治療的状況(予防を含み得る)において有用であり得る。
BAF複合体遺伝子
BAF複合体遺伝子は、マルチサブユニットSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体「BRG1-又はHRBM関連因子」(BAF)及びポリブロモ関連BAF(PBAF)を構成するタンパク質の確立されたグループである。それらは、分化及び増殖に重要であるATP依存性クロマチンリモデリングプロセスを媒介する。
複合体のいくつかの構成要素は、腫瘍抑制因子として機能する(Reisman,Oncogene 28:1653-1668,2009)。BAF複合体遺伝子は、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2及びSMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B及びPBRM1を含むが、これらに限定されない。そこで欠損を有する癌が本発明に従って治療され得る、BAF複合体遺伝子の好ましい例は、OSA、p270及びBAF250Aとしても知られる、ARID1A(ATリッチDNA相互作用ドメイン1A)である。ARID1Aは、ヒト癌において頻繁に欠失される領域(17)である1p36.11(16)に位置し、腎臓癌の30%及び乳癌の10%において欠損している可能性がある(18)。
癌の治療
本発明は、ATR阻害剤でのBAF複合体遺伝子欠損癌又は変異癌の治療のための方法及び医学的用途を提供する。BAF複合体遺伝子欠損癌又は変異癌は、例えば、1以上のBAF複合体遺伝子タンパク質が1以上の変異を含有するかどうかを決定するために、個体からの癌細胞の試料を試験することなどによって特定できる。BAF複合体遺伝子変異は、多くの異なる腫瘍の種類にわたり高頻度で存在することが知られている。最高のBAF複合体変異率を有する癌は、滑膜肉腫、卵巣明細胞癌(75%)、結腸直腸癌(55%)、黒色腫(39%)、肺癌(35%)、肝細胞癌(33%)、胃癌(32%)、膀胱癌(22%)、血液悪性腫瘍(15%)、扁平上皮癌(14%)、漿液性卵巣癌(12%)、乳癌(11%)、膵臓癌(10%)、髄芽腫(8%)、腎癌(6%)及び神経膠腫(6%)である。全ての腫瘍の種類にわたり、BAF複合体遺伝子変異の平均頻度は19.6%である(13)(Shain & Pollack,PLoS One.2013;8(1):e55119)。
Kadoch,Cら(哺乳類SWI/SNF複合体のプロテオーム解析及びバイオインフォマティクス解析は、ヒト悪性腫瘍における広範な役割を特定する(Proteomic and bioinformatic analysis of mammalian SWI/SNF complexes identifies extensive roles in human malignancy)Nat Genet 45,592-601(2013))で定義されるように、SWI/SNF BAFに欠損のある癌は、結腸直腸癌、卵巣明細胞癌、漿液性卵巣癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、腎臓癌、扁平上皮癌、乳癌、髄芽腫、神経膠腫、黒色腫、肺癌、血液悪性腫瘍及び滑膜肉腫を含む。
いくつかの実施形態において、BAF欠損癌は、体細胞の前癌性細胞又は癌性細胞で生じる1以上のBAF複合体遺伝子変異(複数可)又は欠損(複数可)によって特徴付けられる。さらに別の実施形態において、BAF欠損癌は、個々の患者の生殖系列において生じる1以上のBAF複合体遺伝子変異(複数可)によって特徴付けられる。
いくつかの実施形態において、BAF複合体遺伝子欠損又は変異癌は、個体からの癌細胞の試料を試験することにより1以上のBAF複合体遺伝子の発現を決定してタンパク質の発現がないか、又は正常と比較して低下したレベルにあるかどうかを評価するなどで特定できる。
他の実施形態において、BAF欠損癌は、BAF複合体遺伝子に欠損を有する癌細胞又はBAF複合体遺伝子のエピジェネティックな不活化、又はタンパク質の機能喪失を示す癌細胞によって特徴づけられる。
より一般的には、癌は、個体からの細胞の試料中のBAFポリペプチドの活性を決定することによって、BAF欠損癌として特定され得る。試料は、個体が1以上のBAF遺伝子に変異を有する場合に個体からの正常細胞の試料であってよく、又は例えば腫瘍を形成する細胞がBAF活性において欠損を示す場合、試料は癌細胞の試料であり得る。活性は対照と比較して、例えば癌細胞に欠損のある場合では、好ましくは同じ組織からの、非癌性細胞と比較して、決定できる。1以上のBAF遺伝子の活性は、ウェスタンブロット分析、免疫組織学、染色体異常、酵素又はDNA結合アッセイ、及びプラスミドベースのアッセイなどの当技術分野で周知の技術を用いて決定できる。
試料は、個体が1以上のBAF複合体遺伝子に変異を有する個体からの正常細胞の試料であり得るか、又は試料は、例えば腫瘍を形成する細胞が1以上のBAF複合体遺伝子変異を含有する、癌細胞の試料であり得る。活性は対照と比較して、例えば癌細胞に欠損のある場合では、好ましくは同じ組織からの、非癌性細胞と比較して、決定できる。
BAF複合体遺伝子発現の決定は、試料中のBAF複合体遺伝子のmRNAの存在又は量を決定することを含んでよい。これを行うための方法は、当業者に周知である。一例として、それらは、BAF複合体遺伝子転写物が試料中に存在するかどうかを決定するために(i)BAF複合体遺伝子の核酸にハイブリダイズできる標識プローブを用いて;及び/又は(ii)BAF複合体遺伝子の核酸配列に基づいて1以上のプライマーを含むPCRを用いて、BAF複合体遺伝子mRNAの存在を決定することを含む。プローブはまた、マイクロアレイに含まれる配列として固定されてもよい。
一実施形態において、BAF複合体遺伝子mRNAの検出は、腫瘍の試料からRNAを抽出すること、及び具体的には定量的リアルタイムRT-PCRを使用して1以上のBAF複合体遺伝子の発現を測定することによって行われる。あるいは又はさらに、BAF複合体遺伝子の発現は、基板上に固定されてアレイを形成する複数のプローブを用いて遺伝子群についてmRNAのレベルを測定する、マイクロアレイ分析を用いて、腫瘍試料から抽出されたRNAを用いて評価できる。
いくつかの実施形態において、癌は、個体の腫瘍からの細胞試料中の1以上の染色体異常、例えば、遺伝子喪失に対応する、染色体の一部の欠失又は全体の喪失、の存在を決定することによって、BAF欠損として特定できる。染色体異常は、ギムザ染色、キナクリン染色、ヘキスト33258染色、DAPI(4’-6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)染色、ダウノマイシン染色、及び蛍光インサイツハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されない当技術分野で公知の任意の染色体分析技術により可視化できる。さらなる実施形態において、BAF複合体遺伝子はARID1Aであり、欠損は、染色体1からの少なくとも部分1p36.11の喪失を含む染色体異常によって決定される。
いくつかの実施形態において、癌は、個体からの細胞試料中の、BAF複合体ポリペプチドをコードする核酸での1以上の変形、例えば、多型又は変異の存在を決定することによってBAF欠損癌として特定される。
変異及び多型などの配列変異は、野生型ヌクレオチド配列に対する1以上のヌクレオチドの欠失、挿入又は置換を含んでよい。1以上の変形は、核酸配列のコード領域又は非コード領域中であり得、BAF遺伝子の発現若しくは機能を減少又は抑止し得る。言い換えれば、変異体核酸は、活性を低下又は消失させた変異体ポリペプチドをコードしてよく、又は例えば調節エレメントの活性の変化を介して、細胞内でほとんど又は全く発現しない野生型ポリペプチドをコードしてよい。変異核酸は、野生型配列に対して1以上の変異又は多型を有してよい。
あるいは又はさらに、本発明において、患者がBAF欠損癌を有するかどうかの決定は、BAF複合体タンパク質発現の分析によって、例えば1以上のBAF複合体タンパク質のレベルが抑制されるかどうかを調べることによって行われてよい。
いくつかの態様において、BAF複合体タンパク質の存在又は量は、BAF複合体タンパク質、又はその断片に特異的に結合できる結合剤を使用して決定されてよい。BAF複合体タンパク質結合剤の好ましい種類は、BAF複合体タンパク質又はその断片に特異的に結合できる抗体である。抗体は、例えばELISA型アッセイにおいて、例えば標識されるか又は、検出可能な結果を生成できる二次抗体を用いて、1以上のさらなる化学種との反応後に検出されるのを可能にするように、又は検出できるように標識されてよい。代替法として、標識された結合剤をウェスタンブロットで使用してBAF複合体タンパク質を検出することができる。
あるいは、又はさらに、BAF複合体タンパク質の存在を決定するための方法は、例えば、免疫組織化学(IHC)分析を用いて腫瘍試料に対して行われてよい。IHC分析は、パラフィン固定試料又は凍結組織試料を用いて行われてよく、BAF複合体タンパク質の存在及び位置を強調するために試料を染色することを一般的に含む。
本発明のいくつかの実施形態において、BAF欠損癌は、遺伝子又はタンパク質配列中の1以上の変異、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B及び/若しくはPBRM1の1以上から選択されるBAF複合体遺伝子における欠損、並びに/又は不在によって特徴づけられる。より好ましくは、変異又は欠損したBAF複合体遺伝子は、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4及びSMARCB1の1以上から選択され、より好ましくは、変異又は欠損したBAF複合体遺伝子はARID1Aある。
いくつかの実施形態において、BAF欠損癌は、ARID1Aの1以上の変異、欠損、及び/又は不在によって特徴付けられる。
さらなる態様において、本発明は、
癌を有する個体から得られた生物学的試料において、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B及び/若しくはPBRM1の1以上から選択される1以上のBAF複合体遺伝子における変異若しくは欠損を測定又は定量すること;並びに
1以上のBAF複合体遺伝子の測定又は定量化された量を基準値と比較すること、及び基準値に対して1以上のBAF複合体遺伝子が変異又は欠損している場合に、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ(ATR)阻害剤での治療に応答性である増加した可能性を有すると個体を特定すること、
を含むアッセイを提供する。
さらなる態様において、本発明は、
滑膜肉腫を有する個体から得られた生物学的試料において、SSX1、SSX2及び/又はSS18の1以上から選択される1以上の遺伝子における変異若しくは欠損を測定又は定量すること;並びに
SSX1、SSX2及び/若しくはSS18の1以上から選択される1以上の遺伝子の測定又は定量化された量を基準値と比較すること、及び基準値に対して1以上のBAF複合体遺伝子が変異又は欠損している場合に、毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ(ATR)阻害剤での治療に応答性である増加した可能性を有すると個体を特定すること、
を含むアッセイを提供する。
ATR阻害剤のスクリーニング方法
本発明はまた、ATR阻害剤を見つけるために、候補化合物のスクリーニングのためのタンパク質標的としてATRを使用するスクリーニング方法を含む。したがって、スクリーニングの方法は、ATRを阻害できる候補薬剤を特定するために、BAF複合体遺伝子変異又は欠損癌の治療のための、又は滑膜肉腫の治療のための薬剤としてのその後の開発における使用のために行うことができる。好都合なことに、これは、アッセイする構成要素が相互作用するのを助けるためにアッセイ緩衝液中で、及び複数の候補薬剤を試験するための複数ウェル形式で行うことができる。ATRの活性は次いで、所与の候補がATR阻害剤であるかどうかを決定するために、1以上の候補化合物の存在下及び非存在下で決定される。
例として、候補薬剤は、例えば100Da未満の分子量の、本明細書に開示されるタンパク質標的、抗体、ペプチド、核酸分子又は有機若しくは無機化合物のうちの1つの既知の阻害剤であり得る。いくつかの例において、化合物である候補薬剤の使用が好ましい。しかし、任意の種類の候補薬剤のために、コンビナトリアルライブラリーテクノロジーは、標的タンパク質の活性を調節する能力についての、潜在的に膨大な数の異なる物質の効率的な試験方法を提供する。このようなライブラリー及びその使用は、当技術分野で公知である。本発明はまた、他の条件の治療、及び特に癌の他の形態の治療のための公知の候補薬剤のスクリーニングを具体的に想定する。これは、患者又は既知の治療薬の疾患プロファイルが、本明細書に開示されるスクリーニング技術を用いて拡張又は変更されるという利点を有し、又は開発中の治療剤、患者又はBAF複合体遺伝子変異若しくは欠損癌の治療に関連する確立された疾患プロファイルについて利点を有する。
さらなる調査のための候補薬剤の特定後に、問題の薬剤が、それが正常細胞に対して致死的でないか、又はそうでなければ治療用途に適するかどうかを決定するために試験されてよい。これらの研究後に、薬剤は製造され、及び/又は医薬、医薬組成物若しくは剤形の調製において使用される。
スクリーニングアッセイにおける最初のヒットからのリード薬剤又は化合物の開発は、問題の薬剤を合成するのが困難又は高価である場合、又は特定の投与方法にとって適切ではない場合に望ましく、例えばペプチドは、それらが消化管中のプロテアーゼによってすぐに分解される傾向があるので、経口組成物には適さない活性物質である。模倣物の設計、合成及び試験は一般的に、標的特性について多数の分子をランダムにスクリーニングするのを避けるために使用される。
所定の標的特性を有する化合物からの模倣物の設計で一般に行われるいくつかの工程がある。最初に、標的特性を決定する上で決定的かつ/又は重要である化合物の特定の部分が決定される。ペプチドの場合、これは、ペプチドのアミノ酸残基を系統的に変化させることによって、例えば順に各残基を置換することによって行われてよい。化合物の活性領域を構成するこれらの部分又は残基は、その「ファルマコフォア」として公知である。
ファルマコフォアが発見されると、その構造は、様々な供給源、例えば分光技術からのデータ、X線回折データ及びNMRを使用して、その物理的性質、例えば立体化学、結合、サイズ及び/又は電荷に従ってモデル化される。計算解析、類似性マッピング(原子間の結合よりむしろ、ファルマコフォアの電荷及び/又は体積をモデル化する)並びに他の技術を、このモデリングプロセスにおいて使用できる。この手法の変形において、リガンド及びその結合パートナーの三次元構造がモデル化される。これは、リガンド及び/又は結合パートナーが結合時に立体構造を変える場合に、特に有用であり、模倣物の設計でモデルがこれを考慮するのを可能にする。
その上にファルマコフォアを模倣する化学基をグラフトすることができる鋳型分子が次いで選択される。鋳型分子及びその上にグラフトされる化学基は、模倣物が合成しやすく、薬理学的に許容される可能性があり、生体内で分解されず、一方でリード化合物の生物学的活性を保持するように都合よく選択できる。この手法によって発見された模倣物は次いで、それらが標的特性を有するかどうか、又はそれらがそれをどの程度示すかを確認するためにスクリーニングされてよい。さらなる最適化又は修飾を、インビボ試験又は臨床試験のための1以上の最終模倣物を得るために次いで行うことができる。
薬学的組成物
BAF欠損癌の治療のための本発明の活性剤は、単独で投与されてもよいが、1以上の医薬として許容し得る担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、増量剤、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、潤滑剤、又は当業者に周知の他の材料及び必要に応じて他の治療薬又は予防薬を共にさらに含む医薬組成物中でそれらを提供することが一般的に好ましい。医薬組成物の成分の例は、レミントンの薬学、第20版、2000年、出版社Lippincott,Williams & Wilkinsに提供されている。
これらの化合物又はそれらの誘導体は、BAF欠損癌の治療のために本発明において使用できる。本明細書で使用する治療剤の「誘導体」は、塩、配位複合体、インビボで加水分解可能なエステルなどのエステル、遊離酸又は塩基、水和物、プロドラッグ又は脂質、カップリングパートナーを含む。
本発明の化合物の塩は好ましくは、生理的に十分に許容され、かつ非毒性である。多くの塩の例が当業者に公知である。リン酸塩又は硫酸塩などの酸性基を有する化合物は、Na、K、Mg及びCaなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属と、並びにトリエチルアミン及びトリス(2-ヒドロキシエチル)アミンなどの有機アミンと、塩を形成できる。塩は、塩基性基、例えば、アミンを有する化合物と、塩酸、リン酸又は硫酸などの無機酸との間で、又は酢酸、クエン酸、安息香酸、フマル酸、又は酒石酸などの有機酸との間で形成され得る。酸性基と塩基性基の両方を有する化合物は、内部塩を形成できる。
エステルは、当技術分野で周知の技術を用いて、化合物中に存在するヒドロキシル基又はカルボン酸基と、適切なカルボン酸又はアルコール反応パートナーとの間で形成できる。
誘導体は、親化合物の1つへとインビボ又はインビトロで変換可能である、化合物のプロドラッグを含む。典型的には、化合物の生物学的活性の少なくとも1つは、化合物のプロドラッグ形態で還元され、プロドラッグの変換により活性化されて化合物又はその代謝物を放出できる。
他の誘導体は化合物のカップリングパートナーを含み、そこでは化合物が、例えば化合物に化学的にカップリングされるか又はそれと物理的に結合することにより、化合物がカップリングパートナーに連結される。カップリングパートナーの例としては、標識分子又はレポーター分子、支持基質、担体又は輸送分子、エフェクター、薬物、抗体又は阻害剤が挙げられる。カップリングパートナーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基などの化合物上の適切な官能基を介して本発明の化合物に共有結合されてよい。他の誘導体は、リポソームを用いて化合物を製剤化することを含む。
本明細書で使用する用語「医薬として許容し得る」は、健全な医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、若しくは他の問題又は合併症を伴わずに対象(例えば、ヒト)の組織との接触における使用に適し、妥当な利益/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を含む。各担体、賦形剤などはまた、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容可能」でなければならない。
本発明によるBAF欠損癌の治療のための、本明細書に開示される活性薬剤は好ましくは、個体に利益を示すのに十分である、「予防的有効量」又は「治療有効量」(場合によっては、予防は治療と考えてもよい)での個体への投与のためのものである。実際の投与量、及び投与の割合及び時間経過は、治療されるものの性質及び重症度に依存する。治療の処方、例えば投与量などの決定などは、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、典型的には治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法及び開業医に公知の他の要因が考慮される。上記の技術及びプロトコルの例は、レミントンの薬学、第20版、2000年、出版社Lippincott,Williams & Wilkinsで見つけることができる。組成物は、治療される状態に依存して、同時に若しくは順次に、単独で又は他の治療と組み合わせて投与されてよい。
製剤は、単位剤形で好都合に提供でき、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製できる。そのような方法は、1以上の補助成分を構成し得る担体と活性化合物を会合させる工程を含む。一般に、製剤は、液体担体又は微粉化した固体担体又はその両方と活性化合物を均一かつ密接に会合させること、及び次いで必要ならば生成物を成形することによって調製される。
BAF欠損癌の治療のための、本明細書に開示される薬剤は、全身的/末梢的又は所望の作用部位に関わらず、経口(例えば経口摂取);局所(例えば経皮、鼻腔内、眼、頬、及び舌下を含む);肺(例えば口若しくは鼻を介して、例えばエアロゾルを用いる吸入又はガス注入による);直腸;膣;非経口、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、くも膜下、脊髄内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、及び胸骨内を含む注射による;例えば、皮下又は筋肉内へのデポーの移植によるものを含むが、これらに限定されない投与の任意の都合のよい経路によって対象に投与できる。
経口投与(例えば、摂取による)に適する製剤は、カプセル、カシェ剤又は錠剤などの個別の単位として提供でき、粉末又は顆粒として;水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンとして;ボーラスとして;舐剤として;又はペーストとして所定量の活性化合物をそれぞれ含有する。
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む、注射による)に適する製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、防腐剤、安定化剤、静菌剤、及び意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の、等張性で、発熱物質を含まない滅菌注射溶液;並びに懸濁化剤と増粘剤、及び化合物が血液成分又は1以上の臓器を標的とするように設計されるリポソーム又は他の微粒子系を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液、を含む。そのような製剤での使用に適する等張性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射、リンゲル溶液、又は乳酸リンゲル注射液が挙げられる。典型的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/ml~約10mg/ml、例えば約10ng/ml~約1mg/mlである。製剤は、単位用量又は多用量密封容器、例えば、アンプル及びバイアルで提供でき、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用の水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存できる。即席の注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製できる。製剤は、活性化合物が血液成分又は1以上の臓器を標的にするように設計されるリポソーム又は他の微粒子系の形態であり得る。
BAF複合体遺伝子変異又は欠損癌の治療のための、本明細書に開示される薬剤を含む組成物は、標準的な化学療法レジメンと組み合わせて又は放射線療法と併用して、本明細書に記載の方法において使用できる。他の化学療法剤の例としては、アムサクリン(アムシジン)、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン(ゼローダ)、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、クロラムブシル(リューケラン)、シスプラチン、クラドリビン(ロイスタット(leustat))、クロファラビン(エボルトラ)、クリサンタスパーゼ(エルウィニア)、シクロホスファミド、シタラビン(ARA-C)、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドセタキセル(タキソテール)、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド(ベプシド、VP-16)、フルダラビン(フルダラ)、5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド、ハイドレア)、イダルビシン(ザベドス)、イホスファミド(ミトキサン)、イリノテカン(CPT-11、カンプト)、ロイコボリン(フォリン酸)、リポソームドキソルビシン(カエリックス、ミオセット)、リポソームダウノルビシン(DaunoXome(登録商標))、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン(エロキサチン)、パクリタキセル(タキソール)、ペメトレキセド(アリムタ)、ペントスタチン(ニペント)、プロカルバジン、ラルチトレキセド(Tomudex(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、テガフール-ウラシル(Uftoral)、テモゾロミド(Temodal)、テニポシド(Vumon)、チオテパ、チオグアニン(6-TG)(ランビス)、トポテカン(ハイカムチン)、トレオスルファン、ビンブラスチン(ベルベ)、ビンクリスチン(オンコビン)、ビンデシン(エルディシン)又はビノレルビン(ナベルビン)、又はPARP阻害剤(オラパリブ(リムパーザ)、ルカパリブ、ニラパリブ、ベリパリブ及びタラゾパリブ)が挙げられる。
インビボでの投与は、治療の過程を通して、単回投与で、連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔にて分割用量で)行うことができる。投与の最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療のために使用される製剤、治療の目的、治療される標的細胞、及び治療される対象によって変化する。単回投与又は複数回投与は、処置する医師が選択する用量レベル及びパターンで行われてよい。
一般に、活性化合物の適切な用量は、1日当たり、対象の体重1キログラム当たり約100mg~約250mgの範囲である。活性化合物が塩、エステル、又はプロドラッグなどである場合、投与される量は親化合物に基づいて計算されるので、使用される実際の重量は比例して増加する。
実験例
実施例1
方法
細胞培養
ES2及びTOV21Gは、American Type Tissue Collectionから得た。RMG1、SMOV2、KOC7C、HCH1、OVAS、OVISE、OVMANA、OVTOKO、OVSAYO及びKKは、Hiroaki Itamochi博士(鳥取大学医学部、米子、日本)から譲り受けた。卵巣明細胞癌株を、10%FCSを含むマッコイで増殖させた。細胞株のアイデンティティを、2013年3月にStemEliteキット(Promega)を用いてショートタンデムリピート(STR)タイピングによって確認した。ARID1A HCT116同質遺伝子細胞株を、Horizon Discovery社から入手し、10%FCSを含むマッコイで増殖させた。Arid1aヌルマウス及び野生型マウスの胚性幹細胞を、Zhong Wang博士(Harvard Medical School,米国)から入手し、0.1mM NEAA、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMのベタメルカプトエタノール及び2000U LIF/mlを補充した10%FCSを含むDMEM中で、ゼラチンコーティングしたプレート上で増殖させた。
VE-821 siRNAスクリーニング
siRNAライブラリーを、Dharmacon社から購入した。遺伝子を、本文に記載されるように選択した。各ウェルは、標的転写物の異なる配列を標的とする4つの異なるsiRNA種のSMARTプールを含有した。各プレートに、負のsiCONTROL(12ウェル、Dharmacon)及び陽性対照(4ウェル、siPLK1、Dharmacon)を補充した。RNAiスクリーニング条件を最適化し、生CellTitre-Glo(Promega)発光生存率の読み取りを、以前に記載された[21]ように行った。VE-821又はビヒクル(DMSO)を、トランスフェクション後24時間の時点で、培地中1μMの濃度で添加し、細胞を5日間暴露した。siRNAスクリーニングの統計分析を、[21]に記載されるように行った。
化学物質
ATR阻害剤VE-821及びVX-970は、Vertex Pharmaceuticals社によって提供された。オラパリブ及びBMN673を、Selleck Chemicals社から購入した。シスプラチンをSigma社から購入した。
ウェスタンブロッティング及び抗体
全細胞タンパク質抽出物を、プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche、West Sussex,UK)を補充したNET-N緩衝液(20mM トリスpH7.6、1mMのEDTA、1% NP40、150mMのNaCl)に溶解した細胞から調製した。ウェスタンブロットを、プレキャストBis-Trisゲル(Invitrogen,Paisley,UK)を用いて行った。以下の一次抗体を本研究で使用した;ARID1A(Cell Signalling)、ARID1B(Cell Signalling)、SMARCA4(Cell Signalling)、ATR(Santa Cruz)、PT1989 ATR(Gene Tex)、チューブリン(Sigma)、SMARCB1(Abcam)、γΗ2ΑΧ(Cell Signalling)、PARP-1(Santa Cruz)、エズリン(Cell Signalling)、TOP2A(Cell Signalling)、サイクリンB1(Cell Signalling)、ラミンA/C(Cell Signalling)、ARID2(Abcam)及びPBRM1(Cell Signalling)。
細胞生存率アッセイ
短期生存アッセイを、384ウェルプレート中で行った。指数関数増殖細胞を、500個の細胞/ウェルの濃度で播種した。薬物を播種後24時間の時点で添加し、細胞を5日間連続して薬物に暴露し、その後、細胞生存率をCellTitre-Gloルミネッセンス(Promega)を用いて推定した。クローン原性アッセイのために、細胞を6ウェルプレートに播種し(500個の細胞/ウェル)、播種後24時間の時点で、14日間連続的して薬物に暴露した。新鮮な薬物を含有する培地を72時間ごとに交換した。細胞を、10%トリクロロ酢酸で固定し、スルホローダミンB(Sigma-Aldrich、Gillingham,UK)で染色した。コロニーを手動で計数した。全細胞ベースアッセイを少なくとも3回実行した。
細胞周期分析脱連環
細胞を、6ウェルプレートのウェル当たり2×105細胞の密度で播種し、24時間インキュベートした後、示した時間の間、ATRi又は0.1%のDMSOを添加した。インキュベーション後に、付着細胞を収集し、次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中50(v/v)%の冷エタノールで固定した。細胞を次いでヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)での核酸染色前に30分間、RNアーゼAで処理した。試料をBD FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)を使用してBD LSR IIフローサイトメーターで分析した。同期実験のために、細胞を12時間、2mMのチミジンとインキュベートし、洗浄し培地で16時間インキュベートし、次いで、さらに12時間、2mMのチミジン中でインキュベートした。細胞を次いで、VX-970又はDMSOのいずれかを含有する培地中に放出し、試料を細胞周期分析のために、上記のように固定した。
p-H3アッセイ脱連環
実験処理後、細胞を50%の冷エタノール及びPBSを用いて固定した。分析前に、細胞を遠心分離し、15分間、PBS中0.25%(v/v)のトリトン-X100溶液1mL中に再懸濁した。遠心分離後、細胞を1%(w/v)のBSA及び0.75μgのP-S10ヒストンH3抗体(Jackson ImmunoResearch)を含有する100μLのPBS溶液中に再懸濁した。試料を3時間室温でインキュベートした。試料を次いで遠心分離し、1%のBSAを含有するPBS溶液で洗浄した。細胞をその後、1%のBSAを含むPBS中で1:30希釈した100μLのFITC標識ヤギ抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch)に懸濁した。試料を暗所で30分間インキュベートし、PI(5μg/mL)及びRNアーゼ(1mg/mL)を含有するPBS溶液中に再懸濁した。試料を、BD FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)を使用してBD LSR IIフローサイトメーターで分析した。
アポトーシスアッセイ
HCT116同系及びOCCC細胞を高密度(15~20,000/ウェル)で96ウェルプレートに播種した。24時間後、示した時間の間、VX-970の連続希釈を添加した。ApoTox-Glo(商標)トリプレックスアッセイ(Promega)を、製造元のプロトコルに従って行った。
インビボでの有効性試験
インビボでの有効性試験を、雌CD-1ヌードマウスの脇腹に皮下注射したHCT116 ARID1A+/+、HCT116 ARID1A-/-及びTOV21G細胞を用いて行った。動物を、経管栄養によってビヒクルのみ(10%のD-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート)又はVX-970(10%のD-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート中60mg/kg)のいずれかで処置した。処置を、示した時間の間、週4回施した。腫瘍をキャリパーによって週2回、手動で測定し、腫瘍が任意の方向に15mm超になったときに、動物を屠殺した。
後期ブリッジ分析
細胞を、ポリリシンコーティングされたカバーガラス上で24時間成長させ、その後、示した処理に暴露した。試料を、ホルムアルデヒド(4%)中で固定し、トリトンX-100(0.2%)中で透過処理し、DNAをDAPIで染色した。スライドを次いで、ライカ共焦点顕微鏡にて60倍で撮像した。
有糸***スプレッド
示した処理への曝露後、細胞を4時間、0.5%のコルヒチンとインキュベートした。細胞を収集し、PBSで洗浄し、20分間、37℃にて0.56%のKCl中でインキュベートした。試料を次いで固定し(3メタノール:1酢酸)、DAPIを添加した。細胞溶液をきれいなカバーガラス上に滴下し、有糸***スプレッドをライカ共焦点顕微鏡で、60倍で撮像した。
結果
遺伝子スクリーニングはARID1AをATRi合成致死パートナーとして特定する
単剤ATRi応答の臨床的に実用的な遺伝的決定因子を明らかにするために、一連のハイスループットRNAi化学増感スクリーニングを行った。細胞をsiRNAライブラリーでトランスフェクトし、次いで非常に強力かつ選択的なATR触媒阻害剤VE-821(Ki=13nM;15)に曝露した。ATR阻害剤がp53変異体癌である程度の有用性を示す可能性があると示唆した研究に基づいて、スクリーニングのための細胞株として、p53変異体の、トリプルネガティブ(ERα-、PR-、ERBB2-ve)***腫瘍細胞株である、HCC1143を選択した。正常細胞に対するATRiの効果をモデル化するために、非腫瘍の、***上皮細胞モデルである、MCF12Aもスクリーニングした。これは、シスプラチン誘発性ATR p.T1989自己リン酸化を評価することにより両方の細胞株が機能的なATR活性化経路を保持することを裏付けた16、17。臨床的に実用的な効果を特定するために、RNAiライブラリーは、薬物標的としてのそれらの固有の扱いやすさにより、癌中の反回性変異遺伝子18、キナーゼ、及びこれらのプロセスの欠損を強化するATR阻害剤の潜在能力を考慮して7、20、DNA損傷応答遺伝子19を標的とする1280種のsiRNAを含んだ。HCC1143及びMCF12A細胞を、siRNAライブラリーを用いて、384ウェルプレートフォーマットでトランスフェクトし、次いでその後の4日間、VE-821(1μΜ)又はビヒクル(DMSO)のいずれかに曝露し、その時点で、発明者らは、Cell Titre Glo試薬(Promega)を用いて細胞生存率を推定した(図1A)。
三重のスクリーニングからのデータを用いて、VE-821感作21に対する各siRNAの効果を説明するZスコアを計算し、HCC1143において150種の及びMCF12Aにおいて179種の顕著な(Z<-2)VE-821感受性を引き起こす効果を特定した(図1B、C)。ATR siRNAは、他のATR活性化因子(RAD17、RAD1、RAD9A)を標的とするsiRNAと同じように、顕著なVE-821感作を引き起こした。ERCC4及びATMを標的にするsiRNAもVE-821に対して細胞を感作し、ATRi合成致死と一致し、スクリーニングからの結果における信頼性を与えた。
多様な遺伝的バックグラウンドで動作するATRi合成致死効果を特定するために、HCC1143及びMCF12Aデータを比較し、HR/ファンコニ貧血経路(FANCE、SLX4、PALB2)、DNAミスマッチ修復(MSH4、PMS2)及び損傷乗り越え合成(RAD18)経路の構成要素を標的にするものを含む、VE-821感受性を引き起こす共通する30個のsiRNAを特定した(図1C)。発明者らはまた、このリスト中で7つの腫瘍抑制遺伝子を特定した(ATM、FANCE、GCP3、IDH1、PALB2、PMS2、ARID1A;図1C、D)。ARID1Aの発現停止がATRiに対して細胞を感作したという観察は特に興味深い。なぜなら、ARID1Aは様々な腫瘍の種類において反回性に変異されており(卵巣明細胞癌腫で45%、胃、膀胱、及び肝細胞の腫瘍で14~19%並びに***腫瘍で2~3%13)かつ現在のところARID1A変異体腫瘍に対するライセンス化された標的療法手法は利用可能ではないからである。
ARID1A/ATRi合成致死相互作用をいくつかの直交法を用いて検証した。HCC1143細胞において、siRNA SMARTPoolは、個々のARID1A siRNAと同じように、ARID1Aタンパク質レベルを減少させ、VE-821に対する感受性を有意に高めた(p<0.0001、ANOVA、図1E、F)。ARID1A siRNAはまた、第1相臨床試験で現在評価されているATRiであるVX-970に対する感受性を引き起こし(図2A)、合成致死性がVE-821に特異的でないことを示唆する。ARID1Aの構成的機能喪失もまたATRi感受性をもたらすかどうかを評価するために、野生型ARID1A(ARID1A+/+)又はホモ接合機能喪失変異体ARID1A対立遺伝子(p.Q456/p.Q456;ARID1A-/-と呼ばれる;図2B)のいずれかを含有するヒト結腸直腸HCT116同系細胞を利用した。クローン原性生存アッセイにおいて、ATRi曝露は、ARID1A+/+と比較してARID1A-/-細胞の生存を有意に損なった(p<0.0001、ANOVA、図2C~E)。これらの観察は、タキソール又はメトトレキサートのいずれにも誘発されないARID1A-/-選択性のように、標的治療に対するARID1A-/-細胞の一般的な、非特異的な感受性を反映するとは考えられなかった。HCT116 ARID1A-/-モデルにおけるARID1A合成致死の観察は、ARID1AとATR阻害との間の合成致死相互作用を検証するだけでなく、効果が***系統からの細胞に限定されないことも立証した。腫瘍細胞株の遺伝的に及び組織学的に多様なパネルにおけるATRi感受性も評価し、グループとして機能喪失ARID1A変異を有するもの(n=9)は、ARID1A変異のないものよりもVX-970に対して有意により感受性であったことを観察した(n=15、p=0.005、スチューデントt検定、図2F)。ARID1A変異細胞に関連するATRi感受性の大きさは、ATM又はERCC1などのATRi感受性の他の候補バイオマーカーで見られる大きさより大きくないにしても、同程度であった。
さらに、VX-970のARID1A-/-選択性は、PARP阻害剤(PARPi)又はシスプラチンなどの他の提案されたARID1A標的剤の場合よりも大きいことが判明した22、23。ATR/ARID1A合成致死相互作用が種特異的であるかどうかを調べるために、同系Arid1a+/+及びArid1a-/-マウス胚性幹(ES)細胞を調べた24。クローン原性アッセイにおいて、VX-970とVE-821の両方は、選択的にArid1a-/-ES細胞を標的とした(p<0.001、ANOVA、図2G、H)。最後に、ARID1A/ATRi合成致死性がATRの触媒阻害に特異的であり得るという可能性を調べるために、siRNA感受性データを86種のヒト腫瘍細胞株において作成した(25及びCampbellら、投稿準備中)。ATR siRNAが、ARID1A野生型腫瘍細胞(n=65)と比較して、ARID1A変異腫瘍細胞(n=2I)に対して有意により高い増殖阻害効果を有したことが観察された(p=0.0084、MP試験、図21)。これを確認するために、ATRをHCT116 ARID1A-/-及びARID1A+/+細胞においてsiRNAによって発現停止させ、ATR siRNAが選択的にARID1A-/-細胞を標的にすることが判明した。(p<0.05、スチューデントt検定)。まとめると、このデータは、化学的阻害又は遺伝子サイレンシングのいずれかによるATR機能の抑止が、ARID1A欠損による合成致死であることを示唆した。
インビボATR/ARID1A合成致死
臨床試験において評価されているATRiであるVX-970が、ARID1A欠損腫瘍に対するインビボでの有効性を示すかどうかを評価した。確立されたHCT116 ARID1A+/+又はARID1A-/-皮下異種移植片を有するマウスを使用して(図3A)、VX-970はARID1A+/+異種移植片に影響を及ぼさない(p=0.43、ANOVA)が、有意にARID1A-/-異種移植片の成長を著しく阻害した(p=0.05、ATR/BAF合成致死9 ANOVA、図3B)ことが見出された。独立した実験で、VX-970が、HCT116 ARID1A-/-異種移植片の確立を防ぐことができる(ARID1A-/-腫瘍形成頻度は、ビヒクル処置マウスについては73%であるのに対して、VX-970処置マウスについては27%、p=0.027 フィッシャーの直接検定)が、ARID1A+/+異種移植片の発生率に影響を及ぼさない(それぞれ80%対87%、p=1 フィッシャーの直接検定、図3C、D)ことも判明した。この実験において、継続されたVX-970処置はまた、ARID1A-/-腫瘍の成長を著しく鈍化させた(p=0.015、ANOVA)が、ARID1A+/+異種移植片を損傷させなかった(p=0.63、ANOVA、図3E、F)。
最後に、天然のARID1A変異を有する腫瘍細胞株の異種移植片におけるVX-970のインビボでの有効性を評価した。インビトロ研究では、ARID1A欠損TOV21Gヒト卵巣明細胞癌(OCCC)細胞株(ARID1A p.548fs/p.756fs)は、ARID1A野生型OCCC細胞株RMG1よりもVE-821とVX-970の両方に対しより感受性であり(図3G、p<0.005、AVOVA)、ATRi暴露後にDNA損傷及びアポトーシス応答も示した(図3H、I)ことが判明した。インビボでは、VX-970処置は、ビヒクルと比較して、確立されたTOV21G腫瘍の成長を有意に阻害し(p=0.014、ANOVA、図3J~L)、ARID1A/ATR合成致死がATR阻害を用いてインビボで利用できることを再び示唆する。
ATR阻害はARID1A欠損細胞中のDNA脱連環の欠陥を標的にする
複製フォークストレスに応答して、ATR活性は、S及びG2/Mチェックポイントで細胞周期停止を開始する26。ATRiに対するARID1A欠損細胞の感受性は部分的にこれらのチェックポイントへの依存の増加が原因であり得るという仮説を調べた。これを調べるために、ARID1A同質遺伝子細胞を、二重チミジンブロックを用いてG1/Sで同期し、次いで細胞周期の解放後の経時的な細胞周期の進行を監視した。ARID1A+/+とARID1A-/-細胞の両方は、同様の速度でS期を経て進行し、7時間後にG2/Mでピークに達した(図4A)。しかしながら、G2/MのARID1A+/+細胞の割合は、同期後7~10時間に急速に落ちたが、ARID1A-/-細胞は、G2/Mを経て遅延した進行を有し、解放後10時間の時点で、ARID1A+/+でのわずか11%と比較して、ARID1A-/-細胞の25%は、G2/Mのままであった(図4A)。G2/M移行を直接評価するために、有糸***開始を、FACSによりSer10がリン酸化されたヒストンH3陽性細胞の割合を評価することによって監視し、ARID1A-/-細胞対ARID1A+/+において有糸***の開始が50%低下したことを認めた(図4B)。ストレス条件下で、細胞質へ往復され、それによって有糸***開始を阻止する有糸***サイクリンB1の細胞内局在を調べた27。ARID1A+/+細胞と比較してARID1A-/-細胞中で細胞質サイクリンB1レベルがより高いことが観察され、G2/Mチェックポイントの関与の増加と一致した(図4C)。このことは、ARID1Aの構成的喪失と誘導的喪失の両方が、G2/Mを経る細胞周期進行に遅延を引き起こしたことを示唆した。
G2/M細胞周期チェックポイントは、トポイソメラーゼIIa(TOP2A)によって媒介されるプロセスである、染色体脱連環を完了し損なうことを含む様々な細胞ストレスによって活性化できる28。最近、クロマチンへのTOP2Aの局在化にBAF複合体が必要とされることが示された29。BAF複合体欠損を有するマウス細胞において、TOP2A局在化の障害はDNA脱連環の欠損をもたらす29。DNA脱連環の欠損がまたARID1A欠損細胞中に存在するかどうかを、遅延脱連環の結果である後期ブリッジの頻度を評価することによって決定した。ARID1A-/-細胞は、ARID1A+/+細胞と比較して後期ブリッジの数の有意な増加を示した(p=0.038、スチューデントt検定、図4D、E)。ARID1A発現がsiRNAによって発現停止された細胞と同様に、ARID1A-/-細胞は、ARID1A+/+細胞と比較して、より低いレベルのクロマチン結合TOP2Aを示したことにも留意されたい(図4F、G)。OCCC細胞株のパネルの中で、発明者らはまた、ARID1A変異を有するものがARID1A野生型細胞と比較して、クロマチン結合TOP2Aの減少を示したことも見出した(図4H)。これらの観察は、ARID1A欠損ヒト腫瘍細胞がTOP2A媒介性染色体脱連環に欠陥をもつことを示唆した。
ATRは、完全な染色体脱連環に失敗した後のG2/Mチェックポイントの開始に関与している27、30。これは、ATRの阻害がARID1A欠損細胞中で脱連環欠陥によって引き起こされるG2/Mチェックポイントを解放し、それが合成致死に貢献し得るという仮説につながった。同期化した細胞の細胞周期の進行を評価して、VX-970は以前にARID1A-/-細胞で見られたG2/M遅延を抑止することが判明した(図5A)。ATRi誘導性のG2/Mチェックポイント抑止はまた、おそらくATR阻害によって引き起こされるG2/Mを経る遷移の増強が姉妹染色分体を効果的に脱連環する能力を制限するので、ARID1A-/- HCT116細胞(p=0.023、スチューデントt検定、図5B)及びARID1AヌルTOV21G細胞(p=0.006、スチューデントt検定による、図5C)における後期ブリッジの頻度を高めた。
ゲノムの完全性に対するこれらの事象の影響を評価するために、発明者らは、VX-970に暴露したARID1A同質遺伝子細胞からの有糸***染色体を調べた。VX-970は、ARID1A-/-細胞中での染色体異常の頻度に有意な増強を誘発した(p=0.0007、スチューデントt検定、図5D、E)。加えて、VX-970によるγΗ2ΑΧ誘導の誘導は、ARID1A-/-細胞においてより顕著であることが観察された(図5F)。同様のγΗ2ΑΧ応答は、ARID1A欠損TOV21G細胞でも観察された(図3B)。これらの効果に加えて、VX-970の曝露は、ARID1A+/+細胞と比較してARID1A-/-細胞におけるより高いカスパーゼ-3/7の活性化によって示されるように、ARID1A選択的アポトーシス応答を引き起こし(p<0.05、スチューデントt検定による、図5G)、効果はTOV21G(ARID1A変異OCCC)でも観察されたがRMG1(ARID1A野生型OCCC)細胞では観察されなかった(図3C)。PARP開裂を測定することにより、アポトーシスの誘導も評価した。カンプトテシンは、ARID1A-/-とARID1A+/+の両方の細胞において同様のレベルの開裂を誘発し、両方の遺伝子型が機能的アポトーシス応答を保有することを示唆する。対照的に、VX-970は、ARID1A+/+細胞でよりも、ARID1A-/-細胞においてはるかに高いレベルのPARP切断を引き起こした(図5H)。
さらなるBAF構成要素の不活化はATRiに対して細胞を感作する
ARID1Aは、BAF複合体の構成要素である。さらなるBAF構成要素がATRiと同様の合成致死性相互作用を示すかどうかを特定するために実験を行った(図6A)。SMARCA4、ARID1B又はSMARCB1のサイレンシングは、VX-970に対するHCT116細胞の感受性を個々に増強した(p<0.0001、ANOVA、図6B、C)。機能喪失SMARCA4変異を有するOCCC細胞株(p.L639fs7)のTOV112D細胞は、ARID1AとSMARCA4の両方について野生型であるOCCC細胞株よりも、ATRiに対して有意により感受性であることも判明した(図6D)。HCC1143及びHeLa細胞においてSMARCA4サイレンシングによって引き起こされるVX-970感受性は、ARID1A siRNAによって引き起こされる感受性と同等であった(図6E)。HCT116細胞におけるSMARCA4又はARID1Bのいずれかのサイレンシングはクロマチン結合TOP2Aレベルを有意に低下させ(図6F)、ARID1A機能障害について見られた効果を再現する。これらの結果は、ARID1Aの標準的機能、すなわち、BAF複合体の一部としてのその役割がATR阻害剤応答の決定に重要である可能性を示唆した。
考察
本発明の基礎となるデータは、ATR阻害剤が、ARID1A欠損癌及びBAF複合体における他の欠損を有するもののための単剤療法としての可能性を有し得ることを示唆する。ヒト癌における非常に再発性のあるARID1A変異及び臨床用ATR阻害剤の利用可能性は、第1相臨床試験が完了すると、これらの薬剤の有効性を評価するために、バイオマーカー駆動性概念実証試験が推進され得ることを示唆する。これらは、卵巣明細胞癌などの、高頻度のARID1A変異があり、治療応答の配慮基準も制限されており標的化手法が存在しない、癌の種類で行うことができる。ARID1A欠損が他の癌(例えば、乳癌及び結腸直腸癌)由来の組織診断モデルにおいてATR阻害剤感受性を引き起こしたことも判明し、この手法がより広い有用性を有する可能性もある。同様に、追加のBAF腫瘍抑制遺伝子の欠損もATR阻害に対する感受性を引き起こすという観察はまた、ATR阻害剤の広い有用性を示唆し得る。最後に、合成致死効果を特定することでの課題の1つは、これらの効果に耐性のあるものと、さらなる分子変化により容易に排除されるものとを判別することであるので31、ARID1A/ATR合成致死性相互作用は様々な細胞モデル系で動作し、したがってさらなる分子変化に対しおそらく弾力的であり、かつ臨床的評価に適する可能性があることが認められた。
機構的に、本発明のデータは、ARID1A/ATR阻害剤合成致死(図6G)について以下のモデルを示唆する:(i)ARID1A欠損は、TOP2Aクロマチン結合を低下させる(図4F);(ii)これは、DNA脱連環欠陥(図4D、E)、その結果、G2/Mチェックポイント活性化をもたらす(図4A、B、C);(iii)ATRiを介するこの細胞周期チェックポイントの抑止は、連結DNAと共にARID1A欠損細胞を有糸***に追いやる(図5A);最後に(iv)細胞質***中の連結DNAのその後の剪断は、DNA二本鎖切断、総染色体不安定性及びアポトーシス(図5D~H)を引き起こす。この効果にも寄与できる他の追加の機構がある可能性がある。例えば、ATR機能の低下はATRi感受性の増加とも関連付けられ10、発明者らの観察に関するATR活性の説明が可能である。発明者らは、様々なのARID1A欠損腫瘍細胞において強力なATRタンパク質発現及び自己リン酸化を検出したが、この機構はまた、他の脱連環欠陥癌がATRiで標的化され得るという可能性がARID1A変異細胞では損なわれる可能性があることを示唆し得る。あるいは、テロメア維持のALT経路を利用する細胞はまたATRi32に感受性であり、本明細書で使用されるモデルのいずれもALT陽性ではないが、これも寄与し得る。全体的に、脱連環欠陥に対しARID1A/ATR合成致死がこれらの観察の根底にある最も直接的な機構であると思われ、及び他の脱連環欠陥癌がATRiで標的化される可能性も示唆される。
実施例2
癌における治療標的を特定するために、より最近に使用される手法の1つは、特定の癌ドライバー遺伝子の欠損に関連付けられる合成致死及び遺伝子中毒の影響などの遺伝子依存性を特定及び利用することであった。例えば、BRCA1又はBRCA2腫瘍抑制遺伝子と小分子PARP阻害剤との間の合成致死相互作用は、BRCA1/2変異卵巣癌及び前立腺癌の治療においてPARP阻害剤を使用するための根拠を提供する(Lord,Tuttら、2015、Mateo,Carreiraら、2015)。この特定の合成致死性相互作用は、DNA損傷応答(DDR)分子ネットワークの構成要素であるPARP1を阻害することによって、腫瘍抑制遺伝子の欠損を標的化する。ヒト細胞では、下等生物でのように、DDRは、DNA損傷に直面してゲノムの完全性を維持する一連の重複する機構からなる(Lord及びAshworth 2016)。いくつかの保存されたDDR経路における重要な要素の1つは、キナーゼATR(毛細血管拡張性運動失調症RAD3関連)である。ATRは、複製フォーク停止を引き起こす条件下で(例えば、DNAポリメラーゼからの複製ヘリカーゼの脱共役)又は二本鎖切断(DSB)修復中に細胞中に蓄積する一本鎖DNA(ssDNA)に応答して活性化される(Nam及びCortez 2011)。これらのシナリオでは、ssDNAはヒト複製タンパク質A(RPA)によって結合され、これがATR及びATR相互作用タンパク質(ATRIP)を動員し、これがATR活性化を促進する。活性のあるATRは、P53、ヒストンH2AX及びCHK1キナーゼを含む複数の基質タンパク質上のセリン/スレオニン残基をリン酸化する。これらの標的タンパク質を介して、ATRは、S期での細胞周期停止及び停止した複製フォークの安定化を促進する。これらの事象は、細胞がG2及び有糸***に進む前に、DNA損傷の修復を可能にする。ATRはしたがって、複製ストレス及びDNA損傷の他の形態を引き起こす条件下でのゲノムの完全性の維持に極めて重要である(Nam及びCortez 2011、Gaillard、Garcia-Museら、2015)。
細胞周期及びゲノムの完全性の維持におけるATRの重要性は、癌におけるATR阻害剤の治療可能性への多くの関心をもたらした。いくつかの小分子ATR阻害剤が、第I相臨床試験(NCT02157792、NCT02223923)で現在調査中である。これらの薬物の臨床応用の成功は、応答する可能性が最も高い患者集団の特定を必要とし、この点で、いくつかの研究は、ATR阻害剤感受性のバイオマーカーを特定することを目的としている。BRCA1/2変異体癌の療法としてのPARP阻害剤の例(Lord及びAshworth 2016)と同様に、合成致死性相互作用は、シスプラチン(Reaper,Griffithsら 2011、Pires,Olcinaら 2012、Huntoon,Flattenら 2013、Josse,Martinら 2014)、ERCC1(Mohni,Kavanaughら 2014)、XRCC1(Sultana,Abdel-Fatahら 2013)及びATM(Kwok,Daviesら 2015、Kwok,Daviesら 2015)と組み合わせた場合に、ATRとP53を含むいくつかのDDR関連遺伝子との間に存在することが示されている。SSは、しばしばDNA損傷化学療法で治療される疾患であるが、SS腫瘍細胞のDDRネットワークの要素への依存性についてほとんど知られていない。
ここで、発明者らは、SS細胞株における一連の平行高スループット低分子干渉RNA(siRNA)スクリーニングを行うことにより、SSのための新規治療標的を特定することに着手した。この手法を使用して、発明者らは、SS細胞においてATRへの予想外の依存関係を特定した。この遺伝子依存性は、ATR遺伝子のサイレンシングにより明らかであっただけでなく、重要なことに、臨床小分子ATR阻害剤を用いて利用及び標的化することもできた。
結果
滑膜肉腫の腫瘍細胞株のRNA干渉プロファイリングは候補遺伝子依存性としてATRを特定する
滑膜肉腫における候補治療標的を特定するために、発明者らは、5つの一般的に使用されるSS腫瘍細胞株;HS-SY-II、ASKA、YAMOTO、CME1及びSYO1における大規模なRNA干渉スクリーニングを行った(図7A)。これらの腫瘍細胞株は、SSにおける2つの最も一般的な融合体(SS18-SSX1又はSS18-SSX2)のこれらのハーバーの1つとして選択され、各モデルにおいて384ウェルプレートフォーマットで高効率のsiRNAトランスフェクションに適していた(図7Bに示される例)。トランスフェクション条件を最適化した後、各腫瘍細胞株を、720個のキナーゼ及びキナーゼ関連遺伝子、Wnt経路遺伝子、DNA修復遺伝子及びヒト癌において反復改変された遺伝子(癌遺伝子調査で定義された)を含む、1600個の遺伝子を標的化するように設計され、384ウェルプレートに整列されたsiRNAライブラリーで逆トランスフェクトした。この分子経路は滑膜及び他の軟組織肉腫の病因に関与しているので、キナーゼを薬物標的としてそれらの薬理学的取り扱いやすさに基づいて選択する一方で、Wnt関連遺伝子を選択した(Vijayakumar,Liuら 2011、Barham,Frumpら 2013,Trautmann,Sieversら 2013)。siRNAトランスフェクション後、細胞をさらに5日間連続培養し、その時点で、細胞生存率を、CellTiterGloルミネセンスアッセイ(Promega)を用いて推定した。総合すると、発明者らは、各細胞株について3つのレプリカスクリーニングを行い、最終分析でこれらのレプリカからのデータを合わせ、各siRNAについて堅牢なZスコアを算出して(方法を参照)、腫瘍細胞生存率に対するその影響を推定した。
SSに特異的である可能性のある遺伝子依存性を特定するために、発明者らは、SS腫瘍細胞株におけるsiRNA Zスコアを、癌の組織型の多様なセットからの117腫瘍細胞株について最近記載されたキノーム(kinome)siRNA Zスコアのプロファイルと比較した(Campbell,Ryanら 2016)。発明者らは、40種の追加の腫瘍細胞株における追加のキノームsiRNAスクリーニング、74種の腫瘍細胞株における癌遺伝子調査/DNA修復ライブラリーsiRNAのスクリーニング、及び合計15種の腫瘍細胞株におけるWnt経路のsiRNAスクリーニングによりこのデータを増補した。SSモデルにおけるsiRNAプロファイルを比較することで、発明者らは、Wntシグナル伝達(例えば、WntリガンドWnt7B及びβカテニン相互作用タンパク質、BCL9L PMID:18627596、図7C)、新薬の開発につながるような有糸***AのNever(NIMA)ファミリーメンバーPMID:23132929 NEK1、NEK2及びNEK4並びにDREAM複合体キナーゼ、DYRK1Aと関連するものを含む、一連の候補SS遺伝子依存性に注目した(図7D)。以前に発明者らは、DYRK1Aが骨肉腫(OS)におけるRB1(pRb)腫瘍サプレッサー欠損による合成致死であることを見出した(Campbell,Ryanら 2016)。発明者らは、DYRK1A siRNAに対するSS腫瘍細胞株の感受性が、RB1ヌルOS腫瘍細胞株で見られるものと同等のスケールであることを見出した(図7D)。
発明者らは、毛細血管拡張性運動失調症RAD3関連(ATR)、ATR活性化タンパク質、RAD9A及びRAD18並びに相同組換えによる二本鎖切断修復に関与する2つの腫瘍抑制タンパク質、BRCA1及びBRCA2を含む、DNA修復タンパク質を標的とするように設計されたsiRNAに対しSS腫瘍細胞株が感受性であることも見出した(図7E)。
滑膜肉腫におけるATR遺伝子依存性は臨床ATR阻害剤で誘発でき、かつSS18-SSX1とSS18-SSX2の融合タンパク質の発現によって引き起こされる
遺伝子依存性としてのATRの特定は、いくつかの理由で特に興味深い:(i)異なる癌組織由来の腫瘍細胞株についてのATR siRNA Zスコアを比較した場合、発明者らは、SS腫瘍細胞株が最も感受性があり、比較的一貫して応答することを見出した(図8A);(ii)SSはDNA損傷化学療法で治療される場合が多いが、DNA損傷応答(DDR)における腫瘍特異的欠陥を利用できるATR阻害剤に対するそれらの感受性についてほとんど理解されていない;(iii)VX970及びAZD6738などのATRの小分子阻害剤は、癌の治療のための第1相臨床試験(NCT02157792、NCT02223923)に最近入り、この遺伝子依存性が臨床的に実用可能であり得ることを示唆する。
検証実験でsiRNAに対するSS腫瘍細胞株の感受性を確認したので(図9A)、発明者らは、臨床ATR阻害剤(ATRi)であるVX970(Vertex Pharmaceuticals)に対する5種のSS腫瘍細胞株の感受性を評価した。以前に検証したATRi耐性HCT116細胞PMID:27958275と比較して、全5種のSS腫瘍細胞株は、VX970に非常に感受性であり(ANOVA p<0.0001)、それぞれが約0.1 MのSF50値(細胞生存率での50%低下を引き起こすのに必要な濃度)を示す(図7B)。これはまた、SS腫瘍細胞株の感受性をHFF1線維芽細胞及び非腫瘍上皮MCF10A細胞と比較した場合でも同じあった(図9B)。以前に、発明者らは、腫瘍抑制遺伝子ARID1Aの欠損がATRi感受性を引き起こすことを実証した(PMID:27958275)。発明者らは、SS腫瘍細胞株が、ARID1Aの両方のコピーが遺伝子標的化によって機能不全にされたHCT116細胞と同じくらいVX970に感受性であることを見出した(図7C)。さらに、ATRi感受性に関連する他の分子の欠損を有するもの、すなわちATM遺伝子欠損、ARID1A改変及びEWS-FLI融合を有するユーイング肉腫腫瘍細胞(PMID:27577084)に対しSS腫瘍細胞株のVX970感受性を比較して、SS腫瘍細胞株は、ユーイング肉腫腫瘍細胞及びARID1A欠損を有する腫瘍細胞における感受性に匹敵するVX970感受性を示した(図7D、図9C)。SS腫瘍細胞株におけるATRiに対するこの一貫したインビトロ感受性は、VX970に限定されず、臨床ATRi AZD6738(AstraZeneca(Llona-Minguez、Hoglundら 2014))及びツールボックス阻害剤、AZ20(AstraZeneca(Llona-Minguez,Hoglundら 2014))及びVE821(Vertex Pharmaceuticals(Charrier,Durrantら 2011))を含む他のATRiでも観察された(図9D、E)。さらに、確立された患者由来の滑膜肉腫異種移植片を有するマウス(PDX SA13412)のVX970での処置は、腫瘍成長の阻害(ANOVA p<0.0001、図8E)及び生存時間の延長を引き起こし(ログランクマンテル p=0.026、図8F)、これがさらなる調査に値する効果である可能性を示唆する。
これらの実験は、SS腫瘍細胞がATR阻害に非常に感受性を示す可能性を強く示唆するが、発明者らは、これらの効果がSS18-SSXファミリー融合タンパク質の発現と関連していることを正式に確認していない。発明者らは、HFF1線維芽細胞を含む多くの細胞とは異なり、HCT116細胞(ATRi耐性)がレンチウイルス構築物からのSS18-SSX1又はSS18-SSX2 cDNAの発現を許容できることを見出した。さらに、HCT116細胞におけるSS18-SSX1又はSS18-SSX2の発現は、SS融合遺伝子発現に関連する3つの特徴、すなわち、内因性SS18の発現の適度な減少、SWI/SNF構成要素SMARCB1のレベルの低下(おそらく両方とも、SWI/SNF BAF複合体からのSS18及びSMARCB1の移動によって引き起こされる(Kadoch及びCrabtree 2013、Ito,Asanoら 2015))並びに正規のWnt経路の標的遺伝子AXIN2の上方制御、を再現する(図8G、H)。Kadoch及びCrabtreeは最近、SS18-SSX1融合タンパク質のC末端の残基がSWI/SNF複合体からのSMARCB1の移動に重要であることを証明した(Kadoch及びCrabtree 2013)。完全長SS18-SSX1又はSS18-SSX2融合タンパク質の発現と比較して、SSX1の最後の8つの残基が欠失したSS18-SSX1変異体(Δ71-78)の発現は、SMARCB1レベルの低下も、AXIN2 mRNAの増加も引き起こさなかった(図8G、H)。発明者らは、SS18-SSX1、SS18-SSX2又はΔ71-78のいずれかを発現するHCT116細胞のATRi感受性を評価した時に、SS18-SSX1とSS18-SSX2の両方はATRi感受性の有意な(ANOVA、p<0.0001)増強を引き起こすが、Δ71-78の発現はなく(図8I~K)、効果は間葉系U20S骨肉腫細胞においても再現されることを見出した。
ATRiは、SS腫瘍細胞におけるアポトーシス及び複製フォークストレス並びにサイクリンE依存的に合成致死を引き起こす
癌由来の腫瘍細胞中でATRiに誘発される細胞毒性は、複製フォークストレスの増加と関連している場合が多い。発明者らは、ATRiに暴露したSS腫瘍細胞が、複製フォークストレスのバイオマーカーであるアポトーシス(γΗ2ΑΧ)を受けたことを見出した(図10C~D)。複製フォークストレスを正式に評価するために、発明者らは、DNA繊維分析を使用し(Schwab及びNiedzwiedz 2011)、SYO1細胞中でVX970が複製フォーク速度を有意に(p<0.0001、図10E)減少させることを見出し、γΗ2ΑΧ分析の結果を確認した。さらに、発明者らは、HCT116細胞中のSS18-SSX1のみの発現が、複製フォーク速度のわずかではあるが有意な(p<0.0001)減少を引き起こしたが、これはVX970の添加によって増強された(図10F)ことを見出し、ATR阻害が滑膜肉腫の融合によって引き起こされる複製フォークストレスを標的にすることを示唆する。この仮説と一致して、発明者らは、SS腫瘍細胞が、VX970に暴露されたときに、S期で停止することを見出した(図10G)。
参考文献
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Claims (60)

  1. 1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する癌を有する個体を治療する方法における使用のための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)。
  2. 1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する癌を有する個体を治療する方法における使用のための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)であって、前記方法が:
    (a)前記癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、及び
    (b)前記癌が1以上のBAF複合体遺伝子の変異又は欠損を有する個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること
    を含む、阻害剤。
    前記癌が、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B、及び/又はPBRM1から選択される1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する、請求項1に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  3. 前記変異される又は欠損するBAF複合体遺伝子が、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4及びSMARCB1の1以上から選択される、請求項1又は請求項2に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  4. 前記癌が、1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するARID1Aである、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  5. 滑膜肉腫を有する個体を治療する方法における使用のための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)。
  6. SSX1、SSX2又はSS18から選択される1以上の遺伝子で変異される又は欠損する滑膜肉腫を有する個体を治療する方法における使用のための毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)であって、前記方法が:
    (a)前記癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、並びに
    (b)前記癌がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される1以上の遺伝子に変異又は欠損を有する個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること
    を含む、阻害剤。
  7. 前記変異又は欠損が、転位欠陥、機能喪失変異又は発現喪失変異である、請求項5又は請求項6に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  8. 前記BAF複合体の変異体又は欠損癌が、滑膜肉腫、卵巣明細胞癌、結腸直腸癌、黒色腫、肺癌、肝細胞癌、胃癌、膀胱癌、血液悪性腫瘍、扁平上皮癌、漿液性卵巣癌、乳癌、膵臓癌、髄芽腫、腎癌又は神経膠腫である、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  9. 前記阻害剤が、核酸阻害剤、抗体、小分子又はペプチドである、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  10. 前記阻害剤が、AZ20、BEZ235(NVP-BEZ235、ダクトリシブ)、ETP-46464、VE-821、VE-822(VX-970)、AZD6738、NU6027、CP-466722、CGK733、KU-60019、KU-55933、シサンドリンB又ミリンである、請求項9に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  11. 前記阻害剤が、siRNA分子である、請求項9に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  12. ATR阻害剤による治療が、1以上のさらなる抗癌療法と組み合わされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の治療方法における使用のためのATR阻害剤。
  13. ATR阻害剤による治療が、1以上のさらなる化学療法剤(複数可)との併用で使用される、請求項12に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  14. 前記ATR阻害剤による治療が、放射線療法との併用で使用される、請求項9~13のいずれかに記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  15. 前記個体が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する癌を有するかどうかを決定する工程が、前記タンパク質(複数可)が変異される又は欠損するかどうかを決定するために前記個体から得られる試料中の1以上のBAF複合体遺伝子のタンパク質発現を測定することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  16. 1以上のBAF複合体タンパク質の発現を決定する工程が、免疫組織化学を使用して腫瘍試料中のBAF複合体タンパク質の発現を決定することの1以上を含み、BAF複合体タンパク質発現を決定することが、ELISA若しくはウェスタンブロットにより細胞溶解物中のBAF複合体のタンパク質レベルを測定することを含み、かつ/又はBAF複合体タンパク質発現を決定することが、BAF複合体タンパク質、若しくはその断片に特異的に結合できる結合剤を使用することを含む、請求項15に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  17. 前記個体が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する癌を有するかどうかを決定する工程が、腫瘍から得られた癌細胞試料から、血液中で循環する癌細胞の試料から、又は血液中を循環する癌細胞の核酸の試料から抽出されるゲノム核酸で実行される、請求項1~16のいずれか一項に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  18. 1以上のBAF複合体遺伝子の発現を決定する工程が、癌細胞の試料からRNAを抽出すること並びにリアルタイムPCRによって及び/又はBAF複合体遺伝子RNAにハイブリダイズできるプローブを使用することによって発現を測定することを含む、請求項16に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  19. 前記プローブが、マイクロアレイに固定化される、請求項18に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  20. 前記個体が1以上のBAF複合体遺伝子で欠損する癌を有するかどうかを決定する工程が、前記個体から得られた試料の核型分析を介して染色体不安定性から生じる遺伝子喪失を特定することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  21. 前記BAF複合体遺伝子が、ARID1Aであり、かつARID1Aの喪失が、染色体1からの少なくとも1p36.11の喪失によって示される、請求項20に記載の治療の方法における使用のためのATR阻害剤。
  22. 毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)での治療のための癌を有する個体を選択する方法であって、
    (a)前記癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、及び
    (b)癌が1以上のBAF複合体遺伝子の変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のための前記個体を選択すること、及び
    (c)前記個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること
    を含む、方法。
  23. 前記個体に治療有効量のATR阻害剤を投与することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
  24. 毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)で癌を有する個体を治療するための方法であって、
    (a)前記癌が1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、及び
    (b)癌が1以上のBAF複合体遺伝子の変異又は欠損を有する場合にATR阻害剤での治療のための前記個体を選択すること、及び
    (c)前記個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、及び
    (d)前記個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること
    を含む、方法。
  25. 前記癌が、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC2、SMARCC1、SMARCD1、SMARCD2、SMARCD3、SMARCE1、ACTL6A、ACTL6B、及び/又はPBRM1から選択される1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損する、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記変異される又は欠損するBAF複合体遺伝子が、ARID1A、ARID1B、ARID2、SMARCA2、SMARCA4及びSMARCB1の1以上から選択される、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記癌が、1以上のBAF複合体遺伝子で変異される又は欠損するARID1Aである、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRi)での治療のための滑膜肉腫を有する個体を選択する方法であって、
    (a)前記滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される1以上の遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、並びに
    (b)前記滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される前記1以上の遺伝子に1以上の変異又は欠損を有する場合に前記ATR阻害剤での治療のための前記個体を選択すること、並びに
    (c)前記個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること
    を含む、方法。
  29. 前記個体に治療有効量のATR阻害剤を投与することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  30. 毛細血管拡張性運動失調症の変異したRAD3関連タンパク質キナーゼ阻害剤(ATRI)で滑膜肉腫を有する個体を治療するための方法であって、
    (a)前記滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される1以上の遺伝子で変異される又は欠損するかどうかを前記個体から得られた試料において決定すること、並びに
    (b)前記滑膜肉腫がSSX1、SSX2及び/又はSS18から選択される前記1以上の遺伝子に1以上の変異又は欠損を有する場合に前記ATR阻害剤での治療のための前記個体を選択すること、並びに
    (c)前記個体への投与に適するATRの阻害剤を提供すること、並びに
    (d)前記個体に治療有効量のATR阻害剤を投与すること
    を含む、方法。
  31. 前記変異又は欠損が、転位欠陥、機能喪失変異又は発現喪失変異である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記BAF複合体の変異癌又は欠損癌が、滑膜肉腫、卵巣明細胞癌、結腸直腸癌、黒色腫、肺癌、肝細胞癌、胃癌、膀胱癌、血液悪性腫瘍、扁平上皮癌、漿液性卵巣癌、乳癌、膵臓癌、髄芽腫、腎癌又は神経膠腫である、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
  33. 変異された又は欠損するBAF複合体遺伝子があるかどうかを決定するために前記個体から得られた細胞の試料を試験することを含む工程(a)が、タンパク質(複数可)が変異される又は欠損するかどうかを決定するために前記個体から得られた試料中の1以上のBAF複合体遺伝子のタンパク質発現を測定することを含む、請求項22~32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 変異された又は欠損するBAF複合体遺伝子があるかどうかを決定するために前記個体から得られた細胞の試料を試験する工程が、免疫組織化学を用いて腫瘍試料中のBAF複合体タンパク質発現を決定すること、BAF複合体タンパク質発現を決定すること、ELISA若しくはウェスタンブロットにより細胞溶解物中のBAF複合体のタンパク質レベルを測定すること、及び/又はBAF複合体タンパク質発現を決定すること:の1以上を含み、BAF複合体タンパク質、若しくはその断片に特異的に結合できる結合剤を使用することを含む、請求項33に記載の方法。
  35. 変異された又は欠損するBAF複合体遺伝子があるかどうかを決定するために前記個体から得られた細胞の試料を試験することを含む工程(a)が、腫瘍から得られた癌細胞試料から、血液中で循環する癌細胞の試料から、又は血液中で循環する癌細胞の核酸の試料から抽出されるゲノム核酸で実行される、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 変異された又は欠損するBAF複合体遺伝子があるかどうかを決定するために前記個体から得られた細胞の試料を試験する工程が、癌細胞の試料からRNAを抽出すること並びにリアルタイムPCRによって及び/又はBAF複合体遺伝子RNAにハイブリダイズできるプローブを使用することによって発現を測定することを含む、請求項35に記載の方法。
  37. 前記プローブが、マイクロアレイに固定化される、請求項36に記載の方法。
  38. 変異された又は欠損するBAF複合体遺伝子があるかどうかを決定するために前記個体から得られた細胞の試料を試験することを含む工程(a)が、癌細胞の試料からDNAを抽出すること並びに直接配列決定、プローブへのハイブリダイゼーション、制限断片長多型(RFLP)分析、一本鎖高次構造多型(SSCP)、特異的対立遺伝子のPCR増幅、PCRによるDNA標的の増幅に続くミニ配列決定アッセイ、PCR中の対立遺伝子判別、遺伝子ビット分析、パイロシーケンシング、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、融解曲線の分析、ヘテロ接合性の消失(LOH)の試験又は次世代配列決定技術を介して変異の存在を特定することを含む、請求項34に記載の方法。
  39. 変異された又は欠損するBAF複合体遺伝子があるかどうかを決定するために前記個体から得られた細胞の試料を試験することを含む工程(a)が、個体から得られた試料の核型分析を介して染色体不安定性から生じる遺伝子喪失を特定することを含む、請求項22~38のいずれかに記載の方法。
  40. 前記BAF複合体遺伝子が、ARID1Aであり、かつARID1Aの喪失が、染色体1からの少なくとも1p36.11の喪失によって示される、請求項39に記載の方法。
  41. 前記ATRの阻害剤が、核酸阻害剤、抗体、小分子又はペプチドである、請求項22~40のいずれかに記載の方法。
  42. 前記阻害剤が、AZ20、BEZ235(NVP-BEZ235、ダクトリシブ)、ETP-46464、VE-821、VE-822(VX-970)、AZD6738、NU6027、CP-466722、CGK733、KU-60019、KU-55933、シサンドリンB、又ミリンである、請求項38に記載の方法。
  43. 前記阻害剤が、siRNA分子である、請求項38に記載の方法。
  44. ATR阻害剤での治療が、1以上のさらなる抗癌療法と組み合わされる、請求項22~40のいずれか一項に記載の方法。
  45. ATR阻害剤での治療が、1以上のさらなる化学療法剤(複数可)との併用で使用される、請求41に記載の方法。
  46. ATR阻害剤での治療が、放射線療法との併用で使用される、請求項41に記載の方法。
  47. 前記ATRiが、式A-I:
    Figure 2022050493000021
    (式中:
    は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式アリール又はヘテロアリール環であり、前記単環式アリール又はヘテロアリール環は必要に応じて別の環と縮合して窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~6個のヘテロ原子を有する8~10員の二環式アリール又はヘテロアリール環を形成し;各Rは必要に応じて1~5個のJ基で置換され;
    は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~3個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式アリール又はヘテロアリール環であり、前記単環式アリール又はヘテロアリール環は必要に応じて別の環と縮合して窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する8~10員の二環式アリール又はヘテロアリール環を形成し;各Rは必要に応じて1~5個のJ基で置換され;
    Lは-C(O)NH-又はC(O)N(C1~6アルキル)-であり;
    nは0又は1であり;
    各J及びJは独立してハロ、-CN、-NO、-V-R、又は-(V-Qであり;
    はC1~10脂肪族鎖であり0~3個のメチレン単位が必要に応じてかつ独立してO、NR”、S、C(O)、S(O)、又はS(O)で置換され;Vは必要に応じてJV1の1~6つの存在で置換され;
    はC1~10脂肪族鎖であり0~3個のメチレン単位が必要に応じてかつ独立してO、NR”、S、C(O)、S(O)、又はS(O)で置換され;Vは必要に応じてJV2の1~6つの存在で置換され;
    mは0又は1であり;
    Qは窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~8員の飽和若しくは不飽和の単環式環、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~6個のヘテロ原子を有する9~10員の飽和又は不飽和の二環式環であり;各Qは必要に応じて0~5個のJで置換され;
    各JV1又はJV2は独立してハロゲン、CN、NH、NO、C1~4脂肪族、NH(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)、OH、O(C1~4脂肪族)、COH、CO(C1~4脂肪族)、C(O)NH、C(O)NH(C1~4脂肪族)、C(O)N(C1~4脂肪族)、NHCO(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)CO(C1~4脂肪族)、SO(C1~4脂肪族)、NHSO(C1~4脂肪族)、又はN(C1~4脂肪族)SO(C1~4脂肪族)であり、前記C1~4脂肪族は必要に応じてハロで置換され;
    RはH又はC1~6脂肪族であり前記C1~6脂肪族は必要に応じてNH、NH(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)、ハロゲン、C1~4脂肪族、OH、O(C1~4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1~4脂肪族)、CO(C1~4脂肪族)、O(ハロC1~4脂肪族)、又はハロC1~4脂肪族の1~4つの存在で置換され;
    各Jは独立してハロ、オキソ、CN、NO、X-R、又は-(X)-Qであり;
    pは0又は1であり;
    XはC1~10脂肪族であり、前記C1~6脂肪族の1~3個のメチレン単位は必要に応じてNR、-O-、-S-、-C(O)、S(O)、又はS(O)で置換され;Xは必要に応じてかつ独立してNH、NH(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)、ハロゲン、C1~4脂肪族、OH、O(C1~4脂肪族)、NO、CN、CO(C1~4脂肪族)、COH、CO(C1~4脂肪族)、C(O)NH、-C(O)NH(C1~4脂肪族)、C(O)N(C1~4脂肪族)、SO(C1~4脂肪族)、SO(C1~4脂肪族)、SONH(C1~4脂肪族)、SON(C1~4脂肪族)、NHC(O)(C1~4脂肪族)、N(C1~4脂肪族)C(O)(C1~4脂肪族)の1~4つの存在で置換され、前記C1~4脂肪族は必要に応じてハロの1~3つの存在で置換され;
    は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~8員の飽和若しくは不飽和の単環式環、又は窒素、酸素、若しくは硫黄から独立して選択される0~6個のヘテロ原子を有する8~10員の飽和若しくは不飽和の二環式環であり;各Qは必要に応じて1~5個のJQ4で置換され;
    Q4はハロ、CN、又は最大2個のメチレン単位が必要に応じてO、NR、S、C(O)、S(O)、又はS(O)で置換されるC1~4アルキルであり;
    RはH又はC1~4アルキルであり前記C1~4アルキルは必要に応じて1~4個のハロで置換され:
    R’、R”、及びRはそれぞれ独立してH、C1~4アルキルであるか、又は存在せず;
    前記C1~4アルキルは必要に応じて1~4個のハロで置換される)
    によって表されるか又はその医薬として許容し得る塩であり、前記癌が、ATMシグナル伝達経路に1以上の欠陥を有する、
    請求項1~9、及び12~21のいずれか一項に記載の使用のためのATRi、又は請求項22~41及び44~46のいずれか一項に記載の方法。
  48. 前記ATR阻害剤が、式A-I-a:
    Figure 2022050493000022
    (式中:
    環Aは
    Figure 2022050493000023
    であり;
    oはH、F、Cl、C1~4脂肪族、O(C1~3脂肪族)、又はOHであり;
    pは
    Figure 2022050493000024
    であり;
    p1はH、C1~4脂肪族、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルであり;前記Jp1はOH又はハロの1~2つの存在で必要に応じて置換され;
    p2はH、メチル、エチル、CHF、CF、又はCHOHであり;
    oはH、CN、又はSOCHであり;
    mはH、F、Cl、又はメチルであり;
    pは-SO(C1~6アルキル)、-SO(C3~6シクロアルキル)、-SO(4~6員のヘテロシクリル)、-SO(C1~4アルキル)N(C1~4アルキル)、又は-SO(C1~4アルキル)-(4~6員のヘテロシクリル)であり、前記ヘテロシクリルは酸素、窒素、又は硫黄から選択される1個のヘテロ原子を含有し;かつ前記Jpは必要に応じてハロ、OH、又はO(C1~4アルキル)の1~3つの存在で置換される)
    によって表されるか又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
  49. 環Aが、
    Figure 2022050493000025
    である、請求項48に記載の使用のためのATRi又は方法。
  50. 環Aが、
    Figure 2022050493000026
    である、請求項48に記載の使用のためのATRi又は方法。
  51. ATRを阻害する化合物が、化合物A-2:
    Figure 2022050493000027
    又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
  52. 前記ATR阻害剤が、式A-II:
    Figure 2022050493000028
    (式中:
    10はフルオロ、クロロ、又は-C(J10CNから独立して選択され;
    10はH又はC1~2アルキルから独立して選択され;又は
    10の2つの存在は、それらが結合している炭素原子と共に、必要に応じて置換される3~4員の炭素環を形成し;
    20はH、ハロ、-CN、NH、フルオロの0~3つの存在で必要に応じて置換されるC1~2アルキル、又は脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)で必要に応じて置換されるC1~3脂肪族鎖から独立して選択され;
    はH、ハロ、ハロの1~3つの存在で必要に応じて置換されるC1~4アルキル、C3~4シクロアルキル、-CN、又は脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)で必要に応じて置換されるC1~3脂肪族鎖から独立して選択され;
    はQ、又は脂肪族鎖の最大4個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、若しくはS(O)で必要に応じて置換されるC1~10脂肪族鎖から独立して選択され;各RはJQ1の0~5つの存在で必要に応じて置換され;又は
    及びRは、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素又は硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する5~6員の芳香族又は非芳香族環を形成し;R及びRによって形成される環はJの0~3つの存在で必要に応じて置換され;
    は3~7員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の単環式環、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員環;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の二環式環から独立して選択され;
    はC1~6脂肪族、=O、ハロ、又は→Oから独立して選択され;
    Q1は-CN、ハロ、=O、Q、又はC1~8脂肪族鎖から独立して選択され、前記脂肪族鎖の最大3個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換され;JQ1の各存在はJの0~3つの存在で必要に応じて置換され;又は
    同じ原子上のJQ1の2つの存在は、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成し;JQ1の2つの存在により形成される環はJの0~3つの存在で必要に応じて置換され;又は
    Q1の2つの存在は、Qと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
    は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の単環式環;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の二環式環から独立して選択され;
    は-CN、ハロ;=O、→O、Q、又はC1~6脂肪族鎖から独立して選択され、前記脂肪族鎖の最大3つのメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換され;各JはJの0~3つの存在で必要に応じて置換され;又は
    同じ原子上のJの2つの存在は、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成し;Jの2つの存在により形成される環はJの0~3つの存在で必要に応じて置換され;又は
    の2つの存在は、Qと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
    は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~3個のヘテロ原子を有する3~7員の完全飽和、部分不飽和、若しくは芳香族の単環式環;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和、部分不飽和、又は芳香族の二環式環であり;
    は-CN、=O、ハロ、又はC1~4脂肪族鎖から独立して選択され、前記脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換され;
    はハロ、-CN、→O、=O、-OH、最大2個のメチレン単位が-O-、-NR-、-C(O)-、又はS(O)-で必要に応じて置換されるC1~6脂肪族鎖;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環から独立して選択され;Jの各存在はJの0~3つの存在で必要に応じて置換され;又は
    同じ原子上のJの2つの存在は、それらが結合する原子と共に、酸素、窒素、又は硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成し;又は
    の2つの存在は、Qと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
    はハロ又はC1~6脂肪族から独立して選択され;
    JはH又はClであり;
    zは0、1又は2であり;かつ
    はH又はC1~4脂肪族から独立して選択される)
    によって表されるか又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
  53. 及びRが、フルオロである、請求項52に記載の使用のためのATRi又は方法。
  54. が、Qである、請求項52に記載の使用のためのATRi又は方法。
  55. が、ピペリジニル及びイミダゾリルから独立して選択される、請求項54に記載の使用のためのATRi又は方法。
  56. 前記ATR阻害剤が、化合物A-3:
    Figure 2022050493000029
    又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
  57. 前記ATR阻害剤が、式A-II-a:
    Figure 2022050493000030
    (式中:
    10はクロロ、フルオロ、又は-C(J10CNから独立して選択され;
    10はH又はC1~2アルキルから独立して選択され;又は
    の2つの存在は、それらが結合している炭素原子と共に、必要に応じて置換される3~4員の炭素環を形成し;
    はH、クロロ、フルオロ、ハロの1~3つの存在で必要に応じて置換されるC1~4アルキル、C3~4シクロアルキル、-CN、又はC1~3脂肪族鎖から独立して選択され、前記脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で置換され;
    はH;酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~7員の芳香族又は非芳香族環;又はC1~6脂肪族鎖であり、前記脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換され;各LはC1~4脂肪族、-CN、ハロ、-OH;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環で必要に応じて置換され;
    はH;酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~7員の芳香族又は非芳香族環;又はC1~6脂肪族鎖であり、前記脂肪族鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換され;各LはC1~4脂肪族、-CN、ハロ、-OH;又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員の非芳香族環で必要に応じて置換され;又は
    及びLは、それらが結合している窒素と共に、環Dを形成し;環DはJの0~5の存在で必要に応じて置換され;
    はH、C1~3脂肪族、又はCNであり;
    環Dは酸素、窒素若しくは硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を有する3~7員のヘテロシクリル環;又は酸素、窒素若しくは硫黄から選択される1~5個のヘテロ原子を有する7~12員の完全飽和又は部分不飽和の二環式環から独立して選択され;
    はハロ、-CN、-N(R°)、→O、3~6員のカルボシクリル;酸素、窒素若しくは硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を有する3~6員のヘテロシクリル;又はC1~4アルキル鎖から独立して選択され、アルキル鎖の最大2個のメチレン単位は-O-、-NR-、-C(O)-、又は-S(O)で必要に応じて置換され;各JはJの0~2つの存在で必要に応じて置換され;
    同じ原子上のJの2つの存在は、それらが結合している原子と共に、酸素、窒素若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~6員環を形成し;又は
    の2つの存在は、環Dと共に、6~10員の飽和又は部分不飽和の架橋環系を形成し;
    は酸素、窒素、若しくは硫黄から選択される0~2個のヘテロ原子を有する3~7員の芳香族又は非芳香族環であり;
    zは0、1、又は2であり;
    及びR°はH又はC1~4アルキルである)
    によって表されるか又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
  58. 及びRが、フルオロである、請求項57に記載の使用のためのATRi又は方法。
  59. ATR阻害剤が、化合物A-4:
    Figure 2022050493000031
    又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
  60. ATRを阻害する化合物が、
    Figure 2022050493000032
    Figure 2022050493000033
    Figure 2022050493000034
    又は
    Figure 2022050493000035
    又はその医薬として許容し得る塩である、請求項47に記載の使用のためのATRi又は方法。
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