JP2022047234A - 食材ペーストの製造・物性改善技術 - Google Patents

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潤一 中川
Junichi Nakagawa
健 徳安
Takeshi Tokuyasu
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Abstract

【課題】スマートフードバリューチェーンを実現すること。【解決手段】シェフマシン100において使用される3Dフードプリンタ110において利用される食材ユニットまたはカートリッジにおける利用されるペーストの改質を行う技術は、カートリッジ内の揮発性成分の再配向を抑制する工程を含むカートリッジの内容物の変質を抑制するための方法、また、高分子をペーストに加えることを含むペーストの流動性を改変するための方法を含む。【選択図】図5

Description

本開示は、食材ペーストの製造・物性改善技術に関する。本開示は特に、スマートフードバリューチェーンを実現するための技術に関する。
現代社会では、フードバリューチェーン全体の問題、例えば、情報・生産・物流の連携不足によるフードロスや、食品ロス(産地での廃棄(過剰生産、規格外、天候不良))、流通・小売での廃棄(過剰な消費・賞味期限の設定)、外食・家庭(過剰なストック)、食物連鎖ロス(動物タンパク質生産に必要な植物タンパク量など)等が問題となっている。例えば、日本では、摂取カロリーベースの食料自給率38%となっており、このほか、市町村におけるゴミ処理費の増大や、世界の9人に1人が栄養不足であり、世界人口推計76億人(2017年)が98億人(2050年)に増加することが予測されるなど、フードバリューチェーン全体について、課題が多い。
本開示は、スマートフードバリューチェーンを実現するための技術において使用される自動調理器、3Dフードプリンタまたはそこで用いられるカートリッジ技術などを利用して製造される食品またはその原料であるペーストに関する技術に関する。
本開示は、以下を提示する。
(項目1)
カートリッジ内の温度変化を抑制すること、およびカートリッジ内の湿度増加を抑制することからなる群より選択される、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法。
(項目2)
前記内容物の変質が、カートリッジ内容物中の水分の再配向である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目3)
サイクロデキストリンまたはその誘導体を添加することを含む、カートリッジ内容物中の揮発性成分の再配向の抑制により、カートリッジの内容物の変質を抑制する方法。
(項目4)
前記揮発性成分が香気成分である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記変質は品質変動を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
内容物を含むカートリッジ内の温度変化を抑制する手段、および内容物を含むカートリッジ内の湿度増加を抑制する手段の少なくとも1つの手段を含む、カートリッジ。
(項目7)
前記内容物の変質が、カートリッジ内容物中の水分の再配向である、上記項目のいずれかに記載のカートリッジ。
(項目8)
内容物を収容するカートリッジ内にサイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、カートリッジ。
(項目9)
前記揮発性成分が香気成分である、上記項目のいずれかに記載のカートリッジ。
(項目10)
前記変質は品質変動を含む、上記項目のいずれかに記載のカートリッジ。
(項目11)
前記カートリッジの内容物は粉粒体またはペーストである、上記項目のいずれかに記載の方法または上記項目のいずれかに記載のカートリッジ。
(項目12)
上記項目のいずれかに記載のカートリッジを含む3Dフードプリンタ。
(項目13)
上記項目のいずれかに記載のカートリッジを含む自動調理器。
(項目14)
カートリッジ内の揮発性成分の飛散および/または局在化を抑制する工程を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法。
(項目15)
前記抑制工程は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を加えることを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
サイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための組成物。
(項目17)
高分子をペーストに加えることを含む、ペーストの流動性を改変するための方法。
(項目18)
前記高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記高分子は、澱粉及びその誘導体、デキストラン、デキストリン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、フコイダン、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、寒天、ペクチン、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体、キシラン、β-グルカン、マンナン、グルコマンナン、ガラクタン、アラビナン、アラビノガラクタンおよびゼラチンからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記高分子は、ゲル化能を有する、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記高分子は、水溶性または水不溶性である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記高分子は増粘安定剤を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23)
高分子を含む、ペーストの流動性を改変するための組成物。
(項目24)
前記高分子は、ペーストに加えた後、貯蔵期間または使用期間においてペースト内成分の特性変化を及ぼさない成分である、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目25)
前記高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目26)
前記ペーストは、カートリッジに用いられるものである、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目27)
食品ユニット内に入れる食品材料にコロイド、溶質または微粒子の状態の調味料を含ませる工程と、
該食品材料を食品ユニットに含める工程と、
該食品ユニットから内容物を積層してプリント食品を生成する工程と
を含む、プリント食品の味質を制御する方法。
(項目28)
前記調味料は食塩、砂糖、唐辛子、動物からのエキス、魚介類からのエキス、海藻からの出汁、コショウ、ニンニク、しょうゆ、味噌、トマトペースト、ソース、バジル、およびカレー用スパイスからなる群より選択される少なくとも1つを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記食品ユニットはカートリッジであり、前記食品材料はペーストである、上記項目のいずれかに記載の方法。
本開示は以下をも提供する。
[1] カートリッジ内の揮発性成分の再配向を抑制する工程を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法。
[2]前記再配向の抑制は、カートリッジ内の温度変化を抑制すること、カートリッジ内の湿度増加を抑制すること、および粉粒体の変質による水分遊離を抑制することからなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目1に記載の方法。
[3]前記再配向の抑制は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を添加することを含む、項目1または2に記載の方法。
[4]前記揮発性成分は、水および香気成分の少なくとも1つを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記変質は品質変動を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[6] カートリッジの内容物の変質を抑制するための、揮発性成分の再配向を抑制する手段を含むカートリッジ。
[7]前記再配向を抑制する手段は、カートリッジ内の温度変化を抑制する手段、カートリッジ内の湿度増加を抑制する手段、および粉粒体の変質による水分遊離を抑制手段の少なくとも1つの手段を含む、項目6に記載のカートリッジ。
[8]前記再配向を抑制する手段は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、項目6または7に記載のカートリッジ。
[9]前記揮発性成分は、水および香気成分の少なくとも1つを含む、項目6~8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
[10] 前記変質は品質変動を含む、項目6~10のいずれか一項に記載のカートリッジ。
[11]前記カートリッジの内容物は粉粒体またはペーストである、項目1~5のいずれか一項に記載の方法または項目6~10のいずれか一項に記載のカートリッジ。
[12]項目6~10のいずれか一項に記載のカートリッジを含む3Dフードプリンタ。
[13]項目6~10のいずれか一項に記載のカートリッジを含む自動調理器。
[A1] カートリッジ内の揮発性成分の飛散および/または局在化を抑制する工程を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法。
[A2]前記抑制工程は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を加えることを含む、項目A1に記載の方法。
[A3]サイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための組成物。
[B1]高分子をペーストに加えることを含む、ペーストの流動性を改変するための方法。
[B2]前記高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目B1に記載の方法。
[B3]前記高分子は、澱粉及びその誘導体、デキストラン、デキストリン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、フコイダン、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、寒天、ペクチン、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体、キシラン、β-グルカン、マンナン、グルコマンナン、ガラクタン、アラビナン、アラビノガラクタンおよびゼラチンからなる群より選択される、項目B1またはB2に記載の方法。
[B4]前記高分子は、ゲル化能を有する、項目B1~B3のいずれか一項に記載の方法。
[B5]前記高分子は、水溶性または水不溶性である、項目B1~B4のいずれか一項に記載の方法。
[B6]前記高分子は増粘安定剤を含む、項目B1~B4に記載の方法。
[C1]高分子を含む、ペーストの流動性を改変するための組成物。
[C2]前記高分子は、ペーストに加えた後、貯蔵期間または使用期間においてペースト内成分の特性変化を及ぼさない成分である、項目C1に記載の組成物。
[C3]前記高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目C1またはC2に記載の組成物。
[C4]前記ペーストは、カートリッジに用いられるものである、項目C1~C3のいずれか一項に記載の組成物。
[D1]食品ユニット内に入れる食品材料にコロイド、溶質または微粒子の状態の調味料を含ませる工程と
該食品材料を食品ユニットに含める工程と
該食品ユニットから内容物を積層してプリント食品を生成する工程を
含む、プリント食品の味質を制御する方法。
[D2]前記調味料は食塩、砂糖、唐辛子、動物からのエキス、魚介類からのエキス、海藻からの出汁、コショウ、ニンニク、しょうゆ、味噌、トマトペースト、ソース、バジル、およびカレー用スパイスからなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目D1に記載の方法。
[D3]前記食品ユニットはカートリッジであり、前記食品材料はペーストである、項目D1またはD2に記載の方法。
1つの局面において、本開示はカートリッジ変質抑制技術を提供する。ここでは、本開示は、水分や香気成分等の揮発性成分の再配向を抑制することにより、カートリッジ内の水分の再配向による品質変動、香気成分等の揮発性成分の再配向による変質を抑制するための技術を提供する。
本開示はまた、別の局面において、水分の再配向抑制に関する。
本開示はまた、別の局面において、カートリッジ内の温度変化を抑制すること、カートリッジ内の湿度増加を抑制すること、粉粒体の変質による水分遊離を抑制することなどを通じて再配向を抑制することにより、カートリッジの内容物の変質を抑制するための技術を提供する。
本開示はまた、別の局面において、揮発性成分抑制に関する。本開示は、飛散、局在化抑制によって、ペーストを改質することに関する。一例として、ペースト食品素材中の揮発性成分の飛散、局在化を抑制するため、サイクロデキストリンまたはその誘導体を加えることを特徴とするペーストの改質技術を提供する。
一つの局面において、本開示は、ペーストに水溶性または水不溶性多糖を混合することを特徴とする、ペーストの流動性の改変技術を提供する。本開示は、例えば、澱粉及びその誘導体、デキストラン、デキストリン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、フコイダン、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、寒天、ペクチン、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体、キシラン、β-グルカン、マンナン、グルコマンナン、ガラクタン、アラビナン、アラビノガラクタンなどの多糖、ゼラチンなどの高分子は、ペースト自体の粘性を向上することで流動性を低減させる。また、組成物中の成分との相互作用を通じて物性を変化させることができ、これを利用することで、ゲル化能を有する多糖素材は、カートリッジ内または射出後、加工工程において流動性を改変することができる。
別の局面において、本開示は、調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態で含まれる技術を提供する。ここでは、ペーストに食塩、砂糖、その他の調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態で含まれていることで、プリント食品の味質を制御する技術が提供される。本開示では特に、予め調味成分とペーストを馴染ませることで、食味を向上させる技術に関する。
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
図1は、カートリッジの模式図を示す。農産物、特に多水分計の青果物や残渣は腐敗しやすい。しかし、乾燥、粉末化により減容化と長期常温保存が可能になる。 図2は、本開示の実施例であるこだわりの厚揚げに関する再現イメージを示す。表面はぱりぱり触感補保持するために可食性撥水剤を塗布して水分移動抑制を行う。また、断面部分に示すように、ファインバブルの粒径、配列制御により好みの触感を実現する。ゆずの香りを均等に配置し、必要に応じて減塩薄口しょうゆを均等に配置することで好みの食感を再現することができる。 図3は、本開示の食材丸ごとソリューションの処理フローを示す。各々のステップは、必ずしもすべてが必須のステップであるというわけではなく、本開示の趣旨に従って適宜取捨選択し得ることが理解される。 図4は、本開示の食材丸ごとソリューションを実現する統合システム例を示す。 図5は、本開示で用いられる自動調理器、および3Dフードプリンタの例を示す。
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
本開示は、農畜水産物(観賞植物など従来食材として考慮されてこなかった産物も含む)を、様々な粒径や成分(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、機能性成分、香り。単独または組み合わせ)を持つ乾燥粉粒体またはペーストとする技術により、製造された食材を内容物とする食材ユニット(例えば、カートリッジ)における内容物の品質管理技術を提供する。
本開示はまた、例えば、3D-AI自動調理器の提供において重要なデジタル食材の規格化、標準化のための品質管理のための技術を提供する。
本開示では、フードロス対策としては、これまで利用が困難であった廃棄食材(余剰農産物や規格外農産物)を、粒度や粘度等を超高精度に均質化させた粉粒体やペースト素材に変換し、例えば、3D-AI自動調理器で様々な食品に変換する。粉粒体やペーストはカートリッジ化し長期保存を可能とする。
余剰農産物(野菜で収穫量の約14%)は直前まで廃棄量の予測が難しいため、用途が限定されているが、本開示の技術を用いて粉粒体・ペーストにして長期保存を可能とし、3Dフードプリンタで様々な料理に変換することができる。また、規格外の農産物は品質のばらつきが大きく、食材として利用することが難しいが、本開示の技術を用いて粉粒体・ペーストにして品質を均一化し、3Dフードプリンタで様々な料理に変換することができる。廃棄食材から粒度や粘度等を超高精度に均一化させた粉粒体やペースト素材を製造する食材デジタル化技術とフードカートリッジを提供することができる。
本開示は、高品質ペースト素材を提供する技術を提供する。ペースト化処理によって得られる植物性食品由来の素材は、植物細胞壁が分散した構造を示す。しかしながら、植物細胞壁は殆ど結着性をもたず、ペースト素材に複雑な食感を付与することは困難であった。そこで、酵素処理等の革新的手法によってセルロース等の細胞壁成分のもつ相互作用を強化することで、ペースト素材に均質な新食感を付与する革新的素材の製造技術の開発を行う。また、澱粉系食材から得られるペースト素材では、組織構造が残存するなかで多様な状態の澱粉粒が溶出するような不均質な構造が残っており、その一部は糊状に変化しているものと考えられる。そこで、澱粉の糊化挙動を均質化できるような酵素前処理等の革新技術の開発を行う。これらの新規ペースト素材の製造を通じて、高品質で規格化可能な安定的特性を示すフードカートリッジの充実を図る。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
(用語の定義)
本明細書において「飲食品」とは、最も広義に用いられ、動物(ヒトを含む)が生命維持に必要とする摂食可能な任意の物体であって、動物が摂食する際の状態をさす。飲食品としては、食材、食品、飲物、飼料、餌などのすべての概念を包含する。「食品」と互換可能に使用され、本明細書において「食品」といった場合、「飲食品」と同義である。
本明細書において「飲食品構成要素」とは、飲食品を構成する任意の成分を含み、例えば、6大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維)、味成分、香り成分、機能性成分(例えば、βグルカン等生体調整機能)等の味香機能成分等を含み、飲食品自体も(100%という意味で)飲食品構成要素に包含される。
本明細書において「栄養成分」とは、6大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維)を含むことが理解される。必要に応じて栄養成分の中で、それらのうちの1つ、2つ、3つ、4つについて分析してもよい(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質を解析してもよいがこれに限定されない。)。
本明細書において使用される飲食品、飲食品構成要素の情報は、例えば、機能性表示食品データベース検索(https://db.plusaid.jp/foods)、食品成分データベース(https://fooddb.mext.go.jp/)、健康食品の安全性・有効性情報サイト(https://hfnet.nibiohn.go.jp/)等を参酌することができ、これらの情報も参考にしながら規格化されたカートリッジを構築することができる。
本明細書において「味香機能成分」とは、味成分、香り成分、機能性成分を含む。
本明細書において「味成分」とは、味覚に関する任意の成分を言う。ここでの「味覚」は広義の味覚で基本味の甘、苦、塩、酸、うま味の五味と、基本味に含まれない一部の口腔感覚、すなわち辛味、渋味、えぐ味、脂肪味、コク味、温度感覚を含む。甘味の主な呈味成分として、ショ糖や果糖、ブドウ糖などがあり、塩味の主な呈味成分として食塩があり、酸味の主な呈味成分として、酢酸(酢)やリンゴ酸(りんご)、クエン酸(柑橘類)、乳酸(ヨーグルト)があり、苦味の主な呈味成分として、カフェイン、リモネイドなどがあり、うま味の主な呈味成分として、グルタミン酸(こんぶなど)、イノシン酸(かつお節、煮干し)、グアニル酸(干ししいたけ、きのこ類)などがある。辛味の主な成分としてはカプサイシン(唐辛子)、ジンゲロール(ショウガ)などがあり、渋味は、タンニン(緑茶)、シブオール(渋柿)があり、えぐ味はホモゲンチジン酸(タケノコ)、シュウ酸(ホウレンソウ)などがある。また、脂肪味、コク味、温度感覚は味や香りの増強・抑制や清涼感など嗜好性に関与し、脂肪味の主な成分としては脂肪酸、コク味としてはメーラード反応生成物、温度感覚としてはカプサイシン(唐辛子)、メントール(ハッカ)などがある。調味成分ともいう。
本明細書において「香り成分」とは、嗅覚に訴える任意の成分をいう。
本明細書において「機能成分」または「機能性成分」とは、栄養素(栄養成分)以外の成分であって、老化防止、発ガンの抑制、高血圧の予防、免疫力の向上等に効果のある任意の成分を指し、例えば、食物繊維、ポリフェノール類、アミノ酸類、オリゴ糖、レシチン、キシリトール、アスコルビン酸、カロテノイド、硫黄化合物などを挙げることができる。機能成分は、一部栄養成分と重複することがあるが、本開示の目的においてその相違は本質的なものではない。本明細書において栄養成分または栄養素としては、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルが包含される。
本明細書において「原料」とは、当該分野において通常の意味に用いられ、製造される物体に対して、そのもととなる任意の材料を指す。通常、飲食品または飲食品構成要素の原料といった場合、飲食品または飲食品構成要素とする際に加工を行うことが多いことから、原料は、加工後のものと異なることが多いが、加工を行わない場合や加工しても変化しない場合もあることから、飲食品または飲食品構成要素の原料は飲食品または飲食品構成要素と同一であり得、したがって、本明細書では、飲食品または飲食品構成要素の原料は、飲食品または飲食品構成要素を包含することが理解される。本明細書において「飲食品原料」と互換可能に使用される。
本明細書において「粉化」とは、当該分野で通常の意味で用いられ、粉末化とも称されるものであり、ある物質を粉体とするプロセスを指す。粉化としては、通常の粉砕技術(例えば、臼式粉砕機、ロール式粉砕機、衝撃式粉砕機、気流式粉砕機、ビーズ式粉砕機等)等を挙げることができる。粉化の際に、種々の前処理(凍結、乾燥)、微粉砕、分級、造粒等の技術で粉体素材の粒径を制御することができる。粉化を工夫することによって、同じ素材の粉体でも粒径によって物性(食感、味、香り等の強弱調製)、加工適性(粘性、分散性、融点等)、体内挙動(栄養成分の吸収性等)等を可変に制御できる可能性がある。前処理は粉砕しやすいように処理する工程をいい、例えば、青果物を一度凍結して解凍すれば細胞は部分的に破壊されるので、乾燥が早く、粉砕性も向上する。あるいは凍結粉砕後に乾燥するパターンもある。いずれにしても凍結処理を行うことで、乾燥・粉砕コストの削減を期することができる。
本明細書において「乾燥」および「水分が少ない」とは、飲食品について用いられるとき、常温での長期保存ができる程度に水分量が少ないことをいう。具体的には、約20%以下、好ましくは約15%以下、さらに好ましくは約10%以下、の粉粒体を挙げることができる。
本明細書において「粉粒体」とは、「粉体」および「粒体」を含む。通常、粉(体)は粒(体)より小さく、粒(体)は肉眼でその姿形を識別できる程度の大きさのものを言う。
本明細書において「粉体」とは、当該分野で使用される通常の意味で用いられ、10-mから10-mの粒径を持つものとを称する。
本明細書において、「粒体」とは、「粉体」より大きなものをいい、通常、10-mから10-mの大きさのものをいう。粉末を顆粒状に加工したものである「造粒物」も通常粒体の範囲に包含される。
本明細書において「食材ユニット」とは、3Dフードプリンタによって製造されるプリント飲食品の材料となる食材であって、単位を観念できるものをいい、代表的に、カートリッジ、カートリッジに充填される液体、粉体、粉粒体、またはペーストを含む飲食品原料または内容物、及び当該飲食品原料または内容物の材料となる飲食品そのものを含む。
本明細書において「カートリッジ」とは、機器・部品で差し替えが自由にできるものと定義され、本明細書では、規格化された内容物(例えば、飲食品構成要素の原料またはその粉体もしくはペースト)を収容する任意の収容体をいう。形態はとわないが、例えば、プリンタのカートリッジが想定されるがこれに限定されず、例えば、通常の袋状のようなものであってもよい。カートリッジには、内容物に関する情報が付される。そのような情報はラベルとして貼付されてもよく、QRコード(登録商標)などにより間接的に調査可能とするものであってもよい。「カートリッジ」は、内容物を含む場合と含まない場合があり、特に区別する必要がない場合、本明細書では両者を包含することが意図され、狭義には、内容物を含まない収容体のみをさすことがあり、当業者は、文脈によっていずれかまたは両方を指すのかを理解することができる。「カートリッジ」に内容物が入っていることを特に意図する場合は「内容物入りカートリッジ」ということがあり、含まないものを意図する場合、「内容物なしカートリッジ」ということがある。本明細書において「フードカートリッジ」と互換可能に使用される。
本開示のカートリッジはその内部に液体、粉体、粉粒体、またはペーストを含む飲食品原料または内容物を充填することができ、プリント飲食品を製造するための3Dフードプリンタにセットされてプリント飲食品の材料となる粉体、粉粒体、またはペーストを含む飲食品原料を射出する。本開示のカートリッジは、飲食品ごと、及び/またはその形状(粉体、粉粒体、またはペースト)ごとに個別に製造することができ、プリント飲食品を製造する際には、3Dフードプリンタにセットされた各種カートリッジから必要な飲食品原料が射出される。
本明細書において「カートリッジ」または「食材ユニット」の「ライブラリ」とは2以上の異なるカートリッジまたは食材ユニットから構成される集合物であり、カートリッジの場合、カートリッジに関する「所望の規格」に関して、その一定の範囲について、それらの複数があることで充足するセットをいう。
カートリッジの機能は、飲食品の材料(代表的には、粉体素材)を標準化・規格化することで、あらゆる3Dプリンタや家電調理等での製造が容易とすることである。粉体の規格情報に加え、食材本来の立体構造・成分分布情報、健康・嗜好情報、レシピ情報等のビッグデータをAI解析アプリにより個人のニーズに合った3D設計図等に変換し、そのデータを3Dプリンタ等を含む自動調理器にダウンロードして再構築することができる。そのためカートリッジには任意にこれらの情報を直接または間接に付してもよい。
本明細書において、カートリッジに関する「所望の規格」とは、カートリッジの用途(例えば、飲食品の製造、餌の製造等)に基づき、必要となる情報のことをいう。規格の対象となるパラメータとしては、例えば、飲食品構成要素(栄養成分、機能成分等、例えば、βグルカン)の規格、水分の規格、安全性(例えば、菌数)の規格、粒度の規格、粒度分布の規格、融点の規格、消費期限の規格等の種々の規格あるいは規格値の幅が想定される。カートリッジに含まれる内容物が、飲食品またはその原料である場合は、飲食品構成要素の表示は定性的であり得る。これらの規格は、QRコード(登録商標)やバーコード等のラベルとして表示されてもよい。粒径や粒径分布によって、粉体の性質(流動性、吸水性、加工性、他素材との混合性等)が大きく変わるため、粉体の粒径と粒径分布の制御は最重要。さらに、粉体表面を化学的に修飾することでも粉体の性質は大きく変わるので、表面化学修飾との組み合わせも好ましくは考慮され得る。
本明細書において「飲食品構成要素」の「加工」は広義に解釈され、例えば、飲食品構成要素の発酵、乾燥、粉砕等を含む。本開示の技術が粉体を用いる場合、粉体とするために必要なプロセスを含み得る。
本明細書において「被提供対象」とは、飲食品が提供される対象をいい、たとえば、狭義の飲食品であれば、ヒト(個人など)が対象であり、飼料、餌の場合はペット、畜産用動物等が対象となり得る。
本明細書において「飲食品の構造情報」とは、飲食品の構成に関する任意の情報を言い、例えば、成分含量、成分組成、三次元構造、成分分布、各部分構造(その中の成分組成や三次元構造なども含む)等を含む。飲食品の構造情報は、3D食品の再現調理加工のために必要となる情報であり、例えば、MRI等高度先端技術を用いて、ある特定の食品(例えば、生の果実や加熱加工した厚揚げ等)の3次元構造や成分分布情報がビッグデータ化され、また栄養成分・機能性成分等の栄養あるいは生体調節機能等についてもマウス、コホート、ヒト介入試験等を通じて論文化され、それらのデータが電子化されている。
1つの例示的な例では、例えば、粉から生のリンゴやレタスを再現するには元の素材の立体構造や成分分布あるいは種の位置等に関する計測データがないことには再現できない。また加工品でも豆腐、こんにゃくなどは均一な組織構造なので3次元でなくても、2次元のスライス画像が何枚かあれば3次元構築はある程度可能である。また生でも加熱調理でも食するような食材は、両方の情報が必要となる(例えば、大根サラダとおでんにした大根、サンマの刺身と塩焼き、アルゼンチンエビの刺身と天ぷらでは調理形態で組織構造が変わる)。
飲食品の成分情報は食品成分データベース等で入手可能である。しかし、MRI等高度分析機器で計測したリアル立体構造や成分分布については一部の食材について論文等で一部公表されている程度で、今後において計測技術が進化し、食材ごとのビッグデータがクラウド上に集まれば4K解像度並の情報が入手可能であり得る。通例は、食材・加工品の外観あるいは断面等の写真画像等から計算したシミュレーション画像が3Dの生食材再現や加工品調理のレシピとして使用され得るが、これに限定されない。
本明細書において「被提供対象」に関する情報は、被提供対象に関する任意の情報を含み、主観的な情報(すなわち、好き嫌いといった嗜好に関する情報)と、客観的な情報(例えば、疾患罹患状態に関する情報等の健康に関する情報)とを含む。被提供対象の健康情報としては、例えば、糖尿病予備群、個人のランク等も含まれ、被提供対象の嗜好情報としては、例えば、懐かしの味が含まれる。これらを総合すると、塩分量、糖質量など糖尿病予備群および健康に影響がある成分量の情報として抽出することもできる。例えば、糖尿病予備群の場合、当該予備軍に効果の期待できる食材の選択(本出願人が作成中の機能性農産物データベースを参照してもよい。)してもよい。
被提供対象が家畜の場合、主観的な情報は、飼育者の観察記録などから入手してもよい。主観的な情報には、生活情報など(ストレス度、起床時間や睡眠時間等を含む。)を含んでいてもよい。
被提供対象の客観的な情報には、当該対象が居住する環境(湿度や温度)、疾病、ワクチン使用歴などのデータを含んでいてもよい。
本明細書において「レシピ情報」とは、製造されるべき飲食品の候補となる任意の調合法に関する情報をいう。レシピ情報には、原材料の種類、量、調理手順、3Dプリンタ、加工調理器、自動調理器等を用いる場合の加工情報などの情報が含まれる。レシピ情報は、理論的に可能なもののデータとして保持される他、これをベースとして、提供される飲食品の構造情報やカートリッジに関する情報から、選択されるデータとしても提供され、このような場合、制約条件に基づき利用可能なもののみがレシピ情報として提供されることとなる。
レシピ情報では規格化され市販中のカートリッジについては、自動調理器の種類・型式ごとに標準的なレシピープログラムがクラウド上に保存されており、ダウンロードして使用可能。また家庭で独自に開発したオリジナルのレシピープログラムをクラウド上にも保存でき、他人でも同じ機種を所有していればプログラムをダウンロード(有料あるいは無料)できる仕組みになっている。
本明細書において「3Dプリンタ」とは、「3Dフードプリンタ」とも称され、飲食品を加工製造するための三次元構造を実現するためのプリンタをいう。例えば、コロンビア大のジョナサン・ブルティンガー氏が開発した3Dレーザーフードプリンタ等を本開示において利用することができる。このような3Dプリンタは、小麦やジャガイモや米等の穀類、野菜、果物他色々な混合食品からできたペーストで、これは既に普及し始めている一般的な3Dフードプリンタと同等の機能を実現することができる。このプリンタは、ペーストを押し出して好きな形にプリントされた食材を、そのままレーザー照射で加熱調理するものである。本開示では、ペーストの代わりに、粉体を利用してもよい。本開示のカートリッジは、規格化あるいは「情報付き」である点が一つの特徴であり得る。これによって、カートリッジに付随する情報に基づいて、自在に所望の規格の飲食品を設計して製造することができる。
3Dプリンタは、好ましい実施形態では、粉体をカートリッジ化して利用する。この場合、a)粉体・造粒物と水等液体、バブル等気体で、食品・食材を再構成し、b)粉体の組み合わせや液体、気体の添加量、タイミングを最適に制御し、c)所定の小ノズルからの吐出積層させ、表面張力またはスピンコーティングにより、自己組織化させて薄膜化し、ナノ/マイクロエマルションやファインバブルによる成分を分散させる等の工程を組み合わせ食品・食材を再構成し、d)c)の操作段階で必要に応じて加熱・冷却を行い、原料のごく一部を調理・変成させながら食品・食材を喫食可能な大きさの組織へ再構成させる。
本明細書において「自動調理器」とは、ユーザが命令を指令すると、その命令に従って、希望する飲食品が自動的に加工製造される機器をいう。通常、原料提供部と製造加工部とを含んで構成される。本開示では、原料提供部において飲食品構成要素カートリッジの組合せライブラリが提供されあるいは後で提供されることが可能な構造となっており、製造後部では3Dプリンタが提供されることが通常であるが、これに限定されるものではない。
本明細書において「シェフマシン」とは、自動調理器の一形態であって、図5などに説明されるものをいう。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、カートリッジなど)が提供されるユニットをいう。カートリッジが複数提供される場合、このキットとして提供されてもよい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、飲食品構成要素)をどのように使用するか、あるいは、3Dプリンタをどのように使用するかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。
本明細書において「指示書」は、本開示を使用する方法を使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本開示の使用方法を指示する文言が記載されている。この指示書は、必要な場合は、本開示が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省または農林水産省等、米国であれば食品医薬品局(FDA)、農務省(USDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、紙媒体で提供され得るが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール、SNS、簡易メッセージなど)のような形態でも提供され得る。
本明細書において「生産・流通・消費情報」は、生産物またはその加工物もしくは変化物の生産、流通、消費に関連する任意の情報をいう。生産・流通・消費情報には、生産される物の量、生産される物の品質(鮮度情報を含む)、生産される物の価格、生産場所、流通経路、流通の所要時間、流通時の温度、消費量、消費時期などが挙げられる。
本明細書において「ペースト」は、液体中に粒子が懸濁している、糊状物をいう。ペーストは、例えば、生物の一部または全部を粉砕または磨砕することによって得られるほか、液体に生物由来の粒子を懸濁することによっても得られる。
本明細書において「プリント飲食品」とは、3Dフードプリンタによって製造される飲食品をいう。「プリント食品」と互換可能に使用される。
本明細書において「揮発性成分」は、水(水分)、香気成分などの、大気中で揮発し得る任意の成分をいう。
本明細書において「再配向」とは、本来存在していた位置から、単独または他成分と結合した状態で流出、蒸発、昇華することで移動した後、安定に存在できる部位に集合した状態になることを示す。この現象により、均質な状態で製造、貯蔵されていたはずの食品素材中のイオンや分子などが、不均質な分布を示すこととなる。
本明細書において「再配向」の「抑制」は、再配向する傾向を、減少または消失させることをいい、カートリッジ内の温度変化を抑制すること、カートリッジ内の湿度増加を抑制すること、あるいは、サイクロデキストリンまたはその誘導体などの物質移動を抑制する物質を添加することなどによって達成することができる。
本明細書において「約」とは、他の態様で明示されない限り、示された値の±10%を指す。
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
(カートリッジ、その製造および応用)
本開示は、飲食品構成要素のカートリッジおよび飲食品構成要素のカートリッジを製造する方法、ならびにその利用に関する。
本開示において、フードカートリッジ用食材の高機能化のため、革新的な構造制御技術を活用し、農産物の栄養、機能性成分の減耗を抑制しつつ、食感の表現を可能とする粉粒体の構造制御技術、ペースト素材のもつ結着性を高度利用した均質固化・構造制御技術、そして培養肉技術を用いたプロテインカスタム技術などに利用可能な、品質管理・維持技術およびそれに利用可能な標準・規格を提供する。本開示は、3D-AI自動調理器に最適化された高機能フードカートリッジを実現するために利用可能な、ペーストの加工、制御または清算技術等を提供する。
ペーストを格納したフードカートリッジを提供するため、格納されるペーストの送達及び加工時の特性を高度に制御できるよう、特性の変動範囲を極めて狭い範囲に絞り込む必要がある。また、粉粒体とともにペーストを格納する目的として、粉粒体と異なるアプローチでの食品構造形成手法、そして食品価値の提供手法を用意することが挙げられる。ペーストの加工特性のデジタル化、そしてペースト特有の物性表現手法の開発を目的として、繊維質のもつ相互作用特性の利用、あるいは澱粉特性変化の厳密制御などが重要としている。
本開示は、低水分系の農産物から高品質の粉粒体・ゲルを製造するための乾燥・粉砕・造粒に関する基礎知見に基づいて、これに利用可能な、ペースト改質技術を提供する。
本開示は、飲食品構成要素の原料、またはその粉化した粉粒体を含む飲食品構成要素カートリッジであって、該要素または粉粒体は、所望の規格に適合したものである、飲食品構成要素カートリッジを提供し、これに利用可能な、ペースト改質技術を提供する。
本開示は、(A)飲食品(養殖魚、ペット、家畜の飼料や餌を含む)構成要素の原料、および/またはその粉粒体、ペーストなどを提供する工程、ならびに(B)該原料および/または粉粒体、ペーストなどから、所望の規格に適合したものを選択し、該選択した原料および/または粉粒体を1または複数のカートリッジに配置する工程を含む、飲食品構成要素のカートリッジを製造する方法を提供し、これに利用可能な、ペースト改質技術を提供する。
(1.カートリッジ変質抑制技術)
一つの局面において、本開示は、水分、香気成分などの揮発性成分の再配向抑制によるカートリッジ変質抑制技術を提供する。
本開示は、カートリッジ内の水分、香気成分などの揮発性成分の再配向による品質変動、香気成分等の揮発性成分の再配向による変質を抑制するための技術を提供する。
別の局面において、本開示は揮発性成分抑制を提供する。本開示は特に、飛散、局在化抑制により、ペーストを改質することができる技術を提供する。本開示は、ペースト食品素材中の揮発性成分の飛散、局在化を抑制するため、サイクロデキストリンまたはその誘導体を加えることを特徴とするペーストの改質技術を提供することができる。
一つの局面において、本開示は、カートリッジ内の水分、香気成分などの揮発性成分の再配向を抑制する工程を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法を提供する。
1つの実施形態において、粉粒体は微生物繁殖が起こらない水分活性にまで脱水されているが、自由水を保持している。自由水は、貯蔵期間中における粉粒体の構造変化、例えば、糊化した澱粉の老化が進むことにより、粉粒体との結合が緩くなることがある。多くの粉粒体中には、吸水性をもつ成分が含まれていることから、その水は、直接、または水蒸気になった後に吸収される。このような再配向は、一時的には、見かけ上の変質をもたらさない可能性がある。しかしながら、吸水性が高い部位が水を吸い続けた結果、部分的な水分活性が上昇し、微生物の繁殖や粉粒体の結着・団粒化の原因となる可能性がある。また、粉粒体が格納されたカートリッジ内では、位置に応じて温度分布が生じることがある。例えば、駆動部や空調装置に近い場所では、駆動装置や空調装置による発熱の影響を受けやすく、空調時に冷却または加温する部位に近い場所と遠い場所で、温度差が生じる可能性もある。隣接する物体の温度の影響を受ける可能性もある。さらには、日光や人工光による放射熱の影響を受けることも考えられる。このような場合には、高温部で水蒸気の状態であった水分子が、低温部に移動することで、水分子に変化する可能性がある。カートリッジに格納された粉粒体の性質を維持するため、適切な空調操作及び外部熱限からの隔離に加えて、遮光処理、光反射処理、庫内の複層化などによるカートリッジ部の温度変化を抑制すること、粉粒体の変質に伴う水分分布変動を抑制すること、粉粒体の攪拌を行うこと、吸水除去、水分の流入阻止などの方法が考えられる。
本開示において、本開示が標的とする変質は品質変動を含む。あるいは、変質は、例えば、味、匂い、食感、加工特性、貯蔵特性などを含む。
本開示において、揮発性成分の再配向は、サイクロデキストリンまたはその誘導体の添加を含ませることによって達成される
別の局面において、本開示は、カートリッジの内容物の変質を抑制するための、水分、香気成分などの揮発性成分の再配向が抑制されたカートリッジを提供する。
別の実施形態において、本開示のカートリッジは、さらに、カートリッジ内の香気成分を含む揮発性成分の再配向を抑制するように構成される。別の実施形態において、本開示が達成しようとする変質は品質変動を含む。
一つの具体的な実施形態では、本開示のカートリッジは、サイクロデキストリンまたはその誘導体を含む。
本開示の好ましい実施形態では、本開示のカートリッジの内容物は粉粒体またはペーストである。粉粒体に関しては、湿潤状態の食品素材を粉粒体に加工する際に、香気成分などの揮発性成分の再配向を抑制するための処理を湿潤状態の食品素材またはその裁断物に対して講じた後に乾燥して粉粒体化する方法、粉粒体に加工後に、再配向を抑制するための処理を湿潤状態で行い再乾燥させる方法などが考えられる。ペーストに関しては、湿潤状態の食品素材のペースト化段階、またはペースト化後に、香気成分などの揮発性成分の再配向を抑制するための処理を行う方法、粉粒体をペーストに変える際に処理を行う方法などが考えられる。
別の局面において、本開示は、カートリッジ内の揮発性成分の飛散および/または局在化を抑制する工程を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法を提供する。
揮発性成分の再配向抑制は、揮発性成分を別の素材によって包接し、その飛散や再配向を抑制するための操作を導入することにより達成される。この操作により、カートリッジの内容物の変質抑制は、揮発性成分の飛散を抑制し、そのカートリッジから食品中への送達を安定化することで達成される。より特定すると、本開示の抑制工程は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を加えることを含む。
別の局面において、本開示は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための組成物を提供する。
(2.流動性の調節)
一つの局面において、本開示は、ペーストに水溶性または水不溶性多糖を混合することを特徴とする、ペーストの流動性の改変技術を提供する。
本開示の具体的な例としては、澱粉及びその誘導体、デキストラン、デキストリン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、フコイダン、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、寒天、ペクチン、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体、キシラン、β-グルカン、マンナン、グルコマンナン、ガラクタン、アラビナン、アラビノガラクタンなどの多糖およびゼラチンは、ペースト自体の粘性を向上することで流動性を低減させる。また、組成物中の成分との相互作用を通じて物性を変化させることが判明した。ゲル化能を有する多糖素材は、カートリッジ内または射出後、加工工程において流動性を改変することができる。
この局面では、本開示は、高分子をペーストに加えることを含む、ペーストの流動性を改変するための方法を提供する。本開示はまた、高分子を含む、ペーストの流動性を改変するための組成物またはシステムを提供する。
一つの実施形態では、本開示のペーストの流動性を改変する方法としては、水溶性の高分子を用いることで、ゾルまたはゲルの特性を賦与する方法、そして、水不溶性の高分子を用いることで、ペースト濃度を上昇させて流動性を低下させる方法などが挙げられる。使用される高分子の中には、条件を変えることでゲル化するものがあり、カートリッジ内でのペーストの物性制御手法を提供するとともに、射出後にゲル化させることにより、ペーストに新たな物性や加工特性を賦与することも可能となる。例えば、低温でゲル化する澱粉及びその誘導体、寒天、ゼラチンなどの高分子、カルシウムイオンとの相互作用によりゲル化するアルギン酸及びその塩などを用いることができる。水不溶性分子に関しては、セルロース、キチン、ゲル化した高分子であるグルコマンナン、アルギン酸カルシウムなどが挙げられる。これらがペースト中の水を吸い、その高分子自体がペースト様の状態になることで流動性が低下する。また、水不溶性の高分子の一部、例えば微細繊維構造をもつセルロース誘導体、キチン誘導体などは、コロイド状に水中で分散することで、水溶性高分子のような粘性賦与、そしてペーストとしての保水性の両方の性質を示す。
別の実施形態では、高分子素材をペーストに添加した際に、その組み合わせや処理条件によっては、高分子素材とペースト中の成分とで相互作用を発現することで、流動性が変化することが考えられる。この相互作用には、制御可能で望ましいものと、制御が困難で望ましくないものが存在することから注意が必要となる。この現象は、食品素材と高分子の組み合わせ、処理条件、貯蔵条件などが影響する。一例では、ペースト内の植物細胞壁成分であるペクチンのもつマイナス電荷と高分子であるキトサンが水溶液中で示すプラス電荷との相互作用が挙げられる。ゲルが経時的に離水するように、相互作用による流動性や品質の変化が緩慢に起こる際には、当初期待したカートリッジ内食品の性能が、貯蔵後に使用すると発揮されない可能性があるが、本開示の技術はこの点を改善した。
1つの実施形態では、本開示で用いられる高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
別の実施形態において、本開示で用いられる高分子は、澱粉及びその誘導体、デキストラン、デキストリン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、フコイダン、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、寒天、ペクチン、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体、キシラン、β-グルカン、マンナン、グルコマンナン、ガラクタン、アラビナン、アラビノガラクタンおよびゼラチンなどを挙げることができる。これらの共通するゲル・ゾル特性や粘度のレベルについては、当業者は、適切なレベルのものを選択することができ、選択された個別の物質により流動性を調整することができる。水溶性、水不溶性についても、本明細書に記載される原理に従って適切なものを選択することができる。
本開示の実施形態では、本開示で用いられる高分子は、ゲル化能を有する。
本開示の実施形態ではまた、本開示で用いられる高分子は、水溶性または水不溶性である。
本開示の一つの実施形態では、本開示が対象とするペーストは、カートリッジに用いられるものである。
(3.調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態)
別の局面において、本開示は、ペーストに食塩、砂糖、その他の調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態で含まれていることで、プリント食品の味質を制御する技術を提供する。特に、プリント食品の味質を制御する技術するための問題に対応するため、予め調味成分とペーストを馴染ませることで、食味を向上させることができる。
一つの局面において、本開示は、食品ユニット内に入れる食品材料にコロイド、溶質または微粒子の状態の調味料を含ませる工程と該食品材料を食品ユニットに含める工程と該食品ユニットから内容物を積層してプリント食品を生成する工程を含む、プリント食品の味質を制御する方法を提供する。
一つの実施形態において、本開示の食品ユニット内に入れる食品材料にコロイド、溶質または微粒子の状態の調味料を含ませる工程は、調味料の特性によって異なる。水溶性で溶質化する砂糖、塩、エキス、出汁、しょうゆ、ソース、マヨネーズ、ケチャップなどの一部などは、食品素材のペースト化段階、そしてペーストの成分調整段階のいずれの段階でも添加可能であり、軽度の攪拌により均質化も達成できる。味噌、トマトペースト、ソースの一部などは、コロイド状になる画分を含んでいるため、ペースト中の成分と機械的混合を行う必要がある。微粒子状の素材であるコショウ、唐辛子なども機械的混合が必要であるが、ペーストの粘性によっては、比重差により底部に溜まることがあり、不均質化の原因となる。微粒子の粒度を低下させること、ペーストの流動性を低下することなどにより、微粒子の沈降を抑制することが可能となる。
別の実施形態では、本開示で用いられる食品材料を食品ユニットに含める工程と該食品ユニットから内容物を加工台上に射出する工程、これを加工する工程、本開示で用いられる食品材料または他の食品材料を積層し加工する工程、プリント食品を生成する工程により実施することができる。
一つの実施形態では、使用される調味料は食塩、砂糖、唐辛子、動物からのエキス、魚介類からのエキス、海藻からの出汁、コショウ、ニンニク、しょうゆ、味噌、トマトペースト、ソース、バジル、カレー用スパイスの少なくとも1つを含む。
別の実施形態では、使用される食品ユニットはカートリッジであり、前記食品材料はペーストである。
(シェフマシン、3Dフードプリンターなど)
(シェフマシン)
本開示のシェフマシンは、データベースに格納されたデータを利用して、自動的に飲食品を製造することができる。
図5は、本開示のシェフマシン100の構成の一例を示す。
シェフマシン100は、プリント飲食品を製造するための3Dフードプリンタ110と、コンピュータ装置120と、データベース130とを備える。
コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110と接続されている。コンピュータ装置120が3Dフードプリンタ110と接続される態様は問わない。コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110と有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。あるいは、コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110とネットワークを介して接続されてもよい。ここで、ネットワークの種類は問わない。ネットワークは、例えば、インターネットであってもよいし、LANであってもよい。
3Dフードプリンタ110は、プリント飲食品を製造するための任意の構成を有し得る。例えば、3Dフードプリンタ110は、プリント飲食品を製造するために、後述する構成を有し得る。
コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110を制御する機能を有している。コンピュータ装置120は、データベース130に格納されたデータに基づいて、3Dフードプリンタ110を制御することができる。コンピュータ装置120は、例えば、人工知能(AI)を搭載し、人工知能により、3Dフードプリンタ110を制御するようにしてもよい。人工知能(AI)は、例えば、大量のデータを予め学習しており、或る入力値に対して或る出力値を出力するように訓練されている。あるいは、これに加えて、人工知能(AI)は、ランタイムで得られたデータも学習するようにしてもよい。
コンピュータ装置120のハードウェア構成は、その機能を実現できる限りにおいて特に限定されず、単一のマシンで構成されていてもよく、複数台のマシンを組み合わせて構成されたものであってもよい。
コンピュータ装置120は、データベース部130に接続されている。データベース部130には、プリント飲食品を製造するために利用可能なデータが格納されている。
図5に示される例では、コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110の外部に設けられているが、本開示はこれに限定されない。コンピュータ装置120を3Dフードプリンタ110の内部に設けること(すなわち、スタンドアロン型のシステム)も可能である。このようなスタンドアロン型の3Dフードプリンタ110もまた本開示の範囲内である。
図5に示される例では、データベース130は、コンピュータ装置120の外部に設けられているが、本開示はこれに限定されない。データベース130をコンピュータ装置120の内部に設けることも可能である。このとき、データベース130は、コンピュータ装置120のメモリ部を実装する記憶手段と同一の記憶手段によって実装されてもよいし、メモリ部を実装する記憶手段とは別の記憶手段によって実装されてもよい。いずれにせよ、データベース130は、コンピュータ装置120のための格納部として構成される。データベース130の構成は、特定のハードウェア構成に限定されない。例えば、データベース130は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース130は、コンピュータ装置120の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
(3Dフードプリンタ)
本開示の3Dフードプリンタは、プリント飲食品を3次元構造で製造することが可能なように構成されており、代表的に、3Dフードプリンタは、加工台、カートリッジ等の食材ユニット、食材ユニットを保管する補完部、ノズル、制御部およびこれらを収容するハウジングなどから構成され、当業者は、3Dフードプリンタの用途によって適宜これらの構成要件を選択し構成することができる。3Dフードプリンタは、3Dフードプリンタの構成要素(例えば、カートリッジ、ノズル、加工台など)を制御し、ノズルを通して食品原料を加工台上へ射出し、加工台上で3次元的にプリント飲食品を形成(例えば、食品原料を積層)し、これにより、プリント飲食品を3次元構造で製造する。
一実施例では、本開示の3Dフードプリンタ110は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサ部と、メモリ部とを備える。
メモリ部には、処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムを実行するために必要とされるデータ等が格納されている。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、インターネットなどのネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部にインストールされるようにしてもよいし、光ディスクやUSBなどの記憶媒体を介してメモリ部にインストールされるようにしてもよい。
プロセッサ部は、3Dフードプリンタ全体の動作を制御する。プロセッサ部は、メモリ部に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、3Dフードプリンタは、所望のステップを実行する装置として機能することが可能であり、3Dフードプリンタのプロセッサ部は、所望の機能を達成する手段として動作することが可能である。
本開示の3Dフードプリンタは、均一粉粒体用ノズル、食感制御用ノズル、および香気制御用ノズルの少なくとも1つをさらに備える。これにより、3Dフードプリンタは、均一な粒径を有する粉粒体、複数の異なる粒径を有する粉粒体、および香気制御された粉粒体のうちの少なくとも1つを提供することが可能である。
本開示の3Dフードプリンタは、均一粉粒体用ノズル、食感制御用ノズル、および香気制御用ノズルのそれぞれに対応する上記の食材ユニットと、加工台とをさらに備え、食材ユニットは、複数の飲食品原料(例えば、粉粒体、ペースト)を収容することが可能である。3Dフードプリンタは、均一粉粒体用ノズル、食感制御用ノズル、および香気制御用ノズルのうちの少なくとも1つを通して加工台に向かって食材ユニット内の飲食品原料を射出/噴射し、加工台上で、噴射された飲食品原料から飲食品を製造することが可能である。
一実施例では、本開示の3Dフードプリンタは、アーム(例えば、関節運動式アーム)をさらに備え、本開示のノズルは、アームに(例えば、関節運動可能なように関節運動式アームに)接続されていてもよい。これにより、本開示の3Dフードプリンタは、より簡単により複雑な構造を有するプリント飲食品を製造することが可能である。
一実施例では、本開示の3Dフードプリンタの加工台は、加工台を3次元的に回転させるためのマニピュレータ(例えば、多軸マニピュレータ)を備えていてもよい。これにより、本開示の3Dフードプリンタは、より簡単により複雑な構造を有するプリント飲食品を製造することが可能である。
また、本開示の3Dフードプリンタは、例えば、飲食品原料および/またはプリント飲食品を加熱するための加熱装置、飲食品原料および/またはプリント飲食品を冷却するための冷却装置、3Dフードプリンタ内で送風するための送風装置、飲食品原料および/またはプリント飲食品の表面とノズルの先端との距離を測定するためのセンサ、飲食品原料および/またはプリント飲食品の表面形状をリアルタイムに測定するためのスキャナ、飲食品原料および/またはプリント飲食品を調理(例えば、茹でる、蒸す、煮込む、炊飯するなど)するための容器、被提供対象からの入力を受信するためのユーザインターフェース(例えば、表示部兼入力部)などをさらに備えていてもよい。3Dフードプリンタが備えることができる装置は、これらに限定されず、3Dフードプリンタの機能を拡張するための任意の装置を含み得る。
(コンピュータ装置)
コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110と接続されている。コンピュータ装置120が3Dフードプリンタ110と接続される態様は問わない。コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110と有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。あるいは、コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110とネットワークを介して接続されてもよい。ここで、ネットワークの種類は問わない。ネットワークは、例えば、インターネットであってもよいし、LANであってもよい。
コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110のための処理を実行するように構成されている。コンピュータ装置120は、データベース130に格納されたデータに基づいて、3Dフードプリンタ110のための処理を実行することができる。コンピュータ装置120は、例えば、人工知能(AI)を搭載し、人工知能により、3Dフードプリンタ110のための処理を実行するようにしてもよい。人工知能(AI)は、例えば、大量のデータを予め学習しており、或る入力値に対して或る出力値を出力するように訓練されている。あるいは、これに加えて、人工知能(AI)は、ランタイムで得られたデータも学習するようにしてもよい。
コンピュータ装置120のハードウェア構成は、その機能を実現できる限りにおいて特に限定されず、単一のマシンで構成されていてもよく、複数台のマシンを組み合わせて構成されたものであってもよい。
コンピュータ装置120は、データベース部130に接続されている。データベース部130には、プリント飲食品を製造するために利用可能なデータが格納されている。
図5に示される例では、コンピュータ装置120は、3Dフードプリンタ110の外部に設けられているが、本開示はこれに限定されない。コンピュータ装置120を3Dフードプリンタ110の内部に設けること(すなわち、スタンドアロン型のシステム)も可能である。このようなスタンドアロン型の3Dフードプリンタ110もまた本開示の範囲内である。
図5に示される例では、データベース130は、コンピュータ装置120の外部に設けられているが、本開示はこれに限定されない。データベース130をコンピュータ装置120の内部に設けることも可能である。このとき、データベース130は、コンピュータ装置120のメモリ部を実装する記憶手段と同一の記憶手段によって実装されてもよいし、メモリ部を実装する記憶手段とは別の記憶手段によって実装されてもよい。いずれにせよ、データベース130は、コンピュータ装置120のための格納部として構成される。データベース130の構成は、特定のハードウェア構成に限定されない。例えば、データベース130は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース130は、コンピュータ装置120の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
(カートリッジ)
本開示の実施において、原料または粉粒体のカートリッジ化は必ずしもインクカートリッジのようなものでなくても良く、通常の包装でも構わない。カートリッジ化の基本原則は原材料(好ましくは、乾燥粉砕もしくは水分の低い粉粒体もしくはその造粒物。油の場合には液体もあり得る)の標準化・規格化である。例えば、農産物、特に残渣系は同じ素材でもロット、食品工場、家庭等で成分含量、物性等がばらついており、粉化しても品質が安定しない。このため、粉粒体製造工程で例えば、粉砕前後に非破壊検査(近赤外、可視
光等)等で成分組成を調べ、一定の品質になるようブレンドする工程や必要に応じて殺菌
し、最終的に密封包装(脱酸素剤、窒素充填、真空包装等)される。図1に完成したイメージを示す。粉粒体素材を標準化・規格化することで、あらゆる3Dプリンタや家電調理等
での製造が容易となる。粉粒体の規格情報に加え、食材本来の立体構造・成分分布情報、健康・嗜好情報、レシピ情報等のビッグデータをAI解析アプリにより個人のニーズに合った3D設計図等に変換し、そのデータを3Dプリンタ等を含む自動調理器にダウンロードして再構築する。
好ましい実施形態では、前記カートリッジの内容物は前記粉粒体、粒体または粉体である。すなわち、この好ましい実施形態では、本開示のカートリッジの内容物は粉粒体として提供される。好ましくは、粉粒体は、乾燥されている。粉粒体として提供される場合、ペースト状原料よりも種々の利点を有する。例えば、ペースト状原料は、長期の貯蔵期間を実現するため、何らかの殺菌工程や冷蔵・冷凍貯蔵が必須になるが粉粒体とする場合これらは不要である。一般に用いられる加熱殺菌や放射線殺菌では、味や香り、色などの品質劣化が避けられず、冷蔵・冷凍貯蔵では貯蔵のために莫大にエネルギーを消費するが、粉粒体原料は、通常、水分量15%以下の乾燥状態にあり、酸素と光を遮断した状態で、常温で数年以上の貯蔵が可能であるという利点も有する。粉粒体の場合はまた、粒径や粒径分布を制御することによって、粉粒体の性質(吸収性、加工性、他素材との混合性等)が大きく変えることができ、さらに、粉粒体表面を化学的に修飾することでも粉粒体の性質を制御することができる。他方で、ペースト原料は、粉粒体を溶媒に分散させた形状であるが、様々な用途に対応するためには莫大に数のペーストを予め用意する必要があるが、粉粒体形状であれば、基本的な性質を持つ粉粒体をカートリッジ化し、組み合わせて使用することが可能であるという利点もあり得る。粉粒体とする場合は、このほか、種々の利点が想定される。例えば、種々の素材を種々の前処理(凍結、乾燥)、微粉砕、分級、造粒等の技術で粉末素材の粒径を巧みにまたは適切に制御することができる。これによって、同じ素材の粉粒体でも粒径によって物性(食感、味、香り等の強弱調製)、加工適性(粘性、分散性、融点等)、体内挙動(栄養成分の吸収性等)等を可変に制御できる。例えば、Md. Sharif Hossen, Itaru Sotome, Kazuko Nanayama, Tomoko Sasaki, and Hiroshi Okadome†.Functional Properties of Submicron-Scale Rice Flour Produced by Wet Media Grinding, Cereal Chemistry 93(1) 53-57 2016年1月;HOSSEN Md. Sharif, SOTOME Itaru, TAKENAKA Makiko, ISOBE Seiichiro, ISOBE Seiichiro, NAKAJIMA Mitsutoshi, NANAJIMA Mitsutoshi, OKADOME Hiroshi (CA)Effect of Particle Size of Different Crop Starches and Their Flours on Pasting Properties 日本食品工学会誌 12(1) 29-35,37 2011年3月 ;HOSSEN Md.Sharif, SOTOME Itaru, TAKENAKA Makiko, ISOBE Seiichiro, NAKAJIMA Mitsutoshi, OKADOME Hiroshi (CA)Starch Damage and Pasting Properties of Rice Flours Produced by Dry Jet Grinding, Cereal Chem 88(1) 6-11 2011等を参照することができる。)。前処理は粉砕しやすいように処理する工程。例えば、青果物を一度凍結して解凍すれば細胞は部分的に破壊されるので、乾燥が早く、粉砕性も向上する。あるいは凍結粉砕後に乾燥するパターンもある。いずれにしても凍結処理を行うことで、乾燥・粉砕コストの削減が期待できる。微粉砕(特にナノスケールの領域)は薬のDDS(ドラックデリバリーシステム)と同じような物性や機能・栄養分の挙動変化が期待できるので、このような特性を3D再現や嗜好性、健康機能の制御に応用することができる。
(ペースト)
カートリッジ内に格納する素材として、ペーストを用いることができる。粉粒体と使い分け、粉粒体のもつ特性を活かしつつ、ペースト独自の物性や加工特性を表現することで、食品の価値を高めることができる。
ペーストとは、粉砕された食品素材が水などの溶媒との懸濁状態になったものであり、食品素材中の水によるものや、食品素材やその粉砕物に水などの溶媒を加えるものがある。広義には、液体に近い薄い粥状のものからマッシュポテトのようにゲルに近い形状のもの、すり下ろしリンゴのような形状の繊維質とジュースの懸濁物、パンのドウなども含まれる。また、単一の食品素材によるもの、複数の食品素材によるもの、水や調味料などの成分を含むものなどが考えられる。生鮮食品からペーストを製造する際には、例えば、ジャガイモでは、洗浄、剥皮、裁断、ブランチング処理、磨砕する方法、洗浄、剥皮したジャガイモを蒸かした後に磨砕する方法などによりペーストを調製できる。
ペーストは、水分を多く含むことから粉粒体と比較して、雑菌汚染のリスクが大きい。このため、バッグ内に詰めて密封した後に加熱殺菌を行う工程、凍結状態で貯蔵する工程、冷蔵条件で短期貯蔵する工程などの導入が必要となることがある。また、適切な保存状態における粉粒体の変質は遅く、長期使用に適する様態であるのに対して、ペーストは物質の流動性があり、比重差による沈殿、相互作用による不均質化などを考慮すべき場合がある。その一方で、もしも均質な状態が保てれば、ペーストの利用価値は大きい。例えば、他の水溶性、コロイド状または微粒子状素材との混和性が高い点、他のペーストとの混和性が高い点、射出後にペースト単独で無駄なく定点に起きやすい点、射出後に三次元的な形状を与える点、粉粒体などの親水性乾燥物を吸着する点、ペースト内部と外部の物性に差を与えることが可能となる点、送達性が良い点、急速な加熱により水蒸気を発生させることができる点、澱粉の周りの水が均質に分布しているため、糊化が均質に進む点などが価値として挙げられる。また、粉粒体にした際の吸湿性が高い食品素材に関しては、粉粒体の品質を一定に保つことが困難となるが、ペースト化により適用期間が向上するものがある。
(注記)
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上
」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つ
の値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。以下の実施例で用いる生物の取り扱いは、必要な場合、実施期間、監督官庁およびカルタヘナ法において規定される基準を遵守した。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカーのものも使用可能である。
(製造例1:カートリッジ化の場合)
農産物やその残渣等から作製した粉末あるいは造粒物を液状にしたものまたは最初から液状で生成したものを用いてカートリッジ化する。農産物および残渣は成分含量等品質が変動しやすいため(季節・年次変動、残渣品質は工場・家庭の調理加工条件(剥離の程度など)等で大きく変わる)、カートリッジ品質の規格化を行う。このため、カートリッジの規格に合うようにペーストを調合して充填を行う。カートリッジには内容物を直接表示するか、QRコード(登録商標)等を表示することでスマホ等を介して確認する。単独の素材・物質ごとにカートリッジに充填する場合、複数のペースト素材を混合したミックスペーストとして充填(例えば、一食分ずつ個食単位で、使い切りカートリッジ)する。カートリッジの形態は通常の印字プリンターの形態または真空パックの形態を用いる。
(実施例1:カートリッジ変質抑制技術)
本実施例では、粉粒体用カートリッジ内部における水分の再配向抑制技術を実証する。
(材料および方法)
リンゴ粉粒体、乾燥剤
(処理プロセス)
(a)リンゴ粉粒体をカートリッジに充填して閉栓したもの複数用意。室温で遮光保管。
(b)同カートリッジの1群には、保管開始前に乾燥剤を添加して閉栓。もう1群には、乾燥剤を添加せずに閉栓。
(c)経時的に、水分再配向によるリンゴ粉粒体の団粒化を観察。
(結果)
リンゴ粉粒体の団粒化は、乾燥剤の添加により抑制される。
(実施例2:カートリッジ変質抑制技術)
本実施例では、粉粒体用カートリッジ内部における香気成分の再配向抑制技術を実証する。
(材料および方法)
リンゴ粉粒体、サイクロデキストリン誘導体
(処理プロセス)
(a)リンゴ粉粒体の2つの試料に分けて、試料1は、サイクロデキストリン水溶液に懸濁し、試料2は水に懸濁。
(b)それぞれを乾燥したものを粉砕し、それぞれ粉粒体試料1及び粉粒体試料2とする。
(c)各粉粒体試料をカートリッジに充填して、乾燥剤を添加して閉栓したもの用意。室温で遮光保管。
(d)保管後、粉粒体試料を回収し、指標となる揮発性成分の量を測定。
(結果)
リンゴ粉粒体中の指標となる揮発性成分量が、サイクロデキストリン誘導体を添加した試料で多く残留。
(実施例3:ペースト流動性改変)
本実施例では、高分子の添加によるペースト流動性の改変について示す。
(材料および方法)
ジャガイモペースト、5%アルギン酸ナトリウム水溶液、5%キサンタンガム水溶液、5%ペクチン
(処理プロセス)
(a)ジャガイモペーストを容器に入れる。
(b)ジャガイモペーストに1/10量の水または同量の5%の高分子が入った水溶液を添加する。
(c)羽根を設置して、ラピッドビスコアナライザー(NewportScientific社)で攪拌時の粘性変化をモニターする。
(結果)
高分子を添加したジャガイモペーストの方が攪拌時の抵抗が大きく、流動性が改変される。
(実施例4:ペースト流動性改変)
本実施例では、高分子の添加によるペースト流動性の改変について示す。
(材料および方法)
ジャガイモペースト、10%セルロース水溶液
(処理プロセス)
(a)ジャガイモペーストを容器に入れる。
(b)ジャガイモペーストに1/10量の水または同量の10%セルロース懸濁液を添加する。
(c)羽根を設置して、ラピッドビスコアナライザー(NewportScientific社)で攪拌時の粘性変化をモニターする。
(結果)
セルロース懸濁液を添加したジャガイモペーストの方が攪拌時の抵抗が大きく、流動性が改変される。
(実施例5:ペースト流動性改変後の特性変化)
本実施例では、高分子の添加によるペースト流動性の改変後の加工工程におけるさらなる特性変化について示す。
(材料および方法)
実施例3で攪拌して製造した、5%アルギン酸ナトリウム水溶液と混合後のジャガイモペースト(流動性改変ペースト)
(処理プロセス)
(a)流動性改変ペーストをカートリッジに入れる。
(b)カートリッジとチューブを連結し、カートリッジ内を加圧することで、チューブから流動改変ペーストを射出する。
(c)射出した流動性改変ペーストを平坦な加工台上に棒状に配置する。
(d)棒状の流動性改変ペーストに対して、乳酸カルシウム水溶液を噴霧する。
(結果)
乳酸カルシウム水溶液を噴霧した棒状の流動性改変ペーストの表面にゲルが形成されて二重構造化する。
(実施例6:調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態)
本実施例では、調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態でのペースト改質を実証する。
本実施例では特に、ペーストに食塩、砂糖、その他の調味料が溶質、コロイド、微粒子などの状態で含まれていることで、プリント食品の味質を制御する技術を実証する。特に、この問題に対応するため、予め調味成分とペーストを馴染ませることで、食味を向上させることができることを実証する。
(実施例7:調味料添加)
本実施例では、調味料の添加によるペーストの製造及び利用について示す。
(材料および方法)
ジャガイモペースト、黒コショウ
(処理プロセス)
(a)ジャガイモペーストを容器に入れる。
(b)ジャガイモペーストに黒コショウを添加し混合することで、調味ペーストを得る。
(c)調味ペーストをカートリッジに入れる。
(d)カートリッジとチューブを連結し、カートリッジ内を加圧することで、チューブから流動改変ペーストを射出する。
(e)射出した流動性改変ペーストを平坦な加工台上に1cm以上の高さに積み上げて立方体状とする。
(f)積み上げて作った食品を加熱する。
(g)冷ました後に立方体状の食品を2つに切断し、切断面における黒コショウの分布を確認する。
(結果)
黒コショウは食品の切断面に広く分布する。粉粒体の積層技術でこのような分布を再現することは困難であり手間がかかる。本開示のペーストを用いることにより容易に達成可能となる。
(実施例8:調味料添加)
本実施例では、調味料の添加によるペーストの製造及び利用について示す。
(材料および方法)
ジャガイモペースト、塩、唐辛子、トマトソース
(処理プロセス)
(a)ジャガイモペーストを容器に入れる。
(b)ジャガイモペーストに塩を添加し混合することで、調味ペースト1を得る。
(c)ジャガイモペーストに塩、唐辛子とトマトソースを添加し混合することで、調味ペースト2を得る。
(d)各調味ペーストを別々のカートリッジ(それぞれカートリッジ1及び2)に入れる。
(e)各カートリッジとチューブを連結し、カートリッジ内を加圧することで、チューブから流動改変ペーストを射出する。
(f)各調味ペーストを平坦な加工台上に長さ2cmの棒状に配置する。これをそれぞれ複数本用意し、隣の棒状ペーストと接触しないようにする。
(g)配置した棒状ペーストを加熱する。
(h)冷ました後に、両調味ペースト由来の棒状食品を集めて纏める。
(結果)
棒状の形状をもち、二種類の味質をもつ、白色と赤色の食品が提供される。粉粒体の積層技術でこのような分布を再現することは困難であり手間がかかる。本開示のペーストを用いることにより容易に達成可能となる。
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本開示は、パーソナライズド食品の再構築を可能とする。生物資源(ウナギ、マグロなど)への過度の負担が軽減され、その素材となる農畜水産物はほぼ全ての部位の利用が可能になるため、フードロスゼロ社会の実現に大きく貢献することができる。さらに、これら農畜水産物を乾燥粉体とすることで、常温で長期保存が可能となり、今まで懸念されていた収穫あるいは加工後における劣化の問題が解決され、廃棄食品ゼロの実現が可能になるとともに、冷凍冷蔵庫の利用が減少することで、エネルギーの削減、さらにはCO2削減に貢献できる。

Claims (29)

  1. カートリッジ内の温度変化を抑制すること、およびカートリッジ内の湿度増加を抑制することからなる群より選択される、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法。
  2. 前記内容物の変質が、カートリッジ内容物中の水分の再配向である、請求項1に記載の方法。
  3. サイクロデキストリンまたはその誘導体を添加することを含む、カートリッジ内容物中の揮発性成分の再配向の抑制により、カートリッジの内容物の変質を抑制する方法。
  4. 前記揮発性成分が香気成分である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記変質は品質変動を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 内容物を含むカートリッジ内の温度変化を抑制する手段、および内容物を含むカートリッジ内の湿度増加を抑制する手段の少なくとも1つの手段を含む、カートリッジ。
  7. 前記内容物の変質が、カートリッジ内容物中の水分の再配向である、請求項6に記載のカートリッジ。
  8. 内容物を収容するカートリッジ内にサイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、カートリッジ。
  9. 前記揮発性成分が香気成分である、請求項8に記載のカートリッジ。
  10. 前記変質は品質変動を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
  11. 前記カートリッジの内容物は粉粒体またはペーストである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法または請求項6~10のいずれか一項に記載のカートリッジ。
  12. 請求項6~10のいずれか一項に記載のカートリッジを含む3Dフードプリンタ。
  13. 請求項6~10のいずれか一項に記載のカートリッジを含む自動調理器。
  14. カートリッジ内の揮発性成分の飛散および/または局在化を抑制する工程を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための方法。
  15. 前記抑制工程は、サイクロデキストリンまたはその誘導体を加えることを含む、請求項14に記載の方法。
  16. サイクロデキストリンまたはその誘導体を含む、カートリッジの内容物の変質を抑制するための組成物。
  17. 高分子をペーストに加えることを含む、ペーストの流動性を改変するための方法。
  18. 前記高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記高分子は、澱粉及びその誘導体、デキストラン、デキストリン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、フコイダン、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、寒天、ペクチン、キチン、キトサン、セルロース及びその誘導体、キシラン、β-グルカン、マンナン、グルコマンナン、ガラクタン、アラビナン、アラビノガラクタンおよびゼラチンからなる群より選択される、請求項17または18に記載の方法。
  20. 前記高分子は、ゲル化能を有する、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記高分子は、水溶性または水不溶性である、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記高分子は増粘安定剤を含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 高分子を含む、ペーストの流動性を改変するための組成物。
  24. 前記高分子は、ペーストに加えた後、貯蔵期間または使用期間においてペースト内成分の特性変化を及ぼさない成分である、請求項23に記載の組成物。
  25. 前記高分子は、多糖類、タンパク質、およびこれらの複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項23または24に記載の組成物。
  26. 前記ペーストは、カートリッジに用いられるものである、請求項23~25のいずれか一項に記載の組成物。
  27. 食品ユニット内に入れる食品材料にコロイド、溶質または微粒子の状態の調味料を含ませる工程と、
    該食品材料を食品ユニットに含める工程と、
    該食品ユニットから内容物を積層してプリント食品を生成する工程と
    を含む、プリント食品の味質を制御する方法。
  28. 前記調味料は食塩、砂糖、唐辛子、動物からのエキス、魚介類からのエキス、海藻からの出汁、コショウ、ニンニク、しょうゆ、味噌、トマトペースト、ソース、バジル、およびカレー用スパイスからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
  29. 前記食品ユニットはカートリッジであり、前記食品材料はペーストである、請求項27または28に記載の方法。



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